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特許異議申立

2022-700351

ポリアミド樹脂組成物および成形品

審判番号
2022-700351
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-195856
登録番号
6959424
請求日
2022年04月26日
審決日
2022年09月28日
公報発行日
2022年10月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】浅野 幸義
審判長/審判官
  • 審判長 蔵野 雅昭
  • 審判官 土橋 敬介
  • 審判官 橋本 栄和
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6959424号発明「ポリアミド樹脂組成物および成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6959424号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6959424号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、平成27年7月16日(優先権主張 平成26年7月30日)に出願された特願2015-142421号(以下、「原出願」ともいう。)の一部を令和2年11月26日に新たな特許出願(特願2020-195856号)としたものであって、令和3年10月11日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行は令和3年11月2日)。 その後、令和4年4月26日に、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人である浅野 幸義(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 特許請求の範囲の記載 特許第6959424号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~9に係る発明を「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。) 「【請求項1】 ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、 溶融したポリアミド樹脂(A)に投入する前の平均繊維長が100~3000μmのガラス繊維(B)50~200重量部を含み、前記ガラス繊維(B)は、SiO2を80~45.0重量%、Al2O3を0.1~20重量%およびB2O3を10~35重量%含み、かつ、Dガラスから構成され、かつ、チョップドストランドである、ポリアミド樹脂組成物。 【請求項2】 さらに、衝撃改良剤をポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、0.1~40重量部の割合で含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項3】 前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項4】 前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項5】 前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、セバシン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項6】 さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。 【請求項8】 前記成形品が、携帯電子機器部品の筐体である、請求項7に記載の成形品。 【請求項9】 前記成形品が、アンテナを有する、請求項7または8に記載の成形品。」 第3 特許異議の申立ての理由 申立人が申し立てた特許異議の申立ての理由(以下、「申立理由」という。)の概要及び証拠方法は、以下のとおりである。 1 特許異議の申立ての理由の概要 (1)申立理由1(進歩性) 請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(実施可能要件)、申立理由3(サポート要件) 本件明細書の発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件発明1~9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 また、特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件発明1~9に係る特許は、同法第36条第4項第1号又は同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 請求項1では、ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂は何ら具体的に限定されていない。 一方、本件明細書の実施例の記載では、ポリアミド樹脂としてジアミンに由来する構成単位がメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの両方に由来する特定の2種類のポリアミド樹脂(PAMP10及びPAMP6)のみが使用され、当該実施例のみでシャルピー衝撃強度の向上という効果が実証されているに過ぎない。 よって、ポリアミド樹脂組成物の本件発明1~9は、ポリアミド樹脂を本件明細書の実施例によって効果を実証している範囲に限定していないから、実施可能要件又はサポート要件を満たさない。 2 証拠方法 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開2008-106265号公報 甲第2号証:南条尚志、”FRP構成素材入門 第2章 構成素材と種類-ガラス繊維-”、日本複合材料学会誌、2007年、33巻、4号、141~149頁 甲第3号証:特開2010-84007号公報 甲第4号証:特開2013-35908号公報 参考資料1:特開2006-131821号公報 参考資料2:原出願の令和2年1月22日付け拒絶理由通知の写し 参考資料3:原出願の平成31年3月28日提出の意見書の写し 参考資料4:原出願の令和2年3月27日提出の意見書の写し 参考資料5:本件特許の令和2年11月27日提出の上申書の写し 参考資料6:”クラレ:新しい耐熱性ポリアミド樹脂「Genestar(R)(ジェネスタ(R))”、インターネット、<URL: https://www.enplanet.com/Company/00000029/Ja/Data/p003.html> 参考資料7:原出願の令和2年11月26日提出の審判請求書の写し (以下、上記「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。) 第4 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、特許異議申立書に記載した申立理由1~3のいずれによっても、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1(進歩性)について (1)各甲号証に記載された事項及び記載された発明 ア 甲1 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(B-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を5~18重量部配合してなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 ・・・ 【請求項5】 (A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)無機充填剤10~250重量部を配合してなることを特徴とする請求項1から4いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。 ・・・ 【請求項7】 (c-1)繊維状無機充填剤がガラス繊維、炭素繊維、ワラステナイトから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項5または6記載のポリアミド樹脂組成物。 ・・・ 【請求項11】 請求項1から10いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を、射出成形、押出成形、ブロー成形の内から選ばれる少なくとも1種の方法で成形してなる成形品。 【請求項12】 成形品が、筐体、外装部品または補強部品であることを特徴とする請求項11記載の成形品。 【請求項13】 成形品が、携帯電話筐体であることを特徴とする請求項11または12記載の成形品。」 「【0004】 本発明は、バリの発生が極めて小さいポリアミド樹脂組成物、ならびに、優れた製品表面外観と高剛性を両立し、かつ優れた成形性を同時に満足できるポリアミド樹脂組成物、および製品の薄型化に好適な良外観高剛性筐体を提供することを目的とする。 ・・・ 【0008】 また、半芳香族系共重合ポリアミド樹脂、ポリアミド6樹脂、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂を配合し、さらに無機強化剤を配合することで、バリの発生が極めて小さく、高い剛性を有し、かつ非常に優れた成形品外観を有し、更には優れた成形性を実現するポリアミド樹脂組成物であり、半芳香族系共重合ポリアミド樹脂、ポリアミド610樹脂、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂を配合し、さらに無機強化剤を配合することで、更には誘電損失を引き起こす指標である誘電正接が低いことから、特に携帯電話、PHSなどのように電波を用いる製品の筐体成形品に特に優れるものである。 「【0023】 本発明では(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)無機充填剤を10~250重量部含有することが実用上好ましい。無機充填剤を配合することで高い剛性が得られ、より薄型、小型の筐体成形品が得られるようになる。成形時の外観、流動性と機械特性のバランスから、より好ましくは15~200重量部の範囲である。 【0024】 本発明に用いる(C)無機充填剤としては、繊維状、ウィスカー状等の(c-1)繊維状無機充填剤や(c-2)球状無機充填剤があげられ、それらは1種類以上で使用されるが、(c-1)繊維状無機充填剤と(c-2)球状無機充填剤を併用することが好ましい。 【0025】 (c-1)繊維状無機充填剤の具体例としては、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイトなどの繊維状、ウィスカー状充填材が挙げられる。上記繊維状無機充填剤中、ガラス繊維、ワラステナイトおよび導電性が必要な場合にはPAN系の炭素繊維が好ましい例として挙げられ、これらは1種または2種以上で使用される。中でもガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被膜あるいは集束されていてもよい。はなお、本発明に使用する上記の充填材はその表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤その他の表面処理剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。 【0026】 また、上記(c-1)繊維状無機充填剤の断面形状としては、一般的な円形に加え、扁平断面形状を有するものを用いることも好ましい。具体的な断面形状としては、長円形、円形が2本対となるまゆ形、楕円形、半円形、長方形、正方形、その他多角形、星形、またこれらの単繊維、もしくは複数対繊維などが挙げられる。中でも、強度や成形性、外観などのバランスから、長円形、円形が2本対となるまゆ形が好ましい。また、扁平断面の最長径/最長径の比は、1.5以上、6.0以下が好ましい。この比が1.5より小さいと、比が1.0である円形断面ガラス繊維と差異がない。バリ抑制の観点から、1.8以上がより好ましい。この比が6.0より大きいと、コンパウンド中にガラス繊維同士がお互いを砕き合うため、機械特性に影響を及ぼす。機械特性とのバランスから5.0以下がより好ましい。」 「【実施例】 【0035】 以下、実施例を挙げてさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例および比較例に用いた測定方法を以下に示す。 ・・・ 【0046】 参考例1 半芳香族共重合ポリアミド樹脂の製造 実施例、ならびに比較例で用いた共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。(a-1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、(a-2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩、および(a-3)ε-カプロラクタムをそれぞれ表に記載の重量比で投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。 【0047】 参考例2 ポリアミド610樹脂の製造 実施例、ならびに比較例で用いたポリアミド610樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の当モル塩を投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を280℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。 ・・・ 【0049】 参考例4 実施例、ならびに比較例で用いたカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂の製造 スチレン72重量部、アクリロニトリル25重量部、メタクリル酸3重量部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合樹脂を得た。得られた変性ビニル共重合樹脂の還元粘度は1.60dl/gであった。 ・・・ 【0066】 [実施例23~25] 表に示す共重合重量比の(a-1)半芳香族系共重合ポリアミド樹脂、(a-2)ポリアミド610樹脂、(B-1)変性ビニル系共重合樹脂、(c-1)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名 TP-67 断面形状:円形 平均径:13μm]を表に示す重量部で、2軸押出機を用いてシリンダ設定温度290℃、スクリュ回転数200rpmの条件下で(a-1)、(a-2)、(B-1)をトップフィード(基込めフィード)、(c-1)をサイドフィードし、溶融混錬した後、ストランド状のガットを成形し、冷却バスで冷却後、カッターで造粒しペレットを得た。得られたペレットを参考例7に示した方法により成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表に示す。 ・・・ 【0084】 【表1】 [図:0001389416000001.jpg] 【0085】 【表2】 [図:0001389416000002.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1の請求項1、5を引用する請求項7に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B-1)カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合樹脂、および/または(B-2)酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を5~18重量部、(C)無機充填剤10~250重量部配合してなり、(C)無機充填剤が、ガラス繊維であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」 (以下、「甲1発明」という。) イ 甲2 甲2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001389416000003.jpg] ・・・ [図:0001389416000004.jpg] [図:0001389416000005.jpg] [図:0001389416000006.jpg] 」(141頁右欄~143頁) ウ 甲3 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【要約】 【課題】機械的強度、耐衝撃性、反り性及び成形品表面外観の全てに優れる、携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物及び携帯電子機器部品を提供することにある。」 「【請求項1】 (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、 (B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン化合物重合体ブロックbとの水素添加ブロック共重合体 1~20重量部 (C)(B)該水素添加ブロック共重合体を不飽和酸及び/又はその誘導体で変性してなる重合体 1~10重量部 (D)断面が下記式による扁平率2.5以上の扁平形状である扁平断面ガラス繊維と、(E)断面が円形状である円形断面ガラス繊維の合計として80~200重量部(但し、(D)成分が0重量部の場合を除く) を含有してなり、 (D)成分と(E)成分の配合重量比率が(D):(E)=3:7~10:0であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 扁平率=ガラス繊維断面の長径(D2)/ガラス繊維断面の短径(D1) ・・・ 【請求項5】 芳香族モノマーが、メタキシリレンジアミン又はメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。」 「【0028】 (B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン化合物重合体ブロックbとの水素添加ブロック共重合体(以下、単に「水素添加ブロック共重合体」と略記する場合がある) 本発明においては、(B)水素添加ブロック共重合体と後述の(C)水素添加ブロック共重合体を不飽和酸及び/又はその誘導体で変性してなる重合体と併用することが特徴の一つである。未変性/変性ブロック共重合体を併用することにより、耐衝撃性がより向上すると共に、曲げ撓み量等の機械的性質も向上するという利点がある。」 「【0059】 これら(D)及び(E)成分であるガラス繊維の組成は繊維化が可能な組成であればよく、好ましくは、Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス等を挙げることができる。通常はEガラスが、入手が容易であるので好ましい。種々の断面形状を有する繊維状充填材としては、ガラス繊維以外に、例えば、炭素繊維、玄武岩繊維等があるが、これらの繊維状充填材も、本発明における(D)成分及び(E)成分のガラス繊維と同様の効果を発揮すると予測される。」 「【0075】 <原料> (A)ポリアミド樹脂 ポリアミドMXD6;メタキシリレンジアミンとアジピン酸から製造されたポリアミド樹脂、三菱瓦斯化学(株)製、「商品名:ポリアミドMXD6#6000」、融点243℃、数平均分子量16,000。 ポリアミドMP6;メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=(70/30モル%)の混合ジアミンとアジピン酸から製造されたポリアミド樹脂、三菱瓦斯化学(株)製、融点257℃、数平均分子量16,000。 ポリアミド66;デュポン社製、「商品名:ザイテル101」、融点265℃。」 エ 甲4 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)10~100質量部、ガラス繊維(C)1~200質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン0~30モル%及びパラキシリレンジアミン100~70モル%からなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」 「【0088】 [原料] ポリアミド樹脂(A) ポリパラキシリレンセバカミド樹脂(PXD10): 水分率0.12質量%、吸水率0.36質量%、密度1.12g/cm3、リン原子濃度150質量ppm、数平均分子量17,000、分子量分布(Mw/Mn)2.6(GPC測定によるPMMA換算値)、相対粘度2.39。以下の製造例1に記載に記載の方法で製造した。 <製造例1> 攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.073mol)、酢酸ナトリウム5.99g(0.073mol)を秤量して仕込んだ(次亜リン酸カルシウムと酢酸ナトリウムのグラム当量比は0.5)。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン6026g(44.25mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、反応容器内温は281℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145~147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、0.4MPa/hの速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は300℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。 【0089】 ポリメタキシリレンアジパミド樹脂(MXD6): メタキシリレンジアミン100モル%のジアミンとアジピン酸とから得られたポリアミド樹脂を使用した。 水分率0.12質量%、吸水率0.54質量%、密度1.21g/cm3、リン原子濃度350質量ppm、数平均分子量15,000(GPC測定によるPMMA換算値)、相対粘度2.1。 【0090】 ポリメタ/パラキシリレンアジパミド樹脂(MP6): 水分率0.12質量%、吸水率0.55質量%、密度1.21g/cm3、リン原子濃度350質量ppm、数平均分子量15,000(GPC測定によるPMMA換算値)、相対粘度2.1。以下の製造例2に記載に記載の方法で製造した。 <製造例2> アジピン酸(ローディア製)を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミンのモル比が3:7の混合ジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。」 (2)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)対比 甲1発明における「(A)ポリアミド樹脂」は、本件発明1の「ポリアミド樹脂(A)」に相当する。 甲1発明における「ガラス繊維」である「(C)無機充填剤」は、本件発明1の「ガラス繊維(B)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「ポリアミド樹脂(A)に対し、 ガラス繊維(B)を含む、ポリアミド樹脂組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:ガラス繊維(B)の溶融したポリアミド樹脂(A)に投入する前の平均繊維長について、本件発明1では「100~3000μm」と特定しているのに対し、甲1発明では特定されていない点。 相違点2:ポリアミド樹脂(A)100重量部に対するガラス繊維の含有量について、本件発明1では「50~200重量部」を含むのに対し、甲1発明では「10~250重量部」を配合してなる点。 相違点3:ガラス繊維を構成する材料に関して、本件発明1では「SiO2を80~45.0重量%、Al2O3を0.1~20重量%およびB2O3を10~35重量%含み、かつ、Dガラスから構成され」と特定しているのに対し、甲1発明ではガラスの組成・種類が特定されていない点。 相違点4:ガラス繊維の形態について、本件発明1では「チョップドストランドである」と特定しているのに対し、甲1発明ではチョップドストランドであることが特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点3について検討する。 甲1の記載をみるに、段落0023において、無機充填剤を配合することによって高い剛性が得られると記載され、続く段落0024~0026において、無機充填剤の1つである繊維状無機充填剤について、ガラス繊維や炭素繊維などの種々のものが使用可能であること、及び、繊維の断面形状と機械特性の関係について記載されているものの、ガラス繊維の種類についてDガラスから構成することやガラス繊維が特定の成分をどの程度含むかについては何ら記載されていない。 そして、甲1の実施例で実際に用いられたガラス繊維についても確認する。段落0066に記載の「日本板硝子(株)製:商品名 TP-67」、段落0077に記載の「ガラス繊維[日東紡績(株)製:商品名CSG 3PA-820 断面形状:長円形 最長径/最短径の比:4.0]」は、原出願の審査過程で提出された意見書である参考文献4、特にその中の添付資料1~3の記載によれば、いずれもEガラスから構成されているといえる。また、段落0078に記載の「ガラス繊維[日東紡績(株)製:商品名CSH 3PA-870 断面形状:まゆ形 最長径/最短径の比:2.0]」について、同社製の「CSH 3PA」の名称のものがEガラスから構成されることが知られている(例えば、特開2005-336229号公報の段落0057)ことからみて、同様にEガラスから構成されていると考えられる。このように、甲1の実施例で実際に用いられたガラス繊維は、いずれもEガラスから構成されたものといえる。 以上のことから、甲1では、ガラス繊維を構成するガラスの種類について、もっぱらEガラスの市販品の例が示されているのみで、それ以外の種類のガラスを用いることは何らの記載も無い。 次に甲2の記載をみていくと、まず、甲2の記事の名称及び記載内容全体からみて、ガラス繊維の分野における本願出願時の技術常識を示したものといえる。そして、甲2の「2.ガラス繊維の特徴」において、ガラス繊維が樹脂の一般的な強化材であることが記載されており、「3.ガラス繊維の組成と特性」において、各種のガラス繊維が列記されている。その中で、「(1)Eガラス」の項に「Eガラスは,電気絶縁性,耐候性に優れ,その優れたコストパフォーマンスからFRP強化材として最も汎用的に使用されている。」と記載され、「(4)Dガラス」の項に「低誘電率,低誘電正接ガラスとして開発されたガラスであるが,B2O3を多量に含み,溶融時の揮発が激しく製造が難しい」と記載され、表1にガラスの酸化物等の含有量が記載され、表2に各種ガラス繊維の特性が記載されている。ここで、表2の記載内容から、Dガラスの方がEガラスよりも低い誘電率、誘電正接を有しているものの、引張強度、引張弾性率はEガラスや他の種類のガラス繊維よりも低く、機械特性が最も劣っていることが見て取れる。 そこで、甲1、2の記載を踏まえて、甲2に記載のDガラスを甲1発明のガラス繊維に採用することの容易想到性について検討する。 甲1では、段落0023~0026の記載から、高い剛性が得られることを期待して、ガラス繊維のような無機充填剤を用いるものであり、さらに実施例でEガラスのガラス繊維が採用されていることは、甲2に示された、Eガラスが機械特性に優れており、強化用ガラス繊維として最も一般的であるというガラス繊維の分野の技術常識とも整合しているといえる。してみると、甲1発明におけるガラス繊維の種類として、敢えて甲2に記載されたガラス組成の中から最も機械特性に劣るDガラスを採用することは、甲1、2の記載から動機づけられるものではない。 また、他の甲号証の記載も確認するに、甲3には、機械的強度、耐衝撃性、反り性及び成形品表面外観の全てに優れる、携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物について記載されている(要約)ところ、樹脂組成物に使用可能なガラス繊維の組成・種類について、「Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス等を挙げることができる。通常はEガラスが、入手が容易であるので好ましい。」と記載されているにとどまり(段落0059)、Dガラスを採用することの記載は無いし、甲4には、ガラス繊維の組成・種類について何らの言及もない。 したがって、甲3、4の記載をみても、甲1発明においてガラス繊維をDガラスから構成することは動機づけられるものではない。 さらに、本件発明1の奏する効果についても確認する。 本件明細書の段落0008には、所定のガラス繊維を配合したことにより機械的強度にも優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという効果が記載されている。そして、表1に記載の実施例4と比較例2は、ガラス繊維がDガラスかEガラスかという点を除き同一の組成であるところ、表2の記載によれば、アンテナ特性だけでなく曲げ強度及びシャルピー衝撃強度についても、実施例4のほうが比較例2よりも優れており、本件発明1においてガラス繊維をDガラスから構成することによって、アンテナ特性と機械的強度の両方が向上することが具体的に確認できる。 一方、甲1~4のいずれにおいても、ガラス繊維をDガラスから構成することによるアンテナ特性と機械的強度の両方の向上効果は記載も示唆もされておらず、むしろ甲2には、Eガラスの方がDガラスよりも機械特性に優れることが明示されている。してみると、本件発明1の奏する効果は、甲1~4のいずれの記載からも当業者が予測し得ない異質なものといえる。 以上のことから、相違点1、3及び4について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明と、甲2~4に記載された事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (ウ)申立人の主張について 上記(イ)の相違点3についての判断に関連する申立人の主張について、以下に順次検討する。 申立人は、特許異議申立書の46~47頁において、概略、 甲第2号証において、「Dガラス」は他のガラスと比べて剛性に多少劣るものの強化用ガラス繊維の組成の1つとして例示されているのだから、剛性の向上効果が多少劣ることは承知のうえで誘電正接の顕著に低い「Dガラス」を採用して剛性とアンテナ機能の両方を向上させることは甲第1号証の発明の目的に反するものではなく、阻害要因は存在しない。 そうすると甲第1号証の発明において、甲第2号証の開示に基づいて、ガラス繊維に剛性向上の役割だけでなく誘電正接低下の役割も兼任させるために、ガラス繊維の組成として「Dガラス」から構成されるものを採用することは当業者にとって容易に想到しうる。 ということを主張している。 しかしながら、上記(イ)で指摘したように、甲1において、ガラス繊維をはじめとする無機充填材の使用目的は樹脂組成物の剛性の向上であると記載され(段落0023~0026)、一方、誘電正接の低下は、ポリイミド610を含む樹脂組成物の効果として記載されている(段落0008)。この点は、申立人も特許異議申立書の43頁で認めるところである。 したがって、甲1において、ガラス繊維の本来の目的である剛性の向上よりも誘電正接の低下を優先してガラス繊維の種類を選択することは全く想定されておらず、甲2の141~143頁、表2に示されたガラス繊維の組成の中から、敢えて最も機械特性の劣るDガラスを甲1発明のガラス繊維に採用することは動機づけられるものでない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 また、申立人は特許異議申立書の47~52頁において、概略、 ポリアミド樹脂よりもガラス繊維の方が誘電正接が低いため、ガラス繊維を配合すればポリアミド樹脂組成物の誘電正接が低下することは当業者が容易に推察できることである。このことは、甲1においてガラス繊維を含まない実施例2とガラス繊維を含む実施例23~25との誘電正接から明らかであり、実施例24の誘電正接が実施例2よりも高いのは誤記によるものである。実施例5と実施例26~28の比較についても同様のことがいえる。 ということを主張している。 しかしながら、既に述べたとおり、甲1において、ガラス繊維をはじめとする無機充填材の使用目的は樹脂組成物の剛性の向上であり、甲1における実施例の誘電正接の値に多少の大小が見られるとしても、それだけでは剛性の向上という本来の目的よりも誘電正接の低さを優先してDガラスのガラス繊維を採用することが動機づけられるものではない。そもそも、上記主張は甲1の実施例24の誘電正接の値が誤記であることを前提としているが、単に申立人の主張する仮説に整合しないことを誤記の根拠としており、客観性に欠ける主張といわざるを得ない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 さらに、申立人は特許異議申立書の52頁において、概略、 本件明細書の実施例において、Dガラスのガラス繊維として市販のものを使用していることからすれば、甲1発明においてDガラスのガラス繊維を採用することの阻害要因は存在しない。 と主張している。 しかしながら、市販されているガラス繊維にも当然様々な特性のものがあり、当業者であればガラス繊維の使用目的や所望の性質に応じて適切なものを選択すると考えるのが自然であるから、単に市販されているという理由だけでは、Dガラスのガラス繊維を甲1発明に採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できるものではない。 イ 本件発明2~9について 本件発明2~9は本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2~9は、上記アで示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものでない。 ウ まとめ よって、申立理由1は理由がない。 2 申立理由2(実施可能要件)について (1)特許法第36条第4項第1号の判断手法について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する 具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、この観点に立って検討する。 (2)本件発明の特定事項 本件発明を特定する事項は上記第2で示したとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明において、ポリアミド樹脂組成物に用いる各成分のうち、ポリアミド樹脂(段落0009~0013)について記載され、他の樹脂成分としてのポリフェニレンエーテル樹脂(段落0014)について記載され、ガラス繊維について、各酸化物成分の含有量とその効果(段落0016~0020)、ガラス繊維がDガラスから構成されること、かつ、平均繊維長100~3000μmのチョップドストランドであること(段落0024)、ガラス繊維の配合量(段落0025)がそれぞれ記載され、さらに衝撃改良剤(段落0027)について記載されている。また、ポリアミド樹脂組成物を公知の方法で成形して、所望の用途の成形品とすることも記載されている(段落0029~0030)。 そして、実施例において、原料として、合成されたPAMP10、PAMP6の2種のポリアミド樹脂、Dガラスから構成されるチョップドストランドであるガラス繊維D、衝撃改良剤Aが記載され、これらを用いて表1に示す組成のペレットを作製し、ペレットを射出成形してアンテナ特性を評価するための成形品としたことが記載され、表2に曲げ強度、シャルピー衝撃強度及びアンテナ特性の評価結果が記載されている(段落0033~0042)。 (4)判断 上記(3)に示した発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明について、ポリアミド樹脂組成物に使用可能な構成成分が記載され(段落0009~0014、0016~0020、0024、0025)、それらを混合して樹脂組成物を得るための方法が記載され(段落0027)、当該樹脂組成物を公知の方法で成形して成形品を得て、所望の用途に使用することが記載されているといえる(段落0029~0030)。そして、実施例において、実際に樹脂組成物及び成形品を製造したことが具体的な材料・手順とともに記載されている。 そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明を実施することができるといえる。 (5)申立人の主張について 申立人は特許異議申立書の55~56頁において、概略、上記第3(2)のとおり主張している。 確かに、実施例では2種のポリアミド樹脂のいずれかを用いているものの、上記(2)に示したとおり、段落0009~0013には、他にも種々のポリアミド樹脂が使用できることが記載されており、当該記載に接した当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく実施例以外のポリアミド樹脂を用いてポリアミド樹脂組成物を製造することができるといえる。 なお、実施可能要件の判断手法は上記2(1)に示すとおりであるから、申立人の主張するような、実施例と同等の効果を奏するか否かという観点は、実施可能要件の判断とは直接関係するものではない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (6)まとめ よって、申立理由2は理由がない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)特許法第36条第6項第1号の判断手法について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って検討する。 (2)本件発明の特定事項 本件発明を特定する事項は上記第2で示したとおりである。 (3)本件発明の課題 本件明細書の発明の詳細な説明の段落0004の記載によれば、本件発明は、「アンテナ特性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供すること」を解決すべき課題とするものである。 (4)判断 ア 本件発明1について 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は上記2(3)で示したとおりであり、そのうち本件発明の課題に関係する部分について以下にみていく。 発明の詳細な説明では、ガラス繊維を構成するガラスの組成が電気特性に影響することが記載されており(段落00017~0020)、ひいてはガラスの組成(種類)がポリアミド樹脂組成物のアンテナ特性に寄与するものといえる。そして、「本発明で用いるガラス繊維として、Dガラス繊維やNEガラス繊維等の表記で市販されているガラス繊維を用いることができる。」(段落0024)との記載から、Dガラスが上記のガラス組成を満たすものとして記載されているといえる。(なお、Dガラスに関する本願出願時の技術常識を示す文献の記載として、例えば、甲2の表1のDガラスの組成の記載、及び、本件明細書の段落0024で挙げられた特開平9-74255号公報の段落0003の「そのため、Eガラスより低い誘電率、誘電正接を持つガラスが望まれているが、その1つのガラスとしてDガラスと呼ばれているガラスが開発されている。Dガラスは、一例として、SiO2 73%、Al2 O3 1.0%、B2 O3 22%、CaO 0.6%、MgO 0.5%、Li2 O 0.6% Na2 O 1.2% K2 O 1.1%の組成を有するガラスである。」との記載があり、当該技術常識に基づいて、Dガラスであれば本件明細書の上記段落に記載のガラス組成を満たすことが確認できる。) そして、発明の詳細な説明の実施例及び比較例では、Dガラスから構成されるガラス繊維C、ガラス繊維Dを含む実施例のものがアンテナ特性「A」、Eガラスから構成されるガラス繊維A、Bを含む比較例のものがアンテナ特性「B」であることが開示され(段落0034、表1、2)、ガラス繊維をDガラスから構成することによってアンテナ特性が向上し上記課題を解決することが確認できる。 そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 イ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明1について上記アで述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明は、本件発明2~9が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 (5)申立人の主張について 申立人は特許異議申立書の55~56頁において、概略、上記第3(2)のとおり主張している。 確かに、実施例では2種のポリアミド樹脂のいずれかを用いているものの、上記(4)アに 示したとおり、本件発明はガラス繊維の組成・種類を特定することを課題解決のための手段としていると解されるから、本件発明がポリアミド樹脂の種類を実施例の2種類に限定していないからといって、それだけで上記課題を解決することができないとはいえない。 なお、サポート要件の判断手法は上記3(1)に示すとおりであり、実施例で測定されたシャルピー衝撃強度は上記課題と直接関係するものではないから、申立人の主張するような、実施例と同等のシャルピー衝撃強度を有するか否かという観点は、サポート要件の判断とは直接関係するものではない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (6)まとめ よって、申立理由3は理由がない。 第5 むすび したがって、申立ての理由によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700351

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