特許異議申立
2022-700472
燃料電池セル
- 審判番号
- 2022-700472
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-138917
- 登録番号
- 6986053
- 請求日
- 2022年05月31日
- 審決日
- 2023年06月05日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】亀崎 伸宏
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 池渕 立
- 審判官 山口 大志
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6986053号発明「燃料電池セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6986053号の特許請求の範囲を、令和 5年 3月 8日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6986053号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第6986053号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2019-138917号のこと。以下、「本願」という。)は、令和 1年 7月29日の出願であって、令和 3年 11月30日にその特許権の設定登録がされ、同年12月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~5(全請求項)に係る特許について、令和 4年 5月31日差出で特許異議申立人である亀崎伸宏(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和 4年 9月 5日付けで取消理由が通知され、同年10月 6日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、これに対して、同年11月17日差出で申立人から意見書が提出され、令和 5年 1月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年 3月 8日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、これに対して、同年 4月 7日差出で申立人から意見書が提出されたものである。
なお、令和 4年10月 6日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
第2 本件訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び訂正の内容
令和 5年 3月 8日に提出された訂正請求書により特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当審が下線を付した。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出する開口部」と記載されているのを、「前記燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出し積層方向視において矩形状である開口部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」と記載されているのを、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に測定した、前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「セパレータ」の「前記燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出する開口部」について、その形状を「積層方向視において矩形状である」ものと限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
訂正事項1による訂正は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本願の願書に添付した図面(以下、「本件図面」という。)の図5~図7によれば、セパレータ30の開口部32の形状が矩形状であることが看取できるから、訂正事項1による訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に記載された「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」ことに関して、
「最小突出長さ」と「最大突出長さ」が、「第1突出部」をどの方向で測定したものであるか不明であったものを、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に」測定したものであることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
上述のとおり、訂正事項2による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。
また、本件特許明細書等の【0053】には「積層方向と直交する方向において、第1突出部112の突出長さL112及び第2突出部113の突出長さL113は、一定でない。第1突出部112の突出長さL112は、第1接合材110において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離である。第2突出部113の突出長さL113は、第1接合材110において、燃料電池セル本体10の外周端縁から外周側に突出する距離である。」と、【0054】には「比(L112b/L112a)は、曲線部を有する1つの延伸部において、図4に示す積層方向の断面から測定される最小突出長さL112a及び最大突出長さL112bにより特定される。」と記載されており、図4の断面図における突出長さL112の測定位置、図5の最小突出長さL112a及び最大突出長さL112bを示す両矢印の方向とセパレータ30の開口部32との位置関係から、訂正事項2による訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5について、訂正前の請求項2~5はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1~5は、一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
また、本件訂正請求は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~5〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。
(3)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~2に係る訂正について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、請求項1~5に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明5」といい、総称して「本件特許発明」ということがある。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
固体電解質、並びに前記固体電解質を挟むように積層された燃料極及び空気極を有する平板形の燃料電池セル本体と、
前記燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出し積層方向視において矩形状である開口部を有する枠状であり、前記燃料電池セル本体の外周縁部と重なる内周縁部を有するセパレータと、
前記燃料電池セル本体の外周縁部と、前記セパレータの内周縁部とを接合する接合材と、
を備え、
積層方向視において、前記接合材における前記燃料電池セル本体と接する面の内周端縁は、互いに対向する2組の延伸部と、各前記延伸部を連結する連結部と、を有し、
少なくとも1つの前記延伸部は、曲線部を有し、
前記接合材は、
積層方向視において、前記燃料電池セル本体及び前記セパレータと重なる中央部と、
前記中央部から内周側に向けて突出する第1突出部と、
を有し、
曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に測定した、前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である、
燃料電池セル。
【請求項2】
前記中央部の幅に対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、0.1以上3以下である、
請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記セパレータと前記燃料電池セル本体との間における前記中央部の厚さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、2.0以上150以下である、
請求項1または2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記第1突出部の気孔率は、前記セパレータと前記燃料電池セル本体との間における前記中央部の気孔率よりも大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記セパレータの内周端縁は、面取りされている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池セル。」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として次の甲第1号証~甲第6号証を提出し、以下の申立理由1~3により、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。なお、この「第4 申立理由の概要」において、「本件特許発明」とは、本願の願書に添付された特許請求の範囲、すなわち、本件特許の特許掲載公報の特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明を意味している。
<証拠方法>
甲第1号証 :特開2015-88264号公報
甲第2号証 :特許第5677637号公報
甲第3号証 :床尾尚也外5名,“焼結銀を用いたパワー半導体素子の接合技術の開発”,第27回エレクトロニクス実装学会春期講演大会予稿集,一般社団法人エレクトロニクス実装学会,2013年3月13日,p159~160
甲第4号証 :特許第3650546号公報
甲第5号証 :特開2015-22892号公報
甲第6号証 :特開2011-216772号公報
1 申立理由1(新規性、進歩性、取消理由として不採用)
(1)本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その技術の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明1~5は、甲第1号証及び甲第2~5号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(サポート要件、取消理由として不採用)
(1)本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、段落【0002】、【0004】の記載や、実施例においてガスリーク量とクラックの有無について記載されていることから、「接合材を介してセパレータと燃料電池セル本体とが接合された構成の燃料電池セルにおいて、熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形に伴い接合材に生ずる応力を緩和し、接合材におけるクラックおよびガスリークの発生を防止すること」であると認められる。
(2)接合材の第1突出部の形成範囲について
ア 本件特許発明1には「前記接合材は、積層方向視において、前記燃料電池セル本体及び前記セパレータと重なる中央部と、前記中央部から内周側に向けて突出する第1突出部と、を有し」と特定されているが、当該記載によれば、中央部から内周側に向けて突出する第1突出部の形成について、
(ア)中央部の全周にわたって中央部から第1突出部が突出している形態(以下、「全周形態」という。)と、
(イ)中央部の周方向の一部のみから第1突出部が突出しており、残りの一部には第1突出部が存在しない形態(以下、「一部のみ形態」という。)と、
の二つの形態が存在する。
イ 本件特許明細書等の発明の詳細な説明においては、上記二つの形態のうち、実施例として全周形態のみが記載されており、一部のみ形態について記載されていなため、一部のみ形態の場合においても、内周縁部に残留する応力が分散されて応力を緩和するとの作用効果を有するとはいえない。
ウ 以上のことから、全周形態に加えて一部のみ形態を含む本件特許発明1は、発明の課題を解決できない形態を含んでいる。本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5も同様である。
(3)部材の熱膨張率と表面状態について
本件特許発明1では、燃料電池セル本体、接合材およびセパレータの熱膨張率(または形成材料)や、セパレータと燃料電池セル本体とを接合材を介して接合する際の被接合部材の表面状態(濡れの程度等)について、何ら規定されていないため、本件特許発明1は、それらの事項が任意の態様である種々の形態を包含している。
そして、熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形の程度や、燃料電池セル本体の変形に伴い接合材の内周縁部に残留する応力の大きさや分散されやすさは、燃料電池セル本体、接合材およびセパレータの熱膨張率の差(または形成材料)や、セパレータと燃料電池セル本体とを接合材を介して接合する際の被接合部材の表面状態によって大きく変動することは、本件特許出願時の技術常識である。
また、本件特許明細書等に記載された実施例は、燃料電池セル本体、接合材およびセパレータのそれぞれの熱膨張率(または形成材料)やセパレータと燃料電池セル本体とを接合材を介して接合する際の被接合部材の表面状態が特定の態様である場合において本件特許構成を採用することにより本件作用効果を得ることができることの根拠とはなり得るものの、それらが他の態様である場合において本件特許構成を採用することにより本件作用効果を得ることができることの根拠とはなり得ない。
したがって、燃料電池セル本体、接合材およびセパレータの熱膨張率(または形成材料)や、セパレータと燃料電池セル本体とを接合材を介して接合する際の被接合部材の表面状態について、何ら規定されていない本件特許発明1は、発明の課題が解決できない形態を含んでいる。本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5も同様である。
(4)したがって、本件特許の請求項1と請求項1を引用する請求項2~5の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(明確性、取消理由として一部採用)
(1)第1突出部の突出長さについて
ア 本件特許発明1には「第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」と特定されているところ、上記「最小突出長さ」、「最大突出長さ」(以下、両者を合わせて「最小・最大突出長さ」という。)について、本件特許明細書等には「第1突出部112の突出長さL112は、第1接合材110において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離である。」(【0053】)と記載されており、この記載からは、第1突出部の突出長さは、セパレータの内周端縁から、接合材における最も内周側に突出する点までの距離であると解することができる。
イ 一方、図11に記載された実施形態において、第1突出部112の突出長さL112の左端部の位置に注目すると、接合材110における最も内周側に突出する点ではなく、接合材110の燃料電池セル本体10と接する面内における最も内周側の点を示していることが看取される。
「【図11】
[図:0001401626000001.jpg]
」
また、本件特許発明1には、「積層方向視において、前記接合材における前記燃料電池セル本体と接する面の内周端縁は、互いに対向する2組の延伸部と、各前記延伸部を連結する連結部と、を有し、」とも特定されていることから、接合材における内周端縁とは、積層方向視において、セル本体と接する面の内周端縁と解することもできる。
ウ したがって、これらの記載によれば、第1突出部の突出長さとは、セパレータの内周端縁から接合材における内周側に突出する距離であるところ、当該距離とは、セパレータの内周端縁から、
・第1接合材における最も内周側に突出する点までの距離であるのか、
・第1接合材がセル本体10と接する面内における最も内周側に位置する点までの距離であるのか、
不明であるため、第1突出部の最小・最大突出長さを一義的に定めることができず、上記最小突出長さと最大突出長さの比も一義的に定めることができない。
エ したがって、本件特許発明1は、第1突出部の突出長さを一義的に定めることができないから明確ではない。
(2)第1突出部の突出方向について
本件特許発明1には「前記中央部から内周側に向けて突出する第1突出部」と特定されているので、第1突出部の突出方向は「中央部から内周側に向け」た方向として定義されている。
しかしながら、本件特許発明1において、第1突出部の突出方向としての「中央部から内周側に向け」た方向とは、具体的にどの方向を意味するのか明確ではない。
従って、本件特許発明1は明確ではないし、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5についても同様に明確ではない。
(3)第1突出部の最小突出長さ、最大突出長さについて
本件特許発明1には「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」と特定されているところ、最小突出長さ・最大突出長さについては、次の二つの解釈が可能である。
一つ目の解釈は、最小突出長さ・最大突出長さとは、中央部の全周にわたって中央部から第1突出部が突出している構成を前提として、請求項1の文言通りに解釈すれば、第1突出部全体における突出長さの最小値および最大値を意味すると解される(解釈1)。
二つ目の解釈は、最小突出長さ・最大突出長さとは、本件特許明細書等の段落【0054】の記載「比(L112b/L112a)は、曲線部を有する1つの延伸部において、図4に示す積層方向の断面から測定される最小突出長さL112a及び最大突出長さL112bにより特定される。」を参酌すると、接合材の外周端縁を構成する延伸部毎に特定されるものと解することもできる(解釈2)。
したがって、本件特許発明1において、第1突出部の最小突出長さ・最大突出長さが、上記解釈1と解釈2のいずれを意味するものであるか不明である。
(4)したがって、本件特許の請求項1と請求項1を引用する請求項2~5の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 取消理由の内容
当審は、上記第4の申立理由のうち、申立理由3の(2)と(3)を採用し、令和4年9月5日付け取消理由通知書により、以下の取消理由1(1)、(2)を通知した。さらに、令和5年1月30日付け取消理由通知書(決定の予告)により、令和4年10月6日に提出された訂正請求書に係る訂正(以下、「先の訂正」という。)によって新たに生じた以下の取消理由2と、上記取消理由1(1)、(2)のうち先の訂正によっては解消されなかった取消理由1(1)を再度通知した。
なお、この「第5 取消理由の内容」において、「本件特許発明」とは、取消理由1においては、本件特許の特許掲載公報の特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明を意味しており、取消理由2においては、先の訂正によって訂正された特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明を意味している。
1 取消理由1(明確性)
(1)第1突出部の突出方向について
ア 本件特許発明1は、「第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」との特定事項を備えているところ、第1突出部の突出長さを特定するためには、第1突出部の突出方向が明確である必要がある。
イ この点に関して、本件特許発明1では、「第1突出部」が「前記中央部から内周側に向けて突出する」ものであることが特定されているが、「中央部から内周側に向け」た方向とは、具体的にどの方向を意味するのか明確ではない。
ウ そこで、本件特許明細書等の記載を参照すると、「第1突出部112の突出長さL112は、第1接合材110において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離である。」(【0053】)と記載されているけれども、内周側に突出する方向についてそれ以外の記載は存在しないため、内周側に突出する方向の詳細は不明である。
エ また、本件特許明細書等の図5には、第1突出部112の「最小突出長さL112a」および「最大突出長さL112b」を示す符号が示されている。これらの符号を参照すると、本件特許明細書等に記載された実施形態においては、セパレータ30の内周端縁が矩形であることを前提として、セパレータ30の内周端縁に垂直な方向を、第1突出部112の突出方向としているように解することができる。
「【図5】
[図:0001401626000002.jpg]
」
オ しかしながら、本件特許発明1には、セパレータ30の内周端縁が矩形であるとは特定されておらず、セパレータ30の内周端縁が円弧状の態様や波形の態様等を広く包含している。そのため、本件特許発明1において、第1突出部の突出方向がどの方向であるのか、不明である。
カ 例えば、申立人が特許異議申立書で提示した下記参考図1に示すように、セパレータ30の内周端縁が波形である場合、当該内周端縁上の各位置における垂線方向が突出方向であるのか、それとも他の方向であるのか、不明である。
【参考図1】
[図:0001401626000003.jpg]
キ さらに、本件特許明細書等の図5に示される形態において、第1接合材110の第1突出部112には4つのコーナー部が存在するが、これらの4つのコーナー部について、突出方向がどの方向であるのか全く不明である。申立人が特許異議申立書で提示した下記参考図2に示すように、例えば右上のコーナー部の突出方向は、y方向であるのか、x方向であるのか、x方向でもy方向でもない方向(例えば、斜め45度の方向)であるのか、不明である。
【参考図2】
[図:0001401626000004.jpg]
ク 以上のことから、本件特許発明1において、第1突出部の「中央部から内周側に向け」た方向が具体的にどの方向を意味するのか、明確ではない。
そうすると、第1突出部の「中央部から内周側に向け」た方向の定義によって、第1突出部の最小突出長さと最大突出長さは異なる値として測定されることとなり、その結果、これら長さの比も異なる値となるので、「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」か否かを一義的に判断することができない。
ケ したがって、本件特許発明1は明確ではないし、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5についても同様に明確ではない。
(2)第1突出部の最小突出長さ、最大突出長さについて
ア 本件特許発明1には「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」と特定されているところ、第1突出部の最小突出長さ・最大突出長さが、第1突出部のどの部分で測定されたものであるか特定されておらず不明である。以下、この点について説明する。
イ 本件特許発明1には、「接合材」の「内周端縁」は「互いに対向する2組の延伸部」を有するとともに、上記「接合材」は「積層方向視において、前記燃料電池セル本体及び前記セパレータと重なる中央部と、前記中央部から内周側に向けて突出する第1突出部」を有するものであることが特定されている。
したがって、本件特許発明1の特定事項によれば、第1突出部の最小突出長さ・最大突出長さとは、上記「互いに対向する2組の延伸部」、すなわち、接合材の内周端縁が有する4つの延伸部の全体にわたって求めた、突出長さの最小値と最大値を意味すると解することができる(以下、「解釈1」という。)。
ウ 一方、本件特許明細書等には、「比(L112b/L112a)は、曲線部を有する1つの延伸部において、図4に示す積層方向の断面から測定される最小突出長さL112a及び最大突出長さL112bにより特定される。」(【0054】)と記載されており、当該記載を参酌すると、第1突出部の最小長さ、最大突出長さとは、1つの延伸部毎に特定されるものと解することもできる(以下、「解釈2」という。)。
エ したがって、本件特許発明1において、第1突出部の最小突出長さと最大突出長さが、第1突出部のどの部分で測定されたものであるかについて、本件特許発明1の特定事項に基づく上記解釈1と、本件特許明細書等の記載に基づく上記解釈2で整合しておらず、いずれの解釈を採用するかによって、第1突出部の最小突出長さ・最大突出長さは異なる値となるので、「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」か否かを一義的に判断することができない。
オ したがって、本件特許発明1は明確ではないし、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5についても同様に明確ではない。
2 取消理由2(明確性。決定の予告で通知した取消理由3。)
(1)延伸部及び連結部の定義について
ア 先の訂正によって、先の訂正前の請求項1に記載された「前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」ことが、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部」で測定した第1突出部の突出長さについての特定であることが明確になった。しかしながら、「第1突出部」の「最小突出長さ」と「最大突出長さ」が明確であるといえるためには、これら長さが測定される「延伸部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分に該当するか、もしくは、「延伸部」を連結する「連結部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分に該当するかが明確に定義されていなければならない。
イ この点に関して、本件特許明細書等の段落【0043】には「図5に示すように、積層方向視において、内周端縁115は、略矩形状である。内周端縁115は、互いに対向する2組の延伸部と、各延伸部を連結する連結部と、を有している。なお、2組の延伸部の間には、燃料電池セル本体10の外周縁部14を除く領域が位置している。このため、2組の延伸部は、燃料電池セル本体10を介して対向している。少なくとも1つの延伸部は、曲線部を有する。本実施形態の内周端縁115の全周は、曲線形状である。」と記載されているが、延伸部を連結する連結部が1点であるのか、長さや幅を有する領域であるのか不明であり、「接合材における前記燃料電池セル本体と接する面の内周端縁」が有する「延伸部」が、前記内周端縁のどの部分に該当するかが明確に定義されているとはいえない。
ウ そうすると、本件特許発明の「延伸部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分であるか不明であるため、「第1突出部の最小突出長さ」及び「第1突出部の最大突出長さ」を一義的に特定することができない。
次に示す参考図3と参考図4は、この点を説明するもので、それぞれ、本件図面の図5と図6の左上部を切り出したものにおいて、延伸部115d及び115aと開口部32の間の領域に三つの矢印A、B、Cを追加したものである(矢印Dは元々記載のあったL112を表す)。
【参考図3】
[図:0001401626000005.jpg]
【参考図4】
[図:0001401626000006.jpg]
参考図3において、「第1突出部の最小突出長さ」は、延伸部の端部の位置がどこかによって、矢印Bの長さ又は矢印Cの長さとなり、一義的に特定することができず、また、「第1突出部の最大突出長さ」は、延伸部の定義によって、右端が第1延伸部115aにある矢印Aの長さや、矢印Dの長さとなり、やはり一義的に特定することができない。
また、参考図4において、「第1突出部の最大突出長さ」は、延伸部の端部の位置がどこかによって、右端が第1延伸部115aにある矢印Aの長さや、右端が115hにある矢印Bの長さや、右端が115dのいずれかにある矢印Cの長さとなり、やはり一義的に特定することができない。
エ したがって、本件特許発明において、「延伸部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分であるのか明確に定義されておらず不明であるから、「第1突出部の最小突出長さ」及び「第1突出部の最大突出長さ」を一義的に特定することができない。
オ よって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。また、請求項1を引用する請求項2~5についても同様である。
なお、「延伸部」と「連結部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分に該当するかについて、意見書で釈明されたい。
第6 当審の判断
1 取消理由について
(1)取消理由2(明確性)について
令和 5年 3月 8日に特許権者によって提出された意見書の第2頁(5)の説明を参照すると、本件特許発明の「延伸部」とは、本件特許明細書等の段落【0043】の「図5に示すように、積層方向視において、内周端縁115は、略矩形状である。内周端縁115は、互いに対向する2組の延伸部と、各延伸部を連結する連結部と、を有している。」との記載及び同段落【0044】の「第1~第4延伸部115a~115dは、矩形の辺に相当する。第1~第4連結部115e~115hは、矩形の角部に相当する。」との記載から理解されるように、略矩形状の内周端縁を構成する4つの辺において、各辺の端から端までを意味しており、また、本件特許発明の「延伸部を連結する連結部」とは、接合材の内周端縁を構成する各辺の端、すなわち、各延伸部の端を示す点に該当することが理解できる。したがって、本件特許発明において、「延伸部」及び「連結部」が「接合材」の「内周端縁」のどの部分であるのかが明らかになった。
よって、明確性についての取消理由2は解消された。
(2)取消理由1(1)(明確性、申立理由3(2))について
本件訂正によって、請求項1に記載された「セパレータ」が「積層方向視において矩形状」であり、同「第1突出部」の「突出長さ」が、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に測定した」ものであることが明らかになった。
また、上記(1)の点が解消したことも併せると、第1突出部の最小・最大突出長さを一義的に定めることができることが理解できる。
したがって、明確性についての取消理由1(1)(申立理由3(2))は解消された。
(3)取消理由1(2)(明確性、申立理由3(3))について
本件訂正によって、請求項1に記載された「第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」ことが、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に測定した」(下線は当審が付した。)ものであることが明らかになった。このことによって、「第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」ことは、上記「解釈1」や「解釈2」(上記第4の3(2)及び上記第5の1(2)イ、ウ参照。)のように確認されるものではなく、「互いに対向する2組の延伸部」すなわち四つの延伸部のうち「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部」において確認されるものであることが明らかになった。
したがって、明確性についての取消理由1(2)(申立理由3(3))は解消された。
2 採用されなかった申立理由について
(1)申立理由1(新規性、進歩性)について
新規性、進歩性についての申立理由1が採用できない理由は以下のとおりである。
ア 甲1の記載
甲1には、「セパレータ付燃料電池単セル,および燃料電池スタック」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付し、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,セパレータ付燃料電池単セル,および燃料電池スタックに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,Agロウで接合した場合,Agロウ中を水素と酸素が拡散し,結合することで,ボイドが発生する畏れがある。ボイドが発生するとAgロウ中にガスの通り道ができ,ガスがリークする可能性がある。
また,ガラスで接合した場合,接合部分での水素と酸素の拡散は防止できるものの,接合強度が弱く,燃料電池スタックの作成時にガラスの接合部分が剥がれたり,割れたりして,ガスがリークする畏れがある。
本発明は,燃料電池単セルとセパレータの接合および封止の信頼性を向上した,セパレータ付燃料電池単セル,および燃料電池を提供することを目的とする。」
「【0021】
図3は,燃料電池セル40の断面図である。図4は,燃料電池セル40の枠A内の拡大断面図である。図5は,燃料電池単セル44と金属製セパレータ53(セパレータ付燃料電池単セル50)を表す上面図である。
【0022】
図3に示すように,燃料電池セル40は,金属製セパレータ53と燃料電池単セル44を有し,インターコネクタ41,45,集電体42a,42b,枠部43を備える。
【0023】
燃料電池単セル44は,固体電解質層56を空気極(カソード,空気極層ともいう)55,および,燃料極(アノード,燃料極層ともいう)57で挟んで構成される。固体電解質層56の酸化剤ガス流路47側,燃料ガス流路48側それぞれに,空気極55,燃料極57が配置される。」
「【0033】
金属製セパレータ53は,貫通孔58を有する枠状の金属製の薄板(例えば,厚さ:0.1mm)であり,燃料電池単セル44の固体電解質層56に取り付けられ,かつ酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を防止する金属製の枠体である。金属製セパレータ53によって,枠部43の開口46内の空間が,酸化剤ガス流路47と燃料ガス流路48に区切られ,酸化剤ガスと燃料ガスとの混合が防止される。」
「【0037】
(セパレータ付燃料電池単セル50の詳細)
本実施形態では,燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の間に接合部61,封止部62が配置され,セパレータ付燃料電池単セル50を構成する。貫通孔58に沿って,金属製セパレータ53の下面と固体電解質層56の上面が接合部61で接合され,封止部62で封止される。」
「【0041】
接合部61は,貫通孔58に沿って,全周にわたって配置され,燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面(第1主面)とを接合するものであり,接合部本体611,はみ出し部612に区分される。
接合部本体611は,燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面(第1主面)の間に配置される部位である。はみ出し部612は,燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面(第1主面)の間からはみ出た部位である(幅Dのはみ出し)。
接合部本体611は,例えば,2~6mmの幅,10~80μmの厚さを有する。はみ出し部612は,例えば,100μm~500μmの幅D,10~160μmの高さH3(厚さ)を有する。」
「【0045】
接合部61は,Alの酸化物または複合酸化物を含んだAgを主成分として含むロウ材(Agロウ)を使用することが好ましい。例えば,Agに還元雰囲気でも安定な,Al2O3,Al含有スピネル型酸化物(MgAl2O4など),ムライト(酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の化合物)をフィラーとして添加したもの,または,Agに少なくともAlを添加した合金などが挙げられる。これらを組み合わせてもよい。」
「【図3】
[図:0001401626000007.jpg]
【図4】
[図:0001401626000008.jpg]
【図5】
[図:0001401626000009.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1の図3~図5に記載された、燃料電池単セル44、金属製セパレータ53及び接合部61を有する燃料電池セル40に注目する。
(ア)甲1の図3~図5を参照すると、固体電解質層56を挟むように積層された燃料極57及び空気極55を有する燃料電池単セル44はその形状が平板状であることが見て取れる。
(イ)甲1の図3~図5を参照すると、枠状の金属製の薄板である金属製セパレータ53は、燃料電池単セル44の外周縁部を除く領域を露出しており、矩形状である貫通孔58を有しており、燃料電池単セル44の外周縁部と重なる内周縁部を有していることが見て取れる。
(ウ)甲1の段落【0037】によれば、金属製セパレータ53の貫通孔58に沿って、金属製セパレータ53の下面と固体電解質層56の上面が接合部61で接合されており、封止部62で封止されている。そして、接合部61は、燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間に配置される接合部本体611と、燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間から幅Dだけはみ出たはみ出し部612に区分されている。
(エ)甲1の段落【0041】によれば、接合部61は貫通孔58に沿ってその全周にわたって配置されるものであり、図5を参照すると、接合部61の内周端縁は、金属製セパレータ53の矩形状の貫通孔58と略相似の形状を有していることが見て取れるから、接合部61の内周端縁も矩形形状を有している。
(オ)したがって、甲1には、次の燃料電池セル40の発明が記載されている。
「 固体電解質層56を挟むように積層された燃料極57及び空気極55を有する平板形の燃料電池単セル44と、
燃料電池単セル44の外周縁部を除く領域を露出しており、矩形状の貫通孔58を有しており、枠状の金属製の薄板であり、燃料電池単セル44の外周縁部と重なる内周縁部を有する金属製セパレータ53と、
燃料電池単セル44の外周縁部と、金属製セパレータ53の内周縁部とを接合する接合部61と、
を備え、
前記接合部61は、
その内周端縁が矩形形状を有しているとともに、
燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間に配置される接合部本体611と、
燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間から幅Dだけはみ出たはみ出し部612に区分されている
燃料電池セル40。」(以下、「甲1発明」という。)
ウ 甲2の記載
甲2には、「音響発生器、音響発生装置及び電子機器」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、音響発生器、音響発生装置及び電子機器に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の音響発生器は、励振器の振動に誘導された樹脂フィルム等の共振に起因するひずみにより大きなピークやディップが発生しやすく、特定の周波数において音圧が急激に変化してしまうという問題がある。このため、音圧の周波数特性の平坦化が求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音圧の周波数特性を平坦化することができる音響発生器、音響発生装置及び電子機器を提供することを目的とする。」
「【0013】
図1A及び図1Bに示す第1形態の音響発生器は、四辺形の形状に中央領域を開口させた枠部材5に支持板となるフィルム3が貼り付けられており、このフィルム3の一方主面側に励振器1が設けられている。具体的には、枠部材5a、5bに挟持された支持板となるフィルム3の上面に、例えば図1Bに示すような積層型の圧電素子1が接合されている。すなわち、第1形態の音響発生器は、図1Bに示すように、張力がかけられた状態でフィルム3を第1および第2の枠部材5a、5bで挟持することによってフィルム3が第1および第2の枠部材5a、5bに固定されており、このフィルム3の上面に圧電素子1が配置されている。なお、フィルム3は、図1Bに示すような一対の枠部材5a、5bによって挟持された構成の他に、後述するように、枠部材5がフィルム3の一方方向のみに貼り付けられた構成であってもよい。
【0014】
ここで、第1形態の音響発生器は、フィルム3に枠部材5aを貼り付ける際に接合材22が用いられている。接合材22としては、例えばエポキシ系樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル系樹脂などの公知のものを使用できる。また、接合材22に使用する樹脂の硬化方法としては、熱硬化、光硬化や嫌気性硬化等のいずれの方法を用いてもよい。
【0015】
そして、接合材22は、枠部材5aとフィルム3との間から枠部材5aの枠内に延びてフィルム3上にはみ出したはみ出し部22aを有している。以下、図1Cを用いて、枠部材5aとフィルム3との間からフィルム3上に形成された接合材22のはみ出し部22aについて説明する。
…
【0017】
はみ出し部22aのはみ出す幅(はみ出している距離)としては、図1Cの断面において例えば0.05mm~2.0mm、好ましくは0.1mm~1.0mmである。
【0018】
また、図1Aに示すように、フィルム3を平面視したときに、はみ出し部22aのうちの少なくとも一部が波打った形状であってもよい。ここで、波打った形状の部分とは、外周面(平面視によるはみ出し部22aの外縁)が突出したり凹んだりしてうねっている部分のことを意味していて、そのうねり具合(振幅)は、例えば隣り合う山の頂点と山の頂点とを結ぶ線分に対して、これらの間に位置する谷の頂点から下ろした垂線の長さが0.05mm以上になっている。また、隣り合う山の頂点と山の頂点とを結ぶ線分の長さは、例えば0.1mm以上である。」
「【0057】
図5は、第5形態の音響発生器を示す平面図である。なお、図5には、図1Aと同様に、樹脂層の図示を省略した。図5に示すように、第5形態の音響発生器は、枠部材5の内縁の全周に接合材のはみ出し部22lのはみ出し部分を有する。また、接合材のはみ出し部22lは、枠部材5からフィルム3上にはみ出した幅Wが各位置で異なっている。例えば、フィルム3を平面視したときに、はみ出し部221のうちの少なくとも一部が波打った形状になっている。
【0058】
このように構成された第5形態の音響発生器は、フィルム3の振動に伴う応力を不均一に分散させることができることから、クラックに対する耐久性を向上させることができる。また、第5形態の音響発生器は、枠部材5の内縁の全周に不均一にはみ出した接合材のはみ出し部22lを有するので、フィルム3の各領域における共有周波数を不揃いにし、ピークディップを抑え、周波数特性を平坦化することができる。」
「【図1A】
[図:0001401626000010.jpg]
【図1B】
[図:0001401626000011.jpg]
【図1C】
[図:0001401626000012.jpg]
【図5】
[図:0001401626000013.jpg]
」
エ 甲3の記載
甲3には、「焼結銀を用いたパワー半導体素子の接合技術の開発」(標題)に関して、次の記載がある。
[図:0001401626000014.jpg]
(第159頁左欄8~13行)
[図:0001401626000015.jpg]
(第159頁右欄1~9行)
[図:0001401626000016.jpg]
(第160頁左欄9~11行)
オ 甲4の記載
甲4には、「導電性ペースト、およびそれを用いた導電性構造、セラミック電子部品、電子部品、実装体、回路基板、電気的接続方法、回路基板の製造方法、及びセラミック電子部品の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
「【0017】
それと同時に、接着剤に発泡性樹脂粉を含有させた場合、その発泡後の構造体は内部に多数の小気孔を有した、導電性粒子と接着剤樹脂からなるネットワーク構造となる。多数の気孔を有する構造体は非常に柔軟性に富み、応力に対して容易に変形し応力緩和することができる。この応力緩和は主として気孔の変形により行われ、導電性粒子間の接触および電極との接合を引き離す力は大きく減衰する。したがって、歪を与えた際においても電気的良接続を保持し続けることが可能となる。」
カ 甲5の記載
甲5には、「セパレータ付燃料電池セル及びその製造方法、燃料電池スタック」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質層、空気極及び燃料極を有する燃料電池セル本体と、燃料電池セル本体に取り付けられるセパレータとを備えるセパレータ付燃料電池セル及びその製造方法、セパレータ付燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図16,図17に示される具体例では、開口部312,322が角張っているため、ロウ材316,326による接合後に熱処理前の封止材315,325の形成材料を塗布したとしても、熱処理(ガラス封止)時に、溶けた封止材315,325の形成材料が開口部312,322から逃げるように動くことにより、封止材315,325にヒケが生じやすいという問題がある。この場合、ヒケが生じる箇所では、封止材315,325の形成材料が薄くなり、気泡317,327(即ち、セパレータ311,321と燃料電池セル本体314,324との隙間内の空気)が弾けやすくなるため、リークパスが形成され、封止材315,325によるガス封止ができないという問題が生じてしまう。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、封止材のリークパス形成を防止することにより、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性を向上させることができるセパレータ付燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供することにある。また、第2の目的は、上記のセパレータ付燃料電池セルを得るのに好適な製造方法を提供することにある。」
「【0026】
さらに、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間には、ガラスを含む封止材を有する封止部が設けられる。封止部は、セパレータにおいて燃料電池セル本体と向かい合う第1領域、及び、セパレータにおいて第1領域の反対側に位置する第2領域の両方を被覆するものである。なお、セパレータは、封止材によって挟み込まれている。この場合、封止部は、セパレータの第1領域に加えて、セパレータの第2領域にも接触するため、封止材とセパレータとの接触面積がよりいっそう大きくなる。従って、セパレータや燃料電池セル本体が例えば面方向に沿って変形した際に、封止材とセパレータとの境界部分に剪断応力が作用したとしても、封止材において第1領域や第2領域に接する部分は割れが生じにくいため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。
…
【0028】
さらに、セパレータの第2領域における開口部の開口縁、及び、セパレータの第2領域においてセパレータと燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所の少なくとも一方を、R面またはC面を有する形状とするのに加えて、セパレータの第1領域における開口部の開口縁を、R面またはC面を有する形状としてもよい。また、第1領域側及び第2領域側のそれぞれがC面を有する場合、第1領域の表面を基準とした第1領域側のC面の面取り角度は、第2領域の表面を基準とした第2領域側のC面の面取り角度より大きくてもよい。このようにした場合、セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間が、R面またはC面を有する開口部において広がるため、封止材の形成材料を隙間内に容易に流し込むことができる。その結果、封止材の形成材料によって隙間が確実に充填され、形成材料が気泡を確実に巻き込まなくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因した封止材の破損を防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。ゆえに、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性がよりいっそう向上する。」
「【0036】
以下、本発明を燃料電池200に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0037】
図1,図2に示されるように、本実施形態の燃料電池200は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池200は、発電の最小単位であるセパレータ付燃料電池セル201を複数積層してなる燃料電池スタック202を備えている。燃料電池スタック202は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなしている。また、燃料電池スタック202は、同燃料電池スタック202を厚さ方向に貫通する8つの貫通孔210を有している。なお、燃料電池スタック202の四隅にある4つの貫通孔210に締結ボルト211を挿通させ、燃料電池スタック202の下面から突出する締結ボルト211の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔210にガス流通用締結ボルト212を挿通させ、燃料電池スタック202の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト212の両端部分にナット213を螺着させる。その結果、複数のセパレータ付燃料電池セル201が固定されるようになっている。
【0038】
図2,図3に示されるように、燃料電池200は、セパレータ付燃料電池セル201と、集電体221と、コネクタプレート222,223とを積層配置することによって構成されている。セパレータ付燃料電池セル201は、空気極フレーム224、絶縁フレーム225、セパレータ226、燃料電池セル本体227及び燃料極フレーム228を順番に積層することによって構成されている。」
「【0071】
・上記実施形態のセパレータ226は、第2領域243における開口部234の開口縁が、C面246を有する形状となっていた。しかし、図9のセパレータ331に示されるように、第2領域332における開口部333の開口縁が、R面334を有する形状となっていてもよい。また、上記実施形態のセパレータ226は、第1領域242における開口部234の開口縁が、C面248を有する形状となっていた。しかし、図10のセパレータ335に示されるように、第1領域336における開口部337の開口縁が、R面338を有する形状となっていてもよい。さらに、図12のセパレータ365に示されるように、セパレータ365の開口部366を樹脂材料等からなる被覆部367で覆うことにより、第2領域368における開口部366の開口縁も、第1領域369における開口部366の開口縁も、R面370を有するようにしてもよい。」
「【図3】
[図:0001401626000017.jpg]
【図5】
[図:0001401626000018.jpg]
【図9】
[図:0001401626000019.jpg]
【図10】
[図:0001401626000020.jpg]
」
キ 甲6の記載
甲6には、「半導体装置の製造方法および接合治具」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
「【0012】
図1(a)に示すように、基板2の表面に金属粒子含有ペーストを用いて、スクリーン印刷で接合材3を形成する。金属粒子含有ペーストとしては、例えばクックソンエレクト
ロニクス社製の焼結タイプのAgナノペースト(クックソンエレクトロニクス社製:SP2000)を用いることができる。このペーストは、電子顕微鏡観察結果からは平均粒径が30nmのAg微粒子を主成分とするもので、このようなサイズのAg微粒子は200℃~500℃の範囲で焼結するものである。スクリーン印刷に用いた印刷マスクはステンレスメッシュ製で乳剤の厚さが100μm、印刷パターンの開口は縦横8mmのものを用いた。印刷後の接合材3の形状は、縦横8mmの正方形で厚さは約0.1mmである。」
「【0017】
焼結タイプのAgナノペーストは、一般に保護膜で覆われたAg微粒子と、分散剤と、溶剤とからなり、加熱により溶剤、分散剤、保護膜が蒸発、分解することによって、Ag微粒子の清浄面が露出し、これらAg微粒子の清浄な清浄面同士や、半導体素子および基板表面に成膜されたAu、Ag、Cuなどの清浄な表面とを加圧により接触させ、熱拡散させることにより、焼結、接合される。10nm以下の粒径の小さいAg微粒子は、溶融するとも考えられている。
【0018】
この際、ペーストから蒸発、分解する溶剤、分散剤の量は非常に多く、焼結により体積比で、印刷時と比較して1/2~1/4も収縮する。しかし、半導体素子や基板表面のAu、Ag、Cuなどを接合された部分は、収縮することができず、厚さ方向のAg微粒子のみで構成される部分が主に収縮する。しかし、半導体素子からはみ出た部分は、基板と接合されている(拘束されている)が、半導体素子からはみ出た部分はAg微粒子表面が拘束されていないために、大きく収縮して割れる。本実施の形態の治具を用いて加圧することにより、半導体素子と接合された部分同様に加圧され、収縮と合わせてAgペーストを加圧しつづけられるため、焼結収縮割れを著しく低減することができる。
【0019】
また、半導体素子とAg微粒子との接合界面は、熱膨張係数差が大きく、熱応力が最もかかりやすい部分であり、半導体素子と基板とをAgペーストで接合した場合、ヒートサイクルによるクラックが最も発生しやすい部分である。このため、半導体素子横の大きなクラックは、ヒートサイクルによるクラック発生を助長することが懸念される。本実施の形態の治具を用いて加圧することによる焼結割れ抑制は、耐ヒートサイクル性を著しく向上させる。」
「【図1】
[図:0001401626000021.jpg]
」
ク 本件特許発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1発明の「固体電解質層56」、「燃料極57」、「空気極55」、「平板形の燃料電池単セル44」は、それぞれ、本件特許発明1の「固体電解質」、「燃料極」、「空気極」、「平板形の燃料電池セル本体」に相当する。
(イ)甲1発明の「燃料電池単セル44の外周縁部を除く領域を露出しており、矩形状の貫通孔58を有しており、枠状の金属製の薄板であり、燃料電池単セル44の外周縁部と重なる内周縁部を有する金属製セパレータ53」は、本件特許発明1の「燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出し積層方向視において矩形状である開口部を有する枠状であり、前記燃料電池セル本体の外周縁部と重なる内周縁部を有するセパレータ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「燃料電池単セル44の外周縁部と、金属製セパレータ53の内周縁部とを接合する接合部61」は、本件特許発明1の「燃料電池セル本体の外周縁部と、前記セパレータの内周縁部とを接合する接合材」に相当する。
(エ)甲1発明の「接合部61」の内周端縁は矩形状であり、したがって、2組の対向する辺と、当該各辺を連結する角を有しているものと認められるところ、「接合部61」の内周端縁が有する上記2組の対向する辺と、各辺を連結する上記角は、それぞれ、本件特許発明1の「互いに対向する2組の延伸部」と「各前記延伸部を連結する連結部」に相当する。
(オ)甲1発明の「前記接合部61」が有する「燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間に配置される接合部本体611」と「燃料電池単セル44と金属製セパレータ53の下面の間から幅Dだけはみ出たはみ出し部612」は、図4の断面図におけるそれぞれの位置関係から判断するに、それぞれ、本件特許発明1の「接合材」が有する「積層方向視において、前記燃料電池セル本体及び前記セパレータと重なる中央部」と「前記中央部から内周側に向けて前記セパレータの内周端縁と直交する方向に突出する第1突出部」に相当する。
(カ)以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
「 固体電解質、並びに前記固体電解質を挟むように積層された燃料極及び空気極を有する平板形の燃料電池セル本体と、
前記燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出し積層方向視において矩形状である開口部を有する枠状であり、前記燃料電池セル本体の外周縁部と重なる内周縁部を有するセパレータと、
前記燃料電池セル本体の外周縁部と、前記セパレータの内周縁部とを接合する接合材と、
を備え、
積層方向視において、前記接合材における前記燃料電池セル本体と接する面の内周端縁は、互いに対向する2組の延伸部と、各前記延伸部を連結する連結部と、を有し、
前記接合材は、
積層方向視において、前記燃料電池セル本体及び前記セパレータと重なる中央部と、
前記中央部から内周側に向けて突出する第1突出部と、
を有する、
燃料電池セル。」の点
<相違点1>
本件特許発明1は、「延伸部」の「少なくとも1つ」が「曲線部を有」するものであるとともに、「曲線部を有する前記少なくとも一つの延伸部と当該延伸部に対向する前記セパレータの内周端縁との間の第1突出部において、いずれも前記セパレータの内周端縁と直交する方向に測定した、前記第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」(以下「構成A」という。)と特定されているのに対して、甲1発明は、「少なくとも一つの延伸部」が「曲線を有する」ものか不明であり、構成Aを備えるとの特定がされていない点。
ケ 相違点1の検討
(ア)甲1発明の「接合部61」の「内周端縁」を構成する2組の対向する辺の少なくとも一つが曲線といえるかについて検討する。
甲1発明の接合部61は、金属製セパレータ53の貫通孔58に沿ってその全周にわたって枠状に配置されたものであり(【0041】参照。)、接合部61をこのように特定の形状に配置するためには、通常、接合材(ろう材のこと。【0045】参照。)を印刷したりディスペンサによって配置したりするところ(例えば、甲5の段落【0056】参照。)、「接合部61」の「内周端縁」の形状は印刷用マスクの穴の形状やディスペンサの移動経路のパターンと略一致するものと考えられる。そして、上記マスクの穴の形状やディスペンサの移動経路のパターンは、特段の理由が無い限り、矩形状である燃料電池単セル44の外形形状に合わせて直線状に設計されるものと考えられ、実際、甲1の図5においても、接合材61の内周端縁の各辺の形状がいずれも直線状であることを見て取ることができる。
したがって、甲1発明の「接合部61」の「内周端縁」はいずれの箇所も直線状であるものと認められるから、「延伸部」の「少なくとも1つ」が「曲線部を有」する点は、本件特許発明1と甲1発明の実質的な相違点である。
(イ)次に、甲1発明において、「接合部61」の「内周端縁」が有する2組の対向する辺の少なくとも1つを、直線状に代えて曲線状にすることが、当業者にとって容易になし得ることであるかについて検討する。
(ウ)まず、甲1には、「接合部61」の「内周端縁」が有する2組の対向する辺について、その少なくとも1つの辺を曲線状にすることについて、何ら記載も示唆もされていない。
(エ)次に、甲2に記載された事項に基づいて検討する。甲2には、図1A、図1Bに示された、四辺形の形状に中央領域を開口させた枠部材5aに支持板となるフィルム3が貼り付けられており、このフィルム3の一方主面側に励振器1(圧電素子1)が設けられている音響発生器について(【0013】)、励振器の振動に誘導された樹脂フィルム等の共振に起因するひずみにより大きなピークやディップが発生しやすく、特定の周波数において音圧が急激に変化してしまうという問題があること(【0006】)、しかし、上記フィルム3に枠部材5aを貼り付けるための接合材22に、はみ出し部22a(図1A、図1C)、22l(図5)を形成し、はみ出し部22a、22lの外縁の少なくとも一部を波打った形状にすることによって、フィルム3の振動に伴う応力を不均一に分散させることができるので、クラックに対する耐久性を向上させることができ、また、ピークやディップを抑えて周波数特性を平坦化することができること(【0058】)が記載されている。ここで、はみ出し部22a、22lの外縁の波打った形状とは、平面視によるはみ出し部22aの外縁が突出したり凹んだりしてうねっている状態のことであり(【0018】)、換言すれば曲線状と言い得るものである。
(オ)そこで、甲1発明において、甲2に記載された事項を適用することができるかについて検討するに、甲2は、励振器の振動によって誘導された樹脂フィルムの共振に起因するひずみを抑制するために、接合剤22のはみ出し部22a、22lの外縁の一部を波打ち形状、すなわち、曲線状にするものであるが、甲1発明は燃料電池セルの発明であって、励振器を備えるものでなく、したがって、励振器によって樹脂フィルムに共振が発生することがないから、甲1発明の「接合部61」の「はみ出し部612」の外縁の一部を曲線状にする動機が存在しない。
(カ)したがって、甲2の記載事項を勘案したとしても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項とすること、すなわち、「接合材」の「内周端縁」が有する「少なくとも1つの前記延伸部」を「曲線部」を有するものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。また、「接合材」の「内周端縁」が有する「少なくとも1つの前記延伸部」を「曲線部」を有するものとすることについては、甲3~甲6のいずれにも記載されていないから、上記判断については甲3~甲6の記載を参照しても同様である。
(キ)小括
以上の検討によれば、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、構成Aの点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、または、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
コ 本件特許発明2~5について
本件特許発明1を引用することによって本件特許発明1の発明特定事項の全てを備える本件特許発明2~5についても、同様の理由で、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基いて、または、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)申立理由2(サポート要件)について
ア 本件特許発明が解決しようとする課題とは、以下摘記する本件特許明細書等の記載によれば、「接合材を介してセパレータと燃料電池セル本体とが接合された構成のセルスタック装置において、熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形に伴い接合材に生ずる応力を緩和し、接合材におけるクラックおよびガスリークの発生を防止すること」であると認められる(以下、単に「課題」という。)。
「【背景技術】
【0002】
平板状の固体電解質と、固体電解質を挟むように設けられた燃料極及び空気極と、を有する燃料電池セル本体が複数積層された平板形のセルスタック装置が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、燃料ガスが存在する空間と酸化剤ガスが存在する空間とを区画するセパレータが、接合材を用いて燃料電池セル本体に取り付けられていることが開示されている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のセルスタック装置の運転等に伴う温度変化、すなわち熱サイクルによって、燃料電池セル本体が変形する場合がある。この場合、燃料電池セル本体を接合している接合材に応力が加えられる。そこで、本発明の課題は、接合材における応力を緩和することにある。」
「【0106】
(評価結果)
表1に示すように、第1接合材の内周端縁の延伸部が曲線部を有していなかったサンプルNo.6は、第1接合材の応力を十分に緩和できなかったので、大きなクラックが発生した。その結果、内部空間に導入されたアルゴンガスが多く漏れ出してしまった。
【0107】
一方、第1接合材の内周端縁の延伸部が曲線部を有していたサンプルNo.1~5は、第1接合材の内周縁部に残留する応力が分散されたので、応力を緩和できた。このため、第1接合材に発生するクラックを抑制できた。その結果、ガスリークを抑制できることを確認した。」
(なお、下線は当審が付した。以下同様。)
イ 上記課題を解決するための手段に関して、本件特許明細書等には次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0005】
接合材に応力が加えられるという問題は、燃料電池セル本体の変形に起因した応力が、接合材の内周縁部に残留しやすいことに基づくことを本発明者は見出した。
【0006】
本発明のある側面に係る燃料電池セルは、燃料電池セル本体と、セパレータと、接合材と、を備えている。燃料電池セル本体は、固体電解質、並びに固体電解質を挟むように積層された燃料極及び空気極を有する。セパレータは、燃料電池セル本体の外周縁部を除く領域を露出する開口部を有する枠状である。またセパレータは、燃料電池セル本体の外周縁部と重なる内周縁部を有する。接合材は、燃料電池セル本体の外周縁部と、セパレータの内周縁部とを接合する。積層方向視において、接合材における燃料電池セル本体と接する面の内周端縁は、互いに対向する2組の延伸部と、各延伸部を連結する連結部と、を有する。少なくとも1つの延伸部は、曲線部を有する。接合材は、中央部及び第1突出部を有する。中央部は、積層方向視において、燃料電池セル本体及びセパレータと重なる。第1突出部は、中央部から内周側に向けて突出する。積層方向と直交する方向において、第1突出部の最小突出長さに対する、第1突出部の最大突出長さの比は、1.01以上10.0以下である。
【0007】
この構成によれば、接合材の内周端縁は曲線部を有している。そして、接合材において第1突出部の最小突出長さに対する第1突出部の最大突出長さの比は、1.01以上10.0以下である。このため、接合材の内周縁部に残留する応力が分散されて、応力の集中が抑制されやすくなる。したがって、接合材における応力を緩和できる。
【0008】
好ましくは、第1突出部の最小突出長さに対する、第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である。」
ウ 上記イの記載によれば、熱サイクルによって燃料電池セル本体に起因した応力は、接合材の内周縁部に残留しやすいが、本件特許発明では、接合材の内周端縁を曲線部を有するものとし、かつ、第1突出部の最小突出長さに対する第1突出部の最大突出長さの比を1.01以上10.0以下、好ましくは1.10以上8.00以下とすることによって、接合材の内周縁部に残留する応力が分散されて、応力の集中が抑制されやすくなり、接合材における応力を緩和できるので、上記課題を解決することができることが理解される。
エ ここで、申立理由2(2)の主張について検討する。
上記第4の2(2)に記載した、中央部の全周にわたって中央部から第1突出部が突出している形態(全周形態)と、中央部の周方向の一部のみから第1突出部が突出しており、残りの一部には第1突出部が存在しない形態(一部のみ形態)の二つの形態について、申立人が主張するように、全周形態では、接合材の内周端縁に残留する応力が全周にわたって分散され得る一方、一部のみ形態では、接合材の内周端縁に残留する応力の分散範囲が狭くなり、かつ、その分散範囲は第1突出部の形成範囲に応じて異なることはあるかもしれない。
しかしながら、全周形態であっても、一部のみ形態であっても、少なくとも第1突出部が突出している箇所において、接合材の内周端縁を曲線部を有するものとし、かつ、第1突出部の最小突出長さに対する第1突出部の最大突出長さの比を1.10以上8.00以下とするとの特徴を備えることによって、全く曲線部を有しない場合と比べると、接合材の内周縁部に残留する応力が分散される点で特段の相違はなく、いずれも接合材における応力を緩和でき、クラックおよびガスリークの発生を防止することができると考えられるから、本件特許発明は、上記一部のみ形態においても上記全周形態と同様に、接合材における応力を緩和でき、クラックおよびガスリークの発生を防止ないしは低減することが可能であるといえる。また、申立人は、一部のみ形態では課題を解決することができないとする点について、具体的な根拠を示しているわけでもない。
したがって、申立理由2(2)の主張は採用できない。
オ 次に、申立理由2(3)の主張について検討する。
申立人が主張するように、熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形の程度は、燃料電池セル本体、接合材およびセパレータの熱膨張率の差(または形成材料)や、セパレータと燃料電池セル本体とを接合材を介して接合する際の被接合部材の表面状態によって大きく変動することはあるかもしれない。
しかしながら、熱膨張率の差(または形成材料)や被接合部材の表面状態によって熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形の程度に違いがあったとしても、接合材の内周端縁を曲線部を有するものとし、かつ、第1突出部の最小突出長さに対する第1突出部の最大突出長さの比を1.10以上8.00以下とするとの特徴を備えることによって、全く曲線部を有しない場合と比べると、接合材の内周縁部に残留する応力が分散される点で特段の相違はなく、接合材における応力を緩和でき、クラックおよびガスリークの発生を防止することができると考えられるから、熱膨張率の差(または形成材料)や被接合部材の表面状態によって生じる、熱サイクルによる燃料電池セル本体の変形の程度の違いにかかわらず、上記特徴を備える本件特許発明は、クラックおよびガスリークの発生を防止ないしは低減することが可能であるといえる。また、申立人は、特定の形成材料や表面状体によって課題を解決することができないとする点について、具体的な根拠を示しているわけでもない。
したがって、申立理由2(3)の主張は採用できない。
(3)申立理由3(1)(明確性)について
ア 本件特許発明1の「第1突出部の最小突出長さに対する、前記第1突出部の最大突出長さの比は、1.10以上8.00以下である」との発明特定事項について、第1突出部の「最小突出長さ」と「最大突出長さ」がどの部分の長さであるかについて検討する。
イ 「第1突出部の突出長さ」について、本件特許明細書等には次の記載がある。
「第1突出部112の突出長さL112は、第1接合材110において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離である。」(【0053】)
この記載によれば、「第1突出部の突出長さ」とは、第1接合材において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離である。
ここで、第1接合材の内周側に突出する点とはどこの点であるかについて、
・第1接合材における最も内周側に位置する点。
・第1接合材がセル本体と接する面内における最も内周側に位置する点。
の二つの解釈をすることができる。
上記二つの解釈のいずれが適切であるかを本件特許明細書等の記載に基づいて検討する。
ウ 本件特許明細書等の図4、8、9、10、12、13、14のいずれにおいても、第1突出部112の突出長さを示す矢印L112の左端の位置は、接合材110における最も内周側に突出する点であると同時に、接合材110がセル本体10と接する面内における最も内周側に位置する点でもあるから、上記二つの解釈のいずれを採用しても第1突出部の突出長さに相違は生じない。
エ しかしながら、図11の変形例4の断面図によれば、第1突出部112は内周側に向いた膨らみを有していて、接合材とセル本体の接する面内における最も内周側の点よりもさらに内周側まで突出しているため、接合材112における最も内周側に位置する点と、接合材112がセル本体10と接する面内における最も内周側に位置する点とは相違しており、上記二つの解釈のいずれを採用するかによって、第1突出部の突出長さに相違が生ずる。
オ そこで、図11において、第1突出部112の突出長さL112を確定する左端部の位置に注目すると、当該左端部は、接合材112における最も内周側に位置する点ではなく、接合材112がセル本体10と接する面内における最も内周側に位置する点であることを見て取ることができる。
また、本件特許発明1には、「積層方向視において、前記接合材における前記燃料電池セル本体と接する面の内周端縁は、互いに対向する2組の延伸部と、各前記延伸部を連結する連結部と、を有し、」(下線は当審が付した。)とも特定されていることから、接合材における内周端縁とは、積層方向視において、セル本体と接する面の内周端縁であると解することができる。
「【図11】
[図:0001401626000022.jpg]
」
カ そうすると、「第1突出部の突出長さ」とは、接合材において、セパレータ30の内周端縁33から内周側に突出する距離であるところ、当該距離を確定する内周側に突出する点とは、第1接合材における最も内周側に突出する点ではなく、第1接合材がセル本体と接する面内における最も内周側に位置する点であると解するのが相当である。
したがって、本件特許明細書等の記載を参酌すれば、「第1突出部の突出長さ」は明確に把握できるものといえるから、申立理由3(1)の主張は採用できない。
(4)申立人が提出した意見書における主張について
ア 申立人は、令和 5年 4月 7日差出の意見書において、次の(ア)~(ウ)の主張をしているので、これらの主張についても検討する。
(ア) サポート要件について
特許権者は、令和 5年 3月 8日提出の意見書において、次の3つ技術事項について主張をしているが、本件特許発明では、上記3つの技術事項について何ら限定されていないため、本件特許発明は、上記3つの技術事項を有さない形態を包含していることとなるが、そのような形態は本件特許明細書等に記載されていないものである。
・技術事項1:接合材の内周端縁は矩形状である。
・技術事項2:接合材の内周端縁の各延伸部は、接合材の矩形状の内周端縁を構成する4つの辺において、各辺の端から端までである。
・技術事項3:接合材の内周端縁の各連結部は、接合材の矩形状の内周端縁を構成する各辺の端、すなわち、各延伸部の端を示す点である。
(イ)明確性について(その1)
特許権者は、上記技術事項3に関して、連結部が各辺の端である、すなわち、各延伸部の端を示す点であると主張しており、このことは、連結部は延伸部の一部であると主張していることとなるが、本件特許発明1において、延伸部と連結部は別に存在するものであると特定されていることと矛盾している。
(ウ)明確性について(その2)
広辞苑によると、用語「辺」とは、有限の直線を意味するものである。したがって、上記技術事項2において、接合材の延伸部は辺であるとの説明によれば、接合材の延伸部は直線であることとなる。しかしながら、本件特許発明1では「少なくとも1つの前記延伸部は、曲線部を有し」と特定しているから、上記説明と矛盾している。したがって、本件特許発明1において、接合材の内周端縁の延伸部及び連結部がどの部分に相当するのか不明である。
イ 上記ア(ア)について
上記第6の2(2)ウで検討したように、本件特許発明は、接合材の内周端縁を曲線部を有するものとし、かつ、第1突出部の最小突出長さに対する第1突出部の最大突出長さの比を1.01以上10.0以下、好ましくは1.10以上8.00以下とすることによって、接合材の外周縁部に残留する応力が分散されて、応力の集中が抑制されやすくなり、接合材における応力を緩和できるので、本件特許発明の課題を解決することができるものである。したがって、本件特許発明1において、技術事項1が特定されているか否かによらず、本件特許発明1は上記課題を解決することができるものである。
なお、技術事項2、3については、本件特許発明1で特定されている「延伸部」及び「連結部」の定義が不明確であると指摘した点について、本件特許明細書等の記載に基づいて釈明されたものであり、何ら不明確といえる点はない。
したがって、申立人の上記ア(ア)の主張は採用できない。
ウ 上記ア(イ)について
矩形において、辺と角とが別の概念であることと、辺の両端が角であることは、同時に成立しており何ら矛盾はない。それと同様に、本件特許発明において、延伸部と連結部が別に存在するものであることと、連結部が各延伸部の端を示す点であることには、何ら矛盾はない。
したがって、申立人の上記ア(イ)の主張は採用できない。
エ 上記ア(ウ)について
本件特許明細書等の段落【0043】の記載「図5に示すように、積層方向視において、内周端縁115は、略矩形状である。」では、内周端縁115の形状は略矩形状であると記載されており、略矩形状とは、矩形状に似ているが正確には矩形状ではないことを意味している。つまり、当該記載において、内周端縁115の各辺は直線に似ているが正確には直線ではないことを意味しているものと解される。したがって、特許権者の上記技術事項2についての説明は、本件特許発明1において「少なくとも1つの前記延伸部は、曲線部を有」することが特定されていることと何ら矛盾するものではない。
したがって、申立人の上記ア(ウ)の主張は採用できない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、令和 4年 9月 5日付け取消理由通知書及び令和 5年 1月30日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由と、申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700472