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特許異議申立

2021-700531

光拡散フィルム及びその製造方法並びに表示装置

審判番号
2021-700531
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-112812外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6797567
請求日
2021年06月01日
審決日
2022年12月05日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(G02B) / P1652.121-YAA(G02B) / P1652.536-YAA(G02B) / P1652.537-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6797567号発明「光拡散フィルム及びその製造方法並びに表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6797567号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第6797567号の請求項1ないし3、6ないし10、12ないし14に係る特許を維持する。
特許第6797567号の請求項4、5に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続等の経緯

特許第6797567号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2016-112812号)は、平成28年6月6日を出願日とする出願であって、令和2年11月20日にその特許権の設定の登録がされ、令和2年12月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許について、その特許掲載公報発行の日から6月以内である令和3年6月1日に、特許異議申立人 前田 しのぶ(以下「特許異議申立人」という。)から請求項1~10、12~14に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和3年 8月19日付け:取消理由通知書
令和3年11月 1日付け:訂正請求書
令和3年11月 1日付け:意見書(特許権者)
令和4年 1月 7日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年 3月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 6月 3日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和4年 6月 3日付け:意見書(特許権者)
令和4年 7月27日付け:意見書(特許異議申立人)

なお、令和3年11月1日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正請求について

1 請求の趣旨

本件訂正請求の趣旨は、特許第6797567号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める、というものである。

2 訂正の内容

本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(1) 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、全光線透過率が91%以上であり、かつ前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下である」と記載されているのを、「ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、全光線透過率が91%以上であり、かつ前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下であり、前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでおり、前記光拡散層が、算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~3及び6~14も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「透過光の色度b*が10以下である」と記載されているのを、「透過光の色度b*が10以下であり、前記内部ヘイズが3.3%以上13%以下である」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3及び6~14も同様に訂正する)。

(3) 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「透過光の色度a*が2以下である」と記載されているのを、「透過光の色度a*が2以下であり、前記微粒子が、その平均粒径が1nm以上800nmであるシリカナノ粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、又は架橋スチレン系樹脂粒子である」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項6~14も同様に訂正する)。

(4) 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5) 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6) 一群の請求項について

訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。したがって、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の適否

(1) 訂正事項1

ア 訂正の目的について

訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「光拡散層」について、「前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでおり、前記光拡散層が、算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する」ものに限定する訂正であるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。請求項2~3及び6~14についても同様である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1における「光拡散層」を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。請求項2~3及び6~14についても同様である。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

本件特許明細書の段落【0055】には、「フィラーとしては、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子などの無機微粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、架橋スチレン系樹脂粒子などの有機微粒子を含んでいてもよい。これらのフィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。」との記載がある。

また、本件特許の特許請求の範囲の訂正前の請求項4及び請求項5には、それぞれ「光拡散層表面の算術平均表面粗さRaが0.3μm以上である」及び「光拡散層表面の凹凸の平均間隔Smが100μm以下である」との記載がある。さらに、本件特許明細書の段落【0026】には、「前記光拡散層表面・・・略・・・の凹凸の平均間隔(平均山谷間隔)Smは100μm以下であってもよく、例えば5~100μm・・・略・・・程度であるSmが大きすぎると、凸形状がなだらかな形状となり、光拡散性が低下する虞がある。」との記載がある。

してみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。請求項2~3及び6~14についても同様である。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項1~10、12~14に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して訂正される、訂正後の請求項1、訂正後の請求項2~10、12~14については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

一方、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して訂正される、訂正後の請求項11については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、以下に示すとおり、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して訂正される、訂正後の請求項11は、独立特許要件を満たす。

すなわち、訂正事項1に関して訂正される訂正後の請求項11に係る発明は、「支持体の上に、1種以上のポリマー成分及び1種以上の硬化樹脂前駆体成分を含む硬化性組成物を塗布して乾燥することにより、ボリマー成分及び硬化樹脂前駆体成分から選択される少なくとも2つの成分を、湿式スピノーダル分解により相分離させる相分離工程、相分離した硬化性組成物を熱又は活性エネルギー線で硬化させる硬化工程を含む請求項1~10のいずれかに記載の光拡散フィルムの製造方法。」であるところ、訂正後の請求項11に係る発明と、(下記「第5」1(1)イ(カ)で述べた引用発明1(「光学体1」)の製造工程から理解される、)引用発明1(「光学体1」)を製造する方法の発明を対比すると、引用発明1(光学体1)を製造する方法の発明は、「相分離工程」及び「硬化工程」を含むものでない点で少なくとも相違する。そして、引用発明1(光学体1)を製造する方法の発明において、当該発明の前提となる製造方法を、その工程内容及び表面凹凸の形成原理が技術的に大きく異なる「相分離工程」及び「硬化工程」を含む製造方法に置き換えることは、たとえ「相分離工程」及び「硬化工程」を含む製造方法が本件特許の出願時に周知のものであったとしても、当業者が容易になし得たこととはいえない。

下記「第5」2(1)イ(エ)で述べた、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」を製造する方法の発明に基づき、訂正後の請求項11の独立特許要件を検討しても同様である。

(2) 訂正事項2

ア 訂正の目的について

訂正事項2は、訂正前の請求項2において、「光拡散フィルム」について、「前記内部ヘイズが3.3%以上13%下であ」るものに限定する訂正であるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。請求項3及び6~14についても同様である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項2における「光拡散フィルム」について、「前記内部ヘイズが3.3%以上13%下であ」るものに限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。請求項3及び6~14についても同様である。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

本件特許明細書の【0109】の【表1】には、実施例2及び実施例5に係る光拡散フィルムの内部ヘイズとして、「3.3%」及び「13%」がそれぞれ示されている。

してみると、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。請求項3及び6~14についても同様である。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項1~10、12~14に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して訂正される、訂正後の請求項2、訂正後の請求項3~10、12~14については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。一方、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して訂正される、訂正後の請求項11については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、上記 (1)エにおいて示した理由と同様な理由により、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して訂正される、訂正後の請求項11は、独立特許要件を満たす。

(3) 訂正事項3

ア 訂正の目的について

訂正事項3は、訂正前の請求項3において、「前記微粒子が、その平均粒径が1nm以上800nmであるシリカナノ粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、又は架橋スチレン系樹脂粒子であ」るものに限定する訂正であるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。請求項6~14についても同様である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アに記載したとおり、訂正事項3は、「前記微粒子が、その平均粒径が1nm以上800nmであるシリカナノ粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、又は架橋スチレン系樹脂粒子であ」るものに限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。請求項6~14についても同様である。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

本件特許明細書の段落【0055】には、「フィラーとしては、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子などの無機微粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、架橋スチレン系樹脂粒子などの有機微粒子を含んでいてもよい。これらのフィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。」との記載があり、段落【0012】に「前記硬化樹脂前駆体成分は、シリカナノ粒子を含んでいてもよい。」との記載があり、さらに段落【0056】に「また、シリカナノ粒子の平均粒径は、例えば1~800nm、好ましくは3~500nm、さらに好ましくは5~300nm程度である。」との記載がある。

してみると、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。請求項6~14についても同様である。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項1~10、12~14に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して訂正される、訂正後の請求項3、訂正後の請求項4~10、12~14については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。一方、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して訂正される、訂正後の請求項11については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、上記 (1)エにおいて示した理由と同様な理由により、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して訂正される、訂正後の請求項11は、独立特許要件を満たす。

(4) 訂正事項4

ア 訂正の目的について

訂正事項4は、訂正前請求項4を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項4は、訂正前請求項4を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項4は、訂正前請求項4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許精求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5) 訂正事項5

ア 訂正の目的について

訂正事項5は、訂正前請求項5を削除するというものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項5は、訂正前請求項5を削除するというものであるから、当該訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項5は、訂正前請求項5を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許精求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

4 まとめ

本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。

よって、結論に記載のとおり、特許第6797567号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

本件特許の請求項1~3、6~10、12~14に係る発明(以下、「本件特許発明1」等といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3、6~10、12~14に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「 【請求項1】
透明基材層と、この透明基材層の少なくとも一方の面にコーティングで形成された光拡散層とを含む光拡散フィルムであって、
ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、全光線透過率が91%以上であり、かつ前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下であり、
前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでおり、
続きを表示(全11行)
前記光拡散層が、算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する光拡散フィルム。
【請求項2】
透過光の色度b*が10以下であり、
前記内部ヘイズが3.3%以上13%以下である請求項1記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
透過光の色度a*が2以下であり、
前記微粒子が、その平均粒径が1nm以上800nmであるシリカナノ粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、又は架橋スチレン系樹脂粒子である請求項1又は2記載の光拡散フィルム。」
「 【請求項6】
光拡散層が、1種以上のポリマー成分及び1種以上の硬化樹脂前駆体成分を含む硬化性組成物の硬化物である諸求項1~5のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
ポリマー成分及び硬化樹脂前駆体成分から選択される少なくとも2つの成分が、湿式スピノーダル分解により相分離可能である請求項6記載の光拡散フィルム。
【請求項8】
ポリマー成分が、重合性基を有していてもよい(メタ)アクリル系重合体、ウレタン変性ポリエステル及びセルロースエステル類から選択された少なくとも1種を含む請求項6又は7記載の光拡散フィルム。
【請求項9】
硬化樹脂前駆体成分が、多官能(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びシリコーン(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種を含む請求項6~8のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項10】
硬化樹脂前駆体成分が、シリカナノ粒子を含む請求項6~9のいずれかに記載の光拡散フィルム。」
「【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の光拡散フィルムを備えた表示装置。
【請求項13】
有機ELディスプレイである請求項12記載の表示装置。
【請求項14】
コリメートバックライトユニットを有し、かつプリズムシートを有さない液晶表示装置であって、光拡散フィルムが、液晶素子の視認側前面に配置されている請求項12記載の表示装置。」

第4 取消しの理由の概要

1 本件特許の請求項1~10、12~14に係る特許に対して、当合議体が令和3年8月19日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消しの理由の要旨は、次のとおりである。

●理由1(新規性)

本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

●理由2(進歩性)

本件特許の請求項1~10、12~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(引用例一覧)

引用例1:特開2016-51116号公報(甲第1号証)
引用例2:国際公開第2008/072731号(甲第3号証)
引用例3:特開2009-86423号公報(甲第4号証)
引用例4:特開2003-66207号公報(甲第5号証)
引用例5:国際公開第2013/047184号

(当合議体注:引用例1は主引用例である。引用例2~5は、副引用例あるいは、周知技術を例示する文献である。)

●理由3(サポート要件)

本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●理由4(実施可能要件)

本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 本件特許の請求項1~10、12~14に係る特許に対して、当合議体が令和4年3月30日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消しの理由の要旨は、次のとおりである。

●理由2(進歩性)

本件特許の請求項1~10、12~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

(引用例一覧)

引用例1:特開2016-51116号公報(甲第1号証)
引用例2:国際公開第2008/072731号(甲第3号証)
引用例3:特開2009-86423号公報(甲第4号証)
引用例4:特開2003-66207号公報(甲第5号証)
引用例5:国際公開第2013/047184号
引用例6:特開平11-305010号公報
引用例7:特開2015-172837号公報
引用例8:特開2014-85371号公報
引用例9:特開2014-92657号公報
引用例11:特開2009-244465号公報

(当合議体注:引用例1及び引用例11は主引用例である。引用例2~9は、副引用例あるいは、周知技術を例示する文献である。)

●理由3(サポート要件)

本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●理由4(実施可能要件)

本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~10、12~14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 当合議体の判断

1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)(引用例1を主引用例とする場合)について

(1) 引用例の記載及び引用発明

令和4年3月30日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消しの理由で引用された引用例1(特開2016-51116号公報)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載したものであるところ、そこには、以下の記載がある(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下同じ。)。

ア 引用例1の記載

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成された第1の凹凸構造と、
前記第1の凹凸構造に重畳された第2の凹凸構造と、
を備え、
前記第1の凹凸構造の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長よりも大きく、
前記第2の凹凸構造の凹凸の平均周期は、前記可視光帯域に属する波長以下であり、
前記第2の凹凸構造の突起部は、前記基材の平坦面に対する法線方向に伸長している、光学体。」
(イ) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学体、表示装置および光学体の製造方法に関する。
続きを表示(全28行)
【背景技術】
【0002】
一般的に、テレビなどの表示装置やカメラレンズなどの光学素子では、光の透過量を向上させるために、光が入射する表面に対して反射防止処理が施されている。
【0003】
従来、このような反射防止処理の一つとして、例えば、光の入射表面に対して、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造(例えば、モスアイ構造など)を形成することが提案されている。
・・・略・・・
【0004】
また、上記のようなミクロ凹凸構造を、ミクロ凹凸構造よりも大きな凹凸を有するマクロ凹凸構造の表面に対して重畳形成することが希求されている。マクロ凹凸構造としては、例えば、入射光を散乱させるために表面に粗面構造を形成した防眩(アンチグレア)構造体、・・・略・・・などが挙げられる。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、・・・に開示された技術では、ミクロ凹凸構造の形成方法としてウェットエッチングが採用されているため、ミクロ凹凸構造がアンチグレア構造体の表面に対して等方的に形成されてしまう。その結果、ミクロ凹凸構造の突起部は、アンチグレア構造表面の各位置での接平面の法線方向に伸長していた。
【0008】
このような重畳構造では、ミクロ凹凸構造における突起部の伸長方向が、基材の平坦面に対する法線方向に向かって揃っていないため、正面からの強い外光に対する反射防止能が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、反射防止能が向上した、新規かつ改良された光学体、該光学体を備える表示装置、および該光学体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基材の表面に形成された第1の凹凸構造と、前記第1の凹凸構造に重畳された第2の凹凸構造と、を備え、前記第1の凹凸構造の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長よりも大きく、前記第2の凹凸構造の凹凸の平均周期は、前記可視光帯域に属する波長以下であり、前記第2の凹凸構造の突起部は、前記基材の平坦面に対する法線方向に伸長している、光学体が提供される。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、第2の凹凸構造の突起部が基材の平坦面の法線方向に伸長していることにより、光学体の反射防止能を向上させることが可能である。」
(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0029】
・・・略・・・
【0030】
続きを表示(全153行)
<1.光学体について>
[1.1.光学体の構造]
まず、図1A~図2を参照して、本発明の一実施形態に係る光学体の構造について説明する。図1Aは、本実施形態に係る光学体1を厚み方向に切断した際の断面形状を模式的に示す断面図である。図1Aに示すように、本実施形態に係る光学体1は、基材11の表面に形成されたマクロ凹凸構造13(第1の凹凸構造に相当する)と、マクロ凹凸構造13に対して重畳されたミクロ凹凸構造14(第2の凹凸構造に相当する)とを有する。
・・・略・・・
【0033】
マクロ凹凸構造13は、基材11上に形成される凹凸構造であり、図1Aに示したように、基材11の平坦面12に対して凹である谷部13Aと、基材11の平坦面12に対して凸である山部13Cと、を有する。また、互いに隣接する谷部13Aと山部13Cとの間には、斜面部13Bが形成される。本実施形態に係るマクロ凹凸構造13の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長よりも大きく(例えば、830nm超)、好ましくは、1μm以上100μm以下である。ここで、マクロ凹凸構造13における凹凸の平均周期は、図1Aに示した、隣り合う谷部13A、13A間、または、山部13C、13C間の平均距離P1に対応している。
【0034】
かかるマクロ凹凸構造13は、例えば、凹凸の平均周期が1μm以上100μm以下である防眩(アンチグレア)構造であってもよい。また、マクロ凹凸構造13は、直径が1μm以上100μm以下である複数のレンズが図1A中のXY平面に2次元的に配列されたマイクロレンズアレイ構造であってもよい。なお、以下では、マクロ凹凸構造13が防眩(アンチグレア)構造である場合を例に挙げて、説明を行うものとする。
【0035】
ミクロ凹凸構造14は、マクロ凹凸構造13に対して重畳形成された凹凸構造であり、図1Aに示したように、基材11の平坦面12の法線方向に伸長した複数の突起部141と、相隣接する突起部141、141の間に位置する底部143と、から構成される。本実施形態に係るミクロ凹凸構造14の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長以下(例えば、830nm以下)であり、好ましくは、100nm以上350nm以下である。ここで、ミクロ凹凸構造14における凹凸の平均周期は、図1Aに示した、互いに隣り合う突起部141、141の頂点間の平均距離P2に対応している。
・・・略・・・
【0039】
次に、ミクロ凹凸構造14について、図1B及び図2を参照して、より具体的に説明する。図1Bは、図1Aの部分領域Xを拡大して模式的に示した拡大断面図である,また、図2は、本実施形態に係る光学体1の平面配列の一例を示す上面図である。
【0040】
図1Bに示すように、ミクロ凹凸構造14の突起部141は、マクロ凹凸構造13の谷部13Aに形成された谷側突起部141Aと、マクロ凹凸構造13の斜面部13Bに形成された中間突起部141Bと、マクロ凹凸構造13の山部13Cに形成された山側突起部141Cと、を含む。
【0041】
・・・略・・・中間突起部141Bの高さhBは、谷側突起部141Aの高さhAおよび山側突起部141Cの高さhCよりも低いことがより好ましい。ミクロ凹凸構造14において反射を防止可能な光の波長帯域は、突起部141の高さに依存する。そのため、ミクロ凹凸構造14の突起部141が、谷側突起部141Aおよび山側突起141Cと、これら突起部よりも高さの低い中間突起部141Bと、を含むことで、反射を防止することができる入射光の波長帯域を広げることができる。例えば、谷側突起部141Aの高さhAおよび山側突起部141Cの高さhCが、300nm以上400nm以下である場合、中間突起部141Bの高さhBは200nm以上300nm以下であることが好ましい。
・・・略・・・
【0048】
[1.2.光学体の特性]
・・・略・・・
【0056】
<2.光学体の製造方法について>
・・・略・・・
【0092】
[2.2.第2の製造方法]
続いて、図5~図8を参照して、本実施形態に係る光学体1の第2の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る光学体1を製造するための光学体原盤1Aを説明する斜視図である。また、図6は、図5に示す光学体原盤1Aを製造する露光装置の一例を示した説明図であり、図7は、図5に示す光学体原盤1Aを製造するエッチング装置の一例を示した説明図である。さらに、図8は、本実施形態に係る光学体1を製造する転写装置の一例を示した説明図である。
【0093】
具体的には、本実施形態に係る光学体1の第2の製造方法では、まず、マクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14が重畳された凹凸構造5が表面に形成された光学体原盤1Aを製造する。次に、製造した光学体原盤1Aを用いて、シート状の基材11に凹凸構造5を転写することにより、基材11の表面に凹凸構造5が形成された光学体1を連続的に製造する。
【0094】
まず、図5を参照して、光学体原盤1Aについて説明する。図5に示すように、光学体原盤1Aは、例えば、中空円柱状の原盤基材3からなる。また、原盤基材3の外周面には、凹凸構造5が形成されている。
【0095】
原盤基材3は、例えば、円筒形状のガラス体であり、例えば、石英ガラスで形成される。
・・・略・・・
【0097】
・・・略・・・具体的には、光学体原盤1Aは、図6に示す露光装置2、および図7に示すエッチング装置4を用いることにより製造することができる。
【0098】
ここで、図6および図7を参照して、光学体原盤1Aを製造するための露光装置2およびエッチング装置4について説明する。
【0099】
まず、図6に示す露光装置2について説明する。図6に示す露光装置2は、図3Bを参照して説明した露光工程にて用いられるレーザ描画装置である。
【0100】
図6に示すように、露光装置2は、レーザ光源21と、第1ミラー23と、フォトダイオード・・・略・・・24と、集光レンズ26と、電気光学偏向素子・・・略・・・29と、コリメータレンズ28と、制御機構37と、第2ミラー31と、移動光学テーブル32と、スピンドルモータ35と、ターンテーブル36とを備える。また、原盤基材3は、ターンテーブル36上に載置され、回転することができるようになっている。
【0101】
レーザ光源21は、原盤基材3の表面に成膜されたレジスト層を露光するためのレーザ光20Aを発振する光源であり、・・・略・・・。
【0104】
・・・略・・・移動光学テーブル32に導かれたレーザ光20Aは、・・・略・・・原盤基材3の表面に成膜されたレジスト層に照射される。
・・・略・・・
【0105】
ここで、ターンテーブル36により原盤基材3を回転させながら、レーザ光20Aを原盤基材3の軸方向に移動させ、レジスト層へレーザ光を間欠的に照射することでレジスト層への露光が行われる。
・・・略・・・
【0108】
続いて、図7に示すエッチング装置4について説明する。
・・・略・・・
【0110】
・・・略・・・プラズマ中のプラスイオンは、原盤基材3の外周面に垂直に入射し、垂直異方性を有するエッチングを行うことができる。
【0111】
以上にて説明した露光装置2およびエッチング装置4を用いて、・・・略・・・、図5で示した光学体原盤1Aを製造することができる。
【0112】
さらに、光学体原盤1Aの外周面に形成された凹凸構造5を基材11に転写することにより、本実施形態に係る光学体1を製造することができる。具体的には、本実施形態に係る光学体1は、図8に示す転写装置6を用いることにより製造することができる。
【0113】
ここで、図8を参照して、光学体原盤1Aを用いて光学体1を製造するための転写装置6について説明する。図8に示す転写装置6は、例えば、ロールツーロール(roll-to-roll)方式のナノインプリント装置である。
【0114】
図8に示すように、転写装置6は、光学体原盤1Aと、基材供給ロール51と、巻取ロール52と、ガイドロール53、54と、ニップロール55と、剥離ロール56と、塗布装置57と、光源58とを備える。
・・・略・・・
【0120】
転写装置6では、まず、基材供給ロール51からガイドロール53を介して、基材11が連続的に送出される。送出された基材11は、塗布装置57により光硬化樹脂組成物が塗布されることで樹脂層62が積層され、さらにニップロール55により、光学体原盤1Aと密着させられる。これにより、光学体原盤1Aの外周面(すなわち、転写面)に形成された凹凸構造5が樹脂層62に転写される。
・・・略・・・
【0121】
これにより、光学体原盤1Aに形成された凹凸構造5が転写されたシート状の光学体1を連続的に製造することができる。
【0122】
以上にて説明した各装置を用いることにより、本実施形態に係る光学体の第2の製造方法を実施することができる。
【0123】
具体的には、円筒形状の石英ガラスからなる原盤基材3の外周面に第1レジスト層15を成膜し、図6で示した露光装置2によってレーザ光による熱リソグラフィを行い、第1レジスト層15に潜像15Aを形成する。続いて、露光した原盤基材3を現像処理し、第1レジスト層15にパターンを形成した後、図7で示したエッチング装置4にて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にミクロ凹凸構造14を形成する。
【0124】
次に、ミクロ凹凸構造14を形成した原盤基材3の外周面に第2レジスト層16を成膜し、第2レジスト層16に対してマクロ凹凸構造13を形成する。続いて、図7で示したエッチング装置4にて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にマクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14を重畳形成する。これらの工程により、マクロ凹凸構造13に対してミクロ凹凸構造14が重畳された光学体原盤1Aが製造される。
【0125】
さらに、図8で示した転写装置6によって、上記で製造した光学体原盤1Aの外周面の凹凸構造5を基材11に転写することで、光学体1が製造される。
【0126】
この第2の製造方法によれば、ロールツーロール方式のナノインプリント技術を用いて光学体原盤1Aから光学体1へ凹凸構造5を転写することができるため、大面積のシート状の光学体1を高速かつ連続的に製造することが可能である。
・・・略・・・
【0128】
以上にて、本実施形態に係る光学体1の製造方法について説明した。
【実施例】
【0129】
<3.実施例>
以下では、実施例および比較例を参照しながら、上記実施形態に係る光学体1について、具体的に説明する。
・・・略・・・
【0130】
[3.1.光学体の製造]
以下の工程により、光学体1を製造した。
【0131】
(実施例1)
まず、円筒形状の石英ガラスからなる原盤基材3の外周面に、タングステン金属酸化物を含む第1レジスト層15を成膜した。次に、図6で示した露光装置2により、レーザ光による熱リソグラフィを行い、第1レジスト層15に六角格子状のドットアレイパターンの潜像15Aを形成した。
【0132】
なお、露光したドットアレイパターンは、原盤基材3の周方向のトラックに沿って所定のドットピッチごとにドットが配列され、隣接するトラック同士は互い違いに半ドットピッチずつずれた配列(六角格子状の配列)である。また、同一トラックにおけるドットピッチは約230nmであり、原盤基材3の軸方向のトラックピッチは約150nmである。
【0133】
続いて、原盤基材3をアルカリ現像液(東京応化工業社製NMD3)にて現像処理することで露光した部分のレジストを溶解させ、第1レジスト層15にドットアレイパターンを形成した。次に、第1レジスト層15をマスクにして、図7で示したエッチング装置4にてCHF3ガスを用いて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にミクロ凹凸構造14を形成した。なお、このエッチング工程では、ミクロ凹凸構造14の突起部141の高さが約250nmになるまで原盤基材3をエッチングした。
【0134】
さらに、ミクロ凹凸構造14を形成した原盤基材3に対して、紫外線硬化型樹脂であるカチオン重合型ナノインプリントリソグラフィ用レジストを溶媒に溶解して塗布し、第2レジスト層16を形成した。その後、原盤基材3を100℃で5分間加熱し、第2レジスト層16中の溶媒を除去した。
【0135】
ここで、第2レジスト層16に対して、マクロ凹凸構造13が形成された粗面フィルムを密着させ、紫外線を1000mJ/cm2にて照射することで、第2レジスト層16を硬化させた。その後、粗面フィルムを剥離し、第2レジスト層16にマクロ凹凸構造13を形成した。なお、粗面フィルムのマクロ凹凸構造13の算術平均粗さRaは0.449μmであった。なお、粗面フィルムの算術平均粗さRaは、小坂研究所社Surfcorder ET200を用いて、測定速度100μm/sec、測定力100μNにて測定した。
【0136】
続いて、マクロ凹凸構造13が形成された第2レジスト層16をマスクにして、図7で示したエッチング装置4により、CHF3ガスを用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力250Wにて原盤基材3を6時間エッチングした。本エッチングにおける第2レジスト層16のエッチングレートと、原盤基材3のエッチングレートとの比は、おおよそ1:2であった。
【0137】
このエッチング工程により、原盤基材3の表面に対して、マクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14が重畳された。なお、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.707μmであった。
【0138】
以上の工程により、マクロ凹凸構造13に対してミクロ凹凸構造14が重畳された光学体原盤1Aを製造した。続いて、図8で示した転写装置6にて、光学体原盤1Aの外周面に形成されたマクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14を樹脂層62に転写し、光学体1を製造した。なお、光学体1の基材11にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。樹脂層62には、紫外線硬化樹脂であるアクリル樹脂アクリレートを用い、1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。
・・・略・・・
【0146】
[3.2.光学体の評価結果]
(電子顕微鏡による光学体の観察結果)
・・・略・・・
【0148】
・・・略・・・また、実施例1および3に係る光学体のマクロ凹凸構造の表面上には、より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が、マクロ凹凸構造に重畳されていることがわかる。
・・・略・・・
【0150】
次に、TEMにて光学体の断面構造を観察した。その結果を図11および図12に示す。図11は、実施例1に係る光学体のマクロ凹凸構造のTEM画像である。
・・・略・・・
【0154】
(光学体の反射防止能の評価)
・・・略・・・
【0162】
さらに、本実施形態に係る光学体の正反射光の色調を測定し、視感反射率(Y)および反射色度(a*,b*)を算出した。ここで、正反射光の視感反射率(分光正視感反射率ともいう)は、正反射光の色をYxy表色系にて表した際の(Y,x,y)のうちのY値であり、正反射光の色の明度を表す。すなわち、分光正視感反射率が低いほど、正反射光の明度が低く、正反射が抑制されていることを示す。また、反射色度(a*,b*)は、正反射光の色調を示す。正反射光の色調を測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いた。測定結果を以下の表1に示す。
【0163】
【表1】
[図:0001395173000001.jpg]
【0164】
表1を参照すると、実施例1~4に係る光学体は、比較例1~4に係る光学体に対して、分光正視感反射率(Y値)が低く、正反射光の色の明度が低くなっていることがわかる。すなわち、実施例1~4に係る光学体は、比較例1~4に係る光学体に対して、正反射が抑制されていることがわかる。具体的には、実施例1~4に係る光学体の分光正視感反射率(Y値)は、0.3%以下となることがわかる。
・・・略・・・
【0165】
(光学体の透明性の評価結果)
続いて、本実施形態に係る光学体の透明性の評価結果について説明する。具体的には、実施例1~4および比較例1~4に係る光学体に対して、ヘイズ値および全光線透過率を測定した。ここで、ヘイズ値は、光学体の濁度(曇度)を表す指標であり、値が高いほど光学体の光散乱性が高く、防眩能が高いことを示す。また、全光線透過率は、光学体の透明性を表す指標である。なお、ヘイズ値および全光線透過率の測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いた。測定結果を以下の表2に示す。
【0166】
【表2】
[図:0001395173000002.jpg]
【0167】
表2を参照すると、実施例1~4に係る光学体は、比較例1~4に係る光学体と同程度の全光線透過率を有し、かつヘイズ値が高いため、透明性が高く、かつ防眩能が高いことがわかる。具体的には、実施例1~4のヘイズ値は、5%以上、より具体的には、10%以上となることがわかる。
【0168】
以上の評価結果から、実施例1~4に係る光学体は、反射防止能および防眩能を併せ持っていることがわかる。これは、実施例1~4に係る光学体において、表面に凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きいマクロ凹凸構造に対して、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造が重畳されていることに起因する。一方、比較例1~4に係る光学体は、このような重畳構造を有しないため、反射防止能と防眩能とを併せ持つことができない。
【0169】
(光学体の光沢度の評価結果)
次に、本実施形態に係る光学体の光沢度の評価結果を説明する。具体的には、実施例1~4および比較例1~4に係る光学体に対して、光沢度を測定した。ここで、光沢度は、光学体の光沢感を表す指標であり、値が高いほど光学体の光散乱性が高く、艶消し度合が強なり、防眩能が高いことを示す。
【0170】
なお、光沢度の測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いた。また、20°光沢度は、入射角度20°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度20°の反射率を表し、60°光沢度は、入射角度60°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率を表し、80°光沢度は、入射角度80°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度80°の反射率を表す。測定結果を以下の表3に示す。
【0171】
【表3】
[図:0001395173000003.jpg]
【0172】
表3を参照すると、実施例1~4に係る光学体は、比較例1~4に係る光学体に対して、光沢度が低いため、光学体の光散乱性が高く、防眩能が高いことがわかる。具体的には、実施例1~4に係る光学体の20°光沢度は4%以下、より具体的には、1%未満となることがわかる。また、実施例1~4に係る光学体の60°光沢度は10%以下となることがわかる。」
(エ) 「【図1A】
[図:0001395173000004.jpg]
【図1B】
[図:0001395173000005.jpg]
続きを表示(全19行)
【図2】
[図:0001395173000006.jpg]
・・・略・・・
【図5】
[図:0001395173000007.jpg]
【図6】
[図:0001395173000008.jpg]
【図7】
[図:0001395173000009.jpg]
【図8】
[図:0001395173000010.jpg]
・・・略・・・
【図11】
[図:0001395173000011.jpg]
」

イ 引用発明1

(ア) 引用例1の【0001】によれば、引用例1でいう「本発明は、光学体、表示装置および光学体の製造方法に関する」ものであるところ、引用例1には、「本発明」の「実施例1」として、【0131】~【0138】に記載の「製造」方法により製造された「光学体1」の発明が記載されている。

ここで、引用例1の【0138】には、「続いて、図8で示した転写装置6にて、光学体原盤1Aの外周面に形成されたマクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14を樹脂層62に転写し、光学体1を製造した。」、「樹脂層62には、紫外線硬化樹脂であるアクリル樹脂アクリレートを用い」、「紫外線を照射して硬化させた。」と記載されているところ、同【0113】、【0120】及び【図8】の「光学体原盤1Aを用いて光学体1を製造するための転写装置6について」の説明によれば、「転写装置6」においては、「基材11が連続的に送出され」、「送出された基材11は、塗布装置57により光硬化樹脂組成物が塗布されることで樹脂層62が積層され」(【0120】)ると理解できる。

(イ) 引用例1の【0148】によれば、「実施例1」の「光学体1」「のマクロ凹凸構造の表面上には、より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が、マクロ凹凸構造に重畳され」ていると理解できる。

(ウ) 引用例1の【0154】、【0162】及び【0163】(【表1】)の「(光学体の反射防止能の評価)」によれば、「正反射光の視感反射率(分光正視感反射率」「)」を、「正反射光の色をYxy表色系にて表した際の(Y,x,y)のうちのY値であり、正反射光の色の明度を表す」ものとし、「反射色度(a*,b*)」を、「正反射光の色調を示す」ものとし、「村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用い」て、「実施例1」の「光学体1」の「正反射光の色調を測定」し、「正反射光の」「視感反射率(Y)および反射色度(a*,b*)を算出」すると、「Y」、「x」、「y」、「a*」及び「b*」は、それぞれ「0.04」、「0.32」、「0.34」、「-0.02」及び「0.06」であることがわかる。

(エ) 引用例1の【0165】~【0166】の「(光学体の透明性の評価結果)」によれば、「村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用い」て「実施例1」の「光学体1」の「ヘイズ値および全光線透過率」を「測定」すると、「ヘイズ[%]」及び「全光線透過率[%]」は、それぞれ「74.1」及び「93.4」であることがわかる。

(オ) 引用例1の【0169】~【0171】(【表3】)の「(光学体の光沢度の評価結果)」からは、「実施例1」の「光学体1」の、「入射角度20°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度20°の反射率を表」す「20°光沢度[%]」、「入射角度60°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率を表」す「60°光沢度[%]」及び「入射角度80°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度80°の反射率を表す」「80°光沢度[%]」は、それぞれ「0.1」、「0.4」及び「16.6」であることが理解できる。

なお、引用例1の【0170】には、「光沢度の測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いた。」との記載がある。

しかしながら、「村上色彩技術研究所」製の「ヘイズメータHM-150」は、透過物体(プラスチック(シート、フィルム状)、ガラス、液体等)の全光線透過率、拡散光線透過率、へーズ(曇り値)が得られる測定器であり(令和4年1月7日付け意見書において特許異議申立人が甲第6号証として提出した「村上色彩技術研究所」製の「ヘイズメータHM-150」のカタログ(「へーズ・透過率計 Haze-meter HM-150」,全2頁,[online],株式会社村上色彩技術研究所,[令和4年3月6日検索],インターネット<http://www.hysc.kr/mall/shop_image/201711/HM150.pdf>)の2頁「概要」の項や「仕様」「測定項目」の項を参照。)、光沢度(グロス)を測定するための測定器ではない。また、当該「へーズメータHM-150」は、積分球を有し、透過物体の透過(拡散)光を測定するのに適した、光源、サンプル及び積分球(及び受光素子)をこの順に配置した光学系(甲第6号証の2頁「構造概念図」の(1)光源ランプ、(14)サンプル、(12)積分球及び(10)受光素子の位置関係を参照(当合議体注:「丸囲みの数字」を「(数字)」に置き換えて表示している。)。)を有するところ、このような光学系構造の測定器により、角度依存性のある拡散反射光に基づき測定される光沢度、例えば、「入射角度60°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率」である「60°光沢度」を測定しようとは当業者は考えない。なぜなら、積分球を介して受光すると、「受光角度60°」以外の受光角度の反射光も拾ってしまい、「受光角度60°」の反射光の正確な反射率が得られないからである。

したがって、同【0170】の「光沢度の測定」に「ヘイズメータHM-150を用いた」との記載は誤記であると当業者は理解する。

(カ) 上記ア(ア)~(エ)と上記(ア)~(オ)より、引用例1には、「実施例1」の「光学体1」の発明(以下「引用発明1」という。)として、以下の発明が記載されていると認められる。

「 円筒形状の石英ガラスからなる原盤基材3の外周面に、タングステン金属酸化物を含む第1レジスト層15を成膜し、次に、露光装置2により、レーザ光による熱リソグラフィを行い、第1レジスト層15に六角格子状のドットアレイパターンの潜像15Aを形成し、
続いて、原盤基材3をアルカリ現像液にて現像処理することで露光した部分のレジストを溶解させ、第1レジスト層15にドットアレイパターンを形成し、
次に、第1レジスト層15をマスクにして、エッチング装置4にてCHF3ガスを用いて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にミクロ凹凸構造14を形成し、このエッチング工程では、ミクロ凹凸構造14の突起部141の高さが約250nmになるまで原盤基材3をエッチングし、
さらに、ミクロ凹凸構造14を形成した原盤基材3に対して、紫外線硬化型樹脂であるカチオン重合型ナノインプリントリソグラフィ用レジストを溶媒に溶解して塗布し、第2レジスト層16を形成し、その後、原盤基材3を加熱し、第2レジスト層16中の溶媒を除去し、
続きを表示(全18行)
ここで、第2レジスト層16に対して、マクロ凹凸構造13が形成された粗面フィルムを密着させ、紫外線を照射することで、第2レジスト層16を硬化させ、
その後、粗面フィルムを剥離し、第2レジスト層16にマクロ凹凸構造13を形成し、
粗面フィルムのマクロ凹凸構造13の算術平均粗さRaは0.449μmであり、粗面フィルムの算術平均粗さRaは、小坂研究所社Surfcorder ET200を用いて、測定速度100μm/sec、測定力100μNにて測定したものであり、
続いて、マクロ凹凸構造13が形成された第2レジスト層16をマスクにして、エッチング装置4により、CHF3ガスを用いて、原盤基材3をエッチングし、
このエッチング工程により、原盤基材3の表面に対して、マクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14が重畳された、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.707μmである、光学体原盤1Aを製造し、
転写装置6において、基材11が連続的に送出され、送出された基材11に塗布装置57により光硬化樹脂組成物が塗布されることで樹脂層62が積層され、
光学体原盤1Aの外周面に形成されたマクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14を樹脂層62に転写させて、製造された、光学体1であって、
光学体1の基材11にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、
樹脂層62は、紫外線硬化樹脂であるアクリル樹脂アクリレートを用い、紫外線を照射して硬化させたものであり、
光学体1のマクロ凹凸構造の表面上には、より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が、マクロ凹凸構造に重畳され、
正反射光の視感反射率(分光正視感反射率)を、正反射光の色をYxy表色系にて表した際の(Y,x,y)のうちのY値であり、正反射光の色の明度を表すものとし、反射色度(a*,b*)を正反射光の色調を示すものとし、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いて、光学体1の正反射光の色調を測定し、正反射光の視感反射率(Y)及び反射色度(a*,b*)を算出すると、Y、x、y、a*及びb*は、それぞれ0.04、0.32、0.34、-0.02及び0.06であり、
村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いて光学体1のヘイズ値及び全光線透過率を測定すると、ヘイズ値[%]及び全光線透過率[%]は、それぞれ74.1%及び93.4%であり、
光学体1の、入射角度20°にて光学体1表面に光を投射した場合の受光角度20°の反射率を表す20°光沢度[%]、入射角度60°にて光学体1表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率を表す60°光沢度[%]及び入射角度80°にて光学体1表面に光を投射した場合の受光角度80°の反射率を表す80°光沢度[%]は、それぞれ0.1%、0.4%及び16.6%である、
光学体1。」

(当合議体注:上記引用発明1においては、「および」を「及び」に書き換え、「光学体表面」(3箇所)を「光学体1表面」に書き換えている。)

(2) 本件特許発明1について

ア 対比

本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。

(ア) 「透明基材層」について

a 引用発明1の製造工程からみて、引用発明1の「光学体1」は、「基材11」に、「光硬化樹脂組成物が塗布されることで樹脂層62が積層され」、「樹脂層62に」、「光学体原盤1Aの外周面に形成された」、「算術平均粗さRa」が「0.707μmである」「マクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14を」「転写させ」、「硬化させ」て「製造された」ものと理解できる。

また、引用発明1の「光学体1のマクロ凹凸構造の表面上には、より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が、マクロ凹凸構造に重畳され」ている。

b 引用発明1の「基材11」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い」たものである。

また、引用発明1の「光学体1」は、「村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いて」「測定」した「全光線透過率」は、「93.4%」である。

上記aより理解される引用発明1の「光学体1」の積層構造、「基材11」の材料、及び、「光学体1」の「全光線透過率」からみて、引用発明1の「基材11」は、透明な「基材」層といえる。

そうすると、引用発明1の「基材11」は、本件特許発明1の「透明基材層」に相当する。

(イ) 「光拡散層」について

a 上記(ア)aより、引用発明1の「樹脂層62」は、「基材11」上に、「塗布されることで」「積層され」た「光硬化樹脂組成物」(「紫外線硬化樹脂であるアクリル樹脂アクリレート」)の「硬化」物からなると理解できる。

また、上記(ア)aより、引用発明1の「樹脂層62」は、「基材11」側とは反対側の表面に、「光学体原盤1Aの外周面に形成された」、「算術平均粗さRa」が「0.707μmである」「マクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14を」「転写」して形成された、「表面上に」「より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が」「重畳され」た「マクロ凹凸構造」を有する。

さらに、引用発明1の「光学体1」は、「村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM-150を用いて」「測定」した「ヘイズ値」が「74.1%」である。

b 上記(ア)bと上記aより、引用発明1の「光学体1」の「ヘイズ値」「74.1%」は、「樹脂層62」「表面上」の「凹凸構造」によるものと理解できる。

そうすると、引用発明1の「樹脂層62」は、光拡散性の「層」である。

c 上記aより、「樹脂層62」は、「基材11」上に、「塗布」(コーティング)により形成された「層」といえる。

そうすると、上記bより、引用発明1の「樹脂層62」は、本件特許発明1の「この透明基材層の少なくとも一方の面にコーティングにより形成された」とされる、「光拡散層」に相当する。

(ウ) 「ヘイズ」、「60°グロス」、「全光線透過率」、「光拡散フィルム」について

a 「光拡散フィルム」

上記(ア)より、引用発明1の「光学体1」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」からなる「基材11」と、「基材11」上に形成された「樹脂層62」とを含むといえる。

そうすると、引用発明1の「光学体1」は、全体としてフィルムということができる。

また、引用発明1の「光学体1」の「ヘイズ値」からみて、引用発明1の「光学体1」は、光拡散性を有する。

してみると、上記(ア)bと上記(イ)cより、引用発明1の「光学体1」は、本件特許発明1の「光拡散性フィルム」に相当し、両者は、「透明基材層と」、「光拡散層とを含む」点で共通する。

b 「ヘイズ」及び「全光線透過率」

引用発明1の「光学体1」の「ヘイズ(値)」及び「全光線透過率」の値及びその測定方法については、上記(イ)a及(ア)bにおいて既に述べたとおりである。

ここで、「ヘイズメータHM-150」のカタログである甲第6号証の「特長」の項には、「新規格(ISO 13468、JIS K 7361 ISO 14782)を満足し、従来のJIS K 7105(測定法A)による測定も可能です。」と記載されているところ、引用発明1の「ヘイズ値」及び「全光線透過率」は、どちらの規格によるものか分からない。

一方、本件特許発明1の「ヘイズ」、「内部ヘイズ」及び「全光線透過率」について、本件特許明細書の【0095】には、「ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した」と記載されている。

しかしながら、引用発明1の「ヘイズ値」及び「全光線透過率」が、いずれの規格によるものであっても、「ヘイズ値」「74.1%」及び「全光線透過率」「93.4%」の値の大きさからみて、引用発明1は、本件特許発明1の、「ヘイズが50%以上であり」、「全光線透過率が91%以上であ」るとの要件を具備するといえる。

c 「60°グロス」

引用発明1の「光学体1の」「入射角度60°にて光学体1表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率を表す」「60°光沢度[%]」は、「0.4%」である。

上記(イ)a~bより、上記引用発明1の「光学体1の」「60°光沢度[%]」は、「樹脂層62」の表面の「60°光沢度[%]」に対応する。

ここで、特開2003-207945号公報の【0076】、特開2007-206482号公報の【0229】、特開2010-128429号公報の【0095】、特開2016-107497号公報の【0065】等に例示されているように、鏡面光沢度(グロス)は、JIS Z8741(鏡面光沢度測定方法)とJIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定することが通常である。「JIS Z 8741-1997」「鏡面光沢度-測定方法」に準拠した光沢度の測定方法については、令和4年1月7日付け意見書において特許異議申立人が提出した甲第7号証(「光と色の話 第二部」「第11回 光沢」,全4頁,[online],シーシーエス株式会社,シーシーエス株式会社ホームページ,[令和4年3月6日検索],インターネット<https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color_part2/vol11.html>)の3頁「光沢(鏡面光沢度)の測定」の項(特に、図面)から確認できる。

また、本件特許発明1の「光拡散層表面の60°グロス」について、本件特許明細書の【0096】には、【実施例】について、「[60°グロス]」、「JIS K7105に準拠してグロスメーター((株)掘場製作所製「IG-320」)を用いて角度60°で測定した。」と記載されている。グロスメーター((株)掘場製作所製「IG-320」)の測定原理は、令和3年11月1日付け意見書において特許権者が提出した乙第1号証(「グロスチェッカ IGシリーズ IG-320 IG-331」のカタログ)の3頁右下の「グロスチェッカIG-320の測定原理」から確認できる。

IG-320の測定原理及び「JIS Z 8741-1997」「鏡面光沢度-測定方法」に準拠した光沢度の測定方法からみて、引用発明1の「60°光沢度[%]」は、本件特許発明1の「60°グロス」と同一視できると理解できる。

そうすると、引用発明1は、本件特許発明1の、「前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下である」との要件を具備する。

イ 一致点及び相違点

(ア) 一致点

本件特許発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。

「 透明基材層と、この透明基材層の少なくとも一方の面にコーティングで形成された光拡散層とを含む光拡散フィルムであって、
ヘイズが50%以上であり、全光線透過率が91%以上であり、かつ前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下である光拡散フィルム。」

(イ) 相違点

本件特許発明1と引用発明1は、以下の点で相違、又は一応相違する。

(相違点1-1)

本件特許発明1は、「内部ヘイズが15%以下であ」るのに対して、引用発明1は、「内部ヘイズ」が不明である点。

(相違点1-2)

本件特許発明1が、「前記光拡散層が、無機又は有機の微粒子を含んで」いるのに対して、引用発明1は、「樹脂層62」が、「無機又は有機の微粒子を含んで」いるとは特定されていない点。

(相違点1-3)

「光拡散層」について、本件特許発明1が、「算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する」のに対して、引用発明1は、そのようなものとなっているかどうか不明である点。

ウ 判断

事案に鑑み、相違点1-3についてまず検討する。

(ア) 引用例1でいう本発明が解決しようとする課題は、従来、テレビなどの表示装置などの光学素子では、光の透過量を向上させるための反射防止処理として、光が入射する表面に対して、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造(モスアイ構造)を、ミクロ凹凸構造よりも大きな凹凸を有する(防眩体などの)マク口凹凸構造の表面に対して重畳形成することが求められるところ(引用例1【0002】~【0004】)、ミクロ凹凸構造の突起が、アンチグレア構造表面での各位置での接平面の法線方向に伸長し、基材の平坦面に対する法線方向に向かって揃っていないため、正面からの外光に対する反射防止性能が低下するとの問題に鑑み、反射防止能が向上した、新規かつ改良された光学体を提供する(同【0007】~【0009】)ことである。

そして、引用例1でいう本発明は、光学体において、基材の表面に形成された第1の凹凸構造(マクロ凹凸構造)と、第1の凹凸構造(マクロ凹凸構造)に重畳された第2の凹凸構造(ミクロ凹凸構造)とを備え、第1の凹凸構造(マクロ凹凸構造)の凹凸の平均周期を、可視光帯域に属する波長よりも大きく、第2の凹凸構造(ミクロ凹凸構造)の凹凸の平均周期を、可視光帯域に属する波長以下とし、かつ、第2の凹凸構造(ミクロ凹凸構造)の突起部を、基材の平坦面に対する法線方向に伸長させる(同【請求項1】及び【課題を解決するための手段】【0010】)ことによって、光学体の反射防止能を向上させる(同【0027】)という技術思想に基づくものである。

(イ) ここで、引用発明1のマクロ凹凸構造について、引用例1の【0033】~【0034】には、凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長よりも大きく、好ましくは、1μm以上100μm以下であってよいことが記載され、ミクロ凹凸構造について、【0035】には、可視光帯域に属する波長以下、好ましくは、100nm以上350nm以下が好ましいことが記載されている。

また、引用発明1のミクロ凹凸構造について、引用例1の【0040】~【0041】及び【図1B】には、hA(マクロ凹凸構造13の谷部13Aに形成された谷側突起部141Aの高さ)及びhC(マクロ凹凸構造13の山部13Cに形成された山側突起部141Cの高さ)が300nm以上400nm以下である場合、hB(マクロ凹凸構造13の斜面部13Bに形成された中間突起部141Bの高さ)は200nm以上300nm以下であることが、反射を防止することができる入射光の波長帯域を広げることができる好ましいことが記載されている。

(ウ) また、引用発明1において、第2レジスト層16に対して密着される粗面フィルムに形成されたマクロ凹凸構造13の、小坂研究所社Surfcorder ET200を用いて、測定速度100μm/sec、測定力100μNにて測定した、算術平均粗さRaは0.449μmである。

また、引用発明1の光学体1表面のミクロ凹凸構造が重畳されたマクロ凹凸構造は、光学体原盤1Aの、同測定条件による算術平均粗さRaが0.707μmのマクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14を、樹脂層62に転写、硬化して製造されたものである。

上記の粗面フィルムのマクロ凹凸構造13のみのRa、及び、光学体原盤1Aのマクロ凹凸構造13及びミクロ凹凸構造14のRaからみて、引用発明1のミクロ凹凸構造が重畳されたマクロ凹凸構造の高さと、上記(イ)のミクロ構造の突起部の高さ(hA、hC及びhB)に、1桁異なるほどの大きな差が存在するとは考えられない。図11に示される実施例1に係る光学体(引用発明1)のマクロ構造体の断面構造のTEM画像からも、その差は数倍程度と確認できることが確認できる。

(エ) 本件特許明細書の【0026】及び【0027】に記載によれば、本件特許発明1における「光拡散層表面」の「算術平均表面粗さRa」及び「凹凸の平均間隔Sm」は、「JIS B0601に準拠して、接触式表面粗さ計(東京精密(株)製「サーフコム(surfcom)570A」)を用いて測定」されるものであるところ、JIS B0601において、「凹凸の平均間隔Sm」(あるいはJIS B0601-2001では「粗さ曲線要素の平均長さRSm」ともいう。)は、「粗さ曲線が平均点と交差する交点から求めた山谷-周期の間隔の平均値」として定義される(例えば、令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書において例示された、<URL2>https://www.fujimfg.co.jp/service/benricho/roughness/、<URL3>https://www.olympus-ims.com/ja/metrology/surface-roughness-measurement-portal/parameters/等を参照。)。

そうすると、引用発明1の光学体1においては、樹脂層62表面を構成する凹凸はミクロ凹凸構造の凹凸及びマクロ凹凸構造の凹凸であるから、引用発明1の光学体の「凹凸の平均間隔Sm」の測定の際には、当然、測定対象となるミクロ構造の凹凸及びマクロ構造の凹凸の両凹凸に基づく平均間隔Smが得られるような測定条件が設定されるところ、上記(ウ)で述べたとおり、引用発明1のミクロ凹凸構造が重畳されたマクロ凹凸構造の高さとミクロ凹凸構造の突起部の高さには1桁異なるほどの大きな差がないことから、凹凸の平均周期が100nm~350nmの範囲にあるミクロ構造の多数の突起部が「平均点」近傍において「交差」する。そうすると、マクロ構造の凹凸の平均周期が1μm~100μmの範囲であるとしても、引用発明1の「凹凸の平均間隔Sm」が5μm以上100μm以下となる蓋然性が高いとはいえない。

(オ) また、令和4年3月30日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消しの理由において引用した引用例5(国際公開第2013/047184号)には、

各種表示装置の画面上に配置される表面基材などへの使用に適した防眩性フィルム([0001])に関して、発生したスパークルに起因するぎらつきの防止性能が高められた防眩性フィルムを提供する([0008])ために、

防眩性フィルムの表面凹凸を、条件A1:Rzjis(十点平均粗さ)が3.4μm以下、条件A2:RΔq(二乗平均平方根傾斜)が4°以上、条件A3:Ra(算術平均粗さ)が0.3μm以上、条件A4:Rsm(平均山間隔)が0.05mm以上0.10mm以下、条件B:ヘーズ値が20%以上50%以下(条件A1~A4はいずれもJIS B0601:2001に準拠して測定した値であり、条件Bは、JIS K7136:2000に準拠して測定した値である。)とした時、

(1)条件A1、条件A2及び条件A3、及び(2)条件A1、A4及び条件B、のいずれかを満たすように構成する([請求項1]、[0013])こと、

Rsmを0.10mm以下とすることにより、レンズの幅が小さくなり、スパークルをより生じにくくすることができ、Rsmを0.05mm以上とすることにより、レンズの数が多くなることを防止し、スパークルをより生じにくくすることができる([0033])こと、

Raを0.3μm以上とすることにより、防眩性を発現するとともに、発生したスパークルを視認し難くすることができ、表面ギラツキの防止性能を高めることができる([0031])こと、が記載されている。

しかしながら、引用発明1は、上記(ア)及び(イ)によれば、凹凸の平均周期が1μm以上100μm以下が好ましいマクロ凹凸構造に、凹凸の平均周期が100nm以上350nm以下が好ましいミクロ凹凸構造を重畳させて、光学体の反射防止能を向上させる(同【0027】)ものである。そうすると、このようにマクロ凹凸構造及びミクロ凹凸構造の凹凸の平均周期がそれぞれ異なる好ましい範囲とされている引用発明1において、異なる平均周期とされているこれら2つの凹凸による平均間隔にさらに着目し、引用例5に記載のRsm(平均山間隔)を0.05mm以上0.10mm以下(条件A4)とする技術を採用しようとは当業者は考えない。

してみると、引用発明1において、引用例5の記載に基づいて、相違点1-3に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであるということはできない。

さらに、令和4年3月30日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消しの理由で引用された引用例2(国際公開第2008/072731号)には、

液晶表示装置のバックライトとして使用され得る面光源装置を構成する([0001])のに好適な光学シートであって、レンズ部がシートの端部に配置されている領域Aと、少なくとも一部が粗面化されたそれ以外の領域Bとを有する光学シート([0005])において、

領域Bの局部山頂の平均間隔Sを5~40μm、または、凹凸間ピッチSmを10~100μmとすることにより、局部山頂の平均間隔Sや凹凸間ピッチSmが小さいことにより、ぎらつき低減効果が高く、さらに散乱におけるむらが視認されにくくなり、均斉度の高い高品位なマットが得られること、局部山頂の平均間隔Sが5μmより小さく、または凹凸間ピッチSmが10μmより小さいと、拡散シートとしての拡散機能や光学欠陥遮蔽性が低下し好ましくないこと、局部山頂の平均間隔Sが40μmより大きく、または凹凸間ピッチSmが100μmより大きいと、ぎらつきが視認される傾向にあること、

領域Bの算術平均粗さRaが0.1~1.3μmであるのが望ましいこと、算術平均粗さRaが0.1μmよりも小さいと拡散シートとしての光学隠蔽性に乏しくなり、算術平均粗さが1.3μmよりも大きいと過剰な散乱や戻り光を誘発し著しい輝度の低下を引き起こす傾向にあること([0037]、[0009]等)が記載されている。

しかしながら、引用例2に記載された光学シートは、液晶表示パネルのバックライトに用いられるものであり、光学欠陥遮蔽性、戻り光による輝度の低下を引き起こさないといった点において、テレビなどの表示装置の光が入射する表面に配置される引用発明1の光学体1とは、その適用場所や求められる光学特性が異なる。そうすると、引用例2に記載された技術を、引用発明1に採用することを当業者は考えない。

してみると、引用発明1において、引用例2の記載に基づいて、相違点1-3に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであるということはできない。

令和4年3月30日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消しの理由で引用された引用例3~4、6~9等に記載された周知の技術的事項を検討しても同様である。

(カ) 令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書の主張について

同意見書の「3-2.引用例1を主引用例とする理由2(進歩性)」「訂正発明1について」において、特許異議申立人は、相違点1-3について、

「JIS B0601の凹凸の平均間隔Smは、「粗さ曲線が平均点と交差する交点から求めた山谷-周期の間隔の」に相当する。」、「上記のことから、光学体1に関してJIS B0601のSmを測定した際には、平均点を超える要素であるマクロ凹凸構造の周期が強く反映されるといえる。一方、ミクロ凹凸構造は、標高差が小さく平均点と殆ど交差しないといえるため、光学体1のSmを測定した際に、ミクロ凹凸構造の周期の影響はないか、影響があっても僅かといえる。このため、引用発明1の凹凸の平均間隔Smは、マクロ凹凸構造の周期の1μm以上100μm以下あるいはこれに近い値を示すといえ、特許権者の主張する0.1μm以上0.35μm以下の値を示すとはいえない。」と主張する。

しかしながら、上記(エ)及び(オ)で述べたとおりである。

したがって、同意見書における特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(キ) そして、本件特許発明1は、「高い光拡散性と、高い明度とを両立でき」、「透明性が高く、黄色度が小さ」く、「さらに、透過光を等方的に散乱できる」「ため、各種表示装置の視認性を向上できる」(本件特許明細書【0016】)という優れた効果を奏する。

(ク) 小括

本件特許発明1は、引用例1に記載された発明であるということはできない。

また、相違点1-1及び相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3) 本件特許発明2~3、6~10、12~14について

特許請求の範囲の請求項2~3、6~10、12~14は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~3、6~10、12~14は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。

そうすると、前記(2)のとおり、本件特許発明1が、引用例1に記載された発明であるということはできない、また、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件特許発明2~3、6~10、12~14は、引用例1に記載された発明であるということはできない、また、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 理由2(進歩性)(引用例11を主引用例とする場合)について

(1) 引用例の記載及び引用発明

令和4年3月30日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消しの理由で引用された引用例11(特開2009-244465号公報)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。

ア 引用例11の記載

(ア) 「【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルム、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
・・・略・・・
続きを表示(全16行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、正面コントラスト比を大幅に低下させることなく、斜めコントラスト比を改善して、視野角を拡大することができ、また、ギラツキ現象を低減させ、高精細のパネルにも対応することができる防眩性ハードコートフィルム、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、
透明プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、前記防眩性ハードコート層は、微粒子および硬化性ハードコート樹脂を含む防眩性ハードコート層形成材料から形成されており、前記防眩性ハードコートフィルムのヘイズ値が60%以上であり、斜め60°方向の黒輝度の光抜けが、全方位平均で1cd以下である液晶パネルに用いることを特徴とする。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、斜め方向の黒輝度の光抜けが少ない液晶パネルに用いることで、正面コントラスト比を大幅に低下させることなく、斜めコントラスト比を改善して視野角を拡大させることができる。さらに、ギラツキ現象を低減させることもできるので、高精細のパネルにも対応することができる。したがって、本発明の防眩性ハードコートフィルム若しくは液晶パネルを用いた液晶表示装置は、表示特性が優れたものになる。」
(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記微粒子は、前記硬化性ハードコート樹脂100重量部に対し、3~40重量部の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは8~35重量部の範囲であり、さらに好ましくは10~30重量部の範囲である。
【0010】
続きを表示(全28行)
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記微粒子が、少なくとも、表面凹凸を形成する微粒子と内部ヘイズを調整する微粒子とを含むことが好ましい。
・・・略・・・
【0034】
前記微粒子としては、少なくとも1種類以上を含むが、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子と主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子とを含むことが好ましい。前記第1の微粒子と前記第2の微粒子とを組み合わせることにより、防眩性ハードコートフィルムのヘイズ値を60%以上とするための、前記主に表面凹凸を形成する微粒子の添加量を減らすことができる。その結果、形成される防眩性ハードコート層の硬度低下を防ぐことができる。
【0035】
前記主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としては、前述の微粒子を用いることができる。前記第1の微粒子の重量平均粒径は、前記防眩性ハードコート層の厚みの20~80%の範囲であることが好ましい。前記第1の微粒子の重量平均粒径が、前記範囲より大きくなると、画像鮮明性が低下し、また前記範囲より小さいと、十分な防眩性が得られず、ギラツキも大きくなるという問題がある。前記第1の微粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、前記防眩性ハードコート層の厚みの30~75%の範囲である。
・・・略・・・
【0036】
前記第1の微粒子の配合割合は、前記硬化性ハードコート樹脂100重量部に対し、3~40重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、8~35重量部の範囲であり、さらに好ましくは、10~30重量部の範囲である。
【0037】
前記第1の微粒子と前記硬化性ハードコート樹脂との屈折率差は、0~0.05の範囲であることが好ましい。
【0038】
前記主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としては、前述の微粒子を用いることができる。前記ヘイズ調整用の微粒子の重量平均粒径は、前記防眩性ハードコート層の厚みの10~70%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、前記防眩性ハードコート層の厚みの20~60%の範囲である。
【0039】
前記第2の微粒子の配合割合は、前記硬化性ハードコート樹脂100重量部に対し、0.1~20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、1~15重量部の範囲である。
【0040】
前記第2の微粒子と前記硬化性ハードコート樹脂との屈折率差は、0.05~0.2の範囲であることが好ましい。
【0041】
前記防眩性ハードコート層の厚みは、3~30μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは15~30μmの範囲である。前記厚みが前記所定の範囲であれば、前記防眩性ハードコート層の硬度も十分なものとなる(例えば、鉛筆硬度で4H以上)。また、前記厚みが前記所定の範囲より大きいときは、・・・略・・・さらに防眩性の低下の問題もある。また、前記厚みが前記所定の範囲より小さい場合は、ギラツキが防止できず、鮮明性が低下するという問題がある。
【0042】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、ヘイズ値が60%以上である。前記ヘイズ値とは、JIS K7136(2000年版)に準じたヘイズ値(曇度)である。前記ヘイズ値は、60~90%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは65~85%の範囲である。ヘイズ値を高くするためには、前記少なくとも1種類以上の微粒子と前記硬化性ハードコート樹脂との屈折率差が0.005以上になるように、前記微粒子と前記硬化性ハードコート樹脂とを選択することが好ましい。前記樹脂との屈折率差が0.005未満の微粒子のみでヘイズ値を60%以上にするためには、一般に、添加量を40部以上にする必要があり、前記微粒子添加量が多くなり過ぎると、硬度の低下や耐擦傷性低下などが生じやすくなり、好ましくない。
・・・略・・・
【0053】
本発明の防眩性ハードコートフィルムの一例を図1の断面模式図に示す。図示のように、この例の防眩性ハードコートフィルム4は、透明プラスチックフィルム基材1の片方の面に、防眩性ハードコート層2が形成されている。前記防眩性ハードコート層2は、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子3A、および、主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子3Bを含んでいる。」
(ウ) 「【実施例】
【0083】
・・・略・・・なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価若しくは測定した。
【0084】
続きを表示(全61行)
(ヘイズ値)
へイズの測定方法は、JIS K7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
・・・略・・・
【0092】
(平均黒輝度の測定)
ELDIM社製、製品名「EZContrast160D」を用いて、極角60°における黒輝度を、方位角0~360°において1°刻みで測定し、その平均値を算出して平均黒輝度を求めた。・・・略・・・前記平均黒輝度は、低い方がより黒が引き締まることになるので良好と判断される。
【0093】
(コントラストの測定)
各実施例に記載の液晶セル、以下の測定装置を用いて、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、測定を行った。液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZContrast160D」により、表示画面のXYZ表示系のY値を測定した。正面コントラストは、表示画面の法線方向(極角90°方向)におけるY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW1)と、黒画像におけるY値(YB1)とから、正面方向のコントラスト比「YW1/YB1」を算出した。
斜めコントラストは、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW2)と、黒画像におけるY値(YB2)とから、斜め方向のコントラスト比「YW2/YB2」を算出した。なお、方位角45°とは、・・・略・・・、パネルの長辺を0°としたときに反時計周りに45°回転させた方位を表し、極角60°とは表示画面の正面方向を0°としたときに、角度60°に傾斜した方向を表す。
【0094】
(防眩性)
(1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に三菱レイヨン製黒色アクリル板(2.0mmt)を粘着剤にて貼り合わせ裏面の反射をなくす。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて上記で作製したフィルムサンプルの防眩性を目視にて確認した。
判定基準
AA:像の写り込みがほとんどない。
A :像の写り込みはあるが、視認性への影響は小さい。
B :像の写り込みはあるが、実用上問題はない。
C :像の写り込みがある。
【0095】
(鮮明性)
(1)ノート型PC(ソニー社製、商品名VAIO VGN-SZ71B/B(13.3inch、WXGA、1280×800))のパネル表面に、凹凸のない平滑な表面を有する偏光板を実装した。防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に粘着剤を積層し、前記偏光板の表面に貼付し、実装した。
(2)前記ノート型PCに一般的な画像を写しだして、暗所にて画像の鮮明性を目視にて確認した。判断基準は以下のとおりである。
A :画像がぼやけるが視認性への影響は小さい(画像が鮮明である)。
B :ぼやけはあるが、実用上問題なし(実用上、鮮明性に問題がない)。
C :ぼやけて著しく視認性が低下する(不鮮明で、実用上問題がある)。
【0096】
(ギラツキ(精細度))
(1)透明フィルム基材の防眩性ハードコート層が形成されていない面に185μmの偏光板を貼り合せたものをガラス基板に接着する。
(2)ライトテーブル上に固定されたマスクパターン上に作製したフィルムサンプルのギラツキ度合いを目視にて評価した。マスクパターンは精細度が106ppi、144ppi、212ppiのものを準備し、順次判定した。下記判定基準でAになったマスクパターンの精細度を記録した。
判定基準
A :ギラツキがほとんどない。
B :ギラツキはあるが、実用上問題はない。
C :ギラツキがある。
【0097】
(実施例1)
透明プラスチックフィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製、商品名「TD80UL」、厚さ80μm、屈折率:1.48)を準備した。また、防眩性ハードコート層形成材料として、GRANDIC PC-1070(大日本インキ化学工業(株)製 ハードコート樹脂、固形分:65重量%、屈折率:1.53)の樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「GRANDIC PC-4100」、固形分10重量%)の固形分が0.5重量部、IRGACURE 184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光重合開始剤)を0.5重量部、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としてアクリル樹脂微粒子(積水化成品工業(株)製、MBX-8SSTN、サイズ:8μm、屈折率:1.49)30重量部、主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としてシリコーン微粒子(東芝シリコーン(株)製、「トスパール145」、サイズ:4.5μm、屈折率:1.43)2重量部を加えたものを、酢酸エチルにより、固形分濃度が50重量%となるように希釈し、超音波洗浄器を用いて5分間攪拌をおこなったものを準備した。
【0098】
前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、バーコーターを用いて塗布して塗膜を形成した。この際、防眩性ハードコート層の厚みが25μmとなるように、前記塗膜の厚みを調整した。ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀灯にて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み25μmの防眩性ハードコート層を形成し、目的とする防眩性ハードコートフィルムを得た。
【0099】
上記で得られた防眩性ハードコートフィルムを、インプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶パネルに装着した。
・・・略・・・
【0105】
(実施例2)
前記第2の微粒子の添加部数を樹脂原料の固形分100重量部に対し5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、目的とする防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコートフィルムを実施例1と同様に前記IPSモードの液晶パネルに装着した。
・・・略・・・
【0121】
このようにして得られた実施例1~4および比較例1~12の各防眩性ハードコートフィルムを装着した液晶パネルについて、各種特性を測定若しくは評価した。各液晶パネルの構成を下記表1に、測定若しくは評価の結果を、下記表2に示す。なお、下記表2において、正面コントラスト比および斜めコントラスト比は、それぞれの液晶パネルと光学補償層の種類ごとに、ヘイズ値0%のハードコートフィルムを使用した場合のコントラスト値を100としたコントラスト比で表示した。
【0122】
【表1】
[図:0001395173000012.jpg]
【0123】
【表2】
[図:0001395173000013.jpg]
(当合議体中:【表1】及び【表2】については、向きを90°回転している。)
【0124】
前記表2に示すように、実施例においては、正面コントラスト比の低下は5%以内に抑えつつ、斜めコントラスト比は10%以上向上し、正面コントラスト比を大幅に低下させることなく、斜めコントラスト比が改善され視野角が拡大していることがわかる。また、実施例では、防眩性および画像の鮮明性に優れ、かつギラツキも効果的に防止された。これに対し、比較例においては、斜めコントラスト比を十分に向上させることができない、あるいは、斜めコントラスト比を実施例と同程度向上させようとすると、正面コントラスト比が大きく低下するという結果となった。また、比較例では、防眩性向上、画像の鮮明性向上およびギラツキ防止のすべての効果を備えるものは得られなかった。」
(エ) 「【図1】
[図:0001395173000014.jpg]
」

イ 引用発明2

(ア) 引用例11には、「実施例1」の「防眩性ハードコートフィルム」として、【0097】~【0098】に記載の製造工程により形成された「防眩性ハードコートフィルム」が記載されている。

また、引用例11には、「実施例2」の「防眩性ハードコートフィルム」として、【0105】に「前記第2の微粒子の添加部数を樹脂原料の固形分100重量部に対し5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様な方法にて、目的とする防眩性ハードコートフィルムを得た」ものが記載されている。

さらに、同【0122】【表1】及び【0123】【表2】には、実施例2の「防眩性ハードコートフィルム」の「ヘイズ値(%)」、「防眩性」、「鮮明性」及び「精細度(ギラツキ)」が記載されているところ、これらは、それぞれ【0084】、【0094】、【0095】及び【0096】の定義によるものである。

(イ) 引用例11の【0099】~【0100】及び【0105】によれば、「実施例2」「で得られた防眩性ハードコートフィルム」は、「インプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶パネルに装着され」るものである。

さらに、【0122】【表1】及び【0123】【表2】によれば、【0092】の「平均黒輝度の測定」の定義による、「実施例2」「で得られた防眩性ハードコートフィルム」が「装着」される「インプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶パネル」の「平均黒輝度(cd)」は「0.19」である。

(ウ) 【0124】によれば、「実施例2」「では、防眩性および画像の鮮明性に優れ、かつギラツキも効果的に防止され」ている。

(エ) 以上総合すると、引用例11には、「実施例2」の「防眩性ハードコートフィルム」の発明(以下「引用発明2」という。)として、次の発明が記載されているものと認められる。

「 透明プラスチックフィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を準備し、
防眩性ハードコート層形成材料として、GRANDIC PC-1070(大日本インキ化学工業(株)製 ハードコート樹脂、固形分:65重量%、屈折率:1.53)の樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「GRANDIC PC-4100」、固形分10重量%)の固形分が0.5重量部、IRGACURE 184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光重合開始剤)を0.5重量部、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としてアクリル樹脂微粒子(積水化成品工業(株)製、MBX-8SSTN、サイズ:8μm、屈折率:1.49)30重量部、主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としてシリコーン微粒子(東芝シリコーン(株)製、「トスパール145」、サイズ:4.5μm、屈折率:1.43)5重量部を加えたものを、酢酸エチルにより、固形分濃度が50重量%となるように希釈し、超音波洗浄器を用いて5分間攪拌をおこなったものを準備し、
前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、バーコーターを用いて塗布して塗膜を形成し、この際、防眩性ハードコート層の厚みが25μmとなるように、前記塗膜の厚みを調整し、
ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させ、その後、紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み25μmの防眩性ハードコート層を形成して、得られた防眩性ハードコートフィルムであって、
続きを表示(全32行)
下記の定義による、ヘイズ値(%)が80%、防眩性がAA、鮮明性がB、精細度(ギラツキ)が、106ppiでA、144ppiでA、212ppiでAであり、
下記の定義による平均黒輝度(cd)が0.19cdのインプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶パネルに装着される、
防眩性および画像の鮮明性に優れ、かつギラツキも効果的に防止されている防眩性ハードコートフィルム。
(ヘイズ値)
へイズの測定方法は、JIS K7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
(防眩性)
(1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に三菱レイヨン製黒色アクリル板(2.0mmt)を粘着剤にて貼り合わせ裏面の反射をなくす。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて上記で作製したフィルムサンプルの防眩性を目視にて確認した。
判定基準
AA:像の写り込みがほとんどない。
A :像の写り込みはあるが、視認性への影響は小さい。
B :像の写り込みはあるが、実用上問題はない。
C :像の写り込みがある。
(鮮明性)
(1)ノート型PC(ソニー社製、商品名VAIO VGN-SZ71B/B(13.3inch、WXGA、1280×800))のパネル表面に、凹凸のない平滑な表面を有する偏光板を実装した。防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に粘着剤を積層し、前記偏光板の表面に貼付し、実装した。
(2)前記ノート型PCに一般的な画像を写しだして、暗所にて画像の鮮明性を目視にて確認した。判断基準は以下のとおりである。
A :画像がぼやけるが視認性への影響は小さい(画像が鮮明である)。
B :ぼやけはあるが、実用上問題なし(実用上、鮮明性に問題がない)。
C :ぼやけて著しく視認性が低下する(不鮮明で、実用上問題がある)。
(精細度(ギラツキ))
(1)透明フィルム基材の防眩性ハードコート層が形成されていない面に185μmの偏光板を貼り合せたものをガラス基板に接着する。
(2)ライトテーブル上に固定されたマスクパターン上に作製したフィルムサンプルのギラツキ度合いを目視にて評価した。マスクパターンは精細度が106ppi、144ppi、212ppiのものを準備し、順次判定した。下記判定基準でAになったマスクパターンの精細度を記録した。
判定基準
A :ギラツキがほとんどない。
B :ギラツキはあるが、実用上問題はない。
C :ギラツキがある。
(平均黒輝度の測定)
ELDIM社製、製品名「EZContrast160D」を用いて、極角60°における黒輝度を、方位角0~360°において1°刻みで測定し、その平均値を算出して平均黒輝度を求めた。」

(当合議体注:【0123】【表2】の「精細度(ギラツキ)」及び【0096】の「ギラツキ(精細度)」)との記載を、「精細度(ギラツキ)」に統一して記載した。)

(2) 本件特許発明1について

ア 対比

(ア) 「透明基材層」

a 引用発明2の形成工程からみて、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、「トリアセチルセルロースフィルム」である「透明プラスチックフィルム基材の片面に」、「主に表面凹凸を形成する第1の微粒子」(「アクリル樹脂微粒子」)と「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子」(「シリコーン微粒子」)を含む「防眩性ハードコート層形成材料を」「塗布して塗膜を形成し」、「乾燥させ」、「紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して」「形成」された「防眩性ハードコート層」を備えるものである。

b 上記aより、引用発明2の「透明プラスチックフィルム基材」は、「防眩性ハードコート層」を「形成」するための「透明」な「基材」であると理解できる。また、上記aの積層構造から、引用発明2の「透明プラスチックフィルム基材」は、「層」をなすものである。

そうすると、引用発明2の「透明プラスチックフィルム基材」は、本件特許発明1の「透明基材層」に相当する。

(イ) 「光拡散層」

a 引用発明2の「防眩性ハードコート層」は、「防眩性」を有する「層」である。

また、上記(ア)aより、引用発明2の「防眩性ハードコート層」は、「主に表面凹凸を形成する第1の微粒子」を含むものと理解できる。

b 引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、「ヘイズ値(%)が80%」である。

上記aより、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」の「ヘイズ」(「80%」)は、主に「防眩性ハードコート層」によるものと理解できる

そうすると、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、光拡散性を有するといえる。

c 上記(ア)aより、引用発明2の「防眩性ハードコート層」は、「透明プラスチックフィルム基材の片面」上に、「塗布」(コーティング)により「形成」されたものと理解できる。

d 上記a~cより、引用発明2の「防眩性ハードコート層」は、本件特許発明1の、「この透明基材層の少なくとも一方の面にコーティングで形成された」とされる、「光拡散層」に相当する。

また、上記(ア)aより、引用発明2の「防眩層ハードコート層」は、「第1の微粒子」(「アクリル樹脂微粒子」)と「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子」(「シリコーン微粒子」)を含む。

そうすると、引用発明2は、本件特許発明1の、「前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでおり」との要件を具備する。

(ウ) 「光拡散フィルム」及び「ヘイズ」

a 引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、「ヘイズ値(%)が80%」である。

そうすると、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、光拡散性の「フィルム」といえる。

そうすると、上記(ア)と(イ)より、引用発明2の「防眩性ハードコートフィルム」は、本件特許発明1の、「透明基材層と」、「光拡散層とを含む」とされる、「光拡散フィルム」に相当する。

b 引用発明2の「ヘイズ値(%)」「80%」は、「JIS K7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した」ものである。

ここで、本件特許発明1の「ヘイズ」は、本件特許明細書の【0095】によれば、「ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した」ものである。

そうすると、ヘイズの測定方法からみて、引用発明2は、本件特許発明1の、「ヘイズが50%以上であり」との要件を具備する。

イ 一致点及び相違点

(ア) 一致点

本件特許発明1と引用発明2は、次の構成で一致する。

「 透明基材層と、この透明基材層の少なくとも一方の面にコーティングで形成された光拡散層とを含む光拡散フィルムであって、
ヘイズが50%以上であり、
前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでいる光拡散フィルム。」

(イ) 相違点

本件特許発明1と引用発明2は、以下の点で相違する。

(相違点2-1)

本件特許発明1は、「内部ヘイズが15%以下であ」るのに対して、引用発明2は、「内部ヘイズ」が明らかでない点。

(相違点2-2)

本件特許発明1は、「全光線透過率が91%以上であ」るのに対して、引用発明2は、「全光線透過率」が明らかでない点。

(相違点2-3)

本件特許発明1は、「光拡散層表面の60°グロスが10%以下である」のに対して、引用発明2は、「防眩性ハードコート層」「表面の60°グロス」が明らかでない点。

(相違点2-4)

本件特許発明1は、「前記光拡散層が、算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する」のに対して、引用発明2は、「算術平均表面粗さRa」及び「凹凸の平均間隔Sm」が明らかでない点。

ウ 判断

事案に鑑み、相違点2-4についてまず検討する。

(ア) 引用例11でいう「本発明」が解決しようとする課題は、「ギラツキ現象を低減させ、高精細のパネルにも対応することができる防眩性ハードコートフィルム」を提供する(【0004】)ことであるところ、引用例11の【0005】の記載から、引用発明2の防眩性ハードコートフィルムは、ヘイズ値が60%以上であり、斜め60°方向の黒輝度の光抜けが、全方位平均で1cd以下である液晶パネルに用いることをその技術思想とするものと理解できる。

(イ) 算術平均表面粗さRaや、凹凸の平均間隔Smについて、引用例2(国際公開第2008/072731号)には、上記1(2)ウ(オ)で述べたとおりの事項が記載されている。

また、令和4年7月27日付けの意見書において、特許異議申立人が、本件特許発明1の光拡散フィルムのRa及びSmの数値範囲が周知であることを示すために、引用例2の他に、例示した国際公開第2011/074647号には、

液晶表示装置のバックライトに用いられる光拡散性シート、特に光拡散性シートとして要求される高い正面輝度と拡散性とを発揮しうる光拡散性シート([0001])において、

液晶表示装置の薄型化のために、従来の光拡散性シートを薄型化させると正面輝度と拡散性とのバランスがさらに悪化する傾向となるところ、薄型化させてもかかる正面輝度と拡散性との両立が顕著に発揮される([0016])ように、光拡散層の表面を、条件1(拡散層の二次元表面形状測定における粗さ曲線のクルトシスRku(JIS B0601:2001)を3.0以上とする)及び条件2(拡散層の二次元表面形状測定における算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)を1.5μm以下とする)とする、あるいは条件3(拡散層の二次元表面形状測定における粗さ曲線要素の平均高さRc(JIS B0601:2001)、平均長さRSm(JIS B0601:2001)としたとき、RSm/Rcを7.0以上とする)とする、あるいは、条件1及び条件2と条件3の双方の条件を満足するように調製すること([0019])、条件2のRaについては、拡散性が低下するのを防止する観点から、0.5μm以上とすること、条件3のRcは、具体的には3.0μm以上8.0μm以上、RSmは、具体的には30μm以上90μm以下であることが好ましく、RSm/Rcは、拡散性をより工程に発揮左折観点から8.0以上、拡散性が低下するのを防止する観点から30.0以下とすることが好ましいこと([0023])が記載されている。

しかしながら、引用例2や国際公開第2011/074647号に記載された光学シート、光拡散性シートは、液晶表示パネルのバックライトに用いられるものであり、光学欠陥遮蔽性、戻り光による輝度の低下を引き起こさない、高い正面輝度などが求められるといった点において、斜め60°方向の黒輝度の光抜けが、全方位平均で1cd以下である液晶パネル表面に用いることに特徴を有する引用発明2の防眩性ハードコートフィルムとは、その適用場所や求められる光学特性が異なる。

してみると、引用発明2において、引用例2や国際公開第2011/074647号に記載された液晶表示パネルのバックライトに用いられる光拡散シートの技術に基づいて、相違点2-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。

(ウ) また、引用例5(国際公開第2013/047184号)には、各種表示装置の画面上に配置される表面基材などへの使用に適した防眩性フィルムに関し、上記1(2)ウ(オ)で述べたとおりの事項が記載されているところ、引用例5に記載の技術は、条件A1(Rzjis(十点平均粗さ)が3.4μm以下)、条件A4(Rsm(平均山間隔)が0.05mm以上0.10mm以下)及び条件B(ヘーズ値が20%以上50%以下)の3条件を満たす構成とする技術([請求項1])であるから、ヘーズが80%の引用発明2に採用することを当業者は考えない。

してみると、引用発明2において、引用例5に記載された技術に基づいて、相違点2-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。

さらに、引用例3~4、6~9等に記載された周知の技術的事項を検討しても、引用発明2において、相違点2-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たことであるということはできない。

(エ) 令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書の主張について

同意見書の「3-3.引用例11を主引用例とする理由2(進歩性)」「(1)訂正発明1について」において、特許異議申立人は、相違点2-4について、

「光拡散フィルムのRa及びSmを訂正発明1の範囲とすることは周知である(例えば、国際公開第2011/074647号・・・略・・・、国際公開第2008/072731号・・・略・・・)。よって、相違点2-2(当合議体注:意見書中の相違点2-2は、上記イ(イ)で抽出した相違点2-4に対応するものである。)に係る構成は、引用例11に記載された発明及び周知の事項から、当業者が適宜なし得ることである。」と主張する。

しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、引用発明2において、引用例2や国際公開第2011/074647号に記載された技術に基づいて、相違点2-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。

したがって、同意見書における特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(カ) 本件特許発明1の効果

そして、本件特許発明1は、相違点2-1~相違点2-4に係る構成を具備することにより、「高い光拡散性と、高い明度とを両立でき」、「透明性が高く、黄色度が小さ」く、「さらに、透過光を等方的に散乱できる」「ため、各種表示装置の視認性を向上できる」(本件特許明細書【0016】)という優れた効果を奏するものである。

(キ) 小括

以上のとおりであるから、相違点2-1~相違点2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用例11に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(3) 本件特許発明2~3、6~10、12~14について

特許請求の範囲の請求項2~3、6~10、12~14は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~3、6~10、12~14は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。

そうすると、前記(2)のとおり、本件特許発明1が、引用例11に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、本件特許発明2~3、6~10、12~14は、引用例11に記載された発明及び引用例2~9等に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 理由4(実施可能要件)についての判断

(1) 実施可能要件の判断基準

発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の要件(いわゆる実施可能要件)に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があることが必要である。

そして、特許請求の範囲に記載された発明が、物の発明である場合、物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できることであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすためには、当業者が、物の発明について明確に理解でき、その物を作れ、かつ、その物を使用できる程度に具体的な記載が求められる。

これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。

(2) 本件特許発明及び本件特許明細書の記載

ア 本件特許発明について

本件特許発明1~3、6~10、12~14は、上記「第3 本件特許発明」に記載のとおりのものであるところ、本件特許発明1の「光拡散フィルム」は、「ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、全光線透過率が91%以上であり、かつ前記光拡散層表面の60°グロスが10%以下であり」、「前記光拡散層が無機又は有機の微粒子を含んでおり」、「前記光拡散層が、算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってかつ凹凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下である表面を有する」との発明特定事項を具備する。

以下、上記のヘイズに係る条件、上記の内部ヘイズに係る条件、上記の全光線透過率に係る条件、上記の60°グロスに係る条件を、まとめて「本件特許4光学条件」といい、上記の微粒子に係る条件、上記の表面の凹凸のRaに係る条件、上記の表面の凹凸のSmに係る条件を、まとめて「本件特許3構造条件」といい、本件特許4光学条件及び本件特許3構造条件を総称して、「本件特許7条件」という。

イ 本件特許明細書の記載

本件特許明細書には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものである。

(ア) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を等方的に拡散でき、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイや液晶表示(LCD)装置などの各種表示装置に利用できる光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置に関する。
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【背景技術】
【0002】
光拡散フィルムは、照明カバーや画像表示装置(例えば、有機ELディスプレイや液晶表示装置など)などに広く利用されている。このような光拡散フィルムに求められる光学特性としては、高いヘイズを有することにより、防眩性などを向上するための光拡散性に加えて、高い透明性(全光線透過率)を有し、かつ黄色や赤に偏った色ではなくニュートラルな白い色合いの光を視認側に与え、視認性を向上させる特性も挙げられる。さらに、画像表示装置では、画質に対する高い視認性が要求されており、例えば、有機ELディスプレイでは、ピクセル間での輝度のバラツキにより色ムラが発生し易く、光拡散フィルムの光拡散性による色ムラの改善(視認性の向上)なども求められている。
【0003】
光拡散フィルムは、一般的にフィラーを樹脂中に分散させて製造され、・・・略・・・光拡散板が開示されている。
・・・略・・・
【0006】
しかし、フィラーを分散させた光拡散フィルムは、光拡散層を構成するマトリクス材料と分散するフィラーの屈折率差が大きいほどヘイズ値が上昇して光拡散性が高まるが、内部ヘイズの増加に従い短波長側の光が広角に散乱するため、表示装置を正面から視認した場合に黄色く、くすんで見え、視認性が低下する。また、後方散乱し易いため、透明性も低下する。さらに、光拡散性も低く、色ムラが発生する有機ELディスプレイにおいても視認性を十分に向上できない。このように、透明樹脂中に屈折率の異なる粒子を分散させてヘイズを高める従来の技術では、光拡散性と視認性とはトレードオフの関係にあり、両立が困難であった。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、光拡散性及び明度が高い光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、透明性が高く、黄色度が小さい光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、透過光を等方的に散乱でき、各種表示装置の視認性を向上できる光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、特定の硬化性組成物を湿式スピノーダル分解により相分離構造を形成して硬化させ、ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、かつ全光線透過率が90%以上である光拡散フィルムを調製することに成功し、従来の技術ではトレードオフの関係にあった高い光拡散性と高い明度とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の光拡散フィルムは、ヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、全光線透過率が90%以上である。本発明の光拡散フィルムは、透過光の色度b*が10以下であってもよい。また、本発明の光拡散フィルムは、透過光の色度a*が2以下であってもよい。本発明の光拡散フィルムは、透明基材層と、この透明基材層の少なくとも一方の面に形成された光拡散層とを含み、前記光拡散層の60°グロスが10%以下であってもよい。前記光拡散層表面の算術平均表面粗さRaが0.3μm以上であってもよい。前記光拡散層表面の凹凸の平均間隔(平均山谷間隔)Smは100μm以下であってもよい。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明では、光拡散フィルムのヘイズが50%以上であり、内部ヘイズが15%以下であり、かつ全光線透過率が90%以上であるため、高い光拡散性と、高い明度とを両立できる。また、この光拡散フィルムは、透明性が高く、黄色度が小さい。さらに、透過光を等方的に散乱できる。そのため、各種表示装置の視認性を向上できる。」
(イ) 「【発明を実施するための形態】
【0017】
[光拡散フィルムの光学特性]
本発明の光拡散フィルムは、光拡散性に優れており、高いヘイズを有している。具体的には、本発明の光拡散フィルムのヘイズは50%以上(例えば50~100%)であり、・・・略・・・である。高い光拡散性が要求される用途では、ヘイズは80%以上・・・略・・・であってもよい。ヘイズが50%未満であると、光拡散性が低下し、防眩性や有機ELディスプレイなどでの視認性が低下する。
続きを表示(全74行)
【0018】
本発明の光拡散フィルムは、このような高ヘイズであるにも拘わらず、内部ヘイズは低い。具体的には、本発明の光拡散フィルムの内部ヘイズは15%以下・・・略・・・である。低い黄色性が要求される用途では、内部ヘイズは6%以下(例えば1~5%程度)であってもよい。内部ヘイズが15%を超えると、黄色度が大きくなる。
【0019】
本発明の光拡散フィルムは、高ヘイズであるにも拘わらず、内部ヘイズが低いため、透明性が高い。具体的には、本発明の光拡散フィルムの全光線透過率は90%以上・・・略・・・であり、例えば91~99.9%・・・略・・・程度である。
・・・略・・・
【0021】
本発明の光拡散フィルムは、このようなヘイズ及び透明性を有するため、明度が高く、特に、内部ヘイズが小さいため、黄色度が低いフィルムであってもよい。具体的には、本発明の光拡散フィルムは、透過光の色度(透過色相)b*が10以下・・・略・・・であってもよく、・・・略・・・程度である。透過光の色度b*が10を超えると、光拡散フィルムが、くすんで見える虞がある。
【0022】
本発明の光拡散フィルムは、赤色度が低いフィルムであってもよい。具体的には、本発明の光拡散フィルムは、透過光の色度a*が2以下であってもよく、・・・略・・・程度である。透過光の色度a*が2を超えると、光拡散フィルムが、くすんで見える虞がある。
・・・略・・・
【0024】
[光拡散層]
本発明の光拡散フィルムは、前記光学特性を発現するための光拡散層を含んでいればよく、材質や構造は限定されないが、通常、相分離構造に対応した微細で急峻な凹凸形状が大量に形成されることにより、前記光学特性が発現し、光拡散機能により表示装置の視認性を向上したり、表面反射による外景の映り込みを抑制して防眩性を向上できる。
【0025】
具体的には、前記光拡散層表面・・・略・・・の算術平均表面粗さRaは0.3μm以上であってもよく、例えば0.3~2μm、好ましくは0.5~1.5μm、さらに好ましくは0.7~1.2μm(特に0.8~1μm)程度である。Raが小さすぎると、凸形状がなだらかな形状となり、光拡散性が低下する虞がある。
【0026】
前記光拡散層表面・・・略・・・の凹凸の平均間隔(平均山谷間隔)Smは100μm以下であってもよく、例えば5~100μm、好ましくは10~80μm、さらに好ましくは20~60μm(特に30~50μm)程度であるSmが大きすぎると、凸形状がなだらかな形状となり、光拡散性が低下する虞がある。
・・・略・・・
【0028】
前記光拡散層表面・・・略・・・の60°グロスが10%以下であってもよく、例えば0.1~10%、好ましくは0.2~8%、さらに好ましくは0.3~5%(特に0.5~3%)程度である。60°グロスが大きすぎると、光拡散性が低下する虞がある。
・・・略・・・
【0030】
本発明の光拡散フィルムは、光拡散層を含んでいればよく、光拡散層単独で形成されていてもよく、透明基材層と、この透明基材層の少なくとも一方の面に形成された光拡散層とを含んでいてもよい。光拡散層の表面は、通常、前述の凹凸形状を有しており、この凹凸形状は、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成される。
【0031】
このような凹凸形状を有する光拡散層は、1種以上のポリマー成分及び1種以上の硬化樹脂前駆体成分を含む硬化性組成物の硬化物であってもよい。詳しくは、光拡散層は、1種以上のポリマー成分と1種以上の硬化樹脂前駆体成分と溶媒とを含む組成物(混合液)を用い、この組成物の液相から、溶媒を乾燥などにより蒸発又は除去する過程で、濃度の濃縮に伴って、スピノーダル分解による相分離が生じ、相間距離が比較的規則的な相分離構造を形成できる。より具体的には、前記湿式スピノーダル分解は、通常、前記組成物(均一溶液)を支持体にコーティングし、塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
・・・略・・・
【0032】
(ポリマー成分)
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、透明性が高く、スピノーダル分解により前述の表面凹凸形状を形成できれば特に限定されない・・・略・・・。
・・・略・・・
【0049】
(硬化樹脂前駆体成分)
硬化樹脂前駆体成分としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物を使用できる。
・・・略・・・
【0055】
硬化樹脂前駆体成分は、その種類に応じて、光拡散フィルムの黄色度を抑えるため内部へイズ値が15%以下になる範囲で、フィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、シリカ粒子・・・略・・・などの無機微粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、架橋スチレン系樹脂粒子などの有機微粒子を含んでいてもよい。これらのフィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
これらのフィラーのうち、光学特性に優れ、スピノーダル分解により急峻な凹凸形状を形成し易い点から、ナノメータサイズのシリカ粒子(シリカナノ粒子)が好ましい。シリカナノ粒子は、光拡散フィルムの黄色度を抑制できる点から、中実のシリカナノ粒子が好ましい。また、シリカナノ粒子の平均粒径は、例えば1~800nm、好ましくは3~500nm、さらに好ましくは5~300nm程度である。
【0057】
フィラー(特にシリカナノ粒子)の割合は、硬化樹脂前駆体成分全体に対して10~90重量%程度であってもよく、例えば20~80重量%、好ましくは30~70重量%、さらに好ましくは40~60重量%程度である。
・・・略・・・
【0060】
・・・本発明では、急峻な凹凸形状を形成し易い点から、シリカナノ粒子が硬化樹脂前駆体成分全体に対して前記割合となるように、硬化樹脂前駆体成分中に、シリカナノ粒子含有硬化樹脂前駆体成分を含むのが好ましい。
【0061】
(ポリマー成分と硬化樹脂前駆体成分との組み合わせ)
本発明では、前記ポリマー成分及び前記硬化樹脂前駆体成分のうち、少なくとも2つの成分が、加工温度付近で互いに相分離する組み合わせで使用される。
・・・略・・・
【0065】
・・・略・・・ポリマー成分と硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマー成分(第1のポリマーと第2のポリマー)との屈折率の差は、例えば0.001~0.2、好ましくは0.05~0.15程度であってもよい。
・・・略・・・
【0068】
(透明基材層)
透明基材層は、透明材料で形成されていればよく、用途に応じて選択でき、ガラスなどの無機材料であってもよいが、強度や成形性などの点から、有機材料が汎用される。
・・・略・・・
【0076】
光拡散層の厚み(平均厚み)は、例えば0.3~20μm程度・・・略・・・通常3~13μm(特に7~11μm)程度である。
・・・略・・・
【0078】
[光拡散フィルムの製造方法]
本発明の光拡散フィルムは、支持体(特に、透明基材層)の上に、1種以上のポリマー成分及び1種以上の硬化樹脂前駆体成分を含む硬化性組成物を塗布して乾燥することにより、ポリマー成分及び硬化樹脂前駆体成分から選択される少なくとも2つの成分を、湿式スピノーダル分解により相分離させる相分離工程、相分離した硬化性組成物を熱又は活性エネルギー線で硬化させる硬化工程を経て得てもよい。
【0079】
相分離工程において、硬化性組成物は溶媒を含んでいてもよい。・・・略・・・特に、ポリマー成分及び硬化性樹脂前駆体に対する溶媒の溶解性を調整することにより、相分離構造を制御してもよい。
・・・略・・・
【0080】
これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンなどのケトン類を含むのが好ましく、ケトン類と、アルコール類(ブタノールなど)及び/又はセロソルブ類(1-メトキシ-2-プロパノールなど)との混合溶媒が特に好ましい。・・・略・・・本発明では、溶媒を適宜組み合わせることにより、スピノーダル分解による相分離を調整し、急峻な凹凸形状を形成できる。
・・・略・・・
【0083】
前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、溶媒の沸点よりも1~120℃、好ましくは5~50℃、特に10~50℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、30~200℃(例えば30~100℃)、好ましくは40~120℃、さらに好ましくは40~80℃程度の温度で乾燥させることによリ行うことができる。
【0084】
このような溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。」

(エ) 「【実施例】

【0092】

以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。

・・・・略・・・

【0093】

[原料]

重合性基を有するアクリル系重合体:ダイセルオルネクス(株)製「サイクロマーP」

アクリル系重合体:大成ファインケミカル(株)製「8KX-078」

ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂:東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)UR-3200」

セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000

ナノシリカ含有アクリル系紫外線(UV)硬化性化合物A:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「UVHC7800G」

ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物B:日揮触媒化成(株)製「HP-1004」

シリコーンアクリレート:ダイセルオルネクス(株)製「EB1360」

ウレタンアクリレートA:新中村化学工業(株)製「UA-53H」

ウレタンアクリレートB:(株)トクシキ製「AU-230」

シリコン系ハードコート材:(株)トクシキ製「AS-201S」

ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセルオルネクス(株)製「DPHA」

ペンタエリスリトールテトラアクリレート:ダイセルオルネクス(株)製「PETRA」

PMMAビーズ:積水化学工業(株)製「SSX-115」
架橋スチレンビーズ:綜研化学(株)製「SX-130H」

ジルコニア微粒子分散液:東洋インキ(株)製「リオデュラスTYZ」

中空シリカゲル:日揮触媒化成(株)製「スルーリア」
光開始剤A:BASFジャパン(株)製「イルガキュア184」
光開始剤B:BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」。

・・・略・・・

【0095】

[ヘイズ及び全光線透過率]

ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。

・・・略・・・

【0096】

[60°グロス]

JIS K7105に準拠してグロスメーター((株)掘場製作所製「IG-320」)を用いて角度60°で測定した。

【0097】

[表面形状]

JIS B0601に準拠して、接触式表面粗さ計(東京精密(株)製「サーフコム570A)を用いて、走査範囲3mm、走査回数2回の条件で、算術平均表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(Sm)を測定した。

た。

【0098】

[透過色相(a*,b*)]

JIS Z8781に準拠して、分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3010」)を用いて測定した。

【0099】

実施例1

重合性基を有するアクリル系重合体12.5重量部、セルロースアセテートプロピオネート4重量部、ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物A 150重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン81重量部と1-ブタノール24重量部と1-メトキシ-2-プロパノール13重量部との混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#20を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

【0100】

実施例2

重合性基を有するアクリル系重合体15.0重量部、セルロースアセテートプロピオネート3重量部、ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物A 50重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン101重量部と1-ブタノール24重量部との混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#20を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

【0101】

実施例3

重合性基を有するアクリル系重合体12.5重量部、セルロースアセテートプロピオネート4重量部、ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物B 209.3重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン31重量部と1-ブタノール25重量部と1-メトキシ-2-プロパノール12重量部との混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#20を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

【0102】

実施例4

アクリル系重合体34.2重量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂20重量部、ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物A 131.7重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン213重量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#16を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

【0103】

実施例5

アクリル系重合体34.2重量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂20重量部、ナノシリカ含有アクリル系UV硬化性化合物A 131.7重量部、シリコーンアクリレート5重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン213重量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#16を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

【0104】

実施例6

重合性基を有するアクリル系重合体47.5重量部、セルロースアセテートプロピオネート1.5重量部、ウレタンアクリレートA 79.5重量部、光開始剤A 1重量部、光開始剤B 1重量部を、メチルエチルケトン175重量部と1-ブタノール28重量部と1-メトキシ-2-プロパノール2重量部との混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、PETフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、光拡散フィルムを得た。

・・・略・・・

【0108】

実施例及び比較例で得られた光拡散フィルムの特性を評価した結果を表1に示す。

【0109】

【表1】

[図:0001395173000015.jpg]

【0110】

表1の結果から明らかなように、実施例の光拡散フィルムは、ヘイズが高く、光拡散性に優れ、かつa*やb*の上昇を抑制できる。」

(3) 実施可能要件についての判断

ア 本件特許明細書の【0024】には、本件特許発明の光拡散フィルムは、光学特性(本件特許4光学条件)を発現するための光拡散層を含んでいればよく、材質や構造は限定されないこと、通常、相分離構造に対応した微細で急峻な凹凸形状が大量に形成されることにより、前記光学特性が発現し、光拡散機能により表示装置の視認性を向上したり、表面反射による外景の映り込みを抑制して防眩性を向上できること、が記載されている。

また、【0003】に記載されているように、フィラーを樹脂中に分散させて製造された光拡散フィルムが従来から知られている。

そうすると、本件特許発明に係る光拡散フィルムを構成する光拡散層には、相分離構造による光拡散層と、粒子分散構造による光拡散層が包含されると理解できる。

イ 本件特許明細書の【0024】~【0067】及び【0078】~【0087】には、湿式スピノーダルによる相分離構造による光拡散層及びその製造方法について、発明を実施するための形態が一般記載として記載され、【0099】~【0110】には、実施例1~5として、光拡散層を、ナノシリカを含む、湿式スピノーダル分解による相分離構造とした態様の、本件特許4光学条件及び本件特許3構造条件を満たす光拡散層が具体的に記載されている。

ウ ここで、粒子分散構造による光拡散層の設計、作成に関して、

(A)光拡散層中の粒子の径や量の調整により、ヘイズ(表面ヘイズ、内部ヘイズ)の高低を調整できること、

(B)光拡散層のバインダー成分と粒子成分の屈折率差の調整により、内部ヘイズの高低を調整できること、

(C)ヘイズにより光が拡散されるからといって、光拡散層を光が透過しなくなるわけではなく(JIS K7136によれば、ヘイズは、「試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率」である。)、高ヘイズと高全光線透過率は両立できること、

(D)高ヘイズ(高表面ヘイズ)にすれば、60°グロスは一般的に低くなること、

(E)光拡散層の表面凹凸の状態・程度を規定するパラメータとして、算術平均粗さ(Ra)及び平均間隔(Sm)は、それぞれ凹凸の高さ及び凹凸の間隔を示すものとしてよく用いられ、所望の光学特性に対応するRaやSmが得られるよう、光拡散層用組成物のバインダー成分、粒子成分、溶媒等を調整し、光拡散層を製造すること、はいずれも当業者の技術常識であるか、あるいは技術常識から理解できることである。

そうしてみると、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者は、光拡散層用組成物におけるバインダー成分、粒子成分、溶媒の材料、屈折率及び重量割合を調整することにより、光拡散層表面の凹凸を本件特許3構造条件を満たすRa、Smとしつつ、本件特許光学4条件を満たすヘイズ、内部ヘイズ、全光線透過率及び60°グロスの粒子分散構造の光拡散層を過度の試行錯誤をすることなく製造することができると認められる。

そうすると、本件特許7条件を満たす粒子分散構造による光拡散層について、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が、物の発明について明確に理解でき、その物を作れ、かつ、その物を使用できる程度に具体的に記載されているものと認められる。

エ 令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書の主張について

同意見書の「3-4.理由3(サポート要件)及び理由4(実施可能要件)について」「(2)理由4(実施可能要件)について」において、特許異議申立人は、

「訂正発明1~3,6~10、12~14は、湿式スピノーダル分解により相分離構造が形成されたものであることが特定されていない。よって、訂正発明1~3、6~10、12~14は、依然として理由4(実施可能要件)の取消理由が解消していない。」と主張する。

しかしながら、上記ウで述べたとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

オ 以上のとおりであるから、本件特許明細書には、本件特許発明に係る光拡散フィルムについて、その物を作れ、かつ、その物を使用できる程度に具体的に記載されているということができる。

したがって、発明の詳細な説明には、本件特許発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。

4 理由3(サポート要件)についての判断

(1) サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に記載する要件(いわゆる、サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認定できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。

これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。

(2) 本件特許発明、発明が解決しようとする課題、及び、課題解決手段に係る記載から理解される事項

ア 本件特許発明1~3、6~10、12~14は、上記3(1)で述べたとおりである。

イ 本件特許明細書の記載によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、「光拡散性及び明度が高い光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供すること」(【0008】)、「透明性が高く、黄色度が小さい光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供すること」(【0009】)、「透過光を等方的に散乱でき、各種表示装置の視認性を向上できる光拡散フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた表示装置を提供すること」(【0010】)であると認められる。

ウ 本件特許発明の光拡散フィルムの本件特許4光学条件及び本件特許3構造条件(のうちRa条件及びSm条件)と、発明が解決しようとする課題との対応について、本件特許明細書には

(a)ヘイズは50%以上であるから光拡散性に優れ、ヘイズが50%未満であると、光拡散性が低下し、防眩性や有機ELディスプレイなどでの視認性が低下する(【0017】)、

(b)このような高ヘイズであるにも拘わらず、内部ヘイズは15%以下であり、内部ヘイズが15%を超えると、黄色度が大きくなる(【0018】)、

(c)高ヘイズであるにも拘わらず、内部ヘイズが低いため、透明性が高く、全光線透過率が91~99.9%程度である(【0019】)、

(d)このようなヘイズ及び透明性を有するため、明度が高く、特に、内部ヘイズが小さく、黄色度が低いフィルムである(【0021】)、

(e)光拡散層表面のRaは0.3μm以上であり、Raが小さすぎると、凸形状がなだらかな形状となり、光拡散性が低下する虞がある(【0025】)、

(f)光拡散層表面のSmは100μm以下であってもよく、Smが大きすぎると、凸形状がなだらかな形状となり、光拡散性が低下する虞がある(【0026】)、

(g)光拡散層表面の60°グロスが10%以下であってもよく、60°グロスが大きすぎると、光拡散性が低下する虞がある(【0028】)、ことが記載されている。

また、本件特許明細書の【0099】~【0110】には、本件特許4光学条件及び本件特許3構造条件(本件特許7条件)を満たす、ナノシリカを含む、湿式スピノーダル分解による相分離構造とした態様の実施例1~5の光拡散層が、ヘイズが高く、光拡散に優れ、かつa*やb*の上昇を抑制できることが具体的に示されている。

エ そうすると、粒子分散構造による光拡散層についても本件特許7条件を満たすものが明確に理解でき、作れること(上記3(3)ウ)を前提として、上記イ及びウによれば、光拡散フィルムを構成する光拡散層において、ヘイズを50%以上、内部ヘイズを15%以上、全光線透過率を91%以上とすること(特に、上記ウ(a)~(d))により、本件特許発明の課題が解決できると当業者は認識できる。

オ 令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書の主張について

同意見書の「3-4.理由3(サポート要件)及び理由4(実施可能要件)について」「(1)理由3(サポート要件)について」において、特許異議申立人は、

「実施例に記載されているSmの範囲は31.5μm~56.4μmのみであり、56.4μmを超えて100μm以下である範囲については、発明の課題を解決できることを当業者は認識することができない。」、「さらに、訂正発明1~3,6~10、12~14は、湿式スピノーダル分解により相分離構造が形成されたものであることが特定されていない。」、「よって、訂正発明1~3、6~10、12~14は、依然として理由3(サポート要件)の取消理由が解消していない。」と主張する。

しかしながら、上記エで述べたとおり、光拡散層において、ヘイズを50%以上、内部ヘイズを15%以上、全光線透過率を91%以上とすることにより、本件特許発明の課題が解決できると当業者は認識できる。

カ 以上のとおりであるから、本件の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものではない。

5 令和4年7月27日に特許異議申立人が提出した意見書で主張する新たな取消理由(明確性要件)について

同意見書「3-5.新たな拒絶理由(明確性要件)」において、特許異議申立人は、

「訂正発明3では、「微粒子が、その平均粒径が1nm以上800nmであるシリカナノ粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体体粒子、又は架橋スチレン系樹脂粒子であ」ることが特定されている。訂正発明3で特定するシリカナノ粒子の平均粒径は、1nm以上であることは理解できるものの、800nmが何を意味するのかが明確ではない(例えば、「800nm以下」であるのか「800nm未満」であるのかが明確でない)。このため、訂正発明3は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。訂正発明3を引用する訂正発明6~14も同様である。」と主張する。

しかしながら、「平均粒径が1nm以上800nm」との記載は、シリカナノ粒子の平均粒径の数値範囲について、1nm以上であり、上限値が800nmであることを意味することは明らかであるし、仮に上限値を含む(「800nm以下」)のか、含まない(「800nm未満」)のかが明確でないとしても、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

してみると、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

第6 むすび

1 請求項1~3、6~10、12~14に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。

また、他に請求項1~3、6~10、12~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない

2 本件特許の請求項4、5は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、本件特許の請求項4、5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-700531

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