特許異議申立
2024-700700
固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置
- 審判番号
- 2024-700700
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-148788
- 登録番号
- 7423482
- 請求日
- 2024年07月24日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】弁理士法人サクラ国際特許事務所
- 【権利者】東芝エネルギーシステムズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サクラ国際特許事務所
- 【異議申立人】吉田 真理奈
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1651.121-ZAA(G21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7423482号発明「固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7423482号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。
特許第7423482号の請求項1、3、4に係る特許を取り消す。
特許第7423482号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7423482号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年9月4日の出願であって、令和6年1月19日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 7月24日 :特許異議申立人である吉田真理奈(以下「申
立人」という。)による請求項1~4に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和6年 9月12日付け:取消理由通知書
令和6年11月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
令和6年12月25日 :申立人による意見書の提出
令和7年 2月26日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 4月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下、この訂正請求書による訂正を「本件訂
正」という。)の提出
令和7年 6月19日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~3と訂正後の請求項4について請求されている。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を含み、前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体である」と記載されているのを、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を含み、前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同じ。)。
(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1または2に記載の固体廃棄物の処理方法」と記載されているのを、「請求項1に記載の固体廃棄物の処理方法」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部を有し、前記充填部は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体を前記充填材として充填するように構成されている」と記載されているのを、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部を有し、前記充填部は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である粉体を前記充填材として充填するように構成されている」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程」について、「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、」廃棄体容器の内部に充填材を充填することを特定して減縮するとともに、「前記充填材」について「含水率が4wt%以下である」ことを特定して減縮するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許の登録時の明細書の【0069】~【0070】には、バインダーがジオポリマー材料である充填材を用いた例に関して、充填材の充填率が8vol%であっても、充填材の含水率が4wt%以下であるとき、水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になることが記載されていることから見ると、訂正事項1における、「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように」充填材を充填することや、「前記充填材」の「含水率が4wt%以下である」ことは、いずれも新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項1に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項1に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、したがって、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する126条5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項2に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項2に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、「請求項1または2に記載の固体廃棄物の処理方法」と記載されているのを「請求項1に記載の固体廃棄物の処理方法」に訂正するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、したがって、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3に係る訂正は、「請求項1または2に記載の固体廃棄物の処理方法」と記載されているのを「請求項1に記載の固体廃棄物の処理方法」に訂正するものであるから、新規事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する126条5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項3に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項3に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項4の「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部」について、「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、」廃棄体容器の内部に充填材を充填することを特定して減縮するとともに、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体」について、「含水率が4wt%以下である粉体」であることを特定して減縮するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許の登録時の明細書の【0069】~【0070】には、バインダーがジオポリマー材料である充填材を用いた例に関して、充填材の充填率が8vol%であっても、充填材の含水率が4wt%以下であるとき、水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になることが記載されていることから見ると、訂正事項4における、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部」について「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、廃棄体容器の内部に」充填材を充填することを特定することや、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体」について、「含水率が4wt%以下である粉体」であることを特定することは、いずれも新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項4に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項4に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合し、同条9項で準用する同法126条7項に規定する要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを認める。
第3 本件発明の認定
本件特許の請求項1、3、4に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3、4に記載された事項により特定されるものであり、その請求項の記載は、次のとおりである。なお、請求項2は、前記第2の1(2)のとおり、本件訂正により削除された。
「【請求項1】
固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を
含み、
前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である、
固体廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記充填材において、前記放射性廃棄物は、粉体である、
請求項1に記載の固体廃棄物の処理方法。
【請求項4】
固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部
を有し、
前記充填部は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である粉体を前記充填材として充填するように構成されている、
固体廃棄物処理装置。」
第4 先の取消理由(決定の予告)の概要
1 先の取消理由について
本件特許について、当審において令和7年2月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、単に「決定の予告」という。)は、次の内容を含むものである。以下、証拠を示すときは、「第」及び「号証」を略して表記する。
取消理由2(進歩性欠如)
請求項1、2、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2 各甲号証及び引用文献
甲1 :特開2011-257264号公報
甲2 :特開2018-21808号公報
甲4 :「アルカリ活性材料(ジオポリマー)を用いた放射性廃棄物の固化技術の現状」、デコミッショニング技報、公益財団法人原子力バックエンド推進センター、2016年9月15日、第54号、p.48~49
甲5の1 :「ジオポリマーによる焼却飛灰中のセシウム不溶化メカニズムの確認」、西松建設技報、西松建設株式会社、2015年、Vol.38、p.1~2
甲6の1 :「イオン交換樹脂分解残渣のジオポリマー固化」、一般社団法人日本原子力学会、2019年、1A05
甲7 :特開2012-167927号公報
甲8 :特開2017-67679号公報
甲9 :特開平2-141698号公報
甲10 :特開2014-228406号公報
甲11 :特開2013-88323号公報
甲12 :特開2001-99990号公報
甲13 :特開2000-275392号公報
甲14 :特開平10-153690号公報
引用文献A:特開2001-343488号公報
引用文献B:特開2003-344585号公報
第5 当審の判断
1 本決定における取消理由の概要
本件訂正後の請求項1、3、4に係る特許は、依然として取消理由2を有している。取消理由の詳細については、後記2において述べる。
取消理由2(進歩性欠如)
請求項1、3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2 本決定における取消理由の詳細
(1)各甲号証等並びに各甲号証等に記載された発明及び技術事項の認定
ア 各甲号証及び引用文献
甲1 :特開2011-257264号公報
甲2 :特開2018-21808号公報
甲21 :特開2012-167927号公報
甲22の1:松山香苗, 高線量廃棄物の固化技術の開発 [online], 日本原子力学会水化学部会 第28回定例研究会,日本,日本原子力学会水化学部会,2019年09月01日,掲載日,1~4ページ,http://wchem.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2019/09/%E7%AC%AC28%E5%9B%9E%E5%AE%9A%E4%BE%8B%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A_5.pdf
甲22の2:日本原子力学会水化学部会,日本原子力学会水化学部会第28回定例研究会[online],日本原子力学会水化学部会ホームページ,日本,日本原子力学会水化学部会,2019年09月01日,掲載日,https://wchem.sakura.ne.jp/2019/09/01/1330/
(甲22の1の掲載日は、甲22の2の記載に基づいて認定した。)
甲23 :社団法人日本原子力学会,日本原子力学会標準 余裕深度処分対象廃棄体の制作に係わる基本的要件:2009,日本原子力学会標準,日本原子力学会,2009年12月28日,発行日,初版,59~60ページ
引用文献A:特開2001-343488号公報
引用文献B:特開2003-344585号公報
イ 甲1に記載された事項及び甲1方法発明等の認定
(ア)甲1に記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行され、取消理由通知(決定の予告)において引用した、甲1には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したものであり、以降の他の文献に記載された事項についても同様である。
a 【0002】~【0006】
「【背景技術】
【0002】
原子力施設などより発生する固体状の放射性廃棄物として、チャンネルボックスやハルなど長期間の中性子照射により放射化され、高い放射性核種濃度となる金属製の廃棄物がある。また、コンクリートやフィルタなどの金属以外の不燃性廃棄物もある。
【0003】
一般に放射性廃棄物の廃棄体とするための固化処理方法には、セメント固化、ガラス固化、溶融固化などが想定されている。この中で、セメント固化方法は安価で処理が容易なため、多くの廃棄物の固化に適用が想定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、放射性廃棄物に含有される放射性核種濃度が高いと、充填されたセメント固化物質中に存在する間隙水や結晶水などが放射線により分解して、放射線分解ガスを発生することが懸念される。固化体容器からのガスの放出を押さえるため、容器を密封するようなことも考えられるが、長期間の保管では内部圧力の上昇が懸念される。
【0005】
一方、固体状の放射性廃棄物を収容した容器に砂を充填して廃棄体とする手法の報告がある(非特許文献1参照)。
【0006】
同報告には、(1)放射性廃棄物を処分容器に入れて埋設する場合、上部の覆土が廃棄物の陥没による影響を受けないように、埋設が終了した後において空隙が残らないように措置することが埋設規則等から要求されていること、(2)廃棄物収納容器へ砂を加振充填することにより空隙を措置する概念が考えられること、などが記載されている。」
b 【0020】~【0023】、図1
「【0020】
図1は、本発明に係る放射性固体廃棄物処理方法の一実施の形態の処理工程を説明するフロー図である。
【0021】
本処理方法では、先ず、放射性固体廃棄物1を廃棄容器2に投入する(廃棄物投入工程S3)。
【0022】
次に、廃棄容器2内の放射性固体廃棄物1以外の空隙体積を求める(空隙評価工程S4)。
【0023】
更に、前記廃棄容器2内の前記固体廃棄物1の間隙に充填材5を充填する(充填材充填工程S6)。充填材5としては、砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料とし、複数の粒子径や材料を混在しても良い。」
「【図1】
[図:0001432030000001.jpg]
」
c 【0046】~【0049】、図5
「【0046】
次に、図5に、充填材充填工程S6を実施する充填装置の構成例を示す。
【0047】
この充填装置では、充填材5が収容された充填材格納容器26と廃棄容器2とが注入配管27によって接続され、この注入配管27に注入量を制御する注入制御装置28が設けられている。また、注入配管27の廃棄容器2近傍には充填完了を検知する完了検知センサ29が設けられている。
【0048】
更に、廃棄容器2には、注入配管27内に残存する充填材5の量に応じて内蓋17の位置を上方向へ移動できるように、容積増大手段として、可変位置内蓋おさえ31が設けられている。可変位置内蓋おさえ31は、例えば、内蓋17の下面に付勢して設けた圧力ばね31aと、廃棄容器2の内面でかつ内蓋17の上方に移動可能に掛止された留め具31bとにより構成することができる。
【0049】
また、廃棄容器2の底部には、確実な充填を行うために廃棄容器2を加振する加振装置30が設置されている。」
「【図5】
[図:0001432030000002.jpg]
」
(イ)甲1方法発明の認定
前記(ア)に摘記した甲1の記載事項から、図1に示される実施の形態の放射性固体廃棄物処理方法について、次の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されているものと認められる(甲1方法発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<甲1方法発明>
「放射性固体廃棄物処理方法であって、(【0020】)
放射性固体廃棄物処理方法は、放射性固体廃棄物1を廃棄容器2に投入する工程(廃棄物投入工程S3)、(【0021】)
廃棄容器2内の放射性固体廃棄物1以外の空隙体積を求める工程(空隙評価工程S4)、(【0022】)
前記廃棄容器2内の前記固体廃棄物1の間隙に充填材5を充填する工程(充填材充填工程S6)を備え、(【0023】)
充填材5としては、砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料とする(【0023】)
放射性固体廃棄物処理方法」
(ウ)甲1装置発明の認定
前記(ア)に摘記した甲1の記載事項から、甲1には、図5に示される実施の形態の充填装置について、次の発明(以下「甲1装置発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1装置発明>
「充填材充填工程S6を実施する充填装置であって、(【0046】)
充填材充填工程S6は、放射性固体廃棄物処理方法において、(【0020】)
放射性固体廃棄物1を廃棄容器2に投入する工程(廃棄物投入工程S3)、(【0021】)
廃棄容器2内の放射性固体廃棄物1以外の空隙体積を求める工程(空隙評価工程S4)、(【0022】)に次いで行われる
前記廃棄容器2内の前記固体廃棄物1の間隙に充填材5を充填する工程であり、(【0023】)
充填材5としては、砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料とし、(【0023】)
充填装置では、充填材5が収容された充填材格納容器26と廃棄容器2とが注入配管27によって接続されている(【0047】)
充填装置」
ウ 甲2に記載された事項及び甲2技術事項の認定
(ア)甲2に記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行され、取消理由通知(決定の予告)において引用した、甲2には、以下の事項が記載されている。
a 【0002】~【0005】
「【背景技術】
【0002】
従来、高濃度の放射性物質を含む放射性廃棄物(以下、高線量放射性廃棄物と記載する)の処理方法としてガラス固化方法やセメント固化方法がある。ガラス固化方法は、ガラスと放射性廃棄物の混合物を、1200℃以上の高温で加熱するため処理費用が嵩む。一方、セメント固化方法は、安価な処理方法である。しかしながら、高線量放射性廃棄物の場合、製造したセメント固化体に含まれる水分が放射線分解されて水素ガスなどが発生してしまう。そのため、放射性廃棄物を収める容器内に、ガスを固定する薬剤を配置しているものもある。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の観点から、安価な処理方法であり、かつ水分を含まない固化体の製造方法としてジオポリマー固化方法が検討されている。ジオポリマーの主成分はケイ素とアルミニウムであって安価であり、ジオポリマーの骨格構造は水を含まない。しかし、製造工程で用いた水分及びジオポリマーの縮合重合反応で生成する水分が残留する。ジオポリマー固化体中の水分は固化体を加熱することで低減させることができるが、多くの熱エネルギーが必要であり、固化体作成に要する費用が高くなる。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、ジオポリマー固化体を製造するときに必要なエネルギーを低減させることができる放射性廃棄物の固化体製造技術を提供することを目的とする。」
b 【0010】~【0049】、図2
「【0010】
(第1実施形態)
・・・(中略)・・・
【0020】
また、本実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法は、水の放射線分解による水素の発生が懸念される高線量放射性廃棄物を固化体にすることを対象としているが、これに限定されるものではなく、放射性物質の濃度に関わらず低レベル放射線廃棄物などを固化体にしても良い。また、水の除去が必要となる廃棄物などに対して広く適用できるものと考えられる。特に、原子力発電所にて炉心溶融を伴う過酷事故が発生したときに大量の汚染水が生じるが、この汚染水を浄化した際に排出される大量のスラリーの固化体の製造に、本実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法を適用することができるものと考えられる。
・・・(中略)・・・
【0027】
なお、このジオポリマー固化体には、結晶水は含まれないものの、固化の過程で生じる縮合重合反応により発生する水分や当初添加した水分が残留する。この水分が高線量の放射性物質に曝されることで、放射性分解により水素が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、乾燥部8にてジオポリマー固化体を乾燥させる。また、本実施形態の乾燥時間は、3時間となっている。
・・・(中略)・・・
【0038】
次に、第1実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法をについて図2を用いて説明する。なお、フローチャートの各ステップの説明にて、例えば「ステップS11」と記載する箇所を「S11」と略記する。
【0039】
まず、ジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水とを混合部2に投入する(S11:投入ステップ)。次に、混合部2でジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水とを混合する(S12:混合ステップ)。次に、第1減圧ポンプ5を駆動し、混合部2が配置される第1減圧室4の内部の空気を抜いて気圧を下げる(S13:混合時減圧ステップ)。なお、本実施形態では、混合を開始した後に第1減圧室4の減圧を開始しているが、この混合を開始する前に第1減圧室4の減圧を開始しても良い。
【0040】
混合の完了後に、第1減圧室4の気圧を大気圧に戻し、混合物を第1減圧室4から取り出す。そして、この混合物を型枠7に流し込んで成型する(S14:成型ステップ)。次に、混合物が固化するまで所定時間待つ。次に、固化された混合物、つまり型枠7により成型されたジオポリマー固化体を脱型する(S15:脱型ステップ)。このようにすれば、混合物の形状を整えることができ、ジオポリマー固化体の取扱いが容易になる。
【0041】
次に、ジオポリマー固化体を第2減圧室9に配置された乾燥部8に配置し、ジオポリマー固化体の乾燥を開始する(S16:乾燥ステップ)。次に、第2減圧ポンプ10を駆動し、乾燥部8が配置される第2減圧室9の内部の空気を抜いて気圧を下げる(S17:乾燥時減圧ステップ)。なお、本実施形態では、混合を開始した後に第2減圧室9の減圧を開始しているが、この混合を開始する前に第2減圧室9の減圧を開始しても良い。
【0042】
本実施形態では、乾燥を開始してから乾燥が終了するまでの全ての期間に亘って第2減圧室9の減圧状態を維持する。そして、乾燥の完了後に、第2減圧室9の気圧を大気圧に戻し、ジオポリマー固化体を第2減圧室9から取り出す。次に、このジオポリマー固化体を保管用キャニスタ12に収容して保管する(S18:保管ステップ)。
【0043】
なお、本実施形態の混合時減圧ステップにおいて、第1減圧室4の内部の気圧は、0.8気圧以下であれば良い。例えば、第1減圧室4の内部の気圧は、0.4気圧以下であっても良いし、0.1気圧以下であっても良いし、0.005気圧以下であっても良い。
【0044】
なお、本実施形態の乾燥時減圧ステップにおいて、第2減圧室9の内部の気圧は、0.8気圧以下であれば良い。例えば、第2減圧室9の内部の気圧は、0.4気圧以下であっても良いし、0.1気圧以下であっても良いし、0.005気圧以下であっても良い。
【0045】
なお、混合時減圧ステップの第1減圧室4の内部の気圧と乾燥時減圧ステップの第2減圧室9の内部の気圧は、同じ気圧になるまで下げる必要はなく、互いの気圧が異なっていても良い。
【0046】
なお、本実施形態の乾燥ステップにおいて、ジオポリマー固化体を加熱せずに常温で乾燥させても良い。例えば、ジオポリマー固化体を25℃の温度で乾燥させても良い。また、ジオポリマー固化体を加熱して100℃未満の温度で乾燥させても良い。例えば、ジオポリマー固化体を90℃の温度で乾燥させても良い。また、ジオポリマー固化体を加熱して100℃以上の温度で乾燥させても良い。例えば、ジオポリマー固化体を105℃の温度で乾燥させても良い。
【0047】
特に、ジオポリマー固化体(混合物)を、常温で乾燥させる場合や100℃未満の温度で乾燥させる場合は、第2減圧室9の内部の気圧を0.1気圧以下にすると良い。このようにすれば、低い温度でジオポリマー固化体を乾燥させるときであっても、ジオポリマー固化体に含まれる水分の蒸発が促進されるので、混合物を充分に乾燥させることができる。
【0048】
なお、本実施形態の加熱温度とは、ジオポリマー固化体が達する最高温度のことを示す。また、乾燥を開始してから乾燥を完了するまでの期間のジオポリマー固化体の平均温度であっても良い。
【0049】
なお、本実施形態の乾燥時間は、3時間となっているが、この乾燥時間は適宜変更可能である。」
「【図2】
[図:0001432030000003.jpg]
」
c 【0050】~【0062】、図3、図4、図5
「【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法について図3から図4を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
図3に示すように、第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造装置1Aは、前述した第1実施形態の放射性廃棄物の固化体製造装置1(図1参照)に、粉砕機15を加えた構成となっている。その他の装置は同じである。
【0052】
次に、第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法をについて図4を用いて説明する。なお、第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法は、S15Aのみが、前述した第1実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法(図2参照)と異なり、他のステップは同じである。
【0053】
第2実施形態では、混合工程中(S12)気圧を下げる(S13)。そして、混合の完了後に、第1減圧室4の気圧を大気圧に戻し、混合物を第1減圧室4から取り出す。そして、この混合物を型枠7に流し込んで成型し、混合物が固化するまで所定時間待つ(S14:固化ステップ)。
【0054】
次に、固化された混合物、つまり型枠7により成型されたジオポリマー固化体を脱型し、ジオポリマー固化体を粉砕機15で粉砕して粉粒体にする(S15A:粉砕ステップ)。次に、粉砕されたジオポリマー固化体を第2減圧室9に配置された乾燥部8に配置し、ジオポリマー固化体の乾燥を開始する(S16:乾燥ステップ)。以降のステップは、前述した第1実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法と同じステップである。
【0055】
ここで、ジオポリマー固化体の製造量を増やすため、乾燥時間の短縮が強くの望まれる場合がある。また、ジオポリマー固化体等放射性廃棄物の保管場所には限りがあり、より多くのジオポリマー固化体をキャニスタに収容することが強く望まれる場合がる。
【0056】
第2実施形態では、ジオポリマー固化体を(混合物)を粉砕するので、ジオポリマー固化体の表面積が増大される。そのため、ジオポリマー固化体を乾燥させ易くなる。また、粉粒状のジオポリマー固化体が得られるので、様々な形状の容器に収めることが可能となり、ジオポリマー固化体の取扱いが容易になる。なお、第1の実施形態では、閉じ込め性能を高く保つために固化体には亀裂が発生しない方が良いと記したが、粉砕されてもジオポリマー固化体の閉じ込め性能が十分である場合、粉砕することが可能である。
【0057】
なお、第2実施形態では、乾燥ステップの前にジオポリマー固化体を粉砕しているが、乾燥ステップの後にジオポリマー固化体を粉砕しても良い。このようにすれば、粉粒状のジオポリマー固化体を様々な大きさや形状の保管用キャニスタ12に収容することができる。また、中間貯蔵施設にて保管した後に、再度適切な固化処理を行うときに作業がし易くなる。
【0058】
(実施例)
次に、放射性廃棄物の固化体製造方法によりジオポリマー固化体の試験体(T1~T9)を製造したときの実験結果について図5を用いて説明する。
【0059】
図5は、混合時減圧ステップおよび乾燥時減圧ステップの雰囲気を1気圧(大気圧)、0.8気圧、0.005気圧とし、それぞれの気圧条件において、乾燥時の温度を25℃(室温)、90℃、105℃に設定して作成した試験体の含水率を測定した結果である。表2は、混合時と乾燥時の気圧および乾燥時加熱温度ごとに試験体の含水率を記載した表である。
【0060】
【表2】
[図:0001432030000004.jpg]
【0061】
なお、実施例において、ジオポリマー固化体を製造する際に、混合部2に投入する各材料の組成(比率)は、アルミノケイ酸塩が30wt%、ケイ酸ナトリウム溶液が14wt%、水酸化カリウムが6wt%、水が5wt%、放射性廃棄物の模擬物(例えば、スラリー状の廃棄物など)が45wt%となっている。
【0062】
また、混合部2でジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水との混合物は、型枠7に流し込んで、固化後に脱型したものを乾燥部8にて乾燥させた。なお、脱型後のジオポリマー固化体は、φ50mm×40mmの大きさの円柱形状となっている。これらのジオポリマー固化体を乾燥部8で28時間乾燥した。また、混合時減圧ステップおよび乾燥時減圧ステップの雰囲気の気圧と、乾燥時減圧ステップの温度を様々な条件にしてジオポリマー固化体を製造し、各試験体を得た。なお、各試験体の乾燥期間は、3時間となっている。この乾燥期間に全期間に亘って減圧状態を維持した。」
「【図3】
[図:0001432030000005.jpg]
【図4】
[図:0001432030000006.jpg]
【図5】
[図:0001432030000007.jpg]
」
(イ)甲2の記載事項から当業者が把握できる事項
甲2の【0050】には、「第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法」について、「前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する」と記載されているところ、第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法について、第1実施形態の記載を参照できることを当業者は把握できる。
(ウ)甲2技術事項の認定
前記(ア)に摘記した甲2の記載事項及び前記(イ)に記載した甲2の記載事項から当業者が把握できる事項を総合すると、甲2には、図3及び図4に示される第2実施形態の放射性廃棄物の固化体製造方法に関して、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲2技術事項>
「放射性廃棄物の固化体製造方法について、(【0050】)
放射性廃棄物の固化体製造方法は、水の放射線分解による水素の発生が懸念される高線量放射性廃棄物を固化体にすることを対象としているが、放射性物質の濃度に関わらず低レベル放射線廃棄物などを固化体にしても良く、また、水の除去が必要となる廃棄物などに対して広く適用でき、(【0020】、前記(イ))
ジオポリマー固化体には、固化の過程で生じる縮合重合反応により発生する水分や当初添加した水分が残留し、この水分が高線量の放射性物質に曝されることで、放射性分解により水素が発生するおそれがあり、そこで、乾燥部8にてジオポリマー固体化を乾燥させるものであり(【0027】、前記(イ))
ジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水とを混合部2に投入し(S11:投入ステップ)、(【0039】、前記(イ))
混合部2でジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水とを混合し(S12:混合ステップ)、(【0039】、前記(イ))
第1減圧ポンプ5を駆動し、混合部2が配置される第1減圧室4の内部の空気を抜いて気圧を下げ(S13:混合時減圧ステップ)、(【0039】、前記(イ))
混合の完了後に、第1減圧室4の気圧を大気圧に戻し、混合物を第1減圧室4から取り出し、この混合物を型枠7に流し込んで成型し、混合物が固化するまで所定時間待ち(S14:固化ステップ)、(【0053】)
固化された混合物、つまり型枠7により成型されたジオポリマー固化体を脱型し、ジオポリマー固化体を粉砕機15で粉砕して粉粒体にし(S15A:粉砕ステップ)、(【0054】)
粉砕されたジオポリマー固化体を第2減圧室9に配置された乾燥部8に配置し、ジオポリマー固化体の乾燥を開始し(S16:乾燥ステップ)、(【0054】)
第2減圧ポンプ10を駆動し、乾燥部8が配置される第2減圧室9の内部の空気を抜いて気圧を下げ(S17:乾燥時減圧ステップ)、(【0041】、前記(イ))
乾燥の完了後に、第2減圧室9の気圧を大気圧に戻し、ジオポリマー固化体を第2減圧室9から取り出し、このジオポリマー固化体を保管用キャニスタ12に収容して保管する(S18:保管ステップ)(【0042】、前記(イ))ことにより、
ジオポリマー固化体を(混合物)を粉砕するので、ジオポリマー固化体の表面積が増大されるため、ジオポリマー固化体を乾燥させ易くなり、また、粉粒状のジオポリマー固化体が得られるので、様々な形状の容器に収めることが可能となり、ジオポリマー固化体の取扱いが容易になることであり(【0056】)、
混合時減圧ステップおよび乾燥時減圧ステップの雰囲気を0.005気圧とし乾燥時の温度が90℃であるときの3時間乾燥処理後含水率が1.1wt%であり、混合時減圧ステップおよび乾燥時減圧ステップの雰囲気を0.8気圧とした乾燥時の温度が105℃であるときの3時間乾燥処理後含水率が0.6wt%であること(【0043】~【0047】、【0060】、【表2】)」
エ 引用文献Aに記載された事項等及び引用文献Bに記載された事項等の認定並びに技術常識αの認定
(ア)引用文献Aに記載された事項及び引用文献A技術事項の認定
a 引用文献Aに記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行された引用文献Aには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子炉建屋や生体遮蔽のための原子炉内構造物などの解体時に廃棄物として多量に発生する放射能コンクリートの合理的な処理方法に関するものである。」
「【0014】
【発明の実施の形態】次に本発明の第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態では放射性コンクリートの切断時に多量に発生する放射性コンクリートスラッジを均質固化体とせず、ペレット状に加工して、解体時に同時に発生する放射性コンクリートブロックを収納した容器の側面隙間に充填し固型化することにより、均質固化体を発生させないで、放射性コンクリートスラッジを処理処分することを特徴とする。
【0015】放射性コンクリートをワイヤーソー11により給水しながらブロック状に切断してコンクリートブロック12に切り分ける(図1(a))。コンクリートブロック12の大きさは廃棄体容器20に収納可能な大きさで、かつコンクリート製充填物21が注入可能な寸法にそれぞれ切断することが好ましい。コンクリート切断時に給水を行うのは発塵を防ぐためである。切断部にはコンクリートブロック12とともにコンクリートスラッジ13も同時に発生する。発生時のコンクリートスラッジ13は多量の水を含んだ泥水状であるため、廃棄物として処理し易いように脱水機14により脱水を行う(図1(b))。脱水は脱水スラッジ15の含水率が約30~55%程度になるように行うことが好ましい。脱水機14にはフィルタプレス、遠心分離器等が挙げられる。
【0016】次に脱水スラッジ15にセメント16を添加して、混練する(図1(c)及び(d))。スラッジ15に添加するセメント16としてはJIS R 5210-1997に規定されたポルトランドセメント、JIS R 5211-1997に規定された高炉セメント又はJIS R 5213-1997に規定されたフライアッシュセメントである。特に、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントは養生期間を短縮するため好ましい。後述するコンクリートペレット21aに所望の強度を発生させ、かつペレット発生量を極力抑制するように、脱水スラッジ15はセメント16と混練される。ここでセメントは脱水スラッジ中に含まれるセメントと水との比が0.6以上になるように混合することが好ましい。セメント水比が0.6以上であればコンクリートペレットに所望の圧縮強度が得られる。脱水スラッジの含水率が例えば35%の場合では、セメント添加率は15%程度が必要となる。ペレットの圧縮強さは脱水スラッジの含水率に依存するので、スラッジの含水率に応じてセメントの配合を調整する必要がある。
【0017】次に、混練物を押出し成形機に供給して棒状に成形した後、切断してペレット状に加工する。本発明におけるペレットの製造は、原料に比較的含水率の高いスラッジを用いており、ペレット製造後に十分な圧縮強さを保ち、かつ吸水率を抑制する必要があるため、混練後、押出し成形する。押出し成形により棒状の成形体を形成した後、直径とほぼ同じ長さに切断してグリーンペレットを形成する。ペレットの直径は押出し成形機の排出部分の口金直径により制御され、棒状成形体の切断は押出し成形機の排出部分にロータリーナイフを設置するか、或いは別途切断機構を設置することによって実施される。本発明では放射性物質を取扱うことから、ペレットの製造方法は保守の容易なバッチによるシステムが望ましい。
【0018】このようにして形成したグリーンペレットを保管パレットに受けた後、20℃前後で気乾又は密閉状態で3日程度養生して硬化させる(図1(e))。養生方法はペレットの乾燥を防止するため、密閉パン内で養生する方法が好ましい。このようにして形成したペレット21aは、十分な強度を有するため割れ欠けを生じることなく取扱い可能であり、かつモルタルによる固型化に問題を生じない程度に吸水率を抑制できる。
【0019】次に放射性コンクリートより切り分けたコンクリートブロック12を容器20に収容し、容器に収容したブロック12と容器20の内側壁との隙間10cにコンクリートペレット21aを充填する。容器20には内底部にコンクリートブロック12を受けるための複数の支持突起10aが取付けられており、上部は開口部10bを有している。コンクリートペレット21aを上記隙間10cに充填した後、Pロート流下時間16~50秒のモルタルを注入して固化する。容器の開口部10bに蓋をして容器20を密閉して放射性コンクリートを貯蔵する(図1(g))。ブロック12を容器20内に収容すると、ブロック12は支持突起10aにより保持されるため、隙間10dを形成する(図1(h))。
【0020】容器20の内壁部とコンクリートブロック12との隙間10cにはペレット21aのみを充填してもよいし、放射性コンクリートの破砕物21bや放射性コンクリートを切断した際に発生するコンクリート端材と一緒に充填してもよい。上記隙間10c,10dに充填するモルタルのPロート流下時間は16~50秒である。ここでモルタルを上記隙間10c、10dに充填する前にモルタルを一部抜き出してPロート流下時間測定を行って流動性を調べる(図1(f))。流動性はモルタルの軟らかさを表し、図5に示すように、Pロートによって流下時間を測定する(土木学会基準H-III.1,JASS 5T-701)。このPロート流下時間測定方法はモルタルをPロート30のポイントゲージ31の下端(破線)まで入れ(1725ml)、このモルタルを自由落下させて流出口32からモルタルが流下する時間を測定することによりモルタルの流動性を調べる方法である。図1に戻って、モルタル充填後は一定期間養生して固形化した後、容器開口部10bに図示しない蓋をして容器20を所定の放射性廃棄物処分場に廃棄する。」
「【図1】
[図:0001432030000008.jpg]
」
「【0036】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、放射性コンクリートを給水しながら切断してコンクリートブロックを形成し、内底部にブロックを受ける複数の支持突起を有し上部に開口部を有する容器にブロックを収容し、ブロックと容器の内側壁との隙間にコンクリート製充填物を45~55%の充填率で充填して、充填物の空隙にPロート流下時間16~50秒のモルタルを注入固化させ、容器の開口部に蓋をして容器を密閉する処理方法において、充填物の一部又は全部が、放射性コンクリートの切断時に発生するコンクリートスラッジを脱水して作られた脱水スラッジとセメントとを混練し、混合物からグリーンペレットを形成した後、室温下で養生して形成されたコンクリートペレットであるか、又は充填物の一部又は全部が放射性コンクリートの破砕物であって、モルタルが放射性コンクリートの切断時に発生するコンクリートスラッジを脱水して作られた脱水スラッジとセメントと砂と水と混和剤を混練して調製されたことにより、放射性コンクリートスラッジは、切断時に同時に発生する放射性コンクリートブロックと収容する容器との隙間に、ペレット状にしてコンクリート製充填物として詰め込むか又はモルタル状にして充填することが可能であるため、放射性コンクリートスラッジを単独で廃棄物として発生させない。また放射性コンクリートブロック、放射性コンクリート破砕物を含むコンクリート製充填物及び当該コンクリートスラッジ全体の放射性廃棄物量の大幅な減容化が可能となり、処分場に対する負荷が軽減できる。」
b 引用文献A技術事項の認定
前記(ア)に摘記した引用文献Aの記載事項から、引用文献Aには、放射性コンクリートの処理方法について、次の技術事項(以下「引用文献A技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献A技術事項>
「放射性コンクリートの処理方法について、(【0001】)
放射性コンクリートの切断時に多量に発生する放射性コンクリートスラッジを均質固化体とせず、ペレット状に加工して、解体時に同時に発生する放射性コンクリートブロックを収納した容器の側面隙間に充填し固型化することにより、均質固化体を発生させないで、放射性コンクリートスラッジを処理処分する(【0014】)ことにより、
放射性コンクリートスラッジは、切断時に同時に発生する放射性コンクリートブロックと収容する容器との隙間に、ペレット状にしてコンクリート製充填物として詰め込むことが可能であるため、放射性コンクリートスラッジを単独で廃棄物として発生させず、放射性コンクリートブロック、放射性コンクリート破砕物を含むコンクリート製充填物及び当該コンクリートスラッジ全体の放射性廃棄物量の大幅な減容化が可能となり、処分場に対する負荷が軽減できること(【0036】)」
(イ) 引用文献Bに記載された事項及び引用文献B技術事項の認定
a 引用文献Bに記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行された引用文献Bには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、原子力発電所の廃止処置により解体した建屋から発生する放射性コンクリート廃棄物の処分容器への充填方法に関するものである。」
「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的によるこの発明は、原子力施設の建屋から発生した放射性のコンクリート廃棄物を処分容器に収納し、モルタルを充填して処分するにあたり、建屋から切り出したコンクリートブロックを、容器内寸よりも小さく二次細断したブロックと破砕したガラとに処理し、そのブロックを処分容器に収納して周囲に寸法差による隙間を形成し、その間隙にガラを収納したのち、小粒子のガラをモルタル細骨材として処分容器に充填して、上記コンクリート廃棄物を高密度に収納してなる、というものである。
【0009】また上記コンクリートガラは、建屋の解体時に生じたコンクリートガラを破砕したものからなり、そのガラをさらに小粒子に細破砕し、モルタル細骨材とし再利用してなるというものであり、上記モルタルは、ワイヤーソー切断時に生じた切断廃液から分離処理されたコンクリートスラッジ又は中和処理により生じた炭酸カルシウムスラッジを細骨材として含み、上記モルタルの水は、ワイヤーソー切断時に生じた切断廃液の脱水処理後の中和濾過水を含むというものである。
【0010】上記構成では、建屋から生じた放射性のコンクリート廃棄物を、ブロック、ガラ、モルタル細骨材の形態で処分容器に混在充填することから、従来よりも高密度の収納が行えるようになり、これにより処分容器数の減少が図られるので、輸送処分費を低く抑えることができる。また切断廃液の処理により生じたコンクリートや炭酸カルシウムのスラッジをモルタル細骨材に、脱水処理後の中和濾過水をモルタル水に再利用したことにより、それらに要する処理輸送費の低減及び一般環境への負荷低減も可能となる。」
b 引用文献B技術事項の認定
前記(ア)に摘記した引用文献Bの記載事項から、引用文献Bには、放射性コンクリート廃棄物の充填方法について、次の技術事項(以下「引用文献B技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献B技術事項>
「放射性コンクリート廃棄物の充填方法について、(【0001】)
建屋から生じた放射性のコンクリート廃棄物を、ブロック、ガラ、モルタル細骨材の形態で処分容器に混在充填することから、従来よりも高密度の収納が行えるようになること(【0010】)」
(ウ)技術常識αの認定
前記(ア)b及び前記(イ)bで認定した引用文献A技術事項及び引用文献B技術事項からみて、次の事項は本件特許出願前の技術常識であると認められる。
<技術常識α>
「放射性廃棄物の廃棄に際して、廃棄物が場所をとらないようにするために、可能な限り廃棄物の容器への充填率を高めるために、大きな廃棄物の間に小さな廃棄物を含めること。」
オ 甲21~23に記載された事項及び技術常識βの認定
(ア)甲21に記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行された甲21には、以下の事項が記載されている。
a 【0002】~【0009】
「【0002】
放射性廃棄物をドラム缶等の容器の中に固める放射性廃棄物の固化材として、セメント、アスファルト、プラスチック、及び、ガラスが用いられている。このうち、セメントと放射性廃棄物とを混合して容器の中に固める方法は、原子力施設内での製造が比較的容易なことから、多くの原子力施設で標準的な固化法として用いられている。
【0003】
しかしながら、セメント固化法では、セメントに水を添加して水和反応により水和物を生成して硬化する反応を利用するため、放射性廃棄物の放射能濃度が高くなると、水和物に不可分に含まれてる水分及び添加した水分が放射線分解されて水素が発生する。そして、発生した水素が容器内に充満して爆発限界濃度(空気中では4%)を超えると、爆発を起こす虞がある。このため、セメント固化法では、セメントと混合する放射性廃棄物の濃度あるいは量を制限して、水素の発生量を抑制する必要がある。つまり、放射能濃度の高い放射性廃棄物をセメント固化する場合には、1個の容器に収納することができる放射性廃棄物の量が制限され、結果として使用する容器の数が増え、放射性廃棄物の輸送費用、処分費用が増大するという問題がある。
・・・(中略)・・・
【0008】
本発明の目的は、混合物からの水素発生を抑制することが可能な放射性廃棄物の固化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における放射性廃棄物の固化方法は、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合する工程と、前記ジオポリマーバインダーと前記放射性廃棄物との混合物を加熱することで、前記混合物から水分を除去しながら前記混合物を固化する工程と、を有することを特徴とする。」
b 【0039】
「【0039】
混合物からの水分の除去量は、混合物の重量変化から求めている。固化体A~Dのいずれにおいても、1次乾燥後の含水率が3%以下になり、十分に水分を除去できていることがわかった。また、固化体B,C,Dにおいては600℃で2次乾燥を行ったが、水分の除去は150℃の1次乾燥で十分に達成されることがわかった。また、圧縮強度の測定結果から、固化体Dのように、模擬廃棄物を約80%混合しても、固化体に一定の強度を持たせることができることがわかった。セメント固化では放射性廃棄物を30%程度しか混合できないため、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法の有用性が実証された。」
c 【0057】
「【0057】
(効果)
以上のように、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合した混合物には、余剰な水分が含まれている。ジオポリマーバインダーで固化するだけなら、必要な強度さえ得ることができれば、余剰に含まれている水分を考慮する必要はない。ところが、放射性廃棄物を固化する場合、混合物に余剰な水分が含まれていると、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生する。そして、発生した水素が固化物を収納する容器や施設に充満して爆発限界濃度を超えると、爆発を起こす虞がある。そこで、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法においては、余剰な水分を含んでいる混合物を加熱することで、混合物から水分を除去する。これにより、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生することを抑制することができる。」
(イ)甲22-1に記載された事項
甲22-2により本件特許出願前に日本国内又は外国において公知になったと認められる、甲22-1には、以下の事項が記載されている。
(2~4ページ)
「
[図:0001432030000009.jpg]
[図:0001432030000010.jpg]
[図:0001432030000011.jpg]
」
(ウ)甲23に記載された事項
本件特許出願前に日本国内又は外国において発行された甲23には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001432030000012.jpg]
」
(エ)技術常識βの認定
前記(ア)~(ウ)に摘記した甲21、甲22-1、甲23に記載された事項からみて、次の事項は本件特許出願前の技術常識であると認められる。
<技術常識β>
「放射性廃棄物の容器内の空気中の水素濃度を爆発(可燃、燃焼)限界である4vol%以下(未満)にする必要があること。」(甲21の【0003】、甲22-1の2ページ、甲23のG1.2.1.2)
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)対比分析
本件発明1と甲1方法発明を対比する。
a 本件発明1の「固体廃棄物の処理方法。」という特定事項について
(a)甲1方法発明の「放射性固体廃棄物処理方法」は、本件発明1の「固体廃棄物の処理方法」に相当する。
(b)したがって、甲1方法発明は、本件発明1の上記特定事項を備える。
b 本件発明1の「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を含み」という特定事項について
(a)甲1方法発明の「放射性固体廃棄物1」、「廃棄容器2」及び「充填材5」は、それぞれ本件発明1の「固体廃棄物」、「廃棄体容器」及び「充填材」に相当する。
(b)そして、甲1方法発明の「前記廃棄容器2内の前記固体廃棄物1の間隙に充填材5を充填する工程(充填材充填工程S6)」は、本件発明1の「固体廃棄物を収納した」「廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程」に相当する。
(c)したがって、本件発明1と甲1方法発明は「固体廃棄物を収納した」「廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を含」む点で共通する。
一方、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程」について、本件発明では「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように」充填するのに対して、甲1方法発明では、固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量をどのような量とするか特定されていない点で相違する。
c 本件発明1の「前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である」という特定事項について
(a)甲1方法発明において、「充填材5」が「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」であることは、本件発明1において、「前記充填材」が「粉体である」ことに相当するから、本件発明1と甲1方法発明とは、「前記充填材は」、「粉体である」点で共通する。
(b)一方で、「粉体」である「充填材」について、本件発明1は、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体」の粉体「であって、含水率が4wt%以下である」のに対して、甲1方法発明は、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」である点で相違する。
(イ)一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析を踏まえると、本件発明1と甲1方法発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程
を含み、
前記充填材は、粉体である、
固体廃棄物の処理方法。」である点。
<相違点1>
「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程」について、本件発明では、充填材を、固体廃棄物を収納した「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように」充填するのに対して、甲1方法発明では、固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量をどのような量とするか特定されていない点。
<相違点2>
「粉体」である「充填材」について、本件発明1は、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体」の粉体「であって、含水率が4wt%以下である」のに対して、甲1方法発明は、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」である点。
イ 相違点1及び相違点2についての判断
(ア)甲1方法発明から出発した当業者が、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成に至るためには、(i)「充填材5」として、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」に替えて、「ジオポリマー材料を用いて、粉体である放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である」ようにするとともに、(ii)充填材5を「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように充填」することで足りる。
(イ)そこで、まず、前記(i)の構成について検討する。
廃棄物の廃棄に際して、廃棄物が場所をとらないようにするため、可能な限り廃棄物の容器への充填率を高めようとすることは一般的に認識される課題であり、充填率を高めるために、大きな廃棄物の間に小さな廃棄物を含めることも広く行われている方法である。そして、そのような課題や方法は、放射性廃棄物についても、前記(1)エ(ウ)として説示した技術常識αとして認識されている。
してみると、甲1方法発明から出発した当業者は、技術常識αに基づいて、廃棄容器2における廃棄物の充填率を高めようという動機を持ち得るところ、放射性廃棄物を含む固化体を粉砕して粉粒体として、様々な形状の容器に収めることを可能とする甲2技術事項に接することができる。そして、甲2技術事項では、従来のセメント固化方法に見られた「製造したセメント固化体に含まれる水分が放射線分解されて水素ガスなどが発生してしまう」(甲2の【0002】)という課題に対応して、「水分を含まない固化体の製造方法としてジオポリマー固化方法」(甲2の【0004】)を採用しているところ、「充填されたセメント固化物質中に存在する間隙水や結晶水などが放射線により分解して、放射線分解ガスを発生することが懸念される」(甲1の【0004】)という課題に対応して、充填材として「砂」等の「放射線で分解しない粉粒体材料」を用いる甲1方法発明と甲2技術事項とは、充填材の性質について親和性が高いものであるといえる。
そうすると、甲1方法発明において、「粉粒体材料」の「充填材5」として、甲2技術事項の「ジオポリマーの材料と放射性廃棄物」から製造された「ジオポリマー固化体」を粉砕して得られた「粉粒体」を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲2技術事項の「ジオポリマーの材料と放射性廃棄物」から製造された「ジオポリマー固化体」を粉砕して得られた「粉粒体」は、3時間乾燥処理後の含水率が1.1wt%及び0.6wt%であるものが示されているから、本件発明でいう「含水率が4wt%以下である」ものといえる。
(ウ)続いて、前記(ii)の構成について検討する。
甲1の【0004】に「充填されたセメント固化物質中に存在する間隙水や結晶水などが放射線により分解して、放射線分解ガスを発生することが懸念される」と記載されていることからすれば、甲1方法発明の粉粒体材料の充填材に代えて、乾燥させて水素が発生するおそれを回避しようとする甲2技術事項のジオポリマーの材料と放射性廃棄物から製造されたジオポリマー固化体を粉砕して得られた粉粒体を適用する際には、放射性分解ガスである水素ガスに関して、前記(1)オ(エ)で示した技術常識βに基づいて、放射性廃棄物の容器内の空気中の水素濃度を爆発(可燃、燃焼)限界である4vol%未満にする必要があることは、当業者が当然に考慮すべき設計事項にすぎない。
(エ)以上検討のとおり、甲1方法発明から出発した当業者は、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて、前記(i)及び(ii)の構成に至る。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1の奏する効果は、本件発明1の構成が奏するものとして、甲1方法発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて当業者が予測することができない顕著な効果であるとはいえない。
エ 特許権者の意見書における主張について
(ア)特許権者の主張の内容
特許権者は、令和7年4月22日付け意見書において、概略、以下の根拠により、本件発明1は、甲1方法発明、甲2技術事項、引用文献A技術事項及び引用文献B技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない旨を主張している。
(根拠1)本件発明1と甲1方法発明、甲2技術事項、引用文献A技術事項及び引用文献B技術事項とは、次の2点で相違する。
・「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填する」
・「前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である」
(根拠2)本件特許発明によって得られる下記の効果は、甲1方法発明、甲2技術事項、引用文献A技術事項及び引用文献B技術事項では得られない。
・水素発生の要因を効果的に低減可能
・廃棄体容器の内部における充填率を向上可能
(根拠3)甲2の段落【0060】の【表2】では、乾燥条件に応じて「3時間乾燥処理後含水率」が変わることを列挙しているにすぎず、本件特許発明の効果である「水素発生の要因を効果的に低減」等を実現するための「含水率」については、記載および示唆がない。
(イ)主張についての検討
特許権者の主張について検討する。
a 根拠1について
根拠1で示される相違点について、これらの相違点に係る本件発明1の構成は、前記イ(ア)~前記イ(エ)で説示したとおり、当業者であれば、甲1方法発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて容易に想到し得ることである。
b 根拠2について
(a)甲2技術事項に開示されるジオポリマーの材料と放射性廃棄物から製造されたジオポリマー固化体を粉砕して得られた粉粒体は、乾燥させて水素が発生するおそれを回避しようとするものである。したがって、甲1発明に甲2技術事項を適用した発明が、ジオポリマーの固化体の粉粒体から発生する水素量を低減することが可能であるという効果を有することは、当業者であれば甲2技術事項に基づいて容易に予測可能である。
(b)甲2技術事項は、放射性廃棄物を含む固化体を粉砕して粉粒体として様々な形状の容器に収めることを可能とするものであるから、甲1発明に甲2技術事項を適用することにより廃棄体容器の内部における充填率を向上可能であることは、当業者であれば甲2技術事項に基づいて容易に予測可能である。
c 根拠3について
甲2技術事項において、ジオポリマー固化体には、固化の過程で生じる縮合重合反応により発生する水分や当初添加した水分が残留し、この水分が高線量の放射性物質に曝されることで、放射性分解により水素が発生するおそれがあり、そこで、乾燥部8にてジオポリマー固体化を乾燥させるものであり、3時間乾燥させた後の含水率が1.1wt%又は0.6wt%であることからすれば、これらの含水率が、水素発生の要因を効果的に低減するものであることは明らかである。
c 検討のまとめ
以上検討のとおり、根拠1~3はいずれも採用できないから、特許権者の主張は採用できない。
オ 小括
本件発明1は、甲1方法発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
甲2の【0061】には、ジオポリマー固化体を製造する際の放射性廃棄物の模擬物として「スラリー状の廃棄物」が例示されている。そして、スラリーは固体粒子を含むものを意味するから、甲2技術事項のジオポリマー固化体は、粉体の放射性廃棄物を含んでいるといえる。
仮に、甲2に例示された「スラリー状の廃棄物」が粉体の放射性廃棄物を含んでいるといえないとしても、甲2技術事項のジオポリマー固化体は、ジオポリマーの材料と放射性廃棄物と水との混合物から得られるのであって、粉体の放射性廃棄物と水とを混合すればスラリー状の廃棄物となることからすれば、甲2技術事項の放射性廃棄物として粉体を扱えることは自明である。
したがって、本件発明3は、甲1方法発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
ア 対比
(ア)対比分析
本件発明4と甲1装置発明を対比する。
a 本件発明4の「固体廃棄物処理装置。」という構成について
(a)甲1装置発明の「充填装置」は、「放射性固体廃棄物処理方法」における「充填材充填工程S6」を実施するものであるから、本件発明4の「固体廃棄物処理装置」に相当する。
(b)したがって、甲1装置発明は、本件発明4の上記特定事項を備える。
b 本件発明4の「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部を有し、」という構成について
(a)甲1装置発明の「放射性固体廃棄物1」、「廃棄容器2」及び「充填材5」は、それぞれ本件発明4の「固体廃棄物」、「廃棄体容器」及び「充填材」に相当する。
(b)また、甲1装置発明の「充填材格納容器26」及び「注入配管27」を合わせたものは、本件発明4の「充填部」に相当する。
(c)そして、甲1装置発明により実施される「充填材充填工程S6」は、「前記廃棄容器2内の前記固体廃棄物1の間隙に充填材5を充填する工程」であり、「充填材5」が充填される際には「廃棄容器2」に既に「固体廃棄物1」が収納されているから、甲1装置発明の「充填材格納容器26」及び「注入配管27」を合わせたものと本件発明4の「充填部」とは、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する」ものである点で一致する。
(d)したがって、本件発明4と甲1装置発明は、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に、充填材を充填する充填部を有」する点で共通する。一方、「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に、充填材を充填する充填部」について、本件発明4は「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填するための」ものであるのに対して、甲1装置発明では、固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量をどのような量とするか特定されていない点で相違する。
c 本件発明4の「前記充填部は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である粉体を前記充填材として充填するように構成されている」という構成について
(a)甲1装置発明において、「充填材5」は「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」であるから、本件発明4と甲1装置発明とは、「前記充填部は」、「粉体を前記充填材として充填するように構成され」ている点で共通する。
(b)一方で、「粉体」である「充填材」について、本件発明4は、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である粉体」であるのに対し、甲1装置発明は、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」である点で相違する。
(イ)一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析を踏まえると、本件発明4と甲1装置発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部を有し、
前記充填部は、粉体を前記充填材として充填するように構成されている、
固体廃棄物処理装置。」である点。
<相違点3>
「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に、充填材を充填する充填部」について、本件発明4は固体廃棄物を収納した「廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように、前記廃棄体容器の内部に充填材を充填するための」ものであるのに対して、甲1装置発明では、固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量をどのような量とするか特定されていない点。
<相違点4>
「粉体」である「充填材」について、本件発明4は、「ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体」の粉体「であって、含水率が4wt%以下である粉体」であるのに対し、甲1装置発明は、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」である点。
イ 相違点3及び相違点4についての判断
甲1装置発明から出発した当業者が、相違点3及び相違点4に係る本件発明4の構成に至るためには、(i)「充填材5」として、「砂、アルミナ、窒化珪素、シリカ、金属粒など放射線で分解しない粉粒体材料」に替えて、「ジオポリマー材料を用いて、粉体である放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体であって、含水率が4wt%以下である」ようにするとともに、(ii)充填材5を「固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素の積算水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になるように充填」することで足りる。
そして、前記(3)イにおける相違点1及び相違点2の判断と同様に、甲1装置発明において、前記(1)エ(ウ)で示した技術常識αに基づいて「粉粒体材料」の「充填材5」として甲2技術事項の「ジオポリマーの材料と放射性廃棄物」から製造された「ジオポリマー固化体」を粉砕して得られた「粉粒体」を用いるとともに、前記(1)オ(エ)で示した技術常識βに基づいて放射性廃棄物の容器内の空気中の水素濃度を爆発(可燃、燃焼)限界である4vol%未満となるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
ウ 本件発明4の効果について
本件発明4の奏する効果は、本件発明4の構成が奏するものとして、甲1装置発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて当業者が予測することができない顕著な効果であるとはいえない。
エ 小括
特許権者の主張については、前記(2)エで検討したのと同様であり、いずれも採用できないから、本件発明4は、甲1装置発明、甲2技術事項、技術常識α及び技術常識βに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1、3、4は当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、3、4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。したがって、本件発明1、3、4に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項2は、本件訂正により削除されたため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により、この特許についての異議申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700700