2022-014412
外用製剤
- 審判番号
- 2022-014412
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-253307外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月13日
- 審決日
- 2023年01月31日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小林製薬株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年12月28日に出願された特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和4年2月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「(a)外用剤、及び(b)前記外用剤(a)を収容する容器を含む外用製剤であって、前記外用剤(a)が:続きを表示(全12行)ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも一種;メントール;メタノール、エタノール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコール;並びに水を含有し、かつ前記アルコールを合計で、外用剤全体に対して40~90質量%含有する外用剤であり、前記容器(b)が、胴部と、口部を備える首部とからなり、前記胴部の縦方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器である、外用製剤。」
第3 当審の拒絶理由
令和4年10月4日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、本願発明に対する引用文献1を主引用文献とする理由1(進歩性)は、次のとおりである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等>
1.国際公開第2017/111167号
3.特開2017-222428号公報
4.特開昭50-38393号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
1-1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。
摘記1ア
「[0121] 本明細書は、以上の実施形態に関連して、例えば以下に例示される発明を開示するが、これらに何ら限定されるものではない。[1-1] 次の成分(A)及び(B):(A)ロキソプロフェン又はその塩;(B)テルペン類;続きを表示(全11行)を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。・・・[0122] ・・・[1-20] 外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤及び経口ゼリー剤よりなる群から選ばれる剤形である、[1-1]~[1-19]のいずれか記載の医薬製剤。[1-21] 外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤及びゲル剤よりなる群から選ばれる剤形である、[1-1]~[1-19]のいずれか記載の医薬製剤。[1-22] リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤及びゲル剤よりなる群から選ばれる剤形である、[1-1]~[1-19]のいずれか記載の医薬製剤。[1-23] ローション剤、軟膏剤、クリーム剤及びゲル剤よりなる群から選ばれる剤形である、[1-1]~[1-19]のいずれか記載の医薬製剤。」([0121]、[0122])
摘記1イ
「[0158][試験例1-1]保存試験(テルペン類)その1表1に示す成分及び分量を含有する液状の組成物を調製し、ポリエチレン製又はガラス製の容器に収容して、それぞれ実施例1-1、比較例1-1、1-2又は参考例1-1の医薬製剤とした。得られた各種の医薬製剤を、80℃の暗所に1週間保存し、保存後の変色(黄変)の有無を目視により評価した。なお、結果は、変色が生じなかったものを○、変色が生じたものを×として評価した。・・・」([0158])
摘記1ウ
「[0165][試験例1-3]保存試験(テルペン類)その3表3に示す成分及び分量を含有する液状の組成物を調製し、ポリプロピレン製の容器に収容して実施例1-3、1-4の医薬製剤とし、試験例1-1と同様の方法により80℃の暗所に1週間保存した後の変色の有無を評価した。結果を表3に示す。[0166][表3][図:0001396206000001.jpg]」([0165]及び[0166])
1-2 引用発明
引用文献1の記載(摘記1ウの実施例1-3)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.0gl-メントール 3.0gエタノール 50.0g精製水 46.0gからなる液状の組成物を、ポリプロピレン製の容器に収容した医薬製剤。」
2 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記3ア
「【0005】上述のような塗布容器は、塗布部材が設けられている容器首部が、斜め上方に傾斜するように構成されているため、肩や背中における患部に対して塗布液を塗りやすいという優れた特質を有するものである。しかしながら、容器首部が斜め上方に傾斜するように構成されていることに起因して、塗布容器全体の重心位置が容器首部の口部側に片寄っており、載置して保管する際に倒れるおそれがあった。特に、塗布液の残量が少なくなった場合、塗布液を収容した塗布容器全体の重心位置が、塗布液の残量が多い場合の重心位置よりも首部先端側に移ってしまい倒れやすいという問題があった。」(【0005】)
摘記3イ
「【0016】容器本体2は、図6に示すように、底部21と、底部21と連続し上方に起立する胴部22と、胴部22と連続し斜め上方に起立する口部23aを有する首部23と、を備えている。この容器本体2を形成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(高密度ポリエチレン:HDPE、低密度ポリエチレン:LDPE)、ポリスチレン等の合成樹脂材料を使用することができる。また、これらの材料の1種または2種類以上を組み合わせて容器本体2を形成してもよい。また、容器本体2は、手指で把持して圧力を加えた場合に、わずかに押圧変形されるように構成することが好ましい。」(【0016】)
摘記3ウ
「[図:0001396206000002.jpg]」(図1)
摘記3エ
「[図:0001396206000003.jpg]」(図6)
摘記3オ
「[図:0001396206000004.jpg]」(図9)
3 引用文献4の記載
引用文献4には、以下の記載がある。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記4ア
「しかしながら、身体患部への薬液の塗布、塗擦は容器の胴部を握持し上記塗布部または滲出部を患部に指向して行うため、患部が手の届きにくい個所に在る場合に容器を指向しても薬液がうまく塗擦できなかつたり、容器を頻繁に持ち変えることが必要であつた。塗擦を一人で行わうとすれば身体をいかに捻つても不可能というもどかしさを感じたりそれに伴つて処置が遅れるおそれがあつた。本発明はこうした難点がもつぱら従来の薬液容器の基本的構造すなわち塗布部を容器軸に沿つて設けている点に着目しこれを改善することによつて上述のごとき患部への適用時の不便を解決したものである。本発明による薬液容器は構造上の斬新な改変によつて使用上の便益と量産に最適の形態をもつものである。」(1頁右下欄3行~2頁左上欄3行)
摘記4イ
「[図:0001396206000005.jpg]」(図1~3)
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ロキソプロフェンナトリウム水和物」は、本願発明の「ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも一種」に相当する。
引用発明の「l-メントール」は、本願発明の「メントール」に相当する。
引用発明の「エタノール」は、本願発明の「メタノール、エタノール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコール」に相当する。また、引用発明の「エタノール」の含有量は、液状の組成物100g中に50gの割合、すなわち50質量%で含まれているから、本願発明の「40~90質量%」に相当する。
引用発明の「精製水」は、本願発明の「水」に相当する。
引用発明の「医薬製剤」と本願発明の「外用製剤」は、医薬製剤である限りにおいて一致する。
引用発明の「液状の組成物」と本願発明の「外用剤」は、医薬製剤に含まれる組成物である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「(a)医薬製剤に含まれる組成物、(b)前記医薬製剤に含まれる組成物(a)を収容する容器を含む医薬製剤であって、前記医薬製剤に含まれる組成物(a)が:ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも一種;メントール;メタノール、エタノール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコール;並びに水を含有し、かつ前記アルコールを合計で、医薬製剤に含まれる組成物全体に対して40~90質量%含有する医薬製剤に含まれる組成物である、医薬製剤。」
<相違点>
相違点1 「医薬製剤に含まれる組成物」を含む「医薬製剤」が、本願発明においては、「外用剤」を含む「外用製剤」であるのに対し、引用発明においては「液状の組成物」を含む「医薬製剤」である点。
相違点2 容器が、本願発明においては、「胴部と、口部を備える首部とからなり、前記胴部の縦方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器」であるのに対し、引用発明においては、容器の構造が特定されていない点。
2 判断
ア 相違点1についての判断
引用文献1には、ロキソプロフェン又はその塩とメントールを含むテルペン類とを含む医薬製剤を、外用液剤(本願発明の「外用剤」に相当)として用いることができることが記載されている(摘記1ア)。
そうすると、当業者は、引用発明の「液状の組成物」を含む「医薬製剤」を、「外用剤」を含む「外用製剤」と認識し得るから、この点は実質的な相違点ではないし、また、この点で相違するとしても、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることに容易に想到し得たといえる。
イ 相違点2についての判断
引用文献3、4には、「胴部と、口部を備える首部とからなり、前記胴部の縦方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器」(以下「首部を傾けた容器」という。)が記載されており(摘記3イ~オ、摘記4イ)、外用剤を収容する容器として「首部を傾けた容器」を用いると、肩や背中といった患部に外用剤を塗布しやすいことが記載されている(摘記3ア、摘記4ア)ことから、本願出願時において、外用剤を「首部を傾けた容器」のような塗布しやすい容器に収容して用いることができることは、当業者に周知の技術的事項であったといえる。
また、本願出願時において、「首部を傾けた容器」を用いると沈殿が生じるため外用剤を収容するのには適さないといったことが技術常識であったとはいえないから、引用発明の医薬製剤を収容するための容器として「首部を傾けた容器」を用いることを妨げる特段の事情があったともいえない。
そうすると、当業者は、引用発明における容器を、塗布しやすい容器として周知の「胴部と、口部を備える首部とからなり、前記胴部の縦方向中心軸に対して前記首部を傾けた容器」として、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることに容易に想到し得たといえる。
ウ 本願発明の効果について
(ア)本願明細書の記載
本願明細書には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものもある。
a
「【0008】本発明によれば、メントール、炭素数1~4のアルコール、並びに水を含有する外用剤が、首曲がり容器に充填された外用製剤であって、首部の下側におけるメントールの析出が抑制された外用製剤を提供できる。・・・【0011】1.1.ロキソプロフェン及びその薬学的に許容される塩(ロキソプロフェン類)ロキソプロフェン類を含有していることにより、本発明で用いる外用剤は、首曲がり容器の首部におけるメントールの析出が抑制されたものとなる。」(【0008】~【0011】)
b
「【0059】首部の下側の長さがより長いと、使用直後に首部に残存する外用剤が、その後の保管時に胴部へと戻りにくくなり、メントールがより析出しやすくなる(図1)。本発明の外用製剤においては外用剤を特定の組成とすることにより、メントールの析出が抑制されているため、本発明で用いる首曲がり容器は、首部の下側の長さが0.5cm以上であってもメントールの析出が抑制されている。首部の下側の長さは、通常、10cm以下である。」(【0059】)
c
「【0062】<試験例1>表1(単位は質量%)に記載する通り、各成分を各分量、量り取り、攪拌して溶解させることにより液状組成物を調製した。【0063】【表1】[図:0001396206000006.jpg]」(【0062】、【0063】【表1】)
d
「【0064】ポリプロピレン製樹脂シート上に、ピペットマンにて各液状組成物10μLを滴下し、経過観察を行った。滴下から2分経過後、白濁が見られた場合を「×」、白濁が見られなかった場合を「○」として表1に示した。比較例1及び2、並びに実施例1~3についての経過観察結果を図4及び5に示す。【0065】比較例1ではすぐに析出による白濁化が観察され、実施例では白濁が抑制されていた。また、ポリエチレン製樹脂シート上でも同様の結果が得られた。なお、ポリプロピレン樹脂シート上での濡れ性について目視で観察したところ、l-メントールを含む比較例1及び2、並びに実施例1~3はいずれも、l-メントールを含まない参考例に比べて高かった。」(【0064】、【0065】)
e
「【0066】<試験例2>胴部の縦方向中心軸に対する首部の傾きの角度が約60°である、販売名「アンメルツヨコヨコ」(2017年製、小林製薬株式会社)の容器に、実施例1及び2で調製した外用剤を充填し、図3に例示されるように傾けて使用した後、図2に例示されるように25℃で5日間静置した。静置後、白濁は見られなかった。」(【0066】)
f
「[図:0001396206000007.jpg][図:0001396206000008.jpg]」(図2、3)
g
「[図:0001396206000009.jpg]」(図4、5)
そうすると、本願明細書には、以下の事項が記載されていると認められる。
(i)本願明細書には、メントール、炭素数1~4のアルコール、並びに水を含有する外用剤が、首曲がり容器に充填された外用製剤であって、首部の下側におけるメントールの析出が抑制された外用製剤を提供できることが記載されている(摘記a)。
(ii)本願明細書の実施例には、【0063】【表1】に記載された各成分を各分量、量り取り、攪拌して溶解させることによって、実施例1~3の液状組成物及び比較例1、2の液状組成物を調製したことが記載されている(摘記c)。
ここで、実施例1~3の液状組成物は、本願発明の外用剤に相当するものである。
(iii)本願明細書の実施例の試験例1には、ポリプロピレン製樹脂シート上に実施例1~3の液状組成物を10μL滴下して2分経過後において白濁が見られなかったのに対し、比較例1、2の液状組成物は、同じ条件で白濁が見られたことが記載されている(摘記d、g)。
(iv)本願明細書の実施例の試験例2には、胴部の縦方向の中心軸に対する首部の傾きが60°である、販売名「アンメルツヨコヨコ」(2017年製、小林製薬株式会社)の容器に、実施例1及び2で調製した外用剤を充填し、傾けて使用した後、25℃で5日間静置したところ、白濁は見られなかったことが記載されている(摘記e、f)。
(v)上記(i)~(iv)からみて、本願発明の効果は首曲がり容器の首部の下側におけるメントールの析出を抑制することであり、当該効果については、本願明細書において、ポリプロピレン製樹脂シート上に液状組成物を滴下し一定時間経過後の白濁の有無や、外用剤を充填した市販容器を傾けて使用した後、一定期間静置後の白濁の有無によって確認しているといえる。
(イ)本願明細書の試験例1について
試験例1は、実施例1~3の液状組成物(本願発明の外用剤)と、ロキソプロフェンナトリウム水和物を含まない比較例1、2の液状組成物とを、ポリプロピレン製樹脂シート上で観察して、白濁化の程度の違いを評価したものである。
ここで、試験例1のように液状組成物がポリプロピレン製樹脂シート上に液滴として存在している状態は、密封されていない開放環境に液状組成物が置かれた状態であり、液状組成物の環境として、本願発明のように液状組成物が容器内の溶液として存在している状態(密封された環境に置かれた状態)と大きく異なるものであるから、試験例1と本願発明とでは、液状組成物の成分の状態や安定性が大きく異なる状態にあるといえる。
そうすると、ポリプロピレン製樹脂シート上において、実施例1~3の液状組成物と比較例1、2との液状組成物の間に白濁化の程度の違いがあったとしても、この白濁化の程度の違いが本願発明の「首部を傾けた容器」における白濁化の程度の違いを反映したものとはいえない。
また、本願発明の進歩性を推認するためには、本願発明と引用発明との相違点によって、本願発明の奏する効果が、引用発明の効果と比較して、当業者が予測できない優れたものであることが裏付けられている必要がある。
しかしながら、相違点の判断は上記アのとおりであって、試験例1における実施例1~3の液状組成物(本願発明の外用剤)と引用発明の「液状の組成物」との間に相違点はない上に、比較例1、2の液状組成物は、引用発明の「液状の組成物」を反映したものとはいえないから、実施例1~3の液状組成物(本願発明の外用剤)と比較例1、2の液状組成物との比較を示した試験例1の結果は、本願発明と引用発明の効果を比較したものとはいえない。
そうすると、実施例1~3の液状組成物(本願発明の外用剤)と比較例1、2の液状組成物との比較を示した試験例1の結果は、本願発明の「外用剤」の効果と引用発明の「液状の組成物」の効果を比較したものとはいえず、当然、本願発明の「外用剤」が「首部を傾けた容器」に収容された際の効果が顕著であることを示すものでもないから、試験例1の結果は、そもそも本願発明の引用発明に対する進歩性を推認するための根拠とはならないものである。
したがって、試験例1は、本願発明が引用発明より優れた効果を有することを裏付けるものとはいえない。
(ウ)本願明細書の試験例2について
試験例2は、実施例1、2の液状組成物を収容した首部を傾けた容器(本願発明の外用製剤)を傾けて使用した後、25℃で5日間静置しても白濁は見られなかったことを示すものである。
しかしながら、試験例2における実施例1、2の液状組成物(本願発明の外用剤)と引用発明の「液状の組成物」との間に相違点はないし、試験例2は比較実験について記載されていないから、本願発明の「外用剤」の効果と引用発明の「液状の組成物」の効果を比較したものとはいえず、当然、本願発明の「外用剤」が「首部を傾けた容器」に収容された際の効果が顕著であることを示すものでもない。
(エ)本願発明における容器について
本願明細書には、「ロキソプロフェン類を含有していることにより、本発明の外用剤は、首曲がり容器の首部におけるメントールの析出が抑制されたものとなる。」と記載されており(摘記a)、また、「本発明の外用製剤においては外用剤を特定の組成とすることにより、メントールの析出が抑制されている」ことが記載されている(摘記b)。
そうすると、首部を傾けた容器の首部の下側におけるメントールの析出を抑制するという本願発明の効果は、ロキソプロフェンナトリウム水和物とメントールを含む本願発明の外用剤とすることによって実現されるものと理解できる。
そして、上記(1)で説示したように、引用発明の「液状の組成物」は、ロキソプロフェンナトリウム水和物とメントールを含むものであるから、引用発明の「液状の組成物」も、自ずと首部を傾けた容器の首部の下側におけるメントールの析出を抑制するものであるといえる。
また、引用文献1の記載からみて、ポリプロピレン容器に収容された医薬製剤である引用発明は、含有される成分が析出するものではないことが理解でき、首部を傾けた容器は成分が析出しやすいという技術常識が本願出願時に存在したともいえないから、引用発明におけるポリプロピレン容器を、首部を傾けた容器とした場合においても同様に、含有される成分は析出しないものであると、当業者であれば理解したといえる。
したがって、本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測し得るものといえる。
(オ)効果についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願明細書の試験例1及び2を参酌しても、本願発明が引用発明から当業者が予測できない優れた効果を奏するとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 審判請求人の主張について
1 令和4年12月9日提出の意見書(以下「意見書」という。)における審判請求人の主張
審判請求人は、意見書において、以下のように主張する。
「3.3 ・・・本願発明1は、「首部の下側におけるメントールの析出が抑制された外用製剤を提供」することを課題とするものです(本願明細書、0008段落)。本願明細書記載の試験例1はかかる技術的効果を実証するための試験です。そして、試験例1のように樹脂シート上で液滴として液状組成物が存在している状態は、本願発明1における首部を傾けた容器において、首部に残存している状態を模したものとして技術的に妥当です。このことは、明細書、0059段落の記載などからも明らかです。具体的には、0059段落には、本願発明1における首部を傾けた容器を用いる場合、「使用直後に首部に残存する外用剤が、その後の保管時に胴部へと戻りにくくなり、メントールがより析出しやすくなる(図1)」旨が記載されています。よって、「試験例1と本願発明1とでは、液状組成物の成分の状態や安定性が大きく異なる状態にある」とは到底言えないことは明らかです。3.4 そして、本願発明1においては、上記相違点2を適用して初めて生じる上述の課題を、特定の組成の液状組成物を採用することにより解決しています。引用文献1には、かかる課題について記載も示唆もされていません。そうしてみますと、当業者が、かかる新規の課題を解決する目的で、上記相違点を適用して本願発明1の構成に想到したはずであるとは到底言えないことが明らかです。3.5 また、上記相違点を適用して初めて得られる本願発明1の効果、すなわち、首部を傾けた容器において、首部に残存している液状組成物の析出が抑制される、という効果を、引用文献の記載及び出願時の技術水準から予測することができたとは言えないことも明らかです。」(意見書2頁「3.3~3.5」)
2 審判請求人の主張に対する当審の判断
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本願発明における首部を傾けた容器の首部に残存している状態は、容器という密閉された環境に液状組成物が存在している状態である。
一方、試験例1の樹脂シート上で液滴として液状組成物が存在している状態は、密閉されていない開放環境に液状組成物が存在している状態である。
ここで、本願発明の液状組成物及び試験例1の樹脂シート上の液滴は、メタノールや水などの室温で容易に蒸発し得る液体を含むものであり、メタノールや水などの室温で容易に蒸発し得る液体は、密閉環境と開放環境では液体の蒸発のしやすさや液体に含まれる成分の沈殿のしやすさといった、液状組成物の成分の状態や安定性が異なることは技術常識である。
そうすると、試験例1のように樹脂シート上で液滴として液状組成物が存在している状態は、本願発明における首部を傾けた容器において、首部に残存している状態を模したものとして技術的に妥当な部分があるとしても、密閉されていない開放環境に液状組成物が存在している試験例1と、容器という密閉された環境に液状組成物が存在している本願発明とでは、液状組成物の成分の状態や安定性が大きく異なる状態であるといえるから、試験例1と本願発明とでは、液状組成物の成分の状態や安定性が大きく異なる状態にあるとは到底言えないとする審判請求人の主張は、採用することができない。
また、審判請求人は、新規の課題を解決する目的で、相違点2を適用して本願発明の構成に想到したはずであるといえない旨主張するが、上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、審判請求人の主張はこれを左右するものではない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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