2021-700929
分光データ管理装置、測定装置および測定システム
- 審判番号
- 2021-700929
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-566429外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6860090
- 請求日
- 2021年09月28日
- 審決日
- 2022年07月26日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニコン
- 【権利者代理人】龍華国際特許業務法人
- 【異議申立人】石森 千晴
- 分類
- P1651.121-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 23項目
第1 手続の経緯
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特許第6860090号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本願」という。)は、2019年(平成31年)1月8日(優先権主張 平成30年1月16日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年3月30日にその請求項1-15に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議申立の経緯は次のとおりである。
いう。)による請求項1ないし15に係る
特許に対する特許異議の申立て
なお、令和4年5月10日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人は指定期間内に意見書を提出することはなかった。
第2 訂正の適否についての判断1.訂正の内容
本件訂正請求(令和4年3月22日付け訂正請求書による訂正請求)による訂正の内容は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、前記測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データを取得するデータ取得部と、前記画像データ、前記スペクトルデータおよび前記光線空間データを対応付けて記憶する記憶部とを備える分光データ管理装置。」を、「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、前記測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データを取得するデータ取得部と、前記画像データ、前記スペクトルデータおよび前記光線空間データを対応付けて記憶する記憶部とを備え、前記対象物は、食品である分光データ管理装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5および15も、同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5における「前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて前記対象物の種類または状態を判別する判別部をさらに備える」を、「前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて前記対象物の種類を判別する判別部をさらに備える」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項15も、同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6における「対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、前記対象物に照明光を照射する照明部と、前記画像データ、前記スペクトルデータ、および、光線空間データを対応付けて記憶および/または出力するデータ処理部とを備え、前記光線空間データは、前記測定領域に対する照明光に関する光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示すデータである測定装置。」を、「対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、前記対象物に照明光を照射する照明部と、前記画像データ、前記スペクトルデータ、および、光線空間データを対応付けて記憶および/または出力するデータ処理部とを備え、前記光線空間データは、前記測定領域に対する照明光に関する光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示すデータであり、前記対象物は、食品である測定装置。」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~15も、同様に訂正する。)
2. 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「対象物」を「対象物は、食品である」との記載により「食品」に限定するものである。同様に、訂正後の請求項2~5、15は、訂正後の請求項1における上記記載を引用することにより限定される。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項1は、請求項1~5、15に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ そして、本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0032】に「ユーザーが食品である対象物300を」と記載されていることから「対象物」が「食品である」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項である。よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項5に係る発明の「前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて」「対象物」を「判別する判別部」の判別項目を「対象物の種類又は状態」から、「対象物の種類」に限定するものである。同様に、訂正後の請求項15は、訂正後の請求項5における上記記載を引用することにより限定される。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項2は、請求項5及び15に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ そして、本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0032】に「演算部230は、画像130に基づいて、対象物300の種類を判別してよい。」と記載されていることから、「前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて」「対象物」を「判別する判別部」の判別項目が、「対象物の種類」であることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項である。よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項6に係る発明の「対象物」を「対象物は、食品である」との記載により「食品」に限定するものである。同様に、訂正後の請求項7~15は、訂正後の請求項6における上記記載を引用することにより限定される。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項3は、請求項6~15に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ そして、本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0032】に「ユーザーが食品である対象物300を」と記載されていることから「対象物」が「食品である」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項である。よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項1ないし3の一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項1ないし15について、請求項2ないし5は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであり、請求項7ないし14は請求項6を直接又は間接的に引用しているものであり、請求項15は請求項1ないし5及び請求項6ないし14を引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし15は、一群の請求項に該当する。
したがって、訂正前の請求項1ないし15に対応する訂正後の請求項1ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
そして、本件においては、訂正前の請求項1ないし15について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし15に係る訂正事項1及び3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項1ないし15について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし15に係る発明(以下「本件発明1ないし15」は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、前記測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ続きを表示(全65行)を取得するデータ取得部と、前記画像データ、前記スペクトルデータおよび前記光線空間データを対応付けて記憶する記憶部とを備え、前記対象物は、食品である分光データ管理装置。【請求項2】前記データ取得部は、同一の前記対象物に対して、複数の前記測定領域における前記スペクトルデータを取得する請求項1に記載の分光データ管理装置。【請求項3】前記データ取得部は、前記光線空間データとして前記照明光の光源の位置を示すデータを取得し、前記画像データに基づいて前記測定領域の位置を算出し、それぞれの前記測定領域の位置および前記光源の位置に基づいて、それぞれの前記測定領域に入射する前記照明光の照射角度を算出する演算部を更に備える請求項2に記載の分光データ管理装置。【請求項4】前記画像データおよび前記スペクトルデータは、前記画像データを生成する撮像部および前記スペクトルデータを生成する分光測定部を備える測定装置により生成され、前記データ取得部は、複数の前記測定装置により生成された前記画像データ、前記スペクトルデータ、前記光線空間データを取得する請求項1から3のいずれか一項に記載の分光データ管理装置。【請求項5】前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて前記対象物の種類を判別する判別部をさらに備える 請求項1から4のいずれか一項に記載の分光データ管理装置。【請求項6】対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、前記対象物に照明光を照射する照明部と、前記画像データ、前記スペクトルデータ、および、光線空間データを対応付けて記憶および/または出力するデータ処理部とを備え、前記光線空間データは、前記測定領域に対する照明光に関する光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示すデータであり、前記対象物は食品である測定装置。【請求項7】前記対象物からの光を分岐させて前記撮像部と前記分光測定部にそれぞれ入射させ、回転可能な分岐部材と、前記分岐部材の回転を制御して、前記画像内での前記測定領域の位置を設定する回転制御部とを備える請求項6に記載の測定装置。【請求項8】前記分岐部材は、前記対象物からの光の一部を透過させて前記撮像部に入射させるとともに、他部を反射させて前記分光測定部に入射させるビームスプリッタであり、前記データ処理部は、前記ビームスプリッタの屈折率、回転角、及び厚さのいずれかまたは全てに基づいて、前記画像内での前記測定領域の位置を補正する請求項7に記載の測定装置。【請求項9】前記測定領域に、前記分光測定部の光軸と同一の光軸を有するスポット光を照射するスポット照射部を備え、前記撮像部は、前記スポット光が照射された前記対象物の画像を撮像して前記画像データを生成する請求項7または8に記載の測定装置。【請求項10】前記画像内の前記スポット光の位置に基づいて前記測定領域を入力する入力部を更に備える請求項9に記載の測定装置。【請求項11】前記回転制御部は、前記画像内での前記スポット光の位置に基づいて、前記分岐部材の回転を制御する請求項9に記載の測定装置。【請求項12】前記スポット光を集光する対物レンズを更に備え、前記画像における前記スポット光の大きさに基づいて、前記対物レンズの焦点位置を制御する焦点制御部を備える請求項9から11のいずれか一項に記載の測定装置。【請求項13】前記スポット照射部は、予め定められた波長帯域の前記スポット光を照射し、前記分光測定部は、前記対象物の種類に応じた波長帯域の前記スペクトルデータを生成する請求項9から12のいずれか一項に記載の測定装置。【請求項14】前記撮像部は、予め定められた画素ピッチで配列された複数の画素を有し、前記回転制御部は、前記分岐部材を回転させて、前記画像の撮像領域の位置を前記画素ピッチより小さい距離だけずらした少なくとも2つの前記画像データを取得させる請求項7から13のいずれか一項に記載の測定装置。【請求項15】請求項1から5のいずれか一項に記載の分光データ管理装置と、請求項6から14のいずれか一項に記載の測定装置と、を備える測定システム。」
第4 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証ないし甲第10号証を提出し、以下の異議申立理由(以下「異議申立理由」という。)によって、本件訂正前の請求項1ないし15に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
<証拠一覧>
(1) 本件訂正前の請求項1ないし15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3ないし10号証の記載事項から当業者が容易になしえた発明である。
(2) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証の記載事項から当業者が容易になしえた発明である。
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし15に係る特許に対して、当審が令和4年1月17日(起案日)に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
●取消理由1(進歩性)
本件出願の請求項1-8、14、15に係る発明は、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、本件出願の請求項1-2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
2.甲号証の記載
(1)甲第1号証
本件特許の優先日前である平成28年(2016年)2月25日に頒布された刊行物である「特開2016-28250号公報」(以下「甲第1号証」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下同様。)
ア 「【0002】本願発明は、医学的診断を提供する生物学的試片をスペクトル画像によって分析する方法に関する。生物学的試片は、外科的方法、生検、および培養サンプルにより得られた医学的試片を含んでもよい。」
イ 「【0040】本願発明の一課題は、医学的診断を提供するためのスペクトル画像により生物学的試片を解析する方法に関する。該方法は、生物学的試片のスペクトル画像と視覚的画像を得る工程と、細胞異常、前がん細胞、がん細胞等を検知するために画像を登録する工程とを含む。この方法は、前述の問題点を解決するたけでなく、スタンダードな組織病理およびスペクトル法に内在する診断のバイアスや不確実性を排除する。」
ウ 「【0045】本願発明の課題に係る医学的診断を提供するシステムは、プロセッサー、プロセッサーを介するユーザーインターフェース、プロセッサーがアクセス可能な保存場所を含み、生物学的試片のスペクトルデータを得て、生物学的試片のスペクトルデータは、病気もしくは状態に関連した保存データと比較し、生物学的試片のスペクトルデータと保存データとの間に関連があれば特定し、特定に関連した診断を出す。」
エ 「【0049】本願発明の一態様は、医学的診断を提供するためのスペクトル画像により生物学的試片を解析する方法に関する。生物学的試片は、外科的方法、生検、および培養物から得られる医学的試片でもよい。該方法は、生物学的試片のスペクトル画像および視覚的画像を得る工程と、細胞異常、前ガン細胞およびがん細胞を検知するために該画像を登録する工程とを含む。該生物学的試片は、組織もしくは細胞サンプルを含んでもよいが、組織サンプルは好ましくは何らかに利用される。この方法は、乳がん、子宮がん、精巣腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、メラノーマなどの異常もしくはガン化およびその他の障害を特定するが、決してこれには限定されず、さらにに、炎症、壊死、アポトーシスを含む非がん化影響についても検知する。」
オ 「【0051】本願発明に係る方法を図3のフローチャートに図示している。図3に示すように、該方法は、一般的には、生物学的切片を得る工程301と、該生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302と、該生物学的切片の視覚的画像を得る工程303と、画像登録を行う工程304と、を含む。登録された画像は、任意でトレーニング工程305を行ってもよく、そして医学的診断を得る工程306となる。」
カ 「【0056】本願発明によれば、図3に示す生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302は、図4に示すように、生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401と、データの前処理を行う工程402と、多変量解析を行う工程403と、該生物学的切片のグレースケールもしくは疑似カラー画像を作成する工程404とを含んでもよい。」
キ 「【0061】赤外線データを得る工程は、現在使用可能なフーリエ変換(FT)赤外線画像マイクロ分光光度計、量子カスケードもしくは非線形光学機器などの波長可変レーザー、もしくは異なる技術基づく機能的に同等な他の機器を利用して行ってもよい。波長可変レーザーを使ったスペクトルデータを得る工程は、米国特許出願第13/084,287、タイトル“Turnble Laser-Based Infrared Imaging System and Method of Use Thereof”に記載されており、その内容はすべて参照としてここに組み込まれている。」
ク 「【0063】一般的には、スペクトルデータは、ハイパースペクトルデータを含んでおり、これは各スペクトルもしくはスペクトルベクタ(吸収、放射、反射等)のN=n・mを含む構成物であり、ここでは、nおよびmは、画像のそれぞれxおよびy面のピクセルの数である。各スペクトルは、サンプルの特徴的なピクセルと関連しており、x軸およびy軸により位置を示すことができ、xは、1<x<nで、yは、1<y<mである。各ベクタは、k強度データポイントを有し、周波数もしくは波数ドメインに等間隔に配置されている。」
ケ 「【0104】組織病理サンプルの視覚的画像は、病理学の研究室によくあるような標準的な視覚的な顕微鏡から得ることができる。顕微鏡は、顕微鏡の視野をデジタル的に撮ることができる高解像度デジタルカメラを備えていてもよい。このデジタルリアルタイム画像は、染色された組織切片の標準的な顕微鏡の視野に基づいており、組織構造、細胞形態、および染色パターンを示す。デジタル画像は、例えば写真を作るために、イメージスティッチング(image stiching)を介して組み合わされる多数のピクセルタイル(pixel tiles)を有していてもよい。本願発明によれば、解析に使用されるデジタル画像は、独立したタイル、もしくは写真にするためのスティッチにより組み合わされる多数のタイルを有していてもよい。このデジタル画像は、保存して、コンピュータースクリーン上で見ることが可能である。」
コ 「【0106】本願発明に係る方法によれば、スペクトル画像および視覚的画像が得られると、染色された組織の視覚的画像は、図3のフローチャートの工程304に示すようにデジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と共に登録される。一般的には、画像登録とは、異なるデータを一つの座標系に変換もしくは合致させる処理をいう。画像登録は、最初の画像を次の画像と合わせるために空間的に合致させるもしくは変換することを含む。該画像は、異なるタイプのデータを有していてもよく、そして画像登録は、該異なるタイプのデータの合致もしくは変換を可能にする。【0107】本願発明によれば、画像登録は、種々のやりかたで行うことができる。例えば、視覚的画像とスペクトル画像のために一般的な座標系を構築してもよい。一般的な座標系を構築することが難しい場合や、それが望ましくない場合、該画像を、ポイント写像(point mapping)により登録し、他の画像と合わせる。ポイント写像では、該画像の双方に共通する特徴もしくは目印になるコントロールポイントを選ぶ。コントロールポイントの位置に応じて、該画像の双方の空間マッピングを行ってもよい。例えば、少なくとも二つのコントロールポイントを使用してもよい。画像を登録するためには、視覚的画像にあるコントロールポイントは、スペクトル画像の対応するコントロールポイントと関連しており、そして互いに合わせる。」
サ 「【0111】コントロールポイントを合わせた後、座標P1(x1,y1)を有するスペクトル画像内のピクセルを、座標P2(x2,y2)を有する視覚的画像内にある対応するピクセルと合わせる。この合わせる工程は、スペクトル画像と視覚的画像内の選択したすべてのもしくは一つのピクセルポイントに行ってもよい。いったん合わせられると、スペクトル画像と視覚的画像のそれぞれにあるピクセルは、一緒に登録される。この方法によれば、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを、対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合する。本願発明の方法は、同じ生物学的サンプルを分光的および視覚的に検査できるため、視覚的画像とスペクトル画像を正確に登録することができる。」
シ 「【0114】スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルの座標が登録されると、これらはデジタルデータとして一緒に保存されてもよい。画像全体もしくは画像の一部を保存してもよい。例えば、サンプル全体の画像を保存するよりも、むしろ診断領域だけデジタルデータとして保存してもよい。これによって、データ保存に必要なものを著しく減らすことができる。」
ス 「【0130】スペクトル画像および視覚的画像を登録すると、図3のフローチャートの工程303に示すように、医学的診断を下すのに利用されてもよい。該診断には、細胞異常、炎症、感染、前ガン病変、がん、おおまかな解剖学的特徴などの病気や状態を含んでもよいが、これに限定されるわけではない。本願発明に係る方法では、視覚的画像に登録された不明な病気もしくは症状の生物学的試片のスペクトルデータからのスペクトル画像は、上述のようにトレーニングされた診断用アルゴリズムにインプットされる。診断用アルゴリズムを作成するのに使用したトレーニングセットの類似性にもとづいて、生物学的試片のスペクトルデータは病気もしくは状態と関連付けられる。この病気もしくは症状は、診断として出力されてもよい。」
セ 「【0159】本願発明は、ハードウェア、ソフトウェア、もしくはそれらの組み合わせと一緒に実施でき、一以上のコンピューターもしくは他の処理システムで実施してもよい。一態様としては、本願発明は、ここに記載の機能を実行できる一以上のコンピューターシステムに使用できる。図23には、このようなコンピューターシステム200を記載している。【0160】コンピューターシステム200は、例えば、プロセッサー204などの一以上のプロセッサーを有する。プロセッサー204は、コミュニケーションインフラストラクチャ206と繋がっている(例えば、通信バス、クロスオーバーバー、もしくはネットワークなど)。種々のソフトウェアについては、この例示的コンピューターシステムとして記載する。この記載を読めば、当業者であれば、他のコンピューターシステムおよび/または構造を使って本願発明をどのように実施するかは明白である。続きを表示(全14行)【0161】コンピューターシステム200は、グラフィック、テキスト、および他のデータをディスプレイユニット230に表示するためにコミュニケーションインフラストラクチャ206(もしくはここに図示しないフレームバッファから)から送るディスプレイインターフェース202を含むことができる。コンピューターシステム200は、メインメモリ208、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)、を含んでいてもよく、さらに二次メモリ210を含んでいてもよい。二次メモリ210は、例えば、フレキシブルディスク、磁性テープドライブ、および光学ディスクドライブ等のハードディスクドライブ212および/またはリムーバブルドライブ214を含んでもよい。リムーバブルディスク214は、公知のように、リムーバブルストレージユニット218から読み込むおよび/または書き込むことができる。リムーバブルストレージユニット218は、フレキシブルディスク、磁性テープ、光学ディスクなどに代表され、これはリムーバブルドライブ214から読み取られ、また書き込まれる。リムーバブルストレージユニット218は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータが保存されるコンピューター使用可能な保管媒体を含む。【0162】別の例としては、二次メモリ210は、コンピュータープログラムもしくは他の指示をコンピューターシステム200に与える、類似した他の機器を含んでいてもよい。このような機器として、例えば、リムーバブルストレージユニット222およびインターフェース220を含んでもよい。このような例として、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース(たとえば、ビデオゲーム機器などにある)を含んでもよく、リムーバブルメモリーチップ(例えば、消去可でプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、もしくはプログラム可能で読み取り専用メモリ(PROM)など)および関連するソケット、そしてリムーバブルストレージユニット220からコンピューターシステム200にソフトウェアとデータを転送できる他のリムーバブルストレージユニット222およびインターフェース220を含んでもよい。【0163】コンピューターシステム200は、コミュニケーションインターフェース224も含んでよい。コミュニケーションインターフェース224は、ソフトウェアとデータをコンピューターシステムと外部機器の間で送信できるようにする。コミュニケーションインターフェースの例示として、モデム、ネットワークインターフェース(例えば、アースネットカード)、コミュニケーションポート、パーソナルコンピューターメモリカード国際協会(PCMCIA)スロットおよびカードなどを含んでもよい。コミュニケーションインターフェース224を介して送信されたソフトウェアおよびデータは、信号228の形態であり、これは、コミュニケーションインターフェース224で受信することができる電子的、電磁性的、光学的、もしくは他の信号である。これらの信号228は、コミュニケーションパス(例えば、チャンネル)226を介してコミュニケーションインターフェース224に提供される。このパス226は、信号228を運び、ワイヤーもしくはケーブル、光ファイバー、電話線、携帯リンク、ラジオ周波数(RF)、および/または他のチャンネルにより実行される。ここでは、「コンピュータープログラム媒体」および「コンピューター使用可能媒体」は、通常は、リムーバブルストレージドライブ214、ハードディスクドライブ212にインストールされているハードディスク、およびシグナル228を指す媒体として使われている。これらのコンピュータープログラムプロダクトは、コンピューターシステム200にソフトウェアを提供する。本願発明は、このようなコンピュータープログラムのプロダクトにも使われる。【0164】コンピュータープログラム(コンピューター制御ロジックともいう)は、メインメモリ218および/または二次メモリ210に保存される。コンピュータープログラムは、コミュニケーションインターフェース224を介して受け取ってもよい。このようなコンピュータープログラムを実行すると、ここに記載したように、本願発明に係る特徴をコンピューターシステム200で行うことを可能にする。特に、該コンピュータープログラムを実行すると、プロセッサー204でこのような特徴を行うことを可能にする。したがって、コンピュータープログラムは、コンピューターシステム200の制御を表す。【0165】ソフトウェアを使って本願発明を実施する変更例として、ソフトウェアをコンピュータープログラムプロダクトに保存し、そしてリムーバブルストレージドライブ214、ハードドライブ212もしくはコミュニケーションインターフェース224を使って、コンピューターシステム200に入れてもよい。該制御ロジック(ソフトウェア)をプロセッサー204で実行すると、プロセッサー204は、ここに記載した機能を行う。他の変更例としては、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)などのハードウェア部品を使うハードウェアに主に本願発明を使ってもよい。ハードウェア機器に本願発明の機能を行うようにするのは、当業者であればわかる。」
ソ 「【図3】[図:0001389390000001.jpg]」
タ 「【図23】[図:0001389390000002.jpg]」
チ 上記甲第1号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「医学的診断を提供する生物学的切片をスペクトル画像によって分析する方法、およびその機能を実行できる一以上のコンピューターシステムにおいて、該方法は、該生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302と、該生物学的切片の視覚的画像を得る工程303と、細胞異常、前がん細胞、がん細胞等を検知するために画像登録を行う工程304と、医学的診断を得る工程306とを含み、生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302は、生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401と、データの前処理を行う工程402と、多変量解析を行う工程403と、該生物学的切片のグレースケールもしくは疑似カラー画像を作成する工程404とを含んでおり、生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401は、波長可変レーザーを使ったスペクトルデータを得る工程であり、各スペクトルは、サンプルの特徴的なピクセルと関連しており、x軸およびy軸により位置を示すことができ、続きを表示(全11行)生物学的切片の視覚的画像を得る工程303は、組織病理サンプルの視覚的画像を、顕微鏡の視野をデジタル的に撮ることができる高解像度デジタルカメラをそなえた顕微鏡から得るものであり、画像登録を行う工程304は、デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と、染色された組織の視覚的画像とを、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合して、デジタルデータとして一緒に保存されて登録するものであり、医学的診断を得る工程306は、該診断には、細胞異常、炎症、感染、前ガン病変、がん、おおまかな解剖学的特徴などの病気や状態の医学的診断を下すものであり、生物学的切片のスペクトルデータを、病気もしくは状態に関連した保存データと比較し、生物学的切片のスペクトルデータと保存データとの間に関連があれば特定し、特定に関連した診断を出すものであり、コンピューターシステムは、プロセッサー204、プロセッサー204と繋がるコミュニケーションインフラストラクチャ206と、プロセッサー204がアクセス可能なメインメモリ208と保存場所である二次メモリ210と、コミュニケーションインターフェース224と、を含むコンピューターシステム200であり、二次メモリ210は、例えば、フレキシブルディスク、磁性テープドライブ、および光学ディスクドライブ等のハードディスクドライブ212および/またはリムーバブルドライブ214を含んでもよく、コミュニケーションインターフェース224は、ソフトウェアとデータをコンピューターシステムと外部機器の間で送信できるようにするものである、方法およびコンピューターシステム。」
(2)甲第2号証
本件特許の優先日前である平成27年(2015年)3月31日に頒布された「林洋平 他9名,「かぐや搭載スペクトルプロファイラデータ分析のためのウェブ地理情報システム『月光』」、宇宙科学情報解析論文誌 第四号、2015年3月31日,91-103頁」(以下「甲第2号証」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
ア 「1. 開発の背景月周回衛星「かぐや」によってかつてない精度で観測データがもたらされた.かぐや搭載のスペクトルプロファイラ(SP)は可視から近赤外まで(0.5~2.6μm)の月面からの反射光を296バンドで連続的にとらえる分解能を有し1)2),月面の全球を観測している.」(第91頁)
イ 「図1[図:0001389390000003.jpg]」(第92頁)
ウ 「1.1 PDS プロダクトかぐやによってもたらされたSP による観測データは惑星データシステム(PDS)3) のバージョン3(通称PDS3 という)に準拠している. PDS3 では観測機器ごとのデータをプロダクトと呼び,プロダクトは1 つのファイルの場合もあれば,複数のファイルで構成されることもある. プロダクトはメタデータ部であるPDS ラベルとデータ部であるPDS オブジェクトから構成されている4). PDS ラベルはオブジェクト定義言語(ODL)と呼ばれるテキストで記述され、またPDS オブジェクトは所定のフォーマットのデータを格納することができる. 本稿ではプロダクトのことをPDS プロダクト, プロダクトを構成するファイルのことをPDS ファイルと呼ぶこととする.SP におけるPDS プロダクトは複数のPDS ファイルから構成される. 図1 に示したように1つのPDS ファイル内には, 1つのPDS ラベルと複数のPDS オブジェクトが格納されている.メタデータであるPDS ラベルには,SP 観測時における同時観測画像(衛星画像)の位置情報や観測時の衛星軌道情報といったアンシラリ情報,PDS オブジェクトのデータ構造に関する情報が含まれている.同時観測画像およびSP によって観測されたデータ, 関連データは,それぞれ個別のPDS オブジェクトとして格納されている.これらの観測データには,生データ,反射率データおよび分解能フラグなど, 関連データには位置情報やセンサー温度などのアンシラリ情報が含まれている.」(第92頁第1-13行)
エ 「2.6 アンシラリ情報「月光」ではSP データ観測時におけるアンシラリ情報を確認できる. 表示されるアンシラリ情報は, PDS ファイル中に含まれるデータとなる. アンシラリ情報はシーンとポイントのそれぞれにある. 前者は「データレイヤ」上で「シーンレベルの観測点群」をクリックすると「シーンのアンシラリ情報」ボックスに表示される. 後者は「データレイヤ」上で「ポイントレベルの観測点」をクリックすると「ポイントのアンシラリ情報」ボックスに表示される.「シーンのアンシラリ情報」ボックスでは同時観測画像の位置情報などのメタデータや平均移動速度や高度などかぐや衛星の状態に関する情報が示される. また, ボックス内にはクリックにて選択中の「シーンレベルの観測点群」の同時観測画像を「データレイヤ」上に表示させるためのボタンが表示される. ユーザは必要に応じてボタンを押すことによって同時観測画像を表示することができる.「ポイントのアンシラリ情報」ボックスではSP 観測時における分光計の温度や観測高度, 太陽照射幾何条件などに関する情報が示される. SP データの校正に用いられる重要な情報となる. また, ボックス内にはデータ登録ボタンが表示される. データの登録をすることによって, 複数のポイント間の参照が容易になる.」(第96頁第1-12行)
オ 「3. システム構成「月光」は既存のオープンライセンスのアプリケーションを利用してシステムを組んでいる. 既存のシステムでは足りない部分に対してプログラムにより実装を加えている. 本システムはリレーショナルデータベース(RDB)とファイルシステムをデータリソースとして利用したクライアント・サーバー型のウェブアプリケーションである. GIS の機能はサーバ側はMapServer, クライアント側はOpenLayers および独自開発したGekko Library を用いている. 本システムを利用するにあたってユーザが必要とするものは, クライアントとなるコンピュータおよびウェブブラウザ, 「月光」に接続するためのネットワーク環境である.」(第100頁第10-16行)
カ 「図10[図:0001389390000004.jpg]」(第100頁)
キ 「3.4 データリソース「月光」で利用するデータリソースはベクターデータとラスターデータとの2種類の形式がある.ベクターデータはPostGIS20) で管理している. PostGIS は, リレーショナルデータベースであるPostgreSQL にGIS の機能拡張をしたものである. PostGIS には, 約7,000 万点にも及ぶ「ポイント」の座標データ, SP データおよび関連情報,約110 万点の「シーン」の座標データやアンシラリ情報などを格納している.MapServer はPostGIS に緯度・経度を条件として渡し, PostGIS は該当するSP データをMapServer へ引き渡している. PostgreSQL に専用サーバ1台をあてがい, パフォーマンス・チューニングを行うことにより, 数秒以内のレスポンスを可能としている.ラスターデータである同時観測画像や背景画像はLinux のファイルシステムで管理している. 同時観測画像はjpeg フォーマットであり座標情報を持たないためそのままではMapServer で扱うことができない. そこで緯度・経度を格納したワールドファイル(拡張子がjgw)21) を付随させている. 背景画像はgeotiff フォーマットであり, ファイル中には緯度・経度が含まれている. そのためMapServer で直接取り扱える.」(第101頁第22-33行)
ク 「4. 現システムの課題および今後の開発の方向性「月光」はSP観測データを容易に閲覧することを可能とした.「月光」によってSPデータへのアクセシビリティは飛躍的に向上したと考えている.」(第101頁第34-36行)
ケ 上記甲第2号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「月周回衛星「かぐや」搭載のスペクトルプロファイラ(SP)は、可視から近赤外まで(0.5~2.6μm)の月面からの反射光を296バンドで連続的にとらえる分解能を有し、月面の全球を観測しており、「かぐや」によってもたらされたSP による観測データは惑星データシステム(PDS)のバージョン3(通称PDS3 という)に準拠しており、PDS3 では観測機器ごとのデータをプロダクト(PDS プロダクト)と呼び,プロダクトは1 つまたは複数のファイル(PDS ファイル)で構成されることもあり、プロダクトはメタデータ部であるPDS ラベルとデータ部であるPDS オブジェクトから構成されており、PDS ラベルはオブジェクト定義言語(ODL)と呼ばれるテキストで記述され、またPDS オブジェクトは所定のフォーマットのデータを格納することができ、SP におけるPDS プロダクトは複数のPDS ファイルから構成され、1つのPDS ファイル内には, 1つのPDS ラベルと複数のPDS オブジェクトが格納されており、メタデータであるPDS ラベルには,SP 観測時における同時観測画像(衛星画像)の位置情報や観測時の衛星軌道情報といったアンシラリ情報,PDS オブジェクトのデータ構造に関する情報が含まれており、続きを表示(全13行)同時観測画像およびSP によって観測されたデータ, 関連データは,それぞれ個別のPDS オブジェクトとして格納されており、これらの観測データには,生データ,反射率データおよび分解能フラグなど, 関連データには位置情報やセンサー温度などのアンシラリ情報が含まれており、アンシラリ情報は, PDS ファイル中に含まれ、アンシラリ情報はシーンとポイントのそれぞれにあり、前者は「データレイヤ」上で「シーンレベルの観測点群」をクリックすると「シーンのアンシラリ情報」ボックスに表示される. 後者は「データレイヤ」上で「ポイントレベルの観測点」をクリックすると「ポイントのアンシラリ情報」ボックスに表示され、「シーンのアンシラリ情報」ボックスでは同時観測画像の位置情報などのメタデータや平均移動速度や高度などかぐや衛星の状態に関する情報が示され、「ポイントのアンシラリ情報」ボックスではSP 観測時における分光計の温度や観測高度, 太陽照射幾何条件などに関する情報が示され、SP観測データを容易に閲覧することを可能とした、既存のオープンライセンスのアプリケーションを利用してシステムを組んでいる「月光」において、「月光」システムは、リレーショナルデータベース(RDB)とファイルシステムをデータリソースとして利用したクライアント・サーバー型のウェブアプリケーションであり、「月光」システムで利用するデータリソースはベクターデータとラスターデータとの2種類の形式があり、ベクターデータは、リレーショナルデータベースであるPostgreSQL にGIS の機能拡張をしたPostGISで管理しており、PostGIS には, 約7,000 万点にも及ぶ「ポイント」の座標データ, SP データおよび関連情報,約110 万点の「シーン」の座標データやアンシラリ情報などを格納しており、ラスターデータである同時観測画像や背景画像はLinux のファイルシステムで管理しており、 同時観測画像はjpeg フォーマットであり座標情報を持たないためそのままではMapServer で扱うことができないため、緯度・経度を格納したワールドファイル(拡張子がjgw)を付随させており、背景画像はgeotiff フォーマットであり, ファイル中には緯度・経度が含まれている、「月光」システム。」
(3)甲第3号証
本件特許の優先日前である平成17年(2005年)9月2日に頒布された刊行物である「特表2005-526255号公報」(以下「甲第3号証」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
ア 「【0011】以下に現状技術を共焦点レーザ走査型顕微鏡(LSM)の例で説明する(図2)。LSMは大きく分けて次の4モジュールから成っている:光源、走査モジュール、検出ユニット及び顕微鏡。これらのモジュールは以下により詳しく説明する。それに加え、DE19702753A1も参考になる。【0012】続きを表示(全19行)プレパラート中にあるさまざまな色素の個別励起には、さまざまな波長のレーザをLSM内で使用する。励起波長の選択は検査対象色素の吸収特性に従って行う。励起光線は光源モジュール内で生成される。この場合、さまざまなレーザ(アルゴン、アルゴン・クリプトン、ヘリウムネオン、固体レーザのダイオードレーザ、TiSaレーザなど)が使用の対象になる。そのほか、光源モジュールでは、波長の選択および必要な励起波長の強度調整を、たとえば音響光学結晶素子の使用により行う。それに続き、レーザビームはファイバまたは適当なミラー装置を通じて走査モジュール内に導かれる。【0013】光源で生成されたレーザビームは、対物レンズを通り、回折の抑制下でスキャナ、走査光学系、鏡筒レンズを経由してプレパラート内へ集束される。スキャナが試料をx-y方向にドット走査する。試料走査における画素上滞留時間は多くの場合マイクロ秒未満ないし数秒の範囲とする。【0014】蛍光の共焦点検出(デスキャン検出)の場合、焦平面(試料)から、およびその上・下にある平面から放出された光は、スキャナを通じてダイクロイック・ビームスプリッタ(MDB)に達する。MDBは蛍光を励起光から分離する。続いて蛍光は、焦平面と共役な平面内に正確に設置された絞り(共焦点絞り/ピンホール)で焦点を結ぶ。これによって焦点外で生成された蛍光成分が遮断される。絞りの直径を変えることによって、顕微鏡の光学解像度を調節することが可能である。絞りの後ろに別のダイクロイック・ブロックフィルタ(放出フィルタEF)があり、これが改めて励起ビームを差し止める。蛍光は、ブロックフィルタを通過した後、点像検出器(PMT)によって測定される。【0015】多光子吸収を利用した場合、色素蛍光の励起は励起強度が特に強い小ボリューム部分で行われる。この領域は、共焦点装置を使用した場合の検出領域より極僅かに大きいだけである。したがって共焦点絞りの使用は省くことができ、検出は対物レンズの直後で行うことができる(ノンデスキャン検出)。【0016】多光子吸収によって励起される色素蛍光を検出するための別の装置では、さらに一つのデスキャン検出が行われるが、しかしこの場合では、対物レンズのひとみは検出ユニット内へ結像する(デスキャン検出)。【0017】3次元に広がった試料では、それぞれ一光子吸収、多光子吸収を伴う2つの検出装置により、対物レンズの焦平面内に存在する試料平面(光学的断面)だけが再現される。それに続いて、試料の様々な深さzにおけるx-y平面内の光学的断面をいくつか描画することにより、コンピュータでサポートされた試料3次元像が生み出される。したがって、LSMは厚いプレパラートの検査に適している。【0018】異なった蛍光色素は、その吸収スペクトルおよび放出スペクトルも相違するのが特長である。色素励起のためのレーザ線は、吸収スペクトルに対応させて選択する。色素の放射特性に合わせたダイクロイックフィルタにより、それぞれの色素から放出された蛍光だけを点像検出器で測定することが可能になる。」
イ 「【図2】[図:0001389390000005.jpg]」
(4)甲第4号証
本件特許の優先日前である平成25年(2013年)に頒布された「吉原一紘,「表面化学分析における国際標準データフォーマットの概要とその利用」,Journal of Surface Analysis,2013年, Vol.19, No.3, pp.170-176」(以下「甲第4号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「(1)スペクトルデータの記述例9 個の領域に分けてスペクトルを取得したXPS スペクトルデータの記述例を下記に示す。( ) 内は説明である。なお,第一行はformat identifier で, VAMAS Surface Chemical Analysis Standard Data Transfer For-mat 1988 May 4 と記述する。AMAS ... 1988 May 4 (format identifier)ABC Co. ltd. (institution identifier)続きを表示(全90行)KK 101 (instrument identifier)J. Yamada (operator identifier)Spectrum example (experiment identifier)1 (number of lines in comment)Ni, Si, as-received (comment)NORM (experiment mode)REGULAR (scan mode)9 (number of spectral regions)0 (number of experimental variables)0 (常時0 を記入)0 (number of manually entered items in block)0 (number of future upgrade experimental entries)0 (number of future upgrade block entries)9 (number of blocks)(ここまでがヘッダー領域で,以下情報ブロックが始まる。)1st block id (block identifier)1st sample id (sample identifier)2012 (year in full)10 (month)22 (day of month)11 (hours)36 (minutes)2 (seconds)9 (number of hours in advance of Greenwich MeanTime)1 (number of lines in block comment)Ni peak (comment)XPS (technique)Al K_alpha mono (analysis source label)1486.6 (analysis source characteristic energy)150 (analysis source strength)2000 (analysis source beam width x)2000 (analysis source beam width y)45 (analysis source polar angle of incidence)180 (analysis source azimuth)FAT (analyser mode)23.5 (analyser pass energy or retard ratio or mass resolu-tion)1 (magnification of analyser transfer lens)4.5 (analyser work function or acceptance energy of at-om or ion)0 (target bias)800 (analysis width x)800 (analysis width y)45 (analyser axis take off polar angle)0 (analyser axis take off azimuth)Ni (species label)Valence (transition or charge state label)-1 (charge of detected particle)binding energy (abscissa label)eV (abscissa units)0 (abscissa start)0.1 (abscissa increment)1 (number of corresponding variables)strength in arbit.unit (corresponding variable label)d (corresponding variable units)pulse counting (signal mode)0.05 (signal collection time)125 (number of scans to compile this block)400E-9 (signal time correction)0 (sample normal polar angle of tilt)0 (sample normal tilt azimuth)0 (sample rotation angle)0 (number of additional numerical parameters)501 (number of ordinate values)32 (minimum ordinate value)9650 (maximum ordinate value)(ここまでが情報ブロックで,これからデータブロックが始まる)2892 (ordinate value)3020 (ordinate value)2977 (ordinate value)....................(501 個のordinate values を記入する)....................51 (ordinate value)49 (ordinate value)60 (ordinate value)(次のスペクトルの情報ブロックが始まる)2nd block id (block identifier)2nd sample id (sample identifier)(以下1st block と同様に記述)....................(以下9th block まで繰り返す。全てのブロックの記述が終了したら,以下の終了語を記入)end of experiment (experiment terminator)この記述例は experiment mode が NORM で scan mode が REGULAR の場合である。他の場合には行の順番が異なってくる。次にデプスプロファイルの記述例を示す。」(第171頁右欄下から6行-第173頁左欄第29行)
イ 上記甲第4号証の記載事項を総合勘案すると、甲第4号証には、次の技術(以下「甲4開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「9 個の領域に分けてスペクトルを取得したXPS スペクトルデータにおいて、1つの情報ブロックに分析に用いた線源のエネルギー、強度、ビームサイズ、入射角度を、スペクトルデータと共に記す技術。」
(5)甲第5号証
本件特許の優先日前である平成25年(2013年)に頒布されたパンフレット「株式会社島津製作所製品カタログ LabSolutions IR,2013年発行,p1-p15」(以下「甲第5号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(訳は甲第5号証訳による)
ア 「[図:0001389390000006.jpg]」
(第4頁)(訳:
LabSolutions CS
LabSolutions CSは、分析ネットワークに自由にアクセスできる場合、サーバーコンピューター上の中央データベース内のすべての分析データを管理し、そのネットワークに接続されている任意のコンピューターから分析データヘのアクセスを容易にします。ターミナルサービス(RemoteApp) を使用すれば、LabSolutionsIRがクライアントPCにインストールされていなくても、リモートの場所からLabSolutionsIRを制御することもできます。
LabSolutions CSは、多数のユーザーをホストする1台のサーバーで、LC/GCデータとFTIRデータを一緒に管理して、ER/ES規制への準拠を希望するお客様に最適です。)
イ 上記甲第5号証の記載事項を総合勘案すると、甲第5号証には、次の技術(以下「甲5開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「1台のサーバーで、LC/GCデータとFTIRデータなどのすべての分析データを一緒に管理する技術。」
(6)甲第6号証
本件特許の優先日前である平成23年(2011年)に頒布された刊行物である「大西晃宏,「フーリエ変換赤外分光分析法」,ネットワークポリマー,2011年発行,Vol.32,No.1,第50-57頁」(以下「甲第6号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「3.3 ATR法高屈折率の赤外用結晶内で赤外光を全反射させて測定する方法である。結晶内で角度を持った赤外光は結晶と空気や試料の媒体との境界面で全反射する条件がある。光が高屈折率結晶から低屈折率の媒体へ進もうとしたとき,その境界面で屈折する。その時の侵入角がある角度以上に達すると光は媒体へ進まず全反射する。この時の角度を臨界角と呼ぶ。光は全反射する際に媒体側へわずかながら侵入する。これをエバネッセント波と呼び,エバネッセント波には媒体側の情報が含まれる。エバネッセント波による染込み深さによって媒体側の情報量は決まる。これがATR法の原理である。エバネッセント波の染込み深さdpは次式(4)で表わされる。λ0は真空中の波長, n1はATR結晶の屈折率, n2はサンプルの屈折率, θは赤外光の入射角度を表すとする。[図:0001389390000007.jpg](4)式(4) から分かるように,dpは波長に大きく依存する。400cm-1のdpは4000cm-1の時よりも10倍深くなる。このdpの変化は赤外吸収スペクトルのバンド強度に歪を与える。しかし,一般的な解析ソフトウェアにはATR補正機能が付属されている。透過測定のスペクトルと比較する場合はATR補正を行う必要がある。」
イ 上記甲第6号証の記載事項を総合勘案すると、甲第6号証には、次の技術(以下「甲6開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「高屈折率の赤外用結晶内で赤外光を全反射させて測定する方法であるATR法は、媒体側の情報が含まれるエバネッセント波による染込み深さによって媒体側の情報量は決まり、エバネッセント波の染込み深さdpは波長に大きく依存し、dpの変化は赤外吸収スペクトルのバンド強度に歪を与えるため、ATR補正を行う技術。」
(7)甲第7号証
本件特許の優先日前である平成16年(2004年)に頒布された刊行物である「吸光光度分析通則 JIS K 0115:2004,平成16年3月20日改正,日本規格協会 発行,1-18頁」(以下「甲第7号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「10. 測定結果の記録 測定結果は,必要に応じて,次の事項を記録する。a) 測定年月日及び測定者名b) 試料名c) 分析種続きを表示(全14行)d) 測定方法e) 装置の名称及び形名f) 校正の時期及び方法g) 測定波長h) スペクトル幅i) 吸収セルの材質j) 吸収セルの形状k) 吸収セルの光路長又はセルの内径l) 対照試料m) 空試験値」(第13頁第3-16行)
イ 上記甲第7号証の記載事項を総合勘案すると、甲第7号証には、次の技術(以下「甲7開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「吸光光度分析の測定結果の記録に、測定波長やスペクトル幅を含める技術。」
(8)甲第8号証
本件特許の優先日前である平成29年(2017年)に頒布された刊行物である「赤外分光分析通則 JIS K 0117:2017,平成29年3月21日改正,日本規格協会 発行,1-26頁」(以下「甲第8号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「4.4 付加機能 測定したスペクトルを処理,解析するため,次のデータ処理機能がある。a) データの保存 測定したスペクトル,処理を加えたスペクトルなどをコンピューターの記憶装置に保存しておく機能。各装置独自の保存形式のほかに,特定の製造業者によらない形式,スペクトルの各データポイントの値をテキスト形式で保存できる装置もある。また,2次元測定データ,3次元測定データ,プロファイリング測定試料の画像データなどをスペクトルデータとリンクさせて保存できる装置もある。」(第14頁第10-14行)
イ 上記甲第8号証の記載事項を総合勘案すると、甲第8号証には、次の技術(以下「甲8開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「赤外分光分析の測定したスペクトルデータにプロファイリング測定試料の画像データをリンクさせてコンピューターの記憶装置に保存する技術。」
(9)甲第9号証
本件特許の優先日前である平成28年(2016年)8月に頒布された刊行物である「中央研究施設 形態部門 著,「研究機器紹介 共焦点レーザー顕微鏡LSM710(Carl Zeiss 社)」,埼玉医科大学雑誌,平成28年8月,第43巻第1号,p.126-127」(以下「甲第9号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「尚、通常のCCDカメラも装着しているため、共焦点画像を必要としない場合は通常の蛍光顕微鏡として観察、撮影することも可能です。」(第127頁左欄第1-3行)
イ 上記甲第9号証の記載事項を総合勘案すると、甲第9号証には、次の技術(以下「甲9開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「共焦点レーザ顕微鏡に、CCDカメラも装着して、通常の蛍光顕微鏡として観察、撮影することも可能とする技術」
(10)甲第10号証
本件特許の優先日前である平成22年(2010年)7月8日に頒布された刊行物である「特開2010-151801号公報」(以下「甲第10号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「【0017】図2は本発明の実施例1の文化財検査装置の分光分析装置の概略説明図であり、図2Aは上方から見た概略説明図、図2Bは側方から見た概略説明図である。図1において、前記移動式架台2の回転機構と傾き機構の上部には、位置調節装置3が支持されている。前記位置調節装置3は、図示しないモータにより、それぞれX軸方向およびZ軸方向に位置調節可能なXZステージ3aと、前記XZステージ3a上に支持され、Y軸方向(高さ方向)に位置調節可能なYステージ3bとを有する。なお、実施例1の前記位置調節装置3は、X方向に200mm、Y方向に100mm、Z方向に100mmの可動範囲が設定されているが、可動範囲はこの範囲に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。前記Yステージ3bには、分光分析装置4が支持されている。図1、図2において、前記分光分析装置4は、ケース4aを有する。前記ケース4aの上端部には、励起レーザー入力ポート4bが形成されており、ケース4aの文化財B側には、レンズ用開口4cが形成されている。前記励起レーザー入力ポート4bには、図示しない光ファイバが接続されて光ファイバを介して外部の図示しないレーザー光源から、ラマン分光用の励起レーザーが入力される。なお、実施例1では、励起レーザー光として、波長785nmのレーザー光を使用しているが、波長が可視~近赤外の励起レーザー光を使用可能であり、設計や仕様等に応じて、任意に変更可能である。続きを表示(全32行)【0018】図2において、前記励起レーザー入力ポート4bの下方には、励起レーザー光を平行光にする励起レーザー用コリメータ6が配置されている。前記励起レーザー用コリメータ6の下方には、コリメートされた励起レーザーを反射する反射光学系7が配置されている。前記反射光学系7の後斜め上方には、エッジフィルタ8が配置されている。前記エッジフィルタ8は、反射光学系7で反射された励起レーザー光の波長の光は反射すると共に、ラマン効果等により励起レーザー光の波長から長波長側に波長がずれた光は透過する性質を有する従来公知のフィルタである。エッジフィルタの代わりに、励起レーザー光の波長から長波長側と短波長側のいずれかの方向に波長がずれた光は透過する性質を有するノッチフィルタを使用することも可能である。【0019】図3は文化財の一例としての壁画と被検査部の説明図である。図2、図3において、前記エッジフィルタ8の前方には、エッジフィルタ8で反射された励起レーザー光を文化財Bの被検査部B1に集光、照射すると共に、被検査部B1からのラマン光が通過するマクロ測定用対物レンズ9が配置されている。図2Aにおいて、前記対物レンズ9の側方には、マクロ測定用対物レンズ9よりも検査可能な領域が狭いミクロ測定用対物レンズ11が配置されており、手動または自動によりマクロ測定用対物レンズ9の位置にミクロ測定用対物レンズ11を移動させる(左右方向にスライドさせる)ことで、検査対象領域を変化させることができる。【0020】前記反射光学系7やエッジフィルタ8の側方には、可視像撮像装置の一例としての測定領域モニター用カラーCCDカメラ12が配置されている。前記測定領域モニター用CCDカメラ12と、エッジフィルタ8等との間には、ハーフミラー13aとハーフミラー13bを有する測定領域モニター用光学系13が配置されており、測定領域モニター用光学系13には、白色LEDにより構成された照明14からの照明光が照射される。前記測定領域モニター用光学系13を、手動または自動で移動させて、エッジフィルタ8とマクロ測定用対物レンズ9との間に割り込ませることで、照明14の光をハーフミラー13aおよびハーフミラー13bで反射して被検査部B1を照射し、反射光をハーフミラー13bで反射し、ハーフミラー13aを透過させ、測定領域モニター用カラーCCDカメラ12で撮像することで、被検査部B1の可視像およびレーザー光のラマン励起領域をカラーで撮像することができる。なお、実施例1では、被検査部B1として3.33mm四方の領域が設定されており、測定領域モニター用カラーCCDカメラ12は、前記被検査部B1を中心として7.11mm×5.35mmの領域の可視像を撮像可能に設定されている。【0021】図4は実施例1の次元変換部、分光部および受光部の要部説明図である。図2において、前記エッジフィルタ8の後方には、内部を光が透過可能な複数の光ファイバを有する次元変換部15が配置されている。図2、図4において、実施例1の次元変換部15は、光ファイバを束ねた構成となっており、エッジフィルタ8を通過したラマン光が入射される入射部15a側では、光ファイバの一端が格子状、すなわち、二次元平面上に配置されている。また、光ファイバを通過した光が射出される次元変換部15の射出部15b側では、光ファイバの他端が上下方向に延びる直線状、すなわち、一次元直線上に沿って配置されている。実施例1の次元変換部15では、図4に示すように、入射部15aでは、仮想的にP1~P16の位置特定用の番号が割り振られた4×4の平面状に配置され、射出部15bではP1~P16の番号に対応する各光ファイバが上下方向に延びる直線上に並んで配置された構成となっている。したがって、次元変換部15に入力されたラマン光は、位置番号P1~P16に対応する各光ファイバの入射部15aに入射され、各光ファイバの射出部15bからラマン光L1~L16として出力される。なお、本発明の理解の容易のために、次元変換部15として、P1~P16の番号を割り振った光ファイバを例示したが、光ファイバの数は例示した数に限定されず、任意の個数、すなわち15以下や16以上の数とすることが可能である。【0022】前記次元変換部15の後方には、次元変換部15を通過した光が入射される分光器16が配置されている。前記分光器16は、次元変換部15の射出部15bに対応して、上下方向に沿って形成されたスリット16aを有する。図2において、分光器16の内部には、光学系17が収容されている。前記光学系17は、スリット16aを通過した光L1~L16を反射する第1反射鏡17aと、反射鏡17aで反射された光を平行光(コリメート光)にするコリメータ17bと、コリメータ17bからのコリメート光を分光するグレーティング(または回折格子)17cと、グレーティング17cで分光された光を反射する集光鏡17dおよび第2反射鏡17eを有する。したがって、前記分光器16の光学系17に入力された位置番号P1~P16の光ファイバからの各ラマン光L1~L16は、それぞれグレーディング17cで波長λ1、λ2、…、λn(nは1より大きな整数:例えばn=100)の光L1(λ1)、L1(λ2)、…、L1(λn)、L2(λ1)、…、L2(λn)、…、L16(λ1)、…、L16(λn)に分光され、出力される。なお、図2、図4において、実際の光学系では、コリメータ17bおよび集光鏡17dは球面鏡または放物面鏡で構成されており、入射スリット16aからの各ラマン光L1~L16は、途中で交差して受光部(22)で上下が反転するが、説明および理解を容易にするため、球面鏡等ではなく円筒面鏡またはシリンドリカル鏡で図示し、ラマン光も上下で反転せずに図示をした。【0023】前記分光器16の後方には、ケース4aの後面に、受光部の一例であってラマンイメージ撮像装置の一例としてのラマン測定用高感度CCDカメラ22が支持されており、分光器16から出力された光L1(λ1)~L16(λn)が受光され、撮像される。実施例1のラマン測定用高感度CCDカメラ22は、上下方向に沿った第1軸方向には位置番号P1~P16に対応して16画素の受光素子を有し、左右方向に沿った第2軸方向には分光された波長λ1~λnの数nに応じてn画素の受光素子を有する。したがって、実施例1のラマン測定用高感度CCDカメラ22は、縦16画素×横n画素の平面状に配列された受光素子を有するCCDカメラにより構成されており、分光器16から出力された光L1(λ1)~L16(λn)が各受光素子で受光される。なお、実施例1では、ラマン測定用高感度CCDカメラ22には、マクロ測定用対物レンズ9やその他の光学系17の焦点距離の関係で、ラマンイメージ画像が撮影可能な被検査部B1の領域として3.33mm四方の領域が設定されている。なお、前記被検査部B1の領域の広さは、例示した広さに限定されず、設計や仕様等に応じて、適宜変更可能である。【0024】図1、図2Aにおいて、前記ケース4aの側面には、可視像撮像装置の一例としての高解像度カラーCCDカメラ26が固定支持されている。前記高解像度カラーCCDカメラ26には、可視像を拡大する高解像度ズームレンズ27と、前記ズームレンズ27の先端部に設けられた白色LEDにより構成された照明28とを有する。前記高解像度カラーCCDカメラ26により、照明28の光で照射された被検査部B1を含む領域の可視像を撮像することができる。なお、図3において、実施例1の高解像度カラーCCDカメラ26では、10.5mm×7.9mmの可視像撮影領域B2の可視像を撮像可能に設定されている。なお、前記可視像撮影領域B2の広さは、例示した広さに限定されず、設計や仕様等に応じて、適宜変更可能である。【0025】図2Aにおいて、前記高解像度カラーCCDカメラ26の可視像撮影領域B1bの中心と、マクロ測定用対物レンズ9の撮影可能な領域B1aの中心との間は、水平方向(X方向)に中心間距離L1だけ離れている。したがって、高解像度カラーCCDカメラ26で可視像を撮影した後、中心間距離L1だけ移動させることで、高解像度カラーCCDカメラ26で撮影した領域と、マクロ測定用対物レンズ9で撮影される領域とを合わせることができる。また、ラマンイメージ画像の3.33mm四方の撮影領域分だけX、-XまたはY、-Y方向にさらにXYステージを移動することで、さらに広い領域に対して高解像度カラーCCDカメラ26で撮影した領域と、マクロ測定用対物レンズ9で撮影される領域を対応させることが可能である。【0026】図1において、分光分析装置4や位置調節装置3は、コントローラにより制御され、前記コントローラおよび前記高解像度カラーCCDカメラ26から延びるケーブル29は、情報処理装置の一例としてのノートパソコンPCに接続されている。ノートパソコンPCは、本体H1と、ディスプレイ(情報表示部)H2と、入力装置の一例としてのキーボードH3およびマウスH4を有する。 前記移動式架台2や位置調節装置3、分光分析装置4、高解像度カラーCCDカメラ26、ノートパソコンPC等により、実施例1の文化財検査装置1が構成されている。【0027】(制御部の説明)図5は本発明の実施例1の文化財検査装置1の制御部のブロック線図である。図5において、前記コントローラやノートパソコンPC、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行う入出力インタフェース、必要な処理を行うためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行う中央演算処理装置(CPU)、ならびにクロック発振器等を有するコンピュータにより構成されており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。」
イ 「【図2】[図:0001389390000008.jpg]」
ウ 「【図5】[図:0001389390000009.jpg]」
3.当審の判断
取消理由1(進歩性)について検討する。
(1)本件発明1が甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたかについて
ア 対比
(ア)甲1発明の「生物学的切片」は、本件発明1における「対象物の少なくとも一部」に相当する。
(イ)甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像」は、本件発明1における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像」に相当する。
(ウ)甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像を得る工程303」は、「組織病理サンプルの視覚的画像を、顕微鏡の視野をデジタル的に撮ることができる高解像度デジタルカメラをそなえた顕微鏡から得るものであ」るから、甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像」はデジタルカメラで得られるデジタル画像データであり、本件発明1における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ」に相当する。
(エ)甲1発明の「生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302」で得られる「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像」は、「生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401」で得られた「スペクトルデータ」を「データの前処理を行う工程402と、多変量解析を行う工程403と、該生物学的切片のグレースケールもしくは疑似カラー画像を作成する工程404」で処理して得られるものであるから、本件発明1における「画像に含まれる測定領域における」「対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ」に相当する。
(オ)甲1発明の「画像登録を行う工程304」は、「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と、染色された組織の視覚的画像とを、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合して、デジタルデータとして一緒に保存されて登録するものであ」るから、本件発明1とは「画像データおよび」「スペクトルデータを対応付けて記憶する」点で共通する。
(カ)甲1発明の「医学的診断を提供する生物学的切片をスペクトル画像によって分析する方法、およびその機能を実行できる」「プロセッサー204、プロセッサー204と繋がるコミュニケーションインフラストラクチャ206と、プロセッサー204がアクセス可能なメインメモリ208と保存場所である二次メモリ210と、コミュニケーションインターフェース224と、を含むコンピューターシステム200」は、「医学的診断を提供する生物学的切片をスペクトル画像によって分析する方法」が「該生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302と、該生物学的切片の視覚的画像を得る工程303と、細胞異常、前がん細胞、がん細胞等を検知するために画像登録を行う工程304と、医学的診断を得る工程306とを含」んでいることから、「生物学的切片の視覚的画像」と「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像」とを得ること、及び「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と、染色された組織の視覚的画像とを、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合して、デジタルデータとして一緒に保存されて登録する」ことを実現するコンピュータシステムであることから、本件発明1における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ」と「前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ」と「を取得するデータ取得部」及び「前記画像データおよび前記スペクトルデータを対応付けて記憶する記憶部とを備える分光データ管理装置」に相当する。
すると、本件発明1と、甲1発明とは、
「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、を取得するデータ取得部と、前記画像データおよび前記スペクトルデータを対応付けて記憶する記憶部とを備える分光データ管理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1は、対象物が「食品」であり、対象物の少なくとも一部を撮像した画像が「食品の少なくとも一部を撮像した画像」であり、食品の「測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ」をデータ取得部で取得し、記憶部で画像データおよびスペクトルデータに対応付けて記憶するのに対し、甲1発明は、対象物は生物学的切片であり、対象物の少なくとも一部を撮像した画像が生物学的切片の視覚的画像であり、上記構成を備えていない点。
イ 判断
上記相違点1-1について検討する。
主引例の甲第1号証には、生物学的試片のスペクトル画像と視覚画像とを保存する技術が開示され、
副引例には、
表面化学分析において、スペクトルと線源入射角度、(甲第4号証)
吸光光度分析において、スペクトルと測定波長、(甲第7号証)
赤外分光分析において、画像データとスペクトルデータ、(甲第8号証)
をそれぞれリンク保存する技術が開示され、
甲第2号証には
衛星データにおいてスペクトル画像(画像データとスペクトルデータ)と、太陽照射幾何条件
をリンク保存する技術が開示されているが、
食品をスペクトルや画像データの取得対象とすること、及び、スペクトルデータ、画像データ、及び《測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ》なる少なくとも3つのデータを対応づけて記憶すること、については何れの甲号証にも記載がない。
食品を対象として画像、スペクトル、光線空間データの3つのデータのいずれも記憶することについても何れの甲号証にも開示がないから、他甲号証を参酌したとしても甲1発明の対象を食品に変更する動機付けがあるとはいえない。
また、甲第2、4、6及び7号証には、前記3つのデータをすべて対応づけて記憶することについては開示がない。
甲1発明に甲第2、4、6及び7号証開示の上記技術を個別に適用して、前記3つのデータを合わせて対応づけて記憶するようにすることが容易想到であるとしても、その容易想到で導かれた発明は生物学的試片を対象物とする分光データ管理装置であって、その上で、対象物を食品に変更することは、前記のとおり食品を対象として前記3つのデータを対応づけて記憶することについて何れの甲号証にも開示や示唆がない以上、動機付けを欠き、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。
また、仮に、食品を対象としたスペクトル分析や撮像などが公知であるとしても、甲1発明から本件発明1を想到するには、前記生物学的試片を対象として、前記3つのデータを合わせて対応づけて記憶するようにすることを想到し、さらに、その対象物を食品に変更することを想到することを要するのであるから、甲1発明に基づき2つの段階を経て相違点1-1に係る構成に至ることは格別な努力を要するものといえ、当業者にとって容易であったということはできない。
ゆえに、本件発明1は、甲1発明及び甲第2ないし10号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(2)本件発明1が甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるかについて
ア 対比
(ア)甲2発明の「月面」は、本件発明1における「対象物の少なくとも一部」に相当する。
(イ)甲2発明の、月周回衛星「かぐや」によってもたらされた「惑星データシステム(PDS)のバージョン3(通称PDS3 という)」の「観測データ」の「SP 観測時における同時観測画像(衛星画像)」は、「個別のPDS オブジェクトとして格納されて」いることから、本件発明1における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ」に相当する。
(ウ)甲2発明の、月周回衛星「かぐや」によってもたらされた「惑星データシステム(PDS)のバージョン3(通称PDS3 という)」の「観測データ」の「SP によって観測されたデータ」は、「個別のPDS オブジェクトとして格納されて」いることから、本件発明1における「前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ」に相当する。
(エ)甲2発明の、月周回衛星「かぐや」によってもたらされた「惑星データシステム(PDS)のバージョン3(通称PDS3 という)」の「観測データ」の「PDS ラベル」の「アンシラリ情報」の「太陽照射幾何条件」の「情報」は、本件発明1における「測定領域に対する照明光に関する、光源の位置」「を示す光線空間データ」に相当する。
(オ)甲2発明の「月光」システムの「リレーショナルデータベース(RDB)」である「PostgreSQL」は、「約7,000 万点にも及ぶ「ポイント」の座標データ, SP データおよび関連情報,約110 万点の「シーン」の座標データやアンシラリ情報などを格納して」いることから、本件発明1における「記憶部」と、「スペクトルデータおよび」「光線空間データを」「記憶する」点で共通する。
(カ)甲2発明の「月光」システムの「Linux のファイルシステム」は、「同時観測画像」を「緯度・経度を格納したワールドファイル(拡張子がjgw)を付随させて」格納していることから、本件発明1における「記憶部」と、「画像データを」「記憶する」点で共通する。
(キ)甲2発明の「月光」システムの「データリソース」を構成する「リレーショナルデータベース(RDB)とファイルシステム」は、「SPデータ」「アンシラリ情報」「同時観測画像」が格納され、「ポイント」の座標データにより関連付けてそれぞれのデータを呼び出すことができるものであるから、本件発明1の「画像データ」、「スペクトルデータおよび」「光線空間データを対応付けて記憶する記憶部」に相当する。
(ク)甲2発明の『「月光」システム』は、「データリソース」に「SPデータ」を格納していることから、本件発明1における「分光データ管理装置」に相当する。
すると、本件発明1と、甲2発明とは、
「対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、前記測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データを対応付けて記憶する記憶部とを備える分光データ管理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-2>
本件発明1は、対象物が「食品」であり、対象物の少なくとも一部を撮像した画像が「食品の少なくとも一部を撮像した画像」であり、分光データ管理装置において、食品の「画像を示す画像データ」、「スペクトルデータ、および、」「光線空間データ」を取得する「データ取得部」を備えているのに対し、甲2発明は、対象物が月面であり、月面の「画像を示す画像データ」、「スペクトルデータ、および、」「光線空間データ」を取得しデータリソースに保存しているが、データ取得部についての明示がない点。
イ 判断
上記相違点1-2について検討する。
甲2発明は、月面の全球を観測するものであるから、甲2発明の測定対象を食品に変更する動機付けはない。
仮に、甲2発明の測定対象を食品に変更する動機付けがあり、測定対象を食品に変更したとしても、甲2発明における「太陽照射幾何条件」は、食品の「測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ」にはなり得ない。
そして、甲1,3ないし10号証には、対象物を食品として、その食品の一部を撮影した画像を示す画像データ、前記画像に含まれる測定領域における前記食品のスペクトルを示すスペクトルデータ、をそれぞれ取得し、食品の「測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ」をデータ取得部で取得し、記憶部で画像データおよびスペクトルデータに対応付けて記憶する技術は開示されていない。
ゆえに、本件発明1は、甲2発明及び甲第1,3ないし10号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記「(1)及び(2)」と同様の理由により、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明及び周知技術から、当業者が容易になしえた発明ではなく、かつ甲第2号証に記載された発明から当業者が容易になしえた発明ではないから、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(4)本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記「(1)及び(2)」と同様の理由により、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明及び周知技術から、当業者が容易になしえた発明ではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(5)本件発明6が甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたかについて
ア 対比
(ア)甲1発明の「生物学的切片」は、本件発明6における「対象物の少なくとも一部」に相当する。
(イ)甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像」は、本件発明6における「対象物の少なくとも一部を撮像した画像」に相当する。
(ウ)甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像を得る工程303」は、「組織病理サンプルの視覚的画像を、顕微鏡の視野をデジタル的に撮ることができる高解像度デジタルカメラをそなえた顕微鏡から得るものであ」るから、甲1発明の「生物学的切片の視覚的画像」を得る「高解像度デジタルカメラ」は、本件発明6における「対象物の少なくとも一部を撮像して画像データを生成する撮像部」に相当する。
(エ)甲1発明の「生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302」の「生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401」は、「波長可変レーザーを使ったスペクトルデータを得る工程」であるから、本件発明6の分光測定部と、「前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する」点で共通する。
(オ)甲1発明の「生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302」の「生物学的切片のスペクトルデータを得る工程401」に用いられる「波長可変レーザー」は、本件発明6における「対象物に照明光を照射する照明部」に相当する。
(カ)甲1発明の「画像登録を行う工程304」は、「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と、染色された組織の視覚的画像とを、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合して、デジタルデータとして一緒に保存されて登録するものであ」るから、本件発明6のデータ処理部とは、「画像データおよび」「スペクトルデータを対応付けて記憶する」点で共通する。
(キ)甲1発明の「医学的診断を提供する生物学的切片をスペクトル画像によって分析する方法、およびその機能を実行できる」「プロセッサー204、プロセッサー204と繋がるコミュニケーションインフラストラクチャ206と、プロセッサー204がアクセス可能なメインメモリ208と保存場所である二次メモリ210と、コミュニケーションインターフェース224と、を含むコンピューターシステム200」は、「医学的診断を提供する生物学的切片をスペクトル画像によって分析する方法」が「該生物学的切片のスペクトル画像を得る工程302と、該生物学的切片の視覚的画像を得る工程303と、細胞異常、前がん細胞、がん細胞等を検知するために画像登録を行う工程304と、医学的診断を得る工程306とを含」んでいることから、「生物学的切片の視覚的画像」と「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像」とを得ること、及び「デジタル染色されたグレースケールもしくは疑似カラースペクトル画像と、染色された組織の視覚的画像とを、各スペクトル画像と視覚的画像内のピクセルを対応する画像内のピクセルとデジタル的に統合して、デジタルデータとして一緒に保存されて登録する」ことを実現するコンピュータシステムであることから、本件発明6の「対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、前記対象物に照明光を照射する照明部と、」「前記画像データ、」及び「前記スペクトルデータ」「を対応付けて記憶」「するデータ処理部と」「を備え」た「測定装置」に相当する。
すると、本件発明6と、甲1発明とは、
「対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、前記対象物に照明光を照射する照明部と、前記画像データ、および前記スペクトルデータを対応付けて記憶するデータ処理部とを備えた測定装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点6-1>
本件発明6は、対象物が「食品」であり、対象物の少なくとも一部を撮像した画像が「食品の少なくとも一部を撮像した画像」であり、食品の「測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ」をデータ取得部で取得し、記憶部で画像データおよびスペクトルデータに対応付けて記憶するのに対し、甲1発明は、対象物は生物学的切片であり、対象物の少なくとも一部を撮像した画像が生物学的切片の視覚的画像であり、上記構成を備えていない点。
イ 判断
上記相違点6-1について検討する。
上記相違点6-1は、上記「(1)ア」の相違点1-1と同じであるから、上記「(1)イ」で検討したのと同様の理由により、本件発明6は、甲1発明及び甲第2ないし10号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(6)本件発明7、8及び14について
本件発明7、8及び14は、本件発明6を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記「(5)」と同様の理由により、甲第1、3ないし5、7ないし10号証に記載された発明及び周知技術から、当業者が容易になしえた発明ではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(7)本件発明15について
本件発明15は、本件発明1を直接的又は間接的に引用しかつ本件発明6を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記「(1)、(3)ないし(6)」と同様の理由により、甲第1、3ないし5、7ないし10号証から、当業者が容易になしえた発明ではなく、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
(8)申立人の意見について
当審は、申立人に対し、令和4年5月10日付けで訂正請求があった旨の通知書を送付し、本件発明1ないし15に対する意見を述べる機会を与えたが、指定期間内に意見書の提出はなかった。
(9)小括
以上のことから、本件発明1-8,14,15は、特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。ゆえに、取消理由1は解消された。
4.小括
以上のことから、当審が令和4年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消されており、本件特許1-8,14,15を取り消す理由とはならない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
上記「第4」及び「第5」より、令和4年1月17日付け取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由については、以下のとおりとなる。
「本件訂正前の請求項9ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3ないし10号証の記載事項から当業者が容易になしえた発明である。」
2.当審の判断
本件発明9ないし13は、本件発明6を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記「第5 3.(5)イ」で検討したとおり、甲1発明及び甲第2ないし10号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。ゆえに、本件発明9ないし13は特許法第29条第2項の規定を満たす発明である。
3.申立人の意見について
当審は、申立人に対し、令和4年5月10日付けで訂正請求があった旨の通知書を送付し、本件発明1ないし15に対する意見を述べる機会を与えたが、指定期間内に意見書の提出はなかった。
また、令和3年9月28日付け特許異議申立書における申立人の主張は、訂正前の請求項1ないし15に係る発明は、甲第1ないし10号証に記載された発明及び記載事項から当業者が容易になしえた発明である旨の主張であり、訂正後の本件特許である本件発明1ないし15に対する主張ではないが、その主張が本件発明1ないし15に対する主張であるとしても、上記「第5」及び「第6 2.」で述べたとおり、本件発明1ないし15は、甲1発明及び甲2ないし10号証の記載事項に基づいて、または甲2発明に基いて、当業者容易になしえた発明ではない。したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
4.小括
以上のことから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の取消理由では本件発明9ないし13を取り消す理由とはならない。したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の取消理由については、本件発明9ないし13に対しいずれも理由はない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700929