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特許異議申立

2022-700250

米飯の品質改良用剤、及び、品質改良処理を施した米飯の製造方法

審判番号
2022-700250
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-064473
登録番号
6942440
請求日
2022年03月25日
審決日
2023年06月22日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】三菱商事ライフサイエンス株式会社
  • 【権利者代理人】廣田 雅紀
  • 【権利者代理人】山内 正子
  • 【異議申立人】田中 眞喜子
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.121-Z (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6942440号発明「米飯の品質改良用剤、及び、品質改良処理を施した米飯の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6942440号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6942440号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年3月28日を出願日とする特許出願であって、令和3年9月10日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対して、令和4年3月25日に特許異議申立人 田中 眞喜子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月14日付けで取消理由が通知されたところ、同年9月20日に特許権者である三菱商事ライフサイエンス株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書が提出され、同年11月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたところ、令和5年1月10日に特許権者より意見書が提出され、同年3月20日付けで特許異議申立人に対し審尋を通知したところ、同年4月7日に特許異議申立人より回答書の提出があったものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」をまとめて、「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 炊飯時において、水および米の混合物に用いられる、グァーガム酵素分解物及び食用油を有効成分とするチルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯の老化抑制用剤。 【請求項2】 グァーガム酵素分解物及び食用油を、米及び水とともに炊飯することによってチルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯の老化を抑制する方法。 【請求項3】 米、グァーガム酵素分解物、食用油及び、水を含む混合物を炊飯することによって、炊飯後にチルド温度帯(0~10℃)において保存しても老化しにくく、ぱさつきが抑制され、ほぐれ性が悪化しにくい米飯を得ることを特徴とする、品質改良処理を施した米飯の製造方法。 【請求項4】 前記混合物において、前記グァーガム酵素分解物の分量が、水を吸収させる前の生米100重量%に対して、0.083~5.0重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の品質改良処理を施した米飯の製造方法。」 第3 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし4に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨(下記1ないし3)は、次のとおりである。 1 申立理由1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由2の理由の概略は次のとおりである。 (1) 申立理由2-1 本件特許発明1ないし4には「グァーガム酵素分解物」を用いることが特定されているが、用いる「グァーガム酵素分解物」がどの程度まで分解されたものであるのか(平均分子量はどの程度であるのか)は、何ら特定されていない。 この点について、グァーガム酵素分解物の平均分子量には様々なものが存在し(必要があれば甲第8号証、甲第9号証を参照)、かつ、重合度が異なることにより、その物性が異なるものであると考えられる。 しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし4で用いられる「グァーガム酵素分解物」の平均分子量について何ら記載されておらず、また、実施例等で検討されている「グァーガム酵素分解物」の平均分子量は2~4万程度のグァーガム酵素分解物を用いたものにすぎない。 以上の点をふまえると、本件特許発明1ないし4において、「グァーガム酵素分解物」として平均分子量が2~4万以外のものを用いた場合、本件特許発明1ないし4の発明の課題を解決するものであるのかどうか、当業者が明確に認識できるものであるということができない。 (2) 申立理由2-2 本件特許の明細書の【0036】、【0038】の表では、グァーガム酵素分解物の使用量が0.25gや15gの場合には「△:やや老化を感じるもしくは硬い」との評価であり、少量や多量の場合に効果が悪くなる傾向が示されている。してみると、グァーガム酵素分解物の使用量が0.25gより少ない場合や、15gよりも多い場合にまで、米飯の老化を抑制するという本件特許発明の課題を解決できるとは考えられない。 したがって、グァーガム酵素分解物の使用量が規定されない本件特許発明1ないし3はサポート要件を欠くものである。 3 申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由3の理由の概略は次のとおりである。 本件特許発明1ないし4において特定される「グァーガム酵素分解物」とは、どの程度まで分解された分解物であるのか、技術常識を考慮しても不明である。 なお、特許権者は、審査段階における令和2年8月19日付意見書において、グァーガム酵素分解物の平均分子量は2~4万程度であることが技術常識である旨主張するが、甲第8号証には、酵素の反応時間を変えることによりグァーガム酵素分解物の分子量を変化させられること(【0009】)、甲第9号証にはグァーガムを酵素分解して得られたグァーガム分解物として、平均分子量が約1600(比較例1)、約5500(実施例2)、約120000(比較例2)のものが示されていることからみても、グァーガム酵素分解物の平均分子量は2~4万程度であることが技術常識であるとする特許権者の主張は誤りである。 したがって、グァーガム酵素分解物の分子量等が特定されていない本件特許発明1ないし4は、依然として不明確である。 4 証拠方法 ・甲第1号証:余川丈夫、阪中専二、「グアーガム酵素分解物(商品名;ワンダーガム)による高甘味度甘味料の呈味改善効果」、月刊フードケミカル8月号別刷、pp.8-13(2000) ・甲第2号証:国際公開第2012/132079号 ・甲第3号証:「セパレーターNo.1」、パンフレット(株式会社味京HP 取り扱い商材 米飯改良油のページ http://www.ajikyou.co.jp/products/oil.html) ・甲第4号証:勝野那嘉子、小松浩也、西津貴久、「冷蔵米飯の老化挙動と光沢減少の関係」(「知の拠点あいち」あいちシンクロトロン光センターHP 2015年度公共等利用成果報告書のページ、http://www.astf-kha.jp/synchrotron/publication/report/001515.html) ・甲第5号証:特開平5-276882号公報 ・甲第6号証:本件出願に係る令和2年3月26日(起案日)付け拒絶理由通知書 ・甲第7号証:本件出願に係る令和2年8月19日付け意見書 ・甲第8号証:特開平6-247860号公報 ・甲第9号証:特開2015-120647号公報 また、令和5年4月7日に提出された回答書に添付して、次の証拠も提出している。 ・参考文献1:特開2000-116344号公報 ・参考文献2:特開2007-259801号公報 ・参考文献3:Taiyo-laboウェブページ、(https://www.taiyo-labo.co.jp/LDP/sunfiber02 2023年4月5日アクセス) ・参考文献4:Taiyo-laboウェブページ、(https://www.taiyo-labo.co.jp/user_data/FAQ15 2023年4月5日アクセス) ・参考文献5:月刊「元気読本」、オアシス株式会社、2012年9月28日、pp.52-53 ・参考文献6:「お米と炊ける!水溶性食物繊維「サンファイバー」飲み始めます!」コダワリの女のひとりごとウェブページ、(https://blog.goo.ne.jp/fuekitty/e/a3b03beed8a9b4551f6a22928c5987fe 2023年4月5日アクセス) なお、証拠方法の表記については、おおむね特許異議申立書及び上記回答書の記載にしたがった。 第4 令和4年11月7日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要 本件特許の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和4年11月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 (取消理由) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 令和4年11月7日付けで通知された取消理由(決定の予告)についての判断 当審は、令和5年1月10日に特許権者より提出された意見書の主張をふまえても、取消理由は解消していないものと判断する。 1 主な証拠の記載事項等 (1) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「グァーガム酵素分解物(商品名;ワンダーガム)による高甘味度甘味料の呈味改善効果」について、次の記載がある。 「3.ワンダーガムの特徴 ワンダーガムとは 「ワンダーガム」は、インド、パキスタンで栽培されるグアー豆(学術名;Cyamposis tetragonolobus)から抽出された高分子多糖類のグアーガムを酵素分解した後、精製することにより得られるグアーガム酵素分解物である。 原料であるグアーガムは、古くから、インド、パキスタンで食用、飼料に利用されている一年草のグアー豆の胚乳部分であり、多くの生理効果を持つ水溶性食物繊維として知られている5,6)。また、非常に高粘度な物質であり、食品の増粘剤、安定剤として多くの食品に利用されている。 ワンダーガムの特徴としては、グアーガムを酵素分解することで粘度は、グアーガムに比べて [図:0001401606000001.jpg] かなり低くなっている(図1)。また、無味無臭で、中性のため、冷菓や飲料、焼き菓子など、あらゆる食品への応用が可能である。 ワンダーガムの基本構造は、マンノース2個に対してガラクトースが1個の割合で枝分かれした構成単位からなるポリマーで平均分子量は、約2万である(図2)。 ワンダーガムの食品添加物用途には、ここで紹介する高甘味度甘味料の呈味改善効果の他にも、タレ、ソース・佃煮に艶出し効果、ホイップクリーム、ムース、アイスクリームなどの気泡を含む食品の保形性を向上、澱粉の老化防止効果など、多くの効果があることが確認されており、表1に代表的な効果について簡単にまとめた。」(第9頁左欄第28行ないし同頁右欄下から第7行) 「 [図:0001401606000002.jpg] 」 (第10頁上部「表1」) イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載をまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。 「炊飯時に溶解し用いられる、品質改善の効果を有するワンダーガム。」(以下、「甲1ワンダーガム発明」という。) 「ワンダーガムを炊飯時に溶解することで、品質改善する方法。」(以下、「甲1品質改善発明」という。) 「炊飯時にワンダーガムを0.1~1%溶解することで、品質改善をする米飯の製造方法。」(以下、「甲1米飯製造方法発明」という。) (2) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「炊飯用油脂組成物」について、次の記載がある。 「[0001] 本発明は、米の炊飯時に添加することにより、炊き上げ直後のご飯の艶、ほぐれ具合、風味の向上を図るだけでなく、低温に長時間保存後のほぐれ性、艶や風味の劣化が少なく、また再加熱後のご飯のほぐれ性、艶や風味の劣化が少ない炊飯用油脂組成物に関する。」 「[請求項1] 液状油脂100重量部に対して、以下の乳化剤(A)を3.0~5.0重量部、乳化剤(B)を0.5~2.0重量部、さらに乳化剤(C)~(E)のうち一種又は二種以上を0.5~2.0重量部配合した炊飯用油脂組成物。 乳化剤(A)グリセリン重合度が6以上8以下のポリグリセリンと、縮合リシノレイン酸とのエステルであるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル 乳化剤(B)炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸と、ショ糖とのエステルであるショ糖脂肪酸エステル 乳化剤(C)グリセリン重合度が4以上10以下のポリグリセリンと、炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル 乳化剤(D)全構成脂肪酸中、飽和脂肪酸の含量が15重量%以下であるグリセリンモノ脂肪酸エステル 乳化剤(E)炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸とソルビタンとのエステルであるソルビタン脂肪酸エステル [請求項2] 請求項1に記載の炊飯用油脂組成物を精白米100重量部に対して0.1~0.5重量部添加し炊飯したご飯。 [請求項3] 請求項2に記載のご飯を加工して得られる加工した食品。 [請求項4] 請求項1に記載の炊飯用油脂組成物を精白米100重量部に対して0.1~0.5重量部添加し炊飯することによりご飯を製造するご飯の製造方法。」 (3) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「商品名 セパレーターNo.1」について、次の記載がある。 「 [図:0001401606000003.jpg] 」 「 [図:0001401606000004.jpg] 」 なお、上記摘記部の内、写真のラベル部分を拡大したものは次のとおりである。 「 [図:0001401606000005.jpg] 」 2 対比・判断 (1) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1ワンダーガム発明とを対比する。 甲1ワンダーガム発明の「ワンダーガム」は、甲第1号証の記載によると、グアーガムを酵素分解した後、精製することにより得られるグアーガム酵素分解物であるから、本件特許発明1の「グァーガム酵素分解物」に相当する。 また、甲1ワンダーガム発明は「品質改善の効果を有する」ものであるから、本件特許発明1の「老化抑制用剤」と、「品質改善剤」との限りにおいて一致する。 さらに、炊飯時に、米に水を加えることは自明である。 さらにまた、甲1ワンダーガム発明の「ワンダーガム」が「有効成分」であることは自明である。 してみると、両者は、 「炊飯時において、水および米の混合物に用いられる、グァーガム酵素分解物を有効成分とする米飯の品質改善剤。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件特許発明1は「チルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯老化抑制用剤」であるのに対して、甲1ワンダーガム発明にはそのような特定がない点。 (相違点2) 老化抑制剤について、本件特許発明1は有効成分として「食用油」を含むものであるのに対し、甲1ワンダーガム発明にはそのような特定がない点。 上記相違点について検討する。 ・相違点1について 甲第1号証には、上記1(1)のとおり、「ワンダーガムの食品添加物用途には、ここで紹介する高甘味度甘味料の呈味改善効果の他にも、タレ、ソース・佃煮に艶出し効果、ホイップクリーム、ムース、アイスクリームなどの気泡を含む食品の保形性を向上、澱粉の老化防止効果など、多くの効果があることが確認されており、表1に代表的な効果について簡単にまとめた。」(第9頁左欄第28行ないし同頁右欄下から第7行 なお、下線は合議体が付した。)との記載に続いて、表1において「ワンダーガムの食品添加物用途」として、用途:米飯、効果:品質改善、艶出し、添加量:0.1~1%、方法:炊飯時に溶解、との記載がある。 そして、表1において示される全ての用途をみても、「澱粉の老化防止効果」が求められる用途は「米飯」であることは当業者であれば明らかである。 また、「米飯」における「老化」は、主にチルド温度帯で問題になることは、参考文献1の「チルド温度帯は「老化」が最も進みやすい温度であり、米飯の品質低下を早める結果となる。」(【0003】)、参考文献2の「また、特にコンビニエンスストアやスーパー等では、冷蔵でおにぎりやご飯得ウイが売られることが多いため、澱粉が含まれていることにより老化が起こるという問題がある。」(【0003】)との記載にもあるように、本件特許の出願前において、当業者にとって周知の技術事項である。 そうすると、甲第1号証には、ワンダーガムの食品添加用途として、米飯における澱粉の老化防止、特に老化が問題となるチルド温度帯の老化防止の用途が記載されているものと当業者であれば認識できる。 してみると、甲1ワンダーガム発明は、米飯における澱粉のチルド温度帯での老化防止に関する品質改善の効果を奏するもの、すなわち、「チルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯老化抑制用剤」に当たるから、相違点1は実質的な相違点ではない。 また、仮に相違点1が実質的な相違点であるとしても、上記甲第1号証並びに参考文献1及び2の記載をもとに、甲1ワンダーガム発明を、米飯における澱粉のチルド温度帯での老化防止に関する品質改善剤として用い、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ・相違点2について 米飯の炊飯時に食用油を添加することにより、炊き上げ後、低温保存後、再加熱後のご飯の風味や旨味等の劣化を抑制する手法は、甲第2号証や甲第3号証に示されるように、当該技術分野において周知の手法にすぎない。 してみれば、甲1ワンダーガム発明において、米飯の老化防止を目的として、食用油を含むものとすること、すなわち、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことは、当業者が容易になし得たことである。 ・特許権者の意見書における主張について 特許権者は意見書において、次の参考文献AないしC、 ・参考文献A:日本食物繊維誌 Vol.2 No.1 15-22 1998 ・参考文献B:Food Hydrocolloids,Volume 19,Issue 1,January 2005,Pages 25-36,Takahiro Funami et al. ・参考文献C:Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol.58,No.4,137-149(2011) をあげつつ、概略次の主張(主張1ないし5)をする。 (主張1) 甲第1号証には米飯における「澱粉の老化防止効果」がある旨の記載がないとの主張 (主張2) 2000年前後における「米飯の品質改善」は炊飯直後の改善等であり、チルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯の老化抑制のことであると一義的に判断できない旨の主張 (主張3) 太陽化学株式会社のウェブページでは経口摂取した場合の効果のみ記載されており、「米」や「米飯」とグァーガム分解物とを用いて食品が調製されることやその経口摂取、及び「澱粉の老化防止」の効果等については認識されていない旨の主張 (主張4) 甲第1号証に記載されたワンダーガムの内容が餅発明(特開2001-327256号)の内容である旨の主張 (主張5) 平均分子量が約20000のグァーガム酵素分解物について澱粉の老化を防ぐ効果と、澱粉の老化を促進する効果との相反する効果に関する知見が本件特許の出願前に存在した旨の主張 上記の特許権者の意見書における主張について検討する。 ・主張1について 上記相違点1についての判断でも示したとおり、甲第1号証には、「ワンダーガムの食品添加物用途には、ここで紹介する高甘味度甘味料の呈味改善効果の他にも、タレ、ソース・佃煮に艶出し効果、ホイップクリーム、ムース、アイスクリームなどの気泡を含む食品の保形性を向上、澱粉の老化防止効果など、多くの効果があることが確認されており、表1に代表的な効果について簡単にまとめた。」との記載に続いて、表1において、米飯を用途とし、品質改善、艶出しの効果が示されている。そして、表1に示される用途において、「澱粉の老化防止」が直接影響する用途は「米飯」のみであることからみても、甲第1号証には、「米飯」の「品質改善」に関し「澱粉の老化防止効果」が記載されているとみるのが妥当である。 したがって、特許権者の主張1は採用できない。 ・主張2について 2000年前後における「米飯の品質改善」に、「チルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯の老化抑制」が含まれることは、例えば、上記相違点1についての判断で示した参考文献1及び2に示されるとおりである。 また、主張1について検討したとおり、甲第1号証には「米飯」の「品質改善」に関して具体的には「澱粉の老化防止効果」が記載されていることからみても、「2000年前後における「米飯の品質改善」は炊飯直後の改善等」であり、甲第1号証の「米飯」の「品質改善」が「澱粉の老化防止効果」を指すものとはいえないとする、特許権者の主張2は採用できない。 ・主張3及び主張4について 特許権者が主張3及び主張4において示す内容は、甲第1号証とは異なる文献又はホームページの記載に関するものであり、甲第1号証の記載とは関係のないものである。 また、さらに言及するに、特許権者が主張3及び主張4で示す他の文献又はホームページの記載と甲第1号証の記載との間に矛盾が生じるものでもない。 したがって、特許権者の主張3及び主張4は採用できない。 ・主張5について 特許権者は主張5において、グァーガム酵素分解物の平均分子量について言及するが、グァーガム酵素分解物の平均分子量は本件特許発明1の発明特定事項ではないので、グァーガム酵素分解物の平均分子量に関する主張は、上記判断に何ら影響しない。 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1ワンダーガム発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1品質改善発明とを対比すると、上記(1)の場合と同様の相当関係が成立する(なお、甲1品質改善発明の「品質改善する」と本件特許発明2の「老化を抑制する」は、「品質を改善する」との限りにおいて一致する。)。 してみると、両者は 「グァーガム酵素分解物を、米及び水とともに炊飯することによって米飯の品質を改善する方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点3) 本件特許発明2は「チルド温度帯(0~10℃)での保存時における米飯の老化を抑制する方法」であるのに対して、甲1品質改善発明にはそのような特定がない点。 (相違点4) 本件特許発明2は炊飯時に「食用油」を含むものであるのに対し、甲1品質改善発明にはそのような特定がない点。 上記相違点について検討するに、相違点3、4はそれぞれ、実質的に相違点1、2と同旨である。 してみれば、上記(1)における検討と同様に判断されるから、本件特許発明2は、甲1品質改善発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲1米飯製造方法発明とを対比すると、上記(1)の場合と同様の相当関係が成立する(なお、甲1米飯製造方法発明の「品質改善をする」は、本件特許発明3の「品質改良処理を施した」に相当する。)。 してみると、両者は 「米、グァーガム酵素分解物及び、水を含む混合物を炊飯する、品質改良処理を施した米飯の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点5) 本件特許発明3は「チルド温度帯(0~10℃)において保存しても老化しにくく、ぱさつきが抑制され、ほぐれ性が悪化しにくい米飯を得る」ものであるのに対して、甲1米飯製造方法発明にはそのような特定がない点。 (相違点6) 本件特許発明3は炊飯時に「食用油」を含むものであるのに対し、甲1米飯製造方法発明にはそのような特定がない点。 上記相違点について検討する。 ・相違点5について 相違点5のうち、「チルド温度帯(0~10℃)において保存しても老化しにくく」との部分は、実質的に相違点1と同旨であるから、上記(1)の検討と同様に判断される。 また、「ぱさつきが抑制され、ほぐれ性が悪化しにくい」という点については、甲第2号証に「ほぐれ具合」及び甲第3号証に「表面の乾燥を防ぎ、時間経過での老化を防ぎます」と記載されていることからみて、食用油を添加した場合、当然有する効果であるといえる。 ・相違点6について 相違点6は、実質的に相違点2と同旨であるから、上記(1)の検討と同様に判断される。 以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲1米飯製造方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明3においてさらに、グアーガム酵素分解物の添加割合を特定するものであるが、甲1米飯製造方法発明のワンダーガムの添加割合は0.1~1%であるから、新たな相違点とはならない。 したがって、本件特許発明4は、甲1米飯製造方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 取消理由についてのまとめ 上記2のとおり、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 結語 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700250

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