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特許異議申立

2021-701184

感光性導電層転写用離型フィルム

審判番号
2021-701184
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-061019外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6892300
請求日
2021年12月14日
審決日
2023年03月16日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6892300号発明「感光性導電層転写用離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6892300号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第6892300号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6892300号の請求項1~7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成29年3月27日に出願されたものであって、令和3年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月23日に特許掲載公報が発行された。

本件特許についての特許異議申立人笠原佳代子(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和3年12月14日 特許異議の申立て

令和4年 4月 6日付け 取消理由通知

同年 5月20日 特許権者より意見書、訂正請求書の提出

同年 7月12日 申立人より意見書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和4年5月20日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(3)のとおりである(下線は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「ヘイズ値が1.5%未満である」と記載されているのを、「ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である」に訂正する(請求項1の記載を直接ないし間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満である、請求項1に記載の感光性導電層転写用離型フィルム」と記載されているのを、「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であり、ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であることを特徴とする、感光性導電層転写用離型フィルム」に訂正する(請求項2の記載を直接ないし間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である、請求項1または2に記載の感光性導電層転写用離型フィルム」と記載されているのを、「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であり、ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満であることを特徴とする、感光性導電層転写用離型フィルム」に訂正する(請求項3の記載を直接ないし間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。

(4)一群の請求項

本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1

訂正事項1は、訂正前の請求項1において、離型フィルムに係る表面粗さの特定がなかったのを、「前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である」との事項の限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、上記事項は、訂正前の請求項2及び3に記載されているから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3

訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1または2の記載を引用しないものとし、かつ、訂正前の請求項1の記載を引用する場合の請求項3を独立形式請求項に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括

以上のとおり、訂正事項1~3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項におけて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。

「【請求項1】
基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であり、ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満であることを特徴とする、感光性導電層転写用離型フィルム。
【請求項2】
基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であり、ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であることを特徴とする感光性導電層転写用離型フィルム。
続きを表示(全14行)
【請求項3】
基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であり、ヘイズ値が1.5%未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満であることを特徴とする感光性導電層転写用離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層が非シリコーン系化合物を主成分として含有する、請求項1~3のいずれかに記載の感光性導電層転写用離型フィルム。
【請求項5】
前記非シリコーン系化合物が、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物または長鎖アルキル基含有アルキド樹脂からなる長鎖アルキル化合物である、請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記長鎖アルキル化合物が長鎖アルキル基含有アルキド樹脂である、請求項5に記載の感光性導電層転写用離型フィルム。
【請求項7】
前記離型層表面の粘着テープ剥離力が4N/50mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の感光性導電層転写用離型フィルム。」

第4 取消理由の概要

令和4年4月6日付けで当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(進歩性)本件特許の請求項1、4~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

・引用文献一覧

引用文献1:特開2013-77435号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2015-134476号公報(同甲第2号証)
引用文献3:特開2011-230289号公報(同甲第3号証)
引用文献4:特開2016-151748号公報(同甲第5号証の1;周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2005-292289号公報(同甲第5号証の2;周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2007-108370号公報(同甲第5号証の3;周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2004-12610号公報(同甲第5号証の4;周知技術を示す文献)
引用文献8:特開2006-201546号公報(同甲第5号証の5;周知技術を示す文献)

第5 当審の判断

1 引用文献の記載事項等

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(1)引用文献1

ア 記載事項

引用文献1には次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。

・「【請求項1】

剥離性表面を有する剥離性基材の前記剥離性表面上に、転写層が形成された転写シートであって、

前記転写層が、ポリチオフェン系導電剤または銀ナノワイヤ系導電剤を有し、前記剥離性表面に接するように位置する導電層と、該導電層上に形成された中間層と、該中間層上に形成された接着層とからなり、

前記中間層は、前記接着層よりも、破断伸度が小さく、破断強度が大きいことを特徴とする導電性転写シート。」

・「【0011】

本発明の導電性転写シートは、導電層を含む転写層を有し、被転写体上に転写層を転写して、被転写体の表面に導電層を設けるためのものである。

図1は、本発明の導電性転写シート1の一例を示す断面図であって、この例の導電性転写シート1は、剥離層17を表面に備えたシート状の剥離性基材18の剥離層17上に、転写層15が形成された構成を有する。この例の転写層15は3層構成であり、剥離層17に接するように位置する導電層12と、導電層12上に形成された中間層13と、中間層13上に形成された接着層14とを備えている。

図2は、図1の導電性転写シート1を用いて、被転写体である絶縁層11上に、転写層15が形成された導電性シート(導電性積層体)10,10’を示すものであって、(a)絶縁層11の片面に転写層15が形成された導電性シート10の断面図、(b)絶縁層11の両面に転写層15が形成された導電性シート10’の断面図である。

・・・

【0012】

[1]導電性転写シート

<剥離性基材>

この例の導電性転写シート1は、シート状基材16上に剥離層17が設けられ、該剥離層17により剥離性表面が形成された剥離性基材18を有する。剥離性基材18は、導電性転写シート1において、剥離性表面上の転写層15を支持するものである。

なお、剥離性基材としては、この例のように、剥離層が設けられることによって、剥離性表面が形成されているものを用いることが好ましいが、剥離層を具備していなくても剥離性を備えている剥離性基材も使用できる。

[シート状基材]

シート状基材16の材質としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体(積層体)などを例示することができる。

・・・

【0014】

シート状基材16の厚みは、材質にもよるが、転写性などの点から、20~200μmが好ましい。

【0015】

[剥離層]

剥離層17は、シート状基材16からの転写層15の剥離性を適度な強度に安定させるために付与するものである。剥離層17は、転写時には、シート状基材16とともに転写層15から剥離する。

剥離層17の材質としては、転写シートなどにおいて従来用いられている公知の材質を選択できるが、表面平滑性に優れた剥離層17を容易に形成できるため、硬化型のウレタン(メタ)アクリレートを樹脂成分とする硬化型樹脂組成物から形成された硬化物が好ましい。硬化型のウレタン(メタ)アクリレートを樹脂成分とする硬化型樹脂組成物を硬化してなる剥離層17は、ウレタン構造によりシート状基材16と優れた密着性を発現する。また、その適度な柔軟性によって、良好な転写を実現することができる。

なお、本明細書では、アクリレートとメタクリレートの総称として「(メタ)アクリレート」と表現する。

また、硬化型樹脂組成物は、樹脂成分を少なくとも含有し、通常、溶剤と各種添加物などをさらに含有する。

・・・

【0017】

ウレタン(メタ)アクリレートとは、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン結合を有するものであって、剥離層17に要求される物性によっては、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートに加えて、ポリオール化合物、さらには1分子あたり1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物を原料に加えて反応させたものでもよい。

・・・

【0025】

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、このようなウレタン(メタ)アクリレートのうち、特に、長鎖脂肪族基が(メタ)アクリル酸エステルのエステル基側鎖にウレタン結合を介して結合したウレタン(メタ)アクリレート(以下、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートという場合がある。)を樹脂成分の主成分とする組成物が好ましい。」

・「【0052】

形成された剥離層17は、安定した剥離性を得るために、ぬれ張力試験用混合溶液(和光純薬工業株式会社製)で測定した表面エネルギーが、30mN/m以下であることが好ましく、25.4mN/m以下であることがより好ましい。

また、剥離層17の厚さは、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい。0.1μm未満では、十分な剥離性が得られない場合があり、10μmを超えると経済的に不利になる。」

・「【0064】

なお、導電層12にパターニングが必要な場合には、光硬化性のある感光性バインダーを使用して、フォトマスクによりパターニングができるようにしてもよい。また、導電層12のパターニングを印刷で行う場合には、各種印刷方式に適したインキ粘度に調整するために、使用する樹脂成分の量や、粘度に大きく影響する分子量を適宜調整してもよい。

なお、パターニングは、導電性転写シート1の導電層12に対して行ってもよいし、転写後に得られる導電性シート(導電性積層体)10,10’の導電層12に対して行ってもよい。

さらに、剥離層17に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用する場合、剥離層17への活性エネルギー線照射をパターニングすることにより、剥離層17の剥離強度をパターン化するとともに、導電層12のパターニングも同時になされるようにしてもよい。」

・「【0121】

[実施例3]

(剥離性基材の作製)

シート状基材16として、厚さ50μmの易接着ポリプロピレンフィルム(商品名KM-122#50、王子特殊紙株式会社製)を用い、コロナ処理面のシート状基材16上に、長鎖脂肪族ペンダント構造を有する紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂系剥離剤(商品名TA37-227E、日立化成ポリマー株式会社製)をバー塗工し、80℃60秒加熱後、前述の高圧水銀ランプ紫外線照射機を用いて、ランプ高さ13cm、160w/cm、ベルトスピード15m/分、窒素雰囲気下にて紫外線照射を2回行い、厚さ1μmの剥離層17を硬化形成し、剥離性基材18を作製した。この剥離性基材18を用いた事以外は、実施例1と同様にして導電性転写シート1’を得た。

なお、得られた導電性転写シート1’の導電層12の表面抵抗は275Ω/sqであった。

続けて、得られた導電性転写シート1’より剥離性被覆シート19を剥がし、常温ロール転写法にて厚さ0.5mmの光学用ガラス板に転写した後、剥離性基材18の側から前述の紫外線照射装置にて、160w/cm、ベルトスピード8m/分、2回照射を実施して紫外線硬化型の剥離層17の剥離力を安定化した後、剥離性基材18を剥離し、透明導電性積層体を得た事以外は、実施例1と同様にして、導電層12のパターニングを実施し、パターニングされた転写導電層12を有する導電性積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。

【0122】

[実施例4]

(剥離性基材の作製)

剥離層17の形成時に実施する紫外線照射を1回に減らした事以外は、実施例3と同様にして導電性転写シート1’を得た。

なお、得られた導電性転写シート1’の導電層12の表面抵抗は279Ω/sqであった。

続けて、得られた導電性転写シート1’より剥離性被覆シート19を剥がし、常温ロール転写法にて厚さ0.5mmの光学用ガラス板に転写した後、剥離性基材18に前述の石英マスクを重ね合わせて、その表面にランプ高さ13cm、160w/cm、ベルトスピード8m/分で3回照射することにより、紫外線硬化型の剥離層17の剥離力を部分的に高めた後、剥離性基材18を剥離し、パターニングされた転写導電層12を有する導電性積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。」

イ 認定事項

(ア)段落【0011】と段落【0012】の剥離性基材の説明より、剥離性基材18は、剥離層17に接するように位置する導電層12を備え、剥離性基材18の剥離性表面上に転写層15が支持される導電性転写シート1に用いるものであることが認定できる。

(イ)段落【0112】のシート状基材の材質の説明や、段落【0114】のシート状基材の厚さの説明や、段落【0121】、【0122】の剥離層17を有する実施例3、4が、「シート状基材16として、厚さ50μmの易接着ポリプロピレンフィルム」を用いていることを参酌すると、引用文献1には、シート状基材16として、樹脂フィルムが開示されていることが認定できる。

ウ 引用文献1に記載された発明

上記ア、イより、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「被転写体である絶縁層11上に、転写層15を形成するために用いられ、シート状基材16上に紫外線硬化型の剥離層17が設けられ、該剥離層17により剥離性表面が形成された剥離性基材18であって、
該剥離性基材18は、剥離層17に接するように位置する導電層12を備え、剥離性基材18の剥離性表面上に転写層15が支持される導電性転写シート1に用いるものであり、
シート状基材16は、樹脂フィルムであり、
剥離層17は、硬化型のウレタン(メタ)アクリレートを樹脂成分とする硬化型樹脂組成物を硬化してなるものであり、
形成された剥離層17は、表面エネルギーが、30mN/m以下であることが好ましく、25.4mN/m以下であることがより好ましいものであり、
剥離層17の厚さは、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい、
剥離性基材18。」

(2)引用文献2

引用文献2には次の事項が記載されている。

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、離型フィルム、グリーンシートの製造方法、及び積層セラミック電子部品の製造方法に関し、詳しくは、巻き取り時の巻きズレ及び保管時のブロッキングの発生を防ぐことが可能な離型フィルム、グリーンシートの製造方法、及び積層セラミック電子部品の製造方法に関する。」

・「【0039】

(離型層12)

離型層12としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限はない。離型層12の形成に用いられる離型層形成用材料としては、シリコーン系化合物、フッ素化合物、アクリル系化合物、アルキド系化合物、アルキル基の炭素数が12以上40以下の長鎖アルキル基含有化合物や、オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料などを用いることができる。また、これらの離型層形成用材料は、熱硬化型及び活性エネルギー線硬化型の材料であることが好ましい。活性エネルギー線としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線のような電磁波、電子線、イオンビーム、中性子線、及びα線のような粒子線が挙げられる。これらの中でも活性エネルギー線としては、離型層12を容易かつ確実に形成できる観点から、紫外線が好ましい。」

・「【0046】

アルキド系化合物としては、一般に架橋構造を有するアルキド系化合物が用いられる。架橋構造を有するアルキド化合物層の形成には、例えば、アルキド系化合物、架橋剤及び所望により硬化触媒を含む組成物を加熱硬化させる方法を用いることができる。また、アルキド系化合物は、アルキル基の炭素数が12以上40以下の長鎖アルキル変性アルキド化合物、シリコーン変性アルキド化合物などの変性物であってもよい。」

・「【0091】

図3に示すように、本実施の形態に係る積層セラミックコンデンサ6は、グリーンシート31と、このグリーンシート31上に設けられた内部電極32とが複数積層されてなる。この積層セラミックコンデンサ6においては、両端部に設けられた外部電極33によって複数の内部電極32が電気的に接続されている。また、複数の内部電極32は、グリーンシート31及び内部電極32内に設けられたビアホール(不図示)によって電気的に接続されている。」

・「【0109】

(表面粗さ)

表面粗さについては、実施例1-4で作製した離型フィルム及び比較例1、2で作製したキャリアフィルムを、各測定面が上になるようにガラス板に貼付された両面テープ上に固定し、JIS B0601-1994に準拠して表面粗さ測定機(SV3000S4(触針式)、ミツトヨ社製)にて算術平均粗さRa及び最大突起高さRpを測定した。表面粗さは、離型層の外表面、基材フィルムの第2面、アプリケーションフィルムの外表面における算術平均粗さRa及び最大突起高さRpを測定した。測定結果を下記表1、2に示す。」

・段落【0115】の【表1】は次のとおりである。

[図:0001398227000001.jpg]

(3)引用文献3

引用文献3には次の事項が記載されている。

・「【0043】

(剥離力)

本発明の離型フィルムは、離型層表面における剥離力が、好ましくは20g/25mm以上400g/25mm以下、より好ましくは30g/25mm以上150g/25mm以下、さらに好ましくは30g/25mm以上70g/25mm以下、特に好ましくは30g/25mm以上50g/25mm以下である。尚、ここで剥離力は、ポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製、品番:31B)を測定面に貼り付け、300mm/分の速度で180度の角度で剥離するときの剥離力を表す。剥離力が上記数値範囲にあると、金型との離型性に優れ、成形加工工程においてフィルムが金型へ貼り付いてしまうのを抑制することができ、成形部材の生産性をより向上することができる。また、離型フィルムを巻き取った際の耐ブロッキング性に優れる。それにより、離型層を有しない側の表面における離型剤成分等による汚染を抑制することができ、成形部材の外観をより良くすることができる。」

(4)引用文献4

引用文献4には次の事項が記載されている。

・「【0016】

<感光性導電フィルム>

図1は、本発明の感光性導電フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。また、図2は該実施形態の一部切欠き斜視図である。

感光性導電フィルム10は、支持フィルム1と、支持フィルム1上に設けられた導電性繊維を含有する導電膜2と、導電膜2上に設けられた感光性樹脂層3とを備える。なお、導電膜2及び感光性樹脂層3を纏めて感光層4という。

以下、感光性導電フィルム10を構成する支持フィルム1、導電性繊維を含有する導電膜2及び感光性樹脂層3のそれぞれについて詳細に説明する。

・・・

【0018】

支持フィルム1のヘーズ値は、感度及び解像度を良好にできる観点から、0.01~5.0%であることが好ましく、0.01~3.0%であることがより好ましく、0.01~2.0%であることがさらに好ましく、0.01~1.1%であることが特に好ましい。なお、ヘーズ値はJIS K 7105に準拠して測定することができ、例えば、NDH-5000(日本電色工業株式会社製、商品名)等の市販の濁度計で測定が可能である。」

(5)引用文献5

引用文献5には次の事項が記載されている。

・「【0048】

本発明のフォトレジストフィルムは、支持フィルム[II]と上記で得られた感光性樹脂組成物からなる層[I] を積層してなるもの、又は、支持フィルム[II]、上記で得られた感光性樹脂組成物からなる層[I]、保護フィルム[III]を積層してなるものである。

具体的には、支持フィルム[II ]に、上記感光性樹脂組成物を塗工し乾燥した後、必要に応じて、更にその上面に保護フィルム[III]を積層することにより得られる。

【0049】

上記支持フィルム[II]としては特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(P ET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられるが、中でもPETフィルム好ましい。

又、本発明においては、かかる支持フィルム[II]のヘイズが2.0%以下であるフィルムを用いることがパターン品位の点で好ましく、特には1.5%以下、更には1.0%以下のものが好ましい。かかるヘイズが2.0%を越えるフィルムではパターン側壁にぎざつきが起こり好ましくない。」

(6)引用文献6

引用文献6には次の事項が記載されている。

・「【0042】

(フォトレジストフィルムの製造)

上記で得られる感光性樹脂組成物をポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の支持体フィルム面に塗工し、乾燥してフォトレジストフィルムとする。

【0043】

この際用いられる支持体フィルムの膜厚は10μm~200μm、好ましくは10μm~50μmである。また、支持体フィルムは透明であることが好ましく、そのヘイズ値は通常、0.01~3.0%の範囲である。」

(7)引用文献7

引用文献7には次の事項が記載されている。

・「【0021】

本発明において、フィルムヘイズは後述のとおりJIS K 7105にしたがって測定した値をいうが、本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムヘイズが3%以下である必要があり、好ましくは2%以下である。フィルムヘイズが3%を超えると、ポリエステルフィルム全体の透明性が低下するため、本発明のポリエステルフィルムを支持体として用いたフォトレジストフィルムにおいて、フォトレジスト層の解像度や露光に対する感度の低下が生じる。フォトレジストは、使用する用途に応じ解像度が必要となるが、高解像度が要求される用途においてはより高透明なポリエステルフィルムが必要となり、そのためポリエステルフィルムのヘイズは特に好ましくは1%以下となる。」

・「【0034】

【実施例】

〔物性、特性の測定、評価方法〕

以下に、本発明の実施例の説明に用いた各物性、特性の測定、および評価方法について説明する。

・・・

(5)表面粗さ

JIS B 0601にしたがって中心線平均粗さRaを測定した。

・・・

【0035】

・・・

(10)剥離性

公知の感光性樹脂をB層側に(外層が両面ともA層の場合はA層側に)厚さ45μmに塗布したフイルムを銅貼り積層板にラミネート後、露光しフイルムを剥がす際の伸びによる剥離不良を確認し、次の基準で判定した。」

・「【0040】

以下、実施例によって本発明を説明する。なお、実施例にて使用した樹脂は以下の通りである。

・・・

(実施例1、2)

樹脂1と樹脂2、樹脂3、5を・・・押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を・・・押出機II(副層:A層)に供給し、B層/A層の2層構成により通常の口金から吐出後・・・冷却固化して未延伸フィルムを得た。・・・二軸延伸された厚み16μm(A層厚み2μm、B層厚み14μm)のポリエステルフィルムを得た。・・・

【0041】

・・・

(実施例3)

樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を・・・押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を・・・押出機II(副層:A層)に供給し、B層/A層の2層構成により通常の口金から吐出後、・・・冷却固化して未延伸フィルムを得た。・・・二軸延伸された厚さ16μ m(A層厚み2μm、B層厚み14μm)のポリエステルフィルムを得た。・・・」

・段落【0041】の【表1】は次のとおりである。

[図:0001398227000002.jpg]

(8)引用文献8

引用文献8には次の事項が記載されている。

・「【0025】

以下に本発明を具体的に説明する。

本発明は支持体フィルム、感光性樹脂組成物層および感光性樹脂組成物層に対する接着性が支持体フィルムに対してより小さい保護フィルムを構成成分として有するフォトレジストフィルムである。

・・・

【0027】

更に、上記支持体フィルムとして、フィルムのヘイズ値が4.0%以下、好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5 % 以下の範囲であるフィルムが、特に感度、解像度、密着性等の点で好ましい。該ヘイズ値が4.0%を越えると感度、解像度、密着性が劣り好ましくない。具体的には、帝人社製高透明フィルムGSシリーズ、ダイアホイルヘキスト社製Rシリーズ、デュポン社製マイラーDシリーズ、東レ社製Tシリーズ、FBシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム、日本合成化学工業社製ビニロンフィルム等が挙げられる。」

2 対比・判断

2-1 本件発明1について

(1)対比

本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 後者の「樹脂フィルム」である「シート状基材16」は、前者の「基材フィルム」に相当し、同様に、「剥離層17」は、「離型層」に相当する。

イ 後者の「導電層12」と、前者の「感光性導電層」とは、「導電層」である限りにおいて一致するといえる。また、後者の「剥離性基材18」について、「剥離層17の厚さは、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい」こと、「剥離性基材18の剥離性表面上に転写層15が支持される導電性転写シート1に用いるものであ」ること、及び、上記アを踏まえると、後者の「剥離性基材18」と、前者の「感光性導電層転写用離型フィルム」とは、「導電層転写用離型フィルム」である限りにおいて一致するといえる。

ウ 上記ア、イを踏まえると、後者の

「シート状基材16上に紫外線硬化型の剥離層17が設けられ、該剥離層17により剥離性表面が形成された剥離性基材18であって、
該剥離性基材18は、剥離層17に接するように位置する導電層12を備え、剥離性基材18の剥離性表面上に転写層15が支持される導電性転写シート1に用いるものであ」る「剥離性基材18」

と、前者の

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルム」

とは、

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム」

である限りにおいて一致するといえる。

エ したがって、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。

〔一致点1〕

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム。」

〔相違点1-1〕

導電層について、本件発明1は「感光性導電層」であるのに対し、引用発明は「感光性」との特定がない点。

〔相違点1-2〕

離型層について、本件発明1は「表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であ」るのに対し、引用発明は「表面エネルギーが、30mN/m以下であることが好ましく、25.4mN/m以下であることがより好ましいものであ」る点。

〔相違点1-3〕

本件発明1は「ヘイズ値が1.5%未満であ」るのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

〔相違点1-4〕

本件発明1は「前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である」のに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(2)判断

事案に鑑み、上記相違点1-4について検討する。

引用文献2には、グリーンシートと、このグリーンシート上に設けられた内部電極とが複数積層されてなる積層セラミックコンデンサの製造に用いるグリーンシートの離型フィルムにおいて、JIS B 0601によるRa(線粗さ)について、離型層の外表面の表面粗さRaを3nm、2nmとすること、及び、基材の第2面の表面粗さRaを3nm、15nmとする事項が記載されている。

しかしながら、引用文献2に記載された事項は、積層セラミックコンデンサの製造に用いるものであり、感光性の導電層を被転写体である絶縁層に転写するのに用いるものではなく、引用発明の「感光性導電層転写用離型フィルム」とは異なる技術分野のものであり、引用発明に適用する動機付けがあるとはいえないし、そもそも、引用文献2に記載された事項はJIS B 0601によるRa(線粗さ)であって、表面粗さSRa(面粗さ)の値でもない。

また、引用文献7には、フォトレジストフィルムにおいて、JIS B 0601によるRa(線粗さ)について、B層/A層の2層構成の二軸延伸されたポリエステルフィルムのA層面、B層面の表面粗さRaを6.8nmとし、感光性樹脂をB層側に塗布する事項が記載されている(【表1】の実施例1~3参照。)。

しかしながら、引用文献7に記載された事項の「B層/A層の2層構成の二軸延伸されたポリエステルフィルム」が、本件発明の「基材フィルム」に相当するものといえ(本件明細書の段落【0067】等も参照。)、引用発明の「紫外線硬化型の剥離層17」(本件発明の「剥離層」に相当。)と引用文献7に記載された事項の「B層」とは異なるものであるので、引用発明に引用文献7に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。また、仮に、引用発明に対し引用文献7に記載された事項を適用するとしても、引用発明の「紫外線硬化型の剥離層17」、すなわち、本件発明の「剥離層」に相当する構成が失われることとなるため、上記相違点1-4に係る本件発明の事項を有するものには至らないし、そもそも、引用文献7に記載された事項はJIS B 0601によるRa(線粗さ)の値であって、表面粗さSRa(面粗さ)の値でもない。

そして、他に、上記相違点1-4に係る本件発明1の事項についての記載や示唆がある証拠(甲第4号証については、後述する2-5(2)参照。)もない。

したがって、引用発明において、上記相違点1-4に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2-2 本件発明2について

(1)対比

本件発明2と引用発明との対比については、上記2-1(1)の説示と同様である。

そうすると、本件発明2と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。

〔一致点2〕

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム。」

〔相違点2-1〕

導電層について、本件発明2は「感光性導電層」であるのに対し、引用発明は「感光性」との特定がない点。

〔相違点2-2〕

離型層について、本件発明2は「表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であ」るのに対し、引用発明は「表面エネルギーが、30mN/m以下であることが好ましく、25.4mN/m以下であることがより好ましいものであ」る点。

〔相違点2-3〕

本件発明2は「ヘイズ値が1.5%未満であ」るのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

〔相違点2-4〕

本件発明2は「前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満である」のに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(2)判断

事案に鑑み、相違点2-4について検討する。

引用文献2、7に記載された事項については、上記2-1(2)で説示したことと同様である。

したがって、引用発明において、上記相違点2-4に係る本件発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2-3 本件発明3について

(1)対比

本件発明3と引用発明との対比については、上記2-1(1)の説示と同様である。

そうすると、本件発明3と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。

〔一致点3〕

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム。」

〔相違点3-1〕

導電層について、本件発明3は「感光性導電層」であるのに対し、引用発明は「感光性」との特定がない点。

〔相違点3-2〕

離型層について、本件発明3は「表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であ」るのに対し、引用発明は「表面エネルギーが、30mN/m以下であることが好ましく、25.4mN/m以下であることがより好ましいものであ」る点。

〔相違点3-3〕

本件発明3は「ヘイズ値が1.5%未満であ」るのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

〔相違点3-4〕

本件発明3は「前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である」のに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(2)判断

事案に鑑み、相違点3-4について検討する。

引用文献2、7に記載された事項については、上記2-1(2)で説示したことと同様である。

したがって、引用発明において、上記相違点3-4に係る本件発明3の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2-4 本件発明4~7について

本件発明4~7は、本件発明1~3の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2-5 申立人の主張について

(1)引用文献1(甲第1号証)について

申立人は、本件発明1ないし3が有する「離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満」という事項ないし「離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満」という事項に対して、以下の旨の主張をする。

本件明細書に記載される実施例5は、段落【0134】に、基材フィルムとして、東レ(株)のポリエステルフィルム「ルミラーT60」を用い、「表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ15nm、ヘイズ値が1.2%」であることが記載され、甲第1号証にも同じ「ルミラーT60」を用いる実施例の記載があるから、甲第1号証に記載される発明も上記各事項を実質的に有している(特許異議申立書の21ページ末行~22ページ16行、23ページ1~18行)。

しかしながら、甲第1号証において、「ルミラーT60」を用いるものは、その段落【0113】~【0120】、【0123】に記載される実施例1、2、5であり、それらは、「ルミラーT60」をそのまま剥離性基材として使用するものであって(段落【0113】)、「シート状基材16」(本件発明の「基材フィルム」に相当。)上に「紫外線硬化型の剥離層17」(本件発明の「離型層」に相当。)を設けるものではない。

そして、甲第1号証において、「紫外線硬化型の剥離層17」を設けるものは、その段落【0121】~【0122】に記載される実施例3、4であるが、それらは、「シート状基材16」として、王子特殊紙株式会社の易接着ポリプロピレンフィルム「KMP-122#50」を用いるものであって(段落【0121】)、「ルミラーT60」を用いるものではない。

したがって、本件明細書の実施例5の記載を論拠とする申立人の上記主張は採用できない。

(2)引用文献1への甲第4号証記載事項の適用について

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申立人は、本件発明1及び2が有する「離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満」という事項が周知技術であるとして、上記2-1(2)及び2-2(2)で検討した引用文献2(甲第2号証)、引用文献7(甲第5号証の4)に加え、甲第4号証(特開2016-210128号公報)を挙げて、甲第1号証に記載された発明において、当該事項を有するものとすることは容易である旨主張する(特許異議申立書の22ページ17~21行)。

引用文献2、7については、上記2-1(2)及び2-2(2)で検討したとおりであるので、甲第4号証について以下検討する。

ア 甲第4号証の記載事項

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、固体高分子型燃料電池の構成部材である膜電極接合体を製造(製膜)する際に使用される離型フィルムなどに適した積層フィルム、この積層フィルムを含む積層体及びその製造方法並びに前記積層フィルムを用いて前記膜電極接合体を製造する方法に関する。

【背景技術】

【0002】

固体高分子型燃料電池や水素供給装置では、白金触媒や白金担持カーボンが触媒として使用されるが、平滑な触媒層を得るために、離型フィルム上に触媒インクを塗工、乾燥し、転写する方法が知られている。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0014】

従って、本発明の目的は、コーティングにより離型層の表面に均一な厚みを有するイオン交換層を形成でき、かつ前記イオン交換層と離型層との離型性も向上できる積層フィルム、この積層フィルムを含む積層体及びその製造方法並びに前記積層フィルムを用いて前記膜電極接合体を製造する方法を提供することにある。」

・「【0052】

離型層は、表面において、JIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)は1μm以下(例えば1nm~1μm)であり、例えば1~800nm、好ましくは1~500nm、さらに好ましくは1~300nm(特に1~200nm)程度である。Raが大きすぎると、イオン交換層に対する適度な密着性や基材層に対する密着性が低下する虞がある。」

・「【0128】

[離型フィルム(積層フィルム)の製造例1]

1重量部のポリ(4-メチル-1-ペンテン)を、メチルシクロヘキサン99重量部に溶解し、溶液Xを調製した。次に、2-ノルボルネン・エチレン共重合体を、メチルシクロヘキサンに溶解し、溶液Yを調製した。溶液Xと溶液Yとを混合し、全固形分濃度3重量%、2-ノルボルネン・エチレン共重合体/ポリ(4-メチル-1-ペンテン)=97/3(重量比)の塗工液Zを調製した。基材層として、易接着性PETフィルムAを用い、塗工液Zをメイヤーバーコーティング法により基材層の片面にコーティングし、100℃の温度で1分間乾燥して離型層(乾燥厚み0.3μm)を形成し、離型フィルム1を得た。」

・「【0136】

実施例1

白金ブラックと水とを混合後、イオン交換樹脂溶液を触媒量に対するイオン交換樹脂量が15重量%となるように添加し、固形分濃度30重量%となるように1-プロパノールを加えて、ボールミルで混合し、電極膜(電極用触媒層)用のインクとした。離型フィルム1の離型層の上に、ドクターブレードを用いて電極膜の塗布液を塗工後、120℃で10分乾燥し、Pt目付量が0.5mg/cm2の電極膜を含む積層体を得た。

【0137】

実施例2~5及び比較例1~4 離型フィルム1の代わりに、それぞれ離型フィルム2~7、A及びBを用いる以外は実施例1と同様にして積層体を得た。」

・段落【0139】の【表1】は次のとおりである。

[図:0001398227000003.jpg]

イ 判断

甲第4号証には、固体高分子型燃料電池の構成部材である膜電極接合体を製造(製膜)する際に使用される離型フィルムなどに適した積層フィルムにおいて、離型層表面の、JIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)を、10nmとする事項(【表1】の実施例1参照。)が記載されている。

しかしながら、甲第4号証に記載された事項は、膜電極接合体の製造(製膜)に用いるものであり、感光性の導電層を被転写体である絶縁層に転写するのに用いるものではなく、引用発明の「感光性導電層転写用離型フィルム」とは異なる技術分野のものであって、引用発明に適用する動機付けがあるとはいえないし、そもそも、甲第4号証に記載された事項は、JIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)であって、表面粗さSRa(面粗さ)の値でもない。

したがって、甲第4号証を検討したとしても、引用発明において、上記相違点1-4または2-4に係る本件発明1または2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

2-6 小括

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。

第6 取消理由通知で採用しなかった理由について

1 甲第4号証を主引用例とする申立理由

申立人は、請求項1~7に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨、申立てている。

2 上記申立理由についての判断

(1)甲第4号証に記載された発明

背景技術を示す段落【0002】の記載より、「積層フィルム」は「転写用」のものであるといえるから、甲第4号証には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認める。

「固体高分子型燃料電池の構成部材である膜電極接合体を製造(製膜)する際に使用される離型フィルムなどに適し、離型層の上に電極膜であるイオン交換層を積層するための転写用積層フィルムであって、積層フィルムは、環状オレフィン系樹脂(A)及びポリメチルペンテン系樹脂(B)を含む樹脂組成物で形成された離型層を含み、積層フィルムは、さらに基材層を含んでおり、この基材層の少なくとも一方の面に、前記離型層が積層されており、離型層表面の、JIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)を、離型層の表面自由エネルギーは20mN/m以上であり、例えば20~40mN/m、好ましくは26~39mN/m、さらに好ましくは30~38mN/m(特に33~37mN/m)程度であり、ヘイズが30%以下であり、離型層のJIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)は1μm以下(例えば1nm~1μm)であり、例えば1~800nm、好ましくは1~500nm、さらに好ましくは1~300nm(特に1~200nm)程度である、積層フィルム。」

(2)対比

本件発明1と甲4発明とを対比する。

ア 後者の「基材層」は、フィルムであることが明らかであるから、前者の「基材フィルム」に相当し、同様に、「離型層」は、「離型層」に相当する。

イ 後者の「電極膜であるイオン交換層」は、導電性を有していることが明らかであるから、前者の「感光性導電層」とは、「導電層」である限りにおいて一致するといえる。

また、後者の「この基材層の少なくとも一方の面に、前記離型層が積層されて」いる「離型層の上に電極膜であるイオン交換層を積層するための転写用積層フィルム」と、前者の「感光性導電層転写用離型フィルム」とは、「導電層転写用離型フィルム」である限りにおいて一致するといえる。

ウ 上記ア、イを踏まえると、後者の

「固体高分子型燃料電池の構成部材である膜電極接合体を製造(製膜)する際に使用される離型フィルムなどに適し、離型層の上に電極膜であるイオン交換層を積層するための積層フィルムであって、積層フィルムは、環状オレフィン系樹脂(A)及びポリメチルペンテン系樹脂(B)を含む樹脂組成物で形成された離型層を含み、積層フィルムは、さらに基材層を含んでおり、この基材層の少なくとも一方の面に、前記離型層が積層されて」いる「積層フィルム」

と、前者の

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルム」

とは、

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム」

である限りにおいて一致するといえる。

エ したがって、本件発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。

〔一致点4〕

「基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に導電層を積層するために用いられる導電層転写用離型フィルム。」

〔相違点4-1〕

導電層について、本件発明1は「感光性導電層」であるのに対し、甲4発明は「電極膜であるイオン交換層」である点。

〔相違点4-2〕

離型層について、本件発明1は「表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であ」るのに対し、甲4発明は「表面自由エネルギーは20mN/m以上であり、例えば20~40mN/m、好ましくは26~39mN/m、さらに好ましくは30~38mN/m(特に33~37mN/m)程度であ」る点。

〔相違点4-3〕

本件発明1は「ヘイズ値が1.5%未満であ」るのに対し、甲4発明は「ヘイズが30%以下であ」る点。

〔相違点4-4〕

本件発明1は「前記離型層表面の表面粗さSRa(A)が20nm未満であり、前記離型フィルムの離型層を有する面とは反対面の表面粗さSRa(B)が20nm未満である」のに対し、甲4発明は「離型層のJIS B0610に準拠した算術平均粗さ(Ra)は1μm以下(例えば1nm~1μm)であり、例えば1~800nm、好ましくは1~500nm、さらに好ましくは1~300nm(特に1~200nm)程度である」点。

(3)判断

まず、上記相違点4-1について検討する。

甲4発明は、「固体高分子型燃料電池の構成部材である膜電極接合体を製造(製膜)する際に使用される離型フィルムなどに適し、離型層の上に電極膜であるイオン交換層を積層するための転写用積層フィルム」であって、感光性の導電層を被転写体である絶縁層に転写するのに用いるものではなく、本件発明1のような「感光性導電層転写用離型フィルム」とは異なる技術分野のものであり、甲第1号証に感光性の導電層を被転写体である絶縁層に転写するのに用いる技術が記載されていたとしても(上記第5の1(1)参照。)、甲4発明を、感光性の導電層を被転写体である絶縁層に転写するものに変更する動機付けがあるとはいえず、甲4発明において、上記相違点4-1の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たということはできない。

また、上記相違点4-4について検討しても、甲4発明では、JIS B0610に準拠した算術平均粗さRa(線粗さ)であって、表面粗さSRa(面粗さ)の値ではないため、具体的な値を比較することはできず、甲4発明において、上記相違点4-4の事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たということもできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、本件発明2~7も同様に、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括

以上のとおりであるから、申立人の上記申立理由には、理由がない。

第7 むすび

以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-701184

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決58件(東レフィルム加工株式会社、笠原 佳代子)
  • 2023-700478異議申立 / 2023-07-26 / 維持離型フィルム
    同じ当事者: 東レフィルム加工株式会社、笠原 佳代子
  • 2023-701250異議申立 / 2024-09-27 / 訂正認容ペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭
    同じ当事者: 笠原 佳代子
  • 2023-700808異議申立 / 2024-08-20 / 訂正認容塗膜剥離組成物及び塗膜の剥離方法
    同じ当事者: 笠原 佳代子
  • 2024-700149異議申立 / 2024-07-10 / 維持接着性樹脂シート、プリント配線板および、電子機器。
    同じ当事者: 笠原 佳代子
  • 2023-700159異議申立 / 2024-06-28 / 訂正認容積層不織布および衛生材料
    同じ当事者: 笠原 佳代子
同じ論点・分野の審決(審決分類)823件(121・B32B)
  • 2026-700281異議申立 / 2026-07-30 / 維持化粧シート
    共通の審決分類: 121・B32B
  • 2026-700119異議申立 / 2026-06-30 / 維持ガスバリア性フィルム
    共通の審決分類: 121・B32B
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    共通の審決分類: 121・B32B
  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B
  • 2026-700157異議申立 / 2026-06-23 / 維持リサイクルフィルム
    共通の審決分類: 121・B32B

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