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特許拒絶査定不服審判

2024-008788

糖尿病を治療するための方法および試薬

審判番号
2024-008788
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-500387外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年05月27日
審決日
2026年04月13日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-500387「糖尿病を治療するための方法および試薬」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月23日国際公開、WO2020/016221、令和 3年11月11日国内公表、特表2021-530476〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年7月19日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和5年 5月30日付け 拒絶理由の通知 同年11月 6日 意見書及び手続補正書の提出 令和6年 1月23日付け 拒絶査定 同年 5月27日 審判請求書及び手続補正書の提出 同年 7月10日 手続補正書(方式)の提出 第2 令和6年5月27日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年5月27日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正 (1) 本件補正前(令和5年11月6日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 対象の糖尿病を治療またはその発症を制限するために用いられる医薬組成物であって、糖尿病を治療またはその発症を制限するために有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞を含み、前記インスリン産生細胞が、対象の眼に移植される、医薬組成物。 【請求項2】 前記インスリン産生細胞が、前記Cavβ3遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】 前記インスリン産生細胞が、apoCIIIの発現を減少させるように操作される、請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】 前記インスリン産生細胞が、前記apoCIII遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項3に記載の医薬組成物。 【請求項5】 前記インスリン産生細胞が、CCL2、CCL3、CCL5、CXCL1、CXCL9、CXCL10、および/もしくはCXCL11を含むがこれらに限定されない1つ以上のケモカイン、ならびに/またはIL-6および/もしくはIL-8を含むがこれらに限定されない1つ以上のサイトカインの発現を減少させるように操作される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項6】 前記インスリン産生細胞が、前記1つ以上のケモカイン遺伝子および/または前記1つ以上のサイトカイン遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項5に記載の医薬組成物。 【請求項7】 前記インスリン産生細胞が、1つ以上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIタンパク質の発現を減少させるように操作される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項8】 前記インスリン産生細胞が、前記1つ以上のMHCクラスIタンパク質の各コピーを破壊するように操作される、請求項7に記載の医薬組成物。 【請求項9】 前記インスリン産生細胞が、GLP1受容体、インスリン受容体、および/またはサイトカインIL1Bを含むがこれらに限定されない、インスリン産生細胞に有益な1つ以上のタンパク質の発現を増加させるように操作される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項10】 前記インスリン産生細胞が、単離されたヒト膵島もしくは単離されたヒト膵臓β細胞などの単離された膵島または単離された膵臓β細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項11】 眼への前記移植が、前眼房への移植を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項12】 前記前眼房への前記移植が角膜を介した注射を含む、請求項11に記載の医薬組成物。 【請求項13】 ヒト対象などの前記対象が糖尿病を有し、前記移植が、糖尿病を有する対象の眼に糖尿病を治療するために有効な量を移植することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項14】 前記対象が2型糖尿病を有する、請求項14に記載の医薬組成物。 【請求項15】 前記対象が1型糖尿病を有する、請求項14に記載の医薬組成物。 【請求項16】 ヒト対象などの前記対象は糖尿病のリスクがあり、前記移植が、前記糖尿病のリスクのある対象の眼に糖尿病の発症を制限するために有効な量を移植することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項17】 前記対象は2型糖尿病のリスクがある、請求項16に記載の医薬組成物。 【請求項18】 前記対象は1型糖尿病のリスクがある、請求項16に記載の医薬組成物。 【請求項19】 ヒト対象などの前記対象が、対照と比較してCavβ3を過剰発現する、請求項1~18のいずれか一項に記載医薬組成物。」 (2) 本件補正後(令和6年5月27日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載 上記(1)の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 対象の糖尿病を治療するために用いられる医薬組成物であって、糖尿病を治療するために有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞を含み、前記インスリン産生細胞が、対象の眼に移植され、前記治療が、前記対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しないことを含む、医薬組成物。 【請求項2】 前記インスリン産生細胞が、前記Cavβ3遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】 前記インスリン産生細胞が、apoCIIIの発現を減少させるように操作される、請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】 前記インスリン産生細胞が、前記apoCIII遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項3に記載の医薬組成物。 【請求項5】 前記インスリン産生細胞が、CCL2、CCL3、CCL5、CXCL1、CXCL9、CXCL10、および/もしくはCXCL11を含むがこれらに限定されない1つ以上のケモカイン、ならびに/またはIL-6および/もしくはIL-8を含むがこれらに限定されない1つ以上のサイトカインの発現を減少させるように操作される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項6】 前記インスリン産生細胞が、前記1つ以上のケモカイン遺伝子および/または前記1つ以上のサイトカイン遺伝子の各コピーを破壊するように操作される、請求項5に記載の医薬組成物。 【請求項7】 前記インスリン産生細胞が、1つ以上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIタンパク質の発現を減少させるように操作される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項8】 前記インスリン産生細胞が、前記1つ以上のMHCクラスIタンパク質の各コピーを破壊するように操作される、請求項7に記載の医薬組成物。 【請求項9】 前記インスリン産生細胞が、GLP1受容体、インスリン受容体、および/またはサイトカインIL1Bを含むがこれらに限定されない、インスリン産生細胞に有益な1つ以上のタンパク質の発現を増加させるように操作される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項10】 前記インスリン産生細胞が、単離されたヒト膵島もしくは単離されたヒト膵臓β細胞などの単離された膵島または単離された膵臓β細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項11】 眼への前記移植が、前眼房への移植を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項12】 前記前眼房への前記移植が角膜を介した注射を含む、請求項11に記載の医薬組成物。 【請求項13】 前記対象が2型糖尿病を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項14】 前記対象が1型糖尿病を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。 【請求項15】 ヒト対象などの前記対象が、対照と比較してCavβ3を過剰発現する、請求項1~14のいずれか一項に記載医薬組成物。」 2 本件補正による補正事項 本件補正は、本件補正前の請求項1において、「対象の糖尿病を治療またはその発症を制限するために用いられる医薬組成物」及び「糖尿病を治療またはその発症を制限するために有効な量」との記載についてそれぞれ「またはその発症を制限」を削除するという補正事項(以下「補正事項1」という。)、さらに、「前記治療が、前記対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しないことを含む、」という発明特定事項を追加する補正事項(以下「補正事項2」という。)を含むものである。 3 補正の目的 本件補正のうち、上記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載されていた、「対象の糖尿病を治療」「するために用いられる医薬組成物」及び「対象の糖尿病」の「発症を制限するために用いられる医薬組成物」の選択肢のうち、後者を削除することによって、前者の用途に用いられる「医薬組成物」のみに限定するとともに、「糖尿病を治療」「するために有効な量」及び「糖尿病」の「発症を制限するために有効な量」の選択肢のうち、後者を削除することによって、前者の用途に必要な「有効な量」のみに限定するものである。 したがって、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明1」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかという要件(以下「独立特許要件」という。)について、以下、検討する。 4 独立特許要件 (1) 本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明1」という。」)は、前記1(2)に記載した、以下のとおりのものである。 なお、下線は補正された箇所を示す。 「【請求項1】 対象の糖尿病を治療するために用いられる医薬組成物であって、糖尿病を治療するために有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞を含み、前記インスリン産生細胞が、対象の眼に移植され、前記治療が、前記対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しないことを含む、医薬組成物。」 (2) 引用文献及び参考文献に記載された事項並びに引用文献に記載された発明 ア 引用文献1(Molecular Biology of the Cell, 2018年1月9日, Vol. 28, No. 26, Abstract Number: P2696)に記載された事項 原査定で引用された、本願優先日前に発行された引用文献1は、「Ca2+チャネルβ3サブユニットを阻害すると糖尿病が改善する」と題する学会発表講演要旨であって、以下の事項が記載されている。 なお、引用文献1は英文のため、当審合議体による訳で記載する。また、下線は、当審合議体で付したものである。以下、他の文献についても同様である。 摘記1a(全文) 「電位依存性Ca2+チャネル(Cav)は、細胞質Ca2+([Ca2+i)(当審合議体注:「([Ca2+]i)」の脱字と認める。)レベルの変化に重要な役割を果たし、膵島におけるインスリン分泌を促す。Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)はCa2+チャネルの調節サブユニットであり、Ca2+チャネル電流を変化させることが知られている。以前の報告では、Cavβ3欠損(Cavβ3-/-)マウスの膵島では、野生型マウスと比較して、[Ca2+]i振動周波数の上昇、インスリン分泌の改善、そして耐糖能の向上が見られた。しかし、糖尿病におけるCa2+動態とインスリン分泌におけるCavβ3の機能に関する情報は不足している。そこで我々は、糖尿病モデルにおけるCavβ3の機能に注目した。本研究では、ob/obマウスモデル及び高脂肪食を与えられたマウス由来の膵島において、[Ca2+]iダイナミクスの振幅と振動が減少し、グルコース刺激に対するインスリン分泌が障害されることを観察した。また、膵島におけるCavβ3の過剰発現は、Ca2+ダイナミクスを変化させ、インスリン分泌を障害する。我々は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてob/obマウスの膵島におけるCavβ3の減少を実装し、その後、[Ca2+]iダイナミクスとインスリン分泌の回復を発見した。糖尿病の発症において、Cavβ3の機能を明らかにするために、Cavβ3ノックアウトマウスに糖尿病を誘発した。Cavβ3欠損マウスに高脂肪食を与えると、高脂肪食を与えられた正常なマウスと比較して、グルコース刺激による[Ca2+]iダイナミクスとインスリン分泌に対する耐性が高まる。生体内研究では、Cavβ3欠損マウスの膵島を糖尿病マウスに移植し、耐糖能の改善を確認した。このことから、我々はCavβ3が糖尿病状態における膵島機能の調節に重要であることを提案する。本研究は、電位依存性カルシウムチャネル Cavβ3の糖尿病治療標的としての潜在的な価値を明らかにするであろう。」 イ 引用文献2(PNAS, 2012, Vol. 109, No. 52, pp. 21456-21461)に記載された事項 原査定で引用された、本願優先日前に発行された引用文献2は、「自律神経支配が膵島機能に及ぼす影響を実証する非侵襲的インビボモデル」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。 摘記2a(要約) 「自律神経系は、膵臓ランゲルハンス島における内分泌細胞の活動を調節することで血糖恒常性を調節すると考えられている。しかし、自律神経入力が膵島細胞の生理機能に直接及ぼす影響を膵臓で研究できないため、膵島神経支配の役割は未だ解明されていない。本研究では、インビボモデルを用いて、血糖恒常性における膵島神経入力の役割を研究した。膵島を前房に移植したところ、移植された膵島は虹彩の豊富な副交感神経と交感神経によって密に神経支配されることが分かった。副交感神経支配は、コリン作動性軸索にGFPを発現するトランスジェニックマウスを用いて、生体内で画像化した。膵島神経入力を選択的に操作するために、周囲の照度を上昇させ、瞳孔対光反射を介して膵島移植への副交感神経入力を増加させた。これにより空腹時血糖値が低下し、耐糖能が改善した。これらの効果は、ムスカリン拮抗薬アトロピンを眼に局所塗布することで阻害することができ、局所的なコリン作動性神経支配が生体内で膵島機能に直接影響を及ぼすことを示唆している。このアプローチを用いることで、副交感神経支配はC57BL/6マウスでは膵島機能に影響を与えるものの、129X1マウスでは影響を与えないことが分かった。これは神経支配密度の違いを反映しており、血糖恒常性における主要な系統間差異を説明できる可能性がある。本研究は、膵島を支配する自律神経軸索が血糖恒常性を調節することを直接的に実証している。」 摘記2b(21456頁右欄20~36行) 「 我々の戦略は、膵島細胞の機能をモニタリングしながら、自律神経入力を局所的かつ非侵襲的に操作できる部位に膵島を移植することであった。機能イメージングのために膵島を前房に移植する我々の実験プラットフォーム(21、22)は、膵島の神経支配の役割の研究にも使用できるという仮説を立てた。移植後、虹彩からのノルアドレナリン及びコリン作動性神経軸索は、膵臓の膵島のパターンを反映したパターンで眼内膵島移植片を神経支配した。膵島への自律神経入力は、周囲の照度を変化させることによって瞳孔反射を介して特異的に活性化することができた(23、24)。神経入力に対する膵島移植片の反応は、点眼薬による局所薬剤投与によって操作することができた。我々は、神経入力がC57BL/6マウスの膵島機能に重要であるが、129X1マウスではそれほど重要ではないことを明らかにした。我々の研究結果は、眼内膵島移植への自律神経入力を非侵襲的かつ局所的に調節することで、膵島神経支配が血糖恒常性に及ぼす影響を研究できることを示している。」 摘記2c(21457頁左欄2行~右欄9行) 「眼内膵島移植片は神経支配を受ける。C57BL/6マウス由来の膵島を、既報(21、22)のとおりにC57BL/6マウスの前眼房に移植した。膵島は虹彩に生着し、細胞組成と形状を維持した(22)。移植後90日における眼内膵島同種移植片の免疫組織化学染色では、それぞれチロシン水酸化酵素(TH)及び小胞アセチルコリントランスポーター(vAChT)に免疫反応を示す交感神経及び副交感神経軸索による神経支配が示された(図1A)。交感神経及び副交感神経の神経支配密度は、膵臓の膵島で観察されるものと同様であった(図1B)。重要なのは、眼内膵島移植片中のβ細胞は、生来の膵臓(20)と同様に、副交感神経軸索によって神経支配されていたことである(図1C)。 移植後3日目という早い時期に、虹彩のTH及びvAChT免疫反応性軸索の投射が、膵島移植片の近くに少数確認された(図S1)。交感神経再神経支配の経過は、血行再建の経過と平行していた(図S1)。15日目には、軸索が膵島移植片内に確認され、そのほとんどは血管と密接に関連していた(図S1)。15日目から30日目の間には、血管に沿った軸索の数が増加した(図S1)。30日目以降には、軸索が膵島実質に確認され、徐々に密度と複雑さが増加し、約90日目にはプラトーに達した。副交感神経の軸索は同様のパターンで膵島移植片を支配し、最初は血管に沿って存在し、後に実質にも存在したが、その速度は遅く、30日目までは膵島移植片中に軸索はほとんど見られなかった(図S1)。」 摘記2d(図1) 「 [図:0001438684000001.jpg] 図1. マウス眼の前房に移植されたマウス膵ランゲルハンス島は再神経支配を受ける。(A)移植後90日における眼内ランゲルハンス島移植片の共焦点画像Zスタックの最大投影図。交感神経及び副交感神経の軸索がそれぞれTH(緑)及びvAChT(赤)に免疫反応性を示す。矢印と矢頭はそれぞれ交感神経及び副交感神経の軸索終末野を指している。移植されたランゲルハンス島は輪郭線で示されている。(B)膵切片の共焦点画像Zスタックの最大投影図。マウスのランゲルハンス島におけるTH及びvAChT免疫反応性軸索の分布を示す。(C)インスリン染色されたβ細胞(赤)に近接したvAChT軸索静脈瘤(緑)の共焦点画像の高倍率Zスタック。共焦点画像のZスタックの最大投影を示す(Z深度、38μm;Zステップ、0.7μm)。(スケールバー:A、50μm、B、20μm、C、5μm)。」 摘記2e(21457頁右欄10~23行) 「副交感神経線維のインビボ評価。組織学的研究は神経支配のスナップショットを提供することができるが、病態生理学的状態における再神経支配と構造適応の動的プロセスを理解するためには、インビボ実験が不可欠である。インビボでの膵島神経支配のイメージングの実現可能性を評価するために、EGFP発現を駆動する内因性コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)転写調節エレメント(コリン作動性遺伝子座)を有するトランスジェニックマウスの眼に膵島を移植した(25)。移植後、インビボイメージングにより、ChAT-GFPマウスの前房において膵島と関連するGFP標識神経島複合体が示された(図2A)。これらのコリン作動性ニューロンは、膵島移植片の表面に沿って突起を伸ばしていた。インサイチュの膵島でも同様の神経支配パターンが観察された(図2B)(20)。」 摘記2f(図2) 「 [図:0001438684000002.jpg] 図2. 膵島神経支配のインビボイメージング。(A)コリン作動性ニューロンにGFPを発現させたマウスに移植後7ヶ月の眼内膵島移植片のインビボイメージング(材料と方法)。コリン作動性ニューロン(緑)が膵島移植片の周囲に突起を伸ばしているのが観察される(後方散乱画像は赤で表示)。(B)膵臓切片中の膵島(赤)とGFP標識ニューロン(緑)が結合しているのが観察される。共焦点画像のZスタックの最大投影を示す(Z深度、Aにおいて104μm、Bにおいて102μm;Zステップ、2μm)。(スケールバー:50μm)」 摘記2g(21457頁右欄24行~21458頁左欄12行) 「膵島への副交感神経入力の非侵襲的操作。我々は以前、膵島を眼の前房に移植すると、糖尿病マウスの血糖値が正常に戻り、その後、マウスはブドウ糖負荷に適切に反応することを示した(22)。これらのマウスでは、膵島移植がブドウ糖恒常性の制御を担うため、血糖値は膵島機能の指標として利用できる。眼の前房に神経支配された組織移植の顕著な特徴は、瞳孔対光反射を介して光によって自律神経入力を調節できることである(23、24)。光刺激は虹彩へのコリン作動性入力を増加させて瞳孔を収縮させる一方、暗闇ではノルアドレナリン作動性軸索が活性化されて瞳孔を散大させる(26)。眼内膵島移植を受けたマウスは、腎被膜下に同量の膵島を移植した対照マウスと比較して、摂食時(非絶食時)の血糖値が一貫して低いことが分かった(図3A)。インスリン及びグルカゴンの血漿濃度は、眼内移植を受けたマウスで高くなった(図3B及び図S2)。我々は、眼内膵島移植を受けたマウスにおける摂食時血糖値の低下とホルモン分泌の増加は、外光条件下での副交感神経入力の増強に起因するという仮説を立てた。この仮説を検証するために、膵島移植を受けたマウスを異なる光条件に曝露したところ、摂食後の眼内膵島移植を受けたマウスを外光(~500lx)から暗闇(~1lx)に移したところ、14匹中11匹でインスリン分泌が減少し(図3C)、それに応じて血糖値が上昇することが分かった(図3D)。血糖値は、腎被膜下に膵島を移植したマウスと同程度に達した(図3A及びD)。これは、眼内膵島移植を受けたマウスにおいて、光曝露が慢性的に血糖値を低下させたことを示している。腎被膜下に移植されたマウスでは、光誘発性血糖値の変化が見られなかったことから、この効果は眼内膵島に特異的であることが確認される。眼内移植を受けたマウスを再び周囲光下に置くと、血糖値は再び低下した(図3D)。」 摘記2h(図3) 「 [図:0001438684000003.jpg] 図3. 瞳孔対光反射を介した虹彩への神経入力の調節は、眼内膵島移植マウスの血糖値に影響を与える。(A)ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させ、前眼房又は腎被膜下に膵島を移植したマウスの摂食後血糖値。値は移植後2か月以上経過した後に得られた(1群当たりマウスn>10匹;*P<0.05、スチューデントt検定)。(B)Aに示すマウスの血漿インスリン濃度(*P<0.05、スチューデントt検定)。(C)眼内膵島移植マウスの血漿インスリン濃度を、明暗条件下で測定した。(D)眼内膵島移植を受けたマウス(眼;黒色記号)又は腎被膜下のマウス(腎臓;赤色記号)の血糖値。暗所(灰色で示す期間)に置いた後、周囲光に戻した後、周囲光下で測定した。」 摘記2i(21458頁左欄13~29行) 「 光が膵島機能に及ぼす影響について、腹腔内ブドウ糖負荷試験(GTT)を実施することでさらに検討した。同じマウスにおいて、暗闇で試験を実施した場合、周囲光と比較してブドウ糖の変動が有意に大きくなったことから、眼内膵島移植を受けたマウスでは、照度の低下によって耐糖能が低下したことが示唆された(図4A)。ムスカリン拮抗薬アトロピンを周囲光条件下で移植眼に投与すると、耐糖能は暗闇で得られたレベルと同程度まで有意に低下した(図4C)。これらの結果は、照度変化の影響は膵島へのコリン作動性入力を介していることを示唆している。この考えに沿って、ムスカリン作動薬ピロカルピンの局所投与は耐糖能を改善した(図4D)。腎被膜下に膵島移植片を有するマウス(図4B)及び非移植マウス(図S3)において、照明又はコリン作動薬の局所塗布は耐糖能に影響を与えなかった。これは、眼の局所的操作が全身的な影響を及ぼさないことを示している。」 摘記2j(図4) 「 [図:0001438684000004.jpg] 図4. 眼内膵島移植への神経入力の非侵襲的操作は膵島機能を調節する。(A及びB)眼内移植(A)又は腎被膜下移植(B)マウスにおいて、暗所(黒塗り)又は周囲光(白抜き)で腹腔内GTT中のグルコース変動。値は移植後2か月以上経過してから得られた(Aにおいてn=8匹、Bにおいてn=3匹)。グルコース変動の差はAでは有意であった(反復測定分散分析、F=15.4、P<0.001、続いてTukey多重比較検定、P<0.05)が、Bでは有意ではなかった。(C)周囲光(黒塗り)又はムスカリン受容体拮抗薬アトロピンの局所投与後の周囲光(赤塗り)で腹腔内GTT中のグルコース変動。同一マウス群の縦断的解析結果をAとCに示す(暗所での血糖変動は薄い灰色の記号で示す)。血糖変動の差はAで有意であった(反復測定分散分析、F=15.4、P<0.001、続いてTukey多重比較検定、P<0.05)。(D)ムスカリン作動薬ピロカルピンの局所投与は、腹腔内GTT中の血糖変動を減少させる(赤色の記号)。対照マウス(黒色の記号)の眼にはPBS溶液を塗布した。ピロカルピンは血糖変動を有意に減少させた(n=6匹のマウス、対応のあるスチューデントt検定、P<0.05)。」 摘記2k(21458頁左欄下から3行~21459頁左欄2行) 「副交感神経入力の非侵襲的操作により、異なるマウス系統における神経支配の役割の大きな違いが明らかになった。インスリンシグナル伝達と血糖恒常性は、マウスモデルの遺伝的背景に強く依存する(27、28)。特に、グルコース刺激によるインスリン分泌の第一段階における血糖閾値は、129X1マウスの方がC57BL/6マウスよりも高い(27)。我々は、C57BL/6マウスの膵島におけるvAChT免疫反応性軸索の神経支配密度が129X1マウスの膵島よりも高いことを明らかにした(図5A、C、E)。したがって、副交感神経支配とコリン作動性入力の違いが、グルコース感受性の変化に寄与している可能性がある。この仮説を検証するため、C57BL/6マウス又は129X1マウスから単離した膵島を、無胸腺Nude-Foxn1nu(ヌード)マウスの眼の前房に移植した。移植マウスの腹腔内GTT(暗光条件)中のインスリンレベル及び血糖変動は、ドナーマウスと同等であった(図5F及びH、図S4)。C57BL/6マウス及びC57BL/6マウスの膵島を移植したヌードマウスは、129X1マウス及び129X1マウスの膵島を移植したヌードマウスよりも大きな血糖変動を示した(図5G及びI、図S4)。これらのデータは、インスリンレベル及び血糖変動の差異が移植された膵島によって伝達されたことを示している。眼内移植片におけるvAChT免疫反応性軸索の神経支配密度も、ドナーマウスの膵臓で観察された差異を反映していた(図5)。129X1マウスの膵島移植片では軸索はほとんど見られなかった(図5B、D、E)。C57BL/6膵島を移植したマウスでは、照度上昇に伴いグルコース移動が減少したが、129X1膵島を移植したマウスでは減少しなかった(図5G、I)。C57BL/6膵島と129X1膵島は、インビトロで11mMグルコースに対して同様に反応することから(27)、副交感神経入力の欠如が129X1マウスのβ細胞のグルコースに対する適切な反応能力を低下させている可能性が高い。」 摘記2l(図5) 「 [図:0001438684000005.jpg] 図5. 眼内膵島移植への神経入力操作により、C57BL/6マウス及び129X1マウスの膵島における神経支配の機能的差異が明らかになる。(A~D)C57BL/6マウス(A)及び129X1マウス(C)の膵臓切片の共焦点画像(Z深度、40μm;ステップサイズ、0.7μm)のZスタックは、副交感神経膵島神経支配(vAChT;緑)の密度の違いを示している。vAChT神経支配密度の差は、ヌードマウスの眼への移植後も、C57BL/6マウス(B)及び129X1マウス(D)の完全に移植され機能する膵島において維持されている(*P<0.05、スチューデントt検定)。(スケールバー:20μm)(E)vAChT免疫染色の定量化により、両マウス系統における天然膵島及び眼内膵島移植の副交感神経支配密度が示された。(F及びH)C57BL/6マウス(F)及び129X1マウス(H)、並びにC57BL/6マウス(F)又は129X1マウス(H)からの眼内膵島移植を受けたヌードマウス(Tx)におけるインスリン血漿濃度(Con)。(G及びI)C57BL/6マウス(G)又は129X1膵島移植を受けたヌードマウス(I)における腹腔内GTT中のグルコース変動。周囲光(赤)又は暗闇(黒)下で実施した。」 摘記2m(21459頁左欄4行~右欄7行) 「膵島機能における自律神経支配の役割を調べるための現在の方法は、煩雑で侵襲的である。本研究では、自律神経が膵島の生理機能と糖代謝に直接及ぼす影響をインビボで研究できる手法を導入した。このモデルでは、同系の膵島を前眼房に移植する。前眼房は、局所の神経流出性軸索を非侵襲的にモニタリング及び操作できるため、自律神経支配の影響を研究するのに最適な部位である。マウスは、ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させ、膵島を移植してから3か月後に検査を受ける。このとき、膵島移植片はグルコースの恒常性を回復し、完全に神経支配を受けている。我々は、(i)生体内で神経支配を可視化し、(ii)膵島への自律神経入力を非侵襲的に操作し、(iii)局所薬剤塗布による薬理学的介入を行い、(iv)血糖値と血漿ホルモン濃度の変化を同時に記録することができた。ここで示したように、膵島移植片への神経入力を選択的に活性化することは、膵島細胞機能の非侵襲的イメージングと組み合わせることができる(21、22)。我々のモデルは実装と操作が容易であり、糖尿病中に生じる病態生理学的変化の研究に有用である。さらに、他の組織の研究にも容易に拡張できる。」 摘記2n(21460頁左欄3~25行) 「 ヒト膵島の神経支配はマウス膵島のそれとは量的にも質的にも異なること(20)から、これらの研究はヒト膵島細胞の機能における自律神経支配の役割の調査にも応用できる可能性がある。交感神経軸索はヒト膵島血管系の平滑筋細胞を優先的に支配する(20)。そして、この神経支配パターンは眼への移植後も再現される。これは、自律神経入力が血管径を変化させて局所的に血流を調節し、ひいては循環系への膵島ホルモン分泌を間接的に変化させていることを示唆している。眼内ヒト膵島移植では血流をリアルタイムでモニタリングできるため、眼における交感神経軸索の活性化に対する膵島の血管灌流の変化を測定できる。これらの研究は、自律神経軸索がヒト膵島機能を制御するために用いるエフェクター機構の解明に役立つであろう。 本研究は、眼内膵島移植が汎用性の高いアプローチであることを示している。他のアプローチとは対照的に、本手法は、移植膵島への神経入力を非侵襲的、局所的、かつ選択的に操作すると同時に、代謝機能を局所的又は全身的にリアルタイム又は縦断的に記録することを可能にする。したがって、本手法は糖尿病に関連する病態生理学的変化を調査し、糖尿病性神経障害に至る分子・細胞メカニズムを解明するために用いることができる。」 摘記2o(21460頁左欄32行~下から18行) 「マウス眼前房への膵島移植。単離した30~300個の膵島を培養液から滅菌PBS溶液に移し、0.4mmポリエチレンチューブ(Portex社製)を介して1mLハミルトンシリンジ(Hamilton社製)に接続された27ゲージ眼カニューレ(27ゲージ前房カニューレ;Katena社製)に吸引した。C57BL/6マウスを~2%イソフルラン(vol/vol)で麻酔した。角膜の乾燥を防ぐため、眼は加湿(眼科用点眼薬)した。実体顕微鏡下で、31ゲージインスリン注射針を用いて眼底の強膜付近の角膜を穿刺した。この注射針を用いて、眼カニューレとほぼ同サイズ(~0.5mm)の小さな放射状切開を行った。この切開では、針を前房にほとんど挿入せず、虹彩の損傷と出血を回避した。次に、鈍角の眼カニューレをこの切開部から優しく挿入し、最初は角膜表面に対して垂直に、次に角膜と平行にした。カニューレが前房に安定して挿入された後、膵島を10μLの滅菌生理食塩水で前房にゆっくりと注入し、膵島を虹彩上に定着させた。注入後、膵島が切開部から逆流するのを防ぐため、カニューレを注意深くゆっくりと(1分間)引き抜いた。マウスを覚醒させた後、ケージに戻し、完全に回復するまで観察し、その後は毎日観察した。外科処置後はブプレノルフィン(0.05~0.1mg/kg s.c.)を投与して鎮痛を得た。」 摘記2p(21460頁左欄下から17行~右欄12行) 「代謝研究のための膵島移植。マウス膵島は前述のように単離した。レシピエントであるC57BL/6マウス及び無胸腺ヌードマウスに、ストレプトゾトシン(200mg/kg;Sigma社製)を単回静脈内投与することにより、糖尿病を誘発した。ストレプトゾトシンは、クエン酸緩衝液に10~20mg/mLで新たに再懸濁し、動物の体重に基づいて尾静脈注射により単回ボーラス投与し、最終投与量は200mg/kgとした(22、47、48)。ストレプトゾトシン毒性に関連する罹患率又は死亡率は~5%で、通常はストレプトゾトシン投与後数日以内に観察され、これはおそらく、投与環境における肝毒性及び腎毒性、あるいはインスリン産生細胞の喪失に起因するものと考えられる。非絶食時血糖値が350mg/dLを超える良好な状態の動物のみに移植を行った。マウス右眼の前房に300個のマウス膵島相当量を移植した。これにより、最適なβ細胞量を確保した。移植前後の期間中、マウスはインスリンペレット又はインスリン注射で栄養補給された。膵島移植後、正常血糖は体重の維持又は増加に役立ち、ストレプトゾトシン治療からの完全な回復を示唆した。膵島移植片への神経入力の操作とモニタリングは、移植後3か月(すなわち、ストレプトゾトシン治療の想定される毒性作用が結果を混乱させる可能性があった時点よりかなり後)、移植片が完全に神経支配された時点で開始された。対照群マウスの腎被膜下に、同等の数の膵島を移植した。移植後、血漿血糖値を毎日モニタリングした。移植は成功し、膵島移植は機能的であると判定したのは、レシピエントマウスの血糖値が200mg/dL未満に達した時である(22、47、49)。ストレプトゾトシンによる糖尿病誘導後、非空腹時血糖は通常、測定値が350mg/dLを超えることで示され、ブドウ糖負荷試験では測定値が600mg/dLを超えると判定される(22)。200mg/dLをカットオフ値とすることで、移植された膵島が厳格な代謝コントロールを回復・維持する効率を判定できる。眼球移植の成功率は90%を超えている。正常血糖に戻らなかったマウスは本研究には含めなかった。」 ウ 参考文献A(最新医学大辞典第3版第1刷、医歯薬出版株式会社、最新医学大辞典編集委員会、2005年)に記載された事項 当審において、技術常識を示す文献として提示する参考文献Aには、以下の事項が記載されている。 なお、「・・・」は記載の省略を意味する。 摘記A1(488頁右欄11~22行) 「経口ブドウ糖負荷試験・・・経口負荷したブドウ糖に対する血糖,インスリンなど,血中物質やホルモンの反応性をみる検査法.10時間以上絶食後の通常早朝空腹時に75g,小児では1.75g/kgのブドウ糖含有水溶液を経口負荷し,30分毎に通常2時間まで採血する.通常の採血(空腹時血糖,随時血糖)では診断できない場合の糖尿病の診断,低血糖症の鑑別診断に用いる.糖負荷後の血糖は,生体の糖処理能(耐糖能)の指標となる.・・・」 摘記A2(1134頁左欄6~15行) 「耐糖能・・・負荷したグルコースに対して生体が示す代謝能力をさす.血漿インスリンとインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン,コルチゾール,カテコールアミン,成長ホルモン)濃度,組織のインスリン感受性などの影響を受ける.通常,経口あるいは静脈内ブドウ糖負荷試験における血糖曲線で判定する.糖尿病は耐糖能が障害された代表的疾患群である070.」 摘記A3(1303頁右欄22~30行) 「糖尿病・・・インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群.インスリン効果の不足により,糖,脂質,蛋白質を含むほぼすべての代謝系に異常をきたす.インスリン作用不足の機序として,膵β細胞からのインスリン供給不足と,インスリン作用臓器におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)とがある.・・・」 エ 参考文献B(広辞苑第五版第一刷、株式会社岩波書店、新村出、1998年)に記載された事項 当審において、用語の意味を示す文献として提示する参考文献Bには、以下の事項が記載されている。 なお、「・・・」は記載の省略を意味する。 摘記B1(788頁3欄4~8行) 「クリアランス・・・○2(当審合議体注:「○2」は、○の中に2を示す。)〔医〕浄化値。・・・血中からの特定物質の消失経過の表現にも用いる。」 オ 引用文献1に記載された発明 上記アによれば、引用文献1には、「糖尿病におけるCa2+動態とインスリン分泌における」「電位依存性Ca2+チャネル(Cav)」「のβ3サブユニット(Cavβ3)」「の機能に注目」した研究として、「ob/obマウスモデル及び高脂肪食を与えられたマウスの膵島において、[Ca2+]iダイナミクスの振幅と振動が減少し、グルコース刺激に対するインスリン分泌が障害されること」、「膵島におけるCavβ3の過剰発現は、Ca2+ダイナミクスを変化させ、インスリン分泌を障害する」が、「アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて」「ob/obマウスの膵島におけるCavβ3」を「減少」させると「[Ca2+]iダイナミクスとインスリン分泌」が「回復」したことが記載されている。 さらに生体内研究として、「糖尿病を誘発」するために「Cavβ3欠損マウスに高脂肪食を与えると、高脂肪食を与えられた正常なマウスと比較して、グルコース刺激による[Ca2+]iダイナミクスとインスリン分泌に対する耐性が高まる」こと、及び「Cavβ3欠損マウスの膵島を糖尿病マウスに移植し、耐糖能の改善を確認した」ことから、「Cavβ3は糖尿病状態における膵島機能の調節に重要であ」り、「電位依存性カルシウムチャネルCavβ3の糖尿病治療標的としての潜在的な価値を明らかにするであろう」と結論付けられている。 ここで、例えば引用文献2(上記イ摘記2o)にも記載されるように、上記膵島が、生理食塩水等の媒体とともに「組成物」として移植されたことは技術常識からみて自明であり、上記膵島の移植により「耐糖能の改善」が確認されたことから、耐糖能を改善するために「有効な量」の膵島が移植されたものといえる。 また、「耐糖能」とは、「負荷したグルコースに対して生体が示す代謝能力」を指し、「糖尿病は耐糖能が障害された代表的疾患群である」こと(前記ウ摘記A2)を踏まえると、「糖尿病マウス」における「耐糖能の改善」は、糖尿病の治療に相当することも併せ考慮すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。 「糖尿病マウスの治療に用いられる医薬組成物であって、耐糖能を改善するために有効な量のCavβ3欠損マウス由来の膵島を含み、糖尿病マウスに移植される、医薬組成物。」(以下「引用発明」という。) (3) 対比・判断 ア 対比 本件補正発明1と引用発明を対比する。 (ア) 引用発明の「糖尿病マウス」は、本件補正発明1の「対象」に相当する。 (イ) 上記(2)オで説示したとおり、「耐糖能の改善」は、糖尿病の治療に相当するから、引用発明の「耐糖能を改善するために有効な量」は、本件補正発明1の「糖尿病を治療するために有効な量」に相当する。 (ウ) 本件補正発明1の「グルコースクリアランス」について、「クリアランス」は「血中からの特定物質の消失経過」(前記(2)エ)の意であるから、「グルコースクリアランス」とは「血中からのグルコースの消失経過」を意味する。 そして、本願明細書の【0036】及び【0045】には「Cavβ3-/-膵島」又は「対照膵島」を「移植したマウス」に「1g/kgのD-グルコース」「を腹腔内注射」した後、「血糖値」を測定する「グルコース耐性試験を実施した」ところ、「Cavβ3-/-膵島を移植したマウスにおけるグルコース耐性は、対照膵島を移植したマウスと比較して改善された。グルコース耐性がより大きく改善された、移植後6週間で得られた結果を示した。曲線下面積は、対照膵島を移植したマウスと比較して、Cavβ3-/-膵島を移植したマウスにおいてかなり低かった(図6D)。・・・Cavβ3-/-膵島を移植したマウスにおいてグルコースクリアランスは改善したが、インスリン感受性は改善しなかった。」(下線は当審合議体が付した。以下、同様。)と記載されている。また、そのグルコース耐性試験の結果を示す本願図面の【図6】Dのグラフ及び本願明細書【0006】における【図6】の説明には、糖負荷後のグルコース濃度の変化を示す折れ線グラフと曲線下面積(AUC)の棒グラフが示され、Cavβ3-/-膵島を移植したマウスでは対照マウスと比べて、グルコース濃度を示す折れ線が低く推移し、糖負荷後の0~180分間に亘ってグルコース濃度が抑制され、AUCが小さくなったことが示されている。 そうすると、本件補正発明1における「グルコースクリアランスを改善する」とは、糖負荷後の血中グルコース濃度の推移を低下させ、AUCを減少させることといえる。 一方、引用文献1には「耐糖能」の確認方法について具体的に記載されていないものの、「耐糖能」は「負荷したグルコースに対して生体が示す代謝能力をさ」し、「通常、経口あるいは静脈内ブドウ糖負荷試験における血糖曲線で判定」される(前記(2)ウ摘記A1及びA2)ものであるから、引用発明の「耐糖能を改善する」とは、グルコースの代謝能力を高め、糖負荷試験における血糖曲線、すなわち血中グルコース濃度の推移を低下させることと解されるから、本件補正発明1の「グルコースクリアランスを改善する」に相当する。 (エ) 本件補正発明1の「インスリン産生細胞」について、本願明細書の【0018】には、「インスリン産生細胞は、単離された膵臓β細胞を含む。本明細書で使用される場合、「膵臓β細胞」とは、膵臓β膵島細胞を含む細胞の任意の集団である。そのような膵臓β膵島細胞集団には、膵臓細胞、ランゲルハンスの単離された膵島(「膵島」)細胞、および単離された膵臓β膵島細胞が挙げられる。」と記載されているから、引用発明の「膵島」は、本件補正発明1の「インスリン産生細胞」に相当する。 また、本願明細書には、「ヒトインスリン産生細胞は、ヒトCavβ3の発現を減少させるよう、または排除するように操作されている。」(【0012】)、「Cavβ3遺伝子の各コピーは、遺伝子発現/転写が起こらないように破壊されるか、またはCavβ3遺伝子の各コピーが排除される。」(【0014】)と記載されているから、引用発明の「Cavβ3欠損マウスの膵島」は、本件補正発明1の「Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞」に相当する。 (オ) 以上を踏まえると、本件補正発明1と引用発明は、以下の点で一致し、又相違する。 <一致点> 対象の糖尿病を治療するために用いられる医薬組成物であって、糖尿病を治療するために有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞を含み、前記インスリン産生細胞が、対象に移植され、前記治療が、前記対象においてグルコースクリアランスを改善することを含む、医薬組成物。 <相違点1> 治療について、本件補正発明1では、「インスリン感受性を改善しないことを含む」ことについて特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。 <相違点2> 移植が、本件補正発明1では、「眼」に対してされるのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。 イ 判断 (ア) 相違点1について 本件補正発明1の「インスリン感受性を改善しない」について、本願明細書の【0036】及び【0045】には、「Cavβ3-/-膵島を移植したマウス」及び「対照膵島を移植したマウス」における「インスリン耐性試験」の結果について、「インスリン耐性は大きく異なっていなかった(図6E)。Cavβ3-/-膵島を移植したマウスにおいてグルコースクリアランスは改善したが、インスリン感受性は改善しなかった。」と記載され、その結果を示す本願図面の【図6】Eには、インスリン注射後0分から120分後までの血中グルコースの初期レベル(100%)に対する割合の推移を表す折れ線グラフが示され、Cavβ3-/-膵島を移植したマウスと対照膵島を移植したマウスとの間で、血中グルコースの初期レベルに対して減少する割合が同程度であり、インスリンに対する感受性に差がないことが示されている。 ここで、「インスリン供給不足」は「膵β細胞」に起因し、「インスリン感受性の低下」は「インスリン作用臓器」に起因すること(前記(2)ウ摘記A3)を踏まえれば、上記「インスリン感受性は改善しなかった」という結果は、Cavβ3-/-膵島移植マウスのインスリン作用臓器及び対照膵島移植マウスのインスリン作用臓器との間に、インスリン感受性の差異がなかったことを示すものであって、移植する「膵島」の種類が、移植を受けるマウスにおけるインスリン作用臓器の持つ「インスリン感受性」に対しては影響しないことを示すものといえる。 そうすると、本件補正発明1における「治療が、」「前記対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しないことを含む」との特定は、「有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞」は、「グルコースクリアランスを改善する」ための「インスリン」を分泌して供給するが、移植されるマウスにおけるインスリン作用臓器の持つ「インスリン感受性」には影響しないという、当該インスリン産生細胞が本来有する機能、特性を特定したものといえる。 他方、上記ア(ウ)において説示したとおり、引用発明は、本件補正発明1と同じ「Cavβ3欠損マウスの膵島」を移植するものであるから、当該「Cavβ3欠損マウスの膵島」も、「グルコースクリアランスを改善する」ための「インスリン」を分泌して供給するが、移植されるマウスにおけるインスリン作用臓器の「インスリン感受性」には影響しないという機能、特性を本来有するものといえる。 したがって、引用発明においても、「治療が、」「インスリン感受性を改善しないことを含む」という機能、特性を発揮するといえ、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。 (イ) 相違点2について 前記(2)オのとおり、引用発明は、「糖尿病モデルにおけるCavβ3の機能に注目」し、「電位依存性カルシウムチャネルCavβ3の糖尿病治療標的としての潜在的な価値を明らかにする」ことを技術的思想とし、有効成分たる「Cavβ3欠損マウスの膵島」を「糖尿病マウスに移植」することを特徴とする発明である。 他方、引用文献2には、「膵島細胞の機能をモニタリングしながら、自律神経入力を局所的かつ非侵襲的に操作できる部位に膵島を移植する」との戦略の下(前記(2)イ摘記2b)、マウスの眼の前房に膵島を移植すると(前記(2)イ摘記2a、2o及び2p)、眼内膵島移植片は神経支配を受けるとともに(前記(2)イ摘記2a、2c~2f、2k及び2l)、マウスの血糖値を低下させること(前記(2)イ摘記2a、2g~2l)が記載され、「眼内膵島移植が汎用性の高いアプローチ」であって、「他のアプローチとは対照的に、本手法は、移植膵島への神経入力を非侵襲的、局所的、かつ選択的に操作すると同時に、代謝機能を局所的又は全身的にリアルタイム又は縦断的に記録することを可能にする」ため、「糖尿病に関連する病態生理学的変化を調査し、糖尿病性神経障害に至る分子・細胞メカニズムを解明するために用いることができる」こと(前記(2)イ摘記2n)が考察されている。 そうすると、引用文献1及び2の記載に接した当業者であれば、引用文献2に記載される非侵襲的で汎用性の高い眼内移植膵島アプローチを採用し、引用発明のCavβ3欠損マウス由来の膵島を糖尿病マウスの「眼」に移植することにより、相違点2に係る構成とすることは、容易に想到し得たことである。 (ウ) 本件補正発明1の効果について a 本願明細書には、Cavβ3-/-マウスからの膵島を糖尿病マウスの前眼房内に移植すると、4週間後、「移植した膵島が完全に血管新生され神経支配されたこと」(以下「本件効果1」という。)、Cavβ3-/-膵島を移植したマウスは、対照膵島を移植したマウスと比較して、「グルコースクリアランスは改善した」こと(以下「本件効果2」という。)、及び「インスリン感受性は改善しなかったこと」(以下「本件効果3」という。)が示されている(段落【0036】、【図6】)。 b 上記本件効果1について、検討する。 引用文献2には、マウスの眼の前房に膵島を移植することで、「眼内膵島移植片は神経支配を受ける」こと(前記(2)イ摘記2a、2c~2f、2k及び2l)、及び「軸索が膵島移植片内に確認され、そのほとんどは血管と密接に関連していた」こと(前記(2)イ摘記2c)も記載されているから、上記本件効果1は当業者であれば引用文献2の記載から予測し得た効果といえる。 c 次に上記本件効果2について、検討する。 (a) 引用文献1には、「以前の報告では、Cavβ3欠損(Cavβ3-/-)マウスの膵島では、野生型マウスと比較して、」「インスリン分泌の改善、そして耐糖能の向上が見られた」ことが記載されているから(前記(2)ア摘記1a)、Cavβ3の発現抑制は、膵島におけるインスリン分泌を向上させることが理解できる。 (b) また、引用文献1には、「膵島におけるCavβ3の過剰発現は、」「インスリン分泌を障害する」こと、「アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてob/obマウスの膵島におけるCavβ3の減少を実装し、」「インスリン分泌の回復を発見した」ことが記載されているから(前記(2)ア摘記1a)、糖尿病モデルマウス由来の膵島においても、Cavβ3の発現抑制は、インスリン分泌を向上できることが理解できる。 (c) さらに、引用文献1には、「Cavβ3欠損マウスに高脂肪食を与えると、高脂肪食を与えられた正常なマウスと比較して、」「インスリン分泌に対する耐性が高まる」こと、及び、「Cavβ3欠損マウスの膵島を糖尿病マウスに移植し、耐糖能の改善を確認した」ことが記載されているから(前記(2)ア摘記1a)、糖尿病マウスに移植した場合においても、Cavβ3欠損マウス由来の膵島は野生型マウス由来の膵島よりもインスリン分泌能が高く、耐糖能を向上できることが理解できる。 (d) 糖尿病マウスにおける膵島を移植する部位として「眼」を選択した場合であっても、インスリンを分泌し、血糖値を正常化できることは、引用文献2に記載されている(前記(2)イ摘記2g~2l)。 上記(a)~(d)を考慮すれば、Cavβ3欠損マウス由来の膵島を糖尿病マウスの眼に移植した場合にも、移植された膵島からインスリンが分泌され、それによって、糖尿病マウスの耐糖能が改善することは当然に予想し得るものである。 d 次に、上記本件効果3について検討する。 「糖尿病」の原因となるインスリン作用不足の機序には「膵β細胞からのインスリン供給不足と,インスリン作用臓器におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)とがあ」り(前記(2)ウ摘記A3)、「インスリン分泌」は膵β細胞の機能である一方、「インスリン感受性」は、インスリン作用臓器の特性であることを踏まえると、本願明細書の実施例において移植されたCavβ3欠損マウスの「膵島」が、インスリン作用臓器の特性である「インスリン感受性」を向上させるのではなく、「インスリン分泌」によってグルコースクリアランスを改善させたという本件効果2は、当業者であれば当然に予測し得た効果である。 また、本願明細書の【図6】のEのインスリン耐性試験において対照とされた、「対照同腹仔からの膵島」を「前眼房内に移植した」「糖尿病マウス」と、「Cavβ3欠損マウスの膵島を移植した糖尿病マウス」とは、移植した「膵島」は異なるが、レシピエントとなるマウス自体は同じ糖尿病マウスであって、当該レシピエントマウスの持つインスリン作用臓器も同じとなる条件である以上、インスリン作用臓器の持つ「インスリン感受性」に差異がないのは当然ともいえる。 したがって、本件効果3は、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものということはできない。 e なお、本願明細書及び図面には、図6以外にも、図1~5及び7で、膵島におけるCavβ3の過剰発現又はノックアウトによる効果が示されているものの、Cavβ3-/-マウス由来の膵島を糖尿病マウスの前眼房内に移植したことによる効果を確認しているのは、図6のみであるから、図1~5及び7に示された効果は、本件補正発明1の構成により奏される効果ということはできない。 f したがって、本件補正発明1は、引用発明、引用文献1及び2の記載から当業者の予測し得ない顕著な効果を奏するものではない。 (4) 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和6年7月10日提出の手続補正書により補正された審判請求書において、本件補正発明1と、引用発明は、「対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しない」点で相違し、本願明細書の段落【0036】、図6D及びEにおいて開示される本件補正発明1の効果は、引用文献1及び2の記載から予測し得ない格別顕著な効果である旨、主張している。 しかしながら、前記(3)ア(ウ)及びイ(ア)において説示したとおり、「対象においてグルコースクリアランスを改善する」点は一致点であるし、「インスリン感受性を改善しない」点も実質的な相違点ではない。 また、本件補正発明1の効果についても、上記(3)イ(ウ)において説示したとおりである。 したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 (5) 小括 したがって、本件補正発明1は引用発明、引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 まとめ 以上のとおり、本件補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 1 本願の請求項1に係る発明 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和5年11月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 対象の糖尿病を治療またはその発症を制限するために用いられる医薬組成物であって、糖尿病を治療またはその発症を制限するために有効な量の、Cavのβ3サブユニット(Cavβ3)の発現を減少させるように操作されたインスリン産生細胞を含み、前記インスリン産生細胞が、対象の眼に移植される、医薬組成物。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献 引用文献1~2の記載事項については、前記第2の4(2)ア及びイに示すとおりである。また、引用発明についても、上記第2の4(2)オに示すとおりである。 4 本願発明1と引用発明の対比及び判断 上記第2の2で検討したとおり、本件補正発明1は、本願発明1における「対象の糖尿病を治療またはその発症を制限するために用いられる医薬組成物」及び「糖尿病を治療またはその発症を制限するために有効な量」との特定事項についてそれぞれ「またはその発症を制限」を削除し、さらに、「前記治療が、前記対象においてグルコースクリアランスを改善するが、インスリン感受性を改善しないことを含む、」という特定事項を追加したものであるから、本願発明1は、本件補正発明1を包含するものである。 したがって、本願発明1は、上記第2の4に説示した本件補正発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-008788

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