特許異議申立
2025-700734
ホース用樹脂材料およびホース
- 審判番号
- 2025-700734
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-000859
- 登録番号
- 7617380
- 請求日
- 2025年07月18日
- 審決日
- 2025年10月01日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】横浜ゴム株式会社
- 【権利者代理人】清流国際弁理士法人
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 鎌田 哲生
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1651.536-Y (F16L) / P1651.537-Y (F16L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7617380号発明「ホース用樹脂材料およびホース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7617380号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7617380号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は 、令和3年1月6日の出願であって、令和7年1月9日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和7年7月18日に特許異議申立人小松一枝、前田知子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年8月15日に申立人によって特許異議申立書の手続補正書が提出された。以下、当該手続補正書による補正後の特許異議申立書を「申立書」という。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上、可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%以下、前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下であることを特徴とするホース用樹脂材料。
【請求項2】
前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが1MPa以上である請求項1に記載のホース用樹脂材料。
【請求項3】
前記所定温度の環境条件下での破断伸びが500%以下、前記所定温度の環境条件下での破断強度が5MPa以上である請求項1または2に記載のホース用樹脂材料。
【請求項4】
融点が170℃以上230℃以下の樹脂を含む請求項1~3のいずれかに記載のホース用樹脂材料。
【請求項5】
ポリアミドを含む請求項1~4のいずれかに記載のホース用樹脂材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載されているホース用樹脂材料が筒状に形成されている構成部材として用いられているホース。
【請求項7】
筒状に形成されている前記ホース用樹脂材料が内面層および外面層として用いられている請求項6に記載のホース。
【請求項8】
ホースの使用内圧が3.9MPa以上であり、内面層と外面層とに用いられている前記ホース用樹脂材料の仕様が異なっていて、内面層に用いられている前記ホース用樹脂材料では前記所定温度が120℃に設定されていて、外面層に用いられている前記ホース用樹脂材料では前記所定温度が150℃に設定されている請求項7に記載のホース。
【請求項9】
ホースの使用内圧が3.9MPa未満であり、内面層と外面層とに用いられている前記ホース用樹脂材料の仕様が同じであり、前記所定温度が135℃或いは150℃に設定されている請求項7に記載のホース。
【請求項10】
車両に搭載されるエアコンディショナーの構成機器どうしを連結して、冷媒を流通させる請求項7~9のいずれかに記載のホース。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
1.申立て理由1
本件発明1~10は「100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上、」であること、「前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下であること」を発明特定事項とする発明である。
しかし、発明の詳細な説明は、「100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上」、「前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下である」との特性を併せもつ樹脂材料を、当業者が作ることができるように記載したものではない。
よって、請求項1~10に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2.申立て理由2
発明の詳細な説明には、当該発明の課題について、「本発明の目的は、主に車両に搭載されるエアコンディショナー用ホースに使用されて、高温環境下での耐久性を向上させたホース用樹脂材料およびこのホースを提供することにある。」(【0006】)と記載されている。
しかし、ポリアミドをはじめとする樹脂材料は使用環境が高温であると使用中短期間に樹脂材料の劣化が進み、変色や物性低下を起こしてしまう可能性があるという技術常識(甲第1号証(「高分子材料第百科」、初版第1刷、日刊工業新聞社、1999年7月30日、第713頁)、甲第2号証(澤田祐子、越前谷大介、“温度と湿度による樹脂材料の強度低下の予測”、日本機械学会論文集、2019年、vol.85、No.875)、及び、甲第3号証(特開2013-155893号)参照)を踏まえると、「100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上、可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%以下、前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下」との特性は劣化すると当業者であれば想定するといえ、発明の詳細な説明に、樹脂の種類や配合比等を全く特定していない本件発明1~10の樹脂材料の高温環境下での使用による経時変化(劣化)が小さいと推定できる根拠はなにも示されていないといえるから、本件特許1~10は、「発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載、技術常識により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの」ではない。
よって、請求項1~10に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3.申立て理由3
請求項8には「ホースの使用内圧が3.9MPa以上であり、」とホースの使用時の内圧が記載されているが、この発明特定事項は、ホースの構成自体に係る事項ではないから、本件発明8は明確とはいえない。
請求項9には「ホースの使用内圧が3.9MPa未満であり、」とホースの使用時の内圧が記載されているが、この発明特定事項は、ホースの構成自体に係る事項ではないから、本件発明9は明確とはいえない。
よって、請求項8~9に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 判断
1 申立て理由1(特許法第36条第4項第1号)について
(1)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。下線は当審にて付した。
ア「【0016】
樹脂材料Mは樹脂成分、または、樹脂成分と微量の可塑剤とを有している。ここで樹脂成分とは、すべてが樹脂である場合に限らず、その一部がエラストマーやゴムである場合も含まれる。また、樹脂成分は1種類の樹脂だけの場合も、複数種類の樹脂がブレンドされている場合もある。樹脂材料Mにはその他に、後述する所定温度Tの環境条件下での破断伸び50%を低下させない範囲で、難燃剤、老化防止剤、着色剤などを配合することができる。」
イ「【0022】
この破断伸びが50%未満では、ホース1として十分な耐久性を確保できないためであり、より好ましくは100%以上にする。この破断伸びを必要以上に大きくしてもオーバースペックになるだけなので、この破断伸びの上限は500%、より好ましくは300%である。この破断伸びは、JIS K6251:2017に規定された方法に準拠して測定した値である。詳述すると、この破断伸びは、樹脂材料Mのダンベル状6号形の試験片を50mm/分の速度で引張り、試験片が切断したときの伸びであり、試験前の試験片の試験長さに対する比率(%)で表される。」
ウ「【0023】
可塑剤を実質的に含有することなく、所定温度Tの破断伸び50%以上の特性を有する樹脂材料Mを得るには、例えば、熱可塑性樹脂とエラストマー(或いはゴム)とをブレンドして製造するとよい。そして、熱可塑性樹脂を海、エラストマー(或いはゴム)を島にした海島構造のアロイ材を樹脂材料Mに用いることが好ましい。
【0024】
例えば、熱可塑性樹脂に対するエラストマー(或いはゴム)の配合割合を複数通りに異ならせてアロイ材を製造し、所定温度Tの破断伸び50%以上の特性を満足するアロイ材におけるエラストマー(或いはゴム)の配合割合を把握する。これにより、熱可塑性樹脂に対するエラストマー(或いはゴム)の配合割合の適正範囲を把握する。そして、この適正範囲内で、後述するその他の要件(破断強度や10%モジュラスなど)を考慮して、熱可塑性樹脂に対するエラストマー(或いはゴム)の配合割合が決定される。樹脂材料Mとして、このような海島構造のアロイ材を用いることで、所定温度Tの破断伸び50%以上と、後述する10%モジュラス3MPa以下との特性を両立し易くなる。
【0025】
樹脂材料Mに使用される熱可塑性樹脂としては例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などを例示できる。
【0026】
樹脂材料Mに使用されるエラストマーとしては例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーおよびこれらの変性品などを例示できる。
【0027】
樹脂材料Mに使用されるゴムとしては例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの変性品などを例示できる。
【0028】
可塑剤としては例えば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、安息香酸エステル、エポキシ化植物油、多価アルコール、多価アルコールエステル、ブチルベンゼンスルホンアミド、などを例示できる。
【0029】
代表的な樹脂材料Mの配合および配合割合を例示すると、ポリアミド樹脂100質量部に対して臭素化ブチルゴムを100重量部、或いは、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂100質量部に対して酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマーを100重量部にする。」
エ「【0032】
自動車7に搭載されるエアコン6に使用されるホース1は、伸びが10%程度の範囲で設置、使用されることが多いため、このように10%モジュラスの適正範囲が設定するとよい。この10%モジュラスの下限は例えば1MPaである。この10%モジュラスは、上記の試験片に10%伸びを与えたときの引張力を、試験片の試験前の断面積で除した値である。」
(2)申立て理由1についての判断
ア 上記(1)ア及びウより、可塑剤を実質的に含有することなく、所定温度Tの破断伸び50%以上の特性を有する樹脂材料を得るには、熱可塑性樹脂を海、エラストマー(或いはゴム)を島にした海島構造のアロイ材を樹脂材料に用いることが好ましく、【0025】~【0028】に記載されている原料を使用して、熱可塑性樹脂に対するエラストマー(或いはゴム)の配合割合を調整することで、破断伸びだけでなく10%モジュラスなどの他の要件も満たすものを作成することができることが把握できる。さらに、具体的な配合及び配合割合として【0029】に記載されているものがあることも把握できる。
イ また、上記(1)イ及びエより、「破断伸び」、及び、「10%モジュラス」の定義や測定法が把握できる。
ウ してみると、【0029】に記載された具体的な配合及び配合割合を参照にしつつ、【0025】~【0028】に記載されているものから原料を選択して、熱可塑性樹脂を海、エラストマー(或いはゴム)を島にした海島構造の樹脂材料を作る際に、破断伸び等を測定しながら、熱可塑性樹脂に対するエラストマー(或いはゴム)の配合を調整することで、本件発明1~10を実施することは、当業者が明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく行えることであるといえるから、請求項1~10に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
2 申立て理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(1)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。下線は当審にして付した。
ア 「【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるエアコンディショナーでは、冷媒を循環させる循環経路が形成されている。この循環経路は、圧縮機、凝縮器、分離乾燥器(レシーバドライヤ)、蒸発器などの構成機器どうしを、ホースを介して連結することで形成されている。
【0003】
このホースには流通する冷媒による内圧に耐え得る耐圧性が要求されるので、金属管やゴムホースが多用されている。近年、環境への負荷低減やエネルギ効率の向上の観点などから自動車の軽量化が要望されている。
【0004】
自動車のエアコン用ホース(エアコンディショナー用ホース)として樹脂ホースが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂ホースは、金属管やゴムホースに比して軽量化するには有利である。ところで、このようなホースは長期間高温の環境で使用される。昨今においは、ホースに対して100℃以上のより高温環境下での耐久性が要求される傾向があり、高温環境下でのホースの耐久性を向上させるには改善の余地がある。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、主に車両に搭載されるエアコンディショナー用ホースに使用されて、高温環境下での耐久性を向上させたホース用樹脂材料およびこのホースを提供することにある。」
ウ「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のホース用樹脂材料は、100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上、可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%以下、前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下であることを特徴とする。」
エ「【0009】
本発明のホース用樹脂材料によれば、100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上の特性を有している。そのため、ホースの使用条件が100℃以上の高温環境であっても、実用に耐え得る耐久性を確保することが可能になる。また、樹脂材料の全体質量に対して可塑剤の含有率が極僅か、或いは、可塑剤が含有されていない。可塑剤は経時的に樹脂材料の中から徐々に消失するので、含有率が高い程、樹脂材料の物性の経時変化が顕著になる。本発明のホース用樹脂材料では、可塑剤を実質的に含んでないので、物性の経時変化が抑制されて、高温環境での耐久性を長期間維持するには有利になる。
【0010】
本発明のホースによれば、高温の使用条件であっても、ホースの構成部材の物性の経時変化が抑制されるので、良好な耐久性を長期に渡って維持できる。」
オ「【0020】
この樹脂材料Mは、100℃以上150℃以下の所定温度Tの環境条件下での破断伸びが50%以上の特性を有している。」
カ「【0022】
この破断伸びが50%未満では、ホース1として十分な耐久性を確保できないためであり、より好ましくは100%以上にする。」
キ「【0036】
可塑剤が配合された樹脂材料では、経時的に可塑剤がブルームして徐々に樹脂材料から消失する。これに伴い、樹脂材料の特性(特に柔軟性や伸び)が経時的に変化する。そのため、このような樹脂材料を用いてホース1を形成した場合、特に高温環境で使用されるホース1では長期に渡って良好な耐久性を確保することが難しくなる。そして、樹脂材料に対する可塑剤の含有率が高い程、樹脂材料の物性の経時変化が顕著になる。
【0037】
本発明の樹脂材料Mは、可塑剤による上記のデメリットを回避するために、可塑剤の含有率を極僅か、或いは、可塑剤が含有されていない仕様にしている。そのため、この樹脂材料Mでは、物性の経時変化が抑制されて、高温環境での耐久性を長期間維持するには有利になっている。その結果、長期に渡って、所定温度Tの高温環境での破断伸びを50%以上に維持することが可能になっている。」
ク「【0038】
そして、このホース1は、樹脂材料Mを用いて形成されているので、高温の使用条件であっても良好な耐久性を長期に渡って維持できる。スペースが狭いエンジンルーム8であっても、樹脂材料Mは所定温度Tの高温環境での破断伸びが50%以上の特性を有しているので、ホース1を適宜屈曲させて構成機器6A~6Dに接続して、長期間使用することができる。」
ケ「【0040】
優れた耐久性を長期間維持するために最も理想的なのは、ホース1を構成するすべての樹脂層(この実施形態では内面層2、中間層4および外面層5)を、所定温度Tを150℃として、この環境条件下での破断伸びが50%以上500%以下、破断強度が5MPa以上、10%モジュラスが3MPa以下、可塑剤の含有率がゼロの樹脂材料Mを用いて形成されていることである。さらに、外面層5は内面層2よりも所定温度T(150℃)での破断伸びが大きい樹脂材料Mで形成されているとよい。」
(2)申立て理由2についての判断
ア 上記(1)ア~イの記載より、本件発明の課題は、金属管やゴムホースに比して軽量化するに有利な樹脂ホースを自動車用のエアコン用ホースとして使用することを前提として、100℃以上のより高温環境下での耐久性を向上させたホース用樹脂材料およびこのホースを提供することであることが把握できる。
イ 上記(1)ウ及びケの記載より、上記アで示した課題を解決するための本発明のホース用樹脂材料は、100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上、可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%以下、前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下であることを特徴とするホース用樹脂材料であることが把握できる。
ウ 上記(1)エ~カ及びクの記載より、「100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上」の特性を有することで、スペースが狭いエンジンルームであってもホースを適宜屈曲させて構成機器に接続して長時間使用することができ、100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%未満のものと比較して、ホースの使用条件が100℃以上の高温環境での耐久性が向上することが把握できる。
エ 上記(1)エ及びキの記載より、「可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%以下」とすることで、経時的に樹脂材料の中から徐々に消失して経時変化を生じさせる可塑剤の含有率を極僅か、或いは、含有されていない仕様になるため、可塑剤の含有率が全体質量に対して3質量%より多いものと比較して、樹脂材料の物性の経時変化が抑制されて、高温環境での耐久性が向上することが把握できる。
オ 上記アのとおり、本件発明は、ホース用樹脂材料の中で、100℃以上のより高温環境下での耐久性を向上させたものを提供することが課題であるところ、当該課題を解決するための手段が上記イのとおり示されており、上記ウ~エのとおり、課題が解決される理由も示されているから、本件発明1~10は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
3 申立て理由3(特許法第36条第6項第2号)について
請求項8には「ホースの使用内圧が3.9MPa以上であり、」という記載があり、請求項9には「ホースの使用内圧が3.9MPa未満であり、」という記載がある。
本件発明8及び本件発明9は、ホースに係る発明であるから、上記請求項8の記載は、本件発明8のホースが、3.9MPa以上の使用内圧で使用するという用途を特定するものと理解でき、上記請求項9の記載は、本件発明9のホースが、3.9MPa未満の使用内圧で使用するという用途を特定するものと理解でき、この理解は、【0020】の「ホース内圧(使用内圧)が3.9MPa以上の場合は、内面層2と外面層5とは異なる仕様の樹脂材料Mで形成されることが好ましい。」という記載、及び、【0021】の「ホース内圧(使用内圧)が3.9MPa未満の場合など、所定温度Tをホース部位毎に異ならせない場合は、所定温度Tは例えば135℃、より好ましくは150℃に設定する。」という記載とも合致する。
そして、上記請求項8の記載、及び、上記請求項9の記載が、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。
よって、本件発明8、及び、本件発明9は明確であるから、本件の特許請求の範囲の請求項8、及び、請求項9の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
第5 申立人の主張について
申立人は申立書において、申立て理由1に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1のホース用樹脂材料を作るために必要な事項である、原料である樹脂の種類や配合比、可塑剤の種類や配合比、製造温度、撹拌時間等の操作条件などが記載されておらず、製造実施例をも記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、「100℃以上150℃以下の所定温度の環境条件下での破断伸びが50%以上」、「前記所定温度の環境条件下での10%モジュラスが3MPa以下である」との特性を併せもつ樹脂材料を、当業者が作ることができるように記載したものではない旨、主張する。
しかし、原料の種類については【0025】~【0028】に、具体的な原料の種類及び配合比については【0029】に記載されている。
また、製造温度、撹拌時間等の操作条件については発明の詳細な説明に記載が無いところ、申立人は、製造温度、撹拌時間等の操作条件が、破断伸びや10%モジュラスのような特性に影響を与えることの具体的根拠を示していない。
よって、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700734