特許異議申立
2023-700915
セラミックス基板、セラミックス分割基板、及びセラミックス基板の製造方法
- 審判番号
- 2023-700915
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-054654
- 登録番号
- 7243888
- 請求日
- 2023年09月05日
- 審決日
- 2024年09月09日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社プロテリアル
- 【権利者代理人】弁理士法人平田国際特許事務所
- 【異議申立人】中和 正一
- 【異議申立人】寺澤 佳奈美
- 【異議申立人】茂木 早苗
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 渡辺 努
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.536-YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K) / P1651.851-YAA(H05K) / P1651.857-YAA(H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7243888号発明「セラミックス基板、セラミックス分割基板、及びセラミックス基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7243888号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
特許第7243888号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7243888号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和4年3月29日の出願であって、令和5年3月13日付けでその特許権の設定登録がされ、同年3月22日に特許掲載公報が発行された。
その特許に対する本件特許異議申立の経緯は以下のとおりである。
令和5年 9月 5日 特許異議申立人中和正一による請求項1~6に対する特許異議の申立て、甲第1号証~甲第3号証の提出
令和5年 9月14日 特許異議申立人寺澤佳奈美による請求項1~3に対する特許異議の申立て、甲第1号証~甲第5号証の提出
令和5年 9月21日 特許異議申立人茂木早苗による請求項1~5に対する特許異議の申立て、甲第1号証~甲第5号証の提出
令和6年 1月11日付け 取消理由通知
令和6年 3月15日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 4月25日 特許権者による手続補正書の提出
令和6年 6月 4日 特許異議申立人茂木早苗による意見書の提出
(なお、特許異議申立人中和正一、寺澤佳奈美からの意見書の提出はなかった。)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年3月15日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、同年4月25日に補正された請求の趣旨より、特許第7243888号の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、
セラミックス基板。」と記載されているのを、
「平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上であり、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、
セラミックス基板。」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1乃至4の何れか1項に記載のセラミックス基板を複数個連続して製造する、セラミックス基板の製造方法であって、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第1の主面にろう材を塗布して前記第1のろう材層を形成する第1のろう材層形成工程と、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第2の主面にろう材を塗布して前記第2のろう材層を形成する第2のろう材層形成工程と、
前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層にそれぞれ金属板を重ねてろう付けし、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、
前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン上に前記ろう材を複数回にわたって補給しながら前記ろう材をスキージによって前記絶縁基材側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材を塗布し、前記ろう材を補給した後、次に前記ろう材を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材に対して前記ろう材を塗布し、前記絶縁基材のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、
セラミックス基板の製造方法。」と記載されているのを、
「平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であるセラミックス基板を複数個連続して製造する、セラミックス基板の製造方法であって、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第1の主面にろう材を塗布して前記第1のろう材層を形成する第1のろう材層形成工程と、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第2の主面にろう材を塗布して前記第2のろう材層を形成する第2のろう材層形成工程と、
前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層にそれぞれ金属板を重ねてろう付けし、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、
前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン上に前記ろう材を複数回にわたって補給しながら前記ろう材をスキージによって前記絶縁基材側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材を塗布し、前記ろう材を補給した後、次に前記ろう材を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材に対して前記ろう材を塗布し、前記絶縁基材のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、
セラミックス基板の製造方法。」と訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0006】に「本発明は、上記課題を解決することを目的として、平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、セラミックス基板を提供する。」と記載されているのを、
「本発明は、上記課題を解決することを目的として、平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶緑基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上であり、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、セラミックス基板を提供する。」と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0008】に「また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記のセラミックス基板を複数個連続して製造するセラミックス基板の製造方法であって、前記複数個の前記絶縁基材の前記第1の主面にろう材を塗布して前記第1のろう材層を形成する第1のろう材層形成工程と、前記複数個の前記絶縁基材の前記第2の主面にろう材を塗布して前記第2のろう材層を形成する第2のろう材層形成工程と、前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層にそれぞれ金属板を重ねてろう付けし、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン上に前記ろう材を複数回にわたって補給しながら前記ろう材をスキージによって前記絶縁基材側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材を塗布し、前記ろう材を補給した後、次に前記ろう材を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材に対して前記ろう材を塗布し、前記絶縁基材のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、セラミックス基板の製造方法を提供する。」と記載されているのを、
「また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であるセラミックス基板を複数個連続して製造する、セラミックス基板の製造方法であって、前記複数個の前記絶縁基材の前記第1の主面にろう材を塗布して前記第1のろう材層を形成する第1のろう材層形成工程と、前記複数個の前記絶縁基材の前記第2の主面にろう材を塗布して前記第2のろう材層を形成する第2のろう材層形成工程と、前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層にそれぞれ金属板を重ねてろう付けし、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン上に前記ろう材を複数回にわたって補給しながら前記ろう材をスキージによって前記絶縁基材側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材を塗布し、前記ろう材を補給した後、次に前記ろう材を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材に対して前記ろう材を塗布し、前記絶縁基材のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、セラミックス基板の製造方法を提供する。」と訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項
訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接もしくは間接に引用しており、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第1のろう材層」及び「第2のろう材層」について、それぞれ「スクリーン印刷法によって塗布して形成された」ことに限定し、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上」であることに限定したものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の【0016】の記載より、願書に添付した明細書には、「第1のろう材層」及び「第2のろう材層」について、それぞれ「スクリーン印刷法によって塗布して形成された」ことが記載されているものである。
また、明細書の【0034】~【0037】及び【図6】の記載(特に、【0037】の【表1】における「第1のろう材層31の厚み(μm)」、「第2のろう材層32の厚み(μm)」の欄を参照。)より、ろう材層の厚みの下限値は11.2μmである。
そうすると、願書に添付した明細書及び図面には、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上」であることが記載されているものである。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項1乃至4の何れか1項の記載を引用する請求項6の記載のうち、請求項1の記載を引用する請求項6の記載をその内容を変更することなく請求項1の記載を引用しないものに訂正するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項1の記載を引用する請求項6の記載を、その内容を変更することなく請求項1の記載を引用しないものに訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(2)のとおり訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(2)のとおり訂正事項1は請求項1のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(3)のとおり訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、上記(3)のとおり訂正事項2は請求項6のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)独立特許要件
訂正事項1、2については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~6に係る訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。
第3 訂正後の請求項1~6に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ、「訂正発明1」~「訂正発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】(訂正発明1)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上であり、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、
セラミックス基板。
【請求項2】(訂正発明2)
任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2のろう材層の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす、
請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項3】(訂正発明3)
前記第1の金属層及び前記第2の金属層は、一方が電気回路部品が搭載される回路板であり、他方が放熱板であり、
前記第1の金属層の厚さと前記第2の金属層の厚さとの差が0.02mm以下である、
請求項1又は2に記載のセラミックス基板。
【請求項4】(訂正発明4)
前記絶縁基材が矩形状であり、前記絶縁基材の各辺に沿った方向の100mmあたりの前記絶縁基材の反り量が0.03mm以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【請求項5】(訂正発明5)
請求項1乃至4の何れか1項に記載のセラミックス基板を複数に分割して形成された、セラミックス分割基板。
【請求項6】(訂正発明6)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であるセラミックス基板を複数個連続して製造する、セラミックス基板の製造方法であって、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第1の主面にろう材を塗布して前記第1のろう材層を形成する第1のろう材層形成工程と、
前記複数個の前記絶縁基材の前記第2の主面にろう材を塗布して前記第2のろう材層を形成する第2のろう材層形成工程と、
前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層にそれぞれ金属板を重ねてろう付けし、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、
前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン上に前記ろう材を複数回にわたって補給しながら前記ろう材をスキージによって前記絶縁基材側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材を塗布し、前記ろう材を補給した後、次に前記ろう材を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材に対して前記ろう材を塗布し、前記絶縁基材のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、
セラミックス基板の製造方法。
第4 各甲号証について
1 各特許異議申立人が提出した各甲号証
説明のために、各特許異議申立人が提出した各甲号証について、以下のように、「引用文献1」~「引用文献12」と整理する。
ここで、取消理由通知にて採用した甲号証については、取消理由通知での記載に倣い、「引用文献1」~「引用文献4」とし、取消理由通知にて採用しなかった甲号証については、順次「引用文献5」~「引用文献12」とする。
(1)特許異議申立人中和正一が提出した各甲号証
甲第1号証(特開2022-24310号公報)(以下、「引用文献5」という。)
甲第2号証(特開2015-174097号公報)(以下、「引用文献3」という。)
甲第3号証(特開2011-207035号公報)(以下、「引用文献6」という。)
(2)特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した各甲号証
甲第1号証(特開2007-066995号公報)(以下、「引用文献7」という。)
甲第2号証(特開2010-118682号公報)(以下、「引用文献8」という。)
甲第3号証(特開2021-159926号公報)(以下、「引用文献2」という。)
甲第4号証(特開2003-309210号公報)(以下、「引用文献9」という。)
甲第5号証(国際公開第2020/184510号)(以下、「引用文献1」という。)
(3)特許異議申立人茂木早苗が提出した各甲号証
甲第1号証(特開2016-169111号公報)(以下、「引用文献10」という。)
甲第2号証(再表2018/221493号)(以下、「引用文献11」という。)
甲第3号証(特開2021-159926号公報)(以下、「引用文献2」という。)
甲第4号証(国際公開2017/56666号)(以下、「引用文献12」という。)
甲第5号証(特開2007-45160号公報)(以下、「引用文献4」という。)
2 取消理由通知にて採用した各甲号証について
(1)引用文献1(国際公開第2020/184510号)
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
[0002] 窒化ケイ素セラミックスは、高い熱伝導性及び高い絶縁性を有する。このため、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板は、パワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として好適に用いられる。
[0023] 第1実施形態の接合基板100は、図1及び図2に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板110、銅板111、接合層112、銅板113及び接合層114を備える。接合基板100がこれらの要素以外の要素を備えてもよい。銅板111及び接合層112の組、並びに銅板113及び接合層114の組の片方の組が省略されてもよい。
[0029] 接合層112及び114は、望ましくは0.1μm以上3μm以下の厚さを有する。接合層112及び114がこのようにわずかな厚さしか有しないことにより、銅板111及び113の端部への応力の集中がそれぞれはみ出し部121及び123により効果的に緩和される。
[0037] ろう材層132及び134が形成される際には、活性金属ろう材及び溶剤を含むペーストが調製される。ペーストがバインダ、分散剤、消泡剤等をさらに含んでもよい。続いて、調製されたペーストが窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にスクリーン印刷され、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にそれぞれ第1及び第2のスクリーン印刷膜が形成される。続いて、形成された第1及び第2のスクリーン印刷膜に含まれる溶剤が揮発させられる。これにより、第1及び第2のスクリーン印刷膜が、それぞれろう材層132及び134に変化する。ろう材層132及び134は、活性金属ろう材を含む。ろう材層132及び134がこの方法とは異なる方法により形成されてもよい。
[0043] 工程S103においては、得られた中間品100Aに対してホットプレスが行われる。これにより、ろう材層132及び134が、図6に図示されるように、それぞれ接合層112B及び114Bに変化する。接合層112B及び114Bは、それぞれ銅板111A及び113Aを窒化ケイ素セラミックス基板110に接合する。ろう材層132及び134がそれぞれ接合層112B及び114Bに変化する間には、ろう材層132及び134に含まれる銀及びインジウムがそれぞれ銅板111A及び113Aに拡散し、接合層112B及び114Bから銀及びインジウムが消失する。このため、接合層112B及び114Bは、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素と窒素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の元素との化合物を含むが、銀を含まない。窒素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の元素は、窒化ケイ素セラミックス基板110から供給される。
[図1]
[図:0001417616000001.jpg]
[図2]
[図:0001417616000002.jpg]
イ 引用文献1に記載された発明
(ア)[0002]には、窒化ケイ素セラミックスは、高い絶縁性を有することが記載されている。
[0023]、[図1]、[図2]より、接合基板100は、窒化ケイ素セラミックス基板110と、前記窒化ケイ素セラミックス基板110の一方の面に設けられた接合層112と、前記窒化ケイ素セラミックス基板110の他方の面に設けられた接合層114と、前記接合層112を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板110の前記一方の面側に固定された銅板111と、前記接合層114を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板110の前記他方の面側に固定された銅板113とを備えていることが見て取れる。
[図1]より、窒化ケイ素セラミックス基板110は、平板状であることが見て取れる。
[0037]より、ろう材層132及び134が形成される際には、ペーストが調製され、調製されたペーストが窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にスクリーン印刷され、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にそれぞれ第1及び第2のスクリーン印刷膜が形成され、形成された第1及び第2のスクリーン印刷膜に含まれる溶剤が揮発されると、第1及び第2のスクリーン印刷膜が、それぞれろう材層132及び134に変化するものである。すなわち、ろう材層132及び134は、スクリーン印刷法により設けられたものである。
ここで、銅板111及び113を、それぞれ、第1の銅板、第2の銅板と称し、一方の面及び他方の面を、それぞれ第1の主面及び第2の主面と称し、[0043]より、接合層112及び114は、それぞれ、ろう材層132及び134が変化したものであるから、接合層112及び114を、それぞれ第1のろう材層及び第2のろう材層と称することとする。
以上の記載をまとめると、引用文献1の接合基板は、高い絶縁性を有する平板状の窒化ケイ素セラミックス基板と、前記窒化ケイ素セラミックス基板の第1の主面にスクリーン印刷法により設けられた第1のろう材層と、前記窒化ケイ素セラミックス基板110の第2の主面にスクリーン印刷法により設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板110の前記第1の主面側に固定された第1の銅板と、前記第2のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板110の前記第2の主面側に固定された第2の銅板とを備えるものである。
(イ)[0029]より、引用文献1の接合層112及び114は、0.1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
(ウ)以上をまとめると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
高い絶縁性を有し平板状の窒化ケイ素セラミックス基板と、前記窒化ケイ素セラミックス基板の第1の主面にスクリーン印刷法により設けられた第1のろう材層と、前記窒化ケイ素セラミックス基板の第2の主面にスクリーン印刷法により設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板の前記第1の主面側に固定された第1の銅板と、前記第2のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板の前記第2の主面側に固定された第2の銅板とを備え、
第1のろう材層及び第2のろう材層は、0.1μm以上3μm以下の厚さを有する、
接合基板。
(2)引用文献2(特開2021-159926号公報)
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0002】
電気自動車、電車、工作機械などに用いられる大電力を制御するためにパワーモジュールが使用されている。このようなパワーモジュール用の絶縁回路基板として、セラミックス基板の一方の面に接合されたチップ部品や端子の半田付けがなされる金属(回路)板と、セラミックス基板の他方の面に接合された放熱板を半田付けなどの方法で接合・形成するための(放熱板形成用)金属板からなる、金属-セラミックス接合基板が使用されている。
【0003】
金属-セラミックス接合基板では、金属回路板や放熱板形成用金属板の材料として電気伝導率、熱伝導性の高い銅やアルミニウムが用いられることが多く、また、セラミックス基板として絶縁性の高いアルミナ基板や窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板などが用いられる。このような金属板をセラミックス基板に接合する際、活性金属を含有するろう材を介して真空中で加熱して接合する方法、いわゆる活性金属法による接合が広く用いられている。
【0048】
ろう材の組成にもよるが、ろう材の単位面積当たりの塗布重量は概ね0.08~0.50mg/cm2の範囲とすることが好ましく、また塗布するろう材の厚さは概ね5~35μmとすることが好ましい。これよりも単位面積当たりのろう材の塗布重量が軽い、あるいはろう材が薄いと金属板とセラミックス基板の接合強度が小さくなり、単位面積当たりのろう材の塗布重量が重い、あるいはろう材が厚いとヒートサイクル特性などの耐熱衝撃性が悪くなる恐れがある。さらに好ましいろう材の単位面積当たりの塗布重量は0.12~0.40mg/cm2、ろう材の厚さは10~30μmである。
【0057】
[実施例1]
セラミックス基板として縦68mm、横68mm、厚さ0.6mmの大きさの窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製)を準備した。
【0063】
このペースト状の活性金属含有ろう材を、乳剤厚10μmのスクリーン印刷版を使用して、前記窒化アルミニウム基板の表と裏の面のそれぞれ全面に、スクリーン印刷機によりスクリーン印刷することにより塗布した。なお、ろう材中の活性金属であるチタンの単位面積あたりの塗布量は0.271mg/cm2であった。
【0064】
次いで、窒化アルミニウム基板の表裏のそれぞれの面に塗布されたろう材を乾燥させた後、縦70mm、横70mm、厚さ0.25mmの銅板をそれぞれ窒化アルミニウム基板の表裏の主面の全部が覆われるように接触配置させた積層体を作製して真空炉に挿入し、この積層体に200gの重りを載せて真空中(真空度1.0×10-4torr以下)において835℃で40分加熱・保持することで接合し、窒化アルミニウム基板の両面にろう材を介して銅板が接合された金属-セラミックス接合基板を58個作製した。
【図1】
[図:0001417616000003.jpg]
イ 引用文献2に記載された発明
(ア)【0057】、【0063】、【0064】より、引用文献2には実施例1として、セラミックス基板である窒化アルミニウム基板と、前記窒化アルミニウム基板の表面にスクリーン印刷することにより塗布された活性金属含有ろう材と、前記窒化アルミニウム基板の裏面にスクリーン印刷することにより塗布された活性金属含有ろう材と、窒化アルミニウム基板の表面が覆われるように接触配置させた銅板と、窒化アルミニウム基板の裏面が覆われるように接触配置させた銅板とを備え、窒化アルミニウム基板の両面にろう材を介して銅板が接合された金属-セラミックス接合基板が記載されている。
【図1】より、窒化アルミニウム基板は、平板状であることが見て取れる。
【0003】には、セラミックス基板として絶縁性の高い窒化アルミニウム基板を用いることが記載されている。
ここで、窒化アルミニウム基板の表面の活性金属含有ろう材及び銅板を、それぞれ、第1のろう材及び第1の銅板と称し、裏面の活性金属含有ろう材及び銅板を、それぞれ、第2のろう材及び第2の銅板と称し、表面及び裏面をそれぞれ第1の主面及び第2の主面と称し、以上の記載をまとめると、引用文献2の金属-セラミックス接合基板は、平板状であり絶縁性の高いセラミックス基板である窒化アルミニウム基板と、前記窒化アルミニウム基板の第1の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第1のろう材と、前記窒化アルミニウム基板の第2の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第2のろう材と、窒化アルミニウム基板の第1の主面が覆われるように接触配置させた第1の銅板と、窒化アルミニウム基板の第2の主面が覆われるように接触配置させた第2の銅板とを備えるものである。
(イ)【0002】、【0003】には、背景技術として、セラミックス基板の一方の面の金属板を金属回路板とし、他方の面の金属板を放熱板とすること、金属回路板や放熱板の材料として銅を用いることが記載されていることから、実施例1の銅板についても、一方の面を金属回路板とし、他方の面を放熱板とするものといえる。
(ウ)【0048】より、引用文献2の金属-セラミックス接合基板のろう材の厚さは、10~30μmである。
(エ)以上をまとめると、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
平板状であり絶縁性の高いセラミックス基板である窒化アルミニウム基板と、前記窒化アルミニウム基板の第1の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第1のろう材と、前記窒化アルミニウム基板の第2の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第2のろう材と、窒化アルミニウム基板の第1の主面が覆われるように接触配置させた第1の銅板と、窒化アルミニウム基板の第2の主面が覆われるように接触配置させた第2の銅板とを備え、
第1の銅板及び第2の銅板は、一方が金属回路板であり、他方が放熱板であり、
各ろう材の厚さは、10~30μmである
金属-セラミックス接合基板。
(3)引用文献3(特開2015-174097号公報)
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0025】
第1実施形態:以下、本発明の実施形態について、以下に記載する実施例に基づいて説明する。ここでは、活性金属ろう材としてAg-Cu28.0質量%-Ti2.0質量%-Sn5.0質量%(Sn/Ti比2.5)のAg-Cu-Ti-Sn合金を適用した複合材料を製造し、セラミック基板へ接合したときの品質を検討した。
【0026】
複合材料の製造においては、まず、活性金属ろう材層を製造し、これを銅板にクラッド接合して複合材料とした。活性金属ろう材の製造においては、上記組成の合金を溶解・鋳造してインゴットとし、このインゴットについて冷間圧延と焼鈍(非酸化雰囲気で600~800℃加熱)との組合せを加工率95%となるよう複数回行った。これによりテープ状の活性金属ろう材層(厚さ0.05mm、)を製造した。そして、製造したテープ状の活性金属ろう材層と、テープ状の銅板(厚さ0.3mm、幅)とを圧延ロールにてクラッド接合した。このクラッド工程で、活性金属ろう材層の厚さは15μmとなった。
【0027】
図1は、製造した複合材料の断面SEM写真である。活性金属ろう材層の厚さは略均一であった(±0.3μm)。そして、ろう材層内には、金属間化合物が存在するが、微細且つ均一に分散しており全体として均質であることが確認できる。
【0028】
この複合材料をセラミック基板へ接合し、接合性及び接合部の品質を検討した。セラミック基板としてアルミナ基板(25mm×25mm、厚さ0.5mm)を用意し、ここに20mm×20mmにカットした複合材料を載置した。そして、50gの荷重をかけつつ真空炉中(2×10-3Pa)で830℃まで昇温し、830℃で3min保持した後冷却して取り出した。
イ 引用文献3に記載された技術
【0025】~【0028】より、引用文献3には第1実施形態として、テープ状の活性金属ろう材層(厚さ0.05mm)と、テープ状の銅板(厚さ0.3mm)とを圧延ロールにてクラッド接合した複合材料における活性金属ろう材層の厚さが15μm±0.3μmであり、当該複合材料をセラミック基板に接合する技術が記載されている。
(4)引用文献4(特開2007-45160号公報)
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0023】
上記のようにして得られたセラミックス焼結体は、必要に応じ、所望の大きさおよび形状に分割される。セラミックス焼結体の分割は、例えばレーザー等によってセラミックス焼結体に線状ないし点状に切れ込み(スクライブラインまたはスクライブドット)を入れ、これに沿って応力を印加することによって分割することができる。また、セラミックス焼結体は、所望の回路パターンが得られるように、その片面または両面の少なくとも一部に金属板を積層する。ここで、セラミックス焼結体の分割と金属板の積層は、どちらを先に行っても良い。即ち、金属板を積層した後に分割することもできるし、分割した後に金属板を積層することもできる。また、金属板の積層を複数回に分け、一部の回路を形成した後に分割しその後残りの回路を形成するようにすることもできる。金属板は、従来から一般的に用いられてきたものを使用することができる。好ましくは、例えば銅、アルミニウムの少なくとも1種を主成分とする金属から形成された金属板を使用することができる。セラミックス基板への金属板の接合は、活性金属法および直接接合法によって行うことができる。
イ 引用文献4に記載された技術
【0023】より、引用文献4には、セラミックス焼結体の両面に金属板を積層した後に分割する技術が記載されている。
2 取消理由通知にて採用しなかった各甲号証について
(1)引用文献5(特開2022-24310号公報)
ア 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態にかかる絶縁基板1は、AlN、Al2O3、Si3N4等からなる(板状の)セラミックス基板10の一方の主面(表面)に、(銅やアルミニウム等からなる)放熱側金属板12の一方の主面(表面)がろう材層14を介してろう付けされた絶縁基板1であって、前記セラミックス基板10と前記放熱側金属板12との間から露出するろう材層14(の端部)を覆うNiめっき層21が設けられ、前記放熱側金属板12の他方の主面の少なくとも一部がNiめっき層に覆われておらず、前記放熱側金属板の表面が露出した状態であることを特徴とする。
また、前記放熱側金属板12の側面12aの一部もしくは全部が前記Niめっき層21で覆われていてもよく、前記放熱側金属板12の他方の主面(表面)の周囲が前記Niめっき層21で覆われていてもよい。
【0016】
また、前記セラミックス基板10の他方の主面(表面)に、(銅やアルミニウム等からなる)回路側金属板11の一方の主面(表面)がろう材層13を介してろう付けされている。また、前記放熱側金属板12が銅板または銅合金板であることが好ましく、前記回路側金属板11が銅板または銅合金板であることが好ましい。また、前記放熱側金属板12の他方の主面において、Niめっき層に覆われておらず、前記放熱側金属板の主面が露出している領域は、前記放熱側金属板の他方の主面の面積に対して70面積%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0035】
(実施例1)
セラミックス基板として46mm×48mm×0.4mmの大きさの市販の窒化アルミニウム基板を準備した。また、83質量%の銀粉と10質量%の銅粉と5質量%の錫粉と(活性金属成分としての)2質量%のチタン粉(Ag:Cu:Sn:Ti=83:10:5:2)をビヒクルに加えて混練して活性金属含有ろう材ペーストを作製し、セラミックス基板の両面の全面に、ろう材ペーストの厚さが10μmになるようにスクリーン印刷した後、大気中で乾燥してろう材層を形成した。次いでろう材層に46mm×48mm×0.3mmの2枚の無酸素銅板をそれぞれ接触配置し、真空炉中で850℃に加熱して窒化アルミニウム基板の両面に銅板を接合して、窒化アルミニウム基板の一方の表面に放熱側銅板形成用の銅板の一方の面が接合(形成)され、窒化アルミニウム基板の他方の主面に回路パターン形成用の銅板の一方の主面が接合(形成)された接合体を得た。
イ 引用文献5に記載された発明
(ア)【0015】より、引用文献5の絶縁基板1は、板状のセラミックス基板10の一方の主面に、放熱側金属板12がろう材層14を介してろう付けされている。
【0016】より、引用文献5の絶縁基板1は、板状のセラミックス基板10の他方の主面に、回路側金属板11がろう材層13を介してろう付けされている。
以上より、引用文献5の絶縁基板は、板状のセラミックス基板と、その一方の主面に設けられたろう材層14と、その他方の主面に設けられたろう材層13と、ろう材層14を介してろう付けされた放熱側金属板と、ろう材層13を介してろう付けされた回路側金属板とを備えている。
(イ)【0035】より、引用文献5の絶縁基板1のろう材層は、セラミックス基板の両面に、ろう材ペーストの厚さが10μmになるようにスクリーン印刷して形成されたものである。
(ウ)以上をまとめると、引用文献5には以下の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されている。
板状のセラミックス基板と、その一方の主面に設けられたろう材層14と、その他方の主面に設けられたろう材層13と、ろう材層14を介してろう付けされた放熱側金属板と、ろう材層13を介してろう付けされた回路側金属板とを備え、
ろう材層は、セラミックス基板の両面に、ろう材ペーストの厚さが10μmになるようにスクリーン印刷して形成された
絶縁基板。
(2)引用文献6(特開2011-207035号公報)
ア 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0005】
しかし、スクリーン印刷によって板状の被印刷物上にペーストを印刷すると、ペーストの厚さのムラ(ばらつき)が生じ易く、特に、スクリーンの開口部の周縁部付近においてペーストが厚くなって、ペーストの厚さが不均一になり易い。同様に、スクリーン印刷によってろう材ペーストをセラミックス基板上に印刷する場合にも、ろう材ペーストの厚さのムラ(ばらつき)が生じ易く、特に、スクリーンの開口部の周縁部付近においてろう材ペーストが厚くなって、ろう材ペーストの厚さが不均一になることによって、金属板とセラミックス基板との接合のムラ(ろう材の欠けやかすれなど)が生じるとともに、後工程でろう材の不要部分を除去する際のろう材の除去ムラ(不要なろう材の不要部分の残存)が生じたり、ろう材の欠けやかすれによるボイドが生じて、生産性が低下するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、スクリーン印刷によって板状の被印刷物上にペーストを印刷する際に、スクリーンの開口部の周縁部付近においてペーストが厚くなるのを防止して、ペーストの厚さを均一にすることができる、ペーストのスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0020】
以下、本発明によるペーストのスクリーン印刷方法の実施例について詳細に説明する。
【0023】
なお、ろう材ペーストを印刷する際のスキージの速度は、シーケンス制御によって図3に示すように変更した。すなわち、セラミックス基板の一端部の手前10mmまでは基準速度(200mm/s)とした後、そこから8mm移動する間に基準速度より低い低速(140mm/s)まで減速し、セラミックス基板の一端部を10mm過ぎたときに、基準速度まで増速し、セラミックス基板の他端部の手前10mmから8mm移動する間に低速まで減速し、セラミックス基板の他端部を10mm過ぎたときに、基準速度まで増速した。
【0024】
このようにしてろう材ペーストを印刷した後、レーザー顕微鏡により、図1のAおよびB(スクリーンの一端側の最初の開口部の端部に対応するろう材ペーストの端部)からそれぞれ0.5mm内側および1mm内側の位置と中央部のろう材ペーストの厚さを測定した。その結果、AおよびBから0.5mm内側の位置のろう材ペーストの厚さは、1mm内側の位置のろう材ペーストの厚さよりも僅かに(5μm)厚く、中央部のろう材ペーストの厚さは、1mm内側の位置のろう材ペーストの厚さとほぼ同じであり、ろう材の厚さのばらつきは小さかった。
【図1】
[図:0001417616000004.jpg]
イ 引用文献6に記載された技術
【0005】及び【0006】より、引用文献6に記載された技術は、スクリーン印刷によってろう材ペーストをセラミックス基板上に印刷する場合に、ろう材ペーストの厚さが不均一になるので、ペーストの厚さを均一にすることができるペーストのスクリーン印刷方法を提供することを目的とするものである。
【0023】及び【0024】より、引用文献6に記載された技術は、ろう材ペーストを印刷する際のスキージの速度の減速や増速を行うことにより、ろう材の厚さのばらつきを小さくする技術である。
以上より、引用文献6には、スクリーン印刷によってろう材ペーストをセラミックス基板上に印刷する場合に、ろう材ペーストの厚さが不均一になるので、ペーストの厚さを均一にすることができるペーストのスクリーン印刷方法を提供することを目的とするものであって、ろう材ペーストを印刷する際のスキージの速度の減速や増速を行うことにより、ろう材の厚さのばらつきを小さくする技術が記載されている。
(3)引用文献7(特開2007-066995号公報)
ア 引用文献7に記載された事項
引用文献7には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0004】
ところで、金属板をセラミックス基板に接合したセラミックス配線基板を用いたパワー半導体モジュールにおいては、大電流を流せるように金属板の厚さを0.3~0.5mmと比較的厚くしている場合が多い。特に、金属板に熱伝導率の高い銅板を用いた場合、熱膨張率が大きく異なるセラミックス基板と銅板を接合すると、接合後の冷却過程で熱応力が発生する。この応力は、セラミックス基板と銅板との接合部付近で圧縮と引張りの残留応力として存在する。この残留応力は、セラミックス基板にクラックを生じさせたり、絶縁耐圧不良を起こしたり、あるいは金属板の剥離の発生原因となり、熱衝撃(ヒートショック)や冷熱サイクル等によって生じる損傷に対して十分な耐久性があるとはいえないため、信頼性に問題があった。
【0019】
銅板とセラミックス基板とを加熱接合した後、冷却すると、銅板に比べてセラミックス基板の方が収縮率が小さいので、銅板の方が大きく収縮しようとする。このとき、銅の降伏強度が小さい場合には、銅板が変形しやすくなるので、セラミックス基板の変形に追従して銅板が変形しようとし、結果として、セラミックス配線基板の反りは小さく、また、銅板とセラミックス基板の接合界面においてセラミックス基板に加えられる応力値が減少する。一方、銅の降伏強度が大きい場合には、銅板の変形はセラミックス基板の変形に追従しようとせず、銅板の収縮に起因する収縮応力がそのままセラミックス基板に加えられ、結果として、セラミックス配線基板の反りが大きくなり、また、銅板とセラミックス基板の接合界面近傍で銅板がセラミックス基板に加えられる応力値が高くなる。このため、接合処理後にセラミックス基板にクラックが生じたり、あるいは冷熱サイクル試験において低サイクルでの上記クラックが生じる。セラミックス配線基板としての信頼性の観点では、金属放熱板に降伏強度が低く、かつ、冷熱繰り返しに伴う加工硬化度の変化挙動が小さい銅を配置することにより、セラミックス基板に加えられる応力を低減でき、セラミックス配線基板の高寿命化を図ることができる。
(4)引用文献8(特開2010-118682号公報)
ア 引用文献8に記載された事項
引用文献8には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0003】
しかし、セラミックス基板とこの基板上に設けられる金属回路板とは熱膨張係数が通常大きく異なっており、また両者の接合が高温度条件下でなされることが多いことから、接合後に冷却された場合、両者間の残留応力によってセラミックス回路基板が金属回路層側に凹状に湾曲することがあった。
(5)引用文献9(特開2003-309210号公報)
ア 引用文献9に記載された事項
引用文献9には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例をあげて具体的に説明する。
(実施例1~3)セラミックス基板として寸法が50mm×30mm×(厚み)0.64mmで熱伝導率が80W/m・Kの窒化珪素基板の表面に金属回路板として寸法が40mm×25mm×(厚み)1.0mmの無酸素銅板と、裏面に金属放熱板として寸法が40mm×25mm×(厚み)0.8mmの無酸素銅板を、回路パターン形状および放熱板形状に切断された活性金属を含む銀、銅、チタンから成る厚み50μmのろう材箔を介して接触させて1.33Pa以下の真空中で850℃×10分加熱した後、4℃/分の降温速度で冷却して窒化珪素基板と無酸素銅板の接合体を得た。
【図1】
[図:0001417616000005.jpg]
イ 引用文献9に記載された発明
【0019】の記載から、引用文献9には、実施例1~3として以下の発明(以下、「引用発明9」という。)が記載されている。
寸法が50mm×30mm×(厚み)0.64mmで熱伝導率が80W/m・Kの窒化珪素基板と、
窒化珪素基板の表面に回路パターン形状に切断された活性金属を含む銀、銅、チタンから成る厚み50μmのろう材箔と、
ろう材箔を介して接触させた金属回路板として寸法が40mm×25mm×(厚み)1.0mmの無酸素銅板と、
窒化珪素基板の裏面に放熱板形状に切断された活性金属を含む銀、銅、チタンから成る厚み50μmのろう材箔と、
ろう材箔を介して接触させた金属放熱板として寸法が40mm×25mm×(厚み)0.8mmの無酸素銅板と、を備える
窒化珪素基板と無酸素銅板の接合体であるセラミック基板。
(6)引用文献10(特開2016-169111号公報)
ア 引用文献10に記載された事項
引用文献10には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0009】
特許文献1に記載の接合方法に従ってAg-Cuろう材を用い、セラミックス基板と金属板とを活性金属法により接合すると、ろう材層とセラミックス部材および金属部材との濡れ性が良好に改善し、セラミックス基板と金属板の接合強度が上がる。その一方でAg-Cuろう材を用いて接合する場合、金属板中にAgなどのろう材成分が拡散することにより金属板が固くなり、耐熱サイクル性が低下する問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、金属板へのろう材成分の拡散距離を制限することで、回路基板の熱サイクル特性が向上できるとの知見を得たものである。
【0013】
即ち、本発明は、セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に銅放熱板がチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブから選択される少なくとも一種の活性金属と錫とを含有するAg-Cuろう材を介して接合されてなるセラミックス回路基板であって、真空度1×10-3Pa以下、接合温度780℃~850℃、保持時間10~60分で接合し、ろう材中のAg成分の銅板への拡散距離が10μm~80μmであり、且つ銅回路側と銅放熱板側の拡散距離の差が10μm未満であることを特徴とするセラミックス回路基板。
【0022】
本発明のろう材の厚みは、乾燥基準で5~40μmが好ましい。ろう材厚みが5μm未満では未反応の部分が生じる場合があり、一方、40μmを超えると、接合層を除去する時間が長くなり、生産性が低下する場合がある。塗布方法は特に限定されず、基板表面に均一に塗布できるスクリーン印刷法、ロールコーター法等の公知の塗布方法を採用することができる。
【0023】
本発明のAg成分の銅板への拡散距離は、10~80μmであり、且つ銅回路側と銅放熱板側の拡散距離の差が10μm未満であることが好ましく、更に好ましくは拡散距離が10~60μmである。Ag成分の拡散距離が10μmより短い場合、銅板とセラミックス基板との接合が不十分となる。一方、80μmより長い場合、銅板の硬度が増加するため熱サイクル試験の際にクラックの発生をし易い傾向に進行し、銅板の剥離が発生する可能性が高くなるためである。また、銅回路側と銅放熱板側の拡散距離の差が10μm以上であると回路形成時のエッチング速度に差が生じやすくなり、回路パターンの精度が悪化してしまう可能性がある。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板に、銀粉末(福田金属箔粉工業(株)製:AgC-BO)90質量部および銅粉末(福田金属箔粉工業(株)製:SRC-Cu-20)10質量部の合計100質量部に対して、チタン((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製:TSH-350)を3.5質量部及び錫(三津和薬品化学:すず(粉末)<-325mesh>)を3質量部含む活性金属ろう材を塗布し、回路面に厚み0.3mm、裏面に0.3mmの無酸素銅板を1.0×10-3Pa以下の真空中にて830℃且つ60分の条件で接合した。
【0028】
接合した銅板に、スクリーン印刷によりUV硬化型エッチングレジストを回路パターンに印刷し、UV硬化させた後、さらに放熱面形状を印刷しUV硬化させた。これをエッチャントとして塩化第二銅水溶液にてエッチングをおこない、続いて60℃のチオ硫酸アンモニウム水溶液とフッ化アンモニウム水溶液で随時処理し、回路パターンと放熱板パターンを形成し、ろう材の金属成分やろう材厚の異なった回路基板の中間体を種々製造した。
【0029】
ろう材中Ag成分の銅板への拡散距離および回路基板の耐ヒートサイクル評価は下記の方法にて評価した。
<ろう材中Ag成分の銅板への拡散距離>
ろう材中Ag成分の銅板への移動はEPMA(電子プローブマイクロアナライザ)を用いて観察した。またその拡散距離は積層方向において、接合層と銅板との接合面からAg成分が最も拡散した部分までの距離のことである。測定法は次の通りである。接合面付近の銅板断面から任意の3個所を選び、各個所について接合面に水平方向に50μmの範囲をEPMAで観察し、最もAgの移動距離が長かったものをろう材中Ag成分の銅板への拡散距離とする。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2~7、比較例1~4]
表1に示す条件を変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
【表1】
[図:0001417616000006.jpg]
イ 引用文献10に記載された発明
(ア)【0031】の記載より、引用文献10の実施例2については、表1に示す条件を変えたこと以外は、実施例1と同様である。
【0027】、【0028】より、引用文献10の実施例2(上記アより、実施例1についての記載を援用する。)のセラミックス回路基板は、厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板に、活性金属ろう材を塗布し、回路面に無酸素銅板を接合し、接合した銅板に、回路パターンと放熱板パターンを形成したものである。
また、【0013】の記載より、回路パターンと放熱板パターンとは、ろう材層を介して、セラミックス基板の両面に形成されるものであり、【0022】より、塗布方法は、スクリーン印刷法を採用したものである。
なお、実施例2におけるろう材層の厚みは不明であるが、【0022】の記載より、5~40μmのいずれかであるといえる。
そうすると、引用文献10の実施例2のセラミックス回路基板は、厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板と、セラミックス基板の一方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層と、セラミックス基板の他方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層と、一方の面に塗布されたろう材層を介して形成された回路パターンが形成される無酸素銅板と、他方の面に塗布されたろう材層を介して接合された放熱板パターンが形成される無酸素銅板とを備えるものである。
(イ)【表1】の実施例2の記載より、接合後のAg拡散距離は、銅回路側が18μmで、銅放熱板側が20μmであって、その差は、2μmである。
(ウ)以上をまとめると、引用文献10には実施例2として以下の発明(以下、「引用発明10」という。)が記載されている。
厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板と、
セラミックス基板の一方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層と、
セラミックス基板の他方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層と、
一方の面に塗布されたろう材層を介して形成された回路パターンが形成される無酸素銅板と、
他方の面に塗布されたろう材層を介して接合された放熱板パターンが形成される無酸素銅板とを備え、
接合後のAg拡散距離は、銅回路側が18μmで、銅放熱板側が20μmであって、その差は、2μmである
セラミックス回路基板。
(7)引用文献11(再表2018/221493号)
ア 引用文献11に記載された事項
引用文献11には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0024】
本発明のセラミックス回路基板は、接合後のろう材層の連続率が80%以上であることを特徴とする。ここでろう材層の連続率とは、Agを主成分とする合金の連続性である。ろう材層の連続率は作製したセラミックス回路基板の断面調整を行い、走査型電子顕微鏡にて倍率500倍の視野で無作為に3箇所観察し、計測することで求められる。連続率は3箇所の視野で計測した値の平均値とする。ろう材層の構造は、Agを主成分とする合金とそれ以外の合金で検出強度が異なるためにコントラストが異なっており、その厚みと割合を観察することができる。ろう材層の連続率は、以下の式(I)に従って、倍率500倍の視野においてAgを主成分とする合金の厚みが1μm以下である長さ(ろう材不連続長さ)を計測し、全体長さとの差を全体長さで除することで求めた。
ろう材層の連続率(%)=(全体長さ-ろう材不連続長さ)/全体長さ×100・・・(I)
ろう材層の連続率は耐熱サイクル性の観点から、80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。80%未満の場合には熱ストレスが局所的に集中し易くなり、耐熱サイクル性が低下し易い。
[図:0001417616000007.jpg]
【0024】、【図1】、【図2】より、ろう材層3は、セラミック基板1や銅板4に比べて、コントラストが異なることが記載されているといえる。
(8)引用文献12(国際公開2017/56666号)
ア 引用文献12に記載された事項
引用文献12には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
[0085](実施例)
(実施例1~6、比較例1~3および参考例1~2)
窒化珪素基板として、厚さが0.32mmであり、長手方向(L1)の長さが60mmであり、短辺方向(L2)の長さが40mmである基板を用意した。この窒化珪素基板は、3点曲げ強度が600MPaであり、熱伝導率が90W/m・Kであり、破壊靭性値が6.5MPa・m1/2である。また、銅板を接合する前の窒化珪素基板の反り量は、長辺方向側の反り量SL1=0.02mm、短辺方向の反り量SL2=0.01mmである基板を用いた。
[0086] 次に、金属板としての銅板を用意した。また、活性金属ろう材原料として、Ag(60wt%)と、Cu(30wt%)と、In(8wt%)と、Ti(2wt%)とから成る原料混合体を用意した。この原料混合体を樹脂バインダと混合して活性金属ろう材ペーストを調製した。窒化珪素基板の両面に上記活性金属ろう材ペーストを塗布し、銅板を配置し、1×10-3Pa以下の真空雰囲気中で、温度780~830℃に加熱し銅板を接合する加熱工程を実施した。
[0087] また、加熱接合した窒化珪素/銅回路基板の表金属板をエッチング加工してパターニングを実施した。また、表金属板および裏金属板の側面をエッチングして、ろう材のはみ出し部の長さWおよび金属板の側面の傾斜角度θを制御した。その後、応力を負荷しながら加熱して所定の反り量を得るように調整した。
[0090] 上記製造方法で得られた窒化珪素回路基板について、長辺方向側の反り量SL1、短辺方向の反り量SL2および反りの方向を測定した。反り量の測定は、図2に示したように、窒化珪素基板の一端から他端まで直線を引き、基板がその直線から最も離れた距離を反り量とした。また、対角線方向の反り量SL3も測定した。その結果を表2に示す。
[0091]
[図:0001417616000008.jpg]
[0092] 実施例1~3は第一の窒化珪素回路基板に係るものである。また、実施例4~6は第二の窒化珪素回路基板に係るものである。また、比較例1は反りが無いものである。また、比較例2および比較例3は反り量が大きなものとした。参考例1は金属板端部の角度が過大である場合を示し、参考例2はろう材のはみ出し部の長さが過少である場合を示すものである。
以上より、引用文献12には、窒化珪素回路基板における、銅板の接合前後における長辺方向、短辺方向、対角線方向の反り量に関して記載されているといえる。
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和6年1月11日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1.(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記 (引用文献については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規性)について
・請求項1、2に対して、引用文献1
●理由2(進歩性)について
引用文献1を主引例とした場合
・請求項3に対して、引用文献1
・請求項5に対して、引用文献1及び引用文献4
引用文献2を主引例とした場合
・請求項1~3に対して、引用文献2及び引用文献3
・請求項5に対して、引用文献2~引用文献4
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2020/184510号(特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した甲第5号証)
2.特開2021-159926号公報(特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した甲第3号証、特許異議申立人茂木早苗が提出した甲第3号証)
3.特開2015-174097号公報(特許異議申立人中和正一が提出した甲第2号証)
4.特開2007-45160号公報(特許異議申立人茂木早苗が提出した甲第5号証)
2 当審の判断
(1)引用文献1を主引例とした場合
ア 訂正発明1について
(ア)訂正発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「高い絶縁性を有し平板状の窒化ケイ素セラミックス基板」は、訂正発明1の「平板状のセラミックスからなる絶縁基材」に相当する。
b スクリーン印刷により、ろう材は基板に塗布されるものであるから、引用発明1の「前記窒化ケイ素セラミックス基板の第1の主面にスクリーン印刷法により設けられた第1のろう材層」、「前記窒化ケイ素セラミックス基板の第2の主面にスクリーン印刷法により設けられた第2のろう材層」は、それぞれ、訂正発明1の「前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層」、「前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層」に相当する。
c 引用発明1の「前記第1のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板の前記第1の主面側に固定された第1の銅板」、「前記第2のろう材層を介して前記窒化ケイ素セラミックス基板の前記第2の主面側に固定された第2の銅板」は、それぞれ、訂正発明1の「前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層」、「前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層」に相当する。
d 引用発明1の第1のろう材層及び第2のろう材層は、ともに0.1μm以上3μm以下の厚さであることから、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、2.9(3-0.1)μm以下である。
そうすると、引用発明1と訂正発明1とは「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である」点で共通する。
しかし、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明1は、「0.1μm以上3μm以下」である点で相違する。
e 引用発明1の「接合基板」は、窒化ケイ素セラミックス基板を含むものであるから、訂正発明1の「セラミックス基板」に相当する。
f 上記a~eによれば、訂正発明1と引用発明1とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である、
セラミックス基板。
(相違点1)
「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明1は、「0.1μm以上3μm以下」である点。
(イ)相違点についての検討
訂正発明1と引用発明1とは上記(ア)fのように相違点1を有するものであるから、訂正発明1は引用発明1ではない。
イ 訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を引用する発明であるから、引用発明1との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)fに掲げた相違点1を含むものである。
したがって、訂正発明2は引用発明1ではない。
ウ 訂正発明3について
訂正発明3は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明1との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)fに掲げた相違点1を含むものである。
上記相違点1について検討する。
引用文献1の[0029]の記載から、引用発明1は、銅板111及び113の端部への応力の集中がそれぞれはみ出し部121及び123により効果的に緩和されるようにするために、0.1μm以上3μm以下というわずかな厚さしか有さないように構成したものである。
そのような引用発明1において、ろう材層の厚さを「0.1μm以上3μm以下」であることに代えて「11.2μm以上」とし、相違点1に係る構成とする動機付けはなく、相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到しうるものであると認めることができない。
したがって、訂正発明3は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 訂正発明5について
訂正発明5は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明1との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)fに掲げた相違点1を含むものである。
引用文献4には、セラミックス焼結体の両面に金属板を積層した後に分割する技術が記載されているだけであって、相違点1に関連する構成ではない。
そして、上記ウで検討したように、引用発明1において、相違点1に係る構成とする動機付けはなく、相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到しうるものであると認めることができない。
したがって、訂正発明5は、引用発明1及び引用文献4に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)引用文献2を主引例とした場合
ア 訂正発明1について
(ア)訂正発明1と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「平板状であり絶縁性の高いセラミックス基板である窒化アルミニウム基板」は、訂正発明1の「平板状のセラミックスからなる絶縁基材」に相当する。
b 引用発明2の「前記窒化アルミニウム基板の第1の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第1のろう材」、「前記窒化アルミニウム基板の第2の主面にスクリーン印刷することにより塗布された第2のろう材」、「窒化アルミニウム基板の第1の主面が覆われるように接触配置させた第1の銅板」、「窒化アルミニウム基板の第2の主面が覆われるように接触配置させた第2の銅板」は、それぞれ、訂正発明1の「前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層」、「前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層」、「前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層」、「前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層」に相当する。
c 「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明2は、「10~30μm」である点で相違する。
d 「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」に関して、訂正発明1は、「4.0μm以下」であるのに対し、引用発明2は、その差が特定されていない点で相違する。
e 引用発明2の「金属-セラミックス接合基板」は、セラミックス基板を含むものであるから、訂正発明1の「セラミックス基板」に相当する。
f 上記a~eによれば、訂正発明1と引用発明2とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備える、
セラミックス基板。
(相違点2)
「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明2は、「10~30μm」である点。
(相違点3)
「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」に関して、訂正発明1は、「4.0μm以下」であるのに対し、引用発明2は、その差が特定されていない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点3について先に検討する。
引用発明2において、セラミック基板の各主面にスクリーン印刷することによりろう材を塗布し、銅板を接触配置した際の各ろう材の厚さは、10~30μmである。
そして、引用文献3には、テープ状の活性金属ろう材層(厚さ0.05mm)と、テープ状の銅板(厚さ0.3mm)とを圧延ロールにてクラッド接合した複合材料における活性金属ろう材層の厚さが15μm±0.3μmであり、当該複合材料をセラミック基板に接合する技術が記載されている。
引用文献3に記載された技術のろう材層の厚さは、引用発明2のろう材層の厚さの範囲内であることから、引用発明2において、各主面にスクリーン印刷することによりろう材を塗布し、銅板を接触配置する構成に代えて、引用文献3のセラミック基板にテープ状のろう材層と銅板とをクラッド接合する構成とすることについては、当業者が容易に想到しうるものであるといえる。
そして、そのようにした場合には、ろう材層の厚さが15μm±0.3μmとなり、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、0.6(15.3-14.7)μm以下であるから、本件発明1の「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である」の範囲内となる。
しかし、当該引用発明2に引用文献3に記載された技術を適用した構成は、セラミック基板にテープ状のろう材層と銅板とをクラッド接合する構成であって、スクリーン印刷法によって塗布して形成されたものではない。すなわち、当該適用により、形式的には相違点3に係る事項が想到できたとしても、スクリーン印刷法によって塗布して形成されたものではないとの別の相違点が生じるものである。そして、当該相違点を解消するためには、スクリーン印刷法から複合材料をセラミック基板に接合する技術に変更したものを、スクリーン印刷法に戻す変更が必要であり、そのような変更には動機付けがない。よって、引用発明2に引用文献3に記載された技術を適用する際に、あわせて当業者が適宜なし得た事項とはいえない。
すなわち、引用発明2に引用文献3に記載された技術を適用しても、訂正発明1を当業者が容易に発明をすることはできない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、訂正発明1は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 訂正発明2、3、5について
訂正発明2、3、5は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明2との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)fに掲げた相違点2、3を含むものである。
そして、上記ア(イ)で検討したように、相違点3に係る構成を含む訂正発明1は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用文献4には、セラミックス焼結体の両面に金属板を積層した後に分割する技術が記載されているだけであって、相違点3に関連する構成ではない。
したがって、訂正発明2、3は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、訂正発明5は、引用発明2、引用文献3に記載された技術、引用文献4に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 特許異議申立人茂木早苗が提出した令和6年6月4日付け意見書における主張について
特許異議申立人茂木早苗は、令和6年6月4日付け意見書において、訂正発明1~5に対して、概略以下のような主張(以下、それぞれの主張を「主張1」、「主張2」という。)をしている。
主張1
訂正発明1は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームであり、請求項に物の製造方法が記載されている場合であっても、その発明の要旨は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定されるものと解するのが相当であるし、ろう材層に関して、「スクリーン印刷法によって塗布して形成」することが、どのような構造、特性を表すものなのか、本件特許の出願時の技術常識をもってしても明らかではないため、訂正発明1における「スクリーン印刷法によって塗布して形成されたろう材層」は、対比構成における「クラッド接合されたテープ状の活性金属ろう材層」と、構造、特性等が同ーであるものとして認定されるのが相当であって、訂正発明1と対比構成との間に実質的な相違点が存在するとはいえない。(意見書4~5頁)
主張2
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において、その製造方法が記載されていると、一般的には、当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか、又は物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり、本件明細書には、ろう材層がスクリーン印刷法によって塗布して形成される場合に、そのろう材層がどのような構造、特性を有するかについて、何ら記載されていないので、訂正発明1~5は、明確でない。(意見書5頁)
主張1について検討するに、「スクリーン印刷法によって塗布して形成されたろう材層」と「クラッド接合されたテープ状の活性金属ろう材層」とは、光学顕微鏡等で観察すればその構造等が異なることは、当業者にとって明らかなことであるから、「スクリーン印刷法によって塗布して形成されたろう材層」を備える訂正発明1と、引用発明2に引用文献3に記載された技術を適用した「クラッド接合されたテープ状の活性金属ろう材層」を備える構成との間に実質的な相違点が存在することは明らかなことである。
主張2について検討するに、本件明細書には、ろう材層がスクリーン印刷法によって塗布して形成される場合に、そのろう材層がどのような構造、特性を有するかについて、何ら記載されていないとしても、先記したように、「スクリーン印刷法によって塗布して形成されたろう材層」と「クラッド接合されたテープ状の活性金属ろう材層」とは、その構造等が異なることは、当業者にとって明らかなことであるから、訂正発明1~5は、明確である。
したがって、特許異議申立人茂木早苗の主張を採用することはできない。
4 まとめ
したがって、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知において、採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)記載不備に関して
ア 各特許異議申立人の主張
各特許異議申立人は、特許異議申立書において、記載不備に関する以下のような主張をしている。
(ア)特許異議申立人中和正一の主張
「本件特許発明6は、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下」とする製法ではない。上述したように、実際の面内の厚さバラツキが4.0μmより大きくなっているにも関わらず、任意の箇所で厚さの差を4.0μm以下にする具体的な方法については本件明細書等には何ら記載されておらず、その方法も周知のものでもない。このように、本件明細書等には、その発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が、本件特許発明1~6を実施できる程度に具体的な製法が明確かつ十分に記載されておらず、実施可能要件を満たしていない。」(特許異議申立人中和正一が提出した特許異議申立書20頁)
(イ)特許異議申立人寺澤佳奈美の主張
a 「本件請求項1は、第1のろう材層の厚さと、第2のろう材層の厚さとの差を規定する。しかし、本件明細書にはろう材層の厚さの定義もなく、その測定方法についても記載がない。
・・・どのような測定方法や判断基準を採用するかによってろう材層の厚さは異なり、その差「4.0μm以下」は一意に決定することができない。
したがって、本件請求項1の記載は不明確である。
本件請求項1を引用する本件請求項2及び3も同じく不明確である。」(特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した特許異議申立書6頁、以下、「寺澤主張1」という。)
b 「一般的に、セラミックス基板における反りの発生は、セラミックス基板を構成する部材間の熱膨張率に差があること、より具体的には、絶縁基材の両面における熱膨張に不均衡があることによって生じるものであり、このことは本件出願時の技術常識である・・・上述のような熱膨張の不均衡を生じさせる因子としては、ろう材層の厚さの差の他に、絶縁基材の表裏におけるろう材層の面積の違い、ろう材層に含まれる成分の違い、絶縁基材の両面に接合される金属層の厚み、面積、体積の違い、金属層を構成する金属種の違いなど複数の因子が存在する。
そうすると、当業者には、このような因子が存在する場合に、第1及び第2のろう材層の厚みの差分を、意味は不明であるがとりあえず「4.0μm以下」としさえすれば、セラミックス基板の反りを抑制できるとは直ちに認識されない。・・・
以上のとおりであるから、当業者は、上述した熱膨張の不均衡を生じさせる因子が存在する態様を含みながら、第1及び第2のろう材層の厚さの差が意味の不明な「4.0μm以下」であるというだけの本件発明により、所期の課題が解決されるとは認識しない。・・・
したがって、本件請求項1~3の記載は、サポート要件を充足するものとはいえない。」(特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した特許異議申立書7~9頁、以下、「寺澤主張2」という。)
c 「・・・ろう材層の厚みを特定する方法が不明である。
また、本件明細書の記載及び当業者の技術常識からは、実施例のセラミックス基板の製造に実際に使用された絶縁基材、第1のろう材層、第2のろう材層、第1の金属層、及び第2の金属層がどのようなものを用いたかが不明である。
したがって、当業者といえども、実施例のセラミックス基板を製造又は入手することも困難である。
また、本件明細書ではろう材層の厚みの差分の条件を充足させるために、ろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値を一致させる手段が用いられている・・・ようであるが、本件明細書には、その他、第1のろう材層及び第2のろう材層の厚さの差分を意味の不明な「4.0μm以下」に調整するための条件等は全く記載されていない。
もしも仮に、このような条件等が当業者の技術常識でないならば、当業者はこのような条件等の設定には過度の実験・試行錯誤を要するから、本件の発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさないことになる。」(特許異議申立人寺澤佳奈美が提出した特許異議申立書9~10頁、以下、「寺澤主張3」という。)
(ウ)特許異議申立人茂木早苗の主張
a 「本件特許の請求項1には、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である」ことが記載されている。
この記載に関して、「任意の箇所」とは、セラミックス基板から自由に選択される少なくともいずれかの1箇所を指すのか、あるいは、セラミックス基板における全ての箇所を指すのか、明確でない。・・・
したがって、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2-5は、明確ではない。」(特許異議申立人茂木早苗が提出した特許異議申立書35~37頁、以下、「茂木主張1」という。)
b 「本件特許発明1には、「第1のろう材層の厚さ」及び「第2のろう材層の厚さ」との記載がある。
それぞれのろう材の厚さを求めるためには、ろう材の外縁が明確である必要がある。
しかし、本件特許の出願時の技術常識によれば、ろう材は接合時に銅板と混ざりあい、ろう材と銅板の境界は判別できない。・・・
このため、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2-5は、明確ではない。」(特許異議申立人茂木早苗が提出した特許異議申立書37~38頁、以下、「茂木主張2」という。)
(2)新規性、進歩性に関して
取消理由通知において、採用しなかった特許異議申立理由のうち、新規性、進歩性に関しては、以下のとおりである。
なお、各特許異議申立人が証拠として提出した各甲号証については、上記第4で整理したように「引用文献1」~「引用文献12」と称する。
ア (新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ (進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
●理由ア(新規性)について
引用文献2を主引例とした場合(特許異議申立人寺澤佳奈美及び特許異議申立人茂木早苗の主張する異議申立理由)
・請求項1~3に対して、引用文献2(以下、「理由ア-1」という。)
引用文献9を主引例とした場合(特許異議申立人寺澤佳奈美の主張する異議申立理由)
・請求項1、2に対して、引用文献9(以下、「理由ア-2」という。)
引用文献10を主引例とした場合(特許異議申立人茂木早苗の主張する異議申立理由)
・請求項1~3に対して、引用文献10(以下、「理由ア-3」という。)
●理由イ(進歩性)について
引用文献2を主引例とした場合(特許異議申立人茂木早苗の主張する異議申立理由)
・請求項4に対して、引用文献2及び引用文献12(以下、「理由イ-1」という。)
引用文献5を主引例とした場合(特許異議申立人中和正一の主張する異議申立理由)
・請求項1~5に対して、引用文献5及び引用文献3及び引用文献6(以下、「理由イ-2」という。)
引用文献9を主引例とした場合(特許異議申立人寺澤佳奈美の主張する異議申立理由)
・請求項3に対して、引用文献9(以下、「理由イ-3」という。)
引用文献10を主引例とした場合(特許異議申立人茂木早苗の主張する異議申立理由)
・請求項4に対して、引用文献10及び引用文献12(以下、「理由イ-4」という。)
・請求項5に対して、引用文献10及び引用文献4(以下、「理由イ-5」という。)
2 当審の判断
(1)記載不備に関して
ア 特許異議申立人中和正一の主張について
セラミックス基板の製造方法については、請求項6及び明細書【0027】、【0031】~【0040】に明確に記載されており、請求項6に記載の製造方法によって、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であるセラミックス基板」を製造できることは、実施例の記載(【0031】~【0040】)から明らかなことである。厚さの差が4.0μmを超えるセラミックス基板が製造されたとしても、そのようなセラミックス基板については除外の対象となるものであり、実施可能要件の判断には影響しない。
また、明細書【0027】、【0031】~【0040】の記載によれば、面内の厚さバラツキが4.0μmより大きいことは、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である」ことと、必ずしも直接的な関係はなく、「絶縁基材2上の各部位におけるろう材30の厚さは、ろう材30の補給を行った後のスクリーン印刷の実行回数と相関がある」(【0027】)ものと把握される。してみれば、請求項6記載の製造方法により、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であるセラミックス基板」は製造されうるものである。
以上より、発明の詳細な説明の記載より、請求項1~6に係る発明は実施可能であるといえる。
したがって、特許異議申立人中和正一の記載不備に関する主張を採用することはできない。
イ 特許異議申立人寺澤佳奈美の主張について
(ア)寺澤主張1について
確かに、ろう材層の厚さの定義や測定方法についての具体的な記載は無いものの、ろう材層を作成した際にその厚さを測定することにより、ろう材層の厚さは一意に決定されるものであるし、その測定方法については当業者に知られた任意の方法を採用すれば良いだけのことである。
以上より、ろう材層の厚さを「4.0μm以下」とすることが不明確であるとはいえない。
(イ)寺澤主張2について
厚さの差以外にも様々な要素が反りの発生に関係することは、当業者にとって明らかなことであるが、本件訂正発明は、そのうちの厚さの差に着目し、「4.0μm以下」とすることにより反りが抑制できるものであって、実施例に示されるように、結果として課題が解決できたものであるといえる。
(ウ)寺澤主張3について
ろう材層の厚さを特定することについては、上記(ア)で検討したとおりであり、ろう材層を作成した際にその厚さを測定することにより、ろう材層の厚さは一意に決定されるものである。
また、絶縁基材、第1のろう材層、第2のろう材層、第1の金属層、及び第2の金属層については、当業者にとって知られている材料から適宜選択して使用すれば良いだけのことである。
更に、スクリーン印刷の回数値を一致させることにより、両面の厚みの差が少なくことは明らかであり、結果的に「4.0μm以下」に調整されるものである。
以上より、発明の詳細な説明の記載より、請求項1~3に係る発明は実施可能であるといえる。
(エ)まとめ
したがって、特許異議申立人寺澤佳奈美の記載不備に関する主張を採用することはできない。
ウ 特許異議申立人茂木早苗の主張について
(ア)茂木主張1について
「任意の箇所」とは、言葉通り、自由に選択した箇所との意味であり、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下である」とは、セラミックス基板における自由に選択した箇所について表裏の厚さの差が4.0μm以下であることを意味するものであって、セラミックス基板の全ての箇所を指すものではないことは明らかであり、その記載が不明確であるとはいえない。
(イ)茂木主張2について
確かに、ろう材層と銅板との境界が判別しにくい構成も考えられるものの、上記イ(ア)で検討したように、ろう材層を作成した際にその厚さを測定することにより、ろう材層の厚さは一意に決定されるものである。
以上より、請求項1~5に係る発明は明確である。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人茂木早苗の記載不備に関する主張を採用することはできない。
(2)新規性、進歩性に関して
上記1(2)より、主引例は、引用文献2、5、9、10のいずれかであるので、各引用文献を主引例としたものについて、以下で検討する。
ア 引用文献2を主引例とした場合(理由ア-1及び理由イ-1)
(ア)訂正発明1~3について
上記第5の2(2)ア(ア)fより、訂正発明1と引用発明2とは、相違点2、3を有するものである。
また、訂正発明2、3は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明2との相違点は、少なくとも、相違点2、3を含むものである。
したがって、訂正発明1~3は引用発明2ではない。
(イ)訂正発明4について
上記第5の2(2)ア(イ)より、訂正発明1と引用発明2との相違点3について、スクリーン印刷法である引用発明2において、スクリーン印刷法とは異なる構成である引用文献3に記載された技術を適用した構成において、再度、スクリーン印刷法に戻すようにすることは、当業者が容易に想到しうるものであると認めることができず、訂正発明1は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用文献12は、窒化珪素回路基板における、長辺方向の反り量と短辺方向の反り量に関する技術が記載されているものの、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」については、記載も示唆も無く、相違点3に係る構成に関連する文献ではない。
したがって、訂正発明1を直接又は間接に引用する訂正発明4は、引用文献2及び引用文献12に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 引用文献5を主引例とした場合(理由イ-2)
(ア)訂正発明1について
a 訂正発明1と引用発明5とを対比する。
(a)引用発明5の「板状のセラミックス基板」は、セラミックスが絶縁性であることから、訂正発明1の「平板状のセラミックスからなる絶縁基材」に相当する。
(b)スクリーン印刷により、ろう材はセラミックス基板の両面に形成されるものであるから、引用発明5の「その一方の主面に設けられたろう材層14」、「その他方の主面に設けられたろう材層13」は、それぞれ、訂正発明1の「前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層」、「前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層」に相当する。
(c)引用発明5の「ろう材層14を介してろう付けされた放熱側金属板」、「ろう材層13を介してろう付けされた回路側金属板」は、それぞれ、訂正発明1の「前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層」、「前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層」に相当する。
(d)引用発明5のろう材層は、セラミックス基板の両面ともに厚さが10μmであるから、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明5は「10μm」である点で相違し、また、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、訂正発明1は、「4.0μm以下である」のに対し、引用発明5は、その差が特定されていない点で相違する。
(e)引用発明5の「絶縁基板」は、セラミックス基板を含むものであるから、訂正発明1の「セラミックス基板」に相当する。
(f)上記(a)~(e)によれば、訂正発明1と引用発明5とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備える、
セラミックス基板。
(相違点4)
「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明5は「10μm」である点。
(相違点5)
「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」に関して、訂正発明1は、「4.0μm以下」であるのに対し、引用発明5は、その差が特定されていない点。
b 相違点についての検討
相違点4、5についてまとめて検討する。
引用文献3には、テープ状の活性金属ろう材層(厚さ0.05mm)と、テープ状の銅板(厚さ0.3mm)とを圧延ロールにてクラッド接合した複合材料における活性金属ろう材層の厚さが15μm±0.3μmであり、当該複合材料をセラミック基板に接合する技術が記載されている。
また、引用文献6には、スクリーン印刷によってろう材ペーストをセラミックス基板上に印刷する場合に、ろう材ペーストの厚さが不均一になるので、ペーストの厚さを均一にすることができるペーストのスクリーン印刷方法を提供することを目的とするものであって、ろう材ペーストを印刷する際のスキージの速度の減速や増速を行うことにより、ろう材の厚さのばらつきを小さくする技術が記載されている。
引用発明5において、ろう材ペーストの厚さが10μmになるようにスクリーン印刷して形成されたろう材層を介して、放熱側金属板及び回路側金属板をろう付けする構成に代えて、引用文献3のセラミック基板にテープ状の厚さが15μm±0.3μmであるろう材層と銅板とをクラッド接合する構成とすることについて、引用発明5と引用文献3に記載された技術とは、ろう材層の形成の仕方、及び、ろう材層の厚さが異なるものであるから、引用発明5に引用文献3に記載された技術を適用することは当業者が容易に想到しうるものであるといえない。
仮に、引用発明5に引用文献3に記載された技術を適用することが当業者にとって容易に想到しうるものであったとしても、引用発明5に引用文献3に記載された技術を適用した構成は、ろう材層をスクリーン印刷法によって塗布して形成されたものに代え、セラミック基板にテープ状のろう材層と銅板とをクラッド接合する構成であり、スクリーン印刷法によって塗布して形成されたものではない。よって、前記(2)ア(イ)の相違点3についての検討と同様に、引用発明5に引用文献3に記載された技術を適用しても、訂正発明1を当業者が容易に発明することはできない。
また、引用文献6に記載されている技術は、スクリーン印刷した際に、片面のろう材の厚さのばらつきを小さくする技術であって、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」について検討した構成ではない。
したがって、訂正発明1は、引用発明5、引用文献3に記載された技術、引用文献6に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)訂正発明2~5について
訂正発明2~5は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明5との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点4、5を含むものである。
そして、上記(ア)bで検討したように、相違点4、5に係る構成を含む訂正発明1は、引用発明5、引用文献3に記載された技術、引用文献6に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、訂正発明2~5は、引用発明5、引用文献3に記載された技術、引用文献6に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 引用文献9を主引例とした場合(理由ア-2及び理由イ-3)
(ア)訂正発明1について
a 訂正発明1と引用発明9とを対比する。
(a)引用発明9の「寸法が50mm×30mm×(厚み)0.64mmで熱伝導率が80W/m・Kの窒化珪素基板」は、厚みが0.64mmと薄い形状のものであり、珪素が絶縁性であることから、訂正発明1の「平板状のセラミックスからなる絶縁基材」に相当する。
(b)ろう材箔は窒化珪素基板の両面に形成されるものであるから、引用発明9の「窒化珪素基板の表面に回路パターン形状に切断された活性金属を含む銀、銅、チタンから成る厚み50μmのろう材箔」、「窒化珪素基板の裏面に放熱板形状に切断された活性金属を含む銀、銅、チタンから成る厚み50μmのろう材箔」は、それぞれ、訂正発明1の「前記絶縁基材の第1の主面に形成された第1のろう材層」、「前記絶縁基材の第2の主面に形成された第2のろう材層」である点で共通する。
しかし、訂正発明1の第1のろう材層及び第2のろう材層は、「スクリーン印刷法によって塗布して形成」されるのに対し、引用発明9のろう材箔は、そのように特定されていない点で相違する。
(c)引用発明9の「ろう材箔を介して接触させた金属回路板として寸法が40mm×25mm×(厚み)1.0mmの無酸素銅板」、「ろう材箔を介して接触させた金属放熱板として寸法が40mm×25mm×(厚み)0.8mmの無酸素銅板」は、それぞれ、訂正発明1の「前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層」、「前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層」に相当する。
(d)引用発明9のろう材層は、窒化珪素基板の両面ともに厚みが50μmであるから、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1と引用発明9とは「11.2μm以上」である点で一致する。
しかし、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、訂正発明1は、「4.0μm以下である」のに対し、引用発明9は、その差が特定されていない点で相違する。
(e)引用発明9の「セラミックス基板」は、訂正発明1の「セラミックス基板」に相当する。
(f)上記(a)~(e)によれば、訂正発明1と引用発明9とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さが11.2μm以上である、
セラミックス基板。
(相違点6)
訂正発明1の第1のろう材層及び第2のろう材層は、「スクリーン印刷法によって塗布して形成」されるのに対し、引用発明9のろう材箔は、そのように特定されていない点。
(相違点7)
「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」に関して、訂正発明1は、「4.0μm以下」であるのに対し、引用発明9は、その差が特定されていない点。
b 相違点についての検討
訂正発明1と引用発明9とは上記a(f)のように相違点6、7を有するものであるから、訂正発明1は引用発明9ではない。
(イ)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を引用する発明であって、引用発明9との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点6、7を含むものであるから、訂正発明2は引用発明9ではない。
(ウ)訂正発明3について
訂正発明3は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明9との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点6、7を含むものである。
以下では、事案に鑑み相違点7について検討する。
引用発明9は、両面の厚みの差についての言及がなく、引用発明9から、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」が「4.0μm以下」であることが、当業者が容易に想到しうるものであると認めることができない。
なお、引用文献3には、テープ状の活性金属ろう材層(厚さ0.05mm)と、テープ状の銅板(厚さ0.3mm)とを圧延ロールにてクラッド接合した複合材料における活性金属ろう材層の厚さが15μm±0.3μmであり、当該複合材料をセラミック基板に接合する技術が記載されているので、引用文献3に記載された技術を組み合わせることが容易に想到しうるものであるかについて、念のため検討するに、引用発明9と引用文献3に記載された技術とは、ろう材層の厚さが大幅に異なるものであるから、引用発明9に引用文献3に記載された技術を適用することは当業者が容易に想到しうるものであるといえない。仮に、引用発明9に引用文献3に記載された技術を適用することが当業者が容易に想到しうるものであったとしても、引用発明9に引用文献3に記載された技術を適用した構成は、ろう材層をスクリーン印刷法によって塗布して形成されたものに代え、セラミック基板にテープ状のろう材層と銅板とをクラッド接合する構成であり、スクリーン印刷法によって塗布して形成されたものではない。よって、前記(2)ア(イ)の相違点3についての検討と同様に、引用発明9に引用文献3に記載された技術を適用しても、訂正発明1を当業者が容易に発明することはできない。
エ 引用文献10を主引例とした場合(理由ア-3、理由イ-4、理由イ-5)
(ア)訂正発明1について
a 訂正発明1と引用発明10とを対比する。
(a)引用発明10の「厚み0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板」は、セラミックスが絶縁性であることから、訂正発明1の「平板状のセラミックスからなる絶縁基材」に相当する。
(b)引用発明10の「セラミックス基板の一方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層」、「セラミックス基板の他方の面にスクリーン印刷法により塗布され、厚みが5~40μmのいずれかであるろう材層」は、それぞれ、訂正発明1の「前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層」、「前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層」に相当する。
(c)引用発明10の「一方の面に塗布されたろう材層を介して形成された回路パターンが形成される無酸素銅板」、「他方の面に塗布されたろう材層を介して接合された放熱板パターンが形成される無酸素銅板」は、それぞれ、訂正発明1の「前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層」、「前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層」に相当する。
(d)引用発明10のろう材層は、セラミックス基板の両面ともに厚さが5~40μmのいずれかであるから、「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明5は「5~40μmのいずれか」である点で相違し、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、訂正発明1は、「4.0μm以下である」のに対し、引用発明10は、その差が特定されていない点で相違する。
(e)引用発明10の「セラミックス回路基板」は、訂正発明1の「セラミックス基板」に相当する。
(f)上記(a)~(e)によれば、訂正発明1と引用発明10とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面にスクリーン印刷法によって塗布して形成された第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備える、
セラミックス基板。
(相違点8)
「前記第1の金属層の周縁部及び中央部における前記第1のろう材層の厚さ及び前記第2の金属層の周縁部及び中央部における前記第2のろう材層の厚さ」に関して、訂正発明1は、「11.2μm以上」であるのに対し、引用発明10は「5~40μmのいずれか」である点。
(相違点9)
「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差」に関して、訂正発明1は、「4.0μm以下」であるのに対し、引用発明10は、その差が特定されていない点。
b 相違点についての検討
訂正発明1と引用発明10とは上記a(f)のように相違点8、9を有するものであるから、訂正発明1は引用発明10ではない。
なお、特許異議申立人茂木早苗は、特許異議申立書において、上記相違点9に関して、以下のように主張している。
「甲第2号証(当審注:引用文献11)の図面の図1及び図2に記載された断面写真において、セラミックス基板1や銅板4に比べて、より白い領域がろう材層3として特定されている。これは、甲第2号証の段落【0024】に記載されたように、「ろう材層の構造は、Agを主成分とする合金とそれ以外の合金で検出強度が異なるためにコントラストが異なっており、その厚みと割合を観察することができる」ためである。
Agを含む領域は、断面写真において、Cuの領域やSiの領域に比べて、より明るく写る。また、甲第2号証の図1及び図2に記載された断面写真からは、Agを含む領域がろう材層3から銅板4方向に向けてつながっていることが分かる。
(中略)
このように、ろう材層に含まれるAgの成分をもってろう材層と銅板との境界を定義することは、本件特許の分野における技術常識である。
したがって、甲第1号証(当審注:引用文献10)に記載された「Agの拡散した領域」は、ろう材層から銅板に向けてつながった構造であるため、ろう材層と同義である。
そして、甲第1号証には、段落【0033】に記載された【表1】の実施例2-13において、銅回路側と銅放熱板側との間で、接合後のAg拡散距離の差が4.0μm以下であることが記載されている。
(中略)
すなわち、甲第1号証には、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと、前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が、4.0μm以下であることが、実質的に記載されている。」(特許異議申立書25~26頁)
特許異議申立人茂木早苗の上記相違点9に関する主張について検討する。
引用発明10の接合後のAg拡散距離は、銅回路側が18μmで、銅放熱板側が20μmである。
そして、当該記載に関連する記載として、引用文献10には、以下のような記載がある。
「金属板中にAgなどのろう材成分が拡散する」(【0009】)
「金属板へのろう材成分の拡散距離を制限することで、回路基板の熱サイクル特性が向上できる」(【0012】)
「ろう材の厚みは、乾燥基準で5~40μmが好ましい。」(【0022】)
「Ag成分の銅板への拡散距離は、10~80μmであり、・・・更に好ましくは拡散距離が10~60μmである。」(【0023】)
「またその拡散距離は積層方向において、接合層と銅板との接合面からAg成分が最も拡散した部分までの距離のことである。」(【0029】)
すなわち、Ag拡散距離とは、ろう材層のAg成分が銅板中へと拡散した際の最大の拡散距離、すなわち、ろう材層を超え銅板中へと拡散した距離を示すことから、ろう材層の厚みとAg拡散距離が数値範囲として異なる範囲であって、Ag拡散距離の方が広い範囲であること等を考えるに、Ag拡散距離がろう材層の厚さを示すものであると認めることはできない。
また、引用文献11には、ろう材層3は、セラミック基板1や銅板4に比べて、コントラストが異なることが記載されているだけであって、Ag成分の拡散した距離が、ろう材層の厚さを示すことの根拠となるものではない。
したがって、特許異議申立人茂木早苗の上記相違点9に関する主張を採用することはできない。
(イ)訂正発明2、3について
訂正発明2、3は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明10との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点8、9を含むものであるから、訂正発明2、3は引用発明10ではない。
(ウ)訂正発明4について
引用文献12には、窒化珪素回路基板における、銅板の接合前後における長辺方向、短辺方向、対角線方向の反り量に関して記載されているものの、上記相違点9に関連する記載ではない。
上記(ア)で検討したように、引用発明10のAg拡散距離が、ろう材層の厚さを示すものであると認めることはできない以上、引用発明10に基いて相違点9に係る構成が当業者が容易に想到しうるものであるとはいえない。
そして、訂正発明4は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明10との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点8、9を含むものであるから、相違点9に係る構成を含む訂正発明1が、引用発明10に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、訂正発明4は、引用発明10及び引用文献12に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)訂正発明5について
引用文献4には、セラミックス焼結体の両面に金属板を積層した後に分割する技術が記載されているだけであって、上記相違点9に関連する記載ではない。
上記(ア)で検討したように、引用発明10のAg拡散距離が、ろう材層の厚さを示すものであると認めることはできない以上、引用発明10に基いて相違点9に係る構成が当業者が容易に想到しうるものであるとはいえない。
そして、訂正発明5は、訂正発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、引用発明10との相違点は、少なくとも、上記(ア)a(f)に掲げた相違点8、9を含むものであるから、相違点9に係る構成を含む訂正発明1が、引用発明10に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、訂正発明5は、引用発明10及び引用文献4に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
以上より、各特許異議申立人が主張する特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700915