特許異議申立
2023-700665
硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法
- 審判番号
- 2023-700665
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-065624
- 登録番号
- 7201859
- 請求日
- 2023年06月26日
- 審決日
- 2025年08月20日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】加藤 三千代
- 【異議申立人】上田 精一
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 藤井 勲
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.16 -YAA(C08L) / P1651.4 -YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7201859号発明「硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7201859号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22、24-38〕、23について訂正することを認める。
特許第7201859号の請求項1~38に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7201859号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~23に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)9月22日(優先権主張 令和2年9月23日 3件)を国際出願日とする特願2022-508852号の一部を新たな特許出願として令和4年4月12日に出願した特願2022-65624号であって、同年12月26日にその特許権の設定登録(請求項の数23)がされ、令和5年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、同年6月26日に特許異議申立人 加藤 三千代(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~14)がされ、同年7月5日に特許異議申立人 上田 精一(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~23)がされたものである。
特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである(日付は、当審による起案を除き、書類の受付日である。)。
令和5年11月28日付け:取消理由通知
令和6年 1月26日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 2月13日 :上申書(申立人A)
同年 2月15日 :手続補正書(訂正請求書について)
同年 4月 5日付け:訂正拒絶理由通知
同年 5月 1日 :意見書及び手続補正書(訂正請求書について)
同年 5月15日付け:通知書(申立人A及び申立人B宛て)
同年 6月13日 :意見書(申立人A)
同年 6月19日 :意見書(申立人B)
同年10月 9日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年12月13日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
令和7年 1月17日付け:訂正拒絶理由通知
同年 2月17日 :意見書及び手続補正書(訂正請求書について)
同年 3月 5日付け:通知書(申立人A及び申立人B宛て)
同年 4月 1日 :意見書(申立人A)
同年 4月 4日 :意見書(申立人B)
なお、令和6年1月26日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げたものとみなされる。
第2 訂正の適否について
1 令和6年12月13日提出の訂正請求書による訂正の内容
上記訂正請求書による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、」とあるのを、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11、15~22及び39~41も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「重合開始剤」とあるのを、「光重合開始剤」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11、15~22及び39~41も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「硬化性樹脂組成物。」とあるのを、「硬化性樹脂組成物(但し、式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く。)。」に訂正し、以下の化学式及び化学式についての注釈を追加する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11、15~22及び39~41も同様に訂正する。)
(当審注:式IA、IB、IC及びIDの化学式並びに当該化学式についての注釈は省略するが、下記第3の請求項1に示すとおりである。以下同様。)
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、「前記重合開始剤は、光重合開始剤であり、前記光重合開始剤は、」とあるのを、「前記光重合開始剤は、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11、15~22及び39~41も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、「更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)であり、
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、
前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであり、マレイミド基と直接結合し、
更に、光重合開始剤を含有し、
更に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。」に訂正し、以下の化学式及び化学式についての注釈も追加する。(請求項12の記載を引用する請求項13、14及び24~38も同様に訂正する。)
(当審注:一般式(4-1)で表される基、一般式(4-2)で表される基、一般式(4-3)で表される基及び下記一般式(4-4)で表される基の化学式並びに当該化学式についての注釈は省略するが、下記第3の請求項12に示すとおりである。以下同様。)
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項15に、「更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、「更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物。」に訂正する。(請求項15の記載を引用する請求項16~22も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項17に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。」とあるのを、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、15又は16記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。」に訂正する。(請求項17の記載を引用する請求項21及び22も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項23に、「請求項18、19又は20記載の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。」とあるのを、
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、重合開始剤を含有し、更に、気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。」に訂正する。
(9)訂正事項9
請求項24として、「5%重量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項12、13又は14記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項24の記載を引用する請求項25~38も同様に訂正する。)
(10)訂正事項10
請求項25として、「前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項12、13、14又は24記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項25の記載を引用する請求項26~38も同様に訂正する。)
(11)訂正事項11
請求項26として、「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項12、13、14、24又は25記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項26の記載を引用する請求項27~38も同様に訂正する。)
(12)訂正事項12
請求項27として、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項12、13、14、24、25又は26記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項27の記載を引用する請求項28~38も同様に訂正する。)
(13)訂正事項13
請求項28として、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26又は27記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項28の記載を引用する請求項29~38も同様に訂正する。)
(14)訂正事項14
請求項29として、「前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27又は28記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項29の記載を引用する請求項30~38も同様に訂正する。)
(15)訂正事項15
請求項30として、「更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27、28又は29記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項30の記載を引用する請求項31~38も同様に訂正する。)
(16)訂正事項16
請求項31として、「更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27、28、29又は30記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項31の記載を引用する請求項32~38も同様に訂正する。)
(17)訂正事項17
請求項32として、「前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項31記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項32の記載を引用する請求項33~38も同様に訂正する。)
(18)訂正事項18
請求項33として、「請求項12、13、14、24、25、26、27、28、29、30、31又は32記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。」を追加する。(請求項33の記載を引用する請求項37~38も同様に訂正する。)
(19)訂正事項19
請求項34として、「請求項31又は32記載の硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特徴とする仮固定材。」を追加する。(請求項34の記載を引用する請求項35~38も同様に訂正する。)
(20)訂正事項20
請求項35として、「前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項34記載の仮固定材。」を追加する。(請求項35の記載を引用する請求項36~38も同様に訂正する。)
(21)訂正事項21
請求項36として、「更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項34又は35記載の仮固定材。」を追加する。(請求項36の記載を引用する請求項37~38も同様に訂正する。)
(22)訂正事項22
請求項37として、「硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項33、34、35又は36記載の仮固定材。」を追加する。(請求項37の記載を引用する請求項38も同様に訂正する。)
(23)訂正事項23
請求項38として、「請求項33、34、35、36又は37記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。」を追加する。
(24)訂正事項24
請求項39として、「更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、15又は16記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項39の記載を引用する請求項40~41も同様に訂正する。)
(25)訂正事項25
請求項40として、「前記無機充填剤の平均粒子径が5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項39記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。(請求項40の記載を引用する請求項41も同様に訂正する。)
(26)訂正事項26
請求項41として、「前記無機充填剤の含有量が、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項39又は40記載の硬化性樹脂組成物。」を追加する。
2 令和7年1月17日付けの訂正拒絶理由通知について
令和7年1月17日付けの訂正拒絶理由通知の内容は、概略以下のとおりである。
訂正事項24、25及び26は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~4号のいずれをも目的とするものではないから、令和6年12月13日提出の訂正請求書による訂正の請求は認められない。
3 令和7年2月17日提出の手続補正書による訂正請求書の補正の適否について
(1)補正の内容
令和7年2月17日提出の手続補正書による補正は、以下の補正事項である。(下線は補正箇所を示す。)
ア 補正事項1
訂正請求書の「6 請求の趣旨」について、1頁下から13行~下から12行に、
「特許第7201859号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~41について訂正することを求める。」とあるのを、
「特許第7201859号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~38について訂正することを求める。」に補正する。
イ 補正事項2
訂正請求書の「7 請求の理由」について、2頁7~8行、11~12行及び17~18行に、それぞれ、「請求項2~11、15~22及び39~41」とあるのを、「請求項2~11及び15~22」に補正する。
ウ 補正事項3
訂正請求書の「7 請求の理由」について、4頁4行に、「請求項11、15~22及び39~41」とあるのを、「請求項11及び15~22」に補正する。
エ 補正事項4
訂正請求書の「7 請求の理由」について、9頁1~14行及び17頁下から5行~18頁下から9行の記載(訂正事項24~26に係る記載)を削除する。
オ 補正事項5
訂正請求書の「7 請求の理由」について、9頁21行に、「請求項1~41」とあるのを、「請求項1~38」に補正する。
カ 補正事項6
訂正請求書に添付した「訂正特許請求の範囲」について、請求項39~41を削除し、本手続補正書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり補正する。
(2)要旨変更の有無について
補正事項1~6は、訂正事項24~26を削除し、当該削除に伴い「6 請求の趣旨」及び「7 請求の理由」を補正するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
(3)まとめ
したがって、補正事項1~6はいずれも訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するので、令和7年2月17日提出の手続補正書による訂正請求書の補正を認める。
4 令和7年2月17日提出の手続補正書により補正された訂正請求書の訂正の内容
令和7年2月17日提出の手続補正書により補正された訂正請求書の訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1~3
上記1(1)~(3)のとおり訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~11及び15~22も同様に訂正する。)
(2)訂正事項4
上記1(4)のとおり訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11及び15~22も同様に訂正する。)
(3)訂正事項5~23
上記1(5)~(23)のとおりである。
(4)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~38について、請求項2~38は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1~23に対応する訂正後の請求項1~38は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(5)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項23について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
5 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」とが別々の構造であるか否か明瞭でなかったところ、訂正前の請求項1の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」について、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と訂正することにより、「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」とが別々の構造であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)【0041】の「上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)であることが好ましい」の記載から、「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とマレイミド基を有する反応性化合物(1)とは別々の構造であること」が記載されていることは明らかであるから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「重合開始剤」を「光重合開始剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、訂正前の請求項10の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた「硬化性樹脂組成物」から、「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物」を含まないものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る発明において、該発明に包含される一部の発明特定事項を除外したものであるから、いわゆる除くクレームとする訂正であって、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正後の請求項10は請求項1を引用するところ、訂正事項2により請求項1の重合開始剤は「光重合開始剤」に訂正されたことから、訂正事項2と整合するように、請求項10の記載を請求項1の記載と整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項12が請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11を引用するものであったのを、訂正後の請求項12について、請求項1を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消し独立形式へ改めるとともに、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」を特定の「ビスマレイミド化合物(1-I)」に限定し、「重合開始剤」を「光重合開始剤」に限定し、「無機充填剤」を特定のものに限定し、さらに、訂正事項1と同様に請求項1の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」とが別々の構造であることを明確にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項5は、本件明細書【0011】~【0015】、【0060】及び【0067】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6及び7について
訂正事項6は、訂正前の請求項15について引用請求項を限定するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項17について引用請求項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項23が請求項18、19又は20を引用するものであったのを、訂正後の請求項23について、訂正前の請求項1を引用する請求項15を引用する請求項18を引用するものとした上で、請求項間の引用関係を解消し独立形式へ改めるものであり、さらに、訂正事項1と同様に請求項1の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」とが別々の構造であることを明確にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項8は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項9~15について
訂正事項9~15は、訂正前の請求項12が請求項2、3、7、8、9、10又は11を引用するものであったのを、それぞれの引用請求項ごとに、新たな請求項24~30として、訂正後の請求項12を引用する形で記載したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9~15は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項16~23について
訂正事項16~23は、訂正前の請求項12が引用する請求項15~22について、それぞれの引用請求項ごとに、新たな請求項31~38として、訂正後の請求項12を引用する形で記載したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項16~23は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
6 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~23は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件の請求項1~38に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明38」といい、これらを併せて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~38に記載された事項によって特定される以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、光重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物(但し、式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く。)。
【化8】
[図:0001428977000001.jpg]
[図:0001428977000002.jpg]
式中、Rは、独立して、置換または非置換の、脂肪族、脂環式、アルケニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、芳香族、ヘテロ芳香族、またはシロキサン部位であり、R’はアルコール官能化ジアミンであり;各Qは、独立して、置換または非置換の、脂肪族、脂環式、アルケニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、芳香族、ヘテロ芳香族、またはシロキサン部位であり;各R’’はHまたはメチルであり、zは独立して置換または非置換の、脂肪族または芳香族部位であり、nおよびmは10から約100の値を有する整数であり、ただし硬化性ポリイミドの平均分子量は20,000ダルトンより大きい。
【請求項2】
5%重量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001428977000003.jpg]
一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項6】
前記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX1及びX2で表される化合物(1-ii)であることを特徴とする請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
[図:0001428977000004.jpg]
一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つは、マレイミド基含有基を表す。
【請求項7】
イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)であり、
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、
前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであり、マレイミド基と直接結合し、
更に、光重合開始剤を含有し、
更に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001428977000005.jpg]
一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項13】
前記無機充填剤の平均粒子径が5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項12記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記無機充填剤の含有量が、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項12又は13記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項15記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、15又は16記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。
【請求項18】
請求項15又は16記載の硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特徴とする仮固定材。
【請求項19】
前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項18記載の仮固定材。
【請求項20】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項18又は19記載の仮固定材。
【請求項21】
硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項17、18、19又は20記載の仮固定材。
【請求項22】
請求項17、18、19、20又は21記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項23】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、重合開始剤を含有し、更に、気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項24】
5%重量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項12、13又は14記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項25】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項12、13、14又は24記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項26】
イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項12、13、14、24又は25記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項27】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項12、13、14、24、25又は26記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項28】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26又は27記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項29】
前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27又は28記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項30】
更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27、28又は29記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項31】
更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項12、13、14、24、25、26、27、28、29又は30記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項32】
前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項31記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項33】
請求項12、13、14、24、25、26、27、28、29、30、31又は32記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。
【請求項34】
請求項31又は32記載の硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特徴とする仮固定材。
【請求項35】
前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項34記載の仮固定材。
【請求項36】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項34又は35記載の仮固定材。
【請求項37】
硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項33、34、35又は36記載の仮固定材。
【請求項38】
請求項33、34、35、36又は37記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載された証拠方法、申立理由の概要及び取消理由(決定の予告)の概要
1 申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した証拠方法及び特許異議申立ての理由の概要
申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「申立書A」という。)に記載した証拠方法及び特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立人Aが提出した証拠方法
・甲第1号証:特表2020-525575号公報
・甲第2号証:特開2005-82628号公報
・甲第3号証:特開2016-113498号公報
・甲第4号証:特開2020-132881号公報
・甲第5号証:特開2015-193725号公報
・甲第6号証:国際公開第2019/188185号
・甲第7号証:特開2017-173479号公報
・甲第8号証:特開2017-105749号公報
・甲第9号証:国際公開第2018/155029号
以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を、「甲A1」~「甲A9」という。
(2)申立理由A1(甲A1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲A1に記載された発明及び甲A2~甲A9に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由A2(サポート要件)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、以下の理由により特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・本件特許の請求項1~10は、本件発明1~10についてシリコーン化合物又はフッ素化合物、無機充填剤、及び、気体発生剤のうち少なくとも1種を含有する点を特定するものでないので、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではない。
2 申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した証拠方法及び特許異議申立ての理由の概要
申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「申立書B」という。)に記載した証拠方法及び特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立人Bが提出した証拠方法
ア 申立書Bに添付された証拠方法
・甲第1号証:特表2020-525575号公報
・甲第2号証:特表2018-531317号公報
・甲第3号証:国際公開第2019/188185号
・甲第4号証:国際公開第2019/188189号
・甲第5号証:国際公開第2020/12978号
・甲第6号証:国際公開第2019/189467号
・甲第7号証:特開平9-12712号公報
・甲第8号証:国際公開第2020/137980号
・甲第9号証:PCT/JP2020/009894(国際公開第2020/189354号)
以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を、「甲B1」~「甲B9」という。
なお、甲B1は甲A1と同一の文献であり、甲B3は甲A6と同一の文献である。
イ 令和6年6月19日受付の意見書(申立人)に添付された証拠方法
・参考資料1:<総説>自己剥離テープ「耐熱SELFA」、利根川亨ら、日本接着学会誌Vol.51、No.8(2015)、pp.15-18、2015年発行:インターネット
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/51/8/51_8-3/_pdf/-char/ja
(検索日及び出力日2024年3月19日)
・参考資料2:日本化学会近畿支部「平成27年度 研究最前線講演会要旨集」、「高接着易剥離テープの開発」、畠井宗宏、平成27年5月11日開催:インターネット
https://kinki.chemistry.or.jp/csjevent/saizen2015-abstract.pdf
(検索日及び出力日2024年3月19日)
(2)申立理由B1(甲B1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~23に係る発明は、甲B1に記載された発明及び甲B2~甲B8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~23に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由B2(甲B9に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本語でされた国際特許出願であって、本件特許の優先日後に国際公開がされた甲B9(PCT/JP2020/009894、国際公開第2020/189354号)の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記国際出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が上記国際出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13)ものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由B3(サポート要件)
本件特許の請求項1~23に係る特許は、以下の理由により特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・本件明細書の実施例を含めた全体的な開示に接する当業者は、たとえ出願時の技術常識を参照したとしても、上記式(A)で表される特定の化合物や上記式(B)で表される特定の化合物以外のいずれのマレイミド基を有する反応性化合物(1)を用いた場合でさえも、または上記式(C)で表される特定の化合物以外のいずれのイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を用いた場合でさえも、「被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供すること」という課題を解決可能であるとは予測することが到底できない。
(5)申立理由B4(実施可能要件)
本件特許の請求項1~23に係る特許は、以下の理由により特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・当業者は、たとえ出願時の技術常識を参照したとしても、上記式(A)で表される特定の化合物や上記式(B)で表される特定の化合物以外のいかなるマレイミド基を有する反応性化合物(1)を用いた場合に、または上記式(C)で表される特定の化合物以外のいかなるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を用いた場合に、「被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物」を製造することができるのか、過剰な実験を繰り返すことなしには、本件明細書の記載から理解することができない。
3 当審において職権により引用する証拠方法
・参考文献1:特開2020-84109号公報
・参考文献2:特開2003-231872号公報
以下、「参考文献1」を、「参考1」という。
4 取消理由(決定の予告)の概要
令和6年10月9日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要はおおむね次のとおりである。
取消理由1(甲A1を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項12~22及び24~33に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項12~22及び24~33に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2(同日出願)
本件特許の請求項30~33に係る発明は、特願2022-508852号(特許第7194313号)に係る発明と同一であり、さらに協議をすることができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許の請求項30~33に係る発明についての特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知(決定の予告)の取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1~38に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1並びに申立理由A1及び申立理由B1(甲A1を主引例とする新規性・進歩性)について
上記第4の4の取消理由1並びに上記第4の1の申立理由A1及び上記第4の2の申立理由B1は、いずれも甲A1を主引例とする新規性・進歩性についてのものであるので、まとめて検討する。
(1)甲A1に記載された発明
甲A1には、「カリフォルニア州サンディエゴのDesigner Molecules、Inc.から市販されている。化合物の例には、以下の商品名が含まれる:BMI-689;・・・;BMI-1500;・・・;BMI-2500・・・。」(【0230】)と記載されており、実施例9において、ビニルペンダントポリイミド1-I(【0323】)が記載されており、実施例15において、表1の上から10行目のサンプルとして、1-Iを25重量%及び共反応物であるBMI-1500を75重量%からなる樹脂と2重量%のジクミルパーオキサイドを加えて混合して得られる熱硬化性配合物(【0351】~【0352】)が記載されている。
したがって、甲A1には、実施例15の表1の上から10行目の熱硬化性配合物に着目すると、以下の発明が記載されている。
「ビニルペンダントポリイミド1-Iを25重量%及び共反応物であるBMI-1500(Designer Molecules、Inc.製)を75重量%からなる樹脂と2重量%のジクミルパーオキサイドを加えて混合して得られる、熱硬化性配合物。
ここで、ビニルペンダントポリイミド1-Iは以下の構造を示す。
[図:0001428977000006.jpg]
」(以下、「甲A1発明1」という。)
また、甲A1には、実施例1において、ビニルペンダントポリイミド1-A(【0279】)が記載されており、実施例16において、UV硬化性配合物1-A(【0354】)が記載されており、【0360】には、UV硬化性配合物1-Aの成分である4-METAが2-(メタクリロイルオキシ)エチル1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレートであることが記載されている。
したがって、甲A1には、実施例16のUV硬化性配合物に着目すると、以下の発明が記載されている。
「ビニルペンダントポリイミド1-Aを56重量%及びBMI-2500(Designer Molecules、Inc.)を19重量%、SR454(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)を19重量%、4-META(2-(メタクリロイルオキシ)エチル1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)を2重量%、Irgacure(登録商標)819を2重量%、及びIrgacure(登録商標)784を2重量%からなる成分を、混合しながら20gのアニソールに溶解した、UV硬化性配合物。
ここで、ビニルペンダントポリイミド1-Aは以下の構造を示す。
[図:0001428977000007.jpg]
」(以下、「甲A1発明2」という。)
さらに、甲A1には、請求項15には、「接着剤配合物」が記載され、請求項16には「除去可能である、請求項15に記載の接着剤」が記載され、請求項17には「請求項15または請求項16に記載の接着剤で一方の表面の少なくとも一部がコーティングされた物品」が記載され、請求項34において「ウェーハをバックグラインドする方法」が記載されているから、甲A1発明1又は2について請求項34の記載に着目すると、以下の発明が記載されている。
「a)物品の一方の表面の少なくとも一部にコーティングされた、甲A1発明1又は2の除去可能である接着剤をウェーハの上に塗布するステップ;
b)ウェーハをサポートに接着するステップ;
c)ウェーハを研削と研磨するステップ;
d)ウェーハをサポートから取り外すステップ;および
e)ウェーハから接着剤を除去するステップ、
を含む、ウェーハをバックグラインドする方法。」(以下、「甲A1発明3」という。)
(2)本件発明1について
ア 甲A1発明1との対比・判断
本件発明1と甲A1発明1とを対比する。
(ア)甲A1発明1の「BMI-1500(Designer Molecules、Inc.から市販されている)」は、甲B2の【0252】の【化31】、甲B3の[0115]の式(1)及び[0163]、並びに甲B4の[0060]の式(9)及び[0150]に記載のBMI-1500の化学構造からみて、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」に相当する。
(イ)甲A1発明1の「ビニルペンダントポリイミド1-I」は、化学構造からみて、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
(ウ)甲A1発明1の「ジクミルパーオキサイド」は、甲A1の【0170】に記載の「フリーラジカル開始剤」に相当することは明らかであるから、本件発明1の「光重合開始剤」と、「重合開始剤」である限りにおいて一致する。
(エ)甲A1発明1の「熱硬化性配合物」は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点A1-1
重合開始剤に関して、本件発明1は、「光重合開始剤」であるのに対し、甲A1発明1は光重合開始剤ではない点
・相違点A1-2
硬化性樹脂組成物が、本件発明1は「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く」のに対し、甲A1発明1は式IAの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物である点
事案に鑑み、相違点A1-2について検討する。
甲A1発明1は、「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物」に該当し、本件発明1から除かれているものであるから、相違点A1-2は実質的な相違点である。
そして、甲A1は、「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミド」を用いることを必須とするものであり(甲A1の請求項1)、甲A1の記載を考慮しても、甲A1発明1の「ビニルペンダントポリイミド1-I」を、「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミド」以外の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂」に改変する動機付けがあるとはいえないから、甲A1発明1において、「式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではないし、甲A2~甲A9及び甲B2~甲B8の記載を考慮しても同様である。
したがって、相違点A1-2に係る発明特定事項は、甲A1発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 甲A1発明2との対比・判断
本件発明1と甲A1発明2とを対比する。
(ア)甲A1発明2の「BMI-2500(Designer Molecules、Inc.)」は、参考1の【0081】に記載されているBMI-2500の下記化学構造からみて、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」に相当する。
[図:0001428977000008.jpg]
(イ)甲A1発明2の「ビニルペンダントポリイミド1-A」は、化学構造からみて、本件発明1の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
(ウ)甲A1発明2の「Irgacure(登録商標)819」は、甲A1の【0231】に記載の「光開始剤」に相当することは明らかであるから、本件発明1の「光重合開始剤」に相当する。
(エ)甲A1発明2の「UV硬化性配合物」は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は上記アの相違点A1-2と同様の点で相違し、上記相違点A1-2は上記アと同様に判断される。
したがって、相違点A1-2に係る発明特定事項は、甲A1発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明1についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、相違点A1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1に記載された発明ではないし、甲A1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~11、15~22について
本件発明2~11、15~22は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたと同様の理由により、本件発明2~11、15~22は、甲A1に記載された発明ではないし、甲A1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明12について
ア 甲A1発明1との対比・判断
本件発明12と甲A1発明1とを対比する。
(ア)甲A1発明1の「BMI-1500(Designer Molecules、Inc.から市販されている)」は、上記(2)ア(ア)で示した化学構造からみて、本件発明12の「ビスマレイミド化合物(1-I)」である「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」に相当する。
(イ)甲A1発明1の「ビニルペンダントポリイミド1-I」は、上記(2)ア(イ)で検討したとおり、本件発明12の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
(ウ)甲A1発明1の「ジクミルパーオキサイド」は、本件発明12の「光重合開始剤」と、「重合開始剤」である限りにおいて一致する。
(エ)甲A1発明1の「熱硬化性配合物」は、本件発明12の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)であり、
更に、重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点A1-3
ビスマレイミド化合物に関して、本件発明12は、「2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、
前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであり、マレイミド基と直接結合」するのに対し、甲A1発明1はそのような特定はない点
・相違点A1-4
重合開始剤に関して、本件発明12は、「光重合開始剤」であるのに対し、甲A1発明1は光重合開始剤ではない点
・相違点A1-5
本件発明12は、「更に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤を含む」のに対し、甲A1発明1はそのような特定がない点
事案に鑑み、相違点A1-5について検討する。
甲A1発明1は、無機充填剤を含有していないから、相違点A1-5は実質的な相違点である。
甲A1には、「本発明の実施における使用が考えられる充填剤には、グラファイト過フッ素化炭化水素(Teflon(登録商標))(当審注:「グラファイト過フッ素化炭化水素」は、「グラファイト;過フッ素化炭化水素」の誤記と解される。);窒化ホウ素;カーボンナノチューブ;シリカナノ粒子;多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS(登録商標))ナノ粒子などの材料が含まれるが、これらに限定されない。使用が想定される充填剤は、組成物の誘電特性に影響を与え、TgおよびCTE、ならびに組成物の可燃性評価に影響を与える。」(【0236】)と記載されており、充填剤として種々のものが列記されている中の1つとして「シリカナノ粒子」が記載されているにとどまり、物質も物性も共通性のない例示の中から充填剤としてシリカナノ粒子を選択する積極的な動機付けはない。
そうすると、甲A1には、甲A1発明1において、「ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤」を配合する動機付けとなる記載はない。
また、甲B8には、「260℃に達する高温処理を伴う工程に用いた場合であっても被着体を保護し、かつ、糊残りなく剥離することができる粘着テープを提供することを目的とする。」([0006])と記載され、「上記紫外線硬化型粘着剤層は、フィラーを含有することが好ましい。上記紫外線硬化型粘着剤層がフィラーを含有することで弾性率が向上することから粘着テープの耐熱性を向上させることができる。上記フィラーの材料としては 例えば、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、カルシウム、ホウ素、マグネシウム、ジルコニア等が挙げられる。」([0034])と記載され、「上記260℃以上の高温で処理する熱処理工程の温度上限は特に限定されず、例えば400℃、好ましくは300℃である。」([0053])と記載され、「(耐熱性の評価)・・・得られたシリコンウエハ/粘着テープ/ガラスウエハの積層体を280℃に設定されたホットプレート(NINOSND-3H、AZONE社製)の上にシリコンウエハ側を下にして載せ、粘着テープの剥離が発生するまでの時間を測定した。」([0072])と記載されており、紫外線硬化型粘着剤層がフィラーを含有することで弾性率が向上することから粘着テープの耐熱性を向上させること、及び、当該耐熱性は280℃の高温処理における粘着テープの剥離が発生するまでの時間で評価すること、が記載されている。
しかしながら、甲B8には、紫外線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤が[0017]~[0024]に記載されているが、マレイミド基を有する反応性化合物を用いることについての記載はないことから、マレイミド基を有する反応性化合物を含む硬化性樹脂組成物における「ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤」を配合する動機付けとなる記載はない。
そうすると、甲B8にも、甲A1発明1において、「ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤」を配合する動機付けとなる記載はない。
そして、本件明細書の【0066】には、「上記無機充填剤を含むことにより、硬化性樹脂組成物は、高温における弾性率の低下が抑えられることから、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても高温加工処理中の剥がれをより抑えることができる。」ことが記載されているところ、本件明細書には、無機充填剤(シリカ粒子、トクヤマ社製、MT-10、平均粒子径15nm)を用いた実施例12~15及び17の硬化性樹脂組成物並びに無機充填剤(シリカ粒子、龍森社製、5x、平均粒子径1μm)を用いた実施例16の硬化性樹脂組成物の「硬化後かつ300℃20分加熱後の剥がれ」の評価が「剥がれなし」であるのに対し、上記無機充填剤を用いない実施例2~4の硬化性樹脂組成物の上記評価が「剥がれあり」であることが記載されている(【0114】の【表2】)。
そうすると、本件発明12は、上記相違点A1-5に係る発明特定事項を備えることにより「300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても高温加工処理中の剥がれをより抑えることができる」(【0066】)という当業者が予測し得ない効果を奏する。
したがって、相違点A1-5に係る発明特定事項は、甲A1発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 甲A1発明2との対比・判断
本件発明12と甲A1発明2とを対比する。
(ア)甲A1発明2の「BMI-2500(Designer Molecules、Inc.)」は、上記(2)イ(ア)で示した化学構造からみて、本件発明12の「ビスマレイミド化合物(1-I)」である「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」に相当する。
(イ)甲A1発明2の「ビニルペンダントポリイミド1-A」は、化学構造からみて、本件発明12の「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
(ウ)甲A1発明2の「Irgacure(登録商標)819」は、本件発明12の「光重合開始剤」に相当する。
(エ)甲A1発明2の「UV硬化性配合物」は、本件発明12の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)であり、
更に、光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は上記アの相違点A1-3及び相違点A1-5と同様の点で相違し、上記相違点A1-5は上記アと同様に判断される。
したがって、相違点A1-5に係る発明特定事項は、甲A1発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明12についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、相違点A1-3及び相違点A1-4について検討するまでもなく、本件発明12は、甲A1に記載された発明ではないし、甲A1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明13、14及び24~38について
本件発明13、14及び24~38は、請求項12を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(4)で本件発明12について述べたと同様の理由により、本件発明13、14及び24~38は、甲A1に記載された発明ではないし、甲A1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)本件発明23について
ア 対比・判断
本件発明23と甲A1発明3とを対比すると、上記(2)ア(ア)及び(イ)並びにイ(ア)及び(イ)と同様の相当関係が成り立つ。
甲A1発明3の「ウェーハ」は、本件発明23の「電子部品」に相当する。
甲A1発明3の「サポート」は、本件発明23の「支持体」に相当する。
甲A1発明3の「ウェーハをバックグラインドする方法」は、本件発明23の「電子部品の製造方法」に相当する。
甲A1発明3の「甲A1発明1又は2の除去可能である接着剤」は、本件発明23の「気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材」と、「仮固定材」である限りにおいて一致する。
甲A1発明3の「ウェーハをサポートに接着するステップ」は、甲A1には、「接着剤でコーティングされたウェーハ10aを反転させてウェーハの裏側を露出させ、接着剤をしばしばガラスである支持体30に接合する(ステップC)。」(【0192】)と記載されており、接着剤をサポートと接着させていることから、本件発明23の「前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程」と、「仮固定材の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程」である限りにおいて一致する。
甲A1発明3の「甲A1発明1又は2の除去可能である接着剤をウェーハの上に塗布するステップ」は、本件発明23の「前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程」と、「仮固定材の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程」である限りにおいて一致する。
甲A1発明3の「ウェーハを研削と研磨するステップ」は、甲A1には「研削および個片化(singulation)プロセスが典型的に250℃を超える温度を作り出す」(【0209】)と記載されていることから、本件発明23の「前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程」に相当する。
甲A1発明3の「ウェーハをサポートから取り外すステップ」は、ウェーハに塗布された接着剤を介してサポートから取り外すことは明らかであるから、本件発明23の「前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物である仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する、電子部品の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点A1-6
本件発明23は、「更に、気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と」を有するのに対し、甲A1発明3はそのような特定がない点
・相違点A1-7
本件発明23は、「前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程」を有するのに対し、甲A1発明3はそのような特定がない点
・相違点A1-8
本件発明23は、「前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程」を有するのに対し、甲A1発明3はそのような特定がない点
上記相違点A1-6について検討する。
甲A1には、ウェーハをバックグラインドする方法しか記載されておらず、他の証拠等の記載を考慮しても、甲A1発明3の「ウェーハをバックグラインドする方法」を、「気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材を用い」かつ「前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程」に改変する動機付けがあるとはいえないから、甲A1発明3において、相違点A1-6に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 申立人Bの主張について
申立人Bは申立書Bにおいて、甲8a発明を認定し、甲A1及び甲B8に基づいて進歩性を有しないと主張している(245~252頁)。
しかしながら、上記(5)で述べたとおり、甲B8には、紫外線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤が[0017]~[0024]に記載されているが、硬化性ポリイミドを用いることについての記載はないことから、甲8a発明を認定したとしても、硬化性ポリイミドに関する甲A1の記載事項を適用する動機付けはない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 本件発明23についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、相違点A1-7及びA1-8について検討するまでもなく、本件発明23は、甲A1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)甲A1の実施例15、17及び19に基づく理由
甲A1の実施例15の表1の上から1~3及び11~14行目の熱硬化性配合物、並びに実施例17及び19のUV硬化性組成物に基づいて引用発明を認定した場合も、上記(2)~(6)と同様に判断される。
(8)取消理由1並びに申立理由A1及び申立理由B1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1並びに申立理由A1及び申立理由B1はその理由がない。
2 取消理由2(同日出願)について
(1)同日出願発明
同日出願(特願2022-508852号(特許第7194313号))に係る特許は、令和6年10月7日提出の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~46に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、そのうち請求項9及び30~45に記載された事項は以下のとおりである。
「【請求項9】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含み、
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)であり、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であり、
更に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項30】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項9記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項31】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)であることを特徴とする請求項9又は30記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項32】
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項31記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001428977000009.jpg]
一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項33】
前記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX1及びX2で表される化合物(1-ii)であることを特徴とする請求項31記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
[図:0001428977000010.jpg]
一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q2は、置換又は非置換の香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つは、マレイミド基含有基を表す。
【請求項34】
前記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)は、下記一般式(1d)で表される構成単位、及び、下記一般式(1e)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0)、両末端がそれぞれX4及びX5で表される樹脂(2-i)であることを特徴とする請求項9、30、31、32又は33記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
[図:0001428977000011.jpg]
一般式(1d)~(1e)中、P4及びP5は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q3は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q4は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。X4及びX5は、マレイミド基を含有しない基を表す。
【請求項35】
イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項9、30、31、32、33又は34記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項36】
更に、重合開始剤を含有することを特徴とする請求項9、30、31、32、33、34又は35記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項37】
前記重合開始剤は、光重合開始剤であり、前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項28又は36記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項38】
更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1、2、3、6、9、28、30、31、32、33、34、35、36又は37記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項39】
前記無機充填剤の平均粒子径が5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項9、30、31、32、33、34、35又は36記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項40】
前記無機充填剤の含有量が、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項9、30、31、32、33、34、35、36又は39記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項41】
更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、6、9、28、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項42】
請求項41記載の硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特徴とする仮固定材。
【請求項43】
前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項42記載の仮固定材。
【請求項44】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項42又は43記載の仮固定材。
【請求項45】
請求項9、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有し、硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする仮固定材。」
(2)本件発明27について
取消理由2の対象である本件発明30は、上記第3の本件発明27に相当するから、本件発明27について検討する。
ア 同日出願に係る発明
同日出願の特許第7194313号に係る訂正された特許請求の範囲の請求項9を引用する請求項31を引用する請求項32を引用する請求項36を引用する請求項37を独立形式で記載した発明は、次のとおりのものである。
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含み、
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)であり、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)であり、
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であり、
更に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤を含み、
更に、重合開始剤を含有し、前記重合開始剤は、光重合開始剤であり、前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。」(当審注:一般式(4-1)で表される基、一般式(4-2)で表される基、一般式(4-3)で表される基及び下記一般式(4-4)で表される基の化学式並びに当該化学式についての注釈は省略する。以下、「同日発明1」という。)
イ 対比
本件発明27と同日発明1を対比すると、少なくとも次の相違点1で相違する。
・相違点1
2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であるビスマレイミド化合物(1-I)に関して、本件発明27は「ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、マレイミド基と直接結合」しているのに対して、同日発明1はそのような特定がない点
ウ 判断
本件明細書の【0013】~【0014】及び同日出願の明細書の【0014】~【0015】には、ダイマージアミンに由来する脂肪族基として具体的に記載されている一般式(4-1)~(4-4)で表される基において、「結合手*は、マレイミド基と直接結合していてもよいし、他の基を介して結合してもよい。」と記載されていることから、同日発明1は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基の結合位置について特定しない発明であるのに対し、本件発明27は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基がマレイミド基と直接結合するものに限定したものであって、ビスマレイミド化合物(1-I)の構造の特定についての技術思想が異なるものである。
そうすると、相違点1は実質的な相違点であって、本件発明27と同日発明1とは同一であるとはいえない。
エ 申立人Aの主張について
申立人Aは令和7年4月1日受付の意見書(以下、「申立人A意見書」という。)の2~5頁において、以下のとおり主張している。
「特許第7194313の特許請求の範囲は、マレイミド基を有する反応性化合物(1)〔=ビスマレイミド化合物(1-I)〕が「ダイマージアミンに由来する脂肪族基」と「マレイミド基」とを有する点を限定するのみであり、マレイミド基を有する反応性化合物(1)〔=ビスマレイミド化合物(1-I)〕について「ダイマージアミンに由来する脂肪族基」と「マレイミド基」とが直接結合しない態様の他、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基」と「マレイミド基」とが直接結合する態様をも当然に含む記載である。
したがって、本件発明12~14及び24~39は、特許第7194313(特願2022-508852号)の特許請求の範囲に記載された発明と同一でないとは云えない。」
上記主張について検討すると、上記ウで検討したとおり、同日発明1は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基の結合位置について特定しない発明であるのに対し、本件発明27は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基がマレイミド基と直接結合するものに限定したものであって、ビスマレイミド化合物(1-I)の構造の特定についての技術思想が異なるものであるから、特許第7194313の特許請求の範囲に、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基」と「マレイミド基」とが直接結合しない態様と直接結合する態様が記載されていることをもって、上記ウの相違点1が実質的な相違点ではないとはいえない。
よって、申立人Aの上記主張は採用できない。
オ 本件発明27についてのまとめ
上記ア~エのとおりであるから、本件発明27は、同日発明1と同一ではない。
(3)本件発明28~30について
取消理由2の対象である本件発明31~33は、上記第3の本件発明28~30に相当するから、本件発明28~30について検討する。
ア 対比・判断
本件発明28~30と同日発明1とを対比すると、少なくとも上記(2)イの相違点1で相違し、上記(2)ウと同様に判断される。
イ 本件発明28~30についてのまとめ
上記アのとおりであるから、本件発明28~30は、同日発明1と同一ではない。
(4)取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2はその理由がない。
3 申立理由B2(甲B9に基づく拡大先願)について
申立理由B2で申し立てられた請求項に該当する訂正後の請求項1~4について検討する。
(1)先願甲B9の当初明細書等に記載された発明
先願B9の当初明細書には、[0061]、[0064]及び[0065]の[表1]の記載を基に、実施例3の樹脂組成物に着目すると、以下の発明が記載されている。
「BAPP(2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、和歌山精化工業株式会社製、分子量410.52g/mol)16.40部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)10.87部、ABPS(3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、日本化薬株式会社製、分子量280.30g/mol)0.32部及びODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol)18.04部を反応させて得られるポリイミド樹脂溶液(A-1)100質量部、マレイミド樹脂としてのMIR-3000(ビフェニル骨格含有マレイミド樹脂)7.5質量部、並びに、ラジカル開始剤としてのジクミルパーオキサイド(DCP)0.375質量部からなる、樹脂組成物。」(以下、「先願B9発明」という。)
(2)本件発明1について
本件発明1と先願B9発明とを対比する。
(ア)先願B9発明の「MIR-3000(ビフェニル骨格含有マレイミド樹脂)」は、甲B4の[0069]の記載から、本件発明1の「ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)」である「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」に相当する。
(イ)先願B9発明の「BAPP(2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、和歌山精化工業株式会社製、分子量410.52g/mol)16.40部、PRIAMINE1075(クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)10.87部、ABPS(3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、日本化薬株式会社製、分子量280.30g/mol)0.32部及びODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol)18.04部を反応させて得られるポリイミド樹脂溶液(A-1)」は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有し、マレイミド基を有しないことは明らかであるから、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
(ウ)先願B9発明の「ラジカル開始剤としてのジクミルパーオキサイド(DCP)」は、本件発明1の「光重合開始剤」と、「重合開始剤」である限りにおいて一致する。
(エ)先願B9発明の「樹脂組成物」は、ラジカル開始剤を含むものであり、硬化性であることは明らかであり、本件発明1の式IA、IB、IC及びIDのいずれの構造を含まないことも明らかであるから、本件発明1の「硬化性樹脂組成物(但し、式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く。)」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、重合開始剤を含有する、硬化性樹脂組成物(但し、式IA、IB、ICおよびIDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く。)。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点B9
重合開始剤に関して、本件発明1は、「光重合開始剤」であるのに対し、先願B9発明はそのような特定がない点
上記相違点B9について検討する。
先願B9発明は、ラジカル開始剤としてのジクミルパーオキサイド(DCP)を含むものであり、光重合開始剤を含むものではないから、相違点B9は実質的な相違点であるし、重合開始剤を光重合開始剤に変更することが、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
したがって、本件発明1と先願B9発明は同一ではない。
(3)本件発明2~4について
本件発明2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で検討したとおり、本件発明2~4は、先願B9発明と同一ではない。
(4)申立理由B2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由B2はその理由がない。
4 申立理由A2及び申立理由B3(サポート要件)について
上記第4の1の申立理由A2及び上記第4の2の申立理由B3は、いずれもサポート要件についてのものであるので、まとめて検討する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
本件明細書の【0006】によると、本件発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供すること」である。
そして、本件明細書の【0009】には、「上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱又は光の照射によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下するため、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。」と記載され、マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含むことの技術的意味が具体的に記載されている。
また、同【0009】には、「上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、イミド骨格を有することによって極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても主鎖の分解が起こりにくい。このため、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。」と記載され、マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことの技術的意味が具体的に記載されている。
さらに、本件明細書の【0089】~【0115】には、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と上記「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とを含む実施例1~19の硬化性樹脂組成物が、硬化後かつ300℃10分加熱後のボイド及び浮きの評価が「○」であり、硬化後かつ300℃10分加熱後の剥離性の評価が「○」であり、上記発明の課題を解決するのに対し、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」を含まない比較例3の硬化性組成物が、上記剥離性の評価が「×」であり、上記「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」を含まない比較例1及び2の上記ボイド及び浮きの評価が「×」であり、上記「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」を含まない代わりにアクリル系反応性樹脂を含む比較例4の硬化性樹脂組成物が、上記ボイド及び浮きの評価が「×」かつ上記剥離性の評価が「××」であり、上記発明の課題を解決しないことを確認できる記載もある。
そうすると、当業者は、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含」む硬化性樹脂組成物により、上記発明の課題を解決できると認識でき、本件発明1及び12は上記硬化性樹脂組成物として、また、本件発明23は上記硬化性樹脂組成物を用いた電子部品の製造方法として、さらに限定したものである。
よって、本件発明1、12及び23は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1、12及び23に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
本件発明1及び12を直接又は間接的に引用する本件発明2~11、13~22及び24~38についても同様である。
(3)申立人A及び申立人Bの主張について
ア 申立人Aの主張について
申立人Aは申立書Aの67~70頁において、上記第4の1(2)のとおり主張している。
しかしながら、本件明細書において、これらの成分はいずれも「含むことが好ましい」とされる成分であって、課題解決における必須成分であることは記載されておらず、また、申立人Aは、シリコーン化合物又はフッ素化合物、無機充填剤及び気体発生剤をいずれも含有しない硬化性樹脂組成物が、発明の課題を解決しないといえる具体的な技術的証拠を何ら提出していないことから、当該主張は上記(2)の判断に影響しない。
イ 申立人Bの主張について
(ア)申立人Bは令和7年4月4日受付の意見書(以下、「申立人B意見書」という。)の2~10頁において、
「本件発明1には、その硬化性樹脂組成物について、マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占めるマレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が20重量部以上、80質量部以下であること、あるいはこれに準じる程度の範囲の含有量であることが、上記課題解決のための中核的な技術的事項の一つとして規定されるべきであるにも係わらず、本件発明1は、そのような含有量の規定を欠くものである」こと、「比較例1~3についての実証結果に鑑みれば、マレイミド基を有する反応性化合物(1)とマレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との間であらゆる含有割合を有する硬化性樹脂組成物によっても、段落【0006】に記載された上記課題が解決され得るとは到底推測され得ない。」ことを根拠として、上記含有割合の規定を欠く本件発明1~7、10~13、15~26及び29~38は、サポート要件を満たさない旨、主張している。
(イ)申立人Bは、申立人B意見書の10~13頁において、
「特許権者は、本件発明12に規定されているように、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有するビスマレイミド化合物(1-I)と光重合開始剤と特定の種類の無機充填剤を併用したことによって、段落【0009】に記載された上記課題に対応した効果が奏される、と自ら陳述しているに等しい。」ことを根拠として、特定の種類の無機充填剤を含むことを特定していない本件発明1~11及び15~23は、サポート要件を満たさない旨、主張している。
(ウ)申立人Bは申立書Bの13~17頁等において、上記第4の2(4)のとおり主張している。
上記(ア)の主張について検討すると、上記(2)で述べたとおり、本件明細書の【0009】には、マレイミド基を有する反応性化合物(1)及びイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことの技術的意味が具体的に記載されているところ、申立人Bは、マレイミド基を有する反応性化合物(1)とマレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有割合によって、発明の課題を解決しない場合が存在するといえる具体的な技術的証拠を何ら提出していないことから、当該主張は上記(2)の判断に影響しない。
また、上記(イ)の主張について検討すると、上記(2)で述べたとおり、本件特許の発明の課題は、「硬化後かつ300℃10分加熱後のボイド及び浮き」及び「硬化後かつ300℃10分加熱後の剥離性」により解決するものであり、無機充填材を含有していない実施例1~11、18及び19についても当該課題を解決することが確認されている。
さらに、上記(ウ)の主張について検討すると、上記(2)で述べたとおり、本件明細書の【0009】には、マレイミド基を有する反応性化合物(1)及びイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことの技術的意味が具体的に記載されているところ、申立人Bは、式(A)で表されるビスマレイミド(1-I)、式(B)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)及び式(C)で表されるマレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)以外のマレイミド基を有する反応性化合物(1)及びイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を用いた場合であっても、発明の課題を解決しない場合が存在するといえる具体的な技術的証拠を何ら提出していないことから、当該主張は上記(2)の判断に影響しない。
したがって、上記(ア)~(ウ)の主張はいずれも採用できない。
(4)申立理由A2及び申立理由B3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由A2及び申立理由B3はその理由がない。
5 申立理由B4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件発明1~21及び24~37は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。また、本件発明22、23及び38は物を生産する方法であるところ、物を生産する方法の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件明細書には、本件発明1~21及び24~37の物について、硬化性樹脂組成物の成分であるマレイミド基を有する反応性化合物(1)及びイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)が具体的に記載され(【0010】~【0050】)、上記(1)及び(2)以外の硬化性樹脂組成物の各成分が具体的に記載され(【0051】~【0071】)、硬化性樹脂組成物の物性が具体的に記載され(【0072】、【0073】)、硬化性樹脂組成物の製造方法が具体的に記載され(【0074】)、仮固定材が具体的に記載されている(【0075】~【0085】)。
また、本件明細書には、本件発明22、23及び38の物を生産する方法について、電子部品の製造方法が具体的に記載されている(【0086】及び【0087】)。
そして、本件明細書には、本件発明の実施例である実施例1~19についても、その製造方法を含め具体的に記載されている(【0089】~【0115】)。
したがって、本件発明1~21及び24~37について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえるし、本件発明22、23及び38について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があるといえる。
よって、本件発明1~38に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合する。
(3)申立人Bの主張について
申立人Bは申立書Bの50~56頁等において、上記第4の2(5)のとおり主張している。
しかしながら、本件明細書には、式(A)で表されるビスマレイミド(1-I)、式(B)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)及び式(C)で表されるマレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)以外のマレイミド基を有する反応性化合物(1)及びイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)についても、具体的な化合物を含めて記載されていることから(【0010】~【0050】)、当業者であれば、本件発明の詳細な説明の記載から、本件発明1~38を実施できるものと理解できる。
したがって、上記主張は採用しない。
(4)申立理由B4についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由B4はその理由がない。
6 申立人Aの主張について
申立人Aは申立人A意見書の5~8頁において、概略以下のとおり主張している。
本件発明1において、「(但し、式IA、式IB、式ICおよび式IDのいずれかの構造を有する硬化可能なポリイミドを含む樹脂組成物を除く。)」と規定され、式IA、式IB、式IC及び式IDの各構造において式中の置換基の定義がそれぞれ記載されており、基R’については、「R’はアルコール官能化ジアミンであり、」と定義されているが、この定義は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。
しかしながら、式IA、式IB、式IC及び式IDの各構造のR’基は、2つの窒素原子と1つの酸素原子に結合していることからみれば、R’は「アルコール官能化ジアミン」に由来する基であることは明らかであるから、「R’はアルコール官能化ジアミンであり、」の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、上記主張は採用しない。
第6 結語
特許第7201859号の請求項1~38に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~38に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700665