2022-700504
デバイス用接着シート
- 審判番号
- 2022-700504
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-521547外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6980153
- 請求日
- 2022年06月13日
- 審決日
- 2023年12月12日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.113-YAA(C09J) / P1652.121-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第6項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1 手続の経緯
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特許第6980153号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年9月29日(優先権主張 令和元年10月30日、令和2年3月13日、いずれも日本国)を国際出願日とする出願であり、令和3年11月18日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行されたものであって、その特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和4年 6月13日 特許異議申立書(特許異議申立人 合同会社SAS(以下「申立人」という。)による請求項1、2、4~7に対する特許異議の申立て)
令和4年 9月28日 上申書(申立人)
同年10月13日付け 取消理由通知書
同年11月16日 面接(特許権者)
同年12月14日 意見書(特許権者)
令和5年 1月19日 上申書(申立人)
同年 3月22日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月24日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 5月31日付け 訂正請求があった旨の通知書
令和5年5月31日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年5月24日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の(1)~(13)のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
【請求項1】を削除する。
(2)訂正事項2
【請求項2】に、
「さらに、下記(C)成分を含有する、請求項1に記載のデバイス用接着シート。(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」と記載されているのを、
「下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(C)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上であり、(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上である、デバイス用接着シート。(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、エポキシ基を2つ有する脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物、又は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物【化1】[図:0001407790000001.jpg](式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」に訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
【請求項3】に、
「さらに、下記(D)成分を含有する、請求項1又は2に記載のデバイス用接着シート。(D)成分:カチオン重合開始剤」と記載されているのを、
「下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(D)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上である、デバイス用接着シート。(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、エポキシ基を2つ有する脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物、又は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物【化2】[図:0001407790000002.jpg](式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(D)成分:カチオン重合開始剤」に訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
【請求項4】に、
「・・・請求項1~3のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」と記載されているのを、
「・・・請求項2又は3に記載のデバイス用接着シート。」に訂正する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
【請求項5】に、
「・・・請求項1~4のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」と記載されているのを、
「・・・請求項2~4のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」に訂正する。
請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
【請求項6】に、
「・・・請求項1~5のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」と記載されているのを、
「・・・請求項2~5のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
【請求項7】に、
「・・・請求項1~6のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」と記載されているのを、
「・・・請求項2~6のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」に訂正する。
2 一群の請求項等
本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~7は一群の請求項である。そうすると、本件訂正は一群の請求項ごとにされた訂正である。
なお、引用形式を解消した請求項2、3について、別の訂正単位とする求めはなされていない。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合したものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の「(C)成分」について、「(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上である」とする訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2に、訂正前の請求項1の特定事項を取り込んで独立形式とする訂正事項は、請求項1が削除されたことに伴い、請求項2が請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(ウ)そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
(ア)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の「(C)成分」を限定する訂正事項は、本件特許の明細書の【0080】の「バインダー樹脂(C)の含有量は、硬化性接着剤層全体に対して、好ましくは40~90質量%、より好ましくは45~80質量%である。」との記載に基くものである。
(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項1の特定事項を請求項2に取り込む訂正事項は、その訂正事項により新たな技術事項を導入するものではない。
(ウ)そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」ともいう。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
訂正事項2は、前記ア及びイで説明したとおり、請求項2の「(C)成分」の含有量を限定するものであり、また、請求項2が請求項1の記載を引用しないものとするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項3のうち、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたものを、実質的に請求項1を引用するもののみとする訂正事項は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項3のうち、訂正前の請求項3に、訂正前の請求項1の特定事項を取り込んで、独立形式とする訂正事項は、請求項1が削除されたことに伴い、請求項3が請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(ウ)そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正前の請求項1の特定事項を請求項3に取り込むものであって、実質的に訂正前の請求項1を引用する請求項3と同じであるから、新たな技術事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
そうすると、訂正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものといえる。
(4)訂正事項4~7について
訂正事項4~7は、請求項1が削除されたことに伴い、引用する複数の請求項のうちから、請求項1を除く訂正事項であるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
したがって、訂正事項4~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合したものである。
4 独立特許要件について
(1)独立特許要件の課されない請求項
本件訂正においては、訂正前の請求項である請求項1、2、4~7に対して特許異議の申立てがされているので、請求項1、2、4~7については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されない。
(2)独立特許要件の課される請求項
前記3(3)で検討した訂正事項3に係る訂正後の請求項3に係る発明は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正事項に係るもの、かつ特許異議の申立てがされていない請求項に係る発明であるので、独立特許要件について検討する。
訂正後の請求項3に係る発明と、後記第5の2に示す甲1~甲3に記載された発明とは、少なくとも「硬化性接着剤層にカチオン重合開始剤を含有する」との特定がされていない点で相違するが、甲1~甲3には、硬化性接着剤にカチオン重合剤を含有させることを示唆する記載がなく、また含有させる動機付けや技術常識も存在しない。そのため、訂正後の請求項3に係る発明は、甲1~甲3に接した当業者であっても容易に想到し得たものとはいえない。加えて、申立人は、訂正後の請求項3に係る発明が独立特許要件を満たしていないとする理由を示していない。
よって、訂正後の請求項3に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たすものである。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明等
1 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された請求項のうち、特許異議の申立ての対象である請求項1、2、4~7に係る発明(以下、番号順に「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)【請求項2】下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(C)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上であり、(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上である、デバイス用接着シート。続きを表示(全11行)(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、エポキシ基を2つ有する脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物、又は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物【化1】[図:0001407790000003.jpg](式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」
「【請求項4】前記(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上30質量%以下である、請求項2又は3に記載のデバイス用接着シート。【請求項5】硬化性接着剤層の硬化物の、23℃、周波数1GHzにおける誘電正接が、0.0050未満である、請求項2~4のいずれかに記載のデバイス用接着シート。【請求項6】接着シートを幅50mm長さ150mmの試験片とし、得られた試験片の接着剤層を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で無アルカリガラスに重ね、さらに60℃に加温した圧着ロールを用いて0.5MPaの圧力を加えた場合、前記接着剤層の無アルカリガラスからの浮きが無いものである、請求項2~5のいずれかに記載のデバイス用接着シート。【請求項7】回路基板を構成する接着剤硬化物層の形成に用いられる、請求項2~6のいずれかに記載のデバイス用接着シート。」
2 本件特許の明細書
本件特許の明細書には、次の記載がある。
(1)「【0036】イソシアヌレート骨格を有する硬化性化合物(Aβ)としては、下記式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。【0037】【化3】続きを表示(全12行)[図:0001407790000004.jpg]・・・【0039】式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。・・・【0049】硬化性化合物(Aβ)としては、市販品を用いることができる。例えば、式(1)で表される化合物としては、L-DAIC(四国化成工業社製)が挙げられる。・・・」
(2)「【0073】変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、OPE-2St(両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、OPE-2Gly(両末端にエポキシ基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、OPE-2EA(両末端にアクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、以上、三菱ガス化学社製)、Noryl SA9000(両末端にメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、SABIC社製)等が挙げられる。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
1 本件特許発明の優先権主張の効果の有効性
本件特許発明1に関し、本件特許発明1の発明特定事項のうち、「(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物」の選択肢として記載された「末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物
【化1】
[図:0001407790000005.jpg]
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)」については、本件特許出願の最先の優先権基礎出願(令和元年10月30日に出願された特願2019-196917号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、その後の優先権基礎出願(令和2年3月13日に出願された特願2020-43698号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている。そのため、本件特許発明1のうち、「(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物」が「末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物
【化1】
[図:0001407790000006.jpg]
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)」の部分については、最先の優先権基礎出願(特願2019-196917号)による優先権主張は認められず、その後の優先権基礎出願(特願2020-43698号)による優先権主張が認められる。
したがって、本件特許発明1の前記部分、及び本件特許発明2、4~7のうち、本件特許発明1の前記部分を引用する発明については、特願2020-43698号の出願日である令和2年3月13日(以下「第2優先日」という。)が、特許法第29条の規定の適用についての基準日となる。
2 令和5年2月9日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要(進歩性)
本件特許発明1、2、4~7は、本件特許出願の第2優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記第5の甲1~甲3のいずれかに記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由で採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要(新規性)
本件特許発明1、2、4~7は、本件特許出願の第2優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記第5の甲1~甲3のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 申立人が提出した証拠方法
1 甲号証
申立人は、特許異議の申立ての証拠方法として、甲第1号証~甲第16号証(以下、番号順に「甲1」等ともいう。)を提出するとともに、令和4年9月28日の上申書に添付して、参考資料1~参考資料5を提出した。
また、当審において、引用文献17~引用文献19を追加した。
甲1~甲14、甲16、参考資料3、参考資料5、及び引用文献17~引用文献19は、いずれも、第2優先日である令和2年3月13日より前に公開されたものである。
なお、参考資料1~参考資料5は、本件特許異議の申立てと直接的な関係のない資料なので、摘記を省略した。また、引用文献17~引用文献19は、令和5年3月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、甲2又は甲3に記載された発明のTAICに代えてL-DAICを採用する際の阻害要因を検討するために引用したものであるが、本異議決定では前記阻害要因について検討しないので、摘記を省略した。
<https://web.archive.org/web/20191106182201/http:/www.shikoku.co.jp/products/chemical/fine-chemical/allyl.php>
<https://web.archive.org/web/20191106184401/http:/www.shikoku.co.jp:80/products/chemical/fine-chemical/ >
引用文献19(=参考資料3):友井正男、熱硬化性樹脂の基礎、エレクトロニクス実装学会誌、Vol.4 No.6(2001)、第537~542頁
2 甲号証等の記載
(1)甲1には、次の記載がある。
1a「
[図:0001407790000007.jpg]
[図:0001407790000008.jpg]
」(第1~2頁)
(2)甲2には、次の記載がある。
2a「[請求項1] 成分(A)として主鎖の末端のヒドロキシル基がエチレン性不飽和化合物で変性されたポリフェニレンエーテルと、成分(B)としてヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂と、成分(C)としてトリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートの少なくとも1種と、成分(D)として有機過酸化物とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
・・・
[請求項5] 請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物と、基材とで構成されていることを特徴とするプリプレグ。
[請求項6] 請求項5に記載のプリプレグの表面に導電性金属箔を備えることを特徴とする金属張積層板。
[請求項7] 前記プリプレグ中の樹脂組成物は、前記成分(A)と前記成分(B)と前記成分(C)と前記成分(D)との架橋物を含有することを特徴とする請求項6に記載の金属張積層板。
[請求項8] 複数の絶縁層と該絶縁層間に配置された導体層とを具備し、前記絶縁層が、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物と基材とで構成されていることを特徴とする配線基板。」
2b「技術分野
[0001] 本発明は、樹脂組成物、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、金属張積層板および配線基板に関する。」
2c「[0009] 本開示の樹脂組成物に用いられる成分(A)は特に限定されず、例えば下記の式(I)で示される化合物などが挙げられる。式(I)で示される化合物は、例えば特許第4913970号に記載されている。
[0010]
[図:0001407790000009.jpg]
[0011] 式(I)中、R1~R11は、水素原子、もしくは置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数が1~8個の直鎖または分岐アルキル基、炭素数が2~8個の直鎖または分岐アルケニル基、炭素数が2~8個の直鎖または分岐アルキニル基、および炭素数が6~10個のアリール基のいずれかである。」
2d「[0015] 本開示の樹脂組成物に用いられる成分(B)は低誘電率・低誘電正接成分として作用し、低分子量であるために、成分(B)は成分(A)と成分(C)との混合物に混和する。混和した際にトリアリルイソシアヌレートもしくはトリアリルシアヌレートのカルボニル基と、オレフィン樹脂の変性基であるヒドロキシル基もしくはカルボキシル基とが水素結合し、未反応の成分(C)の置換基、および成分(A)と成分(C)との架橋物中の未架橋部の置換基が、高周波環境下において運動することを抑制するため、成分(B)の材料としての優れた高周波特性と相まって、優れた高周波特性が発揮される。成分(B)としては、例えばシクロオレフィンコポリマー、ポリメチルペンテンなどがあげられる。
[0016] 成分(B)の含有量は特に限定されず、成分(A)と、成分(B)と、後述の成分(C)と、後述の成分(D)との合計量を100質量%としたときに、成分(B)は2.0~20.0質量%含有することができる。成分(B)がこのような割合で含まれることによって、誘電率、誘電正接を低減できる。成分(B)は、2.0~10.0質量%の割合で含むことができる。」
2e「[0017] 本開示の樹脂組成物に用いられる成分(C)は架橋剤として作用し、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートのうちの一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートから選択される少なくとも1種を用いることによって、優れた高周波特性および耐熱性が発揮される。
[0018] 成分(C)の含有量は特に限定されず、成分(A)と成分(B)と成分(C)と、後述の成分(D)との合計量を100質量%としたときに、成分(C)は9.9~70質量%含有することができる。成分(C)がこのような割合で含まれることによって、高い耐熱性が発揮される。成分(C)は、20~50質量%の割合で含むことができる。」
2f「[0030] 次に、本開示のプリプレグについて説明する。本開示のプリプレグは、本開示の樹脂組成物と、基材とを含む。例えば、本開示の樹脂組成物を常法に従って基材に塗布または含浸後、乾燥して得られる。基材としては、例えば、ガラス、ポリイミドなど繊維の織布または不織布、紙などが挙げられる。ガラスの材質は、通常のEガラスの他、Dガラス、Sガラス、クォーツガラスなどが挙げられる。」
2g「[0037] 次に、本開示の金属張積層板について説明する。本開示の金属張積層板は、本開示のプリプレグの表面に導電性金属箔を備えている。例えば、本開示の金属張積層板は、本開示のプリプレグと導電性金属箔とを重ね合わせ加熱加圧成形して得られる。導電性金属箔としては特に限定されず、例えば、電解銅箔、圧延銅箔などの銅箔、アルミニウム箔、これらの金属箔を重ね合わせた複合箔などが挙げられる。これらの導電性金属箔の中でも、銅箔が好ましい。導電性金属箔の厚みは特に限定されず、5~105μm程度のものを使用できる。本開示の金属張積層板は、本開示のプリプレグと導電性金属箔とをそれぞれ所望の枚数重ね合わせ、加熱加圧成形しても得られる。本開示の金属張積層板は、例えばプリント基板などに用いられる。
[0038] 次に、本開示の配線基板について説明する。本開示の配線基板は、複数の絶縁層と該絶縁層間に配置された導体層とを具備しており、絶縁層が本開示の樹脂組成物と基材とで形成されている。
[0039] 本開示の配線基板は、例えば、本開示の金属張積層板に回路およびスルーホールが形成された内層板とプリプレグとを重ね合わせ、プリプレグの表面に導電性金属箔を積層させた後、加熱加圧成形して得られる。さらに、表面の導電性金属箔に回路およびスルーホールを形成して、多層プリント配線基板としてもよい。
[0040] 本開示の樹脂組成物によれば、誘電正接を低下させることができる。このような樹脂組成物を用いることによって、誘電正接の低いプリプレグおよび金属張積層板、ならびに優れた高周波特性を有する配線基板を得ることができる。」
2h「[0041] 以下、実施例を挙げて本開示の樹脂組成物を具体的に説明するが、本開示の樹脂組成物はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0042] 試料で使用した成分は、下記のとおりである。
[0043] SA9000:メタクリル変性ポリフェニレンエーテル(サビックス社製)
[0044] (試料1~8)
表1に示す成分を表1に示す割合で混合し、さらに難燃剤として「SAYTEX8010」(アルベマール浅野(株)製)を、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計量100質量部に対して30質量部添加し、室温(25℃)で撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をトルエンに溶解させて樹脂ワニスを得た。樹脂組成物とトルエンとの質量比は50:50である。
[0045] 得られた樹脂ワニスをバーコーターを用いてPETフィルム(キャリアフィルム)上に成形し、この後に110℃で4分乾燥し、樹脂フィルムを得た。
[0046] 得られた樹脂フィルムをラミネーターによる積層およびキャリアフィルムの剥離を繰り返して樹脂板を作製した。
[0047] 次に、得られた樹脂板の両面を18μmの厚みを有する銅箔で挟み、4MPaの加圧下で200分間加熱し(200℃)、1mmの厚みを有する銅張積層板を得た。
[0048] 得られた銅張積層板の銅箔を剥離して、樹脂板の10GHzにおける誘電率および誘電正接をインピーダンスアナライザー法にて測定した。結果を表1に示す。
[0049][表1]
[図:0001407790000010.jpg]
[0050] この表1から、試料1~6に示す樹脂組成物は誘電率および誘電正接が低いことがわかる。一方、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂を用いなかった試料7、8は、いずれも誘電率および誘電正接が高いことがわかる。」
(3)甲3には、次の記載がある。
3a「【請求項1】
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(A)と、
末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(B)と、を含み、
オレフィンユニットとスチレンユニットとを含む共重合体であるエラストマー(C)と、重合性不飽和結合を有する表面処理剤で表面処理された無機充填材(D)と、のうち少なくともいずれか一方を更に含む、
熱硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
重合性不飽和基を含む有機化合物(E)を含む、
請求項1から4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機化合物(E)の量は、前記共重合体(A)と前記化合物(B)の総量100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である、
請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む、
樹脂シート。
【請求項9】
金属箔と、
前記金属箔に重なる樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む、
樹脂付き金属箔。
・・・
【請求項11】
絶縁層と、
金属箔と、を備え、
前記絶縁層は、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、
金属張積層板。
【請求項12】
絶縁層と、
導体配線と、を備え、
前記絶縁層は、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、
プリント配線板。」
3b「【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及びプリント配線板に関する。詳細には、熱硬化性樹脂組成物と、この熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートと、この熱硬化性樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付き金属箔と、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備える金属張積層板と、及びこの熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板と、に関する。
【背景技術】
【0002】
情報伝達の高速化が進展し続けている。それに伴い、高速信号を処理可能なプリント配線板を得るために、プリント配線板の絶縁層の低誘電率化及び低誘電正接化が求められている。」
3c「【0006】
本開示の目的は、その硬化物が、低い誘電率及び低い誘電正接を有しながら、耐燃性に優れる熱硬化性樹脂組成物と、この熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートと、この熱硬化性樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付き金属箔と、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備える金属張積層板と、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板とを提供することにある。」
3d「【発明の効果】
【0012】
本開示によると、その硬化物が、低い誘電率及び低い誘電正接を有しながら、耐燃性に優れる熱硬化性樹脂組成物と、この熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートと、この熱硬化性樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付き金属箔と、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備える金属張積層板と、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板と、を提供することができる。」
3e「【0015】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が、低い誘電率及び低い誘電正接を有しながら、優れた耐燃性を有し得る。このため、前記熱硬化性樹脂組成物は、金属張積層板及びプリント配線板の絶縁層を作製するための材料として好適であり、その場合、前記熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板に良好な高周波特性と良好な信頼性とを付与できる。」
3f-1「【0017】
2-1.熱硬化性樹脂組成物
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述の通り、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(A)と、末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含む。前記熱硬化性樹脂組成物は、オレフィンユニットとスチレンユニットとを含むエラストマー(C)と、重合性不飽和結合を有する表面処理剤で表面処理された無機充填材(D)(以下、無機充填剤(D)ともいう)とのうち、少なくともいずれか一方を含む。また前記熱硬化性樹脂組成物は、更に、重合性不飽和基を含む有機化合物(E)(以下、有機化合物(E)ともいう)を含むことができる。また前記熱硬化性樹脂組成物は、更に、臭素またはリンを含有する難燃剤(F)(以下、難燃剤(F)ともいう)を含むことができる。また前記熱硬化性樹脂組成物は、共重合体(A)、化合物(B)、エラストマー(C)、無機充填剤(D)、有機化合物(E)、及び難燃剤(F)以外の成分(以下、成分(G)ともいう)を含んでいてもよい。以下、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が含みうる成分について詳しく説明する。」
3f-2「【0018】
(i)エチレン-プロピレン-ジエン共重合体
上述の通り、前記熱硬化性樹脂組成物はエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(A)を含む。共重合体(A)は、一般に、EPDMゴム(ethylene-propylene-diene monomer rubber)とも呼ばれる。」
3f-3「【0026】
(ii)末端変性ポリフェニレンエーテル化合物
上述の通り、前記熱硬化性樹脂組成物は末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(B)を含む。化合物(B)は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されたポリフェニレンエーテルであれば、特に限定されない。すなわち、化合物(B)は、例えばポリフェニレンエーテル鎖と、ポリフェニレンエーテル鎖の末端に結合している炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とを、有する。」
3f-4「【0058】
(iii)オレフィンユニットとスチレンユニットとを含む共重合体であるエラストマー
上述の通り、前記熱硬化性樹脂組成物は、オレフィンユニットとスチレンユニットとを含む共重合体であるエラストマー(C)を含むことができる。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物中の共重合体(A)と化合物(B)との相溶性を向上させることができる。また前記熱硬化性樹脂組成物のBステージでのフィルム形成能を向上させられ、Bステージでの靭性を向上させられる。なお、オレフィンユニットは、オレフィンモノマーに由来する構造単位を意味し、スチレンユニットは、スチレンモノマーに由来する構造単位を意味する。スチレンモノマーは、スチレンと置換基を有するスチレンとからなる群から選択される少なくとも一種である。置換基は、例えばメチル基等のアルキル基である。特にスチレンモノマーが、スチレンとメチルスチレンとのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。」
3g「【0072】
(v)重合性不飽和基を含む有機化合物
上述の通り、前記熱硬化性樹脂組成物は重合性不飽和基を有する有機化合物(E)を含むことが好ましい。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び耐燃性の低下を抑制することができる。
【0073】
有機化合物(E)が含む重合性不飽和基は、例えばビニル基、アリル基、メタクリル基、スチリル基、メタ(アクリル)基、及びマレイミド基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。前記熱硬化性樹脂組成物が有機化合物(E)を含有すると、有機化合物(E)に含まれる成分の選択によって、前記熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の物性を制御できる。例えば有機化合物(E)が重合性不飽和基を一つ有する単官能化合物を含有すると、単官能化合物は前記熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度を低減して成形性を向上できる。また、有機化合物(E)が重合性不飽和基を複数有する多官能化合物を含有すると、多官能化合物は、硬化物の架橋密度を増大させることができる。それにより、多官能化合物は、硬化物の靭性向上、ガラス転移点向上及びそれに伴う耐熱性向上、線膨張係数の低減、並びに密着性向上に、寄与できる。有機化合物(E)は、多官能化合物として、ジビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジシクロペンタジエンジメタノールジメタクリレート、及びノナンジオールジメタクリレートからなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐燃性を向上させることができる。また有機化合物(E)は、多官能化合物として、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミドおよび1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンからなる群から選択される一種以上のビスマレイミドを含んでいてもよい。有機化合物(E)は、市販されているビスマレイミドとして、DESIGNERMOLECULES社製の商品名BMI-689又はBMI-3000を含むことも好ましい。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐燃性を向上させることができる。
【0074】
前記熱硬化性樹脂組成物が有機化合物(E)を含有する場合の有機化合物(E)の量は、共重合体(A)と化合物(B)の合計100質量部に対して5質量部以上50質量部以下が好ましい。有機化合物(E)の量が5質量部以上であることにより、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させることができる。有機化合物(E)の量が50質量部以下であることにより、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の、誘電率及び誘電正接を低くできると共に、タックの発生を抑制することができる。」
3h「【0086】
2-2.樹脂シート
本実施形態に係る樹脂シートは、前記熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。樹脂シートは、積層板及びプリント配線板作製のための材料に適用できる。すなわち、樹脂シートを用い、樹脂シートの硬化物を含む絶縁層(すなわち、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層)を備える積層板、及び樹脂シートの硬化物を含む絶縁層(すなわち、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層)を備えるプリント配線板を、作製できる。
【0087】
樹脂シートを製造するためには、例えば前記熱硬化性樹脂組成物を塗布法等によりシート状に成形してから、加熱することで乾燥させ又は半硬化させる。これにより、前記熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートが得られる。加熱時の温度は前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤を乾燥させ、樹脂成分を半硬化させることが可能な温度であれば良く、例えば100℃以上160℃以下、加熱の時間は例えば5分以上10分以下である。
【0088】
樹脂シートを加熱して硬化させることで、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を作製できる。加熱時の温度は例えば160℃以上200℃以下、好ましくは180℃以上200℃以下であり、加熱の時間は例えば30分以上120分以下、好ましくは60分以上120分以下である。また、本開示の樹脂シートは、複数の層を張り付けるためのボンディングシートとして使用することも可能である。具体的には、まず、支持フィルムに前記熱硬化性樹脂組成物を塗布してシート状に成形し、これを乾燥または半硬化させることによって樹脂シートを形成する。次に、当該樹脂シートを基板等に張り付けてから支持フィルムを剥がす。次に、前記基板上に形成された乾燥物または半硬化物上に、別途の基板等を張り付ける。これにより、樹脂シートに含まれる前記熱硬化性樹脂組成物の乾燥物または半硬化物によって、複数の基板を貼り付けることができる。」
3i「【0122】
2-5.プリント配線板
本実施形態に係るプリント配線板3は、図3A~図3Dに示すように、絶縁層30と導体配線60とを備える。プリント配線板3は、その最外層に導体配線60を備える。絶縁層30は、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。この場合、絶縁層30の低誘電率化及び低誘電正接化を達成できると共に、絶縁層30に高い耐熱性及び耐燃性を付与できる。さらに、絶縁層30と、絶縁層30と直接接する層との密着性を向上させられる。
【0123】
プリント配線板3は、図3A及び図3Bに示すように、一つの絶縁層30を含んでいてもよく、図3C及び図3Dに示すように、複数の絶縁層30を含んでいてもよい。プリント配線板3が複数の絶縁層30を含む場合、少なくとも一つの絶縁層30が前記熱硬化性樹脂組成物を含む。また少なくとも一つの絶縁層30が、前記熱硬化性樹脂組成物とは異なる、液晶ポリマー樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことが好ましい。特に図3C及び図3Dに示すプリント配線板3は、一以上の導体配線60と二以上の絶縁層30とを備えることから、多層プリント配線板4でもある。
【0124】
絶縁層30は、単一の層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。図3A~図3Dに示すプリント配線板3は、第一の層301と、第一の層301と重なる第二の層302とで構成された絶縁層30を含む。絶縁層30の構成は、上記「2-4.金属張積層板」で説明した絶縁層30と同様の構成を有する。」
3j「【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本発明は、この実施例のみには制限されない。
【0132】
1.樹脂シートの作製
表1及び表2中の「組成」の欄に示す成分を、トルエンに溶解させることで、固形分濃度25質量%の実施例1~21、及び比較例1~3の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0133】
コンマコーター及びこれに接続された乾燥機を用いて、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱硬化性樹脂組成物を塗布してから、熱硬化性樹脂組成物を110℃で5分間加熱することで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み25μmの樹脂シートを作製した。これにより、実施例1~21及び比較例1~3の樹脂シートを作製した。
・重合性不飽和基を有する有機化合物1:トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC。
・重合性不飽和基を有する有機化合物2:トリアリルトリメリテート、富士フィルム和光純薬株式会社製、品番TRIAM-705。
・重合性不飽和基を有する有機化合物3:ジビニルベンゼン。
・重合性不飽和基を有する有機化合物4:トリビニルシクロヘキサン。
・重合性不飽和基を有する有機化合物5:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、新中村化学製、品番DCP。
・重合性不飽和基を有する有機化合物6:ビスマレイミド、DESIGNER MOLECULES製、品番BMI-689。
・熱ラジカル重合開始剤:日油株式会社製、品名パーブチルP。
【0134】
2.評価
(I)Bステージフィルム性
実施例1~21及び比較例1~3の樹脂シートを対象にして、JIS K5600-5-1(耐屈曲性(円筒形マンドレル))に基づき、屈曲性試験を行った。その結果を、以下の基準で評価した。その結果を表1及び表2に示す。
A:クラック生じなかった。
B:φ10mmでクラックが生じた。
C:φ20mmでクラックが生じた。
-:未評価
(II)耐燃性
実施例1~21及び比較例1、2の樹脂シートからテストピースを作製し、UL94垂直法の規格に準拠する難燃性試験を行った。難燃性試験の結果、V-0の燃焼性クラスを満たすものを「A」、V-0の燃焼性クラスを満たさないものを「B」と評価した。その結果を表1及び表2に示す。
(III)熱膨張率
実施例1~21及び比較例1、2の樹脂シートを対象にして、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り測定を行った。熱機械分析装置の測定条件は、チャック間長を15mm、荷重を10g、350℃までの昇温速度を10℃/minとした。各樹脂シートの引っ張り測定の測定結果を示すTMA曲線から、各樹脂シートの常温からガラス転移温度未満の温度までの熱膨張係数を求めた。その結果を表1及び表2に示す。
(IV)誘電特性(比誘電率及び誘電正接)
厚み18μmの二つの銅箔を、その光沢面同士が対向するように配置し、二つの銅箔の間に樹脂シートを配置した。これらを200℃、2MPaの条件で1時間加熱プレスすることで、サンプルを作製した。このサンプルにエッチング処理を施すことで両面の銅箔を除去することで、実施例1~21及び比較例1,2の樹脂シートの硬化物からなる試験片を作製した。この試験片の、試験周波数10GHzの場合での比誘電率及び誘電正接を、IPCTM-6502.5.5.5に基づいて測定した。
(V)はんだ耐熱性
厚み12μmの銅箔と厚み3μmのポリアミドイミド製の絶縁層とを備える基材を二つ用意した。二つの基材を絶縁層同士が対向するように配置し、更に絶縁層の間に樹脂シートを配置した。これらを200℃、2MPaの条件で1時間加熱プレスすることで、実施例1~21及び比較例1,2のサンプルを作製した。このサンプルから、JISC6471に基づき試験片を作製した。この試験片を260℃、288℃、及び300℃のはんだ浴に3分間浮かべてから引き上げた後、試験片の外観を観察した。その結果、はんだ浴の温度が260℃、288℃、300℃のいずれの場合でも膨れ、はがれ等の異常が認められない場合を「A」、はんだ浴の温度が260℃では異常が認められないが288℃では以上が認められた場合を「B」、はんだ浴の温度が260℃、288℃、300℃のいずれの場合でも異常が認められた場合を「C」と、評価した。
【0135】
【表1】
[図:0001407790000011.jpg]
【0136】
【表2】
[図:0001407790000012.jpg]
」
3k「【図3】
[図:0001407790000013.jpg]
」
(4)甲4には、次の記載がある。
4a「【0001】
本発明は、硬化性フィルムにした際にべたつき(タック性)がなく作業性が良好で、低誘電特性、耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物に関するものであり、該樹脂組成物を用いた硬化性フィルム、該硬化性フィルムを硬化させたフィルムに関する。本発明の硬化性フィルムやフィルムは、高周波用途などの電気絶縁材料として好適に使用される。」
4b「【0030】
合成例1
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’-,3,3’-,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「A」)のトルエン溶液を833.40g得た。樹脂「A」の数平均分子量は930、重量平均分子量は1,460、水酸基当量が465であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「A」のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS-P;セイミケミカル(株)製)160.80g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5wt%NaOH水溶液175.9gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、ろ過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「B」501.43gを得た。ビニル化合物「B」の数平均分子量は1165、重量平均分子量は1630であった。
・・・
【0034】
実施例1~7および比較例1~5
合成例1、2、3で得られたビニル化合物「B」、「D」、「F」およびジビニルベンゼン(DVB-960:新日鉄化学製)と各種高分子量体を表1の割合で配合し、トルエンに溶解し、樹脂固形分が30wt%(実施例3~5は15wt%)となるようにワニスを調整した。調整したワニスをドクターブレード(隙間75μm)で、18μm電解銅箔(3EC-III:三井金属製)上に塗布、送風乾燥機で50℃、5分乾燥して、樹脂層の厚み約15μmの銅箔付き硬化性フィルムを得た。得られた銅箔付き硬化性フィルムの外観とタック性の有無を評価した結果を表1に示す。次に、銅箔付き硬化性フィルムをイナートオーブンで、窒素下、昇温4℃/分、200℃、90分保持の条件で加熱した後、銅箔をエッチングにより除去してフィルムを得た。フィルムの厚みは約15μmであった。得られたフィルムのガラス転移温度、誘電率、誘電正接、耐薬品性、耐屈曲性を評価した結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
[図:0001407790000014.jpg]
TR2003、TR2827:スチレンブタジエンスチレン共重合体(JSR製)(重量平均分子量約10万)
(5)甲5には、次の記載がある。
5a「【0025】
本発明は、電子部品(例えば、半導体素子など)の封止材及び多層基板用プリプレグに適用可能な電子部品用絶縁材料に関し、特に、低熱膨張性及び高接着性を両立する電子部品用絶縁材料、及びこれを用いた封止材、液状ポッティング剤、封止用樹脂フィルム、電子部品用接着フィルム、プリプレグシート、積層板等の配線板材料、並びにプリント基板に関する。」
5b「【実施例】
【0128】
まず、試薬及び評価方法を示す。
【0129】
(1)熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)(上記化学式(1)の化合物、熱硬化性PPEと略記)
攪拌子を入れた2口フラスコに、ジ-μ-ヒドロキソビス〔(N、N、N’、N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)〕二塩化物(東京化成製)0.464g(1.0mmol(ミリモル))、水:4mL(ミリリットル)、テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬製)1mLを加えて攪拌した。攪拌停止後、2、6-ジメチルフェノール(東京化成製)9.90g(81.0mmol)、2-アリル-6-メチルフェノール(アルドリッチ製)1.34g(9.0mmol)をトルエン:500mLに溶解した溶液をフラスコに静かに加え、三方コック及びガラス栓にて密栓した。ゴム製の酸素バルーンを三方コックに接続し、系内を脱気及び酸素封入を繰り返して置換した後、40℃の酸素雰囲気下、500~800rpmで6時間攪拌した。重合終了後にトルエンで希釈した後に大過剰の塩酸/メタノール溶液(1~5M程度)に沈殿させ、沈殿物をメタノールで洗浄、乾燥後再びトルエンに溶解して大過剰の塩酸/メタノール(1M程度)に再沈殿させ、メタノールで洗浄後、120℃/2時間、140℃/30分真空乾燥して白色の固形物を得た。収率は93%であった。1H-NMR及び13C-NMRにより、その構造を同定した。固形物の分子量及び分子量分布はMn=15000、Mw/Mn=1.7であった。ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0130】
(2)1、2-ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成(上記化学式(9)の化合物)
500mLの三口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)536g(220mmol)を取り、滴下ロート、窒素導入菅及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体を加熱して脱水処理を行った。乾燥テトラヒドロフラン300mLをシリンジに取り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を-5度に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で20時間攪拌を続けた。
【0131】
反応終了後、溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレータで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈して、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通じて生成し、最後に真空管層により目的のBVPEを得た。得られたBVPEは、1、2-ビス(p-ビニルフェニル)エタン(p-p体、固体)、1、2-ビス(p-ビニルフェニル)エタン(m-m体、液体)、1、2-ビス(p-ビニルフェニル)エタン(m-p体、液体)の混合物で、収率は90%であった。得られたBVPEの構造は文献値と一致しており、添加剤として用いた。
【0132】
(3)その他の試薬
熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)(上記化学式(2)の化合物):(1)OPE-2St、スチレン換算数平均分子量2200、三菱ガス化学製(スチレン骨格末端)、(2)OPE-2Ep、スチレン換算数平均分子量2200、三菱ガス化学製(エポキシ骨格末端)。
【0133】
多官能架橋助剤(上記化学式(5)の化合物):(1)TAIC(商標)、トリアリルイソシアヌレート、日本化成工業製、(2)TMAIC(商標)、トリメタリルイソシアヌレート、日本化成工業製
多官能架橋助剤(上記化学式(6)の化合物):トリアリルシアヌレート、東京化成製
スチレン系エラストマー:(1)タフテック(商標)H1043、スチレン含有率67wt%、Mn=76000、伸び率20%、旭化成ケミカルズ製、(2)タフテック(商標)H1051、スチレン含有率42wt%、Mn=75000、伸び率600%、旭化成ケミカルズ製、(3)タフテック(商標)H1031、スチレン含有率30wt%、Mn=53000、伸び率650%、旭化成ケミカルズ製、(4)タフテック(商標)H1052、スチレン含有率20wt%、Mn=72000、伸び率700%、旭化成ケミカルズ製、(5)タフテック(商標)H1221、スチレン含有率12wt%、Mn=71000、伸び率980%、旭化成ケミカルズ製、(6)タフテック(商標)H1272、スチレン含有率35wt%、Mn=74000、伸び率950%、旭化成ケミカルズ製
難燃剤(上記化学式(7)の化合物):SAYTEX 8010、1、2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、アルベマール日本製
難燃剤(上記化学式(8)の化合物):SAYTEX BT-93/W、エチレンビステトラブロモフタルイミド、アルベマール日本製
ビスマレイミド(上記化学式(10)の化合物):BMI-5100、3、3’-ジメチル-5、5’-ジエチル-4、4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業製
高分子量ポリブタジエン(上記化学式(11)の化合物):RB810、Mn=130000、JSR製
(4)ワニスの調製方法
所定量のカップリング剤及びフィラーをメチルエチルケトン溶液中でボールミルにて2時間攪拌し、フィラー表面にカップリング処理を施した。次いで、所定量の架橋剤、樹脂材料、難燃剤、硬化触媒、架橋助剤、トルエンを加えて樹脂成分が完全に溶解するまで攪拌を続けてワニスを作製した。ワニス濃度は45~65wt%とした。
【0134】
(5)樹脂フィルム、硬化物(樹脂板)の作製方法
樹脂ワニスをPETフィルム上に塗布して、室温で乾燥を行った後、100℃で10分間乾燥を行い、絶縁フィルムを得た。フィルムをPTFE製の厚さ1.0mmのスペーサー内に充填し、真空プレス成型によって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は真空中室温から2MPaに加圧し、10℃/minで昇温、210℃で60分間保持した。
・・・
【0152】
【表1】
[図:0001407790000015.jpg]
」
(6)甲6には、次の記載がある。
6a「【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率、低誘電正接であり、基材フィルム、導体配線との接着性に優れた熱可塑性樹脂組成物および接着フィルムとそれを用いたフレキシブルフラットケーブル等の配線フィルムに関する。」
6b「【0077】
・・・
[実施例]
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。試薬および評価方法を示す。
【0078】
(1)供試試料
(イ)水素添加されたスチレン系エラストマー:タフテック(登録商標)H1052、伸び率700%、旭化成ケミカルズ(株)製
(ロ)水素添加されたスチレン系エラストマー:タフテック H1227、伸び率950%、旭化成ケミカルズ(株)製
(ハ)水素添加されたスチレン系エラストマー:タフテック H1031、伸び率650%、旭化成ケミカルズ(株)製
(ニ)両末端OH含有ポリフェニレンエーテル系ポリマー系樹脂:OPE、スチレン換算数平均分子量1000、三菱ガス化学(株)製
(ホ)イソシアナート化合物(1):ヘキサメチレンジイソシアナート、和光純薬(株)製
(ヘ)イソシアナート化合物(2):ポリヘキサメチレンジイソシアナート、デュラネートD201、粘度1800cps、NCO含有率15.8wt%、旭化成ケミカルズ(株)製
(ト)イソシアナート化合物(3):ポリヘキサメチレンジイソシアナート、デュラネートD101、粘度500cps、NCO含有率19.7wt%、旭化成ケミカルズ(株)製
(チ)イソシアナート化合物(4):イソシアヌレート構造を有するポリヘキサメチレントリイソシアナート、デュラネートTPA-100、NCO含有率23.1wt%、旭化成ケミカルズ(株)製
(リ)イソシアナート化合物(5):2,4-ジイソシアン酸トリレン、東京化成工業(株)製
(ヌ)イソシアナート化合物(6):ジイソシアン酸イソホロン、東京化成工業(株)製
(ル)水素添加されたアクリロニトリルブタジエン:Zetpol(登録商標)2000L、アクリロニトリル含有率36.2wt%、日本ゼオン(株)製
(オ)水素添加されたアクリロニトリルブタジエン:Zetpol1020、アクリロニトリル含有率44.2wt%、日本ゼオン(株)製
(ワ)水素添加されたアクリロニトリルブタジエン:Zetpol 0020、アクリロニトリル含有率49.2wt%、日本ゼオン(株)製
(カ)非晶性ポリエステル:バイロンGK330、ガラス転移温度16℃、スチレン換算数平均分子量17000、東洋紡績(株)製
(ヨ)非晶性ポリエステル:バイロン670、ガラス転移温度7℃、スチレン換算数平均分子量20000、東洋紡績(株)製
(タ)ポリエチレンテレフタレートフィルム:厚さ20μm
(レ)平角銅線:幅0.5mm、厚さ35μm、日立電線(株)製
(ソ)銅箔:厚さ35μm、JTC箔、日本鉱山(株)製
(ツ)KBM-602:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン,信越化学工業(株)
(ネ)難燃剤:ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、SAYTEX8010、(株)アルベマール日本製
(ナ)触媒:ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、和光純薬(株)製
(2)接着剤ワニスの調整
表2~5および表9-1、表9-2に記載の所定の配合比で接着剤ワニスを調整した。
・・・
【0081】
(4)接着フィルムの作製
表面処理を施した基材フィルム上に所定のギャップを有するバーコーターを用いて接着剤ワニスを塗布し、80℃で20分間乾燥して接着剤フィルムを作製した。接着層の膜厚を各表に示した。
・・・
【0090】
(比較例1)
比較例1は、イソシアナート化合物を含有しない接着層を用いた接着フィルムの例である。表2に評価結果を示した。接着層の比誘電率は2.2であり、誘電正接は0.0022と優れているものの、基材フィルムと接着層との接着力は0.3kN/mと低いことが確認された。
【0091】
(実施例1~6)
実施例1~6は、各種イソシアナート化合物を所定量添加した例である。評価結果を表2に示した。比較例1と本実施例を比較するとイソシアナート化合物を添加することによって基材フィルムとの接着力が改善されること、誘電特性の劣化は殆どないことが確認できた。本接着剤を用いた接着フィルムは誘電特性、接着性がともに優れ、高周波用配線フィルムの接着剤として好ましいと思われる結果を得た。
【0092】
【表2】
[図:0001407790000016.jpg]
」
(7)甲7には、次の記載がある。
7a「[0002]
本発明は光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーからなる液晶ポリマーフィルム(以下、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称することがある)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層とを少なくとも備え、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いつつも、低温成形が可能な回路基板、およびその製造方法に関する。」
7b「[0153]
[実施例A1]
参考例A1で得られた銅張積層板Aの銅箔粗度を1.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂(三菱ガス化学(株)「OPE2st」)50質量部、スチレン系ポリマー((株)クラレ「SEPTON8007L」)50質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)「JER152」)1質量部、および硬化促進剤をトルエンに溶解した後、シート状に乾燥固化させた接着性シート(厚み25μm)を真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させ、回路層/接着層/回路層で構成された積層体(回路基板)を得た。得られた積層体の各種物性を評価し、表7に示した。
・・・
[0162]
[表7]
[図:0001407790000017.jpg]
」
(8)甲8には、次の記載がある。
8a「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いた樹脂ワニス、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付金属箔、金属張積層板及びプリント配線板等に関する。」
8b「【実施例】
【0139】
まず、本実施例において、熱硬化性樹脂組成物を調製する際に用いる成分について説明する。
【0140】
(A成分:ポリフェニレンエーテル)
・PPE-2F(変性PPE-1):2官能ビニルベンジル変性PPE(Mw:1900)
まず、変性ポリフェニレンエーテル(PPE-2F)を合成した。なお、ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端のフェノール性水酸基の平均個数を、末端水酸基数と示す。
・・・
【0149】
【0150】
(B成分:スチレンブタジエンコポリマー)
・スチレンブタジエン共重合体(「Ricon181(製品名)」、CRAY VALLEY社製、スチレン:28質量%、ブタジエン:72質量%;ブタジエン中の1,2-ビニル:30%;数平均分子量3200)
・スチレンブタジエン共重合体(「Ricon184(製品名)」、CRAY VALLEY社製、スチレン:28質量%、ブタジエン:72質量%;ブタジエン中の1,2-ビニル:30%;数平均分子量8600)
・スチレンブタジエン共重合体(「Ricon100(製品名)」、CRAY VALLEY社製、スチレン:25質量%、ブタジエン:75質量%;ブタジエン中の1,2-ビニル:70%;数平均分子量4500)
・スチレンイソプレンスチレン共重合体(「ハイブラー5125」、株式会社クラレ社製、スチレン:20質量%、イソプレン:80質量%;数平均分子量11000)
・2官能メタクリレートオリゴマー:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(「BPE-1300N」、Mn=1700 新中村化学工業株式会社製)
なお、スチレンブタジエンコポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、スチレンブタジエン含有量は、NMRによって、また、ブタジエン中の1,2-ビニル基含有量は赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって、それぞれ測定した。
【0151】
(C:スチレン系熱可塑エラストマー)
・水添スチレンブタジエン共重合体(SEBS)(「セプトンV9827」、クラレ社製、Mw:94000)
・水添スチレンイソプレンスチレン共重合体(SEPS)(「ハイブラー7125」、クラレ社製、Mw:120000)
・水添スチレンブタジエン共重合体(SEBS)(「セプトン8007」、クラレ社製、Mw:83000)
・水添ポリブタジエンエラストマー(「BI3000」、日本曹達株式社製、Mw:3300)
【0152】
(D:硬化促進剤)
【0153】
(E:無機充填材)
・球状シリカ「SC2300-SVJ」(株式会社アドマテックス製)
【0154】
(F:難燃剤)
・臭素系難燃剤(「SAYTEX8010」、ルベマール株式会社製)
【0155】
<実施例1~9、比較例1~9>
[調製方法]
(樹脂ワニス)
まず、(A)変性ポリフェニレンエーテル共重合体とトルエンとを混合させて、その混合液を80℃になるまで加熱することによって、(A)をトルエンに溶解させて、(A)の65質量%トルエン溶液を得た。その後、得られた(A)のトルエン溶液に、表1または表2に記載の割合になるように、(B)スチレンブタジエンコポリマー、(C)スチレン系エラストマー及び(D)硬化促進剤を添加した後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、(E)無機充填材、(F)難燃剤を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)が得られた。
【0156】
(樹脂付銅箔)
上記ワニスを用いて樹脂付銅箔(RCC)を作成し、後の評価に用いた。
・・・
【0166】
【表1】
[図:0001407790000018.jpg]
」
(9)甲9には、次の記載がある。
9a「【0001】
本発明は、樹脂組成物、それを用いた絶縁フィルムおよび半導体装置に関する。」
9b「【0007】
高周波での電気特性についての要求はますますきびしくなっており、周波数1~10GHzの領域での誘電率は2.30未満であることが求められ、周波数1~10GHzの領域での誘電正接(tanδ)を0.0015未満であることが求められる。
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するため、FPCの配線をなす金属箔や、ポリイミドフィルム等のFPCの基板材料に対して優れた接着強度を有し、かつ、高周波領域での電気特性、具体的には、周波数1~10GHzの領域で低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ)を示す絶縁フィルム、および、該絶縁フィルムの製造に用いる樹脂組成物を提供することを目的とする。」
(10)甲10には、次の記載がある。
10a「[0001] 本発明は、成形体及びその製造方法、プリプレグ、並びに積層体に関するものである。特に、本発明は、熱可塑性脂環式構造含有樹脂を含む、成形体及びその製造方法、プリプレグ、並びに積層体に関するものである。
[0002] 高速伝送信号や高周波信号を使用する電子機器には、低誘電率且つ低誘電損失の材料からなる基板を備えてなるプリント配線基板が必要とされている。従来は、ガラスクロス等よりなる基材に対して、熱硬化性樹脂を含浸させることで形成したプリプレグの両面側に、それぞれ銅箔等の金属層を配置した状態で熱プレス等することにより熱硬化性樹脂を硬化させて得た銅張積層板が、プリント配線基板として一般的に用いられてきた。しかし、熱硬化性樹脂は耐熱性及び形状精度に優れる一方で、誘電率及び誘電損失が比較的大きいことが課題とされてきた。
10b「[0083]
[図:0001407790000019.jpg]
」
(11)甲11には、次の記載がある。
11a「[0001] 本開示は、熱硬化性組成物、樹脂シート、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及びプリント配線板に関し、詳しくは熱硬化性組成物、この熱硬化性組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シート、この熱硬化性組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える樹脂付き金属箔、この熱硬化性組成物の硬化物を含む絶縁層を備える金属張積層板、及びこの熱硬化性組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板に関する。
[0002] 情報伝達の高速化は継続して進展を続けている。それに伴い、高速信号を処理できるプリント配線板を得るために、プリント配線板の絶縁層の低誘電率化及び低誘電正接化が求められている。」
11b「[0114][表1]
[図:0001407790000020.jpg]
」
(12)甲12には、次の記載がある。
12a「【0001】
本発明は、グラフト共重合体より形成されるシート状成形物と樹脂含浸シート状繊維強化材とを熱圧着してなるプリプレグ及びこれを用いたプリント配線板用金属張り基板に関する。より詳しくは、高周波帯域における好適な電気特性を有し、かつ耐ヒートサイクル性に優れたプリプレグ及びこれを用いたプリント配線板用金属張り基板に関する。
【0002】
近年、高度情報化社会の進展に伴い、大量の情報を高速で処理する必要があり、通信機器、電子機器等に使用される信号の周波数帯はMHz帯からGHz帯の高周波帯域に移行している。しかしながら、電気信号は周波数が高くなるほど、伝送損失が大きくなる性質があり、GHz帯のような高周波帯域に対応しうる、優れた高周波伝送特性を有する電気絶縁材料が強く求められている。絶縁材料と接触した回路における伝送損失は、回路(導体)の形状、表皮抵抗、特性インピーダンス等で決まる導体損と、回路周りの絶縁層(誘電体)の誘電特性で決まる誘電体損とからなり、特に高周波回路では誘電体損として放出され、電子機器の誤作動の原因となる。誘電体損は、比誘電率(ε)と材料の誘電損失(tanδ)の積に比例して大きくなる。そのため、誘電体損を少しでも小さくするためには、比誘電率と誘電損失がいずれも小さい材料を用いる必要がある。」
12b「
[図:0001407790000021.jpg]
」
(13)甲13には、次の記載がある。
13a「タフテック(R)は、スチレンとブタジエンからなるブロックコポリマーを水素添加したポリマーであり、耐候性、耐熱性に優れた水添スチレン系熱可塑性エラストマーです。」(第2頁第2~3行)
13b「また、タフテック(R)Mシリーズは官能基を付与した反応性エラストマーとなっております。」(第2頁第11行)
13c「【0061】
【表4】
[図:0001407790000022.jpg]
」(第6頁)
(14)甲14には、次の記載がある。
14a「【0006】
そのため、ガラス転移温度及び難燃性などの他の本質的な特性を犠牲にすることなく低いDk値及びDf値を有する電気積層板が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの広い態様は、a)30重量%~85重量%の1,2-ビニル基を含み、10重量%~50重量%の範囲の量でスチレンが存在するスチレン-ブタジエンビニル樹脂、b)数平均分子量が300~10000の範囲のビニルポリ(フェニレンエーテル)、c)アニリン変性スチレン-無水マレイン酸コポリマー、d)多官能性エポキシ樹脂、及びe)難燃剤、を含有する、またはこれらからなる、またはこれらから本質的になる、硬化性組成物であって、硬化条件で硬化後に硬化性組成物が少なくとも1つの相互侵入網目構造を形成する硬化性組成物、を開示する。」
14b「【0012】
ビニルPPO
様々な実施形態では、硬化性組成物はビニルポリ(フェニレンエーテル)(PPO)化合物を更に含有していてもよい。
・・・
【0015】
そのようなPPO樹脂の市販の例としては、SABICのNoryl(登録商標)SA9000樹脂及び三菱ガス化学株式会社のOPE-2Stが挙げられるが、これらに限定されない。」
(15)甲15には、次の記載がある。
15a「【0001】
本開示は、低誘電正接、低誘電率の硬化性ブロックコポリマー組成物並びに銅張積層体及び印刷回路板を含む、それから作製された製品に関する。
・・・
【0003】
印刷回路板は、従来、誘電率及び誘電正接が比較的大きいエポキシ樹脂を使用する。エポキシ樹脂は、特性を改善するために、フェノール化合物、アミン又は酸無水物硬化剤とともに使用される場合がある。そのような樹脂組成物では、低誘電正接を達成するのは依然として困難である。ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO又はポリフェニレンオキシド樹脂、PPOと呼ばれる)は、その低誘電特性のために積層体に使用されてきたが、その難燃性は依然として不十分である。該樹脂は粘度が高いために配合物中のその分子量又はその含有量が制限され、架橋性を欠く。テレケリックビニル官能化低分子量PPO樹脂は、その改善された溶解性及び架橋性のために積層体に使用されてきたが、得られる誘電正接に悪影響を及ぼす。」
15b「【0036】
多ビニル化合物で構成される多官能性共硬化性添加剤の例としては、低分子量ジビニルベンゼン若しくはビス(ビニルフェニル)-エタン若しくはジビニルナフタレン、トリメチロールプロパントリメタクリレート若しくはトリメチロールプロパントリアクリレート若しくはトリアリルイソシアヌレート若しくはトリアリルシアヌレート、又は多ビニル化合物、例えば、Sabic製SA-9000若しくは三菱ガス化学株式会社製OPE2stなどのビニル官能化PPE(アリル変性ポリフェニレンエーテルとも称される)、又はジエン系ポリマー、例えば、ジエンのホモポリマー、若しくはポリマー主鎖に二重結合を有する様々なアルケン及び/又はジエンのコポリマー(トリブロックコポリマーを含む)が挙げられる。ジエン系ポリマーは室温で液状であっても固体状であってもよく、これには、ポリブタジエンポリマー、又はブタジエンとスチレン若しくは他のスチレン系モノマーのコポリマーなどの誘電体基板用の不飽和樹脂が含まれる。」
(16)甲16の1頁右欄2行~2頁左欄6行には、次の記載がある。
「〔産業上の利用分野〕本発明は、硬化性樹脂組成物およびこれを硬化して得られる硬化体に関する。本発明の樹脂組成物は、硬化後において優れた耐薬品性、耐熱性、低吸湿性、誘電特性を示し、電気・電子産業、自動車産業、宇宙・航空機産業等の分野において構造材料、誘電材料、絶縁材料、耐熱材料等に用いることができる。〔従来の技術〕従来より、熱可塑性樹脂に硬化剤とともにトリアリルイソシアヌレート(TAIC)又はトリアリルシアヌレート(TAC)を配合した樹脂組成物が得られることが知られている。このトリアリルイソシアヌレートまたはトリアリルシアヌレートは架橋性モノマーとして樹脂の特性改善に用いられているものであり、常温では液体であるため、熱可塑性樹脂への配合が比較的容易で、その組成物は耐熱性が優れている。しかしながらこの組成物は、TAIC又はTACの配含量が少ないと耐薬品性が劣るという欠点を示す。このためTAIC又はTACの配合量を増大させると、TAIC又はTACのモノマーがブリードして、粘着し易くなり、加工性か非常に悪くなると同時に得られた組成物の吸湿性を悪化させる欠点を有している。」
第6 当審の判断
1 甲1を主引例とした取消理由(進歩性)
(1)甲1発明の認定
ア 甲1には、低揮発性、耐熱性及び透明性を特徴とするアリルモノマーの架橋剤として、下記構造式を有するL-DAICが記載されており、その特徴として、PPE樹脂の架橋剤であること、揮発性が低く、プロセス中のロスが少ないこと、誘電正接が改善されることが記載されている(前記第5の2(1)の摘記1a参照)。
[図:0001407790000023.jpg]
イ また、甲1には、L-DAICとTAICの誘電正接比較結果が示されており、測定試料はPPE NORYL SA9000-111(22.4phr)、Allyl Derivative(アリル誘導体;L-DAIC又はTAIC)(10phr,20phr又は30phr)、Phase Solv. SBS resin(7.6phr)及びRadical Initiator PERBUTYL P(1.2phr)からなる組成物であったこと、硬化条件は120℃/0.5時間、150℃/0.5時間、及び190℃/1.0時間であったこと、測定方法はCavity Resonance Method(空洞共振器法)であったこと、L-DAICはTAIC系よりもDf(誘電正接)が大幅に改善され、L-DAICを用いたときのDf(誘電正接)は0.0030~0.0040程度であったことが記載されている(前記2(1)の摘記1a参照)。
ウ そうすると、Allyl Derivative(アリル誘導体)にL-DAICを用いた誘電正接の測定試料として、甲1から次の発明(以下「甲1発明」という。)が認定できる。
エ 甲1発明
「PPE NORYL SA9000-111(22.4phr)、下記構造式を有するL-DAIC(10phr,20phr又は30phr)、Phase Solv. SBS resin(7.6phr)及びRadical Initiator PERBUTYL P(1.2phr)からなり、誘電正接Dfが0.0030~0.0040程度である、硬化性組成物。[図:0001407790000024.jpg]」
(2)本件訂正発明2の甲1発明に対する進歩性
ア 対比
(ア)甲1発明の「PPE NORYL SA9000-111」について検討すると、本件特許の明細書の段落【0073】(前記第3の2の摘記(2)参照。)には、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品としてNoryl SA9000(両末端にメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、SABIC社製)が挙げられている。そうすると、甲1発明の「PPE NORYL SA9000-111」は、本件訂正発明2の「(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂」に相当するといえる。
(イ)甲1発明の「L-DAIC」について検討すると、本件特許の明細書の段落【0036】~【0037】、【0039】、【0049】(前記第3の2の摘記(1)参照。)には、イソシアヌレート骨格を有する硬化性化合物(Aβ)である、下記式(1)
[図:0001407790000025.jpg]
(式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)で表される化合物の市販品として、L-DAIC(四国化成工業社製)が挙げられている。そうすると、甲1発明の「下記構造式を有するL-DAIC
[図:0001407790000026.jpg]
」は、本件訂正発明2の「(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、」「末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物
【化1】
[図:0001407790000027.jpg]
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)」に相当するといえる。
(ウ)甲1発明の「SBS resin」は、スチレンブタジエンスチレン共重合体であるから、本件訂正発明2の「(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」と、「バインダー樹脂」である点で共通する。なお、甲1発明の硬化性組成物全体に対する「SBS resin」の含有量は、{7.6/(22.4+10+7.6+1.2)}×100=18.4質量%~{7.6/(22.4+30+7.6+1.2)}×100=12.4質量%である。
(エ)甲1発明の「硬化性組成物」と本件訂正発明2の「硬化性接着剤層」とは、いずれも上記したような(A)成分~(C)成分を含有するものであるから、「硬化性組成物」である点で共通する。
(オ)甲1発明の硬化性組成物全体に対するL-DAICの含有量は、L-DAICの添加量が10phrの場合、{10/(22.4+10+7.6+1.2)}×100=24.3質量%、同添加量が20phrの場合、{20/(22.4+20+7.6+1.2)}×100=39.1質量%、同添加量が30phrの場合、{30/(22.4+30+7.6+1.2)}×100=49.0質量%であるから、いずれも本件訂正発明2の「(A)成分の含有量が、・・・全体に対して3.0質量%以上である」を充足する。
イ 一致点及び相違点
甲1発明と本件訂正発明2とは、
「下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(C)成分を含有する硬化性組成物であって、(A)成分の含有量が、硬化性組成物全体に対して3.0質量%以上である硬化性組成物。(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、エポキシ基を2つ有する脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物、又は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物【化1】[図:0001407790000028.jpg](式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(C)成分:バインダー樹脂」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
(C)成分:バインダー樹脂が、本件訂正発明2は、「反応性基を有するバインダー樹脂」であって、「(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上」であるのに対し、甲1発明は、「SBS resin」であって、その含有量は硬化性組成物全体に対して12.4~18.4質量%である点。
<相違点1-2>
本件訂正発明2は、「硬化性接着剤層を有」する「デバイス用接着シート」であるのに対し、甲1発明は、「硬化性組成物」であって、「デバイス用接着シート」ではない点。
ウ 相違点の検討
まず、相違点1-1について検討する。
甲1発明を認定した甲1は「L-DAIC」の特性を示すパンフレットであって、甲1発明の硬化性組成物は「L-DAIC」を含む硬化物の誘電正接を測定するために調整された組成物にすぎず、甲1に「L-DAIC」以外の成分を特定の種類の成分に変更することや、特定の含有量に調整することについての記載や示唆はない。
そこで、硬化性組成物を構成する樹脂の種類や含有量について検討すると、甲4~甲8(前記第5の2(4)~(8)参照。)には、変性ポリフェニレンエーテル樹脂と、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS樹脂)を含むデバイス用硬化性接着シートが記載されているが、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS樹脂)は、反応性基を有するものとはされていない。
また、反応性基を有するSBS樹脂について、甲13(前記第5の2(13)の摘記13a~13c参照。)には、スチレンとブタジエンからなるブロックコポリマーを水素添加した水添スチレン系熱可塑性エラストマーであるタフテック(R)Mシリーズとして、官能基を付与した酸変性又はアミノ変性のスチレン系反応性エラストマーが記載され、その用途として相溶化剤や粘接着剤も挙げられているが、甲13はタフテック(R)のカタログパンフレットであって、その含有量を調整することについては記載も示唆もない。
また、甲9~甲12には、デバイス用接着シートの誘電特性を改善することが周知の課題であったことが記載されているが、反応性基を有するバインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることについては記載も示唆もない。
そうすると、甲1発明における「SBS resin」を反応性基を有するものとすることや、甲1発明における「SBS resin」の含有量を現状(12.4~18.4質量%)の2倍を超える40質量%以上とすることについては動機付けがなく、そのように変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件訂正発明2は、本件特許の明細書の【0080】に「バインダー樹脂(C)の含有量が、硬化性接着剤層中40~90質量%であることで、形状保持性とタック性が両立した硬化性接着剤層が得られ易くなる」と記載されるとおり、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることで、形状保持性とタック性を両立させるものとされているが、そのような作用効果は、前記列挙した甲号証に記載された事項からは予測できないものである。
してみれば、本件訂正発明2は、前記<相違点1-2>について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書46頁19~28行において、甲1発明のSBS樹脂が、反応性基を有するかどうかは特定されていないが、甲13に記載されるように、反応性基を有するスチレン系エラストマーが市販されており、それを用いることにより優れた接着性を示すことが公知であるから、甲1発明において、甲13に記載の反応性基を有するスチレン系エラストマーを用いることは当業者にとって自明である旨主張する。
しかしながら、同じスチレン系エラストマーであっても、反応性基を有するものと有しないものとでは、添加後の組成物の性質が大きく異なることが予測されるところ、甲1発明のSBS樹脂を甲13に記載されたものに変更する積極的な動機付けは見当たらない。さらに、前記ウで検討したとおり、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることは、甲13の記載から容易になし得ることでもない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明、甲4~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明4~7の甲1発明に対する進歩性
本件訂正発明4~7は、本件訂正発明2の特定事項を全て含むものであるから、前記ウと同じ理由により、本件訂正発明4~7も、甲1発明、甲4~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 甲2を主引例とした取消理由(進歩性)
(1)甲2発明の認定
ア 甲2の実施例で調製される試料1~6の樹脂組成物は、成分(A)である「主鎖の末端のヒドロキシル基がエチレン性不飽和化合物で変性されたポリフェニレンエーテル」として、「SA9000:メタクリル変性ポリフェニレンエーテル(サビックス社製)」58~66質量部、成分(B)である「ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂」として、「COC:マレイン化変性シクロオレフィンコポリマー(三井化学製)」2~10質量部、成分(C)である「トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートの少なくとも1種」として、「TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)」24~29.4質量部、成分(D)である有機過酸化物として、「パーヘキシン25B:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキシン-3(日油(株)製)」1.6~6質量部、シリカ粒子30質量部、難燃剤として「SAYTEX8010(アルベマール浅野(株)製)」30質量部からなる。ここで、樹脂組成物全体に対する「TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)」の質量割合は、最小で{24/(66+4+24+6+30+30)}×100=15質量%(試料5)、最大で{29.4/(66+3+29.4+1.6+30+30)}×100=18.4質量%(試料6)である(前記第5の2(2)の摘記2h、特に段落[0043]~[0044]、[0049]の[表1]参照)。
イ 甲2には、本開示の樹脂組成物を基材に塗布又は含浸後、乾燥して得られるプリプレグ、プリプレグと導電性金属箔とを重ね合わせ、加熱加圧成形して得られる金属張積層板、金属張積層板に回路及びスルーホールが形成された内層板とプリプレグとを重ね合わせ、プリプレグの表面に導電性金属箔を積層させた後、加熱加圧成形して得られる配線基板、表面の導電性金属箔に回路及びスルーホールが形成された多層プリント配線基板について記載されており、金属張積層板はプリント基板等に用いられることも記載されている(前記2(2)の摘記2f~2g、特に段落[0030]、[0037]、[0039]参照)。
ウ 甲2の実施例では、試料1~6の各樹脂組成物をトルエンに溶解させた樹脂ワニス(樹脂組成物とトルエンとの質量比は50:50)をPETフィルム(キャリアフィルム)上に成形、乾燥して、樹脂フィルムを得、該樹脂フィルムの積層及びキャリアフィルムの剥離を繰り返して樹脂板を作製し、該樹脂板の両面を銅箔で挟み、4MPaの加圧下で200分間加熱し(200℃)、銅張積層板を得、該銅張積層板の銅箔を剥離して、樹脂板の10GHzにおける誘電率及び誘電正接をインピーダンスアナライザー法にて測定している。そして、ここで測定された誘電正接は、最小で0.0020(試料4)、最大で0.0032(試料5)である(前記第5の2(2)の摘記2h、特に段落[0044]~[0049]、[表1]参照)。
エ そうすると、甲2実施例における試料1~6の樹脂組成物から得られる樹脂フィルムを中心として、甲2から次の発明(以下「甲2発明」という。)が認定できる。
オ 甲2発明
「成分(A)である、主鎖の末端のヒドロキシル基がエチレン性不飽和化合物で変性されたポリフェニレンエーテルとして、SA9000(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)(サビックス社製)58~66質量部、成分(B)である、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂として、COC(マレイン化変性シクロオレフィンコポリマー)(三井化学製)2~10質量部、成分(C)である、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートの少なくとも1種として、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)(日本化成(株)製)24~29.4質量部、成分(D)である有機過酸化物として、パーヘキシン25B(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキシン-3)(日油(株)製)1.6~6質量部、シリカ粒子30質量部、難燃剤としてSAYTEX8010(アルベマール浅野(株)製)30質量部からなり、樹脂組成物全体に対するTAIC(トリアリルイソシアヌレート)(日本化成(株)製)の質量割合が15~18.4質量%である樹脂フィルムであって、導電性金属箔と積層、加熱加圧成形して金属張積層板、配線基板、多層プリント配線基板の形成に使用され、10GHzにおける誘電正接が0.0020~0.0032である、樹脂フィルム。」
(2)本件訂正発明2の甲2発明に対する進歩性
ア 対比
(ア)甲2発明の「成分(A)である、主鎖の末端のヒドロキシル基がエチレン性不飽和化合物で変性されたポリフェニレンエーテルとして、SA9000(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)(サビックス社製)」は、本件訂正発明2の「(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂」に相当する。
(イ)甲2発明の「TAIC(トリアリルイソシアヌレート)」と本件訂正発明2の「(A)成分」のうち「末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物」とは、いずれも、イソシアヌレート骨格を有し、末端に二重結合を有する炭化水素基を複数有するものであるから、「(A)イソシアヌレート化合物」である点で共通する。
(ウ)甲2発明の「成分(B)である、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂として、COC(マレイン化変性シクロオレフィンコポリマー)(三井化学製)」は、本件訂正発明2の「(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」に相当する。
(エ)甲2発明の「樹脂フィルム」は、「導電性金属箔と積層、加熱加圧成形して金属張積層板、配線基板、多層プリント配線基板の形成に使用され」るものであるから、本件訂正発明2の「硬化性接着剤層」及び「デバイス用接着シート」に相当する。
イ 一致点及び相違点
そうすると、甲2発明と本件訂正発明2は、
「下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(C)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上である、デバイス用接着シート。(A)成分:イソシアヌレート化合物(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
イソシアヌレート化合物が、本件訂正発明2は「(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、・・・末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物
【化1】
[図:0001407790000029.jpg]
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)」であり、「(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上である」のに対し、甲2発明は「TAIC(トリアリルイソシアヌレート)(日本化成(株)製)」であり、「樹脂組成物全体に対するTAIC(トリアリルイソシアヌレート)(日本化成(株)製)の含有量が15~18.4質量%である」点。
<相違点2-2>
(C)成分:バインダー樹脂が、本件訂正発明2は、「反応性基を有するバインダー樹脂」であって、「(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上」であるのに対し、甲2発明は、「成分(B)である、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂として、COC(マレイン化変性シクロオレフィンコポリマー)(三井化学製)2~10質量部」である点。
ウ 相違点の検討
まず、相違点2-2について検討する。
甲1には、L-DAICが記載されているが、前記1(1)で検討したとおり、バインダー樹脂の含有量は、硬化性組成物全体に対して12.4~18.4質量%とされている。
甲4~甲8(前記第5の2(4)~(8)参照。)には、変性ポリフェニレンエーテル樹脂と、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS樹脂)を含むデバイス用硬化性接着シートが記載されているが、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS樹脂)は、反応性基を有するものとはされていない。
また、甲9~甲12(前記第5の2(9)~(12)参照。)には、デバイス用接着シートの誘電特性を改善することが周知の課題であったことが記載されているが、反応性基を有するバインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることについては記載も示唆もない。
また、甲13(前記第5の2(13)の摘記13a~13c参照。)には、タフテック(R)Mシリーズとして、官能基を付与した酸変性又はアミノ変性のスチレン系反応性エラストマーが記載され、その用途として相溶化剤や粘接着剤も挙げられているが、甲13はタフテック(R)のカタログパンフレットであって、その含有量を調整することについては記載も示唆もない。
また、甲14(前記第5の2(14)参照。)には、OPE-2StやSA900(甲2の実施例で用いられている末端変性ポリフェニレンエーテル化合物)が低誘電特性を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることが記載され、甲16(前記第5の2(16)参照。)には、TAIC(甲2の実施例で用いられているイソシアヌレート化合物)が常温で液体であることが記載されているが、反応性基を有するバインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることについては記載も示唆もない。
なお、甲15(前記第5の2(15)参照。)にも、OPE-2StやSA900(甲2の実施例で用いられている末端変性ポリフェニレンエーテル化合物)が低誘電特性を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることが記載されているが、甲15は、前記第2優先日より前に公開されたものではない。
これに対し、甲2発明の「成分(B)である、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基を有するオレフィン樹脂として、COC(マレイン化変性シクロオレフィンコポリマー)(三井化学製)」の含有量は、甲2発明を認定した甲2の[0015]~[0016](前記第5の2(2)の摘記2d参照。)に「本開示の樹脂組成物に用いられる成分(B)は低誘電率・低誘電正接成分として作用し、・・・成分(B)は2.0~20.0質量%含有することができる。成分(B)がこのような割合で含まれることによって、誘電率、誘電正接を低減できる。成分(B)は、2.0~10.0質量%の割合で含むことができる。」と記載されるように、10質量%以下が好ましく、~20質量%含有することができるものとされている。そうすると、甲2発明において、反応性基を有するバインダーの含有量を、20質量%程度までは増やすことができるかもしれないが、これを、40質量%以上とすることについては記載も示唆もなく、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件訂正発明2は、本件特許の明細書の【0080】に「バインダー樹脂(C)の含有量が、硬化性接着剤層中40~90質量%であることで、形状保持性とタック性が両立した硬化性接着剤層が得られ易くなる」と記載されるとおり、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることで、形状保持性とタック性を両立させるものとされているが、そのような作用効果は、前記列挙した甲号証に記載された事項からは予測できないものである。
そうすると、本件訂正発明2は、前記<相違点2-1>について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることが容易である旨の主張をしていない。
オ 小括
したがって、本件訂正発明2は、甲2発明、甲1、甲4~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明4~7の甲2発明に対する進歩性
本件訂正発明4~7は、本件訂正発明2の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)ウと同じ理由により、本件訂正発明4~7も、甲2発明、甲1、甲4~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 甲3を主引例とした取消理由(進歩性)
(1)甲3発明の認定
ア 甲3の実施例1~2、7~10、12~19、21で作製される樹脂シートは、(A)成分として共重合体(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)を、(B)成分として末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(PPE、三菱瓦斯化学株式会社製、品番OPE-2St)、(C)成分としてエラストマー(クラレ製、品名セプトン)を、(E)成分として重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)を少なくとも含有する熱硬化性樹脂組成物から形成されている。ここで、樹脂シート全体に対する「重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)」の質量割合は、最小で{12/(48+30+10+450+12+35+2)}×100=2.04質量%(実施例17)、最大で{28/(24.8+37.2+10+150+28+35+2)}×100=9.76質量%(実施例9)である(前記第5の2(3)の摘記3j、特に段落【0133】、表1~2参照)。
イ 同様に、甲3の実施例1~2、7~10、12~19、21で作製される樹脂シートにおいて、樹脂シート全体に対する「(A)共重合体」及び「(C)エラストマー」の合計の質量割合は、最小で{78/(48+30+10+450+12+35+2)}×100=13.29質量%(実施例17)、最大で{78/(48+30+10+20+12+35+2)}×100=49.68質量%(実施例16)である(前記第5の2(3)の摘記3j、特に段落【0133】、表1~2参照)。
ウ 甲3には、熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートが、積層板及びプリント配線板作製のための材料に適用できること、樹脂シートを加熱して硬化させることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層が作製できること、樹脂シートは複数の層を張り付けるためのボンディングシートとして使用可能であることが記載されている(前記第5の2(3)の摘記3h~3i、特に段落【0086】、【0088】、【0122】参照)。
エ 甲3の実施例では、二つの銅箔の間に樹脂シートを配置し、200℃、2MPaの条件で1時間加熱プレスして作製されたサンプルに対し、エッチング処理を施すことで両面の銅箔を除去して試験片を作製し、この試験片の試験周波数10GHzの場合での比誘電率及び誘電正接を測定している(前記第5の2(3)の摘記3j、特に段落【0134】参照)。
オ そうすると、甲3の実施例1~2、7~10、12~19、21で作製される樹脂シートを中心として、甲3から次の発明(以下「甲3発明」という。)が認定できる。
カ 甲3発明
「末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(PPE、三菱瓦斯化学株式会社製、品番OPE-2St)と、重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)と、共重合体(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)及びエラストマー(クラレ製、品名セプトン)を少なくとも含有する熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物から形成され、樹脂シート全体に対する重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)の含有量が2.04~9.76質量%であり、樹脂シート全体に対する共重合体(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)及びエラストマー(クラレ製、品名セプトン)の含有量が13.3~49.7質量%であり、積層板及びプリント配線板作製のための材料に適用可能で、複数の層を張り付けるためのボンディングシートとして使用可能である、樹脂シート。」
(2)本件訂正発明2の甲3発明に対する進歩性
ア 対比
(ア)甲3発明の「末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(PPE、三菱瓦斯化学株式会社製、品番OPE-2St)」は、本件訂正発明2の「(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂」に相当する。
(イ)甲3発明の「重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)」と、本件訂正発明2の「(A)成分」のうち「末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物」は、いずれもイソシアヌレート骨格を有し、末端に二重結合を有する炭化水素基を複数有するものであるから、「(A)イソシアヌレート化合物」である点で共通する。
(ウ)甲3発明の共重合体(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)及びエラストマー(クラレ製、品名セプトン)と、本件訂正発明2の「(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂」とは、「(C)成分:バインダー樹脂」である点で共通する。
(エ)甲3発明の「樹脂シート」は、「熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物から形成され」、「積層板及びプリント配線板作製のための材料に適用可能で、複数の層を張り付けるためのボンディングシートとして使用可能」なものであるから、本件訂正発明2の「硬化性接着剤層」及び「デバイス用接着シート」に相当する。
イ 一致点及び相違点
そうすると、甲3発明と本件訂正発明2は、
「下記(A)成分、下記(B)成分、及び下記(C)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上である、デバイス用接着シート。(A)成分:イソシアヌレート化合物(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(C)成分:バインダー樹脂」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
(C)成分:バインダー樹脂が、本件訂正発明2は、「反応性基を有するバインダー樹脂」であって、「(C)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して40質量%以上」であるのに対し、甲3発明は、「共重合体(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)及びエラストマー(クラレ製、品名セプトン)」であって、その含有量は13.3~49.7質量%である点。
<相違点3-2>
(A)成分:イソシアヌレート化合物が、本件訂正発明2は「(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物であって、・・・末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ有する、下記式(1)で表される化合物
【化1】
[図:0001407790000030.jpg]
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~15の飽和炭化水素基、炭素数2~15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。)」であり、「(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上」であるのに対し、甲3発明は「重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)」であり、「樹脂シート全体に対する重合性不飽和基を有する有機化合物1(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、品番TAIC)の質量割合が2.04~9.76質量%」である点。
ウ 相違点の検討
まず、相違点3-1について検討する。
甲3発明の「成分(A)」は、一般にEPDMゴムとも呼ばれるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(前記第5の2(3)の摘記3f-2参照。)であり、同「成分(C)」も、オレフィンユニットとスチレンユニットとを含む共重合体であるエラストマー(前記第5の2(3)の摘記3f-4参照。)であるから、いずれも、反応性基を有するものではない。
この点に関連し、甲1には、L-DAICが記載されているものの、バインダー樹脂が反応性基を有することは記載されておらず、その含有量は、硬化性組成物全体に対して12.4~18.4質量%とされている。
また、甲9~甲12には、デバイス用接着シートの誘電特性を改善することが周知の課題であったことが記載されているが、反応性基を有するバインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることについては記載も示唆もない。
また、甲14には、OPE-2StやSA900(甲3の実施例で用いられている末端変性ポリフェニレンエーテル化合物)が低誘電特性を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることが記載され、甲16には、TAIC(甲3の実施例で用いられているイソシアヌレート化合物)が常温で液体であることが記載されているが、反応性基を有するバインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることについては記載も示唆もない。
なお、甲15には、OPE-2StやSA900(甲3の実施例で用いられている末端変性ポリフェニレンエーテル化合物)が低誘電特性を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることが記載されているが、甲15は、前記第2優先日より前に公開されたものではない。
さらに、甲13(前記第5の2(13)の摘記13a~13c参照。)に、反応性基を有するSBS樹脂として、タフテック(R)Mシリーズ(官能基を付与した酸変性又はアミノ変性のスチレン系反応性エラストマー)が記載され、その用途として相溶化剤や粘接着剤も挙げられていとしても、甲13はタフテック(R)のカタログパンフレットであって、その含有量を調整することについては記載も示唆もないことを考慮すれば、甲3発明の「成分(A)」や「成分(C)」を、反応性基を有するものとする動機付けはないし、それらの含有量を40質量%以上とする必然性も見当たらない。
そして、本件訂正発明2は、本件特許の明細書の【0080】に「バインダー樹脂(C)の含有量が、硬化性接着剤層中40~90質量%であることで、形状保持性とタック性が両立した硬化性接着剤層が得られ易くなる」と記載されるとおり、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることで、形状保持性とタック性を両立させるものとされているが、そのような作用効果は、前記列挙した甲号証からは予測できないものである。
してみれば、本件訂正発明2は、前記<相違点3-2>について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、バインダー樹脂の含有量を40質量%以上とすることが容易である旨の主張をしていない。
オ 小括
したがって、本件訂正発明2は、甲3発明、甲1、甲4~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明4~7の甲3発明に対する進歩性
本件訂正発明4~7は、本件訂正発明2の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)ウと同じ理由により、本件訂正発明4~7も、甲3発明、甲4~甲16に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 取消理由で採用しなかった特許異議の申立ての理由(新規性)
前記1~3で検討したとおり、本件訂正発明2、4~7は、いずれも、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由で、甲1記載された発明でもない。よって、本件訂正発明2、4~7は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は、本件訂正により削除され、その請求項に係る特許異議の申立ては対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700504