特許異議申立
2022-700220
硬化性組成物、硬化膜、表示パネル又はOLED照明、並びに硬化物の製造方法
- 審判番号
- 2022-700220
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-148559
- 登録番号
- 6935260
- 請求日
- 2022年03月15日
- 審決日
- 2022年08月15日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東京応化工業株式会社
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【異議申立人】加藤 三千代
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 杉江 渉
- 審判官 土橋 敬介
- 分類
- P1651.121-Y (C08G) / P1651.536-Y (C08G) / P1651.537-Y (C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6935260号発明「硬化性組成物、硬化膜、表示パネル又はOLED照明、並びに硬化物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6935260号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6935260号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、平成29年7月31日を出願日とする特許出願(特願2017-148559号)に係るものであって、令和3年8月27日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年9月15日である。)。
その後、令和4年3月15日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である加藤 三千代(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第6935260号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~10に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】
(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含み、
前記(A)硬化性化合物が、下記式(a1)で表される化合物を含み、
前記(B)カチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、前記アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物であり、
前記カチオン部がスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンである、硬化性組成物。
【化1】
[図:0001388409000001.jpg]
(式(a1)中、W1及びW2は、それぞれ独立に、下記式(a2):
【化2】
[図:0001388409000002.jpg]
で表される基であり、
式(a2)中、環Zはナフタレン環を示し、Xは単結合又は-S-で示される基を示し、R1は単結合、炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基、又は炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基を示し、R1がアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合し、R2は1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4d)2で示される基、スルホ基、又は1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR4cで示される基、もしくは-N(R4d)2で示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4d)2で示される基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基を示し、R4a~R4dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示し、R3は、水素原子、ビニル基、又はグリシジル基であり、
W1とW2との双方がR3として水素原子を有することはなく、
環Y1及び環Y2は同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、-O-で示される基、-NH-で示される基、又は-S-で示される基を示し、R3a及びR3bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0以上4以下の整数を示す。)
【化3】
[図:0001388409000003.jpg]
(式(b1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つが置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。)
【請求項2】
さらに(C)他のカチオン重合開始剤を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(B)カチオン重合開始剤、及び/又は前記(C)他のカチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、且つ前記カチオン部が下記式(c1)で表されるカチオンである、スルホニウム塩を含む、請求項2に記載の硬化性組成物。
【化4】
[図:0001388409000004.jpg]
(式(c1)中、Rc1及びRc2は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c2)で表される基を示し、Rc1及びRc2は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Rc3は下記式(c3)で表される基又は下記式(c4)で表される基を示し、Ac1はS、O、又はSeを示し、但し、Rc1及びRc2は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化5】
[図:0001388409000005.jpg]
(式(c2)中、環Zc1は芳香族炭化水素環を示し、Rc4はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、チエニル基、チエニルカルボニル基、フラニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニル基、セレノフェニルカルボニル基、複素環式脂肪族炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m1は0以上の整数を示す。)
【化6】
[図:0001388409000006.jpg]
(式(c3)中、Rc5はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc6はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c6)で表される基を示し、Ac2は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m2は0又は1を示す。)
【化7】
[図:0001388409000007.jpg]
(式(c4)中、Rc7及びRc8は独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc9及びRc10は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は上記式(c2)で表される基を示し、Rc9及びRc10は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Ac3は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m3は0又は1を示し、但し、Rc9及びRc10は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化8】
[図:0001388409000008.jpg]
(式(c5)中、環Zc2は芳香族炭化水素環を示し、Rc11はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m4は0以上の整数を示す。)
【化9】
[図:0001388409000009.jpg]
(式(c6)中、環Zc3は芳香族炭化水素環を示し、Rc12はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m5は0以上の整数を示す。)
【請求項4】
前記式(c1)中の前記Rc1及び前記Rc2がともにフェニル基である、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記式(c1)中の前記Ac1がSである、請求項3又は4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を備える、画像表示装置用の表示パネル、又はOLED照明。
【請求項8】
フレキシブルである、請求項7に記載の画像表示装置用の表示パネル、又はOLED照明。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記硬化性組成物を所定の形状に成形する工程と、
成形された前記硬化性組成物に対して、加熱、又は露光と加熱とを行う工程と、
を含む硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物の成形が塗布膜の形成であって、前記塗布膜に対して露光及び加熱の少なくとも一方を行う、請求項9に記載の硬化物の製造方法。」
第3 異議申立ての理由の概要及び証拠方法
申立人の申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第5 当審の判断」「2 申立理由2(サポート要件)について」「(1)申立理由2の概要」に記載した点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1~10に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明は、「第5 当審の判断」「3 申立理由3(実施可能要件)について」「(1)申立理由3の概要」に記載した点で、当業者が本件発明1~10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1~10についての特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
異議申立書とともに提出された証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2017-48325号公報
甲第2号証:再公表特許WO2013/047524号公報
甲第3号証:国際公開2017/043525号
甲第4号証:特開2016-216367号公報
甲第5号証:サンアプロ株式会社ホームページ「製品情報 光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)」、2020年(URL: https://www.san-apro.co.jp/products/detai104/)
甲第6号証:特開2019-183048号公報
甲第7号証:特開2021-70783号公報
第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える画像表示装置用の表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とに関する。
・・・
【0005】
特許文献1に記載の硬化性組成物を用いると、高いガラス転移温度を示す、熱変形の観点からの耐熱性が良好な硬化物を形成することができる。しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物を用いる場合、耐熱分解性の観点からは耐熱性の良好な硬化物を、必ずしも形成できる訳ではない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含む硬化性組成物において、(A)硬化性化合物に、芳香環を含む3環以上が縮合した縮合環を主骨格とするカチオン重合性の化合物を含有させ、且つ(B)カチオン重合開始剤として、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
・・・
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含む。(A)硬化性化合物は、後述する式(a1)で表される化合物であり、芳香環を含む縮合多環式骨格を主骨格として有し、且つ、カチオン重合性基を有する。(B)カチオン重合開始剤は、後述する特定の構造を有する含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である。
硬化性組成物が、上述する(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含むことにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である。」
(本b)「【0017】
<(A)硬化性化合物>
(A)硬化性化合物は、下記式(a1)で表される化合物を含む。下記式(a1)で表される(A)硬化性化合物と、後述する(B)カチオン重合開始剤とを組み合わせて用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である。
・・・
【0031】
上記式(a1)で表される化合物は、優れた光学的特性及び熱的特性を保持しつつ、カチオン重合性の官能基を有するため、高い反応性を有する。特に、環Y1及び環Y2がベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記式(a1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光学的特性及び熱的特性にさらに優れる。
さらに、上記式(a1)で表される化合物は、高い硬度を有する硬化物を与え、組成物中の基材成分として好ましい。
【0032】
上記式(a1)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3-メチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン-1-イル)-9H-フルオレン及び9,9-ビス(5‐グリシジルオキシナフタレン-2-イル)-9H-フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;並びに下記式で表される化合物が挙げられる。
・・・
【0042】
(A)硬化性化合物は、上記式(a1)で表される化合物以外のカチオン重合性の化合物を含んでいてもよい。(A)硬化性化合物における、上記式(a1)で表される化合物の量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらにより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0043】
式(a1)で表される化合物以外のカチオン重合性の化合物の好ましい例としては、ビニルオキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むエポキシ化合物、及びエピスルフィド基を含むエピスルフィド化合物が挙げられる。以下、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、及びエピスルフィド化合物について説明する。
・・・
【0089】
硬化性組成物における(A)硬化性化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物における(A)硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分全体を100質量部としたときに、60質量部以上99.9質量部以下が好ま
しく、75質量部以上99.5質量部以下がより好ましく、90質量部以上99質量部以下が特に好ましい。」
(本c)「【0090】
<(B)カチオン重合開始剤>
硬化性組成物は、(A)硬化性化合物を硬化させる成分として、(B)カチオン重合開始剤を含む。(B)カチオン重合開始剤は、カチオン部とアニオン部とからなり、アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物である。
・・・
【0121】
また、(B)カチオン重合開始剤は、上記式(b1)で表されるアニオンであるアニオン部と、後述する式(c1)で表されるスルホニウムイオンであるカチオン部とからなるスルホニウム塩を含むのも好ましい。
・・・
【0126】
(B)カチオン重合開始剤としては、式(b1)で表されるアニオンの好適な具体例として示された上記のアニオンと、式(b2)で表される対カチオンの好適な具体例として示された上記のカチオンとからなる塩が好ましい。式(b2)で表される対カチオンの好適な具体例は2種以上組み合わせてもよい。
【0127】
硬化性組成物における(B)カチオン重合開始剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物における(B)カチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量として、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
また、(B)カチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量に対して10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらにより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
かかる範囲内の量の(B)カチオン重合開始剤を用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物を得やすい。」
(本d)「【0128】
<(C)他のカチオン重合開始剤>
硬化性組成物は、(B)カチオン重合開始剤とともに、(C)他のカチオン重合開始剤を含むのが好ましい。硬化性組成物は、(B)カチオン重合開始剤とともに、(C)他のカチオン重合開始剤を含むことにより、より、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成しやすい。
【0129】
(C)他のカチオン重合開始剤は、(C1)熱カチオン重合開始剤であっても、(C2)光カチオン重合開始剤であってもよく、(C2)光カチオン重合開始剤であるのが好ましい。以下、(C1)熱カチオン重合開始剤、及び(C2)光カチオン重合開始剤について説明する。
・・・
【0198】
(C)他のカチオン重合開始剤は、上記のスルホニウム塩(Q)とともに、スルホニウム塩(Q)以外のその他の光カチオン重合開始剤を含んでいてもよい。
(C)他のカチオン重合開始剤におけるスルホニウム塩(Q)の含有量は特に限定されないが、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0199】
(C2)光カチオン重合開始剤は、上記のスルホニウム塩(Q)とともに、前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤としては、従来からカチオン重合用に使用されている種々のカチオン重合開始剤を特に制限なく使用することができる。
前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤としては、前述の通り、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩が好ましく、スルホニウム塩(Q)以外のその他のスルホニウム塩がより好ましい。
・・・
【0206】
硬化性組成物における(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の硬化が良好に進行する限り特に限定されない。硬化性組成物を良好に硬化させやすい点から、典型的には、(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量として、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましく、0.01質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.03質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
また、(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量に対して90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらにより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。硬化性組成物が、(C)他のカチオン重合開始剤を含まないのも好ましい。
【0207】
<(D)硬化促進剤>
硬化性組成物は、(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化性組成物が(D)硬化促進剤を含む場合、硬化性組成物の硬化性が特に良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが特に良好である硬化物を形成できる。
【0208】
(D)硬化促進剤としては、例えば、ウレア化合物、第三級アミンとその塩、イミダゾール類とその塩、ホスフィン系化合物とその誘導体、カルボン酸金属塩やルイス酸、ブレンステッド酸類とその塩類、テトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
・・・
【0212】
<(E)増感剤>
硬化性組成物は、(E)増感剤を含んでいてもよい。硬化性組成物が、(C)光カチオン重合開始剤を含む場合、又は(B)カチオン重合開始剤が、スルホニウムカチオン及び/又はヨードニウムカチオンを含む場合、硬化性組成物が(E)増感剤を含むのが好ましい。増感剤としては、従来より種々のカチオン重合開始剤と併用されている公知の増感剤を特に制限なく用いることができる。
・・・
【0213】
(E)増感剤の使用量は特に限定されないが、(C)光カチオン重合開始剤の質量に対して、1質量%以上300質量%以下が好ましく、5質量%以上200質量%以下がより好ましい。かかる範囲内の量の(E)増感剤を用いることにより、所望する増感作用を得やすい。
【0214】
<その他の成分>
硬化性組成物には、必要に応じて、界面活性剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、樹脂(熱可塑性樹脂、アルカリ可溶性樹脂等)、無機フィラー、有機フィラー等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0215】
以上説明した必須又は任意の成分を含む硬化性組成物は、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好であるため、種々の用途において好適に利用することができる。
硬化性組成物は、タッチパネル等の表示素子における、金属配線等を被覆する透明被膜の形成用に特に好ましく使用される。また、前述の硬化性組成物を用いることにより、水蒸気等の気体を透過させにくく、長時間光にさらされた際の黄変を起こしにくい硬化膜を形成しやすい。このため、前述の硬化性組成物は、OLEDを備える装置、特にOLED照明において、保護、絶縁等の目的で設けられる被膜の形成にも好ましく使用される。
【0216】
<(S)溶剤>
硬化性組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、(S)溶剤を含むのが好ましい。(S)溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、硬化性組成物に含まれる成分を、均一に溶解又は分散させることができれば特に限定されない。
・・・
【0218】
硬化性組成物における、(S)溶剤の使用量は特に限定されない。硬化性組成物の塗布性の点等から、(S)溶剤の使用量は、硬化性組成物全体に対して、例えば30~99.9質量%であり、好ましくは50~98質量%である。」
(本e)「【実施例】
【0226】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0227】
〔実施例1~5、比較例1、及び比較例2〕
実施例及び比較例において(A)硬化性化合物((A)成分)として、下記式で表される化合物であるA1と、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量:250g/eq.)であるA2とを用いた。
【化45】
[図:0001388409000010.jpg]
【0228】
実施例及び比較例において、(B)カチオン重合開始剤((B)成分)として、下記式で表される化合物であるB1又はB2を用いた。
【化46】
[図:0001388409000011.jpg]
【0229】
実施例及び比較例において、(C)他のカチオン重合開始剤((C)成分)として、下記式で表される化合物であるC1及びC2を用いた。
【化47】
[図:0001388409000012.jpg]
【0230】
実施例において、(D)硬化促進剤((D)成分)としてトリフェニルホスフィントリフェニルボランを用いた。
【0231】
それぞれ、表1に記載の種類及び量の(A)成分及び(B)成分と、表1に記載の量の(C)成分及び(D)成分とを、固形分濃度が22質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、各実施例、及び比較例の硬化性組成物を得た。
なお、実施例1、実施例3、実施例4、比較例1、及び比較例2では(C)成分を用いなかった。また、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2では(D)成分を用いなかった。
【0232】
得られた硬化性組成物を用いて、以下の方法に従って、硬化性と、硬化膜の密着性と、硬化膜の耐熱性とを評価した。なお、比較例1の硬化性組成物については、硬化性が不良であったため、硬化膜の密着性と、硬化膜の耐熱性との評価を行わなかった。これらの評価結果を表1に記す。
【0233】
<硬化性の評価>
以下の方法に従った、硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の耐薬品性(耐NMP性)の評価に基づいて、硬化性組成物の硬化性を評価した。
まず、硬化性組成物を、基板上に膜厚1μmで塗布した。形成された塗布膜に、Prebake(100℃-2分間)と、露光(100mJ/cm2)と、Postbake(230℃-20分間)をこの順で施し、硬化膜を得た。得られた硬化膜をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、室温にて5分間浸漬させて、耐薬品性試験を行った。NMP浸漬後の硬化膜の膜厚の減少量又は膜厚の増加量が、NMP浸漬前の硬化膜の膜厚の1%以内であれば◎と判定し、1%超3%以内であれば○と判定し、3%超であれば×と判定した。
【0234】
<密着性評価>
硬化性評価と同様の方法で基板上に形成された硬化膜に、クロスカット(幅1mmの格子状の切れ込み)を入れ、JIS Z 1522に規定されたテープテストを行い、硬化膜の剥がれの有無を確認した。剥がれが全くなかった場合を◎と判定し、剥がれたマス目の数が5%以下であった場合を○と判定し、剥がれたマス目の数が5%超であった場合を×と判定した。
【0235】
<耐熱性評価>
硬化性評価と同様の方法で基板上に硬化膜を形成した。形成された硬化膜の一部を基板から剥離させて、試料を得た。得られた試料を用いて大気中での熱重量分析(TGDTA)を行い、耐熱性を評価した。
熱重量分析は、室温(20℃)から、10℃/分の昇温速度で加熱して行った。
分析開始時の重量を基準として、重量が5%減少する温度(Td5%:5%重量減少温度)を測定した。
Td5%が430℃以上である場合を◎と判定し、Td5%が400℃以上430℃未満である場合を○と判定し、Td5%が400℃未満である場合を×と判定した。
【0236】
【表1】
[図:0001388409000013.jpg]
【0237】
実施例1~5によれば、それぞれ所定の構造の化合物を含む(A)硬化性化合物と、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である(B)カチオン重合開始剤とを含む硬化性組成物は、硬化性が良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成可能であることが分かる。
実施例2~5によれば、硬化性組成物が、(B)カチオン重合開始剤とともに(C)他のカチオン重合開始剤か、(D)硬化促進剤を含む場合、硬化性組成物の硬化性が特に良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが特に良好な硬化物を形成可能であることが分かる。
【0238】
他方、比較例1及び2によれば、硬化性組成物が、所定の構造の化合物を含む(A)硬化性化合物と、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である(B)カチオン重合開始剤との少なくとも一方を含む場合、良好な硬化性と、硬化物の良好な密着性と、硬化物の良好な耐熱性(耐熱分解性)とのすべてを満たすことができないことが分かる。」
2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるオニウムガレート塩を含む酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含有してなる、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。
【化1】
[図:0001388409000014.jpg]
[式(1)中、R1~R4は、互いに独立して、炭素数1~18のアルキル基またはArであるが、但し、少なくとも1つが、Arであり、
Arは、炭素数6~14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基であって、アリール基中の水素原子の一部が、炭素数1~18のアルキル基、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R6~R9は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基、
R10及びR11は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基であり;
Eは15族~17族(IUPAC表記)の原子価nの元素を表し、
nは1~3の整数であり、
R5はEに結合している有機基であり、R5の個数はn+1であり、(n+1)個のR5はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良く、2個以上のR5が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Eを含む環構造を形成しても良い。]
【請求項2】
EがS、I、N、Pである請求項1に記載の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(1)において、R1、R2、R3、R4がパーフルオロアルキル基又はフッ素原子で置換されたフェニルである請求項1又は2に記載の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(1)において、R1、R2、R3、R4がペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基である請求項1又は2に記載の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
一般式(1)において、[ (R1)( R2)( R3)( R4)Ga]-で表されるガレートアニオンが[Ga(C6F5)4]-又は、[Ga((CF3)2C6H3)4]-である請求項1又は2に記載の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
ガレートアニオン塩に不純物が、4%以下を含む請求項1~5のいずれかに記載の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物。」
(甲1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、第1に、特定の構造を有するオニウムガレート塩を含有する、光学特性が求められる部材用の、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
本発明は、第2に、特定の構造を有するオニウムガレート塩を含有する光学特性が求められる部材用の、化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の背景において、本発明の第1の目的は、毒性金属を含まず、テトラキス(Fペンタフルオロフェニル)ボレート塩以上のカチオン重合性能や架橋反応性能を有し、かつこのものを使用した硬化物は特に耐熱試験後に強酸が残存しないため、部材の腐食がなく、樹脂の腐食により透明性が低下する問題がないカチオン重合開始剤(酸発生剤)を利用した、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物及び硬化体を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記酸発生剤を利用した化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及び硬化体を提供することである。」
(甲1c)「【0015】
本発明のオニウムガレート塩系酸発生剤としては、下記一般式(1)で表される。
・・・
【0030】
式(1)中のEは、15族~17族(IUPAC表記)の原子価nの元素を表し、有機基R5と結合してオニウムイオン[E+]を形成する。15族~17族の元素のうち好ましいのは、O(酸素)、N(窒素)、P(リン)、S(硫黄)またはI(ヨウ素)であり、対応するオニウムイオンとしてはオキソニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムである。中でも、安定で取り扱いが容易な、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムが好ましく、カチオン重合性能や架橋反応性能に優れるスルホニウム、ヨードニウムがさらに好ましい。
nは元素Eの原子価を表し、1~3の整数である。
・・・
【0034】
スルホニウムイオンの具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル フェニルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウムなどのトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムなどのジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムなどのモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウムなどのトリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0035】
ヨードニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムおよび4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウムなどのヨードニウムイオンが挙げられる。
・・・
【0038】
硬化性組成物中に含まれる不純物はオニウムガレート塩100重量部に対し、4重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01~2重量部である。不純物によりガレートアニオンの分解が促進されるため、不純物が4重量部を超えた場合、硬化性が低下し、硬化体の物性が悪くなる。」
(甲1d)「【0044】
本発明の熱または活性エネルギー線硬化性組成物(以下硬化性組成物という)は、上記酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなる。
【0045】
硬化性組成物の構成成分であるカチオン重合性化合物としては、環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる{(たとえば、活性エネルギー線硬化性組成物中のカチオン重合性化合物成分として、特開平11-060996号、特開平09-302269号、特開2003-026993号、特開2002-206017号、特開平11-349895号、特開平10-212343号、特開2000-119306号、特開平10-67812号、特開2000-186071号、特開平08-85775号、特開平08-134405号、特開2008-20838、特開2008-20839、特開2008-20841、特開2008-26660、特開2008-26644、特開2007-277327、フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)、色材、68、(5)、286-293(1995)、ファインケミカル、29、(19)、5-14(2000)等が挙げられる。これらは熱硬化性組成物中のカチオン重合性化合物成分として使用しても差し支えない。}。
【0046】
エポキシドとしては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが含まれる。
【0047】
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0049】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0050】
オキセタンとしては、公知のもの等が使用でき、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキセタン及びフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0051】
エチレン性不飽和化合物としては、公知のカチオン重合性単量体等が使用でき、脂肪族モノビニルエーテル、芳香族モノビニルエーテル、多官能ビニルエーテル、スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0052】
脂肪族モノビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0053】
芳香族モノビニルエーテルとしては、2-フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル及びp-メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0054】
多官能ビニルエーテルとしては、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
スチレンとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-tert-ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0056】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては、N-ビニルカルバゾール及びN-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0057】
ビシクロオルトエステルとしては、1-フェニル-4-エチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1-エチル-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサビシクロ-[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0058】
スピロオルトカーボネートとしては、1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9-ジベンジル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0059】
スピロオルトエステルとしては、1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2-メチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0060】
さらに、1分子中に少なくとも1個のカチオン重合性基を有するポリオルガノシロキサンを使用することができる(特開2001-348482号公報、特開2000-281965号公報、特開平7-242828号公報、特開2008-195931号公報、Journal of Polym. Sci.、Part A、Polym.Chem.、Vol.28,497(1990)等に記載のもの)。
これらのポリオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0061】
これらのカチオン重合性化合物のうち、エポキシド、オキセタン及びビニルエーテルが好ましく、さらに好ましくはエポキシド及びオキセタン、特に好ましくは脂環式エポキシド及びオキセタンである。また、これらのカチオン重合性化合物は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。」
(甲1e)「【0063】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、公知の添加剤(増感剤、顔料、充填剤、導電性粒子、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤、着色防止剤、溶剤、非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物等)を含有させることができる。
・・・
【0084】
ラジカル重合性化合物としては、公知{フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)}のラジカル重合性化合物等が使用でき、単官能モノマー、2官能モノマー、多官能モノマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
・・・
【0089】
本発明の硬化性組成物は、カチオン重合性化合物、酸発生剤及び必要により添加剤を、室温(20~30℃程度)又は必要により加熱(40~90℃程度)下で、均一に混合溶解するか、またはさらに、3本ロール等で混練して調製することができる。
・・・
【0120】
他の添加剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、必要に応じて他の添加剤を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤としては、無機フィラー、クエンチャー、レベリング剤・界面活性剤等が挙げられる。」
(甲1f)「【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されることは意図するものではない。
・・・
【0131】
実施例4 4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成(純度98%)
50mLナスフラスコにジクロロメタン25mL及び4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムクロライド1.69g(5mmol)及びテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートリチウム4.4g(6mmol)を仕込み、室温で2時間撹拌した。析出した固体をろ過し、ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、純度98%の白色の4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを収率93%で得た。
・・・
【0136】
実施例9 4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成
4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウムクロライドを1.59g(5mmol)をジクロロメタン20mlに分散させ、等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを含む水溶液41gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、純度99%の4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを収率91%で得た。
【0137】
実施例10 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成
4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムクロライドを1.59g(5mmol)をジクロロメタン20mlに分散させ、等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを含む水溶液15gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、純度99%の4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを収率90%で得た。
【0138】
実施例11 4-ヒドロキシフェニル-メチル-4-ニトロベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成
p-ニトロベンジルブロマイド1.08g(5mmol)、4-(メチル)チオフェノール0.7g(5mmol)をメタノール15mlに溶解させ、50℃で12時間撹拌した
。イオン交換水30ml、酢酸エチル15mlを加え30分撹拌したのち分液し、酢酸エチル層を除去した。水層に等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを含む水溶液37g、酢酸エチル30mlを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。酢酸エチル層を分液操作にて水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去することにより、純度97%の4-ヒドロキシフェニル-メチル-4-ニトロベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを収率92%で得た。
【0139】
実施例12 4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成
4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム クロライド 0.96g(5mmol)をジクロロメタン20mlに分散させ、等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートむ水溶液37gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、純度99%の4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成を収率93%で得た。
・・・
(複分解法)
このトリフレートをジクロロメタン50gに溶かし,等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートむ水溶液66gを室温下で混合し,そのまま3時間撹拌し,ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,純度99%のジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを収率90%で得た。
・・・
【0151】
〔評価〕
(熱、エネルギー線硬化性組成物の調製)
実施例2~12、14、比較例1~9の酸発生剤、増感剤(2、4-ジエチルチオキサントン)、カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)を表1に示した配合量で均一混合して、本発明の熱あるいはエネルギー線硬化性組成物1~11及び比較用の硬化性組成物12~20を調整した。
【0152】
【表1】
[図:0001388409000015.jpg]
【0153】
<光感応性(光硬化性)評価>
上記で得た、本発明のエネルギー線硬化性組成物3,6,8及び比較用の硬化性組成物12~14、18~20をアプリケーター(40μm)でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。PETフィルムに紫外線照射装置を用いて、フィルターによって波長を限定した紫外光を照射した。なお、フィルターは365フィルター(アイグラフィックス株式会社製、365nm未満の光をカットするフィルター)を使用した。照射後、40分後の塗膜硬度を鉛筆硬度(JIS K5600-5-4:1999)にて測定し、以下の基準により評価した(硬化後の塗膜厚は約40μm)。
(判定基準)
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がH~B
△:鉛筆硬度が2B~4B
×:液状~タックがあり、鉛筆硬度を測定できない
【0154】
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・フィルター:365フィルター(アイグラフィックス株式会社製)
・照度(365nmヘッド照度計で測定):100mW/cm2
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):300mJ/cm2
【0155】
<耐熱性(黄変)試験-1>
上記で得た組成物をアプリケーターにてスライドガラス上に膜厚40μmで塗布した。上記塗布後のスライドガラスに紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):100mW/cm2
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):1000mJ/cm2
照射後40分間室温で硬化させた後、ホットプレートにて120℃×30分間アフターキュアーして耐熱試験用のサンプルを作成した。
このサンプルを240℃に温調したホットプレートにて15分間加熱し、塗膜の色相を目視で評価した。評価基準は下記の通り。
【0156】
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色~黄色
×:褐色
【0157】
【表2】
[図:0001388409000016.jpg]
【0158】
※1:IPTI;4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム
※2:DPTS;ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム
【0159】
<熱感応性(熱硬化性)評価>
上記で得た、本発明のエネルギー線硬化性組成物7~10及び比較用の硬化性組成物14~16をアプリケーター(40μm)でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。塗布後、100℃で5分ホットプレートにて加熱し、加熱直後の塗膜硬度を鉛筆硬度(JIS K5600-5-4:1999)にて測定し、以下の基準により評価した(硬化後の塗膜厚は約40μm)。
(判定基準)
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がH~B
△:鉛筆硬度が2B~4B
×:液状~タックがあり、鉛筆硬度を測定できない
【0160】
<耐熱性(黄変)試験-2>
上記で得た、本発明のエネルギー線硬化性組成物3~6及び比較用の硬化性組成物11~13をアプリケーターにてスライドガラス上に膜厚40μmで塗布した。
このサンプルを240℃に温調したホットプレートにて15分間加熱して硬化させ、塗膜の色相を目視で評価した。評価基準は下記の通り。
【0161】
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色~黄色
×:褐色
【0162】
【表3】
[図:0001388409000017.jpg]
【0163】
※3:HPMNMS;4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム
※4:HPMBS;4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム
※5:HPMNBS;4-ヒドロキシフェニル-メチル-4-ニトロベンジルスルホニウム
※6:APDMS;4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム
【0164】
<光感応性(光硬化性)評価-2>
上記で得た、本発明のエネルギー線硬化性組成物1~5をアプリケーター(40μm)でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。PETフィルムに紫外線照射装置を用いて、フィルターによって波長を限定した紫外光を照射した。なお、フィルターは365フィルター(アイグラフィックス株式会社製、365nm未満の光をカットするフィルター)を使用した。照射後、40分後の塗膜硬度を鉛筆硬度(JIS K5600-5-4:1999)にて測定し、以下の基準により評価した(硬化後の塗膜厚は約40μm)。
(判定基準)
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がH~B
△:鉛筆硬度が2B~4B
×:液状~タックがあり、鉛筆硬度を測定できない
【0165】
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・ フィルター:365フィルター(アイグラフィックス株式会社製)
・照度(365nmヘッド照度計で測定):100mW/cm2
・ 積算光量(365nmヘッド照度計で測定):300mJ/cm2
【0166】
<耐熱性(黄変)試験-2>
上記で得た組成物をアプリケーターにてスライドガラス上に膜厚40μmで塗布した。上記塗布後のスライドガラスに紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):100mW/cm2
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):1000mJ/cm2
照射後40分間室温で硬化させた後、ホットプレートにて120℃×30分間アフターキュアーして耐熱試験用のサンプルを作成した。
このサンプルを240℃に温調したホットプレートにて15分間加熱し、塗膜の色相を目視で評価した。評価基準は下記の通り。
【0167】
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色~黄色
×:褐色
【0168】
【表4】
[図:0001388409000018.jpg]
【0169】
表2、3、4から、本発明によって得られる、オニウムガレート塩を用いた硬化性組成物は、カチオン重合開始能に優れ、かつ耐熱性(黄変)に優れることがわかる。
【0170】
<ネガ型フォトレジスト組成物の調製及びその評価>
表4に示す通り、酸発生剤である成分(A)1重量部、フェノール樹脂である成分(B)として、p-ヒドロキシスチレン/スチレン=80/20(モル比)からなる共重合体(Mw=10,000)を100重量部、架橋剤である成分(C)として、ヘキサメトキシメチルメラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-390」)を20重量部、架橋微粒子である成分(D)として、ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=64/20/8/6/2(重量%)からなる共重合体(平均粒径=65nm、Tg=-38℃)を10重量部、密着助剤である成分(E)として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「S510」)5重量部を溶剤-1(乳酸エチル)145重量部に均一に溶解して、本発明のネガ型フォトレジスト組成物21及び22比較用の組成物を調製した。
【0171】
【表5】
[図:0001388409000019.jpg]
【0172】
※1:IPTI;4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム
【0173】
<UV硬化性(ネガ型レジスト)評価>
シリコンウェハー基盤上に、各組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱乾燥して約20μmの膜厚を有する樹脂塗膜を得た。その後、TME-150RSC(トプコン社製)を用いてパターン露光(i線;500mJ/cm2)を行い、ホットプレートにより110℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた浸漬法により、2分間の現像処理を行い、流水洗浄し、窒素でブローして50μmのラインアンドスペースパターンを得た。
21及び22ともに現像前後の残膜の比率を示す残膜率が90%以上で、良好なパターン形状であった。
【0174】
<耐熱性(黄変)試験-3>
上記UV硬化性評価で得られたパターン付きシリコン基板を200℃に温調したホットプレートにて15分間加熱し、パターン部分の色相を目視で評価した結果を表5に示す。評価基準は下記の通り。
(評価基準)
◎:無色(塗膜の黄変なし)
○:淡黄色~黄色
×:褐色
【0175】
【表6】
[図:0001388409000020.jpg]
【0176】
表6から、本発明によって得られる、オニウムガレート塩を用いた化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、UV硬化性能に優れ、かつ耐熱性(黄変)に優れることがわかる。
【0177】
表2、3、6の結果より、本発明によって得られる、オニウムガレート塩を用いた硬化性組成物および化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、UV硬化性能が良好で、かつ耐熱試験後の硬化物の透明性が高い(黄変し難い)ことから、ディスプレイ、光導波路や光学レンズ等の光学特性が求められる部材として有用であることが分かる。」
(甲1g)「【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造用、及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。」
(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)「【請求項1】
カルバゾール骨格を有する下記式(1)で表される光硬化性モノマー(A)、下記式(2)で表される光硬化性モノマー(B)、及び光重合開始剤(C)を含有し、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)との含有重量比率(光硬化性モノマー(A)の重量/(硬化性モノマー(B)の重量)が30/70~87/13であり、かつ光重合開始剤(C)の含有量が、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)の総重量100重量部に対して0.01~30重量部である光インプリント用樹脂組成物を硬化せしめてなり、硬化の際の硬化収縮率が4.5%以下であることを特徴とする光学素子材料。
【化1】
[図:0001388409000021.jpg]
(R1は-CH=CH2、-CH2CH2-O-CH=CH2、-CH2-C(CH3) =CH2、又はグリシジル基を示す。R2、R3は同一又は異なっていてもよく、水素又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【化2】
[図:0001388409000022.jpg]
(式(2)中、R4、R5は、同一又は異なっていてもよく、-O-CH=CH2、O-CH2CH2-O-CH=CH2、-O-CO-CH=CH2、-O-CO-C(CH3) =CH2、-O-CH2CH2-O-CO-CH=CH2、-O-CH2CH2-O-CO-C(CH3) =CH2、又はグリシジルエーテル基を示す。R6、R7は同一又は異なっていてもよく、水素又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【請求項2】
光インプリント用樹脂組成物が、さらに、粘度調整剤(D)を、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)の総重量100重量部に対して、0.1~100重量部含有する請求項1に記載の光学素子材料。
【請求項3】
光インプリント用樹脂組成物が、さらに、溶剤(G)を、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)の総重量100重量部に対して、0.5~30000重量部含有する請求項1又は2に記載の光学素子材料。)
(甲2b)「【技術分野】
【0001】
発明は、硬化させる際の硬化収縮率が小さい光インプリント用樹脂組成物の硬化物からなる、寸法精度に優れ、高屈折率であって透明性に優れた光学素子材料、及びその製造方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】 本発明は、上記のような実状に鑑み、適度の粘度を有し、取り扱い易いが容易であり、硬化させる際の硬化収縮率が小さい、光インプリント用樹脂組成物を硬化せしめて得られる、寸法精度に優れ、高屈折率であって透明性に優れた光学素子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、光硬化性モノマーとして、カルバゾール骨格を有する下記式(1)で表される光硬化性モノマー(A)の少なくとも1種類、下記式(2)で表される特定の環状炭化水素構造を有する光硬化性モノマー(B)、及び光重合開始剤(C)を特定の比率で含有する光インプリント用樹脂組成物が、取り扱い易い粘度となり、その硬化物は、高屈折率であって、透明性に優れ、かつ硬化収縮率が小さく、寸法精度にも優れる光学素子材料であることを見出した。
・・・
【発明の効果】
【0016】
発明によれば、取り扱い易い粘度であり、紫外線(UV)等の照射により容易に硬化し、その際の硬化収縮率も小さい上記樹脂組成物を用いることにより、寸法精度に優れる硬化物であり、光学的に高屈折率であって透明性に優れ、耐熱性も高い光学素子材料が提供される。」
(甲2c)「【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の光学素子材料の製造に使用される樹脂組成物は、光硬化性モノマー(A)として、上記の式(1) で表されるカルバゾール化合物を少なくとも1種類含有する。かかるカルバゾール化合物は、高屈折率、フォトリフラクティブ効果、光導電性等の光学特性に優れ、また、光硬化における増感効果を有する。また、かかるカルバゾール化合物は、光硬化性モノマー(B)である上記の式(2)を混ぜることで、常温で液状化させることができ、粘度を好ましくは10mPa・s~2,500,000mPa・s、特に好ましくは100mPa・s~2,000,000mPa・s(温度20~50℃)とすることができ、取り扱い易くなる。
・・・
【0039】
本発明において、式(1)で表される光硬化性モノマー(A)と、式(2)で表される光硬化性モノマー(B)との含有比率は、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)の重量比率(光硬化性モノマー(A)の重量/光硬化性モノマー(B)の重量)で30/70~87/13であり、好ましくは、35/65~85/15であり、更に好ましくは40/60~80/20である。」
(甲2d)「【0046】
本発明の光インプリント用樹脂組成物は、光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。
光重合開始剤(C)としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤が挙げられ、どちらも制限無く用いることができる。
【0047】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、BASFジャパン社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)、Irgacure(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)、Irgacure(登録商標)369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1)、Irgacure(登録商標)907(2-メチル-1[4-メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン)、Irgacure(登録商標)379(2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン)、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム))、Irgacure(登録商標)OXE02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム))、Darocur(登録商標)1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174、1020、Lucirin TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO-L(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、DKSHジャパン社から入手可能なESACURE 1001M(1-[4-ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、等が挙げられる。なかでも、Irgacure(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Darocur(登録商標)1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン)、Lucirin TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Irgacure(登録商標)907(2-メチル-1[4-メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、Irgacure(登録商標)379(2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン)が好ましい。
【0048】
光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、公知のものが使用できる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。なかでも、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0049】
上記光重合開始剤は、単独、又は2種以上のものを組み合わせて使用することができる。また、組成物との分散性を考慮して溶剤を含んでいてもよい。」
(甲2e)「【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0073】
A:光インプリント用樹脂組成物の調製及び粘度測定方法
<実施例1~10及び比較例1~5>
実施例1~10及び比較例1~5の光インプリント用樹脂組成物を、表1、表2に示すように、光硬化性モノマー(A)、光硬化性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、粘度調整剤(D)、増感剤(E)、レベリング剤(F)、溶剤(G)、及び光硬化性モノマー(H)を使用して調製した。
なお、表1、表2における、光重合開始剤(C)、粘度調整剤(D)、増感剤(E)、レベリング剤(F)、及び溶剤(G)の数値は、光硬化性モノマー(A)と光硬化性モノマー(B)を合わせた100重量部に対する含有量(重量部)である。
【0074】
各組成物の調製及び粘度測定は、波長500nm以下の紫外線をカットした蛍光灯下のイエロールーム内にて、以下の手順で行った。
1.所定のガラス容器に光硬化モノマー(A)、光硬化性モノマー(B)、光硬化性モノマー(H)、及び光重合開始剤(C)、必要に応じて、粘度調整剤(D)、増感剤(E)、レベリング剤(F)、及び溶剤(G)を表1、表2に記載の割合で秤量し、攪拌混合した。
2.孔径0.45μmのナイロン製フィルター(住友スリーエム社製、商品名:ライフアシュア)にてろ過して光インプリント用樹脂組成物を調製した。
【0075】
表1、表2に記載された各成分について以下に示す。表3に、各成分の分類、略号、及び名称を示す。
(1)光硬化性モノマー(A)
A-1:N-ビニルカルバゾール(丸善石油化学社製)
(2)光硬化性モノマー(B)
B-1:9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業社製、製品名A-BPEF)
B-2:9,9-ビス[4-(2-ビニルエーテルエトキシ)フェニル]フルオレン(丸善石油化学社製)
B-3:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールPG-100)
B-4:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールCG-500)
【0076】
(3)光重合開始剤(C)
C-1:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン社製、Irgacure184)
C-2:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(BASFジャパン社製、Irgacure379)
C-3:ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート50重量%炭酸プロピレン溶液(和光純薬工業社製W、PI-113)
C-4:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASFジャパン社製、Irgacure651)
C-5:サンアプロ社製、CPI-210S
【0077】
(4)粘度調整剤(D)
粘度調整剤(D)に使用した樹脂D-1の重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により、Waters社製のGPC装置を使用し、カラム:Shodex社製K-805L/K-806L、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、通液量:0.8mL/minの条件で測定した。粘度調整剤(D)に使用した樹脂D-2の重量平均分子量(Mw)は、東ソー社製のGPC装置を使用し、カラム:東ソー社製TSK G2000H×2本/TSK G3000H/TSK G4000H、カラム温度:40℃、溶媒:THF、通液量:1.0mL/minの条件で測定した。
D-1:エチレン/5-メチル-5-フェニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン共重合体(Mw:50,000、日本特開2005-239975記載のエチレン/メチルフェニルノルボルネン共重合体)
D-2::Poly(9-vinylcarbazole)(アルドリッチ社製試薬、Mn(数平均分子量)=25,000~50,000、Mw/Mn=約2)
【0078】
(5)増感剤(E)
E-1:9,10-ジプロポキシアントラセン(川崎化成社製、UVS-1221)
(6)レベリング剤(F)
F-1:シリコーン系レベリング剤(楠本化成社製、ディスパロン1761)
(7)溶剤(G)
G-1:シクロヘキサノン(和光純薬工業社製)
【0079】
(8)光硬化性モノマー(H)
H-1:トリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、製品名APG-200)
H-2:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製、製品名A-TMPT)
H-3:N-ビニル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)
H-4:2-フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製、製品名 SR339A)
・・・
【0091】
【表1-3】
[図:0001388409000023.jpg]
」
(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)「請求の範囲
[請求項1]
成分A:重量平均分子量が100,000以上の樹脂、および
成分B:分子量が500以上10,000以下の重合性化合物、
を含む貼り合わせ用フィルム。」
(甲3b)「技術分野
[0001] 本発明は、貼り合わせ用フィルム、およびこの貼り合わせ用フィルムを用いる積層体の製造方法に関する。
背景技術
[0002] 同種または異種の2つの物品を貼り合わせることは、様々な技術分野で広く行われている。一例として、例えば、液晶表示装置等の画像表示装置の構成部材の貼り合わせのためには、OCA(Optically Clear Adhesive)やOCR(Optically Clear Resin)を用いる貼り合わせ法が提案され、実用化されている(例えば非特許文献1参照)。
・・・
[0005] そこで本発明の目的は、OCAとOCRの利点を併せ持つ、2つの物品を貼り合わせるための新たな貼り合わせ手段を提供することにある。」
(甲3c)「実施例
[0126] 以下に実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
・・・
[0136] [ドープE(成分B含有)の調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して各成分を溶解し、ドープEを調製した。
[0137]
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート 100質量部
(アセチル置換度2.86、重合度350、MW400,000)
カチオン重合性化合物*5 100質量部
カチオン重合開始剤*4 2.5質量部
メチレンクロライド 625質量部
メタノール 158質量部
1-ブタノール 8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
カチオン重合性化合物*5:大阪ガスケミカル社製CG-500(Mw=562)
カチオン重合開始剤*4:サンアプロ社製CPI-100P
・・・
[0145] [フィルム4の作製]
流延ダイとして、図2に示す構成の流延ダイを用いた。フィルム1の作製に用いた製膜装置は、流延ドラム(ドラム支持体)を備え、流延ドラムからはぎ取られたフィルムが乾燥室(加熱室)に搬送されて加熱される。乾燥室以外は開放系とした。加熱時間は、乾燥室の搬送距離を変更することにより制御した。図2に示す流延ダイ21は、ドープaの流れとドープbの流れとを合流させた後、先端の吐出口から走行する流延ドラム22上に流出させることによって、ドープa由来の塗布層40aとドープb由来の塗布層40bの積層体として流延膜40を形成する。
上記で調製したドープD、Eを、図2に示すドープaとしてドープD、ドープbとしてドープEを用い、空気面側から支持体側に向かってドープD、Eの順序になるように、それぞれが表1に示す膜厚(設定膜厚)相当になるように流量を調節して、流延ダイから表面温度5℃のドラム支持体上に共流延して流延膜を形成した。その後、ドラム支持体上で40℃の除湿風を当て、ドラム支持体から流延膜を剥ぎとった。
走行する流延膜に乾燥室において乾燥風をあて80℃の加熱温度で15分間加熱し、溶剤を乾燥させ、二層の積層構造のフィルム4を得た。
[0146] [フィルム1~3、5、7~9、10の作製]
単層フィルムであるフィルム1~3、7、8、10を、図2に示す構成の流延ダイに、ドープaは導入せず、ドープbとして表1に示すドープを導入して表1に示す膜厚(設定膜厚)相当になるように流量を調整して流延して単層の流延膜を得た点以外、フィルム4の作製と同様の方法でフィルムを得た。
二層の積層構造のフィルムであるフィルム5は、図2に示すドープaとしてドープC、ドープbとしてドープEを用いた点以外、フィルム4の作製と同様の方法でフィルムを得た。
二層の積層構造のフィルムであるフィルム9は、図2に示すドープaとしてドープX、ドープbとしてドープYを用いた点以外、フィルム4の作製と同様の方法でフィルムを得た。
[0147] [フィルム6の作製]
三層の積層構造のフィルム6は、流延ダイとして、図3に示す構成の流延ダイを用いて、図3に示すドープcとしてドープC、ドープdとしてドープF、ドープeとしてドープEを用い、空気面側から支持体側に向かってドープC、F、Eの順序になるように、それぞれが表1に示す膜厚(設定膜厚)相当になるように流量を調節した点以外、フィルム4の作製と同様の方法でフィルムを得た。
なお図3に示す製膜装置は、流延ダイ以外は図2と同様である、
・・・
[0154] <貼り合わせによる積層体の作製>
上記で作製したタッチパネル用電極パターンフィルムを実施例1と同様のガラス板と、フィルム4を介して重ね合わせて前駆積層体を準備した。重ね合わせは、表1に示す一層目側のフィルム表面がガラス板、二層目側のフィルム表面がタッチパネル用電極パターンフィルムと接触するように行った。タッチパネル用電極パターンフィルムは、帯状電極のパターンを有する表面(即ち凹凸を有する面)がフィルム4の表面と接触するように、フィルム4と重ね合わせた。
準備した前駆積層体を、雰囲気温度120℃の加熱炉内に5分間配置して加熱処理を行った。この加熱処理により、加熱浸み出し工程が行われる。
その後、前駆積層体を加熱炉から紫外線露光機内に移し、紫外線露光機内で紫外線を表1に示す照射量で照射して重合処理工程を行った。紫外線は、ガラス板側から前駆積層体に照射した。
こうして、ガラス板とタッチパネル用電極パターンフィルムとがフィルム4を介して貼り合わされた積層体を得た。
[0155] [実施例5]
実施例4と同様の方法で準備したタッチパネル用電極パターンフィルムを、市販の樹脂フィルム(住化アクリル販売社製テクノロイC-101;PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルム/ポリカーボネートフィルム/PMMAフィルムの積層フィルム)と、フィルム5を介して重ね合わせて前駆積層体を準備した。重ね合わせは、表1に示す一層目側のフィルム表面が樹脂フィルム、二層目側のフィルム表面がタッチパネル用電極パターンフィルムと接触するように行った。タッチパネル用電極パターンフィルムは、帯状電極のパターンを有する表面(即ち凹凸を有する面)がフィルム5の表面と接触するように、フィルム5と重ね合わせた。
準備した前駆積層体を、雰囲気温度120℃の加熱炉内に5分間配置して加熱処理を行った。この加熱処理により、加熱浸み出し工程が行われる。
その後、前駆積層体を加熱炉から紫外線露光機内に移し、紫外線露光機内で紫外線を表1に示す照射量で照射して重合処理工程を行った。紫外線は、樹脂フィルム側から前駆積層体に照射した。
こうして、樹脂フィルムとタッチパネル用電極パターンフィルムとがフィルム5を介して貼り合わされた積層体を得た。
[0156] [実施例6]
実施例5と同様のタッチパネル用電極パターンフィルムおよび樹脂フィルムを、フィルム6を介して重ね合わせて前駆積層体を準備した。重ね合わせは、表1に示す一層目側のフィルム表面が樹脂フィルム、三層目側のフィルム表面がタッチパネル用電極パターンフィルムと接触するように行った。タッチパネル用電極パターンフィルムは、帯状電極のパターンを有する表面(即ち凹凸を有する面)がフィルム6の表面と接触するように、フィルム6と重ね合わせた。
準備した前駆積層体を、雰囲気温度120℃の加熱炉内に5分間配置して加熱処理を行った。この加熱処理により、加熱浸み出し工程が行われる。
その後、前駆積層体を加熱炉から紫外線露光機内に移し、紫外線露光機内で紫外線を表1に示す照射量で照射して重合処理工程を行った。紫外線は、樹脂フィルム側から前駆積層体に照射した。
こうして、樹脂フィルムとタッチパネル用電極パターンフィルムとがフィルム6を介して貼り合わされた積層体を得た。」
(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)「【0121】
有機膜材料用の化合物の合成には、下記に示すエポキシ化合物(E-1)~(E-9)を用いた。
【化34】
[図:0001388409000024.jpg]
(式中、sは0~3の整数)
・・・
(E-4)PG-100(大阪ガスケミカル(株)製)エポキシ当量:260
・・・
(E-8)CG-500(大阪ガスケミカル(株)製)エポキシ当量:310
・・・」
(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(甲5a)「
[図:0001388409000025.jpg]
」
(甲5b)「
[図:0001388409000026.jpg]
」
(甲5c)「
[図:0001388409000027.jpg]
」
(甲5d)「
[図:0001388409000028.jpg]
」
(6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(甲6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸発生剤と(B)オキセタン化合物を含む組成物であって、該(A)酸発生剤が下記式(1)
【化1】
[図:0001388409000029.jpg]
(式(1)中、R1乃至R4はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R1乃至R4の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。)で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有する組成物。」
(甲6b)「【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は硬化性に優れ、その硬化物は基材との密着性や接着強度及びシール剤として用いた場合のシール性に優れ、かつ耐マイグレーション性等の電気信頼性にも優れるため、電子部品等の接着剤用途等に好適に用いられる。」
(甲6c)「【0027】
式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩は、例えば特開2013-043864号公報等に記載の公知の方法に準じて合成することが可能であり、また市販されているCPI-310FG(商品名、光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製)等を入手して用いてもよい。
【0028】
以下に、本発明の組成物に含まれる(A)酸発生剤が含有する式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩の具体例を例示するが、式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩はこれらの具体例に限定されるものではない。」
(甲6d)「【実施例】
【0048】
以下、更に実施例を以て本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、%および部は特記しない限り質量基準である。
・・・
【0053】
尚、表1におけるA-1乃至B-3は、それぞれ以下のものを示す。
(A-1):商品名 RE-303S-L(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量167g/eq.、日本化薬株式会社製)
(A-2):商品名 アロンオキセタン OXT-121(キシリレンビスオキセタン、東亜合成株式会社製)
(B-1):商品名 CPI-310FG(アリールスルホニウムーテトラキスペンタフルオロガレイト、サンアプロ株式会社製)
(B-2):商品名 CPI-210S(4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ株式会社製)
(B-3):商品名 Irgacure 290(トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート、BASF社製)」
(7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(甲7a)「【0063】
被膜材に添加する光酸発生剤として、以下を使用した。
A:トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルガレート(サンアプロ社製、CPI-310FG)
B:トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレート(サンアプロ社製、CPI-310B)
C:ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製、CPI-101A)
D:4-イソブチルフェニル(4-メチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート(BASF社製、Irgacure250)」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証の段落【0151】、【0152】の【表1】の「No.3」の組成物に着目すると、甲第1号証には、
「4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの酸発生剤 2重量部
増感剤(2、4-ジエチルチオキサントン) 2重量部、
カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P) 100重量部
を均一混合して、調整した硬化性組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート」は、本件発明1の「式(b1)」の化合物の「R1、R2、R3、及びR4」がすべて5つの「フルオロ基」に置換された「芳香族炭化水素基」である「アニオン部」と、「ヨードニウムイオン」である「4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム」を有するものであるから、本件発明1の「カチオン部とアニオン部とからなり、前記アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物であり、前記カチオン部がスルホニウムイオン又はヨードニウムイオン」である「(B)カチオン重合開始剤」に相当するといえる。
甲1発明の「カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)」は、甲第1号証の(甲1d)の段落【0048】の記載からみて「脂環式エポキシド」であり、また、段落【0044】及び【0045】の記載からみて「硬化性」を有するといえるから、本件発明1の「下記式(a1)で表される化合物」を含む「(A)硬化性化合物」とは、「硬化性化合物」である限りにおいて、一致する。
甲1発明の「硬化性組成物」は「増感剤(2、4-ジエチルチオキサントン)」を含むものであるが、本件発明1の「硬化性組成物」も、(本d)の段落【0212】の記載からみて「増感剤」を含む態様を意図しているといえるから、この点は相違点とならない。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含み、
前記(B)カチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、前記アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物であり、
前記カチオン部がスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンである、硬化性組成物。
【化3】(当審注:式(b1)は省略する)
(式(b1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つが置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「(A)硬化性化合物」について、本件発明1では、「式(a1)(当審注:式(a1)は省略する。)で表される化合物」を含むのに対し、甲1発明では、「式(a1)で表される化合物」を用いていない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
まず、本件発明1は、「(A)硬化性化合物」として「式(a1)で表される化合物」を用い、「(B)カチオン重合開始剤」として「式(b1)」で表されるアニオンである含ガリウム化合物を用いることにより、(本a)の段落【0006】の「耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物」を提供するものであり、(本e)の実施例・比較例をみると、本件発明1の発明特定事項を満たす「(A)硬化性化合物」として段落【0227】に記載の化合物A1のみであり、「カチオン重合開始剤」として段落【0228】に記載の化合物B1及びB2のみが用いた実施例の「硬化性組成物」については本件発明の上記課題を解決できることがデータとして示され、一方、「含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩」ではない段落【0229】の含ホウ素アニオンをアニオン部として含む塩のみを用いた比較例1、「硬化性化合物」として(式(a1)を満たさない「水添ビスフェノールA型エポキシ化合物」を用いた例では、本件発明の上記課題を解決できなかったことが示されている。
甲第1号証(特に(甲1d)を参照)には、「(A)硬化性化合物」である「カチオン重合性化合物」として「環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等」が例示されているものの、本件発明1の「式(a1)で表される化合物」は記載されておらず、また、当該化合物を用いることを示唆する記載もない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
甲第2号証の(甲2a)の請求項1には、「光学素子材料」の「光硬化性モノマー」として、本件発明1の「式(a1)で表される化合物」を用いることが記載され、(甲2e)の実施例9及び実施例10においては、それぞれ「光硬化性モノマー(B)」として「B-3:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールPG-100)」、「B-4:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールCG-500)」を、「光重合開始剤(C)」として「C-5:サンアプロ社製、CPI-210S」を用いた例が示されており、このうち、「光硬化性モノマー(B)」として「B-3:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールPG-100)」、「B-4:ビスアリールフルオレン系化合物(大阪ガスケミカル社製、製品名オグソールCG-500)」については(甲4a)の記載からみて本件発明1の「式(a1)で表される化合物」に相当する化合物であるといえる。また、「光重合開始剤(C)」である「C-5:サンアプロ社製、CPI-210S」は、甲第5号証の(甲5b)からみて「カチオン部分」として「スルホニウムイオン」を用いるものであることは確認できるが、「アニオン部」について本件発明1の「式(b1)」である含ガリウム化合物であることは確認できない。
甲第3号証には、「貼り合わせ用フィルム」に関して((甲3a)を参照)、(甲3c)の実施例の段落[0136]~[0137]の「ドープE(成分B含有)の調製」において、「カチオン重合性化合物」として「大阪ガスケミカル社製CG-500(Mw=562)」を用い、「カチオン重合開始剤」として「サンアプロ社製CPI-100P」を用いた例が示されており、このうち、「カチオン重合性化合物」である「大阪ガスケミカル社製CG-500(Mw=562)」については(甲4a)の記載からみて本件発明1の「式(a1)で表される化合物」に相当する化合物であるといえる。また、「カチオン重合開始剤」である「サンアプロ社製CPI-100P」は、甲第5号証の(甲5b)からみて「カチオン部分」として「スルホニウムイオン」を用いるものであることは確認できるが、「アニオン部」について本件発明1の「式(b1)」である含ガリウム化合物であることは確認できない。
以上のとおり、甲第2~3号証には、「カチオン重合性化合物」として「フルオレン系化合物」を用いることが記載されているものの、甲第1号証には「カチオン重合性化合物」として「フルオレン系化合物」を含む本件発明1の「式(a1)で表される化合物」を用いることは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、甲第2~3号証記載の「フルオレン系化合物」を用いることを動機づけることはできない。さらに、甲第2~3号証には、「光重合開始剤」として「カチオン部」が「スルホニウムイオン」を用いた例も示されているものの、「アニオン部」について本件発明1の「式(b1)」である含ガリウム化合物を用いることは確認できないため、この点からみても、甲1発明において、甲第2~3号証記載の「フルオレン系化合物」を用いることを動機づけることはできない。
なお、申立人は、本件特許に係る出願後に公開された甲第6号証及び甲第7号証も提出し、甲第6号証の(甲6d)には「(B-1):商品名 CPI-310FG(アリールスルホニウムーテトラキスペンタフルオロガレイト、サンアプロ株式会社製)」が、甲第7号証の(甲7a)には「A:トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルガレート(サンアプロ社製、CPI-310FG)」が記載され、甲第5号証の(甲5b)及び(甲5c)の記載からみて、上記甲第2号証及び甲第3号証で用いた「光重合開始剤」である「C-5:サンアプロ社製、CPI-210S」及び「サンアプロ社製CPI-100P」と同じシリーズの製品には、含ガリウム化合物を用いる例は確認できるが、甲第6~7号証の当該記載をもっても、甲1発明において、甲第2~3号証記載の「フルオレン系化合物」を用いることを動機づけることはできない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~5号証に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2~10は、上記(2)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、申立理由1によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)申立理由2の概要
申立理由2の概要は、以下のとおりである。
本件発明1~5においては、硬化性組成物中の(A)硬化性化合物の含有割合、(B)カチオン重合開始剤の含有割合が何ら特定されておらず、また、硬化性組成物における(A)硬化性化合物と(B)カチオン重合開始剤との含有比も、何ら特定されていない。
一方、本件明細書の実施例では、(A)硬化性化合物の含有割合が99.5質量部、(B)カチオン重合開始剤の含有割合が0.5又は0.45質量部である場合のみであり、本件明細書の段落【0042】の「(A)硬化性化合物における、上記式(a1)で表される化合物の量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらにより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい」との記載の「(A)硬化性化合物」の含有割合が70質量部程度或いは80質量部程度である場合においても、密着性評価及び耐熱性評価が、実施例2~5の硬化性組成物のように、評価◎と判定されるものであるとは明らかになっていない。すなわち、「(A)硬化性化合物」の含有割合が0質量部を超えて99.5質量部未満までの広い範囲にまで拡張又は一般化することはできない。
本件発明1~5の硬化性組成物を用いた本件発明6~10についても同様である。
(2)判断
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点から検討する。
イ 判断
(ア)本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0006】の記載からみて、「耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供すること」であるといえる。
(イ)本件発明1~10について
本件発明1は、「式(a1)で表される化合物」を含む「(A)硬化性化合物」と、「カチオン部」と「アニオン部」とからなり、「アニオン部」が「式(b1)で表されるアニオンである化合物」であり「カチオン部」が「スルホニウムイオン又はヨードニウムイオン」である「(B)カチオン重合開始剤」とを含む「硬化性組成物」に係る発明である。
本件明細書の(本e)の実施例・比較例をみると、本件発明1の発明特定事項を満たす「(A)硬化性化合物」として段落【0227】に記載の化合物A1のみを、「カチオン重合開始剤」として段落【0228】に記載の化合物B1及びB2のみを用いた実施例の「硬化性組成物」については本件発明の上記課題を解決できることがデータとして示されている。
一方、本件明細書の(本b)の段落【0017】には、「下記式(a1)で表される(A)硬化性化合物と、後述する(B)カチオン重合開始剤とを組み合わせて用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である」ことが記載されている。
そして、「(A)硬化性化合物」について、段落【0031】には「上記式(a1)で表される化合物は、優れた光学的特性及び熱的特性を保持しつつ、カチオン重合性の官能基を有するため、高い反応性を有する。特に、環Y1及び環Y2がベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記式(a1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光学的特性及び熱的特性にさらに優れる。さらに、上記式(a1)で表される化合物は、高い硬度を有する硬化物を与え、組成物中の基材成分として好ましい」ことが記載され、申立人も、特許異議申立書の第41頁第12~16行において「本件発明において(A)硬化性化合物として用いる「式a1)で表される化合物は、芳香環を含む3環以上が縮合した縮合環を主骨格とするカチオン重合性の化合物であり、その化学構造からみて、得られる硬化膜が耐熱性並びに基材への密着性が優れたものになると、当業者であれば容易に推量することができる」と述べている。
次に、「(B)カチオン重合開始剤」については、本件明細書の(本a)の段落【0015】には「カチオン重合性基を有する。(B)カチオン重合開始剤は、後述する特定の構造を有する含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である。硬化性組成物が、上述する(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含むことにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である」ことが記載され、(本c)の段落【0126】には「かかる範囲内の量の(B)カチオン重合開始剤を用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物を得やすい」と記載されていることから、「(B)カチオン重合開始剤」の特徴的な構造は「含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩」であることと理解でき、これを用いることにより、「耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物を得やすい」ものになると理解できる。
そうすると、本件明細書の実施例では、限られた「(A)硬化性化合物」及び「(B)カチオン重合開始剤」を用いた例しか本件発明の上記課題を解決できたことを確認していないものの、本件明細書の上記記載を勘案すると、本件発明1の芳香環を含む3環以上が縮合した縮合環を主骨格とするカチオン重合性の化合物である「式(a1)」で表される「(A)硬化性化合物」と、「含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩」である「式(b1)」で表されるアニオン部及び「スルホニウムイオン又はヨードニウムイオン」である「カチオン部」を有する「(B)カチオン重合開始剤」とを組み合わせて用いれば、本件発明の上記課題を解決できることを当業者であれば、推量することができるといえる。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~10についても、同様である。
したがって、本件発明1~10は、本件明細書に記載された発明であるといえる。
(ウ)申立人の主張について
本件発明1の「硬化性組成物」の成分である「(A)硬化性化合物」及び「(B)カチオン重合開始剤」の含有割合について、本件発明1には具体的な特定はないものの、本件明細書の(本b)の段落【0089】には「硬化性組成物における(A)硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分全体を100質量部としたときに、60質量部以上99.9質量部以下が好ましく、・・・好ましい」と、(本c)の段落【0127】には「硬化性組成物における(B)カチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量として、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下が特に好ましい」と記載されている。そして、「硬化性組成物」において「(A)硬化性化合物」が極端に少ない態様や「(B)カチオン重合開始剤」が極端に多い態様は通常考えられず、本件明細書に記載された「硬化性組成物」の主要な成分となる「硬化性化合物」の含有量が「60質量部以上99.9質量部以下」程度の範囲となること及び「カチオン重合開始剤」の含有量が「0.01質量部以上5質量部以下」程度の範囲となることは一般的な事項であるといえる。
本件明細書の(本e)の実施例をみると、(A)硬化性化合物の含有割合が99.5質量部、(B)カチオン重合開始剤の含有割合が0.5又は0.45質量部である場合に、本願発明の上記課題を解決できることが確認されているから、本件発明1の「硬化性組成物」の成分である「(A)硬化性化合物」及び「(B)カチオン重合開始剤」の含有割合を本件明細書に記載の上記のような一般的な範囲で含有すれば、本件発明1以外の硬化性化合物やカチオン重合開始剤を用いた場合に比べて、本件発明の上記課題である硬化性、密着性評価及び耐熱性評価が一定以上のものとなることや、硬化性・耐熱性・密着性が向上することは当業者であれば理解できるといえる。
また、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~10についても同様である。
申立人の主張のとおり、本件明細書の実施例で示されている「(A)硬化性化合物」の含有割合が99.5質量部も少ない場合、「(B)カチオン重合開始剤」の含有割合が「0.45質量部」以下である場合は、これらの実施例の評価に比べて劣るものになることは否定できない。
しかしながら、上述したとおり、「(A)硬化性化合物」及び「(B)カチオン重合開始剤」を上記のような一般的な範囲で含有すれば、本件発明1以外の硬化性化合物やカチオン重合開始剤を用いた場合や、「(A)硬化性化合物」及び「(B)カチオン重合開始剤」の含有割合が上記範囲より少ない又は含まれない場合に比べて、本件発明の上記課題である硬化性、密着性評価及び耐熱性評価が一定以上のものとなることは当業者であれば理解できるといえるし、申立人は課題を解決できない場合があることについてデータを示して理由を述べていないから、申立人の主張を採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、申立理由2は、理由がない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)申立理由3の概要
申立理由3の概要は、以下のとおりである。
本件発明1の「(A)硬化性化合物」は「式(a1)」で示される極めて広い範囲に包含される多数の化合物が該当するところ、本件明細書の実施例において用いられているのは段落【0227】に記載の化合物A1のみである。また、本件発明1は、「(B)カチオン重合開始剤」については「カチオン部とアニオン部とからなり、前記アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物であり、前記カチオン部がスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンである」旨規定されているが、例えば、本件明細書の段落【0123】に示されるアニオンと段落【0125】に示されるカチオンを組み合わせた化合物、さらには甲第1号証の段落【0034】~【0037】や甲第6号証の段落【0029】~【0031】に記載の化合物など、広い範囲に包含される多数の化合物が該当するところ、本件明細書の実施例では、段落【0228】に記載の化合物B1及びB2のみが用いられている。
そうすると、本件発明1の範囲は、本件発明の効果が確認された実施例の範囲に比して、極めて広すぎる範囲となっており、実施例の範囲を超えた範囲においても、同様に本件発明の効果を奏するとは直ちには認められず、本件発明の効果を奏するように、「(A)硬化性化合物」と「カチオン重合開始剤」の組み合わせを設定することは、当業者にとっても、過度の試行錯誤を要する事項であるといえる。
(2)判断
ア 特許法第36条第4項第1号について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下、この観点に立って検討する。
イ 判断
(ア)本件発明の実施可能要件について
本件発明1は、「式(a1)で表される化合物」を含む「(A)硬化性化合物」と、「式(b1)で表されるアニオンである化合物」である「アニオン部」と「スルホニウムイオン又はヨードニウムイオン」である「カチオン部」からなる「(B)カチオン重合開始剤」を含む「硬化性組成物」に係る発明であり、本件明細書の段落【0017】~【0041】には「(A)硬化性化合物」の具体的な態様が記載され、段落【0043】~【0088】、【0123】には、「式(a1)で表される化合物」以外の「カチオン重合性化合物」の例が具体的に記載されている。また、段落【0090】、【0092】~【0113】には「式(b1)で表されるアニオンである化合物」である「アニオン部」の具体的な態様が記載され、また、段落【0091】、【0116】、【0120】~【0122】、【0124】には「スルホニウムイオン又はヨードニウムイオン」である「カチオン部」の具体的な態様が記載されている。さらに、(本e)の本件明細書の実施例においては、本件発明1の発明特定事項を満たす具体的な「硬化性組成物」が記載されている。
そうすると、本件発明1の「硬化性組成物」自体については、発明の詳細な説明に当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができる程度に明確十分に記載されているといえる。
また、同様に、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~10についても、発明の詳細な説明に当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができる程度に明確十分に記載されているといえる。
(イ)申立人の主張について
申立人は、申立理由として、「本件発明1の範囲は、本件発明の効果が確認された実施例の範囲に比して、極めて広すぎる範囲となっており、実施例の範囲を超えた範囲においても、同様に本件発明の効果を奏するとは直ちには認められ」ない旨を主張しているが、実施可能要件の判断においては本件発明の効果を奏するものであるか否かの判断ではなく、本件発明1の「硬化性組成物」が当業者の過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要がないか否かの判断となる。そして、上記(ア)で検討したとおり、本件発明1の「硬化性組成物」自体については、発明の詳細な説明に当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作ることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
申立理由の趣旨を鑑み、「本件発明の効果を奏する」ことを「本件発明の課題を解決」できることと解して、サポート要件について検討する。
本件発明1の「(A)硬化性化合物」は本件明細書の段落【0017】~【0041】の記載及び本件明細書の段落【0090】~【0124】の記載からみて、本件発明1の「(A)硬化性化合物」は極めて広い範囲に包含される多数の化合物が該当し、本件発明1は、「カチオン重合開始剤」についても広い範囲に包含される多数の化合物が該当するところ、本件明細書の実施例において、本件発明の課題が解決できることを確認しているのは、「(A)硬化性化合物」として段落【0227】に記載の化合物A1のみであり、「カチオン重合開始剤」として段落【0228】に記載の化合物B1及びB2のみが用いられている。
しかしながら、上記「2 申立理由2(サポート要件)について」「(2)判断」「イ 判断」「(イ)判断」でも述べたとおり、本件発明1の芳香環を含む3環以上が縮合した縮合環を主骨格とするカチオン重合性の化合物である「式(a1)」で表される「(A)硬化性化合物」と、「含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩」である「式(b1)」で表されるアニオン部を有する「(B)カチオン重合開始剤」とを組み合わせて用いれば、本件発明の上記課題を解決できることを当業者であれば、推量することができるといえる。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~10についても、同様である。
(3)まとめ
以上のとおり、申立理由3も、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、申立人が主張する異議申立ての理由1~3及び証拠によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700220