特許異議申立
2022-700345
TNF-α及びIL-6産生抑制剤及びそれを用いた筋肉炎症抑制剤
- 審判番号
- 2022-700345
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-142816
- 登録番号
- 6954960
- 請求日
- 2022年04月26日
- 審決日
- 2023年05月29日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オリザ油化株式会社
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 冨永 みどり
- 審判官 齋藤 恵
- 審判官 岡崎 美穂
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6954960号発明「TNF-α及びIL-6産生抑制剤及びそれを用いた筋肉炎症抑制剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6954960号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。
特許第6954960号の請求項1~3に係る特許を維持する。
特許第6954960号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6954960号(以下「本件特許」という。)の出願(特願2019-142816号)は、平成27年8月5日の出願である特願2015-154729号の一部を、令和1年8月2日に新たな出願としたものであって、令和3年10月4日に特許権の設定登録がされ(請求項の数 4)、同年10月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年4月27日に、特許異議申立人である 笹井 栄治(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである(日付は、当審による起案を除き、書類の受付日である)。
令和4年 6月30日付け 取消理由通知書
同年 8月29日 訂正請求書及び意見書
同年 9月28日 手続補正書(訂正請求書)
同年10月14日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年11月17日 意見書(申立人)
同年12月 9日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 2月 7日 訂正請求書及び意見書
令和5年2月7日受付の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」ということがある。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」ということがある。)がされたので、令和4年8月29日受付の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
本件訂正は、以下の第2に示すように、訂正事項として、請求項4を削除する訂正のみを含むものであって、本件訂正後の特許請求の範囲に記載される請求項1~3は、特許登録時の請求項1~3と同じものである。そうすると、申立人は、本件訂正後の特許請求の範囲に記載される請求項1~3に対して意見を述べる機会は、既に与えられていたのであるから、本件訂正請求後に、再度、申立人に意見書を提出する機会を与える必要はないと認められる。このため、特許法第120条の5第5項ただし書に規定により、本件訂正請求後に、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和5年2月7日受付の訂正請求書による訂正の請求は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを求めるものであって、その内容は、特許請求の範囲の請求項4を削除するというものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更 の存否
本件訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項4を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する適法なものである。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項4について削除する訂正を認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。なお、本件訂正後の請求項に係る発明を、以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」等ということがある。
【請求項1】
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を有効成分とする筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤。
【請求項2】
請求項1の筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤を有効成分とする運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の剤を有効成分とする筋肉痛改善剤。
【請求項4】
(削除)
第4 当審において通知した取消理由について
1 当審において通知した取消理由
(1)当審が令和4年6月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(新規性)本件発明4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、本件発明4についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記(引用文献については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
甲1:特開2015-107964号公報(6月11日)
(2)当審が令和4年12月9日付け取消理由通知(決定の予告)において通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(新規性)本件発明4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、本件発明4についての特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
理由2(進歩性)本件発明4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記(引用文献については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
甲1:特開2015-107964号公報(6月11日)
2 取消理由についての当審の判断
上記1のとおり、当審において通知した取消理由は、いずれも請求項4に係る特許についてのものであったところ、本件訂正により請求項4は削除されたから、訂正後の本件特許に、当審において通知した取消理由が存在しないことは明らかである。
3 小括
以上のとおり、訂正後の本件特許に、当審において通知した取消理由が存在しないから、本件特許は、当審において通知した取消理由によって取り消されるべきものでない。
第5 取消理由通知で採用しなかった申立理由について
1 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由
申立人は、証拠として甲1を提出し、請求項1~4に係る特許について、特許法29条1項3号違反に基づく申立理由(理由1)、特許法29条2項違反に基づく申立理由(理由2)により取り消されるべきものであるとして、概略、以下の主張をしている。
(1)異議申立人の主張する甲1に記載された発明
甲1には、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物が、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora)の根茎抽出物であること(記載事項1-2、1-3)、ケンペリア・パルウィフローラがブラックジンジャー(black ginger)とも呼ばれること、抽出溶媒として炭素数1~6個のアルコールが挙げられることが記載されている。また、ケンペリア・パルウィフローラ根茎(rhizome)を食品加工に適合した精製水、エタノール及び亜臨界水または超臨界二酸化炭素を用いて抽出することが記載されていると共に、実施例1として、ケンペリア・パルウィフローラ根茎(rhizome)のエタノール抽出物が記載されている。したがって、甲1には、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物として、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が記載されている。
以上のことから、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
(甲1発明)
「黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を有効成分として含む筋疲労回復用健康食品。」
(2)異議申立人の主張する申立理由
ア 理由1(新規性)
本件特許発明1~4は、甲1発明と同一であり新規性を欠如している(特許法29条1項3号)。したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(ア)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物(以下「KP根茎のエタノール抽出物」という。)を有効成分とする筋肉疲労改善剤である点。
(相違点)
本件特許発明4におけるKP根茎のエタノール抽出物が、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤として機能するのに対して、甲1発明におけるKP根茎のエタノール抽出物は、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤として機能するか不明である点。
甲1に、KP根茎のエタノール抽出物が、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤として機能することの開示はない。しかし、甲1と本件訂正発明4の「KP根茎のエタノール抽出物」に物としての差異はなく、本件訂正発明4において、請求項4で引用する請求項1の限定は、その物が固有に有している機能、特性等に過ぎず、「KP根茎のエタノール抽出物」を有効成分とする「剤」を何ら限定するものではない。
また、健康食品を食する者は、通常、その食品がもたらす効果自体を期待するから、甲1発明の「筋疲労回復用健康食品」は、本件訂正発明4における「剤」に該当する。
したがって、本件特許発明4と甲1発明との間に実質的な差異はなく本件特許発明4は新規性を欠如している。
(イ)本件特許発明2について
筋肉疲労が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症によってもたらされることは公知であるから、筋肉疲労を改善するということは、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症を抑制することに他ならず、甲1発明の「筋疲労回復用健康食品」は、「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」でもある。
また、請求項2で引用する請求項1の「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」なる記載は、筋肉炎症抑制剤を何ら限定するものではない。
よって、本件特許発明2と甲1発明との間に実質的な差異はなく本件特許発明2は新規性を欠如している。
(ウ)本件特許発明3について
運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が筋肉痛をもたらすことは公知であるから、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症を抑制することは、筋肉痛を改善することに他ならず、甲1発明の「筋疲労回復用健康食品」は、「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」あると共に、「筋肉痛改善剤」でもある。
また、請求項3で引用する請求項1の「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」なる記載は、筋肉痛改善剤を何ら限定するものではない。
よって、本件特許発明3と甲1発明との間に実質的な差異はなく本件特許発明3は新規性を欠如している。
(エ)本件特許発明1について
本件特許発明1において、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子の発現を抑制する効果によってもたらされるのは、結局のところ、運動誘発性骨格筋損傷に起因する、筋肉炎症や筋肉痛の低減や筋肉疲労改善であり、甲1に記載された筋疲労回復の用途とは異なる新たな用途をもたらすものではない。したがって、本件特許発明1を用途発明であると見做して、その新規性、進歩性を認めることはできない。
さらに、本件特許の明細書では、実施例の黒ショウガ抽出物にIL-6遺伝子の発現を抑制する効果が認められたことをもって、「黒ショウガエキスには運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症及び筋肉痛の低減作用を有し、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤、及びこれを用いた筋肉痛改善剤及び筋肉疲労改善剤として用いることができることが確認された。」とされ(【0035】)、このことからみれば、本件特許発明1は、実質的に本件訂正発明2~4の上位概念であるとも言える。
したがって、本件特許発明1は、本件特許発明2~4と同様に新規性を欠如している。
イ 理由2(進歩性)
本件特許発明1~4は、甲1発明に基づき当業者が容易になし得た発明であり進歩性を欠如している(特許法29条2項)。
本件特許発明1~4と甲1発明との間に、差異があるとしても、本件特許発明1~4は、甲1発明から当業者が容易になし得た発明であり、進歩性を欠如している。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審の判断
当審は、取消理由通知で採用しなかった申立理由によっても、本件訂正後の請求項1~3に係る発明の特許は、取り消されるべきものでないと判断する。
本件訂正により、請求項4は削除されたので、上記1(2)の異議申立人の主張する上記の申立理由のうち、請求項1~3に係る特許に対する申立理由について、上記のように判断した理由を以下に示す。
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
ア 【0009】
天然物由来の筋機能の調節物質を探索した結果、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora Wall. ex Baker)抽出物及びこれに含まれたフラボン系化合物が筋肉内のタンパク質異化作用を減らし、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させる活性があることを見付けて本発明の完成に至った。
イ 【0018】
上記のように、本発明のケンペリア・パルウィフローラ抽出物とそれから分離したフラボン系化合物は、筋肉内のタンパク質異化作用を減らし、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させるので、筋肉疾患の治療用の薬学的組成物や筋機能改 善用の食品組成物を製造するのに効果的である。
ウ 【0023】
上記抽出物は、これに限定されないが、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora)の根茎抽出物であることができる。
【0024】
ケンペリア・パルウィフローラというショウガ科(Zingiberaceae family)の植物の一種としてブラックジンジャー(black ginger)とも呼ばれる。
【0025】
本発明のケンペリア・パルウィフローラ抽出物は公知の天然物抽出方法に基づいて抽出することができ、好ましくは水、炭素数1~6個の有機溶媒及び亜臨界または超臨界流体からなる群から選択された一つ以上の溶媒で抽出することができ、さらに好ましくは炭素数1~6個のアルコール水溶液でありうる。上記炭素数1~6個の有機溶媒は炭素数1~6個のアルコール(alcohol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、エチルアセテート(ethyl acetate)、メチレンクロライド(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)及び石油エーテル(petroleum ether)からなる群の中から選択されたものでありうる。
エ 【0051】
筋機能の改善は筋肉量の増加、筋力強化、筋疲労の回復など、筋肉本来の性質または機能を強化することを意味する。また、本発明はケンペリア・パルウィフローラ抽出物、フラボン系化合物がPI3K/AKT及びmTOR発現量を増加(実験例2参照)させて、このような因子は、筋肉量を増加させて運動能力を向上させるのに関与する(Acta. Physiol. (Oxf). 191(1):67-75, 2007)。
【0052】
本発明の食品組成物は、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。上記類型の食品組成物は、当業界に公知の通常の方法に基づいて様々な形で製造することができる。
オ 【0058】
<実施例1>
ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物の製造 乾燥されたケンペリア・パルウィフローラ根茎(rhizome)をミキサーで粉砕した後、粉砕したケンペリア・パルウィフローラ試料100gを95%エタノール1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はワットマン(Whatman)2番濾紙で濾過し、濾過された抽出液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を取り除いた後、ケンペリア・パルウィフローラエタノール抽出物(9.56g) を得た。
カ 【0065】
<実験例1>
細胞モデルで筋肉内のタンパク質異化作用の減少効果
筋肉細胞であるL6 myoblast(American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)をDMEM(10% FBS, 100 U/mL penicillin, 100g/mL streptomycin)で培養した。細胞密度が約80~85%になった際、細胞培地を2%のFBSを添加したDMEM成長培地に交替して、6日間分化した後実験を行った。分化したL6細胞に筋減少を誘導するためにTNF-αを24時間処理した後、上記実施例2-1で製造した5,7-ジメトキシフラボンを濃度別(1,5μM)に処理した。筋肉内のタンパク質異化作用に関与する主要ligaseであるatrogin-1と、MuRF1のmRNA発現量を調べるためにRT-PCRを行った。分化した細胞からTRIzol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて総RNAを収穫して逆転写した後、RT-PCR分析を次のように行った。まず、cDNA合成のために上記RNAをreverse transcriptaseで逆転写した。RT-PCRは次の特定プライマーで行った。
・・・
それぞれの相対的なmRNA発現量の値はβ-actinの値で標準化した。図1に示したように、遺伝子転写の水準で、5,7-ジメトキシフラボンが筋肉内のタンパク質異化作用に関与する主要ligaseであるatrogin-1と、MuRF1のmRNA水準を減少させることがわかる。
キ 【0066】
<実験例2>
細胞モデルで筋肉分化及び同化作用の増加効果
<2-1>筋肉細胞分化の増加効果
上記実験例1と同じ方法で分化した細胞から総RNAを収穫して逆転写した後、RT-PCRを行った。この際、5,7-ジメトキシフラボンのほか、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物(1,10μg/ml)を処理して実験例1と同じ方法で分化した細胞でもRT-PCRを行った。
・・・
それぞれの相対的なmRNA発現量の値はβ-actinの値で標準化した。図2に示したように、遺伝子転写の水準で、5,7-ジメトキシフラボンが筋肉分化調節因子であるmyogeninと、myoDのmRNA水準を増加させることがわかる。また、図4でもケンペリア・パルウィフローラ抽出物が、myogeninとmyoDのmRNA水準を増加させることを確認することができる。
【0067】
<2-2>筋肉細胞のタンパク質同化作用の増加効果
上記実験例1と同じ方法で処理したL6細胞を、proteinase inhibitor cocktai lが含まれたRIPA緩衝溶液で溶解した。上記の試料を5分間煮た後、同量のタンパク質(20μg)を10% SDS-PAGEで電気泳動して分離した。電気泳動後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜で伝達してウェスタンプロットを行った。1次抗体に反応させた後、TBSTを用いて10分間3回洗浄した。この際、本発明において用いられた1次抗体の種類と希釈率は1:1000である。2次抗体反応は、上記1次抗体反応を行った膜に2次抗体(anti-rabbit horseradish)を入れて常温で2時間反応させた。この際、2次抗体の希釈率は1:5000とした。Protein bandはECL western blotting detection reagents(Amersham, Tokyo, Japan)を用いて発色した。筋肉内のタンパク質同化作用に関与するPI3K、p-AKT、p-mTORのタンパク質発現を確認し、α-tubulinにタンパク質ローディング量が一定であることを示した。上記の方法と同様に行い、処理物質を5,7-ジメトキシフラボンのほか、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物(1,10μg/ml)として行った。5,7-ジメトキシフラボンの処理結果は図3、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物の処理結果は図5に示した。
【0068】
図3及び図5に示したように、5,7-ジメトキシフラボンとケンペリア・パルウィフローラ抽出物がPI3K、p-AKT、p-mTORのタンパク質発現量の増加を知ることが出来た。かかる結果は、処理物質が筋肉量を増加させ、運動能力を向上させることを意味する。
ク 【0069】
<実験例3>
動物モデルで筋肉量増加効果の確認
5週齢のWistar ratを1週間適応させ、TNF-α 100 ng/gを2週間供給して筋委縮を誘導した後、体重を基にしてランダムに群を配置して、それぞれ8匹ずつ総4群に分けて実験に利用した。実験群としてはケンペリア・パルウィフローラ抽出物を500mg/kg体重、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボンを300mg/kg体重の濃度で0.25%カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)に懸濁して1日1回8週間一定の時間に投与した。この際、対照群としては実験群が摂取する同じ量の0.25%カルボキシメチルセルロースにTNF-αを投与した群を用いた。
【0070】
8週間試料を投与した後、右ふくらはぎの下の筋肉を切除してmicrobalance(Mettler PE160, USA)で重さを測定した。その結果、表1に示したように、対照群と比べてケンペリア・パルウィフローラ抽出物、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボンを投与した群から筋肉の重さが、それぞれ有意的(p<0.01)に125%、126%、118%、120%増加した。このような結果として、本発明 のケンペリア・パルウィフローラ抽出物とそれから分離したフラボン系化合物が筋肉量増大に効率的に作用していることを意味する。
ケ 【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のケンペリア・パルウィフローラ抽出物と、そこから分離されたフラボン化合物は、筋肉内のタンパク質異化作用を減少させて、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させることにより、筋肉疾患の治療用の薬学的組成物または筋機能の改善用の食品組成物を製造することができ、産業上の利用可能性が高い。
(2)甲1に記載された発明
甲1には、天然物由来の筋機能の調節物質を探索した結果、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora Wall. ex Baker)抽出物及びこれに含まれたフラボン系化合物が筋肉内のタンパク質異化作用を減らし、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させる活性があることを見つけたことが記載され(【0009】)、ケンペリア・パルウィフローラ抽出物とそれから分離したフラボン系化合物は、筋肉内のタンパク質異化作用を減らし、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させるので、筋肉疾患の治療用の薬学的組成物や筋機能改善用の食品組成物を製造するのに効果的であることが記載されている(【0018】)。
甲1には、筋機能の改善は筋肉量の増加、筋力強化、筋疲労の回復など、筋肉本来の性質または機能を強化することを意味することが記載されている(【0051】)。
また、甲1には、上記抽出物は、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora)の根茎抽出物であることができ(【0023】)、公知の天然物抽出方法に基づいて、好ましくは水、炭素数1~6個の有機溶媒及び亜臨界または超臨界流体からなる群から選択された一つ以上の溶媒で抽出することができることが記載され(【0025】)、実施例1には、「ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物の製造」として、ケンペリア・パルウィフローラの根茎粉砕物を95%エタノールで抽出して、ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物を製造した具体的実施例が記載されている(【0058】)。
甲1の実施例2には、ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物が、筋肉細胞モデルにおいて、myogeninとmyoDのmRNA水準を増加させることから、筋肉細胞分化の増加効果を示すこと、及び、筋肉細胞において、PI3K、p-AKT、p-mTORのタンパク質発現量を増加させることから、筋肉細胞のタンパク質同化作用の増加効果を示すことを確認したことが記載されている(【0066】)。また、甲1の実施例3には、TNF-αにより筋委縮を誘導した動物モデルにおいて、ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物が筋肉量増加 効果を示すことが記載されている。甲1のこれらの記載から、ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物が実際に筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させる作用を有し、筋疲労の改善を含む筋機能改善用の食品組成物の有効成分としての有用性が裏付けられて記載されていることが理解できる。
そうすると、甲1には、ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)エタノール抽出物、すなわち、ケンペリア・パルウィフローラの根茎粉砕物を95%エタノールで抽出して得た抽出物が、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させる作用を有することに基づいて、筋疲労の回復のための食品組成物の有効成分、すなわち、筋疲労の回復剤となることが記載されていると認められるから、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
ケンペリア・パルウィフローラ(黒生姜)の根茎のエタノール抽出物を有効成分とする、筋疲労の回復剤。
(3)理由1(新規性)について
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比・判断
本件訂正発明1と引用発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を有効成分とする剤である点。
(相違点)
本件訂正発明1は、「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点。
上記相違点につき、以下で検討する。
本件訂正発明1における「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」との記載は、本件訂正発明1が、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制のために用いる剤であることを特定したものである。これに対し、引用発明は、筋疲労の回復のために用いる剤であって、技術常識を考慮しても、筋疲労の回復のために用いる剤は、IL-6遺伝子発現抑制のために用いられるものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明1と引用発明の間に相違点があるから、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子の発現を抑制することによって運動誘発性骨格筋損傷に起因する、筋肉炎症や筋肉痛の低減や筋肉疲労改善がもたらされることから、本件訂正発明1の用途は、引用発明と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、甲1及び技術常識を考慮しても、筋肉炎症や筋肉痛の低減や筋肉疲労改善は、IL-6遺伝子の発現を抑制することのみによってもたらされるものであるとはいえないから、申立人が主張するように、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤が、引用発明の筋疲労の回復のために用いる剤と、実質的に相違しないということはできない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比・判断
本件訂正発明2と引用発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を有効成分とする剤である点。
(相違点)
本件訂正発明2は、「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点。
上記相違点につき、以下で検討する。
本件訂正発明2における「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」との記載は、本件訂正発明2が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制のために用いる剤であることを特定したものである。これに対し、引用発明は、筋疲労の回復のために用いる剤であって、技術常識を考慮しても、筋疲労の回復のために用いる剤は、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制のために用いられるものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明2と引用発明の間に相違点があるから、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、筋肉疲労が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症によってもたらされることは公知であることを根拠に、引用発明は運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤でもあるから、本件訂正発明2の用途は引用発明の用途と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、筋肉疲労が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症によってもたらされるとしても、筋肉疲労を改善すれば、筋肉炎症が抑制されるとはいえないから、本件訂正発明2の用途が引用発明の用途と実質的に相違しないとする申立人の主張は採用できない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明ではない。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比・判断
本件訂正発明3と引用発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を有効成分とする剤である点。
(相違点)
本件訂正発明3は、「筋肉痛改善剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点。
上記相違点につき、以下で検討する。
本件訂正後の請求項3における「筋肉痛改善剤」との記載は、本件訂正発明3が、筋肉痛改善のために用いる剤であることを特定したものである。これに対し、引用発明は、筋疲労の回復のために用いる剤であって、技術常識を考慮しても、筋疲労の回復のために用いる剤は、筋肉痛改善のために用いられるものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明3と引用発明の間に相違点があるから、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が筋肉痛をもたらすことは公知であることを根拠に、引用発明は、筋肉痛改善剤でもあるから、本件訂正発明3の用途は引用発明の用途と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が筋肉痛をもたらすとしても、引用発明の用途は、筋疲労の改善剤であり、そもそも筋疲労と運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症は、実質的に同じ疾患の状態を指すものではない。
したがって、申立人が主張するように、本件訂正発明3の用途が、引用発明の用途と実質的に相違しないとはいえない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明ではない。
(4)理由2(進歩性)について
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比・判断
本件訂正発明1と引用発明の一致点及び相違点は、上記(3)(ア)のとおりであって、本件訂正発明1は、「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点において相違する。
甲1には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制作用を有することについて、何ら記載も示唆もなく、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制作用を有することが、本件特許の出願日における当業者の技術常識であったともいえないから、引用発明の「筋疲労の回復剤」を「筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤」とすることは、当業者が容易に想到し得ないことである。
そして、本件特許の明細書において、運動に伴い筋肉が損傷すると、IL-6が産生され、これにより筋肉に炎症が起こり、それが筋肉痛の原因になることが知られており(【0007】)、黒ショウガ抽出物がLPS及びL-NAMEを添加した運動誘発性骨格筋損傷筋肉細胞においてTNF-α及びIL-6の遺伝子の発現を抑制する作用を有することを見出し、運動誘発性筋損傷に起因するI L-6の遺伝子発現抑制剤を提供することを目的とするものであることが記載され(【0009】)、【0034】~【0035】)、並びに図1及び図2には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制作用を有することを確認した試験とその結果が記載され、これを裏付けている。
したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子の発現を抑制することによって運動誘発性骨格筋損傷に起因する、筋肉炎症や筋肉痛の低減や筋肉疲労改善がもたらされることから、本件訂正発明1の用途は、引用発明と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、甲1及び技術常識を考慮しても、筋肉炎症や筋肉痛の低減や筋肉疲労改善は、IL-6遺伝子の発現を抑制することのみによってもたらされるものであるとはいえないから、申立人が主張するように、筋肉細胞におけるIL-6遺伝子発現抑制剤が、引用発明の筋疲労の回復のために用いる剤と、実質的に相違しないということはできない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比・判断
本件訂正発明2と引用発明の一致点及び相違点は、上記(3)イのとおりであって、本件訂正発明2は、「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点において相違する。
甲1には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制作用を有することについて、何ら記載も示唆もなく、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制作用を有することが、本件特許の出願日における当業者の技術常識であったともいえないから、引用発明の「筋疲労の回復剤」を「運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤」とすることは、当業者が容易に想到し得ないことである。
そして、本件特許の明細書には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤とすることが裏付けられて記載されていることは、上記アで述べたとおりである。
したがって、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、筋肉疲労が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症によってもたらされることは公知であることを根拠に、引用発明は運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤でもあるから、本件訂正発明2の用途は引用発明の用途と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、筋肉疲労が、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症によってもたらされることから、筋肉炎症を抑制することにより、筋肉疲労を改善し得るとしても、その逆は成り立たず、筋肉疲労の改善剤が筋肉炎症の抑制剤であるとはいえない。したがって、本件訂正発明2の用途が引用発明の用途と実質的に相違しないとする申立人の主張は採用できない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比・判断
本件訂正発明3と引用発明の一致点及び相違点は、上記(3)ウのとおりであって、本件訂正発明3は、「筋肉痛改善剤」であるのに対して、引用発明は、「筋疲労の回復剤」である点において相違する。
甲1には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が筋肉痛改善剤作用を有することについて、何ら記載も示唆もなく、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物が筋肉痛改善作用を有することが、本件特許の出願日における当業者の技術常識であったともいえないから、引用発明の「筋疲労の回復剤」を「筋肉痛改善剤」とすることは、当業者が容易に想到し得ないことである。
そして、本件特許の明細書には、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)における根茎のエタノール抽出物を筋肉痛改善剤とすることが裏付けられて記載されていることは、上記アで述べたとおりである。
したがって、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が筋肉痛をもたらすことは公知であることを根拠に、引用発明は、筋肉痛改善剤でもあるから、本件訂正発明3の用途は引用発明の用途と実質的に相違しない旨を主張する。
しかしながら、運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が筋肉痛をもたらすとしても、引用発明の用途は、筋疲労の改善剤であり、そもそも、筋疲労と運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症が実質的に同じ疾患の状態を指すものではない。
したがって、申立人が主張するように、本件訂正発明3の用途が、引用発明の用途と実質的に相違しないとはいえない。
(ウ)小括
以上より、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
以上述べたとおり、本件訂正発明1~3は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、請求項1~3に係る特許は、特許法29条1項3号に該当せず、同条2項の規定により特許を受けることができない発明に対してなされたものでもないから、特許異議申立書に記載したいずれの特許異議申立理由によっても取り消されるべきものでない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、その他に本件特許の請求項1~3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700345