特許異議申立
2021-700853
炊飯用液体調味料
- 審判番号
- 2021-700853
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-131614
- 登録番号
- 6838265
- 請求日
- 2021年09月03日
- 審決日
- 2021年11月26日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】高島 一
- 【権利者代理人】鎌田 光宜
- 【権利者代理人】中 正道
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 村上 騎見高
- 審判官 冨永 みどり
- 分類
- P1652.113-Y (A23L) / P1652.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6838265号発明「炊飯用液体調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6838265号の請求項1、2、5、6に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6838265号の請求項1、2、5、6についての出願は、平成27年6月30日に出願され、令和3年2月16日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年9月3日に特許異議申立人 角田 朗(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
2 本件特許発明
特許第6838265号の請求項1、2、5、6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、5、6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類を含有する、炊飯用液体調味料(ただし、α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼを含有するものを除く)であって、
生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類が添加されるように用いられる調味料。
【請求項2】
アセチル化アジピン酸架橋デンプン及び/又はヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンが、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、馬鈴薯デンプン及びワキシー馬鈴薯デンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とする、請求項1記載の調味料。
【請求項5】
生米を、生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類を含有する液体調味料の存在下(ただし、α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯することを含み、
前記デンプン類が、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つである、米飯の製造方法。
【請求項6】
生米を、生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類を含有する液体調味料の存在下(ただし、α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯することを含み、
前記デンプン類が、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つである、米飯の食感改質方法。
(以下、請求項順に、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明5」、「本件特許発明6」ともいう。)
3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、
理由ア:
請求項1、5、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明である、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取消されるべきものである。
理由イ:
請求項1、2、5、6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において頒布された頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明である、甲第1号証~甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
と主張する。
甲第1号証:竹井よう子 他2名,“炊き込み飯の具の成分が飯の物性に及ぼす影響”,日本調理科学会誌,Vol.30,No.3(平成9年8月20日),pp.49-56
甲第2号証:「でん粉の麺用途における最近の動向」,平成22年4月30日最終更新,独立行政法人農畜産業振興機構,https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000031.html
4 甲号証の記載
(1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
記載(甲1-1)
「そこで具に含まれる成分が飯にどのような影響を及ぼすのかを,飯の食味に大きく関与しているとされている口ざわり,特にかたさとねばりに着目して検討した。」(49頁左下欄13~16行)
記載(甲1-2)
「実験方法
1.試料
(1) 米
……。
(2) 添加物
……。また,これらから米粒中に混入し,大きく影響を与えるであろうと考えられるでんぷんについては,比較のためにも根茎でんぷんとして片栗粉及びくずを,種実でんぷんとして小麦でんぷん及びコーンスターチを加えることとした。」(49頁右下欄1行~50頁右欄6行)
記載(甲1-3)
「
[図:0001384187000001.jpg]
」(50頁)
記載(甲1-4)
「
[図:0001384187000002.jpg]
」(51頁)
記載(甲1-5)
「2.炊飯方法
炊飯条件を一定にするため,間接式電気自動炊飯器型を用い,内釜として底面直径4.8cm,高さ4.5cmのアルミカップを一回の炊飯に6個円形に並べて,同時に炊飯した。アルミカップ1個に15.0gの米を入れ,官能検査により設定した量の水道水を加え,30分間予備浸水させた。外釜水量によって加熱時間を調節できるので,通電してから約30分後にスイッチの切れる200gとした。スイッチの切れた後は,綿100%の乾燥ふきんを蓋と釜の間にはさみ込み,10分間蒸らした。」(51頁左欄1~10行)
記載(甲1-6)
「
[図:0001384187000003.jpg]
」(52頁)
記載(甲1-7)
「結果及び考察
……。
添加物による物性の違いを検討したところ,図2よりかたさについては,各種でんぷんは一様にそのかたさを増加させ,各種でんぷん間の作用に大きな差はなかった。……。
図3よりねばりについて見ると,……。
添加物を加えた場合,砂糖,各種でんぷんは,一様にねばりを増加させ、特にコーンスターチでの値は高く,小麦でんぷん,くず,片栗粉,砂糖の順になった。」(52頁右欄1行~53頁右欄7行)
イ 甲1に記載された発明
記載(甲1-2)~記載(甲1-3)及び記載(甲1-5)から、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
「片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチからなる、炊飯用添加物であって、
炊飯前の米に対して2.0重量%の片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチが添加されるように用いられる炊飯用添加物。」の発明(以下、「甲1添加物発明」という。)、及び
「米を、炊飯前の米に対して2.0重量%の片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチからなる添加物を添加した後に炊飯する、米飯の製造方法。」の発明(以下、「甲1製造方法発明」という。)
また、記載(甲1-1)~記載(甲1-7)から、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
「米を、炊飯前の米に対して2.0重量%の片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチからなる添加物を添加した後に炊飯する、米飯のかたさ及びねばりを増加させる方法。」の発明(以下、「甲1改質方法発明」という。)
(2)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
記載(甲2-1)
「3 各種加工でん粉の麺品質への影響
麺の食感は各種加工でん粉の添加によっても、異なる品質が得られる。異なる加工方法を施したでん粉を添加した場合の食感変化を図2に示す。……。アセチル化アジピン酸架橋デンプンやアセチル化リン酸架橋デンプンおよびヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンなど、架橋エステル化や架橋エーテル化処理した加工でん粉では、モチモチ感に硬さを付与したような食感になる。」(2/6頁「3 各種加工でん粉の麺品質への影響」の項)
記載(甲2-2)
「
[図:0001384187000004.jpg]
」
5 当審の判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1添加物発明とを対比する。
甲1添加物発明における「片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチ」は、いずれも「生デンプン」であって、技術常識に照らして、粉状であると認められるとともに、本件特許発明1における「生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類」に相当し、また、甲1添加物発明における「炊飯前の米」は「生米」であると認められる。
また、甲1添加物発明には、α-グルコシダーゼ及びアミラーゼのいずれも含有されていない。
すると、両者は、
[一致点(1)]
生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類を含有する、炊飯用のもの(α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼを含有するものを除く)、である点、で一致し、
[相違点(1-1)]
本件特許発明1は、液体調味料であるのに対し、
甲1添加物発明は、粉状添加物である点、及び
[相違点(1-2)]
本件特許発明1は、生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類が添加されるように用いられるのに対し、
甲1添加物発明は、生米に対して2.0重量%の生デンプンが添加されるように用いられる点、
で相違する。
相違点(1-1)について、甲1及び甲2には、甲1添加物発明を、粉状から液体に変更することを動機付ける記載はなく、技術常識からも、炊飯前の米に対して添加する粉状の添加物を、液体調味料に変更することを、当業者が容易に想到するといえる根拠を見出すこともできない。
相違点(1-2)について、甲1及び甲2には、甲1添加物発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを動機付ける記載はなく、技術常識からも、甲1添加物発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを、当業者が容易に想到するといえる根拠を見出すこともできない。
申立人は、相違点(1-1)について、炊飯時に固体デンプンを添加すれば、炊飯用水中にデンプンは分散するため、甲1添加物発明も炊飯時には液体調味料となるから、米飯前の調味料が液体であることが発明の本質ではないと主張し(特許異議申立書10頁21~23行)、相違点(1-2)について、本件特許明細書の表8に示された実施例9と実施例10を比較して、デンプン類含有量を2.0重量%とした場合と1.5重量%とした場合の米飯の食感や風味は同等であり、上記重量%の差異により有利な効果や異質な効果が生ずることはないから、甲1添加物発明は本件特許発明1と実質的な相違点がないと考えられると主張して(特許異議申立書10頁24行~11頁9行)、甲1添加物発明は、本件特許発明1と実質的な相違点がないと考えられ、本件特許発明1は新規性を有しない旨を主張する(特許異議申立書11頁10行~11頁11行)。
申立人はさらに、仮に、本件特許発明1と甲1添加物発明に相違点があるとしても、甲1添加物発明に対して甲2に記載された技術を適用することで、本件特許発明1は当業者が容易に想到できたものであり、進歩性を有しない旨を主張する(特許異議申立書11頁12~23行)。
しかし、相違点(1-1)について、炊飯は、生米に加水した後に加熱することにより行うことが技術常識であることから、生米に粉状の生デンプンを添加すると、そのデンプンは加水後には水中に分散するとはいえても、そのことは、粉状であると認められる甲1添加物発明が液体調味料の発明であるとする根拠にはならない。
また、粉状であると認められる甲1添加物発明を、何らかの方法により液体にしてから生米に添加することを、当業者が容易に想到するといえる根拠にもならない。
したがって、相違点(1-1)についての申立人の主張は受けいれられない。
相違点(1-2)について、本件特許発明1におけるデンプン類の添加量「生米に対して0.1~1.5重量%」は、甲1添加物発明における生デンプンの添加量「生米に対して2.0重量%」とは、重複する範囲もなく大きく異なっており、米飯の食感や風味の違いを検討するまでもなく、実質的な相違点である。
したがって、相違点(1-2)についての申立人の主張は受けいれられない。
さらに、甲2には、各種加工でん粉の麺品質への影響が記載されるにとどまり、生米に対してデンプン類を添加して炊飯した場合の影響を示す記載はないから、甲1添加物発明に対して甲2に記載された技術を適用したとしても、本件特許発明1は当業者が容易に想到できたものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明1の進歩性についての申立人の主張も受けいれられない。
そして、本件特許発明1は、本件特許明細書に記載されるとおり、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、付着性と弾性を適度に備えた食感を有する米飯を簡便に製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、甲1添加物発明ではなく、甲1添加物発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項全てをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものであるから、本件特許発明1が、甲1添加物発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明2もまた、甲1添加物発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1製造方法発明とを対比する。
甲1製造方法発明における「片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチ」は、いずれも「生デンプン」であり、技術常識に照らして、甲1製造方法発明における炊飯時には炊飯に用いられる水中に分散していると認められるとともに、本件特許発明5における「生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類」に相当し、また、甲1製造方法発明における「炊飯前の米」は「生米」であると認められる。
また、甲1製造方法発明における炊飯時には、α-グルコシダーゼ及びアミラーゼのいずれも存在していない。
すると、両者は、
[一致点(5)]
生米を、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類を含有するものの存在下(ただし、α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯する点、で一致し、
[相違点(5-1)]
デンプン類を含有するものが、
本件特許発明5では、液体調味料であるのに対し、
甲1製造方法発明では、炊飯に用いられる水である点、及び
[相違点(5-2)]
デンプン類の量が
本件特許発明5では、生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類であるのに対し、
甲1製造方法発明は、生米に対して2.0重量%の生デンプンである点、
で相違する。
事案に鑑み、相違点(5-2)から検討する。
相違点(5-2)について、甲1及び甲2には、甲1製造方法発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを動機付ける記載はなく、技術常識からも、甲1製造方法発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを、当業者が容易に想到するといえる根拠を見出すこともできない。
申立人は、相違点(5-2)について、相違点(1-2)と同じく、微差に過ぎないから、甲1製造方法発明は本件特許発明5と実質的な相違点がないと考えられるとして、甲1製造方法発明は、本件特許発明5と実質的な相違点がないと考えられ、本件特許発明5は新規性を有しない旨を主張する(特許異議申立書12頁2~6行)。
申立人はさらに、仮に、本件特許発明5と甲1製造方法発明に相違点があるとしても、甲1製造方法発明に対して甲2に記載された技術を適用することで、本件特許発明5は当業者が容易に想到できたものであり、進歩性を有しない旨を主張する(特許異議申立書12頁7~8行)。
しかし、相違点(5-2)について、本件特許発明5におけるデンプン類の添加量「生米に対して0.1~1.5重量%」は、甲1製造方法発明における生デンプンの添加量「生米に対して2.0重量%」とは、重複する範囲もなく大きく異なっており、米飯の食感や風味の違いを検討するまでもなく、実質的な相違点である。
したがって、相違点(5-2)についての申立人の主張は受けいれられない。
さらに、甲2には、各種加工でん粉の麺品質への影響が記載されるにとどまり、生米に対してデンプン類を添加して炊飯した場合の影響を示す記載はないから、甲1製造方法発明に対して甲2に記載された技術を適用したとしても、本件特許発明5は当業者が容易に想到できたものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明5の進歩性についての申立人の主張も受けいれられない。
そして、本件特許発明5は、本件特許明細書に記載されるとおり、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、付着性と弾性を適度に備えた食感を有する米飯を簡便に製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点(5-1)について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1製造方法発明ではなく、甲1製造方法発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1改質方法発明とを対比する。
甲1改質方法発明における「片栗粉、くず、小麦でんぷん、又はコーンスターチ」は、いずれも「生デンプン」であり、技術常識に照らして、甲1改質方法発明における炊飯時には炊飯に用いられる水中に分散していると認められるとともに、本件特許発明6における「生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類」に相当し、また、甲1改質発明における「炊飯前の米」は「生米」であると認められる。
また、甲1改質方法発明における炊飯時には、α-グルコシダーゼ及びアミラーゼのいずれも存在していない。
すると、両者は、
[一致点(6)]
生米を、生デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンから選択される少なくとも一つのデンプン類を含有するものの存在下(ただし、α-グルコシダーゼ及び/又はアミラーゼが存在する場合を除く)で炊飯する点、で一致し、
[相違点(6-1)]
デンプン類を含有するものが、
本件特許発明6では、液体調味料であるのに対し、
甲1改質方法発明では、炊飯に用いられる水である点、
[相違点(6-2)]
デンプン類の量が
本件特許発明6では、生米に対して0.1~1.5重量%のデンプン類であるのに対し、
甲1改質方法発明は、生米に対して2.0重量%の生デンプンである点、及び
[相違点(6-3)]
方法が、
本件特許発明6では、米飯の食感改質方法であるのに対し、
甲1改質方法発明では、米飯のかたさ及びねばりを増加させる方法である点、
で相違する。
事案に鑑み、相違点(6-2)から検討する。
相違点(6-2)について、甲1及び甲2には、甲1改質方法発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを動機付ける記載はなく、技術常識からも、甲1改質方法発明において「生米に対して2.0重量%」とされる生デンプンの添加量を、「生米に対して0.1~1.5重量%」に変更することを、当業者が容易に想到するといえる根拠を見出すこともできない。
申立人は、相違点(6-2)について、相違点(1-2)と同じく、微差に過ぎず、甲1改質方法発明は本件特許発明6と実質的な相違点がないと考えられ、本件特許発明6は新規性を有しない旨を主張する(特許異議申立書12頁9~17行)。
申立人はさらに、仮に、本件特許発明6と甲1改質方法発明に相違点があるとしても、甲1改質方法発明に対して甲2に記載された技術を適用することで、本件特許発明6は当業者が容易に想到できたものであり、進歩性を有しない旨を主張する(特許異議申立書12頁18~19行)。
しかし、相違点(6-2)について、本件特許発明6におけるデンプン類の添加量「生米に対して0.1~1.5重量%」は、甲1改質方法発明における生デンプンの添加量「生米に対して2.0重量%」とは、重複する範囲もなく大きく異なっており、米飯の食感や風味の違いを検討するまでもなく、実質的な相違点である。
したがって、相違点(6-2)についての申立人の主張は受けいれられない。
さらに、甲2には、各種加工でん粉の麺品質への影響が記載されるにとどまり、生米に対してデンプン類を添加して炊飯した場合の影響を示す記載はないから、甲1改質方法発明に対して甲2に記載された技術を適用したとしても、本件特許発明6は当業者が容易に想到できたものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明6の進歩性についての申立人の主張も受けいれられない。
そして、本件特許発明6は、本件特許明細書に記載されるとおり、食味を損なうことなく、おこわ様のもちもちとした、付着性と弾性を適度に備えた食感を有する米飯を簡便に製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点(6-1)及び相違点(6-3)について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1改質方法発明ではなく、甲1改質方法発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、5、6に係る特許を取消すことはできない。
また、他に請求項1、2、5、6に係る特許を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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