特許拒絶査定不服審判
2024-015741
セラミック電子部品およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-015741
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-125511
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年06月12日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】太陽誘電株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人片山特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 分類
- P18 .121-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-125511「セラミック電子部品およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 2月 3日出願公開、特開2022- 21734〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1.手続の経緯
本願は、令和2年7月22日に出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 3月 1日付け:拒絶理由通知
令和 6年 5月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年 6月27日付け:拒絶査定
令和 6年10月 1日 :審判請求書、上申書の提出
2.本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和6年5月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
セラミックを主成分とする第1誘電体層と、第1内部電極層と、セラミックを主成分とする第2誘電体層と、第2内部電極層とがこの順に積層され、略直方体形状を有し、前記第1内部電極層が前記略直方体形状の第1端面に露出し、前記第2内部電極層が前記略直方体形状の第2端面に露出するように形成された積層構造と、
前記第2内部電極層と同じ層内において、前記第1端面側に前記第2内部電極層と離間して設けられた導電体層と、を備え、
前記第2内部電極層と前記導電体層との間のギャップの距離が、30μm以下であり、
前記積層構造が2以上積層されており、
積層方向において隣り合う前記ギャップは、積層方向から見た場合に、前記第1端面側の端および前記第2端面側の端の少なくともいずれか一方が前記ギャップの距離の1/5以上、3/5以下ずれていることを特徴とするセラミック電子部品。」
3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開平9-190946号公報
4.引用文献の記載及び引用発明
(1)上記引用文献1(特開平9-190946号公報)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
「【請求項1】 セラミック中に配設され、一端側が素子の一方の端面に引き出された容量形成用の第1の内部電極と、
前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する、一端側が素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出された容量形成用の第2の内部電極と、
前記第1の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第1のダミー電極と、
前記第2の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第2のダミー電極とがセラミック層を介して交互に積み重ねられた構造を有する積層セラミック電子部品であって、
第1及び第2の内部電極、及び第1及び第2のダミー電極の各電極が、積み重ね方向から見た場合に同じ位置に重複して配設されないように、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置を、一層ごと又は複数層ごとに、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向に所定距離Lだけずらせたことを特徴とする積層セラミック電子部品。
【請求項2】 前記各電極の、対応する電極との位置ずれ量Lが、前記内部電極と前記ダミー電極の間の距離Gの50%以上であることを特徴とする請求項1記載の積層セラミック電子部品。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層セラミック電子部品に関し、詳しくは、セラミック中に内部電極とダミー電極を配設してなる積層セラミック電子部品に関する。」
「【0011】
【作用】本発明の積層セラミック電子部品においては、セラミックを介して積み重ねられる第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置を、一層ごと又は複数層ごとに、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向に所定距離Lだけずらせるようにしているので、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の各電極のすべてが、積み重ね方向から見た場合に同じ位置に重複して配設されることを抑制して、内部電極の湾曲やそれによるデラミネーションなどの内部欠陥の発生を防止することが可能になる。
【0012】また、各電極の位置ずれ量Lを、内部電極とダミー電極の間の距離Gの50%以上にすることにより、歪みの発生を抑制して、デラミネーションなどの内部欠陥の発生を確実に防止することができるようになる。」
「【0016】[製造方法]まず、セラミック原料粉末をバインダーと混合してなるスラリーを用意し、これを厚み10μmのセラミックグリーンシートに成形する。そして、このセラミックグリーンシート上に導電ペーストを印刷した後、これを複数枚積み重ねることにより積層素子を作成した。それからこの積層素子のバインダーを分解、除去した後、所定の温度で焼成した。
【0017】それから、外部電極形成用の金属ペーストを塗布、焼付けすることにより図1,図2及び図3に示すように、セラミック1中に、第1及び第2の内部電極2(2a,2b)、第1及び第2のダミー電極5(5a,5b)が配設され、かつ、素子(積層コンデンサ素子)3の両側端面に引き出された第1及び第2の内部電極2(2a,2b)と導通する外部電極4が配設された構造を有する積層セラミックコンデンサを得た。このときの内部電極の有効積層枚数は150枚とした。」
「【0023】
【表1】
[図:0001425588000001.jpg]
【0024】表1において、No.1~9の試料は、いずれも本発明の構造を有する積層セラミックコンデンサであるが、そのうちのNo.8及び9の試料は、素子厚(セラミック層の厚さ)=7μm、ギャップ10の距離G=5μmという条件のものである。なお、その他のNo.1~7の試料は、素子厚=10μmであり、ギャップ10の距離Gを、表1に示すように、100~10μmの間で変化させている。なお、No.1~9の試料において、No.5は図2に示す構造、No.6は図3に示す構造、その他は図1に示す構造を有するものである。
・・・(中略)・・・。
【0026】・・・(前略)・・・
L1=電極の位置ずれ量(L)-ギャップ10の距離(G)
を示している。なお、上記より、位置ずれ量LはL1+Gとなる。すなわち、L1は、電極の位置がギャップ10の距離Gよりどれだけ多くずれているかを示しており、L1=0のとき、電極がギャップ10の距離Gと同じだけずれていることを意味している。
・・・(中略)・・・。
【0029】また、No.8及び9の試料については、デラミネーションの発生は認められなかったが、素子厚(7μm)に対して、ギャップの距離Gが5μmと小さいことからショート不良が発生している。このように、本発明の積層セラミック電子部品においては、素子厚とギャップの距離の関係も考慮することが望ましい。なお、一般的には、各電極の、対応する電極との位置ずれ量Lを、ギャップの距離Gの50%以上とすることが望ましい。」
「【0034】また、各電極の位置ずれ量Lを、内部電極とダミー電極の間の距離Gの50%以上にすることにより、歪みの発生を抑制して、デラミネーションなどの内部欠陥の発生を確実に防止することができる。」
「【図1】
[図:0001425588000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001425588000003.jpg]
」
(2)引用文献1の上記記載によれば、次の事項が記載されている。
ア 【請求項1】、段落[0001]によれば、引用文献1には、「積層セラミック電子部品」が記載されている。
イ 【請求項1】によれば、「積層セラミック電子部品」は、「セラミック中に配設され、一端側が素子の一方の端面に引き出された容量形成用の第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する、一端側が素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出された容量形成用の第2の内部電極と、前記第1の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第1のダミー電極と、前記第2の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第2のダミー電極とがセラミック層を介して交互に積み重ねられた構造」を有する。
また、段落【0016】の「セラミックグリーンシート上に導電ペーストを印刷した後、これを複数枚積み重ねることにより積層素子を作成した。それからこの積層素子のバインダーを分解、除去した後、所定の温度で焼成した。」、段落【0017】の「外部電極形成用の金属ペーストを塗布、焼付けすることにより図1,図2及び図3に示すように、セラミック1中に、第1及び第2の内部電極2(2a,2b)、第1及び第2のダミー電極5(5a,5b)が配設され、かつ、素子(積層コンデンサ素子)3の両側端面に引き出された第1及び第2の内部電極2(2a,2b)と導通する外部電極4が配設された構造を有する積層セラミックコンデンサを得た。このときの内部電極の有効積層枚数は150枚とした。」との記載、及び、図1によれば、「第1及び第2の内部電極」、「第1及び第2のダミー電極」は複数枚積み重ねられ、該「構造」とは、略直方体形状である「素子」の構造であるといえる。
してみると、引用文献1の「積層セラミック電子部品」には、「セラミック中に配設され、一端側が素子の一方の端面に引き出された容量形成用の第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する、一端側が素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出された容量形成用の第2の内部電極と、前記第1の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第1のダミー電極と、前記第2の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第2のダミー電極とがセラミック層を介して交互に複数枚積み重ねられた、略直方体形状である素子の構造」を有するといえる。
ウ 【請求項1】、【0011】によれば、「積層セラミック電子部品」では、「第1及び第2の内部電極、及び第1及び第2のダミー電極の各電極が、積み重ね方向から見た場合に同じ位置に重複して配設されないように、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置を、一層ごと又は複数層ごとに、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向に所定距離Lだけずらせ」ることが記載されている。
エ 段落【0024】の「なお、その他のNo.1~7の試料は、素子厚=10μmであり、ギャップ10の距離Gを、表1に示すように、100~10μmの間で変化させている。」と記載されているところ、段落【0023】の表1によれば、No.3の試料のギャップ10の「G」は「20μm」である。
また、同表1によれば、No.3の試料の「L1」は「0μm」であるところ、段落【0026】の「L1=電極の位置ずれ量(L)-ギャップ10の距離(G)を示している。なお、上記より、位置ずれ量LはL1+Gとなる。すなわち、L1は、電極の位置がギャップ10の距離Gよりどれだけ多くずれているかを示しており、L1=0のとき、電極がギャップ10の距離Gと同じだけずれていることを意味している。」との記載によれば、No.3の位置ずれ量Lは「20μm」(=0μm(L1)+20μm(G))である。
(3)上記(2)によれば、No.3の試料に着目すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「セラミック中に配設され、一端側が素子の一方の端面に引き出された容量形成用の第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する、一端側が素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出された容量形成用の第2の内部電極と、前記第1の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第1のダミー電極と、前記第2の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設された第2のダミー電極とがセラミック層を介して交互に複数枚積み重ねられた、略直方体形状である素子の構造を有する積層セラミック電子部品であって、
第1及び第2の内部電極、及び第1及び第2のダミー電極の各電極が、積み重ね方向から見た場合に同じ位置に重複して配設されないように、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置を、一層ごと又は複数層ごとに、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向に所定距離Lだけずらせ、
前記距離Gは20μmであり、
前記距離Lは20μmである、
積層セラミック電子部品。」
5.対比・判断
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明において「セラミック中に配設され、」「第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する」「第2の内部電極と」「がセラミック層を介して交互に複数枚積み重ねられ」ていることから、引用発明においても、第1の「セラミック層」、「第1の内部電極」、第2の「セラミック層」、「第2の内部電極」の順に積層されているといえ、本願発明の「セラミックを主成分とする第1誘電体層と、第1内部電極層と、セラミックを主成分とする第2誘電体層と、第2内部電極層とがこの順に積層され」ることに相当する。
また、引用発明の「素子」は「略直方体形状であ」り、「第1の内部電極」が「素子の一方の端面に引き出され」、「第2の内部電極」が「素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出され」ることは、本願発明の「略直方体形状を有し、前記第1内部電極層が前記略直方体形状の第1端面に露出し、前記第2内部電極層が前記略直方体形状の第2端面に露出する」ことに相当する。
してみれば、引用発明において、「セラミック中に配設され、」「第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する」「第2の内部電極と」「がセラミック層を介して交互に複数枚積み重ねられ」、「略直方体形状であ」り、「第1の内部電極」が「素子の一方の端面に引き出され」、「第2の内部電極」が「素子の前記第1の内部電極が引き出された端面とは逆側の端面に引き出され」る「素子の構造」は、本願発明の「セラミックを主成分とする第1誘電体層と、第1内部電極層と、セラミックを主成分とする第2誘電体層と、第2内部電極層とがこの順に積層され、略直方体形状を有し、前記第1内部電極層が前記略直方体形状の第1端面に露出し、前記第2内部電極層が前記略直方体形状の第2端面に露出するように形成された積層構造」に相当する。
(イ)引用発明の「第2のダミー電極」は、「第2の内部電極の素子の端面に引き出されていない方の端部側に、該端部と所定の距離Gをおいて配設され」ていることから、「第2の内部電極」と同じ層において、「第1の内部電極が引き出された端面」側に「第2の内部電極」と「所定の距離Gをおいて配設」されているといえ、本願発明の「前記第2内部電極層と同じ層内において、前記第1端面側に前記第2内部電極層と離間して設けられた導電体層」に相当する。
(ウ)引用発明の「第2の内部電極」と「第2のダミー電極」との間の「所定の距離G」である「20μm」は、本願発明の「第2内部電極層と前記導電体層との間のギャップの距離」の「30μm以下」の範囲に含まれる。
(エ)引用発明において「セラミック中に配設され、」「第1の内部電極と、前記第1の内部電極とセラミック層を介して対向する」「第2の内部電極と」「がセラミック層を介して交互に複数枚積み重ねられ」ている「素子の構造」は、本願発明の「積層構造が2以上積層され」ることに相当する構成を備えているといえる。
(オ)引用発明では、「第1及び第2の内部電極、及び第1及び第2のダミー電極の各電極が、積み重ね方向から見た場合に同じ位置に重複して配設されないように、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置を、一層ごと」「に、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向に所定距離Lだけずらせ」ていることから、「積み重ね方向」に隣り合う「所定の距離G」は、「積み重ね方向から見た場合」、「素子」のいずれかの「端面」側の端が「所定距離Lだけず」れているといえ、本願発明とは「積層方向において隣り合う前記ギャップは、積層方向から見た場合に、前記第1端面側の端および前記第2端面側の端の少なくともいずれか一方がずれている」点で共通する。
ただし、ギャップのずれ量に関し、本願発明は「ギャップの距離の1/5以上、3/5以下」であるのに対し、引用発明は20μmである点で相違する。
(カ)引用発明の「積層セラミック電子部品」は、本願発明の「セラミック電子部品」に相当する。
イ よって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「セラミックを主成分とする第1誘電体層と、第1内部電極層と、セラミックを主成分とする第2誘電体層と、第2内部電極層とがこの順に積層され、略直方体形状を有し、前記第1内部電極層が前記略直方体形状の第1端面に露出し、前記第2内部電極層が前記略直方体形状の第2端面に露出するように形成された積層構造と、
前記第2内部電極層と同じ層内において、前記第1端面側に前記第2内部電極層と離間して設けられた導電体層と、を備え、
前記第2内部電極層と前記導電体層との間のギャップの距離が、30μm以下であり、
前記積層構造が2以上積層されており、
積層方向において隣り合う前記ギャップは、積層方向から見た場合に、前記第1端面側の端および前記第2端面側の端の少なくともいずれか一方がずれていることを特徴とするセラミック電子部品。」
(相違点)
ギャップのずれ量に関し、本願発明は「ギャップの距離の1/5以上、3/5以下」であるのに対し、引用発明は20μmである点。
(2)相違点に対する判断
引用文献1の段落【0012】に「各電極の位置ずれ量Lを、内部電極とダミー電極の間の距離Gの50%以上にすることにより、歪みの発生を抑制して、デラミネーションなどの内部欠陥の発生を確実に防止することができるようになる。」と、【0029】に「なお、一般的には、各電極の、対応する電極との位置ずれ量Lを、ギャップの距離Gの50%以上とすることが望ましい。」、同段落【0034】に「各電極の位置ずれ量Lを、内部電極とダミー電極の間の距離Gの50%以上にすることにより、歪みの発生を抑制して、デラミネーションなどの内部欠陥の発生を確実に防止することができる。」との記載によれば、引用文献には、各電極の位置ずれ量Lを、ギャップの距離Gの50%以上とする技術思想が開示されている。
そして、引用発明では、「内部電極」と「ダミー電極」とは「20μm」離れ、「第1及び第2の内部電極と、第1及び第2のダミー電極の位置」は「一層ごと」「に、第1及び第2の内部電極の引出し方向に平行な方向」に「20μm」ずれている、即ち、ギャップの距離Gの100%ずれているところ、上記技術思想を踏まえれば、引用発明のずれ量である「距離L」をギャップの「距離G」の50%以上100%以下の範囲内に設定することに格別な困難性はなく、例えば、「距離L」を「距離G」の50%程度、即ち、「距離G」の「1/5以上、3/5以下」である1/2程度とすることは当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。
よって、相違点に係る構成は、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たことである。
(3)まとめ
以上から、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6.審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年10月1日付け審判請求書(下から9ないし3行)において、「ギャップのずらし量をギャップの距離の3/5以下とすることにより、ギャップが分散する領域の範囲を制限することができるため、エンドマージンが占める領域を小さくできるようになり、容量部を大きくすることができます。それにより、小型大容量化を図ることができます。なお、引用文献1の図3でもギャップをずらす構成が開示されていますが、積層方向から見た場合に、各ギャップが重ならなくなるまでずらしてあります。この構成では、エンドマージンが大きくなり、容量部が小さくなってしまいます。」と主張する。
しかしながら、本願明細書には、「ギャップのずらし量をギャップの距離の3/5以下とすることにより、・・・、エンドマージンが占める領域を小さくできるようになり、容量部を大きくすることができます。それにより、小型大容量化を図ることができます」との主張を裏付ける記載や示唆は見当たらないから、当該主張は、本願明細書に基づくものとはいえない。
また、引用文献1の図3は、「内部電極2(2a,2b)とダミー電極5(5a,5b)の間のギャップ10(10a,10b)の位置が距離Lだけずれるように構成されており、かつ、位置ずれ量Lが、ギャップ10の距離Gよりも大きくなるように構成されている」実施例(同段落【0021】)の一つに過ぎない。そして、上記第4 2(1)で述べたように、引用文献には、各電極の位置ずれ量Lを、ギャップの距離Gの50%以上とすることが記載されており、引用発明において、「距離L」を「距離G」の50%程度、即ち、1/2程度とすることは当業者が適宜なし得たことに過ぎない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
なお、審判請求人は、審判請求書と同日付けで上申書を提出しているが、当該上申書には、本願発明に対する上記判断についての主張は見当たらないから、本願は拒絶すべきものである。
7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015741