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特許拒絶査定不服審判

2024-006319

男性活力用組成物及び組成物

審判番号
2024-006319
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-069090
請求日
2024年04月12日
審決日
2026年04月27日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社東洋新薬
  • 【請求人代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 冨永 みどり
  • 審判官 福山 則明
  • 審判官 吉田 佳代子
分類
P18 .575-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 69090「男性活力用組成物及び組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月8日出願公開、特開2020-164495〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、2019年(平成31年)3月29日を出願日とする特許出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 2月 4日受付 刊行物等提出書 令和4年12月22日付 拒絶理由通知書 令和5年 3月 7日 意見書及び手続補正書の提出 同年 6月 5日付 拒絶理由通知書 同年10月11日 意見書及び手続補正書の提出 令和6年 1月10日付 拒絶査定 同年 4月12日 審判請求書及び手続補正書の提出 同年 8月28日付 前置報告書 同年11月14日 上申書の提出 第2 令和6年4月12日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年4月12日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正は、本件補正前(令和5年10月11日提出の手続補正書)の特許請求の範囲における「【請求項1】 松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニン若しくはその塩を含む男性活力用組成物(但し、トナカイの角を含む組成物を除き、且つ馬の睾丸を含む組成物を除く)であって、組成物の固形分中、プロシアニジンとピペリンの質量比がプロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30であり、且つ、黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比が、黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250である、組成物。」 との記載を、本件補正後の 「【請求項1】 松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニン若しくはその塩を含む男性活力用組成物(但し、トナカイの角を含む組成物を除き、且つ馬の睾丸を含む組成物を除く)であって、組成物の固形分中、プロシアニジンとピペリンの質量比がプロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30であり、且つ、黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比が、黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250であり、乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される組成物。」(なお、下線は補正箇所を示す。)に補正するものである。 2 補正の目的について 本件補正は、本件補正前の請求項1において、「乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される」という事項を追加するものである。 そして、当該事項を追加することによって、任意の量でアルギニンが含有される組成物であった本件補正前の請求項1に係る発明が、本件補正後の「乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される組成物」に限定されたといえるところ、本件補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1に記載した、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニン若しくはその塩を含む男性活力用組成物(但し、トナカイの角を含む組成物を除き、且つ馬の睾丸を含む組成物を除く)であって、組成物の固形分中、プロシアニジンとピペリンの質量比がプロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30であり、且つ、黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比が、黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250であり、乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される組成物。」 (2) 引用文献 ア 引用文献4:特表2006-515359号公報 (ア) 引用文献4の記載事項 原査定の拒絶理由で引用された、本願出願日前に発行された上記引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の文献も同様である。 (摘記4-1) 「【請求項1】 性的機能を改善するための製剤であって、 一酸化窒素を生成するためのアルギニン源としての基質と、 一酸化窒素を合成するための触媒として作用するプロアントシアニジンを、内皮型NO-シンターゼ酵素を刺激することのできる量を含有する刺激剤と、 を構成成分として含んでおり、 前記構成成分は、治療のために、所定期間に亘って少なくとも毎日投与すると、十分な量の一酸化窒素が合成されて放出され、所定期間の終了までに性的機能を改善させるのに有効な量である製剤。 【請求項2】 構成成分は配合されて一の組成物を構成することを特徴とする請求項1に記載の製剤。」 (摘記4-2) 「【0001】 <発明の分野> 本発明は、プロアントシアニジン源、アルギニン源、あるいはホルモン補給剤を含む成分を用いて、男女の性的適応度又は機能と、性器血管系(sexual vascular system)の健康を改善することに関する。プロアントシアニジン源は、植物の抽出物であり、アルギニン源は、アルギニンアスパルテート(arginine aspartate)に由来する。ホルモン補給剤は、ホルモンそれ自体、ホルモン前駆体、ホルモン産生促進剤又はホルモンの生物学的利用能を高めるエンハンサー(hormone bioavailability enhancer)であってよい。成分の全部又は一部は、組成物の一部であるか、及び/又はキット内で互いに分離している。 ・・・ 【0008】 女性の性機能は、男性と同様、生理学的に行われ、cGMPが陰核の組織の潤滑及び充血を引き起こすものと考えられている。前記記事の試験では、女性のホルモンレベルが健康状態にあるとき、栄養補助食品などにより、女性の性機能はある程度の改善がもたらされることを示唆している。 【0009】 女性又は男性の生殖器官への血流を増大させる他の方法は、cGMPの放出を引き起こす一酸化窒素の産生を増やすことである。ところが、シルデナフィル及びその関連物質は、血管拡張作用を有するcGMPの酵素破壊をブロックすることによって、男性又は女性の生殖器官の血液量の増加を持続させるのに対し、一酸化窒素は、cGMPの産生を高めることによって、血液量を増大させる。 【0010】 一酸化窒素産生の生理学的な源(ソース)として、アミノ酸L-アルギニンが使用される。内皮型一酸化窒素シンターゼ酵素は、L-アルギニンから一酸化窒素を産生する。生殖器官への血流の向上及び維持を図るには、何よりもまず、生殖器官に対して、十分な量の基質L-アルギニンを補給することが必要である。しかしながら、L-アルギニンだけが高濃度で存在しても、生殖器官への血液の流れは大きくならない。L-アルギニンから一酸化窒素を産生する際、活性酵素を触媒として用いるように、内皮型一酸化窒素シンターゼをさらに刺激することが必要である。内皮型一酸化窒素シンターゼの強力な刺激剤は、プロアントシアニジン含有抽出物である。 【0011】 プロアントシアニジンは、植物の根、樹皮及び果実の中に存在し、渋味を有する植物ポリフェノールの一種である。プロアントシアニジンは、プロシアニジン(procyanidins)とプロデルフィニジン(prodelphinidins)を含んでいる。プロアントシアニジンは、フラバンをサブユニットとする生体高分子(biopolymers)である。プロシアニジンは、カテキンとエピカテキンをユニットとして構成され、単量体プロシアニジンとも称される。 【0012】 プロアントシアニジンは、水、エタノール又はアセトン、又は二酸化炭素などの溶媒を使用して、公知の方法によって植物材料から抽出される。抽出物は、溶媒/溶媒抽出、限外濾過(ultra filtration)又はクロマトグラフ法によって精製される。精製された抽出物は、溶媒蒸発、凍結乾燥又はスプレー乾燥によって濃縮される。 【0013】 フランス海岸松の樹皮から抽出されたプロアントシアニジンを豊富に含む抽出物は、スイスのホーファー・リサーチ社から、商標名Pycnogenol(ピクノジェノール)(登録商標)として販売されている。抽出物は、プロアントシアニジン70~75重量%と、他のフラバノール(例えば、カテキン、エピカテキン及びタクシフォリン)を含んでいる。プロアントシアニジンが豊富な抽出物は、その他にも、ブドウの種、イトスギの球果、ココア豆又はその他の植物材料から得ることができる。松樹皮抽出物のピクノジェノール(登録商標)は、内皮型一酸化窒素シンターゼ刺激し、血管拡張を引き起こすことが明らかにされている[Fitzpatrick, D.F., Bing, B., Rohdewald, P., 1998]。 ・・・ 【0015】 <発明の詳細な説明> 本発明は、アルギニン(例えばL-アルギニン)源とプロアントシアニジン源との配合物を長期間使用することに関する。アルギニンの源は、アルギニン及びアスパラギン酸の塩又はペプチド、例えばアルギニンアスパルテートが好ましい。プロアントシアニジンの源は、ピクノジェノール(登録商標)又は他のプロアントシアニジン含有抽出物であることが好ましい。 【0016】 前記配合物を所定期間に亘って経口投与することにより、血管の健康を保護、回復及び維持し、生殖器領域への血流を改善し、その結果、男性の勃起又は女性器の充血を増進し、体の性的反応が昂進され、性器血管系の健康が改善される。 ・・・ 【0021】 本発明の製剤は、複数成分を配合したものであり、錠剤又は液体の組成物としての態様、又は異なる錠剤又は液体を別々の成分として含む態様があり、どちらの場合も、キット(10)にパッケージされる。後者の場合、別々の成分(12)は、液体の場合にはそれらを配合して同時に服用することもできるし、錠剤の場合には順次服用することもできる。追加の成分(14)として、例えば、ホルモン(例えば、テストステロン又はエストロゲン)又は、ホルモン産生刺激剤、ホルモン(例えば、テストステロン又はエストロゲン)の生体利用能を高めるエンハンサー源、ホルモンの前駆体などをキット(10)に含めることもできる。」 (摘記4-3) 「【実施例1】 【0022】 ブルガリア国ソフィアのMaichin DomにあるThe Seminological Laboratory SBALAGのRomil StanislavovとV. Nikolovaは、内因性NOの量を増やすことにより、勃起障害を克服できるかどうかを調査した。この目的のために、一酸化窒素シンターゼの刺激作用を有することが知られているピクノジェノール(登録商標)の松樹皮抽出物が、この酵素の基質であるL-アルギニンと共に経口投与された。 【0023】 この試験は、少なくとも3ヶ月間以上の勃起機能障害が確認されている25歳~45歳(平均年齢36.6±5.3)の40名の男性について実施した。それらの男性は、性的刺激を受けた後、勃起が不十分で、硬さが不足し、膣への挿入及び性交を完了させることができなかった。全ての被験者は、6ヶ月以上1対1の安定した性関係をもつことのできる女性パートナーを必要とした。 【0024】 なお、重い心疾患、高血圧、腎不全、肝不全、内分泌異常、精神疾患を有する者は除外した。また、血管作用薬、外科手術又は機械装置によって勃起障害の治療中又は最近まで治療を受けていた者は除外した。勃起障害に関して他の治療を受けている者も除外した。試験は、ブルガリアのEthics Committee of Medical Research Board of the University of Sofiaによって承認され、承諾書は、各被験者から得ている。 【0025】 全ての被験者は、O'Learyの質問[O'Leary MP, et al. A brief male sexual function inventory for urology(泌尿器学的にまとめた男性の性機能]に回答した。この質問は、性欲、勃起機能、症状の評価及び全体的な性的満足などの項目に対する11の質問を含んでいる。発明者らが特別に作成した性機能に関する追加質問は、性行為を試みた回数と、失敗回数であり、勃起不十分の状況を区別することに特に重点を置いた。 1.弱い(Weakened):陰茎は大きくなり、ある程度堅くなるが、膣に挿入するには不十分である。 2.時間がかかる(Delayed):勃起するが、挿入するには不十分であり、さらに、通常 よりも多くの時間を要する。 3.行為困難(Hesitating):接触の前後において、勃起が不安定であり、性交が困難である。 4.行為不能(Loosing):愛撫中は勃起するが、挿入しようとした時又は性交中に萎える。 【0026】 試験を行なう間、全ての被験者に対して、性行為を毎日行なうように依頼した。なお、信頼性の高い基準値(baseline values)を得るために、最初の3週間は、観察期間(run-in phase)として、投薬無しでの性行為の実施を依頼した。最初の1か月間、全ての被験者は、Sargenor(Sarget Pharma, Codex, France)を毎日3アンプル与えられた。Sargenorの各アンプルには、5ml液中に1gのL-アルギニンアスパラテート(L-アルギニン0.57gに相当)が含まれている。2か月目、被験者は、Sargenorを継続して服用すると共に、さらに、毎日朝晩2回ずつ、40mgのピクノジェノール(登録商標)錠剤[Hankintatukku, Helsinki, Finland]を服用した。3か月目、被験者は、Sargenorの服用を続けると共に、ピクノジェノール(登録商標)抽出物の服用量を1日当たり3×40mgに増量した。Sargenor単独のときの反応と、ピクノジェノール(登録商標)と併用したときの反応について、容認された勃起状態の評価スケール[O'Leary MP, et al. A brief male sexual function inventory for urology(泌尿器学的にまとめた男性の性機能). Urology 1995; 46:697-706]に基づいて評価した。評価は、試験開始後、1か月の各段階毎に、事実報告と質問方法(inquiry method)を用いて行なった。データの信頼性を確かなものとするために、男性被験者が質問の回答を記入し、一方、女性のパートナーは、発明者らが提起した質問に対して短い回答を記入した。 【0027】 結果は、統計学的比較に使用される平均値(SEM)及びスチューデントt-検定により、統計学的に分析した。p<0.05は有意差を示すと考えられる。 【0028】 1か月間Sargenorを服用した後、2人の被験者(全被験者の5%)だけが正常な勃起を示した(表1)。しかしながら、改善は、服用前に比べて、有意差は認められなかった。1か月経過後、Sargenorの服用に加えて、毎日80mgのピクノジェノール(登録商標)抽出物を加えたところ、有意的な改善が認められ、32人の被験者(80%)に正常な勃起が起こった。次の1か月間、Sargenorと、増量したピクノジェノール(登録商標)抽出物(毎日120mg)を服用すると、被験者の多くにさらなる改善が認められ、勃起機能が正常に回復した。試験終了時には、全被験者者の92.5%に相当する37人の被験者に回復が認められた。 【0029】 【表1】 [図:0001436562000001.jpg] 【0030】 表1:勃起障害を有する40人の被験者について、Sargenor単独使用(最初の1か月)、Sargenorとピクノジェノール(登録商標)の併用(第2か月及び第3か月)の場合の臨床結果を示している。服用前に対する服用後の統計学的有意差は、星印1つ(p<0.05)、又は星印2つ(p<0.01)(スチューデントt-検定)で示されている。」 (イ) 引用文献4に記載された発明 上記(ア)の記載事項に基づけば、引用文献4には、「男性の生殖器官への血流を増大させる」「方法」として、「cGMPの放出を引き起こす一酸化窒素の産生を増やす」(摘記4-2の【0001】、【0009】)ために、「一酸化窒素産生の生理学的な源(ソース)として、アミノ酸L-アルギニン」を、「L-アルギニンから一酸化窒素を産生する」「内皮型一酸化窒素シンターゼの強力な刺激剤」として、「プロアントシアニジン含有抽出物」を組み合わせて使用すること(摘記4-1の【請求項1】、摘記4-2の【0010】)、及び「プロアントシアニジンを豊富に含む抽出物」として、「商標名Pycnogenol(ピクノジェノール)(登録商標)として販売されている」「フランス海岸松の樹皮から抽出されたプロアントシアニジンを豊富に含む抽出物」が使用できること(摘記4-2の【0013】)が記載されている。 さらに、引用文献4には、実施例として、「勃起機能障害が確認されている25歳~45歳(平均年齢36.6±5.3)の40名の男性」に対して、「最初の1か月間」、「5ml液中に1gのL-アルギニンアスパラテート(L-アルギニン0.57gに相当)が含まれている」「Sargenor(Sarget Pharma, Codex, France)を毎日3アンプル与え」たところ、「服用前に比べて、有意差は認められなかった」が、「2か月目、被験者は、Sargenorを継続して服用すると共に、さらに、毎日朝晩2回ずつ、40mgのピクノジェノール(登録商標)錠剤[Hankintatukku, Helsinki, Finland]を服用」させたところ、「有意的な改善が認められ、32人の被験者(80%)に正常な勃起が起こった」こと、「3か月目」に、「Sargenorの服用を続けると共に、ピクノジェノール(登録商標)抽出物の服用量を1日当たり3×40mgに増量」したところ、「被験者の多くにさらなる改善が認められ、勃起機能が正常に回復した」ことが記載されている(摘記4-3)。 そうすると、引用文献4には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「勃起機能を改善するための製剤であって、 一酸化窒素を生成するためのアルギニン源としてのL-アルギニンアスパラテートと、 一酸化窒素を合成するための触媒として作用するプロアントシアニジンを、内皮型NO-シンターゼ酵素を刺激することのできる量を含有する刺激剤として、フランス海岸松の樹皮から抽出されたプロアントシアニジンを豊富に含む抽出物と、 を構成成分として含んでおり、 前記構成成分は、治療のために、所定期間に亘って少なくとも毎日投与すると、十分な量の一酸化窒素が合成されて放出され、所定期間の終了までに勃起機能を改善させるのに有効な量である製剤。」 イ 引用文献7:特開2016-183149号公報) 原査定の拒絶理由で引用された、本願出願日前に発行された上記引用文献7には、以下の事項が記載されている。 (摘記7-1) 「【請求項1】 ピペリン類縁体を含有することを特徴とする一酸化窒素活性促進用組成物。 ・・・ 【請求項4】 飲食品組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。」 (摘記7-2) 「【背景技術】 【0002】 NOは、生体内においてL-アルギニンと分子状酸素とを基質に、一酸化窒素合成酵素(Nitric Oxide Synthase:NOS)により生成(合成)される、ガス状の成分であり、NO合成は種々の因子により調節を受けている。 【0003】 NOは、主として標的細胞の可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMPを介する作用を惹起することにより種々の生理機能に関与すると考えられている(非特許文献1)。例えば、血小板凝集抑制、抗動脈硬化作用や血管拡張、中枢神経系における記憶や学習機能、末梢神経系におけるNO作動性神経系を介する平滑筋弛緩作用などがこれにあたる(非特許文献2)。 【0004】 このため、NO合成やNO放出の低下、NOに対する反応性の低下は、これらの機能を低下させる要因となる。従って、NO合成などを増強することで、NOが関わる身体の生理機能や組織機能を良好に維持したり、低下した機能を改善したりする効果が期待できる。 【0005】 このようなことから、NO合成などを促進する成分や組成物の提案が既になされている。例えば、クロロゲン酸、カフェ酸、フェルラ酸(特許文献1)、ハイペロサイドやイソクエルシトリンなどのNO作用増強剤が挙げられる(特許文献2)。しかし、これらのNO作用増強剤の効果は弱く、NOに対する作用特異性も低い。例えば、血管組織の収縮弛緩機能に対するフェルラ酸の効果において、NOが関わる比率はわずか33%程度である。このため、より安全で、優れたNO活性促進作用を有する成分が求められていた。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、安全性が高く、NOの活性促進作用を有する医薬品、医薬部外品、飲食品等を提供することに関する。 ・・・ 【発明の効果】 【0014】 本発明により、ピペリンやピペルロングミニンなどのピペリン類縁体を含有する、安全性の高い、NO活性促進用の組成物を提供することが可能となった。本発明の組成物は、NOが関わる身体の生理機能や組織機能を良好に維持したり、低下したNOが関わる身体の生理機能や組織機能を改善したりすることができる。 ・・・ 【0019】 NOが関わる身体の生理機能や組織機能が低下した状態としては、例えば、腎機能障害、タンパク尿の増加、血尿、喘息、長引く咳、胃粘膜の傷害、腸粘膜の傷害、勃起不全、勃起障害、満足な性交がおこなえない状態(硬さや維持が不十分であることも含む)、脱毛、認知機能の低下、集中力の低下、意欲の低下、眼精疲労、眼機能の低下、ピント調節機能の低下、目の下のクマ、難聴、首筋のコリ、肩のコリ、腰のはり、背中のはり、喀血、鼻血、組織損傷修復の遅延、血小板凝集、血栓形成、運動疲労、筋力の低下、インスリン抵抗性を伴う血管障害、コレステロールの増加、中性脂肪の増加、遊離脂肪酸の増加、冷えなどが挙げられ、さらに低下した状態としては心不全、冠動脈痙縮、虚血性疾患の悪化などが挙げられる。 従って、本願発明のNO活性促進用組成物は、腎機能障害、タンパク尿の増加、血尿、喘息、長引く咳、胃粘膜の傷害、腸粘膜の傷害、勃起不全、勃起障害、満足な性交がおこなえない状態(硬さや維持が不十分であることも含む)、脱毛、認知機能の低下、集中力の低下、意欲の低下、眼精疲労、眼機能の低下、ピント調節機能の低下、目の下のクマ、難聴、首筋のコリ、肩のコリ、腰のはり、背中のはり、喀血、鼻血、組織損傷修復の遅延などの予防又は改善用組成物として使用することが可能である。 【0020】 本発明の組成物は、ピペリン類縁体を含有する。 「ピペリン類縁体」とは、ピペリンと化学構造や受容体結合特性などの分子生物学的な性質が類似している化合物のことを意味し、好ましくは、ピペリン、ピペルロングミニン、ピペルノナリン、ジヒドロピペリン、ジヒドロピペルロングミニン、ジヒドロピペルノナリンより選ばれる1成分以上を含有する。より好ましくはピペリン又はピペルロングミニンであり、さらに好ましくはピペリンである。これらのピペリン類縁体は有効成分として含有することが特に好ましい。 ・・・ 【0022】 ピペリン類縁体を含有する天然物とは、例えば、黒コショウなどのコショウ科コショウ属の天然物である。天然物からの抽出は、室温又は加熱した状態で溶剤に含浸させるか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行われる溶剤抽出の他に、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出法、あるいは圧搾して抽出物を得る圧搾法等を用いることができる。 ・・・ 【0025】 1日あたりのピペリン類縁体の総摂取量としては、年齢、性別、体重などを考慮して適宜増減できるが、0.01mgから100mgが好ましく、0.02mgから20mgがより好ましく、0.04mgから2mgが更に好ましい。 【0026】 また、1日あたりのピペリンの摂取量としては、0.01mgから50mgが好ましく、0.02mgから10mgがより好ましく、0.04mgから1mgが特に好ましい。」 (摘記7-3) 「【実施例】 ・・・ 【0041】 2.ヒト由来血管内皮細胞を用いた細胞内NO合成量増加作用の評価 (試験方法) 実験には、ヒト由来血管内皮細胞(HUVEC:倉敷紡績(株)製)を使用した。ヒト由来血管内皮細胞は、継代用試薬セットを用いてサブコンフルエントまで培養した後に、試験に使用した。 【0042】 代表的なピペリン類縁体としては、ピペリン(和光純薬工業(株)製)を使用した。ピペリンはDMSOに溶解し、試験に使用した。 【0043】 NO活性促進作用は細胞内NO量の増加を指標に評価し、細胞内NO量は蛍光色素DAF-FM DAを用いて測定した。 【0044】 (試験3) 細胞内にDAF-FM DAを取り込ませるため、DAF-FM DAを含有する培地を用いて細胞を60分間処置した。その後、ピペリン(100μmol/L)を含有する培地に交換し、60分間処置した。 Trypsin溶液を用いて培養容器から細胞を剥離し、PBS溶液に懸濁し、生細胞あたりのDAF-FM DAの蛍光強度をフローサイトメーター(EPICS XL、ベックマンコールター(株)製)を用いて測定した。 【0045】 (結果3) ピペリンによるヒト由来血管内皮細胞内のNO合成量に及ぼす作用を評価した。その結果、100μmol/Lのピペリンの添加はピペリン非添加時と比較して細胞内NO合成量を23.8%(平均値)有意に増加させた(p<0.05、対 ピペリン非添加細胞内でのNO合成量(ウィルコクソン検定)、例数各7)。 これより、ピペリンは、ヒト血管内皮細胞内のNO合成量を増加させ、NO活性促進作用を有することが明らかとなった。」 ウ 引用文献6:特開2012―70726号公報 原査定の拒絶理由で引用された、本願出願日前に発行された上記引用文献6には、以下の事項が記載されている。 (摘記6-1) 「【0003】 例えば、特許文献1や特許文献2には「プロアントシアニジンを含有する健康食品(美容食品)」に関する発明が記載されている。また、特許文献3には「乳酸菌及びセラミドを有効成分として含有することを特徴とする美容食品」に関する発明が記載されている。特許文献4には「コエンザイムQ10、α-リポ酸及びセラミドを含有する美容食品」に関する発明が記載されている。 ・・・ 【0011】 本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な有効成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン-3-オールおよび/又はフラバン-3,4-ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果実の皮および種に含まれていることが知られている。 【0012】 本発明に用いられる松樹皮抽出物の原料としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツなど、特に制限されるわけではないが、フランス海岸松が好ましい。得られた抽出物は、必要に応じて濃縮又は乾燥して、液状、ペースト状、又は粉末としてもよい。また、株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物が特に好ましく用いられ得る。 【0013】 また、本発明に用いられる松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンとして重合度が2以上の縮重合体が含有される。特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2~30の縮重合体(2~30量体)でよく、重合度が2~10の縮重合体(2~10量体)が好ましく、重合度が2~4の縮重合体(2~4量体)がさらに好ましい。本明細書では、重合度が2~4の重合体を、OPC(oligomeric proanthocyanidin)という。本発明に用いられる松樹皮抽出物としては、OPCを20質量%以上の割合で含有し、好ましくは30質量%以上の割合で含有し、さらに好ましくは40質量%以上の割合で含有する抽出物である。 【0014】 さらに、本発明に用いられる松樹皮抽出物は、さらにカテキン類が含有され得る。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン-3-オールの総称である。カテキン類としては、(+)-カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(-)-エピカテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、およびアフゼレキン等が知られている。松樹皮抽出物からは、(+)-カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)-カテキン又はガロカテキンの3-ガロイル誘導体が単離されている。」 (摘記6-2) 「【0021】 本発明に用いられる、黒胡椒抽出物の原料となる黒胡椒については、原産地や抽出する部位、あるいは抽出方法は特に制限されないが、ピペリンを含有する黒胡椒抽出物が好ましい。黒胡椒抽出物は、必要に応じて濃縮又は乾燥して、液状、ペースト状、又は粉末としてもよい。黒胡椒抽出物の摂取量としては、特に制限されないが、1日当たり0.1mg以上が好ましく、1mg以上がさらに好ましい。なお、前述の摂取量を1日数回に分けて摂取してもよい。 ・・・ 【0027】 本発明の美容食品用組成物のバイオアベイラビリティが高められているメカニズムに関しては、例えば次のように考えることができる。すなわち、 (1) 黒胡椒抽出物の働きにより、摂取した食品組成物(特に、松樹皮抽出物)中の成分の腸管内での吸収を高め、 (2) みかん抽出物(特に、β-クリプトキサンチン)の働きにより、毛細血管の血流が上昇し、吸収した成分を体内の隅々まで迅速に浸透させる からであると考えることができる。 ・・・ 【0036】 (実施例2:血流改善に関する臨床試験) 健常な成人男女7名(平均年齢28歳)を被験者とし、血流改善効果を測定する以下のような臨床試験を行った。 【0037】 まず、松樹皮抽出物および黒胡椒抽出物を用いた下記の4種類の飲料を調製した。 ・水150mlのみのコントロール飲料 ・松樹皮抽出物40mgを水150mlに溶かした試験飲料A ・松樹皮抽出物20mgと黒胡椒抽出物2.5mgを水150mlに溶かした試験飲料B ・松樹皮抽出物40mgと黒胡椒抽出物2.5mgを水150mlに溶かした試験飲料C 【0038】 被験者は10分間の馴化を行い、馴化後にレーザードップラーで血流量を測定した。その後、上記4種類の飲料のいずれかを摂取し、飲料摂取1時間後、再度血流量の測定を行った。なお、臨床試験においては、被験者は、上記飲料を1日1種類のみ摂取するものとした。従って、被験者は、上記4種類の飲料を計4日間をかけて摂取した。 【0039】 各飲料の摂取前後の血流量の変化率についての結果は表1の示すとおりである。 (表1) [図:0001436562000002.jpg] 【0040】 表1のように、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物の併用により、血流量が相乗的に改善することが分かった。 【0041】 (実施例3:栄養成分の体内吸収効率の測定試験) ラットを用いて、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物を同時に摂取することにより、食品中の栄養成分の吸収性が上昇することを示す試験を行った。測定方法を以下に示す。 【0042】 16時間以上絶食させた7週齢のWistar系ラットの雄を2群に分けた。松樹皮抽出物600mg/kgを摂取させる群(A群)と、松樹皮抽出物600mg/kgと黒胡椒抽出物20mg/kg群を摂取させる群(B群)に対し、それぞれ強制的に経口摂取し、摂取1時間後および摂取2時間後に全採血を施した。その後、血漿を分離し、プロアントシアニジンB1濃度を下記のLC-MS/MSを用いて測定した。なお、プロアントシアニジンB1とは、松樹皮抽出物に含まれるプロアントシアニジンの一種である。 HPLCシステム :Shimadzu 10A(株式会社島津製作所) 質量分析装置 :API4000(AppliedBiosystems/MDS Sciex) データ処理ソフト :Analyst(Applied Biosystems/MDS Sciex) 天秤 :AX205(メトラー・トレド株式会社) 冷却遠心機 :LX-120(トミー工業株式会社) 窒素乾固装置 :MG-1100(東京理化器械株式会社) 超純水製造装置 :Milli-Qシステム(日本ミリポア株式会社) ディスペンサー :Eppendorf(Eppendorf AG) Finnpipette(Thermo Labsystems Oy) 【0043】 各群の血漿プロアントシアニジンB1濃度の時間変化の結果を表2に示す。 (表2) [図:0001436562000003.jpg] 【0044】 表2より、黒胡椒抽出物を摂取したラットは、摂取していないラットと比較して、摂取1時間後および摂取2時間後の血漿中のプロアントシアニジンB1の濃度が上昇する傾向が認められた。以上により、黒胡椒抽出物を同時に摂取することにより、松樹皮抽出物に含まれるプロアントシアニジンB1の吸収性が上昇することが示された。よって、黒胡椒抽出物の摂取により、食品中の栄養成分の吸収性が上昇することが示された。」 エ 引用文献1:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,[online],2016年4月2日,[2022年12月6日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160402213834/http://varitain.com/> 原審における令和4年12月22日付けの拒絶理由通知書で引用され、本願出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、四角囲いは合議体が付したものである。 (摘記1-1) 「 [図:0001436562000004.jpg] ・・・ [図:0001436562000005.jpg] [図:0001436562000006.jpg] [図:0001436562000007.jpg] [図:0001436562000008.jpg] 」 オ 引用文献2:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2015年7月3日、[2022年12月6日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20150703033738/https://www.amazon.co.jp/阪本漢法製薬-モンスターラッシュ/dp/B00R7GJW5O> 原審における令和4年12月22日付けの拒絶理由通知書で引用され、本願出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (摘記2-1) 「 [図:0001436562000009.jpg] 」 (摘記2-2) 「商品の説明 商品紹介 ・原材料をご確認の上、食物アレルギーのある方、体調・体質により合わない場合は摂取をお避けください。 ・妊娠・授乳中の方は摂取をお避けください。 ・薬を服用中の方、通院中の方は担当専門医にご相談の上、お召し上がりください。 ・天然物を使用しているため、製品の色に多少のばらつきがありますが、品質に問題はありません。 フランス海岸松樹皮配合の健康補助食品です。アクティブな営みをサポートします。 お召し上がり方 1日4粒を目安に、水などでお召し上がりください。 原材料・成分 澱粉、フランス海岸樹皮エキス、紅景天エキス、黒胡椒抽出物、フェヌグリーク種子抽出物、L-シトルリン、マムシ乾燥末、スッポンエキス、デキストリン、黒マカエキス、黒生姜抽出物、馬ペニスエキス末、馬睾丸エキス末、結晶セルロース、ステアリン酸カルシウム、シクロデキストリン 登録情報 発送重量:136 g ASIN:B00R7GJW50 Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/12/19」 カ 引用文献A:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2017年6月3日、[2026年4月1日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170603055518/http://www.innovcare.in/edrive-c.php 令和3年2月4日受付の刊行物等提出書で提出され、本願出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった資料4:Innovcare Lifesciences Pvt.Ltd.が運営するウェブサイトのアーカイブである上記引用文献Aには、以下の事項が記載されている。なお、引用文献Aは英文であるため合議体による翻訳を併記する。 (摘記A-1) 「 [図:0001436562000010.jpg] L-シトルリン、L-アルギニン、シラジット、イカリソウ、松樹皮及びバイオペリン タブレット ・身体を強化し、若返らせる ・性的な健康をサポートする ・快感とパフォーマンスの向上に役立つ」 キ 引用文献B:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2018年9月1日、[2026年4月2日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20180901231702/https://www.bioperine.jp/bioperine/ 本願出願時における技術常識を示す文献として、当審において新たに引用する、本願出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献Bには、以下の事項が記載されている。 (摘記B-1) 「 [図:0001436562000011.jpg] 」 ク 引用文献C:Fitoterapia 2010年、Vol.81、p.724-736 本願出願時における技術常識を示す文献として、当審において新たに引用する、本願出願日前に発行された上記引用文献Cは、「ピクノジェノール:多面的な治療効果を持つプロシアニジンのブレンド?」と題する総説であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献Cは英文であるため、摘記は合議体による翻訳で示す。 (摘記C-1) 724頁 要約 「現在、フランス南西部の海岸沿いに自生するフランス海岸松(Pinus pinaster、旧称 Pinus maritima、Aiton、亜種 Atlantica des Villar)(Pycnogenol(R) (合議体注:「(R)」は、Rの丸囲い文字である。以下同様。)、Horphag Research Ltd.、英国、スイス・ジュネーブ)の樹皮から得られる標準化植物抽出物であるピクノジェノールの生物学的活性に、大きな関心が集まっている。この抽出物の品質は、米国薬局方(USP 28)に規定されている。ピクノジェノールの65%から75%は、鎖長が異なるカテキン及びエピカテキン単位から構成されるプロシアニジンである。その他の成分には、ポリフェノール単量体、フェノール酸又はシンナム酸、及びそれらの配糖体が含まれる。多くの研究が示すように、ピクノジェノールの成分は生体利用率が高い。特に、ピクノジェノールは、その精製された個々の成分よりも混合物としてより大きな生物学的効果を示すという特徴があり、これは各成分が相乗的に作用していることを示唆している。現在、ピクノジェノールは栄養補助食品として、また慢性炎症から循環器系の機能障害に至るまで、さらにはいくつかの精神生理学的機能の障害を含む様々な疾患に対する植物化学療法として、世界中で利用されている。ピクノジェノールの成分の基本的な化学構造により、その最も顕著な特徴は強力な抗酸化作用である。実際、フェノール酸、ポリフェノール、そして特にフラボノイドは、1つ(又は複数)のヒドロキシル基を持つ1つ(又は複数)の芳香環から構成されており、そのため、共鳴安定化されたフェノキシルラジカルを形成することで、フリーラジカルを消去する可能性がある。 本総説では、治療の分子的、細胞的、機能的基盤に重点を置き、査読付き文献に掲載されたデータを基に、ピクノジェノールの主な治療的応用について要約し、批判的に評価する。」 (摘記C-2) 726頁右欄2段落~727頁右欄2行、表1 「3. ピクノジェノールの成分 数年前までは、松の樹皮は木材産業にとって扱いにくい副産物であり、その用途は限られていた。しかし現在では、植物用培地や燃料として利用されている。興味深いことに、松の樹皮は天然ポリフェノールの豊富な供給源であり、これらの化合物は栄養学、健康、医学の分野でますます注目を集めている。フラボノイド(図1)や、フェノール酸、スチルベン、タンニンなどの他の植物性フェノール化合物は、植物の正常な成長・発達や、感染や損傷に対する防御において重要な役割を果たしている[29]。 プロアントシアニジンのサブクラスであるプロシアニジンは、主にC4→C8及び/又はC4→C6結合を介して連結された(+)-カテキン及び/又は(-)-エピカテキン単位からなるオリゴマーとポリマーの混合物である(図2)。これらのフラバン-3-オール単位は、C4→C8結合と、O7→C2間の追加のエーテル結合によって二重に結合している場合がある[30]。これらはリグニンに次いで植物中に最も広く分布するポリフェノールであり、葉、果実、樹皮、あるいは根などに、しばしば高濃度で含まれている。近年、プロシアニジンは、その薬理作用や、主にその構造、とりわけ重合度によって大きく左右されるラジカル消去能[31]により、大きな注目を集めている[32,33]。 ピクノジェノールは、P. pinaster(旧称 P. maritima)の樹皮から得られる水抽出物であり、その品質は米国薬局方(USP 28)で規定されている [34]。これは、主にプロシアニジン(ピクノジェノールの65%から75%は、鎖長が異なるカテキン及びエピカテキンサブユニットからなるプロシアニジンである)、フェノール酸、桂皮酸及びその配糖体、並びにタキシフォリンからなるフラボノイドの混合物で構成されており[11]、おそらく最も研究が進んでいるフェノール性樹木抽出物である。特に、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行った場合、ピクノジェノールの成分は、表1に示すように特定されるのが一般的である。HPLC分析(表1)から、松樹皮抽出物においてプロアントシアニジン二量体が圧倒的に主要な成分であり、カテキン単量体が相当量含まれていること、また、同定されたその他の成分は主にプロアントシアニジン三量体及び四量体であることがわかる。興味深いことに、PYCに含まれる没食子酸、カフェ酸、フェルラ酸などの成分には、in vitroにおいて強力な抗菌・抗ウイルス作用があることが知られている [35]。 表1 HPLC分析により測定された松樹皮抽出物の主な成分及び含有率。 [図:0001436562000012.jpg] 出典:http://www.integratedhealth.com/infoabstract/pycdes.html. aピクノジェノール抽出物の分析及びピクノジェノール標準物質のために、米国薬局方(USP)の規格[39]に規定される標準的なHPLC法によるピーク面積の測定及び同定が要求される成分。 b未同定成分」 (摘記C-3) 727頁 図2 「 [図:0001436562000013.jpg] 図2. ピクノジェノール抽出物に含まれる主なプロシアニジンの構造(上)及びその想定されるオリゴマー集合体(下)。 」 ケ 引用文献D:International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics、2002年、Vol.40 No.4 p.158-168 本願出願時における技術常識を示す文献として、当審において新たに引用する、本願出願日前に発行された上記引用文献Dは、「多様な臨床薬理学的特性を持つハーブ製剤、フランス産海岸松樹皮エキス(ピクノジェノール(R))のレビュー」と題する総説であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献Dは英文であるため、摘記は合議体による翻訳で示す。 (摘記D-1) 158頁右欄 下から8行目~159頁左欄7行 「ピクノジェノール(R)(PYC(R))は、フランス海岸松(Pinus pinaster, Aiton, subsp. Atlantica des Villar)の樹皮から抽出された標準化抽出物の商標名(Horphag Research)である。 PYC(R)は、世界中で栄養補助食品又は生薬として販売されている。この抽出物は、主にフェノール酸及びプロシアニジンからなるポリフェノールの濃縮物である。プロシアニジンとフェノール酸は、果実の重要な成分として古くから知られており、食品業界では、健康な血液循環にさまざまな有益な効果をもたらす強力な抗酸化物質として認識されている。本総説では、標準化抽出物の臨床薬理学について取り上げる。」 (摘記D-2) 159頁右欄3段落~160頁左欄2段落 「組成 PYC(R)に含まれるフェノール酸は、安息香酸誘導体(p-ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、バニリン酸、没食子酸)又は桂皮酸誘導体(p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸)のいずれかである。これらの酸は遊離型で存在するが、グルコシドやグルコースエステルも含まれている。微量のバニリンが検出されている [Rohdewald 1998]。 プロシアニジンは、カテキン又はエピカテキンの単位から構成される生体高分子であり、その鎖長は2~12の単量体単位の範囲にある。ゲル排除クロマトグラフィーで得られた画分をMALDI-TOF質量分析法を用いて解析することで、各種オリゴマーの分子量が同定されている。二量体及び一部の三量体に含まれる個々のプロシアニジンの同定は、NMR分光法を用いて行われた。エピカテキン-カテキンからなる二量体B1及びカテキン-カテキンからなる二量体B3はC4-C8結合で連結されているのに対し、カテキン-カテキンからなる二量体B6及びエピカテキン-エピカテキンからなる二量体B7はC4-C6結合で連結されている(図1)。 オリゴマー状プロシアニジンの単離と同定は、鎖長が長くなるにつれて、生成しうる異性体の数が多くなるため、分析的に困難になる。そのため、PYC(R)に含まれる高次オリゴマー状プロシアニジンの大部分の構造は不明である。二量体の主成分はB1であり、次いでB3である。C4-C6結合を持つ異性体二量体は、はるかに少量しか存在しない[未発表の観察結果、G. Pirasteh博士『海岸松樹皮抽出物の成分の分離、同定及び定量』、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学ミュンスター、1988年]。」 (摘記D-3) 160頁 図1 「 [図:0001436562000014.jpg] 図1. 二量体プロシアニジンの化学構造の2つの例:B3(2つのカテキン分子が4-8結合する)及びB6(2つのカテキン分子が4-6結合する)。」 (3)判断 ア 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「フランス海岸松の樹皮から抽出されたプロアントシアニジンを豊富に含む抽出物」は、本件補正発明における「松樹皮抽出物」に相当する。 引用発明における「アルギニン源としてのL-アルギニンアスパラテート」は、「アルギニン」の「アスパラギン酸の塩」(前記(2)ア(摘記4-2)【0015】)であるから、本件補正発明における「アルギニン若しくはその塩」に相当する。 本件補正発明における「男性活力用」について、本願明細書【0033】には「本発明の組成物は、・・・勃起に代表される男性の性機能を向上又は低下防止することができ、男性活力用組成物(「男性用活力剤」という場合もある)として優れた効果を発揮しうる。」と説明されていることから、引用発明における「勃起機能を改善するための製剤」は、本件補正発明における「男性活力用組成物」に相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「松樹皮抽出物及びアルギニン若しくはその塩を含む男性活力用組成物。」 <相違点1> 本件補正発明では、「トナカイの角を含む組成物を除き、且つ馬の睾丸を含む組成物を除く」ことが特定されるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。 <相違点2> 本件補正発明では、「黒胡椒抽出物」を含み、かつ「組成物の固形分中、プロシアニジンとピペリンの質量比がプロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30であり、且つ、黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比が、黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250であ」ることが特定されるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。 <相違点3> 本件補正発明では、「乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される」ことが特定されるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点について検討する。 (ア) 相違点1について 引用文献4には、引用発明の「勃起機能を改善するための製剤」において、トナカイの角及び馬の睾丸を含む組成物を除外することを明示する記載はない。 しかしながら、引用文献4には、「勃起機能を改善するため」に、これらの成分を含めることを示唆する記載もないから、相違点1は実質的な相違点とはいえないし、また、引用発明において、これらの成分を含まない製剤とすることも、当業者が適宜なし得るものに過ぎない。 (イ) 相違点2について a 引用発明は、「男性の生殖器官への血流を増大させる」「方法」として、「cGMPの放出を引き起こす一酸化窒素の産生を増やす」ための製剤である(前記(2)ア(ア)(摘記4-2)【0001】、【0009】)ところ、引用文献7には、「NO合成などを増強することで」、例えば、「勃起不全、勃起障害、満足な性交がおこなえない状態(硬さや維持が不十分であることも含む)」といった、「NOが関わる身体の生理機能や組織機能を良好に維持したり、低下した機能を改善したりする効果が期待できる」組成物(前記(2)イ 摘記7-2、摘記7-3)として、「ピペリン類縁体を含有することを特徴とする一酸化窒素活性促進用組成物」(前記(2)イ 摘記7-1)が記載され、「黒コショウなどのコショウ科コショウ属の天然物」からの「抽出物」を使用すること(前記(2)イ 摘記7-2、【0022】)が記載されている。 そして、商標名「バイオペリン(R)」として市販される製品もある黒胡椒抽出物は、「同時に摂取した栄養素のバイオアベイラビリティを向上させる」ことが知られ(前記(2)ウ及びキ)、サプリメントや健康食品において、松樹皮抽出物も含めた「様々な栄養素との組み合わせで」慣用される成分でもある(前記(2)エ~カ)。 そうすると、一酸化窒素(NO)の産生を増やし、勃起機能を改善するための製剤である引用発明において、その効果を高めるために、引用文献7に記載される黒胡椒抽出物を組み合わせて使用することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 b そして、松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニン若しくはその塩を組み合わせるに際し、具体的な配合比を設定することは、当業者が当然行う設計事項であるが、引用発明の松樹皮抽出物及びL-アルギニンの投与量について、具体的な実施例では、ピクノジェノール(登録商標)の松樹皮抽出物が80mg(40mg×2回)/日又は120mg(40mg×3回)/日、L-アルギニンは1.71g(0.57g×3)/日で使用されたことが記載されている(前記(2)ア(ア)摘記4-3)。 c ここで、本願明細書【0013】に「本明細書では、プロシアニジン含量という場合、プロシアニジンB1(PB1:procyanidin B1:EC8-4βEC)とプロシアニジンB3(PB3:procyanidin B3:CA8-4αCA)の総量をプロシアニジンB1で換算した量を意味する。」と説明されるように、本件補正発明における「プロシアニジン」は、プロシアニジンB1及びプロシアニジンB3(合議体注:光学異性体であり、両者の分子量は等しい。前記(2)ク 摘記C-3及びケ 摘記D-3を参照。)の総量を意味するものであるところ、ピクノジェノールには、主要成分として、プロシアニジン二量体が40.9%含まれ(前記(2)ク 摘記C-2、C-3)、そのうちの主成分は「C4-C8結合で連結されている」「エピカテキン-カテキンからなる二量体B1」、次いで「カテキン-カテキンからなる二量体B3」であり、「C4-C6結合を持つ異性体二量体は、はるかに少量しか存在しない」(前記(2)ケ 摘記D-2、D-3)ことが知られていた。 そうすると、引用文献4の実施例において使用されたピクノジェノール中のプロシアニジンB1及びプロシアニジンB3の含有量が、仮に約40%であったとすると、上記実施例におけるプロシアニジンの投与量は約32mg(80mg×0.4)/日又は48mg(120mg×0.4)/日であったことになる。 d そして、本件補正発明における「プロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30」の質量比から、上記実施例におけるプロシアニジンの1日投与量に対するピペリンの量を計算すると、ピペリンは16mg(32mg×0.5)~1440mg(48mg×30)を組み合わせることとなるが、このピペリンの投与量は、引用文献7に「1日あたりのピペリンの摂取量としては、0.01mgから50mgが好まし」いと記載される範囲と重複するものである。 また、本件補正発明における「黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250」の質量比から、上記実施例で投与された1日1.71gのアルギニンに対する黒胡椒抽出物の量を計算すると、6.84mg(1710mg÷250)~1710mg(1710mg÷1)の黒胡椒抽出物を組み合わせることとなり、この黒胡椒抽出物が市販品と同程度の95%のピペリンを含有するとしてピペリンの量に換算すると、6.498mg(6.84mg×0.95)~1624.5mg(1710mg×0.95)のピペリンと組み合わせることとなるが、この範囲も、引用文献7に「1日あたりのピペリンの摂取量としては、0.01mgから50mgが好まし」いと記載される範囲と重複するものである。 e このように、本件補正発明において特定する「プロシアニジンとピペリンの質量比」及び「黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比」は、引用文献4に具体的に使用された松樹皮抽出物及びアルギニンの1日投与量に、引用文献7において1日あたりのピペリンの摂取量の好ましいことが記載される量を単純に組み合わせるだけで導きだされる範囲と同程度のものといえる一方で、本願明細書には、本件補正発明において特定する「プロシアニジンとピペリンの質量比」及び「黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比」の臨界的意義については、何ら説明がなされていない。 f したがって、引用発明において、引用文献4及び7の記載に基づき、上記相違点2に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たものといえる。 (ウ) 相違点3について 引用文献4(前記(2)ア(ア)摘記4-1、摘記4-2の【0043】)には、「本発明の製剤は、複数成分を配合したものであり、錠剤又は液体の組成物」とすることが記載されている。 そうすると、引用発明における「松樹皮抽出物」及び「アルギニン」に、引用文献7に記載される「黒胡椒抽出物」を配合する際に、錠剤として製剤化するために必要な担体も考慮して、アルギニンの含有量の範囲を設定することは、当業者が適宜なし得る設計事項であるといえる。 そして、本願明細書には本件補正発明の組成物の製剤例はなく、本件補正発明において特定するアルギニンの含有量の臨界的意義についても、本願明細書には何も説明されていない。 したがって、引用発明の製剤として錠剤を製造するにあたり、上記相違点3に係る構成とすることに、格別な困難性は認められない。 ウ 効果について 本願明細書には、ブタ肺動脈血管内皮細胞を、松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニンの3成分を添加した培地で培養した場合に、それぞれの成分を単独で、あるいは2成分を組み合わせて添加した培地で培養した時より、細胞当たりのNO産生量が増加することが示されている。 また、審判請求書に添付された実験成績証明書においても、上記3成分を添加した培地で培養した場合に、松樹皮抽出物及び黒胡椒抽出物の2成分を添加した培地に比べて、細胞当たりのNO産生量が増加することが示されている。 しかしながら、松樹皮抽出物中には、プロシアニジン二量体以外にも、相当量のカテキン単量体、プロシアニジン三量体及び四量体が含まれることに加え、没食子酸、カフェ酸、フェルラ酸などのその他の成分もNO活性促進作用を有することが知られている(前記(2)ウ 摘記6-1、ク 摘記C-2 表1、イ 摘記7-2 【0005】)にも関わらず、前記イ(イ)cにおいて説示したとおり、本件補正発明では、松樹皮抽出物中の他の成分の含有量を全く無視して「プロシアニジンB1及びプロシアニジンB3の総量」のみに着目するものであるから、本件補正発明における「プロシアニジンとピペリンの質量比」を特定することの技術的意義がそもそも不明である。 さらに、上記実施例及び実験成績証明書の実験結果は、本件補正発明において特定される「プロシアニジンとピペリンの質量比」及び「黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比」を満たす場合と、それらの質量比を満たさない場合とのNO産生量を比較するものではないから、結局、本件補正発明において特定される「プロシアニジンとピペリンの質量比」及び「黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比」の臨界的意義を示すものとはいえない。 さらに、黒胡椒抽出物が同時に摂取される他の栄養素のバイオアベイラビリティを向上させる作用があることから(前記(2)ウ及びキ)、ブタ肺動脈血管内皮細胞の培養液に添加した時の各成分の質量比が、経口投与された場合にも生体内でそのまま維持されるものとはいえないことを踏まえると、実際に「男性活力用」として生体に投与した場合における、本件補正発明において特定される「プロシアニジンとピペリンの質量比」及び「黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比」の臨界的意義はさらに不明といえる。 他方、松樹皮抽出物とアルギニンを組み合わせることでNO産生量が増加することは、引用文献4に記載される効果であって、また、黒胡椒抽出物もNO産生量を増加させることも引用文献7に記載されていることから、これらを組み合わせればよりNO産生量が増加することは、引用文献4及び7の記載から当に予想されるとおりの効果である。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献4及び7の記載から予測し得ない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 エ 審判請求人の主張について 請求人は審判請求書において、単にNO産生量を向上させることができる成分同士を組み合わせても、必ずしも、NO産生量を相乗的に向上させることができるわけではないため、さらなる効果が得られるかを実際に見出すことは引用文献7を見ても容易ではないこと、及び本件補正発明はごく狭い範囲に既に限定されており、実施例2の結果は十分に優れた結果である旨を主張している。 しかしながら、前記イ(イ)aにおいて説示したとおり、黒胡椒抽出物は、松樹皮抽出物を含めた他の栄養素のバイオアベイラビリティを向上させる成分として慣用される成分であり、黒胡椒抽出物と松樹皮抽出物とを組み合わせた場合には、各抽出物の有する薬理効果が損なわれるといった事情が技術常識として存在していたものとも認められない。 そして、本件補正発明において特定する各成分の質量比の技術的意義及びその臨界的意義については、前記イ(ウ)に説示したとおりであり、本件補正発明が引用文献4及び7から予測し得ない優れた効果を奏する範囲に限定されているものとは認められない。 したがって、請求人の主張を採用することはできない。 (4) まとめ したがって、本件補正発明は引用発明、引用文献4及び7の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明1 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年10月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 松樹皮抽出物、黒胡椒抽出物及びアルギニン若しくはその塩を含む男性活力用組成物(但し、トナカイの角を含む組成物を除き、且つ馬の睾丸を含む組成物を除く)であって、組成物の固形分中、プロシアニジンとピペリンの質量比がプロシアニジン:ピペリン=1:0.5~30であり、且つ、黒胡椒抽出物とアルギニンの質量比が、黒胡椒抽出物:アルギニン=1:1~250である、組成物。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献4及び7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献の記載及び引用発明 引用文献の記載事項は、上記第2 3(2)ア~ケに記したとおりである。また、引用発明についても、上記第2の3(2)ア(イ)に記したとおりである。 4 判断 前記第2 2に説示したとおり、本件補正発明は、「乾燥質量中、アルギニンが0.1質量%以上50質量%以下含有される」という事項を追加することによって、本願発明を限定したものであるから、本願発明は、本件補正発明を包含するものである。 したがって、本願発明は、前記第2 3に説示した本件補正発明と同様の理由により、引用発明、引用文献4及び7の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献4に記載された発明並びに引用文献4及び7の記載に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-006319

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