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特許異議申立

2021-701075

二メシル酸パルボシクリブの固体形態

審判番号
2021-701075
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-520931外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6870082
請求日
2021年11月12日
審決日
2022年10月31日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-ZAA(C07D) / P1652.121-ZAA(C07D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6870082号発明「二メシル酸パルボシクリブの固体形態」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6870082号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔37-41〕について訂正することを認める。 特許第6870082号の請求項37~41に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6870082号の請求項1~46に係る特許についての出願は、2017年7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年7月7日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、令和3年4月16日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の請求項37~41について、令和3年11月12日に特許異議申立人 金田 綾香(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和4年 1月31日付け 取消理由通知 同年 5月 2日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 5月16日付け 訂正請求があった旨の通知書 同年 6月14日 意見書の提出(特許異議申立人) 同年 7月 4日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年10月 5日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) なお、令和4年5月2日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 令和4年10月5日付け訂正請求書の請求の趣旨は、「特許第6870082号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項37~41について訂正することを求める。」というものである(以下、当該訂正を「本件訂正」という。)。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項37の、 「HPLCで測定して面積百分率0.2%以下であるか、又は不純物Aの含有量が、≦1wt%である、或いはHPLCで測定して面積百分率0.4%以下の総不純物を含有するか、又は≦1wt%の総不純物を含有する」との記載を、 「HPLCで測定して面積百分率0.04%以下であり、かつ、HPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する」と訂正する(下線は訂正箇所。)。 請求項37の記載を引用する請求項38~41も同様に訂正する。 2 本件訂正の適否 (1)一群の請求項について 本件訂正は、請求項37~41についてのものであるところ、請求項38~41は請求項37の記載を引用するものであり、請求項37~41は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 そして、本件訂正の請求は、請求項37~41についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (2)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、請求項37に記載の医薬組成物が含むパルボシクリブの不純物の含有量及びパルボシクリブが含有する総不純物について、訂正前にHPLCで測定して面積百分率が「0.2%以下」及び「0.4%以下」とあったのを、それぞれ、「0.04%以下」及び「0.1%以下」とすることで、その範囲をより狭い範囲に限定し、さらに、訂正前にそれらが「或いは」との記載により選択的であったのを、「かつ」とすることで、両者を必須の事項とし、加えて、HPLCで測定した面積百分率による特定と選択的に記載されていたwt%(重量パーセント)による特定を削除することで、不純物A及び総不純物に関する選択肢を狭めるものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した明細書、【0089】には、「本開示の方法によって生成されるパルボシクリブは、・・・特に面積百分率0.04%以下の不純物Aを含有しうる。」との記載、【0090】には、「本開示の方法によって生成されるパルボシクリブは、・・・特に面積百分率0.1%以下の総不純物を含有しうる。」との記載があるとともに、【0054】には、「本明細書において、別段の記載がない限り、化学的純度(面積百分率)は、HPLC分析によって測定されうる。」との記載がある。 そして、当該【0054】の記載を参酌すれば、【0089】及び【0090】に記載の「面積百分率」はHPLC分析によって測定されたもの、すなわち、「HPLCで測定した面積百分率」であるといえる。 してみると、不純物Aの含有量を「HPLCで測定して面積百分率0.04%以下」とし、「かつ」、総不純物を「HPLCで測定して面積百分率0.1%以下」含有すると訂正することは、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年6月14日付けの意見書において、令和4年5月2日付けの訂正請求書による訂正の、不純物A及び総不純物の含有量をHPLCで測定した面積百分率に限定し、その範囲をそれぞれ0.04%以下及び0.1%以下に限定した点について(本件訂正でも、HPLCで測定した面積百分率の数値範囲に限ってみれば、同様の訂正を行っている。)、特許権者が訂正の根拠として挙げている本件特許明細書の【0084】及び【0085】は、二メシル酸パルボシクリブの固体形態に関する記載であり、パルボシクリブの不純物A及び総不純物の含有量の記載はない旨、パルボシクリブに関する記載がある【0089】及び【0090】には「HPLCで測定した際に」との記載はないことを指摘して、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない旨主張するが、上述のとおり、願書に添付した明細書の【0054】の記載を考慮すれば、【0089】及び【0090】の面積百分率は、「HPLCで測定した面積百分率」であるといえ、またパルボシクリブが含有する不純物に関する記載であるから、この主張を採用することはできない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、令和4年10月5日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項37~41について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項37~41について訂正することを認めるので、本件特許の請求項37~41に係る発明は、令和4年10月5日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項37~41に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明37」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。 「【請求項37】 不純物A: 【化5】 [図:0001398222000001.jpg] の含有量が、HPLCで測定して面積百分率0.04%以下であり、かつ、HPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する、パルボシクリブを含む医薬組成物。 【請求項38】 請求項37に記載の医薬組成物の調製方法であって、パルボシクリブを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせる工程を含む、方法。 【請求項39】 治療法に使用するための、請求項37に記載の医薬組成物。 【請求項40】 がんの治療に使用するための、請求項37に記載の医薬組成物。 【請求項41】 がんの治療用医薬の調製における請求項37に規定するパルボシクリブの使用。」 第4 令和4年7月4日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 令和4年7月4日付けで通知した取消理由の理由1、2の概要は次のとおりである。 [理由1]本件特許の請求項37~41に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項37~41に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 [理由2]本件特許の請求項37~41に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項37~41に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:特開2014-162794号公報(以下「甲1」という。他の甲各号証についても同様である。) 甲第2号証:中国特許出願公開第104478874号明細書 甲第3号証:中国特許出願公開第105111205号明細書 甲第4号証:ip.com、IP.com Number:IPCOM000246804D、2016年7月1日、1~3頁、インターネット、[Online]、<URL:https://ip.com/IPCOM/000246804> 甲第5号証:中国特許出願公開第105418603号明細書 なお、理由1は、請求項37~41について甲1、2に基づく理由であり、請求項37~39について甲3、4に基づく理由である。理由2は、請求項37~41について甲1~5に基づく理由である。 第5 当審の判断 1 令和4年7月4日付けで通知した取消理由の理由1、2について (1)引用文献の記載事項 甲1: 1a)「【請求項1】 2m2/g以下の比表面積を有する6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンの結晶性遊離塩基。 ・・・ 【請求項15】 請求項1から14のいずれか一項に記載の遊離塩基と、少なくとも1種の薬学的に許容できる担体、賦形剤または添加剤とを含む、医薬組成物。」 1b)「【0002】 本発明は、改善された物理化学的特性を有する6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンの遊離塩基に関する。本発明は、該遊離塩基を含む医薬組成物および剤形、ならびに、そのような化合物、組成物および剤形を作製する方法、ならびにそれらをがん等の細胞増殖性疾患の治療において使用するための方法にも関する。 【背景技術】 【0003】 化合物6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン(本明細書においては「化合物1」とも称される)は、構造: 【0004】 【化1】 [図:0001398222000002.jpg] によって表すことができ、パルボシクリブまたはPD-0332991としても公知である。化合物1は、CDK4およびCDK6の強力かつ選択的な阻害剤である。」 1c)「【実施例5】 【0185】 塩分解法による化合物1の小さい粒径の遊離塩基の調製 【0186】 【化7】 [図:0001398222000003.jpg] 反応器に、4-{6-[6-(1-ブトキシル-ビニル)-8-シクロペンチル-5-メチル-7-オキソ-7,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2-イルアミノ]-ピリジン-3-イル}-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(2.70kg、4.47mol、1.0当量)、続いて水(27.00L、10L/kg)およびアセトン(13.50L、5L/kg)の混合物を添加した。黄色スラリーを、50℃から55℃の間に加温した。水(5.40L、2L/kgの出発材料)およびアセトン(5.40L、2L/kgの出発材料)で希釈したメタンスルホン酸(2.15kg、22.36mol、5.0当量)の溶液を反応器に、およそ10分間かけて添加した。反応混合物を、45℃から55℃の間で少なくとも12時間保った。反応中に透明黄色溶液が実現された。 【0187】 反応混合物を35℃に冷却し、5wt%水酸化ナトリウム溶液の混合物を小分けにして反応器に添加して、反応混合物をpH9超に上昇させた。反応器を20℃から25℃の間に冷却し、顆粒化し、濾過した。ケーキを水、続いてアセトンで洗浄し、真空下で乾燥させた。 【0188】 この方法により、化合物1の小さい一次粒子径の遊離塩基が発生し、これは、WO2005/005426の実施例4における化合物1塩酸塩のNaOH水溶液による処理から調製された材料と同等であった。 【0189】 上記で提供した代表的手順(表10中の実験Sに対応する)に加えて、広範な酸および水性溶媒系をスクリーニングして、反応ならびにその後の化合物1の遊離塩基のクエンチおよび単離に対する影響を決定した。実験室規模のスクリーニング実験を実行して、中間体ビニルエーテルを遊離塩基化合物1に変換するための反応条件を同定した。これらの反応スクリーニング実験の結果を、方法の一般概念を指示する表10にまとめる。 【0190】 【表10】 [図:0001398222000004.jpg] 」 甲2(訳文で示す。): 2a)「[0002] パルボシクリブ(Palbociclib)はファイザー社が最近開発した経口標的剤であり,サイクリン依存性キナーゼ4及び6(CDK4/6)を選択的に阻害し,細胞周期制御を回復し,腫瘍細胞増殖を遮断し,主に閉経後女性の晩期エストロゲン受容体(ER)陽性/ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性乳癌の治療に使用される」 2b)「[0078] 実施例11:パルボシクリブ(I)の製造 [0079] 攪拌機,温度計及び滴下漏斗を備えた250mlの四つロフラスコ中に,100gのメタノール,5.6g (20mmol)の実施例9で得られたN-シクロペンチル-3-アセチル-4-メチル-5-ホルミル-6-クロロ-2-ピリドン(IV),10.0gの実施例10で得られたN-(5-(4-t-ブトキシカルボニル-1-N-ヘキサヒドロピラジニル)2-ピリジル)グアニジン硫酸塩(V),及び20gの28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を入れ,60~65℃で5時間攪拌し,20℃に冷却し,20gの10%水酸化ナトリウム溶液を添加し,20℃で3時間攪拌して加水分解を行った。濾過し,100gのイソプロパノールで再結晶し,7.5gの白色固体状のパルボシクリブ(I)を得た,収率83.8%, 液相純度99.7%。製品分析データは以下のとおりである:」 甲3(訳文で示す。): 3a)「[0010] 本発明の目的は従来の合成方法の欠陥を克服し,工程が簡単で,製造コストが低く,高純度及び高収率のパルボシクリブの製造方法を提供することである。」 3b)[0028] 3)・・・本製造方法は収率が高く,触媒が安価且つ少量で,反応温度が低く,副生成物が少なく,これは医薬品製造の実際の要求に一致し,産業上期待される。」 3c)「[0040] 実施例4:パルボシクリブの合成 [0041] 1)三つ首フラスコに化合物VI22.5g(50mmol),21.5gのTPND及び150mLの酢酸を添加し,25~35℃で8h攪拌し反応させ(薄層クロマトグラフィーにより反応終点を追跡),反応終了後に,反応混合物を250mLの水中に入れ,濾過し,固形分を25mLの5%塩酸と25mLの水溶液で洗浄し,エタノールとジエチルエーテル(2 : 1,V/V)を加えて再結晶し,真空乾燥してパルボシクリブ21.3gを得た,収率:95.3%,純度99.8% (HPLC法)。 [0042] 2)三つ首フラスコに化合物VI45g(100mmol),43gのTPND及び150mLの酢酸を添加し,40~45℃で4h攪拌し反応させ(薄層クロマトグラフィーにより反応終点を追跡),反応終了後に,反応混合物を400mLの水中に入れ,濾過し,固形分を50mLの5%塩酸と50mLの水溶液で洗浄し,エタノールとジエチルエーテル(2 : 1,V/V)を加えて再結晶し,真空乾燥してパルボシクリブ42.4gを得た,収率:94.8%,純度99.9%(HPLC法)。」 甲4(訳文で示す。): 4a)「パルボシクリブ結晶形の製造方法」(1頁表題) 4b)「パルボシクリブ(コードネームPD-0332991、商品名Ibrance)は、CDK4およびCDK6の強力かつ選択的な阻害剤です。」(1頁2~3行) 4c)「例1:パルボシクリブ形態Aの製造 イソプロパノール(500ml,10V)と水(500ml,10.0V)中の6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン塩酸塩(50.0gm)の攪拌された懸濁液に,水酸化ナトリウム水溶液(100m1の水に8.26gm)を24-27℃で添加した。反応混合物を2時間攪拌した。生成物をろ過し水(100.0ml,2.0V)で洗いそれからイソプロパノール(100ml,2.0V)で洗い1.0時間吸引乾燥した。得られた生成物を真空下50-55℃で6-8時間乾燥し6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンを,36.0gm(89%)の黄色固体として得た(パルボシクリブ形態A,図1)。 HPLC純度99.99%;比表面積(SSA)-4.22m2/g ・・・ 例2:パルボシクリブ形態Bの製造 6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン塩酸塩(50.0gm)と水(1750ml,35.0V)の攪拌された懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液(500mlの水に8.26gm)を0-10℃で添加した。反応混合物を1時間攪拌した。反応混合物の温度を15-20℃に昇温し3時間攪拌した。生成物をろ過し水(1500ml,30.0V)で洗い6-8時間吸引乾燥した。得られた生成物を真空下50-55℃で6-8時間乾燥し6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンを,36.0gm(89%)の黄色固体として得た(パルボシクリブ形態B 図2)。 HPLC純度99.99%;比表面積(SSA)-7.80m2/g」(1頁、例1、2頁、例2) 甲5(訳文で示す。): 5a)「[0001] 本発明は医薬品化学の分野に属し,パルボシクリブの製造方法,特に高純度のパルボシクリブ及びその中間体を製造する方法に関する。」 5b)「[0009] 経路一:文献[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]に開示されたパルボシクリブ(Palbociclib)を製造する第一の方法,その合成方策は化合物A (ピリミドピリミジン環断片)及び化合物B(ピリジンビピペラジン断片)を縮合反応させて化合物Cを得て,その後これをPd触媒/ホスフィンリガンドによりビニルエーテル又はその類似体とHeck reaction及びStille reactionなどのカップリング反応を行って化合物Dを得る。最後に化合物Dは過剰の強酸により脱保護され転位反応が起こって目的分子であるパルボシクリブ(Palbociclib)が得られる。合成経路は次のとおりである(パルボシクリブの合成経路一): [0010] [図:0001398222000005.jpg] [0011] 本発明者は経路一の実施形態を繰り返してパルボシクリブ(Palbociclib)を製造する過程で,経路一によっては高純度のパルボシクリブ(Palbociclib)を製造することが難しいことを見出し,当該経路には主に以下の何個かの欠点が存在する,一つはPd触媒/ホスフィンリガンドによりビニルエーテル又はその類似体とHeck reaction及びStille reactionなどのカップリング反応を行って化合物Dを得る過程では,反応温度が高く,反応時間は比較的長い。且つPd触媒/ホスフィンリガンドが用いられる。第一に反応は複数の化合物Dの構造又は極性(溶解度)と類似する不純物(例えば不純物E、E1、E2、E3,表一参照)が発生しやすい。これらの不純物は全て保護基を持つか又は未転移状態であるため,次の反応工程において,脱保護又は転位反応が起こり,目的分子のパルボシクリブ(Palbociclib)と構造又は極性(溶解度)が類似する不純物(例えば不純物Fl、F2、F3,表一参照)が生成する。原料パルボシクリブ(Palbociclib)はその分子構造の特殊性によって,大部分の有機溶媒に対する溶解度が非常に低い(注:室温の場合,実験室又は工業的生産における通常の有機溶媒に対する溶解度はジクロロメタンに対する約3mg/mLを除き,その他の溶媒例えばメタノール,エタノール,アセトン,アセトニトリル,テトラヒドロフラン,酢酸エチル,ブタノール,N,N-ジメチルホルムアミド,さらにはジメチルスルホキシドに対する溶解度はいずれも≦(当審注:原文は「=」の部分は、「-」。以下、この文献では「以上」、「以下」の記号について同様。)1mg/mL。90-110℃の温度では,パルボシクリブ(Palbociclib)はアニソール,アニソール/n-ブタノール(3:2V/V)に対する溶解度≧25mg/mLを除き,その他の例えばn-ブタノール,N,N-ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,酢酸ブチルなどの高沸点溶媒への溶解度はいずれも25mg/mLより小さい),難溶性薬物である。各不純物の構造又は極性(溶解度)は製品に似ているので,パルボシクリブ(Palbociclib)を精製するのは困難であり,薬用に要求される,高純度の製品を得ることは困難である;第二にパルボシクリブ(Palbociclib)の中間体(化合物D)の製造工程では,反応温度が高く,反応時間が比較的長い。且つPd触媒/ホスフィンリガンドが用いられる。生成される不純物E1の含有量は比較的高い(約5-15%)。不純物E1は高温,長時間および触媒での複雑な反応系により生成される転位生成物であるため,当該不純物は比較的特異的であり,次の工程にて脱保護反応により,製品に転化することがある。そのため,化合物Dを再結晶により精製して,不純物E2、E3、E4を抑制する。さらに不純物F2、F3、F4の生成を抑制する。最終製品の精製への圧力を軽減し,製品品質を制御する。必然的に有効な中間体(不純物E1)の損失が起こる。間接的に転化率を低下させ,最終収率を低下させる;第三に上記問題を解決する既存の技術的解決手段は主に化合物Dの脱保護および転位反応後のパルボシクリブ(Palbociclib)が塩基性化合物であることに基づき,多種の酸(例えば塩酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,p-トルエンスルホン酸,イセチオン酸,トリフルオロ酢酸)との塩とした後,精製する。当業者は,パルボシクリブ(Palbociclib)が上記の酸と塩を形成した後,製品と各不純物の極性は増大するが,このことは技術処理により,パルボシクリブ(Palbociclib)と各不純物との極性差異を縮小し,再結晶又は精製に更に大きな困難をもたらすことに相当すると理解する。加えてパルボシクリブ(Palbociclib)及び不純物の極性の増大により,選択可能な再結晶溶媒の範囲が狭まり,本発明者が上述の計画過程で,パルボシクリブ(Palbociclib)のイセチオナートをメタノールを用いて再結晶し,三回再結晶した後でも,不純物が依然として品質制御の要求を満たしていなかった。 [0012] 表一:パルボシクリブ(Palbociclib)の製造過程で生成する不純物の構造(部分) [0013] [図:0001398222000006.jpg] 」 5c)「[0023] 低い原料利用率,複雑な操作,厳しい反応条件,製造設備への高い要求,低収率,コスト高という従来のパルボシクリブ(Palbociclib)の製造方法の欠陥を克服するために,本発明は方法が簡易で、合成経路が簡単で、収率が高く,且つ高純度のパルボシクリブを製造することができる新規方法を提供することを目的とする。 [0024] 本発明は以下の技術的解決手段によって実現される: [0025] 以下の工程を含むこと,を特徴とする,パルボシクリブ(式I)の製造方法: [0026] [図:0001398222000007.jpg] 式I [図:0001398222000008.jpg] 式II; [0027] [図:0001398222000009.jpg] 式III; [0028] 化合物D(式II)を原料とし,アルケニルエーテルの転移反応によって,化合物E(式III)を得,その後酸の存在下で化合物Eのブトキシカルボニル保護基(以下脱Boc保護と称する)を除去し,目的生成物であるパルボシクリブ(式I)を得る;化合物D中のRはC1-C6アルキル基、C1-C6のハロアルキル基、C1-C6のヒドロキシアルキル基、C3-C7のシクロアルキルから選択されるいずれかである。 [0029] 上記のプロセスは以下の化学反応式で示すことができる: [0030] [図:0001398222000010.jpg] [0031] 好ましくは,本発明は以下の工程を含む,製造方法を提供する: [0032] (1)化合物Dを第一有機溶媒中で酸と所定割合で混合して,アルキルエーテルの転移反応を行い,反応完了後,冷却結晶化し及び/又は再結晶のために第二の有機溶媒を添加し,淡黄色~黄色の固体の化合物Eを得る; [0033] (2)工程(1)で得られた化合物Eを第三の有機溶媒に溶解あるいは分散させ,所定量の酸を添加して反応させ,反応終了後,反応混合物を冷却し、結晶化、ろ過し,残渣を取り乾燥して,パルボシクリブの遊離塩基を得る;あるいは,前記反応混合物のpH値をアルカリ溶液で調整し,抽出,濃縮、乾燥して,パルボシクリブの遊離塩基を得る。 ・・・ [0036] 好ましくは,前記酸は1≦pKa≦5の酸から選択されるいずれかである;好ましくは,前記酸は無機酸あるいは有機酸から選択されるいずれかである;さらに好ましくは,前記無機酸は塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸中から選択されるいずれかである;前記の有機酸は1≦炭素原子数≦7の酸から選択されるいずれかであり,さらに好ましくは,トリクロロモノフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、メチルスルホン酸、グリコール酸、イセチオン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸から選択されるいずれかである;さらに好ましくは,塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、グリコール酸、イセチオン酸から選択されるいずれかである;さらに好ましくは,塩酸、ギ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸から選択されるいずれかである。」 5d)「[0055] 実施例一: [0056] 室温下,乾燥したフラスコに化合物D1(C30H39N7O45.6g,10mmol,純度≧99.5%)、HCl(7.3g,200mmol)、CH3OH(56.1ml)を添加してゆっくり混合し,反応混合物を80℃で12h攪拌し反応させ,反応終了後,混合物を冷却し晶析させ,再び少量のCH3OHと石油エーテルの混合溶媒を添加して再結晶し,淡黄色固体Eを得た。その後固体EをC2H5OH(57.0ml)中に分散させ,再びHCl(7.3g,200mmol)を滴下し,80℃で6h攪拌し反応させ,反応終了後,NaOHを添加してpH 11に調節し,冷却して晶析し,吸引濾過、乾燥により純粋なパルボシクリブの遊離塩基3.5gを得た,収率78%;質量スペクトル(EI):m/z 448(M+H)。 [0057] 実施例二: [0058] 室温下,乾燥したフラスコに,化合物D2(C33H45N7047.2g,12mmol,純度≧99.5%)、HCl(12.0g,600mmol)、CH3OH(217.0ml)を添加してゆっくり混合し,60℃で18h攪拌し反応させ,反応終了後に,反応混合物を冷却し晶析させ,再び少量のCH3OHと石油エーテルの混合溶媒を添加して再結晶し,黄色固体Eを得た。その後固体EをC2H5OH(220.0ml)中に分散させ,再びHCl(12.0g,600mmol)を滴下して,80℃で6h攪拌し反応させ,反応終了後,冷却して晶析させ,吸引濾過、乾燥により純粋なパルボシクリブの遊離塩基4.2gを得た,収率79%;質量スペクトル(EI):m/z 448(M+H)。 [0059] 実施例三: [0060] 室温下,乾燥したフラスコに化合物D3(C31H40C1N7O46.1g,10mmol,純度≧99.5%)、CH3COOH(12.0g,200mmol)、CH30H(91.4ml)を添加してゆっくり混合し,60℃で12h攪拌し反応させ,反応終了後,混合物を冷却して晶析させ,再び少量のCH3OHと石油エーテルの混合溶媒を添加して再結晶し,淡黄色固体Eを得た。その後固体EをC2H5OH(92.0ml)中に分散させ,再びHCl(7.3g,200mol)を滴下して,80℃で3h攪拌し反応させ,反応終了後,冷却して晶析させ,吸引濾過、乾燥により純粋なパルボシクリブの遊離塩基3.4gを得た,収率76%;質量スペクトル(EI):m/z 448(M+H)。 [0061] 実施例四: [0062] 室温下,乾燥したフラスコに化合物D4(C34H47N7046.2g,10mmol,純度≧99.5%)、CH3COOH(30.0g,500mmol)、CH3OH(92.6ml)を添加してゆっくり混合し,再び80℃で18h攪拌し反応させ,反応終了後,混合物を冷却して晶析させ,再び少量のCH3OHと石油エーテルの混合溶媒を添加して再結晶し,黄色固体Eを得た。その後固体EをCH3OH(95.0ml)中に分散させ,再びHCl(18.3g,500mmol)を滴下して,80℃で3h攪拌し反応させ,反応終了後,冷却し晶析させ,吸引濾過、乾燥により,純粋なパルボシクリブの遊離塩基3.4gを得た,収率76%;質量スペクトル(EI):m/z 448(M+H)。」 (2)引用発明 ア 甲4に記載された発明 甲4には、パルボシクリブが、CDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤であること、例1、例2において、具体的なパルボシクリブの固体の製造方法が記載された上で、HPLC純度99.99%のパルボシクリブを得たことが記載されている。 したがって、甲4には、 「HPLC純度99.99%のパルボシクリブからなるCDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤。」の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。 (3)対比・判断 ア 本件発明37について (ア)甲4発明の「HPLC純度99.99%のパルボシクリブ」について、HPLCで純度を求める際に、その分析原理からみて、ピークの面積による面積百分率で求めることは技術常識である(例えば、特開2015-521621号公報、【0135】、国際公開第2013/191086号、133頁、3~4行、国際公開第2014/051077号、[0061]、特開2014-227388号公報、【0039】、特開2014-210768号公報、【0053】参照。)。また、純度と総不純物の関係の技術常識から、(100-純度)%が総不純物の含有量である。そして、結果として甲4発明のパルボシクリブの総不純物の含有量は0.01%(=100-99.99%)であるといえる。 したがって、甲4発明のパルボシクリブは、HPLCで測定して面積百分率0.01%の総不純物を含有するといえ、本件発明37の「HPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する、パルボシクリブ」であることに相当する。 (イ)甲4発明の「CDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤」は、パルボシクリブを「含む」といえ、前記阻害剤は医薬であるといえるから、本件発明37のパルボシクリブを含む「医薬」である点で共通する。 (ウ)したがって、本件発明37と甲4発明とは、 「HPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する、パルボシクリブを含む医薬。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> パルボシクリブに関して、本件発明37は、総不純物についての特定に加えて、「不純物A: 【化5】 (式略) の含有量が、HPLCで測定して面積百分率0.04%以下」であることを特定しているのに対し、甲4発明は不純物Aの含有量の特定がない点。 <相違点2> 医薬について、本件発明37は、「医薬組成物」であるのに対し、甲4発明は組成物であるとはされておらず、「阻害剤」である点。 (エ)前記各相違点について検討する。 相違点1について、本件発明37において、不純物Aは不純物の1種である以上、総不純物に含まれるからその量を超えることはないところ、甲4発明には、不純物Aの含有量の直接の特定はなくとも、甲4発明のパルボシクリブが含有する総不純物がHPLCで測定して面積百分率0.01%であるといえるのであるから、不純物Aの含有量も少なくともHPLCで測定して面積百分率0.01%以下であるといえる。 したがって、甲4発明のパルボシクリブの不純物Aの含有量は、HPLCで測定して面積百分率0.04%以下であるといえ、この点は実質的な相違点ではない。 仮に、甲4発明のHPLC純度が面積百分率でなく、この点が相違点であったとしても、上述のとおり、HPLCで純度を求める際に、ピークの面積による面積百分率で求めることは技術常識であり、かつ、甲4発明は純度の測定機器としてHPLCが用いられているから、また、甲4発明における純度は、小数第2位までの有効数字で示されており、HPLC面積百分率とした場合にその値が大きく異なるともいえないから、甲4発明のHPLC純度に基づく数値をHPLCの面積百分率で特定し、本件発明37の範囲内の値とすることは当業者が容易になし得た事項であり、そのような特定事項を含むものとすることで当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものとも認められない。 相違点2について、甲4発明の「CDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤」は医薬であるといえるところ、医薬が組成物からなることは技術常識であるから、本件発明37の「医薬組成物」に相当する。 したがって、この点は実質的な相違点ではない。 仮に、前記阻害剤が組成物からなるものでなかったとしても、医薬として有用な物質を賦形剤等とともに医薬組成物とすることは周知慣用技術であるから、「医薬組成物」とすることは、当業者が容易になし得た事項であり、そのような特定事項を含むものとすることで当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものとも認められない。 (オ)したがって、本件発明37は、甲4に記載された発明であり、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明38について 本件発明38は、「請求項37に記載の医薬組成物の調製方法であって、パルボシクリブを、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせる工程を含む、方法。」であるところ、医薬組成物の有効成分を薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて調製することは技術常識であるから、甲4には、甲4発明に係るCDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤に係るパルボシクリブについて、前記賦形剤と組み合わせる医薬組成物の調製方法が記載されているといえる。 また、仮にそのような調製方法が記載されていないとしても、甲4発明に係るCDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤に係るパルボシクリブを薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて医薬組成物の調製方法とすることは当業者が容易になし得た事項である。 したがって、本件発明37と同様に、本件発明38は、甲4に記載された発明であり、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明39~41について 甲1には、パルボシクリブをがん等の細胞増殖性疾患の治療において使用すること、パルボシクリブがCDK4及びCDK6の強力かつ選択的な阻害剤であることが(摘示1b)、甲2には、パルボシクリブがサイクリン依存性キナーゼ4及び6(CDK4/6)を選択的に阻害し、細胞周期制御を回復し、腫瘍細胞増殖を遮断し、主に閉経後女性の晩期エストロゲン受容体(ER)陽性/ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性乳癌の治療に使用されることが(摘示2a)、甲3には、パルボシクリブの製造方法が医薬品製造の実際の要求に一致することが(摘示3a、3b)、甲4には、パルボシクリブがCDK4およびCDK6の強力かつ選択的な阻害剤であることが(摘示4b)記載されている。 甲4発明の阻害剤が治療法に使用されることは明らかである。 また、甲4又は甲1~4の前記記載に基づいて、甲4発明の阻害剤を治療法に使用することは当業者が容易になし得た事項である。 したがって、前記ア及びイで述べた理由を考慮すれば、本件発明39は甲4に記載された発明であり、甲4に記載された発明又は甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、甲1~4の前記記載に基づいて、パルボシクリブからなるCDK4およびCDK6の強力かつ選択的な阻害剤である甲4発明の阻害剤をがんの治療に、また、甲4発明に係るパルボシクリブをがんの治療用医薬の調製に、それぞれ使用することは当業者が容易になし得た事項である。 したがって、前記ア及びイで述べた理由を考慮すれば、本件発明40、41は甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)特許権者の主張について 特許権者は、令和4年5月2日付けの意見書において、甲4について、純度の具体的な測定方法が記載されておらず、甲4に記載されたパルボシクリブの純度が、「不純物Aの含有量が、HPLCで測定して面積百分率0.04%以下であるか、或いはHPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する」ことを当業者は確認することができず、甲4は引用文献としての適格性を欠く旨を、また、令和4年10月5日付けの意見書において、甲4には純度の具体的な測定方法が記載されていないこと、十分な分析精度を有する手法によって、本件発明に規定するような高純度のパルボシクリブを含む医薬組成物を調製することは、決して容易ではないこと、不純物A及び総不純物の含有量を特定の値以下とする本件発明は、甲4には記載されていないこと等を指摘して、本件発明の新規性・進歩性を否定できない旨を主張する。 しかしながら、甲4にHPLCの具体的な測定条件(例えばカラムの種類など)が記載されていないとしても、本件発明においてもHPLCの測定条件は特定されていないし(なお、本件明細書【0054】の化学的純度に関する記載をみても、HPLCの測定条件が特定されているとはいえない。)、HPLCによる測定自体は慣用されているものであって、甲4発明が本件発明37の総不純物又は不純物Aについての発明特定事項を満たすことは前記(3)アで述べたとおりである。 また、甲4発明は、実際に製造方法の記載を伴って得られたパルボシクリブについて、HPLCによって純度を特定するものであるところ、HPLCで純度を求める際に、ピークの面積による面積百分率で求めることが技術常識であることは前記(3)アで述べたとおりであり、前記(3)アで示した各文献に記載のとおり、HPLCで測定して純度を特定することは、周知慣用技術である。 さらに、これらの点を考慮すれば、甲4に「不純物Aの含有量が、HPLCで測定して面積百分率0.04%以下であるか、或いはHPLCで測定して面積百分率0.1%以下の総不純物を含有する」ことを直接確認した記載が明示されていないことが、甲4の引用文献としての適格性を失わせる理由にはそもそもならないことは明らかである。 したがって、前記主張を採用することはできない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明37~39はいずれも甲4に記載された発明であり、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明39~41は甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 前記第5で述べたとおり、本件発明37~39は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件発明37~39に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。 また、本件発明37~39は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲4に記載された発明に基いて、本件発明39~41は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1~4に記載された発明に基いて、それぞれ本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明37~41に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。 したがって、本件の請求項37~41に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701075

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