特許異議申立
2022-700507
ピクセル型温度制御式基板支持アセンブリ
- 審判番号
- 2022-700507
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-024027
- 登録番号
- 6987166
- 請求日
- 2022年06月13日
- 審決日
- 2023年12月06日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】安齋 嘉章
- 【異議申立人】白井 美登里
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 松永 稔
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1652.113-YAA(H01L) / P1652.121-YAA(H01L) / P1652.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6987166号発明「ピクセル型温度制御式基板支持アセンブリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6987166号の特許請求の範囲を、令和5年8月28日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6987166号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6987166号の請求項1~14に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)1月7日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理 2014年2月7日 米国(US)、 2014年5月22日 米国(US))を国際出願日とする特願2016-568792号の一部を、令和2年2月17日に新たな特許出願としたものであって、令和3年12月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。
そして、その請求項1~5に係る特許について、令和4年6月13日に特許異議申立人白井美登里(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年8月31日付けで取消理由を通知した。
それに対し、特許権者は、その指定期間内である同年11月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和5年2月9日に意見書を提出し、当審は同年3月8日付けで訂正拒絶理由を通知し、それに対し同年4月27日に特許権者は意見書及び手続補正書を提出した。
その後、当審は、同年5月24日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者はその指定期間内である同年8月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年10月19日に意見書を提出した。
申立人が提出した甲第1号証~甲第4号証は以下のとおりであり、以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
甲第1号証 特表2013-508968号公報
甲第2号証 国際公開第2013/033381号
(翻訳文:特表2014-529910号公報)
甲第3号証 特開平11-111823号公報
甲第4号証 特表平11-502062号公報
第2 訂正の適否についての判断
令和5年8月28日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)について検討する。(本件訂正請求により令和4年11月28日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。)
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正請求書の記載のとおり。)
(1) 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「1つ以上の主抵抗ヒータ」と記載されているのを、「3つ以上の主抵抗ヒータ」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備えている誘電体を備える静電チャック(ESC)。」と記載されているのを、「オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備え、個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する誘電体を備える静電チャック(ESC)。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(3) 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータの数量よりも多く、」と記載されているのを、「2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータの数量よりも一桁多く、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(4) 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項3に「極格子状にさらに配置されている」と記載されているのを、「極配列で配置されている」に訂正する。
(5) 一群の請求項、及び、独立特許要件について
ア 本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1-1、1-2、及び1-3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~5が特許異議申立の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1-1、1-2、1-3、2-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 請求項1に対する訂正について
ア 訂正事項1-1について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項1-1は、令和4年8月31日付け取消理由通知書の「第2 理由2(明確性)の1」で通知した、複数の2次ヒータの制御について不合理を指摘した取消理由を解消することを目的としたものであって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものといえる。
よって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、請求項1に記載された主抵抗ヒータについて「1つ以上の」と記載されているのを「3つ以上の」と訂正する訂正事項1-1は、数値範囲の一部を削除する訂正といえる。
よって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
(イ) 新規事項の有無
上記のとおり、訂正事項1-1は、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正し、かつ、数値範囲の一部を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項1-1は、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正し、かつ、数値範囲の一部を削除する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項1-2について
(ア) 訂正の目的の適否
訂正事項1-2は、請求項1の「オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備えている誘電体」との発明特定事項に、「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との事項を直列的に付加する訂正といえる。
よって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
本件明細書等の段落0029の「ピクセルヒータ140は、温度プロファイルのばらつきを約+/-0.3℃に低減することによって、主抵抗ヒータ154によって生成される基板134の表面の温度プロファイルを改善する。」、段落0054の「例えば、ピクセルコントローラ202は、1つ又は複数のピクセルヒータ140に10ワットの電力を、他のピクセルヒータ140に9ワットの電力を、またさらに、他のピクセルヒータに1ワットの電力を提供してもよい。」、段落0056の「複数のピクセルヒータ140を有するピクセル型基板支持アセンブリ126は、その上で処理される基板134の温度均一性を約±0.3℃未満に制御する能力を実証した。」、段落0087の「一実施形態では、主抵抗ヒータ154と共にピクセル型基板支持アセンブリ126における複数のピクセルヒータ140は、その上で処理される基板134の温度均一性を、約±0.3℃未満に制御する能力を実証している。」との記載によると、訂正事項1-2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項1-2は、発明を特定するための事項を直列的に付加する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項1-3について
(ア) 訂正の目的の適否
請求項1に記載された2次ヒータの数量について「主抵抗ヒータの数量よりも多く」と記載されているのを「主抵抗ヒータの数量よりも一桁多く」と訂正する訂正事項1-3は、数値範囲の一部を削除する訂正といえる。
よって、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
本件明細書等の段落0006の「ピクセルヒータの数量は、主抵抗ヒータの数量より一桁大きく、ピクセルヒータは、主抵抗ヒータと同様、互いに独立して制御可能である。」との記載によると、訂正事項1-3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項1-3は、数値範囲の一部を削除する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2) 請求項3に対する訂正(訂正事項2-1)について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-1は、令和4年8月31日付け取消理由通知書の「第2 理由2(明確性)の2」で通知した、請求項3に記載された「極格子状」が、どのような2次ヒータの配置態様を特定しているのか明確でないとの取消理由を解消するための訂正事項である。
そして、「極格子状」とは、本件明細書等において、特許請求の範囲の請求項3と請求項13に記載があるものの、明細書にはその記載はなく、それ自体ではどのような配列態様を意味しているのか明らかでない。
それに対し、2次ヒータ(ピクセルヒータ140)の配置について、本件明細書等の段落0074及び図3Bには「格子状に構成され」ること、段落0075及び図3Cには「極配列に配置された」こと、段落0076及び図3Dには「同心チャネルに配置された」ことの開示がある。
そして、請求項3には「極・・・」と記載されていることから、本件明細書等において、特許請求の範囲の請求項3「極格子状」との記載は、段落0075(図3C)に記載された「極配列」の誤記と認められる。
したがって、請求項3に「極格子状にさらに配置されている」と記載されているのを「極配列で配置されている」と訂正する訂正事項2-1は、誤記の訂正を目的としたものといえる。
よって、訂正事項2-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
「極配列に配置された」ことは、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落0075及び図3Cに開示された事項であるから、訂正事項2-1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項2-1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項2-1は本件明細書等のとおりに請求項3の誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
3 訂正の適否について
上記のとおり、請求項1に対する訂正事項1-1、1-2、1-3、及び、請求項3に対する訂正事項2-1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、令和5年8月28日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明1~5
本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
セラミック材料の単一の一体塊から形成された誘電体であって、誘電体は、
上面及び下面と、
誘電体内に配置されたチャック電極と、
誘電体内に配置された3つ以上の主抵抗ヒータと、
主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータであって、
複数の2次ヒータは誘電体内に配置され、
2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く、
複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備え、個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する誘電体を備える静電チャック(ESC)。
【請求項2】
複数の2次ヒータは、誘電体の中心の周りに同心状に配置され、共通の半径に沿って2次ヒータのグループへ分けられている、請求項1に記載のESC。
【請求項3】
複数の2次ヒータは、極配列で配置されている、請求項2に記載のESC。
【請求項4】
チャック電極は、複数の2次ヒータと上面との間に配置されている、請求項1に記載のESC。
【請求項5】
複数のスイッチをさらに備え
各スイッチは、2次ヒータのそれぞれと独自に対になって、2次ヒータの1つを、他の全ての2次ヒータのオン状態に対して独立に制御可能にしている、請求項1に記載のESC。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、令和5年5月24日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(明確性)
本件発明1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 取消理由2(進歩性)
本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1、甲4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 当審の判断
(1) 取消理由1(明確性)
令和5年5月24日付け取消理由通知(決定の予告)「第4の1」で、令和4年11月28日された訂正の請求(令和5年4月27日付け手続補正書により補正)により訂正された特許請求の範囲の請求項1における、「横方向」及び「方位角方向」が、上面及び下面を備える誘電体についてのどの方向を意味しているのか明らかでないとの取消理由を通知したところ、本件訂正請求によって、上記令和4年11月28日にされた訂正の請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされ、本件発明1~5に「横方向」及び「方位角方向」は記載されていないため、取消理由1(明確性)は解消した。
(2) 取消理由2(進歩性)について
ア 各甲号証の記載と引用発明等
(ア) 甲1の記載と引用発明1-1
a 甲1の記載
甲1(特表2013-508968号公報)には、次の記載がある(下線は、引用箇所を示すため当審が付加した。)。
(a) 「【0002】
既存のプラズマ処理システムは、精度および再現性の向上への高まりつつある要求にさらされているそのような半導体製造装置の一つである。プラズマ処理システムの場合の一つの基準は、均一性の向上であり、それには半導体基板表面における処理結果の均一性だけではなく、名目的に同じ入力パラメータで処理された一連の基板の処理結果の均一性が含まれる。基板上の均一性の継続的な向上が望まれる。特に、プラズマ室に対して、均一性、一貫性、および自己診断機能の向上が求められる。
・・・(中略)・・・
【0020】
基板上で所望の限界寸法(CD)均一性を達成するため、半導体処理装置での径方向および方位の基板温度制御についての要求がますます高まっている。半導体製造プロセスにおいて、特にCDがサブ100nmに近づくと、温度の小さな変化でも、容認できないほどCDに影響することがある。
【0021】
基板支持アセンブリは、処理の際に、基板の支持、基板温度の調整、高周波電力の供給など、様々な機能のための設定を行うことができる。基板支持アセンブリは、処理中に基板を基板支持アセンブリ上に静電的に固定するのに役立つ静電チャック(ESC)を備えることができる。ESCは、チューナブルESC(T-ESC)とすることができる。T-ESCは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6847014号および第6921724号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。基板支持アセンブリは、セラミックの基板ホルダと、流体冷却式ヒートシンク(以下、冷却プレートと呼ぶ)と、径方向の段階的な温度制御を実現するための複数の同心円状ヒータゾーンとを備えることができる。一般的には、冷却プレートは、0℃~30℃の間に維持される。ヒータは、断熱材の層を間に挟んで冷却プレート上に配置されている。ヒータは、基板支持アセンブリの支持面を冷却プレートの温度よりも上の約0℃~80℃の温度に維持することができる。複数のヒータゾーンの範囲内でヒータ出力を変化させることにより、基板支持温度プロファイルを、センターホット、センターコールド、均一の間で変更することができる。さらに、平均基板支持温度を、冷却プレート温度より上の0~80℃の動作範囲内で段階的に変更することができる。半導体技術の進歩に伴ってCDが小さくなるにつれて、小さな方位温度変化が、ますます大きな課題となる。
・・・(中略)・・・
【0023】
プラズマ処理装置における基板温度プロファイルは、プラズマ密度プロファイル、RF電力プロファイル、チャック内のいくつかの加熱および冷却エレメントの詳細な構造といった多くの要因に影響され、このため、基板温度プロファイルは、均一ではないことが多く、少数の加熱または冷却エレメントで制御することは難しい。この欠陥は、基板全体での処理速度の不均一性、および基板上の素子ダイの限界寸法の不均一性と言い換えることができる。
【0024】
装置が所望の空間的および時間的温度プロファイルを能動的に作り出して維持することを可能にするため、また、CD均一性に影響を与える他の有害因子を補償するためには、温度制御の複雑性を考えると、独立に制御可能なヒータゾーンを基板支持アセンブリに組み込むことが効果的となる。
【0025】
本明細書で記載するのは、半導体処理装置の基板支持アセンブリ用の、複数の独立に制御可能なヒータゾーンを備えた加熱プレートである。この加熱プレートは、ヒータゾーンと電力供給ラインおよび電力リターンラインのスケーラブルな多重化レイアウト方式を含むものである。ヒータゾーンの出力を調整することで、処理中の温度プロファイルを、径方向と方位の両方に関して具現化することができる。この加熱プレートは、主にプラズマ処理装置について記載されるが、プラズマを使用しない他の半導体処理装置に、この加熱プレートを用いることもできる。
・・・(中略)・・・
【0027】
この加熱プレートのヒータゾーンは、規定のパターンで配置されることが好ましく、例えば、矩形格子、六角格子、円形状、同心環状、または任意の望ましいパターンで配置される。各ヒータゾーンは、任意の適当なサイズとすることができ、1つまたは複数のヒータエレメントを備えることができる。1つのヒータゾーン内のすべてのヒータエレメントは、一緒にオン・オフされる。電気的接続の数を最小限にするため、電力供給ラインおよび電力リターンラインは、各電力供給ラインがヒータゾーンの異なるグループに接続され、各電力リターンラインがヒータゾーンの異なるグループに接続されて、各ヒータゾーンが、特定の電力供給ラインに接続されたグループの1つの中にあり、さらに特定の電力リターンラインに接続されたグループの1つの中にあるように、配置される。どの2つのヒータゾーンも、同じ電力供給ラインと電力リターンラインのペアには接続されていない。この場合、1つのヒータゾーンは、その特定のヒータゾーンが接続されている電力供給ラインと電力リターンラインのペアに電流を流すことにより、作動させることができる。ヒータエレメントの出力は、好ましくは20W未満であり、より好ましくは5~10Wである。ヒータエレメントは、ポリイミド・ヒータ、シリコーンラバー・ヒータ、マイカ・ヒータ、金属ヒータ(例えば、W、Ni/Cr合金、Mo、またはTa)、セラミック・ヒータ(例えば、WC)、半導体ヒータ、またはカーボン・ヒータなどの抵抗ヒータとすることができる。ヒータエレメントは、スクリーン印刷、巻線、またはエッチドフォイルのヒータとすることができる。一実施形態では、各ヒータゾーンは、半導体基板上に作られる4つの素子ダイ以下の大きさであるか、または半導体基板上に作られる2つの素子ダイ以下の大きさであるか、または半導体基板上に作られる1つの素子ダイ以下の大きさであるか、または基板上の素子ダイに対応する2~3cm2の面積である。ヒータエレメントの厚さは、2マイクロメートルから1ミリメートル、好ましくは5~80マイクロメートルとすることができる。ヒータゾーンの間、および/または電力供給ラインと電力リターンラインとの間にスペースを確保にするため、ヒータゾーンの総面積は、最大で基板支持アセンブリの上面の面積の90%までとすることができ、例えば、その面積の50~90%とすることができる。電力供給ラインまたは電力リターンライン(まとめて、電力ライン)は、ヒータゾーン間の1~10mmの隙間に配置することができ、あるいはヒータゾーンの平面から電気絶縁層により分離された別々の平面に配置することができる。電力供給ラインおよび電力リターンラインは、大きな電流を運ぶと共にジュール熱を低減するため、スペースが許す限り幅を広くすることが好ましい。一実施形態では、電力ラインはヒータゾーンと同じ平面内にあり、電力ラインの幅は、好ましくは0.3mm~2mmである。別の実施形態では、電力ラインはヒータゾーンとは異なる平面上にあり、電力ラインの幅は、ヒータゾーンと同じような大きさとすることができ、例えば300mmチャックの場合、その幅は1~2インチとすることができる。電力供給ラインおよび電力リターンラインの材料は、ヒータエレメントの材料と同じか、または異なるものとすることができる。電力供給ラインおよび電力リターンラインの材料は、Cu、Al、W、インコネル(登録商標)、またはMoなど、低抵抗率の材料であることが好ましい。
【0028】
図1および図2は、基板支持アセンブリを示しており、これは、2つの電気絶縁層104A、104Bに組み込まれたヒータゾーン101のアレイを有する一実施形態の加熱プレートを含んでいる。電気絶縁層は、ポリマー材料または無機材料、酸化ケイ素、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウムなどのセラミック、または他の適当な材料とすることができる。基板支持アセンブリは、さらに、(a)直流電圧で基板をセラミック層103の表面に静電的に固定するための、電極102(例えば、単極または双極)が埋め込まれたセラミック層103(静電固定層)を有するESCと、(b)断熱層107と、(c)冷却液流路106を含む冷却プレート105と、を備える。
【0029】
図2に示すように、ヒータゾーン101のそれぞれは、電力供給ライン201の1つと電力リターンライン202の1つに接続されている。どの2つのヒータゾーン101も、同じ電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを共有してはいない。適切な電気的スイッチング構成により、電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを電源(図示せず)に接続することが可能であり、これにより、このライン・ペアに接続されているヒータゾーンのみがオンになる。各ヒータゾーンの時間平均加熱出力は、時間領域多重化により、個別に調整することができる。異なるヒータゾーン間のクロストークを防止するため、(図2に示すように)各ヒータゾーンとそれに接続された電力供給ラインとの間、または各ヒータゾーンとそれに接続された電力リターンラインとの間(図示せず)に、直列に整流器250(例えば、ダイオード)を接続してもよい。整流器は、物理的には、加熱プレート内またはいずれかの適当な場所に配置することができる。あるいはこれに代えて、固体スイッチなどの電流ブロック構成を用いてクロストークを防止することができる。
・・・(中略)・・・
【0033】
基板支持アセンブリは、1つまたは複数の追加のヒータ(以下、主ヒータ601と呼ぶ)が組み込まれた追加の電気絶縁層604を含むことができる(図6)。主ヒータ601は、個別に制御される高出力ヒータであることが好ましい。主ヒータの出力は、100~10000Wの間であり、好ましくは1000~5000Wの間である。主ヒータは、矩形格子、同心環状ゾーン、放射状ゾーン、または環状ゾーンと放射状ゾーンの組み合わせとして配置することができる。主ヒータは、平均温度を変更するため、径方向の温度プロファイルを調整するため、あるいは基板上の段階的温度制御のために用いることができる。主ヒータは、加熱プレートのヒータゾーンの上方または下方に配置することができる。」
(b) 「
[図:0001407791000001.jpg]
」
b 引用発明1-1
(a) 段落0023~0025の記載によると、甲1は、基板温度プロファイルが均一ではないことに起因する課題を、独立に制御可能なヒータゾーンを基板支持アセンブリに組み込むことによって、装置が所望の空間的および時間的温度プロファイルを能動的に作り出して維持することを可能にし、ヒータゾーンの出力を調整することで、処理中の温度プロファイルを、径方向と方位の両方に関して具現化することによって解決する装置を開示しているといえる。
(b) 甲1の図6には、セラミック層103(静電固定層)は、単一の部材として示され、また、段落0028の記載を踏まえると、ESCのセラミック層103(静電固定層)は、直流電圧で基板を静電的に固定する表面である上面、及び下面を備えることが見てとれる。
(c) 引用発明1-1
以上を踏まえると、甲1には次の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されているといえる。
「基板温度プロファイルが均一ではないことに起因する課題を、独立に制御可能なヒータゾーンを基板支持アセンブリに組み込むことによって、装置が所望の空間的および時間的温度プロファイルを能動的に作り出して維持することを可能にし、ヒータゾーンの出力を調整することで、処理中の温度プロファイルを、径方向と方位の両方に関して具現化することによって解決する装置であり(上記(a))、
直流電圧で基板をセラミック層103の表面に静電的に固定するための電極102が埋め込まれたセラミック層103(静電固定層)を有するESCを備え(段落0028)、
2つの電気絶縁層104A、104Bに組み込まれたヒータゾーン101のアレイを有する加熱プレート(段落0028)と、
1つまたは複数の主ヒータ601が組み込まれた追加の電気絶縁層604(段落0033)と、を含む
基板支持アセンブリであって、
セラミック層103(静電固定層)は、単一の部材であって、上面及び下面を備え(上記(b))、
電気絶縁層は、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウムなどのセラミックとすることができ(段落0028)、
主ヒータは、平均温度を変更するため、径方向の温度プロファイルを調整するため、あるいは基板上の段階的温度制御のために用いることができ、また、加熱プレートのヒータゾーンの上方または下方に配置することができ(段落0033)、
ヒータゾーンは、例えば、矩形格子、同心環状、または任意の望ましいパターンで配置され、各ヒータゾーンが備えることができる1つまたは複数のヒータエレメントの出力は、5~10Wであり(段落0027)、
ヒータゾーン101のそれぞれは、電力供給ライン201の1つと電力リターンライン202の1つに接続され、どの2つのヒータゾーン101も、同じ電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを共有しておらず、適切な電気的スイッチング構成により、電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを電源に接続することが可能であり、これにより、このライン・ペアに接続されているヒータゾーンのみがオンになる(段落0029)、
基板支持アセンブリ。」
(イ) 甲2の記載と引用発明2-1
a 甲2の記載
甲2(国際公開第2013/033381号)には、次の記載がある。なお、甲2の記載は翻訳文として添付された特表2014-529910号公報の記載を参照して当審が作成した訳文で示す。(下線は、引用箇所を示すため当審が付加した。)
(a) 「背景
[0003]
本項における説明は本開示に関連する背景に関する情報を提供するためのみのものであり、先行技術を構成するものではない。
[0004]
半導体処理技術において、例えば、処理中に基板(あるいはウェハ)を保持して基板に対し均一な温度プロファイルを設定するために、チャックまたはサセプタが用いられる。図1は静電チャック用支持アセンブリ10を示す。支持アセンブリ10は、電極14を組み込んで備える静電チャック12と、通常シリコン接着剤である接着剤層18により静電チャック12に対し接合したヒータプレート16とを含む。ヒータプレート16にはヒータ20が固定されている。ヒータ20は、例えばエッチドフォイルヒータであってもよい。このヒータアセンブリは、冷却板22に対し、上記と同様に、通常はシリコン接着剤である接着剤層24により接合されている。基板26は静電チャック12上に配置されており、また基板26を適切な位置に保持する電極14は、静電電力を生じるよう電圧源(図示せず)に接続されている。無線周波数(Radio Frequency:RF)電源またはマイクロ波電源(図示せず)が、支持アセンブリ10を囲むプラズマリアクタチャンバ内において静電チャック12と結合されていてもよい。このように、ヒータ20は、プラズマ強化膜形成またはエッチングを含む、チャンバ内で行う種々の半導体処理工程中に基板26の温度を維持するために必要な加熱を行う。
[0005]
基板26に対する処理のあらゆる段階において、処理中にエッチングする基板26の変動を低減し総処理時間を短縮するためには、静電チャック12に対する温度プロファイルを厳密に制御することが重要である。数ある適用の中でも特に半導体処理技術において、基板上の温度の均一性を向上する装置および方法の改良が現在も求められている。
・・・(中略)・・・
詳細な説明
[0029]
以下の説明は、本質的に、単に説明のためのものであり、本開示、適用、または用途を限定するものではない。例えば、本開示の以下に示す形態は、半導体処理における使用、および、場合により静電チャックに用いることを目的とする。しかしながら、本開示に記載のヒータおよびシステムは半導体処理における適用に限らず、種々の適用に採用してよいことが理解されるべきである。
[0030]
図2に示すように、本開示の一形態はヒータ50である。ヒータ50は、ベースヒータ層52を含み、ベースヒータ層52に少なくとも一つのヒータ回路54が埋設されている。ベースヒータ層52は、ベースヒータ層52を通して形成した、ヒータ回路54を電源(図示せず)に接続するための少なくとも一つの開口(またはビア)56を有する。ベースヒータ層52は主な加熱を行い、図に示すように、ヒータ層52の近傍に設けたチューニングヒータ層60は、ヒータ50による熱分配の微調整を行う。チューニング層60は、チューニング層60に埋設した複数の個別の発熱体62を含む。発熱体62は個別に制御できるようになっている。チューニング層60には、複数の個別の発熱体62を電源およびコントローラ(図示せず)に接続するための少なくとも一つの開口64が形成されている。更に、図に示すように、ベースヒータ層52とチューニング層60との間に内部キャビティ68を規定するルーティング層66を配している。ヒータ層開口56を通り延伸する第1の電気リードセット70は、ヒータ回路54を電源に接続する。ベースヒータ層52の開口55に加えルーティング層66の内部キャビティ68を通り延伸する第2の電気リードセット72は、複数の発熱体62を電源に接続する。なお、ルーティング層66は省略可能で、ヒータ50は上述構成に替えてルーティング層66を含まない構成を採用することができると理解すべきであり、この場合、ベースヒータ層52およびチューニングヒータ層60のみを含む。
・・・(中略)・・・
[0034]
一形態において、ベースヒータ回路54はインコネル(登録商標)により形成されており、チューニング層発熱体62はニッケル材料により形成されている。更に他の形態において、チューニング層発熱体62は、素子がヒータおよび温度センサとして機能するように、十分な抵抗温度係数を有する材料により形成される。このような制御は、一般に「二線式制御」と呼ばれる。このようなヒータおよびそれらを形成する材料は、本明細書と同一の譲受人による、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,196,295号および係属中の米国特許出願第11/475,534号に開示されている。
・・・(中略)・・・
[0038]
ここで、図3~図5に、(図2を参照して概要を上述した)ベースヒータ層とチューニング層との両方を備えるヒータの形態の一例を、参照番号80を付して示す。ヒータ80はベースプレート(冷却板とも呼ぶ)82を含み、一形態におけるベースプレート82は厚さ約16mmのアルミ板である。一形態において、ベースヒータ84は、弾性接着層86を用いてベースプレート82に固定される。弾性接着は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,073,577号に開示されるものでもよい。本開示の一形態において、基板88は、ベースヒータ84上に設けられており、厚さ約1mmのアルミ材料である。基板88は、必要な量だけ電力をベースヒータ84から損失させるための熱伝導率を有するように設計されている。ベースヒータ84が比較的高い電力を有するので、必要な熱伝導率を備えていない場合、このベースヒータ84は、隣接する構成要素に「証拠」の印(抵抗性回路の痕跡から)を付与し、それによりヒータ系全体の効率を下げる。
[0039]
チューニングヒータ90は、基板88上に設けられ、上述のように弾性接着層94を用いてチャック92に固着されている。一形態において、チャック92は、約2.5mmの厚さを有する酸化アルミニウム材料である。本明細書に記載する材料および寸法は、単に例示のためのものであり、本開示は、本明細書に記載の特定の形態に限らないものであることが理解されるべきである。また、チューニングヒータ90は、ベースヒータ84より低い電力を有し、上述のように、基板88は、チューニングヒータ90に「証拠」の印が付されないように電力をベースヒータ84から損失させる機能を備える。
[0040]
図4はベースヒータ84およびチューニングヒータ90の更なる詳細を示し、図中、ベースヒータ84は、例えば4つの領域を有し、チューニングヒータ90は、例えば18の領域を有する。一形態において、ヒータ80は、寸法450mmのチャックに用いるが、熱分配を高度に調整する能力を有することから、これより寸法の大きいまたは小さいチャックに用いてもよい。また、高精度ヒータ80は、図に示すような積層/平面構成に替えて、チャックの(水平面上の)周辺部(図4中に領域Pとして示す。)、あるいは図3にチューニング層90’として示す上下に平行な位置、またあるいはチャック上のもしくはチャックに沿った個別の所定位置、またあるいは他の構成要素の周辺部もしくは構成要素同士の組合せの周辺部に設けてもよい。また更に、高精度ヒータ80は、半導体処理装置内の他の構成要素の内、プロセスキット、チャンバ壁、チャンバ蓋、ガスライン、およびシャワーヘッドに設けてもよい。また、本明細書および図に示すヒータおよび制御システムはいかなる数の装置に採用してもよく、そのため、ここに例示した半導体ヒータチャック装置は本開示の範囲を何ら限定しないと解釈されるべきことが理解されるべきである。
・・・(中略)・・・
[0059]
本願に記載のチューニング層およびヒータのそれぞれは制御システムにより制御されており、そのような制御システムの種々の形態は、本願と同時に出願され、本明細書と同一の譲受人による、「System and Method for Controlling A Thermal Array」と題した同時係属出願および「Thermal Array System」と題した出願において、その更なる詳細が記載されている。通常、この制御システムは、チューニング層と接続した複数のセットの電源ラインと、電源ラインとチューニング層とに電気的に接続した複数のアドレス可能制御素子とを備えており、この制御素子はチューニング層の領域に対し選択的制御を行う。この制御素子は、例えば閾値電圧スイッチング回路でもよく、この閾値電圧スイッチング回路は半導体スイッチでもよい。この閾値電圧スイッチング回路はパッケージとして実装されてよく、例えば特定用途IC(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)として実装してよい。更に、制御素子は、上述のように、チャックなどの構成要素内に組み込まれていてもよい。これら制御システムおよび関連するアルゴリズムは、上述の同時係属出願においてその更なる詳細が図を参照して説明されているので、明確性のために本願には含めない。」
(b) 「
[図:0001407791000002.jpg]
」
(c) 「
[図:0001407791000003.jpg]
」
(d) 「
[図:0001407791000004.jpg]
」
(e) 「
[図:0001407791000005.jpg]
」
b 引用発明2-1
(a) 段落0005及び0029の記載によると、甲2には、静電チャック12に対する温度プロファイルを厳密に制御し、基板上の温度の均一性を向上させる、静電チャックに用いることを目的としたヒータが記載されているといえる。
(b) 段落0004及び段落0039の記載によると、甲2の図3には、図1に示されるように電極14を組み込んでいる静電チャック12を構成する、酸化アルミニウム材料からなるチャック92が示されているといえる。
また、図3には、チャック92が上面及び下面を備える単一の部材として示されているといえる。
(c) 段落0038、0039の記載によると、甲2の図3には、基板88上に設けられ、チャック92の下方に固着されたチューニングヒータ90、及び、チューニングヒータ90の下方に固着されたベースヒータ84が示されているといえる。
また、段落0040の記載によると、ベースヒータ84は、例えば4つの領域を有し、チューニングヒータ90は、例えば18の領域を有する。
加えて、段落0034の記載によると、ベースヒータ回路54はインコネル(登録商標)により形成されている。
(d) 段落0030の記載によると、ベースヒータ層52は主な加熱を行い、チューニングヒータ層60は、ヒータ50による熱分配の微調整を行い、チューニング層60は、チューニング層60に埋設した複数の個別の発熱体62を含み、発熱体62は個別に制御できるようになっているといえる。
(e) 引用発明2-1
以上を踏まえると、甲2には次の発明(以下「引用発明2-1」という。)が記載されているといえる。
「静電チャック12に対する温度プロファイルを厳密に制御し、基板上の温度の均一性を向上させる静電チャックに用いることを目的としたヒータであって(上記(a))、
電極を組み込み、酸化アルミニウム材料からなり、上面及び下面を備える単一の部材であるチャック92(上記(b))と、
基板88上に設けられ、チャック92の下方に固着された、18の領域を有するチューニングヒータ90、及び、チューニングヒータ90の下方に固着された、インコネル(登録商標)により形成され、4つの領域を有するベースヒータ84を含み(上記(c))、
ベースヒータ層52は主な加熱を行い、チューニングヒータ層60は、ヒータ50による熱分配の微調整を行い、チューニング層60は、チューニング層60に埋設した複数の個別の発熱体62を含み、発熱体62は個別に制御でき(上記(d))、
チューニングヒータ90は、ベースヒータ84より低い電力を有し(段落0039)、
チューニング層と接続した複数のセットの電源ラインと、電源ラインとチューニング層とに電気的に接続した複数のアドレス可能制御素子とを備えており、例えば閾値電圧スイッチング回路でもよい、この制御素子はチューニング層の領域に対し選択的制御を行う(段落0059)、
ヒータ。」
(ウ) 甲3の記載
甲3(特開平11-111823号公報)には、次の記載がある。
a 「【0012】本発明の目的は、基板の面内温度分布が均一な状態でかつ短時間で基板の温度を所定温度に設定可能な基板熱処理装置を提供することである。
・・・(中略)・・・
【0036】図3に示すように、基板支持プレート15の裏面の中央部には1個のペルチェ素子16aが配置され、外周部には複数、図示の例では8個のペルチェ素子16bが配置されている。中央部のペルチェ素子16aと外周部のペルチェ素子16bとはそれぞれ第1温度コントローラ(第1T.C.)28および第2温度コントローラ(第2T.C.)29により個別に制御される。その制御動作については後述する。
【0037】図2において、主加熱部17は、補助加熱部16に接するように配置された中間プレート17aと、中間プレート17aの下面に接するように設けられたヒータ部17bと、ヒータ部17bの下面に接するように配置された放熱プレート17cとを有する。ヒータ部17bはマイカヒータにより構成されている。中間プレート17aはヒータ部17bから発生した熱を均一化して基板支持プレート15に伝えるために設けられている。また、放熱プレート17cはヒータ部17bの熱を冷却部18側に排出するために設けられている。
・・・(中略)・・・
【0054】上記の温度設定処理では、主加熱部17のヒータ部17bと補助加熱部16のペルチェ素子16a,16bとにより基板支持プレート15の温度設定が行われる。補助加熱部16では、中央部のペルチェ素子16aと外周部のペルチェ素子16bとが駆動される。そして、基板支持プレート15の中央部および外周部が均一に昇温される。このため、短時間で基板支持プレート15の温度を設定温度に設定することができる。
・・・(中略)・・・
【0070】このように、第1の実施例による基板加熱装置では、基板支持プレート15の中央部に配置したペルチェ素子16aと外周部に配置したペルチェ素子16bとを異なる温度コントローラを用いて独立に制御している。そして、基板Wの昇降温時には、外周部のペルチェ素子16bに加え、中央部のペルチェ素子16aも動作させることによって基板Wの中央部の温度変化が外周部に比べて遅れることを防止している。これにより、基板Wの面内温度を均一にかつ短時間で所定温度に昇降させることができる。特に、外径が300mmの大径の基板Wに対しても面内温度を均一にかつ短時間で所定温度に昇降させることができる。」
b 「【図2】
[図:0001407791000006.jpg]
」
c 「【図3】
[図:0001407791000007.jpg]
」
d 「【図9】
[図:0001407791000008.jpg]
」
(エ) 甲4の記載と引用発明4
a 甲4の記載
甲4(特表平11-502062号公報)には、次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すため当審が付加した。)
(a) 「発明の名称
多層型の静電チャック及びその製造方法
発明の分野
本発明は、半導体デバイス及びフラットパネルディスプレイの製造に有用な静電チャック装置に関する。」(8ページ2~6行)
(b) 「本発明に係るチャックは、隣り合うセラミック層の間に1又は2以上のヒータ電極を組み込むんだり、他の組のセラミック層の間に配置することができる。・・・(中略)・・・このチャックは様々な方法で製造することができる。例えば、耐火金属の吸着電極/RF電極/ヒータ電極を有する全セラミック層を同時に焼結することができる。」(14ページ7~18行)
b 引用発明4
上記aの記載によると、甲4には次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているといえる。
「吸着電極/RF電極/ヒータ電極を有する全セラミック層を同時に焼結する多層型の静電チャックの製造方法。」
イ 甲1を主引用例とした進歩性欠如について
(ア) 対比
本件発明1と引用発明1-1とを対比する。
a 引用発明1-1のESCは、本件発明1の「静電チャック(ESC)」に対応する。
b 引用発明1-1のESCのセラミック層103(静電固定層)が、誘電体として機能することは技術常識である。
そうすると、引用発明1-1の、「セラミック層103(静電固定層)」は、「セラミック材料から形成された誘電体」といえる。
c 引用発明1-1の上面及び下面を備えるセラミック層103(静電固定層)は、「上面及び下面」を備える点で本件発明1の誘電体と一致する。
d 引用発明1-1のESCのセラミック層103(静電固定層)に埋め込まれた「直流電圧で基板をセラミック層103の表面に静電的に固定するための電極102」は、本件発明1の静電チャック(ESC)が備える「誘電体内に配置されたチャック電極」に相当する。
e 主抵抗ヒータについて
甲1には、「主ヒータ601」をどのようなヒータで構成するのかは開示されていない。
しかしながら、甲1の段落0027に、ヒータゾーンのヒータエレメントとして「抵抗ヒータ」が例示されており、主ヒータ601とヒータゾーン101は、いずれも電気絶縁層に組み込まれていることからすると、引用発明1-1の主ヒータ601も抵抗ヒータで構成されているといえる。
また、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウムなどのセラミックは誘電率が高い材料であるから、「追加の電気絶縁層604」が誘電体といえることは技術常識である。
そうすると、引用発明1-1の追加の電気絶縁層604に組み込まれた「1つまたは複数の主ヒータ601」は、チャック電極が配置された誘電体に配置されたものとはいえず、3つ以上と特定されていないが、単に「誘電体内に配置された主抵抗ヒータ」といえる点で本件発明1の主抵抗ヒータと共通する。
f 2次ヒータについて
(a) 引用発明1-1において、主ヒータは、「加熱プレートのヒータゾーンの上方または下方に配置することができ」るから、「ヒータゾーン101のアレイ」は、本件発明1の「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータ」に対応する。
(b) 上記eと同様に、「2つの電気絶縁層104A、104Bに組み込まれたヒータゾーン101のアレイ」は、チャック電極が配置された誘電体に配置されたものとはいえないが、単に「誘電体内に配置され」ているといえる点で、本件発明1の「複数の2次ヒータ」と共通する。
(c) 引用発明1-1において、「各ヒータゾーンが備えることができる1つまたは複数のヒータエレメントの出力は、5~10W」であるから、引用発明1-1は、「個々の2次ヒータが10W以下で作動」するといえる点で本件発明1と共通する。
g 一致点、相違点1、相違点2
以上を踏まえると本件発明1と引用発明1-1とは次の点で一致し、相違する。
(a) 一致点
「セラミック材料から形成された誘電体であって、誘電体は、
上面及び下面と、
誘電体内に配置されたチャック電極と、を備え
誘電体内に配置された主抵抗ヒータと、
主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータであって、
複数の2次ヒータは誘電体内に配置される複数の2次ヒータとを備え、
個々の2次ヒータが10W以下で作動する、
静電チャック(ESC)。」
(b) 相違点1
本件発明1は、「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」ものであって、主抵抗ヒータの数量を「3つ以上」と特定し、2次ヒータの数量を「主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く」と特定し、「複数の2次ヒータ」の制御態様を、「複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である」と特定しているのに対し、引用発明1-1は、提供する温度均一性の程度について特定がなく、主ヒータ601の数量について「1つまたは複数」とのみ特定し、ヒータゾーン101の、主ヒータ601に対する数量の関係を特定しておらず、また、ヒータゾーンの制御態様について、ヒータゾーンは「独立に制御可能」であり、「ヒータゾーン101のそれぞれは、電力供給ライン201の1つと電力リターンライン202の1つに接続され、どの2つのヒータゾーン101も、同じ電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを共有しておらず、適切な電気的スイッチング構成により、電力供給ライン201と電力リターンライン202のペアを電源に接続することが可能であり、これにより、このライン・ペアに接続されているヒータゾーンのみがオンになる」と特定している点。
(c) 相違点2
本件発明1の「チャック電極」、「3つ以上の主抵抗ヒータ」及び「複数の2次ヒータ」が、「単一の一体塊から形成された誘電体」内に配置されるのに対し、引用発明1-1の「電極102」、「ヒータゾーン101のアレイ」及び「1つまたは複数の主ヒータ601」が、それぞれ、「セラミック層103(静電固定層)」、「追加の電気絶縁層604」及び「2つの電気絶縁層104A、104B」内に配置されている点。
(イ) 相違点の検討
本件明細書等の段落0029の記載によると、本件発明1は、「基板134の表面温度が0.5度ばらつくと、そこでの構造物の形成時、ナノメートルもの差異が生じ得る」という、基板の表面温度の0.5度のばらつきに基づく、構造物の形成時にナノメートル単位の差異が生じるという課題を、「ピクセルヒータ140は、温度プロファイルのばらつきを約+/-0.3℃に低減することによって、主抵抗ヒータ154によって生成される基板134の表面の温度プロファイルを改善する」ことにより解決するという技術的意義を有する発明といえる。
そして、甲1~4のいずれにも、基板の表面温度の0.5度のばらつきに基づく、構造物の形成時にナノメートル単位の差異が生じるという課題は記載されていないから、引用発明1-1において、本件発明1の相違点1に係る「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、本件発明1の相違点1に係る「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成は、上記技術的意義を達成するための構成であるから、当業者が適宜設計し得る事項ともいえない。
したがって、引用発明1-1において、相違点1に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到ではないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1及び請求項1の記載を引用する本件発明2~5は、引用発明1-1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、甲1を主引用例とした進歩性欠如の取消理由2は理由がない。
ウ 甲2を主引用例とした進歩性欠如について
(ア) 対比
本件発明1と引用発明2-1とを対比する。
a 誘電率の高いセラミック材料である酸化アルミニウム材料からなり、静電チャックとして用いられる、引用発明2-1のチャック92は、誘電体として機能することは技術常識である。
そうすると、引用発明2-1の「酸化アルミニウム材料からなり、上面及び下面を備える単一の部材であるチャック92」は、本件発明1の、上面及び下面を備える「セラミック材料から形成された誘電体」に相当する。
b 引用発明2-1のチャック92に組み込まれた「電極」は、本件発明1の「誘電体内に配置されたチャック電極」に相当する。
c 引用発明2-1の、ニッケル合金であるインコネル(登録商標)により形成され、4つの領域を有するベースヒータ84は、抵抗ヒータであることは技術常識であるから、本件発明1の「3つ以上の主抵抗ヒータ」に対応する。
d 引用発明2-1のチューニングヒータ90は、下方にベースヒータ84を固着しているから、ベースヒータ84と「列をなす」といえる。
そうすると、引用発明2-1の、4つの領域を有するベースヒータ84に対して、18の領域を有するチューニングヒータ90は、本件発明1の「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータ」に対応し、「2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く」といえる点で本件発明1と一致する。
e 引用発明2-1の、「チューニング層と接続した複数のセットの電源ラインと、電源ラインとチューニング層とに電気的に接続した複数のアドレス可能制御素子とを備えており、例えば閾値電圧スイッチング回路でもよい、この制御素子はチューニング層の領域に対し選択的制御を行う」ことにより、埋設した複数の個別の発熱体62を個別に制御できるチューニングヒータ90において、任意の発熱体の組み合わせは、他の発熱体とは独立して制御可能であるから、引用発明2-1のチューニングヒータ90は、「複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である」といえる点で、本件発明1の「複数の2次ヒータ」と共通する。
f 一致点、相違点3、相違点4
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明2-1とは次の点で一致し、相違する。
(a) 一致点
「セラミック材から形成された誘電体であって、誘電体は、
上面及び下面と、
誘電体内に配置されたチャック電極とを備え
3つ以上の主抵抗ヒータと、
主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータであって、
2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く、
複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備える静電チャック(ESC)。」
(b) 相違点3
本件発明1の「3つ以上の主抵抗ヒータ」と「複数の2次ヒータ」とが、チャック電極が配置された、セラミック材料の単一の一体塊から形成された誘電体内に配置されるのに対し、引用発明2-1の「ベースヒータ84」と「チューニングヒータ90」とが、「電極を組み込み、酸化アルミニウム材料からなり、上面及び下面を備える単一の部材であるチャック92」内に配置されていない点。
(c) 相違点4
本件発明1が、「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」と特定されているのに対し、引用発明2-1は、「チューニングヒータ90は、ベースヒータ84より低い電力を有し」と特定されているものの、チューニングヒータ90の個別に制御できる発熱体62の作動電力、及び「ベースヒータ84」と「チューニングヒータ90」が提供する温度均一性についての特定がない点。
(イ) 相違点の検討
事案に鑑み相違点4について検討する。
上記イ(イ)のとおり、甲1~4のいずれにも、基板の表面温度の0.5度のばらつきに基づく、構造物の形成時にナノメートル単位の差異が生じるという課題が記載されていないから、引用発明2-1においても、本件発明1の相違点4に係る「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、本件発明1の相違点4に係る「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成は、上記技術的意義を達成するための構成であるから、当業者が適宜設計し得る事項ともいえない。
したがって、引用発明2-1において、相違点4に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到ではないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1及び請求項1の記載を引用する本件発明2~5は、引用発明2-1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、甲2を主引用例とした進歩性欠如の取消理由2は理由がない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、本件発明1の発明特定事項C(「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに 主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」)について次の主張をした。
「このように、甲第1、2号証には、基板の温度均一性を向上させることが課題であると記載されています。
そして、基板の温度均一性を向上させるために 誘電体の上面に配置された基板の温度変化を±0.3℃以下程度に調整することは、当業者が適宜設計しうる事項に過ぎません。
また、甲第1号証には、以下のことが記載されています。
「・・・ヒータエレメントの出力は、好ましくは20W未満であり より好ましくは5~10Wである。・・・」(甲第1号証の段落[0027])
つまり甲第1号証には、個々の2次ヒータに相当するヒータエレメントを10W以下で作動させることが記載されています。
このように、発明特定事項Cは、当業者が適宜設計しうる事項に過ぎず、甲第2号証に対する技術的な特徴ではありません。」(令和5年10月19日提出意見書4ページ下から5行~5ページ7行)
しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明1の相違点4に係る「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成は、「基板134の表面温度が0.5度ばらつくと、そこでの構造物の形成時、ナノメートルもの差異が生じ得る」という、基板の表面温度の0.5度のばらつきに基づく、構造物の形成時にナノメートル単位の差異が生じるという課題を、「ピクセルヒータ140は、温度プロファイルのばらつきを約+/-0.3℃に低減することによって、主抵抗ヒータ154によって生成される基板134の表面の温度プロファイルを改善する」(本件明細書等の段落0029)ことにより解決するという技術的意義を達成するための構成であるから、このような課題の記載がない甲2に記載された引用発明2-1において、当業者が適宜設計し得る事項とはいえない。
また、相違点4に係る本件発明1の「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成は、「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているとき」との条件において「主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」ことを特定したものであるから、その容易想到性は、個々ではなく、一体で判断すべきものである。
そして、甲1、3、4のいずれにも、「個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との構成の開示はなく、相違点4に係る本件発明1の構成は甲1、3、4の開示に基づいて容易想到とはいえない。
したがって、申立人の主張は理由がない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由
申立人は、特許異議申立書において、次の申立理由も主張した。
(1) 申立理由1(サポート要件)
ア 「これに対し、本件特許発明1では、2次ヒータの数量を「複数」(すなわち、2以上)としか規定していない。
例えば、2次ヒータの数量が「2」の場合には、「静電チャックと加熱アセンブリとの間の熱伝達の横方向及び方位角方向双方の調整を可能」にならない。
つまり、本件特許発明2は、「静電チャックと加熱アセンブリとの間の熱伝達の横方向及び方位角方向双方の調整を可能にするピクセル型基板支持アセンプリを提供する」という課題が解決できない場合を含んでいる。
したがって、本件特許発明1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。」(特許異議申立書32ページ最下行~33ページ9行)
イ 「これに対し、本件特許発明1は、「光制御回路220」及び「電力回路210」を含まないものも包含している。
つまり、本件特許1は、「静電チャックと加熱アセンプリとの間の熱伝達の横方向及び方位角方向双方の調整を可能にするピクセル型基板支持アセンブリを提供する」という課題が解決できない場合を含んでいる。
したがって、本件特許発明1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。」(特許異議申立書33ページ下から2行~34ページ6行)
(2) 申立理由2(明確性要件)
ア 「本件特許発明1に記載された「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータ」は、どのような状態なのかが不明確である。」(特許異議申立書34ページ10~11行)
イ 「本件特許発明1に記載された「複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、 1つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータ」は、「1つ以上の主抵抗ヒータと同様に」がどのように「同様」なのかが不明確である。」(特許異議申立書34ページ下から2行~35ページ3行)
2 当審の判断
(1) 申立理由1(サポート要件)について
ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ(ア) 本件明細書等の発明の詳細な説明には、「基板134の表面温度が0.5度ばらつくと、そこでの構造物の形成時、ナノメートルもの差異が生じ得る」(段落0029)と、基板の表面温度の0.5度のばらつきに基づく、構造物の形成時にナノメートル単位の差異が生じるという課題が記載され、本件発明1は、「2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く、
複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータとを備え、個々の2次ヒータが10W以下で作動しているときに、主抵抗ヒータと複数の2次ヒータは、誘電体の上面に配置された基板に±0.3℃以下の温度均一性を提供する」との手段を備えることによって、当業者は、当該課題を解決できると認識できるから、本件発明1~5はサポート要件に適合する。
(イ) 上記1(1)アで申立人は、「例えば、2次ヒータの数量が「2」の場合には、「静電チャックと加熱アセンブリとの間の熱伝達の横方向及び方位角方向双方の調整を可能」にならない。」と主張する。
しかしながら、本件訂正前の請求項1の「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータであって、・・・2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータの数量よりも多く」との記載は、本件訂正請求によって、「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータであって、・・・2次ヒータの数量は、主抵抗ヒータ数量よりも一桁多く」と訂正されたことによって、当業者は、上記課題を解決できると認識できるから、申立人の主張は採用できない。
(ウ) したがって、上記1(1)アの申立理由は理由がない。
ウ 上記1(1)イで申立人は、「光制御回路220」及び「電力回路210」を含まない本件発明1はサポート要件に適合しない旨を主張した。
しかしながら、本件発明1~5において、2次ヒータに作動電力を供給する電力回路、及び当該電力回路を制御する制御回路が必要なことは技術常識であり、また、当該制御回路が光制御回路でなくても電力回路を制御できることは明らかであり、「光制御回路220」及び「電力回路210」を含まない本件発明1~5であっても、当業者は、上記課題を解決できると認識できるから、申立人の主張は採用できない。
したがって、上記1(1)イの申立理由は理由がない。
(2) 申立理由2(明確性要件)について
ア 発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 本件発明1~5は、静電チャック(ESC)の発明として、チャック電極、主抵抗ヒータ、2次ヒータ、誘電体について、それぞれ第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点はなく、また、これらの関係についても不明確とはいえないから、明確性要件に適合する。
特に、本件発明1の「主抵抗ヒータと列をなす複数の2次ヒータ」との発明特定事項については、図4A及び段落0034の記載のとおり、ピクセルヒータ140(2次ヒータ)が主抵抗ヒータ154の下又は上方に配置されることを意味することは明らかであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点はない。
したがって、上記1(2)アの申立理由は理由がない。
ウ 訂正前の「複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、1つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータ」との記載は、本件訂正請求によって「複数の2次ヒータのうちの個々の2次ヒータの各組み合わせは、3つ以上の主抵抗ヒータと同様に、他の全ての個々の2次ヒータのオン状態を変更することなく、オン状態とオフ状態を独立して制御可能である複数の2次ヒータ」と訂正されたことによって、複数の2次ヒータは、同様に3つ以上、すなわち複数の主抵抗ヒータと同様に制御可能と理解でき、また、段落0084の記載及び図9には、2次ヒータ140と主抵抗ヒータ154とが同様に制御されることの開示があるから、本件発明1の主抵抗ヒータと2次ヒータとの制御態様について第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点はない。
したがって、上記1(2)イの申立理由は理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700507