審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-012117

前処理剤、及び酸化染毛方法又は脱色方法

審判番号
2024-012117
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-202891
請求日
2024年07月23日
審決日
2026年05月25日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社ミルボン
  • 【請求人代理人】弁理士法人河崎特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 新留 豊
  • 審判官 常見 優
  • 審判官 野田 定文
分類
P18 .113-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-202891「前処理剤、及び酸化染毛方法又は脱色方法」拒絶査定不服審判事件〔令和5年2月16日出願公開、特開2023-24577〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年7月13日に出願した特願2018-132884号の一部を令和4年12月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年 1月19日 :上申書、手続補正書の提出 同年 9月21日付け:拒絶理由通知 令和6年 1月25日 :意見書の提出 同年 4月18日付け:拒絶査定 同年 7月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、令和6年7月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤であって、 クエン酸が配合され、 酸性、且つ、1剤式であることを特徴とする前処理剤。」 また、令和5年1月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1は、令和6年7月23日提出の手続補正書による補正がなく、拒絶理由通知の対象となった請求項1と拒絶査定の対象となった請求項1は同一である。 第3 原査定の拒絶理由の概要 原査定は、 「この出願については、令和5年9月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。」 というものであり、その理由1及び2は、令和5年9月21日付け拒絶理由通知書に記載された(以下「・・・」は摘記の省略を表す。)、 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について ・請求項 1-4、6 ・引用文献等 1 ・・・ ●理由2(進歩性)について (1) ・請求項 5 ・引用文献等 1 ・・・ (2) ・請求項 1-6 ・引用文献等 2 ・・・ <引用文献等一覧> 1.特開2001-342119号公報 2.特開2018-048091号公報」 というものである。 そして、上記拒絶理由通知書では、上記理由1及び2について、次の点が指摘されている。 「引用文献1には、酸化染毛剤と組み合わせて用いられるヘアカラー用処理剤であって、pKa4~6の成分で構成された緩衝剤を含有する処理剤が記載され(請求項1)、さらに、緩衝剤がクエン酸系緩衝剤であること(請求項3)、pHは特に4~5程度であるのが好ましいこと(段落0017)、緩衝剤1~50重量%を含むこと(請求項2)が記載されている。また、引用文献1には、染毛方法においては、酸化染毛剤と組み合わせて適用する限り、酸化染毛剤と処理剤との適用順序は特に制限されず、酸化染毛剤を毛髪に塗布する前に適用してもよく、酸化染毛剤(染色剤)の塗布前に処理剤を塗布しても有効に発色し、毛髪や頭皮の損傷を防止できることが記載されている(段落0035)。 よって、上記請求項に係る発明は引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・・・ 引用文献2には、毛髪化粧料用組成物として、クエン酸を5.1質量%含有するし、pHが2.8であるものが記載されている(実施例8参照)。 本願請求項1に係る発明と引用文献2に実施例8として記載された発明を対比すると、前者は、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤」であるのに対して、後者は、酸化染毛剤組成物と混合して毛髪に塗布するものである点で、両者は相違している。 しかしながら、引用文献2の請求項5には、毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布することが示唆されているから、引用文献2に実施例8として記載された発明を毛髪に塗布した後、酸化染毛剤組成物毛髪に塗布することは当業者が容易になし得たことである。また、請求項1-5に係る発明は「前処理剤」という物の発明であるところ、当該用途に用いることによる格別顕著な効果は認められない。請求項6の方法の発明についても同様である。」 また、原査定では、上記理由1及び2について、次の点も指摘されている。 「令和5年9月21日付け拒絶理由通知書に記載したとおりであって、引用文献1にはクエン酸系緩衝剤を用いること(請求項3等)、引用文献1記載の発明においては酸化染毛剤(染色剤)の塗布前に処理剤を塗布しても有効に発色し、毛髪や頭皮の損傷を防止できること([0035])が記載されている。よって、本願請求項1~4、6に係る発明は、引用文献1に記載されたものであるか、引用文献1の記載に基づき当業者が容易になし得たものである。 出願人は令和6年1月25日付け意見書において、引用文献1の「段落0014では、「緩衝剤は、遊離酸…の形態で使用してもよいが、通常、塩の形態で使用される。」と記載されています。しかも、遊離酸の例としては、酒石酸、乳酸、酢酸のみしか記載されていません(段落0014)。そして、クエン酸系緩衝剤の例としても、「クエン酸ナトリウムやクエン酸カリウム等のクエン酸アルカリ金属塩を含む緩衝剤」が記載されているに過ぎません(段落0015)。このような引用文献1の記載からは、緩衝剤としてのクエン酸の配合が引用文献1に記載されているとは言えないものと思量いたします。また、相違点2に関しては、上述のように根拠となる段落0035の記載が選択的記載であるため、明確な相違点であると言えます。」と主張する。 しかし、引用文献1の[0014]には遊離酸の形態で使用してもよいと記載され、実際に、実施例においてクエン酸が添加されているのであるから、引用文献1には緩衝剤としてのクエン酸の配合が記載されている。また、[0035]には、染色剤の塗布前に処理剤を塗布することが明確に記載されている。よって、引用文献1には、本願請求項1~4、6に係る発明が記載されている。 また、引用文献1記載の発明において、染色剤の塗布前に処理剤を塗布することは、当業者ならば容易になし得る。この点、出願人は意見書において、クエン酸と他の酸との効果の相違について主張する。しかし、引用文献1には上述のようにクエン酸系緩衝剤を用いること、クエン酸を用いることが記載されているのであるから、たとえクエン酸と他の酸との効果に相違があったとしても、それは本願請求項1等に係る発明が引用文献1記載の発明に比して格別顕著な効果を奏することを意味しない。 ・・・ 令和5年9月21日付け拒絶理由通知書に記載したとおりであって、引用文献2にはその実施例8に記載の毛髪化粧用組成物の発明(引用発明2という)が記載されている。そして、引用文献2の請求項5には、引用文献2においていう「混合」が「毛髪化粧用組成物を毛髪に塗布した後、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布する工程」により達成されることが記載されているから、引用発明2を毛髪に塗布した後、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤を塗布することは当業者ならば容易になし得る事項である。 出願人は意見書において、クエン酸と他の酸との効果の相違について主張する。 しかし、引用発明2はクエン酸を有しているのであるから、たとえクエン酸と他の酸との効果に相違があったとしても、それは本願請求項1等に係る発明が引用発明2に比して格別顕著な効果を奏することを意味しない。」 第4 当審における判断 1 各引用文献の記載事項(以下、下線は当審において付したものである。) (1) 引用文献1の記載事項 (1a) 「【請求項1】 酸化染毛剤と組み合わせて用いられるヘアカラー用処理剤であって、pKa4~6の成分で構成された緩衝剤を含有する処理剤。 ・・・ 【請求項3】 緩衝剤が、リン酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤又は炭酸系緩衝剤である請求項1記載の処理剤。 【請求項4】 pHが3~6である請求項1記載の処理剤。 ・・・ 【請求項7】 酸化染毛剤によって毛髪を染毛する方法において、前記酸化染毛剤と組み合わせて請求項1記載の処理剤を毛髪に適用する染毛方法。」 (1b) 「【0013】前記緩衝剤としては、pKa4~6の酸成分を含む種々の緩衝剤、例えば、無機酸系緩衝剤(リン酸系緩衝剤、ホウ酸系緩衝剤、炭酸系緩衝剤等)、有機酸系緩衝剤(酢酸系緩衝剤、シュウ酸系緩衝剤、乳酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤、酒石酸系緩衝剤、コハク酸系緩衝剤、フタル酸系緩衝剤、ジエチルバルビツル酸系緩衝剤等)、2-モルホリノエタンスルホン酸1水和物(MES)系緩衝剤、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)系緩衝剤、アミノ酸系緩衝剤(グリシン系緩衝剤、グルタミン酸系緩衝剤、アスパラギン酸系緩衝剤等)等が例示できる。 【0014】これらの緩衝剤は、遊離酸(例えば、酒石酸、乳酸、酢酸等)の形態で使用してもよいが、通常、塩の形態で使用される。塩としては、通常、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)塩、アンモニウム塩として使用される。このような塩としては、リン酸塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等のアルカリ金属リン酸水素塩、リン酸三ナトリウムなどのアルカリ金属リン酸塩等)、ホウ酸塩[例えば、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)などのアルカリ金属ホウ酸塩など]、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩など)、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属酢酸塩、酢酸アンモニウム等)、乳酸塩(例えば、乳酸ナトリウムなどのアルカリ金属酢酸塩など)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のアルカリ金属クエン酸塩、クエン酸二水素カリウムなどのアルカリ金属クエン酸水素塩等)、酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウムなどのアルカリ金属酒石酸塩など)、フタル酸塩(例えば、フタル酸水素カリウムなどのアルカリ金属フタル酸水素塩など)、ジエチルバルビツル酸塩(例えば、ジエチルバルビツル酸カリウムなどのアルカリ金属ジエチルバルビツル酸塩など)等が例示できる。なお、前記緩衝剤は、予め、塩の形態で使用する必要はなく、酸(特に弱酸)とアルカリ(特にアルカリ金属、アンモニア)との配合によって、溶液中で生成してもよい。これらの緩衝剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 【0015】緩衝剤は、安全性及び緩衝能の点から、リン酸系緩衝剤(特に、リン酸二水素ナトリウムやリン酸二水素カリウム等のリン酸水素アルカリ金属塩を含む緩衝剤)、クエン酸系緩衝剤(特に、クエン酸ナトリウムやクエン酸カリウム等のクエン酸アルカリ金属塩を含む緩衝剤)、炭酸系緩衝剤(特に、炭酸ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属塩を含む緩衝剤)が好ましい。 【0016】処理剤中における緩衝剤の割合は、1~50重量%程度の範囲から選択でき、通常、3~30重量%、好ましくは5~20重量%程度である。 【0017】本発明の処理剤はpH3~6、好ましくは3.5~5.5、特に4~5程度であるのが好ましい。処理剤のpHは、通常、酸又はアルカリもしくはそれらの塩で調製されたpH調整剤により調整できる。pH調整剤としての酸には、例えば、無機酸(リン酸、塩酸、硫酸、炭酸等)、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のオキシカルボン酸、フタル酸などの多価カルボン酸、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸等)等を用いることができる。・・・。 【0018】前記緩衝剤とpH調整剤とは適当に組み合わせて使用でき、Clark-Lubsの緩衝液、SΦrensenの緩衝液、Kolthoffの緩衝液、Michaelisの緩衝液、McIlvaineの広域緩衝液、Britton-Robinsonの広域緩衝液、Carmodyの広域緩衝液等の緩衝剤で構成してもよい。」 (1c) 「【0035】本発明の染毛方法においては、酸化染毛剤と組み合わせて適用する限り、酸化染毛剤と処理剤との適用順序は特に制限されず、酸化染毛剤を毛髪に塗布する前や塗布と同時に処理剤を適用して(例えば、酸化染毛剤と処理剤とを混合して、又は酸化染毛剤と処理剤とを同時に個別に適用して)もよいし、酸化染毛剤を塗布した後に処理剤を適用してもよい。本発明では、酸化染毛剤(染色剤)の塗布前に処理剤を塗布しても有効に発色し、毛髪や頭皮の損傷を防止できる。処理剤は、通常、酸化染毛剤を塗布した後、所定時間経過後(例えば、5~20分後、好ましくは10~15分後)に適用される。処理剤の適用方法は、処理剤の剤型により適宜選択でき、通常、水溶液の状態で塗布する。処理剤の適用量は、毛髪の量や毛質によっても異なるが、通常、5重量%濃度の水溶液で10~200ml好ましくは20~150ml、さらに好ましくは40~100ml程度である。本発明の処理剤を適用することにより、毛髪のpHを弱酸性(例えば、pH4.5~6、好ましくはpH4.5~5.5程度)に調整できる。」 (1d) 「【0037】なお、従来の染毛方法では、酸化染毛剤を毛髪に塗布後、発色が完了するまで、30分以上を要したが、本発明の染毛方法では、処理剤の適用によって、発色が促進され、染毛時間を短縮できると共に、処理剤の適用後は、アンモニア臭もなくなるため、作業性が良好である。また、従来の染毛方法では、毛髪のpHはアルカリ性であるが、本発明の染毛方法では、処理剤により毛髪のpHは弱酸性となり、毛髪及び頭皮の健康状態を損なわず、手触りなどの感触に優れる。さらに、従来の方法に比べて、染毛の持続性や、染毛の発色や染まりの程度も優れる。 ・・・ 【0039】 【発明の効果】本発明では、毛髪を損傷することなく、染毛性を改善できる。また、酸化染毛剤による染毛時間を短縮できる。さらに、毛髪のpHは弱酸性に保たれるので、染毛による皮膚への刺激を緩和できるとともに、毛髪の感触性又は柔軟性を改善できる。」 (1e) 「【0040】 【実施例】以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例で使用した処理剤(ヘアローション)の成分を表1に示す。 【0041】 【表1】 [図:0001437783000001.jpg] 【0042】実施例1 表1に示す配合成分のうち、精製水に水酸化ナトリウム以外の成分を溶解した後、水酸化ナトリウムでpHを4~5に調整し、最終的に精製水でバランスをとり、ヘアローションとした。アルカリヘアカラー剤((株)ミルボン製、プロマティス)40gを、酸化剤((株)ミルボン製、プロマティス オキシダン 6.0)40gと混合し、毛髪に塗布して15分間放置した。そして、右頭部の毛髪にのみヘアローションを80ml塗布して、さらに10分間放置後、水を塗布して泡立ててから水で洗浄した。さらに、シャンプーで洗浄した後、トリートメントを塗布して水洗した。ヘアローション塗布後の右頭部の毛髪のpHは5.5で、左頭部の毛髪のpHは11であった。その結果、ヘアローション1を塗布した右頭部の毛髪はきれいに染色されたが、ヘアローションを塗布しなかった左頭部の毛髪は発色が充分でなかった。また、右頭部の毛髪の方が3週間後の色持ちが良かった。」 (2) 引用文献2の記載事項 (2a) 「【請求項1】 アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用される毛髪化粧料用組成物であって、 前記毛髪化粧料用組成物中において(A)酸を0.5質量%以上含有する毛髪化粧料用組成物。 ・・・ 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料用組成物の使用方法であって、 前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物と、前記毛髪化粧料用組成物を混合した後、毛髪に適用される工程、 前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布した後、前記毛髪化粧料用組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布する工程、又は 前記毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布する工程、を含む毛髪化粧料用組成物の使用方法。」 (2b) 「【0012】 <2剤式の毛髪脱色・脱染剤> 2剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えば、少なくともアルカリ剤を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤とから構成される。この第1剤と第2剤との混合物は、通常の脱色・脱染処理工程において用いることができる。さらに脱色・脱染剤の混合物が後述する毛髪化粧料用組成物と混合され、特に弾力性が低下した毛髪に対して脱色又は脱染のために用いられる。」 (2c) 「【0055】 <毛髪化粧料用組成物> 本実施形態の毛髪化粧料用組成物は、上述した毛髪化粧料組成物と混合して使用される。毛髪化粧料用組成物は、(A)酸の他、該(A)酸以外のpH調整剤、(B)カチオン性ポリマー、(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、可溶化剤等を含有してもよい。(A)酸としては、毛髪化粧料組成物に配合されるアルカリ剤との反応により、塩を形成するものであれば、いずれも適用することができる。(A)酸は、毛髪化粧料組成物中のアルカリ剤と反応し、塩を生成するとともに、毛髪化粧料組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物のpHを低下させる。(A)酸としては、例えば無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例は、例えばクエン酸、イソクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。これらの中で、3価以上の酸が好ましく、リン酸がより好ましい。3価以上の酸の適用は、既染毛又は既脱色毛(以下、「既染毛等」という)と新生毛に対する明度の均一性に優れる。また、酸を配合すると仕上がりの色調が変化する場合があるが、1価又は2価の酸を配合した場合に比べて色調の変化を抑制することができる。リン酸の適用は、毛髪の弾力性向上作用により優れ、色調の変化抑制作用により優れるとともに、毛髪の感触に優れる。また、既染毛と新生毛に対する明度の均一性に優れる。 【0056】 毛髪化粧料用組成物中における(A)酸の含有量の下限は、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。(A)酸の含有量が0.5質量%以上であると、特に毛髪の弾力性を向上させ、既染毛等と新生毛に対する明度の均一性を向上させることができる。また、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性を向上させることができる。 【0057】 毛髪化粧料用組成物中における(A)酸の含有量の上限は、3価以上の酸の場合、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。2価の酸の場合、好ましくは10.5質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。1価の酸の場合、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。(A)酸の含有量を好ましい上限より低下させると、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性を向上させることができる。 【0058】 毛髪化粧料用組成物に配合されるpH調整剤は、毛髪に塗布される毛髪化粧料組成物を構成する混合物のpHを再調整することにより、特に既染毛等に対する毛髪のダメージをより抑制する。そのため、毛髪化粧料用組成物は、pH調整剤を含有することが好ましい。pH調整剤としては、上述したアルカリ剤を挙げることができる。アルカリ剤は、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。 【0059】 毛髪化粧料用組成物は、毛髪化粧料組成物と混合された際、混合物のpHを、混合前の毛髪化粧料組成物のpHと比べて好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上低下させることが好ましい。毛髪化粧料組成物のpHを0.1以上低下させることにより、毛髪のダメージを抑制することができ、既染毛等と新生毛に対する明度の均一性等を向上させることができる。なお、毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物のpHは、混合物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。」 (2d) 「【0073】 また、本実施形態の毛髪化粧料用組成物と、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物との混合工程は、毛髪上で行われてもよい。例えば、生え際を含め、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物を毛髪全体に塗布した後、毛髪化粧料用組成物を、塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布してもよい。また、先に毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布してもよい。かかる場合、毛髪化粧料用組成物は、弾力性の向上の観点及び毛髪へのダメージを抑制する観点から既染毛等を中心に塗布することが好ましい。」 (2e) 「【0075】 本実施形態の毛髪化粧料用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態では、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用され、(A)酸を0.5質量%以上含有する毛髪化粧料用組成物を構成した。したがって、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物に対して、優れた毛髪の弾力性向上作用を付与することができる。特に、既染毛等のようなダメージが蓄積され、毛髪の弾力性が低下している箇所においては、毛髪化粧料用組成物の適用により弾力性を付与することができる。 【0076】 (2)従来より、新生毛と既染毛等を、同時にムラなく染毛等するためには、新生毛用の毛髪化粧料組成物と、染毛力等をやや弱くした既染毛等用の毛髪化粧料組成物の2つの種類の毛髪化粧料組成物を用意しておく必要があった。本実施形態の毛髪化粧料用組成物を用いて、新生毛用の毛髪化粧料組成物と混合することにより、新生毛用の毛髪化粧料組成物中に含有されるアルカリ剤が(A)酸により中和され、染毛力等をやや弱くすることができる。そのため、新生毛用の毛髪化粧料組成物から既染毛等用の毛髪化粧料組成物を調製することが可能となった。よって、新生毛用の毛髪化粧料組成物と既染毛等用の毛髪化粧料組成物の2つの種類の毛髪化粧料組成物を用意しておく必要がなく、コストの低減を図ることができる。 【0077】 (3)新生毛用の毛髪化粧料組成物を新生毛に塗布し、本実施形態の毛髪化粧料用組成物と新生毛用の毛髪化粧料組成物との混合物を既染毛等に適用することにより、明度の均一性等を向上させることができる。また、毛髪化粧料用組成物により、毛髪化粧料組成物のpHが低下するため、既染毛等に対するダメージの低下を抑制することができる。よって、新生毛と既染毛等において、毛髪の感触等の毛髪特性も、均一性を図ることができる。また、毛髪化粧料用組成物中の(A)酸が、毛髪化粧料組成物中のアルカリ剤と反応し、塩を生成するため、アルカリ剤としてアンモニアを使用する場合、アンモニア由来の臭気の低減を図ることができる。」 (2f) 「【実施例】 【0083】 次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。 <試験例1:毛髪の弾力性等の評価> 表1,2に示す各成分を含有する、酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤をそれぞれ調製した。また、表3に示す各成分を含有する、毛髪化粧料用組成物としての第3剤を調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)~(C)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。 【0084】 まず、新規黒毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)の前処理を行った。実施例1で使用する第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。得られた混合物を、毛束に刷毛を用いて塗布し、室温(30℃)にて10分間放置した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤組成物を水で洗い流した後、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置することにより、前処理が施された毛束を得た。 【0085】 次に、各実施例及び比較例1において、表1,2に示される酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤、並びに毛髪化粧料用組成物としての第3剤を1:1:0.2の比率で混合し、酸化染毛剤組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物を調製した。比較例2~4においては、表1,2に示される酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤を1:1の比率で混合し、酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。得られた各例の混合物を、前処理が施された毛束に塗布し、室温(30℃)にて10分間放置した。洗浄及び乾燥工程は、前処理工程と同様の方法により行った。得られた各例の毛束について、毛髪の弾力性、取り扱い性、及び明度の均一性(既染部と新生部の明度の差)の各効果を下記基準に従い評価した。 【0086】 (毛髪の弾力性) 上記各例の染毛処理を施した毛束について、パネラー5名が毛髪の弾力性を、以下の基準で判断した。毛髪の弾力性が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。 【0087】 (毛髪の取り扱い性) 毛髪の取り扱い性は、上記毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断した。 パネラー5名が、取り扱い性を以下の基準で判断した。取り扱い性が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。 【0088】 (明度の均一性) パネラー5名が標準光源下で目視にて、上記各例の染毛処理後の毛束の明度と、前処理直後の毛束の明度とを比較し、明度の差について、以下の基準で評価することにより、明度の均一性が優れるか否かについて判断した。明度の差がなく、優れる(5点)、明度の差がほとんどなく、良好(4点)、明度の差が小さく、可(3点)、明度の差がやや大きく、やや不良(2点)、及び明度の差が大きく、不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。 【0089】 【表1】 [図:0001437783000002.jpg] 【0090】 【表2】 [図:0001437783000003.jpg] 【0091】 【表3】 [図:0001437783000004.jpg] 表3に示されるように、各実施例は、各評価項目について可以上の結果であることが確認された。表3に示されるように、毛髪化粧料用組成物である第3剤中に(A)酸の含有量が低い比較例1は、各実施例に対して、各評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、第1剤と第2剤との混合物により処理した比較例2は、各実施例に対して、各評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、混合物のpHが実施例1と同じである比較例3は、各実施例に対して、特に毛髪の弾力性の評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、混合物のpHが実施例1より低い比較例4は、各実施例に対して、毛髪の弾力性の評価が劣ることが確認された。つまり、弾力性の向上は、混合物のpHを調整するのみでは足りず、所定量の酸を含有する毛髪化粧料用組成物を適用することが必要であることが確認された。」 2 引用文献1を主引例とする場合 (1) 引用発明について 引用文献1には、「酸化染毛剤と組み合わせて用いられるヘアカラー用処理剤」であって、当該処理剤が、「クエン酸系緩衝剤」を含有すること、「pHが3~6」であること、及び「酸化染毛剤と組み合わせて」当該「処理剤を毛髪に適用する」ことが記載されているところ(摘記(1a))、「緩衝剤」として、「クエン酸系緩衝剤(特に、クエン酸ナトリウムやクエン酸カリウム等のクエン酸アルカリ金属塩を含む緩衝剤)」が好ましく、「クエン酸」といった「pH調整剤」により「処理剤のpH」を調製でき、「緩衝剤とpH調整剤とは適当に組み合わせて使用」できるものとされている(摘記(1b))。 そして、その具体的な実施例1として、「処理剤(ヘアローション)」を用いた染色が確認されているから(摘記(1e))、引用文献1には、以下の引用発明1が記載されているといえる。 <引用発明1> アルカリヘアカラー剤((株)ミルボン製、プロマティス)と酸化剤((株)ミルボン製、プロマティス オキシダン 6.0)との混合物とともに用いるヘアローションであって、当該混合物を毛髪に塗布し、当該塗布した毛髪に当該ヘアローション塗布して染色するヘアローションであって、以下の表1の配合成分を有する pH4~5であるヘアローション。 [図:0001437783000005.jpg] (2) 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「アルカリヘアカラー剤((株)ミルボン製、プロマティス)と酸化剤((株)ミルボン製、プロマティス オキシダン 6.0)との混合物」は、「酸化染毛剤と組み合わせて用いられるヘアカラー用処理剤」(摘記(1a))における「酸化染毛剤」であって、本願発明1の「酸化染毛剤又は脱色剤」に相当する。 また、引用発明1の「ヘアローション」は、「酸化染毛剤又は脱色剤」である上記「混合物」とともに染毛に用いるものであり、かつ、1剤式の「処理剤」である点で、本願発明1と共通するものである。 さらに、引用発明1の「ヘアローション」は、「クエン酸ナトリウム」だけでなく「クエン酸」自体も含有し、「pH4~5」であることから酸性の処理剤であるといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、 「酸化染毛剤又は脱色剤を毛髪に塗布する際にともに使用する処理剤であって、 クエン酸が配合され、 酸性、且つ、1剤式である処理剤。」 である点で一致し、以下の相違点1で相違する。 <相違点1> 本願発明1は、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤」であるのに対し、引用発明1は、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布した後の毛髪に塗布する後処理剤」である点 (3) 相違点の判断 ア 新規性について 引用文献1には、「酸化染毛剤と組み合わせて適用する限り、酸化染毛剤と処理剤との適用順序は特に制限されず、酸化染毛剤を毛髪に塗布する前や塗布と同時に処理剤を適用して(例えば、酸化染毛剤と処理剤とを混合して、又は酸化染毛剤と処理剤とを同時に個別に適用して)もよいし、酸化染毛剤を塗布した後に処理剤を適用してもよい。本発明では、酸化染毛剤(染色剤)の塗布前に処理剤を塗布しても有効に発色し、毛髪や頭皮の損傷を防止できる」と記載されているから(摘記(1c))、引用発明1のヘアローションは、「酸化染毛剤と組み合わせて適用する限り」、すなわち「酸化染毛剤」と毛髪上で混合されるのであれば、「酸化染毛剤を毛髪に塗布する前」でも「酸化染毛剤を塗布した後」でも塗布できる「処理剤」であって、「有効に発色し、毛髪や頭皮の損傷を防止できる」「処理剤」であるといえる。 そうすると、引用発明1の「ヘアローション」は、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布した後の毛髪に塗布する後処理剤」であるだけでなく、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤」であるともいえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではないから、本願発明1は引用文献1に記載された発明といえる。 イ 進歩性について (ア) 仮に、相違点1が実質的な相違点であったとしても、引用文献1の「処理剤」の適用方法に関する記載(摘記(1c))を考慮すると、引用発明1の「ヘアローション」を「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤」とする事項は、当業者が容易に想到する事項である。 (イ) そこで、本願発明1の効果について検討する。 本願発明1は、「1剤式で、2剤式と同等以上の毛髪損傷の抑制が可能な前処理剤」の提供を課題とし(本願明細書【0006】)、具体的には、「毛髪損傷の指標となる初期弾性率低下の抑制に優れる」ことを実施例において確認している(本願明細書【0007】及び【0035】~【0047】)。 それに対し、引用文献1に記載された発明は、「発色が促進され、染毛時間を短縮できると共に、処理剤の適用後は、アンモニア臭もなくなるため、作業性が良好」であり、「処理剤により毛髪のpHは弱酸性となり、毛髪及び頭皮の健康状態を損なわず、手触りなどの感触に優れ」るものであって、「毛髪を損傷することなく、染毛性を改善」できる効果に加え、「毛髪のpHは弱酸性に保たれるので、染毛による皮膚への刺激を緩和できるとともに、毛髪の感触性又は柔軟性を改善できる」効果を奏するものである(摘記(1d))。 そうすると、引用文献1に記載された発明においても、毛髪のpHを弱酸性に保つことで、毛髪の損傷を抑制しているのであるから、上記本願発明1の効果は、引用文献1に記載された発明の効果から予測できる範囲のものにすぎない。 (ウ) したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において、以下の主張1及び主張2を主張している。 主張1:クエン酸について 引用文献1には、緩衝剤としてのクエン酸は記載されておらず、実施例1で使用されているクエン酸が、緩衝剤であることは記載がなく、緩衝剤は、遊離酸の形態で使用してもよいが、通常、塩の形態で使用される(段落[0014])から、遊離酸の形態での使用は、緩衝剤の通常の使用形態ではない。また、酸の種類による効果の違いは、引用文献1からは何ら把握できない。 主張2:前処理剤について 引用文献1では、処理剤は、通常、酸化染毛剤を塗布した後、所定時間経過後に適用される(段落[0035])から、引用文献1では、前処理剤としての使用は、通常の使用形態ではない。 イ 請求人の主張の検討 (ア) 主張1について 引用発明1の「ヘアローション」は、「クエン酸ナトリウム」だけでなく「クエン酸」自体も含有するものであり、「水酸化ナトリウム」が適量配合されたとしても、「pH」が「4~5」に調整されていることや平衡の観点から、遊離の「クエン酸」が存在することは当然の事項と認められる。 さらに、一般的な記載として、「pH調整剤」である「有機酸」として「クエン酸」を用いることや、「pH調整剤」を「緩衝剤」とともに使用することも示唆されているから(摘記(1b))、引用発明1の「クエン酸」が「pH調整剤」であって、遊離酸の形態でも存在していることは、一般的な記載とも整合するものである。また、効果については、上記(3)イ(イ)で述べたとおりであるところ、引用発明1が「クエン酸」を含有し、有機酸が同じであるから、有機酸が違うことを前提とする主張は妥当ではない。 したがって、引用文献1に記載された発明において、「クエン酸」の「遊離酸の形態での使用」が「通常の使用形態ではない」とした主張1は、根拠がなく的を射ていない主張であって、採用できない。 (イ) 主張2について 引用発明1の「ヘアローション」である「処理剤」をどのような態様で使用するかは、上記(3)ア及びイで説示したとおりであり、また、引用文献1に記載された「処理剤」について、前処理剤としての使用が通常の使用形態ではないとすることもできないから、主張2は採用できない。 (5) まとめ よって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 引用文献2を主引例とする場合 (1) 引用発明について 引用文献2には、「アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用される毛髪化粧料用組成物」であって、当該「毛髪化粧料用組成物」が、「(A)酸」を含有すること、及び「毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布する」ことが記載されているところ(摘記(2a))、「毛髪化粧料組成物」が「2剤式の毛髪脱色・脱染剤」であること(摘記(2b))、「(A)酸」として、「クエン酸」といった「有機酸」を用いること(摘記(2c))が記載されている。 そして、その具体的な実施例8として、pH(10質量%)が2.8である「毛髪化粧料用組成物(第3剤)」を用いた染毛が確認されているから(摘記(2f))、引用文献2には、以下の引用発明2が記載されているといえる。 <引用発明2> 酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤、並びに毛髪化粧料用組成物(第3剤)を混合して、上記混合した混合物を毛束に塗布し、染毛するための毛髪化粧料用組成物(第3剤)であって、 以下の実施例8の配合成分(含有量の単位は質量%)を有する pH2.8である毛髪化粧料用組成物(第3剤)。 [図:0001437783000006.jpg] (2) 対比 本願発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤」は、「2剤式の毛髪脱色・脱染剤」(摘記(2b))であって、本願発明1の「酸化染毛剤又は脱色剤」に相当する。 また、引用発明2の「毛髪化粧料用組成物(第3剤)」は、「酸化染毛剤又は脱色剤」といえる上記「酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤」とともに染毛に用いるものであり、かつ、1剤式の「処理剤」である点で、本願発明1と共通するものである。 さらに、引用発明2の「毛髪化粧料用組成物(第3剤)」は「クエン酸」を含有し、「pH2.8」であることから酸性の処理剤であるといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明2とは、 「酸化染毛剤又は脱色剤を毛髪に塗布する際に、ともに使用する処理剤であって、 クエン酸が配合され、 酸性、且つ、1剤式である処理剤。」 である点で一致し、以下の相違点2で相違する。 <相違点2> 本願発明1は、「酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤」であるのに対し、引用発明2は、「酸化染毛剤又は脱色剤と混合する処理剤であって、当該混合した混合物を毛髪に塗布する」態様の処理剤である点 (3) 相違点の判断 ア 引用文献2には、「毛髪化粧料用組成物の使用方法」について、 (α) アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物と、毛髪化粧料用組成物を混合した後、毛髪に適用すること (β) アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布した後、毛髪化粧料用組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布すること (γ) 毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布すること の3つの態様が記載されている(摘記(2a)の【請求項5】及び(2d))。 そして、(α)の態様が引用発明2の態様であって、(γ)の態様が本願発明1の態様に相当するものである。 イ ここで、引用文献2には、「毛髪化粧料用組成物に配合されるpH調整剤は、毛髪に塗布される毛髪化粧料組成物を構成する混合物のpHを再調整することにより、特に既染毛等に対する毛髪のダメージをより抑制」すること、すなわち、「毛髪化粧料組成物のpHを0.1以上低下させることにより、毛髪のダメージを抑制することができ、既染毛等と新生毛に対する明度の均一性等を向上させることができる。」と記載されている(摘記(2c)の【0058】及び【0059】)から、「毛髪化粧料組成物」自体を直接毛髪に塗布することなく、「毛髪化粧料用組成物」によって「毛髪化粧料組成物」のpHを低下させて毛髪と接触させることで、毛髪のダメージをより抑制できることが理解されるものである。 そうすると、(α)の態様と(γ)の態様はいずれも、「毛髪化粧料組成物」自体を直接毛髪に塗布するものではなく、「毛髪化粧料組成物」が毛髪と接触する前に「毛髪化粧料用組成物」と混和するものであって、毛髪のダメージをより抑制できる態様といえる。 したがって、引用発明2において、(α)の態様から(γ)の態様に変更し、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が適宜決めうる設計的事項の変更にすぎない。 ウ そして、本願発明1の効果は、上記2(3)イ(イ)で述べたとおりであるところ、引用発明2において、(α)の態様から(γ)の態様に変更しても、「毛髪のダメージをより抑制できる」態様であることに変化はないから、本願発明1の効果は、引用文献2に記載された発明の効果から予測できる範囲のものにすぎない。 エ したがって、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において、以下の主張3及び主張4を主張している。 主張3:構成要件の組合せについて 引用文献2では、1剤~3剤を混合したときに、クエン酸と酒石酸の効果の差異もなく、クエン酸よりも無機酸であるリン酸の方が優れることが把握されるに過ぎない。そのため、引用文献2には、構成要件(a)と(b)と(c)とを組み合わせる動機付けはない。 「(a)酸化染毛剤又は脱色剤を塗布する前の毛髪に塗布する前処理剤であって、 (b)クエン酸が配合され、 (c)酸性、且つ、1剤式である」 主張4:有機酸の違いに対応する効果について 1剤式の前処理剤における酸の種類による効果の違いは、引用文献2からは何ら把握できない。引用文献2の実施例9では、1剤~3剤を混合して用いた場合に、グリコール酸やリンゴ酸と類似する構造を有する酒石酸を用いた場合でも、毛髪の弾力性について、クエン酸を用いた実施例8と同等の効果が得られており、本願発明における効果の傾向と全く異なる。従って、引用文献1および2からは本願発明の効果を予測することは困難である。 イ 請求人の主張の検討 (ア) 主張3について 引用発明2は、上記構成要件(b)と(c)を有するものであり、上記(3)で説示したとおり、上記構成要件(a)を採用する動機付けもあるから、主張3は採用できない。 (イ) 主張4について 引用発明2の「毛髪化粧料用組成物(第3剤)」は「クエン酸」を配合するものであって、上記(α)の態様と(γ)の態様の違いによる効果の違いは、上記(3)で説示したとおり、当業者が予測できる程度のものにすぎないから、主張4は採用できない。 (5) まとめ よって、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、また、引用文献1又は2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、原査定に誤りはなく、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-012117

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存