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特許異議申立

2022-700534

歯磨組成物及び歯磨組成物における容器へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法

審判番号
2022-700534
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-078347
登録番号
6985786
請求日
2022年06月16日
審決日
2022年09月30日
公報発行日
2022年11月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ライオン株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人英明国際特許事務所
  • 【権利者代理人】小島 隆司
  • 【権利者代理人】重松 沙織
  • 【権利者代理人】小林 克成
  • 【権利者代理人】石川 武史
  • 【権利者代理人】正木 克彦
  • 【異議申立人】谷口 俊春
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 伊藤 佑一
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.121-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6985786号発明「歯磨組成物及び歯磨組成物における容器へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6985786号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6985786号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成27年4月7日に出願され、令和3年11月30日に特許権の設定登録がされ、同年12月22日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和4年6月16日に特許異議申立人 谷口 俊春(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)イソプロピルメチルフェノールを0.02~0.3質量%、 (B)ラウリル硫酸ナトリウムを0.6~1.8質量%、 (C)エチレンオキサイドの平均付加モル数20~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1.0~2.5質量% を配合し、(B)/(C)が質量比として0.4~1.3であり、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm配合したことを特徴とする歯磨組成物。 【請求項2】 上記容器の最内層への(A)成分の吸着抑制剤として(D)成分を配合したものである請求項1記載の歯磨組成物。 【請求項3】 (B)/(C)が質量比として0.5~1.2である請求項1又は2記載の歯磨組成物。 【請求項4】 更に、研磨剤を5~40質量%配合した請求項1~3のいずれか1項記載の歯磨組成物。 【請求項5】 歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制用である請求項1~4のいずれか1項記載の歯磨組成物。 【請求項6】 練歯磨である請求項1~5のいずれか1項記載の歯磨組成物。 【請求項7】 (A)イソプロピルメチルフェノールを0.02~0.3質量%、 (B)ラウリル硫酸ナトリウムを0.6~1.8質量%、 (C)エチレンオキサイドの平均付加モル数20~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1.0~2.5質量% を配合し、(B)/(C)を質量比として0.4~1.3とし、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm 配合することを特徴とする、前記歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法。 【請求項8】 (B)/(C)が質量比として0.5~1.2である請求項7記載の歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法。 【請求項9】 更に、研磨剤を5~40質量%配合した歯磨組成物である請求項7又は8記載の歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法。 【請求項10】 歯磨組成物が練歯磨である請求項7~9のいずれか1項記載の歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法。」 第3 特許異議申立理由 1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要 特許異議申立人が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。 (1)請求項1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 特許異議申立人の提出した証拠 甲第1号証:特開2011-6351号 甲第2号証:COMMISSION DIRECTIVE 2009/129/EC of 9 October 2009、2009年10月10日、印刷日:2020年10月21日、https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32009L0129 甲第3号証: Brazilian Dental Journal、 23 (1)、 2012年、p.45-48 甲第4号証:特開2005-179266号 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、請求項1~10に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 各甲号証の記載 (1)甲第1号証 本願の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の記載がある。 記載(1a)「【請求項1】 (A)アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)アルキル基の炭素数が14~18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が2~20モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、(D)キレート剤、(E)アルカリ剤を含有し、(D)/(A)の質量比が0.10~4.0で、25℃における初期pHが8.0~9.3であることを特徴とする歯磨剤組成物。」(特許請求の範囲) 記載(1b)「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 従って、上述のように従来の技術では歯周病や口臭の予防又は改善効果には未だ改善の余地があり、本発明は上記事情に鑑み、アスコルビン酸リン酸エステルやその塩、イソプロピルメチルフェノール及び非イオン性界面活性剤を配合するに際し、アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩の長期保存後の安定性を保持することによって、長期保存後もアスコルビン酸リン酸エステルやその塩及びイソプロピルメチルフェノール由来の効果を有効に発現させ、歯肉炎及び口臭を有効に予防又は改善することができ、かつ組成物表面の滑らかさや使用感にも優れる歯磨剤組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)アルキル基の炭素数が14~18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が2~20モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、(D)キレート剤、(E)アルカリ剤を配合し、(D)/(A)の質量比が0.10~4.0であり、かつ25℃における初期pHが8.0~9.3であることにより、長期に亘って保存後のアスコルビン酸リン酸エステル又はその塩の安定性を満足に保持することができ、かつ口腔内の病原性細菌への高い殺菌力も保持でき、これによりアスコルビン酸リン酸エステル又はその塩とイソプロピルメチルフェノールとによる相乗的な歯肉炎及び口臭の予防又は改善効果が発揮され、しかも、組成物表面の滑らかさ(練り表面の滑らかさ)に優れ、キレート剤由来の異味のない良好な使用感を有する歯磨剤組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。」 記載(1c)「【0044】 各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、コエンザイムQ10、ジヒドロコレステロール、α-ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、ヒノキチオール、サンギナリン抽出物、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、プロテアーゼ等の酵素、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の植物の抽出物などを、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。」 記載(1d)「【実施例】 【0046】 以下、実験例、実施例及び比較例、処方例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%は特に記載のない限りいずれも質量%である。 ・・・ 【0048】 上記のように製造した歯磨剤組成物を、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30,厚み257μm(大日本印刷(株)製))に60g充填し、初期の25℃における3分後のpHを20mL容量のプラスチック容器に分注して測定した(測定機:メトラー・トレド(株)MP220、電極:メトラー・トレド(株)InLab 410)。 【0049】 使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。 LDPE:低密度ポリエチレン 白LDPE:白色低密度ポリエチレン LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン AL:アルミニウム PET:ポリエチレンテレフタレート EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂」 記載(1e)「【0069】 次に、以下の処方例1~10の歯磨剤組成物を実施例と同様の方法で作製し、収容容器に充填し、同様に評価した。なお、下記例はいずれも初期pHは8.0~9.3の範囲内であった。下記処方例の歯磨剤組成物は、長期保存後の殺菌力、アスコルビン酸リン酸エステル塩の保存安定性、歯肉炎予防効果及び口臭予防効果、更には使用中の及び使用後の口腔内刺激のなさ、歯磨剤表面の滑らかさのいずれにも優れたものであった。 ・・・ 【0074】 [処方例5] 練歯磨 アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム 0.5% イソプロピルメチルフェノール 0.05% 塩化セチルピリジニウム 0.05% ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油 1.0% 酒石酸カリウム 0.25% ポリリン酸カリウム 0.05% 70%ソルビット液 40% プロピレングリコール 3% カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.2% ポリアクリル酸ナトリウム 0.2% サッカリンナトリウム 0.18% モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73% ラウリル硫酸ナトリウム 1.0% 水酸化ナトリウム 0.4% 無水ケイ酸 21% 香料 1.3% 精製水 バランス 計 100%」 (2)甲第2号証 本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲第2号証(以下、「甲2」という。)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 記載(2a)「(1) フッ素を含む化合物は、現在、指令 76/768/EEC の付属書 III のパート 1 の参照番号 26 から 43、および参照番号 47 と 56 で規制されている。歯磨きペーストの最大認可濃度は、元素フッ素の含有量は、Fとして計算した0.15%、すなわち1,500ppmである。」(2頁8~11行) (3)甲第3号証 本願の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(以下、「甲3」という。)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 記載(3a)「表1.本研究で解析した歯磨きペーストに関する情報 [図:0001390593000001.jpg] 」(46頁表1) (4)甲第4号証 本願の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、以下の記載がある。 記載(4a)「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 従って、本発明の目的は、トリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノールが配合され、最内層表面が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された歯磨剤組成物であって、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの容器最内層表面への吸着が抑えられ、なおかつ、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの細菌への作用性に優れ、高い殺菌力が得られる歯磨剤組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、トリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノールが配合され、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された歯磨剤組成物に対し、カチオン性界面活性剤及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を、カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比が1:2~1:80であるように配合することにより、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンであっても、トリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノールの容器最内層への吸着が抑制され、その効果を十分に発揮させて、優れたトリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノールの細菌への作用性を有し、高い殺菌力を与える歯磨剤組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。 【0013】 従って、本発明は、トリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノール、カチオン性界面活性剤、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比が1:2~1:80であり、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填されたことを特徴とする歯磨剤組成物を提供する。」 記載(4b)「【0016】 また、本発明の歯磨剤組成物には、カチオン性界面活性剤が配合される。 カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウムを有するカチオン性界面活性剤であって、歯磨剤組成物に適応できるものであればいずれでもよく、例えば、アルキルピリジニウム塩、ベンジル長鎖アルキル短鎖ジアルキルアンモニウム塩及びその誘導体、長鎖アルキル短鎖トリアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。このようなカチオン性界面活性剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールの細菌への付着性を向上させる作用を有し、これにより殺菌力が高まるものと考えられる。カチオン性界面活性剤の配合量としては、組成物全体の0.001~0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.1質量%である。0.001質量%未満では細菌への付着量向上効果が得られなく、十分な殺菌力が発揮されない場合があり、0.5質量%を超えるとカチオン独特の苦みが強く使用感が悪くなる場合がある。なお、これらのカチオン性界面活性剤は、和光純薬工業(株)、関東化学工業(株)、東京化成工業(株)などの試薬メーカーから入手可能である。これらの中で、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムはカチオン性殺菌剤としての作用効果も有しており、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールの殺菌力に加え、更に細菌に対する浄化効果の向上が得られる傾向にあり、より好ましい。 【0017】 本発明では、更にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が配合される。この場合、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のものであり、より好ましくは10~20である。30を超えるとトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの安定性が低下する。このような、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、日光ケミカルズ(株)のHCO-5、HCO-10、HCO-20、HCO-30、日本エマルジョン(株)のHC-5、HC-7、HC-10、HC-20、HC-30、青木油脂工業(株)のBLAUNON RCW-20(ポリオキシエチレン20モル)などが挙げられる。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填した場合に、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールが最内層の直鎖状低密度ポリエチレンに吸着するのを抑える効果を有している。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量は組成物全体に対し0.1~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~2.5質量%である。0.1質量%未満ではトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの安定化効果が十分得られない場合があり、5質量%を超えるとカチオン性界面活性剤と組み合わせてもトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの細菌への付着性向上効果が十分得られない場合がある。 【0018】 本発明において、カチオン性界面活性剤とエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比は、1:2~1:80であることが口腔内細菌に対しトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールを効率的に作用させるために必要であり、より好ましくは1:5~1:60であり、1:2よりカチオン性界面活性剤量が多いと、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの容器最内層の直鎖状低密度ポリエチレンへの吸着を抑えられず、1:80よりエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油量が多くなると細菌へのトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの作用性が低下する。 【0019】 本発明の歯磨剤組成物は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填される。かかる容器としては、例えば、外層から低密度ポリエチレン/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂/アルミニウム/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂/直鎖状低密度ポリエチレン(最内層)、低密度ポリエチレン/エチレン・ビニルアルコールの共重合体/低密度ポリエチレン/エチレン・ビニルアルコールの共重合体/直鎖状低密度ポリエチレン(最内層)、及び低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレン/ガラス蒸着ポリエチレンテレフタレート/エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂/直鎖状低密度ポリエチレン(最内層)などからなるラミネート層構造を有するものが挙げられるが、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンであれば他の層構成は通常歯磨剤容器として使用されているものであればいずれでもよい。最内層の直鎖状低密度ポリエチレンの厚さとしては、特に規定されないが、通常30~100μm程度の厚さを有し、ラミネート層全体では200~450μmの厚さのものが通常用いられる。このような容器は、例えば、歯磨チューブとして大日本印刷(株)、凸版印刷(株)などの容器包材メーカーから入手することができる。」 記載(4c)「【0042】 (2)トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの容器最内層の直鎖状低密度ポリエチレンへの吸着抑制効果の評価方法 調製した歯磨剤組成物をチューブに充填し、速やかに組成物中のトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールを定量(wt%)した値を初期値とし、50℃、1ヶ月保存した後の組成物中に含まれるトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの配合濃度を評価サンプル値(wt%)とし、下記式にて残存率を計算し、90%以上の残存率を示すものを容器最内層の直鎖状低密度ポリエチレンへの吸着を抑制する効果が十分あるものと判断した。なお、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールの定量は歯磨剤組成物を10g分取し(チューブから押し出した最初の10gを使用)、60%エタノール溶液で抽出した後、シリカゲル基剤にオクタデシル基を化学結合させたカラムを用い、液体クロマグラフィーで行った。」 記載(4d)「【0048】 【表9】 [図:0001390593000002.jpg] 【0049】 実施例10~19のイソプロピルメチルフェノール及びトリクロサンとカチオン性界面活性剤及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比が1:2~1:80の範囲である歯磨剤組成物は、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された場合において、容器へのイソプロピルメチルフェノール及びトリクロサン吸着が抑えられ、なおかつ、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサンの細菌に対する吸着性が高まり、製剤の殺菌力が向上することが確認された。」 2 甲1に記載された発明 記載(1a)及び(1e)のとおり、甲1の請求項1に記載された歯磨剤組成物の処方例を示した処方例5からみて、甲1には以下の発明が記載されていると認める。 「アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム 0.5% イソプロピルメチルフェノール 0.05% 塩化セチルピリジニウム 0.05% ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油 1.0% 酒石酸カリウム 0.25% ポリリン酸カリウム 0.05% 70%ソルビット液 40% プロピレングリコール 3% カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.2% ポリアクリル酸ナトリウム 0.2% サッカリンナトリウム 0.18% モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73% ラウリル硫酸ナトリウム 1.0% 水酸化ナトリウム 0.4% 無水ケイ酸 21% 香料 1.3% に精製水を全量が100%となるように加えた歯磨剤組成物。」(以下、「甲1発明」という。) また、記載(1d)及び(1e)において、各処方例の歯磨剤組成物は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるラミネートチューブに充填することも記載されていることから、甲1に記載の方法の発明として、次の発明を認定できる。 「アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム 0.5% イソプロピルメチルフェノール 0.05% 塩化セチルピリジニウム 0.05% ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油 1.0% 酒石酸カリウム 0.25% ポリリン酸カリウム 0.05% 70%ソルビット液 40% プロピレングリコール 3% カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.2% ポリアクリル酸ナトリウム 0.2% サッカリンナトリウム 0.18% モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73% ラウリル硫酸ナトリウム 1.0% 水酸化ナトリウム 0.4% 無水ケイ酸 21% 香料 1.3% に精製水を全量が100%となるように加えた歯磨剤組成物を、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるラミネートチューブに充填する方法。」(以下、「甲1方法発明」という。) 3 本件特許発明1について (1)対比 甲1発明の「モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73%」は、モノフルオロリン酸ナトリウムの全分子量におけるフッ素の分子量の比率が19/143.95(約13.2%)であることから、「フッ素化合物をフッ素として約963ppm配合したこと」に相当する。 したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、 「(A)イソプロピルメチルフェノールを0.02~0.3質量%、 (B)ラウリル硫酸ナトリウムを0.6~1.8質量%、 (C)エチレンオキサイドの平均付加モル数20~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1.0~2.5質量% を配合し、(B)/(C)が質量比として0.4~1.3であり、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物を配合したことを特徴とする歯磨組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:本件特許発明1が、「(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm配合したことを特徴とする」と特定しているのに対し、甲1発明は「フッ素化合物をフッ素として約963ppm配合した」ものである点。 (2)相違点1についての判断 ア 動機付けの有無 甲1には、記載(1c)のとおり、「各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、・・・などを、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。」との記載があるものの、「(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm配合」する程度までフッ素化合物の配合量を増加させることについては何ら記載されていない。 欧州連合における指令に関する甲2には、記載(2a)のとおり、歯磨きペースト中のフッ素化合物の最大認可濃度について、元素フッ素の含有量として1500ppmであることが記載され、また、甲3には、記載(3a)のとおり、ブラジルの歯磨きペーストのトップセラー5種におけるフッ素濃度がすべて1450ppmであることが記載されているものの、甲1発明の組成を有する歯磨剤組成物においてフッ素濃度を同程度とすることは何ら記載されていない。 また、甲4には、記載(4a)及び(4d)のとおり、トリクロサン及び/又はイソプロピルメチルフェノール、カチオン性界面活性剤、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比が1:2~1:80であり、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填されたことを特徴とする歯磨剤組成物が記載されているものの、「(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm配合」することについては何ら記載されていない。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 イ 本件特許発明1の奏する効果について 本件特許発明1の奏する効果について、本件特許明細書には、以下の記載がある。 記載(ア) 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、ノニオン性界面活性剤や塩の配合量が多くなるほど、イソプロピルメチルフェノールの殺菌力の低下や製剤安定性の低下を引き起こすという問題があり、このため、イソプロピルメチルフェノールの容器への吸着を抑制して安定性を向上する新たな技術の開発が望まれた。 【0008】 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、イソプロピルメチルフェノールの容器への吸着が抑制され、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化した歯磨組成物及び歯磨組成物における容器へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、(A)イソプロピルメチルフェノールと共に、(B)アニオン性界面活性剤、(C)ノニオン性界面活性剤を配合し、最内層がポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物をフッ素として1,100~3,000ppm配合することによって、イソプロピルメチルフェノールの前記容器への吸着が抑制され、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化すること、また、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性を確保できることを見出し、本発明をなすに至った。 【0010】 一般的に歯磨組成物にはフッ素が添加されるが、一般的にその濃度は1,000ppm以下程度であり、このような1,100ppmに満たないフッ素濃度でフッ素化合物を添加したのでは、(A)成分と共に(B)、(C)成分を組み合わせ上記容器に充填した歯磨組成物において、イソプロピルメチルフェノールの容器吸着を抑制できないにもかかわらず、(D)成分のフッ素化合物をフッ素として1,100ppm以上という高濃度で使用すると、意外にも、(D)成分のフッ素化合物が吸着抑制剤として作用してイソプロピルメチルフェノールの容器吸着が抑制され、上記格別な作用効果を与える。 この場合、歯磨組成物に(A)イソプロピルメチルフェノールを配合し、泡立ち確保のために(B)アニオン性界面活性剤を配合し、かつイソプロピルメチルフェノールを可溶化させるために(C)ノニオン性界面活性剤を配合しても、イソプロピルメチルフェノールが容器に吸着して残存率が経時で低下するという問題が解決できず、ノニオン性界面活性剤の増量は製剤安定性の低下、更にはイソプロピルメチルフェノールの殺菌力低下を招き、また、アニオン性界面活性剤の増量は可溶化バランスの崩れ、それによる容器吸着の増加を招いた。そこで、本発明者らは、製剤安定性等を低下させることなく十分かつ適度な泡立ちを確保してイソプロピルメチルフェノールの容器吸着を抑制するため、更に検討を進めた結果、(A)、(B)、(C)成分の組み合わせにおいて、(D)成分のフッ素化合物が上述したように吸着抑制剤として特異的に作用し、これによって、イソプロピルメチルフェノールが経時において高率で残存する安定性を与え、また、十分かつ適度な泡立ち、60℃で1ヶ月保存しても液分離を抑制できる製剤の外観安定性を与えることもできた。更には、味を良好に保つこともできた。よって、本発明の歯磨組成物によれば、イソプロピルメチルフェノールを効果的に作用させ、その口腔バイオフィルム浸透殺菌力を十分に発現させることが可能となり、歯周疾患の予防又は抑制に好適に使用することができる。 【0011】 界面活性剤、硫酸ナトリウム等の塩によって難水溶性殺菌剤の容器への吸着を抑制し、残存率を向上した特許文献4~7から、フッ素化合物によってイソプロピルメチルフェノールが安定化することは予測できない。 【0012】 従って、本発明は、下記の歯磨組成物及び歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法を提供する。」 記載(イ)「【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、イソプロピルメチルフェノールの容器吸着が抑制され、イソプロピルメチルフェノールが経時において安定化し、また、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性が良好な歯磨組成物を提供でき、この歯磨組成物は、イソプロピルメチルフェノールを効果的に作用させてその口腔バイオフィルム浸透殺菌力を十分に発現させることが可能であり、歯周疾患の予防又は抑制用として好適に使用し得る。」 また、本件特許明細書の実施例に関して、【0032】~【0041】には、具体的な記載がある。 このように、記載(ア)及び(イ)には、(A)イソプロピルメチルフェノールと共に、(B)アニオン性界面活性剤、(C)ノニオン性界面活性剤を配合し、最内層がポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物をフッ素として一定量以上配合することによって、イソプロピルメチルフェノールの前記容器への吸着が抑制され、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化すること、また、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性を確保できることが記載されており、本件特許明細書の実施例において、それらの効果が具体的に確認されたことも記載されている。 一方で、甲1~4には、成分(A)~(D)を一定の配合比率で含有する歯磨組成物について、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化するとともに、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性を確保できるという効果を奏することは何ら記載されていないことから、本件特許発明1の奏する上記効果は当業者の予測し得たものとはいえない。 (3)特許異議申立人の主張について ア 動機付けの有無 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「歯磨き組成物分野においては、フッ素化合物を配合することでフッ素によるう蝕予防効果を向上させることができることは、周知慣用技術であった」ことから、「当業者はできるだけ多くのフッ素化合物を歯磨組成物に配合するべきとの動機が存在する」といえ、甲2及び3に記載のとおり、「本願出願時には、すでにフッ素化合物をフッ素として1450ppm又は1500ppm程度歯磨組成物に配合することは広く行われていたということができるから」、当業者であれば、甲1発明において、「フッ素化合物(例えばモノフルオロリン酸ナトリウム)の配合量をフッ素として1450ppm又は1500ppm程度になるまで高めることは、動機があり、且つ容易に行い得たことであるといえる」、と主張している(特許異議申立書の第22頁)。 ここで、上記(2)アのとおり、甲1の記載(1c)には、「各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、・・・などを、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。」との記載があることを踏まえれば、甲1の記載に触れた当業者は、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物を、あくまでも「本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合する」といえる。また、甲1発明の効果については、記載(1b)のとおり、「アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩の長期保存後の安定性を保持することによって、長期保存後もアスコルビン酸リン酸エステルやその塩及びイソプロピルメチルフェノール由来の効果を有効に発現させ、歯肉炎及び口臭を有効に予防又は改善することができ、かつ組成物表面の滑らかさや使用感にも優れる歯磨剤組成物を提供する」と記載されているが、甲1には、そうした効果とフッ化物の含有量との関係については何ら記載されていない。 してみると、特許異議申立人が主張するように、う蝕予防効果を向上させるべくできるだけ多くのフッ素化合物を歯磨組成物に配合するという一般的な動機があるとしても、甲1の上記記載を踏まえれば、当業者は、第一に甲1に記載の発明の効果を踏まえて各成分の含有量を調整するものといえる。そして、甲1において、甲1発明の効果とフッ化物の含有量との関係について何ら記載されていないことも参酌すれば、「長期保存後もアスコルビン酸リン酸エステルやその塩及びイソプロピルメチルフェノール由来の効果を有効に発現させ、歯肉炎及び口臭を有効に予防又は改善することができ、かつ組成物表面の滑らかさや使用感にも優れる」といった効果にどのような影響を及ぼすか明らかではないフッ化物について、その含有量を、甲1発明の「フッ素として約963ppm」から本件特許発明1の「フッ素として1,400~2,500ppm」まで、少なくとも1.4倍以上に増加させる動機付けがあったとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 イ 本件特許発明1の奏する効果について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲4には「カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比が1:2~1:80(特に1:5~1:50)の範囲である歯磨剤組成物は、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された場合において、容器へのイソプロピルメチルフェノール吸着が抑えられ、なおかつ、イソプロピルメチルフェノールの細菌に対する吸着性が高まり、製剤の殺菌力が向上する」ことが記載されているところ、甲1発明に「含有されるカチオン性界面活性剤(塩化セチルピリジニウム)とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)の質量比は1:20である」から、「容器へのイソプロピルメチルフェノール吸着が抑えられる」という効果を奏しているといえること、並びに、本件特許発明の効果について、本件特許明細書には、60℃1ヶ月保存後のイソプロピルメチルフェノール量をHPLCで測定した際の残存率が97%以上100%以下であることが記載されているが、甲4においても、「「カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比」が1:20の場合(実施例10~15)は、「イソプロピルメチルフェノールの残存率(%)」が96~98%であることが示されている」ことから、甲1発明や、甲1発明においてフッ素化合物の配合量をフッ素として1450ppm又は1500ppm程度に高めた場合においても、本件特許発明と同程度のイソプロピルメチルフェノール残存率が得られると期待できることを主張している(特許異議申立書の第22~25頁)。 しかしながら、上記(2)イのとおり、本件特許明細書には、本件特許発明1の奏する効果として、イソプロピルメチルフェノールの前記容器への吸着が抑制され、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化することとともに、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性を確保できることが記載されているところ、甲4には「カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比」が1:2~1:80(特に1:5~1:60)の範囲である歯磨剤組成物は、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された場合において、容器へのイソプロピルメチルフェノール吸着が抑えられる点のみが記載されており、それに加えて、十分かつ適度な泡立ちと製剤の外観安定性を確保できる点については記載されていないことから、甲4の記載を参酌しても、本件特許発明1のように成分(A)~(D)を一定の配合比率で含有する歯磨組成物について、経時においてイソプロピルメチルフェノールが安定化するとともに、十分かつ適度な泡立ち、製剤の外観安定性を確保できるという効果を奏することは、当業者の予測し得たものとはいえない。 また、容器へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制という効果のみに着目したとしても、甲4には「カチオン性界面活性剤とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量比」が1:2~1:80(特に1:5~1:60)の範囲である歯磨剤組成物は、容器最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填された場合において、容器へのイソプロピルメチルフェノール吸着が抑えられ、なおかつ、イソプロピルメチルフェノールの細菌に対する吸着性が高まり、製剤の殺菌力が向上することが記載され、実施例において「イソプロピルメチルフェノールの残存率(%)」が96~98%であることが示されているものの、記載(4c)のとおり、甲4におけるイソプロピルメチルフェノールの容器最内層の直鎖状低密度ポリエチレンへの吸着抑制効果の評価方法においては、「50℃、1ヶ月保存」した後の組成物中に含まれるイソプロピルメチルフェノールの配合濃度から残存率を計算しており、本件特許明細書に記載された「60℃1ヶ月保存」後のイソプロピルメチルフェノール量から評価する残存率とは前提となる条件が異なることや、甲1発明に配合されているラウリル硫酸ナトリウムについて、甲4の実施例に記載の歯磨剤組成物には配合されていないことを踏まえれば、記載された残存率の数値は近似しているものの、その効果が同程度であるとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)よって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件特許発明2~6について (1)対比 本件特許発明2は、本件特許発明1において、「容器の最内層への(A)成分の吸着抑制剤として(D)成分を配合したものである」ことを特定したものであり、本件特許発明3は、本件特許発明1又は2において、「(B)/(C)が質量比として0.5~1.2である」ことを特定したものであり、本件特許発明4は、本件特許発明1~3において、「更に、研磨剤を5~40質量%配合した」ことを特定したものであり、本件特許発明5は、本件特許発明1~4において、「歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制用である」ことを特定したものであり、本件特許発明6は、本件特許発明1~5において、「練歯磨である」ことを特定したものであるところ、上記3(1)と同様に、本件特許発明2~6と甲1発明との対比においても、相違点として相違点1が存在する。 (2)判断 上記3(2)で述べたとおり、甲1発明との間で相違点1が存在する本件特許発明2~6は、甲1発明及び甲2~4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本件特許発明7について (1)対比 甲1方法発明の「モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73%」は、モノフルオロリン酸ナトリウムの全分子量におけるフッ素の分子量の比率が19/143.95(約13.2%)であることから、「フッ素化合物をフッ素として約963ppm配合したこと」に相当する。 したがって、本件特許発明7と甲1方法発明とは、 「(A)イソプロピルメチルフェノールを0.02~0.3質量%、 (B)ラウリル硫酸ナトリウムを0.6~1.8質量%、 (C)エチレンオキサイドの平均付加モル数20~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1.0~2.5質量% を配合し、(B)/(C)が質量比として0.4~1.3であり、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる容器に充填した歯磨組成物に、(D)フッ素化合物を配合したことを特徴とする方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点2:本件特許発明7が、「(D)フッ素化合物をフッ素として1,400~2,500ppm配合したことを特徴とする」と特定しているのに対し、甲1方法発明は「フッ素化合物をフッ素として約963ppm配合した」ものである点。 相違点3:本件特許発明7が、「歯磨組成物における容器の最内層へのイソプロピルメチルフェノールの吸着抑制方法。」であるのに対し、甲1方法発明は「歯磨剤組成物を、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるラミネートチューブに充填する方法。」である点。 (2)相違点2についての判断 上記3(2)で検討したように、甲1方法発明において、相違点2に係る本件特許発明7の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえず、また、本件特許発明7の奏する効果は当業者の予測し得たものともいえない。 (3)よって、相違点3について判断するまでもなく、本件特許発明7は、甲1発明及び甲2~4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 本件特許発明8~10について (1)対比 本件特許発明8は、本件特許発明7において、「(B)/(C)が質量比として0.5~1.2である」ことを特定したものであり、本件特許発明9は、本件特許発明7又は8において、「更に、研磨剤を5~40質量%配合した」ことを特定したものであり、本件特許発明10は、本件特許発明7~9において、「練歯磨である」ことを特定したものであるところ、上記5(1)と同様に、本件特許発明8~10と甲1方法発明との対比においても、相違点として相違点2及び相違点3が存在する。 (2)判断 上記5(1)~(3)で、本件特許発明7と甲1方法発明との対比判断をしたとおり、甲1方法発明との間で相違点2が存在する本件特許発明8~10は、甲1方法発明及び甲2~4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 7 まとめ したがって、本件特許発明1~10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないため、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本件請求項1~10に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。 また、ほかに本件請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700534

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