2022-003615
気密端子
- 審判番号
- 2022-003615
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-144659外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月09日
- 審決日
- 2023年06月21日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ショット日本株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
理 由
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年8月1日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和5年3月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「缶ケースに取り付けられるべき蓋体であって、円筒状の通孔を有する円形皿状の金属薄板からなる蓋体と、この蓋体の前記通孔を貫通した円柱状のリードと、前記リードと前記蓋体とを気密にガラスで封着したガラスの絶縁材とを備え、前記蓋体は、その縁辺部に沿って、前記缶ケースとの二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部を有し、前記係合部は、前記リードの片側の外端面よりも、前記蓋体の前記缶ケースへの取り付け方向と逆方向に長く延ばしたことにより前記蓋体に凹状のクボミを形成し、前記凹状のクボミの底面に前記通孔を配置して、前記リードにおける前記缶ケースの外側に配置される前記リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにしたことを特徴とする気密端子。」
第3 令和5年1月11日付け拒絶理由通知の概要
令和4年3月9日提出の手続補正書に記載された請求項1ないし4に対して令和5年1月11日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1ないし4
・引用文献 1、2
<引用文献一覧>
1.特開昭58-125817号公報
2.特開2011-228409号公報
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項について
引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「本発明はアルミニウム電解コンデンサの密閉性に優れた外装容器に関する。・・・(省略)・・・。該アルミニウム電解コンデンサの素子は酸化皮膜を有するアルミニウム箔を陽極としそれと対極との間に電解液を含浸したセパレータ紙を介在させて巻回して構成され、該コンデンサ素子が外装容器に封入されてコンデンサが形成される。」(第1頁左下欄第14行-同右下欄第4行)
イ 「本発明は上記従来の外装容器の有する欠点を解消し、従来のものに比べて格段に優れた密閉性を有する外装容器を提供するものであってその構成は、アルミニウム電解コンデンサ素子を内部に収納する外装容器において、ケースと該ケース上面に蓋設される蓋とを具え、該蓋の外表面と内表面にはそれぞれ電気絶縁性の被覆材が被覆積層され、更に該蓋の電極貫着部分には電気絶縁性および気密性を保つ電極封止部が形成されることを特徴とする。」(第2頁左上欄第2-11行)
ウ 「以下に本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。本発明の外装容器20はアルミニウム製のケース21とアルミニウム製の蓋22とを具える。該蓋22には電極23a,23bが貫着する電極貫着部分と防爆弁24が介装される通孔25とが設けられている。これら電極貫着部分および通孔25を除く蓋22の外表面および内表面にはそれぞれ電気絶縁性の被覆材26が被覆積層されている。該被覆材26とししてはエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンなどが好適である。又、上記電極貫着部分にはセラミックあるいはガラスよりなる封止材27が嵌着され電気絶縁性および気密性のある電極封止部が形成される。更に該蓋22の外周縁部とケース21の上端縁部とは気密に接合される。接合の方法は、例えば、第2図Aのようにケース21の上端縁部と蓋22の外周縁部とを一体にカーリングして、冷間圧接するかあるいはケース21の上端縁部と蓋22の外周縁部とをカーリングしたすき間に気密性を保持しうる、例えば、エチレン-酢酸ビニルなどを充填してかしめても良い。」(第2頁左上欄第12行-同頁右上欄第13行)
[図:0001401053000001.jpg]
エ 「第2図は、本発明の外装容器の縦断面図」(第2頁左下欄第7-8行)
オ 第2図より、「蓋22の外周縁部とケース21の上端縁部」とは、第2図Aの箇所で「二重巻締め封止」されていることが見て取れる。
(2)引用発明1について
上記(1)イ、ウ、オより、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「アルミニウム電解コンデンサ素子を内部に収納する外装容器において、アルミニウム製のケース21上面に蓋設されるアルミニウム製の蓋22とを具え、該蓋22には電極23a,23bが貫着する電極貫着部分が設けられ、上記電極貫着部分には、ガラスよりなる封止材27が嵌着され電気絶縁性および気密性のある電極封止部が形成され、更に該蓋22の外周縁部とケース21の上端縁部とは気密に接合され、接合の方法は、ケース21の上端縁部と蓋22の外周縁部とを一体にカーリングして、冷間圧接し、二重巻締め封止した、外装容器。」
2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0096】図11(a)は、円筒型の電気化学セル60の断面を示すものである。外装容器は、直径Dの有底円筒型のケース2と円板状のリッド3からなる。ケース2の底面には、ハーメチック封止部が形成されており、ハーメチックガラス5には1つの金属からなる芯線6が貫通して絶縁固定されている。ケース2内には、セルの電極7と図示しない電解質が充填されている。セルの電極7に接続する一対のリードは、芯線6の端面及びリッドとそれぞれ接続している。」
【図11】
[図:0001401053000002.jpg]
「【0099】ここで、ケースの底面にハーメチック封止部を形成する方法を説明する。(a)に示すように、ケースの底面に明けた小孔をバーリング加工を施して形成することができる。また、(b)のように、ケースの底面に孔を設けて、別途準備した金属のリングを前記小孔に気密に溶接し、その後に、前記金属リングにハーメチック封止部を形成することができる。また、(c)のようにケースの板厚を勘案して、ケース底面の板厚を芯線の太さ以上にして、ケース底面に設けた孔に直接ハーメチック封止部を設ける方法もある。」
上記記載及び図面によれば、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されている。
「ハーメチックガラスにより金属からなる芯線を貫通させ絶縁固定させるハーメチック封止部を形成する方法において、孔をバーリング加工を施して形成し、その後に、ハーメチック封止部を形成すること。」
第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「アルミニウム製のケース21」及びその「上面に蓋設されるアルミニウム製の蓋22」が、それぞれ、本願発明における「缶ケース」及び「缶ケースに取り付けられるべき蓋体」に相当する。
イ 上記「第4 1(1)ア」によれば、アルミニウム電解コンデンサの素子は、陽極と対極との間に電解液を含浸したセパレータ紙を介在させて巻回して構成され、該コンデンサ素子が外装容器に封入されるから、引用発明1の「外装容器」は、ケース21と蓋22とが一体にカーリングされた円筒状(つまり、蓋22は円形皿状)と考えるのが自然である。
そして、引用発明1では「ケース21の上端縁部と蓋22の外周縁部とを一体にカーリングして、冷間圧接し、二重巻締め封止」されるから、蓋22はカーリング可能な程度の薄板であることは明らかである。
さらに、引用発明1では「蓋22には電極23a,23bが貫着する」ことから、「蓋22」は「電極23a、23b」を通す孔を有することも当然のことである。
してみると、引用発明1における「電極23a,23bが貫着する電極貫着部分が設けられ」た「アルミニウム製の蓋22」と、本願発明における「蓋体」とは、「通孔を有する円形皿状の金属薄板からなる蓋体」の点で一致する。
しかしながら、本願発明では通孔が「円筒状」であるのに対し、引用発明1ではそのような構成は示されていない点で相違する。
ウ 一般に、電解コンデンサの電極の長さ方向に垂直の方向の断面は円形であることは技術常識であるから、上記イも踏まえれば、引用発明1における「電極貫着部分」を「貫着」する「電極23a,23b」は、本願発明における「この蓋体の前記通孔を貫通した円柱状のリード」に相当する。
エ 引用発明1における「ガラスよりなる封止材27」は、「上記電極貫着部分に」「嵌着され電気絶縁性および気密性のある電極封止部」を「形成」しているから、本願発明における「前記リードと前記蓋体とを気密にガラスで封着したガラスの絶縁材」に相当する。
オ 本願発明では「前記蓋体は、その縁辺部に沿って、前記缶ケースとの二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部を有し」ているのに対し、引用発明1では「該蓋22の外周縁部とケース21の上端縁部とは」「一体にカーリングして、冷間圧接し、二重巻締め封止」しているものの、一体にカーリングして二重巻締め封止を行なう前に、該蓋22の外周縁部に、二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部が形成されると特定されていない点で相違する。
カ 本願発明では「前記係合部は、前記リードの片側の外端面よりも、前記蓋体の前記缶ケースへの取り付け方向と逆方向に長く延ばしたことにより前記蓋体に凹状のクボミを形成し、前記凹状のクボミの底面に前記通孔を配置して、前記リードにおける前記缶ケースの外側に配置される前記リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにした」のに対し、引用発明1ではそのような構成が特定されていない点で相違する。
キ 引用発明1における「気密性のある電極封止部が形成され」た「電極23a,23b」が、本願発明における「気密端子」に相当する。
(2)以上より、本願発明と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。
【一致点】
「缶ケースに取り付けられるべき蓋体であって、通孔を有する円形皿状の金属薄板からなる蓋体と、この蓋体の前記通孔を貫通した円柱状のリードと、前記リードと前記蓋体とを気密にガラスで封着したガラスの絶縁材とを備えていることを特徴とする気密端子。」
【相違点1】
本願発明では通孔が「円筒状」であるのに対し、引用発明1ではそのような構成は示されていない点。
【相違点2】
本願発明では「前記蓋体は、その縁辺部に沿って、前記缶ケースとの二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部を有し」ているのに対し、引用発明1では、一体にカーリングして二重巻締め封止を行なう前に、該蓋22の外周縁部に、二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部が形成されると特定されていない点。
【相違点3】
本願発明では「前記係合部は、前記リードの片側の外端面よりも、前記蓋体の前記缶ケースへの取り付け方向と逆方向に長く延ばしたことにより前記蓋体に凹状のクボミを形成し、前記凹状のクボミの底面に前記通孔を配置して、前記リードにおける前記缶ケースの外側に配置される前記リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにした」のに対し、引用発明1ではそのような構成が特定されていない点。
2 相違点に対する判断
(1)相違点1について
引用文献2に「ハーメチックガラスにより金属からなる芯線を貫通させ絶縁固定させるハーメチック封止部を形成する方法において、孔をバーリング加工を施して形成し、その後に、ハーメチック封止部を形成すること」(「第4 2」「引用文献2に記載された技術」を参照)が記載されているように、ガラスよりなる封止材で電極を貫通して固定させる、いわゆるハーメチック封止において、孔にバーリング加工を施すことは周知技術である。そして、電極が貫通する通孔にバーリング加工が施された形状は、通常円筒状である。
よって、引用発明1においても、電極23a,23bが貫着する電極貫着部分にバーリング加工を施して、その形状を「円筒状」とし、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
一般に、ケースの上端縁部と蓋の外周縁部とを「一体にカーリングして」「二重巻締め封止」する際、蓋の外周縁部に沿って、前記ケースとの二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部を設けることは、周知技術(必要であれば、YouTube、「缶詰巻締工程」、kangiken、10年前、令和4年12月22日閲覧、<URL:https://www.youtube.com/watch?v=qMhuy5BYcAk>を視聴されたい。)である。
したがって、ケースと蓋とを一体にカーリングして二重巻締め封止をし易いよう、上記のような周知技術を採用し、予め蓋の外周縁部に対して外側方向に曲げ加工を施す、即ち、外周縁部に沿ってカール部を設けることは当業者であれば容易に想起し得たことである。
よって、引用発明1において、一体にカーリングして二重巻締め封止を行なう前に、該蓋22の外周縁部に、二重巻締め封止のためのカール部からなる係合部を形成し、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)相違点3について
上記「1(1)イ」で検討したように、引用発明1における「電極23a,23bが貫着する電極貫着部分が設けられ」た「アルミニウム製の蓋22」と、本願発明における「蓋体」とは、「通孔を有する円形皿状の金属薄板からなる蓋体」の点で一致するところ、引用文献1の第2図によれば、皿状の蓋22の底面に「電極23a,23bが貫着する電極貫着部分が設けられ」ることが見てとれるから、引用発明1においても、蓋22に凹状の部分(本願発明の「凹状のクボミ」に相当)が形成され、該凹状の部分の底面に通孔が形成されていると解釈するのが自然である。
そして、引用文献1の第2図からは、「蓋22の外周縁部」が「電極23a,23b」の外端面より「ケース32」への取り付け方向と逆方向に長く延ばし、「ケース32」の外側に配置される「電極23a,23b」の外端面が、凹状の部分の外側に突出しないようにしているか否か判然としないものの、「電極23a、23b」の長さを前記凹状の部分の深さより長くするか又は短くするかは当業者が適宜選択し得ることであって単なる設計的事項に過ぎない。
よって、引用発明1において、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、格別顕著なものということはできない。
3 まとめ
以上から、相違点1ないし相違点3に係る構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 審判請求人の主張について
1 請求人は、令和5年3月17日提出の意見書において以下の点のとおり主張する。
「一方、本発明における気密端子(図1、図2)、電気デバイスパッケージ(図3、図4)は、リードの片側の外端面よりも、蓋体の缶ケースへの取り付け方向と逆方向に長く延ばしたことにより前記蓋体に凹状のクボミを形成し、前記凹状のクボミの底面に通孔を配置して、前記リードにおける前記缶ケースの外側に配置される前記リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにしたことで、前記蓋体の前記缶ケースの外縁枠よりも、前記リードの片側の外端面が奥まった位置に配置されるため、気密端子のガラス体の周囲が缶ケースの外縁枠で守られるのでガラス体が破壊され難い構成であると言えます。」(3頁17ないし末行を参照)
2 審判請求人の上記主張について検討する。
引用発明1のように、蓋体に設けた電極貫着部分にガラスよりなる封止材が嵌着された構造にあっては、電極に何らかの外力が加われば、電極と蓋体とを封着する封止材に応力が発生し、封止材が破壊される可能性があることは明らかであるし、蓋体の凹状部分の深さの程度が大きいほど、電極の外部への露出を少なくすることができ、封止材に対する外部からの影響はケースの外縁枠により少なくなることも当然のことである。
してみれば、本願発明において「リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにした」ことにより「ガラス体が破壊され難い構成」が得られるという効果は格別顕著なものとはいえない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
なお、本願明細書には、「リードの片側の外端面よりも、蓋体の缶ケースへの取り付け方向と逆方向に長く延ばしたことにより前記蓋体に凹状のクボミを形成し、前記凹状のクボミの底面に通孔を配置して、前記リードにおける前記缶ケースの外側に配置される前記リードの片側の外端面が、前記凹状のクボミの外側に突出しないようにした」ことで、「蓋体の前記缶ケースの外縁枠よりも、前記リードの片側の外端面が奥まった位置に配置されるため、気密端子のガラス体の周囲が缶ケースの外縁枠で守られるのでガラス体が破壊され難い構成」を得ることは何等記載されていないことを付記しておく。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-003615