特許異議申立
2022-700430
耐吸湿固結性が改善された固形状調味料
- 審判番号
- 2022-700430
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-525257
- 登録番号
- 6969552
- 請求日
- 2022年05月17日
- 審決日
- 2023年02月06日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】鎌田 光宜
- 【権利者代理人】高島 一
- 【権利者代理人】田村 弥栄子
- 【異議申立人】奥谷 宏邦
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6969552号発明「耐吸湿固結性が改善された固形状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6969552号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。
特許第6969552号の請求項1及び3ないし6に係る特許を維持する。
特許第6969552号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6969552号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年(2017年) 6月29日(優先権主張 平成28年 6月30日)を国際出願日とする特許出願であって、令和 3年11月 1日にその特許権の設定の登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 4年 5月17日に、特許異議申立人 奥谷 宏邦(以下「申立人奥谷」という。)により請求項1~6に係る特許に対して、また、同年同月20日に、特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人角田」という。)により請求項1~6に係る特許に対して、特許異議の申立てがされ、同年 8月29日付で取消理由が通知され、同年10月31日に特許権者 味の素株式会社(以下「特許権者」という。)により訂正請求がされると同時に意見書が提出され、これに対して、同年12月19日に申立人角田により、また、同年同月22日に申立人奥谷により、意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正事項の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「砂糖」とあるのを、「グラニュー糖」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様の訂正をする。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項3に「請求項1または2に記載」とあるのを、「請求項1に記載」に訂正する。
併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様の訂正をする。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1、3、4のいずれか1項に記載」に訂正する。
併せて、請求項5を引用する請求項6についても同様の訂正をする。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1、3~5のいずれか1項に記載」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6はいずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1に連動して訂正されるものである。よって、請求項1ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正事項についての判断
(1)訂正事項1は、訂正前の請求項1において、砂糖の種類が特定されていないのに対して、砂糖の種類を「グラニュー糖」に限定するものである。したがって、訂正事項1による請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(2)訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3ないし5はいずれも、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、請求項2の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
4 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1ないし6の全てに対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の要件は課されない。
5 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
食塩を固形状調味料の全量に対して30重量%~50重量%と、食塩100重量部に対して5重量部~15重量部のグラニュー糖を含有する、固形状調味料。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
砂糖以外の糖類、食用油脂、エキス、タンパク質加水分解物、しょうゆ、うま味調味料、酸味料および香辛料からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の固形状調味料。
【請求項4】
砂糖以外の糖類が乳糖である、請求項3に記載の固形状調味料。
【請求項5】
粉末状または顆粒状である、請求項1、3、4のいずれか1項に記載の固形状調味料。
【請求項6】
複数食分または複数回の使用量が、一つに包装されまたは一つの容器に充填されている、請求項1、3~5のいずれか1項に記載の固形状調味料を含む製品。」
第4 特許異議の申立ての理由、当審取消理由の概要
1 申立人奥谷は、本件特許に対する異議理由として下記(1)、(2)を主張し、証拠方法として下記(3)の甲第1~5号証を提示した。
(1)新規性・進歩性
本件特許の請求項1~6に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、下記甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(2)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、下記甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、下記甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(3)証拠方法
甲第1号証 特開2005-270058号公報(以下「奥谷甲1」という。)
甲第2号証 特開昭62-115256号公報(以下「奥谷甲2」という。)
甲第3号証 太田 静行 外4名「スープ類 その製造と利用」、株式会社光琳、第176~177、195、197~198、204頁(以下「奥谷甲3」という。)
甲第4号証 「消費者コーナー 砂糖の種類」、独立行政法人 農畜産業振興機構、https://www.alic.go.jp/consumer/sugar/variety.html(以下「奥谷甲4」という。)
甲第5号証 特許第6969552号公報(本件特許公報である。)
2 申立人角田は、本件特許に対する異議理由として下記(1)~(5)を主張し、証拠方法として下記(6)の甲第1~8号証を提示した。なお、甲第8号証は、意見書と共に提示したものである。
(1)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
ア 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
イ 本件特許の請求項2、6に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(2)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
ア 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
イ 本件特許の請求項2、6に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(3)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
ア 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、下記甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
イ 本件特許の請求項2、6に係る発明は、下記甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(4)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
ア 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、下記甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
イ 本件特許の請求項2、6に係る発明は、下記甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(5)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
ア 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、下記甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
イ 本件特許の請求項2、6に係る発明は、下記甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(6)証拠方法
甲第1号証 太田 静行「食品調味・配合例集」、工学図書株式会社、第2-8~2-9頁、第3-14~3-15頁(以下「角田甲1」という。)
甲第2号証 国際公開第2015/028272号(以下「角田甲2」という。)
甲第3号証 国際公開第2015/028273号(以下「角田甲3」という。)
甲第4号証 国際公開第99/56566号(以下「角田甲4」という。)
甲第5号証 特開平11-313635号公報(以下「角田甲5」という。)
甲第6号証 「食品成分データベース」、文部科学省、https://www.fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=10199(以下「角田甲6」という。)
甲第7号証 土田 茂 外2名「特集 新製品(しょう油)しょう油の新製品について 粉末しょう油」、日本醸造協會雑誌、第65巻第8号(1970)、第672~681頁(以下「角田甲7」という。)
甲第8号証 藤田孝輝「甘味料としての糖類」、日本調理科学会誌、第53巻第2号(2020)、第147~152頁(以下「角田甲8」という。)
3 当審は、上記1(2)、2(1)~(5)を採用し、一部職権追加して、次のとおり、取消理由1(新規性)、同2(進歩性)を通知した。
(1)取消理由1(新規性)
本件特許の訂正前の請求項1及び3ないし6に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された刊行物である奥谷甲1、奥谷甲3及び角田甲1ないし5に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明の特許は、同法第113条第2号に該当する。
(2)取消理由2(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1及び3ないし6に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された刊行物である奥谷甲1、奥谷甲3及び角田甲1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明の特許は、同法第113条第2号に該当する。
第5 当審取消理由、特許異議の申立ての理由についての判断
1 取消理由1(新規性),同2(進歩性)について
(1)甲号証に記載された発明
ア 奥谷甲3の記載(特に、表4-26、表4-44(C)、表4-45(B)、表4-52の各記載)よりみて,奥谷甲3には,次の各発明が記載されていると認められる。
(ア)「粉末製品としてのワカメスープであって、全量に対して、精製塩38.0%、グルタミン酸ソーダ17.0%、上白糖3.0%、乳糖5.5%を含有する、ワカメスープ」(以下「奥谷甲3発明(ワカメスープ)」という。)
(イ)「ラーメンスープ(粉末、しょうゆタイプ)であって、合計1057gに対して、食塩400g、しょうゆ粉末200g、砂糖30gを含有する、ラーメンスープ」(以下「奥谷甲3発明(ラーメンスープ)」という。)
(ウ)「ワカメスープ(和風)であって、全量に対して,食塩(粉塩)45.0%、グルタミン酸ソーダ20.0%、乳糖7.5%、砂糖(粉糖)3.0%を含有する、ワカメスープ」(以下「奥谷甲3発明(ワカメスープ和風)」という。)
(エ)「酵母エキス入り配合調味料であって、うま味調味料11.3g、食塩37.4%、砂糖5.5%、乳糖24.2%を含み、全量99.3gである、調味料」(以下「奥谷甲3発明(酵母エキス入り配合調味料)」という。)
イ 角田甲1の記載(特に、表2・2(1)、表3・5の各記載)よりみて、角田甲1には、次の各発明が記載されていると認められる。
(ア)「粉末コンソメスープであって、合計10kgに対して、食塩4.5kg、砂糖0.6kg、乳糖2.3kg、MSG1.2kg、しょうゆ0.05kgを含有する、粉末コンソメスープ」(以下「角田甲1発明(粉末コンソメスープ)」という。
(イ)「インスタントラーメンスープであって、合計約7.0gに対して、食塩3.5g、MSG0.8g、砂糖0.5g、粉末しょうゆ0.5gを含有する、インスタントラーメンスープ」(以下「角田甲1発明(インスタントラーメンスープ)」という。
ウ 角田甲2の記載(特に、段落【0033】、【0051】表3の各記載)よりみて、角田甲2には、次の各発明が記載されていると認められる。
(ア)「固形ブイヨンであって、塩化ナトリウム47重量%、グルタミン酸ナトリウム15重量%、砂糖5.24重量%を含む、固形ブイヨン」(以下「角田甲2発明(実施例1)」という。
(イ)「固形ブイヨンであって、塩化ナトリウム47.41%、グルタミン酸ナトリウム15.27%、砂糖4.22~5.57%を含む、固形ブイヨン」(以下「角田甲2発明(実施例5)」という。
エ 角田甲3の記載(特に、段落【0034】の記載)よりみて、角田甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「固形ブイヨンであって、塩化ナトリウム47重量%、グルタミン酸ナトリウム15重量%、砂糖5.24重量%を含有する、固形ブイヨン」(以下「角田甲3発明」という。
オ 角田甲4の記載(特に、第11~12頁実施例2の記載)よりみて、角田甲4には、次の発明が記載されていると認められる。
「ラーメンスープ粉末であって、MSG24.0%、食塩36.0%、砂糖3.0%を含有する、ラーメンスープ粉末」(以下「角田甲4発明」という。
カ 角田甲5の記載(段落【0024】実施例3)よりみて、角田甲5には、次の発明が記載されていると認められる。
「コンソメスープの素であって、食塩50%、上白糖7%、グルタミン酸ナトリウム1.5%および乳糖38.5%を配合してなるコンソメスープの素」(以下「角田甲5発明」という。
(2)検討
ア 請求項1に係る発明について
(ア)食塩及びその量について、奥谷甲3、角田甲1~甲5に記載された各発明(以下、まとめて「引用発明」という。)の下記事項は、いずれも、本件発明1の「食塩を固形状調味料の全量に対して30重量%~50重量%」に相当する。
奥谷甲3発明(ワカメスープ)の「精製塩38.0%」、
奥谷甲3発明(ラーメンスープ)の「食塩400g(全量1057gに対して400/1057×100=37.8%)」、
奥谷甲3発明(ワカメスープ和風)の「食塩(粉塩)45.0%」、
奥谷甲3発明(酵母エキス入り配合調味料)の「食塩37.4g(全量99.3gに対して37.4/99.3×100=37.7%)」、
角田甲1発明(粉末コンソメスープ)の「食塩4.5kg(合計10kgに対して45.0%)」、
角田甲1発明(インスタントラーメンスープ)の「食塩3.5g(合計約7.0gに対して3.5/7.0×100=50%)」、
角田甲2発明(実施例1)の「塩化ナトリウム47重量%」、
角田甲2発明(実施例5)の「塩化ナトリウム47.41%」、
角田甲3発明の「塩化ナトリウム47重量%」、
角田甲4発明の「食塩36.0%」及び
角田甲5発明の「食塩50%」
(イ)よって、請求項1に係る発明と、引用発明とは、いずれも、
「食塩を固形状調味料の全量に対して30重量%~50重量%を含有する、固形状調味料」
である点で一致するが、請求項1に係る発明は「食塩100重量部に対して5重量部~15重量部のグラニュー糖を含有する」のに対し、引用発明は、いずれも、「グラニュー糖」ではなく「上白糖」又は「砂糖」を含むと特定される点において相違する。
そして、引用発明における「砂糖」ないし「上白糖」は、いずれも「グラニュー糖」と異なることは明らかであるから、請求項1に係る発明は引用発明ではない。
(ウ)そこで、上記相違点について検討する。
a 奥谷甲4(「砂糖にはどのような種類があるのですか?」の項)、角田甲8(表1 各種精糖の特徴と用途)、及び、特許権者が提示した乙第1号証(片山伸也「砂糖について」、生活衛生、第12巻第3号(1968)、第98~107頁、特に「2.製造方法による分類」の項の第5図、第1表)(以下「乙1」という。)によれば、砂糖は、その製造方法によってグラニュー糖、上白糖などの種類があるが、各々、結晶の大きさや組成(糖度、還元糖、水分、灰分の分析値)において異なるものであることが理解できる。
b そうすると、「グラニュー糖」の記載も示唆もされていない引用発明において、「砂糖」のうち特定の種類である「上白糖」を別の種類である「グラニュー糖」に変更すること、及び、「砂糖」として特定の種類である「グラニュー糖」を選択することは、いずれも、当業者において動機付けられているということはできない。まして、「グラニュー糖」の含有量を、「食塩100重量部に対して5重量部~15重量部」に特定することは、当業者において動機付けられているということはできない。
c そして、請求項1に係る発明は、固形状調味料において、食塩100重量部に対して5重量部~15重量部のグラニュー糖を含有することにより、固形状調味料における耐吸湿固結性を改善し、保存中における固形状調味料の品質を長期間安定に維持することができる(本件特許の発明の詳細な説明の段落【0011】(発明の効果)、段落【0045】(表2)、図1)という、明細書に記載のとおりの顕著な効果を奏するものである。
d(a)なお、申立人奥谷は、乙1を引用して「吸湿による固化をさけるために、当業者であれば、この「砂糖」について相対的に吸湿性の小さい「グラニュー糖」を選択するのは自明であるといえる」(令和 4年12月22日提出の意見書第3頁)と主張するが、上記bで検討したとおり、砂糖の種類によって物性が異なり、よって、特定の種類であるグラニュー糖の特定量に変更ないし選択する動機付けがないことよりみて、吸湿性の点のみをもってグラニュー糖を選択することが自明であるということはできない。よって、上記主張は採用できない。
(b)また、申立人角田は、乙1を引用して「「砂糖」としてグラニュー糖を選択することは、一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択にすぎません。…砂糖の中でも特に吸湿性の低いグラニュー糖を選択することには動機付けがあると言えます。加えて、本件特許明細書では、「砂糖」を用いた実施例において、全て「グラニュー糖」を使用しており、「上白糖」に代えて「グラニュー糖」を用いることで顕著な効果を奏することはどこにも記載されておりません。」(令和 4年12月19日提出の意見書第3~4頁)と主張するが、グラニュー糖を選択することの動機付けがないことは上記bで検討したとおりであり、また、請求項1に係る発明が顕著な効果を奏することも、上記cで検討したとおりである。よって、上記主張は採用できない。
(エ)以上のとおり、請求項1に係る発明は、奥谷甲3、角田甲1~甲5に記載された各発明ではないし、奥谷甲3、角田甲1~甲5に記載された各発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 請求項3~6に係る発明について
請求項3~5に係る発明は,請求項1を引用して,固形状調味料をさらに特定したものである。また、請求項6に係る発明は、請求項1を引用して、固形状調味料を含む製品を特定したものである。よって、請求項3ないし6に係る発明は、いずれも、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て備えたものである。
そして、上記アのとおり、請求項1に係る発明が、奥谷甲3、角田甲1~甲5に記載された各発明ではなく、同発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないのであるから、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て備えた請求項3ないし6に係る発明についても、同様の理由により、奥谷甲3、角田甲1~甲5に記載された各発明ではなく、同発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由1(新規性)、同2(進歩性)についての小括
以上のとおり、取消理由1、2によって、本件特許を取り消すことはできない。
2 当審取消理由で採用しなかった特許異議の申立ての理由について
(1)奥谷甲1に記載された発明
奥谷甲1の実施例の記載(特に、段落【0035】の実施例1、【0037】の実施例2の各記載)よりみて,奥谷甲1には,次の発明が記載されていると認められる。
「風味原料を約15重量%、食塩を約40重量%、糖類を0重量%、旨味調味料を約45重量%配合した粉末状の調味料。」(以下「奥谷甲1発明」という。)
(2)検討
ア 請求項1に係る発明について
(ア)食塩及びその量について、奥谷甲1発明の「食塩を約40重量%」は、本件発明1の「食塩を固形状調味料の全量に対して30重量%~50重量%」に相当する。
(イ)よって、請求項1に係る発明と、奥谷甲1発明とは、
「食塩を固形状調味料の全量に対して30重量%~50重量%を含有する、固形状調味料」
である点で一致するが、請求項1に係る発明は「食塩100重量部に対して5重量部~15重量部のグラニュー糖を含有する」のに対し、奥谷甲1発明は、「糖類を0重量%」である点において相違する。
(ウ)そこで、上記相違点について検討する。
a 奥谷甲1には、申立人奥谷も指摘するとおり、「そして、この風味調味料においては、一般的に増量剤や賦形剤として約30重量%の割合で配合されているグラニュー糖、ぶどう糖、果糖、乳糖等の糖類が、除去されて配合されていない。…なお、糖類については、必ずしも完全に除去する必要はなく、風味調味料全体に対して5重量%以下の割合で配合させるようにしても良い。」(段落【0026】、【0027】)との記載がある。
b 他方、上記1(2)ア(ウ)bで検討したとおり、引用発明において、「砂糖」として特定の種類である「グラニュー糖」を選択することや、「グラニュー糖」の含有量を、「食塩100重量部に対して5重量部~15重量部」に特定することは、当業者において動機付けられているということができないというのであるから、砂糖以外の糖類も含む奥谷甲1発明において、当該「糖類」として「グラニュー糖」の特定量を選択配合することも、動機付けられているということはできない。
c そして、請求項1に係る発明は、固形状調味料において、食塩100重量部に対して5重量部~15重量部のグラニュー糖を含有することにより、固形状調味料における耐吸湿固結性を改善し、保存中における固形状調味料の品質を長期間安定に維持することができるという、明細書に記載のとおりの顕著な効果を奏するものである。
d(a)なお、申立人奥谷は、奥谷甲1の段落【0021】、【0022】、【0024】~【0027】の記載から、奥谷甲1には、
「食塩を風味調味料の全量に対して30重量%~40重量%と、
食塩100重量部に対して16.7重量以下のグラニュー糖とを含有する、
固形状調味料。」
の発明が記載されていると主張する(特許異議申立書第10頁)。
(b)しかしながら、奥谷甲1における「グラニュー糖」の記載は、「そして、この風味調味料においては、一般的に増量剤や賦形剤として約30重量%の割合で配合されているグラニュー糖、ぶどう糖、果糖、乳糖等の糖類が、除去されて配合されていない。」(段落【0026】)の1箇所のみであり、かつ、ぶどう糖、果糖、乳糖等と羅列列挙されるうちの1つに過ぎない。そうすると、上記(a)に示した発明は、特定量のグラニュー糖を含有する旨を発明特定事項としている点で、奥谷甲1に記載された発明であるということはできない。
よって、上記主張は採用できない。
イ 請求項3~6に係る発明について
請求項3~5に係る発明は,請求項1を引用して,固形状調味料をさらに特定したものである。また、請求項6に係る発明は、請求項1を引用して、固形状調味料を含む製品を特定したものである。よって、請求項3ないし6に係る発明は、いずれも、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て備えたものである。
そして、上記アのとおり、請求項1に係る発明が、奥谷甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないのであるから、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て備えた請求項3ないし6い係る発明についても、同様の理由により、奥谷甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)小括
以上のとおり、当審取消理由で採用しなかった特許異議の申立ての理由によって、本件特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、当審が通知した取消理由、及び、当該取消理由で採用しなかった特許異議の申立ての理由のいずれによっても、本件特許を取り消すことはできず、また他に、本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたから、特許異議の申立ての対象が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700430