特許異議申立
2021-701131
被覆めっき鋼板及び被覆めっき鋼板の製造方法
- 審判番号
- 2021-701131
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-166036
- 登録番号
- 6880299
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2023年01月20日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日鉄鋼板株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6880299号発明「被覆めっき鋼板及び被覆めっき鋼板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6880299号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6880299号の請求項1ないし5及び8ないし11に係る特許を維持する。
特許第6880299号の請求項6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6880299号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成30年3月16日を出願日とする特願2018-49948号(以下、「原出願」という。)の一部を令和2年9月30日に新たな出願としたものであって、令和3年5月7日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年12月2日に特許異議申立人 小松 一枝、前田 知子の連名(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされ、令和4年4月1日付で取消理由が通知され、同年6月6日に特許権者 日鉄鋼板株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求及び意見書の提出がされ、同年6月10日付で特許異議申立人に対して特許法第120条の5第5項の規定による訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年7月19日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年9月15日付で取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月25日に特許権者より訂正の請求(以下、この訂正の請求を「本件訂正」という。)及び意見書の提出がされたものである。
なお、令和4年6月6日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げされたものとみなされる。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許異議申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与える必要のない特別の事情があるものといえるので、特許異議申立人に対して改めて意見書の提出の機会は与えないものとする。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、」
とあるのを、
「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、」
に訂正し、かつ
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、」
とあるのを、
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下であり、
前記保護層は、濃色顔料を含有し、
前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、」
に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2ないし5及び8ないし11も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項6又は7に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるのを、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項8の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項9ないし11も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8いずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるのを、
「請求項1~5及び8のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項10及び11も同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板の製造方法であって、」
とあるのを、
「請求項1~5及び8~10のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板の製造方法であって、」
に訂正する。
(7) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし11について、請求項2ないし11は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、めっき層について「Mg含有Zn-Al系めっき層」と限定するとともに、保護層が濃色顔料を含有すること及びその含有割合を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の請求項6、7及び明細書の段落【0005】ないし【0007】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。
(2) 訂正事項2及び3について
訂正事項2に係る請求項6の訂正及び訂正事項3に係る請求項7の訂正は、請求項6及び7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項4ないし6について
訂正事項4ないし6に係る請求項8、9及び11の訂正はいずれも、請求項6及び7が削除されたことに伴い、引用先請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
訂正の対象となる請求項の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。
(4) 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1ないし11に対して、特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和4年11月25日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり、
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下であり、
前記保護層は、濃色顔料を含有し、
前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂の酸価は、15mgKOH/g以上である、
請求項1に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂は、最低造膜温度が50℃以下であり、熱軟化温度が200℃以下である、
請求項1又は2に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項4】
前記化成処理剤は、架橋剤を含有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項5】
前記架橋剤は、架橋性官能基を有する有機ケイ素化合物、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、及びブロックイソシアネート系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
請求項4に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
JIS K 5602で規定される780~2500nmでの日射反射率が、60%以上である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項9】
前記保護層は、屈折率が1.5以上である無機粒子を含有し、前記無機粒子は白色顔料を含有する、
請求項1~5及び8のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項10】
前記白色顔料は、酸化チタンを含む、
請求項9に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項11】
請求項1~5及び8~10のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板の製造方法であって、
前記化成処理剤を前記めっき層に塗布し、70℃以上120℃以下の温度で3秒以上10秒以下加熱することで前記保護層を形成する工程を含む、
被覆めっき鋼板の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年12月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次の1ないし11のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第8号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし6、9、10及び11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第9号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし6、9及び10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第10号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし6及び9ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-3(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由2-4(甲第5号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由2-5(甲第8号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
9 申立理由2-6(甲第9号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
10 申立理由2-7(甲第10号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
11 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は概ね次のとおりである。
(1) 申立理由3-1(めっき層の組成について)
本件特許発明1で規定されているめっき層の組成は、いわゆる「オープンクレーム」であり、非常に広範な組成範囲を包含するものである。例えば、本件特許発明1で規定されているめっき層の組成として、「Al:45質量%、Mg:1質量%、Zn:1質量%、無関係の元素:53質量%」のような、Mg含有Zn-Al系めっき鋼板とは明らかに異なるめっき組成をも含むものとなっている。本件特許明細書の【0012】に記載されているように、黒変が生じるメカニズムとして、「めっき層に含有されるZn又はAlの不定比の酸化物又は水酸化物が生成することが一因」であることを考慮すると、上記「Al:45質量%、Mg:1質量%、Zn:1質量%、無関係の元素:53質量%」のようなめっき層の組成を有する場合には、本願発明の課題である「耐食性及び耐黒変性の向上」の効果を奏することができないことは当業者にとって明らかである。
さらに、本件特許明細書の実施例の記載(【0073】)を参照すると、めっき層としては1つの組成しか開示されておらず、そのめっき層を構成する各成分は、Al:55質量%、Mg:2.0質量%、Zn:41.4質量%、Si:1.6質量%であり、その他の組成を採用した場合の効果は立証されていない。上述したように、本願明細書の記載から本件特許発明1~11においてめっき層の構成が非常に重要な技術事項であることを考慮すると、本件特許発明1に規定されためっき層の化学組成のうち、本件特許の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるのは、上記「Al:55質量%、Mg:2.0質量%、Zn:41.4質量%、Si:1.6質量%」及び、Al、Mg、Zn、及びSiがこれらの範囲の近傍にある場合に限られる。
加えて、「合金は、通常、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難であり、また、ある成分の含有量を増減したり、その他の成分を更に添加したりすると、その特性が大きく変わるものであって、合金の成分及び組成範囲が異なれば、同じ製造方法により製造したとしても、その特性は異なることが通常であると解される。」ことが技術常識である(平成24年(行ケ)第10151号等を参照。)。これに対して、本件特許明細書には、いわゆる「オープンクレーム」であり、且つ、Al、Mg及びZnの各元素について非常に広い組成範囲を包含する本件特許発明1について、サポート要件を満たすと認めるに足る記載はない。
(2) 申立理由3-2(保護層の構成について)
本件特許発明1~11は、耐食性の観点及び黒変するという問題を考慮すると、上述しためっき層の構成に加えて、保護層の構成についても非常に重要な技術事項であることがわかる。
この点について、本件特許発明1では、「保護層が、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成される」こと、及び、「ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上である」ことが規定されている。
しかしながら、本願明細書の実施例1~10(明細書【0082】の表1)を参照すると、全てのサンプルの保護層に「酸化チタン(無機粒子:石原産業株式会社製、品名タイペークCR-90、屈折率2.72、平均粒径0.25μmが含まれており、酸化チタンを含まない保護層を用いた場合も、所望の耐黒変性が得られるか否かは不明である。加えて、本願明細書の【0053】には、「保護層は、1.5以上の屈折率を有する無機粒子を含有することが好ましい。…保護層が、1.5以上の屈折率を有する無機粒子を含有することで、めっき層の表面に黒変が生じたとしても、光が保護層において拡散反射され、黒変が隠蔽されやすくなる。」との記載があり、本願明細書の【0059】には、「1.5以上の屈折率を有する無機粒子は、白色顔料を含むことが好ましい」との記載があり、本願明細書の【0061】には、「保護層は、酸化チタンを含有することが好ましい。保護層が酸化チタンを含有することで、保護層において光が特に拡散反射されやすくなるため、めっき層の表面の黒変が特に目立ちにくくなる。」との記載がある。つまり、本件特許発明の課題である表面外観の変化(黒変)の抑制のためには、保護層に酸化チタン等の白色顔料を含む1.5以上の屈折率を有する無機粒子を含有させることで、光を保護層において拡散反射させることが重要であることが明記されている。
そのため、本件特許発明1~9及び11に係る発明では、保護層に1.5以上の屈折率を有する無機粒子(特に酸化チタン)が含まれない態様までも、本願発明の課題である「耐黒変性」を解決できるとはいえない。
12 証拠方法
甲第1号証:特開2003-213396号公報
甲第2号証:特開2010-156020号公報
甲第3号証:ポリウレタン水分散体スーパーフレックスのカタログ、第一工業製薬株式会社、2016年、p.5-8,11-12、URL https://www.dks-web.co.jp/catalog_pdf/superflex.pdf
甲第3-1号証:甲第3号証及び甲第3-2号証のカタログの発行日の証明書類
甲第3-2号証:ポリウレタン水分散体スーパーフレックスのカタログ(2012年版)
甲第4号証:特開2010-285666号公報
甲第5号証:再公表2010-131756号公報
甲第6号証:SGL(登録商標)のホームページ、http://www.nisc-s.co.jp/sgl/
甲第6-1号証:SGL(登録商標)のカタログ
甲第7号証:特開2015-187313号公報
甲第8号証:再公表2013-027827号公報
甲第9号証:再公表2013-027837号公報
甲第10号証:特開2013-44025号公報
甲第11号証:特開2017-95809号公報
甲第12号証:特開2014-196401号公報
甲第13号証:特開2013-194295号公報
なお、証拠の表記は概ね特許異議申立書の記載にしたがった。
第5 令和4年9月15日付で特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要
請求項1ないし5及び8ないし11に係る特許に対して、当審が令和4年9月15日付で特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は次のとおりである。なお、取消理由(決定の予告)における取消理由は、申立理由3-1のうち請求項1ないし5及び8ないし11に対する理由を包含する。
・取消理由(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5及び8ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由の具体的理由は、次のとおりである。
本件特許発明1には、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり、
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
被服めっき鋼板。」
と、めっき層が、「Al、Zn、及びMgを含有」し、「Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」であることが特定されているものの、他に何を含むのかについて何ら特定されていない。
この点について、明細書の発明の詳細な説明の記載を見るに、発明が解決しようとする課題として、「Mg含有Zn-Al系めっき鋼板」についての問題が取りあげられ(【0005】、【0006】)つつ、「本発明の目的は、Al、Zn、及びMgを含有するめっき層を備え、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板及びその製造方法を提供すること」(【0007】)との課題が記載され、「めっき層」について、実質的にMg含有Zn-Al系めっき鋼板について含有される成分の言及があり(【0015】ないし【0028】)、実施例において具体的に検討しているのも、「鋼板上にめっき層(Al含有量55質量%、Mg含有量2.0質量%、Zn含有量41.4質量%、Si含有量1.6質量%)を有する、厚み0.5mm、幅900mmの長尺のめっき鋼板(日鉄住金鋼板株式会社製のSGL鋼板)」(【0073】)のみである。
以上の明細書の発明の詳細な説明の記載からは、Mg含有Zn-Al系めっき鋼板における課題について、特定の保護層を設けた際にはその効果を有する、すなわち、課題を解決するものと認識できるものの、めっき層が、「Al、Zn、及びMgを含有し」、「Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」であるものの、いわゆるMg含有Zn-Al系めっきではないもの(例えば、Znの割合が大変小さく、他の成分が主たる成分となり得る場合)にまで、その効果が発現するとまで当業者が認識することはできない(そもそも、合金系が異なれば、物理的にも化学的にも挙動が大きく異なることは、当該技術分野においてよく知られたことである。)。
してみれば、Mg含有Zn-Al系めっき層以外の系のめっき層をも含む本件特許発明1は、当業者がその課題を解決できると認識できる部分を超えるものであるから、本件特許発明1に関する特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本件特許発明2ないし5及び8ないし11に関する特許請求の範囲の記載も同様である。
第6 当審の判断
1 取消理由(サポート要件)についての判断
訂正により、「Mg含有Zn-Al系めっき層」であることが特定された。
そして、本件特許発明は、「Mg含有Zn-Al系めっき鋼板」におけるめっき層の表面に黒変が生じることや外観不良を改善することを課題とするもの(本件特許の明細書の段落【0005】ないし【0007】)、すなわち、Zn-Al系めっき鋼板のうち、Mgを含有するめっき鋼板における課題を広く取りあげ、その課題を解決しようとするものであり、めっき層におけるAl、Mgの含有割合とその効果(【0017】、【0018】)、保護層に含まれるウレタン樹脂を含有する化成処理剤とその効果(【0030】ないし【0041】)、これらの特定事項を満たす実施例の記載があることからみても、当業者であれば、めっき層におけるAl、Mgの含有割合や保護層に含まれるウレタン樹脂についての条件が特定された本件特許発明1ないし5及び8ないし11であれば、本件特許の上記課題を解決するものと認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし5及び8ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
なお、この点について、特許異議申立人は、令和4年7月19日に提出した意見書において、訂正後の請求項1ないし5及び8ないし11に係る発明は「オープンクレーム」であること、「合金は、通常、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難」であることが技術常識であることなどをあげ、訂正後の請求項1ないし5及び8ないし11は依然としてサポート要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、「Zn-Al系めっき」とは、当該技術分野において通常用いられている技術用語であって、Zn、Alを主たる成分として構成されためっきを指すことは明らかである。
そして、「Zn-Al系めっき」の点も含め、サポート要件については、上記のとおり判断されるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
よって、取消理由は、その理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1-1ないし1-3、申立理由2-1ないし2-7、申立理由3-2に関する点である。
以下、検討する。
(1) 申立理由1-1及び2-5(甲第8号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第8号証の記載事項等
(ア) 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、「表面処理溶融めっき鋼材」に関し、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理溶融めっき鋼材に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、加工部の耐白錆性、耐傷付き性、耐汚染性が良好であり、且つめっき層起因の外観不良もなく、良好な外観を有する表面処理溶融めっき鋼材を提供することにある。」
「【0195】
(1)溶融めっき鋼板(溶融めっき鋼材)
まず、溶融めっき鋼板の作製方法、及びそれにより得られた溶融めっき鋼板の評価試験方法、試験結果について説明する。
【0196】
[1.1.溶融めっき鋼板の作製方法]
鋼材1として厚み0.80mm、幅1000mmの長尺の鋼板1a(低炭素アルミニウムキルド鋼製)を用いた。この鋼板1aに対し、図1に示す溶融めっき処理装置を用いて、溶融めっき処理を施した。処理条件は表1~表3に示すとおりである。表1~表3に示される凝固開始温度は、Zn-Al二元系の浴の状態図の液相曲線から導き出した値であり、表1~表3に示す各溶融めっき浴組成におけるAlの含有量に対応する値である。なお、水準M68、M69では、鋼鈑1aに溶融めっき処理を施す前に、Niプレめっきを施すことで、水準M68では付着量(片面)0.5g/m2、水準M69では付着量(片面)2.0g/m2のプレめっき層26を形成した。水準M70では、Zn-10%Crプレめっき処理を施し、付着量(片面)1.0g/m2のプレめっき層26を形成した。他の実施例及び比較例ではプレめっき処理を施さなかった。
【0197】
鋼板1aの溶融めっき浴2への侵入時の温度は580℃とした。鋼板1aを溶融めっき浴2から引き出す際には空気雰囲気中に引き出し、ガスワイピングも空気雰囲気中で施した。但し、水準M71については、溶融めっき浴2より上流側の鋼板1aの搬送経路をシールボックス(中空の部材22)で囲むと共に、このシールボックスの内部に噴射ノズル9を配置し、このシールボックスの内部を窒素雰囲気とすると共に、中空の部材22の内側で窒素ガスによるガスワイピングをおこなった。
【0198】
冷却装置10では、鋼板1aを、溶融めっき金属(めっき層23)の表面温度が300℃になるまで冷却した。冷却時の冷却速度は45℃/secとした。但し、水準M76、M77については溶融めっき金属の表面温度が500℃以上である温度域での冷却速度を変更し、この過程における、水準M76での冷却速度を38℃/sec、水準M77での冷却速度を28℃/secとした。
【0199】
調質圧延時の圧下率は1%、形状矯正時の鋼板1aの伸び率は1%とした。
【0200】
【表1】
[図:0001397166000001.jpg]
」
「【0236】
(2.1.2.塗膜24及び表面処理溶融めっき鋼板)
塗膜24を形成するための塗料組成物は、表15に示す有機樹脂と、表16に示すシリカ粒子と、表17に示す潤滑剤と、表18に示すリン酸化合物と、表19に示す着色顔料と、表20に示す架橋剤とを、表21~29に示す配合量(固形分の質量%)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。前記(2.1.1)で形成した下地処理層27(下地処理層27がない場合は前記[1.1]で作製した溶融めっき鋼板)の上層に、上記塗料組成物を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板温度になるように加熱乾燥し、塗膜24を形成させることで表面処理溶融めっき鋼板を得た。前記表面処理溶融めっき鋼板の塗膜構成及び塗膜24の膜厚、到達板温度も表21~29に示す。」
「【0237】
【表15】
[図:0001397166000002.jpg]
【0238】
【表16】
[図:0001397166000003.jpg]
【0239】
【表17】
[図:0001397166000004.jpg]
【0240】
【表18】
[図:0001397166000005.jpg]
【0241】
【表19】
[図:0001397166000006.jpg]
【0242】
【表20】
[図:0001397166000007.jpg]
【0243】
【表21】
[図:0001397166000008.jpg]
」
(イ) 甲第8号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に、実施例16(鋼板に、めっき浴組成が【表1】のM5のめっき浴を用いてめっき層を形成し、さらに、有機樹脂としてA2(ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス170))、架橋剤としてF1(シランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン))、リン酸化合物を含む塗膜を設けたもの)に関する記載をまとめると、甲第8号証には次の発明が記載されていると認める。
「鋼板と、めっき層と、塗膜と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層はAl、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は54.9質量%であり、Mg含有量は2.1質量%であり、
前記塗膜は、有機樹脂としてポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス170)、架橋剤としてシランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、シリカ粒子として球状シリカ粒子、リン酸化合物としてリン酸水素2アンモニウムを含む塗料組成物から形成され、
塗膜の膜厚が1.5μmである、
被覆めっき鋼板。」(以下、「甲8発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明とを対比する。
甲8発明の「塗膜」は、本件特許発明1の「保護層」に相当する。
また、甲8発明の「塗膜」はその組成としてシランカップリング剤、リン酸化合物を含む塗料より形成されることからみて、本件特許発明1の「化成処理剤」に相当するものといえる。
さらに、甲8発明で用いられる有機樹脂である「ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス170)」のガラス転移温度は75℃(甲第3号証、あるいは本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0076】参照のこと)であるから、本件特許発明1の「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上である、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点8-1
保護層の付着量について、本件特許発明1は、「0.3g/m2以上5.0g/m2以下」と特定するのに対し、甲8発明には、そのような特定がない点。
・相違点8-2
保護層に関し、本件特許発明1は「濃色顔料を含有し、前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲8発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点8-2について検討する。
相違点8-2は実質的な相違点である。してみると、本件特許発明1は、甲8発明ではない。
また、甲第8号証や他の証拠の記載をみても、甲8発明において、塗膜中に「濃色顔料」を特定割合で含有させる動機付けはない。そして、本件特許発明1は、相違点8-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板を提供する(【0007】)との格別の効果を奏するものである。
よって、甲8発明において、相違点8-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明ではないし、甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし11について
本件特許発明2ないし5及び8ないし11はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件特許発明1は、甲8発明ではなく、また、甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5及び8ないし11についても同様に、甲8発明ではなく、また甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-1及び申立理由2-5についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-1及び申立理由2-5は、いずれもその理由がない。
(2) 申立理由1-2及び申立理由2-6(甲第9号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第9号証に記載された発明
甲第9号証の【表27】に実施例244として記載されているものをまとめると、甲第9号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「鋼板と、めっき層と、下地処理層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層はAl、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は54.9質量%であり、Mg含有量は2.1質量%であり、
前記下地処理層は、有機樹脂としてポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)、有機珪素化合物、シリカ粒子、燐酸化合物、タンニン酸を含有する組成物から形成され、
下地処理層の付着量が300mg/m2である、
被覆めっき鋼板。」(以下、「甲9実施例244発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲9実施例244発明とを対比する。
甲9実施例244発明のめっき層は、Alを54.9質量%、Mgを2.1質量%を含み、他の添加成分を除く残部がZnであるといえるから、本件特許発明1の「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」との特定事項を満たす。
また、甲9実施例244発明の「下地処理層」は、有機樹脂としてポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)、燐酸化合物、タンニン酸を含有するものであるから、本件特許発明1の「保護層」であって、「前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され」るとの特定事項を満たす。
さらに、甲9実施例244発明で用いられる有機樹脂である「ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)」のガラス転移温度は43℃(甲第3号証参照のこと)であるから、本件特許発明1の「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり」との特定事項を満たす。
そして、甲9実施例244発明の「下地処理層の付着量」は「300mg/m2」であるから、本件特許発明1の「0.3g/m2以上5.0g/m2以下」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり、
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点9-1
保護層に関し、本件特許発明1は「濃色顔料を含有し、前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲9実施例244発明にはそのような特定がない点。
上記相違点9-1について検討する。
相違点9-1は実質的な相違点である。してみると、本件特許発明1は、甲9実施例244発明ではない。
また、甲第9号証や他の証拠の記載をみても、甲9実施例244発明において、塗膜中に「濃色顔料」を特定割合で含有させる動機付けはない(そもそも、シリカ粒子を添加している)。そして、本件特許発明1は、相違点9-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板を提供する(【0007】)との格別の効果を奏するものである。
よって、甲9実施例244発明において、相違点9-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
してみると、本件特許発明1は甲9実施例244発明ではないし、甲9実施例244発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲第9号証の実施例245、実施例246を引用発明に認定した場合も、同様に判断される。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし11について
本件特許発明2ないし5及び8ないし11はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件特許発明1は、甲9実施例244発明ではなく、また、甲9実施例244発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5及び8ないし11についても同様に、甲9実施例244発明ではなく、また甲9実施例244発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲第9号証の実施例245、実施例246を引用発明に認定した場合も、同様に判断される。
ウ 申立理由1-2及び申立理由2-6についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-6は、いずれもその理由がない。
(3) 申立理由1-3及び申立理由2-7(甲第10号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第10号証に記載された発明
甲第10号証の【表14】の実施例10についての記載をまとめると、甲第10号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「鋼板と、めっき層と、塗膜と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層はAl、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は54.9質量%であり、Mg含有量は2.1質量%であり、
前記塗膜は、有機樹脂としてポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)、有機樹脂、リン酸化合物、バナジウム化合物を含む塗料組成物から形成され、
塗膜の付着量が0.7g/m2である、
被覆めっき鋼板。」(以下、「甲10実施例10発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲10実施例10発明とを対比する。
甲10実施例10発明の「めっき層」は、Alを54.9質量%、Mgを2.1質量%を含み、他の添加成分を除く残部がZnであるといえるから、本件特許発明1の「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」との特定事項を満たす。
また、甲10実施例10発明の「塗膜」は、有機樹脂としてポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)、リン酸化合物、バナジウム化合物を含有するものであるから、本件特許発明1の「保護層」であって、「前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され」るとの特定事項を満たす。
さらに、甲10実施例10発明で用いられる有機樹脂である「ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス620)」のガラス転移温度は43℃(甲第3号証参照のこと)であるから、本件特許発明1の「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり」との特定事項を満たす。
そして、甲10実施例10発明の「塗膜の付着量」は「0.7g/m2」であるから、本件特許発明1の「0.3g/m2以上5.0g/m2以下」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり、
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点10-1
保護層に関し、本件特許発明1は「濃色顔料を含有し、前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲10実施例10発明にはそのような特定がない点。
上記相違点10-1について検討する。
相違点10-1は実質的な相違点である。してみると、本件特許発明1は、甲10実施例10発明ではない。
また、甲第10号証や他の証拠の記載をみても、甲10実施例10発明において、塗膜中に「濃色顔料」を特定割合で含有させる動機付けはない。そして、本件特許発明1は、相違点10-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板を提供する(【0007】)との格別の効果を奏するものである。
よって、甲10実施例10発明において、相違点10-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
してみると、本件特許発明1は甲10実施例10発明ではないし、甲10実施例10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし11について
本件特許発明2ないし5及び8ないし11はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件特許発明1は、甲10実施例10発明ではなく、また、甲10実施例10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5及び8ないし10についても同様に、甲10実施例10発明ではなく、また甲10実施例10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-3及び申立理由2-7についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-3及び申立理由2-7は、いずれもその理由がない。
(4) 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の実施例29の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「めっき皮膜中のAl含有量が55mass%の溶融Al-Zn系めっき鋼板の表面に被覆層を有する表面処理鋼板であって、
前記めっき皮膜がMgを3mass%含有するものであり、
前記被覆層は有機樹脂としてウレタン樹脂を、無機成分としてリン酸、シランカップリング剤を含む皮膜であって、皮膜付着量が2000mg/m2である、
表面処理鋼板。」(以下、「甲1実施例29発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1実施例29発明とを対比する。
甲1実施例29発明の「めっき皮膜」は「Al含有量が55mass%の溶融Al-Zn系めっき」であって、「Mgを3mass%含有する」ものであることから、本件特許発明1の「めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、」との特定事項を満たす。
甲1実施例29発明の「被覆層」は、本件特許発明1の「保護層」に相当する。
また、甲1実施例29発明の「被覆層」は「有機樹脂としてウレタン樹脂を、無機成分としてリン酸、シランカップリング剤を含む皮膜であって、皮膜付着量が2000mg/m2である」ことからみて、本件特許発明1の「保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され」、「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下であり」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成され、
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
保護層に含まれるウレタン樹脂に関して、本件特許発明1は「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であり」と特定されるのに対し、甲1実施例29発明はそのような特定がない点。
・相違点1-2
保護層に関し、本件特許発明1は「濃色顔料を含有し、前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲1実施例29発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討する。
甲第1号証や他の証拠の記載をみても、甲1実施例29発明において、塗膜中に「濃色顔料」を特定割合で含有させる動機付けはない。そして、本件特許発明1は、相違点1-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板を提供する(【0007】)との格別の効果を奏するものである。
よって、甲1実施例29発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1実施例29発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし11について
本件特許発明2ないし5及び8ないし11はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件特許発明1は、甲1実施例29発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし5及び8ないし11についても同様に、甲1実施例29発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-1は、その理由がない。
(5) 申立理由2-2ないし申立理由2-4(甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証をそれぞれ主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証にそれぞれ記載された発明
(ア)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の請求項1の記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。
「亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)を固形分の割合で1~60質量%、弗素含有化合物(B)を固形分の割合で1~40質量%、アニオン系ウレタン樹脂又は/及びアニオン系エポキシ樹脂(C)を固形分の割合で30~90質量%、有機リン酸化合物(D)を固形分の割合で1~60質量%、バナジン酸化合物(E)を固形分の割合で0.1~30質量%、炭酸ジルコニウム化合物(F)を固形分の割合で0.1~20質量%、グリシジル基を有するシランカップリング剤(G)を固形分の割合で1~50質量%含有する表面処理組成物(H)を塗布し、乾燥させることにより形成された皮膜付着量が0.2~3.0g/m2の表面処理皮膜を有することを特徴とする表面処理鋼板。」(以下、「甲2発明」という。)
(イ) 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証の請求項1、8及び9の記載を中心に整理すると、甲第4号証には次の発明が記載されていると認める。
「50℃を超えるガラス転移温度及び40℃以下の最低造膜温度を有し、官能基にカルボキシル基を有する水分散性ウレタン樹脂(A)、アミノ化合物、アミノ樹脂、カルボジイミド化合物、カルボジイミド樹脂、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、シラン化合物、イソシアネート化合物及びイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーから選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する有機化合物(B)亜鉛、アルミニウム及びチタンから選ばれる少なくとも1種の金属錯化合物(C)を水に配合してなる金属材料用水系表面処理剤を金属材料表面の少なくとも片面に塗布し、乾燥皮膜重量として0.1~3g/m2の皮膜を形成させた表面被覆金属材料であって、
金属材料が亜鉛めっき鋼材、亜鉛合金めっき鋼材、アルミニウム材である、
表面被覆金属材料。」(以下、「甲4発明」という。)
(ウ) 甲第5号証に記載された発明
甲第5号証の実施例49及び50の記載を中心に整理すると、甲第5号証には次の発明が記載されていると認める。
「溶融亜鉛-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき鋼板上に、ポリウレタン樹脂、シリカ、架橋剤、リン酸化合物を含む塗料から形成される被膜が形成された、表面処理金属材。」(以下「甲5発明」という。)
イ 対比・判断
本件特許発明1と甲2発明、甲4発明、甲5発明をそれぞれ対比すると、本件特許発明1と甲2発明、甲4発明、甲5発明との間には、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A
めっき層について、本件特許発明1は「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」と特定されるのに対し、甲2発明、甲4発明、甲5発明ではいずれも、そのような特定がない点。
・相違点B
保護層に関し、本件特許発明1は、「濃色顔料を含有し、前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲2発明、甲4発明、甲5発明ではいずれも、そのような特定がない点。
事案に鑑み、まず、相違点Bについて検討するに、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証や他の証拠の記載をみても、甲2発明、甲4発明、甲5発明の各々において、塗膜中に「濃色顔料」を特定割合で含有させる動機付けはない。そして、本件特許発明1は、相違点Bに係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、特定組成のMg含有Zn-Al系めっき鋼板において、表面外観の変化が抑制された被覆めっき鋼板を提供する(【0007】)との格別の効果を奏するものである。
よって、甲2発明、甲4発明、甲5発明の各々において、相違点Bに係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明、甲4発明、甲5発明の各々に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許の請求項1の記載を引用して特定する本件特許発明2ないし5及び8ないし10及び本件特許発明11についても、同様に判断される。
ウ 申立理由2-2ないし申立理由2-4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-2ないし申立理由2-4は、いずれもその理由がない。
(6) 申立理由3-2(サポート要件)について
サポート要件については、上記1のとおり判断される。
なお、特許異議申立人は、本件特許発明の課題である表面外観の変化(黒変)の抑制のためには、保護層に酸化チタン等の白色顔料を含む1.5以上の屈折率を有する無機粒子を含有させることを特定することが必須である旨主張するが、本件特許発明は、「保護層が、ウレタン樹脂を含有する化成処理剤から形成されることで、保護層の水、水蒸気、酸素等の腐食因子に対する遮蔽性を向上させて、めっき層の黒変を抑制することができる」(【0030】)ものであることからみても、保護層に含まれる無機粒子に関わらず、定性的な効果発現がなされるものと当業者であれば認識できる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
したがって、申立理由3-2は、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5及び8ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5及び8ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項6及び7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項6及び7に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701131