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特許異議申立

2020-700709

回路部材接続用シートおよび半導体装置の製造方法

審判番号
2020-700709
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-076186外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年09月17日
審決日
2020年12月21日
公報発行日
2021年02月26日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6670156号発明「回路部材接続用シートおよび半導体装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6670156号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 12項目
【理 由】

第1 手続の経緯

特許第6670156号の請求項1~11に係る特許についての出願は,平成28年4月5日に出願され,令和2年3月3日にその特許権の設定登録がされ,令和2年3月18日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和2年9月17日に特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人」という。)は,特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許

特許6670156号の請求項1~11の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
相対向する電極間に介在され,前記相対向する電極を電気的に接続するために用いられる回路部材接続用シートであって,
前記回路部材接続用シートは,基材と,前記基材の少なくとも一方の面側に積層された粘着剤層と,前記粘着剤層における前記基材とは反対の面側に積層された硬化性の接着剤層とを備え,
前記接着剤層を構成する材料は,硬化前における90℃での溶融粘度が1.0×100Pa・s以上,5.0×105Pa・s以下であり,硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下であり,
続きを表示(全25行)
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は,1×103Pa以上,1×109Pa以下であることを特徴とする回路部材接続用シート。
【請求項2】
前記接着剤層を構成する材料の硬化物は,ガラス転移温度が150℃以上,350℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の回路部材接続用シート。
【請求項3】
前記接着剤層を構成する材料の硬化物は,熱重量測定による5%質量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路部材接続用シート。
【請求項4】
前記基材の厚さ(T1)に対する前記接着剤層の厚さ(T2)の比(T2/T1)は,0.01以上,5.0以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【請求項5】
前記接着剤層の厚さ(T2)の標準偏差は,2.0μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【請求項6】
前記接着剤層の硬化後の23℃における貯蔵弾性率は,1.0×102MPa以上,1.0×105MPa以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の回路部材接続用樹脂シート。
【請求項7】
前記基材の23℃における引張弾性率は,100MPa以上,5000MPa以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【請求項8】
前記接着剤層は,示差走査熱量分析法により昇温速度10℃/分で測定される発熱開始温度(TS)が,70℃~150℃の範囲内であり,発熱ピーク温度(TP)が,TS+5~60℃であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【請求項9】
前記相対向する電極は,半導体チップに設けられた貫通電極であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の回路部材接続用シートの前記接着剤層における前記粘着剤層とは反対の面と,バンプを備えた半導体ウエハにおける前記バンプが存在する面とを貼合する工程, 前記半導体ウエハを,前記回路部材接続用シートの前記接着剤層とともにダイシングし,接着剤層付き半導体チップに個片化する工程, 個片化された前記接着剤層付き半導体チップの前記バンプと,電極を備える回路基板の前記電極とが電気的に接合するように,前記接着剤層付き半導体チップを前記回路基板上に載置する工程,および 前記接着剤層付き半導体チップにおける前記接着剤層を硬化して,前記半導体チップと前記回路基板とを接着する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の回路部材接続用シートの前記接着剤層における前記粘着剤層とは反対の面と,貫通電極を備えた半導体ウエハの少なくとも一方の面とを貼合する工程, 前記半導体ウエハを,前記回路部材接続用シートの前記接着剤層とともにダイシングし,接着剤層付き半導体チップに個片化する工程, 個片化された複数の前記接着剤層付き半導体チップを,前記貫通電極同士が電気的に接続され且つ前記接着剤層と前記半導体チップとが交互に配置されるように複数積層して,半導体チップ積層体を得る工程,および 前記半導体チップ積層体における前記接着剤層を硬化して,前記半導体チップ積層体を構成する前記半導体チップ同士を接着する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

第3 申立理由の概要

申立人は,主たる証拠として下記の甲第1号証及び第2号証を,従たる証拠として下記の甲第3号証ないし甲第11号証を提出し,本件特許の請求項1~11に係る発明は,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件の請求項1~11に係る特許を取り消すものである旨主張する。

記

甲第1号証:特開2014-165206号公報
甲第2号証:特開2013-38405号公報
甲第3号証:国際公開第2014/021450号
甲第4号証:特開2015-103579号公報
甲第5号証:特開2008-244463号公報
甲第6号証:国際公開第2011/033743号
甲第7号証:特開2016-35971号公報
甲第8号証:特開2014-237811号公報

甲第9号証:山田文明,“「多機能高密度三次元集積化技術」(2)次世代三次元集積化のための評価解析技術の研究開発<(2)-B 熱・積層技術の研究開発>”第175~194頁,[online],2013年3月8日,技術研究組合,超先端電子技術開発機構 インターネット<URL:http://aset.la.coocan.jp/kenkyu/kenkyu_sanjigen_index.html>

甲第10号証:特開2015-151485号公報
甲第11号証:プラスチック材料活用事典編集委員会,「プラスチック材料活用事典」初版,第2刷,産業調査会事典出版センター,2002年4月30日,第670~677頁

第4 甲号証の記載

1.甲第1号証の記載及び甲1発明

(1)甲第1号証の記載

甲第1号証には次の記載がある。(下線は当審による。以下同じ。)

「【請求項 1】
150℃,0.05~0.20回転/分における粘度が1000~10000Pa・sであり,100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上であるアンダーフィルシート。」
「【請求項 3】
175℃で1時間熱硬化処理した後の貯蔵弾性率E’[MPa]及び熱膨張係数α[ppm/K]が25℃において下記式(1)を満たす請求項1又は2に記載のアンダーフィルシート。E’×α<250000[Pa/K] ・・・(1)」
「【請求項 4】
前記貯蔵弾性率E’は100~10000[MPa]であり,かつ前記熱膨張係数αは10~200[ppm/K]である請求項3に記載のアンダーフィルシート。」

「【0026】 また,本発明のアンダーフィルシートは,100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上であり,好ましくは500Pa・s以上である。100Pa・s以上であるので,アウトガスによるボイドの発生を低減できる。

「【0042】 アンダーフィルシートの構成材料として,熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。」

「【0064】
[裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート]
本発明の裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシートは,裏面研削用テープと,前述のアンダーフィルシートとを備える。
【0065】
図1は,裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10の断面模式図である。図1に示すように,裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10は,裏面研削用テープ1と,裏面研削用テープ上に積層されたアンダーフィルシート2とを備えている。なお,アンダーフィルシート2は,図1に示したように裏面研削用テープ1の全面に積層されていなくてもよく,半導体ウェハ3(図2A参照)との貼り合わせに十分なサイズで設けられていればよい。
【0066】
(裏面研削用テープ)
裏面研削用テープ1は,基材1aと,基材1a上に積層された粘着剤層1bとを備えている。なお,アンダーフィルシート2は,粘着剤層1b上に積層されている。」
「【0072】
粘着剤層1bの形成に用いる粘着剤は,ダイシングの際にアンダーフィルシートを介して半導体ウェハ又は半導体チップをしっかり保持し,ピックアップ時にアンダーフィルシート付きの半導体チップを剥離可能に制御できるものであれば特に制限されない。例えば,アクリル系粘着剤,ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性接着剤を用いることができる。上記感圧性接着剤としては,半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から,アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。」
「【0091】
(裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシートを用いる半導体装置の製造方法)
次に,裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10を用いる半導体装置の製造方法について説明する。図2は,裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10を用いる半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
具体的には,当該半導体装置の製造方法は,半導体ウェハ3の接続部材4が形成された回路面3aと裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10のアンダーフィルシート2とを貼り合わせる貼合せ工程,半導体ウェハ3の裏面3bを研削する研削工程,半導体ウェハ3の裏面3bにダイシングテープ11を貼りつけるウェハ固定工程,裏面研削用テープ1を剥離する剥離工程,半導体ウェハ3をダイシングしてアンダーフィルシート2付きの半導体チップ5を形成するダイシング工程,及びアンダーフィルシート2付きの半導体チップ5をダイシングテープ11から剥離するピックアップ工程,被着体6と半導体チップ5の間の空間をアンダーフィルシート2で充填しつつ接続部材4を介して半導体チップ5と被着体6とを電気的に接続する接続工程,及びアンダーフィルシート2を硬化させる硬化工程を含む。」
「【0098】
貼り合わせの温度は,好ましくは60℃以上であり,より好ましくは70℃以上である。60℃以上であると,アンダーフィルシート2の粘度が低下し,半導体ウェハ3の凹凸を空隙なく充填できる。また,貼り合わせの温度は,好ましくは100℃以下であり,より好ましくは80℃以下である。100℃以下であると,アンダーフィルシート2の硬化反応を抑制したまま貼り合わせが可能となる。」
「【0109】
<接続工程>
接続工程では,被着体6と半導体チップ5の間の空間をアンダーフィルシート2で充填しつつ接続部材4を介して半導体チップ5と被着体6とを電気的に接続する(図2G参照)。具体的には,積層体20の半導体チップ5を,半導体チップ5の回路面3aが被着体6と対向する形態で,被着体6に常法に従い固定させる。例えば,半導体チップ5に形成されている接続部材4を,被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材7に接触させて押圧しながら導電材7を溶融させることにより,半導体チップ5と被着体6との電気的接続を確保し,半導体チップ5を被着体6に固定させることができる。半導体チップ5の回路面3aにはアンダーフィルシート2が貼り付けられているので,半導体チップ5と被着体6との電気的接続と同時に,半導体チップ5と被着体6との間の空間がアンダーフィルシート2により充填されることになる。」
「【0116】
<半導体装置>
半導体装置30では,半導体チップ5と被着体6とが,半導体チップ5上に形成された接続部材4及び被着体6上に設けられた導電材7を介して電気的に接続されている。また,半導体素子5と被着体6との間には,その空間を充填するようにアンダーフィルシート2が配置されている。」
「【0134】
(熱膨張率αの測定)
熱膨張率αは,熱機械測定装置(ティーエーインスツルメント社製:形式Q-400EM)を用いて測定した。具体的には,測定試料のサイズを長さ15mm×幅5mm×厚さ200μmとし,測定試料を上記装置のフィルム引張測定用治具にセットした後,-50~300℃の温度域で,引張荷重2g,昇温速度10℃/minの条件下におき,20℃~60℃での膨張率から熱膨張係数αを算出した。」

(2)甲1発明

上述の甲第1号証の摘記によれば,甲第1号証には以下の事項が記載されているものと理解できる。

ア 裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10は,裏面研削用テープ1と,裏面研削用テープ上に積層されたアンダーフィルシート2とを備えていること。(段落0064,0065)

イ 裏面研削用テープ1が,基材1aと,基材1a上に積層された粘着剤層1bとを備えており,粘着剤層1b上にアンダーフィルシート2が積層されていること。(段落0066)

ウ アンダーフィルシートの構成材料として熱硬化性樹脂を使用すること。(段落0042)

エ 被着体6と半導体チップ5の間の空間をアンダーフィルシート2で充填しつつ接続部材4を介して半導体チップ5と被着体6とを電気的に接続する接続工程を含む半導体装置の製造方法において,裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10を用いること。(段落0091)

オ 上記エの接続工程において,半導体チップ5の回路面が被着体6と対向する形態で固定されること。(段落0109)

カ 上記エの接続工程において,半導体チップ5に形成されている接続部材4を,被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材7に接触させて押圧しながら導電材7を溶融させることにより,半導体チップ5と被着体6との電気的接続を確保すること。それにより,半導体チップ5と被着体6とが,半導体チップ5上に形成された接続部材4及び被着体6上に設けられた導電材7を介して電気的に接続されること。(段落0109,0116)

キ 半導体素子5と被着体6との電気的接続を行った後,アンダーフィルシート2を加熱により硬化させること。(段落0113)

ク アンダーフィルシートの100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上であること。(請求項1,段落0026)

ケ 175℃で1時間熱硬化処理した後のアンダーフィルシートが,-50~300℃の温度域で,引張荷重2g,昇温速度10℃/minの条件下におき,20℃~60℃での膨張率から算出した熱膨張係数αが10~200[ppm/K]であること。(請求項3~4,段落0134)

以上ア~ケによれば,甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体チップ5の回路面と被着体6を対向する形態で固定し,前記被着体6と前記半導体チップ5の間の空間をアンダーフィルシート2で充填しつつ半導体チップ5に形成されている接続部材4を被着体6上に設けられた導電材7とが電気的に接続される接続工程を含む半導体装置の製造方法に用いられる裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10であって,
前記裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10は,基材1aと,基材1a上に積層された粘着剤層1bと,前記粘着剤層1b上に積層された,熱硬化性樹脂からなるアンダーフィルシート2とを備え,
前記アンダーフィルシート2は,100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上であり,175℃で1時間熱硬化処理した後,-50~300℃の温度域で,引張荷重2g,昇温速度10℃/minの条件下におき,20℃~60℃での膨張率から算出した熱膨張係数αが10~200[ppm/K]である,
裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10。」

2.甲第2号証の記載及び甲2発明

(1)甲第2号証の記載

甲第2号証には次の記載がある。

「【0011】
以下,本発明のダイシングテープ一体型接着シート,半導体装置,多層回路基板及び電子部品に関して説明する。
本発明のダイシングテープ一体型接着シートは,支持体の第一の端子と,被着体の第二の端子を,半田を用いて電気的に接続し,前記支持体と前記被着体とを接着する接着フィルムと,ダイシングテープとから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シートであって, 前記接着フィルムを前記支持体の第一の端子が形成された面に貼り付ける際の貼り付け温度をT[℃],接着フィルムに掛ける圧力をP[MPa],前記貼り付け温度における接着フィルムの溶融粘度をη[Pa・s]としたとき,1.2×103≦(T×P)/η≦1.5×109の関係を満足し,前記貼り付け温度Tは,60~150℃,前記圧力Pは,0.2~1.0MPa,前記貼り付け温度における接着フィルムの溶融粘度ηは,0.1~100,000Pa・sであることを特徴とする。 また,本発明の半導体装置,多層回路基板および電子部品は,第一の端子を有する支持体と,第二の端子を有する被着体とを,上記接着フィルムの硬化物により,電気的に接続し,前記支持体と前記被着体とを接着したものである。」
「【0103】
(ダイシングテープ一体型接着シートの製造方法)
以上説明したようなダイシングテープ一体型接着シート10の一実施形態について以下に詳述する。
【0104】
続きを表示(全19行)
まず,図1(a)に示す基材4aを用意し,この基材4aの一方の面上に介在層1を成膜する。これにより,基材4aと介在層1との積層体61を得る。介在層1の成膜は,前述した第二樹脂組成物を含む樹脂ワニスを各種塗布法等により塗布し,その後塗布膜を乾燥させる方法や,第二樹脂組成物からなるフィルムをラミネートする方法等により行うことができる。また,紫外線等の放射線を照射することにより,塗布膜を硬化させるようにしてもよい。
【0105】
上記塗布法としては,例えば,ナイフコート法,ロールコート法,スプレーコート法,グラビアコート法,バーコート法,カーテンコート法等が挙げられる。
【0106】
また,積層体61と同様にして,図1(a)に示すように,用意した基材4bの一方の面上に接着フィルム3を成膜し,これにより,基材4bと接着フィルム3との積層体62を得る。
【0107】
さらに,各積層体61,62と同様にして,図1(a)に示すように,用意した支持フィルム4の一方の面上にダイシングテープの粘着層2を成膜し,これにより,支持フィルム4とダイシングテープの粘着層2との積層体(ダイシングテープ)63を得る。
【0108】
次いで,図1(b)に示すように,介在層1と接着フィルム3とが接するように積層体61と積層体62とを積層し,積層体64を得る。この積層は,例えばロールラミネート法等により行うことができる。
【0109】
次いで,図1(c)に示すように,積層体64から基材4aを剥離する。そして,図1(d)に示すように,前記基材4aを剥離した積層体64に対して,基材4bを残して,前記接着フィルム3および前記介在層1の有効領域の外側部分を除去する。ここで,有効領域とは,その外周が,半導体ウエハー7の外径よりも一回り小さい,若しくは外径よりも大きく,かつ,ウエハーリング9の内径よりも小さい領域を指す。
【0110】
次いで,図1(e)に示すように,介在層1の露出面にダイシングテープ2が接するように,基材4aを剥離し有効領域の外側部分をリング状に除去した積層体64と積層体63を積層する。その後,基材4bを剥離することにより,図1(f)に示すダイシングテープ一体型接着シート10が得られる。
【0111】
以上,支持フィルムに直接ダイシングテープ2を成膜する方法の一実施形態について上述したが,これ以外に支持フィルム上にダイシングテープの粘着層2,介在層1,接着フィルム3を所望の順に形成して,ダイシングテープ一体型接着シートを作製してもよい。また,接着フィルム3の基材4bをそのまま介在層として適用し,支持フィルム上にダイシングテープの粘着層2,介在層1(基材4b),接着フィルム3を所望の順に形成して,ダイシングテープ一体型接着シートを作製してもよい。」
「【0114】
(半導体装置,多層回路基板および電子部品)
次に,上述したダイシングテープ一体型接着シートを用いて製造した半導体装置,多層回路基板および電子部品について説明する。[1]図2(a)に示すように,上述したようなダイシングテープ一体型接着シート10の接着フィルム3と,半導体ウエハー7とを密着させつつ,ダイシングテープ一体型接着シート10と半導体ウエハー(支持体)7とを積層する(第1の工程)。ここで,半導体ウエハー(支持体)7において,接着フィルム3と接着する面は,第一の端子(図示せず)を有するものである。なお,図2に示すダイシングテープ一体型接着シート10では,接着フィルム3の平面視における大きさおよび形状が,半導体ウエハー7の外径よりも一回り小さい,若しくは外径よりも大きく,かつ,ウエハーリング9の内径よりも小さい形状に,あらかじめ設定されている。このため,半導体ウエハー7の下面全体が接着フィルム3の上面全体と密着し,これにより半導体ウエハー7がダイシングテープ一体型接着シート10で支持されることとなる。この半導体ウエハー7の第1の端子を接着フィルム3で覆うように,ダイシングテープ一体型接着シート10をラミネートする(図2(b))。
【0115】
ダイシングテープ一体型接着シート10を半導体ウエハー7に積層する方法としては,例えばロールラミネーター,平板プレス,ウエハーラミネーター等が挙げられる。これらの中でもラミネート時に空気を巻き込まないようにするため,真空下でラミネートする方法(真空ラミネーター)が好ましい。
【0116】
また,ラミネートする条件としては,特に限定されず,ボイドなくラミネートできればよい。具体的には60~150℃で1秒~120秒間加熱する条件が好ましく,特に80~120℃で5~60秒間加熱する条件が好ましい。ラミネート条件が前記範囲内であると,貼着性と,樹脂のはみ出しの抑制効果と,樹脂の硬化度とのバランスに優れる。また,加圧条件も特に限定されないが,0.2~2.0MPaが好ましく,特に0.5~1.5MPaが好ましい。
【0117】
上記積層の結果,図2(b)に示すように,ダイシングテープ一体型接着シート10と半導体ウエハー7とが積層されてなる積層体8が得られる。」
「【0121】
続いて,図2(c)に示すように,ダイシングブレード82を用いて積層体8に複数の切り込み81を形成する(ダイシング)。ダイシングブレード82は,円盤状のダイヤモンドブレード等で構成されており,これを回転させつつ積層体8の半導体ウエハー7側の面に押し当てることで切り込み81が形成される。そして,半導体ウエハー7に形成された回路パターン同士の間隙に沿って,ダイシングブレード82を相対的に移動させることにより,半導体ウエハー7が複数の半導体チップ71に個片化される(第2の工程)。また,接着フィルム3も同様に,複数の接着フィルム31に個片化される。このようなダイシングの際には,半導体ウエハー7に振動や衝撃が加わるが,半導体ウエハー7の下面がダイシングテープ一体型接着シート10で支持されているため,上記の振動や衝撃が緩和されることとなる。その結果,半導体ウエハー7における割れや欠け等の不具合の発生を確実に防止することができる。」
「【0123】
[3]
[3-1]次に,複数の切り込み81が形成された積層体8を,図示しないエキスパンド装置により,放射状に引き延ばす(エキスパンド)。これにより,図2(d)に示すように,積層体8に形成された切り込み81の幅が広がり,それに伴って個片化された半導体チップ71同士の間隔も拡大する。その結果,半導体チップ71同士が干渉し合うおそれがなくなり,個々の半導体チップ71をピックアップし易くなる。なお,エキスパンド装置は,このようなエキスパンド状態を後述する工程においても維持し得るよう構成されている。
【0124】
[3-2]次に,ダイボンダー250により,個片化された半導体チップ71のうちの1つを,ダイボンダーのコレット(チップ吸着部)260で吸着するとともに上方に引き上げる。その結果,図3(e)に示すように,接着フィルム31と介在層1との界面が選択的に剥離し,半導体チップ71と接着フィルム31とが積層されてなる個片83がピックアップされる(第3の工程)。
【0125】
なお,接着フィルム31と介在層1との界面が選択的に剥離する理由は,前述したように,ダイシングテープの粘着層2の粘着性が介在層1の粘着性より高いため,支持フィルム4とダイシングテープの粘着層2との界面の密着力,および,ダイシングテープの粘着層2の介在層1との界面の粘着力は,介在層1と接着フィルム3との密着力より大きいからである。すなわち,半導体チップ71を上方にピックアップした場合,これらの3箇所のうち,最も粘着力の小さい介在層1と接着フィルム3との界面が選択的に剥離することとなる。」
「【0128】
[4]
[4-1]次に,半導体チップ71を搭載(マウント)するための被着体5を用意する。
【0129】
続きを表示(全12行)
この被着体5は,前記接着フィルム3と接着する面に第2の端子(図示せず)を有するものである。この被着体5としては,半導体チップ71を搭載し,半導体チップ71と外部とを電気的に接続するための配線を有する基板や半導体チップ等が挙げられる。
【0130】
なお,第一の端子と第二の端子としては,例えば電極パッド,半田バンプ等が挙げられる。また,第一の端子,第二の端子の少なくとも一方に半田が存在することが好ましい。
【0131】
次いで,図3(f)に示すように,ピックアップされた個片83を,被着体5上に載置する。この際,半導体チップ71の第一の端子と,被着体5の第二の端子とを位置合わせしながら,接着フィルム3を介して仮圧着する。 【0132】
[4-2]次に,被着体5と半導体チップ71を半田接合する(第4の工程)。半田接合する条件は,使用する半田の種類にもよるが,例えばSn-Agの場合,220~260℃で5~500秒間加熱して半田接合することが好ましく,特に230~240℃で10~100秒間加熱することが好ましい。この半田接合は,半田が融解した後に,接着フィルム3が硬化するような条件で行うことが好ましい。すなわち,半田接合は,半田を融解させるが,接着フィルム3の硬化反応があまり進行させないような条件で実施することが好ましい。これにより,半田接合する際の半田接合部の形状を接続信頼性に優れるような安定した形状とすることができる。
【0133】
次に,接着フィルム3を加熱して硬化させる(第5の工程)。硬化させる条件は,特に限定されないが,130~220℃で30~500分間加熱する条件が好ましく,特に150~200℃で60~180分間加熱する条件が好ましい。」

(2)甲2発明

上述の甲第2号証の摘記によれば,甲第2号証には以下の事項が記載されているものと理解できる。

ア 支持体の第一の端子と,被着体の第二の端子を,半田を用いて電気的に接続し,前記支持体と前記被着体とを接着する接着フィルムと,ダイシングテープとから構成される積層構造を有するダイシングテープ一体型接着シート。(段落0011)

イ 貼り付け温度(60~150℃)における接着フィルムの溶融粘度ηは,0.1~100,000Pa・sであること。(段落0011)

ウ 支持フィルム4上に粘着層2,介在層1,接着フィルム3を積層して,ダイシングテープ一体型接着シート10を作製すること。(段落0103~0111)

エ ダイシングテープ一体型接着シート10の接着フィルム3を介して半導体チップ71の第一の端子と,被着体5の第二の端子とを位置合わせしながら仮圧着し,次に,被着体5と半導体チップ71を半田接合すること。(段落0128~0133)

オ 半田接合の後,接着フィルム3を加熱して硬化させること。(段落0133)

上記ア~オから,甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「支持フィルム4と,前記支持フィルム4上に積層された粘着層2と,前記粘着層2上に積層された介在層1と,前記介在層1上に積層された接着フィルム3とを備えるダイシングテープ一体型接着シート10であって,
前記接着フィルム3は,半導体チップ71の第一の端子と被着体5の第二の端子を,半田を用いて電気的に接続し,前記半導体チップ71と前記被着体5とを接着するものであり,
前記接着フィルム3の貼り付け温度である60~150℃における溶融粘度ηは,0.1~100000Pa・sである,
ダイシングテープ一体型接着シート10。」

3.甲第3号証ないし甲第11号証の記載

(1)甲第3号証の記載

甲第3号証には次の記載がある。

「[0001] 本発明は,半導体チップを有機基板やリードフレームあるいは他の半導体チップに接着(ダイボンディング)する工程で使用するのに特に適したフィルム状接着剤,半導体接合用接着シート,ならびに該フィルム状接着剤や該接着シートを用いた半導体装置の製造方法に関する。」

「[0058] 支持シートとして用いられる樹脂フィルムとしては,たとえば,ポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルム,ポリブテンフィルム,ポリブタジエンフィルム,ポリメチルペンテンフィルム,ポリ塩化ビニルフィルム,塩化ビニル共重合体フィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリエチレンナフタレートフィルム,ポリブチレンテレフタレートフィルム,ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとからなる複合フィルム,ウレタンアクリレート硬化物フィルム,エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム,アイオノマー樹脂フィルム,エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム,エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム,ポリスチレンフィルム,ポリカーボネートフィルム,ポリイミドフィルム,フッ素樹脂フィルムなどのフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また,これらを着色したフィルムなどを用いることができる。接着剤層がエネルギー線硬化性を有する場合には,エネルギー線の透過性があるものが好ましい。また,支持シートと接着剤層の層間剥離を行う前にも被着体の表面を視認できることが要求される場合には,可視光の透過性がある(透明または半透明である)ことが好ましい。
これらの中でも,樹脂フィルムとしては,23℃における貯蔵弾性率が,好ましくは1×107Pa以上,より好ましくは1×108~1×109Paである樹脂フィルムを用いることが好ましい。また,引張試験に基づく23℃における応力緩和率が,好ましくは40%以上,より好ましくは70~90%である樹脂フィルムを用いることが好ましい。貯蔵弾性率や応力緩和率が上記範囲の樹脂フィルムを用いることで,ウエハの裏面研削工程において,ウエハの反りやディンプルの発生を抑制できる。
ここで,引張試験に基づく23℃における応力緩和率は,以下の方法により測定される。樹脂フィルムを15mm×140mmにカットしてサンプルを形成する。23℃,相対湿度50%の環境下で,万能引張試験機(SHIMADZU社製オートグラフAG-10kNIS)を用いて,このサンプルの両端20mmを掴み,毎分200mmの速度で引っ張り,10%伸張したときの応力A(N/m2)と,テープの伸張停止から1分後の応力B(N/m2)とを測定する。これらの応力A,Bの値から,(A-B)/A×100(%)を応力緩和率として算出する。
このようなフィルムの特性は,ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとからなる複合フィルムや,ウレタンアクリレート硬化物フィルムで得られやすい。ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとからなる複合フィルムとしては,たとえば特開2007-84722に開示されているものを用いることができる。ウレタンアクリレート硬化物フィルムとしては,たとえば特開平11-343469に開示されているものを用いることができる。」
「[0063] 支持シートは,上記のような樹脂フィルム上に粘着剤層を備える粘着シートであってもよい。接着剤層を粘着剤層から剥離可能とすることを目的として,粘着剤層は,再剥離性を有する公知の粘着剤から構成することができ,紫外線硬化型,加熱発泡型,水膨潤型,弱粘型等の粘着剤を選択することで,接着剤層の剥離を容易とすることができる。特に,ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとからなる複合フィルムまたはウレタンアクリレート硬化物フィルムを樹脂フィルムの構成層として用いる場合,これらのフィルムは通常柔軟であり自着性を有していることから,これらが接着剤層と直接接触した構成であると層間剥離が困難となることがある。そこで,このような事態を避けるために支持シートを粘着シートとすることが好ましい。
粘着シートの粘着力は,好ましくは10~10000mN/25mm,より好ましくは50~2000mN/25mmである。粘着力は,JISZ0237;2009に準拠して,被着体(SUS)に貼付して30分経過後における粘着シートの180°引き剥がし法による粘着力である。粘着シートの粘着力を上記範囲とすることで,粘着剤層から接着剤層を剥離することが容易になる。
また,粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は,好ましくは1×104Pa以上,より好ましくは1×105~1×108Paである。貯蔵弾性率が上記範囲の粘着剤層を用いることで,ウエハの裏面研削工程において,ウエハの反りやディンプルの発生を抑制できる。
また,樹脂フィルムの上面,すなわち粘着剤層が設けられる側の樹脂フィルム表面には粘着剤層との密着性を向上させるために,コロナ処理を施したり,プライマー層を設けてもよい。また,粘着剤層とは反対面に各種の塗膜を塗工してもよい。」

(2)甲第4号証の記載

ア 甲第4号証には次の記載がある。

「【0001】
本発明は,熱硬化型ダイボンドフィルム,ダイシングシート付きダイボンドフィルム,及び半導体装置の製造方法に関する。」
「【0012】
本発明は,熱伝導性粒子を含み,上記熱伝導性粒子の含有量が,熱硬化型ダイボンドフィルム全体に対して75重量%以上であり,硬化させて得られる硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数が5ppm/K~50ppm/Kであり,上記硬化物のガラス転移点を超える温度における線膨張係数が150ppm/K以下である熱硬化型ダイボンドフィルムに関する。
【0013】
本発明では,熱伝導性粒子を比較的多く配合することで,硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数を5ppm/K~50ppm/Kに調整し,硬化物のガラス転移点を超える温度における線膨張係数を150ppm/K以下に調整している。本発明の熱硬化型ダイボンドフィルムでは,ガラス転移点以下における線膨張係数及びガラス転移点を超える温度における線膨張係数が,リードフレームの主成分である銅の線膨張係数16.8ppm/Kに近いため,高温(例えば,260℃)加熱を行うリフロー工程において線膨張の差から起こる応力の発生を抑制することが可能で,信頼性に優れた半導体装置が得られる。」
「【0053】
ダイボンドフィルム3,3’を硬化させて得られる硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数が5ppm/K以上である。5ppm/K以上であるので,リフロー工程において,ダイボンドフィルム3,3’ の線膨張及びリードフレームなどの被着体の線膨張の差から起こる応力の発生を抑制することが可能で,信頼性に優れた半導体装置が得られる。硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数は,好ましくは10ppm/K以上である。一方,硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数が50ppm/K以下である。50ppm/K以下であるので,リフロー工程において,ダイボンドフィルム3,3’の線膨張及びリードフレームなどの被着体の線膨張の差から起こる応力の発生を抑制することが可能で,信頼性に優れた半導体装置が得られる。硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数は,好ましくは40ppm/K以下である。」
「【0057】
ダイボンドフィルム3,3’を硬化させて得られる硬化物のガラス転移点は好ましくは80℃以上である。80℃以上であると,半導体装置の通常の使用温度範囲及び熱サイクル信頼性試験の温度範囲における急激な物性変化を抑制できる。一方,硬化物のガラス転移点は,特には限定されないが,例えば200℃以下,好ましくは120℃以下である。
なお,硬化物のガラス転移点は実施例に記載の方法で測定できる。」

イ 上記によれば,甲第4号証には以下の技術的事項が記載されているものと理解できる。

・熱硬化型のダイボンドフィルムにおいて,硬化物のガラス転移点(80℃~200℃)以下における線膨張係数を5ppm/K~50ppm/Kに調整することで,リフロー工程における応力の発生を抑制すること。

(3)甲第5号証の記載

甲第5号証には次の記載がある。

「【0001】
本発明は熱硬化型ダイボンドフィルム及びそれを備えたダイシング・ダイボンドフィルムに関し,より詳細には,半導体チップ等を基板やリードフレーム等の被着体上にダイボンドする際に用いられる熱硬化型ダイボンドフィルム及びそれを備えたダイシング・ダイボンドフィルムに関する。」
「【0053】
また,前記ダイボンドフィルムの熱硬化後のガラス転移点は175℃以上であることが好ましく,185~210℃であることがより好ましい。ガラス転移点を175℃以上にすることにより,後述する封止工程に於いて半導体素子が傾斜するのを防止し,また,はんだリフロー工程の際にダイボンドフィルムと被着体の間に剥離が生じるのを防止することができる。ダイボンドフィルムの熱硬化後のガラス転移点の調整は,例えば,熱硬化性樹脂の添加量により可能である。この場合,ガラス転移点を175℃以上にするためには,熱硬化性樹脂の添加量は熱可塑性樹脂成分100重量%に対し,400~1000重量%であることが好ましい。」

(4)甲第6号証の記載

甲第6号証には以下の記載がある。

「[0001] 本発明は,接着フィルム,多層回路基板,電子部品及び半導体装置に関するものである。」

「[0033] 一方,本発明において,5%重量加熱減量温度(b)とは,接着フィルムの耐熱性を示す物性のひとつである。5%重量加熱減量温度(b)が高いほど,耐熱性が高くなり好ましい。また,5%重量加熱減量温度(b)が低いことは,加熱による分解物及び揮発物が多いことを示す。すなわち,5%重量加熱減量温度(b)が低いほど,硬化後の接着フィルム中にボイド(気泡)の原因が増加することとなり,ボイドが発生しやすくなる。」

甲第6号証の表1として以下の表が示されている。

(5)甲第7号証の記載

甲第7号証には次の記載がある。

「【0005】
一方,近年,フリップチップ実装のなかでも,複数の半導体チップを積層してデバイスを飛躍的に高性能化,小型化したTSV(Si貫通ビヤ/Through Silicon via)を使った3次元積層技術が注目されている。TSV積層技術においては,一般的に,半導体ウエハ上の格子状に区切られた各接合部位に,接着フィルムを介して複数の貫通電極付き半導体チップ(TSVチップ)を多層積層したのち,格子状のダイシングラインに沿って半導体ウエハをダイシングすることで多層半導体チップ積層体が製造される。」

(6)甲第8号証の記載

甲第8号証には次の記載がある。

「【0030】
上記のように,本発明における半導体装置について,図1に記載の実施形態を中心に説明したが,当該実施形態に限定されない。例えば,前記半導体チップの部分には,半導体チップの他に,電子回路が作り込まれた半導体ウエハ及びシリコン基板,または,インターポーザー,リジット基板,フレキシブル基板,リジットフレキシブル基板等のプリント配線板を用いることもでき,前記インターポーザ-の部分には,インターポーザーの他に,半導体チップ,電子回路が作り込まれた半導体ウエハ及びシリコン基板,または,リジット基板,フレキシブル基板,リジットフレキシブル基板等のプリント配線板を用いることができる。また,図1に記載の実施形態は,正方形状の態様について説明したが,長方形状のものも用いることができる。また,本発明の半導体装置は,インターポーザー上に複数の半導体チップを,その厚み方向に複数個積層し,複数の半導体チップ間,および半導体チップとインターポーザー間を電気的に接合する接合部を有し,該接合部を封止する複数の封止層を有し,これらの封止層に本発明のフィルム状の電極接続用樹脂組成物が適用された半導体装置も含まれる。このような半導体装置には,半導体チップにおいて,TSVチップ(Through Silicon Vear Chip)を好適に用いることができる。」

(7)甲第9号証の記載

甲第9号証の第188頁には,以下のスライドが示されている。

(8)甲第10号証の記載

甲第10号証には次の記載がある。

「【0008】
ここで,「感圧接着剤」とは,適用温度(典型的には-20℃~60℃)で粘着性を示す接着剤をいい,「粘着性」とは,適用温度(20℃~22℃で測定することが好ましい)において10ラジアン/秒で測定した貯蔵弾性率(G’)が3×105パスカル未満であることを意味する(ダールキスト基準)。また,「粘着性高分子」とは,前述の「粘着性」を有した高分子であり,高分子の語は,国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会による,「高分子」又は「ポリマー」の定義に従う(http://main.spsj.or.jp/c19/iupac/Recommendations/glossary36.html)。また,「質量%」は「重量%」と表されることもあり,「質量%」と「重量%」とは同義である。」

(9)甲第11号証の記載

甲第11号証の表1として,以下の表が示されている。

甲第11号証の図35として,以下の図が示されている。

第5 当審の判断

1.本件発明1について

1.1.本件発明1と甲1発明の対比・判断について

(1)一致点及び相違点

本件発明1と甲1発明を比較する。

ア 甲1発明において,「半導体チップ5」及び「被着体6」は「対向する形態で固定」されるから,甲1発明における「半導体チップ5に形成されている接続部材4を被着体6上に設けられた導電材7」は,本件発明1における「相対向する電極」に相当する。

イ 甲1発明における「裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10」は,上記「接続部材4」と「導電材7」とが「電気的に接続される接続工程を含む半導体装置の製造方法に用いられる」ものであり,当該「裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10」の「アンダーフィルシート2」は「前記被着体6と前記半導体チップ5の間の空間を」「充填」するものである。そうすると,甲1発明における「裏面研削用テープ一体型アンダーフィルシート10」は本件発明1における「回路部材接続用シート」に相当し,両者はともに「相対向する電極間に介在され,前記相対向する電極を電気的に接続するために用いられる」点で一致する。

ウ 甲1発明における「基材1a」「粘着剤層1b」及び「熱硬化性樹脂からなるアンダーフィルシート2」が,本件発明1における「基材」「粘着剤層」及び「硬化性の接着剤層」に相当する。なお,アンダーフィルが接着性を有することは技術常識から明らかである。

エ 甲1発明において「前記アンダーフィルシート2は,100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上」であることは,本件発明1において「前記接着剤層を構成する材料」は「硬化前における90℃での溶融粘度が1.0×100Pa・s以上,5.0×105Pa・s以下」であることに対応する。

そうすると,本件発明1と引用発明1は,「接着剤を構成する材料」の「溶融粘度が所定の値」である点で共通する。

オ 甲1発明において「前記アンダーフィルシート2」は「175℃で1時間熱硬化処理した後,-50~300℃の温度域で,引張荷重2g,昇温速度10℃/minの条件下におき,20℃~60℃での膨張率から算出した熱膨張係数αが10~200[ppm/K]である」ことは,本件発明1において「前記接着剤層を構成する材料」は「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」であることに対応する。

そうすると,本件発明1と甲1発明は,「接着剤を構成する材料」の「平均線膨張係数が所定の値」である点で共通する。

カ 本件発明1の「粘着剤層」と甲1発明の「粘着剤層1b」は,いずれも粘着剤の層であるから,「所定の貯蔵弾性率」を有する点で共通する。

上記ア~カによれば,本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「相対向する電極間に介在され,前記相対向する電極を電気的に接続するために用いられる回路部材接続用シートであって,
前記回路部材接続用シートは,基材と,前記基材の少なくとも一方の面側に積層された粘着剤層と,
前記粘着剤層における前記基材とは反対の面側に積層された硬化性の接着剤層とを備え,
前記接着剤層を構成する材料は,溶融粘度が所定の値であり,硬化物の平均線膨張係数が所定の値であり,
前記粘着剤層の貯蔵弾性率は,所定の値である
ことを特徴とする回路部材接続用シート。」

<相違点1-1>

本件発明1では,「前記接着剤層を構成する材料」の「硬化前における90℃での溶融粘度が1.0×100Pa・s以上,5.0×105Pa・s以下」であるのに対し,甲1発明では「100~200℃,0.3~0.7回転/分における最低粘度が100Pa・s以上」である点。

<相違点1-2>

本件発明1では,「前記接着剤層を構成する材料」の「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」であるのに対し,甲1発明では「175℃で1時間熱硬化処理した後,-50~300℃の温度域で,引張荷重2g,昇温速度10℃/minの条件下におき,20℃~60℃での膨張率から算出した熱膨張係数αが10~200[ppm/K]」である点。

<相違点1-3>

本件発明1では「前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は,1×103Pa以上,1×109Pa以下」であるのに対し,甲1発明では,「粘着剤層1b」の貯蔵弾性率が特定されていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み,まず相違点1-2について検討する。

甲第4号証(上記第4の3.(2)イ)には,熱硬化型のダイボンドフィルムにおいて,硬化物のガラス転移点(80℃~200℃)以下における線膨張係数を5ppm/K~50ppm/Kに調整することで,リフロー工程における応力の発生を抑制することが記載されている。しかしながら,甲第4号証には「0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは記載も示唆もされていない。

また,甲第2~3号証,甲第5~11号証のいずれにも,接着剤層の「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは,記載も示唆もされていない。

申立人は,0~130℃における平均線膨張係数(=熱膨張係数)をどの程度とするかは,当業者が必要に応じて,熱硬化性樹脂,熱硬化剤,硬化促進剤,高分子化合物,無機フィラー,溶剤,その他の添加剤等を所定量配合して混合することで決定し得る設計事項である,と主張する。しかしながら,回路部材接続用シートの接着剤層を構成する材料の硬化物の0~130℃における平均線膨張係数は,単なる設計的事項ではなく,上述のとおり,「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは,甲第1~11号証のいずれにも,記載も示唆もされていない事項であるから,かかる主張には理由がない。

したがって,相違点1-1及び相違点1-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明及び甲第2号証~甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1.2.本件発明1と甲2発明の対比・判断について

(1)一致点及び相違点

本件発明1と甲2発明とを比較する。

ア 甲2発明における「支持フィルム4」及び「粘着層2」が,本件発明1における「基材」及び「粘着剤層」に相当する。

イ 甲第2号証の段落0133には,「接着フィルム3」を加熱して硬化させることが記載されており,接着フィルム3は熱硬化性であることが理解できる。そうすると,甲2発明における「接着フィルム3」は,本件発明1における「硬化性の接着剤層」に相当する。

ウ 甲2発明の「半導体チップ71」及び「被着体5」は,「接着フィルム3」により接着され,「半導体チップ71の第一の端子」と「被着体5の第二の端子」が電気的に接続されるものである。そうすると,上記「接着フィルム3」を備える甲2発明の「ダイシングテープ一体型接着シート10」は本件発明1における「回路部材接続用シート」に相当し,両者はともに「相対向する電極間に介在され,前記相対向する電極を電気的に接続するために用いられる」点で一致する。

エ 甲2発明の「接着フィルム3」は「貼り付け温度である60~150℃における溶融粘度ηは,0.1~100000Pa・s」である。ここで,「貼り付け温度」とは,ダイシングテープ一体型シート10と半導体ウエハー7とを積層し,ラミネートする温度であるから(甲第2号証の段落0114,0116(上記第4の2.(1))を参照。),熱硬化前の温度であることは明らかである。そうすると,甲2発明には,硬化前における90℃での溶融粘度ηが0.1~1.0×105Pa・sである接着フィルム3が記載されていると理解できる。そうすると,本件発明1と甲2発明とは,ともに「前記接着剤層を構成する材料は,硬化前における90℃での溶融粘度が1.0×100Pa・s以上,5.0×105Pa・s以下」である点で一致する。

オ 本件発明1の「接着剤層」と甲2発明の「接着フィルム3」は,いずれも「所定の平均線膨張係数」を有する点で共通する。

カ 本件発明1の「粘着剤層」と甲2発明の「粘着剤層1b」は,いずれも粘着剤の層であるから,両者はともに「所定の貯蔵弾性率」を有する点で共通する。

上記ア~カによれば,本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「相対向する電極間に介在され,前記相対向する電極を電気的に接続するために用いられる回路部材接続用シートであって,
前記回路部材接続用シートは,基材と,前記基材の少なくとも一方の面側に積層された粘着剤層と,前記粘着剤層における前記基材とは反対の面側に積層された硬化性の接着剤層とを備え,
前記接着剤層を構成する材料は,硬化前における90℃での溶融粘度が1.0×100Pa・s以上,5.0×105Pa・s以下であり,硬化物の平均線膨張係数が所定の値であり,
前記粘着剤層の貯蔵弾性率は,所定の値である
ことを特徴とする回路部材接続用シート。」

<相違点2-1>

本件発明1では,「前記接着剤層を構成する材料」の「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」であるのに対し,甲2発明では,「接着フィルム3」の平均線膨張係数が特定されていない点。

<相違点2-2>

本件発明1では「前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は,1×103Pa以上,1×109Pa以下」であるのに対し,甲2発明では,「粘着層」の貯蔵弾性率が特定されていない点。

(2)相違点についての判断

はじめに相違点2-1について検討する。

相違点2-1は上記1.1(2)で検討した相違点1-2に対応するものである。そして,上記1.1(2)で検討のとおり,甲第4号証には,熱硬化型のダイボンドフィルムにおいて,硬化物のガラス転移点(80℃~200℃)以下における線膨張係数を5ppm/K~50ppm/Kに調整することは記載されているが,「0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは記載も示唆もされていない。また,甲第1,3,5~11号証にも,接着剤層の「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは記載も示唆もされていない。

申立人は,硬化物のガラス転移点以下における線膨張係数を求めるにあたって,線膨張係数を求める温度域を0~130℃とすることは,設計事項である,と主張する。しかしながら,線膨張係数を求める温度域と線膨張係数の限界値は,それぞれ独立して適宜設定し得る単なる設計事項ではなく,上述のとおり,「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」とすることは,甲第1~11号証のいずれにも,記載も示唆もされていない事項であるから,かかる主張には理由がない。

したがって,相違点2-2について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2発明及び甲第1,3~11号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本件発明2~11について

本件発明2~11もまた,「前記接着剤層を構成する材料」の「硬化物の0~130℃における平均線膨張係数が45ppm以下」との特定事項を含むから,本件発明1について上記1.に示した理由と同様の理由により,甲1発明及び甲第2~11号証に記載された技術的事項に基づいて,あるいは,甲2発明及び甲第1,3~11号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.まとめ

以上のとおり,本件発明1~11は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明,及び,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許法29条2項の規定に違反して特許された発明とはいえない。

第6 結言

したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。

また,他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。

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2020-700709

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