2022-019798
電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2022-019798
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-522177外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月06日
- 審決日
- 2023年11月30日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G01S) / P18 .575-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2020年(令和2年)5月12日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和元年5月29日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 3月18日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 5月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月10日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 8月10日 :意見書の提出
同年 9月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年12月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年12月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月6日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年12月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものであり、この補正は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年5月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】移動体に搭載される電子機器であって、送信波を送信する送信アンテナと、前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、物体の検出を行う検出エリアとして、前記移動体の走行レーンのエリアが設定されている場合に、該検出エリア内で検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知し、前記制御部は、前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知する、電子機器。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】移動体に搭載される電子機器であって、送信波を送信する送信アンテナと、前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、物体の検出を行う検出エリアとして、前記移動体の走行レーンのエリアが設定されている場合に、該検出エリア内で検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知し、前記制御部は、前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知し、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する、電子機器。」
2 本件補正の目的
前記のとおり、本件補正は、請求項1において、本件補正前の「制御部」について、「前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件
前記のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2009-294930号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した(以下同様)。
a 【0001】~【0006】
「【技術分野】【0001】本発明は、障害物検出装置および障害物検出システムに関し、より特定的には、車両周辺に存在する他の物体を検知する障害物検出装置および障害物検出システムに関する。【背景技術】続きを表示(全17行)【0002】従来、車両周辺に存在する他の車両等のターゲットを捕捉するレーダ装置が、車両に搭載されている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1で開示された車両用障害物検出装置は、レーダによる検出結果に応じて、障害物の位置、障害物との相対速度、および障害物との衝突予測時間を算出する。そして、上記車両用障害物検出装置は、上記算出結果に基づいて、障害物と自車両との衝突危険性を予測している。【特許文献1】特開2001-126194号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0003】ここで、レーダ装置から他の装置へレーダ捕捉したターゲット情報を送る構成を考える場合、当該装置間の通信バス負荷の制約によってレーダ装置から送るターゲット情報の送信ターゲット数を制限する必要がある。しかしながら、上記特許文献1で開示された車両用障害物検出装置は、複数の障害物が同時に車両周辺に存在する場合、障害物の位置、障害物との相対速度、および障害物との衝突予測時間を総合的に判断すると、演算負荷や通信負荷が大きくなってしまう。【0004】また、ターゲットの反射波を検出した反射強度順、自車両が走行する自車線上においてターゲットまでの距離が近い順、自車線上においてターゲットの衝突予測時間が短い順等によって、レーダ装置から送るターゲット情報を絞り込むことが考えられる。しかしながら、車両の斜め前方方向を放射方向としてレーダ装置を搭載する場合、これらの絞り込み方法では障害物との適切な衝突危険度が判断できないことがある。【0005】例えば、上記反射強度順で送信するターゲット情報のターゲットを絞り込んだ場合、検知目標としたいターゲット車両からの反射強度より、ガードレールや建造物等の路側物体からの反射強度が強くなる場合があり、適切なターゲットの絞り込みができない。また、車両の斜め前方方向を放射方向としてレーダ装置を搭載する場合、自車両の斜め方向や出会い頭で自車両に接近してくる車両をターゲット車両にする。しかしながら、これらのターゲット車両は上記自車線上に存在するものではないため、上記距離順や衝突予測時間順で絞り込む手法が使えない。【0006】それ故に、本発明の目的は、自車両との衝突危険度が適切に判断できるターゲット選択を行って演算負荷または通信負荷を低減することができる障害物検出装置および障害物検出システムを提供することである。」
b 【0027】~【0059】、【図1】~【図5】
「【発明を実施するための最良の形態】【0027】以下、図1を参照して本発明の一実施形態に係る障害物検出装置について説明する。なお、本実施形態では、当該障害物検出装置を含むドライバサポートシステムが車両に搭載される例について説明する。一例として、ドライバサポートシステムは、障害物検出装置が検知したターゲット情報に基づいて、車両周辺の他の車両や障害物を認知し衝突の危険性を判断して、判断結果に応じた車両の制御を行う。なお、図1は、当該障害物検出装置を含むドライバサポートシステムの機能構成の一例を示すブロック図である。【0028】続きを表示(全16行)図1において、ドライバサポートシステムは、レーダ装置1L、レーダ装置1R、ドライバサポートシステムECU(Electrical Control Unit)2、メータ3、ブレーキ制御ECU4、警報ブザー41、およびブレーキACT(アクチュエータ)42を備えている。そして、レーダ装置1L、レーダ装置1R、およびドライバサポートシステムECU2は、互いにCAN(Controller Area Network)1等を介して接続される。また、ドライバサポートシステムECU2、メータ3、およびブレーキ制御ECU4は、CAN2等を介して接続される。【0029】レーダ装置1Lは、車両の斜め左前方向へ向けて、例えばミリ波を出射し、当該斜め左前方向に存在する対象物(ターゲット物体)から反射した電波を受信する。また、レーダ装置1Rは、車両の斜め右前方向へ向けて、例えばミリ波を出射し、当該斜め右前方向に存在する対象物(ターゲット物体)から反射した電波を受信する。典型的には、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rは、自車両の斜め方向から接近する対象物(具体的には、自車両が走行する自車線外から接近する対象物)を探知するように、それらの検出範囲が設定されている。そして、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rは、それぞれ受信した電波に基づいて、車両の周辺に存在する他の車両や障害物(ターゲット)の位置や自車との相対速度等を算出し、CAN2を介してその結果(ターゲット情報)をそれぞれドライバサポートシステムECU2へ出力する。(当審注:下線部にある「CAN2を介して」は、図1の記載からみて、「CAN1を介して」の誤記であると認められる。)【0030】なお、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rは、ミリ波レーダに限らず、他のレーダセンサ、音波センサ、カメラ等によって、車両斜め前方に存在する他の車両や障害物の位置や自車両との相対速度等を測定する手段であってもかまわない。レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rの構成については、放射方向が異なることを除いて同様であるため、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rを総称する場合はレーダ装置1として説明する。また、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rが、それぞれ本発明の障害物検出装置の一例に相当する。【0031】ドライバサポートシステムECU2は、レーダ装置1Lおよびレーダ装置1Rから出力されたターゲット情報に基づいて、車両に搭載された乗員保護装置特性を適正に調整したり、衝突条件緩和システムを作動させたり、運転者に適切な警告を与えたりする。図1においては、ドライバサポートシステムECU2が制御する装置の一例として、メータ3およびブレーキ制御ECU4が記載されている。【0032】メータ3は、車両の運転席に着席して当該車両を運転する運転者から視認可能な位置に設けられる。例えば、メータ3は、運転席前面の計器盤(インスツルメントパネル)に設けられ、ドライバサポートシステムECU2からの指示に応じた警報を運転者に表示する。例えば、車両とターゲットとの衝突の危険性がある場合、ドライバサポートシステムECU2は、メータ3に運転者に衝突回避操作を促す表示を行う。典型的には、メータ3は、主要ないくつかの計器、表示灯、警告灯、および各種情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイ等を1つのパネル内に組み合わせて配置したコンビネーションメータで構成される。なお、メータ3は、ハーフミラー(反射ガラス)を運転席前面のフロントガラスの一部に設け、当該ハーフミラーに情報等の虚像を蛍光表示するヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display;以下、HUDと記載する)等、他の表示装置で構成してもかまわない。【0033】ブレーキ制御ECU4は、車両に搭載された警報ブザー41やブレーキACT42の動作を制御する。例えば、車両とターゲットとの衝突の危険性があるとドライバサポートシステムECU2が判断した場合、ブレーキ制御ECU4は、警報ブザー41を作動させて運転者に衝突回避操作を促す。これによって、運転者は、衝突回避操作を行うことができる。また、ブレーキ制御ECU4は、運転者がブレーキペダルを踏んだ力に応じて、ブレーキ油圧を加圧加勢するように、ブレーキACT42の動作を制御する等を行う。これによって、ブレーキACT42の油圧応答性が向上し、車両の速度低減を図ることができる。」
「【図1】[図:0001406417000001.jpg]」
「【0034】次に、図2を参照して、レーダ装置1の構成について説明する。なお、図2は、レーダ装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。【0035】図2において、レーダ装置1は、送受信部11、相対距離/相対速度/相対位置算出部12、およびターゲット処理部13を備えている。ターゲット処理部13は、例えばメモリ等の記憶装置を有するマイクロコンピュータ等で構成され、その機能として衝突予測時間算出部131、ターゲット選出部132、およびターゲット情報出力部133を備えている。続きを表示(全16行)【0036】送受信部11は、例えばミリ波を出射して、その反射波を受信する。送受信部11は、車両の右前部または左前部の所定位置に設けられており、車両斜め前方に存在する他の車両等のターゲット物体を探知する。そして、送受信部11は、ターゲット物体を探知した信号を、相対距離/相対速度/相対位置算出部12に出力する。なお、送受信部11は、探知したターゲット物体毎に信号を出力する。【0037】相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、送受信部11から取得した信号を用いて、ターゲット物体の情報(ターゲット情報)として、自車両に対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置を算出する。例えば、相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、出射したミリ波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、ターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置を算出する。なお、送受信部11が複数のターゲット物体を探知している場合、相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、ターゲット物体それぞれに対して相対距離、相対速度、および相対位置を算出する。そして、相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、ターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置(ターゲット情報)を示すデータを衝突予測時間算出部131に供給する。なお、送受信部11および相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、最大m個(例えば、20個)のターゲット物体のターゲット情報を検出可能に構成されているとする。【0038】衝突予測時間算出部131は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得したターゲット情報を記憶装置に記憶し、当該ターゲット情報を用いて、ターゲット物体が自車両に衝突するまでの衝突予測時間(TTC)を、ターゲット物体毎に算出する。例えば、衝突予測時間は、ターゲット物体に対して算出された相対距離を相対速度で除算する、すなわちTTC=相対距離/相対速度で算出される。そして、衝突予測時間算出部131は、ターゲット物体それぞれの衝突予測時間を示すデータを記憶装置に記憶して、ターゲット選出部132に供給する。なお、衝突予測時間算出部131は、算出された衝突予測時間に昇順にターゲット物体を並べて記述したリスト(ターゲットリスト)の形式で記憶装置に記憶するが、詳細な動作については後述する。【0039】ターゲット選出部132は、ターゲット物体毎に算出された衝突予測時間および相対距離に基づいて、ターゲットリストに記述されたターゲット物体の順位を判断して並べ替えを行う。そして、ターゲット選出部132は、ターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、当該ターゲット物体それぞれの相対位置および相対速度を示す情報(ターゲット情報)をターゲット情報出力部133へ出力する。【0040】ターゲット情報出力部133は、ターゲット選出部132から取得したターゲット物体毎のターゲット情報を、CAN1を介して、ドライバサポートシステムECU2へ出力する。」
「【図2】[図:0001406417000002.jpg]」
「【0041】次に、図3を参照して、ターゲット処理部13の具体的な動作を説明する前に、ターゲット処理部13において用いられる主なデータについて説明する。なお、図3は、ターゲット処理部13のメモリに記憶される主なデータの一例を示す図である。【0042】図3において、ターゲット処理部13の記憶装置には、ターゲット物体データDa、ターゲットリストデータDb、および出力データDc等が記憶される。【0043】ターゲット物体データDaは、ターゲット情報として、相対距離データDa1、相対速度データDa2、および相対位置データDa3等を含んでいる。相対距離データDa1は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得した自車両に対するターゲット物体の相対距離を示すデータが、ターゲット物体毎に格納される。相対速度データDa2は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得した自車両に対するターゲット物体の相対速度を示すデータが、ターゲット物体毎に格納される。相対位置データDa3は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得した自車両に対するターゲット物体の相対位置を示すデータが、ターゲット物体毎に格納される。【0044】ターゲットリストデータDbは、衝突予測時間算出部131が作成してターゲット選出部132が並べ替えたターゲットリストを示すデータが格納される。例えば、衝突予測時間算出部131は、ターゲット物体の衝突予測時間(TTC)および相対距離の組を、衝突予測時間の昇順に並べてそれぞれにターゲット番号を付与したターゲットリストを作成する。そして、ターゲット選出部132は、所定の条件を満たすターゲット番号を有するターゲット物体に対して、相対距離に基づいた判定を行ってターゲットリストの並べ替えを行う。【0045】出力データDcは、ターゲット情報出力部133がドライバサポートシステムECU2へ出力するためのターゲット情報を示すデータが格納される。例えば、出力するターゲット情報としてターゲット物体の相対位置および相対速度を含める場合、出力データDcは、選出されたターゲット物体毎の相対位置を示すデータ(ターゲット位置データDc1)および相対速度を示すデータ(ターゲット速度データDc2)を含む。」
「【図3】[図:0001406417000003.jpg]」
「【0046】次に、図4~図9を参照して、ターゲット処理部13の動作の一例について説明する。なお、図4は、ターゲット処理部13によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。図5は、ターゲットリストを作成および並び替える一例を示す図である。図6は、自車両の前方におけるターゲット物体の状況の一例を示す図である。図7は、自車両の前方において探知されたターゲット物体の検出状況の一例を示す図である。図8は、交差点における第1の状況例を説明するための図である。図9は、交差点における第2の状況例を説明するための図である。なお、図4に示したフローチャートの各ステップは、例えばターゲット処理部13が所定のプログラムを実行することによって行われる。なお、これらの処理を実行するためのプログラムは、例えば、ターゲット処理部13に設けられた記憶領域(例えば、メモリ、ハードディスク、光ディスク等)に予め格納されており、ターゲット処理部13の電源がオンになったときにターゲット処理部13によって実行される。【0047】図4において、ターゲット処理部13は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12からm個のターゲット情報を取得し(ステップS51)、次のステップに処理を進める。例えば、ターゲット処理部13の衝突予測時間算出部131は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得したターゲット物体毎の相対距離、相対速度、および相対位置(ターゲット情報)を示すデータを用いて、ターゲット物体毎にターゲット物体データDaを更新する。続きを表示(全30行)【0048】次に、ターゲット処理部13は、上記ステップS51で取得したターゲット情報に基づいて、送受信部11がターゲット物体を検出しているか否かを判断する(ステップS52)。そして、ターゲット処理部13は、ターゲット物体を検出している場合、次のステップS53に処理を進める。一方、ターゲット処理部13は、ターゲット物体を検出していない場合、上記ステップS51に戻って処理を繰り返す。【0049】ステップS53において、ターゲット処理部13は、現在検出されているターゲット物体の衝突予測時間TTCを算出して、処理を次のステップに進める。例えば、ターゲット処理部13の衝突予測時間算出部131は、ターゲット物体データDaに格納されているターゲット物体毎の相対距離および相対速度を示すデータを参照して、TTC=相対距離/相対速度によって衝突予測時間TTCをそれぞれ算出する。【0050】次に、ターゲット処理部13は、衝突予測時間TTCの昇順にターゲット情報を並べたターゲットリストを作成して(ステップS54)、次のステップに処理を進める。例えば、ターゲット処理部13の衝突予測時間算出部131は、ターゲット物体の衝突予測時間TTCおよび相対距離の組を、衝突予測時間TTCの昇順に並べて順にターゲット番号T1~Tm(ここでは、m=20)を付与したターゲットリストを作成して、ターゲットリストデータDbを更新する。なお、本実施形態で用いるターゲットリストでは、ターゲット番号Tの数値が小さいほど、ターゲット情報としてレーダ装置1から出力する優先順位が高くなる。【0051】図5の左に示したターゲットリストの例では、現在検出されている5つのターゲット物体が、衝突予測時間TTCの昇順に並べられ、当該昇順にターゲット番号T1~T5が付与されている。そして、ターゲット番号T1~T5には、衝突予測時間TTCと共に当該ターゲット物体の相対距離が記述されている。なお、現在検出されているターゲット物体の数が最大値m(ここでは、20)未満である場合、ターゲットリストのターゲット番号T1~T20のうち、空番となるターゲット番号Tに対する衝突予測時間TTCおよび相対距離のデータは、例えば最大値を記述する(図5では、当該空番に対応するデータを空欄で示している)。【0052】次に、ターゲット処理部13のターゲット選出部132は、ターゲットリストデータDbを参照して、ターゲットリストの上位からn個のデータ(すなわち、ターゲット番号T1~Tnのデータ)を降順に選択し(ステップS55)、次のステップに処理を進める。ここで、nは、レーダ装置1からドライバサポートシステムECU2へ出力するターゲット情報に含ませるターゲット物体の数(送信ターゲット数)であり、当該装置間の通信バス負荷(すなわち、CAN1の通信負荷)の制約に応じて予め定められる。以下の説明のおいては、説明を具体的にするために送信ターゲット数n=4で設定されている例を用いる。【0053】次に、ターゲット処理部13は、ターゲットリストにおけるn+1番目以降のターゲット物体に、n番目のターゲット物体より自車両に近いものがあるか否かを判断する(ステップS56)。具体的には、ターゲット処理部13のターゲット選出部132は、ターゲットリストに記述されたターゲット番号Tnの相対距離を参照し、当該相対距離より短い相対距離のターゲット物体がターゲット番号Tn+1~Tmに記述されているか否かを判断する。【0054】例えば、図5の左側に示したターゲットリストの例において、送信ターゲット数n=4である場合、ターゲット番号Tn(すなわち、T4)の相対距離は、45.1である。一方、ターゲット番号Tn+1(すなわち、T5)の相対距離が38.0であるため、ターゲット選出部132は、ターゲット番号Tn+1~Tmにターゲット番号Tnより短い相対距離が記述されていると判断(すなわち、上記ステップS56の判断がYes)する。そして、ターゲット選出部132は、上記ステップS56の判断がYesの場合、次のステップS57に処理を進める。一方、ターゲット選出部132は、上記ステップS56の判断がNoの場合、次のステップS58に処理を進める。【0055】ステップS57において、ターゲット選出部132は、ターゲットリストのn+1番目以降のターゲット物体のうち、最も自車両に近いターゲット物体をターゲットリストのn番目に昇格させてターゲットリストを並べ替える。具体的には、ターゲット選出部132は、ターゲットリストに記述されたターゲット番号Tn+1~Tmの相対距離を参照し、最も短い相対距離が記述されたターゲット番号Tn+1~Tmのデータをターゲット番号Tnのデータとして並べ替える。そして、ターゲット選出部132は、次のステップS58に処理を進める。【0056】例えば、図5に示したターゲットリストの例において、送信ターゲット数n=4である場合、ターゲット番号Tn+1~Tmのうち、ターゲット番号T5の相対距離38.0が最も短い。したがって、ターゲット選出部132は、ターゲット番号T5のデータをターゲット番号Tn(すなわち、T4)に移動させ、ターゲットリストを並べ替える(図7の右側に示すターゲットリスト)。これによって、並べ替え前にターゲット番号T4に記述されていたデータは、並べ替えによって降格してターゲット番号T5に移動する。つまり、上記ステップS57の処理によって、ターゲット番号T4のデータとターゲット番号T5のデータとが入れ替わることになる。【0057】ステップS58において、ターゲット選出部132は、ターゲットリストの優先順位の上位n個を出力対象として、ターゲット情報をドライバサポートシステムECU2へ出力して、処理を次のステップに進める。例えば、ターゲット処理部13のターゲット選出部132は、ターゲットリストに記述されたターゲット番号T1~Tnのターゲット物体のターゲット情報(例えば、相対位置と相対速度)を、それぞれ出力対象として出力データDcに書き込む。そして、ターゲット処理部13のターゲット情報出力部133は、出力データDcに書き込まれているターゲット情報を、ターゲット物体毎に順次ドライバサポートシステムECU2へ出力する。これによって、レーダ装置1からドライバサポートシステムECU2には、CAN2を介して、ターゲットリストに記述された上位n個のターゲット物体に関するターゲット情報が送信されることになる。【0058】次に、ターゲット処理部13は、処理を終了するか否かを判断する(ステップS59)。例えば、ターゲット処理部13は、運転者が上記処理を終了させる操作を行った場合等に応じて、処理を終了する。そして、ターゲット処理部13は、処理を継続する場合、上記ステップS51に戻って処理を繰り返す。一方、ターゲット処理部13は、処理を終了する場合、当該フローチャートによる処理を終了する。【0059】このように、本実施形態に係る障害物検出装置は、自車線外等の自車両の斜め方向から接近するターゲット物体の相対速度と相対距離とから求めた衝突予測時間TTCの昇順で、ターゲット情報を出力する出力対象を絞り込むことによって、システム全体の演算負荷や通信負荷を低減することができる。また、当該障害物検出装置は、自車両との衝突危険度が適切に判断できるターゲット選択を行うことができる。つまり、当該障害物検出装置は、衝突予測時間TTCの昇順で優先処理するターゲット物体を選出するだけでも充分な効果が得られるものであるが、さらに衝突予測時間TTC順のみでターゲット物体を絞り込んだ場合に、必要なターゲット物体のターゲット情報が出力対象から外れる場合についても、当該ターゲット物体を出力対象に組み入れることもできる。以下、出力対象が入れ替わる具体例について説明する。」
「【図4】[図:0001406417000004.jpg]」
「【図5】[図:0001406417000005.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「受信した電波に基づいて、車両の周辺に存在する他の車両や障害物(ターゲット)の位置や自車との相対速度等を算出し、その結果(ターゲット情報)を、CAN(Controller Area Network)1等を介して接続されるドライバサポートシステムECU2へ出力するレーダ装置1であって、(【0028】~【0030】)レーダ装置1は、送受信部11、相対距離/相対速度/相対位置算出部12及びターゲット処理部13を備えており、(【0035】)送受信部11は、ミリ波を出射して、その反射波を受信し、ターゲット物体を探知した信号を、相対距離/相対速度/相対位置算出部12に出力し、(【0036】)相対距離/相対速度/相対位置算出部12は、送受信部11から取得した信号を用いて、ターゲット物体の情報(ターゲット情報)として、自車両に対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置を算出し、(【0037】)ターゲット処理部13は、例えばメモリ等の記憶装置を有するマイクロコンピュータ等で構成され、その機能として衝突予測時間算出部131、ターゲット選出部132、およびターゲット情報出力部133を備えており、(【0035】)衝突予測時間算出部131は、相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得したターゲット情報を用いて、ターゲット物体が自車両に衝突するまでの衝突予測時間(TTC)を、ターゲット物体毎に算出し、ターゲット物体それぞれの衝突予測時間を示すデータを、算出された衝突予測時間に昇順にターゲット物体を並べて記述したリスト(ターゲットリスト)の形式で記憶装置に記憶して、ターゲット選出部132に供給し、(【0038】)ターゲット選出部132は、ターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、当該ターゲット物体それぞれの相対位置および相対速度を示す情報(ターゲット情報)をターゲット情報出力部133へ出力し、(【0039】)ターゲット情報出力部133は、ターゲット選出部132から取得したターゲット物体毎のターゲット情報を、ドライバサポートシステムECU2へ出力し、(【0040】)ドライバサポートシステムECU2は、メータ3およびブレーキ制御ECU4を制御するものであり、レーダ装置1から出力されたターゲット情報に基づいて、車両に搭載された乗員保護装置特性を適正に調整したり、衝突条件緩和システムを作動させたり、運転者に適切な警告を与えたりするものである、(【0031】、【0030】)レーダ装置1。」
イ 引用文献3に記載された事項と引用文献3技術事項の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2003-215241号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【特許請求の範囲】【請求項1】
「【請求項1】 自動車の周囲に設定した検知エリア内に存在する物体までの距離および当該物体の存在する方向を検知する測距手段と、物体について測距手段により求めた距離および方向を直交座標空間に写像した座標値を求める座標変換手段と、前記直交座標空間において自動車の走行中の車線とみなせる範囲内で前記直交座標空間の1つの座標軸に沿う方向における所定距離範囲内を警報領域として規定する警報領域設定手段と、座標変換手段により求めた座標値が警報領域設定手段により設定された警報領域内か否かを判断する判断手段と、判断手段において座標変換手段により求めた座標値が警報領域設定手段により設定された警報領域内であると判断されると警報を報知する警報手段とを備えることを特徴とする車載用レーダ装置。」
b 【0015】~【0021】、【図1】~【図2】
「【0015】【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)本実施形態は、図1(a)に示すように、図11に示した従来構成に対して測距手段11により極座標で得られた情報を直交座標空間に写像した座標値を求める座標変換手段15を付加し、警報領域設定手段13において極座標ではなく直交座標での閾値を設定したものである。また、本実施形態では測距手段11の検知エリアA1を自動車Vの前方に形成するように測距手段11を自動車Vの前端側に取り付けてある。【0016】測距手段11は従来構成と同様に検知エリアA1の中で物体Obまでの距離rと物体Obの存在する方向(角度)θとを検知する。つまり、図2のように、測距手段11の出力値は検知エリアA1の中に存在する物体Obの極座標(r,θ)になる。測距手段11では、電波を送受波し、送波した検知波と物体Obで反射された反射波とを比較することにより物体Obまでの距離rを求める。また、1つの検知波を検知エリアA1内で走査するスキャン方式、あるいは検知エリアA1内の複数方向に独立した検知波を送波するマルチビーム方式によって、物体Obの存在する方向θを検知する。つまり、スキャン方式またはマルチビーム方式において、検知波を送波したときに物体Obからの反射波が受波されると、検知波を送波した方向を物体Obの存在する方向θとする。従来構成では自動車Vの進行方向を0度として、測距手段11の検知エリアA1の角度θの範囲を正負45度程度に設定していたが、本実施形態では正負90度程度に設定するのが望ましい。つまり、図1(b)に二点鎖線で示すように半円状の検知エリアA1が形成される。【0017】測距手段11の出力である物体Obの極座標(r,θ)は座標変換手段15に入力され、座標変換手段15では極座標(r,θ)から直交座標(x,y)の座標値への座標変換が行われる。つまり、測距手段11を原点として自動車の前後方向をX軸方向(前方を正)とし、自動車の左右方向をY軸方向(右側を正)とする直交座標空間を設定して、極座標(r,θ)を直交座標空間に写像する。この種の座標変換は一般に知られているように、以下の関係になる。続きを表示(全17行)x=r・cosθy=r・sinθただし、三角関数の演算処理を行うと処理量が増加するから、極座標(r,θ)と直交座標(x,y)とを対応付けた変換テーブルを作成しておき、測距手段11の出力を変換テーブルに照合することによって直交座標(x,y)に変換すれば、単なる照合処理のみで極座標から直交座標への変換を簡単に行うことができる。本実施形態では主として走行中の自動車Vの前方において他車のような物体Obとの追突の可能性を検知する目的で用いるから、識別可能な最小単位は比較的大きく設定することができる(たとえば、50cm程度でよい)。つまり、変換テーブルのデータ量は比較的少なくなる。【0018】ところで、本実施形態では、自動車Vの走行する車線(自車線)Lmと自車線に隣接する他の車線(隣接車線)Laとにおける物体Obの存否および物体Obとの追突の可能性を判別することを目的としており、(当審注:下線部にある「他の車線(隣接車線)La」は、他の記載箇所からみて、「他の車線(隣接車線)Lv」の誤記であると認められる。)具体的に言えば、自車線Lmでは前方車両との追突の可能性を判別し、隣接車線Lvについては車線変更時の前方車両との追突の可能性を判別するように構成してある。つまり、測距手段11の検知エリアA1を自車線Lmと隣接車線Lvとに分離して物体Obの有無を判別することが必要になる。そこで、座標変換手段15の出力を判断手段12に入力し警報領域設定手段13により設定された閾値と比較することによって、座標変換手段15から出力された物体Obの存在場所について、自車線Lm内か隣接車線Lv内かを判別するとともに、物体Obの存在場所が自車線Lm内または隣接車線Lv内において追突の可能性がある距離範囲内か否かを判別する。つまり、警報領域設定手段13では、自車線Lm内で自動車Vから所定の距離範囲内を警報領域S1とし、隣接車線Lv内で自動車Vから所定の距離範囲内を予備警報領域S2として規定する。【0019】判断手段12では、自動車Vの左右方向(つまり、Y軸方向)における範囲を設定することによって物体Obの存在場所が自車線Lm内か隣接車線Lv内かを判別する。いま、測距手段11が自動車Vの前面中央に配置されているものとして、自動車Vの進行方向に沿った中心線に対して右側をY軸方向の正領域とし、左側をY軸方向の負領域とする。また、自動車Vが走行している道路は3車線以上であって、自動車Vが走行している自車線Lmの両側にそれぞれ隣接車線Lvが存在し、かつ各車線の幅は等しいものとする。自動車Vは自車線Lmの中央を走行することが多いから、車線の幅をW1とすれば、自車線Lmの範囲は、-W1/2<y<W1/2とみなすことができ、隣接車線Lvの範囲は、-3・W1/2<y<-W1/2、W1/2<y<3・W1/2とみなすことができる。また、自動車Vの進行方向について前方車両のような物体Obに対して追突する可能性がある距離は自車線Lmと隣接車線Lvとについて等しいものとし、進行方向において追突する可能性のある距離範囲の最大値(閾値)をD1とすると、判断手段12では、x<D1であるときに物体Obとの追突の可能性があるものと判断する。ここに、判断手段12では警報領域設定手段13により警報領域S1および予備警報領域S2として規定した範囲内における物体Obの存否を判定するだけであって、範囲を規定する値(-W1/2、W1/2、-3・W1/2、3W1/2、D1)は警報領域設定手段13により設定される。【0020】判断手段12において物体Obとの追突の可能性があると判断されると、警報手段14では警報報知を行い、自動車Vの運転者に注意を促す。ただし、判断手段12では物体Obが自車線Lmに設定した警報領域S1に存在するか、隣接車線Lvに設定した予備警報領域S2に存在するかに応じて出力を変化させ、物体Obが警報領域S1と予備警報領域S2とのどちらに存在するかに応じて報知手段14での報知形態を変化させる。つまり、物体Obが隣接車線Lvにおいてx<D1を満たすときには警報手段14で緊急度の低い予備警報を報知させ、物体Obが自車線Lmにおいてx<D1を満たすときには警報手段14で緊急度の高い本警報を報知させる。予備警報と本警報とを行うときの各条件は以下のようになる。予備警報:(x<D1)∧{(-3・W1/2<y<-W1/2)∨(W1/2<y<3・W1/2)}本警報:(x<D1)∧(-W1/2<y<W1/2)ただし、記号∧は「かつ」を意味し、記号∨は「または」を意味する。報知手段14は視覚的報知と聴覚的報知との少なくとも一方を行い、予備警報と本警報とでは、表示内容や表示方法、あるいは警報音の種類や内容を変化させる。上述した説明から明らかなように、本実施形態では警報領域設定手段13での設定値が少なく、警報領域設定手段13の規模を小さくすることができるとともに、判断手段12での判断処理が簡単になる。【0021】ところで、予備警報は隣接車線Lvについて自動車Vの進行方向における物体Obとの距離が閾値D1より小さいときに報知されるのであって、車線変更をしないのであれば報知の必要はない。そこで、自動車Vにおいて車線変更を行う操作を行ったときにのみ、上記条件が満たされると予備報知を行うのが望ましい。ここに、車線変更を行う操作としては、たとえばウインカを作動させる操作などがある。つまり、ウインカを作動させると、作動させた側の車線において物体Obの存否が判断され、予備警報の条件が満たされると予備警報を報知するのである。このような動作を行う場合には、判断手段12または警報手段14をウインカの操作に連動させることになる。また、このような動作にしておけば、道路が1車線のみである場合や自動車Vの左側または右側に車線がない場合でも、予備警報が報知され続けるのを防止することができる。なお、予備警報を車線変更の操作に連動させない場合には、予備警報に関する処理を禁止する操作を可能としておけば、道路が1車線のみである場合や自動車Vの左側または右側に車線がない場合でも、予備警報が報知され続けるのを防止することができる。」
「【図1】[図:0001406417000006.jpg]」
「【図2】[図:0001406417000007.jpg]」
(イ) 引用文献3技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献3には、次の引用文献3技術事項が記載されていると認められる。
[引用文献3技術事項]
「車載用レーダ装置において、自動車Vの走行する車線(自車線)Lmと自車線に隣接する他の車線(隣接車線)Lvとにおける物体Obの存否および物体Obとの追突の可能性を判別するために、自車線Lm内で自動車Vから所定の距離範囲内を警報領域S1とし、隣接車線Lv内で自動車Vから所定の距離範囲内を予備警報領域S2として規定し、物体Obが自車線Lmに設定した警報領域S1に存在するか、隣接車線Lvに設定した予備警報領域S2に存在するかに応じて出力を変化させ、報知形態を変化させること。」
ウ 引用文献4に記載された事項と引用文献4技術事項の認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用する文献である特開2004-233090号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【特許請求の範囲】【請求項1】
「【請求項1】複数の物標について、相対速度および距離を含む測定値を得る手段と、各物標が静止物標であるか移動物標であるかを判定する手段と、移動物標と判定された物標について、静止物標と判定された物標に優先して測定値を出力する手段とを具備するレーダ装置。」
b 【0001】~【0006】
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、レーダ装置、特に、前方を走行する車輌との相対速度および距離を測定することの可能な車載用レーダ装置に関する。【0002】続きを表示(全20行)【従来の技術】前方の物標との相対速度および距離を測定することの可能なレーダ装置を用いれば、前方を走行する車輌との車間制御が可能となる。【0003】レーダ装置と車間制御装置の間は伝送路で結ばれ、この伝送路を経て各物標の相対速度、距離、および横位置を含む測定値が伝送される。従来では、距離の測定値が小さい物標から、すなわち、自車に近い物標から順に測定値の伝送が行なわれていた。【0004】【特許文献1】特開平8-211144号公報【特許文献2】特開2000-353298号公報【特許文献3】特開2000-330665号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】伝送される測定値の更新周期が可能な限り短かい程、車間制御装置が迅速に応答できるので好ましいが、伝送速度(伝送容量)には限界があるので、更新周期あたりに伝送可能なデータ量には限界がある。一方、レーダが捉える物標にはガードレールなどの路側物も含まれていて、これらのデータについては、車間制御装置にとってさほど重要ではない。また、前回までに捕捉されていて連続して制御が行なわれている物標のデータは、他の物標のデータよりも重要である。【0006】したがって本発明の目的は、限りのある伝送容量をデータの重要度に応じて有効に使って測定値を出力することのできるレーダ装置を提供することにある。」
c 【0009】~【0013】、【図1】~【図2】
「【0009】【発明の実施の形態】図1は本発明のレーダ装置の一実施形態としての車載用走査型ミリ波レーダ装置10を含むシステムの構成を示す。【0010】続きを表示(全11行)図1において、ECU12は車速センサ14からの信号を入力し、車速のデータとしてFM-CWレーダ10へ送る。FM-CWレーダ10は、三角波で周波数変調されたミリ波帯の電波を自車の前方へ発射し、反射波を解析することにより、前方に存在する物標との距離および物標の相対速度を算出する。FM-CWレーダ10はまた、電波の発射方向を走査し、そのときの反射波のパワーの分布に基いて物標の横位置を算出し、距離および相対速度のデータとともにECU12へ送る。ECU12はそれらのデータに基づき、前方を走行する車輌との距離を一定に保つための制御信号を生成して出力する。【0011】FM-CWレーダ10はさらに、車速のデータと個々の物標の相対速度のデータを比較し、両者が実質的に等しい物標を静止物標と判定し、それ以外の物標を移動物標と判定する。また、今回得られた各物標の、例えば相対速度、距離および横位置と過去のデータを照合することにより、前回までに捕捉されている物標と今回データが得られた物標との対応付けを行ない、新たに対応付けられた物標のデータにより捕捉中の物標のデータを更新する。【0012】図2はFM-CWレーダ10において得られた各物標のデータをECU12へ転送する処理のフローチャートである。図2において、まず、ECU12への伝送路へデータを出力するための出力バッファがFullか否か、すなわち、出力バッファの空きが所定値以下になったか否かを判定し(ステップ1000)、出力バッファの空きが所定値以上あってバッファに余裕があるときは、従来技術と同様に距離の小さい物標を優先してデータを出力バッファに保存する(ステップ1002)。出力バッファに余裕がないときは、移動物標と判定され(ステップ1004)、その中でも前回データを出力した物標について(ステップ1006)、データを出力バッファに保存する(ステップ1008)。【0013】上記の処理は、FM-CWレーダ10に内蔵されたCPU(図示せず)に上記の動作をさせるためのソフトウェアプログラムにより実現される。」
「【図1】[図:0001406417000008.jpg]」
「【図2】[図:0001406417000009.jpg]」
(イ) 引用文献4技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献4には、次の引用文献4技術事項が記載されていると認められる。
[引用文献4技術事項]
「限りのある伝送容量をデータの重要度に応じて有効に使って測定値を出力するために、複数の物標について、相対速度および距離を含む測定値を得る手段と、車速のデータと個々の物標の相対速度のデータを比較し、両者が実質的に等しい物標を静止物標と判定し、それ以外の物標を移動物標と判定する手段と、移動物標と判定された物標について、静止物標と判定された物標に優先して測定値を出力する手段とを具備するレーダ装置。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「レーダ装置1」は、「受信した電波に基づいて、車両の周辺に存在する他の車両や障害物(ターゲット)の位置や自車との相対速度等を算出し、その結果(ターゲット情報)を」「ドライバサポートシステムECU2へ出力する」ものであり、自車に搭載されるものであるから、本件補正発明の「移動体に搭載される電子機器」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は「移動体に搭載される電子機器」の発明である点で一致する。
b 引用発明が備える「送受信部11」は、「ミリ波を出射して、その反射波を受信」するものであるところ、引用発明の「ミリ波」及び「その反射波」は、それぞれ本件補正発明の「送信波」及び「前記送信波が反射された反射波」に相当する。
そして、引用発明の「送受信部11」が、ミリ波を出射するための送信アンテナ及び反射波を受信するための受信アンテナを有することは明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「送信波を送信する送信アンテナ」及び「前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナ」を備える点で一致する。
c(a) 引用発明の「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」は、「送受信部11から取得した信号を用いて、ターゲット物体の情報(ターゲット情報)として、自車両に対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置を算出」するものであり、「自車両に対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置を算出」するために、「ターゲット物体」を検出していることは明らかであるところ、かかる「ターゲット物体」の検出は、本件補正発明の「物体を検出する」ことに相当する。
(b) また、引用発明の「送受信部11」は、「ミリ波を出射して、その反射波を受信し、ターゲット物体を探知した信号を、相対距離/相対速度/相対位置算出部12に出力」しているところ、引用発明の「ミリ波」の「出射」に対応する信号は、本件補正発明の「前記送信波として送信される送信信号」に相当し、引用発明の「反射波」の「受信」に対応する信号は、本件補正発明の「前記反射波として受信される受信信号」に相当する。
(c) ここで、引用発明の「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」が「送受信部11から取得した信号」(「ターゲット物体を探知した信号」)は、前記(b)を踏まえると、送信信号及び受信信号に由来しているといえるから、引用発明の「ターゲット物体」の検出は、送信信号及び受信信号に基づいて行われることになり、このことは、本件補正発明の「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する」ことに相当する。
(d) そうすると、本件補正発明と引用発明は、「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する構成」を備える点で共通する。
d 引用発明の「ターゲット処理部13」は、「例えばメモリ等の記憶装置を有するマイクロコンピュータ等で構成され、その機能として衝突予測時間算出部131、ターゲット選出部132、およびターゲット情報出力部133を備えて」いるところ、「衝突予測時間算出部131」、「ターゲット選出部132」、及び「ターゲット情報出力部133」の各「機能」を実行する「マイクロコンピュータ等で構成され」る「ターゲット処理部13」は、本件補正発明の「制御部」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「制御部」を備える点で共通する。
e 引用発明の「衝突予測時間算出部131」が、「相対距離/相対速度/相対位置算出部12から取得したターゲット情報を用いて、ターゲット物体が自車両に衝突するまでの衝突予測時間(TTC)を、ターゲット物体毎に算出」することは、本件補正発明において「検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定」することに相当する。
そして、前記dにおいて説示したとおり、引用発明の「衝突予測時間算出部131」は、「マイクロコンピュータ等で構成され」る「ターゲット処理部13」(本件補正発明の「制御部」に相当する。)において実行される「機能」であることを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「制御部は、検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定」するという点で共通する。
f(a) 引用発明の「ターゲット選出部132」は、「ターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、当該ターゲット物体それぞれの相対位置および相対速度を示す情報(ターゲット情報)をターゲット情報出力部133へ出力」するものである。
ここで、この「ターゲットリスト」は、「ターゲット物体それぞれの衝突予測時間を示すデータを、算出された衝突予測時間に昇順にターゲット物体を並べて記述したリスト」であるから、衝突予測時間が短いものから順に並べて記述されている。
そうすると、引用発明の「ターゲット選出部132」が、「ターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、当該ターゲット物体それぞれの相対位置および相対速度を示す情報(ターゲット情報)をターゲット情報出力部133へ出力」することは、衝突予測時間が短いターゲット情報から順にターゲット情報出力部133へ出力することを意味する。
(b) 引用発明の「ターゲット情報出力部133」は、「ターゲット選出部132から取得したターゲット物体毎のターゲット情報を、ドライバサポートシステムECU2へ出力」するものであるところ、前記(a)のとおり、「ターゲット選出部132」は、衝突予測時間が短いターゲット情報から順に「ターゲット情報出力部133」へ出力するから、引用発明の「ターゲット情報出力部133」も、衝突予測時間が短いターゲット情報から順に「ドライバサポートシステムECU2」へ出力することは明らかである。
(c) 引用発明の「ドライバサポートシステムECU2」は、「レーダ装置1から出力されたターゲット情報に基づいて、車両に搭載された乗員保護装置特性を適正に調整したり、衝突条件緩和システムを作動させたり、運転者に適切な警告を与えたりするもの」であるから、本件補正発明の「移動体を制御する移動体制御部」に相当する。
そして、引用発明の「ターゲット情報出力部133」が、衝突予測時間が短いターゲット情報から順に「ドライバサポートシステムECU2」へ出力することは、衝突予測時間に応じて、前記時間が短いものから、「ターゲット物体」の検出を「ドライバサポートシステムECU2」に通知していることを意味するから、本件補正発明の「前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を」「検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間」「に応じて通知し」、「前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知」することに相当する。
(d) さらに、前記dにおいて説示したとおり、引用発明の「ターゲット情報出力部133」は、「マイクロコンピュータ等で構成され」る「ターゲット処理部13」(本件補正発明の「制御部」に相当する。)において実行される「機能」であることを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「制御部は、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を、検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間に応じて通知し、前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知」する点で共通する。
g 前記e及びfをまとめると、本件補正発明と引用発明は、「制御部は、検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知し」、「制御部は、前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知」する点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「移動体に搭載される電子機器であって、送信波を送信する送信アンテナと、前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する構成と、制御部と、を備え、前記制御部は、検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知し、前記制御部は、前記時間が短いものから、前記物体の検出を前記移動体制御部に通知する、電子機器。」
b 相違点
引用発明においては、「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する構成」は「送受信部11」及び「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」である点。
相違点2:「検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知」することについて、本件補正発明においては、「物体の検出を行う検出エリアとして、前記移動体の走行レーンのエリアが設定されている場合に、該検出エリア内で検出された物体」に対して行われるのに対し、引用発明においては、「物体の検出を行う検出エリア」として特定のエリアを設定しないで行われる点。
相違点3:本件補正発明は、「前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」ものであるのに対し、引用発明はそのような動作を行わない点。
イ 判断
前記各相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 引用文献2では、「次に、図2を参照して、レーダ装置1の構成について説明する。なお、図2は、レーダ装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。」(【0034】)、「図2において、レーダ装置1は、送受信部11、相対距離/相対速度/相対位置算出部12、およびターゲット処理部13を備えている。」(【0035】)と記載されることを踏まえると、引用発明の「送受信部11」、「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」及び「ターゲット処理部13」は、「レーダ装置1」の機能構成であって、装置内の各部材が当該機能構成に厳密に対応するように配置されているものではないと認められる。
b そして、前記ア(ア)dにおいて説示したとおり、「マイクロコンピュータ等で構成され」る「ターゲット処理部13」は、「衝突予測時間算出部131」、「ターゲット選出部132」、及び「ターゲット情報出力部133」の各「機能」を実行する「制御部」であるといえるから、引用発明において、「送受信部11」及び「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」の機能についても、「ターゲット処理部13」の各機能を実行する制御部が実行するように、制御部を一体化することにより、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。
(イ) 相違点2について
a 引用文献2には、背景技術として、「ターゲットの反射波を検出した反射強度順、自車両が走行する自車線上においてターゲットまでの距離が近い順、自車線上においてターゲットの衝突予測時間が短い順等によって、レーダ装置から送るターゲット情報を絞り込むことが考えられる。」(【0004】)と記載されるように、「自車線上においてターゲットの衝突予測時間が短い順」等によって、レーダ装置から送るターゲット情報を絞り込むことが考えられていたことが示されている。
b ここで、前記引用文献3技術事項として示すように、自車線Lmと隣接車線Lvとにおける物体Obの存否および物体Obとの追突の可能性を判別するために、自車線Lm内で自動車Vから所定の距離範囲内を警報領域S1とし、隣接車線Lv内で自動車Vから所定の距離範囲内を予備警報領域S2として規定し、物体Obが自車線Lmに設定した警報領域S1に存在するか、隣接車線Lvに設定した予備警報領域S2に存在するかに応じて出力を変化させ、報知形態を変化させることが、従来行われている。
c 引用発明において、算出された衝突予測時間に昇順にターゲット物体を並べて記述したターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、ターゲット情報をドライバサポートシステムECU2へ出力することの趣旨は、要するに、レーダ装置から送るターゲット情報を衝突の可能性が高いものに絞り込むことにより、演算負荷又は通信負荷を低減すること(【0006】)にあると認められる。
d かかる趣旨に沿って検討すると、引用発明において、衝突予測時間の短いものに絞るだけでなく、ターゲットの検出領域についても自車両に衝突する可能性の高い領域に絞るようにすることは、演算負荷又は通信負荷のさらなる低減に寄与することから、ごく自然な発想であるというべきである。
e そして、自車両が走行する自車線上が、衝突する可能性が高い領域であることは明らかであるから、上記背景技術が想定しているように、自車線上におけるターゲットに制限することは、当業者にとって自明な選択事項である。
f 以上を踏まえると、引用発明において、自車線上におけるターゲットに制限するために前記引用文献3技術事項を採用し、自車線内で自動車から所定の距離範囲内を警報領域として設定し(本件補正発明の「物体の検出を行う検出エリアとして、前記移動体の走行レーンのエリアが設定され」ることに相当)、当該警報領域において検出されたターゲット物体についてのみ処理を行うようなものとすること(本件補正発明の「該検出エリア内で検出された物体」に対して「検出された物体が前記移動体に到達するまでの時間を推定し、前記移動体を制御する移動体制御部に前記物体の検出を前記時間に応じて通知」することに相当)により、前記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(ウ) 相違点3について
a 前記(イ)cで説示したとおり、引用発明において、算出された衝突予測時間に昇順にターゲット物体を並べて記述したターゲットリストの上位n番目までのターゲット物体を選出して、ターゲット情報をドライバサポートシステムECU2へ出力することの趣旨は、レーダ装置から送るターゲット情報を衝突の可能性が高いものに絞り込むことにより、演算負荷又は通信負荷を低減することにあると認められる。
b かかる趣旨に沿って検討すると、引用発明において、衝突予測時間の短いものに絞るだけでなく、ターゲットの属性にも注目して自車両に衝突する可能性の高い属性を有するターゲットに絞るようにすることは、演算負荷又は通信負荷のさらなる低減に寄与することから、ごく自然な発想であるというべきである。
c そして、前記引用文献4技術事項として示すように、レーダ装置において、限りのある伝送容量をデータの重要度に応じて有効に使って測定値を出力するために、移動物標と判定された物標について、静止物標と判定された物標に優先して測定値を出力することは従来行われている。また、静止物標を判定するために、車速のデータと個々の物標の相対速度のデータを比較し、両者が実質的に等しい物標を静止物標と判定することも、従来知られている。
d ここで、引用発明は、「相対距離/相対速度/相対位置算出部12」において、「自車両に対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置」を算出しているところ、CAN1を介してドライバサポートシステムECU2と接続されるレーダ装置1が、自車の車速の情報を参照可能であることは明らかである。
e そうすると、引用発明において、前記引用文献4技術事項を適用し、自車の車速の情報と、自車両に対するターゲット物体の相対速度に基づいて、ターゲット物体が静止しているか移動しているかという属性を判定し(本件補正発明の「前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定」することに相当)、移動していると判定したターゲット物体について、静止していると判定したターゲット物体に優先して、ターゲット情報をドライバサポートシステムECU2へ出力すること(本件補正発明の「前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」ことに相当)により、前記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(エ) 総合評価
前記(ア)~(ウ)の検討結果を総合して検討しても、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献3技術事項及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
引用文献1乃至3において、本件補正発明の特徴に係る「制御部が、前記時間(物体が移動体に到達するまでの時間)が短いものから、前記物体の検出を移動体制御部に通知し、送信信号及び受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」ことに対応する直接的な記載や、これを示唆する記載はない。
本件補正発明は、その構成により、例えば、静止物の優先順位を低くして移動体制御部に通知することができるようになり、移動体の安全性を向上させることができるという、独自の顕著な効果を奏する。
上述の本件補正発明独自の構成、及び、本件補正発明独自の効果は、引用文献1乃至3において、開示も示唆もされていない。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
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上記請求人の主張は、要するに前記ア(イ)bにおいて認定した相違点3についてのものであるところ、相違点3に係る構成は、前記イ(ウ)において説示したとおり、当業者ならば容易に想到し得たものである。
また、引用発明(引用文献2に記載された発明)に引用文献4技術事項を適用することにより、自車に衝突する可能性の高い移動していると判定したターゲット物体について、自車に衝突する可能性の低い静止していると判定したターゲット物体に優先して、ターゲット情報をドライバサポートシステムECU2へ出力すれば、自車両の安全性は向上するものであり、請求人の主張する効果が本件補正発明独自のものであるということはできない。
そうすると、請求人の主張は採用することはできない。
エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和4年5月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、引用文献2を主たる引用文献とした本願発明についての進歩性欠如の理由は、概略次のとおりである。
本願発明は、引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献2 特開2009-294930号公報
引用文献3 特開2003-215241号公報
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献2には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、上記引用文献3には、前記第2の3(2)イ(イ)において認定したとおりの引用文献3技術事項が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明における「制御部」について、「前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」との限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
(2) そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)において説示したとおり、引用発明、引用文献3技術事項及び引用文献4技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、引用文献4技術事項は、前記第2の3(3)イ(ウ)で示したとおり、前記「前記送信信号及び前記受信信号に基づいて前記物体と前記移動体との間の相対速度を推定し、前記相対速度及び前記移動体の速度に基づいて前記物体が静止しているか否か判定し、前記物体が静止していると判定される場合、当該静止物体の検出の前記移動体制御部への通知を、静止していない物体の通知よりも優先順位を低くして通知する」ものであるとの限定に係る相違点3の判断において示したものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献3技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-019798