特許異議申立
2024-701193
加工システム
- 審判番号
- 2024-701193
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-518551
- 登録番号
- 7505549
- 請求日
- 2024年12月12日
- 審決日
- 2025年12月11日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニコン
- 【権利者代理人】江上 達夫
- 【異議申立人】三原 舞緒
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 山田 康孝
- 審判官 本庄 亮太郎
- 分類
- P1652.121-YAA(B23K)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7505549号発明「加工システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7505549号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~48〕、49について訂正することを認める。
特許第7505549号の請求項1~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7505549号の請求項1~18に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)4月30日を国際出願日とする出願であって、令和6年6月17日にその特許権の設定登録がされ、同月25日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
令和6年12月13日受付:特許異議申立人 三原 舞緒(以下「申立人」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 1月15日付け:手続補正指令書(方式)
令和7年 1月30日受付:申立人による特許異議申立書を対象とする手続補正書
令和7年 5月 1日付け:取消理由通知書
令和7年 7月 2日提出:特許権者 株式会社ニコン(以下「特許権者」という。)による訂正請求書及び意見書
令和7年 7月16日付け:訂正請求書に対する手続補正指令書(方式)及び意見書に対する手続補正指令書(方式)
令和7年 8月 6日提出:訂正請求書を補正の対象とする手続補正書(方式)(当該手続補正書により補正がされた訂正請求書を、以下「訂正請求書」といい、当該訂正請求書により請求がされた訂正を「本件訂正」ということがある。)、及び意見書を補正の対象とする手続補正書(方式)
令和7年 9月17日付け:訂正の請求があった旨の申立人への通知書
(その後、期限までに申立人による意見書の提出はなかった。)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書により、特許権者は特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から49について訂正することを求めているところ、その訂正の内容は以下の訂正事項1~17のとおりである(下線部は、訂正により変更又は追加された箇所を示す)。
(1) 一群の請求項〔1~48〕について
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「・・・物体計測装置と、
前記物体計測装置によって・・・」と記載されているのを、
「・・・物体計測装置と、
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、
前記物体計測装置によって・・・」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~23、25~42及び45~48も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項24を削除する。
ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項25に、
「請求項24に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項25を直接的又は間接的に引用する請求項26~42及び45~48も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項32に、
「請求項24から31のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から31のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項32を直接的又は間接的に引用する請求項33~42及び45~48も同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項33に、
「請求項24から32のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から32のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項33を直接的又は間接的に引用する請求項34~42及び45~48も同様に訂正する)。
カ 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項34に、
「請求項24から33のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から33のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項34を直接的又は間接的に引用する請求項35~42及び45~48も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項38に、
「請求項24から37のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から37のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項38を直接的又は間接的に引用する請求項39~42及び45~48も同様に訂正する)。
ク 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項39に、
「請求項1から38のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から38のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項39を直接的又は間接的に引用する請求項40~42及び45~48も同様に訂正する)。
ケ 訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項40に、
「請求項1から39のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から39のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項40を直接的又は間接的に引用する請求項41~42及び45~48も同様に訂正する)。
コ 訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項41に、
「請求項1から40のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から40のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項41を直接的又は間接的に引用する請求項42及び45~48も同様に訂正する)。
サ 訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項42に、
「請求項1から40のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から40のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項42を直接的又は間接的に引用する請求項46~48も同様に訂正する)。
シ 訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項43に、
「前記制御装置は、前記物体計測装置によって前記物体が計測された後に前記物体を回転させるように前記回転装置を制御し、
前記物体計測装置は、前記回転装置によって回転された前記物体の表面を計測する
請求項1から39のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「物体を回転可能に保持する保持装置と、
前記保持装置を回転させる回転装置と、
前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、
前記物体の表面を計測する物体計測装置と、
前記物体計測装置によって取得された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置と
を備え、
前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより物体を加工し、
前記制御装置は、前記物体計測装置によって前記物体が計測された後に前記物体を回転させるように前記回転装置を制御し、
前記物体計測装置は、前記回転装置によって回転された前記物体の表面を計測する
加工システム」に訂正する(請求項43を直接的又は間接的に引用する44及び46~48も同様に訂正する)。
ス 訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項45に、
「請求項1から41のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から41のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項45を直接的又は間接的に引用する請求項46~48も同様に訂正する)。
セ 訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項46に、
「請求項1から45のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から45のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項46を直接的又は間接的に引用する請求項47~48も同様に訂正する)。
ソ 訂正事項15
訂正前の特許請求の範囲の請求項47に、
「請求項1から46のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から46のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する(請求項47を引用する請求項48も同様に訂正する)。
タ 訂正事項16
訂正前の特許請求の範囲の請求項48に、
「請求項1から47のいずれか一項に記載の加工システム」と記載されているのを、
「請求項1から23及び25から47のいずれか一項に記載の加工システム」に訂正する。
(2) 請求項49について
ア 訂正事項17
訂正前の特許請求の範囲の請求項49に、
「前記エネルギビームを、保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する
加工方法」と記載されているのを、
「前記エネルギビームを、保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工し、
前記制御することは、前記物体の表面を計測することによって前記物体が計測された後に前記物体を回転させるように前記回転装置を制御することを含み、
前記物体の表面を計測することは、前記物体を回転させることによって回転された前記物体の表面を計測することを含む
加工方法」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1~48は、請求項2~48がそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法(以下、単に「法」ということがある。)120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~48〕、及び請求項49について請求をするものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 一群の請求項〔1~48〕について
ア 訂正事項1について
(ア) 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、1(1)アの下線部の事項をさらに特定するものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項24において特定していた事項を請求項1に組み入れて特定したものであるから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は、(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
(ア) 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項24を削除するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項24を削除するものであるから、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2は、(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3~11、13~16について
(ア) 訂正の目的
訂正事項3~11、13~16は、訂正事項2による請求項24の削除に伴い、訂正後の特許請求の範囲において請求項25、32~34、38~42、45~48における引用請求項の記載を整合させるものである。
したがって、訂正事項3~11、13~16に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項
訂正事項3~11、13~16は、(ア)のとおり引用請求項を整合させるものであって、新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項3~11、13~16に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項3~11、13~16に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3~11、13~16は、(ア)のとおり引用請求項を整合させるものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項3~11、13~16に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。
エ 訂正事項12について
(ア) 訂正の目的
訂正事項12は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を引用していた請求項43について、当該請求項1の記載を引用しないものとする訂正である。
したがって、訂正事項12に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項
訂正事項12は、(ア)のとおりのものであるから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項12に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項12は、(ア)のとおりのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項12に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。
(2) 請求項49について
ア 訂正事項17について
(ア) 訂正の目的
訂正事項17は、訂正前の特許請求の範囲の請求項49について、1(2)アの下線部の事項をさらに特定するものである。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項
訂正事項17は、訂正前の特許請求の範囲の請求項43及び明細書【0146】の記載事項を請求項49に組み入れて特定したものであるから、訂正事項17に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項17は、(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項17に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。
4 独立特許要件
(1) 独立特許要件が課されない訂正事項
訂正前の請求項1~18について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~18に係る訂正事項1に関して、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の独立特許要件は課されない。
次に、訂正事項2は、請求項24を削除する訂正であり、対象が存在しないものとなったため、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の独立特許要件は課されない。
また、訂正事項3~11、13~16は、法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の独立特許要件は課されない。
さらに、訂正事項12は、法120条の5第2項ただし書き4号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の独立特許要件は課されない。
(2) 独立特許要件が課される訂正事項
ア 訂正前の請求項19~23、25~42、45~48に係る訂正事項1は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、訂正事項1による請求項19~23、25~42、45~48については、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の規定により独立特許要件が課されるため、以下に検討する。
訂正後の請求項19~23、25~42、45~48は、訂正後の請求項1に直接的又は間接的に従属するから、後述する第4の2(1)で検討する相違点3に係る訂正後の請求項1の構成を少なくとも有することになる。
そうすると、第4の2(1)と同様に、訂正後の請求項19~23、25~42、45~48に係る発明は、甲1発明及び甲2技術~甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 訂正事項17は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、訂正事項17による請求項49については、法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の規定により独立特許要件が課されるため、以下に検討する。
訂正後の請求項49の、
「前記制御することは、前記物体の表面を計測することによって前記物体が計測された後に前記物体を回転させるように前記回転装置を制御することを含み、
前記物体の表面を計測することは、前記物体を回転させることによって回転された前記物体の表面を計測することを含む」という構成については、後述する第4での甲1発明及び甲2技術~甲5技術において、当該構成に相当する技術的な内容が見当たらないことが明らかである。
そうすると、訂正後の請求項49に係る発明は、甲1発明及び甲2技術~甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ そして、訂正後の請求項19~23、25~42、45~48及び訂正後の請求項49の記載について不備は見当たらないし、他に請求項19~23、25~42、45~48に係る発明及び請求項49に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。
5 訂正の適否についての小括
以上のとおりであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~48〕、及び請求項49について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件の請求項1~49に係る発明のうち、特許異議の申立てがされている請求項1~18に係る発明(以下、まとめて「本件発明」という。また、個別に請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、他の請求項に係る発明についても同様にいう。)は、次の事項により特定されるものである。
【請求項1】
物体を回転可能に保持する保持装置と、
前記保持装置を回転させる回転装置と、
前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、
前記物体の表面を計測する物体計測装置と、
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、
前記物体計測装置によって取得された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置と
を備え、
前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する
加工システム。
【請求項2】
前記回転軸の情報は、前記物体計測装置による計測結果に基づいて取得される
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記物体計測装置は、前記物体に光を照射することで前記物体の表面を計測する
請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記物体計測装置は、前記物体から反射する光を検出することで前記物体の表面を計測する
請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
前記物体計測装置は、光干渉法により前記物体の表面を計測する
請求項4に記載の加工システム。
【請求項6】
前記物体計測装置は、光切断法またはタイム・オブ・フライト法により前記物体の表面を計測する
請求項4に記載の加工システム。
【請求項7】
前記物体計測装置は、前記物体の表面の3次元形状を計測する
請求項1から6のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項8】
前記物体計測装置は、前記エネルギビームとは異なる計測光を照射することで前記物体の表面を計測する
請求項3から7のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項9】
前記物体計測装置は、前記物体の計測のために前記ビーム照射装置によって前記エネルギビームを照射することなく、前記物体の表面の形状を計測する
請求項1から8のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項10】
前記物体計測装置は、前記ビーム照射装置によって前記エネルギビームを照射することなく、前記物体の表面を計測する
請求項1から9のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記物体の加工が完了する前に前記回転軸の情報を取得する
請求項1から10のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記物体の加工が行われる前に前記回転軸の情報を取得する、
請求項11に記載の加工システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記物体の加工が行われている間に前記回転軸の情報を取得する、
請求項11に記載の加工システム。
【請求項14】
前記物体に関する情報は、前記物体の表面の形状に関する情報を含む
請求項1から13のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項15】
前記回転軸の情報は、前記回転軸と前記物体とのずれに関する情報を含む
請求項1から14のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項16】
前記ずれに関する情報は、前記回転軸と前記物体の中心軸との角度関係及び位置関係の少なくとも一方を含む
請求項15に記載の加工システム。
【請求項17】
前記回転軸の情報は、ステージに対する前記回転装置の組み付け誤差及び前記回転軸の方向と前記エネルギビームの走査方向とのずれの少なくとも一方に関する情報を含む
請求項1から16のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項18】
前記制御装置は、前記ビーム照射装置による前記エネルギビームの照射位置を制御する
請求項1から17のいずれか一項に記載の加工システム。
第4 取消理由通知で通知した取消理由について
1 取消理由の概要
取消理由通知で通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。当該取消理由は、特許異議申立書における申立の理由と同趣旨である。
(1) 進歩性
訂正前の本件特許の請求項1~18に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~18に係る特許は、法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2) 証拠方法
ア 申立書に添付して提出された証拠のうち取消理由通知で採用したもの
甲第1号証:特開2014-223672号公報
甲第2号証:特開昭54-69896号公報
甲第3号証:特開2018-176245号公報
甲第4号証:特開2005-262220号公報
イ 申立書に添付して提出された証拠のうち取消理由通知では採用しなかったもの
甲第5号証:特開2018-153842号公報
以下、「甲第1号証」等を単に「甲1」等という。
2 取消理由についての判断
第2のとおり本件訂正は認められたから、本件発明について前記1の取消理由を検討する。
(1) 本件発明1の進歩性
ア 甲1に記載された発明
(ア) 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。
「【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、加工対象物の軸振れの測定と補正を高精度で行うことができ、加工精度を向上させたレーザ加工方法及び加工装置を提供することを目的とする。
・・・
【0018】
以下、本発明に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
まず、レーザ加工装置の実施形態について説明する。この実施形態のレーザ加工装置1は、図1に示すように、加工対象物wに加工用レーザ光L1を照射して加工する装置である。レーザ加工装置1は、加工対象物wに加工用レーザ光L1及び測定用レーザL2を照射するレーザ照射手段2と、加工対象物wを保持した状態で回転及びx,y,z軸方向に移動可能なステージを有するワーク保持手段3と、加工対象物wの表面で反射した加工用レーザ光L1の反射光R1の変化により加工終点を判定可能な終点判定手段4(図2参照)と、加工対象物wの表面で反射した測定用レーザ光L2の反射光R2の変化により加工対象物wの軸心と回転中心との軸ずれを検出して、補正値を算出する補正手段5(図3参照)と、これらを制御するコンピュータからなる制御手段6とを備える。
【0019】
レーザ照射手段2は、例えばレーザ光を一定の繰り返し周波数でパルス発振するレーザ光源11と、レーザ光の広がりを調整するビーム調整部12と、照射するレーザ光を走査させるガルバノスキャナ13と、レーザ光をスポット状に集光する集光レンズ14と、光路を屈曲する複数のミラーm1,m2とを備えている。
・・・。また、本実施形態においては、レーザ光源11の出力を調整することによりレーザ光のエネルギー密度を調整して、異なるエネルギー密度の加工用レーザ光L1と測定用レーザ光L2とを照射することとしている。そして、測定用レーザ光L2は、加工対象物wの加工閾値よりも低く、加工用レーザ光L1よりも低いエネルギー密度に設定される。・・・。
【0020】
ワーク保持手段3は、加工対象物wを把持するチャック21と、このチャック21を回転する回転機構22と、この回転機構22を搭載してx,y,z軸方向に移動可能なステージ23x~23zを有している。・・・。
【0021】
また、レーザ加工装置1には、加工対象物wの表面で反射する加工用レーザ光L1の反射光R1及び測定用レーザ光L2の反射光R2の双方を受光可能な受光手段31が備えられる。そして、補正手段5は、図3に示すように、この受光手段31と、受光手段31で受光された反射光R2から加工対象物wの軸心Oと回転中心Cとの軸ずれにより生じる軸振れの大きさを算出する算出部37から構成される。また、終点判定手段4は、図2に示すように、受光手段31により加工対象物wの表面で反射する加工用レーザ光L1の反射光R1を受光し、この反射光R1から加工終点を判定するコンピュータからなる判定部32により構成される。
・・・
【0023】
次に、このレーザ加工装置1を用いて加工対象物wを加工する方法について説明する。
まず、ワーク保持手段3のチャック21に加工対象物wを固定する。そして、加工対象物wの加工開始前に、加工対象物wの軸心Oとワーク保持手段3の回転中心Cとの軸ずれにより生じる加工対象物wの軸振れの大きさを算出する。
軸振れの大きさの算出は、加工対象物wに測定用レーザ光L2を定点照射し、回転機構22によって加工対象物wを回転しながら、加工対象物wの表面で反射した反射光R2のスクリーン33への投影光S2を測定することにより行う。・・・。
・・・
【0026】
・・・。そして、軸振れの大きさRxに基づいて加工用レーザ光L1の照射位置を加工対象物wの回転に伴い追随させることで、加工対象物wをワーク保持手段3に取り付ける際に生じる軸ずれを補正でき、加工時において軸振れの影響を取り除くことができる。・・・。
・・・
【0028】
・・・、これらの変数が軸振れ角θ又はx座標の位置に伴い変化する値であることを示している。・・・。
・・・
【0030】
以上の関係式を用いることで、投影光S2のz座標の測定値から、測定用レーザ光L2が照射される位置のx座標における軸振れの大きさRxを求めることができる。また、スクリーン33上の投影光S2のz座標が、加工対象物wの回転に伴い変化するが、このときの投影光S2のz座標の変化量から、加工対象物wのy座標Δyxθ及びz座標Δzxθを求めることができる。そして、これらの算出値に基づいて加工用レーザ光L1の照射位置をガルバノスキャナ13やステージ部23x~23zを操作して加工対象物wの回転に伴い追随させることで、加工対象物wを回転機に取り付ける際に生じる軸ずれを補正することができる。」
「【図1】
[図:0001433070000001.jpg]
・・・
【図3】
[図:0001433070000002.jpg]
【図4】
[図:0001433070000003.jpg]
」
(イ) 甲1から理解できる事項
a 【0018】の「加工対象物wに加工用レーザ光L1及び測定用レーザL2を照射するレーザ照射手段2」という記載、及び【0019】の「レーザ光源11の出力を調整することによりレーザ光のエネルギー密度を調整して、異なるエネルギー密度の加工用レーザ光L1と測定用レーザ光L2とを照射する」という記載からみて、加工用レーザ光L1と測定用レーザ光L2とは同時に照射されるものではないから、レーザ照射手段2は加工対象物wに加工用レーザ光L1又は測定用レーザ光L2を照射するものといえる。
b 【0023】の「ワーク保持手段3の回転中心C」という記載によると、【0020】のとおりワーク保持手段3は回転機構22を有するから、回転中心Cは、回転機構22の回転中心Cであるといえる。
(ウ) 甲1発明
(ア)及び(イ)から、甲1に記載された事項を、本件発明1の発明特定事項に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「加工対象物wを回転可能に把持するチャック21と、
前記チャック21を回転させる回転機構22と、
前記チャック21が把持した前記加工対象物wに加工用レーザ光L1又は測定用レーザ光L2を照射するレーザ照射手段2と、
前記加工対象物wの表面で反射する加工用レーザ光L1の反射光R1及び測定用レーザ光L2の反射光R2の双方を受光可能な受光手段31と、
前記受光手段31によって受光された反射光R2と、前記回転機構22の回転中心Cとに基づいて、前記加工用レーザ光L1の照射位置を加工対象物wの回転に伴い追随させる制御手段6と
を備え、
前記レーザ照射手段2からの加工用レーザ光L1を前記チャック21に把持された前記加工対象物wに照射することにより前記加工対象物wを加工する
レーザ加工装置1。」
イ 甲2に記載された事項
(ア) 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。
「レーザー光(L)及び溶融物除去成形バイト(3)による加工状況は数値制御装置(6)からの指令によって追従装置(5a)を介してレーザー非接触式形状測定器(5)により測定され、逐次数値制御装置(6)に伝達される。そして数値制御装置(6)は受信した情報を再処理して、指令を追従装置(1a),(3a)を介してレーザー光照射装置(1)及び溶融物除去成形バイト(3)に与えて照射点(P)及び当接点(Q)の各瞬時における正確な位置制御を達成する。かくしてレーザー光照射装置(1),溶融物除去成形バイト(3)及びレーザー非接触式形状測定装置(5)による照射点(P),当接点(Q),計測点(R)は被加工物(W)の回転半径方向及び回転軸線方向に常に正確な位置を保持しつつ移動するので、広範囲に亘る被加工物(W)の外径面に高精度の凹凸形状を成形することができる。」(3ページ右下欄12行~4ページ左上欄12行)
「
[図:0001433070000004.jpg]
」
(イ) 甲2から理解できる事項
(ア)によると、甲2には、レーザ加工技術に関し「レーザー非接触式形状測定器(5)で被加工物(W)の外径面を測定すること」(以下「甲2技術」という。)が開示されているといえる。
ウ 甲3に記載された事項
(ア) 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。
「【0009】
図1は、一態様によるレーザ加工システム10の構成を機能ブロックで示す。レーザ加工システム10は、加工用光学系11を通してレーザ光Lを対象物Wに走査式(破線矢印S)に照射する加工ヘッド12と、加工ヘッド12に設けられ、加工用光学系11の光軸11aに沿って照明光Iを加工ヘッド12から対象物Wに向けて出射させる照明光出射部14と、照明光出射部14に対し予め定めた位置関係を有し、対象物Wの被照射点Wpで反射する照明光Iの反射光Irを受光する受光部16と、受光部16が受光した反射光Irを処理して被照射点Wpの三次元測定データMを取得する測定処理部18とを備える。
・・・
【0012】
加工開始前に測定した被照射点Wp(加工対象部位)の位置や形状のデータ(つまり三次元測定データM)は、必要に応じて、加工プログラムに含まれる加工ヘッド12の位置指令や走査動作指令の補正に用いることができる。また加工終了後に測定した被照射点Wp(加工対象部位)の加工品質のデータ(三次元測定データM)は、必要に応じて、加工プログラムに含まれるレーザ発振パラメータ等の調整に用いることができる。なおレーザ加工システム10が有する測定機能は、加工対象部位の測定に限定されず、例えば、加工対象部位の位置を相対的に表すことができるように対象物(ワーク)Wに設定された基準箇所(例えば板状ワークの角部)の位置の測定や、レーザ加工に際して干渉物となり得るワーク以外の対象物Wの外面の位置や形状の測定に用いることもできる。
・・・
【0020】
レーザ加工システム10、20では、三次元測定データMの測定処理の他の例として、三角測量法の一種として知られる光切断法を採用できる。光切断法では、照明光出射部14は、線状の照明光(つまりスリット光)Iを対象物Wに照射し、受光部16は、被照射点Wpにおける線状の反射光Irを撮像処理し、測定処理部18は、受光部16が撮像処理した線状の反射光Irを三角測量処理して三次元測定データMを取得する。線状の照明光Iで照射される被照射点Wpの位置を平行移動させて、個々の位置で線状の反射光Irの三角測量処理を行うことにより、対象物Wの三次元形状を取得することができる。」
「
[図:0001433070000005.jpg]
」
(イ) 甲3から理解できる事項
(ア)によると、甲3には、レーザ加工技術に関し「照明光Iを用いて対象物Wの三次元測定データMを取得すること」(以下「甲3技術」という。)が開示されているといえる。
エ 甲4に記載された事項
(ア) 甲4の記載事項
「【0058】
本発明の実施例6(請求項2~4に対応)について、図8を参照しながら説明する。図8は、被加工物表面の三次元形状を測定するための構成を示す。
図8に示された構成において、図2の示された前記実施例1もの(当審注:「実施例1のもの」と思われる)と同じ部品には同じ符号を付けており、これらは前記実施例1のものと同様に作用するものである。加工用のYAGレーザ光源5からの光は、NDフィルタ6を透過してレンズ7にて集光された後、広げられ、レンズ8にてコリメートされる。ピンホール9は空間フィルタとして作用する。コリメートされた光はミラー10にて折り返され(反射され)、対物レンズ2により集光されて被加工物3に照射される。この被加工物3の加工点近傍では、反応場4bが生じるとともに形態変化4aが生じる。
11は計測用の半導体レーザ励起YAGレーザで、この半導体レーザ励起YAGレーザ11からの光は、NDフィルタ12を通過してレンズ13にて集光されたのち広げられ、レンズ14にてコリメートされる。15は空間フィルタとして作用するピンホールである。レンズ14にてコリメートされた光はビームスプリッタ50にて分岐され、該ビームスプリッタ50にて反射された光は被加工物面に照射されて、該被加工物3で反射された光は往きの光路を逆行してビームスプリッタ50を透過してミラー52で折り返される。一方、往きの光路でビームスプリッタ50を透過した光はミラー51で反射され、該ビームスプリッタ50にて反射されてミラー52で折り返される。上記被加工物3で反射された光は物体光となり、ミラー51で反射された光は参照光となる。
【0059】
物体光路長と参照光路長を半導体レーザ励起YAGレーザ11のコヒーレンス長以下に設定しておき、上記物体光と参照光の光軸をほぼ一致させれば両者は干渉して干渉縞を発生する。この干渉縞はレンズ20、ミラー21、レンズ22及びレンズ23を介してCCDカメラ24の撮像面上で結像する。このCCDカメラ24にて撮像された干渉縞画像は、CCDドライバ25、フレームグラバ26を介してパーソナルコンピュータ27のメモリに転送され、干渉縞画像として処理される。収録した干渉縞画像からレーザ加工途中における被加工面形状と二次元強度分布が同時に測定される。干渉縞画像の収録方法、物体光の強度情報、位相情報の計算方法は、前記実施例1(図2参照)のものと同様であるが、位相情報から加工面形状を求める場合は、物体光は被加工面で反射されて位相差が倍になっているため、物体光の位相情報を半分にしてから長さの単位に変換して形状を求める。」
「
[図:0001433070000006.jpg]
」
(イ) 甲4から理解できる事項
前記(ア)によると、甲4には、レーザ加工に関し「計測用の半導体レーザ励起YAGレーザを用いて被加工物表面の三次元形状を測定すること」(以下「甲4技術」という。)が開示されている。
オ 甲5に記載された事項
(ア) 甲5の記載事項
「【0001】
本発明は、計測装置およびレーザ溶接装置に関する。
・・・
【0020】
計測部2は、ワーク150の溶融池150bの溶け込み深さを光干渉法により計測するために設けられている。・・・。」
「【図1】
[図:0001433070000007.jpg]
」
(イ) 甲5から理解できる事項
(ア)によると、甲5には、レーザ溶接に関し「光干渉法を用いてワークの溶融池の溶け込み深さを測定すること」(以下「甲5技術」という。)が開示されている。
カ 対比
(ア) 甲1発明の「加工対象物w」は本件発明1の「物体」に相当し、以下同様に、「把持」は「保持」に、「チャック21」は「保持装置」に、「回転機構22」は「回転装置」に、それぞれ相当する。
(イ) 甲1発明の「加工用レーザ光L1」が本件発明1の「エネルギビーム」に相当するので、甲1発明の「前記加工対象物wに加工用レーザ光L1又は測定用レーザL2を照射するレーザ照射手段2」は、本件発明1の「前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置」に相当する。
(ウ) 甲1発明の「前記加工対象物wの表面で反射する加工用レーザ光L1の反射光R1及び測定用レーザ光L2の反射光R2の双方を受光可能な受光手段31」と、本件発明1の「前記物体の表面を計測する物体計測装置」とは、「前記物体の表面に関する情報を取得する装置」という概念では一致する。
(エ) 甲1発明の「前記受光手段31によって受光された反射光R2」と、本件発明1の「前記物体計測装置によって取得された前記物体に関する情報」とは、
「前記取得する装置によって取得された前記物体に関する情報」という概念では一致する。
(オ) 甲1発明の「前記回転機構22の回転中心C」は、本件発明1の「前記回転装置の回転軸の情報」に相当する。
(カ) 甲1発明の「前記加工用レーザ光L1の照射位置を加工対象物wの回転に伴い追随させる制御手段6」は、本件発明1の「前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置」に相当する。
(キ) 甲1発明の「前記レーザ照射手段2からの加工用レーザ光L1を前記チャック21に把持された前記加工対象物wに照射することにより前記加工対象物wを加工する」ことは、本件発明1の「前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する」ことに相当する。
(ク) 甲1発明の「レーザ加工装置1」は、全体的にみればシステムともいえるから、本件発明1の「加工システム」に相当する。
キ 一致点と相違点
カによると、本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は以下のとおりである。
(ア) 一致点
「物体を回転可能に保持する保持装置と、
前記保持装置を回転させる回転装置と、
前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、
前記物体の表面に関する情報を取得する装置と、
前記取得する装置によって取得された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置と
を備え、
前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する
加工システム。」
(イ) 相違点1
物体の表面に関する情報を取得する装置が、本件発明1では物体の表面「を計測する物体計測装置」であるのに対し、甲1発明では加工対象物wの表面「で反射する加工用レーザ光L1の反射光R1及び測定用レーザ光L2の反射光R2の双方を受光可能な受光手段31」である点。
(ウ) 相違点2
「前記取得する装置によって取得された前記物体に関する情報」が、本件発明1では「前記物体計測装置によって取得された前記物体に関する情報」であるのに対し、甲1発明では「前記受光手段31によって受光された反射光R2」である点。
(エ) 相違点3
本件発明1は「前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置」を備えるのに対し、甲1発明ではこれに相当する構成を有しない点。
ク 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
取消理由通知で用いた甲2技術~甲4技術、及び、特許異議申立書で提示された甲5記載の甲5技術をみても、相違点3の「前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置」に相当する技術的な内容が見当たらないことが明らかである。
そうすると、甲1発明に甲2技術~甲5技術を適用したとしても、相違点3に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
ケ 本件発明1の進歩性についての小括
以上のとおりであるから、相違点1~2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術~甲5技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件発明1に係る特許が、法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~18の進歩性
本件発明2~18は、直接的又は間接的に本件発明1に従属するものであるから、少なくとも相違点3について、(1)クのとおり、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
したがって、本件発明2~18に係る特許が、法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
(3) 進歩性についての小括
(1)~(2)のとおりであるから、本件発明1~18に係る特許は、当審が取消理由通知で通知した取消理由であり、かつ、特許異議申立書における申立の理由である法29条2項(進歩性)の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、本件発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701193