特許異議申立
2025-700227
レーザー発色性カード
- 審判番号
- 2025-700227
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-027123
- 登録番号
- 7540165
- 請求日
- 2025年02月26日
- 審決日
- 2026年04月08日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 史朗
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】佐藤 惠一
- 審判長/審判官
- 審判長 濱本 禎広
- 審判官 山本 一
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1651.121-ZAA(B42D) / P1651.841-ZAA(B42D) / P1651.851-ZAA(B42D) / P1651.853-ZAA(B42D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条、特許法第126条第4項、特許法第29条第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7540165号発明「レーザー発色性カード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7540165号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
特許第7540165号の請求項1~2に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7540165号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年2月20日に出願され、令和6年8月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和7年2月26日に、その請求項1~2に係る特許について、特許異議申立人 佐藤 惠一(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがなされた。
本件特許異議の申立て以降の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和7年 4月23日付け 取消理由通知書
同年 6月13日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月24日 申立人より意見書の提出
同年10月24日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年12月10日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
令和8年 2月13日 申立人より意見書の提出
以下、令和7年12月10日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書でした訂正を「本件訂正」という。
なお、本件訂正により、令和7年6月13日提出の訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容について
本件訂正の請求の趣旨は、特許第7540165号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項1~訂正事項4からなるものである(下線は訂正箇所を示すために合議体が付した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「単層または複数層からなるポリカーボネート樹脂を主成分とするコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、スクリーン印刷による銀ベタ印刷層と、
該銀ベタ印刷層上に透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記銀ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カード。」と記載されているのを、
「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層と、
該ベタ印刷層上に透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有し、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードであって、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられていることを特徴とするレーザー発色性カード。」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「前記レーザー発色層上の一方の面に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カード。」と記載されているのを、
「前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カード。」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の明細書の段落【0006】に、
「上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
単層または複数層からなるポリカーボネート樹脂を主成分とするコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、スクリーン印刷による銀ベタ印刷層と、
該銀ベタ印刷層上に透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記銀ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードである。」と記載されているのを、
「上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層と、
該ベタ印刷層上に透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有し、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードであって、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられていることを特徴とするレーザー発色性カード。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の明細書の段落【0007】に、
「また、請求項2に記載の発明は、前記レーザー発色層上の一方の面に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カードである。」と記載されているのを、
「また、請求項2に記載の発明は、前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カードである。」に訂正する。
2 訂正の目的について
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1のうち、訂正前の「単層または複数層からなるポリカーボネート樹脂を主成分とするコア基材からなるコア層」との記載を、「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、」及び「前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、」との記載とする訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)は、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」ものがコア基材(複数層であれば、コア基材のそれぞれ)であるのか、コア層全体であるのか明瞭でなかったところ、「コア層」が、「全体としてポリカーボネート樹脂を主成分と」していることを明らかにするためのものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであると認められる。
イ 訂正事項1のうち、訂正前の「透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層」との記載を、「透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層」及び「前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有し、」との記載とする訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)は、訂正前の「透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層」が、透明外装基材とレーザー発色性基材が同一の基材であるのか、別基材であって積層されたレーザー発色層であるものを包含するのか明瞭でなかったところ、「レーザー発色性」と「透明性」の両方の特性を兼ね備えた同一の基材からなるレーザー発色層であることを明らかにしようとするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであると認められる。
ウ 訂正事項1のうち、訂正前の「スクリーン印刷による銀ベタ印刷層と」、「該銀ベタ印刷層上に」及び「前記銀ベタ印刷層と」との記載を「銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層と」、「該ベタ印刷層上に」及び「前記ベタ印刷層と」との記載とする訂正事項(以下「訂正事項1-3」という。)は、訂正前の「銀ベタ印刷層」が、「銀」成分を必須とすることをいうのか、それとも「銀」色であればよいのか、明瞭でなかったところ、「銀ペーストインクを用いた」ものであることを明らかにするものであり、また、訂正前の発明特定事項である「銀ベタ印刷層」の「スクリーン印刷法による」との製法を、「銀ペーストインクを用いた」ものに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするもの、又は、同項ただし書1号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
エ 訂正事項1のうち、訂正前の「絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カード。」との記載を「絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードであって、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられていることを特徴とするレーザー発色性カード。」との記載とする訂正事項(以下「訂正事項1-4」という。)は、訂正前の発明特定事項である「ベタ印刷層」と「レーザー発色層」の設けられている箇所を「平面視において前記レーザー発色性カードの全面」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。
オ 前記ア~エより、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」又は同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の発明特定事項である「アンカー層を備える」「レーザー発色層上の一方の面」を、「レーザー発色層上の外面側」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるために、段落【0006】における請求項1に関する記載を訂正事項1と同様に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正事項2の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるために、段落【0007】における請求項2に関する記載を訂正事項2と同様に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
3 新規事項追加の有無について
訂正事項1~4について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「明細書等」という)に記載した事項の範囲内の訂正であるかを判断する。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
明細書等【0017】には、「ポリカーボネートを主成分とする耐熱仕様のコア層11」との記載、及び、明細書等【0029】には、「コア層11は、非晶性樹脂を主成分として含む。コア層11は、例えば、白色である。コア層11の主成分は、コア層11を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、コア層11のなかで50質量%以上の含有率を有する成分である。具体的には、コア層11は、ポリカーボネート、もしくは、ポリカーボネートと非晶質ポリエステルとのポリマーアロイを主成分として含むことが好ましい。」との記載があるから、「コア層」が「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」ものであるとともに、明細書等【0006】に「単層または複数層からなる」「コア基材からなるコア層」と記載され、「コア層」が複数層からなるものを包含していることからすれば、「コア層」が「全体として」「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」ことは、明細書等に記載されていたと認められる。
イ 訂正事項1-2
明細書等【0017】には、「ポリカーボネートを主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層13aおよび13b」との記載があるとともに、【0031】には、「レーザー発色層13は、非晶性樹脂を主成分として含み、レーザー光の照射を受けて不可逆的に着色するレーザー着色性を有する。」との記載があり、また、【0032】には、「レーザー発色層13の主成分は、レーザー着色性を有する成分として、例えば炭素を含有する。」との記載があるから、「レーザー発色性基材」が「ポリカーボネート樹脂を主成分とし」、「レーザー着色性を有する成分を含有し」ていることは、明細書等に記載されていたと認められる。
ウ 訂正事項1-3
明細書等【0033】には、「銀ベタ印刷層12は、スクリーン印刷用に調整された銀ペーストインクによって形成される。」との記載が、【0042】には、「前記コアシートの両面に、銀ペーストインクによる前記銀ベタ印刷層をスクリーン印刷で形成した」との記載があるから、「銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層」は、明細書等に記載されていたと認められる。
エ 訂正事項1-4
(ア)明細書等【0024】には、「カード裏面への絵柄層15を、外装材を兼ねるレーザー発色層13bによって保護することにより、絵柄層15の損傷を抑えることができる。」との記載がある。また、明細書等【0041】には、「レーザー発色性基材として、・・・厚みが100μmのレーザー発色シートをそれぞれ用いた。」との記載があり、【0042】には、実施例として、「前記コアシートの両面に、銀ペーストインクによる前記銀ベタ印刷層をスクリーン印刷で形成したものと、銀ベタ印刷層を形成しないものの2種類を作製した。そしてこれら2種類のシートの両面に接着剤層を塗布したものを、それぞれ2枚の前記レーザー発色シートで挟み、プレス温度140℃の条件下で加熱プレスを行い、更にオーバーコート転写箔層を積層してカード形成用の積層体を得た。この積層体を雄雌金型でカード形状に打ち抜くことでカードを作製した。」との製法が記載されている。
カードの外装材が、カード全面を覆うものであることが技術常識であること、及び、レーザー発色シートを積層してからカード形状に打ち抜いて作製していることからみて、レーザー発色シート(レーザー発色層)は、平面視においてカードの全面に設けられていることは、明細書等に記載されていたと認められる。
(イ)明細書等【0033】には、「銀ベタ印刷層12は、スクリーン印刷用に調整された銀ペーストインクによって形成される。レーザー発色層を発色させるために入射されるレーザー光のうち、発色に寄与しなかった余剰光を該銀ベタ印刷層12で反射させることを目的とする。」との記載がある。また、【0042】には、前記(ア)でも示した「前記コアシートの両面に、銀ペーストインクによる前記銀ベタ印刷層をスクリーン印刷で形成した」との製法の記載がある。
そうすると、製法の記載から、銀ベタ印刷層は、コアシートの全面をベタで、すなわち、一様に塗りつぶして印刷されており、その目的からみてもレーザー発色層の発色可能な領域に対応して形成されるものであると理解することができるから、銀ベタ印刷層が、レーザー発色層と同様にカードの全面に設けられていることも、明細書等に記載されていたと認められる。
(ウ)なお、申立人は、令和8年2月13日提出の意見書3.(2)において、特許権者が訂正の根拠として示す、明細書等【0011】、【0023】及び【図3】には、ベタ印刷層とレーザー発色層とをレーザー発色性カードの全面に設けることは記載されていないと主張するが、前記(ア)及び(イ)のとおり、明細書等の全ての記載を参酌すれば、記載されていたと認められる。
(エ)以上のとおりであるから、「前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられている」ことは、明細書等に記載されていたと認められる。
(2)訂正事項2
明細書等【0021】には、「前記レーザー発色層13のうち表側、図では上側のレーザー発色層13a面上にスクリーン印刷でアンカー層14を形成した」と記載され、レーザー発色性カードの断面構造を示す【図2】から、レーザー発色層13の表側が外面側であることは明らかであるから、「レーザー発色層上の外面側に」「アンカー層を備える」ことは、明細書等に記載されていたと認められる。
(3)訂正事項3及び4
訂正事項3は、訂正事項1-1~1-4と同様の訂正であるから、前記(1)のとおり、明細書等に記載されていたと認められる。また、訂正事項4は、訂正事項2と同様の訂正であるから、前記(2)のとおり、明細書等に記載されていたと認められる。
(4)小括
前記(1)~(3)のとおりであるから、訂正事項1~4は、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正といえる。
したがって、本件訂正は、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条5項の規定に適合するものである。
4 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
前記2のとおり、訂正事項1、2は、特許請求の範囲を減縮する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、前記2のとおり、訂正事項3、4は、明細書の記載内容を特許請求の範囲と整合させるために行う訂正であって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、本件訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものである。
5 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~2について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~2に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
6 一群の請求項について
訂正前の請求項1~2について、請求項2は請求項1の記載を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、請求項1~2は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1~2により、本件訂正前の請求項1~2についてする本件訂正は、一群の請求項1~2について、訂正をするものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合するものである。
7 明細書の訂正と関係する請求項について
段落【0006】には請求項1に対応する記載がされているから、訂正事項3による明細書の訂正は請求項1に対応している。また、段落【0007】には請求項2に対応する記載がされているから、訂正事項4による明細書の訂正は請求項2に対応している。
そうすると、訂正事項3及び4は、一群の請求項1~2の全てについて、訂正をするものといえるから、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条第4項に適合するものである。
8 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、訂正事項1~4に係る訂正は、認めることができる。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について、訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり、本件訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1~2に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明2」といい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層と、
該ベタ印刷層上に透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有し、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードであって、
前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられていることを特徴とするレーザー発色性カード。
【請求項2】
前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カード。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1~2に係る特許に対して、当審において令和7年10月24日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下の理由を含むものである。
取消理由3(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~2に係る特許は、特許法29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開2016-215605号公報
甲第2号証:特開2011-148197号公報(周知技術を示す)
甲第3号証:特開2015-20796号公報(周知技術を示す)
甲第11号証:実願昭61-139543号(実開昭63-47181号)のマイクロフィルム(周知技術を示す)
甲第12号証:特開2004-249578号公報(周知技術を示す)
甲第15号証:特開2007-241188号公報(周知技術を示す)
甲第16号証:特開2013-233733号公報(周知技術を示す)
甲第17号証;特開平9-254573号公報(周知技術を示す)
甲第18号証:特開2019-25754号公報
甲第20号証:特開2009-72993号公報
以下各甲号証について、例えば甲第1号証であれば「甲1」のようにいうこともある。
第5 当審の判断
1 各証拠の記載内容
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、次のとおりの記載がある。なお、下線は合議体が付したものであり、以下同様である。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー発色性を有する非接触ICカードに関する。また、特にはカード券面へのレーザー印字を想定したものに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
カード券面へのレーザー印字は、海外を中心に身分証明用IDカードにおいて用いられており、レーザー発色層は発色性能が高いポリカーボネート基材を用いることが一般的である。(例えば、文献1~3参照)」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれらの問題点に対処するためになされたものであり、剛性を低下させずに低温での熱成形、雄雌金型でのパンチングを可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明は、内部にアンテナコイル有する単層又は複数層からなるコア基材と、コア基材の一方の面又は両方の面にレーザー発色性基材を有し、さらに両方の面の最外層に透明外装基材を有する非接触ICカードであって、
該外装基材が、結晶性ポリエステルまたは結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなり、
コア基材が、ポリエステル、ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイまたはポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造からなることを特徴とした非接触ICカードとする。
また、コア基材の両方の面にレーザー発色性基材を有することを特徴とする。
また、外装基材が、結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなり、ポリカーボネートの比率が20~80%であることを特徴とする。
また、コア基材が、非晶質ポリエステル、非晶質ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイまたは非晶質ポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造なることを特徴とする。
また、コア基材が、非晶質ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイまたは非晶質ポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造なり、ポリカーボネートの比率が20~80%であることを特徴とする。
また、コア基材、レーザー発色性基材、外装基材に含まれるポリカーボネートの割合が10~60%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温での熱成形が可能となり、さらに、加工性・外観品質を維持しつつ、剛性の高いカードにすることができる。」
「【0014】
<コア基材>
コア基材としては、ポリエステル単体もしくは、ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイ、もしくはポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造を用いることができる。また、ポリカードネートはTgが高いため低い温度でのラミネートができず、高温ではアンテナ基材の収縮が起こるので、低温での成形が好ましいため、ポリエステルもしくはポリエステルーPCアロイが好適に採用される。
ポリエステル樹脂は特に制限はないが、非晶性であることが望ましい。例として、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸及びエチレングリコールとの共重合体,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。また、イソシアネート等により架橋をさせても良い。
【0015】
コア基材は、アンテナを内蔵する必要があるため、熱成形時に変形する必要がある。
コア基材として、ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイ、もしくはポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造を用いる場合、熱成形の温度が100~140℃の場合、ポリカーボネートの比率を10~60%にするのが適している。これより少ないと成形時の流動性が高すぎ、これより高いと成形時にアンテナに合わせて変形しない、熱融着しない等の不具合が発生する。
また、コア基材の厚みは0.68~0.84μmが好ましい。特に0.76~0.84の範囲が好適である。
【0016】
レーザー発色基材に関しては、ポリカーボネート樹脂から構成される。レーザー発色性があれば特に制約は無いが、炭素の添加により、レーザーを吸収することで発熱し、その熱で炭化することにより発色する方法が一般的である。厚みはレーザー発色性の観点から50~200μmが好ましい。
【0017】
外装基材は、結晶性ポリエステルもしくは、結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなる。結晶性基材である結晶性ポリエステル又は結晶性の成分を含む結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなる基材を用いることで、カード化した際の曲げ耐性を向上させることができる。好ましくは、熱成形が行いやすい結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなる基材である。」
「【0020】
<絵柄の印刷>
各基材の表面に印刷を施しても良い。印刷方式としては、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等が挙げられる。乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外線照射、紫外線照射等が挙げられる。
【0021】
インキの着色は、染料、顔料を使用する。また、アルミニウム、酸化チタン、真鍮等の金属顔料やパール顔料を用いても良い。インキに使用される樹脂は、塩化ビニル,酢酸ビニル,ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ系樹脂、ABSやそれらの共重合体、ポリマーアロイ等が挙げられる。また、溶剤型インキ・水系インキの場合は加熱蒸発による乾燥、UV硬化型インキの場合はUV照射による硬化を行う。
・・・
【0023】
レーザー発色基材は、コア基材の外側に積層する。配置は片側でも両側でもどちらでも良いが、両側にした方が個片化した際に反りが発生しないため好ましい。
両側に積層する場合、材質、厚みを同等にすることが好ましい。」
「【0027】
さらに、熱成形時に基材が流動すると印刷した絵柄も同様に動こうとするため、歪みや絵柄が割れて見える現象が発生する。絵柄の印刷をレーザー発色基材と他基材の界面となる部分に行い、熱成形湿度をポリカーボネートのTgよりも低い温度とすることで、この現象を抑えることができる。」
「【0031】
<実施例1>
基材や条件は以下に記載のものを用いて、本発明のカードを作製した。
(材料)
アンテナ基材 PETベース
アンテナコイル 厚さ35μmの銅箔のエッチングアンテナ
コア基材 非晶質白色ポリエチレンテレフタレート(PG-WHI、厚さ260μm:三菱樹脂)
レーザー発色シート ポリカーボネート製炭素添加(厚さ60μm)
外装基材 PA-C(厚さ60μm:太平化学製品) (PC:60% PBT:40%)
磁気テープ SP-01(トッパンTDKレーベル社製)
(生産条件)
熱成形 温度120℃,圧力2MPa
パンチング 雄雌金型
【0032】
まず、アンテナ4の周囲にコア基材3が配置される。例えば、コア基材3を構成する2つのシート状の基材がアンテナ4を挟み込むことによって、アンテナ4がコア基材3によって覆われる。具体的には、アンテナが被覆銅線から構成される場合には、一方の上記基材上でアンテナが形作られ、アンテナが金属薄膜から構成される場合には、パターニングされた金属薄膜を支持する基材が、一方の上記基材上に配置される。そして、配置されたアンテナ4を挟むように、一方の上記基材に他方の基材が重ねられる。
【0033】
次に、コア基材3を挟むように、コア基材3にレーザー発色基材2が積層される。
次に、磁気テープ15の配置された外装基材14が、コア基材12と中間基材13との積層体を挟むように、中間基材13に積層される。磁気テープ5には、予め接着剤が塗工され、磁気テープ5は、熱転写によって、一方の外装基材1aに貼り付けられる。
コア基材3とレーザー発色基材2と外装基材1との積層体が加圧された状態で、加熱され、その後、冷却される。これによって、アンテナ4がコア基材3に埋め込まれ、1つの板状に成形される。
なお、実施例1におけるポリカーボネートの割合は25%であった。
・・・
【0035】
<実施例3>
材料、生産条件を以下のようにした以外は実施例1と同様に作成した。
なお、実施例3におけるポリカーボネートの割合は64%であった。
(材料)
アンテナ基材 PETベース
アンテナコイル 厚さ35μmの銅箔のエッチングアンテナ
コア基材 非晶質白色ポリエチレンテレフタレート(PG-WHT、厚さ260μm:三菱樹脂) (PC:55% PETG45%)
レーザー発色シート ポリカーボネート製炭素添加(厚さ60μm)
外装基材 CG-030M(厚さ60μm:太平化学製品) (PC:70% PETG:30%)
磁気テープ SP-01(トッパンTDKレーベル)
(生産条件)
熱成形 温度120℃,圧力2MPa
パンチング 雄雌金型」
イ 甲1の記載から把握できる事項
(ア)前記ア【0007】の「コア基材が、非晶質ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイまたは非晶質ポリエステルとポリカーボネートの共押出等による積層構造なり、ポリカーボネートの比率が20~80%である」との記載と【0035】の「コア基材 非晶質白色ポリエチレンテレフタレート(PG-WHT、厚さ260μm:三菱樹脂) (PC:55% PETG45%)」との記載を踏まえれば、コア基材は、ポリカーボネートの比率が55%であると認められる。
(イ)前記ア【0017】の「外装基材は、結晶性ポリエステルもしくは、結晶性ポリエステルとポリカーボネートのポリマーアロイからなる。」との記載と、【0035】の「外装基材 CG-030M(厚さ60μm:太平化学製品) (PC:70% PETG:30%)」との記載を踏まえれば、外装基材は、ポリカーボネートの比率が70%であると認められる。
(ウ)前記ア【0020】の「<絵柄の印刷>」の項に「各基材の表面に印刷を施しても良い。印刷方式としては、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等が挙げられる。」と記載されているから、絵柄の印刷がオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等で施されると認められる。
ウ 甲1に記載される発明
前記ア及びイより、甲1には、次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、「レーザー発色性基材」と「レーザー発色基材」は、同一の基材を指すことが明らかであるから、「レーザー発色性基材」で統一した。
「単層又は複数層からなるコア基材と、コア基材の両方の面にレーザー発色性基材を有し、さらに両方の面の最外層に透明外装基材を有する、レーザー発色性を有する非接触ICカードであって(【0001】、【0007】)、
レーザー発色性基材は、ポリカーボネートから構成され、炭素の添加により、レーザーを吸収することで発熱し、その熱で炭化することにより発色するものであり(【0016】)、
絵柄の印刷がオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等で施され(前記イ(ウ))、
絵柄の印刷をレーザー発色性基材と他基材の界面となる部分に行い、熱成形湿度をポリカーボネートのTgよりも低い温度とし(【0027】)、
コア基材が、ポリカーボネートの比率が55%であり(前記イ(ア))、
外装基材が、ポリカーボネートの比率が70%であり(前記イ(イ))、
コア基材を挟むように、コア基材にレーザー発色基材が積層され、コア基材とレーザー発色基材と外装基材との積層体が加圧された状態で、加熱され、その後、冷却され、1つの板状に成形される(【0033】)、
非接触ICカード。」
(2)甲2について
ア 甲2には、次のとおりの記載がある。
「【0012】
(作用効果) 本発明によれば、次のような効果を奏することができる。レーザ光を照射した際に、基材11を透過してレーザ印字領域の着色インキ層13に到達したレーザ光エネルギーにより、インキ中の顔料や染料が蒸発などで飛散して透明化し、その下部の銀色インキ層14が観察できそのコントラストにより、レーザ文字が見えるようになるというものである。原理的には銀色インキ層14がなくても印字することはできるが、銀色インキ層14がないと、基材11及び着色インキ層13を透過したレーザ光は、そのまま通過し減衰してゆくか、さらに第1ポリオレフィン系樹脂層15を透過して金属層17に到達し、該金属層17で反射して戻ることもあるが、極めて弱いエネルギーでしかなく、もはや印字に寄与するエネルギーはない。
【0013】
そこで、本願発明では、着色インキ層13及び銀色インキ層14をこの順に設けることで、銀色インキ層14からの反射レーザ光エネルギーを利用することで、少ないエネルギーのレーザ光で印字ができるのである。即ち、基材11を透過して着色インキ層13へ達したレーザ光、及び銀色インキ層から反射して戻ってきたレーザ光の和によって、着色インキ層を透明化させてレーザ印字することができる。」
「【0024】
(銀インキ層)銀色インキ層14としては、アルミニウムペーストやアルミニウム粉等の金属顔料を用いた、シルバーまたはゴールド等のメタリック調印刷インキを用いる。
アルミニウムペーストには、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプがあるが、いずれを用いてもよく、蒸着アルミニウム薄膜を粉砕した粉末を用いたインキでもよい。
銀色インキ層14の形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法でよく、少なくとも着色インキ層13面に設ければよい。もちろん、他の印刷絵柄に同時に形成してもよい。模様、写真などのすべての絵柄が使用できる。」
イ 「銀色インキ層14」は、前記ア【0012】の「レーザ印字領域の着色インキ層13に到達したレーザ光エネルギーにより、インキ中の顔料や染料が蒸発などで飛散して透明化し、その下部の銀色インキ層14が観察できそのコントラストにより、レーザ文字が見えるようになる」との機能、及び、【0013】の「銀色インキ層14からの反射レーザ光エネルギーを利用する」との機能からみて、レーザ文字の形状・位置によらず両機能が発揮できるように、レーザ印字領域の着色インキ層13の全面に設けられる層であることは明らかである。
そして、前記ア【0024】の「銀色インキ層14の形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法でよく、少なくとも着色インキ層13面に設ければよい。」との記載を踏まえれば、「銀色インキ層14」は「ベタ印刷層」であると認められる。
ウ 前記ア【0012】の「銀色インキ層14がないと、基材11及び着色インキ層13を透過したレーザ光は、そのまま通過し減衰してゆく」、【0013】の「基材11を透過して着色インキ層13へ達したレーザ光、及び銀色インキ層から反射して戻ってきたレーザ光の和」との作用の記載からみて、「銀色インキ層14」は、着色インキ層13のレーザ光が照射される側と反対側に設けられると認められる。
(3)甲3について
ア 甲3には、次のとおりの記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明基剤層と、シーラント層がこの順序に積層されてなり、透明基材層には、裏面側にレーザー光の照射によって発色するレーザーマーキングインキ層と、アルミペースト含有インキ層がこの順序に設けられており、シーラント層には、前記透明基材層に対向する面にアルミニウム蒸着層が設けられていることを特徴とするレーザーマーキング用包装材料である。
【0015】
本発明に係るレーザーマーキング用包装材料は、透明基剤層の裏面側にレーザー光の照射によって発色するレーザーマーキングインキ層と、アルミペースト含有インキ層をこの順序に設けたので、アルミペースト含有インキ層によって遮蔽される程度の、比較的弱いレーザー光によってもレーザーマーキングインキ層を発色させることができる。このためシーラント層に設けたアルミニウム蒸着層にダメージを与えることなく、鮮明なレーザーマーキングが可能となる。
【0016】
また、アルミペースト含有インキ層は、レーザー光を遮蔽する作用に加えて、反射する作用をも有するため、レーザーマーキングインキ層の発色を促す効果をも発揮する。」
「【発明の効果】
【0022】
本発明に係るレーザーマーキング用包装材料は、透明基剤層の裏面側にレーザー光の照射によって発色するレーザーマーキングインキ層と、アルミペースト含有インキ層をこの順序に設けたので、アルミペースト含有インキ層によって遮蔽される程度のレーザー光の照射によって、鮮明な印字が得られる。このためアルミニウム蒸着層を破壊することがない。
【0023】
また、アルミニウム蒸着層を破壊することなく、かつ鮮明な印字が得られる適切なレーザー光強度の範囲が広く取れるため、安定した生産が容易に可能である。
【0024】
また印刷層が透明基材層の裏面のみに存在するため、基材の表裏面に印刷する必要が無く、印刷が能率よく行える。
【0025】
レーザーマーキングインキ層の下にアルミペースト含有インキ層が存在するため、レーザーマーキングインキ層には、透明基材層を透過して直接照射されるレーザー光の他に、アルミペースト含有インキ層から反射されて戻ってきたレーザー光も照射される。その結果、レーザーマーキングインキ層の発色の効率が良くなるため、より弱いレーザー光でも鮮明な発色が可能となる。」
「【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明に係るレーザーマーキング用包装材料について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るレーザーマーキング用包装材料(1)の一実施態様を示した断面模式図である。
【0031】
本発明に係るレーザーマーキング用包装材料(1)は、透明基剤層(2)とシーラント層(10)がこの順序に積層されてなり、透明基材層(2)には、裏面側にレーザー光の照射によって発色するレーザーマーキングインキ層(3)と、アルミペースト含有インキ層(5)がこの順序に設けられており、シーラント層(10)には、透明基材層(2)に対向する面にアルミニウム蒸着層(9)が設けられていることを特徴とする。」
「【0054】
基材層として、厚さ20μmのOPPフィルムを使用し、この裏面にグラビア印刷にてレーザーマーキングインキ層、白ベタインキ層、アルミペースト含有インキ層を印刷した。レーザーマーキングインキとしては、東洋インキ社製 Elbima Z117(商品名)を用いた。白ベタインキ層としては、サカタインクス社製ベルカラーR白115DT(商品名)を用いた。
【0055】
アルミペースト含有インキ層としては、白ベタインキ層に用いたと同じサカタインクス製ベルカラーR白115DT(商品名)100重量部にアルミペースト(旭化成ケミカルズ社製SA8000T)を25重量部添加したものを用いた。」
イ 「アルミペースト含有インキ層(5)」は、前記ア【0016】の「レーザー光を遮蔽する作用に加えて、反射する作用をも有する」との機能からみて、レーザーマーキングの形状・位置によらず両機能が発揮できるように、レーザーマーキングインキ層(3)の全面に設けられることは明らかである。
そして、前記ア【0054】の「グラビア印刷にてレーザーマーキングインキ層、白ベタインキ層、アルミペースト含有インキ層を印刷した。」との記載と、印刷分野においてアルミペーストを含有したインキが銀色を呈することを踏まえれば、「アルミペースト含有インキ層(5)」は「銀色」の「ベタ印刷層」であると認められる。
ウ 前記ア【0015】の「透明基剤層の裏面側にレーザー光の照射によって発色するレーザーマーキングインキ層と、アルミペースト含有インキ層をこの順序に設け」たとの層構成と【0025】の「レーザーマーキングインキ層には、透明基材層を透過して直接照射されるレーザー光の他に、アルミペースト含有インキ層から反射されて戻ってきたレーザー光も照射される。」との作用からみて、「アルミペースト含有インキ層(5)」は、レーザーマーキングインキ層のレーザー光が照射される側と反対側に設けられると認められる。
(4)甲11について
甲11には、次のとおりの記載がある。
「また図中4は機能性インキの一種である液晶を封入したマイクロカプセルを含有する液晶インキからなる図柄、文字、記号等の画像で、前記ベース2上のアンカーコート層5にスクリーン印刷されている。前記アンカーコート層5は、ベース2と画像4との親和性のある物質をスクリーン印刷により層状にコーティングしてなるものである。」(明細書4頁2~9行)
(5)甲12について
甲12には、次のとおりの記載がある。
「【0013】
【発明の実施の形態】
水性インキを用いるオンデマンドプリンターでは、水溶性インキの基材(用紙)への親和性を高めるため用紙にアンカーコートを施す。このアンカーコートの成分は、ポリアミドが0~10%で、イソプロピルアルコールが100~90%である。また、このアンカーコートの厚みは、0.5~5μmである。
・・・
【0016】
<第1の実施形態>
図2の(A)に示すような機密情報が印字された用紙に、図2の(B)に示すように、スクリーン印刷法によって、機密情報が印字された部分を除いて、機密情報の周辺部分全面に、アンカーコートを塗布形成する。」
(6)甲15について
甲15には、次のとおりの記載がある。
「【0022】
また、図2は、本発明の他の一実施の形態である偽造防止媒体の側断面模式図であり、この偽造防止媒体(1)は、形状記憶樹脂の基材(11)と、基材(11)の表面にエンボスにより形成されたエンボスパターンの潜像(13a)と、このエンボスパターンの潜像(13a)上の光反射層(14)と、このエンボスパターンの潜像(13a)と光反射層(14)を覆うように設けられた形状記憶樹脂を主成分とする保護層(15)とからなるものである。
【0023】
さらにまた、図3は、本発明の他の一実施の形態である偽造防止媒体の側断面模式図であり、この偽造防止媒体(1)は、形状記憶樹脂の基材(11)と、基材(11)の表面にエンボスにより形成されたエンボスパターンの潜像(13a)と、このエンボスパターンの潜像(13a)上の光反射層(14)と、印刷インキによる微細パターンの潜像(12a)と、これらエンボスパターンの潜像(13a)と印刷インキによる微細パターンの潜像(12a)とを覆うように設けられた形状記憶樹脂を主成分とする保護層(15)とからなるものである。」
「【0029】
上記光反射層(14)としては、アルミ蒸着等金属蒸着膜でも構わないが、記憶形状への形状回復時における、変形への追従性が必要となるため、アルミペースト、銀ペースト等の金属ペーストとすることが望ましい。」
(7)甲16について
甲16には、次のとおりの記載がある。
「【0031】
図1の断面図で示した偽造防止媒体10では、賦形層103、吸収層102、偏光カラーシフト層101の順に積層されている。また、賦形層103はこの偽造防止媒体10での基材も兼ねているが、この偽造防止媒体10の基材の断面形状は鋸型となっている。この賦形層103、吸収層102、偏光カラーシフト層101の順番で積層した媒体の偏光カラーシフト層101側から鋸型の金型(図示せず)を押し付けることにより偽造防止媒体10を作成することができる。また、必要に応じてその金型を加熱して行ってもよい。」
「【0098】
他の方法としては、図21に示すように、賦形層103、吸収層102、偏光カラーシフト層101、を積層した偽造防止媒体10の、偏光カラーシフト層101の上に反射層311をパターン形成し、このパターンに位置を合わせて金型312を押し付けることにより、部分的に反射箇所を設ける方法も考えられる。この場合、反射層311の素材としては、微小アルミ片や微小銀片がバインダー中に分散したアルミペーストインキや銀ペーストインキなどが考えられる。バインダーには、熱圧で伸び易い弾性力の高いものが適している。このインキを、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法などでパターン形成する。」
(8)甲17について
甲17には、次のとおりの記載がある。
「【0012】図1は本発明の第1の発明に係るストライプの側断面図であり、まず、ストライプ基材20に磁気記録層18、反射性薄膜層16、リライト記録層14、保護層10を積層し、ストライプ基材20の裏面に接着層22を積層しストライプ6を形成する。ここでリライト記録層14と反射性薄膜層16間、反射性薄膜層16と磁気記録層18間、磁気記録層18とストライプ基材20間に接着性を向上させるために、接着層を設けてもよい。
【0013】ストライプ基材20としては、例えば厚さ(10μm~100μm)のポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムが適当である。
【0014】磁気記録層18はフェライトなどの磁性体をニトロセルロースやポリウレタンなどの樹脂バインダーと共に溶剤に分散して得た磁気塗料を塗布乾燥して得る。
【0015】反射性薄膜層16はアルミニウム、銀などの金属を真空蒸着法、スパッタリング法などにより形成する。または、それらの金属のうちの1種をペースト状にしたものを、塗布して形成してもよい。」
(9)甲18について
ア 甲18の記載
甲18には、次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプカード、ICカード等のカードに用いられるレーザ発色性シートに関し、特に耐熱性と加熱融着性及び機械特性に優れるレーザ発色性シートに関するものである。」
「【0016】
本発明のレーザ発色性シートは、接着層(A)と発色層(B)とを有する少なくとも2層のシートから形成されるレーザ発色性シートであって、
接着層(A)が、スピログリコール、イソソルビド、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールから選ばれる少なくとも1種の脂環式構造を有するジオール成分を含有するポリエステル系樹脂(a1)と衝撃改良剤(a2)とを含み、前記ポリエステル系樹脂(a1)と前記衝撃改良剤(a2)の含有割合が(a1):(a2)=60:40~90:10質量%であり、
発色層(B)が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、レーザ光エネルギー吸収体を0.01~10質量部含有してなることを特徴とする。」
「【0036】
<発色層(B)>
本発明で用いられる発色層(B)は、ポリカーボネート系樹脂を主成分として形成されることが好ましい。ポリカーボネート系樹脂を主成分として用いることにより、カードの耐熱性を向上させることができ、レーザビームを照射しても、発色層が膨れたり、変形することを防止することができる。
・・・中略・・・
【0042】
その他のレーザ光エネルギー吸収体として、カーボンブラックや、レーザビームの波長を吸収する光吸収剤を含有させてもよい。このような発色層にレーザビームを照射すると、光吸収剤等の周辺のバインダー樹脂が炭化し、この炭化した部分が黒色を呈する。あるいはまた、金属酸化物等の発色剤と光吸収剤とを併用してもよい。本発明に好ましく用いられる光吸収剤としては、使用するレーザの波長域に吸収ピークを有するシアニン系色素、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
・・・中略・・・
【0047】
本発明のレーザ発色性シートは、総厚が25μm~200μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは50μm~150μmの範囲内である。ここで、接着層(A)の厚さと発色層(B)の厚さの比率は、接着層(A)/発色層(B)の2層構成の場合には接着層(A)/発色層(B)=10/90~60/40であることが好ましく、20/80~50/50であることがより好ましい。接着層(A)/発色層(B)/接着層(A)の3層構成の場合には、5/90/5~30/40/30であることが好ましく、さらに好ましくは10/80/10~25/50/25である。接着層(A)の厚みが薄くなりすぎると、コアシートやオーバーシート等との接着性が低下する。一方、接着層(A)の厚みが厚くなりすぎると、相対的に発色層(B)の厚みを薄くしなければならないことがある。発色層(B)の厚みが薄くなりすぎると、発色性が低下し、レーザビームの照射によって得られる画像の視認性が低下する。さらには、レーザ発色性シートの耐熱性も低下する。」
「【0067】
<カード>
カードは、本発明のレーザ発色性シートと、少なくとも1層のカード用コアシートを加熱融着することにより得られる。
一般に、カードは、例えば、カードの表層に使用されるオーバーシート、中層に使用されるコアシート、オーバーシートとコアシートとの間に配置される中間シート等から構成される。一般にカードは、印刷を施した白色のコアシートに、透明のオーバーシートを重ねて、また、必要に応じて中間シートを重ねて、熱プレスでシート間を熱融着した後、打ち抜き刃でカード形状に切断し、場合によっては最後にエンボッサーで文字刻印を施して製造される。また情報記録のための磁気ストライプやIC チップ、アンテナコイル等を付与してもよい。
【0068】
ここで、図2の(a)では、本発明のレーザ発色性シート(10)とコアシート(30)を設けたカードを例示している。図2の(b)では、本発明のレーザ発色性シート(10)にコアシート(30)とオーバーシート(20)を設けたカード(21)を例示している。
また、図3の(a)(b)では、本発明のレーザ発色性シートを用いたカードにおいて、さらに昇華型熱転写受像層(40)を設けたカードを例示している。
【0069】
以下、コアシートとオーバーシートについて順に説明する。
【0070】
<カード用コアシート>
本発明のカードの製造方法において使用されるカード用コアシート(以下、コアシートと称する)としては、従来から一般的に使用されているものを用いることができる。コアシートを形成する材料としては、例えば、加熱加圧によって変形する熱可塑性樹脂が好ましく使用される。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート系樹脂、PVC系樹脂、生分解性樹脂等の汎用プラスチックが挙げられる。これ以外にも、耐熱性が良好なエンジニアリングプラスチックを使用することができる。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらの1種類または2種類以上を主成分とする材料からなるフィルムやシートがコアシートとして好ましく使用される。なお、コアシートは、単層でも2層以上の積層体でもよい。
【0071】
コアシートは透明、半透明または不透明のいずれでもよく、白色や有彩色に着色されていてもよい。使用用途に応じて、適宜選択されることが好ましい。コアシートを半透明シートおよび不透明なシートとする場合には、コアシートを形成する樹脂中に無機顔料や有機顔料を配合することができる。透明シートとする場合にも、透明性を損なわない範囲内の量で、顔料を配合することができる。コアシートには、必要に応じて、可塑剤、帯電防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
さらに、コアシートの表面には、後述のオーバーシートやその他のシート等と接合加工する際に脱気が容易に行われるように、エンボス加工等が施されていることが好ましい。
【0072】
一般的に、コアシートの厚さは、100μm ~800μmであることが好ましく、さらに好ましくは、コアシートは200μm~600μmである。
【0073】
コアシートを形成する方法としては、上述のレーザ発色性シートの方法を採用することができる。構成する材料を押出機に供給して単層で押出してもよいし、積層の場合は共押出法を採用することができる。
【0074】
<カード用オーバーシート>
本発明のカードの製造方法において使用されるカード用オーバーシート(以下、オーバーシートと称する)としては、従来から一般的に使用されているものを用いることができる。オーバーシートを形成する材料としては、例えば、PVC系樹脂、ABS樹脂、非晶質ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル樹脂、生分解性樹脂が挙げられる。オーバーシートは、接着剤を用いてコアシートやその他のシート等に貼り合わされてもよいが、加熱加圧による熱融着等によってコアシートやその他のシート等と貼り合わされることが好ましい。したがって、コアシート等との熱融着が可能な材料を選択することが好ましい。また、オーバーシートは裏側に配置された層、例えば、中間シート等に形成された画像等を視覚的に認識することができるように、可視光透過性を有する材料を選択することが好ましい。なお、オーバーシートは、単層でも2層以上の積層体でもよい。
・・・中略・・・
【0078】
本発明のレーザ発色性シートは、上記オーバーシートとして利用することもできるし、オーバーシートとコアシートとの間に配置される中間シートとして利用することもできる。」
「【0093】
(実施例1)
接着層(A-1)用の熱可塑性樹脂として、ジオール成分として脂環構造を有するポリエステル系樹脂「a1」(酸成分として、テレフタル酸100mol%、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを78mol%、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールを22mol%含むポリエステル)と衝撃改良剤「a2」(シェル層を構成する全成分に対してスチレンを80質量%含む多層構造重合体)とを重量比でa1:a2=88:12で混合して用い、発色層(B-1)用の樹脂組成物として、ポリカーボネート系樹脂(界面重合PC、重量平均分子量:約58500)100質量部に対してビスマス・ネオジウム系金属酸化物を0.15質量部添加したポリカーボネート系樹脂を用いた。これらの樹脂組成物を、2台の押出機の各ホッパーにそれぞれ投入し、設定温度235℃で溶融し、共押出した後、2種3層構成の積層シート(レーザ発色性シート)を得た。得られたレーザ発色性シートは、接着層(A-1)/発色層(B-1)/接着層(A-1)=17μm/66μm/17μmであり、総厚さが100μmであった。得られたレーザ発色性シートの引張破断伸度を表1に示す。
次に、得られたレーザ発色性シートと、コアシートとして厚さ650μmのPETG製コアシートとを重ねた後、プレス温度140℃、プレス圧1MPa、余熱時間5分、プレス圧5Mpa、加熱時間1分の条件下で加熱プレスを行って、カード形成用の積層体を得た。
次に、得られたカード形成用の積層体をカード形状に打ち抜いて、カードを作製した。得られたカードの動的曲げ力とレーザ印字性を表1に示す。」
「【図2】
[図:0001438271000001.jpg]
」
イ 甲18の記載から把握できる事項
前記ア【0068】の「本発明のレーザ発色性シート(10)とコアシート(30)を設けたカードを例示」との記載を踏まえれば、【図2】(a)の図示から以下の事項が見て取れる。
「コアシートの両方の面にレーザ発色性シートを設けたカードであること。」
ウ 甲18に記載の発明
前記ア及びイより、甲18には、次のとおりの発明(以下「甲18発明」という。)が記載されていると認められる。
「レーザ発色性シートと、少なくとも1層のカード用コアシートを加熱融着することにより得られるカードであって、印刷を施した白色のコアシートに、透明のオーバーシートを重ねて、製造され(【0067】)、
コアシートの両方の面にレーザ発色性シートを設けたカードであり(前記イ)、
コアシートは、単層でも2層以上の積層体でもよく、形成する材料としては、ポリカーボネート系樹脂等の汎用プラスチックが挙げられ(【0070】)、
レーザ発色性シートは、接着層と発色層とを有する少なくとも2層のシートから形成され(【0016】)、
発色層は、ポリカーボネート系樹脂を主成分として形成され(【0036】)、
接着層の厚さと発色層の厚さの比率は、2層構成の場合には接着層/発色層=20/80~50/50であり(【0047】)、
レーザ発色性シートと、PETG製コアシートとを重ねた後、加熱プレスを行って得られた、カード形成用の積層体をカード形状に打ち抜いて、作製され(【0093】)、
発色層にレーザビームを照射すると、光吸収剤等の周辺のバインダー樹脂が炭化し、この炭化した部分が黒色を呈し(【0042】)、
レーザ発色性シートは、オーバーシートとして利用することもできる(【0078】)、
磁気ストライプカード、ICカード等のカード(【0001】)。」
(10)甲20について
ア 甲20の記載
甲20には、次のとおりの記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプカード、ICカード等のプラスチックカード等に用いられるオーバーシートに関し、レーザー光線照射により該オーバーシートに損傷なくマーキングされ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られ、耐熱性に優れたカード用オーバーシートに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、オーバーシートへのレーザーマーキング性に優れ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られるとともに、さらには、カードの積層工程におけるシートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、折り曲げ性、透明性を兼ね揃えたカード用オーバーシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、以下のカード用オーバーシートが提供される。
【0009】
[1]スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成されるカード用オーバーシートであって、前記3層シートの両最外層であるスキン層が、[A-1]テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4-シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90~30/10~70モル%である共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01~3質量部含んでなる実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなり、前記コア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001~3質量部、又は、カーボンブラックと平均粒子径100nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物の配合量が0.0001~6質量部であり、更に、前記3層シートの全厚さが50~150μmからなり、かつ、前記コア層の厚さの、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が65%以上、75%未満からなる、カード用オーバーシート。
【0010】
[2] 前記コア層の厚さが、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が25%以上、50%未満からなる[1]記載のカード用オーバーシート。
【0011】
[3] 前記カード用オーバーシートの一方の面が平均粗さ(Ra)0.1~1.0μm、他方の面が平均粗さ(Ra)1.1~5μmのマット加工が施されている[1]又は[2]に記載のカード用オーバーシート。
【0012】
[4] エネルギー吸収体であるカーボンブラックが平均粒子径10~90nm、ジブチルフタレート吸油量60~170ml/100grである[1]~[3]のいずれかに記載のカード用オーバーシート。
【0013】
[5] 前記カード用オーバーシートのコア層がポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸化防止剤及び/又は着色防止剤0.1~5質量部、及び紫外線吸収剤及び/又は光安定剤0.1~5質量部含有する[1]~[4]のいずれかに記載のカード用オーバーシート。
【0014】
[6] 前記カード用オーバーシートのスキン層が共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、抗菌剤0.01~5質量部含有する[1]~[5]のいずれかに記載のカード用オーバーシート。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オーバーシートへのレーザーマーキング性に優れ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られるとともに、さらには、カードの積層工程におけるシートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、折り曲げ性、透明性を兼ね揃えたカード用オーバーシートを提供できるという優れた効果を奏する。」
「【0038】
エネルギー吸収体の添加量(配合量)はカーボンブラックを0.0001~3質量部添加(配合)され、より好ましくは0.0001~1質量部である。また、カーボンブラックと平均粒子径100nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種とを併用する場合にはその混合物の配合量が0.0001~6質量部配合され、より好ましくは0.0001~3質量部である。このように、エネルギー吸収体の添加量(配合量)を調製するのは次の理由のためである。すなわち、カード用オーバーシートは透明であることが好ましく、オーバーシートの下層である中間層またはコアシートに印刷を施す場合が多く、その場合にオーバーシートの透明性が劣ると印刷された画像、文字などが不鮮明となり実用上問題となる。そのために平均粒子径の小さいカーボンブラックが好ましく用いられ、また、カーボンブラックと他の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物をレーザーエネルギー吸収剤として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩の平均粒子径が少なくとも100nm未満、好ましくは50nm未満とするのである。」
「【0051】
[1-6]マット加工:
また、カード用オーバーシートの両面には、マット加工が施され、一方の面(片面、又は、表面)の平均粗さ(Ra)が0.1~1.0μm、他方の面(反対面)の平均粗さ(Ra)が1.1~5μmであることが好ましい。更に、平均粗さ(Ra)が0.1~1.0μmの面がカードの一方の面(最外面)であり、平均粗さ(Ra)が1.1~5μmの面が他方の面(裏面)であることが好ましい。このように、マット加工の平均粗さを表面と裏面とで異なるように形成する理由は、例えば、カード構成がオーバーシート/コアシート/オーバーシートである場合、裏面側がコアシートの表面と接するように積層して加熱プレスした際に、シートとシート間の空気が抜けやすくなるため、気泡がカード内に残存せず、カードの欠陥を抑える効果があるからである。
【0052】
他方、裏面のマット加工の平均粗さ(Ra)が1.1μm未満では、加熱プレス積層時に、オーバーシート/コアシートの境界面の空気が抜けにくくなり、気泡がカード内に残存し、レーザー光線を照射してレーザー発色をさせる工程でガス焼けが発生し易い。したがって、カードの変色及びレーザーマーク印字性の低下をするといった欠陥が生じ易くなり、好ましくない。また、マット加工の平均粗さ(Ra)が5μmを超えると、オーバーシート/コアシートの熱融着性が低下し好ましくない。
・・・中略・・・
【0058】
[1]シートの搬送性:
製造例1~7のオーバーシート、コアシートを200×200mmにカットした後、シート搬送機で搬送し、オーバーシート/コアシート/コアシート/オーバーシートと積層した際、以下の判定基準にてシート搬送性を評価した。
・・・中略・・・
【0059】
(製造例1)オーバーシートA:
スキン層として非結晶性ポリエステル(商品名「イースターGN071」イーストマンケミカル社製、EG/CHDM=70/30モル%)を、コア層としてポリカーボネート(商品名「タフロンFN2500A」出光興産製、メルトボリュームレイト=8cm3/10min)を用い、かつ、非結晶性ポリエステルに滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3質量部を配合した。さらに、上記ポリカーボネートに、レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラック(三菱化学製#10、平均粒子径75nm、DBP吸油量86ml/100gr)を0.001質量部を配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「イルガノックス1076」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))を0.1部、及び、紫外線吸収剤として、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(商品名「チヌビン327」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を、0.2部配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用コアシートを得た。シートの総厚さは100μmであり、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとするとともに、層の構成をスキン層(27μm)/コア層(46μm)/スキン層(27μm)の構成にして、コア層の厚さ比率を46%にした。さらに、片面の平均表面粗さ(Ra)については、一方の面が0.4~0.7μm、他方面(裏面)が1.2~1.8μm、になるようマット加工が施された3層オーバーシートAを得た。
【0060】
(製造例2)オーバーシートB:
製造例1と同様にして、シートの総厚さを60μmにするとともに、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとして、層の構成をスキン層(20μm)/コア層(20μm)/スキン層(20μm)に構成するとともに、コア層の厚さを比率33%にした。さらに、片面の平均表面粗さ(Ra)については、一方の面が0.4~0.7μm、他方面が1.2~1.8μmになるようマット加工が施された3層オーバーシートBを得た。
【0061】
(製造例3)コアシートC:
スキン層として非結晶性ポリエステル(商品名「イースターGN071」イーストマンケミカル社製、EG/CHDM=70/30モル%)を、コア層としてポリカーボネート(商品名「タフロンFN2500A」出光興産製、メルトボリュームレイト=8cm3/10min)を用い、かつ、非結晶性ポリエステルに滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3質量部を配合した。さらに、上記ポリカーボネートに、レーザー光線を吸収するエネルギー吸収体としてカーボンブラックを0.001質量部を配合すると共に、フェノール系酸化防止剤として、(n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「イルガノックス1076」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.1部、及び、紫外線吸収剤として、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(商品名「チヌビン327」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.2部、及び酸化チタン5部を配合して、Tダイ共押出法によりスキン層/コア層/スキン層の3層のカード用コアシートを得た。さらに、シートの総厚さ280μmにするとともに、表裏のスキン層の厚さを同じ厚さとし、層の構成をスキン層(40μm)/コア層(200μm)/スキン層(40μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率71%にした。さらに、片面の平均表面粗さ(Ra)0.9~1.6μm、他方面0.7~1.2μmのマット加工を施した3層コアシートCを得た。」
イ 甲20の記載から把握できる事項
前記ア【0051】には、「オーバーシート/コアシート/オーバーシートである場合」のカード構成が例示されているから、以下の事項が把握できる。
「カード用オーバーシート及びコアシートを、オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成とすること。」
ウ 甲20に記載の発明
前記ア及びイより、甲20には、次のとおりの発明(以下「甲20発明」という。)が記載されていると認められる。
「カード用オーバーシートは、
レーザー光線照射により該オーバーシートに損傷なくマーキングされ(【0001】)
スキン層とコア層を有し、共押出法により積層される少なくとも3層のシートから形成され、
前記コア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、エネルギー吸収体であるカーボンブラックを0.0001~3質量部、又は、カーボンブラックと平均粒子径100nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩及び金属ケイ酸塩から選ばれた少なくとも1種との混合物の配合量が0.0001~6質量部であり、前記コア層の厚さの、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が65%以上、75%未満からなり(【0009】)、
透明であることが好ましく、オーバーシートの下層であるコアシートに印刷を施す場合にオーバーシートの透明性が劣ると印刷された画像、文字などが不鮮明となり実用上問題となり(【0038】)、
コアシートは、スキン層として非結晶性ポリエステルを、コア層としてポリカーボネートを用い、層の構成をスキン層(40μm)/コア層(200μm)/スキン層(40μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率71%にした3層コアシートであり(【0061】)、
前記カード用オーバーシート及び前記コアシートを、オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成としたカード(前記イ)。」
(11)周知技術1について
前記(2)及び(3)の記載及び認定事項より、次の技術は本件特許出願前に広く知られた周知の技術と認められる。
[周知技術1]
「レーザーによる色変化が生じる層のレーザー光が照射される側の反対側に、銀色のベタ印刷層を設けて、銀色のベタ印刷層で反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行う技術」
(12)周知技術2について
前記(4)及び(5)の記載より、次の技術は本件特許出願前に広く知られた周知の技術と認められる。
[周知技術2]
「絵柄印刷の際に印刷インクの親和性を高めるために、スクリーン印刷によるアンカー層を形成する技術」
(13)周知技術3について
前記(6)~(8)の記載より、次の事項は本件特許出願前に広く知られた周知の事項と認められる。
[周知技術3]
「基材に設けられる反射層を銀ペーストより形成すること」
(14)周知技術4について
前記(9)ア【0067】、【0078】、及び前記(10)ア【0001】、【0007】の記載より、次の事項は本件特許出願前に広く知られた周知の事項と認められる。
[周知技術4]
「レーザー発色性シートを透明なオーバーシートとして用いること。」
2 甲1発明を主引用発明とした場合の進歩性欠如について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「非接触ICカード」は、「レーザー発色性基材」を有するカードであるから、本件訂正発明1と甲1発明は、「レーザー発色性カード」で共通する。
(イ)甲1発明の「コア基材」は、「単層又は複数層からなる」ものであり、「ポリカーボネートの比率が55%である」から、ポリカーボネート樹脂が過半数の成分である。
したがって、甲1発明の「コア基材」は、本件訂正発明1の「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層」に相当し、本件訂正発明1の「コア層」と甲1発明の「コア基材」は、「全体としてポリカーボネート樹脂を主成分と」する点で一致する。
(ウ)甲1発明の「レーザー発色性基材」は、ポリカーボネートから構成されており、「炭素の添加により、レーザーを吸収することで発熱し、その熱で炭化することにより発色するものであ」るから、本件訂正発明1の「レーザー発色性基材」に相当し、両者は、「ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有」する点で一致する。
また、甲1発明は、「コア基材の両方の面にレーザー発色性基材を有し、さらに両方の面の最外層に透明外装基材を有する」から、コア基材の両方の面に「レーザー発色性基材」と「透明外装基材」とが重ねられ層を構成すると認められる。
そうすると、甲1発明の「レーザー発色性基材」は「レーザー発色性」を備える「レーザー発色性基材によるレーザー発色層」とはいえるものの、「透明性とレーザー発色性とを兼ね備える」ものであるのか特定されていない点で本件訂正発明1とは相違する。
(エ)甲1発明の「非接触ICカード」は、「単層又は複数層からなるコア基材と、コア基材の両方の面にレーザー発色性基材を有し、さらに両方の面の最外層に透明外装基材を有する」ものであるから、前記(ウ)を踏まえると、本件訂正発明1の「レーザー発色性カード」と甲1発明の「非接触ICカード」は、「コア層の両方の面に、レーザー発色性を備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層を積層して成」るものである点で共通する。
(オ)甲1発明の「絵柄の印刷」は、「オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等で施され」るものであって、これら印刷方式により、絵柄はインキの層で形成されることは技術常識であるから、甲1発明の「絵柄」を形成するインキの層は、本件訂正発明1の「絵柄層」に相当する。
また、甲1発明の「絵柄の印刷」は、「レーザー発色性基材と他基材の界面となる部分に行」われるから、甲1発明の「絵柄」を形成するインキの層は、「レーザー発色性基材」と、「コア基材」又は「透明外装基材」のいずれかとの間に挟まれることは明らかである。
そして、甲1発明の各基材が層状をなすことは明らかであるから、本件訂正発明1の「レーザー発色性カード」と甲1発明の「非接触ICカード」は、レーザー発色層と隣接する層の間に「絵柄層」が挟まれているものである点で共通する。
(カ)前記(ア)~(オ)からすれば、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の両方の面に、
レーザー発色性を備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層を積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有し、
レーザー発色層と隣接する層の間に、絵柄層が挟まれているレーザー発色性カード。」
[相違点1-1]
本件訂正発明1においては、コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層があり、その上にレーザー発色層をこの順に積層して成り、前記ベタ印刷層と前記レーザー発色層とは、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられているとともに、絵柄層がベタ印刷層とレーザー発色層との間に、挟まれているのに対して、
甲1発明においては、コア基材の両方の面に、レーザー発色性基材と透明外装基材を積層するものであって、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層を備えておらず、レーザー発色性基材も平面視において非接触ICカードの全面に設けられているか明らかではないとともに、絵柄を形成するインキの層がレーザー発色性基材と、コア基材又は透明外装基材のいずれかの間に挟まれているといえるものの、レーザー発色性基材とベタ印刷層との間にはない点。
[相違点1-2]
本件訂正発明1においては、レーザー発色性基材が、「透明性とレーザー発色性とを兼ね備える」ものであるのに対して、甲1発明においては、レーザー発色性基材は「レーザー発色性」を備えるとはいえるものの、「透明性とレーザー発色性とを兼ね備える」ものであるのか不明である点。
イ 相違点の判断
(ア)相違点1-1について
a 甲1発明の「レーザー発色性基材」は、「コア基材を挟むように」、「積層され」、「コア基材」と「外装基材」との積層体を構成し、「加圧された状態で、加熱され、その後、冷却され、1つの板状に成形される」ものであるところ、一般的に非接触ICカードの厚みに均一性が求められることからすれば、積層される各基材は平面視で、どの領域でも全てが重なるように同じ大きさであるといえるから、甲1発明の「レーザー発色性基材」は、平面視でカード全面に設けられるといえる。
仮に、各基材の平面視の大きさが同じであると直ちにいえないとしても、甲1発明の「レーザー発色性基材」を、平面視でカード全面に設けることに格段の困難性はない。
b 一方、前記1(11)の周知技術1に示すとおり、「レーザーによる色変化が生じる層のレーザー光が照射される側の反対側に、銀色のベタ印刷層を設けて、銀色のベタ印刷層で反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行う技術」は周知の技術である。
また、甲1発明の「非接触ICカード」は、「レーザー発色性基材」を有するものであるところ、レーザー発色性基材には高い発色性能が求められることは従来から知られ(前記1(1)ア【0002】)、そのために効率的なレーザー照射が求められることは、一般的な省エネの観点から当業者に明らかであるから、甲1発明には、効率的な照射を行うための周知技術1を適用する動機付けはあるということができる。
そして、甲1発明は、コア層の両方の面に、レーザー発色性基材と透明外装基材を積層するものであるから、レーザーの照射は透明外装基材側から行われるところ、前記周知技術1を適用し、レーザー発色性基材とコア基材と間に銀色のベタ印刷層を設けることは、当業者が容易になし得るものである。
ここで、周知技術1の銀色のベタ印刷層は、反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行うという目的からみて、レーザーによる色変化が生じる層の全域に対応して設ける必要があることは当業者に明らかであるところ、前記aのとおり、甲1発明の「レーザー発色性基材」が、平面視でカード全面に設けられるもの、又は、設けることに格段の困難性はないものであるから、銀色のベタ印刷層も平面視でカード全面に設けることは、周知技術1の適用に併せて当業者が容易になし得たものである。
c 加えて、銀色のベタ印刷層の具体的な形成方法は、従来周知のインク及び印刷方式の中から適宜採用し得るものであると理解できるところ、前記1(13)の周知技術3に示した反射層の形成に慣用される銀ペーストインクを用い、一般周知のスクリーン印刷によって形成することも併せて容易になし得たものである。
d ここで、周知の銀色のベタ印刷層を設けるに際し、甲1発明は「絵柄の印刷をレーザー発色性基材と他基材の界面となる部分に行」うのであるから、上記のとおり、周知の銀色のベタ印刷層を付加するに際し、「絵柄」を形成するインキの層を「レーザー発色性基材」との銀色のベタ印刷層との間に挟まれるようになすことも、甲1発明の具体化にあたって限られた選択肢の一方を選択したものにすぎない。
e かつまた、本件特許明細書の【0011】には、「請求項1に記載の発明によれば、カード裏面への印刷層を、外装材を兼ねるレーザー発色層によって保護することにより、絵柄層の損傷を抑えることができる。」と記載があるから、本件訂正発明1の絵柄層の位置の技術上の意義は、絵柄層を露出せず損傷を抑えることにあると理解できる。
一方で、前記ア(オ)のとおり、甲1発明の「絵柄」を形成するインキ層は、「レーザー発色性基材」と、「コア基材」又は「透明外装基材」のいずれかとの間に挟まれるのであるから、いずれにせよ最外層とならず、露出するものではない。
そうすると、本件訂正発明1の「絵柄層」の位置に関して、甲1発明と比較して格別顕著な有利な効果を奏するものとはいえず、甲1発明に周知の銀色のベタ印刷層を付加するに際し、「絵柄」を形成するインキの層を「レーザー発色性基材」との銀色のベタ印刷層との間の位置とすることは、単なる設計的事項の採用といえ、当業者が容易に想到し得たものである。
f 前記ア(ウ)より、甲1発明の「レーザー発色性基材」は、本件訂正発明1の「レーザー発色層」を構成するから、前記a~eより、甲1発明において、前記相違点1-1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものということができる。
(イ)相違点1-2について
レーザー発色性シートを透明なオーバーシートとして用いるものは、前記1(14)の周知技術4に示すとおり、カード分野で広く知られた周知の態様である。
そうすると、甲1発明のレーザー発色性基材に透明外装基材が重ねられる構造に換えて、周知技術4のごとく、レーザー発色性基材を透明なオーバーシートとして用い、透明性を兼ね備えるものとすることは、周知の均等物への置換であって、当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ)総合評価
以上のとおり、甲1発明において、前記相違点1-1及び1-2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件訂正発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明、周知技術1、3及び4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 特許権者の意見書の主張について
(ア)特許権者は、令和7年12月10日提出の意見書5(4)イ(イ)aにおいて、概略次のとおり主張する。
甲2、3の技術的思想は、製品の識別・管理に必要な情報を、包装の表面に部分的に付与するものであり、カード製品に要求される高い耐久性や全面的な意匠性を実現するための技術的思想とは、技術分野及び目的において、本質的に異なる。
当業者が、包装材料に関する部分的なマーキング技術に係る、甲2、3に記載の技術を、カードの全面発色を実現するための本件発明の構成に適用して、容易に想到できたと判断することは、誤りである。
また、甲2、3から認定されるべき技術は、上で述べたように、適用の対象が限定的な技術であるから、当該技術の適用によって、平面視で全領域に(領域を限定せず)「ベタ印刷層」、「レーザー発色層」、かつ「絵柄層」を設ける本願の構成に想到できたとする判断は、本願に接した後の後知恵による判断というべきである。
(イ)上記主張について検討すると、前記1(2)アに示す甲2【0013】の「銀色インキ層14からの反射レーザ光エネルギーを利用することで、少ないエネルギーのレーザ光で印字ができるのである。」、前記1(3)アに示す甲3【0016】の「アルミペースト含有インキ層は、レーザー光を遮蔽する作用に加えて、反射する作用をも有するため、レーザーマーキングインキ層の発色を促す効果をも発揮する。」との効果を表す記載等からみて、適用技術分野が包装材料に関する部分的なマーキング技術に限られるとする理由は特段見いだせず、前記1(11)の周知技術1に示すとおり、一般にレーザー光を効率的に利用するための銀色のインキ層の技術が周知であったことが把握できるものである。
したがって、甲2、3記載の技術は、包装材料に関する部分的なマーキング技術に係るものであって、適用の対象が限定的な技術であるとの特許権者の主張は採用できない。
したがって、特許権者の意見書の主張をもって、前記イ(ア)a及びbのとおり、甲1発明の「レーザー発色性基材」に併せて、周知技術1の銀色のベタ印刷層を、平面視でカード全面に設けることは当業者が容易になし得たとした判断を覆すことはできない。
(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成において、「前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備える」との限定を追加したものである。
前記追加された構成について検討すると、前記1(12)の周知技術2で示したとおり、絵柄印刷の際に印刷インクの親和性を高めるために、スクリーン印刷によるアンカー層を形成する技術は、周知の技術であるところ、甲1発明において、透明外装基材の外面側に、周知のスクリーン印刷によるアンカー層を形成することは、当業者が外装基材の外面側に印刷を行うこと考慮して適宜なし得る程度の単なる設計的事項の採用にすぎない。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明、周知技術1、3及び4に基づいて、また、本件訂正発明2は、甲1発明、及び周知技術1~4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項1~2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 甲18発明を主引用発明とした場合の進歩性欠如について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲18発明との対比
(ア)甲18発明の「カード」は、「レーザ発色性シート」を設けたものであるから、本件訂正発明1と甲18発明は、「レーザー発色性カード」で共通する。
(イ)甲18発明の「コアシート」は、「単層でも2層以上の積層体でもよ」いものであるから、本件訂正発明1の「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層」に相当する。
また、甲18発明の「コアシート」を形成する材料としては、「ポリカーボネート系樹脂」等の汎用プラスチックが挙げられるから、本件訂正発明1の「コア層」と甲18発明の「コアシート」は、「全体としてポリカーボネート樹脂を主成分と」する点で一致する。
(ウ)甲18発明の「レーザー発色性シート」の「発色層」は、「レーザビームを照射すると、光吸収剤等の周辺のバインダー樹脂が炭化し、この炭化した部分が黒色を呈」するものであるとともに、甲18発明の「レーザー発色性シート」は、「透明の」「オーバーシートとして利用することもできる」ものであるから、「発色層」も「透明」で「オーバーシート」として機能するといえる。
そうすると、甲18発明の「レーザー発色性シート」の「発色層」は、本件訂正発明1の「透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材」に相当し、両者は、「レーザー着色性を有する成分を含有」する点で一致する。また、甲18発明の「レーザー発色性シート」は、本件訂正発明1の「透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材よりなるレーザー発色層」にも相当する。
さらに、甲18発明の「レーザー発色性シート」の「発色層」は、「ポリカーボネート系樹脂を主成分として形成され」、「接着層の厚さと発色層の厚さの比率は、2層構成の場合には接着層/発色層=20/80~50/50であ」るから、発色層が層厚さの比率で50%以上である。
そうすると、本件訂正発明1の「レーザー発色性基材」と甲18発明の「発色層」とは、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」点で一致する。
(エ)甲18発明の「カード」は、「コアシートの両方の面にレーザ発色性シートを設けた」ものであるから、前記(ウ)を踏まえると、本件訂正発明1の「レーザー発色性カード」と甲18発明の「カード」は、「コア層の両方の面に、透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とを積層して成」るものである点で共通する。
(オ)甲18発明の「印刷を施した白色のコアシート」は、コアシート上に印刷層が形成されることは技術常識からみて明らかである。また、「印刷を施した白色のコアシートに、透明のオーバーシートを重ねて」製造されるのであるから、甲18発明は、「コアシート」と「レーザー発色性シート」との間に、印刷層が挟まれているといえる。
(カ)甲18発明の「レーザー発色性シート」は、「オーバーシートとして利用することもでき」、「レーザ発色性シートと、PETG製コアシートとを重ねた後、加熱プレスを行って得られた、カード形成用の積層体をカード形状に打ち抜いて、作製され」るものであるところ、オーバーシートがカード全面を覆うものを意味することがカードの技術常識であること、及び積層体をカード形状に打ち抜くという製法を踏まえれば、平面視においてカードの全面に設けられていることは、明らかである。
したがって、本件訂正発明の「レーザー発色層」と甲18発明の「レーザー発色性シート」は、「平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられている」ものである点で一致する。
(キ)前記(ア)~(カ)からすれば、本件訂正発明1と甲18発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の両方の面に、
透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とを積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有するレーザー発色性カードであって、
前記レーザー発色層は、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられているレーザー発色性カード。」
[相違点2]
本件訂正発明1においては、コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層があり、その上にレーザー発色層をこの順に積層して成り、ベタ印刷層とレーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれており、ベタ印刷層は、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられているのに対して、
甲18発明においては、コアシートの両方の面に、レーザー発色性シートを設けており、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層を備えておらず、コアシートとレーザー発色性シートとの間に印刷層が挟まれている点。
イ 判断
前記相違点2について検討する。
(ア)前記1(11)の周知技術1に示すとおり、「レーザーによる色変化が生じる層のレーザー光が照射される側の反対側に、銀色のベタ印刷層を設けて、銀色のベタ印刷層で反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行う技術」は周知の技術である。
また、前記1(1)ア【0002】の記載を踏まえると、甲18発明の「レーザー発色性シート」には高い発色性能が求められることは明らかであり、そのために効率的なレーザー照射が求められることは、一般的な省エネの観点から当業者に明らかであるから、甲18発明には、効率的な照射を行うための周知技術1を適用する動機付けはあるということができる。
そして、甲18発明は、コアシートの両方の面に、レーザー発色性シートを設けているから、前記周知技術1を適用し、レーザー発色性シートとコアシートと間に銀色のベタ印刷層を設けることは、当業者が容易になし得るものである。
さらに、周知技術1の銀色のベタ印刷層は、反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行うという目的からみて、レーザーによる色変化が生じる層の全域に対応して設ける必要があることは当業者に明らかであるところ、甲18発明の「レーザー発色性シート」が、平面視でカード全面に設けられるものであるから、銀色のベタ印刷層も平面視でカード全面に設けることは、周知技術1の適用に併せて当業者が容易になし得たものである。
(イ)また、銀色のベタ印刷層の具体的な形成方法は、従来周知のインク及び印刷方式の中から適宜採用し得るものであると理解できるところ、前記1(13)の周知技術3に示した反射層の形成に慣用される銀ペーストインクを用い、一般周知のスクリーン印刷によって形成することも併せて容易になし得たものである。
(ウ)そして、甲18発明は「印刷を施した白色のコアシートに、透明のオーバーシートを重ねて、製造され」るところ、上記のとおり、コアシートとオーバーシートであるレーザー発色性シートの間に、周知の銀色のベタ印刷層を付加するのであれば、施した印刷が視認できるよう、銀色のベタ印刷層と、オーバーシートであるレーザー発色性シートとの間に印刷を施すことは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(エ)また、甲18発明の「カード」は、「磁気ストライプカード、ICカード等」であって、装飾性が求められることは明らかであるから、コアシートに施す印刷の内容を絵柄とすることに格段の困難性はない。
(オ)前記(ア)~(エ)より、甲18発明において、前記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものということができる。
そして、本件訂正発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲18発明と周知技術1、3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
ウ 特許権者の意見書の主張について
前記2(1)ウで述べたとおりであるから、特許権者の意見書の主張をもって、前記イ(ア)及び(イ)のとおり、甲18発明の「レーザー発色性シート」に併せて、周知技術1の銀色のベタ印刷層を、平面視でカード全面に設けることは当業者が容易になし得たとした判断を覆すことはできない。
(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成において、「前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備える」との限定を追加したものである。
前記追加された構成について検討すると、前記1(12)の周知技術2で示したとおり、絵柄印刷の際に印刷インクの親和性を高めるために、スクリーン印刷によるアンカー層を形成する技術は、周知の技術であるところ、甲18発明において、オーバーシートの外面側に、周知のスクリーン印刷によるアンカー層を形成することは、当業者が外装基材の外面側に印刷を行うこと考慮して適宜なし得る程度の単なる設計的事項の採用にすぎない。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲18発明、周知技術1、3に基づいて、また、本件訂正発明2は、甲18発明、及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 甲20発明を主引用発明とした場合の進歩性欠如について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲20発明との対比
本件訂正発明1と甲20発明とを対比する。
(ア)甲20発明の「カード」は、「オーバーシート」に「レーザー光線照射により該オーバーシートに損傷なくマーキングされ」るものであるから、本件訂正発明1と甲20発明は、「レーザー発色性カード」で共通する。
(イ)甲20発明の「コアシート」は、「スキン層として非結晶性ポリエステルを、コア層としてポリカーボネートを用い、層の構成をスキン層(40μm)/コア層(200μm)/スキン層(40μm)の構成にするとともに、コア層の厚さを比率71%にした3層コアシート」であるから、本件訂正発明1の「複数層からなるコア基材からなるコア層」に相当する。
また、甲20発明のポリカーボネートを用いた「コア層」の厚さの比率が最も高いから、本件訂正発明1の「コア層」と甲20発明の「コアシート」は、「全体としてポリカーボネート樹脂を主成分と」する点で一致する。
(ウ)甲20発明の「オーバーシート」は、「レーザー光線照射により」「損傷なくマーキングされ」るものであるとともに、「透明性が劣ると印刷された画像、文字などが不鮮明となり実用上問題とな」ることからすれば、透明性があると理解できるから、本件訂正発明1の「透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材」に相当し、両者は、「レーザー着色性を有する成分を含有」する点で一致する。
また、甲20発明の「オーバーシート」は、本件訂正発明1の「透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材よりなるレーザー発色層」にも相当する。
さらに、甲20発明の「オーバーシート」は、「少なくとも3層のシートから形成され」、「コア層が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して」、エネルギー吸収体の配合量が多くとも6質量部であり、「コア層の厚さの、前記3層シートの全厚さに対して占める割合が65%以上、75%未満」であるから、コア層が層厚さの比率で一番大きいものと理解できる。
したがって、本件訂正発明1の「レーザー発色性基材」と甲20発明の「オーバーシート」とは、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」点で一致する。
(エ)甲20発明の「カード」は、「オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成」であるから、前記(ウ)を踏まえると、本件訂正発明1の「レーザー発色性カード」と甲1発明の「カード」は、「コア層の両方の面に、透明性とレーザー発色性とを兼ね備えるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とを積層して成」るものである点で共通する。
(オ)甲20発明の「カード」は、「オーバーシートの下層であるコアシートに印刷を施す場合にオーバーシートの透明性が劣ると印刷された画像、文字などが不鮮明となり実用上問題とな」るものであって、コアシート上に画像、文字などの印刷層が形成されることは技術常識からみて明らかである。そうすると、当該印刷層は、本件訂正発明1の「絵柄層」に相当し、甲20発明の「カード」は、「コアシート」と「オーバーシート」との間に、画像、文字などの印刷層が挟まれているといえる。
(カ)甲20発明の「オーバーシート」は、「オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成」として用いられるものであり、オーバーシートがカード全面を覆うものを意味することがカードの技術常識であることを踏まえれば、平面視においてカードの全面に設けられていることは、明らかである。
したがって、本件訂正発明の「レーザー発色層」と甲20発明の「オーバーシート」は、「平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられている」ものである点で一致する。
(キ)前記(ア)~(カ)からすれば、本件訂正発明1と甲20発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「単層または複数層からなるコア基材からなるコア層と、
該コア層の両方の面に、
透明外装基材を兼ねるレーザー発色性基材によるレーザー発色層とを積層して成り、
前記コア層は、全体としてポリカーボネート樹脂を主成分とし、
前記レーザー発色性基材は、ポリカーボネート樹脂を主成分とし、レーザー着色性を有する成分を含有するレーザー発色性カードであって、
前記レーザー発色層は、平面視において前記レーザー発色性カードの全面に設けられているレーザー発色性カード。」
[相違点3]
本件訂正発明1においては、コア層の一方の面または両方の面に、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層があり、その上にレーザー発色層とをこの順に積層して成り、銀ベタ印刷層とレーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれているのに対して、
甲20発明においては、銀ペーストインクを用いたスクリーン印刷によるベタ印刷層を備えておらず、オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成であって、コアシートとオーバーシートとの間に、画像、文字などの印刷層が挟まれている点。
イ 判断
前記相違点3について検討する。
(ア)前記1(11)の周知技術1に示すとおり、「レーザーによる色変化が生じる層のレーザー光が照射される側の反対側に、銀色のベタ印刷層を設けて、銀色のベタ印刷層で反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行う技術」は周知の技術である。
また、前記1(1)ア【0002】の記載を踏まえると、甲20発明の「オーバーシート」には高い発色性能が求められることは明らかであり、そのために効率的なレーザー照射が求められることも、一般的な省エネの観点から当業者に明らかであるから、甲20発明には、効率的な照射を行うための周知技術1を適用する動機付けはあるということができる。
そして、甲20発明は、オーバーシート/コアシート/オーバーシートのカード構成であるから、前記周知技術1を適用し、オーバーシートとコアシートと間に銀色のベタ印刷層を設けることは、当業者が容易になし得るものである。
さらに、周知技術1の銀色のベタ印刷層は、反射したレーザー光を利用し、効率的に照射を行うという目的からみて、レーザーによる色変化が生じる層の全域に対応して設ける必要があることは当業者に明らかであるところ、甲20発明の「オーバーシート」が、平面視でカード全面に設けられるものであるから、銀色のベタ印刷層も平面視でカード全面に設けることは、周知技術1の適用に併せて当業者が容易になし得たものである。
(イ)また、銀色のベタ印刷層の具体的な形成方法は、従来周知のインク及び印刷方式の中から適宜採用し得るものであると理解できるところ、前記1(13)の周知技術3に示した反射層の形成に慣用される銀ペーストインクを用い、一般周知のスクリーン印刷によって形成することも併せて容易になし得るものである。
(ウ)そして、甲20発明は「オーバーシートの下層であるコアシートに」「印刷された画像、文字」があるところ、上記のとおり、コアシートとオーバーシートの間に、周知の銀色のベタ印刷層を付加するのであれば、印刷された画像、文字が視認できるよう、銀色のベタ印刷層と、オーバーシートとの間に画像、文字などの印刷を施すことは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(エ)前記(ア)~(ウ)より、甲20発明において、前記相違点3に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものということができる。
そして、本件訂正発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲20発明と周知技術1、3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
ウ 特許権者の意見書の主張について
前記2(1)ウで述べたとおりであるから、特許権者の意見書の主張をもって、前記イ(ア)及び(イ)のとおり、甲20発明の「オーバーシート」に併せて、周知技術1の銀色のベタ印刷層を、平面視でカード全面に設けることは当業者が容易になし得たとした判断を覆すことはできない。
(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成をすべて引用し、「前記レーザー発色層上の外面側に、スクリーン印刷によるアンカー層を備える」との限定を追加したものである。
前記追加された構成について検討すると、前記1(12)の周知技術2で示したとおり、絵柄印刷の際に印刷インクの親和性を高めるために、スクリーン印刷によるアンカー層を形成する技術は、周知の技術であるところ、甲20発明において、オーバーシートの外面側に、周知のスクリーン印刷によるアンカー層を形成することは、当業者が外装基材の外面側に印刷を行うこと考慮して適宜なし得る程度の単なる設計的事項の採用にすぎない。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲20発明、周知技術1、3に基づいて、また、本件訂正発明2は、甲20発明、及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 結び
以上のとおり、本件訂正発明1~2は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1~2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700227