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特許異議申立

2021-701052

打ち粉ミックス

審判番号
2021-701052
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-207814
登録番号
6867776
請求日
2021年11月09日
審決日
2022年06月20日
公報発行日
2022年07月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ニップン
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】秋澤 慈
  • 【異議申立人】佐藤 武史
審判長/審判官
  • 審判長 大熊 幸治
  • 審判官 冨永 みどり
  • 審判官 岡崎 美穂
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6867776号発明「打ち粉ミックス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6867776号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6867776号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成28年10月24日に特許出願され、令和3年4月13日に特許権の設定登録がされ、同年5月12日にその特許公報が発行され、その後、令和3年11月9日に、特許異議申立人 佐藤 武史(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1~8に係る特許発明をそれぞれ、「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。 【請求項1】 14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる打ち粉ミックスであって、 前記粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ 前記油脂の含量Bが2.8質量%以下である、前記打ち粉ミックス(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)。 【請求項2】 前記粉立ち防止剤が油脂からなり、打ち粉ミックスに対する前記油脂の含量Bが0.1~2.8質量%である、請求項1に記載の打ち粉ミックス。 【請求項3】 前記粉立ち防止剤が小麦粉と油脂の混合物からなり、打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが14質量%以上86質量%未満でありかつ、前記油脂の含量Bが0.1~2.8質量%である、請求項1に記載の打ち粉ミックス。 【請求項4】 前記粉立ち防止剤が小麦粉と油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが14質量%未満であり、かつ 打ち粉ミックスに対する前記油脂の含量Bが0.1質量%未満であり、 式:A/14+B/0.1>1 を満たす、請求項1に記載の打ち粉ミックス。 【請求項5】 14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる打ち粉ミックスの製造方法であって、 前記粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ 前記油脂の含量Bが2.8質量%以下であり、 α化穀粉及び/又はα化澱粉と粉立ち防止剤とを混合する工程を含む、前記方法。 【請求項6】 前記粉立ち防止剤が油脂からなり、打ち粉ミックスに対する前記油脂の含量Bが0.1~2.8質量%である、請求項5に記載の製造方法。 【請求項7】 前記粉立ち防止剤が小麦粉と油脂の混合物からなり、打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが14質量%以上86質量%未満でありかつ、前記油脂の含量Bが0.1~2.8質量%である、請求項5に記載の製造方法。 【請求項8】 前記粉立ち防止剤が小麦粉と油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが14質量%未満であり、かつ 打ち粉ミックスに対する前記油脂の含量Bが0.1質量%未満であり、 式:A/14+B/0.1>1 を満たす、請求項5に記載の製造方法。 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、甲第1号証~甲第9号証を提出するとともに、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由により、本件発明1~8に係る特許は取り消されるべき旨主張している。 1 申立理由1(新規性)、2-1(進歩性) 本件発明1~3、5~7は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 また、本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 2 申立理由2-2(進歩性) 本件発明1~8は、甲第3号証に記載された発明及び甲第6~8号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 3 申立理由2-3(進歩性) 本件発明1、3、5、7は、甲第4号証に記載された発明及び甲第6~8号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 4 申立理由2-4(進歩性) 本件発明1~3、5~7は、甲第5号証に記載された発明及び甲第6~8号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 5 申立理由2-5(進歩性) 本件発明1、3、4、5、7、8は、甲第9号証に記載された発明及び甲第6~8号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 6 申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(実施可能要件) 本件発明1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、発明の詳細な説明に、実施可能な程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第4号に該当する。 7 証拠方法 甲第1号証: 特開2003-284518号公報 甲第2号証: 特開平7-265000号公報 甲第3号証: 特開昭60-087774号公報 甲第4号証: 特開2014-200207号公報 甲第5号証: 特開平9-047247号公報 甲第6号証: 特開平11-196801号公報 甲第7号証: 特開2007-244306号公報 甲第8号証: 特開平11-192064号公報 甲第9号証: 特開昭62-248466号公報 以下、甲1~9号証を、「甲1」などと略記する。 第4 当審の判断 当審は、請求項1~8に係る特許は、異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 甲号証に記載された事項 下線は合議体が付した。以下同様。 (1) 甲1に記載された事項 ア1 「【請求項1】 小麦粉由来の焼成粉砕物、潮解性食品素材、熱凝固性食品素材、油脂および膨張剤を含有することを特徴とする、ノンフライ唐揚げ用ミックス。」(特許請求の範囲) イ1 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者等は、鶏肉等の食材にまぶして、電子レンジあるいはオーブンで調理することによって、その外観に油揚げ感およびボリューム感があり、肉質がジューシーで柔らかく、表面のねちゃつきの少ない、歯切れのよい食感を有する唐揚げを得るための、ノンフライ唐揚げ用ミックスについて種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。」 ウ1 「【0010】本発明のノンフライ唐揚げ用ミックスに用いられる小麦粉由来の焼成粉砕物としてはクラッカー類、パン粉等が挙げられる。これらの小麦粉由来の焼成粉砕物は粒径1~4mmの範囲が好ましい。この粒径が1mmより小さいと、得られるノンフライ唐揚げ様食品の歯切れ感が不足する。また、粒径が4mmより大きいと、食材に当該ミックス粉をまぶしたときの付着性が悪く、調理中に食材表面から脱落しやすい。小麦粉由来の焼成粉砕物の配合割合は、ノンフライ唐揚げ用ミックス中5~40重量%の範囲で配合されていることが好ましく、これより少ないと、得られるノンフライ唐揚げ様食品の衣感が不足し、また、これより多いと付着むらが増大する。 ・・・ 【0013】本発明における油脂は、通常食用に用いられるものであればその種類を問わないが、例えばパーム油、ショートニング、サラダ油、ヘッド、ラード、ゴマ油等が挙げられ、好ましくは融点30~37℃の程度の硬化油脂であることが望ましい。油脂の配合割合は、ノンフライ唐揚げ用ミックス1~20重量%の範囲で配合されていることが好ましく、これより少ないと油揚感がなく、肉層がパサついて硬くなり易い。また、これより多いと付着性が低下すると共に唐揚げ独特のからっとした食感が減少し、脂っこくなる。」 エ1 「【0019】実施例1~9,比較例1~4 約25gの鶏もも肉に表1および表2に示すノンフライ唐揚げ用ミックスをまぶし、皿に乗せて出力500Wの電子レンジで3分間加熱した。得られたノンフライ唐揚げ様食品の外観、鶏肉の食感および衣の食感を表3に示す評価基準によって10名のパネルで官能的に評価した。その評価結果を示せば表4のとおりである。 【0020】 【表1】 [図:0001386156000001.jpg] ・・・ 【0025】 【発明の効果】本発明のノンフライ唐揚げ用ミックスを用いれば、電子レンジあるいはオーブンで調理することによって、外観に油揚げ感およびボリューム感があり、肉質がジューシーで柔らかく、表面のねちゃつきがない歯切れのよい食感を有する唐揚げ様食品を得ることができる。」 (2) 甲2に記載された事項 ア2 「【請求項1】 3mm以上の平均粒度を有する原料穀類を調質し、繊維部分を除去して、α化させたα化穀類を高速回転粉砕機または切断・せん断ミルにより予備粉砕し、続いてジェット粉砕機またはせん断ミルにより超微粉砕することにより得られる、個数基準で95%以上が粒度5~50μmであることを特徴とする超微粉化α化穀類。」 イ2 「【0007】また、市販されている小麦粉は通常α化されていないので、食する前に調理加工し澱粉をα化する必要があるが、あらかじめ小麦粉をα化したものも入手が可能である。小麦粉をα化する技術としては、製粉工程で得られた小麦粉を用いてドウを作り、これを焼成してα化させ、乾燥後に粉砕する技術等が知られているが、この方法では、一旦製粉された小麦粉を原料としており、また、ドウをわざわざ調製し更に焼成、粉砕するので、工程が煩雑であり、生産効率が極めて低く、更に、得られたα化小麦粉は着色しており、褐色を呈しているので、用途が限定されるなどの問題点がある。ましてや、α化小麦粉を連続的に超微微粉化する技術は実現されていない。」 (3) 甲3に記載された事項 ア3 「つぎに、天ぷらを作る際、パン粉をつける下地として、小麦粉の代りに本発明のα-でんぷん及び/又は含有でんぷんをα化した穀類の粉末をそのまま又は小麦粉と混合して使用することにより、ダンゴ化した層の生成をなくし、カリツとした感触の優れた製品を得ることができる。 揚げ物の衣として、例えばから揚げ或いは衣揚げをつくる場合、小麦粉の代りに、α-でんぷん及び/又は含有でんぷんをα化した穀類の粉末をそのまゝ又は小麦粉と混合して用いることにより、カリツとしてしかもパン粉程度の粒度のものを用いる場合、白色に膨化して美しく仕上げることができる。」(第4頁右上欄第19行~左下欄第12行) イ3 「実施例11 イワシのフイレーに、小麦粉5部とα化穀粉5部を混合した粉末を打粉としてつけ、10分後フライを作つた所、油ハネも殆んどなく、又油のよごれも少く、且つフライは、カリツとして、旨味があり、フライの改良が出来た。」(第7頁左上欄第17行~右上欄第2行) (4) 甲4に記載された事項 ア4 「【請求項1】 バインダーとしてα化小麦粉を用いて小麦粉を造粒して得られた造粒小麦粉であって、粒径が150μm未満の粉を30~80体積%、および粒径150μm以上の粉を70~20体積%含有する造粒小麦粉。」(請求項1) イ4 「【0006】 しかしながら、飛散やダマの生成がより少ない小麦粉、特に、振出容器に入れて保存しても、ダマができにくく且つ粉が容器に付着したり振出口に詰まることがなく、容器から直接振出して使用することができ、しかも振出しても粉塵が飛散しにくい小麦粉が求められている。そこで本発明者らは、飛散やダマの生成が少なく取扱い性に優れた小麦粉の提供を課題として、鋭意検討を行った。 【課題を解決するための手段】 【0007】 その結果、本発明者らは、バインダーとしてα化小麦粉を用いて小麦粉を造粒することにより得られた特定の粒径を有する造粒小麦粉が、従来の小麦粉としての用途に何ら制限を加えることなく、しかも飛散が抑えられ且つダマの生成の少ないことを見出した。」 ウ4 「【0021】 本発明の造粒小麦粉は、調理材料として好適である。例えば、本発明の造粒小麦粉は、ケーキやクッキー等の製菓用、天ぷらやフライ等の揚げ物の衣材の製造用、ベーカリー生地や麺生地の付着防止用の打ち粉、ルーやソースの材料、料理のとろみ付け材などとして、使用することができる。」 エ4 「【実施例】 ・・・ 【0026】 (製造例10~11) 市販の小麦粉(薄力粉:日清製粉製「フラワー」)4kgおよびα化小麦粉(日清製粉製「アルファフラワーP」)1kgを混合し、よく攪拌した。この混合粉5kgを、バインダーとしてα化澱粉(α化コーンスターチ:三和澱粉製コーンアルファーY)を8質量%含有する水を表1の量で使用して、流動層造粒装置(大川原製作所製)を用いて製造例1~7と同じ条件にて造粒小麦粉を得、粒径を測定した。得られた造粒小麦粉の粒径および50%累積粒径の分布は表1のとおりであった。 【0027】 (試験例1)飛散試験 製造例1~11の各造粒小麦粉を、それぞれ市販の粉チーズ用容器に120g毎充填し、水平に設置した平滑な平面の上に振出しを行った。振出しは、平面中央に設けた目印の直上30cmから行い、粉の残量が100gになるまで続けた。次いで、再度同じ容器に120gまで粉を充填し、別の平面に振出しを行った。このように各造粒小麦粉について振出しを計10回行った。その後、振出された造粒小麦粉の平面上での飛散範囲を計測し、前記目印から最も離れた小麦粉までの距離を求めた。10回の計測結果の平均値を表1に示す。なお、参考例として市販の非造粒小麦粉(日清製粉製「フラワー」)での結果を示す。 【0028】 (試験例2)ダマ試験 製造例1~11の各造粒小麦粉を200gずつ、10個のポリエチレン製のチャック付き袋に充填し、できるだけ空気を押し出した後に密閉した。各袋を室温で5日保存後、開封して22メッシュの篩を通し、篩上に残った重量をダマとした。10サンプルの平均値を表1に示す。なお、参考例として市販の非造粒小麦粉(日清製粉製「フラワー」)での結果を示す。」 (5) 甲5に記載された事項 ア5 「【請求項1】 吸水力が30℃で5ml/g未満、60℃で5ml/g以上、且つ70℃で10ml/g以上となるように加工した澱粉を含有することを特徴とする乾式加熱フライ用バッター。 【請求項2】 乾式加熱が電子レンジ加熱であることを特徴とする請求項1記載のフライ用バッター。 【請求項3】 生の具材に打ち粉をまぶし、粉末タンパク含有のバッター液に漬け、続いてパン粉を付けて乾式加熱によりフライ食品を製造する方法において、該バッターが請求項1記載の加工澱粉を含有することを特徴とするフライ食品の製造方法。」(請求項1、3) イ5 「【0007】更に本発明は、加熱により具材からの水分流出が問題となるフライ調理法で有効であるが、特に水分流出が多い電子レンジによる急速加熱に対し特に有効である。つまり、加熱することにより具材から衣部分に移行する水分、および衣中の水分がパン粉のサクミを失わせるものに対し有効である。又、本発明で言う生の具材とは、例えば肉、魚介類、野菜、コロッケ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。具体的なフライ食品の製造方法は、例えば以下の通りである。食品具材に打ち粉としてバレイショ、コーン澱粉等のα化物、セルロース、ガム剤等を使用し、バッターに上記の架橋処理による加工澱粉を含有するもので被覆する。これに対し、油で揚げたパン粉をまぶし、電子レンジ、オーブントースター、オーブン等で加熱するフライの製造法である。・・・」(【0007】) ウ5 「実施例1 豚ロース肉 100g、または鶏モモ肉、コロッケ等の具材に、水50%、卵白粉10%、バレイショ加工澱粉(商品名:デリカM-9 、松谷化学)40%の割合で混合して、良く分散させたバッターを付け、油ちょう済みパン粉を付着させた。これを電子レンジで3分間加熱した。 ・・・ 実施例4 実施例1においてバッターで被覆する前に具材をアルファー化コーン澱粉(商品名:テクステイドA、ナショナルスターチアンドケミカル)で打ち粉をした。以下同様に調理した。 実施例5 実施例1においてバッターで被覆する前に具材をアルファー化コーン澱粉(商品名:セキセルDC200 、旭フーズ(株))で打ち粉をした。以下同様に調理した。」(第3頁左欄第44行~右欄第21行) (6) 甲6~8に記載された事項 甲6には、「まぶすタイプの唐揚げ粉」に係る発明として、 「少なくとも小麦粉と油脂とを含み、小麦粉100 重量部に対して油脂0.1 ~1.0 重量部の配合とされ、油脂が均一に混合、分散されていることを特徴とするまぶすタイプの唐揚げ粉。」が記載されており(請求項1)、 「本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、例えば、肉、魚介類等の種物に、唐揚げ粉をまぶす工程において、粉塵の飛散を著しく少なくすることができ、したがって、作業環境を汚すことが少ないまぶすタイプの唐揚げ粉を提供することにある。」(【0007】)との記載がある。 甲7には、フライドベーカリーの製造方法に係る発明として、 「生地を焼成又は蒸煮した後、これに粉末油脂を含有する打ち粉をコーティングし、次いで油脂を含まないバッターをコーティングした後、パン粉を付着させて油ちょうすることを特徴とするフライドベーカリーの製造方法。」 が記載され(請求項1)、 「本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、生地を焼成又は蒸煮した後、これに粉末油脂をコーティングし、次いで油脂を含まないバッターをコーティングする工程を採用することにより、凍結し、電子レンジ等で解凍した後も、カリカリ感と自然な揚げたて感とのバランスがほどよく維持されるフライドベーカリーが得られることを見出し、本発明を完成した。」(【0007】)との記載があり、 「打ち粉中の粉末油脂と焼成小麦粉との混合比は、2:1~6:1が好ましく、3:1~5:1が特に好ましく、4:1程度が最も好ましい。粉末油脂含有量が2/3未満であると油脂を含まないバッターとのなじみは向上するが、フライドベーカリー製造後の貯蔵性は低下し易くなる。」(【0014】) との記載があり、【0028】表2に、粉末油脂80%、焼成小麦粉20%からなる打粉の実施例が記載されている。 甲8には、「から揚げ粉ミックス」に係る発明として、 「まぶしタイプのから揚げ粉ミックスであって、ミックスの全量に対して2~30重量%の油脂を含有されてなるから揚げ粉ミックス、あるいは2~30重量%の油脂と併用して0.5~5重量%の膨張剤が含有されてなるから揚げ粉ミックス。」(請求項1) が記載されており、油脂について、 「本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究した結果、から揚げ粉ミックスの全量に対して2~30重量%の油脂を含有させることによって、冷凍もしくは解凍後の種を2個以上ひとまとまりにした状態でフライヤーに投入しても、種同志が接着したままフライされることなく、フライ中に種が個々に分離して揚がることを見出した。」(【0007】) と記載されている。 (7) 甲9に記載された事項 ア9 「1.水分含有量10~40重量%のでんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤及び必要に応じて油脂、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンから選ばれた1種又は2種以上の存在下に、混練し、又は混練しつゝ、加圧加熱し、でんぷん質をα化してなる粉末及び/又はコラーゲン粉末85~25重量部に対し、穀粉及び/又はでんぷん15~75重量部の範囲で混合してなる打粉。」(第1頁特許請求の範囲第1項) イ9 「表-2の結果から、小麦薄力粉単用は、4分でべとつきひどくなり、又内臓流出や打粉後の単離が困難となり、均一付着も困難で食感も団子様食感が出て好ましくない。又、本発明のα化でんぷん質は、食感を除けば全く問題がないが、この改善策として、小麦粉を15~75重量部混用する事により、食感はソフトとなり、打粉してもべとつきは全く見られず、作業性が大きく改善される。但し、小麦粉の混合割合が80重量%になるとべとつきや均一付着性に問題が出てくる。即ちα化でんぷん質85~25重量部と小麦粉15~75重量部の混合打粉が打粉として良い事が判明した。」(第6頁左下欄第1~13行) 2 新規性、進歩性についての当審の判断 (1) 申立理由1(新規性)、2-1(進歩性):甲1を主引例とする理由 ア 甲1に記載された発明 摘記ア1~エ1の記載、特に、ア1とエ1の実施例1~9の結果から、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「小麦粉由来の焼成粉砕物であるクラッカー粗粉砕粉、硬化油脂、潮解性食品素材、熱凝固性食品素材、膨張剤、小麦粉を含有するノンフライ唐揚げ用ミックス。」(以下、「甲1発明」という。) イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「小麦粉由来の焼成粉砕物であるクラッカー粗粉砕粉」は、α化穀粉を含むものと認められるから、本件発明1の「α化穀粉」に相当する。。 甲1発明の「硬化油脂」、「小麦粉」は、本件発明1の「油脂」、「小麦粉」に相当する。 甲1発明の「ノンフライ唐揚げ用ミックス」と本件発明1の「打ち粉ミックス」は、成分が混合した「ミックス」である点に限り一致する。 また、本件発明1で除かれた場合について、甲1発明はこの場合に該当しない。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「α化澱粉及び/又はα化穀粉と、小麦粉及び油脂を含むミックス(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1> ミックスが、本件発明1は「打ち粉ミックス」であって、「14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる」ものであるのに対し、甲1発明は「ノンフライ唐揚げ用ミックス」であって、成分として、潮解性食品素材、熱凝固性食品素材及び膨張剤をさらに含む点。 (イ) 判断 相違点1について検討する。 一般に、「打ち粉」は、「ノンフライ唐揚げ用ミックス」とは異なる用途のものであり、本特許明細書をみても、本件発明1の打ち粉は、ノンフライ唐揚げ粉に配合されるような、潮解性食品素材、熱凝固性食品素材、膨張剤などの成分が含まれることは記載されていない。 そして、本件特許明細書の段落【0008】に 「本発明において、打ち粉ミックスとは、打ち粉として用いられるミックス粉のことを言う。好ましくは油ちょう、グリル、ベーク等の加熱調理する前に調理食材にまぶす打ち粉として用いられる打ち粉ミックスである。さらに好ましくは油ちょう食品に使用する打ち粉ミックスである。打ち粉は、から揚げ、フライ、天ぷら、フリッター等の油ちょう食品の製造において、調理食材をブレッダーやバッターで被覆する前に調理食材にまぶすことで油ちょう中の焦げ付きや肉汁や旨味成分、水分等の染み出しを防止する、調理食材と衣材とを結着させる、油ちょう後の保存時に調理食材中の水分の衣材への移行を阻止して衣のサクサクとした食感の維持することを目的として使用される。また打ち粉は、調理食材にまぶした後にそのまま又は衣付してグリル又はベークすることにより肉汁等の漏出を抑制することを目的として使用される。」 との記載があり、当該段落の末尾に「打ち粉は、調理食材にまぶした後にそのまま又は衣付してグリル又はベークすることにより肉汁等の漏出を抑制することを目的として使用される」との記載があったとしても、それはあくまでも「打ち粉(ミックス)」として使用の態様のものであって、「ノンフライ唐揚げ用ミックス」の使用態様とは異なるものである。 そうすると、相違点1は、実質的な相違点であり、甲1発明の「ノンフライ唐揚げ用ミックス」を「打ち粉」へと変更することは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1をさらに限定した「打ち粉ミックス」に関する発明であり、上記イで検討したのと同様に、甲1発明の「ノンフライ唐揚げ用ミックス」とは用途が異なるものであるから、本件発明2~4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明5~8について 本件発明5~8は、打ち粉ミックスの製造方法に係る発明であり、打ち粉ミックスと甲1発明の「ノンフライ唐揚げ用ミックス」とは用途が異なり、製造方法としてみた場合にも同様であるから、本件発明5~8は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 申立理由2-2(進歩性):甲3を主引例とする理由 ア 甲3に記載された発明 摘記ア3、イ3の記載、特にイ3の記載から、以下の発明が記載されていると認められる。 「小麦粉5部とα化穀粉5部を混合した粉末を混合した打粉」(以下、「甲3発明」という。) イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「α化穀粉」は、本件発明の「α化穀粉」に相当する。 甲3発明の「小麦粉」は、本件発明1の「小麦粉」に相当する。 甲3発明の「打ち粉」は、小麦粉とα化穀粉の2成分の混合物であるから、本件発明1の「打ち粉ミックス」に相当する。 また、本件発明1で除かれた場合について、甲3発明はこの場合に該当しない。 そうすると、本件発明1と甲3発明は、 「α化穀粉と、小麦粉を混合した打ち粉ミックス(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1a> 打ち粉ミックスが、本件発明1では、「14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる」打ち粉ミックスであって、「前記粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ前記油脂の含量Bが2.8質量%以下である」ものであるのに対し、甲3発明は、そのような特定がされていない点。 (イ) 判断 相違点1aについて検討する。 甲3には、打ち粉において、油脂を粉立ち防止剤として配合することについて一切記載がない。 また、甲6、8には、唐揚げ粉に関する記載があり、甲7には、フライドベーカリーに関する記載があるものの、これらの用途は打ち粉とは異なるから、これらの甲号証に記載された技術を打ち粉に用いることは当業者にとって動機付けられるものではない。 そうすると、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することはできたものではない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1をさらに限定した「打ち粉ミックス」に関する発明であり、上記イで検討したのと同様に、甲3に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 エ 本件発明5~8について 本件発明5~8は、打ち粉ミックスの製造方法に係る発明であるが、製造方法としてみた場合にも、打ち粉ミックスに関する点については上記イで検討したのと同様であるから、本件発明5~8は、甲3に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由2-3(進歩性):甲4を主引例とする理由 ア 甲4に記載された発明 摘記ア4~エ4、特に摘記ア4の記載からみて、甲4には、以下の発明が記載されている。 「バインダーとしてα化小麦粉を用いて小麦粉を造粒して得られた造粒小麦粉であって、粒径が150μm未満の粉を30~80体積%、および粒径150μm以上の粉を70~20体積%含有する造粒小麦粉。」(以下、「甲4発明」という。) イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「α化小麦粉」は、本件発明1の「α化穀粉」に相当する。 甲4発明の「小麦粉」は、本件発明1の「小麦粉」に相当する。 また、本件発明1で除かれた場合について、甲4発明はこの場合に該当しない。 そうすると、本件発明1と甲4発明は、 「α化穀粉及び小麦を含有するもの(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 である点で一致し、以下の点で少なくとも相違する。 <相違点1b> 本件発明1は、「14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる打ち粉ミックス」に係る発明であって、「粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ前記油脂の含量Bが2.8質量%以下である」ものであるのに対し、甲4発明は、「造粒小麦粉」の発明であって、「打ち粉」の用途に係る特定がなく、さらに、油脂を含む粉立ち防止剤に関する特定もない点。 (イ) 判断 相違点1bについて検討する。 甲4には、摘記ウ4に、造粒小麦粉の用途として、「天ぷらやフライ等の揚げ物の衣材の製造用、ベーカリー生地や麺生地の付着防止用の打ち粉」との記載がある。また、α化小麦粉を用いて小麦粉を造粒することにより得られた特定の粒径を有する造粒小麦粉とすることで、従来の小麦粉としての用途に何ら制限を加えることなく、しかも飛散が抑えられていることが記載されている(摘記イ4,エ4)。 甲4発明は、既に小麦粉の飛散が抑えられて課題が解決しているから、さらに油脂を粉立ち防止剤として配合する動機付けはない。また、摘記ウ4記載の「天ぷらやフライ等の揚げ物の衣材の製造用」との用途は、打ち粉としての用途ではない。また、甲4の摘記ウ4には、「ベーカリー生地や麺生地の付着防止用の打ち粉」との記載もあるので、本件特許明細書の段落【0008】の記載によると本件発明の打ち粉とは使用対象が異なるものの、この用途の「ベーカリー生地や麺生地の付着防止用の打ち粉」として用いた場合について一応検討する。 甲7は、フライドベーカリーの製造方法に関する発明であり、この発明は、「電子レンジ等で解凍した後も、カリカリ感と自然な揚げたて感とのバランスがほどよく維持されるフライドベーカリーが得られること」を目的としたものであり(1(6)の甲7に記載された事項を参照)、請求項1には、「生地を焼成又は蒸煮した後、これに粉末油脂を含有する打ち粉をコーティングし」との記載があるところ、打ち粉中の粉末油脂と焼成小麦粉との混合比は、2:1~6:1と記載されている(【0014】)。 甲7に記載された打ち粉中の油脂は、その含量も本件発明1とは大きく異なるものであるから、打ち粉の粉立ち防止のために用いるものとは認められない。 また、他の甲6、8は、唐揚げ粉に関するものであって、打ち粉とは異なる用途であるから、甲4発明において、これらに関する技術的事項を参酌することはできない。 そうすると、甲6~8に記載された事項を参酌したとしても、甲4発明を、「ベーカリー生地や麺生地の付着防止用の打ち粉」の用途に用い、さらに、本件発明1の相違点1bに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3、5、7について 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した「打ち粉ミックス」に関する発明であり、上記イで検討したのと同様の理由から、本件発明3は、甲4に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明5、7は、打ち粉ミックスの製造方法に関する発明であるが、製造方法としてみた場合にも、打ち粉ミックスに関する点については上記イで検討したのと同様であるから、本件発明5、7は、甲4に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 申立理由2-4(進歩性):甲5を主引例とする理由 ア 甲5に記載された発明 摘記ア5~ウ5、特に、ウ5の実施例4、5の記載からみて、甲5には以下の発明が記載されている。 「アルファー化コーン澱粉である打ち粉」(以下、「甲5発明」という。) イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲5発明を対比する。 甲5発明の「アルファー化コーン澱粉」は、本件発明1の「α化澱粉」に相当する。 甲5発明の「打ち粉」は、本件発明1の「打ち粉ミックス」と「打ち粉」である限りにおいて、一致する。 また、本件発明1で除かれた場合について、甲5発明はこの場合に該当しない。 そうすると、本件発明1と甲5発明は、 「α化澱粉及び/又はα化穀粉を含む打ち粉(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1c> 本件発明1は、 「14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる打ち粉ミックスであって、 前記粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ 前記油脂の含量Bが2.8質量%以下である、前記打ち粉ミックス(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 と特定されるのに対し、甲5発明は、このような粉立ち防止剤を含む打ち粉ミックスに係る特定はない点。 (イ) 判断 上記相違点1cについて検討する。 甲5には、打ち粉に、粉立ち防止剤として、油脂又は小麦粉及び油脂の混合物を配合することに関する記載はない。 また、甲6~8をみても、打ち粉に、粉立ち防止剤として、油脂又は小麦粉及び油脂の混合物を、油脂の含量を2.8質量%以下とする量で含有させることを示唆するような記載はない。 そうすると、甲6~8の記載を参酌したとしても、甲5発明において、本件発明1の相違点1cに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件発明1は、甲5に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2、3、5~7について 本件発明2、3は、本件発明1をさらに限定した「打ち粉ミックス」に関する発明であり、上記イで検討したのと同様の理由から、本件発明2、3は、甲5に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明5~7は、打ち粉ミックスの製造方法に関する発明であるが、製造方法としてみた場合にも、打ち粉ミックスに関する点については上記イで検討したのと同様であるから、本件発明5~7は、甲5に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5) 申立理由2-5(進歩性):甲9を主引例とする理由 ア 甲9に記載された発明 摘記ア9からみて、甲9には、 「水分含有量10~40重量%のでんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤及び必要に応じて油脂、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンから選ばれた1種又は2種以上の存在下に、混練し、又は混練しつゝ、加圧加熱し、でんぷん質をα化してなる粉末及び/又はコラーゲン粉末85~25重量部に対し、穀粉及び/又はでんぷん15~75重量部の範囲で混合してなる打粉。」(以下、「甲9発明」という。) の発明が記載されている。 イ 本件発明1について (ア) 甲9発明において、打粉に油脂が含まれる場合 甲9発明は、必要に応じて選択しうる条件として油脂の添加を選択した場合、でんぷん又はでんぷん含有量の多い穀粉に、乳化剤及び油脂とともに混練して加圧加熱し、でんぷん質をα課した粉末が混合されている打粉に関するものであって、油脂の存在下にでんぷん又はでんぷん含有量の多い穀粉をα化した打粉の態様を含むものである。 そうすると、甲9発明において、油脂が含まれる場合は、本件発明1で除外されている場合であるから、この除外されている甲9発明を引用発明とした場合、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 甲9発明において、打粉に油脂が含まれない場合 本件発明1と甲9発明を対比する。 甲9発明の打粉に油脂が含まれない場合は、 「水分含有量10~40重量%のでんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤及び必要に応じてナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンから選ばれた1種又は2種以上の存在下に、混練し、又は混練しつゝ、加圧加熱し、でんぷん質をα化してなる粉末及び/又はコラーゲン粉末85~25重量部に対し、穀粉及び/又はでんぷん15~75重量部の範囲で混合してなる打粉。」 との態様の発明となるところ、発明における選択肢のうち、澱粉がα化した態様であって、必要に応じてとの任意事項を選択しない態様とすると、 「水分含有量10~40重量%のでんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤の存在下に、混練し、又は混練しつゝ、加圧加熱し、でんぷん質をα化してなる粉末に対し、穀粉及び/又はでんぷん15~75重量部の範囲で混合してなる打粉。」 の発明となる(以下、「甲9発明a」という。)。 a 対比 本件発明1と甲9発明aを対比する。 甲9発明aの「でんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤の存在下に、混練し、又は混練しつゝ、加圧加熱し、でんぷん質をα化してなる粉末」は、本件発明1の「α化澱粉及び/又はα化穀粉」に相当する。 甲9発明aの「穀粉及び/又はでんぷん」は、本件発明1の「小麦粉」に相当する。 甲9発明aの「打粉」は、「でんぷん質をα化した粉末」と「穀粉及び/又はでんぷん」を含む混合物であるから、本件発明1の「打ち粉ミックス」に相当する。 また、本件発明1で除かれた場合について、甲9発明aはこの場合に該当しない。 そうすると、本件発明1と甲9発明aは 「α化澱粉及び/又はα化穀粉と、小麦粉を配合した打ち粉ミックス(但し、前記α化澱粉及び/又はα化穀粉が、少なくとも油脂の存在下で澱粉質をα化したものである場合を除く)」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1d> 本件発明1は、「14~99.9質量%のα化澱粉及び/又はα化穀粉と、0.1~86質量%の粉立ち防止剤からなる打ち粉ミックスであって、 前記粉立ち防止剤が油脂からなり又は前記粉立ち防止剤が小麦粉及び油脂の混合物からなり、 打ち粉ミックスに対する前記小麦粉の含量Aが0質量%以上86質量%未満であり、かつ 前記油脂の含量Bが2.8質量%以下である、前記打ち粉ミックス」 と特定されるのに対し、甲9発明aは、油脂又は油脂と小麦粉の混合物からなる粉立ち防止剤に係る特定はない点。 b 判断 相違点1dについて検討する。 甲9には、でんぷん質がα化した粉末を含む打ち粉に、粉立ち防止剤として、油脂又は小麦粉及び油脂の混合物を配合することに関する記載はない。 また、甲6~8をみても、打ち粉に、粉立ち防止剤として、油脂又は小麦粉及び油脂の混合物を、油脂の含量を2.8質量%以下とする量で含有させることを示唆するような記載はない。 そうすると、甲6~8の記載を参酌したとしても、甲9発明aにおいて、本件発明1の相違点1dに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3、4、5、7、8について 本件発明3、4は、本件発明1をさらに限定した「打ち粉ミックス」に関する発明であり、上記イで検討したのと同様の理由から、本件発明3、4は、甲9に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明5、7、8は、打ち粉ミックスの製造方法に関する発明であるが、製造方法としてみた場合にも、打ち粉ミックスに関する点については上記イで検討したのと同様であるから、本件発明5~7は、甲9に記載された発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6) まとめ よって、申立理由1、2-1~2-5は理由がなく、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。 3 申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(実施可能要件)について (1) 申立理由の概要 主張ア: 本件特許の請求項1において、打ち粉ミックスに油脂が2.8質量%以下で含まれることは記載されているものの、含まれる油脂の下限量は明記されていない。 しかしながら、本件明細書の実施例において、α化小麦澱粉99.95質量部および油脂0.05質量部からなる打ち粉ミックスでは、「粉立ちが激しく作業性が悪かった」ことが記載され(本件明細書の段落【0024】~【0025】、表2比較例2)、また、α化小麦澱粉90質量部および小麦粉10質量部からなる打ち粉ミックスにおいても、比較例2と同様、粉立ちが悪かったことが記載されているから(本件明細書の段落【0026】~【0028】、表3比較例4)、請求項1の範囲内となるα化小麦澱粉99.9質量部、小麦粉0.05質量部および油脂0.05質量部からなる打ち粉ミックスの配合としたとしても、粉立ちは改善しない蓋然性が高く、請求項1、4、5、8に係る発明は、本件特許発明の効果を達成できないものも含まれることになる。 また、本件明細書には、小麦粉に粉立ち防止効果を有させる構成について一切記載されていない。α化澱粉又はα化穀粉と小麦粉との粒径の関係により、小麦粉が粉立ち防止する機能を有さない場合も存在するはずであるが、粒径関係について本件特許明細書には記載がないから、本件発明1、4、5、8の全範囲において、ダマ防止及び粉立ち防止効果が得られることを理解できない。 したがって、当業者といえども、請求項1、4、5、8記載の発明の全範囲において課題が解決できることを認識することはできない。また同様の理由から本件の発明の詳細な説明は、本件請求項1、4、5,8に記載の発明全体を実施可能な程度に明確かつ十分に記載されたものではない。(申立書 第35~36頁(4-8)(1)) 主張イ: 甲6記載発明と甲8記載発明は、小麦粉に油脂を添加する唐揚げ粉の発明である点で同様の発明であり、いずれも本件発1~8と同様の量の油脂を使用するものであるが、甲6記載発明では飛散防止効果を得るために植物性ショートニングを融解させて用い(実施例1~3参照)、甲8記載発明では、油調中に種を分離するために粉末油脂を使用している。甲6記載発明で「油脂は、食用油脂であって、唐揚げ粉中に均一に混合、分散させることができるものであればよく」と記載している通り、飛散防止やダマ防止の効果を得るためには、均一にミックス中に混合させる必要があり、それにはミックス中に混合させる際に油脂が液状であることが必要と解される。 一般にミックスに粉末油脂を用いるのはミックス中への混合中ではなく、油調中に融解することを想定するためであり、粉末油脂を用いる場合は、通常α化澱粉やα化穀粉に固形状のまま混合されるため、α化澱粉やα化穀粉の物性への影響が低く、飛散防止やダマ防止を実現できない蓋然性が高い。 そうすると、油脂として粉末油脂を用いる場合は本件特許発明1~8と技術思想が異なることが明らかであり、当業者といえども、油脂の形態を限定していない請求項1~8記載の発明の全範囲において本件特許発明1~8の課題が解決できることはできない。また同様の理由から本件の発明の詳細な説明には、本件請求項1~8に記載の発明を実施可能な程度に明確かつ十分に記載されたものではない。(申立書 第36~37頁(4-8)(2)) (2) 判断 ア 本件発明のサポート要件及び実施可能要件について (ア) 本件発明の課題について 本件特許明細書の段落【0004】の記載からみて、本件発明の課題は、「打ち粉ミックスであって、調理食材に打ち粉をまぶす際に打ち粉の粉立ちがなく、ダマの発生を抑制できる打ち粉ミックス及びその製造方法を提供する」ことにあると認められる。 (イ) 実施例の記載について 油脂の含有量について、本件特許明細書の段落【0024】の表2には、α化小麦澱粉と油脂からなる打ち粉合計量100質量部中、油脂の含量が0.15、1,5,2.5.2.8質量部の結果が記載され、油脂の配合量の増加に依存して、粉立ちが抑制されることが記載されており、(【0025】)、一方、油脂の含有量が3.0質量部の場合は、油脂によりα化澱粉がべたついて油脂とα化澱粉のダマを生じること、0.05質量部又は0質量部の場合は、ダマの発生に問題はないものの、粉立ちが激しく作業性が悪いことが説明されている(【0025】)。 「【表2】 [図:0001386156000002.jpg] 」 また、段落【0030】表4には、α化小麦澱粉、油脂、小麦粉を配合した場合についての結果が記載されている。 「【表4】 [図:0001386156000003.jpg] 」 さらに、打ち粉ミックスとして、α化澱粉単独の場合やα化澱粉と小麦粉の混合物の場合の結果も記載されている(【0027】表3)。 「【表3】 [図:0001386156000004.jpg] 」 なお、各項目の評価の数値については、【0023】の表1に説明されている。 「【表1】 [図:0001386156000005.jpg] 」 表2、4の記載から、α化澱粉と油脂の合計量100質量部又はα化澱粉と油脂と小麦粉の合計量100質量部において、油脂の含量が2.8質量部以下であれば、ダマの発生がなく、粉立ち防止が発揮できること、また、油脂の配合量に依存して粉立ちが抑制されることが理解できる。 また、本件発明の範囲外の例ではあるが、表3の記載から、α化小麦澱粉と小麦粉からなる打ち粉ミックスにおいて、合計量が100質量部のうち、α化小麦澱粉が15~85質量部、小麦粉が85~15質量部であれば、粉立ちとダマ発生が抑制されることが記載されており、また、段落【0028】には、「α化澱粉に小麦を配合すると、その配合量の増加に依存して粉立ちは抑制された。」との記載もある。 (ウ) 本件発明のサポート要件及び実施可能要件についての判断 そうすると、本件発明1において、油脂の含量が2.8質量%以下であって、小麦粉の含量が0質量%以上86質量%未満であり、α化澱粉及び/又はα化穀粉が14~99.9質量%の範囲であれば、本件発明の課題(粉立ち・ダマ発生の防止)が達成できることが理解でき、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施できる程度に十分かつ明確に記載されていることも理解できる。 本件発明2~8についても同様である。 イ 申立人の主張ついて (ア) 主張アについて 本件特許明細書の段落【0027】表3には、α化小麦澱粉と小麦粉を15~85:85~15の割合で配合した実施例5~7が記載されており、これらの例は、油脂を含まない点で本件発明1の範囲外のものではあるが、粉立ち、ダマ発生の防止に対して効果があることが記載されている。そして、α化小麦澱粉と小麦粉の配合割合が本件発明1で規定する範囲外である比較例及び対象例では、これらの効果が劣ることも記載されている。 ここで、本件特許明細書に、α化小麦澱粉99.95質量部および油脂0.05質量部からなる打ち粉ミックスでは、粉立ちの評価数値が「2.4」で「粉立ちが激しく作業性が悪かった」ことが記載されているとしても(【0024】表2,【0025】)、同じ段落の表2には、α化小麦澱粉99.85質量部および油脂0.15質量部では、粉立ちの評価数値も「3.6」(評価で「2点:粉立ちが多い」、「3点:やや粉立ちがある。」)となり、油脂の配合量が増加すれば、粉立ちは改善されていることは理解ができ、「α化澱粉に油脂を配合すると、その配合量の増加に依存して粉立ちは抑制された」との記載もある(段落【0025】)。 まず、主張アのうち、「α化小麦澱粉99.9質量部、小麦粉0.05質量部および油脂0.05質量部からなる打ち粉ミックスの配合としたとしても、粉立ちは改善しない蓋然性が高いので、本件発明の範囲に、効果を達成できないものも含まれる」との主張について、検討する。 本件特許明細書の段落【0028】には、「α化澱粉に小麦を配合すると、その配合量の増加に依存して粉立ちは抑制された。」との記載があり、α化小麦澱粉99.95質量部および油脂0.05質量部からなる比較例2の打ち粉ミックスの場合より、小麦粉が配合されることによって粉立ち抑制効果が発揮されることが理解できるから、粉立ちが改善しない蓋然性が高い旨の憶測の主張は採用できない。さらに、表3には、上記のとおり、油脂の配合がない、α化小麦澱粉と小麦粉のみからなる打ち粉ミックスが、α化小麦澱粉と小麦粉の特定の配合割合の場合に、粉立ち及びダマ発生が抑制できることが記載されているから、この特定の配合割合の範囲であれば、油脂をごく少量配合しても、配合しないのと同程度の粉立ち及びダマ発生が抑制できると推認される。 そうすると、本件発明において、油脂の含量の下限値がなくとも、サポート要件及び実施可能要件は満たされるといえる。 次に、主張アのうち、本件明細書には、小麦粉に粉立ち防止効果を有させる構成について一切記載されていないとの主張について、検討する。 本件発明は、α化澱粉及び/又はα化穀粉に、粉立ち防止剤として油脂又は油脂と小麦粉の混合物を用いることによって、粉立ち防止効果を得ることを技術的特徴とする発明である。本件特許明細書には、α化小麦澱粉に小麦粉を配合することで粉立ち防止を有する旨の記載もあるが(【0026】~【0028】)、本件発明において粉立ち防止効果を発揮する構成は油脂を含む粉立ち防止剤であることが明らかである。また、この主張に関し、小麦粉の粒径について述べているが、その具体的な根拠も説明されていないので、小麦粉の粉立ち防止効果に関する主張は採用できない。 (イ) 主張イについて この主張は、甲6、甲8に記載された唐揚げ粉に関する技術は、本件発明と同じ技術であるという前提のもと、粉末油脂を用いる場合は、通常α化澱粉やα化穀粉に固形状のまま混合されるため、α化澱粉やα化穀粉の物性への影響が低く、飛散防止やダマ防止を実現できない蓋然性が高いとの主張である。 しかしながら、唐揚げ粉と本件発明の打ち粉とは異なる用途であるから、前提が成立しない。また、油脂に関し、本件特許明細書の段落【0013】に、「固形の硬化油と固体脂であれば、加熱して液状にしてからα化澱粉及び/又はα化穀粉に混合するか、α化澱粉及び/又はα化穀粉に混合してから融点以上の温度に昇温して更に混合することができる。」との記載があるから、粉末油脂を用いた場合であっても、当業者であれば、飛散防止やダマ防止が発揮できることが理解できる。 さらに、本件発明1では、油脂を粉末油脂である「固体油脂」に限ったものではなく、液体油又はクリーム状の硬化油なども使用できるから(【0013】、使用する油脂の融点は、本件発明の目的を達成できる範囲で適宜設定し得る事項にすぎない。 よって、主張イについても採用できない。 (2) まとめ よって、申立理由3,4はその理由がなく、本件発明1~8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がこれらの発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号又は同条第4項第1号の規定に違反したものではないから、同法第第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1~8に係る発明の特許は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に、請求項1~8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701052

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