特許異議申立
2024-700943
黒色感光性樹脂組成物、パターン化された硬化物の製造方法、パターン化された硬化物、及びブラックマトリクス
- 審判番号
- 2024-700943
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-167931
- 登録番号
- 7464493
- 請求日
- 2024年09月30日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東京応化工業株式会社
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 橿本 英吾
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 本田 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (G03F) / P1651.121-Y (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7464493号発明「黒色感光性樹脂組成物、パターン化された硬化物の製造方法、パターン化された硬化物、及びブラックマトリクス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7464493号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7464493号の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年10月2日に出願され、令和6年4月1日にその特許権の設定登録がされ、同年4月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年9月30日に特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
特許第7464493号の請求項1~10の特許に係る発明(以下、請求項に付された番号に従い「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、遮光剤(D)と、多官能チオール化合物(E)とを含む、黒色感光性樹脂組成物であって
前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)及び前記有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)からなり、
前記有機黒色顔料(D1)が、下記式(d1):
【化1】
[図:0001417678000001.jpg]
(式(d1)中、Xdは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示す。Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。)
で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種であり、
前記黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、前記遮光剤(D)の含有量が、25質量%以上50質量%以下であり、
前記有機黒色顔料(D1)及び前記顔料(D2)の合計に対する、前記有機黒色顔料(D1)の割合が、40質量%以上80質量%以下である、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記顔料(D2)が、カーボンブラック、酸窒化チタン、窒化チタン、青色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、及び緑色顔料から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤(C)が、下記式(c2):
【化2】
[図:0001417678000002.jpg]
(式(c2)中、Rc1は、下記式(c3)、(c4)、又は(c5)で表される基であり、
n1は、0、又は1であり、
Rc2は、一価の有機基であり、
Rc3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。)
【化3】
[図:0001417678000003.jpg]
(式(c3)中、Rc4及びRc5は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
n2は、0以上3以下の整数であり、
n2が2又は3の場合、複数のRc5は同一でも異なっていてもよく、複数のRc5は互いに結合して環を形成してもよい。
*は結合手である。)
【化4】
[図:0001417678000004.jpg]
(式(c4)中、Rc6及びRc7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、
Rc6とRc7とは互いに結合して環を形成してもよく、
Rc7とフルオレン骨格中のベンゼン環とが互いに結合して環を形成してもよく、
Rc8は、ニトロ基、又は1価の有機基、であり、
n3は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
【化5】
[図:0001417678000005.jpg]
(式(c5)中、Rc9は、1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基であり、
Aは、S又はOであり、
n4は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
で表される光重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光重合性モノマー(B)が、下記式(b1):
【化6】
[図:0001417678000006.jpg]
(式(b1)中、Rb1は、水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、Rb2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
で表される多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能チオール化合物(E)が、下記式(e1):
【化7】
[図:0001417678000007.jpg]
(式(e1)中、Re1はアルキル基であり、Re2は3価の鎖状脂肪族炭化水素基であり、Re3はヘテロ原子を含んでもよいn価の脂肪族炭化水素基であり、nは2以上4以下の整数である。)
で表される多官能第二級チオール化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、多官能エポキシ化合物(F)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を、位置選択的に露光する工程と、
露光後の前記塗布膜を、現像する工程と、
現像後の前記塗布膜を、加熱する工程とを含む、パターン化された硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記加熱する工程は、100℃以下の温度で行われる、請求項7に記載のパターン化された硬化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物の硬化物からなる、パターン化された硬化物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物の硬化物からなる、ブラックマトリクス。」
第3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として、以下に示す甲第1号証及び甲第4号証、従たる証拠として、以下に示す甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証を提出し、請求項1~10に係る特許は特許法第29条1項3号又は2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
甲第1号証:特開2019-61223号公報
甲第2号証:国際公開第2017/057143号
甲第3号証:特開2018-189877号公報
甲第4号証:特開2016-108361号公報
甲第5号証:国際公開第2014/208348号
第4 文献の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許に係る出願日前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、甲第1号証には、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
(A)バインダー樹脂と、
(B)光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)着色剤と、
(E)熱硬化性化合物と、を含み、
前記(D)着色剤が、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含み、
前記感光性樹脂組成物について、以下の条件で硬化させて硬化膜を得、当該硬化膜の厚さをT1、当該硬化膜を300秒間プロピレングリコールモノメチエーテルアセテートに浸漬させた後における厚さをT2としたときに、T2/T1が0.80以上である、感光性樹脂組成物。
(条件)
前記感光性樹脂組成物をガラス基板上に厚さ1±0.1μmとなるように塗布し、200mJ/cm2の露光量で露光し、次いで100℃30分の条件でベークし硬化膜とする。」
イ 技術分野
「【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示装置と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法とに関する。」
ウ 発明が解決しようとする課題
「【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、高い遮光性を有する硬化膜を与え、且つ、低温でのベークによって安定的に硬化する感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示装置と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法とを提供することを目的とする。」
エ 発明の効果
「【0014】
本発明によれば、高い遮光性を有する硬化膜を与え、且つ、低温でのベークによって安定的に硬化する感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示装置と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法とを提供することができる。」
オ 発明を実施するための形態
「【0016】
≪第1の感光性樹脂組成物≫
第1の感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂と、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)着色剤と、(E)熱硬化性化合物と、を含む。
(D)着色剤は、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを組み合わせて含む。
・・・
【0020】
以下、第1の感光性樹脂組成物について、必須又は任意の成分について説明する。
・・・
【0021】
<(A)バインダー樹脂>
感光性組成物は、(A)バインダー樹脂を含む。このため、感光性樹脂組成物を塗布する際の製膜性が良好である。また、感光性樹脂組成物を用いて、形状や機械的特性が良好な硬化膜を形成しやすい。(A)バインダー樹脂としては特に限定されず、従来から種々の感光性樹脂組成物に配合されている樹脂から適宜選択できる。
【0022】
感光性樹脂組成物のアルカリ現像液による現像性が良好であることや、感光性樹脂組成物を用いて形状が良好な硬化膜を形成しやすいこと等から、(A)バインダー樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であるのが好ましい。
・・・
【0105】
<(B)光重合性化合物>
感光性樹脂組成物は、(B)光重合性化合物を含む。(B)光重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。かかる光重合性化合物には、単官能化合物と多官能化合物とがある。
・・・
【0110】
<(C)光重合開始剤>
(C)光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
・・・
【0197】
(C)光重合開始剤に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3-メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0198】
<(D)着色剤>
感光性樹脂組成物は、(D)着色剤を含む。(D)着色剤は、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含む。感光性樹脂組成物が、(D)着色剤として、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含むことにより、遮光性に優れる硬化膜の形成と、低温でのベークによる塗布膜の良好な硬化とを両立させやすい。
(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを併用することにより、感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤が利用し得る波長域の光線の透過性を高めることができるためである。
【0199】
((D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料)
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
・・・
【0213】
((D2)有機顔料)
(D2)有機顔料の色相は、(D)着色剤全体としての色相が黒色である限り特に限定されない。(D2)有機顔料としては、黒色有機顔料のみならず、赤色、青色、黄色、緑色等の色相の有彩色の顔料を用いることもでき、黒色有機顔料が好ましい。
【0214】
黒色有機顔料の好適な例としては、(D2a)ペリレン系顔料、及び(D2b)ラクタム系顔料が挙げられる。これらの顔料は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0215】
(D2a)ペリレン系顔料としては、ペリレン骨格を有する化合物からなり、黒色を呈する顔料であれば特に限定されない。
・・・
【0221】
(D2b)ラクタム系顔料としては、例えば、下記式(d-4)で表される化合物が挙げられる。
【化33】
[図:0001417678000008.jpg]
【0222】
式(d-4)中、Xdは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd9は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示し、Rd10は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、Rd11は、各々独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。
式(d-4)で表される化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0227】
感光性樹脂組成物における(D)着色剤の含有量の総量は、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜選択でき、典型的には、感光性樹脂組成物の固形分全体の質量に対して、90質量%以下が好ましく、10質量%以上85質量%以下が好ましく、15質量%以上80質量%以下がより好ましく、20質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。なお、感光性樹脂組成物を用いて十分に遮光性の高い硬化膜を形成できる限りにおいて、感光性樹脂組成物の固形分全体の質量に対する(D)着色剤の含有量の総量の上限値は、50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
【0228】
(D)着色剤の全体質量における、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料の質量と、(D2)有機顔料の質量との総量の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、95質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0229】
(D)着色剤の質量に対する、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料の質量の割合と、(D2)有機顔料の質量の割合とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
(D)着色剤の質量に対する、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料の質量の割合は、30質量%以上65質量%以下が好ましく、35質量%以上60質量%以下がより好ましく、40質量%以上55質量%以下が特に好ましい。
(D)着色剤の質量に対する、(D2)有機顔料の質量の割合は、10質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上70質量%以下がより好ましく、30質量%以上60質量%以下が特に好ましい。
(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを、それぞれ上記の比率で組み合わせて用いることにより、特に、遮光性に優れる硬化膜の形成と、低温でのベークによる塗布膜の良好な硬化とを両立させやすい。
・・・
【0231】
<(E)熱硬化性化合物>
感光性樹脂組成物は、(E)熱硬化性化合物を含む。感光性樹脂組成物が、前述の(B)光重合性化合物、及び(C)光重合開始剤と、所定の条件を満たす(D)着色剤と、(E)熱硬化性化合物とを含むことにより、感光性樹脂組成物の低温での良好な硬化が容易である。
・・・
【0293】
<(F)光吸収剤>
感光性樹脂組成物は、(F)光吸収剤を含有していてもよい。・・・
・・・
【0300】
≪第2の感光性樹脂組成物≫
第2の感光性樹脂組成物は、(D)着色剤全体における(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料の量が30質量%以上65質量%以下であり、(D2)有機顔料の量が10質量%以上70質量%以下であることが必須であることを除いて、第1の感光性樹脂組成物と同様である。」
カ 実施例
「【0320】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0321】
〔実施例1、実施例2、及び比較例1~3〕
実施例、及び比較例において、(A)バインダー樹脂((A)成分)として、アルカリ可溶性のカルド樹脂である樹脂A1を用いた。樹脂A1は、以下の調製例1で得た樹脂である。
・・・
【0324】
実施例、及び比較例において、(B)光重合性化合物((B)成分)として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いた。
【0325】
実施例、及び比較例において、(C)光重合開始剤((C)成分)として、下記式の化合物を用いた。
【化54】
[図:0001417678000009.jpg]
【0326】
実施例及び比較例において、(D)着色剤((D)成分)として、以下のD1~D3を用いた。(D)着色剤における、D1~D3の含有量(質量%)を下表1に記す。下表1においては、顔料分散液に含まれる顔料及び分散剤の固形分の合算値について、その数値を記載している。
D1:カーボンブラック分散液(ウレタン系樹脂分散、体積平均粒子径150nm以下)
D2:ペリレン系黒色顔料分散液(体積平均粒子径150nm以下)
D3:ラクタム系黒色顔料分散液(体積平均分子量150nm以下)
【0327】
実施例及び比較例において、(E)熱硬化性化合物((E)成分)として、下記式の化合物を用いた。
【化55】
[図:0001417678000010.jpg]
【0328】
(A)成分20質量部と、(B)成分3質量部と、(C)成分3質量部と、表1に記載の種類及び量(質量比)の(D)成分((D)成分全体量として70質量部)と、(E)成分4質量部とを、3-メトキシブチルアセテート20質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量%との混合溶媒中に、固形分濃度が20質量%となるように、均一に溶解、分散させて、実施例1、2、及び比較例1、2の感光性樹脂組成物を得た。
・・・
【0331】
これらの評価結果を表1に記す。
【0332】
【表1】
[図:0001417678000011.jpg]
」
(2)甲第1号証に記載された発明
ア 甲1発明
甲第1号証の記載事項アに基づけば、甲第1号証には、請求項1に係る発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 (A)バインダー樹脂と、
(B)光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)着色剤と、
(E)熱硬化性化合物と、を含み、
前記(D)着色剤が、(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含み、
前記感光性樹脂組成物について、以下の条件で硬化させて硬化膜を得、当該硬化膜の厚さをT1、当該硬化膜を300秒間プロピレングリコールモノメチエーテルアセテートに浸漬させた後における厚さをT2としたときに、T2/T1が0.80以上である、感光性樹脂組成物。
(条件)
前記感光性樹脂組成物をガラス基板上に厚さ1±0.1μmとなるように塗布し、200mJ/cm2の露光量で露光し、次いで100℃30分の条件でベークし硬化膜とする。」
イ 甲1実施例発明
また、甲第1号証の記載事項カに基づけば、甲第1号証には、実施例2に係る感光性樹脂組成物に関する発明として、次の発明(以下「甲1実施例発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の成分を、3-メトキシブチルアセテート20質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量%との混合溶媒中に、固形分濃度が20質量%となるように、均一に溶解、分散させて得た、感光性樹脂組成物。
(A)バインダー樹脂((A)成分)として、
アルカリ可溶性のカルド樹脂である樹脂A1 20質量部
(B)光重合性化合物((B)成分)として、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3質量部
(C)光重合開始剤((C)成分)として、
下記式の化合物 3質量部
【化54】
[図:0001417678000012.jpg]
(D)着色剤((D)成分)として、
顔料及び分散剤の固形分の合算値の質量比が45:55であるD1:カーボンブラック分散液、及び、D2:ペリレン系黒色顔料分散液 70質量部
(E)熱硬化性化合物((E)成分)として、
下記式の化合物 4質量部
【化55】
[図:0001417678000013.jpg]
」
2 甲第4号証
(1)甲第4号証の記載事項
本件特許に係る出願日前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、甲第4号証には、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する着色硬化性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001417678000014.jpg]
〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R11は、各々独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示し、R12は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R13は、各々独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。〕
【化2】
[図:0001417678000015.jpg]
〔式(A2)中、R21は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R22は、ハロゲン原子を示し、nは0~4の整数である。〕
【請求項2】
化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.01以上0.5以下である、請求項1に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載の着色硬化性樹脂組成物。」
イ 技術分野
「【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、及びカラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用される着色硬化性樹脂組成物、これを用いて形成されるブラックマトリクスを具備するカラーフィルタ、並びに分散体に関するものである。」
ウ 発明が解決しようとする課題
「【0005】
・・・
本発明は、電気絶縁性、遮光性、及び耐溶剤性に優れたブラックマトリクスを製造するための着色硬化性樹脂組成物、これを用いて形成されるブラックマトリクスを具備するカラーフィルタ、及び分散体の提供を課題とする。」
エ 発明の効果
「【0007】
本発明によれば、電気絶縁性、遮光性、及び耐溶剤性に優れたブラックマトリクスを製造するための着色硬化性樹脂組成物、これを用いて形成されるブラックマトリクスを具備するカラーフィルタ、及び分散体を提供することができる。」
オ 発明を実施するための形態
「【0008】
本発明の着色硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、式(A1)で表される化合物(A1)(以下「化合物(A1)」ともいう)と、式(A2)で表される化合物(A2)(以下「化合物(A2)」ともいう)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する。
本発明によれば、化合物(A1)及び化合物(A2)と、を組み合わせて用いることで、相乗効果を発揮して、電気絶縁性、遮光性、及び耐溶剤性に優れたブラックマトリクスを製造することのできる樹脂組成物が得られる。
【0009】
[黒色色材]
本発明の樹脂組成物は、黒色色材として、電気絶縁性、及び遮光性の観点から、化合物(A1)及び化合物(A2)を含有する。
(化合物(A1))
本発明の樹脂組成物は、電気絶縁性、及び遮光性の観点から、式(A1)で表される化合物(A1)を含有する。
【0010】
【化3】
[図:0001417678000016.jpg]
【0011】
式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R11は、各々独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示し、R12は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R13は、各々独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。
・・・
【0012】
(化合物(A2))
本発明の樹脂組成物は、電気絶縁性、及び遮光性の観点から、式(A2)で表される化合物(A2)を含有する。
【0013】
【化4】
[図:0001417678000017.jpg]
【0014】
式(A2)中、R21は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R22はハロゲン原子を示し、nは0~4の整数である。
・・・
【0015】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、化合物(A1)及び化合物(A2)以外の黒色色材を含んでもよい。他の黒色色材としては、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
本明細書において、化合物(A1)、化合物(A2)及び他の黒色色材を総称して、単に「黒色色材(A)」ともいう。
本発明の樹脂組成物に含まれる黒色色材(A)中、化合物(A1)と化合物(A2)との合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。
・・・
【0023】
[硬化性化合物(D)]
硬化性化合物としては、例えば、多官能重合性化合物が挙げられる。
・・・
【0025】
本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、チオール化合物、フッ素化合物、光重合開始剤、光開始助剤等を含有していてもよい。
これらの中でも、樹脂組成物は、現像性及び塗膜の物性をより高める観点から、好ましくはアルカリ可溶性樹脂を含有する。
【0026】
[チオール化合物]
本発明の樹脂組成物がチオール化合物を含有する場合、前記チオール化合物は、好ましくは多価チオール化合物である。
チオール化合物は、耐溶剤性の観点から、好ましくはメルカプト基を3個以上有する。メルカプト基を3個以上有することで架橋密度が高くなるため、樹脂組成物から得られる硬化膜において、NMP等の溶剤による、膨潤や黒色色材の溶出等をより抑制できると考えられる。
【0027】
チオール化合物が有するメルカプト基の数は、耐溶剤性の観点から、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上であり、また、入手容易性の観点から、好ましくは9個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは7個以下、更により好ましくは6個以下である。
・・・
【0031】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、・・・等が好ましい。市販の光重合開始剤としては、例えば、BASFジャパン社製「IRGACURE」シリーズの「OXE02」、「369」、「907」、「651」、「2959」、「184」、「250」、「754」;「DAROCUR」シリーズの「MBF」、「BP」、「1173」が好ましく挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
(光開始助剤)
前記光重合開始剤に、光開始助剤を組み合わせてもよい。
光開始助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセンが挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂は、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタを製造する際に、未露光部を現像液に溶解させるために用いられる。アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に用いられるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶性を有するもの、すなわち、0.05質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に20℃で1質量%以上溶解するものであればよい。
・・・
【0034】
(各成分量)
樹脂組成物中の化合物(A1)及び化合物(A2)の合計含有量は、遮光性の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、耐溶剤性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0035】
樹脂組成物中の分散剤(B)の含有量は、分散性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、遮光性及び耐溶剤性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
樹脂組成物における化合物(A1)及び化合物(A2)の合計100質量部に対する分散剤(B)の含有量は、分散性の観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更により好ましくは15質量部以上であり、遮光性及び耐溶剤性の観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
【0036】
樹脂組成物中の有機溶媒(C)の含有量は、作業性及び分散性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、生産性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
樹脂組成物中の硬化性化合物(D)の含有量は、耐溶剤性及び良好な膜硬度を得る観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは2.1質量%以上であり、遮光性、現像性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0037】
本発明の樹脂組成物がチオール化合物を含有する場合、樹脂組成物中のチオール化合物の含有量は、耐溶剤性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更により好ましくは0.4質量%以上であり、分散安定性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0038】
本発明の樹脂組成物がフッ素化合物を含有する場合、樹脂組成物中のフッ素化合物の含有量は、絶縁性及び耐溶剤性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更により好ましくは0.35質量%以上であり、塗膜の物性の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0039】
樹脂組成物における硬化性化合物(D)100質量部に対する光重合開始剤の含有量は、良好な膜硬度を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、更により好ましくは70質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
樹脂組成物における硬化性化合物(D)100質量部に対する光開始助剤の含有量は、良好な膜硬度を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
【0040】
樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、良好な現像性と膜硬度を得る観点から、樹脂組成物中の固形分量に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。」
カ 実施例
「【0048】
本実施例において、各種数値の測定及び評価は、以下のとおりの方法で行った。
・・・
【0057】
(8)顔料分散体の平均粒径の測定
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」ともいう)15gを入れた容量20mLのガラス製サンプル瓶(マルエム社製「スクリュー管No.5」に、実施例及び比較例で得られた顔料分散体を0.01g添加し、試験管ミキサー(IKA社製「Minishaker MS1」)を用いて2500rpmで1分間撹拌した。粒径測定装置(堀場製作所社製「SZ-100」)を用い、測定条件として、試料屈折率:1.51と、分散媒屈折率:1.400と、分散媒粘度:1.136mPa・sと、測定温度:25℃とをそれぞれ入力し、測定した。・・・
【0058】
合成例1 化合物A1-1の合成
撹拌装置、温度計、窒素吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5Lの四つ口フラスコに、2,5-ジヒドロキシベンゼン-1,4-二酢酸(和光純薬工業(株)製)115g、イサチン(東京化成工業(株)製)150g、p-トルエンスルホン酸一水和物35g、トルエン3750gの混合液を110℃に加熱し、脱水しながら7時間攪拌し、更に110℃で14時間攪拌した。この混合液を室温まで冷却し、黒色の懸濁液を濾紙No.2(アドヴァンテック東洋(株))で濾過した。この濾過残分をメタノール5Lで洗浄し、60℃/104Paで乾燥し、236gの式(A1-1)で表される化合物A1-1(黒色物質)を得た。
【0059】
この黒色物質をDMFに溶解し、液体クロマトグラフィー質量分析法によるESI/MS測定を行い分子量448.07であることを確認した。
【化6】
[図:0001417678000018.jpg]
【0060】
合成例2〔アルカリ可溶性樹脂(ベンジルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体)の合成〕
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸(以下、「MAA」ともいう)3.6g、ベンジルメタクリレート(以下、「BzMA」ともいう)36.4g、3-メルカプトプロピオン酸0.56g、及びPGMEA 40gを仕込み、攪拌しながら窒素置換を行った。
フラスコ内を攪拌しながら78℃まで昇温し、MAA 14.4g、BzMA 145.6g、3-メルカプトプロピオン酸2.2g、PGMEA 160g、及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V-65」(以下、「V-65」ともいう)) 2.0gを混合して得られた溶液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、V-65 2.0gとPGMEA 10.0gとの混合溶液を加え、78℃で1時間撹拌した。更に、V-65 1.0gとPGMEA 10.0gとの混合溶液を加え、78℃で1時間撹拌した。PGMEA 100gを加え、撹拌しながら冷却し、BzMAとMAAとの共重合体(以下、「共重合体1」ともいう)のPGMEA溶液を得た。固形分は40.0質量%、共重合体1の重量平均分子量は10900であった。
【0061】
(クリアレジスト液の調製)
合成例2で得られた固形分40.0質量%の共重合体1の溶液 21.2g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」ともいう)6.0g、光重合開始剤(BASFジャパン社製「IRGACURE OXE02」) 5.5g、PGMEA 37.3g及びシクロヘキサノン 30.0gを均一に混合し、クリアレジスト液を得た。固形分は20質量%であった。
【0062】
実施例1
(分散体)
合成例1で得た化合物A1-1 25.5g、化合物A2-1 4.5g、分散剤として日本ルーブリゾール社製「ソルスパ-スJ-200」6.0g、有機溶媒としてPGMEA114.0g、及びφ0.3mmのジルコニアビーズ(ニッカトー製「YTZボール」)300gを容量500mLのポリエチレン製容器に入れ、浅田鉄工(株)製「ペイントシェーカー」にて、640rpmで3時間撹拌した。得られた分散液から濾過にてジルコニアビーズを除去し、分散体1を得た。
(着色硬化性樹脂組成物)
分散体1 10.0gと、前記クリアレジスト液8.0gと、PGMEA 2.0gとを容量30mLのガラス製容器に入れ、密栓した。前記ローラー式攪拌機を用い、50rpmで20分間混合し、表2に示す組成の樹脂組成物を得た。
【0063】
実施例2~4,比較例1~3
表1及び2に記載の配合に代えた以外は、実施例1と同様の方法により、分散体及び樹脂組成物を得た。
なお、製造に用いた原料は、下記の通りである。
【0064】
A1-1:化合物A1-1
A2-1:下記化合物A2-1
A2-2:下記化合物A2-2
A2-C1:下記化合物A2-C1
A2-C2:下記化合物A2-C2
B-1:日本ルーブリゾール社製「ソルスパースJ200」
【0065】
【化7】
[図:0001417678000019.jpg]
・・・
【0069】
【表1】
[図:0001417678000020.jpg]
【0070】
【表2】
[図:0001417678000021.jpg]
【0071】
得られた樹脂組成物を用いて、塗膜基板を作成し、各種評価を行なった。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
[図:0001417678000022.jpg]
【0073】
実施例1~4によれば、本発明の樹脂組成物により、電気絶縁性、遮光性、及び耐溶剤性に優れた硬化膜が得られることがわかる。」
(2)甲第4号証に記載された発明
ア 甲4発明
甲第4号証の記載事項アに基づけば、甲第4号証には、請求項1の記載を引用する請求項3に係る発明として、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「 式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有し、 アルカリ可溶性樹脂を更に含む、着色硬化性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001417678000023.jpg]
〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R11は、各々独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示し、R12は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R13は、各々独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。〕
【化2】
[図:0001417678000024.jpg]
〔式(A2)中、R21は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R22は、ハロゲン原子を示し、nは0~4の整数である。〕」
イ 甲4実施例発明
また、甲第4号証の記載事項カに基づけば、甲第4号証には、実施例1に係る着色硬化性樹脂組成物に関する発明として、次の発明(以下「甲4実施例発明」という。)が記載されていると認められる。
「化合物A1-1 25.5g、化合物A2-1 4.5g、分散剤「ソルスパ-スJ-200」6.0g、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 114.0gを撹拌して得られた分散体1 10.0gと、
アルカリ可溶性樹脂である共重合体1の溶液 21.2g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 6.0g、光重合開始剤 5.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 37.3g及びシクロヘキサノン 30.0gを均一に混合して得た、クリアレジスト液 8.0gと、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 2.0gとを混合して得た、以下に示す組成の樹脂組成物。
化合物A1-1 8.5質量%
化合物A2-1 1.5質量%
分散剤 2.0質量%
有機溶媒 80.0質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.4質量%
共重合体1 3.4質量%
光重合開始剤 2.2質量%
[図:0001417678000025.jpg]
[図:0001417678000026.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)甲1発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)アルカリ可溶性樹脂(A)
甲1発明の「(A)バインダー樹脂」と本件特許発明1の「アルカリ可溶性樹脂(A)」とは、「樹脂(A)」である点で共通する。
(イ)重合性モノマー(B)
甲1発明の「(B)光重合性化合物」は、本件特許発明1の「光重合性モノマー(B)」に相当する。
(ウ)光重合開始剤(C)
甲1発明の「(C)光重合開始剤」は、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」に相当する。
(エ)遮光剤(D)
甲1発明の「(D)着色剤」は、「(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含」むものである。そうすると、甲1発明の「(D)着色剤」は、技術的にみて、本件特許発明1の「遮光剤(D)」に相当する。
また、甲1発明の「(D2)有機顔料」と本件特許発明1の「有機黒色顔料(D1)」とは、「有機顔料(D1)」である点で共通する。
さらに、甲1発明の「(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料」は、有機黒色顔料にはあたらない。そうすると、甲1発明の「(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料」は、本件特許発明1の「前記有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」に相当する。
(オ)黒色感光性樹脂組成物
甲1発明の「感光性樹脂組成物」は、前記(エ)に記載したとおり、「(D1)カーボンブラック及び/又は無機黒色顔料と、(D2)有機顔料とを含」むものである。そうすると、甲1発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「黒色感光性樹脂組成物」に相当する。
(カ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「 樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、遮光剤(D)とを含む、黒色感光性樹脂組成物であって
前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)及び前記有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)からなる、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]
樹脂(A)が、本件特許発明1では「アルカリ可溶性」樹脂であるのに対し、甲1発明では「(A)バインダー樹脂」であって、アルカリ可溶性であるとの限定がない点。
[相違点1-2]
本件特許発明1は、「多官能チオール化合物(E)」を含むのに対し、甲1発明は、「多官能チオール化合物(E)」を含んでいない点。
[相違点1-3]
有機顔料(D1)が、本件特許発明1では「黒色」であり、式(d1)(式(d1)は、前記第2に記載したものと同じものであるため、以下摘記を省略する。)で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種であるのに対し、甲1発明では黒色に限定されておらず、式(d1)で表されるラクタム系含量及びペリレン系顔料から選択されるものに限定されていない点。
[相違点1-4]
本件特許発明1では、黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、遮光剤(D)の含有量が、「25質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、感光性樹脂組成物の全固形分における(D)着色剤の含有量が特定されていない点。
[相違点1-5]
本件特許発明1では、有機黒色顔料(D1)及び前記顔料(D2)の合計に対する、有機黒色顔料(D1)の割合が、「40質量%以上80質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、(D)着色剤に対する(D2)有機顔料の割合が特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点1-2]について検討する。
甲第1号証の記載事項オには、「(C)光重合開始剤に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3-メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。」(段落【0197】、下線は合議体が付した。)との記載がある。ここで、光開始助剤として列記された化合物のうち、「ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート」は、チオール基を4つ有するため、多官能チオール化合物に該当する。
上記記載に基づけば、甲第1号証には、「(C)光重合開始剤」を含む甲1発明について、光開始助剤として「ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート」を組み合わせることが示唆されているといえる。しかし、甲第1号証の記載に接した当業者が、甲1発明に「ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート」を組み合わせることによって期待する効果は、光開始助剤としての効果であって、光重合開始剤による反応を補助する効果に留まる。一方、本件特許発明1は、「ベーク温度が低い場合でも高い溶剤耐性を有し且つ直進性に優れたパターン形状を有する遮光性の硬化物を形成することができる」(段落【0016】)という効果を奏するものである。そして、本件特許の明細書に開示された実施例及び比較例を参酌すれば、「多官能チオール化合物(E)」及び「有機黒色顔料(D1)」の一方を欠く場合、耐溶剤性が「×」と評価されるものであるから、単なる光開始助剤としての効果を超える効果を奏することが示されているといえる。そうすると、「多官能チオール化合物(E)」及び「有機黒色顔料(D1)」を含むことによる本件特許発明1の効果は、光開始助剤の効果とは異質なものであり、当業者が予測できる範囲を超えたものである。また、そのような効果を奏することが、出願時の技術水準から、当業者が予測できたものということもできない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と比較した場合に、有利な効果を奏するものであるから、当業者が容易に想到し得たということができない。
ウ まとめ
上記のとおり、[相違点1-2]は、当業者であっても、容易に想到し得たということができないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたということもできない。
(2)甲1実施例発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件特許発明1と甲1実施例発明とを対比する。
(ア)アルカリ可溶性樹脂(A)
甲1実施例発明の「樹脂A1」は、「アルカリ可溶性のカルド樹脂」である。そうすると、甲1実施例発明の「樹脂A1」は、本件特許発明1の「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する。
(イ)重合性モノマー(B)
甲1実施例発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、「光重合性化合物」である。そうすると、甲1実施例発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、本件特許発明1の「光重合性モノマー(B)」に相当する。
(ウ)光重合開始剤(C)
甲1実施例発明の式「【化54】」の化合物は、「光重合開始剤」である。そうすると、甲1実施例発明の式「【化54】」の化合物は、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」に相当する。
(エ)遮光剤(D)
甲1実施例発明の「ペリレン系黒色顔料」は、本件特許発明1の「有機黒色顔料(D1)」に相当し、「式(d1):・・・で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種」であるとする要件を満たしている。
また、甲1実施例発明の「カーボンブラック」は、本件特許発明1の「有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」に相当する。
そうすると、甲1実施例発明の「ペリレン系黒色顔料」及び「カーボンブラック」は、本件特許発明1の「遮光剤(D)」に相当し、「前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)及び前記有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)からなり」とする要件を満たしている。
(オ)黒色感光性樹脂組成物
甲1実施例発明の「感光性樹脂組成物」は、前記(エ)に記載したとおり、「ペリレン系黒色顔料」及び「カーボンブラック」を含むものである。そうすると、甲1実施例発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「黒色感光性樹脂組成物」に相当する。
(カ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1実施例発明とは、
「 アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、遮光剤(D)とを含む、黒色感光性樹脂組成物であって
前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)及び前記有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)からなり、
前記有機黒色顔料(D1)が、下記式(d1):
【化1】
[図:0001417678000027.jpg]
(式(d1)中、Xdは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示す。Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。)
で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種である、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点2-1]
本件特許発明1は、「多官能チオール化合物(E)」を含むのに対し、甲1実施例発明は、「多官能チオール化合物(E)」を含んでいない点。
[相違点2-2]
本件特許発明1では、黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、遮光剤(D)の含有量が、「25質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲1実施例発明では、感光性樹脂組成物の全固形分における、分散液を除いた着色剤の含有量が明らかでない点。
[相違点2-3]
本件特許発明1では、有機黒色顔料(D1)及び前記顔料(D2)の合計に対する、有機黒色顔料(D1)の割合が、「40質量%以上80質量%以下」であるのに対し、甲1実施例発明では、カーボンブラック分散液とペリレン系黒色顔料分散液の、顔料及び分散剤の固形分の合算値の質量比が45:55(カーボンブラック分散液とペリレン系黒色顔料分散液の、顔料及び分散剤の固形分の合計に対するペリレン系黒色顔料分散液の顔料及び分散剤の固形分の割合が55質量%)であるものの、分散剤の固形分を除いた割合が明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点2-1]について検討する。
上記[相違点2-1]は、前記(1)ア(カ)に記載した[相違点1-2]と同じものである。そうすると、前記(1)イに記載した理由により、[相違点2-1]も、当業者が容易に想到し得たということができない。
ウ まとめ
以上のとおり、[相違点2-1]は、当業者であっても、容易に想到し得たということができないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたということもできない。
(3)甲4発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)アルカリ可溶性樹脂(A)
甲4発明の「アルカリ可溶性樹脂」は、本件特許発明1の「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する。
(イ)重合性モノマー(B)
甲4発明の「硬化性化合物(D)」は、「硬化性化合物としては、例えば、多官能重合性化合物が挙げられる。」(段落【0023】)との記載からみて、重合性の化合物であるといえる。そうすると、甲4発明の「硬化性化合物(D)」と本件特許発明1の「光重合性モノマー(B)」とは、「重合性モノマー(B)」である点で共通する。
(ウ)遮光剤(D)
甲4発明の「式(A1)で表される化合物(A1)」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「式(d1)」で表される「ラクタム系顔料」に相当する。また、甲4発明の「式(A2)で表される化合物(A2)」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「ペリレン系顔料」に相当する。そうすると、甲4発明の「式(A1)で表される化合物(A1)」及び「式(A2)で表される化合物(A2)」は、いずれも、本件特許発明1の「遮光剤(D)」である「有機黒色顔料(D1)」に相当し、「式(d1):・・・で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種」であるとする要件を満たしている。
(エ)黒色感光性樹脂組成物
甲4発明の「着色硬化性組成物」は、前記(ウ)に記載したとおり、「遮光剤(D)」である「有機黒色顔料(D1)」を含むものである。そうすると、甲4発明の「着色硬化性組成物」は、本件特許発明1の「黒色感光性樹脂組成物」に相当する。
(オ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲4発明とは、
「 アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、遮光剤(D)とを含む、黒色感光性樹脂組成物であって
前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)であり、
前記有機黒色顔料(D1)が、下記式(d1):
【化1】
[図:0001417678000028.jpg]
(式(d1)中、Xdは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示す。Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。)
で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種である、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3-1]
本件特許発明1は、「光重合開始剤(C)」を含み、重合性モノマー(B)が、「光」重合性であるのに対し、甲4発明は、「光重合開始剤(C)」を含まず、「硬化性化合物(D)」が、光重合性であると限定されていない点。
[相違点3-2]
本件特許発明1は、「多官能チオール化合物(E)」を含むのに対し、甲4発明は、「多官能チオール化合物(E)」を含んでいない点。
[相違点3-3]
遮光剤(D)が、本件特許発明1では、「有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」を含み、有機黒色顔料(D1)及び前記顔料(D2)の合計に対する、有機黒色顔料(D1)の割合が、「40質量%以上80質量%以下」であるのに対し、甲4発明は、「有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」を含んでいない点。
[相違点3-4]
本件特許発明1では、黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、遮光剤(D)の含有量が、「25質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲4発明では、着色硬化性樹脂組成物の全固形分における式(A1)で表される化合物(A1)と式(A2)で表される化合物(A2)の含有量が特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点3-2]について検討する。
甲第4号証の記載事項オには、「本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、チオール化合物、フッ素化合物、光重合開始剤、光開始助剤等を含有していてもよい。」(段落【0025】)、「本発明の樹脂組成物がチオール化合物を含有する場合、前記チオール化合物は、好ましくは多価チオール化合物である。」及び「メルカプト基を3個以上有することで架橋密度が高くなるため、樹脂組成物から得られる硬化膜において、NMP等の溶剤による、膨潤や黒色色材の溶出等をより抑制できると考えられる。」(段落【0026】)との記載がある。ここで、「多価チオール化合物」は、多官能チオール化合物に該当する。
上記記載に基づけば、甲第4号証には、耐溶剤性を高めるため、甲4発明について、多価チオール化合物を含有させることが示唆されているといえる。しかし、本件特許発明1は、「ベーク温度が低い場合でも高い溶剤耐性を有し且つ直進性に優れたパターン形状を有する遮光性の硬化物を形成することができる」(段落【0016】)という効果を奏するものである。そして、本件特許の明細書に開示された実施例及び比較例を参酌すれば、「多官能チオール化合物(E)」を含有していても「有機黒色顔料(D1)」を欠く場合、耐溶剤性が「×」と評価されるものであるから、耐溶剤性について「多官能チオール化合物(E)」を単体で用いた場合の効果を超える効果を奏することが示されているといえる。そうすると、「多官能チオール化合物(E)」及び「有機黒色顔料(D1)」を含むことによる本件特許発明1の効果は、「多価チオール化合物」のみを含有させた場合の効果に比べて有利な効果を奏するものであり、当業者が予測できる範囲を超えたものである。また、そのような効果を奏することが、出願時の技術水準から、当業者が予測できたものということもできない。
したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明と比較した場合に、有利な効果を奏するものであるから、当業者が容易に想到し得たということができない。
ウ まとめ
上記のとおり、[相違点3-2]は、当業者であっても、容易に想到し得たということができないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたということもできない。
(4)甲4実施例発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件特許発明1と甲4実施例発明とを対比する。
(ア)アルカリ可溶性樹脂(A)
甲4実施例発明の「共重合体1」は、「アルカリ可溶性樹脂」である。そうすると、甲4実施例発明の「共重合体1」は、本件特許発明1の「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する。
(イ)重合性モノマー(B)
甲4実施例発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「光重合性モノマー(B)」に相当する。
(ウ)光重合開始剤(C)
甲4実施例発明の「光重合開始剤」は、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」に相当する。
(エ)遮光剤(D)
甲4実施例発明の「化合物A1-1」は、その化学構造からみて、本件特許発明1における「式(d1)」(式(d1)中、Xdは二重結合を示し、Rd1、Rd2、Rd3は水素原子を示す。)で表される「ラクタム系顔料」である。また、甲4実施例発明の「化合物A2-1」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「ペリレン系顔料」に相当する。そうすると、甲4実施例発明の「化合物A1-1」及び「化合物A2-1」は、いずれも、本件特許発明1の「遮光剤(D)」である「有機黒色顔料(D1)」に相当し、「式(d1):・・・で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種」であるとする要件を満たしている。
また、甲4実施例発明の「樹脂組成物」の全固形分における、「化合物A1-1」及び「化合物A2-1」の含有量は、50質量%(=(8.5+1.5)÷(8.5+1.5+2.0+2.4+3.4+2.2)×100)である。そうすると、甲4実施例発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「前記黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、前記遮光剤(D)の含有量が、25質量%以上50質量%以下であり」とする要件を満たしている。
(オ)黒色感光性樹脂組成物
甲4実施例発明の「樹脂組成物」は、前記(ウ)及び前記(エ)に記載したとおり、「光重合開始剤」及び「遮光剤(D)」である「有機黒色顔料(D1)」を含むものである。そうすると、甲4実施例発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「黒色感光性樹脂組成物」に相当する。
(カ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲4実施例発明とは、
「 アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、遮光剤(D)とを含む、黒色感光性樹脂組成物であって
前記遮光剤(D)が、有機黒色顔料(D1)からなり、
前記有機黒色顔料(D1)が、下記式(d1):
【化1】
[図:0001417678000029.jpg]
(式(d1)中、Xdは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示す。Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。)
で表されるラクタム系顔料及びペリレン系顔料から選択される少なくとも一種であり、
前記黒色感光性樹脂組成物の全固形分における、前記遮光剤(D)の含有量が、25質量%以上50質量%以下である、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4-1]
本件特許発明1は、「多官能チオール化合物(E)」を含むのに対し、甲4実施例発明は、「多官能チオール化合物(E)」を含んでいない点。
[相違点4-2]
遮光剤(D)が、本件特許発明1では、「有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」を含み、有機黒色顔料(D1)及び前記顔料(D2)の合計に対する、有機黒色顔料(D1)の割合が、「40質量%以上80質量%以下」であるのに対し、甲4実施例発明は、「有機黒色顔料(D1)以外の顔料(D2)」を含んでいない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点4-1]について検討する。
上記[相違点4-1]は、前記(3)ア(オ)に記載した[相違点3-2]と同じものである。そうすると、前記(3)イに記載した理由により、[相違点4-1]も、当業者が容易に想到し得たということができない。
ウ まとめ
以上のとおり、[相違点4-1]は、当業者であっても、容易に想到し得たということができないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
2 本件特許発明2~10について
本件特許発明2~10は、本件特許発明1の記載を直接的又は間接的に引用する発明であるが、甲1発明、甲1実施例発明、甲4発明及び甲4実施例発明と対比した場合、いずれも、本件特許発明1と対比した場合の相違点と同じ相違点を含むものである。
そして、既に検討したとおり、[相違点1-2]、[相違点2-1]、[相違点3-2]、[相違点4-1]は、当業者が容易に想到し得たということができない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2~10は、甲第1号証又は甲第4号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証の記載又は甲第4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということもできない。甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の記載を参酌したとしても、同様である。
第6 むすび
以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700943