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特許異議申立

2021-701057

積層体

審判番号
2021-701057
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-087337
登録番号
6870141
請求日
2021年11月10日
審決日
2023年09月01日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社トライフ
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【異議申立人】砂川 幸子
  • 【異議申立人】高島 茂誉
  • 【異議申立人】成田 隆臣
  • 【異議申立人】加藤 三千代
審判長/審判官
  • 審判長 久保 克彦
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-ZAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6870141号発明「積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6870141号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 特許第6870141号の請求項1~3、5、9~13に係る特許を取り消す。 特許第6870141号の請求項4、6~8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6870141号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年5月19日を出願日とする特許出願であって、令和3年4月16日に特許権の設定登録がされた(特許掲載公報 令和3年5月12日発行)。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年11月10日 :特許異議申立人砂川幸子(以下「申立人1」という。)による請求項1~13に係る特許への特許異議の申立て 令和3年11月 9日 :特許異議申立人高島茂誉(以下「申立人2」という。)による請求項1~13に係る特許への特許異議の申立て 令和3年11月10日 :特許異議申立人成田隆臣(以下「申立人3」という。)による請求項1~13に係る特許への特許異議の申立て 令和3年11月12日 :特許異議申立人加藤三千代(以下「申立人4」という。)による請求項1~13に係る特許への特許異議の申立て 令和4年 5月17日付け:取消理由通知 令和4年 7月15日 :特許権者の意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。) 令和4年 8月24日 :申立人3の意見書 令和4年 8月30日 :申立人1の意見書 令和5年 1月31日 :取消理由通知(決定の予告) 令和5年 3月31日 :特許権者の意見書の提出 第2 本件訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第6870141号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材、並びに、 バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層 を備える積層体であって、 前記樹脂層が1つであり、 前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であり、且つ、 前記樹脂層の厚みが30μm未満である、積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)。」を、 「15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材、並びに、 バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂層 を備える積層体であって、 前記樹脂層が1つであり、 前記樹脂組成物に含まれる樹脂の97重量%超が前記バイオマス由来のポリオレフィンであり、且つ、 前記樹脂層の厚みが30μm未満である、積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5、9~13も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4、6、7及び8を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5の「請求項4記載の積層体。」を、「請求項1乃至3のいずれかに記載の積層体。」に訂正する。(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~13も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9の 「前記樹脂組成物に含まれる樹脂が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂のみからなる、請求項1乃至8のいずれかに記載の積層体。」を、「前記樹脂組成物に含まれる樹脂が前記バイオマス由来のポリオレフィンのみからなる、請求項1乃至3及び5のいずれかに記載の積層体。」に訂正する。(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~13も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10の「請求項1乃至9のいずれかに記載の積層体。」を、「請求項1乃至3、5及び9のいずれかに記載の積層体。」に訂正する。(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~13も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項11の「請求項1乃至10のいずれかに記載の積層体。」を、「請求項1乃至3、5、9及び10のいずれかに記載の積層体。」に訂正する。(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12、13も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項12の「請求項1乃至11のいずれかに記載の積層体。」を、「請求項1乃至3、5及び9乃至11のいずれかに記載の積層体。」に訂正する。(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13も同様に訂正する。) 2.訂正の適否 (1)一群の請求項 本件訂正前の請求項2~13は直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正後の請求項〔1~13〕は、一群の請求項である。 (2)訂正事項1について ア 訂正事項1の「バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物」とする訂正は、バイオマス由来の樹脂が特定されていなかったものを「ポリオレフィン」に限定するものであり、同じく「97重量%超」とする訂正は、95重量%超から数値範囲を狭めて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項1の「バイオマス由来のポリオレフィン」は、請求項4に「前記バイオマス由来の樹脂が、バイオマス由来の、ポリオレフィン又はポリエステルである」と記載され、本件明細書の段落【0051】に「前記バイオマス由来の樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種の熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、バイオマス由来の、ポリオレフィン、ポリエステル又はこれらの混合物であってよい。」と記載されており、同じく「97重量%超」は、本件明細書の段落【0049】に「前記樹脂組成物に含まれる樹脂中のバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂の配合割合は96重量%超(樹脂の総重量に基づく。以下、同様)が好ましく、97重量%超がより好ましく、」と記載されているから、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)に記載された事項の範囲内においてするものである。 ウ また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項4、6、7及び8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項3について 訂正事項3は、上記訂正事項2で請求項4を削除したことに伴い、その請求項4を引用する請求項5において、請求項4が引用していた「請求項1乃至3のいずれか」を引用するように訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について ア 訂正事項5の「バイオマス由来のポリオレフィン」とする訂正は、バイオマス由来の樹脂が特定されていなかったものを「ポリオレフィン」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項5の「請求項1乃至3及び5のいずれか」とする訂正は、請求項4の削除に伴い記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ また、訂正事項5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6、7について ア 訂正事項6の「請求項1乃至3、5、9及び10のいずれか」とする訂正は、請求項4、6~8の削除に伴い記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 同様に、訂正事項7の「請求項1乃至3、5、9乃至11のいずれか」とする訂正は、請求項4、6~8の削除に伴い記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ また、訂正事項6、7は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.本件訂正請求についてのまとめ したがって、訂正事項1~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~13〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~3、5、9~13に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5、9~13に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材、並びに、 バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂層 を備える積層体であって、 前記樹脂層が1つであり、 前記樹脂組成物に含まれる樹脂の97重量%超が前記バイオマス由来のポリオレフィンであり、且つ、 前記樹脂層の厚みが30μm未満である、積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)。 【請求項2】 前記樹脂層の厚みが25μm未満である、請求項1記載の積層体。 【請求項3】 前記樹脂層の厚みが20μm未満である、請求項1記載の積層体。 【請求項5】 前記ポリオレフィンがポリエチレンである、請求項1乃至3のいずれかに記載の積層体。 【請求項9】 前記樹脂組成物に含まれる樹脂が前記バイオマス由来のポリオレフィンのみからなる、請求項1乃至3及び5のいずれかに記載の積層体。 【請求項10】 前記紙基材及び前記樹脂層が直接一体化されている、請求項1乃至3、5及び9のいずれかに記載の積層体。 【請求項11】 前記樹脂層が押出コーティング層である、請求項1乃至3、5、9及び10のいずれかに記載の積層体。 【請求項12】 請求項1乃至3、5及び9乃至11のいずれかに記載の積層体からなる包装用シート。 【請求項13】 請求項12記載の包装用シートを備える包装体。」 第4 取消理由について 1.取消理由通知(決定の予告)の概要 本件特許の請求項1~3、5、9~13に係る発明は、甲1-5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 申立人1が提出した甲第1号証~甲第11号証をそれぞれ甲1-1~甲1-11と、申立人2が提出した甲第1号証~甲第5号証をそれぞれ甲2-1~甲2-5と、申立人3が提出した甲第1号証~甲第10号証をそれぞれ甲3-1~甲3-10と、申立人4が提出した甲第1号証~甲第20号証をそれぞれ甲4-1~甲4-20という。 甲1-2:特開平4-336246号公報 甲1-5:「最新ラミネート加工便覧」、加工技術研究会、1989年6月30日発行、176~199頁 甲1-11:宇山浩、「バイオ由来ポリマーの研究開発の現状と展望」、日本ゴム協会誌、一般社団法人日本ゴム協会、2013年6月15日発行、第86巻、第6号、161~168頁 甲3-1:特開2017-196777号公報 甲3-9:葛良忠彦、「包装材料としてのガスバリヤー性高分子」、高分子、57巻、12月号(2008年)、974~977頁 甲3-10:特願2019-173334号(特開2021-50013号) 甲4-1:国際公開第2019/069963号 甲4-4:特開2010-125796号公報 2.甲1-5の記載事項等 (1)甲1-5の記載事項 ア 「1.はじめに アメリカのDupont社が低密度ポリエチレン(LDPE)の押出コーティング/ラミネーション技術を開発してからすでに40年にもなる。当初は紙やセロファン基材に、押出樹脂としてはLDPEに限定されていたが、現在では基材として各種紙・セロファンの他、ポリプロピレン(OPPおよびCPP)、ポリエステル(PET)、ナイロン(ONyおよびCNy)、ビニロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの各種プラスチックフィルム、さらにこれらフィルムに蒸着またはコーティングを施したもの、アルミ箔などが次々と実用に供されてきている。他方、シーラントとして使用される樹脂もLDPEの他、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、低圧法低密度(直鎖状)ポリエチレン(LLDPE)、各種のエチレン共重合体、ポリエステル(PET、PBT)など、と多様化してきている。 押出コーティング法はこれら熱可塑性樹脂をスリットダイから熱溶融フィルムとして押出し、紙などの連続基材に加圧用ゴムロールと冷却金属ロール間で圧着・接合した後、冷却ロールで溶融フィルムを冷却固化し、冷却ロール表面からスムーズに剥離することを主工程とする加工法である。他方、押出ラミネーション法は、コーティング法と同様な加工工程を用いて2種類の一般に異なった基材で3層構造の、いわゆるサンドウィッチシートを構成するため、熱可塑性樹脂を接着層として接合する加工法である。しかしながら両者を併せて押出ラミネーションと呼称することも多く、本項では以下これに従い紙ベースの押出ラミネーションの加工技術について概説する。」(176頁左欄1行~右欄5行) イ 「3.装置の概要 本加工法の主目的は、紙基材に均一な厚みの薄いLDPEなどの溶融樹脂膜を成型・接合させることにある。 紙ベース用ラミネート装置の概念図を図1に示す。 LDPEを代表とする押出ラミネーション用の熱可塑性樹脂は、ホッパーに投入され、押出機で混練溶融されて、スクリーンバック、アダプターを経てTダイのマニホールド内に圧入され、スリットにより均一な薄膜としてダイ外に押出された後、加圧用ゴムロールと冷却ロール間で紙基材に圧着・接合される。 紙基材は繰出機から繰出され、加熱処理機、コロナ処理機などで接着増強処理を受けて、Tダイ下で樹脂と接合され、巻取機によって巻取られる。・・・・」(177頁左欄1~17行) ウ 「図1 紙ベース用ラミネート装置の概念図 [図:0001405770000001.jpg] 」 エ 「4.加工条件 4-1 一般加工条件 LDPEの一般的な加工条件の一例を表1に示す。」(177頁左欄18~20行) オ 「 [図:0001405770000002.jpg] 」(177頁右欄表1) カ 表1には、75g/m2の紙に、15μmのLDPEがラミネートされた加工例が示されている。 (2)甲1-5に記載された発明 上記記載事項から、甲1-5には、次の「甲1-5発明」が記載されている。 「各種紙・セロファンの他、ポリプロピレン(OPPおよびCPP)、ポリエステル(PET)、ナイロン(ONyおよびCNy)、ビニロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの各種プラスチックフィルム、さらにこれらフィルムに蒸着またはコーティングを施したもの、アルミ箔などの基材に、 LDPEの他、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、低圧法低密度(直鎖状)ポリエチレン(LLDPE)、各種のエチレン共重合体、ポリエステル(PET、PBT)などの熱可塑性樹脂をスリットダイから押出して形成した熱溶融フィルムを圧着・接合した、押出ラミネーション。」 3.甲1-5発明に基づく進歩性について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1-5発明を対比する。 (ア)甲1-5発明の「各種紙・セロファンの他、ポリプロピレン(OPPおよびCPP)、ポリエステル(PET)、ナイロン(ONyおよびCNy)、ビニロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの各種プラスチックフィルム、さらにこれらフィルムに蒸着またはコーティングを施したもの、アルミ箔などの基材」と、本件発明1の「15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材」とは、「基材」という限りで一致する。 (イ)甲1-5発明の「LDPEの他、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、低圧法低密度(直鎖状)ポリエチレン(LLDPE)、各種のエチレン共重合体、ポリエステル(PET、PBT)などの熱可塑性樹脂をスリットダイから押出して形成した熱溶融フィルム」と、本件発明1の「バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂層」であり、「前記樹脂組成物に含まれる樹脂の97重量%超が前記バイオマス由来のポリオレフィンであ」るものとは、「樹脂層」という限りで一致する。 (ウ)甲1-5発明の「押出ラミネーション」と、本件発明1の「積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)」とは、「積層体」という限りで一致する。 イ そうすると、本件発明1と甲1-5発明とは、「基材と樹脂層を備える積層体」で一致し、以下の相違点で相違する。 《相違点1》 「基材」に関し、本件発明1が「15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材」であるのに対して、甲1-5発明は「各種紙・セロファンの他、ポリプロピレン(OPPおよびCPP)、ポリエステル(PET)、ナイロン(ONyおよびCNy)、ビニロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの各種プラスチックフィルム、さらにこれらフィルムに蒸着またはコーティングを施したもの、アルミ箔などの基材」である点。 《相違点2》 「樹脂層」に関し、本件発明1が「バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂層」であり、「前記樹脂組成物に含まれる樹脂の97重量%超が前記バイオマス由来のポリオレフィンであ」るのに対して、甲1-5発明は「LDPEの他、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、低圧法低密度(直鎖状)ポリエチレン(LLDPE)、各種のエチレン共重合体、ポリエステル(PET、PBT)などの熱可塑性樹脂をスリットダイから押出して形成した熱溶融フィルム」である点。 《相違点3》 本件発明1は、「前記樹脂層が1つであり」、「前記樹脂層の厚みが30μm未満である」のに対し、甲1-5発明は、熱溶融フィルムが1つであることや、その厚みについて特定されていない点。 《相違点4》 「積層体」に関し、本件発明1が「積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)」であるのに対して、甲1-5発明の「押出ラミネーション」は、酸素透過度について特定されていない点。 ウ 上記相違点1について検討する。 甲1-5発明の基材は、「各種紙・セロファンの他、ポリプロピレン(OPPおよびCPP)、ポリエステル(PET)、ナイロン(ONyおよびCNy)、ビニロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの各種プラスチックフィルム、さらにこれらフィルムに蒸着またはコーティングを施したもの、アルミ箔など」の中から、同じく熱溶融フィルムの熱可塑性樹脂についても、「LDPEの他、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、低圧法低密度(直鎖状)ポリエチレン(LLDPE)、各種のエチレン共重合体、ポリエステル(PET、PBT)など」の中から、適宜、選択し得るところ、甲1-5には、75g/m2の坪量の紙基材に、15μmのLDPEを押出して形成した熱溶融フィルムを、圧着・接合させた加工例が記載されており(上記2.(1)オ、カ)、この加工例からみて、樹脂層が形成される基材として、「15~100g/m2未満の坪量を有する紙基材」とすることは、当業者にとって容易である。 よって、本件発明1の相違点1に係る構成は、甲1-5発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。 エ 上記相違点2について検討する。 甲1-5の上記加工例のLDPE(低密度ポリエチレン)はポリオレフィンであり、基材に圧着・接合させる熱溶融フィルムの樹脂材料として、ポリオレフィンを選択することも、当業者にとって容易である。その際、地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用するようにすることは、文献を示すまでもなく一般的な課題であり、甲1-5発明の熱溶融フィルムの樹脂材料をバイオマス由来のものとすることには動機付けがある。 そして、甲3-1の【0036】には、 「本発明において、好適に使用されるバイオマスポリオレフィンとしては、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)等が挙げられる。」と、 甲4-1の[0057]には、 「[実施例3] 得られた紙製バリア原紙1のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりバイオマスポリエチレン樹脂(Braskem社製、商品名:グリーンポリエチレン)を厚み20μm(25.2g/m2)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、バイオマスポリエチレン樹脂であり、バイオマス度は、83.4%であった。」 と記載されているように、包装材等に用いられるポリエチレン(ポリオレフィン)樹脂層の原料として、バイオマス由来のものが本件特許の出願時において市場に流通しており、甲1-5発明の熱溶融フィルムの樹脂材料として、このような市販のバイオマス由来のポリオレフィンを採用することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、上記課題の解決のため、できるだけ多くのバイオマス由来の樹脂を使用するように、「前記樹脂組成物に含まれる樹脂の97重量%超が前記バイオマス由来のポリオレフィンであ」るようにすることは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1-5発明、並びに甲3-1及び甲4-1の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 オ 上記相違点3について検討する。 上記ウで述べたように、甲1-5には、75g/m2の坪量の紙基材に、15μmのLDPEを押出して形成した熱溶融フィルムを、圧着・接合させた加工例が記載されており、この加工例からみて、基材に対して「厚みが30μm未満」の「1つ」の樹脂層を設けることは、当業者にとって適宜なし得たものである。 よって、本件発明1の相違点3に係る構成は、甲1-5発明及び甲1-5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 カ 上記相違点4について検討する。 甲3-9(975頁、「表1 各種プラスチックフィルムの酸素ガス透過度・水蒸気透過度」)の記載によると、厚さ25μmのLDPE(低密度ポリエチレン)フィルムの酸素透過度が7900cm3/m2・24h・atmであり、紙の酸素透過度は低密度ポリエチレンより大きいことが技術常識であることからすると、それらをラミネートした積層体の酸素透過度は、「10ml/m2・day・atm以下」とはならないことは明らかである。 そうすると、甲1-5発明の、75g/m2の坪量の紙基材に、15μmのLDPE(低密度ポリエチレン)を押出して形成した熱溶融フィルムを圧着・接合させた押出ラミネーションは、「積層体(但し、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下のものを除く)」である蓋然性が高い。 キ 特許権者の主張について (ア)特許権者は、令和5年3月31日の意見書において、「たとえ当業者といえども、甲1-5からは、バイオマス由来のポリオレフィンを用いて極薄の樹脂層を形成するという本件発明の課題を把握することはできません。」(5頁13~15行)と主張する。 しかし、極薄の樹脂層を形成することに関して、甲1-5に、75g/m2の坪量の紙基材に対して、15μmのLDPEを押出して形成した熱溶融フィルムを圧着・接合させた加工例が記載されているように、石油由来のポリオレフィンにおいては従来より行われてきたことであり、地球温暖化防止等の観点から、石油由来の樹脂をバイオマス由来のものに代替することが社会的に求められていることからすれば、当業者は、本件特許の出願時において、甲1-5から、バイオマス由来のポリオレフィンを用いて極薄の樹脂層を形成するという課題を把握できるものといえる。 (イ)また、特許権者は、上記意見書において、「甲1-5の第177頁の表1に記載されるように石油由来のLDPEを用いて15μm厚の樹脂層が形成できたとしても、バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物(樹脂組成物に含まれる樹脂の97%重量%超はバイオマス由来のポリオレフィン)を用いて15μm厚の樹脂層を形成できる合理的な成功の期待はございませんし、同様に、厚み30μm未満の樹脂層を形成できる合理的な成功の期待もございません。」(8頁16~21行)とも主張する。 この点、上記甲3-1には、「紙基材層として耐酸コートカップ(中越パルプ工業株式会社製、坪量270g/m2)を用意し、一方の面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面にバイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を320℃の樹脂温度、ライン速度100m/分で溶融押出しラミネートして、熱可塑性樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ20μm)を形成した。」(【0089】)と、上記甲4-1には、「得られた紙製バリア原紙1のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりバイオマスポリエチレン樹脂(Braskem社製、商品名:グリーンポリエチレン)を厚み20μm(25.2g/m2)積層し、バリア素材を得た。」([0057])と記載されており、本件特許の出願前に、バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物を用いて厚み20μmの樹脂層を形成できることは、既に知られていたことであるから、本件発明1の「厚みが30μm未満」の樹脂層を形成できることはもちろん、甲1-5の加工例の厚み15μmの樹脂層についても、形成できることが期待でき、特許権者の主張は、当を得たものではない。 ク 以上より、本件発明1は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2、3、5、9~13について ア 本件発明2、3について 本件発明2、3と甲1-5発明を対比すると、上記相違点1~4で相違する他、本件発明2、3が、「前記樹脂層の厚みが25μm未満である」、「前記樹脂層の厚みが20μm未満である」と、それぞれ特定されていることでも相違する(以下「相違点5」という。)。 しかし、相違点1~4については、上記(1)ウ~カで述べたとおりである。また、相違点5について検討すると、本件発明2、3が、「前記樹脂層の厚みが25μm未満である」、「前記樹脂層の厚みが20μm未満である」と、それぞれ特定されていることについても、甲1-5には、LDPEの熱溶融フィルムの厚さが「15μm」の加工例が記載されており、樹脂層の厚みとして、「25μm未満」あるいは「20μm未満」とすることは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件発明2、3は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明5、9について (ア)本件発明5と甲1-5発明を対比すると、上記相違点1~4で相違する他、本件発明5が「前記ポリオレフィンがポリエチレンである」と特定されていることでも相違する(以下「相違点6」という。)。 しかし、相違点1~4については、上記(1)ウ~カで述べたとおりである。また、相違点6について検討すると、本件発明5が「前記ポリオレフィンがポリエチレンである」と特定されていることについても、甲1-5発明のLDPEは、ポリオレフィンである、低密度ポリエチレンである。 よって、本件発明5は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明9と甲1-5発明を対比すると、上記相違点1~4で相違する他、本件発明9が「前記樹脂組成物に含まれる樹脂が前記バイオマス由来のポリオレフィンのみからなる」と特定されていることでも相違する(以下「相違点7」という。)。 しかし、相違点1~4については、上記(1)ウ~カで述べたとおりである。また、相違点7について検討すると、地球温暖化防止等の観点から。バイオマス由来の樹脂を、より多く使用するようにするために、樹脂組成物に含まれる樹脂をバイオマス由来のポリオレフィンのみからとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。実際、甲3-1(【0085】)及び甲4-1([0057])には、基材に対して押出ラミネートされるポリエチレン樹脂層に含まれる樹脂を、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみとする積層体が記載されており、甲1-5発明の熱溶融フィルムを構成する樹脂組成物に含まれる樹脂を、バイオマス由来のポリオレフィンのみから構成することは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件発明9は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明10、11について (ア)本件発明10と甲1-5発明を対比すると、上記相違点1~4で相違する他、本件発明10が「前記紙基材及び前記樹脂層が直接一体化されている」と特定されていることでも相違する(以下「相違点8」という。)。 しかし、相違点1~4については、上記(1)ウ~カで述べたとおりである。また、相違点8について検討すると、甲1-5発明の、紙の基材に対し「熱可塑性樹脂をスリットダイから押出して形成した熱溶融フィルムを、圧着・接合」させることは、本件発明10の紙基材及び樹脂層が「直接一体化され」ることに相当する。 よって、本件発明10は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明11と甲1-5発明を対比すると、上記相違点1~4で相違する他、本件発明11が「前記樹脂層が押出コーティング層である」と特定されていることでも相違する(以下「相違点9」という。)。 しかし、相違点1~4については、上記(1)ウ~カで述べたとおりである。また、相違点9について検討すると、甲1-5発明の、紙の基材に対し「熱可塑性樹脂をスリットダイから押出して形成した熱溶融フィルムを、圧着・接合」させたものは、「押出コーティング層」に相当するものである。 よって、本件発明11は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明12、13について 甲1-5発明の押出ラミネーションを包装用シートに用い、その包装用シートで包装体を形成することは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件発明12、13は、甲1-5発明、並びに、甲3-1、甲4-1、甲1-5及び甲3-9の各記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上より、本件特許の請求項1~3、5、9~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 本件訂正により、請求項4、6~8に係る特許は削除されたため、請求項4、6~8に対して申立人1~4がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701057

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