特許異議申立
2022-700358
空気清浄機
- 審判番号
- 2022-700358
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-025077
- 登録番号
- 6958754
- 請求日
- 2022年04月27日
- 審決日
- 2023年06月09日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士電機株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】白井 美登里
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 西村 泰英
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1651.113-YAA(A61L) / P1651.121-YAA(A61L) / P1651.537-YAA(A61L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6958754号発明「空気清浄機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6958754号の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6958754号の請求項1、3-4、6-7に係る特許を維持する。
特許第6958754号の請求項2及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6958754号の請求項1-7に係る特許についての出願は、令和3年2月19日に出願され、令和3年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月2日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 4月27日 : 特許異議申立人 白井 美登里(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1-7に係る特許に対する特許異議の申立て
同 年 7月29日付け: 取消理由通知書
同 年10月 3日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年11月29日 : 特許異議申立人による意見書の提出
令和5年 1月26日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 4月 3日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(以下、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
そして、令和5年4月7日付けの通知書で、特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかったものである。
なお、令和5年4月3日に訂正請求がなされたことにより、令和4年10月3日にした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
2 訂正の適否
(1)本件訂正の内容
特許権者は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、下記訂正事項1-8のとおり、訂正後の請求項1-7について訂正することを求めている。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1にある「板と、を備え、前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる」の記載を、「板と、前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部と、を備え、前記光源は、UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ、前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3、4、6、7も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3にある「前記光源は、前記板に対して前記上流側に配置された、請求項1又は2に記載の空気清浄機。」の記載を、「前記光源は、前記板に対して前記上流側に配置された、請求項1に記載の空気清浄機。」と訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4にある「前記光源は、前記流れ方向に離れた複数の箇所に配置された、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気清浄機。」の記載を、「前記光源は、前記流れ方向に離れた複数の箇所に配置された、請求項1又は3に記載の空気清浄機。」と訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6にある「前記流れ方向における上流側から下流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の空気清浄機。」の記載を、「前記流れ方向における上流側から下流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源を備える、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の空気清浄機。」と訂正する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7にある「前記板は、前記ダクト内の空気が通過する貫通孔を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の空気清浄機。」の記載を、「前記板は、前記ダクト内の空気が通過する貫通孔を有する、請求項1,3,4,6のいずれか一項に記載の空気清浄機。」に訂正する。
ク 訂正事項8
明細書の【0007】に
「本開示の一態様では、
吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、
前記ダクト内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源と、
前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、
前記ダクト内の空気が前記光源に対して前記上流側に流れるように、前記ファンに対し前記上流側に配置された板と、を備え、
前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる、空気清浄機が提供される。」
と記載されているのを、
「本開示の一態様では、
吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、
前記ダクト内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源と、
前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、
前記ダクト内の空気が前記光源に対して前記上流側に流れるように、前記ファンに対し前記上流側に配置された板と、
前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部と、を備え、
前記光源は、UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、
オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ、
前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる、空気清浄機が提供される。」
に訂正する。
なお、訂正前の請求項1-7について、請求項2-7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1-7に対応する訂正後の請求項1-7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の「空気清浄機」が「備え」るとした対象に、「前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部」を追加すると共に、「前記ダクト内に紫外線を照射する光源」に対して、「UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ」るとした事項をさらに特定しようとする訂正であると認められる。
そして、「空気清浄機」が「電気集塵部」を「備え」ること、「光源」が「UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ」ることについては、いずれも前者については特許明細書の【0013】及び【0015】に記載され、後者については【0060】-【0061】に記載がされている。
そうすると、当該訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、請求項3が引用する請求項が、訂正前は請求項1又は2であったものを、訂正事項2により請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項を請求項1にするとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項4についての訂正は、請求項4が引用する請求項が、訂正前は請求項1から3のいずれか一項であったものを、訂正事項2により請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項を請求項1又は3にするとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項5について
訂正事項5は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 訂正事項6について
訂正事項6に係る請求項6についての訂正は、請求項6が引用する請求項が、訂正前は請求項1から5のいずれか一項であったものを、訂正事項2、5により請求項2及び5が削除されたことに伴い、引用する請求項を請求項1、3、4のいずれか一項にするとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ 訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項7についての訂正は、請求項7が引用する請求項が、訂正前は請求項1から6のいずれか一項であったものを、訂正事項2、5により請求項2及び5が削除されたことに伴い、引用する請求項を請求項1、3、4、6のいずれか一項にするとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ク 訂正事項8について
訂正事項8に係る明細書についての訂正は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、上記アで示したとおり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項8によって訂正された明細書の段落【0007】は、訂正後の請求項1に対応する記載になっている。
そして、上記(1)で述べたように、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。したがって、訂正後の請求項1ないし7が、訂正事項8による明細書の訂正と関係する請求項である。
よって、訂正事項8は、明細書の訂正と関係する請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。
(3)小括
上記のとおり、本件訂正の訂正事項1-8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
3 取消理由の概要
(1)訂正前の請求項1-4、6、7に係る特許に対して、当審が令和4年7月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の請求項2-4、6-7の記載が、請求項1の記載との関係で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由3(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<理由2及び3に関する請求項と刊行物の対応関係一覧>
●理由2
請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明である。
請求項1、3、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載の発明である。
請求項1、3、7に係る発明は、甲第3号証に記載の発明である。
請求項1及び3に係る発明は、甲第4号証に記載の発明である。
請求項1、3、4に係る発明は、甲第5号証に記載の発明である。
請求項1及び3に係る発明は、甲第6号証に記載の発明である。
●理由3
請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項1、3、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項1、3、7に係る発明は、甲第3号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項1及び3に係る発明は、甲第4号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項1、3、4に係る発明は、甲第5号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項1及び3に係る発明は、甲第6号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載の発明、甲第5号証に記載の事項、及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項6に係る発明は、甲第3号証に記載の発明、甲第5号証に記載の事項、及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項4に係る発明は、甲第4号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項6に係る発明は、甲第4号証に記載の発明、甲第5号証に記載の事項、及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項7に係る発明は、甲第4号証に記載の発明、甲第5号証に記載の事項、甲第2号証に記載の事項並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項6に係る発明は、甲第5号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項7に係る発明は、甲第5号証に記載の発明、甲第2号証に記載の事項並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項4に係る発明は、甲第6号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
請求項6に係る発明は、甲第6号証に記載の発明、甲第5号証に記載の事項、及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた。
<引用した刊行物等一覧>
甲第1号証:韓国公開特許第10-2016-0001543号公報
甲第2号証:特開2008-104739号公報
甲第3号証:特開2009-247546号公報
甲第4号証:特表2020-517367号公報
甲第5号証:特開2009-72430号公報
甲第6号証:特開2006-280428号公報
(2)また、当審が令和5年1月26日付けで、取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
●理由1(明確性)について
請求項5に係る発明は明確でないから、請求項5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
●理由2(進歩性)について
請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明及び、参考文献1に記載の事項又は甲第6号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、訂正発明4及び6は、甲第1号証に記載の発明、参考文献1に記載の事項又は甲第6号証に記載の事項、及び、甲第2号証に記載の事項、甲第5号証に記載の事項又は参考文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、請求項1、3、4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、3、4、6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
<引用した刊行物等一覧>
甲第1号証:上記甲第1号証
参考文献1:特開平11-309202号公報(特許異議申立人が令和4年11月29日に提出した意見書に添付した文献であって、基板にスリットや孔を設けることが技術常識であることを示す文献)
甲第6号証:上記甲第6号証
甲第2号証:上記甲第2号証
甲第5号証:上記甲第5号証
参考文献2:特開2006-346676号公報(同じく特許異議申立人が添付した技術常識を示す文献)
4 当審の判断
まず始めに、本件訂正後の特許請求の範囲を確認した上で、当審が通知した取消理由を、決定の予告での指摘事項を最初に、最初の取消理由通知の指摘事項を次にとした順にて検討する。
4-1 訂正後の請求項1-7に係る発明
本件訂正後の請求項1-7に係る発明(以下、各々「訂正発明1」、「訂正発明3」などという。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、
前記ダクト内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源と、
前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、
前記ダクト内の空気が前記光源に対して前記上流側に流れるように、前記ファンに対し前記上流側に配置された板と、
前記ダク卜内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部と、を備え、
前記光源は、UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、
オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ、
前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる、空気清浄機。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
前記光源は、前記板に対して前記上流側に配置された、請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記光源は、前記流れ方向に離れた複数の箇所に配置された、請求項1又は3に記載の空気清浄機。
【請求項5】 (削除)
【請求項6】
前記流れ方向における上流側から下流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源を備える、請求項1,3,4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記板は、前記ダクト内の空気が通過する貫通孔を有する、請求項1,3,4,6のいずれか一項に記載の空気清浄機。」
4-2 引用文献の記載・各甲号証記載の発明
最初の取消理由通知、及び、取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第1号証ないし第6号証、及び、参考文献1、2には、最初の取消理由通知、及び、取消理由通知(決定の予告)によれば、各々以下の、発明(以下、「甲1発明」、「甲2発明」等という)、技術的事項(以下、「参考1記載事項」などという。)が記載されている。
【甲1発明】
空気流入口(11)から空気吐出口(12)に空気を流すハウジング(10)と、([0017]、[0018])
前記ハウジング(10)内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ハウジング(10)内に紫外線を照射する発光ダイオード部(30)の紫外線放出部(33)と、([0031]-[0034]、図2)
前記ハウジング(10)内から前記空気吐出口(12)に空気を排出するファン部(60)と、([0034]、[0035]、[0040])
前記ファン部(60)に対し前記上流側に配置された前記発光ダイオード部(30)の支持部材(32)と、([0032]、[0034]、図2、図3)を備え、
前記紫外線放出部(33)は前記支持部材(32)の前記上流側に配置されている、([0032]、図2、図3)空気清浄器([0016])。
【甲2発明】
流入口1aから排出口1bに空気を流す筐体1と、(【0031】)
前記筐体1内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記筐体1内に紫外線を照射する発光体3の光源としてのLED4と、(【0009】、【0039】-【0041】、【0048】、図1、図2)
前記筐体1内から前記排出口1bに空気を排出する送風機5と、(【0043】、【0049】)
前記送風機5に対し前記上流側に配置された前記発光体3の基板15と、を備え、(【0039】、【0040】、図1、図2)
前記LED4は前記基板15の前記上流側に配置されており(【0040】、図1、図2)、前記基板15は、前記送風機5に向かう空気を迂回させる(【0049】、図1、図2)、空気浄化装置(【0031】)。
【甲3発明】
入口1から出口7に空気を流すケース10と、(【0029】)
前記ケース10内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ケース10内に紫外線を照射する照明部3の光源4と、(【0030】、【0031】、図1)
前記ケース10内から前記出口7に空気を排出する送風機5と、(【0029】、【0032】)
前記送風機5に対し前記上流側に配置された照明部3の基板と、を備え、(【0031】、図1)
前記光源4は前記基板の前記上流側に配置されており(【0031】、図1)、前記基板は、前記送風機5に向かう空気を迂回させる(【0032】、図1)、空気浄化装置(【0025】)。
【甲4発明】
吸入口(111)から排出口(115)に空気を流すハウジング(110)と、(【0036】)
前記ハウジング(110)内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ハウジング(110)内に紫外線を照射する光源モジュール(140)の紫外線光源(142)と、(【0043】-【0045】、図1、図4)
前記ハウジング(110)内から前記排出口(115)に空気を排出するファン(120)と、(【0038】)
前記ファン(120)に対し前記上流側に配置された基板(141)と、(【0043】、図1、図4)を備え、
前記紫外線光源(142)は前記基板(141)の前記上流側に配置されている、(【0045】、図1、図4)空気を脱臭及び殺菌する脱臭モジュール(100)(【0034】、【0047】)。
【甲5発明】
吸気口21から排気口23に空気を流すケース本体11と、(【0010】、【0011】)
前記ケース本体11内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ケース本体11内に紫外線を照射する光照射部14a,14bの指向性光源142と、(【0025】、【0026】、【0030】、【0038】、図1、図4)
前記ケース本体11内から前記排気口23に空気を排出する送風部16としてのファンと、(【0024】)
前記ファンに対し前記上流側に配置された基板141と、(【0024】、【0030】、図1、図4)を備え、
前記指向性光源142は前記基板141の前記上流側に配置されている、(【0030】、図1)空気清浄装置10(【0010】)。
【甲6発明】
吸気側から排気側に空気を流す本体50及び吸込みパネル55と、(【0029】、【0043】-【0048】、図2、図5)
前記本体50及び吸込みパネル55内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、縦位置で複数のLED(発光ダイオード)チップ14を設置した基板11を水平方向に所定の間隔にて設けた、前記本体50内に紫外光を発光する光源モジュール10と、(【0027】、【0028】、図1、図2、図5)
前記本体50及び吸込みパネル55内から前記排気側に空気を排出するファン51と、(【0045】、図5)
前記ファン51に対し前記上流側に配置された前記光源モジュール10の基板11と、(【0028】、図2、図5)を備え、
前記LEDチップ14は前記基板11の前記上流側に配置されている、(【0028】、図2、図5)空気清浄設備200(【0043】)。
【参考1記載事項】
空気清浄機にて空気流の下流側に置かれ、上流側に置かれたフィルター8へ向けて光を照射する光源を配置するLED碁盤目状ユニット6は、基板2上に碁盤目状に配置した小さなLED1間を空気7aが容易に貫通できる細長いスリット状の流路孔9を該基板2に設けており、清浄化された空気7は流路スリット10を通過して排気されること。(【0016】~【0019】、【図5】、【図8】)
「
[図:0001401614000001.jpg]
」
「
[図:0001401614000002.jpg]
」
【参考2記載事項】
入口106から出口108に向かって空気が流れるチャンバ102内に、向かい合って収納、設置される多孔板104を備えた空気浄化システム100であって、該多孔板104は、UV光エミッタ202をアレイの形に配置し、かつ、UV光エミッタ202の列の間に流体を通過させる穿孔204を有すること。(【0007】~【0009】、【図1】、【図2】)
「【図1】
[図:0001401614000003.jpg]
」
「【図2】
[図:0001401614000004.jpg]
」
4-3 取消理由通知書(決定の予告)での指摘事項について
(1)理由1(明確性)についての検討
上記理由1を検討する。
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、本件訂正により請求項5が削除された結果、請求項同士で矛盾する記載は見当たらず、また、その記載に不明瞭なところもない。よって、決定の予告で指摘した記載不備は解消され、取り消すべき理由はない。
(2)理由2(進歩性)についての検討
ア 訂正発明1と甲1発明との対比
訂正発明1と引用発明とを対比する。
甲1発明の「空気流入口(11)」、「空気吐出口(12)」、「ハウジング(10)」、「発光ダイオード部(30)の紫外線放出部(33)」、「ファン部(60)」、「空気清浄器」は、それぞれ、訂正発明1の「吸い込み口」、「吹き出し口」、「ダクト」、「光源」、「ファン」、「空気清浄機」に相当する。
また、甲1発明の「発光ダイオード部(30)の支持部材(32)」は、甲1発明において、紫外線放出部(33)は支持部材(32)の上流側に配置されていることから、ハウジング(10)内の空気は紫外線放出部(33)の上流側に流れると解され、さらに、甲1発明において、支持部材(32)は、ファン部(60)に対して上流側に配置されていることから、ファン部(60)に向かう空気を迂回させるものであると解されるため、訂正発明1の「前記ダクト内の空気が前記光源に対して前記上流側に流れるように、前記ファンに対し前記上流側に配置された板」でありかつ「前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる」ことに相当する。
以上まとめると、両発明は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、
前記ダクト内の空気の流れ方向における下流側から上流側に向けて、前記ダクト内に紫外線を照射する光源と、
前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、
前記ダクト内の空気が前記光源に対して前記上流側に流れるように、前記ファンに対し前記上流側に配置され、前記ファンに向かう空気を迂回させる板と、を備え、
前記板は、前記ファンに向かう空気を迂回させる、空気清浄機。
[相違点]
訂正発明1の「空気清浄機」は、「前記ダク卜内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部」を「備え」、「前記光源は、UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ」るという事項を有するのに対し、甲1発明の「空気清浄器」は、電気集塵部を有さず、「発光ダイオード部(30)」はあるものの、訂正発明1で特定するとおりの技術的事項は特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
当該相違点のうち、「光源」に関し、波長が異なる、UV-B、UV-Cの2種類の紫外光を発する光源を用いること、また、オゾン発生量に応じてUV-Bの照射出力を変化させるとした事項は、特許異議申立人が提出した甲第1号証ないし第8号証、参考文献1ないし2のいずれの証拠にも記載されていない。また、かかる事項は、本件特許の出願前に当業者に周知の技術的事項でもない。
そうすると、電気集塵部を備えるとした相違を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1発明及びその他の全証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲1発明及びその他の全証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 訂正発明3-4,6-7について
訂正発明3-4,6-7は、訂正発明1の構成を他の事項に置き換えることなく、その一部について更なる特定事項を追加したものである。
そうすると、上記訂正発明1で述べたとおり、上記相違点に係る発明特定事項が当業者に容易想到でないとされた以上、訂正発明3-4,6-7も同様の点で当業者に容易想到でない。
(3)小括
以上まとめると、訂正発明1,3-4,6-7に係る特許は、取消理由(決定の予告)に示した理由によっては、取り消すことができない。
4-4 最初の取消理由通知での指摘事項について
令和4年7月29日付けで通知した取消理由は、理由1(明確性)、理由2(新規性)、理由3(進歩性)の3点である。
なお、請求項2は、請求項1の特定内容から見て、「前記板は、前記ファンに向かう空気を、前記光源に対して前記上流側に迂回させる」とした記載の意味が明確ではないとした理由1により、理由2ないし3の検討から外されている。
(1)理由1についての検討
本件訂正により、請求項2は削除された結果、最初の取消理由通知の理由1は解消された。
(2)理由2,3についての検討
本件訂正により、訂正発明1、3-4、6-7には、「前記ダク卜内の空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する電気集塵部」を「備え」、「前記光源は、UV-Cを照射する第1光源と、波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源と、を含み、オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させ」るという事項が追加された。
その結果、訂正発明1、3-4、6-7は、甲1発明ないし甲6発明と明らかな相違が生じたため、理由2はもはや成り立たない。
また、本件訂正により追加された上記相違点に係る発明特定事項は、特許異議申立人が提出した甲第1ないし8号証、参考文献1ないし2のいずれの証拠にも記載されていない。また、かかる事項は、本件特許の出願前に当業者に周知の技術的事項でもない。
そうすると、理由3はもはや成り立たない。
4-5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書にて、甲1発明から甲6発明の各々を主たる発明として、本件特許の請求項1-7に係る発明と対比しつつ、以下の理由にて本件特許を取り消すべきと主張している。
理由1(新規性) 請求項1、2、3、4、6、7に係る発明は、甲第1号証~第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により取り消されるべきである。
対応関係は以下のとおり。
甲1発明は、請求項1、2、3、7に係る発明と差異がない。(特許異議申立書29ページ下から13行~32ページ8行)
甲2発明は、請求項1、2、3、4、6に係る発明と差異がない。(同32ページ9行~34ページ7行)
甲3発明は、請求項1、2、3に係る発明と差異がない。(同34ページ下から8行~35ページ下から5行)
甲4発明は、請求項1、2、3に係る発明と差異がない。(同37ページ10行~38ページ下から3行)
甲5発明は、請求項1、2、3、4に係る発明と差異がない。(同40ページ9行~42ページ2行)
甲6発明は、請求項1、2、3に係る発明と差異がない。(同43ページ4行~44ページ下から7行)
理由2(進歩性) 請求項1-7に係る発明は、甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に、自明または公知の作用、または公知の構成を追加したにすぎず、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により取り消されるべきである。
当審の審理では、令和4年7月29日付け取消理由通知にて、甲1発明から甲6発明を主たる引用発明として、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)を採り上げ、令和5年1月26日付け取消理由通知(決定の予告)にて、甲1発明を主たる引用発明とし、参考1記載事項ないし甲6記載事項、甲2記載事項、甲5記載事項ないし参考2記載事項に基く進歩性の取消理由を採用した。
ア 検討・判断
上記4-3(2)イ 判断で示したとおり、本件訂正により訂正発明1、3-4、6-7に追加された「電気集塵部」、「UV-Cを照射する第1光源」及び「波長がUV-Cよりも長いUV-Bを照射する第2光源」並びに「オゾンセンサで検知されたオゾン発生量に応じて、UV-Bの照射出力を変化させる」とした事項は、甲第1~8号証、参考文献1及び2のいずれにも開示がなく、当業者に自明な事項あるいは技術常識でもないから、特許異議申立人が申し立てた理由のうち、採用しなかった理由は、理由1(新規性)、理由2(進歩性)のいずれも成り立たない。
5 むすび
以上のとおり、本件訂正後の請求項1、3-4、6-7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、3-4、6-7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2及び5は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2及び5に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700358