特許異議申立
2021-701130
被覆めっき鋼板
- 審判番号
- 2021-701130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-166029
- 登録番号
- 6880297
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2022年09月26日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日鉄鋼板株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6880297号発明「被覆めっき鋼板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6880297号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第6880297号の請求項2ないし15に係る特許を維持する。
特許第6880297号の請求項1に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6880297号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成30年3月16日を出願日とする特願2018-49947号(以下、「原出願」という。)の一部を令和2年9月30日に新たな出願としたものであって、令和3年5月7日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年12月2日に特許異議申立人 小松 一枝、前田 知子の連名(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、令和4年3月10日付で取消理由が通知され、同年5月16日に特許権者 日鉄鋼板株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年6月10日付で特許異議申立人に対して特許法第120条の5第5項の規定による訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年7月19日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
請求項1に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるのを、独立形式に改め、さらに請求項1に基づく「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、」との記載を、「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、」と変更することにより、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、5、9及び10も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3における、
「前記無機粒子は、白色顔料を含む、
請求項1又は2に記載の被覆めっき鋼板。」
との記載を、
「前記無機粒子は、白色顔料を含む、
請求項2に記載の被覆めっき鋼板。」
と訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項5、9及び10も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
請求項3に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1及び3を引用するものを、独立形式に改め、さらに請求項1に基づく「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、」との記載を、「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、」と変更することにより、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、白色顔料を含み、
前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5、9及び10も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項6に
「前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1を引用するものを、独立形式に改め、さらに請求項1に基づく「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、」との記載を、「前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、」と変更することにより、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項6を直接又は間接的に引用する請求項7ないし10も同様に訂正する。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の被覆めっき銅板。」
とあるうち、請求項1、2と、請求項1、2及び3と、請求項1、3及び4と、請求項1、2、3及び5と、請求項1、3、4及び5とを引用するもの(訂正後の請求項2~5のいずれか1項を引用するものに相当)を、
「前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
請求項2~5のいずれか1項に記載の被覆めっき銅板。」
と記載し、新たに請求項11とする。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、
請求項6に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうちの、請求項1、2及び6と、請求項1、2、3及び6と、請求項1、3、4及び6と、請求項1、2、3、5及び6と、請求項1、3、4、5及び6とを引用するもの(訂正後の請求項11を引用するものに相当)を、
「前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、
請求項11に記載の被覆めっき鋼板。」
と記載し、新たな請求項12とする。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「JIS K 5602で規定される780~2500nmでの日射反射率が、60%以上である、
請求項6又は7に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうちの、請求項1、2及び6と、請求項1、2、3及び6と、請求項1、3、4及び6と、請求項1、2、3、5及び6と、請求項1、3、4、5及び6と、請求項1、2、6及び7と、請求項1、2、3、6及び7と、請求項1、3、4、6及び7と、請求項1、2、3、5、6及び7と、請求項1、3、4、5、6及び7とを引用するもの(訂正後の請求項11又は12を引用するものに相当)を、
「JIS K 5602で規定される780~2500nmでの日射反射率が、60%以上である、
請求項11又は12に記載の被覆めっき鋼板。」
と記載し、新たな請求項13とする。
(8) 訂正事項8
ア 訂正事項8-1
特許請求の範囲の請求項9に
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1、2と、請求項1、2及び3と、請求項1、3及び4と、請求項1、2、3及び5と、請求項1、3、4及び5と、請求項1及び6と、請求項1、6及び7と、請求項1、6及び8と、請求項1、6、7及び8とを引用するもの(訂正後の請求項2~8のいずれか1項を引用するものに相当)を、
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項2~8いずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
請求項9を引用する請求項10も同様に訂正する。
イ 訂正事項8-2
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1、2及び6と、請求項1、2、3及び6と、請求項1、3、4及び6と、請求項1、2、3、5及び6と、請求項1、3、4、5及び6と、請求項1、2、6及び7と、請求項1、2、3、6及び7と、請求項1、3、4、6及び7と、請求項1、2、3、5、6及び7と、請求項1、3、4、5、6及び7と、請求項1、2、6及び8と、請求項1、2、3、6及び8と、請求項1、3、4、6及び8と、請求項1、2、3、5、6及び8と、請求項1、3、4、5、6及び8と、請求項1、2、6、7及び8と、請求項1、2、3、6、7及び8と、請求項1、3、4、6、7及び8と、請求項1、2、3、5、6、7及び8と、請求項1、3、4、5、6、7及び8とを引用するもの(訂正後の請求項11~13のいずれか1項を引用するものに相当)を、
「前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項11~13のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
と記載し、新たな請求項14とする。
(9) 訂正事項9
ア 訂正事項9-1
特許請求の範囲の請求項10に
「透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1、2と、請求項1、2及び3と、請求項1、3及び4と、請求項1、2、3及び5と、請求項1、3、4及び5と、請求項1及び6と、請求項1、6及び7と、請求項1、6及び8と、請求項1、6、7及び8と、請求項1、2及び9と、請求項1、2、3及び9と、請求項1、3、4及び9と、請求項1、2、3、5及び9と、請求項1、3、4、5及び9と、請求項1、6及び9と、請求項1、6、7及び9と、請求項1、6、8及び9と、請求項1、6、7、8及び9とを引用するもの(訂正後の請求項2~9のいずれか1項を引用するものに相当)を、
「透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項2~9のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
に訂正する。
イ 訂正事項9-2
特許請求の範囲の請求項10に、
「透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
とあるうち、請求項1、2及び6と、請求項1、2、3及び6と、請求項1、3、4及び6と、請求項1、2、3、5及び6と、請求項1、3、4、5及び6と、請求項1、2、6及び7と、請求項1、2、3、6及び7と、請求項1、3、4、6及び7と、請求項1、2、3、5、6及び7と、請求項1、3、4、5、6及び7と、請求項1、2、6及び8と、請求項1、2、3、6及び8と、請求項1、3、4、6及び8と、請求項1、2、3、5、6及び8と、請求項1、3、4、5、6及び8と、請求項1、2、6、7及び8と、請求項1、2、3、6、7及び8と、請求項1、3、4、6、7及び8と、請求項1、2、3、5、6、7及び8と、請求項1、3、4、5、6、7及び8と、請求項1、2、6及び9と、請求項1、2、3、6及び9と、請求項1、3、4、6及び9と、請求項1、2、3、5、6及び9と、請求項1、3、4、5、6及び9と、請求項1、2、6、7及び9と、請求項1、2、3、6、7及び9と、請求項1、3、4、6、7及び9と、請求項1、2、3、5、6、7及び9と、請求項1、3、4、5、6、7及び9と、請求項1、2、6、8及び9と、請求項1、2、3、6、8及び9と、請求項1、3、4、6、8及び9と、請求項1、2、3、5、6、8及び9と、請求項1、3、4、5、6、8及び9と、請求項1、2、6、7、8及び9と、請求項1、2、3、6、7、8及び9と、請求項1、3、4、6、7、8及び9と、請求項1、2、3、5、6、7、8及び9と、請求項1、3、4、5、6、7、8及び9とを引用するもの(訂正後の請求項11~14のいずれか1項を引用するものに相当)を、
「透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項11~14のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
と訂正し、新たな請求項15とする。
(10) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし10について、請求項2ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし10に対応する訂正後の請求項1ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正事項1で請求項1が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式で記載するものであるとともに、めっき層について「Mg含有Zn-Al系めっき層」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、「Mg含有Zn-Al系めっき層」については、明細書の段落【0005】ないし【0007】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、請求項1が削除されたことに伴い、引用先請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項においても同様である。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項3を引用する記載であったところ、訂正前の請求項3が引用する請求項1又は2のうち、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を独立形式で書き改めるものであって、さらに、めっき層について「Mg含有Zn-Al系めっき層」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、「Mg含有Zn-Al系めっき層」については、明細書の段落【0005】ないし【0007】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
訂正事項5のうち、訂正事項5-1に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1ないし5を引用する記載であったところ、請求項1を引用する請求項6を独立形式で書き改めるものであって、さらに、めっき層について「Mg含有Zn-Al系めっき層」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、「Mg含有Zn-Al系めっき層」については、明細書の段落【0005】ないし【0007】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項6の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
イ 訂正事項5-2について
訂正事項5のうち訂正事項5-2に係る請求項11の訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1ないし5を引用する記載であったところ、訂正前の請求項1を引用する請求項2、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項5、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4を引用する請求項5、をそれぞれ引用する請求項6を独立形式で書き改め新たに請求項11とするものであって、さらに、めっき層について「Mg含有Zn-Al系めっき層」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、「Mg含有Zn-Al系めっき層」については、明細書の段落【0005】ないし【0007】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項11の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6に係る請求項12の訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用する記載であったところ、訂正事項5-2により、訂正前の請求項6の一部が新たに請求項11として書き改められたため、あわせて、訂正前の請求項7のうちの一部(訂正後の請求項6に従属する部分)を新たな請求項12とするものである。
そして、当該訂正事項6に係る請求項12の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項13の訂正は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項6又は7を引用する記載であったところ、訂正事項5-2及び訂正事項6により、訂正前の請求項6及び7の一部が新たな請求項(請求項11及び12)として書き改められたたため、あわせて、訂正前の請求項8のうちの一部(訂正後の請求項6及び7に従属する部分)を新たな請求項13とするものである。
そして、当該訂正事項7に係る請求項13の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項13の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(8) 訂正事項8について
ア 訂正事項8-1について
訂正事項8-1に係る請求項9の訂正は、請求項1が削除されたことに伴い、引用先請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項9の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項においても同様である。
イ 訂正事項8-2について
訂正事項8-2に係る請求項14の訂正は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1~8のいずれか1項を引用する記載であったところ、訂正事項5-2、訂正事項6及び訂正事項7により、訂正前の請求項6ないし8の一部が新たな請求項(請求項11ないし13)として書き改められたたため、あわせて、訂正前の請求項9のうちの一部(訂正後の請求項6ないし8に従属する部分)を新たな請求項14とするものである。
そして、当該訂正事項8-2に係る請求項14の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項14の記載を引用する請求項15についても同様である。
(9) 訂正事項9について
ア 訂正事項9-1について
訂正事項9-1に係る請求項10の訂正は、請求項1が削除されたことに伴い、引用先請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項10の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項においても同様である。
イ 訂正事項9-2について
訂正事項9-2に係る請求項15の訂正は、訂正前の請求項10が訂正前の請求項1~9のいずれか1項を引用する記載であったところ、訂正事項5-2、訂正事項6、訂正事項7及び訂正事項8-2により、訂正前の請求項6ないし9の一部が新たな請求項(請求項11ないし14)として書き改められたたため、あわせて、訂正前の請求項10のうちの一部(訂正後の請求項6ないし9に従属する部分)を新たな請求項15とするものである。
そして、当該訂正事項9-2に係る請求項15の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正が願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和4年5月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。
【請求項3】
前記無機粒子は、白色顔料を含む、
請求項2に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項4】
鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、白色顔料を含み、
前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。
【請求項5】
前記白色顔料は、酸化チタンを含む、
請求項3又は4に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項6】
鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
被覆めっき鋼板。
【請求項7】
前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、
請求項6に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項8】
JIS K 5602で規定される780~2500nmでの日射反射率が、60%以上である、
請求項6又は7に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項9】
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項2~8のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項10】
透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項2~9のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項11】
前記保護層は、更に濃色顔料を含む、
請求項2~5のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項12】
前記濃色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上3.0質量%以下で含有される、
請求項11に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項13】
JIS K 5602で規定される780~2500nmでの日射反射率が、60%以上である、
請求項11又は12に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項14】
前記保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である、
請求項11~13のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項15】
透かし角度110°でのL*値は、15以上30以下である、
請求項11~14のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年12月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次の1ないし8のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証を根拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし3、5、6及び9に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第2号証を根拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4及び9に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を根拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし3、5ないし7及び9に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証を根拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-2(甲第2号証を根拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-3(甲第3号証を根拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由2-4(甲第4号証を根拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は概ね次のとおりである。
(1) 申立理由3-1(めっき層の組成について)
本件特許発明1で規定されているめっき層の組成は、いわゆる「オープンクレーム」であり、非常に広範な組成範囲を包含するものである。例えば、本件特許発明1で規定されているめっき層の組成として、「Al:45質量%、Mg:1質量%、Zn:1質量%、無関係の元素:53質量%」のような、Mg含有Zn-Al系めっき鋼板とは明らかに異なるめっき組成をも含むものとなっている。本件特許明細書の【0012】に記載されているように、めっき層の表面に明度の不均一が生じるメカニズムはめっき層に含有されるMgにより溶融めっき金属の付着量が不均一になることや、それによってAl濃度が低下しやすいことことが一因であると考えられることを考慮すると、上記「Al:45質量%、Mg:1質量%、Zn:1質量%、無関係の元素:53質量%」のようなめっき層の組成を有する場合には、本願発明の課題である「耐食性及び外観性の向上」の効果を奏することができないことは当業者にとって明らかである。
さらに、本件特許明細書の実施例の記載(【0059】)を参照すると、めっき層としては1つの組成しか開示されておらず、そのめっき層を構成する各成分は、Al:55質量%、Mg:2.0質量%、Zn:43質量%であり、その他の組成を採用した場合の効果は立証されていない。上述したように、本願明細書の記載から本件特許発明1~10においてめっき層の構成が非常に重要な技術事項であることを考慮すると、本件特許発明1に規定されためっき層の化学組成のうち、本件特許の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるのは、上記「Al:55質量%、Mg:2.0質量%、Zn:43質量%」及びこれらの範囲の近傍にある場合に限られる。
加えて、「合金は、通常、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難であり、また、ある成分の含有量を増減したり、その他の成分を更に添加したりすると、その特性が大きく変わるものであって、合金の成分及び組成範囲が異なれば、同じ製造方法により製造したとしても、その特性は異なることが通常であると解される。」ことが技術常識である(平成24年(行ケ)第10151号等を参照。)。これに対して、本件特許明細書には、いわゆる「オープンクレーム」であり、且つ、Al、Mg及びZnの各元素について非常に広い組成範囲を包含する本件特許発明1について、サポート要件を満たすと認めるに足る記載はない。
(2) 申立理由3-2(保護層の構成について)
本件特許発明1~10は、耐食性の観点及び外観性の低下を抑制するという課題を考慮すると、上述しためっき層の構成に加えて、保護層の構成についても非常に重要な技術事項であることがわかる。
この点について、本件特許明細書の【0049】には、「保護層30の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下であることが好ましい。保護層30の付着量がこの範囲内であることで、保護層30が良好な耐食性を有するとともに、めっき層20の表面の明度の不均一性を十分に隠蔽することができる。」という記載があり、本件特許明細書の実施例では、全てのサンプルについて保護層の付着量が「2.0g/m2」となっている(【0068】の表1)。つまり、本件特許発明の課題である耐食性の観点及び外観性の低下抑制のためには、保護層の付着量を特定範囲にすることが重要であることが明記されているといえる。
しかしながら、本件特許発明1では、保護層の付着量についての規定がなく、本件特許発明9では、「保護層の付着量は、0.3g/m2以上5.0g/m2以下である」点が規定されている。しかしながら、本願明細書の[0049]の記載内容や実施例を考慮すると、あらゆる付着量の保護層について、所望の耐食性や外観性が得られないことは明らかである。加えて、本願請求項9に規定した付着量の範囲(0.3g/m2以上5.0g/m2以下)の全てにおいて、十分な外観性が得られるか否かも不明である。
そのため、本願請求項1~10に係る発明では、保護層の付着量の限定がない態様までも、本願発明の効果が得られるとは必ずしもいえない。
9 証拠方法
甲第1号証:特開2013-44024号公報
甲第2号証:特開2003-213396号公報
甲第3号証:再公表2013-027827号
甲第4号証:再公表2016-159300号
甲第5号証:特開2017-95809号公報
甲第6号証:特開2014-196401号公報
甲第7号証:特開2013-194295号公報
なお、証拠の表記は概ね特許異議申立書の記載にしたがった。
第5 令和4年3月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1ないし10に係る特許に対して、当審が令和4年3月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。(なお、特許異議申立理由のうち、申立理由1-3のうち請求項1、3及び5に係る部分、申立理由2-3のうち請求項1、3、5及び8ないし10に係る部分(従属項においては、取消理由の対象となる請求項に従属する部分)、申立理由3-1は、取消理由に包含される。)
取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由1の具体的理由は、次のとおりである。
本件特許発明1には、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有する、
被覆めっき鋼板。」
と、めっき層が、「Al、Zn、及びMgを含有」し、「Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」であることが特定されているものの、他に何を含むのかについては何ら特定されていない。
この点について、明細書の発明の詳細な説明をみるに、発明が解決しようとする課題として、「Mg含有Zn-Al系めっき鋼板」についての問題が取りあげられ(【0005】、【0006】)つつ、「本発明の目的は、Al、Zn、及びMgを含有するめっき層を備え、めっき層の表面の明度が不均一であっても、外観の悪化が抑制された被覆めっき鋼板を提供すること」(【0007】)との課題が記載され、「めっき層20」について、実質的にMg含有Zn-Al系めっき鋼板について含有される成分の言及があり(【0015】ないし【0028】)、実施例において具体的に検討しているのも、「鋼板上にめっき層(Al含有量55質量%、Mg含有量2質量%、Zn含有量43質量%)を有する、厚み0.5mm、幅900mmの長尺のめっき鋼板(日鉄住金鋼板株式会社製のSGL鋼板)」(【0059】)のみである。
以上の明細書の発明の詳細な説明の記載からは、Mg含有Zn-Al系めっき鋼板における課題について、特定の保護層を設けた際にはその効果を有する、すなわち、課題を解決するものと認識できるものの、めっき層が、「Al、Zn、及びMgを含有」し、「Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」であるものの、いわゆるMg含有Zn-Al系めっきではないもの(例えば、Znの割合が大変小さく、他の成分が主たる成分となり得る場合)にまで、その効果が発現するとまで当業者が認識することはできない。(そもそも、合金系が異なれば、物理的にも化学的にも挙動が大きく異なることは、当該技術分野においてよく知られたことである。)
してみれば、Mg含有Zn-Al系めっき層以外の系のめっき層をも含む本件特許発明1は、当業者がその課題を解決すると認識できる部分をこえるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本件特許発明2ないし10も同様である。
取消理由2(新規性)
本件特許の請求項1、3、5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1、3、5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 令和4年3月10日付けで特許権者に通知した取消理由についての判断
以下のとおり、令和4年3月10日付けで特許権者に通知した取消理由はいずれもその理由がないものと判断する。
(1) 取消理由1(サポート要件)について
訂正により、「Mg含有Zn-Al系めっき層」であることが特定された。
この点について、特許異議申立人は、令和4年7月19日に提出した意見書において、訂正後の請求項2ないし15に係る発明は「オープンクレーム」であること、「合金は、通常、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難」であることが技術常識であることなどをあげ、訂正後の請求項2ないし15は依然としてサポート要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、「Zn-Al系めっき」とは、当該技術分野において通常用いられている技術用語であって、Zn、Alを主たる成分として構成されためっきを指すことは明らかであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
そして、本件特許発明は、「Zn及びAlだけでなく、Mgを含有するめっき層を備えるMg含有Zn-Al系めっき鋼板」におけるめっき層表面の明度の不均一や外観不良を改善することを課題とするもの(本件特許の明細書の段落【0005】ないし【0008】)であり、いわゆるZn-Al系めっき鋼板のうち、Mgを含有するめっき鋼板における課題を広く取りあげ、その課題を解決しようとするものであり、めっき層におけるAl、Mgの含有割合とその効果(【0017】、【0018】)、保護層に含まれる無機粒子の屈折率及び平均粒径とその効果(【0037】ないし【0041】)、これらの特定事項を満たす実施例の記載があることからみても、当業者であれば、めっき層におけるAl、Mgの含有割合や保護層に含まれる無機粒子の屈折率及び平均粒径についての条件が特定された請求項2ないし15に係る発明であれば、本件特許の上記課題を解決するものと認識できる。
よって、取消理由1はその理由がない。
(2) 取消理由2及び3(甲第3号証を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「表面処理溶融めっき鋼材」に関して次の記載がある。
「【請求項1】
鋼材と、
この鋼材の表面上の被覆物と、
を備え、
前記被覆物が、前記鋼材から近い順に、めっき層と、前記めっき層の表面上の有機樹脂を含む塗膜とを有し、
前記めっき層が構成元素としてAl、Zn、Si及びMgを含み、且つAl含有量が25~75質量%、Mg含有量が0.1~10質量%であり、
前記めっき層が0.2~15体積%のSi-Mg相を含み、
前記Si-Mg相中のMgの、前記めっき層中のMg全量に対する質量比率が3%以上100%以下であり、
前記有機樹脂が、シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物、架橋性チタン化合物、エポキシ化合物、アミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種によって架橋されている
ことを特徴とする表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項2】
前記めっき層における表面より50nm深さの最外層内で、大きさが直径4mm、深さ50nmとなるいかなる領域においても、Mg含有量が0質量%以上60質量%未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項3】
前記めっき層が構成元素として更に0.02~1.0質量%のCrを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項4】
前記塗膜の膜厚が0.1~10μmである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項5】
前記塗膜が更にシリカ粒子を含有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項6】
前記有機樹脂をA、前記シリカ粒子をBとして、固形分質量比A/Bが2~20である
ことを特徴とする請求項5に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項7】
前記シリカ粒子が平均粒子径5~20nmの球状シリカ粒子と平均粒子径0.08~2μmの球状シリカ粒子を含有する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項8】
前記塗膜が更に潤滑剤を含有する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項9】
前記塗膜が更にリン酸化合物を含有する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項10】
前記塗膜が更に着色顔料を含有する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項11】
前記塗膜の下層に有機樹脂とシランカップリング剤に起因する成分を含有する下地処理層を有する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。
【請求項12】
前記有機樹脂と前記めっき層とが、シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物、架橋性チタン化合物、エポキシ化合物、アミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種によって架橋されている
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の表面処理溶融めっき鋼材。」
「【0009】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、加工部の耐白錆性、耐傷付き性、耐汚染性が良好であり、且つめっき層起因の外観不良もなく、良好な外観を有する表面処理溶融めっき鋼材を提供することにある。」
「【0045】
めっき層23におけるAlの含有量は25~75質量%の範囲である。この含有量が25質量%以上であればめっき層23中のZn含有量が過剰とならず、めっき層23の表面における耐食性が充分に確保される。この含有量が75質量%以下であればZnによる犠牲防食効果が充分に発揮されると共にめっき層23の硬質化が抑制されて溶融めっき鋼材の加工性が高くなる。更に、溶融めっき鋼材の製造時に溶融めっき金属の流動性が過度に低くならないようにすることでめっき層23のしわを更に抑制する観点からも、Alの含有量は75質量%以下である。このAlの含有量は特に45質量%以上であることが好ましい。またこのAlの含有量は特に65質量%以下であることが好ましい。Alの含有量が45~65質量%の範囲であれば特に好ましい。」
「【0063】
<塗膜24の厚みについて>
塗膜24の厚みは特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上7μm以下、更に好ましくは0.5μm以上5μm以下である。塗膜24の厚みが0.1μm未満であると、十分な耐食性、耐傷付き性、耐汚染性が得られないことがある。一方、塗膜24の厚みが10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、塗膜24が水系塗料から形成される場合にワキ等の塗膜24欠陥が発生することがあり、工業製品としての外観や性能を安定して得ることができないことがある。」
「【0099】
リン酸化合物の含有量は、塗膜24中に0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。リン酸化合物の含有量が0.1質量%未満であると、耐食性の向上効果が得られない場合があり、5質量%超であると、耐食性が低下したり、塗膜24を形成するための塗料安定性が低下する(より具体的には、ゲル化や凝集物の沈殿等の不具合が発生する)場合がある。
【0100】
<着色顔料について>
上記塗膜24は、更に着色顔料を含有することが、表面処理溶融めっき鋼材の意匠性を高める上で好適である。着色顔料の種類としては、特に限定はされず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料や、アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉、二酸化チタンコーティングアルミナ粉等の光輝材などを挙げることができる。
【0101】
上記塗膜24に、濃色系の着色をする場合や、塗膜24の膜厚が10μm以下の薄膜で優れた意匠性を付与する場合には、上記塗膜24は着色顔料としてカーボンブラックを含有することが好ましい。上記カーボンブラックの種類としては、特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。着色顔料に使用するカーボンブラックの粒子径は、塗膜形成用の塗料組成物中での分散性、塗膜品質、塗装性に問題が無い範囲であれば特に制約は無く、具体的には、一次粒子径で10nm~120nmのものを使用することができる。薄膜での意匠性や耐食性を考慮すると、着色顔料として、一次粒子径が10nm~50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。これらのカーボンブラックを水系溶媒中に分散する場合、分散過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、実際には、上記微粒子カーボンブラックは、塗膜形成用の塗料組成物(塗布溶液)中では、一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で存在し、該塗料組成物を用いて形成される塗膜24中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性や耐食性を担保するためには、塗膜24中に分散している状態のカーボンブラックの粒子径が重要であり、その平均粒子径が20nm~300nmとするように制御することが好ましい。
・・・(略)・・・
【0103】
塗膜24に淡彩系の着色をする場合には、着色顔料として二酸化チタンを含有することが好ましい。この場合の二酸化チタンの塗膜24中の含有量は、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。二酸化チタンの含有量が10質量%未満であると、意匠性(隠蔽性)が低下する場合があり、70質量%超であると耐食性、耐傷付き性、耐汚染性が低下する場合がある。一般的に、塗膜24がカーボンブラックを含有し、濃色系の着色をされている場合、着色がない場合や淡彩系の着色をされている場合よりも、傷が入ったときに目立ち易いという特徴を有している。二酸化チタンは、耐傷付き性を底上げする効果を有している上に、外観を淡彩色に近づけ、傷を目立ちにくくする効果も有している。したがって、特に塗膜24の膜厚が10μm以下の薄膜で着色時の意匠性(隠蔽性)、耐食性を担保しながら、耐傷付き性を向上させるには、塗膜24中にカーボンブラックと二酸化チタンの双方を含有することが好ましい。この場合、カーボンブラックと二酸化チタンとは、質量比で0.5/9.5~3/7の割合で含有することが好ましい。」
「【0200】
【表1】
[図:0001392031000001.jpg]
【0201】
【表2】
[図:0001392031000002.jpg]
【0202】
【表3】
[図:0001392031000003.jpg]
」
「【0237】
【表15】
[図:0001392031000004.jpg]
」
「【0241】
【表19】
[図:0001392031000005.jpg]
【0242】
【表20】
[図:0001392031000006.jpg]
【0243】
【表21】
[図:0001392031000007.jpg]
【0244】
【表22】
[図:0001392031000008.jpg]
【0245】
【表23】
[図:0001392031000009.jpg]
【0246】
【表24】
[図:0001392031000010.jpg]
【0247】
【表25】
[図:0001392031000011.jpg]
【0248】
【表26】
[図:0001392031000012.jpg]
【0249】
【表27】
[図:0001392031000013.jpg]
【0250】
【表28】
[図:0001392031000014.jpg]
【0251】
【表29】
[図:0001392031000015.jpg]
」
(イ) 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の【表23】に記載の実施例90、91(鋼板に、めっき浴組成が【表1】のM5のめっき浴を用いてめっき層を形成し、さらに有機樹脂を含む塗膜を設けたものであって、塗膜に着色顔料E2(【表19】によると、「酸化チタン(石原産業社製R-780、粒子径240nm)」)を塗膜に添加した例をそれぞれ、「甲3実施例90発明」、「甲3実施例91発明」という。
うち、「甲3実施例90発明」は次のとおり。
「鋼板と、めっき層と、有機樹脂を含む塗膜をこの順に設けたものであって、
めっき層は、Al:54.9質量%、Cr:0.16質量%、Si:1.6質量%、Mg:2.1質量%、Fe:0.43質量%、Sr:32ppm、Zn:残部の浴から形成されるものであって、
有機樹脂を含む塗膜は、着色顔料として「E2」(酸化チタン(石原産業社製R-780、粒子径240nm))を50%含有する、
被覆めっき鋼板。」
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の第43頁において、甲第3号証には、
「a3 鋼板(鋼材)と、めっき層と、保護層(塗膜)と、をこの順に積層して備え、
b3 前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
c3 前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下(25~75質量%)であり、Mg含有量は6.0質量%以下(0.1~10質量%)であり、
d3 前記保護層(塗膜)は、樹脂及び
e3 屈折率が1.5以上である無機粒子(二酸化チタン、カーボンブラック、リン酸水素2アンモニウム)を含有する、
被覆めっき鋼板(塗装めっき鋼材)。」
との発明が記載されている旨主張するが、甲第3号証の記載事項に基づいてそのような発明を認定することができない。
イ 対比・判断
第2のとおり訂正された結果、取消理由2及び3の対象となっていた請求項1及び請求項1を引用する請求項3、5及び8ないし10はなくなった。
よって、取消理由2及び3は、その理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1-1、申立理由1-2、申立理由1-3のうち訂正後の請求項2、6及び請求項2、6に従属する請求項7、9、11、12及び14に係る部分、申立理由1-4、申立理由2-1、申立理由2-2、申立理由2-3のうち訂正後の請求項2、4、6及びその従属項に係る部分、申立理由2-4、申立理由3-2に関する点である。
以下、検討する。
(1) 申立理由1-1及び2-1(甲第1号証を根拠とする新規性・進歩性について)
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証について、請求項1の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「鋼材の表面上にアルミニウム・亜鉛合金めっき層(α)がめっきされ、更にその上層にチタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)が被覆されている表面処理溶融めっき鋼材であって、
前記アルミニウム・亜鉛合金めっき層(α)が構成元素としてAl、Zn、Si及びMgを含み、且つAl含有量が25~75質量%、Mg含有量が0.1~10質量%であり、
前記アルミニウム・亜鉛合金めっき層(α)が0.2~15体積%のSi-Mg相を含み、
前記Si-Mg相中のMgの、めっき層中のMg全量に対する質量比率が3%以上である、
表面処理溶融めっき鋼材。」(以下、「甲1発明」という。)
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の第24頁において、甲第1号証には、
「a1 鋼板(鋼材)と、めっき層と、保護層(皮膜(β))と、をこの順に積層して備え、
b1 前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
c1 前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下(25質量%以上75質量%以下)であり、Mg含有量は6.0質量%以下(0.1~10質量%)であり、
d1 前記保護層(皮膜(β))は、樹脂(分散用樹脂)及び
e1 屈折率が1.5以上である無機粒子(二酸化チタン、カーボンブラック、リン酸水素2アンモニウム)を含有する、
被覆めっき鋼板(表面処理溶融めっき鋼材)。」
との発明が記載されている旨主張するが、甲第1号証の記載事項に基づいてそのような発明を認定することができない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「アルミニウム・亜鉛合金めっき層(α)」はMgを含むものであるから、本件特許発明2の「Mg含有Zn-Al系めっき層」に相当し、甲1発明の「チタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)」は、本件特許発明2の「保護層」に相当する。
してみると両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層である
被覆めっき鋼板」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
めっき層について、本件特許発明2は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-2
保護層について、本件特許発明2は「前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討する。
甲第1号証には、「チタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)」に「樹脂成分」を添加することも、「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することも記載されていないから、相違点1-2は実質的な相違点である。
よって、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明ではない。
また、何れの証拠をみても、甲1発明の「チタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)」において、「樹脂成分」を添加すること、及び「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することの動機付けもないから、甲1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明2の特定事項を満たすものとすることはできない。
してみれば、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明2の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明2は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2の特定事項を全て含む本件特許発明3もまた、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層である
被覆めっき鋼板」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-3
めっき層について、本件特許発明4は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-4
保護層について、本件特許発明4は「前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記無機粒子は、白色顔料を含み、前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点1-4について検討する。
相違点1-4は、実質的には相違点1-2においてさらに「無機粒子」が「白色顔料」であることを特定するものであるといえる。
してみれば、上記(ア)における相違点1-2についての場合と同様に判断されるから、本件特許発明4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明4の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ウ)のとおり、本件特許発明4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む本件特許発明5もまた、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層である
被覆めっき鋼板」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-5
めっき層について、本件特許発明6は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-6
保護層について、本件特許発明6は「前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記保護層は、更に濃色顔料を含む」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点1-6について検討する。
甲第1号証には、「チタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)」に「樹脂成分」を添加することも、「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することも「濃色顔料」を添加することも記載されていないから、相違点1-6は実質的な相違点である。
よって、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は甲1発明ではない。
また、何れの証拠をみても、甲1発明の「チタン化合物およびジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を造膜成分とする皮膜(β)」において、「樹脂成分」を添加すること、及び「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加すること、「濃色顔料」を添加することの動機付けもないから、甲1発明において、相違点1-6に係る本件特許発明6の特定事項を満たすものとすることはできない。
してみれば、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件特許発明7及び8について
本件特許発明7及び8は、請求項6の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明6の特定事項を全て含むものである。そして、上記(オ)のとおり、本件特許発明6は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6の特定事項を全て含む本件特許発明7及び8もまた、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(キ) 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、独立形式で記載された請求項2、4及び6のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)、(ウ)及び(オ)のとおり、本件特許発明2、4及び6は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明9及び10もまた、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ク) 本件特許発明11ないし15について
本件特許発明11ないし15は、独立形式で記載された請求項2及び4のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)及び(ウ)のとおり、本件特許発明2及び4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明11ないし15もまた、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-1及び2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-1及び2-1は、その理由がない。
(2) 申立理由1-2及び2-2(甲第2号証を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証について、請求項1、2及び4の記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。
「めっき皮膜中のAl含有量が20~95mass%の溶融Al-Zn系めっき鋼板の表面に被覆層を有する表面処理鋼板であって、
前記めっき皮膜が少なくとも下記(a)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であり、前記被覆層は有機樹脂と無機成分を含有し且つクロムを含有しない単層又は複層の皮膜であって、皮膜付着量が0.1g/m2以上5g/m2未満であり、
被覆層が、無機成分としてリン酸、リン酸塩、シリカ、シランカップリング剤、Ca、Mn、Mg、Ni、Co、Fe、Ca系化合物、Mn系化合物、Mg系化合物、Ni系化合物、Co系化合物、Fe系化合物の中から選ばれる1種又は2種以上を含有し、
めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01~10mass%含有する、
加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
(a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130~300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130~300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T-100)/2 ……(1)」(以下、「甲2発明」という。)
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の第26頁において、甲第2号証には、
「a2 鋼板(鋼材)と、めっき層と、保護層(皮膜(β))と、をこの順に積層して備え、
b2 前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
c2 前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下(25~95mass%)であり、Mg含有量は6.0質量%以下(0.1~10mass%)であり、
d2 前記保護層(被覆層)は、樹脂(有機樹脂)及び
e2 屈折率が1.5以上である無機粒子(炭酸カルシウム)を含有する、
被覆めっき鋼板(表面処理鋼板)。」
との発明が記載されている旨主張するが、甲第2号証の記載事項に基づいてそのような発明を認定することができない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「Al含有量が20~95mass%の溶融Al-Zn系めっき」にはMgを含有するものであるから、本件特許発明2の「Mg含有Zn-Al系めっき層」に相当し、甲2発明の「被覆層」は、本件特許発明2の「保護層」に相当する。そして、甲2発明の「被覆層」は「有機樹脂」を含有するものであるから、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂を含有する、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-1
めっき層について、本件特許発明2は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
・相違点2-2
保護層について、本件特許発明2は「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点2-2について検討する。
甲第2号証には、「被覆層」に「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することは記載されていないから、相違点2-2は実質的な相違点である。
よって、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲2発明ではない。
また、何れの証拠をみても、甲2発明の「被覆層」において、「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することの動機付けもないから、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明2の特定事項を満たすものとすることはできない。
してみれば、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明2の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明2は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2の特定事項を全て含む本件特許発明3もまた、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂を含有する、
被覆めっき鋼板」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-3
めっき層について、本件特許発明4は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
・相違点2-4
保護層について、本件特許発明4は「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記無機粒子は、白色顔料を含み、前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点2-4について検討する。
相違点2-4は、実質的には相違点2-2においてさらに「無機粒子」が「白色顔料」であることを特定するものであるといえる。
してみれば、上記(ア)における相違点2-2についての場合と同様に判断されるから、本件特許発明4は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明4の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ウ)のとおり、本件特許発明4は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む本件特許発明5もまた、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲2発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂を含有する、
被覆めっき鋼板」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-5
めっき層について、本件特許発明6は「前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
・相違点2-6
保護層について、本件特許発明6は「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、前記保護層は、更に濃色顔料を含む」と特定されるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点2-6について検討する。
甲第2号証には、「被覆層」に「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加することも「濃色顔料」を添加することも記載されていないから、相違点2-6は実質的な相違点である。
よって、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は甲2発明ではない。
また、何れの証拠をみても、甲2発明の「被覆層」において、「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」を添加すること、及び、「濃色顔料」を添加することの動機付けもないから、甲2発明において、相違点2-6に係る本件特許発明6の特定事項を満たすものとすることはできない。
してみれば、その余の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件特許発明7及び8について
本件特許発明7及び8は、請求項6の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明6の特定事項を全て含むものである。そして、上記(オ)のとおり、本件特許発明6は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6の特定事項を全て含む本件特許発明7及び8もまた、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(キ) 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、独立形式で記載された請求項2、4及び6のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)、(ウ)及び(オ)のとおり、本件特許発明2、4及び6は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明9及び10もまた、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ク) 本件特許発明11ないし15について
本件特許発明11ないし15は、独立形式で記載された請求項2及び4のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)及び(ウ)のとおり、本件特許発明2及び4は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明11ないし15もまた、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-2及び2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び2-2は、その理由がない。
(3) 申立理由1-3のうち訂正後の請求項2、6及び請求項2、6に従属する請求項7、9、11、12及び14に係る部分及び2-3のうち訂正後の請求項2、4、6及びその従属項に係る部分(甲第3号証を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第3号証に記載された発明
上記「1ア(イ)」のとおりである。
うち、「甲3実施例90発明」について再掲する。
「鋼板と、めっき層と、有機樹脂を含む塗膜をこの順に設けたものであって、
めっき層は、Al:54.9質量%、Cr:0.16質量%、Si:1.6質量%、Mg:2.1質量%、Fe:0.43質量%、Sr:32ppm、Zn:残部の浴から形成されるものであって、
有機樹脂を含む塗膜は、着色顔料として「E2」(酸化チタン(石原産業社製R-780、粒子径240nm))を50質量%含有する、
被覆めっき鋼板。」
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3実施例90発明とを対比すると、甲3実施例90発明の「Al:54.9質量%、Cr:0.16質量%、Si:1.6質量%、Mg:2.1質量%、Fe:0.43質量%、Sr:32ppm、Zn:残部の浴から形成される」めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有するものであり、その組成からみて、本件特許発明2の「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層」に相当するとともに、「Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下」との特定事項を満たす。
また、甲3実施例90発明の「有機樹脂を含む塗膜」は、本件特許発明2の「保護層」に相当する。
さらに、甲3実施例90発明の着色顔料である「E2」は酸化チタンであって、その粒子径が240nm(=0.24μm)であること、酸化チタンの屈折率は概ね2.5~2.7程度であることからすると、甲3実施例90発明の「E2」を含む「有機樹脂を含む塗膜」は、本件特許発明2の「保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有する、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点3-1
保護層における無機粒子の含有割合に関し、本件特許発明2は「0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲3実施例90発明では「50質量%」である点。
上記相違点3-1について検討する。
無機粒子(酸化チタン)の含有割合は、本件特許発明2と甲3実施例90発明では明らかに異なっているから、相違点3-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明2は甲3実施例90発明ではない。
また、他の証拠をみても、甲3実施例90発明において、酸化チタン(無機粒子)の割合を少なくし、相違点3-1に係る本件特許発明2の特定事項を満たすものとする動機もない。
してみると、本件特許発明2は、甲3実施例90発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
甲3実施例91発明について検討しても、甲3実施例90発明の場合と同様に判断される。
以下、「甲3実施例90発明」と「甲3実施例91発明」を総称し、「甲3発明」として検討を進める。
(イ) 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明2の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明2は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2の特定事項を全て含む本件特許発明3もまた、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲3発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係、さらに、甲3発明の「E2」である酸化チタンが、本件特許発明4の「白色顔料」に相当することから、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有すし、
前記無機粒子は、白色顔料を含む、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点3-2
保護層における白色顔料の含有割合に関し、本件特許発明4は「0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」と特定されるのに対し、甲3実施例90発明では「50質量%」である点。
上記相違点3-2について検討する。
相違点3-2は、実質的には相違点3-1においてさらに「無機粒子」が「白色顔料」であることを特定するものであるといえる。
してみれば、上記(ア)における相違点3-1についての場合と同様に判断されるから、本件特許発明4は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明4の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ウ)のとおり、本件特許発明4は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む本件特許発明5もまた、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲3発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有する、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点3-3
保護層において、本件特許発明6は「更に濃色顔料を含む」と特定されるのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
上記相違点3-3について検討する。
甲3発明において用いられる着色顔料は「酸化チタン」であって、上述のとおり「白色顔料」として認識されているものであるから、相違点3-3は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明6は、甲3発明ではない。
また、他の証拠をみても、甲3発明において、更に濃色顔料を添加する動機付けもないから、甲3発明において、相違点3-3に係る本件特許発明6の特定事項を満たすものとすることはできない。
してみれば、本件特許発明6は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件特許発明7及び8について
本件特許発明7及び8は、請求項6の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明6の特定事項を全て含むものである。そして、上記(オ)のとおり、本件特許発明6は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6の特定事項を全て含む本件特許発明7及び8もまた、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(キ) 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、独立形式で記載された請求項2、4及び6のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)、(ウ)及び(オ)のとおり、本件特許発明2、4及び6は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明9及び10もまた、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ク) 本件特許発明11ないし15について
本件特許発明11ないし15は、独立形式で記載された請求項2及び4のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)及び(ウ)のとおり、本件特許発明2及び4は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明11ないし15もまた、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-3のうち訂正後の請求項2、6及び請求項2、6に従属する請求項7、9、11、12及び14に係る部分及び2-3のうち訂正後の請求項2、4、6及びその従属項に係る部分についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-3のうち訂正後の請求項2、6及び請求項2、6に従属する請求項7、9、11、12及び14に係る部分及び2-3のうち訂正後の請求項2、4、6及びその従属項に係る部分は、その理由がない。
(4) 申立理由2-4(甲第4号証を根拠とする進歩性)について
ア 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証の実施例として示される表2-1におけるNo.9の例を整理すると、甲第4号証には次の発明が記載されていると認める。
「鋼板と、Zn系めっき層と、表面処理層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、GA(Al濃度0.2mass%の合金化溶融Znめっき)層であり、
前記表面処理層は、酸化物AとしてMg(酸化マグネシウム):50mass%、樹脂Bとしてウレタン系樹脂エマルション(第一工業製薬(株)スーパーフレックス(登録商標)E-2000):45mass%、顔料Tとして酸化チタン(石原産業(株)酸化チタンR-930)、粒径250nm(カタログ値):5mass%を含有する、
被覆めっき鋼板。」(以下、「甲4発明」という。)
なお、特許異議申立人は、令和4年7月19日提出の意見書における第8頁において、甲第4号証には、
「鋼板と、めっき層と、保護層(表面処理層)と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Zn、及びMg含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、
前記保護層(表面処理層)は、樹脂(バインダー樹脂)及び
屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である(屈折率が1.5以上かつ粒径が250nm程度の酸化チタン又は屈折率が2.15かつ粒径70~110nmのジルコニアゾル)を含有し、
前記無機粒子は、前記保護層(表面処理層)に0.1質量%以上5.0質量%以下(5mass%)で含有される、
被覆めっき鋼板(表面処理溶融めっき鋼材)。」
との発明が記載されている旨主張するが、甲第4号証の記載事項に基づいてそのような発明を認定することができない。
また、甲第4号証の記載からみて、特許異議申立人が特許異議申立書の第48頁において示す下記の発明が記載されているものと認定することもできない。
「a4 鋼板と、めっき層と、保護層(表面処理層)と、をこの順に積層して備え、
b4 前記めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、
d4 前記保護層(表面保護層)は、樹脂(バインダー樹脂)及び
e4 屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である(粒径が2nm以上100nm以下の酸化チタン、カーボンブラック)を含有する、
被覆めっき鋼板(表面処理溶融めっき鋼材)。」
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、甲4発明のAl濃度0.2mass%含有する「Zn系めっき層」は、本件特許発明2の「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層」のうち、「Al、Znを含有するZn系めっき層」の限りにおいて相当する。
また、甲4発明の「表面処理層」は、本件特許発明2の「保護層」に相当するとともに、酸化チタンの屈折率を考慮する(上記(3)イ(ア)参照)と、甲4発明の表面処理層における「顔料T」は、本件特許発明2の「屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子」との特定事項を満たすとともに、その含有割合についても、「0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Znを含有する、Zn系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点4-1
めっき層について、本件特許発明2は「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定するのに対し、甲4発明は「GA(Al濃度0.2mass%の合金化溶融Znめっき)層」である点。
上記相違点4-1について検討する。
甲4発明において、めっき層の組成を大きく変更する、すなわち、Alの割合を調整するとともにMgを添加し、相違点4-1に係る本件特許発明2の特定事項を満たすものとする動機もない(さらに言及すると、甲第4号証の【0091】で具体的にあげられているめっき組成においても、いずれも相違点4-1に係る本件特許発明2の特定事項を満たさない。)。
してみると、本件特許発明2は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項2の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明2の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明2は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の特定事項を全て含む本件特許発明3もまた、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲4発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係が成り立ち、さらに、甲3発明の「E2」である酸化チタンが、本件特許発明4の「白色顔料」に相当することから、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Znを含有する、Zn系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、白色顔料を含み、
前記白色顔料は、前記保護層に0.1質量%以上5.0質量%以下で含有される、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点4-2
めっき層について、本件特許発明4は「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定するのに対し、甲4発明は「GA(Al濃度0.2mass%の合金化溶融Znめっき)層」である点。
上記相違点4-2について検討する。
相違点4-2は、相違点4-1と同旨であり、上記(ア)における相違点4-1についての場合と同様に判断されるから、本件特許発明4は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明4の特定事項を全て含むものである。そして、上記(ウ)のとおり、本件特許発明4は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む本件特許発明5もまた、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲4発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係から、両者は、
「鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、
前記めっき層は、Al、Znを含有する、Zn系めっき層であり、
前記保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上、かつ平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下である無機粒子を含有する、
被覆めっき鋼板。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点4-3
めっき層について、本件特許発明6は「Al、Zn、及びMgを含有する、Mg含有Zn-Al系めっき層であり、前記めっき層の、Al含有量は45質量%以上65質量%以下であり、Mg含有量は6.0質量%以下であり」と特定するのに対し、甲4発明は「GA(Al濃度0.2mass%の合金化溶融Znめっき)層」である点。
・相違点4-4
保護層において、本件特許発明6は「更に濃色顔料を含む」と特定されるのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
上記相違点について検討する。
まず相違点4-3についてであるが、相違点4-3は、相違点4-1と同旨であり、上記(ア)における相違点4-1についての場合と同様に判断される。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件特許発明7及び8について
本件特許発明7及び8は、請求項6の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明6の特定事項を全て含むものである。そして、上記(オ)のとおり、本件特許発明6は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明6の特定事項を全て含む本件特許発明7及び8もまた、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(キ) 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、独立形式で記載された請求項2、4及び6のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)、(ウ)及び(オ)のとおり、本件特許発明2、4及び6は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、4及び6のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明9及び10もまた、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ク) 本件特許発明11ないし15について
本件特許発明11ないし15は、独立形式で記載された請求項2及び4のいずれか1項を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含むものである。そして、上記(ア)及び(ウ)のとおり、本件特許発明2及び4は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2及び4のいずれかの特定事項を全て含む本件特許発明11ないし15もまた、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由2-4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-4は、その理由がない。
(5) 申立理由3-2(サポート要件・保護層の構成について)について
上記1(1)で検討したとおり、本件特許発明は、「Zn及びAlだけでなく、Mgを含有するめっき層を備えるMg含有Zn-Al系めっき鋼板」におけるめっき層表面の明度の不均一や外観不良を改善することを課題とするもの(本件特許の明細書の段落【0005】ないし【0008】)であり、いわゆるZn-Al系めっき鋼板のうち、Mgを含有するめっき鋼板における課題を広く取りあげ、その課題を解決しようとするものであり、めっき層におけるAl、Mgの含有割合とその効果(【0017】、【0018】)、保護層に含まれる無機粒子の屈折率及び平均粒径とその効果(【0037】ないし【0041】)、これらの特定事項を満たす実施例の記載があることからみても、当業者であれば、めっき層におけるAl、Mgの含有割合や保護層に含まれる無機粒子の屈折率及び平均粒径についての条件が特定された請求項2ないし15に係る発明であれば、本件特許の上記課題を解決するものと認識できる。
なお、特許異議申立人は、課題解決のためには、保護層の付着量の特定が必須である旨主張するが、本件特許発明は、保護層に特定の屈折率を有する無機粒子を添加することによりめっき層表面の明度の不均一や外観不良を改善するものであり、付着量が特定されなくとも定性的に効果が発現するであろうことは当業者であれば認識できるものといえる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
したがって、申立理由3-2は、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701130