特許異議申立
2016-700180
レーザーエッチング加工用導電性ペースト、電気回路およびタッチパネル
- 審判番号
- 2016-700180
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-257177
- 登録番号
- 特許第5773298号(P5773298)
- 請求日
- 2016年03月01日
- 審決日
- 2017年08月15日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】加藤 加津子
- 審判長/審判官
- 審判長 板谷 一弘
- 審判官 小川 進
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.851-YAA(G06F) / P1651.853-YAA(G06F) / P1651.121-YAA(G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第134条の2第6項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5773298号発明「レーザーエッチング加工用導電性ペースト、電気回路およびタッチパネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5773298号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第5773298号の請求項1ないし4、6ないし9に係る特許を維持する。
特許第5773298号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5773298号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る出願は、2013年7月8日を国際出願日とする特許出願である特願2013-532388号(優先権主張2012年7月20日 日本国)の一部を平成26年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月10日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年3月1日に特許異議申立人 加藤加津子(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年同月28日付けで異議申立人より甲第3号証についての手続補正書が提出され、同年4月12日付けで取消理由が通知され、同年6月3日に特許権者従業員 早川聡らとの面接が行われ、前記取消理由の通知の指定期間内である同年6月13日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正請求があり、同年8月3日付けで訂正請求があった旨が通知され、その指定期間内である同年同月31日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年12月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、前記取消理由(決定の予告)の通知の指定期間内である平成29年3月3日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正(以下、「本件訂正」という。)請求があり、同年5月15日付けで訂正請求があった旨が通知されたが、その指定期間内に異議申立人から意見書が提出されなかったものである。
第2 本件訂正の適否についての判断
本件訂正の請求の趣旨、及び、訂正の内容は、平成29年3月3日付けの訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。
なお、平成28年6月13日付けの訂正請求書による訂正の請求は、本件訂正の請求がなされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げたものとみなされる。
1. 訂正請求の趣旨
本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正の請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。
2.訂正の内容
本件訂正の請求は、一群の請求項である請求項1~9について訂正を請求するものであり、その訂正請求の内容は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂および酸価50~300当量/106gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるバインダ樹脂(A)」との記載から、
「および酸価50~300当量/106gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物」との記載を削除し、その結果として、請求項1を引用する請求項2~9からも削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であることを特徴とする、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」とあるのを、
「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2~9も訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項3に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている導電性積層体。」とあるのを、
「請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。」に訂正し、その結果として、請求項4を引用する請求項5~6、9も訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4または5に記載の導電性積層体」とあるのを、
「請求項4に記載の導電性積層体」に訂正し、その結果として、請求項6を引用する請求項9も訂正する。
(6) 訂正事項6
明細書の段落【0007】において、「(1)酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂および酸価50~300当量/106gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であることを特徴とする、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」、「(4)前記(3)に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている導電性積層体。」、「(5)前記基材が透明導電性層を有することを特徴とする(4)に記載の導電性積層体。」とあるのを、
それぞれ、
「(1)酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」、「(4)前記(3)に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。」、「(5)(削除)」に訂正する。
3. 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求
の範囲の拡張・変更の存否(当審注:「…」は記載の省略を表す。
以下、同じ。)
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1におけるバインダ樹脂(A)についての、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂および酸価50~300当量/106gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなる」との特定から、「および酸価50~300当量/106gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物」との記載を削除して、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなる」との特定に減縮して、請求項1~9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1における、「レーザーエッチング加工用導電性ペースト」について、訂正前の段落【0003】、【0006】、【0045】の記載に基づいて、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、」との発明特定事項を付加して、請求項1~9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項4における、「請求項3に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている」との特定を、訂正前の段落【0045】の記載に基づいて、「請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている」に減縮して、請求項4~6、9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項6における、「請求項4または5に記載の導電性積層体」との特定を、「請求項4に記載の導電性積層体」にして、請求項6、9の記載と、訂正事項4により請求項5が削除されることとの整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6) 訂正事項6
訂正事項6は、発明の詳細な説明の記載と、訂正事項1~5により変更された、特許請求の範囲の記載との実質上の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7) 訂正事項1~6について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用される請求項はなく、したがって、訂正事項1~6には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されない。
また、訂正事項1~6は一群の請求項について適法に請求されたものである。
4. むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6~9に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明4」、「本件訂正発明6」~「本件訂正発明9」という。また、これらの発明を、まとめて、「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4、6~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項2】
更にレーザー光吸収剤(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のレーザーエッチング加工用導電性ペーストから形成された導電性薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項3に記載の導電性薄膜、または、請求項4に記載の導電性積層体、を用いてなる電気回路。
【請求項7】
請求項3に記載の導電性薄膜の一部に、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザーおよび半導体レーザーから選ばれるレーザー光を照射して、前記導電性薄膜の一部を除去することによって形成された配線部位を有する電気回路。
【請求項8】
前記導電性薄膜が透明導電性層上に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電気回路。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の電気回路を構成部材として含むタッチパネル。」
第4 特許異議の申立てについて
1.取消理由の概要
(訂正前の)請求項1~9に係る特許に対して、平成28年12月21日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1~3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものである。
記
刊行物1:国際公開第2011/046076号(甲第3号証)
刊行物2:特開2012-138017号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平10-65312号公報(甲第9号証)
2.各刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
ア. 「技術分野
[0001] 本発明は、導電性ペーストおよびその利用に関するものであり、さらに詳しくはバインダー樹脂としてポリウレタン樹脂を含有する導電性ペースト、該導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜及びその製造方法、該導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体、並びにその導電性積層体を用いたタッチパネルに関する。
背景技術
[0002] 指や専用のペン等で画面に触れることにより操作を行う透明タッチパネルはATM、カーナビゲーションシステム、ゲーム機、駅の切符自動販売機、複写機、博物館の解説端末、及びコンビニの情報端末等、幅広い用途に用いられている。
[0003] 透明タッチパネルは、透明な二枚の導電性薄膜を重ね合わせてスイッチを形成するように構成されている。一般的にこの種の透明タッチパネルの透明導電性薄膜は、蒸着法やスパッタ法により、透明電極材料となる酸化インジウム・スズ膜(以下ITO膜と略記する場合がある)をポリエステルフィルム、ガラス等の基材に付着させ、そのITO膜をエッチングすることによりパターニングして形成されている。
[0004] タッチパネルには種々の方式があり、抵抗膜方式と静電容量方式が代表的である。
[0005] 抵抗膜方式は、圧力を感知して触った位置を特定するというシンプルな仕組みで、製造が簡単で低コストで生産できるのが特徴であり、細かな位置検出がしやすく、ペンによる文字入力にも対応できる。一方、デメリットとしては、液晶の上に導電膜フィルムを貼る構造のため、画面の透過率が低くなり、鮮明な画面を実現しにくい点が挙げられる。
[0006] 静電容量方式は、指や専用のペンでパネルに触れることで起こる放電現象等を感知して位置を特定する方式で、多点感知できることが特徴である。
[0007] タッチパネルはペンや指先等で入力しようとすると、その固定電極側の透明導電性薄膜と可動電極(フィルム電極)側の透明導電性薄膜との透明導電性薄膜同士が接触又は接近するようになっているが、近年、ゲーム機等に見られるペン入力形態の多様化に伴い、入力時の荷重、特にペン入力による荷重で透明導電性薄膜にクラック、剥離等の破壊が生じることが問題となっている。そのためペン摺動耐久性を向上させることが必須となってきており、透明導電性薄膜の強度を向上させる試みが近年活発に行われている。
[0008] 透明導電性薄膜の強度を上げるための試みとして、例えば、薄膜を構成する酸化物を結晶化することが有効であると考えられている。透明導電性薄膜を結晶化させるためには、非結晶性の透明導電性薄膜をプラスチックフィルム基材上に成膜した後、得られた積層フィルムを透明導電性薄膜の結晶化温度以上に加熱するという手法がある(例えば、特許文献1)。
[0009] その他には特許文献2に示される…結晶性ITO薄膜を得る方法等、各社耐久性向上のため、結晶化率の向上を目指している。
[0010] 一方で前記のように透明導電性薄膜を構成する酸化物の結晶化に伴い、透明導電性薄膜上に形成される導電性塗膜の密着性を確保することが難しくなってきている。接続電極である導電性塗膜形成は一般的に、銀等の導電性粉末を含む導電性ペーストのスクリーン印刷塗布によって実施されるが、透明導電性薄膜を構成する酸化物が結晶性の場合、結晶化により透明導電性薄膜の表面構造の秩序が保たれているため、表面活性も低く、凹凸によるアンカー効果が低下する傾向にある。さらに構造の秩序が保たれているため、導電性ペースト中に存在する溶剤の下地層への浸透効果が非晶性透明導電性薄膜よりも弱まる傾向にある。これらの理由により、乾燥後の密着性を確保するのが困難である。
[0011] 以上のことから、特に結晶性透明導電性薄膜に対しての密着性が良好で、導電性を確保した低温加工可能な導電性ペーストが現在強く求められているが、現状はそのような導電性ペーストの開発は十分ではない。
[0012] 従来のタッチパネル用の導電性ペーストとしては、従来のメンブレンスイッチや感圧センサ等の電極用途として用いられる導電性ペーストをタッチパネル用途に転用して用いる場合が多い。例えば、…特許文献4にはポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂をバインダー樹脂とする導電性ペーストが開示されているが、結晶性透明導電性薄膜に対する密着性は必ずしも十分ではない。言い換えるならば透明導電性薄膜を構成する酸化物との密着性を向上させるための樹脂や添加剤の設計思想が盛り込まれておらず、酸化物の種類によって密着性にバラツキが生じ、特に結晶性透明導電性薄膜に対する密着性については極めて乏しいといわざるを得ない。
…
先行技術文献
特許文献
[0016] 特許文献1:特開2005-141981号公報
特許文献2:特開2004-323877号公報
特許文献3:特開2003-203523号公報
特許文献4:特開2003-223812号公報
特許文献5:特開2006-059720号公報
特許文献6:特開平1-159906号公報」
イ. 「発明が解決しようとする課題
[0017] 本発明は、透明導電性層等を有する基材に対して、密着性を顕著に向上させ、高信頼性及び高導電性を付与できる導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0018] このような問題を解決するために、鋭意検討した結果、導電性ペースト中に特定の数平均分子量、酸価、及びガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することが、導電性薄膜を形成する導電性ペーストとして有用であるという知見を得た。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。」
ウ. 「[0079] 後述する製造例において製造されたポリエステル樹脂(P)及びポリウレタン樹脂(U)の物性評価(1.数平均分子量、2.ガラス転移温度(Tg)、3.酸価及び4.樹脂組成)の測定方法を以下に示す。
[0080] また、製造例において製造されたポリエステル樹脂(P)及びポリウレタン樹脂(U)を用いて調製した導電性ペーストの10.貯蔵安定性、及び導電性ペーストを用いて形成したテストピースについての物性評価(5.密着性、6.比抵抗、7.鉛筆硬度、8.環境試験及び9.耐ブロッキング性)の測定方法を以下に示す。
[0081] 1.数平均分子量
試料樹脂を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、GPC測定試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行なった。数平均分子量既知の単分散ポリスチレンのGPC測定結果を用いて試料樹脂のポリスチレン換算数平均分子量を求め、それを本願における試料樹脂の数平均分子量とした。ただしカラムは昭和電工(株)製のshodex KF-802、804L、806Lを用いた。
[0082] 2.ガラス転移温度(Tg)
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC-220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
[0083] 3.酸価
試料樹脂0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。酸価の単位はeq/ton、すなわち試料1トン当たりの当量とした。
[0084] 4.樹脂組成
クロロホルム-dに試料樹脂を溶解し、VARIAN製400MHz-NMR装置を用い、1H-NMRにより樹脂組成比を求めた。
[0085] 5.密着性
作製した導電性ペーストを厚み100μmのアニール処理をしたPETフィルム又は結晶性ITO膜にスクリーン印刷法により25×200mmのパターンを印刷し、150℃で30分乾燥、硬化したものをテストピースとした。乾燥膜厚は20~30μmになるように調整した。このテストピースを用いてJIS K-5600-5-6:1991に従って、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を用い、剥離試験により評価した。但し、格子パターンの各方向のカット数は11個、カット間隔は1mmとした。100/100は剥離がなく密着性が良好であることを示し、0/100は全て剥離してしまい、密着性が劣ることを表す。
[0086] 6.比抵抗
5.と同様に作製したテストピースを25×450mm幅に切り取り、シート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。なお、膜厚はゲージスタンドST-022(小野測器社製)を用い、PETフィルムの厚みをゼロ点として硬化塗膜の厚みを5点測定し、その平均値を用いた。シート抵抗はMILLIOHMMETER4338B(HEWLETT PACKARD社製)を用いて25×450mm幅のテストピースを4枚測定し、その平均値を用いた。
[0087] 7.鉛筆硬度
5.密着性試験で作製したテストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS K 5600-5-4:1999に従って測定し、剥離の有無で判断した。
[0088] 8.環境試験:
5.密着性試験でITO膜上に作製したテストピースを、80℃で300時間加熱する耐熱試験及び85℃、85%RH(相対湿度)で300時間加熱する耐湿熱試験を行い、加熱終了後24時間常温で放置した後、抵抗値を測定した。
環境試験の良否は、前記耐熱試験及び耐湿熱試験の実施前後における導電性塗膜の密着性及び鉛筆硬度の評価にて行った。
[0089] 9.耐ブロッキング性:
5.密着性試験のようにITO膜上に作製した塗膜を2枚、塗膜面を接するように重ね合わせ、導電性塗膜部分に500gの荷重を印加して、80℃で72時間放置した。ついで荷重を取り除き常温で1時間放置した後に以下の基準で外観により良否を判定した。
○:塗膜双方への転写がなく、元の塗膜状態を保持している。
×:双方への転写が見られ、ハガレが生じている。
[0090] 10.貯蔵安定性
導電性ペーストをポリ容器に入れ、密栓したものを40℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵後に粘度及び4と同様に作製したテストピースを用い、比抵抗、鉛筆硬度、密着性を測定した。
○:著しい粘度変化はなく、初期の比抵抗、鉛筆硬度、密着性を維持している。
×:かなりの粘度上昇が認められ、比抵抗、鉛筆硬度、密着性の低下が認められる。
[0091] 樹脂の製造例
ポリエステルポリオール(P)の合成
…
[0092]…ポリエステルポリオール(P-1)~(P-5)、及び(P-7)の組成並びに樹脂物性を表1に示す。
[0093] ポリエステル樹脂(P-6)の合成
…
[0094] 結果を表1に示す。
[0095]
[表1]
[0096] ポリウレタン樹脂の合成
ポリウレタン樹脂(U-1)の合成
…ポリウレタン樹脂(U-1)を製造する際に用いた各成分及び樹脂物性を表2に示す。
[0097] ポリウレタン樹脂(U-2)~(U-6)の合成
…ポリウレタン樹脂(U-2)~(U-6)を製造する際に用いた各成分及び樹脂物性を表2に示す。…
[0098] 表2に記載される略称は、以下のとおりである。
DMBA:ジメチロールブタン酸
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
DMH:2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
[0099]
[表2]
…
[0105] 実施例1
固形分濃度35質量%のポリウレタン樹脂溶液(U-1)を2,858部(固形部換算1,000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを6,540部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のECP600JDを76部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを76部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを58部、分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk2155を16部、溶剤としてエチルジグリコールアセテート(ECA)を640部、ブチルカルビトールアセテート(BCA)を210部配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した。表4に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムを基材とし、5.密着性試験において規定した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は4.9×10-5Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度Hで良好であった。結果を表4に示す。
[0106] 一方で、基材として結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業(株)製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。評価結果を表4に示す。
[0107] 実施例2~7
表4に示す成分及び配合により実施例1と同様に銀ペーストを作製し、アニール処理をしたPETフィルムを基材として塗膜を作製した。塗膜物性を表4に示す。
[0108] また、実施例1と同様に結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業(株)製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。評価結果を表4に示す。
[0109] いずれの実施例もオーブン120℃×30分という低温短時間な条件で良好な塗膜物性を得た。またITOへの密着性、環境試験後の密着性、耐ブロッキング性等も良好であった。
[0110] なお、表4に示す、導電粉末、添加剤及び溶剤は以下のものを用いた。
銀粉1:フェロ・ジャパン(株)製のSF70A
銀粉2:福田金属箔粉工業(株)製のAgC-2011
カーボンブラック:ライオン(株)製のケッチェンECP600JD
グラファイト粉:(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBF
硬化剤:旭化成ケミカルズ(株)製のMF-K60X
硬化触媒:共同薬品(株)製のKS1260
レベリング剤:共栄社化学(株)のMKコンク
分散剤1:ビックケミー・ジャパン(株)社製のDieperbyk2155
分散剤2:ビックケミー・ジャパン(株) 社製のDieperbyk180
ECA:ダイセル化学工業(株)製のエチルジグリコールアセテート
BCA:ダイセル化学工業(株)製のブチルグリコールアセテート
[0111]
[表4]
」
エ. 「請求の範囲
[請求項1] (A)成分:酸価が50~500eq/ton、ガラス転移温度が60~150℃である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂、
(B)成分:金属粉末、及び
(C)成分:有機溶媒
を含有する導電性ペースト。
…
[請求項10] 請求項1~9のいずれかに記載の導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜。
[請求項11] 請求項10に記載の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。
…
[請求項13] 請求項11又は12に記載の導電性積層体を用いたタッチパネル。
オ. 「[0112]比較例1
ポリエステル樹脂(P-6)を固形分濃度35質量%(エチルジグリコールアセテート:ブチルグリコールアセテート=75:25(質量比)に調整した溶液を2,858部(固形部換算1,000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを6540部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のケッチェンECP600JDを76部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを76部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを58部、分散剤1としてビックケミー・ジャパン(株)製のDiesperbyk2155を16部、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを640部、ブチルカルビトールアセテートを210部配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した。表5に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムに5.密着性試験において記述した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は9.2×10-5Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度HBで良好であった。結果を表5に示す。
[0113] 一方で、基材として結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業社製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。結果を表5に示す。
…
[0119]
[表5]
」
カ. 上記エ.の[請求項1]には、
「酸価が50~500eq/ton、ガラス転移温度が60~150℃である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂、金属粉末、及び、有機溶媒を含有する導電性ペースト」に係る発明が記載されている。
キ. 上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂ついて、上記ウ.の[0079]~[0099]には、U-1、U-2、U-4、U-5として、(ガラス転移温度、酸価、数平均分子量)が、それぞれ、(70℃、380eq/ton、55000)、(97℃、180eq/ton、35000)、(71℃、150eq/ton、25000)、(70℃、110eq/ton、20000)であるポリウレタン樹脂が記載され、さらに、上記ウ.の[0105]~[0111]によれば、上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明についての具体例は、実施例1~2、4~5として、U-1、U-2、U-4またはU-5であるポリウレタン樹脂と銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペーストであるとされている。
ク. 上記キ.の記載からすると、上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明は、具体的には、
「ガラス転移温度が70~97℃、酸価が110~380eq/ton、数平均分子量が20000~55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂と、銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペースト」に係る発明であるといえる。
ケ. 上記ク.に示した銀ペーストに係る発明は、上記イ.によれば、透明導電性層等を有する基材に対して、密着性を顕著に向上させ、高信頼性及び高導電性を付与できる導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストを提供することを、発明が解決しようとする課題としており、その課題の解決には、導電性ペースト中に特定の数平均分子量、酸価、及びガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することが有用であるという知見を得、斯かる知見に基づき完成されたものであるとされている。
コ. 上記ケ.に示したことからすると、上記キ.に示した銀ペーストは、透明導電性層等を有する基材に導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストであるといえるところ、透明導電性層等を有する基材とは、上記ア.によれば、導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材のことである。
サ. 上記カ.~コ.の検討を踏まえると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ガラス転移温度が70~97℃、酸価が110~380eq/ton、数平均分子量が20000~55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂と、銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペーストであって、導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材の前記導電性薄膜を形成させるための銀ペースト。」
シ. また、刊行物1には、上記エ.の[請求項10]~[請求項13]を考慮すると、以下の発明も記載されていると認められる。
引用発明2:「引用発明1の銀ペーストを用いてなる導電性薄膜。」
引用発明3:「引用発明2の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。」
引用発明4:「引用発明3の導電性積層体を用いたタッチパネル。」
ス. なお、引用発明1~4をまとめて、引用発明ということがある。
(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
タ. 「【0009】
近年は、タッチパネルの意匠性や操作性を向上させる観点から、タッチパネル自体は大型化させずにアクティブエリアをより大きくすることが求められている。このような要求に応えるために、近年のタッチパネルは、額縁領域の面積をより少なくしてアクティブエリアを拡大することが種々検討されている。
【0010】
しかし、額縁領域の面積を少なくすると、この額縁領域に配置された第1の取出配線又は第2の取出配線をより細線化しなければならず、また各取出配線の設置場所の位置精度をより向上させなければならない。…スクリーン印刷のような印刷法により取出配線を形成する場合には、導電性インクを基材フィルム上に塗布して取出配線を形成するので、取出配線の細線化や設置場所の位置精度の向上が難しいという問題がある。…」
チ. 「【0020】
(タッチパネル1の構成)
図1に示すように、…タッチパネル1は、タッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とから構成されている。タッチパネルセンサ2は、表面に接触した物体の位置を検出するためのもので、第1の取出配線4に接続された接続端子(以下、第1の接続端子5と言う。)及び第2の取出配線6に接続された接続端子(以下、第2の接続端子7と言う。)がタッチパネルセンサ2の側部に形成されている。…なお、説明の便宜上、図1ではタッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とを分離して記載した。また、図1における符号8は、タッチパネルセンサ2の上に設けられる接着層である。この接着層8は、図示しないカバーガラスをタッチパネルセンサ2の上に設置する際に、これらタッチパネルセンサ2とカバーガラスとを接着するためのものである。
【0021】
タッチパネルセンサ2は、図示しないカバーガラスの表面に接触した物体の位置を検出するためのセンサ部材である。図2に示すように、タッチパネルセンサ2は、操作者が視認することができるとともに、表面に指等の物体の接触を検知可能なアクティブエリア11と、このアクティブエリア11の周囲に形成され、通常は操作者が視認することができない額縁領域12とに区画されている。この額縁領域12は、フレキシブル基板3が接合されるとともに第1の取出配線4の一部、第1の接続端子5、第2の取出配線6、及び第2の接続端子7が配置されている第1の額縁領域13と、少なくとも第1の取出配線4の一部が配置されている第2の額縁領域14とを有している。
【0022】
第1の額縁領域13は幅W1を有するように形成され、第2の額縁領域14は幅W2を有するように形成されている。これら幅W1及び幅W2は、幅W1が幅W2に比べて広くなるように形成されている。これは、第1の額縁領域13がフレキシブル基板3をタッチパネルセンサ2に接合するための領域でもあり、該フレキシブル基板3を接合するために必要な幅を確保する必要があるからである。
【0023】
なお、…第1の額縁領域13がアクティブエリア11の先端側に形成され、第2の額縁領域14がアクティブエリア11の左右端側に形成されているが、これら第1の額縁領域13及び第2の額縁領域14は、この位置に限定されるものではない。例えば、図1において、フレキシブル基板3がアクティブエリア11の右端側に接合される場合には、第1の額縁領域13はアクティブエリア11の右端側になり、第2の額縁領域14は、アクティブエリア11の先端側及び後端側になる。…
【0024】
図3に示すように、タッチパネルセンサ2は、第1の透明基板16の下面16aと第2の透明基板17の上面17aとを対向させて、第1の透明基板16を第2の透明基板17の上に接着層18を介して積層して構成されている。第1の透明基板16は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図4に示すように、一方側の面としての上面16bに、第1の透明電極19、第1の取出配線4及び第1の接続端子5が配置形成されている。また、第2の透明基板17は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図5に示すように、第2の透明電極20、第2の取出配線6及び第2の接続端子7が上面17aに配置形成されている。なお、以下においては、第1の透明基板16を構成する光透過性樹脂フィルムを第1の光透過性樹脂フィルム30といい、第2の透明基板17を構成する光透過性樹脂フィルムを第2の光透過性樹脂フィルム35という。
…
【0029】
第2の取出配線6は、フレキシブル回路を介して、第2の透明電極20で生成された検知信号を外部の装置へ送出するためのものである。第2の取出配線6は、図1、図3及び図5に示すように、先端側の端部はフレキシブル回路と接続するための第2の接続端子7と接続し、後端側の端部は第2の透明電極用端子24と接続するように形成されている。なお、図5においてハッチングを施しているのは、第2の取出配線6、第2の接続端子7及び第2の透明電極用端子24である。
【0030】
第2の取出配線6は、額縁領域12の先端側に形成されている第1の額縁領域13に形成されている。…
…
【0032】
図6は、図1のA-A´線における断面図、図7は、図5のB-B´線における断面図である。なお、図6は、説明の便宜上、左右両端と中央の一部を省略して記載する。…
…
【0038】
第2の透明基板17は、図5のB-B´線の断面に示すように、第2の透明導電膜層38が形成されている部分と、図1のA-A´線の断面に示すように、該第2の透明導電膜層38が形成されていない部分がある。例えば、図5に示す部分では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37、第2の透明導電膜層38及び第2の遮光導電膜層39が積層されている。また、図1に示す箇所では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37及び第2の遮光導電膜層39が積層されており、第2の透明導電膜層38が形成されていない。これは、額縁領域12は操作者が視認することができる場所ではなく、金属又は合金からなる第2の遮光導電膜層39を形成することが許容されており、また第2の遮光導電膜層39を形成しやすくすることができるからである。…
…
【0043】
第2の遮光導電膜層39は、第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7を構成するものであり、これら第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7の形状に対応するパターンを形成するように、第2の誘電体層37及び第2の透明導電膜層38の上に形成されている。」
ツ.「【0044】
第2の遮光導電膜層39は、ペースト状の電極材料が第2の誘電体層37上又は第2の透明導電膜層38上にスクリーン印刷法で塗布されて形成されている。第2の遮光導電膜層39は、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の導電性材料によって形成されている。金属材料に用いられるものとしては、例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金…などが挙げられる。
【0045】
また、樹脂材料に用いられるものとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。…上記のペーストを用いてスクリーン印刷法で外周パターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよい…」
テ. 「【図1】
【図2】
上記チ.の【0020】~【0022】の記載を踏まえると、【図1】~【図2】からは、タッチパネルにおいては、そのセンサ2がアクティブエリア11と額縁領域12とに区画され、その額縁領域には、フレキシブル基板3をタッチパネルセンサ2に接合するために必要な領域を確保しつつ、取出配線が形成されているということが視認される。」
ト. 「【図3】
【図4】
【図5】
上記チ.の【0024】~【0030】の記載を踏まえると、【図3】~【図5】からは、タッチパネルにおいては、そのセンサ2は、第1の透明基板16と第2の透明基板17とが接着層18を介して積層して構成され、第1の透明基板16は額縁領域12に第1の取出配線4等が形成された第1の光透過性樹脂フィルム30からなり、また、第2の透明基板17は額縁領域12に第2の取出配線6等が形成された第2の光透過性樹脂フィルム35からなっていることが視認される。」
ナ. 「【図6】
【図7】
上記チ.の【0032】~【0043】、上記ツ.の【0044】の記載を踏まえると、図1のA-A’線の断面図である【図6】と、図5のB-B’線の断面図である【図7】とからは、第2の取出配線6等を構成する第2の遮光導電膜層39は、第2の透明導電層38を介して、又は、第2の透明導電層38を介さずに、第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12に、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料がスクリーン印刷法で塗布されてパターン形成されたことが視認される。」
ニ. 刊行物2の上記テ.~ナ.によれば、タッチパネルにおいては、そのセンサ2がアクティブエリア11と額縁領域12とに区画され、その額縁領域12には取出配線が形成されており、また、そのセンサ2は、第1の透明基板16と第2の透明基板17とが接着層18を介して積層して構成され、第1の透明基板16は前記額縁領域12に第1の取出配線4等が形成された第1の光透過性樹脂フィルム30からなり、また、第2の透明基板17は前記額縁領域12に第2の取出配線6等が形成された第2の光透過性樹脂フィルム35からなっているところ、前記第2の取出配線6は、第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12の、第2の透明導電層38の上に、又は、第2の透明導電層38の上以外の箇所に、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料がスクリーン印刷法で塗布されてパターン形成された取出配線であるとされる。
ヌ. 上記ニ.に示したことは、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料に注目すると、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料が、タッチパネルの第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12の、第2の透明導電層38の上に、又は、第2の透明導電層38の上以外の箇所に、スクリーン印刷法で塗布されて、第2の取出配線6をパターン形成するために用いられると言い換えることができる。
ネ. そして、上記ヌに示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料について、刊行物2の上記タ.には、近年は、タッチパネルの意匠性や操作性を向上させる観点から、タッチパネル自体は大型化させずにアクティブエリアをより大きくすることが求められており、このような要求に応えるために、近年のタッチパネルは額縁領域の面積をより少なくすることが種々検討されているが、前記額縁領域の面積をより少なくするには、この額縁領域に配置された取出配線をより細線化しなければならず、また、各取出配線の設置場所の位置精度をより向上させなければならないところ、スクリーン印刷のような印刷法により取出配線を形成する場合には、取出配線の細線化や設置場所の位置精度の向上が難しいという問題があるということが記載されている。
ノ. また、上記ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料について、刊行物2の上記ツ.の【0045】には、タッチパネルの額縁領域にスクリーン印刷法でパターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよいとの技術事項が記載されている。
(3)刊行物3の記載事項
刊行物3には、以下の事項が記載されている。
ハ. 「【特許請求の範囲】
…
【請求項2】 基板上に厚膜導体を所定パターンで形成する工程と、
該厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成する工程とを具備した、
ことを特徴とする導体パターン形成方法。
…」
ヒ. 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランド等の導体を基板上に形成する導体パターン形成方法に関するものである。」
フ. 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、スクリーン印刷技術を利用した従来の導体パターン形成方法は、コストが低く済む反面、導体ペーストの粘度制御が困難であるため幅50μm以下の導体を高精度で形成することが難しい。…
【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、所望形状の導体を高精度且つ安定に形成できる導体パターン形成方法を提供することにある。」
ヘ. 「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、…
【0010】請求項2の発明に係る導体パターン形成方法は、基板上に厚膜導体を所定パターンで形成する工程と、該厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成する工程とを具備した、ことをその特徴としている。この導体パターン形成方法によれば、厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成することにより、端縁ラインが綺麗で且つ厚みが均一な部品搭載部分を有する導体を形成できる。」
ホ. 「【0020】…基板1に、スクリーン印刷法によって所定形状の導体膜3を形成してこれを乾燥させる。…
【0022】…基板1または…光学系の少なくとも一方を一定速度で移動させながら、…導体膜3の不要部分…にレーザ光Lを照射して同部分を昇華,除去する。
【0023】…除去する部分の幅が照射レーザ光Lのスポット径よりも大きい場合は、レーザ光Lを複数回走査して上記の部分除去を実施する。
【0024】…最初に形成された導体膜3はその不要部分をレーザ光照射により除去され、これにより…所望形状の導体膜3’が基板1上に作成される。」
マ. 「【0028】…レーザ光照射による加工精度をより向上させるには、導体膜2,3のレーザ光吸収性を高めるために、カーボン,有機色素,低融点金属粉等を導体ペーストに予め添加しておくとよい。」
3. 本件発明と引用発明との対比・判断
(1) 本件訂正発明1と引用発明1との対比・判断
(1-1) 本件訂正発明1と引用発明1との対比
本件訂正発明1と、上記2.(1)サ.に示した、引用発明1とを対比すると、引用発明1における「バインダー樹脂」、「銀粉」、「有機溶媒」、「銀ペースト」、「透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材」は、それぞれ、本件訂正発明1における「バインダー樹脂(A)」、「金属粉(B)」、「有機溶剤(C)」、「導電性ペースト」、「全面または一部に透明導電性層を有する基材」に相当し、また、引用発明1における「導電性薄膜」は、上記2.(1)ア.によれば接続電極を形成するための薄膜であることから、本件訂正発明1における「電極回路配線」に相当し、また、引用発明1における「導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材の前記導電性薄膜を形成させる」ことは、本件訂正発明1における「電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成する」ことに相当し、また、引用発明1における「バインダー樹脂」が、「ガラス転移温度が70~97℃」「数平均分子量が20000~55000である」ことは、本件訂正発明1における「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である」ことと数値範囲が重複する。
そうすると、本件訂正発明1と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
バインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が20000~55000であり、なおかつ、ガラス転移温度が70~97℃であり、
電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、導電性ペースト。
<相違点>
相違点1:バインダ樹脂(A)が、
本件訂正発明1では、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からな」「る熱可塑性樹脂であ」るのに対し、
引用発明1では、酸価が110~380eq/tonである、ポリウレタン樹脂からなっており、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂である」との特定はされていない点。
相違点2:電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、導電性ペーストが、
本件訂正発明1では、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用」であるのに対し、
引用発明1では、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用」であるとの特定はされていない点。
(1-2) 判断
上記相違点について検討する。
ア. まず、上記相違点1につき検討するに、引用発明1における、ガラス転移温度が70~97℃、酸価が110~380eq/ton、数平均分子量が20000~55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂の根拠となっている、刊行物1記載のU-1、U-2、U-4、U-5のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂(以下、「引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂」という。)は、それらの原料の組成が、それぞれ、本件特許の明細書記載の実施例における、U-1、U-2、U-3、U-4のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂(以下、「本件のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂」という。)の原料の組成と同一である(上記2.(1)ウ.の[0091]~[0111]、本件特許の明細書【0077】~【0090】)ところ、本件特許の明細書によれば、本件のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂は熱可塑性樹脂とされている(本件特許の明細書【0009】~【0010】)から、引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂も熱可塑性樹脂であるといえる。
イ. しかしながら、引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂は、刊行物1の記載(上記2.(1)ウ.の[0091]~[0099])によれば、刊行物1記載のP-1またはP-2のポリエステル樹脂とポリイソシアネートとイソシアネートと反応する基を有する化合物とから合成された熱可塑性樹脂であるから、ポリエステル樹脂の誘導体とはいえるものの、ポリエステル樹脂からなるものではない。
ウ. また、 刊行物1には、酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂(以下、「特定のポリエステル樹脂」という。)からなるバインダー樹脂を用いる銀ペーストも記載されている(上記2.(1)オ.)ものの、当該銀ペーストは比較例1のペーストにすぎず、その比較例1のペーストを用いて透明導電性層であるITO上にスクリーン印刷法により形成した導電性薄膜は、密着性等の特性が、引用発明のペーストを用いて透明導電性層であるITO上にスクリーン印刷法により形成した導電性薄膜の密着性等の特性に比べて、劣っていることは明らかである(上記2.(1)ウ.の[0111]の[表4]、上記2.(1)オ.の[0119]の[表5])。
エ. してみると、引用発明1のペーストにおいて、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂を特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に変更して、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は、刊行物1の記載(上記2.(1)ア.~オ.)に基づき、容易になし得ることではない。
オ. また、上記2.(2)タ.~ナ.の刊行物2の記載全体を参照すると、タッチパネルの製造に際し、透明導電性層等を有するタッチパネルの基材にスクリーン印刷塗布によって導電性薄膜を形成する際に用いられるペーストは、上記2.(2)ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料以外には見当たらないことからして、引用発明1のペーストが、上記2.(2)ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料に包含されることは明らかであるが、上記2.(2)タ.~ナ.をみても、刊行物2には、特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に関する記載は見当たらないし、上記ア.~エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、上記2.(2)タ.~ナ.等の刊行物2の記載全体を参酌しても、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることではない。
カ. また、刊行物3には、上記2.(3)ハ.~マ.に示したように、スクリーン印刷法で導体パターンを形成した後に、レーザー加工を行うことで、幅50μm以下の導体、すなわち、幅50μm以下のラインを高精度で形成することができ、除去する部分の最小幅、すなわち、スペースの最小幅は照射レーザ光のスポット径に対応するという技術事項が記載されているものの、特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に関する記載は見当たらないし、上記ア.~エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、上記2.(3)ハ.~マ.等の刊行物3の記載全体を参酌しても、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることではない。
キ. さらに、本件特許の出願の優先日前の如何なる周知技術や技術常識を考慮したとしても、上記ア.~エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることととはいえない。
ク. してみると、上記相違点2につき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2) 本件訂正発明2と引用発明1との対比・判断
(2-1) 本件訂正発明2と引用発明1との対比
本件訂正発明2と引用発明1とを対比すると、上記(1-1)と同様の検討により、上記相違点1~2以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。
相違点3:導電性ペーストが、本件訂正発明2では、レーザー光吸収剤(D)を含有するのに対し、引用発明1では、レーザー光吸収剤(D)を含有するとの特定はされていない点。
(2-2) 判断
上記相違点1については、上記(1-2)ア.~キ.で検討したとおりであるから、上記相違点2~3につき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、引用発明1、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(3) 本件訂正発明3と引用発明2との対比・判断
本件訂正発明3と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明2とを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)~(2-2)と同様の検討により、引用発明2、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(4) 本件訂正発明4、6~8と引用発明3との対比・判断
本件訂正発明4、6~8と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明3とを対比検討するに、本件訂正発明4、6~8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)~(2-2)と同様の検討により、引用発明3、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5) 本件訂正発明9と引用発明4との対比・判断
本件訂正発明9と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明4とを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)~(2-2)と同様の検討により、引用発明4、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4、6~9は、引用発明、刊行物1~3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
4. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
(特許法第29条第2項)について
異議申立人は、特許異議申立書の第26頁第4行~第41頁第5行において、上記3.で検討したような、甲第3号証を主引例とする、特許法第29条第2項の申立理由以外に、甲第1号証または甲第2号証を主引例とする特許法第29条第2項の申立理由がある旨も主張している。
そこで、甲第1号証または甲第2号証を主引例とする特許法第29条第2項の申立理由につき、以下に、検討することとする。
(1) 甲各号証の記載事項・視認事項
ア. 甲第1号証(特開2008-13809号公報)の記載事項・視認事項
(ア1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、金属元素を含んでなる微粒子が有機分散媒中に均一に分散されたレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して前記組成物の層を形成させ、
前記組成物の層にレーザー光を像様に照射して、照射された部分の前記組成物を除去し、レーザー光照射後、基板上に残留する前記組成物の層を焼成する、
ことを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーションによる機能膜の製造法。
【請求項2】
前記の金属元素を含んでなる微粒子が、金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記金属元素を含んでなる微粒子の粒径が、0.5~200nmである、請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
前記有機分散媒が、前記レーザー光の波長における吸光度が0.3以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項5】
前記有機分散媒が、有機重合体またはそのプレポリマーを含んでなるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項6】
前記有機分散媒が、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
前記レーザー光の照射の前に、前記組成物の層に含まれる溶剤の少なくとも一部を乾燥により除去する、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
前記有機分散媒が、架橋剤をさらに含んでなる、請求項5~7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーション加工用組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で製造された機能膜を具備してなる電子部品。」
(ア2) 「【背景技術】
【0002】
基板上に形成された機能膜をパターニング加工する手段として、レーザーアブレーション法が注目されつつある。このレーザーアブレーション法とは、基板上に連続的に形成された機能膜にレーザー光を像様に照射し、レーザー光が照射された部分の機能膜を昇華、蒸発、または分解させて除去することによりパターンを形成させる方法である。この機能膜を形成する物質として種々のものが選択することが可能であり、例えば金属を含む機能膜を用いれば配線パターンなどを形成でき、…
【0003】
このレーザーアブレーション法は、加工しようとする機能膜が有機物、例えば樹脂からなるものである場合、特に有効である。これはレーザー光照射によるエネルギーが比較的少なくても加工が可能であるためである。このような背景から、有機物からなる機能膜をレーザーアブレーション法により加工する技術が種々検討されている…
【0004】
しかしながら、機能膜を形成する物質がアブレーションにより除去しにくいものである場合、レーザー光照射により発生する昇華物、蒸発物、または分解物は、加工領域の近辺に再付着しやすく、結果としてパターン周辺の汚れ(アブレーション煤)を招くという問題があった。このような問題は、機能膜として金属を含むもの、例えば金属膜、金属酸化物膜、または金属窒化物膜を用いた場合、顕著となる。
…
【0007】
さらには、機能膜に金属が含まれる場合には、その機能膜を除去するのに必要なレーザー光のエネルギーが高いことが要求されるのが一般的である。すなわち、従来は金属を含む機能膜をパターニングする場合には、金属や金属酸化物等の被膜を基板上に均一に形成させ、その金属膜または金属酸化物膜をレーザー光で直接除去するために、高いエネルギーのレーザー光を用いていた。このために、エネルギーの高いレーザー光は機能膜の下に存在する基板をも除去してしまう危険性も高かった。
…
【0011】
本発明による機能膜の製造法によれば、金属を含む機能膜をレーザーアブレーション法により製造するのに、従来よりも低いエネルギーのレーザー光による加工を可能となる。さらには、高いエネルギーのレーザー光を用いることに起因する基板の損傷や、アブレーション煤の問題も改善することができる。
【0012】
すなわち、本発明によるレーザーアブレーション加工用法では従来の金属膜や金属酸化膜に代わり、金属元素を含む微粒子と有機分散媒とからなる、いわば機能膜の前躯体膜に対してレーザーアブレーションを施すことにより加工性を改善するものである。レーザーアブレーション加工時に有機分散媒は、金属、金属酸化物あるいは金属窒化物などの無機物だけを含む機能性膜と比較してはるかに分解されやすく、有機分散媒自身が昇華・蒸発する際に併せて微粒子もレーザー光照射領域から除去される。結果として、無機物だけからなる機能膜を直接レーザーアブレーション加工するより、はるかに低い投入エネルギーで、良好な形状に加工することが可能となる。」
(ア3) 「【0015】
まず、基板101上にレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して、レーザーアブレーション加工用組成物の均一な層102を形成させる(図1(a))。基板101は目的に応じて任意に選択されるが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、プラスチックなどが挙げられる。ここで、基板101は、後述するレーザー光に対して耐性があるものが好ましい。
【0016】
基板101上に塗布するレーザーアブレーション加工用組成物は、金属元素を含む微粒子103と、有機分散媒104とを含んでなる。ここで、金属元素を含む微粒子は、金属元素を含む物であれば特に限定されないが、金属元素としては、インジウム、スズ、亜鉛、パラジウム、白金、銀、金、銅、珪素、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、およびアルミニウムが挙げられ、微粒子はこれらの金属そのものの微粒子である他、その酸化物または窒化物などでもよい。…
【0017】
ここで、微粒子はレーザーアブレーション加工用組成物中で沈殿することを防ぐために、より小さいものであることが好ましく、一方で分散状態を維持するために十分な有機分散媒の含有量を少なくするためにある程度大きいものが好ましい。このために、微粒子の大きさは、0.5~200nmであることが好ましく、より好ましくは1~100nm、更に好ましくは2~50nmである。…
…
【0019】
また、有機分散媒は前記した微粒子を均一に分散させることができるものであり、特に限定されない。一般に有機物はレーザーアブレーションに用いられるレーザー光の波長に対する光吸収があるため、任意に選択することができる。…
【0020】
…
このような有機分散媒は、その形状は特に制限されず、液体状の有機物であっても、また液体または固体の有機物を溶剤に溶解させたものであってもよい。さらには、常温で固体である有機分散媒を高温状態で溶融させ、金属元素を含む微粒子を分散させるものであってもよい。また、有機分散媒が、組成物中で前記した微粒子に配位結合などにより化学的に結合するようなものであってもよい。さらには、有機物が微粒子の表面に吸着または結合などして、微粒子表面を被覆するものであってもよい。
【0021】
このような有機分散媒の例のひとつは、オレフィンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、カルバゾール、クマリン、およびベンゾキノンなどの芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体を含む有機化合物である。これらは、単独で有機分散媒として利用できる。
【0022】
有機分散媒の他の例は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマーを溶融または適切な溶剤に溶解させたものである。必要に応じて用いられる溶剤は特に限定されないが、そのレーザーアブレーション加工用組成物の特性および後述の塗布方法に応じて、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒から選択される。…」
(ア4) 「【0027】
前記したレーザーアブレーション加工用組成物を基板101に塗布する方法としては、スピン塗布、スリット塗布、スプレイ塗布、ロール塗布、ディップ塗布、インクジェット塗布、スクリーン印刷など各種の塗布法が利用可能であり、特に制限されない。…
【0028】
基板上にレーザーアブレーション加工用組成物の層を形成させた後、有機分散媒が溶剤を含む場合には、必要に応じて加熱により溶媒を乾燥する事ができる。…
【0029】
この後レーザーアブレーション加工用組成物の層102に、レーザー光を像様に照射する(図1(b))。用いるレーザーとしては、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー(YAGレーザー)、半導体励起固体レーザー(DPSS)、エキシマレーザーなどが挙げられる。レーザーはポイントビームで照射し所望のパターンを描画してもよいし、投影光学系の中にマスクを設置しパターンを直接描画してもよい。…
…
【0031】
レーザーアブレーション加工後は、レーザー照射部分が除去された機能性膜の前躯体膜が得られる(図1(c))。この前躯体膜を焼成することによって膜中有機成分の昇華または分解等が起こり、機能性微粒子同士の融合が発生し結果として、パターン化された機能膜を得ることができる(図1(d))。…
…
【0033】
このようにして形成された機能膜は、金属元素を含むものであるが、用いる微粒子の特性に応じて、種々の用途に用いることができる。例えば、このようにして製造された機能膜を、配線パターンや層間絶縁膜などとして各種の電子部品、例えば半導体素子や表示素子に用いることができる。」
(ア5) 「【図1】
上記(ア3)~(ア4)の記載を踏まえると、図1からは、金属元素を含む微粒子103と有機分散媒104とを含んでなるレーザーアブレーション加工用組成物を、基板101上に塗布して、レーザーアブレーション加工用組成物の層102を形成し、その層102にレーザー光を照射してレーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法が視認される。」
イ. 甲第4号証(特開2011-252140号公報)の記載事項
(イ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ密度が1.0~10.0(g/cm3)、D50粒子径が0.3~5μm、BET比表面積0.3~5.0m2/gの導電性粒子と、
数平均分子量(Mn)が10,000~300,000であり、水酸基価2~300(mgKOH/g)のエポキシ樹脂と、
前記エポキシ樹脂中の水酸基とアルコール交換反応が可能であり、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.2~20重量部の金属キレートとを含有する、 貯蔵弾性率(G')が5,000~50,000(Pa)である導電性インキ。
…
【請求項15】
基材と、
前記基材上に形成された導電パターンと、を具備し、
前記導電パターンが、請求項1~14いずれか1項に記載の導電性インキにより形成されている導電パターン付き積層体。
…
【請求項17】
前記導電パターンの下層側で、前記導電パターンと電気的に接続された所定のパターンを有する他の導電膜が、前記基材上にさらに形成されている、請求項15又は16に記載の導電パターン付き積層体。
【請求項18】
前記他の導電膜が、錫がドープされた酸化インジウムを主成分とする透明導電膜である、請求項15~17のいずれか1項に記載の導電パターン付き積層体。
【請求項19】
タッチスクリーンパネル用途に用いられる、請求項15~18のいずれか1項に記載の導電パターン付き積層体。
…」
(イ2) 「【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中、「部」、「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を、水酸基価はKOHmg/gを、それぞれ意味する。
【0090】
(バインダー1)
ジャパンエポキシレジン社製、JER1256(重量平均分子量が57,400,数平均分子量が25,000、エポキシ当量が7,500、水酸基価が190)40部をイソホロン60部に溶解し、不揮発分40%のバインダー(1)溶液を得た。
…
【0115】
実施例1<導電性インキの調製>
40重量部のエポキシ樹脂を含むバインダー(1)溶液:100重量部と、0.81重量部のアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピオネートを含む金属キレートA:0.9重量部、銀粉A:330重量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:40重量部とをディスパーにて混合後、3本ロールにより分散し、導電性インキを調製した。
得られた導電性インキは、固形分が約79重量%であり、エポキシ樹脂と銀粉との合計370重量部中、銀粉は約89重量%、エポキシ樹脂は11重量%である。
そして、ティー・エイ・インスツルメント社製レーオメーター「AR-G2」を使用して、25℃の温度下で、周波数1Hzに固定し、振動応力1.0~10,0000Paの範囲で貯蔵弾性率G'等の動的粘弾性特性を測定したところ、実施例1の導電性インキの貯蔵弾性率G'は7,200、tanδは0.89であった。
…
【0117】
[テストピースの作成]
厚さ75μmのコロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETという)に実施例1~12、比較例1~9の導電性インキを、15mm×30mmのパターン形状にスクリーン印刷し、150℃オーブンにて30分乾燥させ、膜厚が8~10μmの導電性印刷物を得た。
【0118】
<膜厚の測定>
上記印刷物の膜厚は、仙台ニコン社製MH-15M型測定器を用いて測定した。
【0119】
<表明抵抗値の測定>
上記印刷物の表面抵抗値は、25℃、湿度50%環境下にて三菱化学社製ロレスタAPMCP-T400測定器を用い、測定した。
【0120】
<体積抵抗率の算出>
上記方法で測定された表面抵抗値、および膜厚より、体積抵抗率を算出した。体積抵抗率の目標値は5.0×10-5Ω・cm以下である。なお、5.0×10-5Ω越え、8.0×10-5Ω・cm以下は、一応実用性があるが、8.0×10-5越えでは、通常、実用性がない。
体積抵抗率(Ω・cm)=(表面抵抗率:Ω/□)×(膜厚:cm)
【0121】
<ITO積層フィルムに対する密着性>
ITO積層フィルム(日東電工社製、V270L-TEMP、75μm厚)の一部を塩酸でエッチングしてITO層を除去して基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を露出させたものを用意した。そして、ITO積層部分およびエッチングして基材が露出した部分に、実施例1~9、比較例1~9の各導電性インキを、乾燥後の膜厚が8~10μmになるように15mm×30mmのパターンをスクリーン印刷し、150℃オーブンにて30分乾燥させ、この印刷物の密着性を評価した。評価方法および評価基準は下記の通りである。
【0122】
<テープ密着試験>:JIS K5600に準拠して、テープ密着試験を実施した。
ITO残存部分、ITOエッチング部分それぞれの領域上の導電インキ層に、幅1m間隔に10マスX10マスの計100マス目をカッターで入れ、ニチバン製セロハンテープ(25mm幅)を印刷面に貼り付け、急激に剥離し、残ったマス目の状態にて評価を行った。
○:剥離無し(密着性良好レベル)
△:マスの端がわずかに欠ける(密着性やや不良だが、実用上使用可能レベル)
×:1マス以上の剥離が観察される(密着性不良レベル)
【0123】
<ポリイミドフィルムに対する密着性>
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100H、25μm厚)上に、実施例1~9、比較例1~9の各導電性インキを、乾燥後の膜厚が8~10μmになるように15mm×30mmのパターンをスクリーン印刷した。その後、180℃オーブンにて30分乾燥させ、この印刷物の密着性を評価した。評価方法および評価基準は下記の通りである。
ニチバン製セロハンテープ(25mm幅)を印刷物表面に貼り付け、急激に剥離し、印刷物の密着性を評価した。
○:剥離なく、密着性良好。
△:若干剥離有り、密着性やや不良。
×:全面剥離が有り、密着性不良。
【0124】
[細線印刷性の評価]
高精度スクリーン印刷装置(東海精機株式会社製SERIA)を用いて、実施例1~9、比較例1~9の各導電性インキを、200mm×200mmの領域に、線幅40μm、線間の幅60μm(L/S=40μm/60μm)の微細配線パターンを多数有するスクリーン版にて、厚さ75μmのコロナ処理PETに20枚連続印刷した。その後、150℃で30分乾燥させた。印刷の条件は下記の通りである。
【0125】
(スクリーン印刷条件)
・スクリーン:ステンレス版650メッシュ
・乳剤厚:10μm
・スクリーン枠:650×550mm
・スキージ角度:70°
・スキージアタック角度:50°
・スキージ硬度:80°
・スキージ速度:20mm/秒
・スキージ印圧:10kg
・クリアランス:3.5mm
【0126】
(線幅のばらつき度合いの評価)
スクリーン印刷した配線パターンの微細配線部分を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製VHX-900)を用いて倍率500倍で撮影した。撮影した拡大写真をニレコ社製小型汎用画像解析装置「LUZEX AP」を用いて印刷後の細線幅を読み取った。
具体的には、5枚目、20枚目の印刷物について、それぞれ任意の細線8本を選択し、1本につき460箇所、8本合計で3680箇所の線幅を測定し、最小値、最大値、平均値、標準偏差、細線の太りの度合い「(平均値-40μm)/40μm(%)」を求めた。
平均値、標準偏差、細線の太りの度合いを表1、2に示す。
なお、標準偏差は細線の直線性(細線の凸凹)を示す。
【0127】
また、細線の太りの度合い「(平均値-40μm)/40μm(%)」の評価基準は次の通りである。
25%未満:線幅の太りがほとんど認められず、細線印刷性は良好
25~40%:線幅の太りがやや認められるが、細線印刷性は実用上差し支えの無いレベル
40%を越える:線幅の太りが認められ、細線印刷性は不良
【0128】
さらに、印刷配線パターンの微細配線部分の形状を下記の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
○:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつき、にじみ、掠れを生じておらず、微細配線部分の境界線が明瞭で良好であった。
△:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつきが多少見られたが、にじみ、掠れを生じておらず、実用上差し支えの無いレベルであった。
×:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつきが見られ、にじみ、掠れがあり、境界線が不明瞭であった。
…
【0131】
【表1】
…
【0133】
表1から明らかなように、実施例1~12の導電性インキは、良好な(体積抵抗率、細線印刷性、ITO積層フィルムへの密着性)を示す。」
(イ3)「【産業上の利用可能性】
【0142】
なお、本発明に係る導電性インキは、特にスクリーン印刷用途に適しているが、他の印刷方法に適用してもよい。
…」
イ-1. 甲第4号証の1(特開2011-35075号公報)の記載事項
(イ4) 「【0187】
…フェノキシ樹脂(JER1256、Tg:100℃、重量平均分子量:50,000、ジャパンエポキシレジン(株)製)…」
ウ. 甲第5号証(特開平9-306240号公報)
(ウ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒子径0.1~5μmの1次粒子が3次元状につながって形成された粒子径1~20μmの2次粒子の銀粉を主体とする導電粉(A)、数平均分子量が3、000以上の結合剤(B)、これと反応し得る硬化剤(C)および溶剤(D)を主成分とする硬化後に金属めっきをしない導電性ペーストであって、(A)/((B)+(C))が60/40~95/5(重量比)かつ(B)/(C)が100/0~50/50(重量比)であることを特徴とする導電性ペースト。」
(ウ2) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は導電性ペーストに関するものであり、さらに詳しくは導電性ペーストをフィルムまたは基板上に塗布または印刷、硬化することにより導電性を与え、回路を形成したり、電子部品の端子やリード線の接着を行ったり、電子装置を電磁波障害(EMI)から保護することに利用する導電性ペーストに関わるものであり、特に高い導電性と耐屈曲性、ファインパターン印刷性の要求される回路用に適した導電性ペーストに関し、印刷または塗布、硬化後に金属めっきしない用途の導電性ペーストである。」
(ウ3) 「【0009】本発明に使用する結合剤(B)はその種類に制限はないが、数平均分子量が3、000以上、好ましくは8、000以上であることが必要である。数平均分子量が3、000未満であると良好な耐屈曲性が得られず、また、ペースト粘度が低下して好ましくない。耐コネクター挿抜性、耐コネクターブロッキング性の面からガラス転移点温度は25℃以上、好ましくは45℃以上のものが好ましい。また、結合剤(B)の種類としては、共重合ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。このうちPETフィルムを基材として使用する場合は、耐屈曲性と基材に対する密着性の面から、共重合ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。」
(ウ4) 「【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるものは重量部を示す。…
…
【0029】合成例.1(ポリエステル樹脂I)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにジメチルテレフタル酸101部、ジメチルイソフタル酸35部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換を行なった。ついで、セバシン酸61部を仕込み、さらにエステル化反応を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=52/18/30//55/45(モル比)で還元粘度0.64dl/g、数平均分子量22,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=7℃であった。
【0030】合成例.2(ポリエステル樹脂II)
合成例.1と同様に合成した。 得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50//51/49(モル比)で還元粘度0.55dl/g、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃であった。
【0031】銀粉A-1の調整
濃度37%の硝酸銀水溶液275部と濃度18%の水酸化ナトリウム水溶液220部とを40~50℃で攪拌下で反応させ、反応終了後に蒸留水70部を添加した。ついで、これに濃度23%のホルマリン水溶液60部を加え、30~40℃で反応させた。反応終了後のpHは8であった。得られた銀粉を濾過し、水洗、脱水を繰り返した後、メタノールで置換した上で濾過し、80℃で24時間減圧乾燥した。得られた銀粉は図1~3に示す形状を有し、1次粒子の平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真より0.5μmであり、2次粒子の平均粒子径は光散乱法により測定したところ11μm、比表面積1.62m2 /gであった。
【0032】銀粉A-2の調整
市販のフレーク状銀粉(福田金属箔粉工業(株)製)をそのまま用いた。光散乱法による平均粒子径は4.5μm、比表面積0.7m2 /gであった。
【0033】銀粉A-3の調整
市販のフレーク状銀粉(福田金属箔粉工業(株)製)をそのまま用いた。光散乱法による平均粒子径は4.5μm、比表面積0.65m2 /gであった。
【0034】実施例.1
銀粉A-1、85部、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体VAGH(ユニオンカーバイト(株)製)のγ-ブチロラクトン溶液11.3固形部、ブロックイソシアネート化合物C-1(ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレートアダクトのメチルエチルケトオキシムブロック体、固形分80%)3.7固形部、分散剤0.2固形部を配合し、充分プレミックスした後、チルド3本ロール混練り機で、3回通して分散した。得られた銀ペーストは比抵抗1.5×10-5 Ω・cmと低抵抗であり、耐屈曲性はMIT耐屈曲試験1000回後の抵抗増加が+10Ωで非常に良好であった。ファインパターンの印刷性は太り幅25μmで良好であった。また、耐コネクター挿抜性、耐コネクターブロッキング性も良好であった。
【0035】実施例1と同様に実施例2~6の導電性ペーストを作成、評価した。結果を表1に示す。
【0036】実施例1と同様に比較例1~5の導線性ペーストを作成評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明の導電性ペーストによりファインパターンの印刷性が優れ、低抵抗で耐屈曲性を大幅に向上でき、さらにはコネクター装着時の良好な耐コネクター挿抜性、耐ブロッキング性をも合わせ持つ優れた回路材料を作成することが可能となる。」
エ. 甲第6号証(特開2010-123457号公報)
(エ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉表面の少なくとも一部を銀で覆った銀コート銅粉末と、ガラス転移温度(Tg)が35~170℃のバインダー樹脂とを含有することを特徴とする導電性ペースト。」
(エ2) 「【背景技術】
【0002】
電子回路や、プラズマディスプレイなどの電磁波シールド材を作成する際、導電性ペーストを印刷して所定のパターンの導体回路を形成する方法が知られている。導電性ペーストは、銅、ニッケル、銀などの導電性の金属粉末とバインダー樹脂とが溶剤に分散してなるものである。…」
(エ3) 「【0027】
ガラス転移温度(Tg)が35~170℃のバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、適宜のものを使用することができる。ガラス転移温度(Tg)が35~170℃のバインダー樹脂を用いれば、加熱して乾燥する際に樹脂が軟化又は溶融するなどして銀コート銅粉末が導通状態となるのを促進するので、導体パターンの導通性を向上させることができる。特に、導電性ペーストを印刷や塗布した後、プレスや加熱加湿処理などにより導体パターンを形成した場合、ガラス転移温度がこの範囲にある樹脂が軟化又は溶融しやすくなり、導体パターンの導通性をさらに向上させることができる。
…
【0029】
ガラス転移温度(Tg)が35~170℃のバインダー樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などや、-COC-骨格、-COO-骨格などを含むこれらの樹脂の誘導体などを用いることができる。…」
(エ4) 「【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0050】
(実施例1)
有機溶媒に硝酸銀を溶解し、この溶解液と銅粉とを混合・撹拌して金属銅と銀イオンとの置換反応で銀を銅粒子の表面に析出させ、これをろ過することにより、銀コート銅粉末を得た。この銀コート銅粉末の平均粒径は1.3μmであり、コートされた銀の量は銅100重量部に対して100重量部であった。
【0051】
銀コート銅粉末8gと、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート:ブチル基/水酸基=52.0/1.8、EASTMAN製CAB-551-0.2、ガラス転移温度101℃)0.5gとを、メチルイソブチルケトン(MIBK)1.8mLに分散し、導電性ペーストを調製した。
【0052】
導電性ペーストを基材(PETフィルム)の表面に平面視矩形状(5mm×30mm×0.1mm)にスクリーン印刷した後、120℃、30分の条件で加熱して乾燥させ、導体パターンを形成した。
…
【0055】
(実施例4)
バインダー樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン200、ガラス転移温度67℃)を用いた。それ以外は、実施例1と同様の材料及び方法にて導電性ペーストを調製し、スクリーン印刷及び乾燥後、プレス処理することにより実施例1と同じ形状の導体パターンを形成した。」
エ-1. 甲第6号証の1(非晶性ポリエステル樹脂(有機溶剤可溶型)バイロン、[online]、2005年、[平成28年1月29日検索]、インターネット<URL:http://www.toyobo.co.jp/seihin/xi/vylon cg/index.htm>)
(エ5) バイロン200は、分子量(Mn)が17×103であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満であることが視認される。
オ. 甲第7号証(特開平8-157698号公報)
(オ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】導電性フィラーと結着樹脂とを含む導電性組成物において、上記結着樹脂が、当該導電性組成物からなる導電層の使用温度より高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を、70~100重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂からなることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】上記熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、25~140℃の範囲内である請求項1記載の導電性組成物。
…」
(オ2) 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、導電性を有する接着剤、塗料等として使用しうる導電性組成物と、当該導電性組成物からなる導電層をシールド層として有する、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、フラットケーブル等の配線部材に関するものである。」
(オ3) 「【0021】なお、上記熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、室温での導電層の使用を考慮した場合、前記のように25~140℃の範囲内であるのが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が25℃未満では、前記のように導電層の導電性が低下したり不安定化したりするおそれがある。逆に熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が140℃を超えると、導電性接着剤においては接着強度が低下するおそれがあり、また導電性塗料においては下地への密着性が低下するおそれがある。
【0022】熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量等についてはとくに限定されないが、溶媒溶解性や成膜性、あるいは導電層の膜強度等を考慮すると、5000~25000程度が好ましい。…」
(オ4) 「【0035】
【実施例】以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は、本発明の一例を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1~7、比較例1~5〈導電性組成物〉
導電性フィラーである銅粉〔樹枝状、福田金属(株)製の商品名FCC-115A〕100重量部と、結着樹脂である、表1~3に示す配合量(重量部)の熱可塑性ポリエステル樹脂A~Eとを、160重量部のジオキサンとともに混合して、導電性組成物を作製した。なお、各実施例、比較例で使用した熱可塑性ポリエステル樹脂A~Eはそれぞれ下記の製品であって、いずれも前述した共重合ポリエステル類に属している。
【0036】熱可塑性ポリエステル樹脂
A:エリーテルUE-3600〔ユニチカ(株)製〕
B:ケミットK-1089〔東レ(株)製〕
C:ケミットK-1294〔東レ(株)製〕
D:エリーテルUE-3220〔ユニチカ(株)製〕
E:ケミットR-99〔東レ(株)製〕
上記各実施例、比較例の導電性組成物について、以下の各試験を行って、その特性を評価した。
…」
オ-1 甲第7号証の1(高Tg耐熱グレード(ペレット状)|性能|エリテール、[online]、1997年、[平成28年2月1日検索]、インターネット<URL:https://www.unitika.co.jp/plastics/products/elitel/et-0103.html>)
(オ5) エリーテルUE3600は、分子量が20,000であり、ガラス転移点が75であり、酸価が1mgKOH/gであることが視認される。
オ-2 甲第7号証の2(特開2004-314152号公報)
(オ6) 「【0042】
…エリーテルUE-3600(ユニチカ社製、ポリエステル樹脂、数平均分子量20,000、ガラス転移点75℃)…」
カ. 甲第8号証(特開2009年-176728号公報)
(カ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 導電性粉末と、
b) フェノキシ樹脂と、
c) ウレタン樹脂と、
d) 有機溶剤と
を含み、成分a)、b)およびc)は、成分d)中に溶解または分散されていることを特徴とするメンブレン・タッチ・スイッチ用の厚膜ペースト。
…」
(カ2) 「【0019】
B.フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂は、導電性ペーストの有機バインダーとして含まれる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの重合によって得られるポリマーであり、通常、30,000より大きい重量平均分子量を有する。本発明に適用されるフェノキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は、50,000より大きい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が50,000未満の場合、印刷の観点において、得られるペーストの粘度が低くなる傾向がある。重量平均分子量の上限は制限されないが、実用上、上限は100,000である。
【0020】
本発明に適用されるフェノキシ樹脂の例は、Inchemから提供されるPKHH(商標)、PKHC(商標)およびPKFE(商標)である。」
(カ3) 「【実施例】
…
【0039】
(実施例1)
Inchemから供給されるPKFE(商標)フェノキシ樹脂20gを、Invistaから供給されるDBE(DiBasic Ester)-9(商標)溶剤80g中に溶解させ、樹脂溶液(1)を得た。Bayerから供給されるDesmocol(商標)350ポリウレタン樹脂20gを、DBE-9およびシクロヘキサノンの混合物80g中に溶解させ、樹脂溶液(2)を得た。
【0040】
1.7μmの平均粒度を有するフレーク状銀粉末40g、0.3g/mlのタップ密度を有する綿状銀粉末10g、13.9gの樹脂溶液(1)、13.9gの樹脂溶液(2)、および22.2gのDBE-9溶剤を、ロールミル処理によって十分に混合して、15Pa-sの粘度を有する導電性ペーストを得た。
【0041】
得られた導電性ペーストを用いて、PETフィルム上に回路配線を描画した。その上にペーストを有するPETフィルムを、60分間にわたって140℃で硬化させた。硬化後のペーストの抵抗率は、2.8×10-5Ω・cmであり、10回の折り曲げ後の抵抗率の変化は+64%であった。このペーストの塩素含有量の計算値は、28ppmであった。」
カ-1. 甲第8号証の1(特表2013-543524号公報)
(カ4) 「【0066】
フェノキシ系樹脂はInChemRez(登録商標)社のPKFE(Mw=60,000、Mn=16,000、Tg=95℃)」
なお、甲第2号証、甲第3号証、甲第9号証についての記載事項・視認事項は、それぞれ、上記2.(2)、上記2.(1)、上記2.(3)に示したとおりである。
(2) 甲第1号証記載の発明
2ア. 上記(1)ア.(ア1)の請求項9には、「基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなる、レーザーアブレーション加工用組成物。」が記載されている。
2イ. 上記2ア.に示した「金属元素を含んでなる微粒子」に関し、上記(1)ア.(ア3)には、「…【0016】…金属元素を含む微粒子は、金属元素を含む物であれば特に限定されない…微粒子はこれらの金属そのものの微粒子である他、その酸化物または窒化物などでもよい。…」との記載があり、上記(1)ア.(ア1)の請求項2には、「金属元素を含んでなる微粒子が、金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である」との記載がある。また、上記2ア.に示した「微粒子を均一に分散することができる有機分散媒」に関し、上記(1)ア.(ア3)には、「…【0019】…有機分散媒は前記した微粒子を均一に分散させることができるものであり、特に限定されない。一般に有機物はレーザーアブレーションに用いられるレーザー光の波長に対する光吸収があるため、任意に選択することができる。…【0021】 このような有機分散媒の例のひとつは、オレフィンなどの脂肪族炭化水素…芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体を含む有機化合物である。…【0022】 有機分散媒の他の例は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマーを溶融または適切な溶剤に溶解させたものである。…」との記載があり、上記(1)ア.(ア1)の請求項6には、「有機分散媒が、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなる」との記載がある。
2ウ. そして、上記2ア.に示したレーザーアブレーション加工用組成物は、上記(1)ア.(ア2)によれば、金属、金属酸化物あるいは金属窒化物などの金属を含む機能膜をレーザーアブレーション加工によって製造する際に生ずる問題を改善するために開発された、上記(1)ア.(ア5)に示されるような、レーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法において、用いられる組成物であるといえる。
2エ. 上記2ア.~2ウ.の検討からして、甲第1号証には、レーザーアブレーション加工用組成物に注目すると、「金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である金属を含む微粒子と、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなり、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなる、基板上の機能膜のレーザーアブレーション加工用組成物。」(以下、「甲1発明a」という。)が記載されていると認められる。
2オ. また、上記(1)ア.(ア1)の請求項10には、「請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で製造された機能膜を具備してなる電子部品。」の発明が記載されていることからして、甲第1号証には、以下の発明も記載されていると認められる。
甲1発明b:「甲1発明aのレーザーアブレーション加工用組成物を用いてなる機能膜。」
甲1発明c:「甲1発明bの機能膜を基板上に積層した積層体。」
甲1発明d:「甲1発明cの積層体を用いた電子部品。」
2カ. なお、甲1発明a~dをまとめて、甲1発明ということがある。
(3) 甲第2号証記載の発明
3ア. 甲第2号証の記載事項・視認事項は、上記2.(2)タ.~ノ.に示したとおりであり、タッチパネルの第2の透明基板17の額縁領域12の第2の透明導電層38の上にスクリーン印刷法で塗布されて、第2の取出配線6をパターン形成するために用いられる材料として、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料が記載されている。
3イ. そして、上記3ア.に示したペースト状の電極材料における金属材料について、「例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金などが挙げられる。」(【0044】)との記載があり、また、上記3ア.に示したペースト状の電極材料における樹脂材料について、「例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。」(【0045】)との記載がある。
3ウ. また、上記3ア.に示したペースト状の電極材料について、「タッチパネルの額縁領域にスクリーン印刷法でパターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよい」(【0045】)との記載もある。
3エ. 上記3ア.~3ウ.の検討からして、甲第2号証には、タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料に注目すると、「金属材料と樹脂材料からなる、タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料。」(以下、「甲2発明a」という。)が記載されていると認められる。
3オ. また、甲第2号証には、以下の発明も記載されていると認められる。
甲2発明b:「甲2発明aのペースト状の電極材料を用いてなる取出配線。」
甲2発明c:「甲2発明bの取出配線がタッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上に形成された積層体。」
甲2発明d:「甲2発明cの積層体を用いたタッチパネル。」
3カ. なお、甲2発明a~dをまとめて、甲2発明ということがある。
(4) 本件訂正発明と甲1発明との対比・判断
(4-1) 本件訂正発明1と甲1発明aとの対比・判断
(4-1-1) 本件訂正発明1と甲1発明aとの対比
本件訂正発明1と、上記(2)2エ.に示した、甲1発明aとを対比すると、甲1発明aにおける「有機物を溶解し得る溶剤」は、本件訂正発明1における「有機溶剤(C)」に相当し、甲1発明aにおける「金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である金属を含む微粒子」は、本件訂正発明1における「金属粉(B)」とは、金属粉の点で共通する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明aとの一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有する点。
<相違点>
相違点A:本件訂正発明1は、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)」を含有し、「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、
甲1発明aは、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなり、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒を含んでいるものの、前記有機物について前記発明特定事項を備えていない点。
相違点B:本件訂正発明1は、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト」に係る発明であるのに対し、
甲1発明aは、基板上の機能膜のレーザーアブレーション加工用組成物に係る発明であるが、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト」に係る発明であるのか否かが明らかではない点。
(4-1-2) 判断
4ア. そこで、上記相違点Aにつき検討するに、甲第1号証には、甲1発明aにおいて、溶剤とともに、有機分散媒に含まれる有機物について、一例として、「アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマー」との記載がある(上記(2)2イ.)ため、前記有機物が樹脂の場合も包含されているとはいえるものの、そもそも、前記有機分散媒は、甲1発明aにおいては、金属を含む微粒子を均一に分散させることができるものである(上記(2)2エ.)ところ、上記(2)2ウ.に示したように、甲1発明aの組成物は、レーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法において、用いられる組成物であるから、前記有機物が樹脂の場合であっても、前記樹脂も焼成によって除去される有機成分にすぎず、前記樹脂を、前記機能膜において金属を含む微粒子同士を結合させる、バインダーとして作用させるとの技術的思想は甲第1号証には見当たらない。換言すると、甲第1号証には、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていない。
4イ. そして、甲第4号証には、数平均分子量が25,000であり、Tg:100℃である、エポキシ樹脂を、実施例1、3~6、10~11の導電性インキにおけるバインダーとして用いることが記載されており(上記(1)イ.(イ1)~(イ3)、上記(1)イ.(イ4))、甲第5号証には、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃である、共重合ポリエステルを、実施例6及び比較例4の導電性ペーストにおける結合剤として用いることが記載されており(上記(1)ウ.(ウ1)~(ウ4))、甲第6号証には、分子量(Mn)が17×103であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満である非結晶性ポリエステル樹脂を、実施例4の導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが記載されており(上記(1)エ.(エ1)~(エ5))、甲第7号証には、数平均分子量20,000であり、ガラス転移点75℃であり、酸価が1mgKOH/gである熱可塑性ポリエステル樹脂を、実施例1、4~7及び比較例3~5の導電性組成物における結着樹脂として用いることが記載されており(上記(1)オ.(オ1)~(オ4)、上記(1)オ-1.(オ5)、上記(1)オ-2.(オ6))、甲第8号証には、Mn=16,000、Tg=95℃であるフェノキシ樹脂を実施例1~2の導電性ペーストの有機バインダーとして用いることが記載されている(上記(1)オ.(カ1)~(カ3)、上記(1)カ-1.(カ4))。
これらのことから、数平均分子量が16,000~25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、あるいは、数平均分子量が17,000~21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~75℃であり、酸価が1mgKOH/g~2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、上記4ア.で検討したとおり、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていないことを考慮すると、それらの周知の技術事項を甲1発明aに適用しようとする動機付けは合理的には生じ得ない。
4ウ. 上記4ア.~4イ.の検討を踏まえると、上記4イ.に示した周知の技術事項があったと仮定しても、甲1発明aにおいては、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項を備えさせることはできないから、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項は容易になし得ることではない。
4エ. また、甲第1号証には、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていないことを考慮すると、それぞれ、上記2.(2)、上記2.(1)、上記2.(3)に示されている、甲第2号証、甲第3号証、甲第9号証についての記載事項・視認事項を考慮しても、甲1発明aにおいては、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項を備えさせることはできないから、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項は容易になし得ることではない。
4オ. してみると、上記相違点Bにつき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明a、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(4-2) 本件訂正発明2と甲1発明aとの対比・判断
(4-2-1) 本件訂正発明2と甲1発明aとの対比
本件訂正発明2と甲1発明aとを対比すると、上記(4-1-1)と同様の検討により、上記相違点A~B以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。
相違点C:本件訂正発明2は、「更にレーザー光吸収剤(D)を含有する」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲1発明aは、前記発明特定事項も備えていない点。
(4-2-2) 判断
上記相違点Aについては、上記(4-1-2)4ア.~4エ.で検討したとおりであるから、上記相違点B~Cにつき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、甲1発明a、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(4-3) 本件訂正発明3と甲1発明bとの対比・判断
本件訂正発明3と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明bとを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)~(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明b、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(4-4) 本件訂正発明4、6~8と甲1発明cとの対比・判断
本件訂正発明4、6~8と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明cとを対比検討するに、本件訂正発明4、6~8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)~(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明c、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(4-5) 本件訂正発明9と甲1発明dとの対比・判断
本件訂正発明9と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明dとを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)~(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明d、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(4-6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4、6~9は、甲1発明、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5) 本件訂正発明と甲2発明との対比・判断
(5-1) 本件訂正発明1と甲2発明aとの対比・判断
(5-1-1) 本件訂正発明1と甲2発明aとの対比
本件訂正発明1と、上記(3)3エ.に示した、甲2発明aとを対比すると、甲2発明aにおける「金属材料」、「樹脂材料」、「レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行う」こと、「取出配線」、「タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上」、「レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料」は、技術常識に照らし、それぞれ、本件訂正発明1における、「金属粉(B)」、「バインダ樹脂(A)」、「レーザーエッチング加工」、「電極回路配線」、「全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上」、「レーザーエッチング加工用導電ペースト」に相当し、また、甲2発明aのペースト状の電極材料は、ペースト状であることからして、本件訂正発明1における、「有機溶剤(C)を含有し」ていることは自明の事項であるし、そして、甲2発明aにおける「タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる」ことは、本件訂正発明1における、「レーザーエッチング加工により、電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる」ことに相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明aとの一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
バインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、
レーザーエッチング加工により、電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。
<相違点>
相違点A’:バインダ樹脂(A)について、本件訂正発明1では、「酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からな」り、「数平均分子量が5,000~60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60~100℃である熱可塑性樹脂であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aでは、前記のような発明特定事項を備えていない点。
相違点B’:電極回路配線について、本件訂正発明1では、「平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μ以下である」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aでは、前記のような発明特定事項を備えていない点。
(5-1-2) 判断
5ア. そこで、上記相違点A’につき検討するに、甲第2号証には、バインダ樹脂については、「例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。」との記載があり(上記2.(2)ツ.)、その記載から種々の樹脂をバインダ樹脂に用いることができることは把握できるものの、バインダ樹脂として、数平均分子量やガラス転移温度等が特定された樹脂を用いる必要があることまでの動機付けを把握することはできない。
5イ. そして、甲第4号証には、数平均分子量が25,000であり、Tg:100℃である、エポキシ樹脂を、実施例1、3~6、10~11の導電性インキにおけるバインダーとして用いることが記載されており(上記(1)イ.(イ1)~(イ3)、上記(1)イ.(イ4))、甲第5号証には、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃である、共重合ポリエステルを、実施例6及び比較例4の導電性ペーストにおける結合剤として用いることが記載されており(上記(1)ウ.(ウ1)~(ウ4))、甲第6号証には、分子量(Mn)が17×103であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満である非結晶性ポリエステル樹脂を、実施例4の導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが記載されており(上記(1)エ.(エ1)~(エ5))、甲第7号証には、数平均分子量20,000であり、ガラス転移点75℃であり、酸価が1mgKOH/gである熱可塑性ポリエステル樹脂を、実施例1、4~7及び比較例3~5の導電性組成物における結着樹脂として用いることが記載されており(上記(1)オ.(オ1)~(オ4)、上記(1)オ-1.(オ5)、上記(1)オ-2.(オ6))、甲第8号証には、Mn=16,000、Tg=95℃であるフェノキシ樹脂を実施例1~2の導電性ペーストの有機バインダーとして用いることが記載されている(上記(1)オ.(カ1)~(カ3)、上記(1)カ-1.(カ4))。
これらのことから、数平均分子量が16,000~25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、あるいは、数平均分子量が17,000~21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~75℃であり、酸価が1mgKOH/g~2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、上記5ア.で検討したとおり、甲2発明aにおいては、バインダ樹脂として、数平均分子量やガラス転移温度等が特定された樹脂を用いる必要があることまでの動機付けを把握することはできないことを考慮すると、それらの周知の技術事項を甲2発明aに適用しようとすることに合理性を見出すことはできない。
5ウ. また、仮に、上記5イ.に示した技術事項のうちの、数平均分子量が16,000~25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いるとの技術事項を、甲2発明aに適用できたとしても、その技術事項の適用によっては、甲2発明aにおけるバインダー樹脂は、酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂からなり、熱可塑性樹脂であるとの特定事項までを備えたものとはならないから、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を容易になし得ることとはいえないし、また、仮に、上記5イ.に示した技術事項のうちの、数平均分子量が17,000~21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67~75℃であり、酸価が1mgKOH/g~2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いるとの技術事項を、甲2発明aに適用できたとしても、酸価が1mgKOH/g~2KOHmg/g未満であるとは、56KOHg=1当量であることから、酸価が18当量/106g~36当量/106g未満であることを意味するため、その技術事項の適用によっては、甲2発明aにおけるバインダー樹脂は、酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるとの特定事項までを備えることにはならず、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を容易になし得ることとはいえない。
5エ. また、酸価が53.5当量/106gを超えて300当量/106g以下であるポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることについては、甲第3号証に比較例1としての記載はある(上記2.(1)オ.)ものの、上記3.(1-2)ウ.~エ.と同様の検討により、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を備えることは容易になし得ることとはいえない。
5オ. また、他の甲号証の記載(上記(1)ア.、上記2.(3))を参照しても、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項に関する記載は見当たらない。
5カ. してみると、上記相違点B’につき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明a、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(5-2) 本件訂正発明2と甲2発明aとの対比・判断
(5-2-1) 本件訂正発明2と甲2発明aとの対比
本件訂正発明2と甲2発明aとを対比すると、上記(5-1-1)と同様の検討により、上記相違点A’~B’以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。
相違点C’:本件訂正発明2は、「更にレーザー光吸収剤(D)を含有する」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aは、前記発明特定事項も備えていない点。
(5-2-2) 判断
上記相違点A’については、上記(5-1-2)5ア.~5オ.で検討したとおりであるから、上記相違点B’~C’につき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、甲2発明a、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5-3) 本件訂正発明3と甲2発明bとの対比・判断
本件訂正発明3と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明bとを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)~(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明b、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5-4) 本件訂正発明4、6~8と甲2発明cとの対比・判断
本件訂正発明4、6~8と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明cとを対比検討するに、本件訂正発明4、6~8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)~(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明c、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5-5) 本件訂正発明9と甲2発明dとの対比・判断
本件訂正発明9と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明dとを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)~(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明d、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(5-6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4、6~9は、甲2発明、甲第1号証~甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
第5 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項5に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項5に対する特許異議の申立については対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定をする。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700180