特許異議申立
2025-701012
粘着テープ
- 審判番号
- 2025-701012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-159655
- 登録番号
- 7666277
- 請求日
- 2025年10月21日
- 審決日
- 2026年02月26日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】西藤 征彦
- 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
- 【権利者代理人】西藤 優子
- 【権利者代理人】寺尾 茂泰
- 【異議申立人】浜口 大樹
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 村守 宏文
- 審判官 山田 貴之
- 分類
- P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7666277号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7666277号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和3年9月29日を出願日とする特許出願をしたものであって、令和7年4月14日に請求項1~7に係る特許の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行されたところ、令和7年10月21日に特許異議申立人 浜口 大樹(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
特許第7666277号の請求項1~7の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明7」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記基材がフラットヤーンクロスを含み、前記粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤を含み、粘着剤層のゲル分率が50~80質量%である粘着テープ。
【請求項2】
アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
アクリル系樹脂がそのモノマー単位として下記一般式(1)で示される末端カルボキシ基含有モノマー単位を含む請求項1または2に記載の粘着テープ。
【化1】
[図:0001433122000001.jpg]
ここで、R1は水素またはメチル基、R2は2価の飽和脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基、飽和脂環族基、または不飽和脂環族炭化水素基、nは1以上の正数を示す。
【請求項4】
アクリル系樹脂がそのモノマー単位として水酸基含有モノマー単位を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
粘着剤層にアクリル系樹脂100質量部に対して難燃剤を10質量部未満含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤層に粘着付与剤を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
欧州建材火災安全規格 EN13501-1の着火性試験で燃焼長が100mm以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着テープ。」
第3 申立ての理由の概要
令和7年10月21日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項2~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証又は甲第9号証に記載された事項に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 証拠方法
(1)甲第1号証:特開2018-154732号公報
(2)甲第2号証:特開2015-124301号公報
(3)甲第3号証:特開2019-151837号公報
(4)甲第4号証:特開2013-159643号公報
(5)甲第5号証:特開2017-145279号公報
(6)甲第6号証:特開2013-199651号公報
(7)甲第7号証:特開2020-193331号公報
(8)甲第8号証:特開2003-73640号公報
(9)甲第9号証:特開2011-124558号公報
以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審合議体の判断
以下に述べるとおり、当審合議体は、申立人が申し立てる申立理由1、2によっては本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(新規性欠如)について
(1)甲1に基づく新規性欠如について
ア 甲1の記載及び甲1に記載された発明
(ア)甲1の記載
「【0059】
<イソシアネート系架橋剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)に加え、イソシアネート系架橋剤(B)を含有する。イソシアネート系架橋剤(B)は、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成させるものである。
・・・
【0061】
上記イソシアネート系架橋剤(B)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の架橋剤、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等と併用してもよい。」
「【実施例】
【0095】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0096】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂(A)を調製した。
なお、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度、及び粘度に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0097】
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A)の製造に先立ち、製造に用いる共重合成分(a)として以下のものを用意した。
(a1)成分として、
・MA:メチルアクリレート
・EA:エチルアクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
・Vac:酢酸ビニル
・ACMO:アクリロイルモルホリン
(a2)成分として、
・下記一般式(1)で示される末端カルボキシル基含有モノマー
CH2=CR1-CO-O-(R2-COO-)nH ・・・(1)
上記一般式(1)においてR1は水素、R2はエチレン鎖、nは1~5の化合物
(a3)成分として、
・アクリル酸
(a4)成分として、
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0098】
なお、上記(a2)成分については、ソルベイ日華社製の「サイポマーH」を使用した。
サイポマーHは、一般式(1)のR1は水素、R2はエチレン鎖であり、n=0つまりアクリル酸(a3)を25%、n=1~5の化合物(a2)を75%含有する混合物である。
【0099】
〔アクリル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機及び還流冷却機を備えた反応器内に、メチルアクリレート(a1)6部、ブチルアクリレート(a1)25.8部、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)63.1部、サイポマーH 5部〔一般式(1)で示される末端カルボキシル基含有モノマー(a2)3.75部、アクリル酸(a3)1.25部〕、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a4)0.1部、酢酸エチル55部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15部を仕込み、撹拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、酢酸エチルで希釈してアクリル系樹脂(A-1)の50%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)は58万、分散度5.2、ガラス転移温度は-59℃、樹脂溶液の粘度は4,200mPa・s/25℃であった。
【0100】
〔アクリル系樹脂(A-2)~(A-5)の製造〕
アクリル系樹脂(A-1)の製造において、後記の表1の示す配合量に変更した以外は同様に行い、アクリル系樹脂(A-2)~(A-5)の溶液を得た。
【0101】
<架橋剤>
架橋剤として以下のものを用意した。
・イソシアネート系架橋剤(B):日本ポリウレタン工業社製、コロネートL-55E(固形分55%)
・エポキシ系架橋剤:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、テトラッドC)
【0102】
<粘着付与剤>
粘着付与剤(C)として以下のものを用意した。
・不均化ロジンエステル(荒川化学工業社製、スーパーエステルA-100)
【0103】
<実施例1~7>
上記のようにして調製、準備したアクリル系樹脂(A-1)~(A-5)について、その固形分100部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(B)を固形分に換算して後記の表2記載の量、及び、粘着付与剤(C)を15部混合し、酢酸エチルにて固形分濃度を48%になるように調液し、均一になるまで撹拌し、粘着剤組成物溶液を得た。
得られた粘着剤組成物について、以下の通り粘着テープを作製し、以下の評価を行った。評価結果を後記の表2に示す。
・・・
【0112】
【表2】
[図:0001433122000002.jpg]
」
(イ)甲1に記載された発明
甲1に記載された実施例3の粘着テープについて、段落0096~0099におけるアクリル系樹脂(A-1)の製造方法についての記載、段落0101~0103、0112の表2における実施例3の粘着剤組成物溶液の調製方法についての記載、及び、段落0105における実施例3の気密防水用粘着テープの作製方法についての記載を参照しつつ整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「アクリル系樹脂(A-1)溶液(メチルアクリレート6重量部、ブチルアクリレート25.8重量部、2-エチルへキシルアクリレート63.1重量部、サイポマーH(ソルベイ日華社製)5重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部、酢酸エチル55部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を重合させて得たアクリル系樹脂溶液)の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL-55E)を0.96重量部(固形分換算)及び粘着付与剤(C)(荒川化学工業社製、スーパーエステルA-100)15重量部(固形分換算)を混合し、酢酸エチルにて調液し、撹拌して得た粘着剤溶液をフラットヤーン(ダイヤテックス社製)に対して塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、紙製リリースライナーの剥離面を貼り合わせた後、加熱エージング処理して得た粘着テープであって、粘着剤層のゲル分率は49.75重量%である、粘着テープ」
イ 本件特許発明1について
(ア)甲1発明との対比
甲1発明の「フラットヤーン」は、粘着剤溶液が塗工される基材であるから、本件特許発明1の「フラットヤーンクロス」及びそれを含む「基材」に相当する。
甲1発明の「粘着テープ」は、「粘着剤溶液をフラットヤーンに対して塗工、乾燥して粘着剤層を形成し」たものであるから、本件特許発明1の「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープ」に相当し、また、甲1発明の「粘着剤層」は、その形成に用いる「粘着剤溶液」に「アクリル系樹脂(A-1)溶液」、「イソシアネート系架橋剤(B)」を含むから、本件特許発明1の「粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み」に相当する。
甲1発明の「粘着剤層のゲル分率は49.75重量%」であって、当該ゲル分率は、四捨五入による有効数字2桁とすれば「50重量%」であるから、本件特許発明1の「粘着剤層のゲル分率が50~80質量%」を実質的に充足する。
以上のことから、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記基材がフラットヤーンクロスを含み、前記粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み、粘着剤層のゲル分率が50~80質量%である粘着テープ。」
<相違点1>
本件特許発明1は、粘着剤層に含まれる架橋剤が「イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤」であるのに対して、甲1発明は、イソシアネート系架橋剤のみである点
(イ)判断
甲1の段落0061には、「本発明の効果を損なわない範囲で、その他の架橋剤、例えば、エポキシ系架橋剤・・・等と併用してもよい。」と記載されているものの、イソシアネー系架橋剤とエポキシ系架橋剤との併用はあくまで任意選択的事項に過ぎないものと理解される。
甲1の段落0101には、実施例、比較例で用いる架橋剤について、「架橋剤として以下のものを用意した。 ・イソシアネート系架橋剤(B):日本ポリウレタン工業社製、コロネートL-55E(固形分55%) ・エポキシ系架橋剤:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学製、テトラッドC)」と記載され、すなわち、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とが列挙されているものの、実施例1~7ではコロネートL-55Eのみ、比較例ではテトラッドCのみが架橋剤として使用されており、両者を併用した実施例、比較例は開示されておらず、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明および甲3発明では、構成bについて、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することが明示的に記載されている。」と主張するものの、前記のとおり、甲1の段落0061は、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することを具体的に記載するものではなく、甲1には、両者を併用した実施例、比較例も開示されておらず、甲1の記載から、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
したがって、前記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1に記載された発明ではない。
ウ 本件特許発明2~4、6、7について
本件特許発明2~4、6、7は、本件特許発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲1発明と前記相違点1において異なるものであるから、甲1に記載された発明ではない。
エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1~4、6、7は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
(2)甲2に基づく新規性欠如について
ア 甲2の記載及び甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載
「【0049】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が好ましい。上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。上記エポキシ系架橋剤として、例えば、デナコールEX212、デナコールEX214(いずれもナガセケムテック社製)、TETRAD-X、TETRAD-C(いずれも三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して0.01~5重量部が好ましく、0.1~3重量部がより好ましい。」
「【0052】
上記基材は特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂発泡体、紙、不織布、ヤーンクロス布等が挙げられる。
・・・
上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。」
「【0058】
(合成1、3~7)
(リビングラジカル重合ポリマーの合成)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモ-イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを得た。
【0059】
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、上記で得られた2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル38μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示すモノマー(BA:ブチルアクリレート、Aac:アクリル酸、HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。
得られたリビングラジカル重合ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
・・・
【0061】
【表1】
[図:0001433122000003.jpg]
・・・
【0063】
(実施例1~12、比較例1~4)
合成1~10で得た固形分換算で100重量部の(メタ)アクリルポリマー(リビングラジカル重合ポリマー、フリーラジカル重合ポリマー、又は、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されたリビングラジカル重合ポリマー)含有溶液に対して、表2、表3に示す所定量の架橋剤(IPDI:イソホロンジイソシアネート、TETRAD-X:三菱ガス化学社製)を添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。このとき、実施例7~12では、表3に示す所定量の光重合開始剤(エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製)、気体発生剤(アゾジカルボンアミド)、光増感剤(9,10-ジグリシジルオキシアントラセン)を添加した。
厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。なお、粘着剤層を保護するために粘着剤層のもう一方の面にも厚み50μmの離型処理したPETフィルムを積層した。
【0064】
得られた粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、離型フィルムを剥離除去した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
・・・
【0068】
【表2】
[図:0001433122000004.jpg]
」
(イ)甲2に記載された発明
甲2に記載された実施例3の粘着テープについて、段落0058~0059、0061の表1における合成1のリビングラジカル重合ポリマー((メタ)アクリルポリマー)含有溶液の製造方法についての記載、段落0063、0064、0068の表2における実施例3の粘着テープの製造方法についての記載を参照しつつ整理すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル38μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLに、モノマー(ブチルアクリレート96.7重量%、アクリル酸3重量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.3重量%)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、重合反応して得た(メタ)アクリルポリマー含有溶液100重量部(固形分換算)に対して、架橋剤(イソホロンジイソシアネート)1.1重量部を添加して撹拌して得た粘着剤溶液を、離型処理したPETフィルムに塗工、乾燥して粘着剤層を形成して得た粘着テープであって、粘着剤層のゲル分率は65重量%である、粘着テープ」
イ 本件特許発明1について
(ア)甲2発明との対比
甲2発明の「PETフィルム」は、粘着剤溶液が塗工される基材であるから、本件特許発明1の「基材」に相当する。
甲2発明の「粘着テープ」は、「粘着剤溶液をPETフィルムに対して塗工、乾燥して粘着剤層を形成し」たものであるから、本件特許発明1の「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープ」に相当し、また、甲2発明の「粘着剤層」は、その形成に用いる「粘着剤溶液」に「(メタ)アクリルポリマー含有溶液」、「架橋剤(イソホロンジイソシアネート)」を含むから、本件特許発明1の「粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み」に相当する。
甲2発明の「粘着剤層のゲル分率は65重量%」であるから、本件特許発明1の「粘着剤層のゲル分率が50~80質量%」を充足する。
以上のことから、本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み、粘着剤層のゲル分率が50~80質量%である粘着テープ。」
<相違点2-1>
本件特許発明1は、粘着剤層に含まれる架橋剤が「イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤」であるのに対して、甲2発明は、イソシアネート系架橋剤のみである点
<相違点2-2>
本件特許発明1は、基材が「フラットヤーンクロス」を含むのに対して、甲2発明は、そのような特定がされていない点
(イ)判断
はじめに、前記相違点2-1について検討する。
甲2の段落0049には、「上記架橋剤は・・・なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が好ましい。」と記載されているものの、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との併用については記載されていない。
甲2の段落0063には、実施例、比較例で用いる架橋剤について、「表2、表3に示す所定量の架橋剤(IPDI:イソホロンジイソシアネート、TETRAD-X:三菱ガス化学社製)を添加」と記載され、すなわち、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とが並記されているものの、実施例1~3、6、7~9、12、比較例1、2、4ではIPDIのみ、実施例4、5、10、11、比較例3ではTETRAD-Xのみが架橋剤として使用されており、両者を併用した実施例、比較例は開示されておらず、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
申立人は、特許異議申立書において、「甲2発明および甲4発明においては、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することが明示的に記載されていないものの、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用しうることは記載されているに等しい事項である。」と主張するが、段落0049等の記載から、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
したがって、前記相違点2-1は、実質的な相違点であるから、相違点2-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2に記載された発明ではない。
ウ 本件特許発明2、4、6、7について
本件特許発明2、4、6、7は、本件特許発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲2発明と前記相違点2-1、2-2において異なるものであるから、甲2に記載された発明ではない。
エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1、2、4、6、7は、甲2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
(3)甲3に基づく新規性欠如について
ア 甲3の記載及び甲3に記載された発明
(ア)甲3の記載
「【0069】
<架橋剤(B)>
本発明の難接着被着体用粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)に加え、架橋剤(B)を含有することが接着性および保持力の点から好ましい。
【0070】
上記架橋剤(B)は、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成させるものであり、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤があげられる。これらの中でも各種被着体に対する接着性と保持力をバランスよく両立させることができる点では、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。また、高温環境下においても粘着テープとしての経時安定性に優れ、さらに接着性に優れた効果を得るためにはイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
・・・
【0078】
上記架橋剤(B)は、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。」
「【実施例】
【0117】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0118】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂(A)を調製した。
なお、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度、および粘度に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0119】
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A)の製造に先立ち、製造に用いる共重合成分(a)として以下のものを用意した。
(a1)成分
下記一般式(1)で示される末端カルボキシ基含有モノマー
CH2=CR1-CO-O-(R2-COO-)nH ・・・(1)
上記一般式(1)においてR1は水素、R2はエチレン鎖、nは1~5
(a2)成分
・アクリル酸(AAc)
(a3-1)成分
・n-ブチルアクリレート(BA)
(a3-2)成分
・2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)
(a-4)成分
・メチルアクリレート(MA)
(a-5)成分
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
【0120】
なお、上記(a1)成分については、ソルベイ日華社製の「サイポマーH」を使用した。
サイポマーHは、一般式(1)のR1が水素、R2がエチレン鎖、n=1~5の化合物(a1)を75%と、アクリル酸(a2)を25%含有する混合物である(以下、サイポマーHを「β-CEA」と称し、サイポマーHに含まれる、一般式(1)の化合物をまとめて「CAO」と称することがある)。
【0121】
〔アクリル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機および還流冷却機を備えた反応器内に、サイポマーH5部〔CAO(a1)3.75部、アクリル酸(a2)1.25部〕、n-ブチルアクリレート(a3-1)26.7部、2-エチルヘキシルアクリレート(a3-2)65.2部、メチルアクリレート(a4)3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a5)0.1部、酢酸エチル55部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15部を仕込み、撹拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、酢酸エチルで希釈して、固形分50%のアクリル系樹脂(A-1)溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-1)の重量平均分子量は55万、分散度4.3、ガラス転移温度は-61℃であった。
・・・
【0123】
【表1】
[図:0001433122000005.jpg]
【0124】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)として以下のものを用意した。
・B-1:エポキシ系架橋剤:三菱ガス化学社製、テトラッドC(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン)
【0125】
<粘着付与剤(C)>
粘着付与剤として以下のものを用意した。
・C-1:不均化ロジンエステル:荒川化学工業社製、スーパーエステルA-100(不均化ロジンのグリセリンエステル、軟化点95~105℃)
・C-2:石油系樹脂:三井化学社製、FTR6100(スチレン系モノマーと脂肪族モノマーの共重合樹脂、軟化点95℃)
【0126】
<実施例1>
上記のようにして調製、準備したアクリル系樹脂(A-1)溶液について、その固形分100部に対して、架橋剤(B-1)〔エポキシ系架橋剤(テトラッドC)〕を0.04部、粘着付与剤(C-1)〔不均化ロジンエステル(スーパーエステルA-100)〕を15部混合した。その後、酢酸エチルにて固形分濃度を40%になるように調液し、均一になるまで撹拌して、難接着被着体用粘着剤組成物の溶液を得た。
【0127】
<実施例2~5および比較例1>
上記実施例1において、難接着被着体用粘着組成物の組成を後記表2の示すように変更した以外は同様に行い、実施例2~5および比較例1の難接着被着体用粘着剤組成物の溶液を得た。
【0128】
得られた実施例1~5および比較例1の難接着被着体用粘着剤組成物について、以下の通り難接着被着体用粘着テープを作製し、以下の評価を行った。評価結果を後記の表2に示す。
【0129】
〔難接着被着体用粘着テープの作製〕
上記のようにして準備した難接着被着体用粘着剤組成物の溶液を紙製リリースライナー〔SS-70-SBX(シノムラ化学工業社製)〕の剥離面に対して乾燥後の厚みが110μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、その後80℃で5分間乾燥し、フラットヤーン(ダイヤテックス社製、厚み130μm)を貼り合わせた。その後、40℃の乾燥機中で7日間加熱エージング処理を行い、難接着被着体用粘着テープを作製した。
・・・
【0135】
【表2】
[図:0001433122000006.jpg]
」
(イ)甲3に記載された発明
甲3記載された実施例5の粘着テープについて、段落0118~0121、0123の表3におけるアクリル系樹脂(A-1)の製造方法についての記載、段落0124~0127、0135の表2における実施例5の難接着被着体用粘着剤組成物の溶液の調製方法についての記載、段落0129における実施例5の難接着被着体用粘着テープの作製方法についての記載を参照しつつ整理すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「アクリル系樹脂(A-1)溶液(サイポマーH(ソルベイ日華社製)5重量部、n-ブチルアクリレート26.7重量部、2-エチルへキシルアクリレート65.2重量部、メチルアクリレート3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部、酢酸エチル55部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を重合させて得たアクリル系樹脂溶液)の固形分100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(B-1)(三菱ガス化学社製、テトラッドC)0.04重量部(固形分換算)を混合し、酢酸エチルにて調液し、撹拌して得た難接着被着体用粘着剤組成物の溶液を紙製リリースライナーの剥離面に対して塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、フラットヤーン(ダイヤテックス社製)を貼り合わせた後、加熱エージング処理を行い作製した、難接着被着体用粘着テープであって、粘着剤層のゲル分率は50.2重量%である、難接着被着体用粘着テープ」
イ 本件特許発明1について
(ア)甲3発明との対比
甲3発明の「フラットヤーン」は、粘着剤層が貼り合わせられる基材であるから、本件特許発明1の「フラットヤーンクロス」及びそれを含む「基材」に相当する。
甲3発明の「難接着被着体用粘着テープ」は、「粘着剤層を形成し、フラットヤーンを貼り合わせた」たものであるから、本件特許発明1の「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープ」に相当し、また、甲3発明の「粘着剤層」は、その形成に用いる「難接着被着体用粘着剤組成物の溶液」に「アクリル系樹脂(A-1)溶液」、「エポキシ系架橋剤(B-1)」を含むから、本件特許発明1の「粘着剤層がアクリル系樹脂、エポキシ系架橋剤を含み」に相当する。
甲3発明の「粘着剤層のゲル分率は50.2重量%」であるから、本件特許発明1の「粘着剤層のゲル分率が50~80質量%」を充足する。
以上のことから、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記基材がフラットヤーンクロスを含み、前記粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み、粘着剤層のゲル分率が50~80質量%である粘着テープ。」
<相違点3>
本件特許発明1は、粘着剤層に含まれる架橋剤が「イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤」であるのに対して、甲3発明は、エポキシ系架橋剤のみである点
(イ)判断
甲3の段落0069には、「上記架橋剤(B)は・・・これらの中でも各種被着体に対する接着性と保持力をバランスよく両立させることができる点では、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。また、高温環境下においても粘着テープとしての経時安定性に優れ、さらに接着性に優れた効果を得るためにはイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。」と記載されているものの、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との併用については記載されていない。
甲3の段落0124には、実施例、比較例で用いる架橋剤について、「架橋剤(B)として以下のものを用意した。 ・B-1:エポキシ系架橋剤:三菱ガス化学社製、テトラッドC(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学製、テトラッドC)」と記載され、すなわち、エポキシ系架橋剤のみが記載されており、実施例1~5、比較例1ではテトラッドCのみが架橋剤として使用されており、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤を併用した実施例、比較例は開示されておらず、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明および甲3発明では、構成bについて、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することが明示的に記載されている。」と主張するものの、前記のとおり、実施例、比較例及び段落0069のいずれも、両者を併用することを開示するものではなく、甲3の記載から両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
したがって、前記相違点3は、甲3発明から自明ではなく、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3に記載された発明ではない。
ウ 本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、本件特許発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲3発明と前記相違点3において異なるものであるから、甲3に記載された発明ではない。
エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1~7は、甲3に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
(4)甲4に基づく新規性欠如について
ア 甲4の記載及び甲4に記載された発明
(ア)甲4の記載
「【0082】
架橋剤(b)としては、例えばイソシアネート系、金属キレート系、エポキシ系、金属塩、金属アルコキシド、アルデヒド系化合物、非アミノ樹脂系アミノ化合物、尿素系、メラミン系、アジリジン系等、通常の粘着剤に使用される架橋剤を挙げることができ、これらのうち特に好ましくは、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物が挙げられる。かかる架橋剤(b)のアクリル系粘着剤組成物中の含有量は、アクリル系共重合体(a)100重量部に対して0.2~5重量部であることが好ましく、更には0.2~2重量部であることが好ましい。かかる含有率が少なすぎると、凝集力が不足して再剥離性が低下する傾向があり、逆に多すぎると架橋反応が過剰となる傾向がある。」
「【実施例】
【0098】
(実施例1)
基材層の製造
高密度ポリエチレン(密度0.956、MFR0.55)に高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922、MFR10.0)を15重量%配合した熱可塑性樹脂をインフレーション成形法によってフィルムとし、得られたフィルムをレザーによってスリットした。次いで、温度110~120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度120℃の熱風循環式オーブン内で6%の弛緩熱処理を行ない、糸幅0.56mm、繊度109デシテックスの経糸と、同様の方法で高密度ポリエチレン(密度0.956、MFR0.55)100重量%の糸幅1.2mm、繊度310デシテックスの緯糸を製造した。
【0099】
得られた経緯糸をウォータージェット機によって、経糸46本/25.4mm、緯糸16本/25.4mm、目付け量40g/m2の平織織布とした。
【0100】
第1のフィルム層及び第2のフィルム層の積層
得られた織布の両面に、高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922、MFR10.0)を押出しラミネートして、厚みが50μmとなる第1のフィルム層と厚みが35μmとなる第2のフィルム層を積層し、その両面にコロナ放電処理を行なってぬれ張力を420μN/cmとした。
【0101】
なお、表面側の第1のフィルム層には、白色顔料として二酸化チタンを低密度ポリエチレンに対して3重量%混入して白色層とした。
【0102】
艶消し印刷層の形成
第1のフィルム層の表面に、バインダー樹脂としてのポリウレタン樹脂に対して、黒色顔料としてカーボンブラック粉末を10重量%と、艶消し材としてシリカを10重量%を混入させた黒色インクを用いて、膜厚が4μmとなるように塗布して黒色層を形成した。なお、印刷インクの塗布作業は、上記膜厚となるように同一印刷インクを使用して、第1のフィルム層の表面に最初に2μm厚に塗布、乾燥して第1層を形成した後、該第1層の表面に同一印刷インクで2μm厚に塗布、乾燥して第2層を形成するように塗膜の形成を2回繰り返した。
【0103】
離型処理
上記で得られた艶消し印刷層の表面に、長鎖アルキルグラフトポリマー系離型剤を0.1g/m2となるように塗布乾燥し、離型処理層を形成した。
【0104】
粘着剤層の形成
上記の第2のフィルム層のコロナ放電処理面に、以下の粘着剤組成物(N-1)~(N-3)を用いて、塗布厚み(固形分基準)40μmとなるように塗布形成して粘着剤層を形成し、粘着テープを得た。なお、以下において単に「部」とあるのは重量部を示す。
・・・
【0106】
(a-2):
アクリル酸2-エチルヘキシル(a1)74.4部、アクリル酸ノルマルブチル(a1)20部、アクリル酸(a2)2.5部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(a2)0.1部、酢酸ビニル(a3)3部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部及び酢酸エチル80重量部を、コンデンサー、攪拌機及び温度計付きのフラスコに仕込み、窒素ガス雰囲気下で90℃に加温して重合させ、重合途中にトルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、ガラス転移温度-63℃、重量平均分子量96万のアクリル共重合体(a-2)を得た。
・・・
【0108】
なお、ガラス転移温度は、FOXの式より算出したものであり、重量平均分子量(Mw)は、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」にカラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求めたものである。
【0109】
[架橋剤]
(b-1):アミネニウムキレート系架橋剤「日本化学産業株式会社製 ナーセムAl」
(b-2):イソシアネート系架橋剤「日本ポリウレタン工業株式会社製 コロネートL
-55E」
(b-3):イソシアネート系架橋剤「日本ポリウレタン工業株式会社製 コロネートHX」
【0110】
[粘着付与剤]
(c-1):テルペン系樹脂「ヤスハラケミカル株式会社製 マイティーエースG-125」
(c-2):キシレン系樹脂「フドー株式会社製 ニカノールH-80」
(c-3):ロジン系樹脂「荒川化学工業株式会社製 スーパーエステルA-125」
【0111】
<粘着剤組成物>
表1に示す通り、各成分を配合し、アクリル系粘着剤組成物(N-1):実施例1a、(N-2):実施例1b、(N-3):実施例1cを調製した。
【0112】
更に得られた粘着剤組成物に対して、下記の測定法により、粘着剤のゲル分率を測定した。
【0113】
(ゲル分率)
厚み38μmのPETフィルムに上記粘着剤組成物を乾燥後の厚みが40μmになるように塗工し、23℃×65%R.H.の条件下で14日間エージングさせて粘着剤層付きフィルムを得た。この粘着剤層付きフィルムを50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合した。SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器に23℃3日間浸漬し、前後の粘着剤層の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行った。
【表1】
[図:0001433122000007.jpg]
」
(イ)甲4に記載された発明
甲4に記載された実施例1(粘着剤組成物(N-2)の態様)の粘着テープについて、段落0106におけるアクリル系重合体(a-2)の製造方法についての記載、段落0109~0111、0113の表1における実施例1の粘着剤組成物(N-2)の調製方法についての記載、及び、段落0098~0104における実施例1の粘着剤組成物(N-2)を用いた粘着剤層の形成方法(基材層となる平織織布の製造方法を含む)についての記載を参照しつつ整理すると、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「アクリル共重合体(a-2)(アクリル酸2-エチルへキシル74.4重量部、アクリル酸ノルマルブチル20重量部、アクリル酸2.5重量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル0.1重量部、酢酸ビニル3部、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部及び酢酸エチルを重合させて得たアクリル共重合体)100重量部、イソシアネート系架橋剤(b-2)(日本ポリウレタン工業株式会社製、コロナートL-55E)0.7重量部及び粘着付与剤としてテルペン系樹脂(c-1)(ヤスハラケミカル株式会社製、マイティーエースG-125)5重量部及びキシレン系樹脂(フドー株式会社製、ニカノールH-80)5重量部を配合して調製したアクリル系粘着剤組成物(N-2)を用いて、平織織布(高密度ポリエチレンに高圧法低密度ポリエチレンを15重量%配合した熱可塑性樹脂をインフレーション成形法によってフィルムとし、得られたフィルムをレザーによってスリットとし、熱板上で延伸した後、弛緩熱処理を行った、糸幅0.56mm、繊度109デシテックスの経糸と、同様の方法で製造した高密度ポリエチレン100重量%の糸幅1.2mm、繊度310デシテックスの緯糸とからなる平織織布)に粘着剤層を塗布形成して得た、粘着テープであって、粘着剤層のゲル分率は65重量%である、粘着テープ」
イ 本件特許発明1について
(ア)甲4発明との対比
甲4発明の「平織織布」は、アクリル系粘着剤組成物(N-2)を用いて粘着剤層が塗布形成される基材であるから、本件特許発明1の「基材」に相当し、また、甲4発明の「平織織布」は、ポリエチレンフィルムをレザーによってスリットし、延伸し、弛緩熱処理した扁平な経糸と緯糸、すなわち、フラットヤーンからなる織布であるから、本件特許発明1の「フラットヤーンクロスを含み」に相当する。
甲4発明の「粘着テープ」は、「アクリル系粘着剤組成物(N-2)を用いて平織織布に粘着剤層が塗布形成して得た」たものであるから、本件特許発明1の「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープ」に相当し、また、甲4発明の「粘着剤層」は、その形成に用いる「アクリル系粘着剤組成物(N-2)」に「アクリル共重合体(a-2)」、「イソシアネート系架橋剤(b-2)」を含むから、本件特許発明1の「粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み」に相当する。
甲4発明の「粘着剤層のゲル分率は65重量%」であるから、本件特許発明1の「粘着剤層のゲル分率が50~80質量%」を充足する。
以上のことから、本件特許発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記基材がフラットヤーンクロスを含み、前記粘着剤層がアクリル系樹脂、イソシアネート系架橋剤を含み、粘着剤層のゲル分率が50~80質量%である粘着テープ。」
<相違点4>
本件特許発明1は、粘着剤層に含まれる架橋剤が「イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤」であるのに対して、甲4発明は、イソシアネート系架橋剤のみである点
(イ)判断
前記相違点4が甲4発明から自明であるかについて検討する。
甲4の段落0082には、「架橋剤(b)としては、例えばイソシアネート系・・・エポキシ系・・・を挙げることができ、特に好ましくは、イソシアネート系化合物・・・が挙げられる。」と記載されているものの、イソシアネー系架橋剤とエポキシ系架橋剤との併用については記載されていない。
甲4の段落0109には、実施例、比較例で用いる架橋剤について、「(b-2):イソシアネート系架橋剤「日本ポリウレタン工業株式会社製 コロネートL-55E」 (b-3):イソシアネート系架橋剤「日本ポリウレタン工業株式会社製 コロネートHX」」と記載され、すなわち、エポキシ系架橋剤のみが記載されており、実施例1(粘着剤組成物(N-2)、(N-3)の態様)では(b-2)、(b-3)のみが架橋剤として使用されており、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤を併用した実施例、比較例は開示されておらず、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
申立人は、特許異議申立書において、「甲2発明および甲4発明においては、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することが明示的に記載されていないものの、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用しうることは記載されているに等しい事項である。」と主張するものの、前記段落0082等の甲4の記載から、両者の併用が自明な事項であると解することはできない。
したがって、前記相違点4は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲4に記載された発明ではない。
ウ 本件特許発明2、4、6、7について
本件特許発明2、4、6、7は、本件特許発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲4発明と前記相違点4において異なるものであるから、甲4に記載された発明ではない。
エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1、2、4、6、7は、甲4に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
2 申立理由2(進歩性欠如)について
(1)甲1を主引用例とする進歩性欠如について
ア 本件特許発明2について
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を包含し、さらに「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」との特定事項を追加したものである。
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「アクリル系樹脂(A-1)溶液」は、「サイポマーH(ソルベイ日華社製)」を含み、「サイポマーH(ソルベイ日華社製)」はアクリル酸を25重量%含有するから(甲1の段落0098)、本件特許発明2の「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明とは、前記相違点1のみで相違する。
(イ)検討
甲9には、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリル酸からなるポリマー、すなわち、アクリル系樹脂に、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートL」)とエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-C」)とを含む粘着剤を用いて作製した耐熱性粘着テープの実施例(段落0061)が記載されている。また、甲8にも、アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B1)及び多官能エポキシ化合物(B2)を含む粘着剤組成物を塗工、乾燥して得た粘着シートの実施例、比較例(段落0049~0072)が記載されている。
そして、甲1の段落0061には、「本発明の効果を損なわない範囲で、その他の架橋剤、例えば、エポキシ系架橋剤・・・等と併用してもよい。」と記載されている。
そうすると、甲1発明において、甲8、9に記載のようにイソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用し、接着性、耐熱性、基材密着性、耐黄変性等物性のバランスに優れたものとしようとすることは、当業者が想起し得たことといえる。しかしながら、本件特許明細書の段落0133~0147には、アクリル系樹脂(A)に、イソシアネート系架橋剤(b2)(東ソー社製「コロネートL-55E」)、エポキシ系架橋剤(b1)(三菱ガス化学社製「テトラッドC」)を含有し、ゲル分率が50~80%である粘着剤層を有する粘着テープである実施例1~4は、欧州建材火災安全規格EN13501-1に定められている着火性試験規格であるISO11925-2に準じた試験(以下「EN規格の難燃性試験)という。)において、燃焼長が100mm以下であり、ゲル分率が50%未満である比較例1、80%を超える比較例2、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤のいずれかしか含有しない比較例3~9が、いずれもEN規格の難燃性試験において、燃焼長が100mm超であったのと比較して、難燃性に優れていたことが、データの裏付けをもって記載されているのに対し、下記のとおり、甲1~甲7の粘着テープなどに関する記載の概要は下記のとおりであって、甲1~甲9のいずれにも、難燃性に関する記載はなされておらず、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用したアクリル系粘着剤を用いることで粘着テープを難燃性に優れたものとすることが、当業者の技術常識であったともいえないから、本件特許発明2は、本件特許発明2の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものである。
甲1には、甲1発明を認定した実施例3の粘着テープについて、接着力、保持力及び耐湿熱性についての評価が記載されている。
甲2~4には、それぞれ甲2発明~甲4発明の粘着テープが記載され、甲8、9には、前記(イ)で示したとおり、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを含むアクリル系粘着剤の粘着剤層を有する粘着テープが記載されている。
甲5には、「偏光板を貼着するための粘着剤層」として用いられる「偏光板用粘着剤組成物」について、「好ましい構成としては・・・イソシアネート化合物(B)・・・さらに・・・エポキシ化合物(D)を含有する」(段落0012~0014)と記載されている。
甲6、7には、イソシアネート系架橋剤又はエポキシ系架橋剤を用いたアクリル系粘着剤の粘着剤層を有する難燃性粘着テープ(甲6の特許請求の範囲、段落0057、0058、0102の表1、0103の表2、甲7の0014、0018、0026、0042、0074の表1)が記載されている。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明2は、甲1に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
イ 本件特許発明3~7について
本件特許発明3~7は、本件特許発明1又は2を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲1発明と前記相違点1において異なるものであるところ、前記アで検討したのと同様の理由により、本件特許発明3~7の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものであるから、甲1に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
ウ 甲1を主引用例とする進歩性欠如についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2~7は、甲1に記載された発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
エ 本件特許発明1について
異議申立書16頁には、請求項1の進歩性欠如との申立理由は記載されていない。しかしながら、異議申立書44頁には、「甲8発明および甲9発明のように、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することはいわゆる特に困難性はなく、甲8及び甲9に記載されている事項から特許発明1の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項である。」として、いわば、甲1、甲8及び甲9に基づく進歩性欠如の主張とも解し得る記載がある。
そこで、当該主張についても念のため検討すると、前記アと同様の理由から、本件特許発明1は、本件特許発明1の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものであるから、甲1に記載された発明及び甲8~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2)甲2を主引用例とする進歩性欠如について
ア 本件特許発明2について
(ア)甲2発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を包含し、さらに「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」との特定事項を追加したものである。
本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「(メタ)アクリルポリマー含有溶液」は「アクリル酸」等のモノマーを「重合反応して得た(メタ)アクリルポリマー含有溶液」であるから、本件特許発明2の「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲2発明とは、前記相違点2-1、2-2のみで相違する。
(イ)検討
はじめに、相違点2-2について検討すると、甲2の段落0052の「基材は特に限定されないが、樹脂フィルム・・・ヤーンクロス布等が挙げられる。・・・上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。」との記載から、甲2発明において、基材としてフラットヤーンクロスを用いることに格別の困難性は見いだせない。
また、相違点2-1について、甲2の段落0049には、「架橋剤は・・・なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が好ましい。」と記載されているところ、甲2発明において、甲8、9に記載のようにイソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することで、接着性、耐熱性、基材密着性、耐黄変性等物性のバランスに優れたものとしようとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
しかしながら、前記(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件特許発明2は、本件特許発明2の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものであるから、本件特許発明2は、甲2に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
イ 本件特許発明3~7について
本件特許発明3~7は、本件特許発明1又は2を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲2発明と前記相違点2-1、2-2において異なるものであるところ、前記アで検討したのと同様の理由により、本件特許発明3~7の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものであるから、甲2に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 甲2を主引用例とする進歩性欠如についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2~7は、甲2に記載された発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
(3)甲3を主引用例とする進歩性欠如について
ア 本件特許発明2について
(ア)甲3発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」と特定したものである。
本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「アクリル系樹脂(A-1)溶液」は、「サイポマーH(ソルベイ日華社製)」を含み、「サイポマーH(ソルベイ日華社製)」はアクリル酸を25重量%含有するから(甲1の段落0098)、本件特許発明2の「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲3発明とは、前記相違点3のみで相違する。
(イ)検討
甲3の段落0069には、「上記架橋剤(B)は・・・例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤・・・があげられる。これらの中でも各種被着体に対する接着性と保持力をバランスよく両立させることができる点では、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。また、高温環境下においても粘着テープとしての経時安定性に優れ、さらに接着性に優れる効果を得るためにはイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。」と記載され、さらに、同段落0078には、「上記架橋剤(B)は、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。」と記載されているところ、甲3発明において、甲8、9に記載のようにエポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用することで、接着性、耐熱性、基材密着性、耐黄変性等物性のバランスに優れたものとすることは、当業者が想起し得るけれども、前記(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件特許発明3は、本件特許発明2の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明2は、甲3に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件特許発明3~7について
本件特許発明3~7は、本件特許発明1又は2を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲3発明と前記相違点3において異なるものであるところ、前記アで検討したのと同様の理由により、本件特許発明3~7の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものであるから、甲3に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 甲3を主引用例とする進歩性欠如についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2~7は、甲3に記載された発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
(4)甲4を主引用例とする進歩性欠如について
ア 本件特許発明2について
(ア)甲4発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」と特定したものである。
本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「アクリル共重合体(a-2)」は「アクリル酸」等のモノマーを「重合させて得たアクリル共重合体」であるから、本件特許発明2の「アクリル系樹脂がそのモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマー単位を含む」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲4発明とは、前記相違点4のみで相違する。
(イ)検討
甲4の段落0082には、「架橋剤(b)としては、例えばイソシアネート系・・・エポキシ系・・・を挙げることができ・・・る。」と記載されているところ、甲4発明において、甲8、9に記載のようにイソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することで、接着性、耐熱性、基材密着性、耐黄変性等物性のバランスに優れたものとすることは、当業者が想起し得るけれども、前記(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件特許発明4は、本件特許発明2の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明2は、甲4に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件特許発明3~7について
本件特許発明3~7は、本件特許発明1又は2を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、甲4発明と前記相違点4において異なるものであるところ、前記アで検討したのと同様の理由により、本件特許発明3~7の構成から当業者が予測し得ない有利な効果を奏するものであるから、甲4に記載された発明及び甲1~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 甲4を主引用例とする進歩性欠如についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2~7は、甲4に記載された発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-701012