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特許拒絶査定不服審判

2022-008393

表示装置製造用フォトマスク、及び表示装置の製造方法

審判番号
2022-008393
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-203848外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月02日
審決日
2023年05月16日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-203848「表示装置製造用フォトマスク、及び表示装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開、特開2021- 47449〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年1月29日(優先権主張 平成29年3月10日)に出願した特願平2018-012734号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年12月9日に新たな特許出願したものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 2年12月17日 :手続補正書の提出 令和 3年 9月28日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 3月22日付け:拒絶査定 令和 4年 6月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和4年6月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年6月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「透明基板の主表面上に形成された光学膜をパターニングしてなる転写用パターンをもつ、表示装置製造用フォトマスクであって、 前記転写用パターンは、 前記主表面が露出してなる透光部からなる主パターン、 前記主パターンの周辺に配置された、位相シフト部からなる補助パターン、及び 前記主パターンと前記補助パターン以外の領域に形成された低透光部を含み、 前記補助パターンは、前記主パターンに付随して前記主パターンの周囲に前記低透光部を介在して配置され、 前記転写用パターンが含む複数の前記主パターンの1つを第1主パターンとするとき、前記第1主パターンと異なる第2主パターンが前記第1主パターンに接近した位置に配置され、 前記第1主パターンに付随する補助パターンは、前記第2主パターンに面する側に欠落を有し、且つ、 前記第2主パターンに付随する補助パターンは、前記第1主パターンに面する側に欠落を有し、 前記位相シフト部は、前記透明基板上に位相シフト膜が形成されてなり、 前記位相シフト膜は、露光光に含まれる代表波長において屈折率が1.5~2.9かつ透過率が20~80%かつ位相シフト量が120度~240度であり、 前記低透光部は、前記露光光に対する光学濃度ODが3以上の遮光部であることを特徴とする、表示装置製造用フォトマスク。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和4年1月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「透明基板の主表面上に形成された光学膜をパターニングしてなる転写用パターンをもつ、表示装置製造用フォトマスクであって、 前記転写用パターンは、 前記主表面が露出してなる透光部からなる主パターン、 前記主パターンの周辺に配置された、位相シフト部からなる補助パターン、及び 前記主パターンと前記補助パターン以外の領域に形成された低透光部を含み、 前記補助パターンは、前記主パターンに付随して前記主パターンの周囲に配置され、 前記転写用パターンが含む複数の前記主パターンの1つを第1主パターンとするとき、前記第1主パターンと異なる第2主パターンが前記第1主パターンに接近した位置に配置され、 前記第1主パターンに付随する補助パターンは、前記第2主パターンに面する側に欠落を有し、且つ、 前記第2主パターンに付随する補助パターンは、前記第1主パターンに面する側に欠落を有し、 前記位相シフト部は、前記透明基板上に位相シフト膜が形成されてなり、 前記位相シフト膜は、露光光に含まれる代表波長において屈折率が1.5~2.9かつ透過率が20~80%かつ位相シフト量が120度~240度であり、 前記低透光部は、前記露光光に対する光学濃度ODが2以上の遮光部であることを特徴とする、表示装置製造用フォトマスク。」 2 補正の適否 本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「補助パターン」及び「低透光部」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-071059号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「【請求項1】 透明基板上に形成された転写用パターンを備えるフォトマスクであって、前記転写用パターンは、 径W1(μm)の主パターンと、 前記主パターンの近傍に配置された、幅d(μm)の補助パターンと、 前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置された低透光部と、を有し、 前記主パターンを透過するi線~g線の波長範囲にある代表波長と、前記補助パターンを透過する前記代表波長との位相差が略180度であって、 前記補助パターンを透過する前記代表波長の光の透過率をT1(%)とし、 前記低透光部を透過する前記代表波長の光の透過率をT3(%)とし、 前記主パターンの中心と、前記補助パターンの幅方向の中心との距離をP(μm)とするとき、下記の式(1)~(4)を満たすことを特徴とする、フォトマスク。 0.8 ≦ W1 ≦ 4.0 ・・・・・・・・・・・・・・(1) 0.5 ≦ √(T1/100) × d ≦ 1.5 ・・・(2) 1.0 < P ≦ 5.0 ・・・・・・・・・・・・・・・(3) T3 < T1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)」 「【0034】 尚、表示装置製造用のフォトマスクは、周知のとおりサイズが大きく、フォトマスク製造工程におけるウェット処理(現像やウェットエッチング)においては、面内のあらゆる位置で、CD(線幅)の均一性を確保することは容易では無い。最終的なCD精度を、規定された許容範囲内に収めるためにも、露光工程における充分な焦点深度(DOF)の確保が肝要であり、またこれに伴って他の性能が劣化しないことが望ましい。 【0035】 本発明は、透明基板上に成膜された、半透光膜及び低透光膜をそれぞれパターニングすることによって形成された転写用パターンを備えるフォトマスクである。本発明のフォトマスクがもつ転写用パターンの平面模式図を、図1に例示する。」 「【0052】 このような位相差を形成するためには、主パターンは、透明基板主表面が露出してなる透光部とし、補助パターンは、透明基板上に半透光膜を形成してなる半透光部とし、この半透光膜の、上記代表波長に対する位相シフト量を、略180度とすれば良い。」 「【0055】 本発明のフォトマスクにおいて、主パターン及び補助パターンが形成された以外の領域に配置され、主パターン及び補助パターンの周囲に形成された低透光部は、以下のような構成とすることができる。 【0056】 低透光部は、露光光(i線~g線の波長範囲にある代表波長の光)を実質的に透過しないものであってもよい。この場合低透光膜単体で、上記代表波長を実質的に透過しないもの(すなわち遮光膜)であって、T3≦0.01すなわち光学濃度OD≧2である低透光膜を適用してもよく、又は、低透光膜と半透光膜の積層膜で、実質的な遮光膜としてもよい。」 「【0071】 あるいは、補助パターンの形状は、主パターンの周囲を完全に囲まずに、上記多角形帯又は円形帯の一部が欠落した形状であっても良い。補助パターンの形状は、例えば、図2(f)のように、四角形帯の角部が欠落した形状であっても良い。」 「【0076】 半透光膜は、透明基板の主表面上に、i線、h線、g線のいずれかを代表波長とするとき、その透過率が30~80(%)(T1(%)を透過率とするとき、30≦T1≦80)、より好ましくは、40~75(%)であり、かつ、この代表波長に対する位相シフト量が、略180度であるような膜である。このようは半透光膜により、透光部からなる主パターンと、半透光部からなる補助パターンとの間の透過光位相差を略180度とすることができる。そのような半透光膜は、i線~g線の波長範囲にある代表波長の光の位相を略180度シフトする。半透光膜の成膜方法としては、スパッタ法等公知の方法を適用することができる。」 「【0078】 また、これらの条件を充足するためには、半透光膜材料は、露光光に含まれる代表波長(例えばh線)の屈折率が1.5~2.9であることが好ましい。より好ましくは、1.8~2.4である。」 「【0084】 低透光膜の単独の性質としては、実質的に前記代表波長の光を透過しないものであるか、又は、30(%)未満の透過率(T2(%))をもち(すなわち、0<T2<30)、位相シフト量(φ2)が略180度であることが好ましい。略180度とは、120~240度を意味する。好ましくは、位相差φ1は150~210(度)である。」 図1及び図2(f)は以下のとおりである。 【図1】 [図:0001400079000001.jpg] 【図2】 [図:0001400079000002.jpg] したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 「透明基板上に半透光膜及び低透光膜をそれぞれパターニングすることによって形成された転写用パターンを備える表示装置製造用のフォトマスクであって、前記転写用パターンは、 主パターンと、 前記主パターンの近傍に配置された、補助パターンと、 前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置された低透光部と、を有し、(請求項1、【0034】、【0035】) 主パターンは、透明基板主表面が露出してなる透光部とし、補助パターンは、透明基板上に半透光膜を形成してなる半透光部とし、(【0052】) 低透光部は、主パターン及び補助パターンが形成された以外の領域に配置され、主パターン及び補助パターンの周囲に形成され、(【0055】) 半透光膜は、透明基板の主表面上に、i線、h線、g線のいずれかを代表波長とするとき、その透過率が30~80(%)であり、かつ、この代表波長に対する位相シフト量が、120~240度であるような膜であり、半透光膜材料は、露光光に含まれる代表波長の屈折率が1.5~2.9であり、(【0076】、【0078】、【0084】) 低透光部は低透光膜と半透光膜の積層膜で、実質的な遮光膜としてもよい、(【0056】) 表示装置製造用のフォトマスク。(請求項1、【0034】)」 イ 引用文献2 原出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平8-076355号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0019】 【作用】主パタンの周囲を半透明にして、かつ、半透明部を通過する光の位相を、透明な主パタンを通過する光の位相と反転させるようにしたホトマスクの主パタン周辺の最適化された位置に補助パタンを配置することにより、パタン転写の際、焦点がずれた場合でも主パタンの光強度低下を抑えることができ、焦点ずれによるパタン寸法の縮小や、解像不良を回避することができる。」 「【0036】〈実施例4〉本発明の第4の実施例を図7、図8、図9、図10を用いて説明する。ここでは、主パタンの配列や補助パタンの配置の種々の例を示す。図7は主パタンが横に並んで配列している場合の例を示す。3個の主パタン8は距離D’の2倍より小さいピッチで配置されているので、各主パタン8の間には補助パタンが配置できない。このような場合は、主パタン群の外周部のみに補助パタン9y、9xを配置すればよい。このマスクを用いパタンの転写を行なった結果、中央の主パタンの焦点深度が周辺の主パタンに比べ僅かに低下したが、補助パタンを用いない場合に比べ、焦点深度は向上した。また、このような焦点深度の差をなくしたい場合は、補助パタン9yのみを配置すればよい。すなわち、主パタンの一方向のみに補助パタンを配置しても焦点深度向上効果は得られる。 【0037】図8には主パタンが対角方向に配列された場合の補助パタンの配置例を示す。補助パタン9はそれぞれの主パタン8の中心線と補助パタンの中心が距離D’だけ離れた位置に配置するが、上記のように、一方の主パタンに対する補助パタンが、他方の主パタンから距離D’以内に配置されるとき、その補助パタンは削除した。この場合、補助パタン9はL字状になる場合があるが、前記したように、コーナ部で補助パタンが接しないように離してもよい。」 「【0039】〈実施例5〉本発明の第5の実施例として補助パタンの自動配置について説明する。補助パタンの配置はコンピュータを用いたマスクパタン設計用装置を用いて行なった。補助パタンの配置手順を図11及び図12(a)、(b)を用いて説明する。用いた装置及び処理動作は図11に示すように、補助パタン自動発生部及びデータファイル部からなっており、その他の機能、例えばマスクパタン描画用データ変換部等との連結はデータファイルを介して行なうようになっている。まず、S1ステップにおいて、投影する主パタンを設計者の入力により配置する。データファイルからの入力も可能である。図12(a)の例では、主パタン11-1~11-7を配置した。 【0040】次に、S2ステップにおいて、補助パタンが必要なパタンと、不要なパタンを選別する。パタンの大きさが大きいとき、そのパタンの焦点深度が深いので、補助パタンを設けなくとも焦点位置ずれによる光強度への影響は小さいため、そのようなパタンには補助パタンを配置しなくてもよいようにする処理である。ここでは主パタンの短辺の長さがL以下の場合、補助パタンを配置した。Lは、 L=b1λ/NAu(但し、NAu:投影光学系のウエハ側の開口数、λ:露光波長、係数:b1)で表わされ、係数b1は予め設定できる。図12(a)の場合は、主パタン11-1~11-6が補助パタンの配置対象となり、主パタン11-7は対象外であった。主パタン11-7の短辺の長さが、後述する主パタンの中心と補助パタンの中心間距離Dより大きいため、補助パタンを設ける適切な位置が主パタンと重なってしまうためである。なお、本実施例は、所定の大きさ又は長さ以下の主パタンに補助パタンを配置するものであるが、所定の大きさ又は長さを越える主パタンについても、本実施例の方法に従って、或は、他のルールに従って補助パタンを配置しても差し支えない。 【0041】次に、S3ステップにおいて、主パタン11-7を除いた各主パタンに対し、補助パタンの形状、その仮配置位置12を決める。図12(a)の例では、主パタンが方形パタンであるので、図6に示した場合と同様に、長方形の補助パタンを仮配置する。仮配置位置12は、主パタンの中心又は中心線と補助パタンの中心間のマスク上の距離Dで決められる。距離Dは次式で表され、D=b2λ/NAで(但し、投影光学系のマスク側の開口数をNA、露光波長をλ、係数:b2)係数b2は設計者が設定できる。b2の好ましい値は1.0≦b2≦2.0の範囲であり、より好ましい値は1.35<b2≦1.9の範囲である。補助パタンの幅は予め入力できる。例えば、実施例1に記載した式b’λ/NA(0.07≦b’≦0.25)により係数b’をこの範囲内の所望の値に定めることができる。 【0042】方形の主パタンの中心線は、図の縦方向と、横方向の2つを採る。縦方向の中心線に対して、主パタンの左右に補助パタンを仮配置し、横方向の中心線に対して、主パタンの上下に補助パタンを仮配置する。この実施例では、予め適切な形状や中心又は中心線をコンピュータに入力しておき、それに基づいて設定した。例えば、方形パタンであれば、この実施例と同様に設定し、円形パタンであれば、図3に示したように、輪帯状の補助パタンを設定し、また、所定の大きさ以下の方形パタンであれば、図9に示したように、その中心から所定の距離に補助パタン設定するようにする。さらに、矩形パタンであれば、その長手方向の中心線に対して、所定の距離に長方形の補助パタンを設定する。つまり、矩形パタンの長手方向の左右に補助パタンが配置されるようにする。 【0043】次に、S4ステップにおいて、補助パタン配置の矛盾個所の判定を行なう。実際の場合、図12(a)に示すように、主パタンが接近して配置されている場合が存在する。仮配置位置12が互いに重なったり、隣の主パタンから距離D以内のエリアに侵入し、矛盾個所13が発生する。この矛盾個所を判定する。 【0044】次に、S5ステップにおいて、矛盾個所を削除する。また、補助パタンのコーナ部等もパタンを削除する。コーナ部からの削除幅は、例えば、補助パタンの幅の2倍の長さを削除するように予め定め、自動的に行なうようにする。 【0045】次に、S6ステップにおいて、図12(b)に示すように補助パタン14を配置する。このようにして補助パタン14の配置が完了する。なお、この例では、補助パタンは長方形のパタンを用いたが、これに限らない。」 図7、図8及び図12は、以下のとおりである。 【図7】 [図:0001400079000003.jpg] 【図8】 [図:0001400079000004.jpg] 【図12】 [図:0001400079000005.jpg] したがって、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる(以下、引用文献2に記載された技術的事項の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 「主パタン周辺の最適化された位置に補助パタンを配置するホトマスクであって、(【0019】) 各主パタンに対し、補助パタンの形状、その仮配置位置を決め、(【0041】) 主パタンが接近して配置されている場合が存在すると、仮配置位置が互いに重なったり、隣の主パタンから距離D以内のエリアに侵入し、補助パタン配置の矛盾個所が発生し、この矛盾個所を判定し、(【0043】) 補助パタン配置矛盾位置の補助パタンは削除する(【0037】、【0043】及び図12) ホトマスク。(【0019】)」 (3)対比 ア 引用発明の「透明基板上に半透光膜及び低透光膜をそれぞれパターニングすることによって形成された転写用パターン」は、本件補正発明の「透明基板の主表面上に形成された光学膜をパターニングしてなる転写用パターン」に、 引用発明の「表示装置製造用のフォトマスク」は、本件補正発明の「表示装置製造用フォトマスク」に、 引用発明の「『透明基板主表面が露出してなる透光部とし』た『主パターン』」は、本件補正発明の「主表面が露出してなる透光部からなる主パターン」に、 引用発明の「『前記主パターンの近傍に配置され』、『透明基板上に』『代表波長に対する位相シフト量が、120~240度である』『半透光膜を形成してなる半透光部とし』た、『補助パターン』」は、本件補正発明の「前記主パターンの周辺に配置された、位相シフト部からなる補助パターン」に、 引用発明の「前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置された低透光部」は、本件補正発明の「前記主パターンと前記補助パターン以外の領域に形成された低透光部」に、 引用発明の「『半透光部』は、『透明基板上に半透光膜を形成してなる』」は、本件補正発明の「前記位相シフト部は、前記透明基板上に位相シフト膜が形成されてなり」に、 引用発明の「半透光膜は、透明基板の主表面上に、i線、h線、g線のいずれかを代表波長とするとき、その透過率が30~80(%)であり、かつ、この代表波長に対する位相シフト量が、120~240度であるような膜であり、半透光膜材料は、露光光に含まれる代表波長の屈折率が1.5~2.9であり」は、本件補正発明の「前記位相シフト膜は、露光光に含まれる代表波長において屈折率が1.5~2.9かつ 透過率が20~80%かつ位相シフト量が120度~240度であり」に、 それぞれ相当する。 イ 本件補正発明の「前記補助パターンは、前記主パターンに付随して前記主パターンの周囲に前記低透光部を介在して配置され」の構成について 引用発明の「補助パターン」は、「主パターンの近傍に配置され」ており、「低透光部は、主パターン及び補助パターンが形成された以外の領域に配置され、主パターン及び補助パターンの周囲に形成され」ていることから、補助パターンは、主パターンの近傍に配置され、主パターンの周囲に低透光部を介在して配置しているものといえる。 したがって、引用発明は、上記構成を満たす。 ウ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「透明基板の主表面上に形成された光学膜をパターニングしてなる転写用パターンをもつ、表示装置製造用フォトマスクであって、 前記転写用パターンは、 前記主表面が露出してなる透光部からなる主パターン、 前記主パターンの周辺に配置された、位相シフト部からなる補助パターン、及び 前記主パターンと前記補助パターン以外の領域に形成された低透光部を含み、 前記補助パターンは、前記主パターンに付随して前記主パターンの周囲に前記低透光部を介在して配置され、 前記位相シフト部は、前記透明基板上に位相シフト膜が形成されてなり、 前記位相シフト膜は、露光光に含まれる代表波長において屈折率が1.5~2.9かつ 透過率が20~80%かつ位相シフト量が120度~240度である、 表示装置製造用フォトマスク。」 【相違点1】 本件補正発明は、転写用パターンが含む複数の主パターンの1つを第1主パターンとするとき、前記第1主パターンと異なる第2主パターンが前記第1主パターンに接近した位置に配置され、前記第1主パターンに付随する補助パターンは、前記第2主パターンに面する側に欠落を有し、且つ、前記第2主パターンに付随する補助パターンは、前記第1主パターンに面する側に欠落を有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を使用していない点。 【相違点2】 低透光部について、本件補正発明は、前記露光光に対する光学濃度ODが3以上の遮光部であるのに対して、引用発明は、低透光膜と半透光膜の積層膜で、実質的な遮光膜である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明は、表示装置製造用のフォトマスクに関するものであるから、主パターンは通常複数形成されているといえ、主パターン同士が、近接配置されている事もあるといえる。 そして、引用文献1の請求項1では、主パターンの中心と、補助パターンの幅方向の中心との距離をP(μm)としているところ、2つの主パターンが近接して、主パターンの中心どうしの距離が、例えば2P未満となった場合、2つの主パターン間の、2つの主パターンにそれぞれ付随する2つの補助パターンは、それぞれ隣接する隣の主パターンとの距離がP未満となってしまい、当該隣の主パターンの被転写体への転写に悪影響を及ぼすことは明らかである。 ここで、引用文献2に記載された技術的事項によると、主パタンが接近して配置されている場合が存在するとき、隣の主パタンから距離D以内のエリアに侵入した補助パタンは、削除しており、複数の主パターンが近接した引用発明においては、上記の悪影響を排除するべく引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機がある。 そうすると、引用発明の、2つの主パターンが近接して、主パターンの中心どうしの距離が2P未満となるものにおいて、当該2つの主パターン間の、2つの主パターンにそれぞれ付随する2つの補助パターンを欠落したものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項といえる。 イ 相違点2について 引用発明の低透光部は、低透光膜と半透光膜の積層膜で、実質的な遮光膜であることから、OD値は3以上となっているといえる。 また、そこまで言えないとしても、低透光部を露光光に対する光学濃度OD値が3以上のものとすることは、当業者が適宜なし得た事項である。 ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)審判請求人の主張について ア 本件審判請求人は、令和4年6月2日付けで提出された審判請求書において、 「本願の補正後の請求項1に係るフォトマスク上に2以上の主パターンを設ける場合、2つの補助パターンの距離が近いと、2つの補助パターンからぞれぞれ透過する露光光が合わさった光が、被転写体上のレジスト膜を感光させてしまい、現像後のレジスト膜の減膜が大きいという問題が生じます。これは、2つの補助パターンの間には、低透過部(ODが3以上)が介在し、露光光はほとんど透過せず、補助パターンを透過した光の一部が、他方の補助パターン側に回り込むことを抑制できないためです。そこで、当該問題を解決するために2つの補助パターンの互いに近接する側を欠落させる構成を採用しています。引用文献2の図12では、補助パタンの一部が欠落しており、一見すると、本願発明の補助パターンを欠落させているのと同じ態様であるように思えます。しかし、この引用文献2の図12では、補助パタンを欠落させないと、主パターンに非常に近い位置に補助パタンが配置されることになります。このような配置がされたホトマスクだと、補助パタンを透過した露光光が、主パタンを透過する露光光に対して悪影響を及ぼしてしまいます。本願の補正後の請求項1に係るフォトマスクと引用文献2に記載の発明との技術思想の相違は、本願の請求項1に係るフォトマスクの主パターン、補助パターンおよび低透過部と、引用文献2のホトマスクの主パターン、補助パターンおよび半透明な領域の役割が大きく異なることに起因します。そして、引用文献1のフォトマスクにおける、主パターン、補助パターンおよび低透光部の各役割は、本願の補正後の請求項1に係るフォトマスクと同様です。よって、引用文献2のホトマスクに係る構成を、引用文献1のフォトマスクに組み合わせることには、阻害要因があるといえます。」と、主張している。 イ 上記主張について、以下検討する。 上記(4)で説示したとおりである。 仮に、本願の補正後の請求項1に係るフォトマスクと引用文献2に記載の発明との技術思想が相違するとしても、引用発明において、複数の主パターンを設け、隣り合う2つの主パターンが過度に接近すれば当該2つの主パターンの間に補助パターンが存在することは不具合になるという点で、引用文献2に記載の技術的事項と共通するから阻害要因にはならない。 以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年6月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年1月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概略は、この出願の請求項1に係る発明は、原出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その原出願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2016-071059号公報 引用文献2.特開平8-076355号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項、並びに原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「補助パターン」について、「主パターンの周囲に前記低透光部を介在して配置され」との限定を「主パターンの周囲に配置され」とし、「遮光部」について、「露光光に対する光学濃度ODが3以上」との限定を「露光光に対する光学濃度ODが2以上」としたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-008393

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