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特許異議申立

2023-700478

離型フィルム

審判番号
2023-700478
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-115764外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7170975
請求日
2023年05月08日
審決日
2023年07月26日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7170975号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7170975号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7170975号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年6月19日に出願され、令和4年11月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年11月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年5月8日に特許異議申立人笠原佳代子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7170975号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、該離型層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)と架橋剤(b)とを含有し、架橋剤(b)の含有量が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)の含有量の4.0質量倍以上であり、炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)と架橋剤(b)との合計含有量が、離型層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であり、 離型層の表面粗さSRaが23~30nmであり、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用である、または 離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmであり、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用である ことを特徴とする、離型フィルム。 【請求項2】 架橋剤(b)の含有量が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)の含有量の7.0質量倍以上である、請求項1に記載の離型フィルム。 【請求項3】 架橋剤(b)がメラミン化合物である、請求項1または2に記載の離型フィルム。 【請求項4】 炭素数8以上のアルキル基を含む化合物(a)が、側鎖に炭素数8以上のアルキル基を有するポリビニル樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。 【請求項5】 離型層の表面自由エネルギーが20~35mJ/m2の範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の離型フィルム。」 第3 申立理由の概要 (1)申立人は、主たる証拠として以下の甲第1号証を提出し、請求項1~4に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許を取り消すべきものである旨主張する。 (2)また、主たる証拠として以下の甲第2号証を提出し、請求項1~4に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許を取り消すべきものである旨主張する。 (3)また、請求項1~5に係る特許は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許を取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2016-210066号公報 甲第2号証:特開2016-122031号公報 (以下、甲第1号証等を「甲1」等という。) 第4 当審の判断 1 甲1、2に記載された事項・発明 (1)甲1 ア 甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様)。 「【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面の表面粗度(Ra)が25~100nmであり、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、架橋剤および離型剤を含有し、架橋剤と離型剤以外のポリマーを不揮発成分の割合として30重量%以下含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」 「【0011】 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、離形コーティング後、巻き取った離型フィルムロールにゲージバンドが発生しないポリエステルフィルムを提供すること、さらには、光学部材用の製品として加工した後でも、光学特性・視認性に優れた離型フィルムを提供することであって、具体的には、例えば、150℃条件下での長時間の熱処理や、スパッタリング工程、高温高湿雰囲気下での耐久性試験など、過酷な条件下での工程を経た後であっても、オリゴマーに起因する異物生成が抑制できる離型フィルムを提供することにある。」 「【0032】 ポリエステルフィルム表層中の粒子含有量は、少なくとも片面の表面粗度(Ra)が25~100nmになるように配合する。Raは、さらに好ましくは35~80nmの範囲である。本発明において、表面粗度が25nmより低い場合は、離型層をコーティングした後、巻き取った際にゲージバンドが発生するようになり、表面粗度が100nmより高い場合は、フィルムの滑り性が高くなり、フィルムロールにした時に巻きずれたり、フィルムロールからフィルムを巻き出して使用する際、他工程におけるロール上で蛇行したりするようになり、走行安定性に欠けるようになるため、好ましくない。また、両面同じ表面粗度設計を行う際においては、離形層コーティング面側において凹凸が発生するようになり、粘着層と貼り合せ後、粘着層に凹凸が転写し、外観が悪化するため好ましくない。 【0033】 また、片面のみ所定の表面粗度設計とする場合の反対面側の表面粗度については、表面粗度(Ra)が8~100nmの範囲になるように粒子を配合することが好ましい。さらに好ましくは、10~25nmの範囲である。表面粗度が100nmより高い場合は、フィルムロールにした時、輸送時や使用時に巻きずれることがあり、フィルムロールからフィルムを巻き出して使用する際、走行安定性などフィルム取り扱い性の面から好ましくない場合があり、表面粗度が8nmより低い場合は、フィルム製膜時や取り扱い時に、フィルム面に傷が入りやすくなる傾向がある。」 「【0049】 本発明の塗布層は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、架橋剤および離型剤と、架橋剤と離型剤以外のポリマーを不揮発成分の割合として30重量%以下含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。なお、塗布液中には、その他の成分を含有していても構わない。 【0050】 不揮発成分の割合として架橋剤と離型剤以外のポリマーを30重量%以下含有する塗布液ということは、塗布液の大部分は他の材料が占めることになるが、架橋剤がメインで構成されることが好ましい。大部分を架橋剤が占めることにより、高密度に架橋された塗布層が形成され、エステル環状三量体の析出を効率的に抑制することが可能になる。 【0051】 架橋剤とは、種々公知の架橋剤が使用でき、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも特に、塗布層上に機能層を設ける用途に用いる場合、耐久密着性が向上するという観点から、オキサゾリン化合物が好適に用いられる。また、加熱によるフィルム表面へのエステル環状三量体の析出防止や、塗布層の耐久性や塗布性向上という観点からはメラミン化合物が好適に用いられる。」 「【0069】 塗布層の形成に使用する離型剤は、フィルムの離型性を向上させるために用いるもので、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能であり、例えば、長鎖アルキル化合物、フッ素化合物、ワックス、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの中でも少量でも効果的に撥水性が得られるという観点から長鎖アルキル化合物やフッ素化合物やが(当審注:「が」の誤記である。)好ましく、特に塗布層の外観という点から長鎖アルキル化合物がより好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。 【0070】 長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、少ない含有量で効果的に適度な撥水性を得ることが出来るという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。」 「【0097】 本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤の割合は、好ましくは70~99.99重量%の範囲、より好ましくは80~99.5重量%の範囲、さらに好ましくは90~99重量%の範囲である。割合が上記範囲以下の場合、加熱後のエステル環状三量体の析出を効果的に抑えることができない場合や密着性が悪化する場合がある。 【0098】 本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、離型剤の割合は、好ましくは0.01~30重量%の範囲、より好ましくは0.5~15重量%の範囲、さらに好ましくは1~5重量%の範囲である。割合が上記範囲以下の場合、撥水性が十分でない場合がある。また、割合が上記範囲以上の場合、各種上塗り剤との密着性が十分でない場合がある。 【0099】 本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤と離型剤以外のポリマーの割合は、通常30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、特に好ましくは含有しないことである。割合が上記範囲以上の場合、加熱後のエステル環状三量体の析出を効果的に抑えることができない場合がある。」 「【0122】 (12)表面粗さ(Ra) 三次元非接触・表面形状計測システム Micromap(MM537N-M100 株式会社菱化システム製)を用いて測定した。光学系はミロー型二光束干渉対物レンズ(20倍)とズームレンズ(BodyTube 1.0倍)、波長フィルターは530Whiteを使用し、2/3インチCCDカメラで受光した。測定はwaveモードで行い、433μmx323μmの観測領域についてフィルム表面の粗さ(Ra)を計測した。任意に10点測定し、平均値を求めた。 【0123】 (13)離型フィルムロール外観評価 マスターロールから、1000mm幅で1000mの巻長さにスリットした製品ロールについて、両面、所定の表面粗さの場合はどちから(当審注:「どちらか」の誤記である。)片面側に、片面、所定の表面粗さの場合はその反対面側に離型コーティングを行い、片面に離型コーティングを行った離型フィルムロールを作製した。得られた離型フィルムロールの外観検査を蛍光灯下で行い、ゲージバンドの発生について総合的に評価し、次の判定を行った。 A:ゲージバンドの発生が見られない B:ゲージバンドの発生が僅かに見られる C:ゲージバンドの発生が見られる」 「【0130】 また、塗布液に含有する組成物としては以下を用いた。 (A1):ヘキサメトキシメチロールメラミン (A2):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製) オキサゾリン基量7.7mmol/g。 (A3):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製) オキサゾリン基量4.5mmol/g。 (A4):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル 【0131】 (A5):下記方法で合成したブロックポリイソシアネート ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n-ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート」 「【0143】 実施例9: 実施例6において、ポリエステル(B)、(E)を重量比で80/20でブレンドしたものをC層の原料とした以外は、実施例6と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表3に示す。」 「【0145】 実施例11: ポリエステル(B)、(E)を重量比で80/20でブレンドしたものを表層、ポリエステル(A)のみのものを中間層の原料として、二台の押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、2種3層(A/B/A)で厚み構成比がA/B/A=7.5/110/7.5になるよう共押出し、静電密着法を用いて表面温度45℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら、ロール周速差を利用して縦方向に3.1倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す水系の塗布液1を塗布し、テンター延伸機に導き、100℃で横方向に4.3倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、横方向に8%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.04μmの塗布層を有するフィルム厚みが125μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。 得られたポリエステルフィルムの特性を表3に示す。」 「【0150】 【表1】 [図:0001400523000001.jpg] 【0151】 【表2】 [図:0001400523000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 以上より、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布層がオクタデシルイソシアネートを含む化合物(B1)と架橋剤とを含有し、ポリエステルフィルムの少なくとも片面の表面粗度(Ra)が25~100nmである、離型フィルム。」 (2)甲2 ア 甲2には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 ポリエステルフィルムの片面に、長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有し、当該塗布層表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.10~0.50μmであることを特徴とするドライフィルムレジスト用保護フィルム。」 「【0013】 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、ドライフィルムレジスト用保護フィルムとして、保護フィルムの離型性、保護フィルムの帯電防止性、感光性樹脂層の銅箔への密着性、感光性樹脂層表面の凹凸感良好である保護フィルム、および当該保護フィルムが積層された感光性樹脂積層体を提供することにある。」 「【0022】 また、用いる粒子の平均粒径は、通常1~10μm、好ましくは2~7μmの範囲である。平均粒径が1μm未満の場合には、フィルム表面に十分な凹凸が形成されず、所望の剥離性が得られないことがある。一方、10μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において塗布層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。」 「【0034】 本発明における塗布層は、保護フィルムとして好適な離型性能を向上させ、かつ帯電防止性を付与するために設けられるものである。 【0035】 本発明のフィルムの塗布層の形成に使用する長鎖アルキル基含有化合物は、フィルムの離型性を向上させるために用いる。 【0036】 長鎖アルキル化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。」 「【0063】 本発明のフィルムの塗布層の形成には、アクリル樹脂やポリビニルアルコール以外の各種のポリマーや架橋剤を併用することも可能である。」 「【0078】 かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。 【0079】 架橋剤の具体例としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも架橋密度の高さの観点において、特にメラミン化合物を使用することが好ましい。また、これらの架橋剤は2種以上を併用してもよい。」 「【0087】 本発明における保護フィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、離型剤は、通常8~70重量%の範囲、好ましくは10~60重量%の範囲、さらに好ましくは15~50重量%の範囲である。8重量%より少ない場合は、十分な離型性能が得られない可能性があり、70重量%よりも多い場合は、他の成分が少ないため帯電防止性や透明性が得られない可能性がある。」 「【0090】 本発明における保護フィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤は、通常6~70重量%の範囲、好ましくは10~70重量%の範囲、さらに好ましくは20~70重量%の範囲である。6重量%より少ない場合は、保護剥離後の感光性樹脂層表面の粗度が高くなり十分な基板銅箔との密着性が十分に得られない可能性があり、70重量%よりも多い場合は、十分な離型性が得られない可能性がある。」 「【0120】 (3)保護フィルムの中心線平均粗さ(Ra) (株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE-3F)を用いて次のようにして求めた。即ち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。 Ra=(1/L)∫0L|f(x)|dx(株)」 「【0136】 塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。 (化合物例) ・離型剤(長鎖アルキル化合物):(IA) 4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。」 「【0145】 ・ポリビニルアルコール:(IIIC) ケン化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール ・ヘキサメトキシメチロールメラミン:(IV)」 「【0150】 実施例21: 実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、保護フィルムを得た。」 「【0158】 【表1】 [図:0001400523000003.jpg] 【0159】 【表2】 [図:0001400523000004.jpg] 」 イ 甲2に記載された発明 以上より、特に実施例21を参酌すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリエステルフィルム11の少なくとも一方の面に塗布層12を有する保護フィルムであって、塗布層12がオクタデシルイソシアネートを含む化合物(IA)とヘキサメトキシメチロールメラミン(IV)とを含有し、オクタデシルイソシアネートを含む化合物(IA)が10重量%であり、ヘキサメトキシメチロールメラミン(IV)が60重量%であり、保護フィルムの中心線平均粗さ(Ra)が310nmである保護フィルム。」 2 本件発明1について (1)甲1を主引用例とした場合 ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「塗布層」は、段落【0069】に、フィルムの離型性を向上させるために離型剤を用いるものであることが記載されているから、本件発明1における「離型層」に相当する。 また、甲1発明における「オクタデシルイソシアネートを含む化合物(B1)」、「架橋剤」、「離型フィルム」は、それぞれ、本件発明1における「炭素数8以上のアルキル基を含む化合物」、「架橋剤」、「離型フィルム」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、該離型層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物と架橋剤とを含有する、離型フィルム。」 [相違点1] 架橋剤の含有量について、本件発明1は、「炭素数8以上のアルキル基を含む化合物の含有量の4.0質量倍以上であ」るのに対し、甲1発明は、炭素数8以上のアルキル基を含む化合物の含有量の4.0質量倍以上であるかどうかは特定されていない点。 [相違点2] 炭素数8以上のアルキル基を含む化合物と架橋剤との合計含有量について、本件発明1は、「離型層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上」であるのに対し、甲1発明は、離型層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であるかどうかは特定されていない点。 [相違点3] 本件発明1は、「離型層の表面粗さSRaが23~30nmであり、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用である、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmであり、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用である」のに対し、甲1発明は、離型層の表面粗さが特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、上記相違点3について検討する。 甲1には、「表面粗度(Ra)」について、申立人の主張のとおり、甲1の【表1】の実施例9に、C層の表面粗度(Ra)が27nm、実施例11には、C層の表面粗度(Ra)が28nmである点が記載されている。しかし、段落【0032】の「ポリエステルフィルム表層中の粒子含有量は、少なくとも片面の表面粗度(Ra)が25~100nmになるように配合する。Raは、さらに好ましくは35~80nmの範囲である。本発明において、表面粗度が25nmより低い場合は、離型層をコーティングした後、巻き取った際にゲージバンドが発生するようになり、表面粗度が100nmより高い場合は、フィルムの滑り性が高くなり、フィルムロールにした時に巻きずれたり、フィルムロールからフィルムを巻き出して使用する際、他工程におけるロール上で蛇行したりするようになり、走行安定性に欠けるようになるため、好ましくない。」との記載、及び、段落【0123】の「マスターロールから、1000mm幅で1000mの巻長さにスリットした製品ロールについて、両面、所定の表面粗さの場合はどちらか片面側に、片面、所定の表面粗さの場合はその反対面側に離型コーティングを行い、片面に離型コーティングを行った離型フィルムロールを作製した。」との記載を考慮すると、甲1の「表面粗度(Ra)」は、離型層をコーティングする前に測定されたポリエステルフィルム表層の値であることは自明であり、本件発明1の「離型層の表面粗さ」には相当しない。 よって、本件発明1は、甲1発明ではない。 また、甲1発明において、離型層の表面粗さSRaが23~30nmである、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用とすること、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmである、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用とする動機付けは存在しない。 また、甲2にも、離型層の表面粗さSRaが23~30nmであり、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用である、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmであり、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用である点は記載されていない。 よって、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 以上より、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 (2)甲2を主引用例とした場合 ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「ポリエステルフィルム11」、「オクタデシルイソシアネートを含む化合物(IA)」、「ヘキサメトキシメチロールメラミン(IV)」は、それぞれ、本件発明1における「基材フィルム」、「炭素数8以上のアルキル基を含む化合物」、「架橋剤」に相当する。 甲2発明における「塗布層」は、段落【0034】に、保護フィルムとして好適な離型性能を向上させるものであることが記載されているから、本件発明1における「離型層」に相当する。 甲2発明における「保護フィルム」は、離型性を有するものであるので、本件発明1における「離型フィルム」に相当する。 また、甲2発明における「オクタデシルイソシアネートを含む化合物(IA)が10重量%であり、ヘキサメトキシメチロールメラミン(IV)が60重量%であ」ることについて、「重量%」と「質量%」は実質的に同じ値を示す単位であるといえるから、「架橋剤の含有量が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物の含有量の6.0質量倍以上である」ことに相当する。なお、「質量倍」との単位は、本願の実施例を考慮して、長鎖アルキル化合物に対する架橋剤の質量の比率であると解した。 したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、該離型層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物と架橋剤とを含有し、架橋剤の含有量が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物の含有量の4.0質量倍以上である、離型フィルム。」 [相違点4] 炭素数8以上のアルキル基を含む化合物と架橋剤との合計含有量について、本件発明1は、「離型層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であ」るのに対し、甲2発明は、離型層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であるかどうかは特定されていない点。 [相違点5] 本件発明1は、「離型層の表面粗さSRaが23~30nmであり、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用である、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmであり、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用である」のに対し、甲2発明は、フィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)が310nmの保護フィルムである点。 イ 判断 事案に鑑みて、上記相違点5について検討する。 甲2発明における「保護フィルム」に用いることは、本件発明1の「保護フィルム用」に相当し、「凹凸表面転写層形成用」もしくは「コンプレッションモールド成型用」には相当しない。なお、甲2の段落【0013】の「感光性樹脂層表面の凹凸感良好である」との記載のみをもって、「凹凸表面転写層形成用」に相当するとまではいえない。 しかも、甲2発明の「中心線平均粗さ(Ra)」は、本件発明1の「表面粗さSRa」とは異なるものであり、同じ数値であっても必ずしも同じ粗さを示すことにはならない。 よって、本件発明1は、甲2発明ではない。 また、甲2発明において、離型層の表面粗さSRaが23~30nmである、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用とすること、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmである、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用とする動機付けが存在しない。 また、上記2(1)イで検討したとおり、甲1にも、離型層の表面粗さSRaが23~30nmであり、セラミックグリーンシートのセラミック層形成用キャリアフィルム用、感光性樹脂層形成用支持基材用、もしくは保護フィルム用である、または離型層の表面粗さSRaが100~3,000nmであり、凹凸表面転写層形成用、もしくはコンプレッションモールド成型用である点は記載されていない。 よって、本件発明1の上記相違点5に係る構成は、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 以上より、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 3 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2(1)(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~5は、甲1発明又は甲2発明ではなく、甲1発明又は甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件発明1~5は、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700478

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