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特許拒絶査定不服審判

2024-004310

皮膚外用クリーム剤

審判番号
2024-004310
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-171588外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年03月12日
審決日
2026年04月28日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-171588「皮膚外用クリーム剤」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月 6日出願公開、特開2022- 67658〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 41項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和3年10月20日(優先権主張 令和2年10月20日)の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年11月30日付け 拒絶理由通知

令和5年 4月 4日 意見書及び手続補正書の提出

令和5年 7月 3日付け 拒絶理由通知

令和5年 9月11日 意見書及び手続補正書の提出

令和5年10月30日 刊行物提出書の提出

令和5年12月 7日付け 拒絶査定

令和6年 3月12日 審判請求書及び手続補正書の提出

令和6年 4月18日 手続補正書(方式)の提出

(審判請求書の「請求の理由」の内容を補正するもの)

令和6年 7月29日 上申書の提出

令和7年10月31日付け 拒絶理由通知(当審)

令和8年 1月 5日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~3に係る発明は、令和8年1月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
テルビナフィン塩酸塩、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、イソプロピルメチルフェノール、リドカイン、抗炎症剤、l-メントール、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、
前記テルビナフィン塩酸塩が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有され
前記抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、又はジフェンヒドラミン塩酸塩であり、
前記クロタミトンが組成物全量当たり1~10wt%含有され、
前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマーであって、組成物全量当たり0.05~5.0wt%含有され、
前記pH調整剤が、組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有されている、
ことを特徴とする皮膚外用クリーム剤。」

第3 当審における拒絶の理由

当審において令和7年10月31日付けで通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。

(引用文献7を主引用文献とする進歩性について)

請求項1に係る発明は、引用文献7に記載された発明及び引用文献8~21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(引用文献13を主引用文献とする進歩性について)

請求項1に係る発明は、引用文献13に記載された発明及び引用文献7~12、14~21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>

7.特開平08-020527号公報

8.特開2003-081812号公報

9.特開2016-000721号公報

10.特開2002-356430号公報

11.特開2005-104915号公報

12.特開2005-104916号公報

13.「オロントール(R)EXクリーム」添付文書, 2018年5月9日改訂

14.「キョータップ(R)TFクリーム EX」添付文書, 2009年5月21日改訂

15.「ラミシールプラス(R)クリーム」添付文書, 2017年12月01日改訂

16.「ブテナロック(R)Vα クリーム18g、液18mL」新発売のお知らせ, 久光製薬, 2018年3月, <https://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/news_release_180316.pdf>

17.医薬品添加物事典 2007,2007年7月, 株式会社薬事日報社, p.65

18.FRAGRANCE JOURNAL (2018) vol.46, no.3, p.73-75

19.国際公開第2001/093812号

20.特表2016-510777号公報

21.特開2012-036119号公報

(当審注:「(R)」は○の中にRである。以下同様。)

第4 引用文献に記載された事項

1 引用文献7に記載された事項

引用文献7には、以下の記載がある(なお、下線は当審にて付したものである。以下同様。)。

(摘記7a)

「【請求項1】 外用基剤に有効成分として角質親和性の高い抗真菌剤を配合してなる組成物において、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、ハッカ油またはメントールの1種もしくは2種以上を配合したことを特徴とする角質貯留型抗真菌外用組成物。
【請求項2】 角質親和性の高い抗真菌剤が塩酸ブテナフィン、ビフォナゾール、塩酸ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、塩酸テルビナフィン、塩酸アモロルフィン、リラナフタート等の抗真菌剤である請求項1に記載の角質貯留型抗真菌外用組成物。
【請求項3】 角質親和性の高い抗真菌剤を組成物全量当り0.5~3.0重量%含有する請求項1~2のいずれかに記載の角質貯留型抗真菌外用組成物。
【請求項4】 サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミト
ン、ハッカ油またはメントールを組成物全量当り1~10重量%含有する請求項1~3のいずれかに記載の角質貯留型抗真菌外用組成物。
【請求項5】 軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲルクリーム剤または溶液剤のいずれかの剤形である請求項1~4のいずれかに記載の角質貯留型抗真菌外用組成物。」

(摘記7b)

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、角質親和性の高い抗真菌剤を有効成分とする抗真菌外用組成物に関する。さらに詳しくは、角質親和性の高い抗真菌剤の角質浸透性を高めることによりさらに貯留性を良好にする目的でサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、ハッカ油またはメントールの1種もしくは2種以上を配合してなる角質貯留型抗真菌外用組成物に関する。」

(摘記7c)

「【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
表在性真菌症においては真菌は主として皮膚角質層に侵入し、増殖するので、抗真菌剤が表在性真菌症に対して優れた薬効を発揮するための条件としては、薬物自体が強い抗真菌活性を有することに加えて、感染部位である表皮角質層における薬物濃度の高いレベルでの長時間維持の実現が必要である。近年この目的を成し遂げるために角質親和性の高い抗真菌剤が開発され、1日1回塗布で表在性真菌症に臨床効果を発揮する抗真菌外用剤が実用化されている。しかし、表皮角質層に対して充分な親和性を得るためには、抗真菌剤が表皮角質層に浸透して初めて達成されるのであり、そのための製剤化が必要である。しかしこれら角質親和性の高い抗真菌剤は極めて難溶性であり、基剤中での溶解性を上げることが困難であること等のために表皮角質層に対する浸透性が不充分で薬物の有する角質親和性を最大限に生かした角質貯留型抗真菌外用剤とはなっていない。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、角質親和性の高い抗真菌剤の角質浸透性・貯留性を高める目的で検討を重ねた結果、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、ハッカ油またはメントールの1種もしくは2種以上を配合して外用基剤で製剤化した場合、角質親和性の高い抗真菌剤の角質浸透性・貯留性を高めることが可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
さらに詳しくは、角質親和性の高い抗真菌剤を有効成分とする外用剤において、それら抗真菌剤に対して高い溶解性を持ち、角質浸透性のよいサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、ハッカ油またはメントールを併用することにより抗真菌剤の表皮角質層への浸透を促進し、さらに表皮角質層の構成成分との結合、固定化を助けることを見い出した。」

(摘記7d)

「【0025】実施例17 (ゲルクリーム剤)
下記組成からなるゲルクリーム剤を調製する。
(成分) (配合量)
塩酸テルビナフィン 1.0
続きを表示(全13行)
クロタミトン 5.0
ミリスチン酸イソプロピル 10.0
ラウロマクロゴール 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
4%カルボキシビニルポリマー水溶液 30.0
2%水酸化ナトリウム液 35.0
精製水 12.0
全量 100.0 g
塩酸テルビナフィンをクロタミトン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウロマクロゴールおよび2%水酸化ナトリウム液に約70~80℃に加温して溶解する。一方、4%カルボキシビニルポリマー水溶液に残余の2%水酸化ナトリウム液、1,3-ブチレングリコールおよび精製水を加えてかき混ぜ、均一なゲルとした後、約70~80℃に加温する。これに上記の加温した主薬溶液を加えて乳化し均一に混合してゲルクリーム剤を得る。」

2 引用文献13に記載された事項

引用文献13には、以下の記載がある。

(摘記13a)

「
[図:0001436533000001.jpg]
」(「製品名」、「特徴」の項)

(摘記13b)

「
[図:0001436533000002.jpg]
」(「効果・効能」、「用法・用量」の項)

(摘記13c)

「
[図:0001436533000003.jpg]
」(「成分・分量」の項)

3 引用文献11に記載された事項

引用文献11には、以下の記載がある。

(摘記11a)

「【請求項1】
アリルアミン系抗真菌剤、ベンジルアミン系抗真菌剤およびモルホリン系抗真菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノールおよび第4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1つとを含む抗真菌組成物。
【請求項2】
該抗真菌剤がテルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィンおよびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1記載の抗真菌組成物。」

(摘記11b)

「【0014】
本発明による抗真菌組成物には、上記有効成分および併用成分のほかに、保存剤、有機・無機粉末、防腐剤、滑沢剤、キレート剤、香料、溶剤、溶解補助剤、pH調整剤、酸化防止剤、保湿剤、保型剤など(以下、「添加成分」という)や、抗炎症剤、鎮痒剤、清涼化剤、殺菌剤、収斂剤、血行促進剤、皮膚保護剤、組織修復剤など(以下、「他の有効成分」という)を必要に応じて配合してもよい。
【0015】
抗炎症剤としては、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、l-メントール、dl-メントール、dl-カンフルが例示される。
【0016】
鎮痒剤としては、リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエントキシドデカン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、クロタミトンが例示される。」

(摘記11c)

「【0033】
製剤例4(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
続きを表示(全114行)
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0034】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0035】
製剤例5(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
イソプロピルメチルフェノール 3g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0036】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0037】
製剤例6(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
イソプロピルメチルフェノール 0.01g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0038】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0039】
製剤例7(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
イソプロピルメチルフェノール 3g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0040】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0041】
製剤例8(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸クロルヘキシジン 1g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0042】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0043】
製剤例9(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸クロルヘキシジン 0.01g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0044】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。
【0045】
製剤例10(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸クロルヘキシジン 0.01g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0046】
原液と噴射剤(LPG)を適宜組み合わせ容器に充填し、エアゾール剤に製する。。
・・・
【0071】
製剤例23(液剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸クロルヘキシジン 1g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g
【0072】
製剤例24(液剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩化ベンザルコニウム 0.05g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 適量
全量 100g 」

4 引用文献12に記載された事項

引用文献12には、以下の記載がある。

(摘記12a)

「【請求項1】
アリルアミン系抗真菌剤に脂肪酸エステル、粉末成分、アルコール系溶剤および鎮痒成分を配合してなる抗真菌組成物。
【請求項2】
アリルアミン系抗真菌剤がテルビナフィン、ナフチチンおよびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1記載の抗真菌組成物。
・・・
【請求項5】
鎮痒成分がリドカイン、ジブカイン、プロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエントキシドデカン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドミン、クロタミトンからなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1~4のいずれかに記載の抗真菌組成物。」

(摘記12b)

「【0028】
製剤例1(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
リドカイン 2g
続きを表示(全65行)
グリチルリチン酸二カリウム 1g
塩酸クロルヘキシジン 0.2g
酸化亜鉛 10g
ステアリン酸マグネシウム 0.5g
タルク 55.3g
ミリスチン酸イソプロピル 15g
イソプロピルアルコール 15g
全量 100g
【0029】
製剤例2(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 10g
ミリスチン酸イソプロピル 5g
エタノール 70.5g
全量 100g
【0030】
製剤例3(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
塩酸クロルヘキシジン 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 10g
ミリスチン酸イソプロピル 30g
エタノール 45g
全量 100g
【0031】
製剤例4(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
塩酸クロルヘキシジン 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 30g
ミリスチン酸イソプロピル 18.5g
エタノール 36g
全量 100g
【0032】
製剤例5(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
リドカイン 2.5g
グリチルレチン酸 1g
酸化亜鉛 10g
タルク 20g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 45.5g
全量 100g
【0033】
製剤例6(エアゾール剤)
塩酸テルビナフィン 1g
塩酸ジフェンヒドラミン 2g
グリチルレチン酸 1g
イソプロピルメチルフェノール 3g
酸化亜鉛 10g
タルク 17g
ミリスチン酸イソプロピル 20g
エタノール 46g
全量 100g 」

5 引用文献14に記載された事項

引用文献14には、以下の記載がある。

(摘記14a)

「
[図:0001436533000004.jpg]
」(「製品名」、「製品特長」の項)

(摘記14b)

「
[図:0001436533000005.jpg]
」(「成分・分量」の項)

6 引用文献15に記載された事項

引用文献15には、以下の記載がある。

(摘記15a)

「
[図:0001436533000006.jpg]
」(「製品名」、「特徴」の項)

(摘記15b)

「
[図:0001436533000007.jpg]
」(「成分」の項)

7 引用文献16に記載された事項

引用文献16には、以下の記載がある。

(摘記16a)

「
[図:0001436533000008.jpg]
」(「商品概要」の項)

8 引用文献17に記載された事項

引用文献17には、以下の記載がある。

(摘記17a)

「
[図:0001436533000009.jpg]
・・・
[図:0001436533000010.jpg]
」(「カルボキシビニルポリマー」の項)

9 引用文献18に記載された事項

引用文献18には、以下の記載がある。

(摘記18a)

「 2.カルボマー
50年以上の歴史をもつカルボマーは、カルボキシビニルポリマーの表示名称で、クリームや乳液などの安定剤としてベストセラー原料である。」(73ページ左欄20~23行)

10 引用文献19に記載された事項

引用文献19には、以下の記載がある。

(摘記19a)

「以下、カルボキシビニルポリマーの例について説明する。
カルボキシビニルポリマーは、主としてアクリル酸を溶液重合にてポリマー化し乾燥して得られる白色の微粉末であり、水溶性のポリマーである。重合溶媒としては、ベンゼンや酢酸エチル、あるいは酢酸エチルとシクロヘキサンの混合溶媒等が使用されるが、溶媒の残留による安全性の懸念より、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合溶媒が製品品質の観点で好ましく使用される。カルボキシビニルポリマーの特徴は、重合体中のカルボキシル基に由来する。粉末状態では、溶媒和していないため、かたくコイル状になっている。水に分散すると分子は水和されてコイル状態がある程度ゆるみ、粘度が増大する。
さらにアルカリで中和することによって、カルボキシル基がイオン化し、ポリマー骨格に沿ってマイナス荷電が発生、その反発力により膨潤し急速に増粘する。この増粘効果のため、カルボキシビニルポリマーは、化粧料、特にクリーム、ローション等のO/Wエマルションやゲル状化粧料の剤型安定化を目的として多く使用されている。カルボキシビニルポリマーの利点としては、低濃度で高い増粘安定性が得られること、天然高分子では得られない再現性が得られること、温度安定性が良好なこと、耐細菌性が良好なこと、広範囲のpH及び粘度領域で使用可能なこと、肌塗布時の使用性が良好なこと等があり、他の増粘剤に比較し広く化粧料に使用されている。」(15ページ23行~16ページ15行)

11 引用文献20に記載された事項

引用文献20には、以下の記載がある。

(摘記20a)

「【0003】
エマルションをクリーム中で安定に保つために、増粘剤が概して利用される。最も一般的な増粘剤は架橋アクリル酸から形成され、一般的にカルボマー(例えば、カルボマー940)として公知である。」

12 引用文献21に記載された事項

引用文献21には、以下の記載がある。

(摘記21a)

「【0002】
水中油型乳化組成物は、そのみずみずしい使用感から、皮膚化粧料を含む皮膚外用剤の基剤として広く用いられている。しかしながら、乳化物(エマルション)は本質的には不安定であり、長期間放置すると、クリーミング、凝集、又は合一といった現象を生じることが知られている。従来の乳液やクリームにおいては、一般的な水溶性増粘剤であるカルボキシビニルポリマー等を配合することにより経時安定性を確保していた。」

第5 引用文献7を主引用文献とする進歩性について

1 引用文献7に記載された発明

上記第4の1に記載したように、引用文献7には、「外用基剤に有効成分として角質親和性の高い抗真菌剤を配合してなる組成物において、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、ハッカ油またはメントールの1種もしくは2種以上を配合したことを特徴とする角質貯留型抗真菌外用組成物。」が記載され(摘記17aの請求項1)、角質貯留型抗真菌外用組成物は、表在性真菌症に対する組成物であり(摘記17c)、具体例として、実施例17には、ゲルクリーム剤(摘記17d)が記載されている。

したがって、引用文献7の実施例17に着目すると、次の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。

「以下の組成からなる、ゲルクリーム剤形の角質貯留型抗真菌外用組成物。
(成分) (配合量)
塩酸テルビナフィン 1.0
クロタミトン 5.0
続きを表示(全11行)
ミリスチン酸イソプロピル 10.0
ラウロマクロゴール 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
4%カルボキシビニルポリマー水溶液 30.0
2%水酸化ナトリウム液 35.0
精製水 12.0
全量 100.0 g 」

2 本願発明と引用発明7との対比

当業界において「クリーム剤」とは、「皮膚に塗布する、水中油型または油中水型に乳化した半固形の製剤」を意味するから(「○第十六改正日本薬局方における製剤総則等の改正に伴う医薬品製造販売承認申請等の取扱いについて(平成23年3月30日)(薬食審査発0330第7号)」、「2.改正の概要」の(6)イ)、引用発明7の「ゲルクリーム剤」は、本願発明の「クリーム剤」に相当する。

引用発明7は、サリチル酸を含まないものであるから、引用発明7の「ゲルクリーム剤形の角質貯留型真菌外用組成物」は、本願発明の「サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤」に相当する。

引用発明7の「塩酸テルビナフィン」は、本願発明の「テルビナフィン塩酸塩」に相当し、引用発明7の「全量100.0g中、塩酸テルビナフィンを1.0g配合」とは、本願発明の「テルビナフィン塩酸塩が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有」に相当する。

引用発明7の「全量100.0g中、クロタミトンを5g配合」とは、本願発明の「クロタミトンが組成物全量当たり1~10wt%含有」に相当する。

引用発明7の「全量100.0g中、4%カルボキシビニルポリマー水溶液を30.0g配合」とは、カルボキシビニルポリマー重量として1.2g含有するものであるから、本願発明の「増粘剤が、カルボキシビニルポリマーであって、組成物全量当たり0.05~5.0wt%含有」に相当する。

本願発明の「pH調整剤」について、本願明細書【0028】には、水酸化ナトリウムが記載されているから、引用発明7の「水酸化ナトリウム」は、本願発明の「pH調整剤」に相当し、引用発明7の「全量100.0g中、2%水酸化ナトリウム液を35.0g配合」とは、水酸化ナトリウム重量として0.7g含有するものであるから、本願発明の「pH調整剤が、組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有」に相当する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明7の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>

「テルビナフィン塩酸塩、クロタミトン、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、
前記テルビナフィン塩酸塩が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有され
前記クロタミトンが組成物全量当たり1~10wt%含有され、
前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマーであって、組成物全量当たり0.05~5.0wt%含有され、
前記pH調整剤が、組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有されている、皮膚外用クリーム剤。」

<相違点7>

本願発明は、「抗ヒスタミン剤」、「イソプロピルメチルフェノール」、「リドカイン」、「抗炎症剤」、「l-メントール」をさらに含むものであるのに対して、引用発明7は、それらを含まない点。

3 判断

以下の検討において、「塩」の記載は、テルビナフィン塩酸塩、塩酸テルビナフィンのように、酸と塩基の語順を変えても同じ成分を意味するものであるから、「テルビナフィン塩酸塩」、「クロルフェニラミンマレイン酸塩」等、塩基を先とする記載に統一する。

(1)相違点7について

白癬(水虫等)をはじめとする表在性真菌症に適用する組成物において、真菌の感染に伴う炎症やかゆみ等の症状を抑制、緩和するために、テルビナフィンやブテナフィン等の抗真菌剤に加えて、抗炎症剤、鎮痒剤、清涼化剤、殺菌剤などの他の有効成分を、必要に応じて配合してもよいことは周知であり、抗炎症剤にはクロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤も含まれ、鎮痒剤にはクロタミトンのほかにリドカイン等の局所麻酔剤やl-メントール等の清涼化剤も含まれることも周知であった(摘記11a~c、摘記12a~b)。

そして、本願優先日当時、白癬等の表在性真菌症に適用するクリーム剤において、抗真菌剤であるテルビナフィン塩酸塩に加えて、炎症やかゆみ等の症状を抑制、緩和するために、ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン剤)、イソプロピルメチルフェノール(殺菌剤)、リドカイン(局所麻酔剤)、グリチルレチン酸(抗炎症剤)、l-メントール(清涼化剤)、クロタミトン(鎮痒剤)等の複数の成分を組み合わせた製品が販売されており(摘記13a~b、摘記14a~b、摘記15a~b)、また、抗真菌剤であるブテナフィン塩酸塩に加えて、クロルフェニラミンマレイン酸塩(抗ヒスタミン剤)、イソプロピルメチルフェノール(殺菌剤)、ジブカイン塩酸塩(局所麻酔剤)、グルチルレチン酸(当審注:グリチルレチン酸と同義。)(抗炎症剤)、l-メントール(清涼化剤)及びクロタミトン(鎮痒剤)を同時に含有する製品も販売されていた(摘記16a)。

そうすると、テルビナフィン塩酸塩とクロタミトンを含む引用発明7において、真菌の感染に伴う炎症やかゆみ等の症状の更なる改善を目的として、抗ヒスタミン剤、イソプロピルメチルフェノール、リドカイン、抗炎症剤及びl-メントールを組み合わせて含有させて、本願発明の皮膚外用クリーム剤とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)本願発明の効果について

本願明細書には、従来、クロタミトンの配合量を、例えば1wt%以上とした場合、皮膚外用クリーム剤の乳化安定性に懸念事項が生じるところ、本願発明は、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤及びクロタミトンとともに、特定の増粘剤を含有させることで、乳化安定性が向上すると共に、患部に塗布しやすい適度な粘性を有する皮膚外用クリーム剤が得られることを見いだしたものであることが記載されており(【0005】~【0008】)、また、本願発明に対応する実施例1等の皮膚外用クリームは、増粘剤であるカルボキシビニルポリマーを0.05~5.0wt%含有させることで、加熱条件下での乳化安定性が向上するという効果を示したことが記載されている(【0031】~【0062】)。

しかしながら、カルボキシビニルポリマーは、増粘剤としてだけでなく、クリーム等の分散状態を安定化する作用を有する乳化安定剤として広く用いられているものであるから(摘記17a、摘記18a、摘記19a、摘記20a、摘記21a)、多くの成分を含む本願発明が、カルボキシビニルポリマーを含むことにより、加熱条件下での乳化安定性が向上するという効果は、当業者が予測可能なものである。

また、引用発明7に相違点7に係る複数の有効成分を含有させることにより、炎症やかゆみ等も改善できるという効果については、引用文献11~16に記載された事項から、当業者が予測し得る程度のことである。

したがって、本願発明に、引用発明7、及び、引用文献11~21に記載された事項から予想される効果を超える、格別顕著な効果があるとはいえない。

4 小括

以上によれば、本願発明は、引用文献7に記載された発明、及び、引用文献11~21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 引用文献13を主引用文献とする進歩性について

1 引用文献13に記載された発明

上記第4の2に記載されているように、引用文献13には、みずむし・たむし治療薬であるオロントール(R)EXクリームが記載されており、1g中、テルビナフィン塩酸塩10mg、リドカイン20mg、クロタミトン50mg、イソプロピルメチルフェノール3mg、グリチルレチン酸5mg、l-メントール20mg及びカルボキシビニルポリマー等の添加物を含むこと、患部に塗布して用いること(摘記13a~摘記13c)が記載されている。

そうすると、引用文献13には、次の発明(以下「引用発明13」という。)が記載されていると認められる。

「以下の成分からなる、みずむし・たむし治療薬である患部に塗布するクリーム。
成分 (1g中の分量)
テルビナフィン塩酸塩 10mg
リドカイン 20mg
クロタミトン 50mg
イソプロピルメチルフェノール 3mg
グリチルレチン酸 5mg
l-メントール 20mg
添加物(モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、グリセリン、カルボキシビニルポリマー、水酸化ナトリウム、塩酸)」

2 対比

引用発明13の「みずむし・たむし治療薬である患部に塗布するクリーム」は、皮膚に外用されるものであり、サリチル酸を含まないことは明らかであるから、本願発明の「サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤」に相当する。

本願発明の「抗炎症剤」、「pH調整剤」について、本願明細書【0017】、【0028】には、グリチルレチン酸、水酸化ナトリウムが記載されているから、引用発明13の「グリチルレチン酸」、「水酸化ナトリウム」は、それぞれ、本願発明の「抗炎症剤」、「pH調整剤」に相当し、引用発明13の「塩酸」もpH調整作用を有するものであるから、本願発明の「pH調整剤」に相当する。

引用発明13の「1g中、テルビナフィン塩酸塩を10mg含有」とは、本願発明の「テルビナフィン塩酸塩が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有され」に相当する。

引用発明13の「1g中、クロタミトンを50mg含有」とは、本願発明の「クロタミトンが組成物全量当たり1~10wt%含有」に相当する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明13の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>

「テルビナフィン塩酸塩、クロタミトン、イソプロピルメチルフェノール、リドカイン、抗炎症剤、l-メントール、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、
前記クロタミトンが組成物全量当たり1~15wt%含有され、
前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマーである、皮膚外用クリーム剤。」

<相違点13-1>

本願発明は、「抗ヒスタミン剤」をさらに含むものであるのに対して、引用発明13は、それを含まない点。

<相違点13-2>

本願発明は、増粘剤が「組成物全量当たり0.05~5.0wt%含有され」、pH調整剤が「組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有されている」ことが特定されているのに対して、引用発明13は、そのような特定がない点。

3 判断

(1)相違点13-1について

白癬等の表在性真菌症に適用するクリーム剤において、抗真菌剤であるテルビナフィンやブテナフィンに、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤を配合すること(摘記11a~c、摘記12a~b、摘記14a~b、摘記16a)は周知であり、抗ヒスタミン剤がかゆみを抑制するために配合されること(摘記11b、摘記12a、摘記14b)も広く知られたことであるといえる。

そうすると、引用発明13において、真菌の感染に伴うかゆみの更なる改善を目的として、抗ヒスタミン剤を含有させることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点13-2について

上記第4の1に記載したように、引用文献7には、塩酸テルビナフィン、クロタミトン、カルボキシビニルポリマー、水酸化ナトリウムを含む、ゲルクリーム剤形の角質貯留型抗真菌外用組成物であって、全量100.0g中、4%カルボキシビニルポリマー水溶液を30.0g、2%水酸化ナトリウム液を35.0g含有する角質貯留型抗真菌外用組成物が記載され(摘記7d)、当該組成物におけるカルボキシビニルポリマーは1.2wt%、pH調整剤である水酸化ナトリウムは0.7wt%である。

そして、引用文献7に記載の上記組成物と引用発明13は、いずれも、抗真菌剤を含有する皮膚外用クリーム剤に属するものであるから、引用発明13の皮膚外用クリーム剤において、カルボキシビニルポリマー(増粘剤)、pH調整剤の含有量を引用文献7の記載を参考に、カルボキシビニルポリマーの含有量を「0.05~5.0wt%」、pH調整剤の含有量を「0.01~5.0wt%」の範囲内とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)本願発明の効果について

第5の3(2)で説示したものと同様の理由により、本願発明に、引用発明13、及び、引用文献7、11~12、14~21に記載された事項から予想される効果を超える、格別顕著な効果があるとはいえない。

4 小括

以上によれば、本願発明は、引用文献13に記載された発明、及び、引用文献7、11~12、14~21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 請求人の主張について

1 請求人は、令和8年1月5日提出の意見書において、以下(1)~(5)の点を挙げて、本願発明は当業者が容易に想到し得るものではない旨を主張をしているので、順次検討する。

(1)本願発明は、抗真菌剤として知られるテルビナフィン塩酸塩を主薬とし、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤を加えることで、「真菌感染に伴うかゆみ・疼痛等の不快症状を、抗真菌治療と同時に抑制する」という複合症状対応型の課題を解決可能としているが、引用文献7には、このような課題設定は存在しない。また、引用文献7の記載から本願発明の処方設計に到達する動機付けはなく、本願発明は単なる成分の寄せ集めではなく、治療効果(抗真菌)及び患者QOL(かゆみ・疼痛の即時緩和)を同時に成立させるという新たな技術的視点の導入である(意見書の第3の1.(2)イ(ア)~(ウ))。

上記(1)の主張について検討する。

上記第5の3(1)で説示したように、真菌の感染に伴う炎症やかゆみ等の症状を抑制するために、テルビナフィンやブテナフィン等の抗真菌剤に加えて、抗炎症剤、鎮痒剤、清涼化剤、殺菌剤などの他の有効成分を、必要に応じて配合してもよいことは周知であり、本願優先日当時、白癬等の表在性真菌症に適用するクリーム剤において、抗真菌剤に加えて、ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗ヒスタミン剤)とリドカイン(局所麻酔剤)とを組み合わせた製品も販売されていた(摘記14a~b)のであるから、請求人の主張する「複合症状対応型の課題」は周知であり、その課題に対応して、抗ヒスタミン剤と局所麻酔剤など、どの成分を組み合わせるかは、当業者が必要に応じて適宜選択可能なものであったといえる。

なお、本願明細書【0002】において、背景技術として、抗真菌剤を含有した皮膚外用クリーム剤は、真菌感染に起因する様々な疾患や症状を治療、予防、改善するために広く用いられていること、テルビナフィン塩酸塩を主薬とする皮膚外用クリーム剤は、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤などの有効成分とともに使用されており、皮膚外用クリーム剤は、従来から有効成分の数を増加することが求められていることが記載されていることも、請求人の主張する「複合症状対応型の課題」が周知であったことと整合する。

そうすると、上記第5の3(1)に説示したように、引用発明7において、複合症状に対応できるように、抗ヒスタミン剤及びリドカイン(局所麻酔剤)等の成分を含有させて、相違点7に係る本願発明を備えるものとする動機付けは十分あったといえる。

(2)引用文献13は、「製品表示資料」であり、処方設計思想や技術課題を記載する特許文献ではなく、成分や含有量の記載がされているのみであり、本願発明の技術的思想や掻痒をヒスタミン経路の遮断によって制御するという処方設計思想は記載されていないから、引用文献13を主引例として本願発明の進歩性を否定することは、発明の認定方法として妥当ではない(意見書第3の2.(1)~(3))。

上記(2)の主張について検討する。

上記請求人の主張は、処方設計思想や技術課題を記載する特許文献ではない引用文献13から、引用発明を認定することは不適切であることを主張するものと解される。

しかしながら、引用発明を認定する文献は、文書、図面その他これに類する情報伝達媒体であればよく、特許文献でなければならないとの前提はない。そして、上記第6の1に説示したように、みずむし・たむし治療薬であるオロントール(R)EXクリームについて、有効成分の作用や分量及び添加物の種類について記載された引用文献13から、引用発明13が認定できることは明らかであり、引用文献13に請求人の主張する処方設計思想等が記載されていないことが、本願発明と対比する引用発明を引用文献13から認定することが誤りであるとする根拠とはならず、引用発明の認定方法が妥当でないとの請求人の主張は採用できない。

(3)引用文献13は、抗ヒスタミン剤を含有しない処方を「完成形」として市場に供しているにもかかわらず、「薬効付加を目的として抗ヒスタミン剤を含有させることは容易」とするのは、本願発明を知った後に「不足している薬効」を事後的に設定し、それを引用発明に足し戻すという、典型的な後知恵論理である(意見書の第3の2.(4)ア(2))。

上記(3)の主張について検討する。

上市された製品をベースにさらなる改良を目指すことは、市場における競争に向けた製品開発として当業者が当然行うものであるところ、上記第6の3(1)で説示したように、引用発明13においても、真菌の感染に伴うかゆみの更なる改善を目的として、抗ヒスタミン剤を含むものとする動機付けは十分にあったといえる。

(4)引用文献7は、角質貯留型抗真菌外用組成物に関する発明であり、多成分を併用して症状緩和を同時に図る本願発明とは技術課題を異にするから、引用文献7に記載されたカルボキシビニルポリマー及びpH調整剤の含有量を、引用文献13の皮膚外用クリーム剤に適用することは当業者にとって容易ではない(意見書の第3の2.(4)イ)。

上記(4)の主張について検討する。

引用発明13と引用文献7(摘記7d)に記載の角質貯留型抗真菌外用組成物は、その有効成分としてテルビナフィン塩酸塩、クロタミトンを含む外用組成物である点、及び、クリーム剤形の皮膚外用組成物であり、賦形剤としてカルボキシビニルポリマー及び水酸化ナトリウムを含む点において共通し、両者は技術分野も共通するものである。

そうすると、引用発明13の皮膚外用クリーム剤において、カルボキシビニルポリマー及び水酸化ナトリウムの含有量を、同様のクリーム剤形の組成物である引用文献7の記載を参考に設定することは、当業者が適宜なし得たことであり、格別の困難性は認められない。

(5)審判官は、「格別顕著な効果」を基準に進歩性を否定しているが、本願発明の効果は、抗真菌治療と掻痒・疼痛緩和を同一製剤で同時に実現するという質的効果にあり、これは、引用文献13及び引用文献7~21のいずれにも示されておらず、当業者が予測可能な範囲を超えるものである(意見書の第3の2.(4)ウ)。

上記(5)の主張について検討する。

引用発明13は、抗真菌剤であるテルビナフィン塩酸塩に加え、かゆみを鎮めるリドカイン、クロタミトン、l-メントール、雑菌の繁殖を抑えるイソプロピルメチルフェノール、炎症を抑えるグリチルレチン酸を含むものであるから(摘記13a、摘記13c)、請求人の主張する「抗真菌治療と掻痒・疼痛緩和を同一製剤で同時に実現する」との効果を有するものであるし、抗ヒスタミン剤がかゆみを抑制することも周知であるから(摘記11b、摘記12a、摘記14b)、引用発明13に抗ヒスタミン剤を含むものとした場合の効果についても、当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、請求人が主張する抗真菌治療と掻痒・疼痛緩和を同一製剤で同時に実現するという本願発明の質的効果についても、当業者が予測可能なものである。

2 よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-004310

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