特許異議申立
2021-701227
溢水影響評価装置、溢水影響評価方法およびそのための記録媒体
- 審判番号
- 2021-701227
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-151365
- 登録番号
- 6914775
- 請求日
- 2021年12月22日
- 審決日
- 2022年10月07日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】弁理士法人サクラ国際特許事務所
- 【権利者】東芝エネルギーシステムズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サクラ国際特許事務所
- 【異議申立人】渡辺 末治
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 渡辺 努
- 審判官 新井 寛
- 分類
- P1651.851-YAA(G06F) / P1651.853-YAA(G06F) / P1651.121-YAA(G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6914775号発明「溢水影響評価装置、溢水影響評価方法およびそのための記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6914775号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8、9について訂正することを認める。
特許第6914775号の請求項1ないし3、5ないし9に係る特許を維持する。
特許第6914775号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6914775号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成29年8月4日に出願されたものであって、令和3年7月16日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和3年8月4日)がされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年12月22日 :特許異議申立人渡辺末治により本件の請求項1~9の特許に対する特許異議の申立て及び甲第1号証~甲第5号証の提出
令和4年 4月 5日付け:取消理由通知書
同年 6月 7日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
同年 6月15日付け:手続補正指令書
同年 7月11日 :特許権者による訂正請求書を補正する手続補正書の提出
同年 8月19日 :特許異議申立人による意見書及び甲第6号証~甲第12号証の提出
以下、令和4年7月11日に補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力部と、
を有すること」と記載されているのを、
「前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力部と、
を有し、
前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能であり、
前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力すること」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2ないし3,5ないし7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項4に記載の溢水影響評価装置。」と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の溢水影響評価装置。」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6および7も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の溢水影響評価装置。」と記載されているのを、
「請求項1ないし3,5および6のいずれか一項に記載の溢水影響評価装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「 前記演算部が、前記記憶部に記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力ステップと、」と記載されているのを、
「 前記演算部が、前記記憶部に記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて出力する出力ステップと、」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に、
「 前記記憶ステップで記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力ステップと、」と記載されているのを、
「 前記記憶ステップで記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて出力する出力ステップと、」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)請求項1~7について
ア 一群の請求項
訂正前の請求項2~7は、訂正前の請求項1を直接もしくは間接に引用しており、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
そして、訂正事項1~4は、一群の請求項[1~7]についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「演算部」について、「前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能」であることに限定し、「出力部」について、「前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力」することに限定したものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、当該訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2、3、5~7についても同様のことがいえる。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範 囲内の訂正であること
【0019】には、「止水対策によって溢水経路の一部を閉鎖したり流動の抑制を図ることができ、それに合わせて溢水経路12の条件を追加したり変更したりすることができる。」、【0045】には、「以上説明した溢水影響評価装置による計算を所定の条件で行った後に、たとえば、部分的な止水対策を施すなどにより条件を変更して、再度計算し、これらの計算結果を比較することによって、止水対策などの有効性を確認することもできる。」との記載があることから、「前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能」であることが裏付けられているといえる。
また、【0017】には、「各区画11について、溢水演算の結果として、区画11内の滞留水量および水位(没水水位)が計算結果として求められ、溢水経路図に表示される。」、【0011】には、「本発明に係る溢水影響評価装置の一実施形態における複数の区画およびそれらを互いに接続する溢水経路の関係を表示する溢水経路図」、【0030】には、「画面表示される溢水経路図」、【0043】には、「溢水演算部37が、伝搬範囲の評価と各区画の没水水位の計算を行い、出力部24が、結果を溢水経路図に追記する。」、訂正前の【請求項4】には、「前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を表示する溢水経路図を表示したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて表示する」との記載があることから、「前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力」することが裏付けられているといえる。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2、3、5~7の記載について訂正するものではなく、請求項2、3、5~7のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項2により、訂正前の請求項4が削除されたため、削除された請求項4を引用する請求項5は、明瞭でない記載となった。
したがって、訂正事項2により明瞭でない記載となった記載を訂正する訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項5について、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、当該訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項6、7についても同様のことがいえる。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項5について、訂正前後の構成は同じものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項5の記載以外に、訂正前の請求項6、7の記載について訂正するものではなく、請求項6、7のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
オ 訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項2により、訂正前の請求項4が削除されたため、削除された請求項4を引用する請求項7は、明瞭でない記載となった。
したがって、訂正事項2により明瞭でない記載となった記載を訂正する訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項7について、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項7について、訂正前後の構成は同じものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)請求項8について
ア 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項8の「演算ステップ」について、「一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで」計算することに限定し、「没水水位を出力する出力ステップ」について、「前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、」「前記溢水経路図に重ねて」出力することに限定したものである。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項8について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範 囲内の訂正であること
上記(1)イ(イ)で検討したように、【0019】、【0045】の記載から、「演算ステップ」について、「一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで」計算することが裏付けられているといえる。
また、【0017】、【0011】、【0030】、【0043】、訂正前の【請求項4】の記載から、「没水水位を出力する出力ステップ」について、「前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、」「前記溢水経路図に重ねて」出力することが裏付けられているといえる。
したがって、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項5に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)請求項9について
ア 訂正事項6
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項9の「演算ステップ」について、「一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで」計算することに限定し、「没水水位を出力する出力ステップ」について、「前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、」「前記溢水経路図に重ねて」出力することに限定したものである。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項9について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範 囲内の訂正であること
上記(2)ア(イ)で検討したように、【0019】、【0045】の記載から、「演算ステップ」について、「一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで」計算することが裏付けられているといえる。
また、【0017】、【0011】、【0030】、【0043】、訂正前の【請求項4】の記載から、「没水水位を出力する出力ステップ」について、「前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、」「前記溢水経路図に重ねて」出力することが裏付けられているといえる。
したがって、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項6に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正請求の訂正事項1~4は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
また、本件訂正請求の訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」もしくは特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
さらに、本件においては、訂正前の全請求項(請求項1~9)について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1~9に係る訂正事項1、2、5、6に関して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲の請求項の記載を、訂正事項1~6のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8、9について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は適法になされたものであり、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、「本件訂正発明1~9」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定される以下のとおりのものである。
ここで、本件訂正発明1の各構成には、A~Gの符号を当審において付した。以下、「構成A」~「構成G」という。
【請求項1】(本件訂正発明1)
A 溢水源を有する建造物の溢水状況を計算する溢水影響評価装置であって、
B 前記建造物を溢水経路で互いに接続され階ごとに2以上に分割してなる区画それぞれの大きさを含む区画情報と、前記溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報と、前記溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報と、を受け入れる入力部と、
C 前記入力部で入力された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とを記憶する記憶部と、
D 前記記憶部に記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する演算部と、
E 前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力部と、を有し、
F 前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能であり、
G 前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力することを特徴とする
A 溢水影響評価装置。
【請求項2】(本件訂正発明2)
前記溢水経路が2個以上であって、前記区分が3個以上であること、を特徴とする請求項1に記載の溢水影響評価装置。
【請求項3】(本件訂正発明3)
前記溢水流路のうちの少なくとも一つの溢水流路が、高さ位置が互いに異なる2個の前記区画を互いに接続するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溢水影饗評価装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(本件訂正発明5)
前記溢水経路図で、前記各区画が没水している状況にあるか否かが識別可能に表示されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の溢水影響評価装置。
【請求項6】(本件訂正発明6)
前記溢水経路図は、少なくとも各区画を識別する文字および当該区画の没水水位を表す文字と、前記区画ごとに前記文字を囲む外枠の表示を含み、
前記文字、前記外枠および前記外枠で囲まれた背景領域のうちの少なくとも一部の色を変化させることによって、前記各区画が没水しているか否かが識別可能に表示されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の溢水影響評価装置。
【請求項7】(本件訂正発明7)
前記区画情報は、当該区画内に配置された設備の情報を含み、
前記演算部は、前記区画の没水水位と当該区画内に配置された前記設備の情報に基いて、当該没水による当該設備の機能の喪失を判断し、
前記出力部は、前記演算部が前記設備の機能の喪失を判断したときに、当該設備の機能の喪失を表示すること、
を特徴とする請求項1ないし3,5およぴ6のいずれか一項に記載の溢水影響評価装置。
【請求項8】(本件訂正発明8)
溢水源を有する建造物の溢水状況を、コンピュータが計算する溢水影響評価方法であって、
前記コンピュータは、入力部と記憶部と演算部と出力部を備え、
当該記溢水影響評価方法は、
前記入力部が、前記建造物を溢水経路で互いに接続され階ごとに2以上に分割してなる区画それぞれの大きさを含む区画情報の入力と、前記溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報の入力と、前記溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報の入力と、を受け入れる入カステップと、
前記記憶部が、前記入カステップで受け入れた前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とを記憶する記憶ステップと、
前記演算部が、前記記憶部に記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記区画および前記溢水済路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて出力する出カステップと、
を有することを特徴とする溢水影響評価方法。
【請求項9】(本件訂正発明9)
溢水源を有する建造物の溢水状況を、コンピュータに計算させる溢水影響評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
前記建造物を溢水経路で互いに接続され階ごとに2以上に分割してなる区画それぞれの大きさを含む区画情報の入力と、前記溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報の入力と、前記溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報の入力と、を受け入れる入カステップと、
前記入カステップで受け入れた前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記区画情報と前記経路情報と前記溢水源情報とに基いて、一部の前記溢水経路を閉鎖可能な条件のもとで前記区画それぞれの没水水位を計算する演算ステップと、
前記出力部が、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて出力する出カステップと、
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
第4 取消理由の概要
令和4年4月5日付けで通知した取消理由は、以下のとおりである。
理由1.(進歩性)
請求項1~3、8、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、8、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
請求項4~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第5号証に記載された技術及び周知技術(甲第2号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:“原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド”,原子力規制委員会,平成25年6月
甲第2号証:特開2008-310036号公報
甲第4号証:特開2007-280161号公報
甲第5号証:“美浜発電所3号機発電用原子炉施設の溢水防護に関する説明書に係る補足説明資料 その他発電用原子炉施設の付属施設のうち、浸水防護施設について”,関西電力株式会社,平成28年10月
第5 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明もしくは技術
異議申立人は、令和3年12月22日に、特許異議の申立てとともに、訂正前の請求項1~9に係る発明が、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであることを立証するための証拠として、甲第1号証~甲第5号証を提出し、令和4年8月19日に、意見書とともに本件訂正発明1~9が、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであることを立証するための証拠として、甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証を提出している。
なお、甲第6号証、甲第7号証、甲第9号証、甲第11号証は、それぞれ、甲第1号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第10号証の公開年月日を立証するための証拠として提出されたものである。
以下では、甲第1号証~甲第5号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明もしくは技術について検討する。
1 甲第1号証(“原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド”)
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証の「原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド」には、以下のア~クの記載がある。(下線は合議体が付したものである。また、以下の記載において、「○1」、「○2」は、それぞれ、原文では、○の中に1、○の中に2である。)
ア 「1.総則
原子力発電所における安全上重要な設備は、多重性、多様性を確保するとともに、適切な裕度をもって設計され、適切に維持管理されるなど損傷防止上の配慮がなされている。
また、安全上重要な設備は、一般的に床から比較的高い位置に設置されていること、万一漏えいが発生した場合でも建屋最下層に設置されたサンプに集められ、ポンプにより排水するなど、溢水事象に対する配慮がなされた設計としている。
本評価ガイドは、原子力発電所内で発生する溢水に対し、原子炉施設の安全性を損なうことのないことを評価するものである。
ここで、考慮する溢水源は、原子炉格納容器内、及び原子炉格納容器外での溢水(施設内の配管、機器の破断、火災時の消火散水等)と建屋外での溢水(屋外タンク、貯水池)を対象にする。
1.1 一般
原子力規制委員会が定める「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」第12条において、発電用原子炉施設内おける溢水等による損傷の防止として、設計基準対象施設が、発電用原子炉施設内における溢水の発生によりその安全性を損なうおそれがある場合は、防護措置その他の適切な措置を講じなければならないとしている。本評価ガイドは、当該規定に定める内部溢水防護に関連して、原子力発電所(以下、「発電所」という。)に設置される原子炉施設が、内部溢水に対して、重要度の特に高い安全機能を有する系統の安全機能、並びに使用済燃料貯蔵プール(使用済燃料ピット)の冷却、給水機能が喪失することのないよう、適切な防護措置が施されているか評価するための手順の一例を示すものである。また、本評価ガイドは、内部溢水影響評価の妥当性を審査官が判断する際に、参考とするものである。」(1頁1~23行)
イ 「2.原子炉施設の溢水評価
2.1 溢水源及び溢水量の想定
溢水源としては、発生要因別に分類した以下の溢水を想定する。
(1) 溢水の影響を評価するために想定する機器の破損等により生じる溢水
(2) 発電所内で生じる異常状態(火災を含む)の拡大防止のために設置される系統からの放水による溢水
(3) 地震に起因する機器の破損等により生じる溢水
ここで、上記(1)、(2)の溢水源の想定にあたっては、一系統における単一の機器の破損とし、他の系統及び機器は健全なものと仮定する。また、一系統にて多重性又は多様性を有する機器がある場合においても、そのうち単一の機器が破損すると仮定する。
ユニット間で共用する建屋及び一体構造の建屋に設置される機器にあっては、共用、非共用機器に係わらずその建屋内で単一の溢水源を想定し、建屋全体の溢水経路を考慮する。
なお、上記(3)の地震に起因する溢水量の想定において、基準津波によって、取水路、排水路等の経路から安全機能を有する設備周辺への浸水が生じる場合、又は地震時の排水ポンプの停止によって原子炉施設内への地下水の浸入が生じる場合には、その浸水量を加味すること。
2.1.1 溢水の影響を評価するために想定する機器の破損等により生じる溢水
破損を想定する機器は、配管(容器の一部であって、配管形状のものを含む。)とする。配管の破損は、内包する流体のエネルギーに応じて○1高エネルギー配管及び○2低エネルギー配管の2種類に分類し、破損を想定する。分類にあたっては、付録Aによること。(解説-2.1.1-1)
破損を想定する位置は、安全機能への影響が最も大きくなる位置で漏水が生じるものとする。ただし、配管の高さや引き回し等の関係から保有水量の流出範囲が明確に示せる場合は、その範囲の保有水量を放出するものとして溢水量を算出できる。(流体を内包する配管の破損による溢水の詳細評価については附属書Aを参照のこと。)
溢水量は、以下を考慮して破損を想定する系統が漏えいするものとして求める。
・高エネルギー配管については、完全全周破断
・低エネルギー配管については、配管内径の1/2の長さと配管肉厚の1/2の幅を有する貫通クラック(以下、「貫通クラック」という。)(解説-2.1.1-2)
なお、循環水管の破損は、過去の事例等を考慮して伸縮継手部に設定すること。(解説-2.1.1-3)」(4頁17行~5頁13行)
ウ 「2.2 溢水影響評価
2.2.1 安全設備に対する溢水影響評価
溢水に対する原子炉施設の安全確保の考え方は、以下のとおりとする。
溢水の影響評価にあたっては、発電所内で発生した溢水に対して、重要度の特に高い安全機能を有する系統が、その安全機能を失わないこと(多重性又は多様性を有する系統が同時にその機能を失わないこと)を確認する。
溢水により原子炉に外乱が及び、かつ、安全保護系、原子炉停止系の作動を要求される場合には、その影響(溢水)を考慮し、安全評価指針に基づき安全解析を行う必要がある。
また、中央制御室及び現場操作が必要な設備については、溢水の影響により接近の可能性が失われないことも評価対象とする。
2.2.2 溢水から防護すべき対象設備
2.1項の溢水源及び溢水量の想定にあたっては発生要因別に分類したが、溢水から防護すべき対象設備は、重要度の特に高い安全機能を有する系統が、その安全機能を適切に維持するために必要な設備を防護対象設備とする。
2.2.3 溢水防護区画の設定
溢水防護に対する評価対象区画は、2.2.2項に該当する溢水防護対象設備が設置されている全ての区画、中央制御室及び現場操作が必要な設備へのアクセス通路について設定すること。
全ての防護対象設備が対象となっていることを確認するために、2.2.2項に該当する防護対象設備の系統図及び配置図を照合しなければならない。
また、アクセス通路については、図面等により図示されていることを確認する。
なお、同じ部屋であっても、溢水による影響を考慮した堰等で区切られている場合には、 区切られた区画を溢水防護区画として取り扱うことができる。
2.2.4 溢水影響評価
溢水影響評価においては、評価対象区画で想定される溢水事象に対し、その防護対象設備が没水の影響を受けずその機能が確保されるか否かを評価する。(図-1)
評価対象区画は、漏えい想定箇所を起点とした溢水経路上に存在する全ての溢水防護区画を対象とする。
(1)溢水経路の設定
溢水経路の設定にあたっては、溢水防護区画内漏えいと溢水防護区画外漏えいの2通りの溢水経路を想定する。
a.溢水防護区画内漏えいでの溢水経路
溢水防護区画内漏えいでの溢水経路の評価を行う場合、防護対象機器の存在する溢水防護区画の水位が最も高くなるように当該溢水区画から他区画への流出がないように溢水経路を設定する。
評価を行う場合の各構成要素の溢水に対する考え方を以下に示す。
(a) 床ドレン
評価対象区画に床ドレン配管が設置され他の区画とつながっている場合であっても、目皿が1つの場合は、他の区画への流出は想定しないものとする。
ただし、同一区画に目皿が複数ある場合は、流出量の最も大きい床ドレン配管1本からの流出は期待できないものとする。この場合には、床ドレン配管における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価すること。
(b) 床面開口部及び床貫通部
評価対象区画床面に床開口部又は貫通部が設置されている場合であっても、床面開口部又は床貫通部から他の区画への流出は、考慮しないものとする。
ただし、以下に掲げる場合は、評価対象区画から他の区画への流出を期待することができる。
流出を期待する場合は、床開口部及び床貫通部における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価すること。
○1評価対象区画の床貫通部にあっては、貫通する配管、ダクト、ケーブルトレイ又は電線管と貫通部との間に隙間があって、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合
○2評価対象区画の床面開口部にあっては、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合
(c) 壁貫通部
評価対象区画の境界壁に貫通部が設置され、隣との区画の貫通部が溢水による水位より低い位置にある場合であっても、その貫通部からの流出は考慮しないものとする。
ただし、当該壁貫通部を貫通する配管、ダクト、ケーブルトレイ又は電線管と貫通部との間に隙間があって、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合は、他の区両への流出を考慮することができる。
流出を期待する場合は、壁貫通部における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価すること。」(8頁21行~10頁20行)
エ 「(2)溢水防護区画の評価に用いる各項目の算出
溢水防護区画の評価で没水、被水評価の対象区画の分類例を図-2に示す。また、溢水防護区両の評価で蒸気評価の対象区画の分類例を図-3に示す。
各項目の算出方法を以下に示す。
a.没水評価に用いる水位の算出方法
影響評価に用いる水位の算出は、漏えい発生階とその経路上の評価対象区画の全てに対して行う。
水位:Hは、下式に基づいて算出する。
H=Q/A
ただし、各項目は以下とする。
Q:流人量
「2.1溢水源及び溢水量の想定」で想定した溢水量に基づき、「2.2.4(1)溢水経路の設定」の溢水経路の評価に基づき評価対象区画への流入量を算出する。
A:滞留面積
評価対象区画内と溢水経路に存在する区画の総面積を滞留面積として評価する。
なお、滞留面積は、壁及び床の盛り上がり(コンクリート基礎等)範囲を除く有効面積を滞留面積とする。」(11頁34行~12頁17行)
オ 「(3)影響評価
原子力発電所内で発生する溢水に対して、防護すべき対象機器が、以下に示す没水の要求を満足しているか確認する。
a.没水による影響評価
想定される溢水源に基づいて評価した評価対象区画における最高水位が、2.2.2項で選定された防護対象設備の設置位置を超えないことを確認する。
また、中央制御室及び現場操作が必要な設備へのアクセス通路にあっては、歩行に影響のない水位(階段堰高さ)であること及び必要に応じて環境の温度、放射線量を考慮しても接近の可能性が失われないことを確認する。
上記、設置位置及びアクセス通路の水位が判断基準を超える場合又は環境の温度、放射線により現場操作が必要な設備へ接近できないと判断される場合は、防護対象設備の機能は期待できないものとする。」(13頁11~22行)
カ 「(4)溢水による影響評価の判定
(3)の影響評価の結果から内部溢水に対して、重要度の特に高い安全機能を有する系統が、その安全機能を失わないこと(信頼性要求に基づき独立性が確保され、多重性又は多様性を有する系統が同時にその機能を失わないこと)。
内部溢水により原子炉に外乱が及び、かつ、安全保護系、原子炉停止系の作動を要求される場合には、その影響(溢水)を考慮し、安全評価指針に基づき安全解析を行う必要がある。」(15頁15~21行)
キ
[図:0001393084000001.jpg]
ク
[図:0001393084000002.jpg]
ここで、上記キには、「影響評価 ○1 没水による影響評価 防護対象設備・部位の水没判定」と記載されていることから、没水による影響評価として、防護対象設備の水没判定をしていることが見て取れる。
また、上記クの記載から、甲第1号証では、「没水、被水評価の対象区画の分類例」として、溢水した場合に、溢水源から貫通部や開口を介して水が流れ、防護対象B、C、Dが水に浸かり、2階に溢水防護区画2及び3、1階に溢水防護区画4及び5が設定され、それぞれの溢水防護区画には防護対象B~Eが含まれていること、溢水防護区画同士は、開口、貫通部、床ドレン配管を介して接続されていること、例えば、溢水防護区画2と3の間に貫通部、溢水防護区画2と4の間に貫通部、溢水防護区画3と4の間に開口と床ドレン配管、溢水防護区画4と5の間に開口があり、開口、貫通部、床ドレン配管は、溢水経路となり得ること、溢水防護区画2に溢水源を有することが見て取れる。
さらに、上記アより、甲第1号証の「原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド」は、原子力発電所に設置される原子炉施設が、内部溢水に対して、適切な防護措置が施されているか評価するための手順を示すものである。そして、当該手順は、上記キの溢水影響評価フローより、溢水源の想定、溢水量の算出、溢水経路の設定、没水評価に用いる水位の算出、防護対象設備の水没判定を行い、溢水影響評価を行っているものといえる。
そうすると、原子力発電所に設置される原子炉施設が、内部溢水に対して、適切な防護措置が施されているか評価するための手順は、最終的に溢水影響評価を行っているものであるから、甲第1号証の「原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド」には、原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法が記載されているものといえる。
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)の記載から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、1a~1qは、説明のために当審で付したものであり、以下、「構成1a」~「構成1q」という。
(甲1発明)
1a 原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法において、原子力発電所内で発生する溢水に対し、原子炉施設の安全性を損なうことのないことを評価するものであり、
1b 溢水源は、原子炉格納容器内、及び原子炉格納容器外での溢水(施設内の配管、機器の破断等)を対象にし、溢水源としては、機器の破損等により生じる溢水を想定し、
1c 溢水量は、破損を想定する系統が漏えいするものとして求め、
1d 溢水から防護すべき対象設備は、重要度の特に高い安全機能を有する系統が、その安全機能を適切に維持するために必要な設備を防護対象設備とし、
1e 溢水防護に対する評価対象区画は、溢水防護対象設備が設置されている全ての区画について設定し、
1f 溢水影響評価においては、評価対象区画で想定される溢水事象に対し、その防護対象設備が没水の影響を受けずその機能が確保されるか否かを評価するものであり、
1g 評価対象区画は、漏えい想定箇所を起点とした溢水経路上に存在する全ての溢水防護区画を対象とし、
1h 床ドレンに関して、同一区画に目皿が複数ある場合は、床ドレン配管における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価し、
1i 床面開口部及び床貫通部に関して、評価対象区画の床貫通部にあっては、貫通する配管、ダクト、ケーブルトレイ又は電線管と貫通部との間に隙間があって、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合や、評価対象区画の床面開口部にあっては、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合は、床開口部及び床貫通部における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価し、
1j 壁貫通部に関して、当該壁貫通部を貫通する配管、ダクト、ケーブルトレイ又は電線管と貫通部との間に隙間があって、明らかに流出が期待できることを定量的に確認できる場合は、壁貫通部における単位時間あたりの流出量を算出し、溢水水位を評価し、
1k 影響評価に用いる水位の算出は、漏えい発生階とその経路上の評価対象区画の全てに対して行うものであって、
1l 水位Hは、H=Q/Aより、算出され、
1m ただし、Qは流入量であって、想定した溢水量に基づき、溢水経路の評価に基づき評価対象区画への流入量を算出し、Aは滞留面積であって、評価対象区画内と溢水経路に存在する区画の総面積を滞留面積とするものであり、
1n 没水による影響評価として、想定される溢水源に基づいて評価した評価対象区画における最高水位が、防護対象設備の設置位置を超えないことを確認し、設置位置の水位が判断基準を超える場合は、防護対象設備の機能は期待できないものとし、
1o 溢水による影響評価の判定として、影響評価の結果から内部溢水に対して、重要度の特に高い安全機能を有する系統が、その安全機能を失わないことを判定するものであり、
1p 没水による影響評価として、防護対象設備の水没判定をしており、
1q 「没水、被水評価の対象区画の分類例」として、溢水した場合に、溢水源から貫通部や開口を介して水が流れ、防護対象B、C、Dが水に浸かり、2階に溢水防護区画2及び3、1階に溢水防護区画4及び5が設定され、それぞれの溢水防護区画には防護対象B~Eが含まれ、溢水防護区画同士は、開口、貫通部、床ドレン配管を介して接続され、例えば、溢水防護区画2と3の間に貫通部、溢水防護区画2と4の間に貫通部、溢水防護区画3と4の間に開口と床ドレン配管、溢水防護区画4と5の間に開口があり、開口、貫通部、床ドレン配管は、溢水経路となり得、溢水防護区画2に溢水源を有する
1a 原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法。
2 甲第2号証(特開2008-310036号公報)
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下のア~ウの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア「【0001】
本願明細書で開示される技術は、水害の現地調査を支援するプログラムに関する。本願明細書で開示される技術は特に、水害に遭った地域の現地調査によって得られた調査地点ごとの浸水深を空間補間するプログラムに関する。」
イ「【0100】
図13は、本発明の第1の実施の形態の入力支援プログラム141が提供する第2のGUIが浸水深分布を表示した状態を示す説明図である。
【0101】
図13を図8と比較すると、ユーザがステップ502で入力した浸水地点にあるアイコンが、入力待ち状態のアイコン824から確定状態のアイコン1324に変化した。さらに、浸水深分布1325が表示された。なお、浸水域の境界線を含む格子(たとえば格子1322)については、格子全体をそのまま表示するのではなく、格子のうち浸水域に含まれる部分のみが表示される。その結果、ユーザが入力した浸水域形状と、最終的に表示される浸水域の形状とが等しくなるため、ユーザの直感に沿う。
【0102】
浸水深分布1325は、いかなる方法で表示されてもよい。例えば、浸水深分布1325は、各格子を浸水深1204に応じた色に塗り分けることによって浸水深1204を表示してもよい。具体的には、浸水深1204の値(又はその値の範囲)を所定の色と対応付け、各格子の浸水深1204に対応する色を浸水深分布1325に表示してもよい。あるいは、浸水深1204に対応する所定の模様又は図形等が表示されてもよい。凡例1341には、色(又は模様又は図形等)と浸水深1204との対応を記載することが望ましい。
【0103】
図13の例では、0cmから50cmまでの浸水深が右下がりの細い斜線によって表示され、50cmを超える浸水深が右上がりの太い斜線によって表示される。」
ウ
[図:0001393084000003.jpg]
(2)甲第2号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第2号証には、以下の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。
(甲2技術)
水害に遭った地域の現地調査によって得られた調査地点ごとの浸水深を空間補間するプログラムに関するものであって、
浸水深分布を表示した状態を示す説明図は、浸水深分布1325が表示され、
浸水深分布1325は、各格子を浸水深1204に応じた色に塗り分けることによって浸水深1204を表示してもよく、具体的には、浸水深1204の値(又はその値の範囲)を所定の色と対応付け、各格子の浸水深1204に対応する色を浸水深分布1325に表示してもよく、あるいは、浸水深1204に対応する所定の模様又は図形等が表示されてもよく、
0cmから50cmまでの浸水深が右下がりの細い斜線によって表示され、50cmを超える浸水深が右上がりの太い斜線によって表示される技術。
3 甲第3号証(特開2007-87377号公報)
(1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下のア~ウの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア「【0001】
この発明は、災害発生時に必要となる避難場所や危険場所等を示す防災情報を住民等に提示する防災情報提示装置、及び上記防災情報を配信する防災情報提供システムとその配信装置に関する。
イ「【0134】
例えば、図16に示すように3種類の災害シミュレーション結果S0,S1,S2のそれぞれについて、安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータが記憶部17に記憶されていたとする。この状態である気象条件が入力されたとすると、この入力された条件に最も近い条件でシミュレーションされた結果が選択される。例えば、災害シミュレーション結果S0が選択されたとする。このとき、災害シミュレーション結果S0に属する安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータは、別々に記憶部17に記憶されている。このため、ハザードマップを作成し表示するためには、上記記憶部17からシンボルデータを選択的に読み出して地図データと合成する。その処理手順を以下に示す。
【0135】
すなわち、選択された災害シミュレーション結果S0に属する安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータのうち、相対時間t0に対応するものS0a(t0),S0b(t0),S0c(t0)が記憶部17から選択的に読み出され、この読み出された各シンボルデータS0a(t0),S0b(t0),S0c(t0)が基図データPに重畳合成される。この合成処理により作成された災害シミュレーション結果S0に対応する、時間t0のときのハザードマップQ0(t0)が表示部19に表示される。
【0136】
次に、上記選択された災害シミュレーション結果S0に属する安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータのうち、相対時間t1に対応するもの(図16においてS0a(t0),S0b(t0),S0c(t0)の右隣に位置する各シンボルデータ)が記憶部17から選択的に読み出され、この読み出された各シンボルデータが基図データPに重畳され合成される。この合成処理により作成された災害シミュレーション結果S0に対応する、時間t1のときのハザードマップQ0(t1)が表示部19に表示される。以後同様に、災害シミュレーション結果S0の相対時間t2,t3,…におけるハザードマップが順次作成されて表示部19に表示される。
【0137】
また、別の気象条件が入力され、その条件に最も近い条件でシミュレーションされた結果がS1だとすると、この災害シミュレーション結果S1が選択される。この場合も、選択された災害シミュレーション結果S1に属する安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータのうち、相対時間t0に対応するもの(図16においてS0a(t0),S0b(t0),S0c(t0)の上隣に位置する各シンボルデータ)が記憶部17から選択的に読み出される。そして、この読み出された各シンボルデータが基図データPに重畳合成され、この合成により作成されたマップデータが災害シミュレーション結果S1に対応する、相対時間t0におけるハザードマップとしてQ1(t0)として表示部19に表示される。以後同様に、災害シミュレーション結果S1の相対時間t1,t2,t3,…におけるハザードマップが順次作成されて表示部19に表示される。災害シミュレーション結果S2に対応するハザードマップについても同様である。
【0138】
したがって、例えば洪水ハザードマップについては、入力されたある気象条件下における河川の浸水範囲及び安全地帯が相対時間t0,t1,t2,t3,…に応じて変化する様子がアニメーションのように表示される。なお、図16において、災害シミュレーション結果S0,S1,S2についてはそれぞれ気象条件のみが異なる災害シミュレーション結果としたが、災害の種類の違いを反映したものとしてもよい。この場合には、災害シミュレーション結果を選択するときの入力項目として、気象条件と共に災害種別を入力することにより実現できる。」
ウ
[図:0001393084000004.jpg]
(2)甲第3号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。
(甲3技術)
災害発生時に必要となる避難場所や危険場所等を示す防災情報を住民等に提示する防災情報提示装置に関し、
ある気象条件が入力されたとすると、この入力された条件に最も近い条件でシミュレーションされた結果が選択され、
ハザードマップを作成し表示するために、選択された災害シミュレーション結果に属する安全箇所/地帯、危険箇所/地帯及び避難所を表すシンボルデータを記憶部17から選択的に読み出して地図データと合成し、
合成処理により作成された災害シミュレーション結果の各相対時間におけるハザードマップが順次作成されて表示部19に表示され、
例えば洪水ハザードマップについては、入力されたある気象条件下における河川の浸水範囲及び安全地帯が相対時間に応じて変化する様子がアニメーションのように表示される技術。
4 甲第4号証(特開2007-280161号公報)
(1)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下のア~ウの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア 「【0001】
本発明は、溢水領域推定技術に関し、特に河川領域での降雨に起因する溢水の発生領域を推定する技術に関する。」
イ 「【0062】
図12は、溢水発生分布の出力例を示す説明図である。解析対象領域内にメッシュ状に区画して設けられ対象地区ごとに算出された影響度14Eが、図12(a)に示すように2次元の等高線マップからなる溢水発生分布(14F)として表示され、極めて具体的に溢水発生領域を推定することができる。この際、当該解析対象領域の地図と重ね合わせて表示してもよい。
なお、図12(b)に示すように、等高線マップに代えて、各対象地区の影響度E(P,S)を所定数のクラスに正規化し、各対象地区の位置情報に基づき2次元で色分け表示した溢水発生分布データを生成し、溢水発生推定データとして出力してもよい。」
ウ
[図:0001393084000005.jpg]
(2)甲第4号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第4号証には、以下の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。
(甲4技術)
河川領域での降雨に起因する溢水の発生領域を推定する技術に関して、
解析対象領域内にメッシュ状に区画して設けられ対象地区ごとに算出された影響度14Eが、2次元の等高線マップからなる溢水発生分布(14F)として表示され、極めて具体的に溢水発生領域を推定することができ、当該解析対象領域の地図と重ね合わせて表示してもよく、
等高線マップに代えて、各対象地区の影響度E(P,S)を所定数のクラスに正規化し、各対象地区の位置情報に基づき2次元で色分け表示した溢水発生分布データを生成し、溢水発生推定データとして出力してもよい技術。
5 甲第5号証(“美浜発電所3号機発電用原子炉施設の溢水防護に関する説明書に係る補足説明資料 その他発電用原子炉施設の付属施設のうち、浸水防護施設について”)
(1)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下のア~オの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア 「2.内容
(1)全般
溢水防護に関する説明書を補足説明するために、「原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド(以下「評価ガイド」という。)」を踏まえ、溢水評価対象として抽出した防護対象設備及び評価対象とする重大事故等対処設備のリストを示す。また、評価対象設備の要求される機能を損なうおそれがある高さ(以下「機能喪失高さ」という。)を示す。
溢水評価上考慮すべき、溢水源となり得る機器のうち、補助建屋、燃料取扱建屋、制御建屋及び中間建屋に設置される流体を内包する容器(タンク、熱交換器、フィルタ、空調ユニット)及び配管のリストを示す。また、発生を想定する溢水源からの溢水伝播経路の概念図を示す。
(2)想定破損による溢水評価
想定破損により生じる溢水に対して設定した溢水経路並びに没水、被水及び蒸気評価を示す。結果、防護対象設備が溢水影響を受けて、要求される機能を損なうおそれのないことを示す。」(工認補足説明資料-1 5~18行)
イ 「◎防護対象設備の機能喪失高さの考え方
1.概要
本資料は、原子炉の高温停止及び低温停止に必要な設備並びに使用済燃料ピットの冷却機能及び給水機能の維持に必要な設備として、抽出された防護対象設備に対して溢水の影響により要求される機能を損なうおそれのある高さ(以下「機能喪失高さ」という。)を明確にする。また、抽出された防護対象設備が設置される溢水防護区画を明確にする。」(工認補足説明資料-3 1~6行)
ウ
[図:0001393084000006.jpg]
エ
[図:0001393084000007.jpg]
オ
[図:0001393084000008.jpg]
ここで、上記ウには、溢水評価対象の防護対象設備リストとして、各防護対象設備に対する設置高さと機能喪失高さを記載したものが見て取れるが、具体的にどのようなものであるかは公開されていないため不明である。
また、上記エ及びオには、溢水伝播経路概念図及び想定破損により生じる溢水経路図が記載されていることが見て取れるが、具体的にどのような図であるかは公開されていないため不明であるし、当該図が出力されるものか否かは不明である。
(2)甲第5号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第5号証には、以下の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されている。
(甲5技術)
溢水評価対象として抽出した防護対象設備のリストを示し、また、各防護対象設備に対する設置高さと評価対象設備の要求される機能を損なうおそれがある高さ(機能喪失高さ)を示し、
溢水評価上考慮すべき、溢水源となり得る機器のうち、補助建屋、燃料取扱建屋、制御建屋及び中間建屋に設置される流体を内包する容器及び配管のリストを示し、
発生を想定する溢水源からの溢水伝播経路の概念図を示し、
想定破損により生じる溢水に対して設定した溢水経路(溢水経路図)並びに没水を示し、結果、防護対象設備が溢水影響を受けて、要求される機能を損なうおそれのないことを示すものであるが、
溢水伝播経路概念図と溢水経路図は具体的にどのような図であるかは不明であるし、当該図が出力されるものか否かは不明であり、
抽出された防護対象設備に対して溢水の影響により要求される機能を損なうおそれのある高さ(機能喪失高さ)と、抽出された防護対象設備が設置される溢水防護区画を明確にする技術。
6 甲第8号証(“東海第二発電所内部溢水の影響評価について”)
(1)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下のア~ケの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア 「5.2 想定破損による没水影響評価
高エネルギー配管及び低エネルギー配管の分類に従い、算定した溢水量に対して、溢水防護対象設備の没水影響評価を行った。想定破損による没水影響評価フローを第5.2-1図に示す。」(62頁1~4行)
イ
[図:0001393084000009.jpg]
ウ 「7.6.2 溢水評価の具体例
第4.2-2図の溢水経路モデル図を基に、第7.6.2-1図のように接続された区画及びそれらの溢水源、溢水量、面積を設定し、各区画の溢水水位を算出する。また、この場合の、滞留、流出も考慮して、最終的な浸水範囲と浸水深を確認する。評価の例を第7.6.2-1表及び第7.6.2-2表に示す。」(120頁17~21行)
エ
[図:0001393084000010.jpg]
オ
[図:0001393084000011.jpg]
カ
[図:0001393084000012.jpg]
キ
[図:0001393084000013.jpg]
ク「1.伝播経路に対する溢水防護の概要
溢水評価ガイドに従い、内部溢水の発生を想定した場合、貫通部や扉の間隙などを介して広範囲に溢水が伝播するおそれがある。このような伝播経路に対して止水措置などの溢水防護対策を実施することにより、防護対象設備が設置される区画への溢水の伝播を防ぐなど、溢水の影響を限定的にすることができ、溢水想定下においても安全機能を維持することが可能となる。
上記を踏まえ、発生要因毎の溢水源の特性を考慮し、以下の基本方針に基づき溢水防護対策を検討した。」(添付資料4 添付4-1 2~9行)
ケ
[図:0001393084000014.jpg]
ここで、上記ア、イの記載より、想定破損による没水影響評価は、溢水量を算定し、溢水水位を算出し、機能喪失高さと溢水水位を比較し、総合評価判定基準を満足しない(溢水水位が機能喪失高さ以上となる)場合には、対策を行った後、再度溢水量の算定を行うものである。
また、上記エの図は、白紙であるので、溢水経路モデル図がどのようなものかは不明である。上記オの図には、各区画が、溢水源の有無、滞留の有無、流出入の出入無に応じて色分けされた図が示されている。上記カの表には、各防護対象設備について、溢水量、滞留面積、溢水伝播有無に応じた溢水水位、機能喪失高さを基にした判定結果が示されている。上記キには、各階の溢水量、滞留量、流入量、流出量、流出区画を表にしたものが示されている。
そうすると、上記ウ~キより、各区画が、溢水源の有無、滞留の有無、流出入の出入無に応じて色分けされた図のように接続された区画及びそれらの溢水源、溢水量、面積を設定し、各区画の溢水水位を算出し、滞留、流出も考慮して、最終的な浸水範囲と浸水深を確認し、各防護対象設備について、溢水量、滞留面積、溢水伝播有無に応じた溢水水位、機能喪失高さを基にした判定を行うことが記載されている。
さらに、上記ク、ケより、伝播経路に対して溢水防護対策を実施することにより、防護対象設備が設置される区画への溢水の伝播を防ぐなど、溢水の影響を限定的にすることができ、溢水想定下においても安全機能を維持することが可能となることが記載されており、当該溢水防護対策は、上記ア、イの対策を指すものである。
(2)甲第8号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第8号証には、以下の技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されている。
(甲8技術)
想定破損による没水影響評価は、溢水量を算定し、溢水水位を算出し、機能喪失高さと溢水水位を比較し、総合評価判定基準を満足しない(溢水水位が機能喪失高さ以上となる)場合には、対策を行った後、再度溢水量の算定を行うものであって、
各区画が、溢水源の有無、滞留の有無、流出入の出入無に応じて色分けされた図のように接続された区画及びそれらの溢水源、溢水量、面積を設定し、各区画の溢水水位を算出し、滞留、流出も考慮して、最終的な浸水範囲と浸水深を確認し、各防護対象設備について、溢水量、滞留面積、溢水伝播有無に応じた溢水水位、機能喪失高さを基にした判定を行い、
伝播経路に対して溢水防護対策を実施することにより、防護対象設備が設置される区画への溢水の伝播を防ぐなど、溢水の影響を限定的にすることができ、溢水想定下においても安全機能を維持することが可能となる
内部溢水の影響評価に関する技術。
7 甲第10号証(“資料7 発電用原子炉施設の火災防護に関する説明書”)
(1)甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、以下のアの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア 「1.概要
本資料は、資料8-1「溢水等による損傷防止の基本方針に基づき、浸水防護施設(処置含む。)の設備分類、要求機能及び性能目標を明確にし、各設備の機能設計に関する設計方針について説明するものである。」(添8-5-1 1~4行)
(2)甲第10号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第10号証には、以下の技術(以下、「甲10技術」という。)が記載されている。
(甲10技術)
発電用原子炉施設の火災防護に関し、
溢水等による損傷防止の基本方針に基づき、浸水防護施設(処置含む。)の設備分類、要求機能及び性能目標を明確にし、各設備の機能設計に関する設計方針についての技術。
8 甲第12号証(“建物内部の浸水リスク評価・診断システム「T-Flood Analyzer」を開発”)
(1)甲第12号証に記載された事項
甲第12号証には、以下のアの記載がある。(下線は合議体が付したものである。)
ア 「(1) CADデータを用いて浸水解析時に必要な建物諸室の入カデータ(水の流入経路、各室の開口部位置など)の整理を一部自動で実施できるため、解析時間を大幅に短縮できます。例えば地上1階,地下2階の建物(約740m2/階,地上部および地下1階 は約15部屋)を事例とした場合(図1)、従来の方法に比べて3分の1以下の解析時間で結果の表示が可能です。
(2) 建物内の各室への浸水経路、浸水置、浸水時間などの算出結果は簡単な図で可視化されます(図1)。そのため、建物諸室全体への流入水の侵入経路や浸水深さを一目で把握できます。
(3) 浸水対策に用いる防水扉や排水ポンプの配置や数量などを容易に変更でき、また、計算負荷が小さいため、複数の対策案を短時間で比較・評価でき、最適な対策案を迅速に選定することが可能となります。」
(2)甲第12号証に記載された技術
上記(1)の記載から、甲第12号証には、以下の技術(以下、「甲12技術」という。)が記載されている。
(甲12技術)
建物内部の浸水リスク評価・診断システムに関して、
CADデータを用いて浸水解析時に必要な建物諸室の入カデータ(水の流入経路、各室の開口部位置など)の整理を一部自動で実施でき、
建物内の各室への浸水経路、浸水置、浸水時間などの算出結果は簡単な図で可視化されるため、建物諸室全体への流入水の侵入経路や浸水深さを一目で把握でき、
浸水対策に用いる防水扉や排水ポンプの配置や数量などを容易に変更できるため、複数の対策案を短時間で比較・評価でき、最適な対策案を迅速に選定することが可能となる技術。
第6 取消理由通知において通知した理由についての当審の判断
1 本件訂正発明1について
(1)本件訂正発明1と甲1発明との対比、検討
ア 構成Aについて
構成1a、1b、1l~1pより、甲1発明は、溢水源として機器の破損等により生じる溢水を想定した原子力発電所において、水位H(=Q/A)を算出(Qは想定した溢水量に基づき算出される流入量、Aは滞留面積)し、溢水影響評価を行う方法の発明である。
ここで、甲1発明の「原子力発電所」は、溢水源を有するものであるから、構成Aの「溢水源を有する建造物」に相当する。
また、甲1発明の「水位H」を算出することにおいて、水位Hは、溢水量に基づき算出される流入量Qから求められるものであるから、甲1発明の「水位H」を算出することは、構成Aの「溢水状況を計算する」ことに相当する。
したがって、甲1発明と構成Aとは、「溢水源を有する建造物の溢水状況を計算する溢水影響評価」をすることという点で共通する。
ただし、本件訂正発明1は、溢水影響評価装置であるのに対し、甲1発明は、構成1aのように「溢水影響評価を行う方法」であって、装置ではない点で相違する。
イ 構成B~Eについて
構成1h~1j、1qより「開口(床面開口部)、貫通部(床貫通部、壁貫通部)、床ドレン配管」は、溢水経路であり、溢水防護区画同士を接続するものである。
ここで、各溢水防護区画は、原子力発電所の中に存在し、構成1qより、溢水防護区画は、2階と1階において、それぞれ2つの溢水防護区画に分割されているといえ、構成1l、1mより、各溢水防護区画の滞留面積を水位の算出に際して利用するものである。
構成1h~1jより、甲1発明は、「開口(床面開口部)、貫通部(床貫通部、壁貫通部)、床ドレン配管」すなわち「溢水経路」における単位時間あたりの流出量を算出するものであるが、当該単位時間あたりの流出量を算出するためには、溢水経路の大きさや傾き等のような流出量を算出するために必要な情報を利用して算出するものであるといえる。
構成1l、1mより、水位Hを算出する際には、「想定した溢水量に基づき、溢水経路の評価に基づき評価対象区画への流入量を算出」するものである。ここで、溢水源から溢水経路を介して各評価対象区画へ水が流れるものであるから、流入量を算出する際には、溢水源の位置および溢水量を利用して算出するものといえる。
以上より、甲1発明は、原子力発電所の中に存在する溢水防護区画は、開口(床面開口部)、貫通部(床貫通部、壁貫通部)、床ドレン配管すなわち溢水経路で接続されるものであって、2階と1階において、2つに分割されており、各溢水防護区画の滞留面積と、溢水経路の大きさや傾き等のような単位時間あたりの流出量を算出するために必要な情報と、溢水源の位置および溢水量とに基づいて、各溢水防護区画の水位Hを算出するものであるといえる。
そして、甲1発明の「原子力発電所」、「開口(床面開口部)、貫通部(床貫通部、壁貫通部)、床ドレン配管すなわち溢水経路」、「各溢水防護区画の滞留面積」、「各溢水防護区画の水位H」は、それぞれ、本件訂正発明1の「建造物」、「溢水経路」、「階ごと2以上に分割してなる区画それぞれの大きさ」、「前記区画それぞれの没水水位」に相当する。
したがって、甲1発明と構成B~Eとは、「前記建造物を溢水経路で互いに接続され階ごとに2以上に分割してなる区画それぞれの大きさを含む区画情報と、前記溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報と、前記溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報と」「に基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する」点で共通する。
しかし、本件訂正発明1は、溢水影響評価を装置にて行うものであって、区画情報と経路情報と溢水源情報(以下、総称して「3つの情報」という。)を受け入れる入力部と、前記入力部で入力された3つの情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された3つの情報に基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する演算部と、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力部を有するのに対し、甲1発明の溢水影響評価を行う方法は、3つの情報に基づいて没水水位(水位H)を計算するものではあるが、入力部、記憶部、演算部、出力部に相当する構成を有するものではない点で相違する。
ウ 構成Fについて
本件訂正発明1は、「前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能」なものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点で相違する。
エ 構成Gについて
本件訂正発明1は、「前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力する」ものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点で相違する。
オ 一致点、相違点
以上より、本件訂正発明1と甲1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
溢水源を有する建造物の溢水状況を計算する溢水影響評価をすることであって、
前記建造物を溢水経路で互いに接続され階ごとに2以上に分割してなる区画それぞれの大きさを含む区画情報と、前記溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報と、前記溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報と、
に基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する
ことを特徴とする溢水影響評価をすること。
(相違点1)
溢水影響評価をすることに関して、本件訂正発明1は、溢水影響評価装置であるのに対し、甲1発明は、「溢水影響評価を行う方法」であって、装置ではない点。
(相違点2)
本件訂正発明1は、溢水影響評価を装置にて行うものであるから、3つの情報を受け入れる入力部と、前記入力部で入力された3つの情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された3つの情報に基いて、前記区画それぞれの没水水位を計算する演算部と、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を出力する出力部とを有するのに対し、甲1発明の溢水影響評価を行う方法は、3つの情報に基づいて没水水位(水位H)を計算するものではあるが、入力部、記憶部、演算部、出力部に相当する構成を有するものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明1は、前記演算部は、一部の前記溢水経路を閉鎖した条件に変更した計算が可能なものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。
(相違点4)
本件訂正発明1は、前記出力部は、前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力するものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。
カ 相違点に関する検討
(ア)相違点1、2について
相違点1、2についてまとめて検討する。
甲1発明は、3つの情報から水位を計算するものであるが、そのような計算をする装置ではない。しかし、計算を行う際に、計算のための装置を利用して計算することは、周知技術である。
そうすると、甲1発明の「原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド」で記載されている計算を装置で行うようにすることは、当業者が容易に想到し得るものであるし、計算を装置で行うようにした場合には、当該装置での計算に際しては、情報を入力し、記憶し、演算し、演算結果を出力する構成を有するものである。
(イ)相違点4について
事案に鑑み、次に、相違点4について検討する。
甲1発明は、原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法において、原子力発電所内で発生する溢水に対し、原子炉施設の安全性を損なうことのないことを評価するものであり、(構成1a)、評価対象区画で想定される溢水事象に対し、その防護対象設備が没水の影響を受けずその機能が確保されるか否かを評価するものであり(構成1f)、防護対象設備の水没判定(構成1p)をしているものである。
そして、甲2技術、甲4技術には、浸水深分布、溢水発生分布を表示する技術が開示されているものの、これらは、天災に際しての土地の状況を示すための技術であって、甲1発明のような原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法に適用しようとする動機がない。
また、甲5技術には、溢水経路図に関する記載が見受けられるものの、溢水経路図が具体的にどのような図であるかは不明であるし、当該図が出力されるものか否かは不明である以上、溢水経路図を出力し、さらに、没水水位を重ねて出力する技術思想がない。
そうすると、甲1発明に、甲2技術、甲4技術、甲5技術を勘案しても、本件訂正発明1のように、「前記区画および前記溢水経路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算部で計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力する」構成、すなわち、溢水経路図を出力し、さらに、没水水位を重ねて出力することまで容易に想到できるとはいえない。
(2)本件訂正発明1についてのまとめ
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者であっても甲1発明及び甲2技術、甲4技術、甲5技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
2 本件訂正発明2、3、5~7について
本件訂正発明2、3、5~7は、本件訂正発明1を直接もしくは間接に引用する発明であるから、甲1発明との相違点は、少なくとも、上記1(1)オに掲げた相違点4を含むものである。
そして、上記1(1)カ(イ)で検討したように、当業者であっても甲1発明及び甲2技術、甲4技術、甲5技術に基づき、相違点4に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件訂正発明2、3、5~7は、当業者であっても甲1発明1及び甲2技術、甲4技術、甲5技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
3 請求項4について
請求項4は、上記のとおり、訂正により削除されたので、請求項4に対する取消理由は存在しないものとなった。
4 本件訂正発明8、9について
本件訂正発明8は、本件訂正発明1の装置発明を方法発明にしたものであり、本件訂正発明9は、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としたものである。
そうすると、本件訂正発明8、9と甲1発明との対比・検討は、上記1(1)と同様であるから、本件訂正発明8、9は、「前記出力部が、前記区画および前記溢水済路の位置関係を示す溢水経路図を出力したうえで、前記演算ステップで計算された前記区画それぞれの没水水位を前記溢水経路図上に重ねて出力する出カステップ」を有する構成であるのに対し、甲1発明は、そのような構成ではない点という相違点4と同様の相違点を含むものである。
そして、上記1(1)カ(イ)で検討したように、当業者であっても甲1発明及び甲2技術、甲4技術、甲5技術に基づき、当該相違点に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件訂正発明8、9は、当業者であっても甲1発明及び甲2技術、甲4技術、甲5技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
5 まとめ
したがって、取消理由通知書に記載した取消理由により、請求項1~3、5~9に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった理由についての当審の判断
特許異議申立人は、特許異議申立において、取消理由通知において採用した甲号証以外の証拠として、甲第3号証を提示しているので、第6の1(1)オに掲げた相違点4について、甲3技術を適用することによって容易に想到し得るか否かの検討を行う。
上記第5の3(2)に記載したように、甲3技術は、洪水ハザードマップについて、入力されたある気象条件下における河川の浸水範囲が表示される技術であり、甲2技術、甲4技術と同様に、天災に際しての土地の状況を示すための技術であって、甲1発明のような原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法に適用しようとする動機がない。
したがって、特許異議申立人の主張する特許異議申立て理由によっては、請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、請求項8、9に係る特許についても同様に取り消すことはできない。
第8 特許異議申立人の意見について
令和4年8月19日に提出された意見書において、特許異議申立人は、
甲第1号証の公開年月日を立証するために、甲第6号証を提出し、
甲第5号証の公開年月日を立証するために、甲第7号証を提出し、
甲第8号証の公開年月日を立証するために、甲第9号証を提出し、
甲第10号証の公開年月日を立証するために、甲第11号証を提出し、
本件訂正発明1~3、5~9が出願時において容易想到であることを立証するために、甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証を提出し、
本件訂正発明1~3、5~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであることを主張している。
よって、第6の1(1)オに掲げた相違点4について、甲8技術、甲10技術、甲12技術を適用することによって容易に想到し得るか否かの検討を行う。
甲第8号証に関して、上記第5の6(1)エより、溢水経路モデル図がどのようなものかは不明であるし、また、上記第5の6(1)オの図についても、各区画が、溢水源の有無、滞留の有無、流出入の出入無に応じて色分けされた図であることは理解できるものの、当該図が出力されるものか否かは明らかではなく、ましてや、没水水位を重ねて出力する技術思想もない。
また、甲10技術についても、溢水経路図を出力するという技術思想がなく、没水水位を前記溢水経路図に重ねて出力する技術思想がない。
さらに、甲12技術には、浸水深さを表示する技術が開示されているものの、天災に際しての建物の状況を示すための技術であって、甲1発明のような原子力発電所の内部溢水に対する溢水影響評価を行う方法に適用しようとする動機がない。
したがって、特許異議申立人の意見書での主張を勘案しても、請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、請求項8、9に係る特許についても同様に取り消すことはできない。
第9 まとめ
したがって、請求項1~3、5~9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~3、5~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人渡辺末治による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701227