特許拒絶査定不服審判
2024-014235
飛行時間型3次元センシングシステム
- 審判番号
- 2024-014235
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-555821
- 請求日
- 2024年09月05日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 関口 英樹
- 分類
- P18 .575-Z (G01S) / P18 .113-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-555821「飛行時間型3次元センシングシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 1日国際公開、WO2020/197862、令和 4年 5月20日国内公表、特表2022-525894〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)3月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年3月22日 米国、2019年4月4日 米国、2020年3月16日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年11月 4日 :翻訳文の提出
令和5年11月 7日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月25日付け:前置報告書
令和7年 2月28日 :上申書の提出
以下、2019年(平成31年)3月22日を「優先日」という。
第2 令和6年9月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月5日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年9月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年2月13日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定の発散角、特定のパルス持続時間、又は特定の露光方向における閾値である、光整形光学素子。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」
2 本件補正についての当審の判断
(1) 本件補正の目的について
ア 本件補正後の請求項1についての補正の内容
本件補正後の請求項1についての補正事項は、次のとおりである。
本件補正前の請求項1の「全強度の前記閾値」について、「特定の発散角、特定のパルス持続時間、又は特定の露光方向における閾値」とされていたところ、「特定のパルス持続時間における閾値」に限定すること。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
ウ したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 独立特許要件について
本件補正は、前記のとおり、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
ここで、次のア~エの検討1~4において、本件補正発明について、それぞれ「本件補正発明A」~「本件補正発明D」を認定して検討を行った。
ア 検討1
(ア) 本件補正発明の認定1
a 本件補正発明を特定する、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1の記載を次に再掲する。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」
b 一方、本件補正後の請求項7には次のように記載されている。
「【請求項7】
対象に向けられるビームを提供する光送信器と、
1つ以上の集中領域に前記ビームを集中させる光整形光学素子と、
前記対象から反射される前記ビームを受信し、前記ビームに対して複数の飛行時間測定を実行する光受信器と、
を備えるシステムであって、
前記ビームは、視野にわたって一定の強度を有し、
前記視野の前記1つ以上の集中領域では、前記視野の1つ以上の他の領域よりも光が高度に集中し、
前記1つ以上の集中領域における全強度が、特定のパルス持続時間における閾値を満たす、
システム。」(下線は当合議体による。以下同様である。)
当該記載において、「光送信器」と「光整形光学素子」は異なる構成であることが明らかである。
また、本願明細書の段落【0018】において、「光整形光学素子」に関し、「いくつかの実施形態では、光整形光学素子120が、特定の構造を有する特定のタイプの光学素子であり得る。例えば、光整形光学素子120は、光ディフューザ、光フィルタ、コリメータ、レンズ、ミラー、ディフューザ(例えば、設計ディフューザ(engineered diffuser)、ホログラフィックディフューザなど)、別の光学素子、及び/又はその他のものであり得て、及び/又はそれらを含み得る。」と記載されており、技術常識を踏まえれば、ここで例示されている各光学素子が「光送信器」を含まないものであることは明らかといえる。
そのため、本願の明細書において、「光成形光学素子」は「光送信器」を含んでおらず、両者は異なる構成であると解するのが相当である。
c そうすると、「光送信器」を含まない「光整形光学素子」の構成を、受信する「入力光線」に関する記載によって特定することができないことは明らかであるから、前記aの記載のうち「前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、」という箇所は、「光整形光学素子」の構成を何ら特定しない記載であるといえる。(言い換えれば、どのような構成の「光整形光学素子」であっても、「均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である」入力光線を受信可能であり、かつ「均一強度場を有し及び全強度が閾値以上である」入力光線も受信可能である。)
ただし、本件補正後の請求項1には、「前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、」とも記載されており、前記の「前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、」の記載と併せて「光整形光学素子」の入出力、すなわち光変換の機能を特定するものであると善解すれば、本件補正後の請求項1に係る発明は、実質的には次のように認定できる。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」
d 前記cで認定した請求項1に係る発明の内容を更に検討する。
(a) 前記cの発明には「全強度が閾値未満である」こと、及び、当該「閾値」が「特定のパルス持続時間における閾値である」ことが含まれている。
「特定のパルス持続時間における」「全強度」の「閾値」とは、「特定のパルス持続時間」にわたる、入力光線又は出力光線の総量値についての「閾値」を意味するものと解されるが、そもそも「特定のパルス」について何ら特定する記載は無く、また、ほかに前記総量値を特定する記載も無いのであるから、前記「閾値」は任意の値を含むものと解さざるを得ず、結局のところ、前記「閾値」が「特定のパルス持続時間における閾値である」ことは、「光整形光学素子」の構成を実質的に何ら特定するものではない。
(b) さらに、前記cの発明では、「全強度が閾値未満である」「入力光線」を「整形」して「形成」される「出力光線」の「全強度が前記閾値未満である」ことが特定されている。
しかしながら、前記(a)で説示したように「閾値」が任意の値を含むことに加え、前記bで摘記した本願明細書の段落【0018】において例示されている「光整形光学素子」が、レンズなどの増幅機能を有さない素子のみであることを考慮すると、入力光線の「全強度が閾値未満である」ならば、出力光線の「全強度が前記閾値未満である」ことは、エネルギー保存の法則からしても当然であるから、結局のところ、前記の「全強度が閾値未満である」「入力光線」を「整形」して「形成」される「出力光線」の「全強度が前記閾値未満である」ことも、「光整形光学素子」の構成を実質的に何ら特定するものではない。
(c) したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、実質的には次のように認定できる。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有する1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有する1つ以上の出力光線を形成するように構成される、光整形光学素子。」(以下「本件補正発明A」という。)
(イ) 判断
a 引用文献1及び引用発明
(a) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2016-166814号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(b)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から反射された光の位相差を検知して、対象物との距離を計測することができる光学式検知装置に関する。」
「【0024】
図1には、本発明の第1の実施の形態の光学式検知装置1の構造が示され、図6に光学式検知装置1の回路ブロック図が示されている。
図1に示すように、光学式検知装置1は、投影装置10と受光装置20を有している。」
「【図1】
[図:0001438744000001.jpg]
」
「【0025】
投影装置10は、光源11と、光源11から発せられる測定光をコリメート光または発散光に変換する1つ以上の投影レンズ12と、前記測定光を所定の投影パターンに変換する光学変換素子13を有している。光源11は非可視光を発するレーザダイオード(LD)素子であり、実施の形態では近赤外光または赤外光を発光するLD素子が使用されている。
【0026】
光学変換素子13はホログラム素子であり、光源11から発せられた測定光を、所定の投影パターンに変換して対象物に向けて照射する。図2に示すように、光照射パターンは、高輝度部d1と、前記高輝度部d1よりも輝度が低い低輝度部d2とを有している。ホログラム素子は、通過する光を回折させ、所定の空間領域に光エネルギーを集中させることができる。光をより高い密度で集約させた箇所が高輝度部d1となり、それよりも光の集約率が低い箇所が低輝度部d2となる。
【0027】
図2には、第1の実施の形態において、光学変換素子13で変換された投影パターンによって、測定光が対象物(手H)に照射されている状態が示されている。
【0028】
共に光照射領域として定義される高輝度部d1と低輝度部d2はスポット状(ドット状)である。高輝度部d1と低輝度部d2との間を埋める領域であって図2において暗く現れている領域が光非照射領域となっている。
【0029】
光非照射領域は、光が全く当たらない領域を意味しているのではなく、光が集約されている高輝度部d1や低輝度部d2に比べて光の集約率がきわめて低く、高輝度部d1や低輝度部d2に比べるとほとんど光が当たっていないとみなされる領域である。」
「【図2】
[図:0001438744000002.jpg]
」
「【0032】
図6に示すように、光源11には光源ドライバ14が接続されている。光源ドライバ14は、光源11から発せられる測定光に強度変調を与えるものである。この実施の形態では、光源ドライバ14にパルス発振回路15が接続されており、光源ドライバ14によって光源11から間欠的に測定光が発せられる。」
「【図6】
[図:0001438744000003.jpg]
」
「【0043】
図2に示すように、光源11から発せられる測定光は、ホログラム素子で構成された光学変換素子13によって、スポット状(ドット状)の高輝度部d1に多くの光エネルギーが集中する。この高輝度部d1に集約された光エネルギーが前記しきい値の設定で抽出されて位相差が検出されるため、光源11からの光エネルギーを距離測定のために効率良く使用することが可能になる。したがって、光源11の出力が限られていても、測定光の照射範囲を広くでき、広い照射範囲において距離測定が可能になる。また、スポット状(ドット状)の高輝度部d1からの反射光は強度が高く、この強度の高い検知出力を使用して位相差を測定するため、S/N比も向上させることができる。また、太陽光などの外光に対する耐性も高くすることが可能である。
【0044】
図5(A)は、図2に示すドットパターンである投影パターンで測定光を投影したときと、光学変換素子13を使用せずに、対象物に対し測定光として単なる拡散光を与えたときとでの距離の測定結果を示している。図5(B)は、図2に示すドットパターンである投影パターンで測定光を投影したときと、光学変換素子13を使用せずに、対象物に対し測定光として単なる拡散光を与えたときとでの距離の測定値のばらつきを示している。
【0045】
図5(A)(B)において、横軸には光源11を発光させる光源ドライバ14に与えられた電圧の逆数を示しており、右へ進むにつれて電圧が低下し、よって光源11からの発光強度は低下する。縦軸は前記数式により測定された距離Lである。測定に使用した画素数は、1つのドット状の高輝度部d1が照射される領域を含む3×3ピクセルである。なお、光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離を500mmとした。図5の各測定ポイントの下部に、有効な距離の計測値が得られたフレーム数が記載されている。
【0046】
図5(A)(B)に示すように、ドットパターンである投影パターンを使用することにより、光源11からの発光強度を低下させても、有効な計測値を得ることができるフレーム数が多くなり、また、距離の検出値のばらつきが小さいことが解る。」
「【図5】
[図:0001438744000004.jpg]
」
(b) 引用発明の認定
前記(a)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「光学式検知装置1の投影装置10が有する光学変換素子13であって、(【0024】、【0025】)
投影装置10は、光源11と、光源11から発せられる測定光をコリメート光または発散光に変換する1つ以上の投影レンズ12と、前記測定光を所定の投影パターンに変換する光学変換素子13を有しており、(【0025】)
光学変換素子13はホログラム素子であり、光源11から発せられた測定光を、所定の投影パターンに変換して対象物に向けて照射し、光照射パターンは、高輝度部d1と、前記高輝度部d1よりも輝度が低い低輝度部d2とを有し、(【0026】)
光源11には光源ドライバ14が接続され、光源ドライバ14によって光源11から間欠的に測定光が発せられ、(【0032】)
ホログラム素子で構成された光学変換素子13によって、スポット状(ドット状)の高輝度部d1に多くの光エネルギーが集中し、光源11からの光エネルギーを距離測定のために効率良く使用することが可能になって、光源11の出力が限られていても、測定光の照射範囲を広くでき、広い照射範囲において距離測定が可能であり、(【0043】)
光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離が500mmである、(【0045】)
光学式検知装置1の投影装置10が有する光学変換素子13。」
b 対比・判断
引用発明と本件補正発明Aを対比検討する。
(a) 引用発明の「ホログラム素子」である「光学変換素子13」が干渉縞構造を有していることは技術常識からみて明らかであり、また「光学変換素子13」は「光源11から発せられた測定光を、所定の投影パターンに変換して対象物に向けて照射[する]」ものであるから、整形光学素子であるといえる。
したがって、引用発明の「光学変換素子13」は、本件補正発明Aの「構造を備える整形光学素子」である「光整形光学素子」に相当する。
(b) 引用発明の「投影レンズ12」により「コリメート光または発散光に変換」された「測定光」が、均一な強度場を有するものを含むことは技術常識からみて明らかであり、一方、引用発明の「高輝度部d1と、前記高輝度部d1よりも輝度が低い低輝度部d2とを有[する]」「光照射パターン」が、不均一な強度場を有することも当然といえる。
そうすると、前記(a)を踏まえると、引用発明において「光学変換素子13はホログラム素子であり、光源11から発せられた測定光を、所定の投影パターンに変換して対象物に向けて照射し、光照射パターンは、高輝度部d1と、前記高輝度部d1よりも輝度が低い低輝度部d2とを有[する]」ことは、本件補正発明Aにおいて「前記構造は、均一強度場を有する1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有する1つ以上の出力光線を形成するように構成される」ことに相当する。
(c) 小括
前記(a)~(b)の対比結果をまとめると、本件補正発明Aの構成は、全て引用発明が備えるから、本件補正発明Aは、引用発明である。
また、本件補正発明Aは、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 検討2
(ア) 本件補正発明の認定2
a 前記ア(ア)dにおいては、前記「閾値」が「特定のパルス持続時間における閾値である」こと、及び、前記の「全強度が閾値未満である」「入力光線」を「整形」して「形成」される「出力光線」の「全強度が前記閾値未満である」こと、について「光整形光学素子」の構成を実質的に何ら特定するものではない、として本件補正発明Aを認定したが、仮にこれらの「閾値」に関する記載が「光整形光学素子」について何らかの構成を特定し得るものであるとして以下検討する。
b そうすると、前記ア(ア)cで説示したように、本件補正後の請求項1に係る発明は、実質的に次のように認定できる。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」(以下「本件補正発明B」という。)
(イ) 対比・判断
引用発明と本件補正発明Bを対比検討する。
a 引用発明は、「ホログラム素子で構成された光学変換素子13によって、スポット状(ドット状)の高輝度部d1に多くの光エネルギーが集中し、光源11からの光エネルギーを距離測定のために効率良く使用することが可能になって、光源11の出力が限られていても、測定光の照射範囲を広くでき、広い照射範囲において距離測定が可能であ[る]」ように構成された発明であり、具体的には「光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離が500mmである」ように「光源11」の出力が選定されたものである。
そのように選定された出力の「光源11」から発せられる測定光が「投影レンズ12」により変換された「コリメート光または発散光」の前記「パルス幅」に基づく総量値より大である「光源11の出力が限られてい[る]」こと等に関連する何らかの値を『閾値』とすると、「光学変換素子13」が変換する前の「コリメート光または発散光」の前記総量値は当然に『閾値』未満となる。また、前記ア(ア)d(b)で説示したように、そのような「コリメート光または発散光」がさらに変換された「所定の投影パターン」の「測定光」の前記総量値が、変換前より小さな値、すなわち『閾値』未満となることも明らかである。
b そして、引用発明において「光学変換素子13」が変換する前の「コリメート光または発散光」の前記総量値、及び「所定の投影パターン」に変換後の「測定光」の前記総量値が『閾値』未満となることは、本件補正発明Bにおいて「1つ以上の入力光線」の「全強度が閾値未満である」こと、及び「1つ以上の出力光線」の「全強度が前記閾値未満である」ことに相当するから、前記ア(イ)b(a)~(b)を踏まえると、引用発明と本件補正発明Bは「前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され[る]」点で一致する。
c また、引用発明は「光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離が500mmである」ように構成されたものであり、この場合の前記『閾値』は前記「光源のパルス幅」に基づくものであって、このことは本件補正発明Bにおいて「全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である」ことに相当する。
d 小括
前記a~c及び前記ア(イ)b(a)~(b)の対比結果をまとめると、本件補正発明Bの構成は、全て引用発明が備えるから、本件補正発明Bは、引用発明である。
また、本件補正発明Bは、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 検討3
(ア) 本件補正発明の認定3
前記ア及びイにおいては、本件補正発明が実質的にどのような発明であるのかを認定した上で引用発明との対比、検討を行ったが、念のため、次に再掲する、本件補正後の請求項1の記載の文言をそのまま対比、検討の対象として以下検討する。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」(以下「本件補正発明C」という。)
(イ) 対比・判断
引用発明と本件補正発明Cを対比検討する。
a 前記ア(イ)b(a)で検討したように、引用発明の「光学変換素子13」は、本件補正発明Cの「構造を備える整形光学素子」である「光整形光学素子」に相当する。
b 前記イ(イ)bで検討したように、引用発明と本件補正発明Bは「前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され[る]」点で一致する。その場合、「前記構造」が当該入力光線を受信するように構成されていることは当然である。
そうすると、引用発明と本件補正発明Cが、「前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され[る]」点で一致することも明らかである。
c また、前記イ(イ)cで検討したように、引用発明は「光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離が500mmである」ように構成されたものであり、この場合の前記『閾値』(前記イ(イ)a及びb参照)は前記「光源のパルス幅」に基づくものであって、このことは本件補正発明Cにおいて「全強度の前記閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である」ことに相当する。
d 小括
前記a~cの対比結果をまとめると、本件補正発明Cの構成は、全て引用発明が備えるから、本件補正発明Cは、引用発明である。
また、本件補正発明Cは、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 検討4
(ア) 本件補正発明の認定4
a 前記イ(イ)cにおいては、本件補正発明Bの「特定のパルス持続時間における閾値」について、引用発明において「光源のパルス幅に基づく計測可能な距離範囲である実効距離が500mmである」場合に観念できる、「光源11の出力が限られてい[る]」こと等に関連する何らかの『閾値』に相当するとして、対比・判断を行った。
b ここで本願明細書の記載を参酌すると、「パルス持続時間」に関し、本願明細書の段落【0009】には次のように記載されている。
「【0009】
しかしながら、3次元撮像システムによって提供される光の強度は、閾値強度未満に制限される場合がある。例えば、眼の安全性評価要件を遵守すると、3次元撮像システムが光の閾値強度を超える強度を提供することを妨げる場合がある。眼の安全性のための閾値は、電力、発散角、パルス持続時間、露光方向、波長、及び/又はその他のものに基づき得る。同様に、携帯電話などの装置は、小型化されるほど電力容量が制限され、3次元撮像システムが提供し得る光の強度が制限される場合がある。その結果、対象までの閾値距離を超える距離では、測定のために反射されて3次元撮像システムに戻る光の光量が、正確な測定を可能とするには不十分となる場合がある。例えば、ライダシステムが視野内の対象のグループまでの距離を決定しようとするときに、いくつかの対象は閾値距離内にあり、ライダシステムによって正確に奥行きを感知される場合があり、いくつかの他の対象は閾値距離を超え、ライダシステムが正確な奥行きセンシングを行うために受信する反射光が不十分である場合がある。」
c 本願請求項1において「特定のパルス持続時間」について限定する記載は無いものの、前記段落【0009】の記載において「パルス持続時間」の要件は「眼の安全性のための閾値」に関するものとされており、これを踏まえて、仮に前記本件補正発明Bの「特定のパルス持続時間における閾値」とは、「眼の安全性に関する、パルス持続時間における閾値」を指すものであるとして認定した次の発明について以下検討する。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、眼の安全性に関する、特定のパルス持続時間における閾値である、光整形光学素子。」(以下「本件補正発明D」という。)
(イ) 判断
a 引用文献3及び技術常識1
(a) 引用文献3の記載事項
前置報告書において新たに引用され、本願の優先日前に発行された文献である特開2005-292156号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、複数個の半導体発光素子により発せられる光を投光領域に投光するための光学系を有する半導体投光装置を備え、物体からの反射光を受光してその物体までの距離を測定する距離測定装置に関する。」
「【0104】
(第6の実施形態)
図18ないし図24は本発明の第6の実施形態を示すもので、以下、第1の実施形態と異なる部分について説明する。自動車における距離測定装置で、第1の実施形態のようにレーザ光の出力を大きくして検出距離を長くすることができるようにした場合に、その距離測定環境を考慮すると人間の目にレーザ光が入射する可能性があるので、レーザ光の出力を高くすればその分だけこの点についても十分に考慮する必要がある。そこで、この実施形態においては、特に人間の目に入射しても安全基準を十分に満たせるようにした距離測定装置にすることを主眼として構成している。
【0105】
また、検出距離を長く設定することができるようにするためには、複数のレーザ光を効率良く遠方において重なり合うように照射して光密度を高くする必要があり、しかも、レーザ光のスポット形状によってはその配置の仕方によってその照射の領域の効率が大きく変動する。この実施形態においては、このような点についても考慮して、特にレーザ光の投光領域でのスポット形状が楕円形状となる場合でもできるだけ効率良くしかも精度良く距離測定動作を行なえるようにした構成を提供する。」
「【0110】
アイセーフレーザの条件である1.4μm以上の波長については、次の基準に基づいて得た。図21に示すようなJIS-C6802に示される安全基準MPEのデータから、露光時間(パルス幅)1~100nsのレーザ光の安全基準を抽出して波長との関係で示すと図20のようになる。この図20から、1.4μm以上においては、それよりも短い波長側の光に対して数桁以上もの露光量が許容される条件となり、ほとんど人間の目に悪影響を与えることがない条件であることがわかる。」
「【図20】
[図:0001438744000005.jpg]
」
「【図21】
[図:0001438744000006.jpg]
」
(b) 技術常識1の認定
前記引用文献3に例示されているように、次の技術事項は技術常識(以下「技術常識1」という。)であるといえる。
[技術常識1]
「物体からの反射光を受光してその物体までの距離を測定する距離測定装置に関し、人間の目に入射しても安全基準を満たせるようにした距離測定装置にすることが必要であり、その際の安全基準MPE(最大許容露光量)は、露光時間(パルス幅)と波長等との関係で示されるものであること。」
b 対比・判断
(a) 引用発明においては「眼の安全性に関するパルス持続時間における閾値」を設定することは行われていない。
(b) しかしながら、前記a(b)で技術常識1として認定したとおり、「物体からの反射光を受光してその物体までの距離を測定する距離測定装置に関し、人間の目に入射しても安全基準を満たせるようにした距離測定装置にすることが必要であり、その際の安全基準MPE(最大許容露光量)は、露光時間(パルス幅)と波長等との関係で示されるものであること。」は技術常識である。
(c) したがって、引用発明において、露光時間(パルス幅)と波長等との関係で示される安全基準MPE(最大許容露光量)を越えないように「光源11」の出力を制限することは、当業者が引用発明の具体的な構成を選択する際に当然に考慮すべき事項の範囲内のものであって、その制限される出力の上限値が本件補正発明Dの「眼の安全性に関するパルス持続時間における閾値」に相当する。
c 小括
前記a~b並びに前記ア(イ)b(a)~(b)、前記イ(イ)a~c及び前記ウ(イ)a~cの対比結果をまとめると、本件補正発明Dは、引用発明及び技術常識1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)理由2(新規性)及び3(進歩性)について」において、請求人はおおよそ次のように主張している。
本願発明における「特定の発散角」及び「特定の露光方向」との発明特定事項を削除することにより、本件補正発明が「全強度の閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である」との構成を有するように補正したので、本件補正発明は、引用発明に対して新規性及び進歩性を有する。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記「全強度の閾値が、特定のパルス持続時間における閾値である」との構成については、前記イ(イ)、ウ(イ)又はエ(イ)bにおいて検討したとおりである。
したがって、前記請求人の主張は採用できない。
カ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明であるか、引用発明又は引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当し又は特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
(3) 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
(1) 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の(2)に再掲する、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定の発散角、特定のパルス持続時間、又は特定の露光方向における閾値である、光整形光学素子。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由2(新規性の欠如)及び理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2.(新規性の欠如)
本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3.(進歩性の欠如)
本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2016-166814号公報
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項及び引用発明、並びに引用文献3に記載された事項及び技術常識1は、前記第2の2(2)ア(イ)a及び2(2)エ(イ)aにおいて示したとおりである。
4 判断
本願発明は、前記第2の2(1)において検討したとおり、「全強度の前記閾値」について、「特定の発散角、特定のパルス持続時間、又は特定の露光方向における閾値」を「特定のパルス持続時間における閾値」に限定することを省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明であるか、引用発明又は引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明であるか、引用発明又は引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 上申書における請求人の主張(補正案)について
令和7年2月28日に提出された上申書において、請求人は特許請求の範囲についての補正案を提示しているため、これについて以下検討する。
(1) 補正案の内容
前記補正案における請求項1に関する記載は次のとおりである。
「構造を備える整形光学素子であって、
前記構造は、均一強度場を有し及び全強度が閾値未満である1つ以上の入力光線を受信するように構成され、
前記構造は、前記1つ以上の入力光線を整形して、不均一強度場を有し及び全強度が前記閾値未満である1つ以上の出力光線を形成するように構成され、
全強度の前記閾値が、特定の発散角、特定のパルス持続時間、又は特定の露光方向における閾値であり、
前記不均一強度場は、光の強度がより高い領域の組と、光の強度がより低い領域の組と、を含み、
前記光の強度がより高い領域の組は、前記閾値を越える強度を有し、前記光の強度がより低い領域の組は、前記閾値を越えない強度を有する、光整形光学素子。」(下線は本件補正後の請求項1からの変更箇所を示す。)
(2) 補正案についての検討
ア 仮に当審において拒絶の理由を通知する場合、「最後の拒絶理由通知」が通知されることを踏まえ、前記補正案にかかる補正について、補正の目的も含めて検討することとする。
イ 前記補正案において、「全強度の前記閾値」に関し、択一的記載の要素として、「特定の発散角」及び「特定の露光方向」が追加されているから、前記補正案にかかる補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
また、前記補正案にかかる補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
ウ また、前記補正案において、「前記光の強度がより高い領域の組は、前記閾値を越える強度を有し、前記光の強度がより低い領域の組は、前記閾値を越えない強度を有する」(以下「記載A」という。)とあるが、請求項1における前記記載Aより前の「閾値」についての記載は、「全強度」についての「閾値」に関する記載(「全強度が前記閾値未満である」、「全強度の前記閾値が、…閾値であり」等)のみであるから、「前記閾値」との記載を踏まえると、前記記載Aにおける「閾値」も「全強度」についての「閾値」、すなわち「前記光の強度がより高い領域の組」と「前記光の強度がより低い領域の組」の双方に対応する強度を合計した強度に関する「閾値」を意味するものと解される。
一方で、前記記載Aからは、「閾値」が、「光の強度がより高い領域の組」に対応する強度に関する「閾値」又は「前記光の強度がより低い領域の組」に対応する強度に関する「閾値」を意味し、両強度を合計した強度に関する「閾値」ではないとも解される。
そうすると、前記補正案の請求項1における「全強度」についての「閾値」と、前記記載Aにおける「前記閾値」の関係が不明である。
また、このことは、仮に、「光の強度がより高い領域の組」に対応する光線の総量値、「前記光の強度がより低い領域の組」に対応する光線の総量値が、それぞれ、(各組についての)『全強度』であると解釈したとしても同様である。
したがって、前記補正案の請求項1に係る発明は明確でないから、前記補正案にかかる補正は、特許法36条6項2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
エ 仮に、前記補正案における前記記載Aにおける「前記閾値」との記載が誤りであり、前記記載Aにおける「閾値」が、「全強度」についての「閾値」とは異なる指標に関する何らかの閾値を指すとしても、この場合、引用発明の「高輝度部d1と、前記高輝度部d1よりも輝度が低い低輝度部d2とを有[する]」「光照射パターン」が補正案の「光の強度がより高い領域の組と、光の強度がより低い領域の組と、を含[む]」「前記不均一強度場」に相当するところ、「高輝度部d1」と「低輝度部d2」の中間の輝度を「閾値」とすれば、引用発明における前記「光照射パターン」が補正案における前記記載Aの条件を満たすことになる。
したがって、前記第2の2(2)の検討も踏まえると、補正案の請求項1に係る発明は、引用発明であるか、引用発明又は引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当し又は特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
オ 以上検討のとおり、前記補正案にかかる補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、仮に、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し又は特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-014235