特許異議申立
2025-700853
避雷器
- 審判番号
- 2025-700853
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-066646
- 登録番号
- 7651360
- 請求日
- 2025年08月29日
- 審決日
- 2026年05月21日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【権利者】東芝エネルギーシステムズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】新井 温
- 審判長/審判官
- 審判長 涌井 智則
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.113-YAA(H01C) / P1651.121-YAA(H01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7651360号発明「避雷器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7651360号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7651360号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7651360号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和3年4月9日の出願であって、令和7年3月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月26日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 8月29日 :特許異議申立人 新井温(以下、「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年12月15日付け:取消理由通知
令和8年 2月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)の提出
令和8年 3月26日 :申立人による意見書(以下、この意見書を「意見書」という。)の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第7651360号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「非直線抵抗体と、
前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極と、
前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1または複数の絶縁板と、
を備え、
前記電極の側面に、突起部が形成され、
前記絶縁板に、前記突起部が嵌合する嵌合孔が形成され、
前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、
前記電極の側面に、前記絶縁板および前記押さえ板が嵌合する嵌合溝が形成されている、
避雷器。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する、請求項2~4も同様に訂正する。)
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあり、一群の請求項を構成する。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「絶縁板」について「前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、」との限定を加えるとともに、「嵌合溝」について「前記絶縁板および前記押さえ板が嵌合する嵌合溝」との限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、本件特許明細書【0031】の「・・・押さえ板7は、絶縁板5が電極3から離れる方向に移動するのを規制する。・・・」及び【0042】の「・・・図5および図6に示すように、避雷器200は、電極3の外側面に、絶縁板5および押さえ板7が嵌合可能な嵌合溝21が形成されている。・・・」の記載並びに図5に基づくものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
以上から、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)独立特許要件について
申立人による特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~4の全てに対してなされているので、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 まとめ
以上のとおり、訂正前の請求項〔1~4〕に対応する訂正後の請求項〔1~4〕は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
また、本件訂正請求の訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項の記載を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の請求項1~4に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。また、「本件発明1」~「本件発明4」をまとめて、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
非直線抵抗体と、
前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極と、
前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1または複数の絶縁板と、
を備え、
前記電極の側面に、突起部が形成され、
前記絶縁板に、前記突起部が嵌合する嵌合孔が形成され、
前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、
前記電極の側面に、前記絶縁板および前記押さえ板が嵌合する嵌合溝が形成されている、
避雷器。
【請求項2】
前記突起部は、長手方向が前記非直線抵抗体の延在方向に沿う長円形状である、請求項1記載の避雷器。
【請求項3】
前記突起部は、基端に向けて拡径する根元部を有する、請求項1または2に記載の避雷器。
【請求項4】
前記非直線抵抗体を複数備え、
前記少なくとも一組の隣り合う前記非直線抵抗体の間に、仕切板が設けられている、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の避雷器。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和7年12月15日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)理由1(新規性)
請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)
請求項1~3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:特開2018-26449号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2001-23806号公報(甲第4号証)
2 引用文献等の記載事項
(1)引用文献1及び引用発明
ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同じ。)
「【請求項1】
積層された非直線性の電圧-電流特性を有する素子と、
前記積層された素子の両端に設けられる一対の電極と、
前記電極間に設けられ、前記素子の周囲に複数配置される支持部材と、
少なくとも前記素子、前記一対の電極、及び前記複数の支持部材を一体的にモールドするポリマー絶縁材料からなる外被と、を有し、
前記支持部材は、芯部材と、前記芯部材の外周部に形成され、前記芯部材の外周に沿った方向に配向されたガラス繊維を含むガラス繊維強化層と、を有し、
前記電極は、前記電極間に前記支持部材を張架する被張架部を備える
ことを特徴とする避雷器。
【請求項2】
前記被張架部の端部に、前記被張架部に設けられた支持部材の延伸方向と反対側に突出する突縁部が形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の避雷器。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、系統に侵入した異常電圧から電気機器を保護するために用いられる避雷器に関する。・・・」
「【0004】
ダイレクトモールド形の避雷器9には、主にケージ構造が適用される。具体的には、積層した酸化亜鉛素子4の周囲に配置されるように、電極10、11間に支持部材13が設けられる。この支持部材13により、電極10、11間及び積層された酸化亜鉛素子4が機械的に固定されるとともに、曲げモーメントに対する強度が付与される。支持部材13は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等の絶縁物により形成される。」
「【0012】
本発明は、上記事情を鑑みて為されたものであり、曲げ強度、ねじり強度を向上させた安価な避雷器を提供することを目的としている。
【0013】
上記目的を達成する本発明の避雷器の一態様は、積層された非直線性の電圧-電流特性を有する素子と、前記積層された素子の両端に設けられる一対の電極と、前記電極間に設けられ、前記素子の周囲に複数配置される支持部材と、少なくとも前記素子、前記一対の電極、及び前記複数の支持部材を一体的にモールドするポリマー絶縁材料からなる外被と、を有し、前記支持部材は、芯部材と、前記芯部材の外周部に形成され、前記芯部材の外周に沿った方向に配向されたガラス繊維を含むガラス繊維強化層と、を有し、前記電極は、前記電極間に前記支持部材を張架する被張架部を備えることを特徴としている。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る避雷器について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る避雷器1は、一対の電極2、3と、電極2、3間に積層される酸化亜鉛素子4と、積層された酸化亜鉛素子4のまわりに配置される支持部材5と、を備える。なお、図1では図示省略されているが、避雷器1は、図5に示した従来技術に係る避雷器9と同様に、電極2、3間に酸化亜鉛素子4を積層した酸化亜鉛素子ユニット6をシリコーンゴム等のポリマー絶縁材料により直接モールドした外被7や酸化亜鉛素子4に圧接力を付与する弾性部材等を備えている。また、実施形態の説明では、酸化亜鉛素子ユニット6に対して、電極2が設けられる側を上側、電極3が設けられる側を下側とするが、上下方向は本発明をなんら限定するものではない。
【0019】
電極2、3は、略円柱状であり、電極2、3の内端部(すなわち、酸化亜鉛素子4と対向する端部)の外周面には、支持部材5の端部が遊嵌される電極溝2a、3aが形成される。電極溝2a、3aは、酸化亜鉛素子ユニット6に設けられる支持部材5の数に応じて、略等間隔に形成される。なお、電極2、3は、略円柱状だけでなく、支持部材5の数に対応した辺を有する角柱状等とすることができる。図2(b)に示すように、電極溝3aの支持部材5の主面と対向する面には、電極3の径方向に突出した被張架部3bが設けられる。この被張架部3bは、後に詳細に説明する支持部材5に形成された孔5aに挿通され、支持部材5が掛着される。また、被張架部3bの先端部には、被張架部3bに設けられた支持部材5の延伸方向とは反対側に突出した突縁部3cが形成され、この突縁部3cにより電極3の径方向への支持部材5の脱落が防止される。なお、電極2についても同様に、電極溝2aの支持部材5の主面と対向する面に、電極2の径方向に突出した被張架部2bが設けられ、被張架部2bの先端部には、被張架部2bに設けられた支持部材5の延伸方向とは反対側に突出した突縁部2cが形成される。このように被張架部2b、3bに支持部材5の端部を掛着することで、電極2、3間に支持部材5が張架されることとなる。
【0020】
酸化亜鉛素子4は、非直線性の電圧-電流特性を有し、避雷器1の連続使用電圧では絶縁体として働き、雷サージのような電圧が大きい領域では導体として働く。この働きにより、雷サージから機器を保護することが可能となる。図1(a)に示すように、酸化亜鉛素子4と電極2(または、電極3)との間には、長さ調整電極8が設けられる。長さ調整電極8の一方(例えば、電極2側の長さ調整電極8)には、後に詳細に説明する六角穴付き止ねじが当接され、電極2、3間の長さが調整される。
【0021】
支持部材5は、電極2と電極3との間に張架される。支持部材5は、電極2、3の間に複数設けられる。図3に示すように、支持部材5の端部には、張架用の孔5aが形成されている。図4に示すように、支持部材5は芯となる板状の芯部材5bと、芯部材5bの外周(すなわち、芯部材5bの上下・側面)に形成されるFW(フィラメントワインディング)層5cと、を有する。
【0022】
芯部材5bは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等により形成された板であり、FW層5cを構成するFW材が隙間なく巻きつけられるように、芯部材5bの両端部の角部には面取り加工(R加工)が施されている。FW材とは、例えば、エポキシ樹脂等のマトリックスを含浸させたロービング(ガラス繊維の撚糸等)である。
【0023】
FW層5cは、FW材を、芯部材5bの外周に巻きつけて形成される層である。FW層5c部分は、支持部材5において最も重要な引張強度(曲げ強度)を担う部分である。したがって、所定の強度を得るために必要な回数(FW層5cが所定の強度を得るために必要な厚さとなるように)FW材が巻きつけられる。図4(b)、(c)に示すように、FW材を芯部材5bの外周に巻きつけた後、エポキシ樹脂が硬化させられる。そして、最終的に出来上がった板をスライス加工し、張架用の孔5aをあけて、支持部材5が製造される。なお、孔5aの形成方法は本発明を何ら限定する物ではない。例えば、予め芯部材5bに孔5aを形成しておき、孔5aが形成された芯部材5bにFW層5cを形成する態様とすることができる。」
「【図1】
[図:0001438292000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001438292000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001438292000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001438292000004.jpg]
」
イ 上記記載事項について検討する。
(ア)【0018】及び図1には、「一対の電極2、3」と、「電極2、3間に積層される酸化亜鉛素子4」と、「積層された酸化亜鉛素子4のまわりに配置される支持部材5」と、を備える「避雷器1」が記載されている。
また、【0020】には、「酸化亜鉛素子4」は「非直線性の電圧-電流特性を有」するものであることが記載されている。
そして、【0013】及び図1から、「支持部材5」は「複数」であることは明らかである。
(イ)【0004】の、「支持部材13は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等の絶縁物により形成される」旨の記載、【0021】~【0022】の、「支持部材5」は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等により形成された板状の「芯部材5b」と、「芯部材5b」の外周に、エポキシ樹脂等のマトリックスを含浸させたガラス繊維の撚糸等であるFW材が巻き付けられた「FW層5c」と、を有する旨の記載及び図4を参酌すれば、引用文献1の「支持部材5」は「板状の絶縁物」であることは明らかである。
そして、【0021】及び図3には、「支持部材5の端部には、張架用の孔5aが形成されている」点が記載されている。
(ウ)【0019】及び図2には、「電極2、3」の内端部の「外周面には、支持部材5の端部が遊嵌される電極溝2a、3aが形成される」点が記載されている。
また、【0019】及び図2には、「電極溝3aの支持部材5の主面と対向する面には、電極3の径方向に突出した被張架部3bが設けられ」、「この被張架部3bは、」「支持部材5に形成された孔5aに挿通され、支持部材5が掛着され」、「電極2についても同様に、電極溝2aの支持部材5の主面と対向する面に、電極2の径方向に突出した被張架部2bが設けられ」、「被張架部2b、3bに支持部材5の端部を掛着することで、電極2、3間に支持部材5が張架される」ことも記載されている。
すると、引用文献1には「電極溝2a、3aには、電極2、3の径方向に突出した被張架部2b、3bが設けられ、被張架部2b、3bは、支持部材5に形成された孔5aに挿通され、支持部材5が掛着されることで、電極2、3間に支持部材5が張架される」ことが記載されているといえる。
ウ 上記記載を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 一対の電極2、3と、
電極2、3間に積層される非直線性の電圧-電流特性を有する酸化亜鉛素子4と、
積層された酸化亜鉛素子4のまわりに配置される複数の板状の絶縁物である支持部材5と、
を備え、
支持部材5の端部には、張架用の孔5aが形成され、
電極2、3の外周面には、支持部材5の端部が遊嵌される電極溝2a、3aが形成され、
電極溝2a、3aには、電極2、3の径方向に突出した被張架部2b、3bが設けられ、被張架部2b、3bは、支持部材5に形成された孔5aに挿通され、支持部材5が掛着されることで、電極2、3間に支持部材5が張架される、
避雷器1。」
(2)引用文献2
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】図5は従来の避雷器を示す断面構成図、図6は従来の他の避雷器を示す断面構成図であり、互いに同一の部分には同一の符号を付して説明する。
【0003】図5に示すように、酸化亜鉛素子を主成分とする非直線抵抗体1を複数積層し、これらの所定数毎に円板状の仕切板2を介挿して積層体とし、その上下両端部に端子電極3を導電接合し、これらの径方向のずれを防ぐために複数の絶縁ロッド4を径方向に均等に配置し、これらの絶縁ロッド4を各仕切板2の貫通孔を挿通させ、その上下端を絶縁ナット5で締付け固定することで、避雷器の内部要素6を一体化している。」
「【図5】
[図:0001438292000005.jpg]
」
(3)甲第3号証
甲第3号証(特開2014-110255号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
積層された非直線抵抗素子と、
この非直線抵抗素子の積層方向の両側に配置された一対の電極と、
前記非直線抵抗素子の周囲に複数本配置され、それぞれ前記積層方向に延伸する平板状であり、軸方向の中央側から端側に向かって一定の傾斜角度でその幅が増大した後に一定の幅となるダンベル形状の両端部が設けられ、当該両端部が前記一対の電極に設けられた電極溝にそれぞれ嵌め合わされて固定された絶縁ロッドと、
少なくとも前記非直線抵抗素子、前記一対の電極、および前記複数本の絶縁ロッドを一体的に被覆するポリマー材料から成る外皮と、
を備えることを特徴とする避雷器。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所又は変電所等において、系統に侵入した異常電圧から電気機器を保護するために用いられる避雷器に関するものである。」
「【0014】
本実施の形態に係る避雷器は、例えば酸化亜鉛素子である非直線抵抗素子が複数層積層されてなる内部要素2と、内部要素2の積層方向の一端面上に配置された押圧ばね5と、内部要素2および押圧ばね5からなる直列体の両端に配置された一対の電極1と、内部要素2の周囲に複数本配置され両端部に設けられたダンベル形状の出張り部3aがそれぞれ電極1に設けられた電極溝1aに嵌め合わされて電極1同士を連結する複数本のFRP(ガラス繊維強化プラスチック)ロッド3と、電極溝1aに嵌め合わされた出張り部3aが電極溝1aから外れないようにする留め板4と、内部要素2、押圧ばね5、電極1、FRPロッド3、および留め板4をシリコーンゴム等のポリマー材料で一体的にモールドする外皮6と、を備えている。なお、図1は、図2のB-Bにおける避雷器の矢視断面図であり、FRPロッド3のうち中央に示したものは実際には内部要素2を挟んで背後に配置されているものであるが、配置構成を明確にすることを目的として、両側の2本とともに示したものである。」
「【0017】
電極1は、少なくとも出張り部3aが嵌め込まれる部分については、断面が例えば四角形状(正方形状)であり、各側面にはそれぞれ電極溝1aが設けられている。電極溝1aは、出張り部3aと略同形状であり、出張り部3aが引掛けるようにして嵌め込まれている。留め板4は、電極溝1aに嵌め合わされた出張り部3aが電極溝1aから外れないようにするものであり、電極1にボルト等により固定されている。なお、FRPロッド3の本数は4本に限定されず、一般に複数本とすることができる。FRPロッド3を例えば3本以上配置するときは、電極1の断面形状はその本数に応じた多角形状とすることができ、各側面に電極溝1aを設けることができる。」
「【0021】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態では、FRPロッド3の両端部に90°未満の傾斜角度θを有するダンベル形状の出張り部3aを設け、出張り部3aと略同形状の電極溝1aを設けた電極1に出張り部3aを引掛けて固定するようにしている。このような構成により、避雷器に曲げ荷重または引張荷重が加わった際の出張り部3aに付加される応力集中を緩和し、避雷器の機械強度を向上させることができる。」
「【図2】
[図:0001438292000006.jpg]
」
「【図3】
[図:0001438292000007.jpg]
」
(4)参考資料
意見書とともに提示された参考資料(特開2013-115389号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、非直線抵抗体の破片の衝突により板状絶縁物に内部からの荷重が加わった場合にも、板状絶縁物に配された穴や切り欠け等の加工部への応力集中を回避することができるポリマー避雷器を提供することである。」
「【0011】
この第1の実施形態のポリマー避雷器は、非直線抵抗体1、第1の金属電極2a、第2の金属電極2b、板状絶縁物3、第1のスペーサ4a、第2のスペーサ4b、第1の固定部材5a、第2の固定部材5b、絶縁外皮6を有する。」
「【0013】
また、図1、図2に示すように非直線抵抗体1の外周には、固定部材5a、5b貫通用の穴を有する板状絶縁物3が複数枚配置され、金属電極2a、2bに設けられた溝に取り付けられる。
【0014】
板状絶縁物3の外側には、第1の金属電極2a側に第1のスペーサ4aが配置され、第2の金属電極2b側に第2のスペーサ4bが配置される。スペーサ4a、4bの材料としては、鉄などの金属材料やFRPなどの樹脂材料が挙げられる。
【0015】
そして、第1の金属電極2a、板状絶縁物3、第1のスペーサ4aは第1の固定部材5aによって固定され、第2の金属電極2bと板状絶縁物3、第2のスペーサ4bは第2の固定部材5bによって固定される。固定部材5a、5bには、ネジやピンなどを用い、板状絶縁物3にはガラス繊維強化プラスチック(FRP)が用いられる。
【0016】
ここで、第1のスペーサ4aの第2のスペーサ4b側の端部は、第1の金属電極2aの非直線抵抗体1側の端部と第1の固定部材5aとの間に位置するように取り付けられる。同様に第2のスペーサ4bの第1のスペーサ4a側の端部は、第2の金属電極2bの非直線抵抗体1側の端部と第2の固定部材5bとの間に位置するように取り付けられる。」
「【0019】
この第1の実施形態のポリマー避雷器では、上述したように第1のスペーサ4aを配置することで、図3、図4に示す第1のスペーサ4aの第2のスペーサ4b側の端部と板状絶縁物3との接触部7が変位の起点となり、この接触部7に応力が集中する。そのため板状絶縁物3が有する第1の固定部材5a貫通用の穴への応力集中を回避することができる。第2のスペーサ4bに関しても同様の効果が得られる。」
「【図1】
[図:0001438292000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001438292000009.jpg]
」
「【図3】
[図:0001438292000010.jpg]
」
「【図4】
[図:0001438292000011.jpg]
」
3 取消理由についての当審の判断
(1)理由1(新規性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 引用発明の「非直線性の電圧-電流特性を有する酸化亜鉛素子4」は、本件発明1の「非直線抵抗体」に相当する。
そして、引用発明の「電極2、3」は、その間に「酸化亜鉛素子4」が積層されているから、本件発明1の「前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極」である点で一致する。
b 引用発明の「複数の板状の絶縁物である支持部材5」は、本件発明1の「1または複数の絶縁板」である点で一致する。
そして、引用発明の「支持部材5」は、「被張架部2b、3b」が「支持部材5に形成された孔5aに挿通され、支持部材5が掛着されることで、電極2、3間に支持部材5が張架される」ものであるところ、引用文献1の図1も参酌すれば、「支持部材5」が一端に設けられた「電極2」と他端に設けられた「電極3」とを連結するものであることは明らかである。
すると、引用発明の「支持部材5」は、本件発明1の「前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1または複数の絶縁板」である点で一致する。
しかしながら、本件発明1の「絶縁板」は「前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、」と特定されているのに対し、引用発明では「押さえ板」に対応する構成がなく、「支持部材5」がそのように特定されていない点で相違する。
c 引用文献1の図1及び2も参酌すると、引用発明の「電極2、3の外周面」は「電極2、3の側面」であることは明らかであるから、引用発明の「電極2、3の外周面には、支持部材5の端部が遊嵌される電極溝2a、3aが形成され」る点は、本件発明1の「前記電極の側面に、前記絶縁板」「が嵌まる溝が形成されている」点で一致する。
しかしながら、電極に形成されている溝について、本件発明1では、溝と嵌め合わされる部材が「前記絶縁板および前記押さえ板」であり、嵌め合いの態様が「嵌合」で「嵌合溝」と特定されているのに対し、引用発明では、溝と嵌め合わされる部材が「支持部材5」のみであり、「押さえ板」に対応する構成が特定されておらず、さらに、「支持部材5」との嵌め合いの態様が「遊嵌」で「嵌合溝」と特定されていない点で相違する。
d 上記cで検討したように、引用発明の「電極溝2a、3a」は電極の側面に形成されているから、引用発明の「電極溝2a、3aには、電極2、3の径方向に突出した被張架部2b、3bが設けられ」る点は、本件発明1の「電極の側面に突起部が形成され」る点に相当する。
また、引用発明の「支持部材5の端部には、張架用の孔5aが形成され」る点は、本件発明1の「絶縁板に」「孔が形成され」る点で一致する。
さらに、引用発明の「孔5a」は、「被張架部2b、3b」が「挿通され」、「支持部材が掛着される」ことからみて、「孔5a」は「被張架部2b、3b」に対応して形成される孔であるといえる。
してみると、引用発明の「被張架部2b、3bは、支持部材5に形成された孔5aに挿通され」る点は、本件発明1の「前記絶縁板に、前記突起部に対応した孔が形成され」る点で一致する。
しかしながら、絶縁板に形成される孔について、本件発明1は「前記突起部が嵌合する嵌合孔」であるのに対し、引用発明では「被張架部2b、3bが挿通される孔5a」である点で相違する。
e 引用発明は「避雷器1」であるから、本件発明1と「避雷器」である点で一致する。
f 以上から、引用発明と本件発明1とは次の点で一致し、また、次の点で相違する。
(一致点)
非直線抵抗体と、
前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極と、
前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1または複数の絶縁板と、
を備え、
前記電極の側面に、突起部が形成され、
前記絶縁板に、前記突起部が挿通される孔が形成され、
前記電極の側面に、前記絶縁板が嵌まる溝が形成されている、
避雷器。
(相違点)
相違点1 絶縁板に形成される孔について、本件発明1は「前記突起部が嵌合する嵌合孔」と特定されているのに対し、引用発明では「被張架部2b、3bが挿通される孔5a」である点。
相違点2 電極に形成されている溝について、本件発明1では、溝と嵌め合わされる部材が「前記絶縁板よび前記押さえ板」であり、嵌め合いの態様が「嵌合」で「嵌合溝」と特定されているのに対し、引用発明では、溝と嵌め合わされる部材が「支持部材5」のみで「押さえ板」に対応する構成が特定されておらず、「支持部材5」との嵌め合いの態様が「遊嵌」で「嵌合溝」と特定されていない点。
相違点3 絶縁板について、本件発明1は「前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、」と特定されているのに対し、引用発明では「押さえ板」に対応する構成がなく、「前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され」ると特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2及び3について検討する。
本件発明1と引用発明とは、少なくとも上記相違点2及び3において相違するから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
(2)理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、上記「3 (1)ア(ア)」に記載したとおり、上記相違点1~3において相違する。
(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献1には「押さえ板」に対応する構成が存在しないから、電極に形成された溝に「押さえ板」を嵌め合わせる点は、引用文献1に記載も示唆もされていない。
また、上記2(2)のとおり、引用文献2には、「絶縁ロッド4を各仕切板2の貫通孔を挿通させ、その上下端を絶縁ナット5で締付け固定すること」の記載はあるものの、「端子電極3」に溝を形成する点や、「押さえ板」に対応する構成が存在しないから、電極に形成された溝に「押さえ板」を嵌め合わせる点は、引用文献2にも記載も示唆もされていない。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張
申立人は相違点2について、意見書(第9頁6行~第12頁4行)において、概略、次のように主張していると認められる。
a 参考資料のスペーサ4a、4bは、図3に示すように、板状絶縁物3の金属電極2a、2bに設けられた溝に嵌合する部分の外側に配置されており、また、図4から明らかなように「スペーサ4a、4b」はその寸法に照らし金属電極2a、2bに設けられた溝に嵌合しうる程度の大きさに形成されている。この金属電極2a、2bに設けられた溝の深さについては参考資料に何ら限定がなく、金属電極2a、2bに設けられた溝を深くすることで板状絶縁物3と同様にスペーサ4a、4bを嵌合させる構成を否定する理由はない。
b 本件明細書の段落【0043】の記載は、「電極3の嵌合溝21と押さえ板7」の間における作用効果と認識できるものではなく、具体的な作用効果を本件明細書からは理解することができないから、相違点2は単に嵌合溝21の深さ寸法を絶縁板5の厚みよりも大きくすることで押さえ板7を収容した構成にすぎず、そこに格別の技術的意義はなく、溝の深さ寸法に係る設計事項である。
c そして、引用発明1の電極溝2a、3aも深さ寸法にも制限はなく、これを支持部材5およびスペーサ4a、4bを収容可能な深さ寸法に設計変更すれば相違点2に想到できるから、引用発明1および参考発明に基づき当業者が容易に発明できる。
d その他、電極溝2a、3aの深さ寸法をスペーサ4a、4b以外の前記周知技術、例えば甲第3号証の留め板4やワッシャーなどを嵌合可能な大きさに設計変更しても、相違点2に想到できる。
(エ)申立人の主張について
上記主張について検討する。
a 参考資料の【0013】の「非直線抵抗体1の外周には、固定部材5a、5b貫通用の穴を有する板状絶縁物3が複数枚配置され、金属電極2a、2bに設けられた溝に取り付けられ」との記載から、参考資料には「金属電極2a、2bに設けられた溝」に「板状絶縁物3」が取り付けられる点については記載がある一方、「スペーサ4a、4b」を「金属電極2a、2bに設けられた溝」に取り付ける点については記載がない。
そして、参考資料の図2及び図3を参照すれば、参考資料において「スペーサ4a、4b」は、「板状絶縁物3」に重なるとともに「金属電極2a、2b」の外側に位置し、「金属電極2a、2bに設けられた溝」と嵌め合っていないものと認められる。
すると、参考資料に「金属電極2a、2bに設けられた溝」に「スペーサ4a、4b」を嵌め合わせる点について、記載も示唆もない。
さらに、参考資料の【0013】の「非直線抵抗体1の外周には、固定部材5a、5b貫通用の穴を有する板状絶縁物3が複数枚配置され」る旨の記載や図3から、参考資料において「板状絶縁物3」は、「非直線抵抗体1の外周」に配置されているものと認められる。
すると、仮に申立人の主張のように「金属電極2a、2bに設けられた溝」を深くしても、「板状絶縁物3」は「非直線抵抗体1の外周」によりその位置が規制されているから、「板状絶縁物3」に重なる「スペーサ4a、4b」が「金属電極2a、2bに設けられた溝」に嵌め合うことはないと認められる。
b 一方、引用文献1には「押さえ板」に対応する構成がなく、引用発明において「電極溝2a、3a」の深さ寸法を「前記押さえ板が嵌合する」ように特定することについて、引用文献1に記載も示唆もない。
そして、引用発明において「電極溝2a、3a」の深さ寸法を、引用文献1に記載のない「押さえ板」が嵌合するように特定することが、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化であるとは認められないから、「電極溝2a、3a」の深さ寸法を特定することが設計的事項であるともいえない。
c そうすると、引用発明において「電極溝2a、3a」の深さ寸法を、引用文献1に記載のない「押さえ板」が嵌合するように特定することが設計的事項であるとはいえず、参考資料に「金属電極2a、2bに設けられた溝」に「スペーサ4a、4b」を嵌め合わせる点について、記載も示唆もないから、引用発明に参考資料に記載された事項を適用しても、相違点2に係る構成に想到できない。
d また、甲第3号証の「留め板4」やワッシャーのように、「押さえ板」が周知の事項であったとしても、引用発明において「電極溝2a、3a」の深さ寸法を、引用文献1に記載のない「押さえ板」が嵌合するように特定することが設計的事項であるとはいえないから、引用発明にその他の周知の事項を適用しても、相違点2に係る構成に想到できない。
(オ)小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び参考資料に記載された事項又はその他の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、少なくとも上記相違点2に係る発明特定事項を有するものであるから、本件発明1についての判断と同様に、本件発明2~4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術、参考資料に記載された事項又はその他の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立て理由の概要は次のとおりであると認められる。
(1)理由2(進歩性)について
請求項1~3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、請求項4に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明並びに甲第4号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第2号証:特開2003-272908号公報
甲第3号証:特開2014-110255号公報
甲第4号証:特開2001-23806号公報(取消理由通知の引用文献2と同じ。)
2 甲号証の記載事項の概要
(1)甲第2号証及び甲第2発明
ア 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の酸化亜鉛素子が積層された酸化亜鉛素子ブロックと、該酸化亜鉛素子ブロックの一端面に配置された円板および加圧部材と、加圧部材の端面および上記酸化亜鉛素子ブロックの他端面に配置された一対の電極と、一対の電極の一方の電極、円板、加圧部材、酸化亜鉛素子ブロックおよび一対の電極の他方の電極が直列状態で内径部に収容される絶縁筒とで酸化亜鉛素子モジュールが構成され、両端に配置された一対の電極はそれぞれ上記絶縁筒の端部に係止され、上記酸化亜鉛素子モジュールは上記加圧部材により、上記酸化亜鉛素子ブロックに押圧力が加えられた状態で組み立てられ、この酸化亜鉛素子モジュールの外周部に耐候性を備えた絶縁材料によりひだを有する形状に形成された外被が被せられていることを特徴とする避雷器。
【請求項2】 絶縁筒は両端部に直角方向に貫通する係止穴が設けられ、一対の電極の一方の電極はその外周部に上記絶縁筒に係止する係止部が設けられ、他方の電極は係止棒を上記絶縁筒の係止穴から直角方向に挿入して係止し、一方の電極に設けられたねじ穴に押圧ねじを螺合して酸化亜鉛素子ブロックを押圧する構成としたことを特徴とする請求項1記載の避雷器。
【請求項3】 絶縁筒の両端部に設けられた係止穴の係止部は円弧状に形成され、一方の電極の係止部および他方の電極に挿入する係止棒の係止部の形状は、上記絶縁筒の上記係止穴の係止部の内面に沿う円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の避雷器。
【請求項4】 一対の電極の少なくとも一方の電極は、酸化亜鉛素子ブロック側が円板状に形成され、この円板状部分の一方の端部側に、円柱状の接続部が一体に形成され、上記円板状部分の上記接続部側の角部は円錐状に形成され、この電極が収容される絶縁筒端部の内径部には係止溝が設けられ、上記電極、円板、加圧部材、酸化亜鉛素子ブロックが直列状態で内径部に収容された状態で、上記絶縁筒の係止溝に、円形に形成され端部が連結されていない止め輪を装着し、上記電極に設けられたねじ穴に押圧ねじを螺合して上記加圧部材を押圧する構成としたことを特徴とする請求項1記載の避雷器。
【請求項5】 絶縁筒の両端の係止溝が設けられた外周に補強リングを配設したことを特徴とする請求項4記載の避雷器。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力系統に接続された電気機器を回路に発生する開閉サージ、雷サージ等の異常電圧から保護する複数の酸化亜鉛素子を積層し、外周部にシリコンゴムまたはポリマー等の絶縁材料の外被を被せた避雷器に関するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように構成された避雷器は、外周に配置された絶縁ロッド4により酸化亜鉛素子ブロック1に押圧力を加えて酸化亜鉛素子1aの接触部に接触圧力を与え、機械的強度が確保される構成であり、酸化亜鉛素子ブロック1の積層高さを高くすると、使用時に加わる曲げ荷重に耐えず、積層状態が崩れてしまうので、積層高さが高くなる高電圧用には適用できない問題点があった。
【0005】この発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、酸化亜鉛素子の積層高さを高くしても、積層状態が崩れない構成とし、高電圧用が1つの酸化亜鉛素子モジュールで構成できる避雷器を提供することを目的とするものである。」
「【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1.実施の形態1の避雷器の構成を図1に示す。図2は図1の酸化亜鉛素子モジュール部分の構成であり、図2(a)は酸化亜鉛素子の積層する各部材の配列状態を示す斜視図、図2(b)は絶縁筒の斜視図である。図において、11は複数の酸化亜鉛素子11aが積層された酸化亜鉛素子ブロック、12は酸化亜鉛素子ブロック11の端面の全面に接触させる円板、20は酸化亜鉛素子ブロック11が収容される絶縁筒であり、両端部に一対の電極を係止する係止穴20aが設けられている。12aは酸化亜鉛素子ブロック11の積層高さが所定の高さに調整するスペーサである。13は酸化亜鉛素子ブロックの両側に配置された一対の電極の一方の第1の電極であり、板状部分の一面の中心部に接続部13a、外周部の対向する両側に係止部13bが設けられ、中心部を貫通するねじ穴13cが設けられている。14は酸化亜鉛素子ブロック11に押圧力を与える皿ばねで構成された加圧部材である。15は加圧部材14を押圧する押え板、16は押え板15を押圧する押圧ねじであり、頭なし六角穴付止めねじが適当である。
【0012】17は一対の電極の他方の第2の電極であり、円板状部分17aの一面の中心部に接続部17bが設けられ、中心部に接続用のねじが設けられている。18は第2の電極17を絶縁筒20に係止する係止棒である。第1の電極13の係止部13a、および係止棒18の絶縁筒20の係止穴20aに接する部分の形状は円弧状に形成されている。10は酸化亜鉛素子ブロック11、円板12、第1の電極13、加圧部材14、押え板15、押圧ねじ16、第2の電極17が絶縁筒20に収容された構成の酸化亜鉛素子モジュールである。22は酸化亜鉛素子モジュール10の外周部に被せられた外被であり、耐候性を備えた絶縁材料によりひだを有する形状に形成されている。
【0013】図1の組立手順は、まず、第1の電極13の係止部13bを絶縁筒20の係止穴20aの部分に装着し、酸化亜鉛素子ブロック11を積層高さが所定の高さになるようにスペーサ12aにより調整して積層し、絶縁筒20の内径部に収容する。次に酸化亜鉛素子ブロック11の積層された端部に第2の電極17を配置し、絶縁筒20の係止穴20aに係止棒18を差し込み、第1の電極13のねじ穴13cに押圧ねじ16を螺合して押え板15に押圧力を加えることで酸化亜鉛素子モジュール10が組み立てられる。
・・・略・・・
【0015】このように酸化亜鉛素子ブロック11を絶縁筒20内に収容したことにより、避雷器の使用中に加わる曲げ荷重に対して、酸化亜鉛素子ブロック11の積層状態が絶縁筒20により保持されるので、積層高さを高くしても、使用中の積層状態が崩れることがなくなり、高電圧用の例えば110kV級の避雷器でも一体で構成できる。」
「【図1】
[図:0001438292000012.jpg]
」
「【図2】
[図:0001438292000013.jpg]
」
イ 上記記載事項について検討する。
(ア)【請求項1】、【0011】及び【0012】には、複数の酸化亜鉛素子11aが積層された「酸化亜鉛素子ブロック11」と、該酸化亜鉛素子ブロック11の一端面に配置された「円板12」および「加圧部材14」と、加圧部材14の端面および上記酸化亜鉛素子ブロック11の他端面に配置された「一対の電極13、17」と、一対の電極の一方の「第1の電極13」、「円板12」、「加圧部材14」、「酸化亜鉛素子ブロック11」および一対の電極の他方の「第2の電極17」が直列状態で内径部に収容される「絶縁筒20」とで、「酸化亜鉛素子モジュール10」が構成され、「酸化亜鉛素子モジュール10」の外周部に「外皮22が被せられている避雷器」が記載されている。
(イ)【請求項2】、【0011】~【0013】には、「絶縁筒20」には、「両端部に一対の電極を係止する係止穴20aが設けられ」る点、「第1の電極13」には、「外周部」「に係止部13bが設けられ」る点、及び、「第1の電極13の係止部13b」が「絶縁筒20の係止穴20aの部分に装着」される点が記載されている。
ここで、「絶縁筒20」に設けられた「係止穴20a」は、「一対の電極を係止する」ものであり、図1も参酌すると、「係止穴20a」により、「第1の電極13」と「第2の電極17」が、「絶縁筒20」に係止されていることは明らかである。
ウ 上記記載を総合勘案すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲第2発明」という。)が記載されている。
「 複数の酸化亜鉛素子11aが積層された酸化亜鉛素子ブロック11と、
該酸化亜鉛素子ブロック11の一端面に配置された円板12および加圧部材14と、
加圧部材14の端面および上記酸化亜鉛素子ブロック11の他端面に配置された一対の電極13、17と、
一対の電極の一方の第1の電極13、円板12、加圧部材14、酸化亜鉛素子ブロック11および一対の電極の他方の第2の電極17が直列状態で内径部に収容される絶縁筒20とで、
酸化亜鉛素子モジュール10が構成され、
絶縁筒20には、両端部に一対の電極を係止する係止穴20aが設けられ、
第1の電極13には、外周部に係止部13bが設けられ、
第1の電極13の係止部13bが、絶縁筒20の係止穴20aの部分に装着され、
第1の電極13と第2の電極17が、絶縁筒20に係止されており、
酸化亜鉛素子モジュール10の外周部に外皮22が被せられている避雷器。」
(2)甲第3号証
甲第3号証に記載された事項は、上記「第4 2(3)」に記載したとおりのものである。
(3)甲第4号証
甲第4号証に記載された事項は、上記「第4 2(2)」に記載したとおりのものである。
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲第2発明の「酸化亜鉛素子11a」は、本件発明1の「非直線抵抗体」に相当する。
そして、甲第2発明において、「酸化亜鉛素子ブロック11」は複数の酸化亜鉛素子11aが積層されたものであり、一対の電極の一方の「第1の電極13」、「円板12」、「加圧部材14」、「酸化亜鉛素子ブロック11」および一対の電極の他方の「第2の電極17」が直列状態であるところ、甲第2号証の図1も参酌すれば、「一対の電極13、17」は、本件発明1の「前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極」である点で一致することは明らかである。
(イ)甲第2発明の「絶縁筒20」には「第1の電極13」及び「第2の電極17」が「係止されて」いるから、甲第2発明の「絶縁筒20」は、本件発明1の「前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1」「の絶縁」材である点で一致する。
しかしながら、本件発明1は「絶縁板」と特定されているのに対し、甲第2発明は「絶縁筒20」である点、及び、本件発明1は「前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、」と特定されているのに対し、甲第2発明は「押さえ板」に対応する構成がなく、「絶縁筒20」が「前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され」ると特定されていない点で相違する。
(ウ)甲第2発明において、「第1の電極13」の「外周部」は「側面」であることは明らかであるから、甲第2発明の「第1の電極13には、外周部に係止部13bが設けられ」る点は、本件発明1の「前記電極の側面に、突起部が形成され」る点に相当する。
(エ)甲第2発明の「絶縁筒20」は、「係止穴20aが設けられ」るから、本件発明1の「絶縁板」と、「絶縁」材に「孔が形成され」る点で一致する。
ここで、本件発明1の「前記突起部が嵌合する嵌合孔」において、「突起部」が「嵌合孔」に「嵌合」、すなわち、「嵌まり合っている」状態は、「突起部」が「嵌合孔」に「装着され」ている状態を含むことは明らかである。
すると、甲第2発明の「絶縁筒20」に設けられた「係止穴20a」は、「係止部13b」が「装着され」るから、本件発明1の「絶縁板」に形成された「嵌合孔」と、「絶縁」材に「前記突起部が装着される孔が形成され」る点で一致する。
しかしながら、絶縁材に形成される孔について、本件発明1は「前記突起部が嵌合する嵌合孔」であるのに対し、甲第2発明では「第1の電極13の外周部に設けられた係止部13bが、」「装着され」る「係止穴20a」である点で相違する。
(オ)本件発明1は「電極の側面に、前記絶縁板及び前記押さえ板が嵌合する嵌合溝が形成されている」のに対し、甲第2発明は「第1の電極13」及び「第2の電極17」に「溝」に対応する構成がなく、「溝」と嵌め合わせられる部材も、嵌め合わせの態様も特定されていない点で相違する。
(カ)甲第2発明は「避雷器」であるから、本件発明1と「避雷器」である点で一致する。
(キ)以上から、甲第2発明と本件発明1とは次の点で一致し、また、次の点で相違する。
(一致点)
非直線抵抗体と、
前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた電極と、
前記非直線抵抗体の一端に設けられた前記電極と、前記非直線抵抗体の他端に設けられた前記電極とを連結する1の絶縁材と、
を備え、
前記電極の側面に、突起部が形成され、
前記絶縁材に、前記突起部が装着される孔が形成されている、
避雷器。
(相違点)
相違点1 絶縁材の形状について、本件発明1は「絶縁板」と特定されているのに対し、甲第2発明では「絶縁筒20」である点。
相違点2 絶縁材に形成される孔について、本件発明1は「前記突起部が嵌合する嵌合孔」と特定されているのに対し、甲第2発明では「係止部13bが、」「装着され」る「係止穴20a」である点。
相違点3 電極について、本件発明1は「前記電極の側面に、前記絶縁板および前記押さえ板が嵌合する嵌合溝が形成されている、」と特定されているのに対し、甲第2発明では「第1の電極13」及び「第2の電極17」に「溝」に対応する構成がなく、「溝」と嵌め合わせられる部材も、嵌め合わせの態様も特定されていない点。
相違点4 絶縁材について、本件発明1は「前記絶縁板は、前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され、」と特定されているのに対し、甲第2発明では「押さえ板」に対応する構成がなく、「絶縁筒20」が「前記電極から離れる方向に移動するのを押さえ板によって規制され」ると特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1について検討する。
甲第2号証に「絶縁筒20」の形状を板状とすることについて、記載や示唆はない。
一方、甲第2号証の【0003】、【0004】及び【0015】を参照すると、甲第2号証には、従来の避雷器の「外周に配置された絶縁ロッド4により酸化亜鉛素子ブロック1に押圧力を加えて酸化亜鉛素子1aの接触部に接触圧力を与え、機械的強度が確保される構成であり、酸化亜鉛素子ブロック1の積層高さを高くすると、使用時に加わる曲げ荷重に耐えず、積層状態が崩れてしまうので、積層高さが高くなる高電圧用には適用できない」という問題点を解決するために、「酸化亜鉛素子ブロック11を絶縁筒20内に収容したことにより、避雷器の使用中に加わる曲げ荷重に対して、酸化亜鉛素子ブロック11の積層状態が絶縁筒20により保持されるので、積層高さを高くしても、使用中の積層状態が崩れることがなくなり、高電圧用の例えば110kV級の避雷器でも一体で構成できる」ことが記載されている。
ここで、甲第2発明において、「絶縁筒20」の形状を板状とし「絶縁板」とすると、「酸化亜鉛素子ブロック11を絶縁筒20内に収容」できず、「酸化亜鉛素子ブロック11の積層状態が絶縁筒20により保持され」ないことは明らかである。
すると、甲第2発明において、「絶縁筒20」の形状を「絶縁板」とすることには阻害要因があるといえ、例えば引用文献1の「絶縁物である支持部材5」や甲第3号証の「FRPロッド3」のように、避雷器において、非直線抵抗体の一端に設けられた電極と他端に設けられた電極とを連結する絶縁材として「絶縁板」が周知であったとしても、甲第2発明の「絶縁筒20」に適用する動機がない。
また、他の証拠を検討しても、甲第2発明の「絶縁筒20」を「絶縁板」とすることについて、記載や示唆はない。
よって、本件発明1は、甲第2発明及び甲第3号証並びに他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点1に係る発明特定事項を有するものであるから、本件発明1についての判断と同様に、本件発明2~4は、甲第2発明及び甲第3号証並びに他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した理由又は特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700853