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特許異議申立

2025-700749

ビール様発泡性飲料

審判番号
2025-700749
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-101700
登録番号
7619982
請求日
2025年07月22日
審決日
2025年09月08日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アサヒビール株式会社
  • 【権利者代理人】棚井 澄雄
  • 【権利者代理人】大槻 真紀子
  • 【異議申立人】田中 眞喜子
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 中村 和正
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7619982号発明「ビール様発泡性飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7619982号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7619982号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和4年6月24日を出願日とする特許出願であって、令和7年1月14日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月22日に特許異議申立人 田中 眞喜子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下であり、かつ飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。 【請求項2】 飲料中のフェニル酢酸濃度が0.10ppm以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項3】 飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.50ppm以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項4】 アルコール濃度が、6v/v%以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項5】 ノンアルコール飲料である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項6】 麦芽を原料としていない、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項7】 麦芽を原料としている、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項8】 麦芽比率が50質量%以下である、請求項7に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項9】 容器詰飲料である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。 【請求項10】 飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上であり、かつ飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上であり、麦芽を原料としていないことを特徴とする、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和7年7月22日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3、4、7及び9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1ないし10は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3ないし5、7及び9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1ないし10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1ないし10では、飲み応えはあっても「べたつき」や「しつこさ」があるとされる飲料を包含するものであるが、このような飲料まで所望の課題(好ましい飲み応え)を解決できたとは到底理解できず、本件実施例の開示からはそのような範囲まで拡張ないし一般化することは許されない。 従って、本件特許発明1ないし10はサポート要件を欠くものであり、特許を受けることができない。 4 証拠方法 甲第1号証:C. J. Belke et al、「Determination of Organic Acids in Beer After Extraction with an Anion-Exchange Resin」、Journal of the American Society of Brewing Chemists、1992年、Vol. 50、No. 1、pp. 26-29 甲第2号証:Sabrina Brendel et al、「Dry-Hopping to Modify the Aroma of Alcohol-Free Beer on a Molecular Level-Loss and Transfer of Odor-Active Compounds」、J. Agric. Food Chem.、2020年、Vol. 68、pp. 8602-8612 甲第3号証:Dayana Aguiar et al、「Assessment of Staling Aldehydes in Lager Beer under Maritime Transport and Storage Conditions」、Molecules、2022年1月18日、Vol. 27、URL:https://doi.org/10.3390/molecules27030600 甲第4号証:特開2020-96575号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 当審の判断 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)について (1)甲第1号証に記載された事項等 ア 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、「Determination of Organic Acids in Beer After Extraction with an Anion-Exchange Resin」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲第1号証は外国語文献であるため、該当箇所の抄訳のみを示す。なお、抄訳は、特許異議申立書の記載をおおむね利用した。 ・「ビール中の有機酸はアニオン交換樹脂により回復され、その後、トリフッ化ホウ素-メタノールでの樹脂の処理により、そのメチルエステルに変換された。50mlのビールの抽出物の質量分析により、メチルエステルとして認識可能な50より多くの化合物が発見された。標準添加法およびガスクロマトグラフィー分析により、いくつかの揮発性および不揮発性の酸について、満足のいく較正線が得られた。この方法は、ガスクロマトグラムにおいていくつかのメチルエステルのピークの重複により制限される。」(要約) ・「 [図:0001428039000001.jpg] 」(第29頁表V) イ 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証に記載された事項を、特に表Vに関して整理すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「フェニル酢酸濃度が0.14~0.31mg/Lであるビール。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「ビール」は、フェニル酢酸濃度が0.14~0.31mg/L(0.14~0.31ppm)であるから、本件特許発明1における「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下であ」る「ビール様発泡性飲料」という特定事項を満たす。 そして、甲1発明は「高甘味度甘味料」を含有してない。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下である、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1は、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1-1について検討する。 甲1発明において、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下」かどうか不明である。 したがって、相違点1-1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1発明ではない。 また、甲第1号証及び他の証拠には、甲1発明において相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「飲用時に喉に引っかかりを感じるような好ましい飲み応えが増強されており、嗜好性が高い」(発明の詳細な説明の【0009】)という効果は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、甲第3号証よりビール中のフェニルアセトアルデヒド濃度は80~180μg/L程度(0.080~0.180ppm程度)であるから、甲1発明は本件特許発明1で特定される数値範囲内である蓋然性が高い旨主張するが、本件特許明細書等の【0069】【0084】には市販のビール様発泡性飲料のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.032又は0.023ppmであることが記載されていることから、ビールによってフェニルアセトアルデヒド濃度は異なるといえ、甲1発明におけるフェニルアセトアルデヒド濃度が本件特許発明1で特定される数値範囲内である蓋然性が高いとはいえない。 また、特許異議申立人は、甲第4号証にはフェニルアセトアルデヒドの含有量を35ppb(0.035ppm)に調整することも提案されているから、甲1発明においてフェニルアセトアルデヒド濃度を0.035ppm以上1.00ppm以下の範囲内とすることは当業者が適宜なし得たことである旨主張するが、甲1発明においてフェニルアセトアルデヒド濃度を0.035ppm以上1.00ppm以下とする動機付けはない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3、4、7及び9は、甲1発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし9は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明10について ア 対比 本件特許発明10と甲1発明を対比する。 甲1発明における「ビール」は、フェニル酢酸濃度が0.14~0.31mg/L(0.14~0.31ppm)であるから、本件特許発明10における「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上であ」る「ビール様発泡性飲料」という特定事項を満たす。 そして、甲1発明は「高甘味度甘味料」を含有してない。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上である、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-2> 本件特許発明10は、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点1-3> 本件特許発明10は、「麦芽を原料としていない」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1-2について検討する。 甲1発明において、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上」かどうか不明である。 そして、甲第1号証及び他の証拠には、甲1発明において相違点1-2に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由1についてのむすび 上記(2)ないし(4)のとおり、本件特許の請求項1、3、4、7及び9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法同条第2項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)について (1)甲第2号証に記載された事項等 ア 甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、「Dry-Hopping to Modify the Aroma of Alcohol-Free Beer on a Molecular Level-Loss and Transfer of Odor-Active Compounds」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲第2号証は外国語文献であるため、該当箇所の抄訳のみを示す。なお、抄訳は、特許異議申立書の記載をおおむね利用した。 ・「ビールの脱アルコールには主に2つの選択肢:望ましいアロマ活性化合物も除去される熱処理によるエタノールの蒸発および多量の未発酵糖類と同時に少量のアロマ活性発酵生成物をさらに含むビールを生じる発酵停止法がある。したがって、ドライホッピングは、これらのアロマ欠如を補うための機会であった。そのため、センソミクスアプローチに続いて、熱脱アルコールまたは発酵停止法のいずれかの後にドライホップ(Hallertauer Mandarina Bavaria、Hallertauer CascadeまたはHallertauer Mittelfruh)上面発酵および下面発酵ノンアルコールビール中の香気成分を特徴づけた。安定同位体希釈分析により23種類の香気成分を定量し、odor activity value(OAV;濃度対におい閾値の比)を計算した。熱で脱アルコールしたサンプルは、3-メチル-1-ブタノールまたは3-メチルブチルアセテートなどの重要な香気成分の、高い消失(100%まで)を示した。発酵停止法の間に、エチルブタノエートまたは2-フェニルエタノールなどのアロマ化合物は関連のある濃度で形成されてOAV≧1を生じたが、通常のアルコール含有量を有するビールと比較すると、この量は有意に低かった。ホップ由来香気成分(リナロール、ゲラニオール、ミルセンおよびエステル)について、20~90%の転移率が見いだされ、これはビールにおいてOAV≧1を生じた。さらに、ホップの添加は、ホップ由来モノカルボン酸のエチルエステルの形成を誘導したようであった。」(要約) ・「そのため、この研究の目的は、ノンアルコールビールのドライホッピングがそのアロマ特性を向上する可能性を評価することであった。異なるビールタイプ[上面発酵(TF)および下面発酵(BF)]を真空下、熱で脱アルコールしたか、またはアルコール含有量≦0.5% volまで短時間発酵させた。TDまたはSFの後、サンプルにHMB、HCAまたはHHAのいずれかをドライホップした。最終的なアロマに対する脱アルコール法およびドライホッピング工程の影響を決定するために、ドライホッピングありおよびなしのサンプルにおいて、ガスクロマトグラフィー―質量分析(GC-MS)と組み合わせた安定同位体希釈分析(SIDA)によりアロマ活性化合物を分析した。」(第8603頁左欄第18~29行) ・「ビールサンプル.全てのビールサンプルは、3本ずつ飲料技術 醸造学講座(ミュンヘン工科大学、ドイツ、フライジング)により提供された。全てのサンプルについて、上面発酵酵母株WB06または下面発酵酵母株34/70のいずれかを使用した。 TDについては、アルコールを含む基準ビール(TF: 4.7% vol、BF: 4.9% vol)を、DeAlcoTecシステム(Centec、ドイツ、マインタル)によって真空下36℃でエタノール含有量<0.1% volまで脱アルコールした。12このノンアルコールビールを使用して、3種類のドライホップビール(HMB、HCA、またはHHAを使用)を製造しました。それぞれ1種類はTFビール、もう1種類はBFビールである。 SFでは、対照麦汁(RW)を用いて部分発酵ビールを製造した。発酵は7℃で開始し、48時間後に濾過により停止した。これはアルコール度数0.4% volに相当する。この無アルコールビールを用いて、ドライホップビール(HMB、HCA、またはHHAのいずれかを使用)を3種類製造した。いずれの場合も、TFビールとBFビールをそれぞれ1種類ずつ使用した。 以下の改変を伴うSchnaitter et al.13に従いドライホッピングを行った:ホップ投与は1.5mLのホップオイル/hLを示すペレットにより行い、保存は振動テーブル(1日に2回30秒間振動)上で1週間行った。無濾過サンプルを褐色ガラス瓶(500mL)に瓶詰めして、分析前に4℃で保存した。」(第8603頁右欄第10~32行) ・「 [図:0001428039000002.jpg] 」(第8607頁表2) イ 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証に記載された事項を、特に表2に関して整理すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「フェニル酢酸濃度が131~375μg/Lであるビール。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「ビール」は、フェニル酢酸濃度が131~375μg/L(0.131~0.375ppm)であるから、本件特許発明1における「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下であ」る「ビール様発泡性飲料」という特定事項を満たす。 そして、甲2発明は「高甘味度甘味料」を含有してない。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下である、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1は、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2-1について検討する。 甲2発明において、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下」かどうか不明である。 したがって、相違点2-1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲2発明ではない。 また、甲第2号証及び他の証拠には、甲2発明において相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「飲用時に喉に引っかかりを感じるような好ましい飲み応えが増強されており、嗜好性が高い」(発明の詳細な説明の【0009】)という効果は、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、甲第3号証よりビール中のフェニルアセトアルデヒド濃度は80~180μg/L程度(0.080~0.180ppm程度)であるから、甲2発明は本件特許発明1で特定される数値範囲内である蓋然性が高い旨主張するが、本件特許明細書等の【0069】【0084】には市販のビール様発泡性飲料のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.032又は0.023ppmであることが記載されていることから、ビールによってフェニルアセトアルデヒド濃度は異なるといえ、甲2発明におけるフェニルアセトアルデヒド濃度が本件特許発明1で特定される数値範囲内である蓋然性が高いとはいえない。 また、特許異議申立人は、甲第4号証にはフェニルアセトアルデヒドの含有量を35ppb(0.035ppm)に調整することも提案されているから、甲2発明においてフェニルアセトアルデヒド濃度を0.035ppm以上1.00ppm以下の範囲内とすることは当業者が適宜なし得たことである旨主張するが、甲2発明においてフェニルアセトアルデヒド濃度を0.035ppm以上1.00ppm以下とする動機付けはない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3ないし5、7及び9は、甲2発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし9は、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明10について ア 対比 本件特許発明10と甲2発明を対比する。 甲2発明における「ビール」は、フェニル酢酸濃度が131~375μg/L(0.131~0.375ppm)であるから、本件特許発明10における「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上であ」る「ビール様発泡性飲料」という特定事項を満たす。 そして、甲2発明は「高甘味度甘味料」を含有してない。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上である、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-2> 本件特許発明10は、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本件特許発明10は、「麦芽を原料としていない」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2-2について検討する。 甲2発明において、「飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上」かどうか不明である。 そして、甲第2号証及び他の証拠には、甲2発明において相違点2-2に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由2についてのむすび 上記(2)ないし(4)のとおり、本件特許の請求項1、3ないし5、7及び9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法同条第2項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 発明の詳細な説明の【0006】によると、本件特許発明1ないし10の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「糖質やカロリーを増大させることなく、飲用時に喉に引っかかりを感じるような好ましい飲み応えが増強されたビール様発泡性飲料を提供すること」である。 そして、発明の詳細な説明の【0008】、【0014】、【0018】、【0019】、【0024】、【0026】、【0029】には、本件特許発明1ないし10に対応する記載がある。 さらに、発明の詳細な説明の【0063】ないし【0094】には本件特許発明の実施形態について説明があり、【0009】には本件特許発明による発明の効果が記載されている。 そうすると、当業者は、「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上0.50ppm以下であり、かつ飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上1.00ppm以下である、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)」及び「飲料中のフェニル酢酸濃度が0.003ppm以上であり、かつ飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度が0.035ppm以上であり、麦芽を原料としていない、ビール様発泡性飲料(ただし、高甘味度甘味料を含有するビール様発泡性飲料を除く。)」は、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 そして、本件特許発明1ないし10は、上記の発明の課題を解決できると認識できる全ての特定事項を有するものであるか、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 したがって、本件特許発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1ないし10に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人は、上記第3 3のとおり主張するが、発明の課題は上記のとおり「糖質やカロリーを増大させることなく、飲用時に喉に引っかかりを感じるような好ましい飲み応えが増強されたビール様発泡性飲料を提供すること」であり、特許異議申立人が主張するような「べたつき」や「しつこさ」ではなく、本件特許発明1ないし10が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすことは上記検討のとおりであって、本件特許発明1ないし10により発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (3)申立理由3(サポート要件)についてのむすび 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700749

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