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特許異議申立

2025-700200

液晶化合物配向層転写用配向フィルム

審判番号
2025-700200
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-553396
登録番号
7539036
請求日
2025年02月14日
審決日
2025年12月26日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【権利者代理人】風早 信昭
  • 【権利者代理人】浅野 典子
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 関根 洋之
  • 審判官 河原 正
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7539036号発明「液晶化合物配向層転写用配向フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7539036号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、10、12~15〕、〔5~9、11〕について訂正することを認める。 特許第7539036号の請求項1、4~6、9~15に係る特許を維持する。 特許第7539036号の請求項2、3、7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7539036号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願(特願2020-553396号)は、2019年(令和元年)10月21日(先の出願に基づく優先権主張 平成30年10月26日 平成30年11月7日 平成30年11月7日 平成30年11月22日 平成30年11月29日 平成30年12月11日 平成31年1月7日)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月15日にその特許権の設定の登録がされ、令和6年8月23日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年2月14日に、請求項1~15に係る特許に対し、特許異議申立人 渡辺 陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(以下「異議申立」という。また、申立人が証拠として提出した甲第1号証等を「甲1」等と略す。)がされた。 その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和7年 5月12日付け:取消理由通知書 令和7年 7月 2日 :特許権者による訂正請求書の提出(同年8月12日、及び、同年9月2日提出の手続補正書により補正された、この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和7年 7月 2日 :特許権者による意見書の提出 令和7年 8月12日 :特許権者による手続補正書(補正対象:令和7年7月2日提出の訂正請求書)の提出 令和7年 9月 2日 :特許権者による手続補正書(補正対象:令和7年8月122日提出の手続補正書)の提出 令和7年10月 3日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7539036号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 なお、訂正前の請求項2~4、10、12~15は、それぞれ請求項1を引用し、訂正前の請求項6~9、11は、それぞれ請求項5を引用していることから、訂正前の請求項〔1~4、10、12~15〕に対応する本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)後の請求項〔1~4、10、12~15〕、及び、訂正前の請求項〔5~9、11〕に対応する本件訂正後の請求項〔5~9、11〕は、それぞれ特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~4、10、12~15〕、及び、請求項〔5~9、11〕についてそれぞれなされたものである。また、下線は、訂正箇所を示す。 (1) 一群の請求項〔1~4、10、12~15〕について ア 訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1の 「 液晶化合物配向層と転写用フィルムとして延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 前記延伸配向フィルムは離型面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり、かつ裏面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、45nm以下である ことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。」との記載を、 「 液晶化合物配向層と転写用フィルムとして延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 前記延伸配向フィルムは 離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり、 離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり、 離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり、 裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり、 裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ 裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である ことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、10、12~15も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項1-3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項1-4 特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のいずれかに記載の」を、「請求項1に記載の」に訂正する(請求項4を引用する請求項10、12~15も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項1-5 特許請求の範囲の請求項10の「請求項1~4のいずれかに記載の」との記載を、「請求項1または4に記載の」に訂正する。 カ 訂正事項1-6 特許請求の範囲の請求項12の「請求項1~4のいずれかに記載の」との記載を、「請求項1または4に記載の」に訂正する。 キ 訂正事項1-7 特許請求の範囲の請求項13の「請求項1~4のいずれかに記載の」との記載を、「請求項1または4に記載の」に訂正する。 ク 訂正事項1-8 特許請求の範囲の請求項14の「請求項1~4のいずれかに記載の」との記載を、「請求項1または4に記載の」に訂正する。 ケ 訂正事項1-9 特許請求の範囲の請求項15の「請求項1~4のいずれかに記載の」との記載を、「請求項1または4に記載の」に訂正する。 (2) 一群の請求項〔5~9、11〕について ア 訂正事項2-1 特許請求の範囲の請求項5の 「 液晶化合物配向層と転写用フィルムとしての延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 下記工程(A)及び(B)を含む、液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法。 (A)延伸配向フィルムとして離型面の表面粗さ(SRa)が1nm以上11nm以下であり、かつ裏面の表面粗さ(SRa)が1nm以上45nm以下である延伸配向フィルムを準備する工程; (B)前記延伸配向フィルムの離型面の側に前記重合性液晶化合物を配向した状態で固定させる工程。」との記載を、 「液晶化合物配向層と転写用フィルムとしての延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 下記工程(A)及び(B)を含む、液晶液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法。 (A)延伸配向フィルムとして 離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり、 離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり、 離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり、 裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり、 裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ 裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である 延伸配向フィルムを準備する工程; (B)前記延伸配向フィルムの離型面の側に前記重合性液晶化合物を配向した状態で固定させる工程。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9、11も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2-2 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 ウ 訂正事項2-3 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 エ 訂正事項2-4 特許請求の範囲の請求項9の「請求項5~8のいずれかに記載の」との記載を、「請求項5または6に記載の」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項2-5 特許請求の範囲の請求項11の「請求項5~9のいずれかに記載の」との記載を、「請求項5、6、9のいずれかに記載の」に訂正する。 3 訂正要件の判断 (1) 一群の請求項〔1~4、10、12~15〕について ア 訂正事項1-1 (ア) 訂正の目的 a 訂正事項1-1に係る請求項1の訂正は、「離型面」及び「裏面」の「表面粗さ(SRa)」における「表面粗さ」が、「SRa」に対応する「三次元算術平均表面粗さ」であることを明らかにするものである。 また、訂正事項1-1に係る請求項1の訂正は、「延伸配向フィルム」について、「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり」、「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であ」るものに限定するものである。 さらに、訂正事項1-1に係る請求項1の訂正は、「延伸配向フィルム」について、「裏面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、45nm以下である」ものから、「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり」、「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ」、「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である」ものに限定するものである。 b そうすると、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 a 本件特許明細書の段落【0022】及び段落【0040】の「三次元算術平均粗さ(SRa)」との記載、 段落【0023】の「本発明の転写用配向フィルムの離型面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は好ましくは5nmであり」、「本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRzの上限は・・・略・・・さらに好ましくは120nmであり」、段落【0024】の「本発明の転写用配向フィルムの離型面の最大高さ(SRy・・・略・・・)の下限は・・・略・・・より好ましくは15nmであり」、「本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRyの上限は・・・略・・・より好ましくは250nmであり」、段落【0040】の「本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元算術平均粗さ(SRa)の下限は・・・略・・・最も好ましくは5nmである。」、「本発明の転写用配向フィルムの裏面のSRaの上限は・・・略・・・さらに好ましくは40nmである。」、段落【0041】の「本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は、好ましくは10nmであり」、段落【0042】の「本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さ(SRy・・・略・・・)の下限は・・・略・・・より好ましくは20nmであり」、「本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さSRyの上限は・・・略・・・さらに好ましくは1200nmであり」との記載、及び、 実験例の転写用配向フィルムのそれぞれの製造条件、特性及び評価結果を示す段落【0253】【表1】中の「実験例9A」の「裏面粗さSRz(nm)」「327」との記載に基づけば、訂正事項1-1に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 b したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項1-1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、10、12~15についても同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1-1に係る訂正は、訂正要件を満たす。 イ 訂正事項1-2及び訂正事項1-3 (ア) 訂正の目的 訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、請求項2及び請求項3を削除するというものであるから、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正は、訂正要件を満たす。 ウ 訂正事項1-4 (ア) 訂正の目的 訂正事項1-4に係る請求項4の訂正は、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正により請求項2及び請求項3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項4において、その記載を引用していた請求項1~3から、削除された請求項2、3を除くことにより、請求項4の記載を整合させるものである。 そうすると、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項1-4に係る請求項4の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項1-4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項1-4に係る請求項4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項4の記載を引用する請求項10、12~15についても同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1-4に係る訂正は、訂正要件を満たす。 エ 訂正事項1-5~訂正事項1-9 (ア) 訂正の目的 訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る請求項10、12~15の訂正は、訂正事項1-2及び訂正事項1-3に係る訂正により請求項2、3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項10、12~15において、その記載を引用していた請求項1~4から、削除された請求項2、3を除くことにより、請求項10、12~15の記載を整合させるものである。 そうすると、訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る請求項10、12~15の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、正事項1-5~訂正事項1-9に係る請求項10、12~15の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1-5~訂正事項1-9に係る訂正は、訂正要件を満たす。 (2) 一群の請求項〔5~9、11〕について ア 訂正事項2-1 (ア) 訂正の目的 a 訂正事項2-1に係る請求項5の訂正は、「離型面」及び「裏面」の「表面粗さ(SRa)」における「表面粗さ」を、「SRa」に対応する「三次元算術平均表面粗さ」であることを明らかにするものである。 また、訂正事項2-1に係る請求項5の訂正は、「延伸配向フィルム」について、「離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)」が「1nm以上11nm以下であ」るものから、「離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり」、「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり」、「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であ」るものに限定するものである。 さらに、訂正事項2-1に係る請求項5の訂正は、「延伸配向フィルム」について、「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)」が「1nm以上45nm以下である」ものから、「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり」、「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ」、「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である」ものに限定するものである。 b そうすると、訂正事項2-1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(1)ア(イ)aと同様に、訂正事項2-1に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2-1に係る請求項5の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9、11についても同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2-1に係る訂正は、訂正要件を満たす。 イ 訂正事項2-2及び訂正事項2-3 (ア) 訂正の目的 訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、請求項7及び請求項8を削除するというものであるから、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正は、訂正要件を満たす。 ウ 訂正事項2-4 (ア) 訂正の目的 訂正事項2-4に係る請求項9の訂正は、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正により請求項7及び請求項8が削除されたことに伴い、訂正前の請求項9において、その記載を引用していた請求項5~8から、削除された請求項7、8を除くことにより、請求項9の記載を整合させるものである。 そうすると、訂正事項2-4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項2-4に係る請求項9の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2-4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2-4に係る請求項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2-4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 請求項9の記載を引用する請求項11についても同様である。 (オ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2-4に係る訂正は、訂正要件を満たす。 エ 訂正事項2-5 (ア) 訂正の目的 訂正事項2-5に係る請求項11の訂正は、訂正事項2-2及び訂正事項2-3に係る訂正により請求項7及び請求項8が削除されたことに伴い、訂正前の請求項11において、その記載を引用していた請求項5~9から、削除された請求項7、8を除くことにより、請求項11の記載を整合させるものである。 そうすると、訂正事項2-5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ) 新規事項追加の有無 上記(ア)に照らせば、訂正事項2-5に係る請求項11の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2-5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2-5に係る請求項11の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2-5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2-5に係る訂正は、訂正要件を満たす。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許第7539036号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、10、12~15〕、〔5~9、11〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正は、上記「第2」のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1、4~6、9~15に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明4」~「本件特許発明6」、「本件特許発明9」~「本件特許発明15」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4~6、9~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 液晶化合物配向層と転写用フィルムとして延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 前記延伸配向フィルムは 離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり、 離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり、 離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり、 裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり、 裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ 裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である ことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。」 「【請求項4】 前記延伸配向フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の液晶化合物配向層転写用積層体。 【請求項5】 液晶化合物配向層と転写用フィルムとしての延伸配向フィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含み、 下記工程(A)及び(B)を含む、液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法。 (A)延伸配向フィルムとして 離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり、 離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり、 離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり、 裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり、 裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ 裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である 延伸配向フィルムを準備する工程; (B)前記延伸配向フィルムの離型面の側に前記重合性液晶化合物を配向した状態で固定させる工程。 【請求項6】 前記重合性液晶化合物を配向した状態で固定させる工程が下記(a)、(b)、(c)のいずれかの方法を含む請求項5に記載の液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法。 (a)液晶化合物配向層を延伸配向フィルムの離型面に塗工し配向させる方法であり、配向させる方法が延伸配向フィルムの離型面にラビング処理を行い、配向制御機能を付与する方法; (b)液晶化合物配向層を延伸配向フィルムの離型面に塗工し配向させる方法であり、配向させる方法が液晶化合物を塗布後に偏光を照射して直接液晶化合物を配向させる方法; (c)延伸配向フィルムの離形面に配向制御層を設け、配向制御層上に液晶化合物配向層を塗布により設ける方法。」 「【請求項9】 前記延伸配向フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項5または6に記載の液晶化合物配向層転写用積層体を製造する方法。 【請求項10】 請求項1または4に記載の液晶化合物配向層が棒状液晶化合物もしくはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層、またはディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層である液晶化合物配向層転写用積層体の液晶化合物配向層面と偏光板とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から延伸配向フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。 【請求項11】 請求項5、6、9のいずれかに記載の方法により液晶化合物配向層が棒状液晶化合物もしくはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層、またはディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層である液晶化合物配向層転写用積層体を得た後、得られた液晶化合物配向層転写用積層体の液晶化合物配向層面と偏光板を貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から延伸配向フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。 【請求項12】 請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、延伸配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または延伸配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の延伸配向フィルム面から照射し、液晶化合物配向層面側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。 【請求項13】 請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、楕円偏光を積層体の液晶化合物配向層面から照射し、延伸配向フィルム面側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。 【請求項14】 請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、延伸配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または延伸配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の延伸配向フィルム面から照射する工程と、積層体を透過した光を、積層体の液晶化合物配向層側に設けられた鏡面反射板で反射させる工程と、反射した光を延伸配向フィルム側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。 【請求項15】 請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、少なくとも、積層体に偏光を照射して積層体に偏光を通過させる工程と、積層体を通過した偏光を受光する工程を含み、積層体の延伸配向フィルムを通過する偏光が、延伸配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または延伸配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光であるか、または積層体の液晶化合物配向層面を通過する偏光が、楕円偏光であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~11に係る特許に対して、令和7年5月12日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。 「●取消理由1(進歩性) 本件特許の請求項1~11に係る発明は、最先の先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、最先の先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (引用文献等一覧参照) 甲1:特開2015-215596号公報 甲3:特開2018-90740号公報 甲4:特開2007-210226号公報 甲5:再公表特許WO2006/035684号 甲6:特開2016-87854号公報 参考文献1:特開2006-349998号公報 参考文献2:特開2016-83937号公報 (合議体注:甲1が主引用例であり、甲3~6は副引用例であり、参考文献1~2は技術常識を示す文献である。) ●取消理由2(明確性) 本件特許の請求項8、9及び11に係る発明は明確であるということができないから、本件特許の請求項8、9及び11に係る特許は、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」 第5 当合議体の判断 1 取消理由1(進歩性)について (1) 甲1の記載 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、合議体が付したものであり、引用発明の認定の根拠となった記載等を示すためのものである。以下同様である。 ア 「【発明の詳細な説明】 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、光学フィルム用転写体及びこの光学フィルム用転写体を使用した光学フィルム及び画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、画像表示パネルの出射面に、直線偏光板、1/4波長板の積層による反射防止フィルムを配置し、この反射防止フィルムにより外来光の反射を低減する方法が提案されている。 ・・・略・・・ 【0004】 このような1/2波長板、1/4波長板は、例えば透明フィルムによる基材に配向膜、位相差層を順次形成して作製される。また位相差層は、配向膜の上に、位相差層に係る塗工液を塗工、乾燥した後、硬化させることにより、配向膜の配向規制力により配向させた状態で液晶材料を硬化して作製される。 【0005】 またこのような画像表示パネルの出射面に配置する光学フィルムは、・・・略・・・いわゆる転写法により作製する方法が提案されている。ここで転写法とは、例えば基材の上に所望の層を形成する場合に、この層を直接当該基材上に形成するのでは無く、一旦、離型性の基材である支持体上に剥離可能に該層を積層形成して転写体を作製した後、工程、需要等に応じて、該支持体上に形成した層を、最終的に該層を積層すべき基材(被転写基材)上に接着、積層し、その後、該支持体を剥離除去することにより、該基材上に所望の層を形成する方法である。 【0006】 ところで基材表面に配向膜、位相差層を順次形成して1/2波長板、1/4波長板等を作製する場合、位相差層に係る塗工液が配向膜表面ではじかれ、その結果、位相差層に欠陥が生じる場合がある。このような欠陥は、大きさが大きいと、画像表示パネルに配置した際に、白点等により認識されて、表示画面の品位を著しく低下させることになる。また大きさが小さい場合にあって、白点等により認識できない場合でも、光学フィルムにおいては、特性が劣化することになる。具体的に、反射防止フィルムにおいては、このような欠陥の存在により反射率が増大し、反射防止の性能が劣化することになる。これにより極力、このようなはじきによる欠陥は、発生しないようにすることが望まれる。 ・・・略・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、基材上に配向膜、位相差層を順次作製する構成において、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減する、ことを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、位相差層の下層の配向膜を作製する基材については、配向膜を作製する側は平滑面とし、配向膜を作製する側とは逆側面はブロッキング防止処理面とする、との着想に至り、本発明を完成するに至った。 【0010】 (1) 少なくとも支持体と、前記支持体上に形成された配向膜と、透過光に位相差を付与する位相差層とを備え、少なくも前記位相差層が転写法により被転写体に転写される光学フィルム用転写体であって、 前記支持体は、 配向膜側面が、算術平均粗さRaが50nm以下の平滑面であり、 前記配向膜とは逆側面が、ブロッキング防止処理面である。 【0011】 (1)によれば、配向膜とは逆側面がブロッキング防止処理面であることにより、ブロッキングを防止して生産性を向上することができる。また配向膜側面が算術平均粗さRa50nm以下の平滑面であることにより、はじきの起点となる凸部の発生を防止することができ、その結果、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減することができる。 【0012】 (2) (1)において、 前記配向膜側面の平滑面は、 フィラーが混入されていない樹脂材による平滑面である光学フィルム用転写体。 【0013】 (2)によれば、より具体的構成により、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減することができる。 【0014】 (3) (1)又は(2)において、 前記支持体が、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルムの何れかである。 【0015】 (3)によれば、より具体的構成により、ブロッキングを防止して生産性を向上するようにして、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減することができる。 【0016】 (4) (1)、(2)、(3)の何れかに記載の光学フィルム用転写体の前記位相差層が、転写法により転写されて作製された光学フィルム。 【0017】 (4)によれば、ブロッキングを防止して生産性を向上するようにした上で、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減してなる光学フィルム用転写体を使用して光学フィルムを作製することができる。 【0018】 (5) (4)に記載の光学フィルムを画像表示パネルのパネル面に配置した画像表示装置。 【0019】 (4)によれば、従来に比して欠陥を低減してなる光学フィルムを使用して画像表示装置を提供することができる。 【発明の効果】 【0020】 本発明によれば、基材上に配向膜、位相差層を順次作製する構成において、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減することができる。 ・・・略・・・ 【発明を実施するための形態】 【0022】 〔第1実施形態〕 図1は、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を示す図である。この画像表示装置1は、画像表示パネル2のパネル面(視聴者側面)に、粘着剤層3を介して反射防止フィルムによる光学フィルム4が配置される。 ・・・略・・・ 【0023】 光学フィルム4は、1/4波長板と直線偏光板5との積層による反射防止フィルムであり、この1/4波長板が、透過光に1/2波長の位相差を付与する1/2波長位相差層6、透過光に1/4波長の位相差を付与する1/4波長位相差層7の積層により作製される。 ・・・略・・・ 【0024】 光学フィルム4は、この1/2波長位相差層6及び1/4波長位相差層7が、対応する配向膜8及び9と一体に、接着層10及び11を介して、転写法により、順次、直線偏光板5に積層して作製される。より具体的に光学フィルム4は、1/2波長位相差層6、配向膜8の積層体を転写法により直線偏光板5に積層した後、さらに1/4波長位相差層7、配向膜9の積層体を転写法により、1/2波長位相差層6、配向膜8、直線偏光板5の積層体に積層して作製される。 ・・・略・・・ 【0026】 図3は、1/2波長位相差層6、配向膜8の転写に使用する光学フィルム用転写体15を示す断面図である。なお1/4波長位相差層7、配向膜9の転写に使用する光学フィルム用転写体16は、配向膜8の配向方向、位相差層7の膜厚及び配向方向が異なる点を除いて、光学フィルム用転写体15と同一に構成されることにより、光学フィルム用転写体16については、この図3において括弧書により対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。 【0027】 ここで光学フィルム用転写体15は、基材である支持体17に、配向膜8、位相差層6が順次作製される。光学フィルム用転写体15は、接着層10により位相差層6が直線偏光板5に貼り付けられて直線偏光板5に保持された後、支持体17が剥離され、その結果、転写法により配向膜8、位相差層6が直線偏光板5に積層される。なおこれにより光学フィルム用転写体16においては、その後、同様にして位相差層6、配向膜8、直線偏光板5の積層体に、位相差層7、配向膜9が積層される。 【0028】 ここで支持体17は、各種の透明フィルム材を適用することができるものの、この実施形態ではPET・・・略・・・フィルムが適用される。光学フィルム用転写体15は、この支持体17に上に作製された配向膜8の配向規制力により位相差層6に係る液晶材料を配向させた状態で硬化させることにより、位相差層6が作製され、これにより透過光に所望の位相差を付与する。 【0029】 位相差層6は、この種の光学フィルムに適用される種々の液晶材料を広く適用することができる。より具体的に位相差層6は、重合性液晶組成物を含有する。この重合性液晶組成物は、液晶性を示し分子内に重合性官能基を有する液晶化合物(以下、「棒状化合物」ともいう。)のほか、アンチブロッキング剤等を含有させることができる。また棒状化合物に代えて、ディスコティック液晶による液晶化合物を適用しても良い。 ・・・略・・・ 【0037】 〔支持体の詳細構成〕 さらにこの実施形態において、支持体17は、配向膜8を作製する側が平滑面とされ、配向膜8を作製する側とは逆側面がブロッキング防止処理面とされる。ここでこの平滑面は、算術平均粗さRaが50nm以下、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下により形成される。なお算術平均粗さRaは、JISB0601の規定による。この実施形態において、平滑面は、フィラーが混入されていない樹脂材により構成される。これによりこの実施形態では、ブロッキングを防止して十分な生産性を確保すると共に、従来に比して格段的にはじきによる欠陥の発生を低減する。 【0038】 すなわち従来、このような光学フィルムの生産に使用する基材は、ロール状に巻き取られて提供されており、光学フィルムの生産工程では、ロールより基材を引き出しながら順次処理することにより光学フィルムを生産する。またこの生産工程においては、工程の都合上、適宜、中間製品をロール状に巻き取って次工程に搬送する。基材である支持体に適用されるPETフィルムは、これによりロール状に巻き取った場合に積層されることになり、何らブロッキング防止処理を施していない場合、ロール状に巻き取ったPETフィルムが、重なり合ったPETフィルム又は他の部材に貼り付くようになり(いわゆるブロッキングである)、著しく生産性が低下することになる。 【0039】 このためPETフィルムは、従来、フィラーの混入によりブロッキング防止処理が施される。ここでフィラーは、例えば樹脂材料による透光性の微細粒子、シリカ等に代表される無機材料による微細粒子等を適用することができ、粒径4~7μmの微細粒子が適用される。このように微細粒子を混入すると、PETフィルムの表面には、この微細粒子に対応する微細な凹凸形状が発生し、PETフィルムは、この微細な凹凸形状により密着しないように保持され、その結果、ブロッキングが防止される。 【0040】 しかしながら詳細に検討したこところ、光学フィルム用転写体15においては、このような微細な凹凸形状が、はじきによる欠陥の発生原因であることが判った。すなわち図4に示すように、フィラーの混入により、支持体17の表面には、凸部20が発生することになる。この凸部20の高さhが、配向膜8の膜厚より大きい場合、位相差層6においては、この凸部20を中心とした円形形状の範囲で、塗工液がはじかれ、その結果、この凸部20を中心とした円形形状の領域がはじきによる欠陥となる。 【0041】 このようなはじきによる欠陥は、凸部20を中心にして凸部20の大きさに対応する直径Dの円形形状の領域により発生する。これによりこの実施形態では、配向膜8を作製する側をフィラーが混入されていない樹脂材による平滑面とし、このような欠陥の発生原因となる凸部の発生を防止する。これによりこの実施形態では、はじき防止し、はじきによる欠陥の発生を有効に回避する。 【0042】 ここでこの凸部20にあっては、配向膜8の厚みより充分に小さい場合には、配向膜8の樹脂材料により覆い隠され、この場合、位相差層6においては、はじきが防止されて欠陥の発生が防止される。これにより少なくともこの配向膜8の厚みより凸部20の高さが小さくなるように、より好ましくは、配向膜8の厚みの1/2より凸部20の高さが小さくなるように作製して、欠陥の発生を具体的かつ確実に防止することができる。なおこのような凸部20にあっては、JIS B0601 ’1994に規定された最大高さRyの計測手法を適用して、原子間力顕微鏡(・・・略・・・AFM)又は走査型電子顕微鏡(・・・略・・・SEM)等を使用して求めた、支持体17の表面形状のデータを処理して求めることができる。ここで光配向膜の配向膜8にあっては、50nm以上、200nm以下により作製されることにより、凸部20は、50nm以下の高さhとなるように、より好ましくは、25nm以下となるように設定することが望まれる。 ・・・略・・・ 【0044】 〔実測結果〕 ここで比較例1と実施例1とで比較結果を求めた。比較例1は、フィラーを混入したフィラー混入材のみにより作製したPETフィルムを支持体に使用して光学フィルム用転写体を作製し、この光学フィルム用転写体より作製した図1について上述した構成の反射防止フィルムである。実施例1は、このPETフィルムが上述した実施形態に係る、何らフィラーを混入していないベース材と、このベース材にフィラーを混入したフィラー混入材とを使用した2層押し出しにより作製されるPETフィルムである点を除いて、比較例1と同一の条件により作製した反射防止フィルムである。 【0045】 この比較例1及び実施例1について、欠陥を観察し、さらに反射率を計測した。なお反射率の計測には、分光測色計(コニカミノルタCM-2600d)を使用した。比較例1においては、1辺1.5cmの矩形領域に直径Dが100μm程度の欠陥が2~3個程度検出された。ここでこの欠陥の箇所では透過光に所望する位相差を付与できないことにより十分に反射防止を図れなくなる。その結果、比較例1では反射率の増大が予測される。実測した結果によれば、比較例1の反射率はY値で5.5であった。これに対して実施例1では、このような欠陥を発見し得ず、反射防止率はY値で5.2であった。 【0046】 以上の構成によれば、支持体の配向膜側を、フィラーが混入されていない樹脂材による平滑面とし、配向膜側とは逆側面をブロッキング防止処理面とすることにより、ブロッキングを有効に回避してはじきによる欠陥を有効に回避することができる。これによりこのような支持体を使用して作製された光学フィルム用転写体を使用して、従来に比してはじきによる欠陥を格段に低減した光学フィルム、この光学フィルムを使用した画像表示装置を提供することができる。またこのように配向膜側面を平滑面とすることで、配向性の良好な転写体を得ることができる。 【0047】 またこの支持体をPETフィルムにより構成することにより、さらにはフィラーを混入した樹脂材とフィラーを混入していない樹脂材との2層押し出しにより支持体を作製することにより、より具体的構成により、ブロッキングを充分に防止して、従来に比してはじきによる欠陥の発生を格段に低減することができる。 【0048】 〔第2実施形態〕 この実施形態では、いわゆる光学補償(位相差補償)、視野角特性の改善等に供する光学フィルム、この光学フィルムに使用される正Cプレートによる光学フィルム用転写体、この光学フィルムを使用した画像表示装置に本発明を適用する。これによりこの実施形態では、Aプレートに係る位相差層及び配向膜に代えて、正Cプレートに係る位相差層及び配向膜が作製されて光学フィルム用転写体が構成される。また光学補償、視野角特性に係る直線偏光板等にこの正Cプレートが転写されて光学フィルムが作製され、この光学フィルムを配置して画像表示装置が構成される。 【0049】 この実施形態において、光学フィルム用転写体は、第1実施形態について上述したと同一の支持体が適用される。これによりこの実施形態では、位相差層により正Cプレートを構成する場合にあっても、第1実施形態と同様に、生産性の劣化を有効に回避して、従来に比してはじきによる欠陥の発生を格段に低減する。 【0050】 この実施形態によれば、位相差層により正Cプレートを構成する場合でも、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。 【0051】 〔第3実施形態〕 この実施形態では、PETフィルム材に代えて、TAC・・・略・・・フィルム材、又はCOP・・・略・・・フィルム材を支持体に適用する。この実施形態では、この支持体に関する構成が異なる点を除いて、第1実施形態又は第2実施形態と同一に構成される。 ・・・略・・・ 【0053】 〔実測結果〕 〔実施例2〕 シクロオレフィンポリマー99.7wt%と球状シリカ粒子0.2wt%とを混合したA層用混合組成物と、シクロオレフィンポリマー100wt%によるB層用組成物とを使用して、単軸押出機で溶融共押出成形してロール状に巻取り、厚み10μmのA層と、厚み100μmのB層の2層からなる長さ400mの支持体を作製した。この支持体は良好な耐ブロッキング性を有していた。またB層表面の算術平均粗さRaは、3nmであった。なおシクロオレフィンポリマーは、ゼオノア1020R(日本ゼオン製)であり、球状シリカ粒子は、アドマファインS0-E2(アドマテックス製)を使用した。なお耐ブロッキング性は、支持体を3cm角に6枚切り出してロール状に巻き取った場合と同一の表裏面の向きにより積層し、永久歪試験機(テスター産業株式会社製)にて10N/cm2の加重を常温常圧で12時間かけた後の剥離状況を観察し、貼り付いていない場合を良好と判断した。 【0054】 このようにして作製した支持体のB層側面に、乾燥厚みが200nmとなる膜厚により配向膜用塗工液を塗工し、乾燥させた後、紫外線を照射して重合させ、その後ラビング処理して配向膜を作製した。なお塗工液は、以下の混合物を、MEK:MIBK=10:1の混合溶剤により固形分が20%になるように希釈して作製した。 ・・・略・・・ ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー (日本合成化学社製UV1700B(固形分100%)) :50重量部 PETA(共栄社化学社製ライトアクリレートPE-3A(固形分100%) :50重量部 光重合開始剤(BASF社製ルシリンTPO) :4重量部 【0055】 このようにして作製した配向膜の上に、位相差層用塗工液を乾燥厚みが1.1μmになるよう塗工し、乾燥後、紫外線を照射して重合し、光学フィルム用転写体を得た。なおこの位相差層用塗工液は、以下の混合物を適用した。 重合成液晶組成物(合議体注:「重合成液晶組成物」は、「重合性液晶組成物」の誤記と認められる。)(メルク社製RMS03-013) :100重量部 フッ素系レベリング剤(共栄社化学株式会社製 LE-604):0.25重量部 【0056】 得られた光学フィルム用転写体の位相差を、位相差測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器社製)で測定したところ、130nmであった。粘着剤付きの直線偏光板と、得られた光学フィルム用転写体の位相差層とを、直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが45°の角度を成すようにして貼り合せ、支持体を剥離し、円偏光板を得た。得られた円偏光板に、欠点や位相差ムラはみられず、円偏光板として良好な性能を有していた。 【0057】 〔実施例3〕 セルロース溶液Aとセルロース溶液Bとセルロース溶液Cとを逐次流延して成膜後、ロール状に巻取り、セルロース溶液Aからなる厚み6μmのA層と、セルロース溶液Bからなる厚み60μmのB層と、セルロース溶液Cからなる厚み6μmのC層とが積層された支持体を得た。得られた支持体は、良好な耐ブロッキング性を有していた。なおセルロース溶液A、セルロース溶液B、セルロース溶液Cは以下の通りである。 【0058】 セルロース溶液A トリアセチルセルロース :17重量部 トリフェニルフォスフェイト:3重量部 メチレンクロライド :90重量部 メタノール :10重量部 シリカ微粒子(平均粒径16nm)(日本アエロジル製aerosil R972):0.5重量部 セルロース溶液B トリアセチルセルロース :17重量部 トリフェニルフォスフェイト:15重量部 メチレンクロライド :90重量部 メタノール :10重量部 セルロース溶液C トリアセチルセルロース :17重量部 トリフェニルフォスフェイト:3重量部 メチレンクロライド :90重量部 メタノール :10重量部 シリカ微粒子(平均粒径16nm)(日本アエロジル製aerosil R972):5重量部 【0059】 ここでA層表面の算術平均粗さRaは、35nmであった。得られた支持体のA層側に、実施例2と同様に配向膜と位相差層とを積層し、第1の光学フィルム用転写体を得た。 ・・・略・・・ 【0063】 〔実施例4〕 実施例3で用いたセルロース溶液Cとセルロース溶液Bとを逐次流延して成膜し、ロール状に巻取り、セルロース溶液Cからなる厚み6μmのC層と、セルロース溶液Bからなる厚み60μmのB層とが積層された支持体を得た。得られた支持体は、良好な耐ブロッキング性を有していた。ここでC層表面の算術平均粗さRaは、20nmであった。 ・・・略・・・ 【0066】 このように支持体にTACフィルム材、COPフィルム材を適用するようにしても、第1実施形態、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。 ・・・略・・・ 【0068】 〔実施例5〕 この実施例5では、実施例3におけるA層のセルロース溶液Aにおけるフィラー量を0.7重量部とした他は実施例3と同様にして円偏光板を作製した。なお算術平均粗さRaは、48nmであった。この実施例6では、わずかに欠点がみられたが、広帯域円偏光板としては比較的良好な性能を有していた。 ・・・略・・・ 【0070】 〔他の実施形態〕 以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に組み合わせたり、変更したりすることができる。」 イ 「【図1】 [図:0001434144000001.jpg] ・・・略・・・ 【図3】 [図:0001434144000002.jpg] 【図4】 [図:0001434144000003.jpg] 」 (2) 甲1に記載された発明 ア 甲1の【0001】、【0008】~【0020】、【0037】(「算術平均粗さRa」について)、【0051】~【0056】の記載からみて、甲1には、実施例2(【0053】~【0056】)で得られた「光学フィルム用転写体」の発明として、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明」という。)。なお、参考のため、引用発明の認定の際に根拠とした記載の段落番号を丸括弧内に記載している。 「 シクロオレフィンポリマー99.7wt%と球状シリカ粒子0.2wt%とを混合したA層用混合組成物と、シクロオレフィンポリマー100wt%によるB層用組成物とを使用して、単軸押出機で溶融共押出成形してロール状に巻取り、厚み10μmのA層と、厚み100μmのB層の2層からなる長さ400mの、良好な下記の定義による耐ブロッキング性を有し、B層表面のJIS B0601の規定による算術平均粗さRaが3nmの支持体を作製し、ここでシクロオレフィンポリマーとして、ゼオノア1020R(日本ゼオン製)、球状シリカ粒子として、アドマファインS0-E2(アドマテックス製)を使用し、(【0037】、【0053】) 作製した支持体のB層側面に、乾燥厚みが200nmとなる膜厚により配向膜用塗工液を塗工し、乾燥させた後、紫外線を照射して重合させ、その後ラビング処理して配向膜を作製し、配向膜用塗工液は、以下の混合物を、MEK:MIBK=10:1の混合溶剤により固形分が20%になるように希釈して作製したものであり、(【0054】) 作製した配向膜の上に、以下の混合物を適用した位相差層用塗工液を乾燥厚みが1.1μmになるよう塗工し、乾燥後、紫外線を照射して重合して得られた、(【0055】) 光学フィルム用転写体であって、 位相差が130nmであり、 粘着剤付きの直線偏光板と、光学フィルム用転写体の位相差層とを、直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが45°の角度を成すようにして貼り合せ、支持体を剥離し、得られた円偏光板に、欠点や位相差ムラはみられず、円偏光板として良好な性能を有する、(【0056】) 光学フィルム用転写体。 (配向膜用塗工液用の混合物) ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー (日本合成化学社製UV1700B(固形分100%)) :50重量部 PETA(共栄社化学社製ライトアクリレートPE-3A(固形分100%) :50重量部 光重合開始剤(BASF社製ルシリンTPO) :4重量部(【0054】) (位相差層用塗工液用の混合物) 重合性液晶組成物(メルク社製RMS03-013) :100重量部 フッ素系レベリング剤(共栄社化学株式会社製 LE-604):0.25重量部(【0055】) (耐ブロッキング性) 支持体を3cm角に6枚切り出してロール状に巻き取った場合と同一の表裏面の向きにより積層し、永久歪試験機(テスター産業株式会社製)にて10N/cm2の加重を常温常圧で12時間かけた後の剥離状況を観察し、貼り付いていない場合を良好と判断した。(【0053】)」 イ 上記アの甲1の各記載からみて、甲1には、甲1発明の「光学フィルム用転写体」を製造する製造方法の発明として、以下の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1製造方法発明」という。)。 「 シクロオレフィンポリマー99.7wt%と球状シリカ粒子0.2wt%とを混合したA層用混合組成物と、シクロオレフィンポリマー100wt%によるB層用組成物とを使用して、単軸押出機で溶融共押出成形してロール状に巻取り、厚み10μmのA層と、厚み100μmのB層の2層からなる長さ400mの、良好な下記の定義による耐ブロッキング性を有し、B層表面のJIS B0601の規定による算術平均粗さRaが3nmの支持体を作製し、ここでシクロオレフィンポリマーとして、ゼオノア1020R(日本ゼオン製)、球状シリカ粒子として、アドマファインS0-E2(アドマテックス製)を使用し、(【0037】、【0053】) 作製した支持体のB層側面に、乾燥厚みが200nmとなる膜厚により配向膜用塗工液を塗工し、乾燥させた後、紫外線を照射して重合させ、その後ラビング処理して配向膜を作製し、配向膜用塗工液は、以下の混合物を、MEK:MIBK=10:1の混合溶剤により固形分が20%になるように希釈して作製したものであり、(【0054】) 作製した配向膜の上に、以下の混合物を適用した位相差層用塗工液を乾燥厚みが1.1μmになるよう塗工し、乾燥後、紫外線を照射して重合して、(【0055】) 位相差が130nmである、(【0056】) 光学フィルム用転写体を製造する製造方法。 (配向膜用塗工液用の混合物) ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー (日本合成化学社製UV1700B(固形分100%)) :50重量部 PETA(共栄社化学社製ライトアクリレートPE-3A(固形分100%) :50重量部 光重合開始剤(BASF社製ルシリンTPO) :4重量部(【0054】) (位相差層用塗工液用の混合物) 重合性液晶組成物(メルク社製RMS03-013) :100重量部 フッ素系レベリング剤(共栄社化学株式会社製 LE-604):0.25重量部(【0055】) (耐ブロッキング性) 支持体を3cm角に6枚切り出してロール状に巻き取った場合と同一の表裏面の向きにより積層し、永久歪試験機(テスター産業株式会社製)にて10N/cm2の加重を常温常圧で12時間かけた後の剥離状況を観察し、貼り付いていない場合を良好と判断した。(【0053】)」 ウ 上記アの甲1の各記載からみて、甲1には、「粘着剤付きの直線偏光板」と、「甲1発明」「の位相差層とを、直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが45°の角度を成すようにして貼り合せ、支持体を剥離し」て、「円偏光板を」得る、「円偏光板」の製造方法の発明(以下「甲1円偏光板製造方法発明」)が記載されているものと認められる。 (3) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と、甲1発明を対比する。 (ア) 重合性液晶化合物、液晶化合物配向層 a 甲1発明は、その構成からみて、B層表面の算術平均粗さRaが3nmの支持体のB層側の面に、「配向膜」及び「位相差層」をこの順で形成したものである。 b 上記aの甲1発明の「位相差層」は、「重合性液晶組成物(メルク社製RMS03-013)」及び「フッ素系レベリング剤」の混合物である「位相差層用塗工液」を「配向膜の上に」、「塗工し、乾燥後、紫外線を照射して重合し」て得られたものである。 そうすると、甲1発明の「位相差層」は、「重合成性晶組成物(メルク社製RMS03-013)」を含む組成物が、「配向膜の上に」、配向した状態で「重合し」固定されていることは明らかである。 c 甲1発明の構成(「円偏光板」が得られる点)からみて、「位相差層」は、1/4波長板を構成していると理解できる。 また、甲1発明の「重合性液晶組成物(メルク社製RMS03-013)」は、棒状液晶化合物であることは、技術常識である。 そうすると、技術的にみて、甲1発明の「位相差層」は、水平配向された棒状液晶化合物を用いた、(nx(「位相差層」の「遅相軸」)>ny(「位相差層」の進相軸)=nzである)Aプレートの位相差層を含む、といえる。 d してみると、甲1発明の「重合性液晶組成物(メルク社製RMS03-013)」及び「位相差層」は、本件特許発明1の「重合性液晶化合物」及び「液晶化合物配向層」に相当する。 また、甲1発明は、本件特許発明1の、「液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり」との構成を具備する。 また、本件特許発明1と、甲1発明は、「前記液晶化合物配向層は」、「棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層」「を含む」との構成を具備する点で共通する。 (イ) 転写用フィルム 甲1発明の「支持体」は、「円偏光板」を得る際、「粘着剤付きの直線偏光板と、得られた」甲1発明「の位相差層とを」「貼り合せ」後に「剥離」されるものである。 そうすると、甲1発明の「支持体」は、本件特許発明1の「転写用フィルムとして」とされる「フィルム」に相当する。 (ウ) 上記(ア)と(イ)より、甲1発明の「光学フィルム用転写体」は、本件特許発明1の「液晶化合物配向層転写用積層体」に相当し、本件特許発明1の「液晶化合物配向層転写用積層体」と、甲1発明の「光学フィルム用転写体」は、「液晶化合物配向層と転写用フィルムとして」「フィルムとが積層された」ものである点で共通する。 (エ) 上記(ア)~(ウ)より、本件特許発明1と、甲1発明は、 「 液晶化合物配向層と転写用フィルムとしてフィルムとが積層された液晶化合物配向層転写用積層体であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含む、 液晶化合物配向層転写用積層体。」の構成で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1-1) (転写用フィルムとしての)フィルムが、本件特許発明1においては、「延伸配向」フィルムであるのに対して、甲1発明においては、「シクロオレフィンポリマー99.7wt%と球状シリカ粒子0.2wt%とを混合したA層用混合組成物と、シクロオレフィンポリマー100wt%によるB層用組成物とを使用して、単軸押出機で溶融共押出成形してロール状に巻取り」、「作製し」たものである点。 (相違点1-2) (転写用フィルムとしての)フィルムが、本件特許発明1においては、「離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり」、「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり」、「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり」、「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり」、「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ」「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である」のに対して、甲1発明においては、「良好な」「耐ブロッキング性を有し、B層表面のJIS B0601の規定による算術平均粗さRaが3nm」であるものの、「B層」及び「A層」表面それぞれの「三次元算術平均表面粗さ(SRa)」、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「裏面の最大高さ(SRy)」が上記の各範囲内のものとなっているか不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 (ア) 甲1の【0008】~【0011】、【0037】~【0045】等の記載によれば、「粘着剤付きの直線偏光板と」「貼り合せ」て「得られた円偏光板に」「欠点や位相差ムラがみられ」ない甲1発明は、 「溶融共押出成形」された「支持体」の「B層表面」(「離型面」)の「JISB 0601の規定による算術平均粗さRa」を「3nm」とすることにより、甲1の図4(下記参照)に示すような、凸部(20)の高さ(h)が配向膜(8)の膜厚みより大きい場合に、位相差層(6)(「液晶化合物配向層」)において、この凸部(20)を中心とした円形形状の範囲で塗工液がはじかれ、その結果、この凸部(20)を中心とした円形形状の領域がはじきによる欠陥となって(【0040】~【0041】)、直径Dが100μm程度の欠陥として観察される(【0045】)ことを防止して、はじきによる直径Dが100μm程度の位相差層の欠陥の発生を低減し、 逆側の「A層」表面(「裏面」)を「ブロッキング防止処理面」とすることにより、ブロッキングを防止して生産性を向上し(【0037】~【0039】)、 得られた円偏光板に欠点や位相差ムラはみられず、円偏光板として良好な性能を有する好ましい構成のものと理解されるところ、 甲1発明の構成(B層表面の算術平均粗さRa(3nm)、良好な耐ブロッキング性等)からでは、「支持体」の「B層表面」(「離型面」)の「三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下」、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下」、「最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下」であるとも、その逆側の「A層」表面(「裏面」)の「三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下」、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下」、「最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下」であるともいえない。 ここで、甲1の図4は、以下のものである。 [図:0001434144000004.jpg] (イ) そして、上記(ア)で述べた好ましい構成の甲1発明の設計変更に当たっては積極的な動機付けが必要となるところ、 甲1には、「支持体」及びその表面の(算術平均)粗さについて、 支持体の配向膜側表面の「JISB 0601の規定による算術平均粗さRa」が50nm以下、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下に形成されること(【0037】)、 図4に示される凸部(20)の高さhが配向膜(8)の厚みより小さくなるように、より好ましくは配向膜(8)の厚みの1/2より凸部の高さが小さくなるように作製すれば、欠陥の発生を具体的かつ確実に防止できること、このような凸部(2)にあっては、JIS B0601 ’1994に規定された最大高さRyの計測手法を適用して、AFM又はSEM等を使用して求めた支持体(17)の表面形状のデータを処理して求めることができること、光配向膜(8)を、50nm以上、200nm以下により作製することにより、凸部(20)は、50nm以下の高さhとなるように、より好ましくは25nm以下の高さhとなるように設定することが望まれること(【0042】)が記載されている。 また、甲1には、実施例3あるいは実施例5として、 支持体の配向膜側面の算術平均粗さRaを35nm(【0059】)あるいは48nm(【0068】)とすること、実施例4として、「ブロッキング防止処理面」である「C層」表面の算術平均粗さRaを20nmとすること(【0063】)が記載されている。 しかしながら、甲1の【0042】の、「JIS B0601 ’1994」に規定された「最大高さRyの計測手法の適用」についての記載は、AFM又はSEM等を使用する「最大高さRy」の計測手法を用いて取得した支持体(17)の配向膜(8)側表面の表面形状のデータを処理することにより、図4に示される凸部(20)の高さhを求めることが開示されるにとどまり、支持体の配向膜側表面の「最大高さRy」に着目し、その数値(範囲)により支持体(の配向膜側表面)を規定することを示唆するものでもなければ、支持体の配向膜側表面の「最大高さSRy」の数値(範囲)に着目して支持体を規定することを示唆するものではないし、ましてや、支持体の配向膜側とは反対側表面の「最大高さSRy」の数値(範囲)に着目して支持体を規定することを示唆するものではない。 そうすると、甲1には、直径Dが100μm程度の位相差層の欠陥の発生を低減でき、ブロッキングを防止して生産性を向上できるとの観点から、「支持体」の「B層表面」(「離型面」)について、「B層表面」(「離型面」)の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目すること、「B層表面」(「離型面」)の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」を「5nm以上、120nm以下」、「B層表面」(「離型面」)の「離型面の最大高さ(SRy)」を「15nm以上250nm以下」であるものとすること、 「ブロッキング防止処理面」である逆側の「A層」表面(「裏面」)について、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目すること、「B層表面」(「離型面」)の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」を「10nm以上、327nm以下」、「B層表面」(「離型面」)の「離型面の最大高さ(SRy)」を「20nm以上1200nm以下」であるものとすることは記載も、示唆もされていない。 (ウ) してみると、仮に、「B層表面」(「離型面」)及び逆側の「A層」表面(「裏面」)の凸部、粗さの程度を示すパラメータとして、「表面粗さRa」に基づき、「三次元算術平均表面粗さ(SRa)」に着目しえたとしても、甲1発明において、「三次元算術平均表面粗さ(SRa)」に加えて、「B層表面」(「離型面」)及び逆側の「A層」表面(「裏面」)の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目し、三次元表面粗さに関するこれら「三次元算術平均表面粗さ(SRa)」、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」の3つの数値範囲により、支持体の「B層表面」(「離型面」)及び逆側の「A層」表面(「裏面」)を特定する積極的な動機付けはなく、当該構成とすることが、甲1の記載に基づき当業者が容易になし得たことであるということはできない。 (エ) 申立人が提出した甲3~甲6の記載事項に基づいて検討しても判断は変わらない。 a すなわち、(A)甲3(請求項5、6、10、13、【0001】~【0002】、【0010】~【0011】、【0020】、【0025】、【0028】、【0032】、【0033】、【0051】等)には、ドライフィルムレジスト基材用、積層セラミックコンデンサ-製造工程用、偏光板離型用などの離型・工程用フィルムとしての平滑性や透明性に優れたポリエステルフィルムに関し(【0001】~【0002】)、A面(離型面の裏面)の中心線表面粗さを2~10nm、2~7nm、10点平均粗さRzを30~200nm、40~180nm、80~160nmとすると、走行性、スリット性が不良となりにくく、加工された層に欠点が発生しにくい(【0032】)こと、B面(離型面)の中心線表面粗さRaを0.5~5nm、1~4nmとすると、走行性、スリット性が不良となりにくく、加工された層に欠点が発生しにくくなる(【0033】)こと、実施例1~8として、A面(離型面の裏面)のRaを2.3~4.5nm、Rzを120~240nm、B面(離型面)のRaを2.2~3.1mとする(【0091】【表2】)ことが記載されている。 また、(B)甲4(請求項1、【0001】~【0006】、【0011】、【0015】、【0044】、【0054】【表3】等)には、グリーンシート用、液晶偏光板用、液晶保護フィルム用、フォトレジスト用の離型用ポリエステルフィルム(【0001】~【0004】)に関し、その表面の粗大突起、微細な欠点を少なくして、離型用フィルムから形成される成形体を欠点の少ない良い品質とするために、離型延伸ポリステルフィルムにおいて、A層表面(離型面)の中心線粗さSRa(A)を4~15nm、5~12nm、7~10nm、十点平均粗さSRz(A)を300nm以下、250nm以下、200nm以下、B層表面(離型面の裏面)のSRa(B)を10~30nm、12~22nm、14~20nm、十点平均粗さSRz(B)を600nm以下、500nm以下、450nm以下、SRa(B)がSRa(A)よりも2~15nm、4~12nm、8~11nm大きい(【0005】、【0015】)こと、実施例1~6の離型用(二軸延伸)ポリエステルフィルムにおいて、A層表面(離型面)のSRa(A)を4~10nm、SRz(A)を100~270nm、B層表面(離型面の裏面)のSRa(A)を11~28nm、SRz(B)を230~550nmとする(【0054】【表3】)ことが記載されている。 また、(C)甲5(請求項1、5、6、7、12、17、18、20、【0008】、【0011】~【0012】、【0019】~【0020】、【0023】、【0030】、【0063】、【0073】、【0074】、【0075】、【0093】、【0098】、【0110】~【0113】、【0117】、【0127】~【0129】、【0137】【表1】、【0147】、【0152】【表4】、【0168】、【0177】【表5】等)には、光学フィルムやその保護フルムなどを転写用フィルムから剥がして使用する場合、その剥離後の部材表面の平滑性の観点から、転写用フィルムの表面粗さについて、少なくとも片面のSRaを3~15nmとする(【0075】)こと、転写物を設ける側のフィルム面のSRaを3~10nm、3~6nmとする(【0075】)こと、実施例12、13、20として、積層フィルムの積層膜(離型面)側の表面粗さSRaを6nmとする(【0127】~【0129】、【0137】【表1】、【0147】、【0152】【表4】)こと、実施例29として、積層PETフィルムの積層膜(離型面)側の表面粗さSRaを6nmm、反対側の塗布層を設けた側の表面粗さSRaを5nmとする(【0168】、【0177】【表5】)こと、 転写用(ポリエステル)フィルムの転写面側の、大きな突起や凹みなどを特徴づける3次元十点平均粗さ(SRz)(【0074】、【0075】)を300nm以下とすること、実施例12,13、20、26~28として、積層フィルムの積層膜(離型面)側の表面のSRzを70nm、53nmとすること、実施例29として、積層PETフィルムの積層膜(離型面)側の表面のSRzを70nm、反対側の塗布層を設けた側の表面のSRzを70nmとする(【0137】【表1】、【0152】【表4】、【0168】、【0177】【表5】)ことが記載されている。 また、(D)甲6(請求項1、【0001】、【0005】、【0007】、【0008】、【0010】、【0017】、【0054】、【0069】【表2】等)には、ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、レジストの高解像度を達成するとも、欠点が少なく、品質向上、生産性向上に対応できるように(【0007】)、A層(離型面)の表面粗さSRa(A)を7nm以下、かつ、SRz(A)を100nm未満とすること、B層(裏面)の表面粗さSRa(B)を3nm以上10nm未満、SRz(B)を100nm以上700nm未満とする(【請求項1】、【0008】)こと、該範囲の表面粗さを達成することにより、露光時にフィルム表面での反射の影響を抑える適切な平滑性が得られ、界面高精度なレジストパターンを構成することが可能であり、同時に加工時のハンドリング性が得られる(【0017】)こと、SRa(A)が7nmを超える若しくはSRz(A)が100nmを超える場合、フィルムよりレジスト面に転写される凹凸と凹凸による露光工程での光の入射角が不均一になるにことによる光の反射や散乱の影響により、レジストパターンの抜けが生じることがあり不適である(【0017】)こと、SRa(A)を3nm以上6nm以下、SRz(A)は50nm以上100nm以下とすることが好ましい(【0017】)こと、SRa(B)が3nmを下回る若しくはSRz(B)が100nmを下回ると、レジスト塗布工 程にてハンドリング性が悪化し、塗布が不安定となり、塗布斑が発生することや、塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることによる、巻きズレを起こすことがあるため、不適である(【0017】)こと、SRa(B)が10nmを超える若しくはSRz(B)が700nmを超える場合は、表面に形成された凹凸により露光工程での光の入射角が不均一になることによる光の反射や散乱の影響により、レジストパターンを形成する際のノイズとなるため、不適である(【0017】)こと、SRa(B)は6nm以上10nm以下、SRz(B)は100nm以上500nm以下とすることがより好ましい(【0017】)こと、実施例1~4として、A層(離型面)表面粗さSRa(A)を4.9~5.4nm、SRz(A)を62~70nm、B層(裏面)表面粗さSRa(B)を6.0~7.1nm、SRz(B)を125~457nmとする(【0069】【表2】)ことが記載されている。 b しかしながら、上記aの甲3~甲6に記載された各技術的事項は、グリーンシート用、液晶偏光板用、液晶保護フィルム用、フォトレジスト用、光学フィルムやその保護フルム用の転写用フィルム、離型フィルムに係るものであって、いずれも甲1発明のような配向膜及び(重合性液晶からなる)位相差層用の転写フィルムとは、技術分野や前提の構成が異なるし、支持体表面における配向膜の膜厚より大きい高さhの凸部を中心とする円形形状の範囲で塗工液がはじかれることによる、凸部を中心とした直径Dが100μm程度の円形形状の位相差層の欠陥(図4)の発生を抑制する技術思想を開示するものでもない。 c そうすると、直径Dが100μm程度の位相差層の欠陥の発生を低減するとの観点から甲1発明の設計変更を試みる当業者が、上記の甲3~甲6に記載された各技術的事項を参考にしようと考えることはない、 (オ) 申立人が令和7年10月3日提出の意見書に添付した参考資料1(特開2016-60158号公報)、参考資料2(特開2009-143091号公報)、参考資料3(特開2004-323766号公報)及び参考資料4(特開2015-196262号公報)に基づき検討しても判断は変わらない。 すなわち、参考資料1~3及び参考資料4は、それぞれセラミックシート製造用離型フィルム及び粘着剤層用剥離フィルムに係るものであるから、直径Dが100μm程度の位相差層の欠陥の発生を低減するとの観点から甲1発明の設計変更を試みる当業者が、参考資料1~4に記載の技術を参考にする積極的な動機付けはない。 (カ) 甲7(特開2013-97277号公報)、甲8(再公表特許WO2013/191133号)及び甲9(特開2007-212442号公報)に基づき検討しても判断は変わらない。 (キ) そして、本件特許明細書の【0009】、【0014】、【0026】~【0027】(液晶化合物配向層(位相差層)にピンホール状やキズ上の欠点が生じる原因について)、【0213】(位相差層の欠陥の検査、評価基準について)、【0252】【表1】(特に、実験例9A、14A、15A及び18Aの「ラビング処理配向制御層を有する場合の欠陥」、「光配向制御層を有する場合の欠点」の評価結果(◎)について)の記載によれば、本件特許発明1の液晶化合物配向層転写用積層体は、相違点1-2に係る構成を具備することにより、肉眼ではもちろん、20倍のルーペを用いた観察(【0213】)であっても輝点がほとんど認められない程度にまで液晶化合物配向層の欠点の発生を減少させることができるとの効果を奏する、と理解できるところ、このような効果は、最先の先の出願時に本件特許発明1の構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 (ク) してみると、甲1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の構成とすることが、甲1、甲3~甲9及び参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ケ) 申立人が令和7年10月3日に提出した意見書における主張について a 同意見書における申立人の主張は以下のとおりである。なお、参考のため、主張に対応する同意見書の項番を丸括弧内に記載している。 (a) 「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下」と特定しているが、当該数値は甲1に記載されており、また、甲3~甲6のように従来周知である(「(3-3-1)訂正発明1について」イ)、 「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり」と特定しているが、当該数値は甲1記載されており、また、甲3~甲6のように従来周知である(同ウ)、 「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり」と特定しているが、当該数値は甲1(Ry≦50nm、段落42)に記載されており、また、参考資料1(最大突起高さ(P)≦30nm(請求項1、表1))、参考資料2(SRmax:130~250nm(請求項1、表1))、参考資料3(Rmax:182nm、233nm、140nm(表1:実施例1、3、4))、参考資料4(最大突起高さRp:194nm(段落25、段落140))のように従来周知である(同エ)、 「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である」と特定しているが、光学・電子部品用転写用積層体において、裏面の最大高さを1200nm以下とすることは当然の課題又は条件であり、参考資料1(最大突起高さ(P)≦800nm(請求項1、表1))、参考資料2(SRmax:130~250nm(請求項1,表1))、参考資料3(Rmax:182nm(実施例1)、305nm(実施例2)、233nm(実施例3)、140nm(実施例4)(表1))、参考資料4(最大突起高さRp:194nm(段落140))のように従来周知である(同オ)、 以上のように、離型面及び裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)、三次元十点平均表面粗さ(SRz)、最大高さ(SRy)は、甲1に記載されており、又は従来周知の技術であるから、訂正発明1は、甲1及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である(同カ)。 (b) 高品質が求められる転写用積層体において、ピンホール状の欠点の軽減・防止が求められることは、甲3の段落23、甲4の段落25、甲9の段落27、参考資料1の段落1、参考資料2の段落3、参考資料3の段落78に記載されているように技術常識である(同キ)。 (c) 本件の出願当初明細書等では、「配向フィルムの離型面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、30nm以下」(請求項1)であれば、「ピンホールなどの欠点の発生が減少された位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる転写用フィルムを提供」という発明の課題を解決すると述べていたのであり、離型面の表面粗さ(SRa)以外は適宜の設計的事項と認識されていたものと考えられる(同ク)。 (d) 甲1は、支持体17表面における微細な凹凸形状がはじきの発生原因となることに着目した技術であることから、発明の課題がはじきによる欠陥の発生を低減することと記載されているだけであり、当該発生原因である微細な凹凸形状を制御することによりピンホールを軽減させ、防止することは、上記した甲3、甲4、甲9、参考資料1~3のように当業者に周知の課題であり、甲1に当然に内在している課題である(同ケ)。 (e) 甲1には、少なくとも離型面の算術平均粗さRaを3nmとし、最大高さを50nm以下とし、裏面をブロッキング防止処理面とすることが記載されていることから(段落37、42、53)、甲1では、「ラビングが不十分であることにより生じる欠点」「配向が乱れることにより生じる欠点」「液晶化合物層の厚さのばらつきによる欠点」が当然に解決されている、 訂正発明1は、裏面のSRyを特定しているが、当該SRyはピンホールを軽減・防止するための、SRzと相関する指標であり、SRzが小さければSRyも小さくなり、SRzを同等かつ異なる指標で規定したものにすぎない、 SRyが1200nmという上限は、参考資料1~4に記載された技術常識に係るSRy値をはるかに超えており、実際的に技術的意味のない数値である(同コ)。 (f) 特許権者は、甲3~甲6を甲1に組み合わせる動機付けがないと主張しているが、訂正発明1は従来周知の技術の寄せ集めであって、何らかの新たな作用効果を奏するものでもなく、液晶化合物配向層でも周知技術がそのまま使用できることを確認したにすぎず、動機付けの議論を要しないものである(審査基準第III部第2章第2節進歩性「3.1.2 動機付け以外に進歩性が否定される方向に働く要素」(1)設計変更等、(2)先行技術の単なる寄せ集め)(同サ)。 b 申立人の主張についての判断 上記(ア)~(エ)で述べたとおり、得られた円偏光板に欠点や位相差ムラはみられず、円偏光板として良好な性能を有する点で好ましい構成の甲1発明の設計変更に当たっては積極的な動機付けが必要となるところ、甲1には、直径Dが100μm程度の位相差層の欠陥の発生を低減でき、ブロッキングを防止して生産性を向上できるとの観点から、「支持体」の「B層表面」(「離型面」)について、三次元算術平均表面粗さ(SRa)に加え、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目し、これらを所定の範囲とし、かつ、「ブロッキング防止処理面」である逆側の「A層」表面(「裏面」)について、三次元算術平均表面粗さ(SRa)に加え、「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目し、これらを所定の範囲のものとすることは記載も、示唆もされていない。また、甲1発明の設計変更を試みる当業者が、技術分野や前提が異なる甲3~甲6に記載の各技術的事項を参考にする積極的な動機付けもない。 さらに、上記(キ)で述べたとおり、本件特許発明1は、肉眼ではもちろん、20倍のルーペを用いた観察(【0213】)であっても輝点がほとんど認められない程度にまで液晶化合物配向層の欠点の発生を減少させることができるとの、最先の先出願時に本件特許発明1の構成が奏する効果として顕著な効果を奏するものである。 してみると、同意見書における申立人の上記a(a)~(f)の主張を採用することはできない。 (コ) 小括 以上のとおりであるから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 (4) 本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これにさらに限定を付加したものである。 そうすると、上記(3)イで述べたとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、同様な理由により、本件特許発明4は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 (5) 本件特許発明10について ア 対比 本件特許発明10と、甲1円偏光板製造方法発明を対比すると、両発明は、上記(3)ア(エ)で抽出した相違点1-2と同じ点で少なくも相違する。 イ 判断 上記(3)イで相違点1-2について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明10は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 (6) 本件特許発明12~15について 本件特許発明12~15は、いずれも「請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法」であるところ、上記(3)及び(4)で述べたとおり、本件特許発明1及び本件特許発明4は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、同様な理由により、本件特許発明12~本件特許発明15は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 (7) 本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と、甲1製造方法発明を対比すると、両発明は、少なくとも上記(3)ア(エ)で抽出した相違点1-2と同様な点で少なくとも相違する。 イ 判断 上記(3)イで相違点1-2について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明5は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 (8) 本件特許発明6及び本件特許発明9について 本件特許発明6及び本件特許発明9は、本件特許発明5の構成を全て具備し、これにさらに限定を付加したものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、本件特許発明5は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、本件特許発明6及び本件特許発明9は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (9) 本件特許発明11について ア 対比 本件特許発明11と、甲1円偏光板製造方法発明を対比すると、両発明は、両発明は、少なくとも上記(3)ア(エ)で抽出した相違点1-2と同様な点で少なくとも相違する。 イ 判断 上記(3)イで相違点1-2について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明11は、甲1に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~参考資料4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 2 取消理由2(明確性)について 本件訂正請求による訂正により、取消理由の対象となっていた請求項8が削除されるとともに、請求項9及び請求項11の記載において、上述のとおり請求項8が削除されたことに伴い、引用する請求項から請求項8が削除された。 してみると、請求項9及び請求項11の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 したがって、請求項8は削除され、本件特許発明9、11は明確であるから、当該取消理由2(明確性)は解消した。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 甲1に基づく新規性(特許法第29条第1項第3号)について (1) 特許異議申立書2~8頁及び31~43頁における申立人の主張 申立人は、甲1の【0024】、【0029】、【0037】、【0053】、【0063】及び実施例4等の記載から、甲1に記載された発明を認定し、 本件第1発明~本件第11発明は、甲1に記載された発明であると、主張する。 (2) 甲1に基づく新規性についての判断 しかしながら、上記「第5」(3)アで述べたとおり、本件特許発明1と、甲1発明は、少なくとも相違点1-2において実質的に相違する。 同様に、上記「第5」(5)アで述べたとおり、本件特許発明10と、甲1円偏光板製造方法発明は、少なくとも相違点1-2で実質的に相違し、上記「第5」(7)アで述べたとおり、本件特許発明5と、甲1製造方法発明は、少なくとも相違点1-2と同様な点で実質的に相違し、上記「第5」(9)アで述べたとおり、本件特許発明11と、甲1円偏光板製造方法発明は、少なくとも相違点1-2と同様な点で実質的に相違する。 してみると、本件特許発明1、本件特許発明5、本件特許発明10あるいは本件特許発明11は、甲1に記載された発明であるということはできない。 同様な理由により、請求項1の記載を引用する本件特許発明4、請求項5の記載を引用する本件特許発明6、あるいは、請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する本件特許発明9についても、甲1に記載された発明であるということはできない。 2 甲2(特開2013-109090号公報)に基づく進歩性(特許法第29条第2項)について (1) 特許異議申立書49~64頁における申立人の主張 申立人は、甲2の[0074]、[0116]、[0124]、[0011]、[0105]から甲2に記載された発明を認定し、 本件第1発明~15発明は、甲2に基づいて当業者が容易に想到し得た発明であると、主張する。 (2) 甲2に基づく進歩性についての判断 ア 甲2の記載 甲2には、以下の事項が記載されている。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を2種以上含有する組成物から形成される偏光膜であり、 一方向の配向方向を有し、 下記の式(I)~(V) 0.3≦A450/A550<0.8(I) 0.3≦A450/A650<1.0(II) 0.5≦A450≦2(III) 1≦A550≦3(IV) 1≦A650≦3(V) (式中、 A450は、波長450nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A550は、波長550nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A650は、波長650nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度をそれぞれ表す。) で示される関係をすべて満たす吸収スペクトルを有する偏光膜。 【請求項2】 前記組成物が重合性スメクチック液晶化合物をさらに含有する請求項1記載の偏光膜。 ・・・略・・・ 【請求項5】 請求項1~4のいずれか記載の偏光膜とλ/4層とを有し、 以下の(A1)及び(A2)の要件を満たす円偏光板。 (A1)前記偏光膜の吸収軸と、前記λ/4層の遅相軸とのなす角度が、略45°であること; (A2)波長550nmの光で測定した、前記λ/4層の正面リタデーションの値が100~150nmの範囲であること」 (イ) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、偏光膜、円偏光板・・・略・・・に関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、従来の偏光膜を含む円偏光板を備えた有機EL画像表示装置では、該偏光膜が有機EL発光素子からの光を、その光量の半分程度を吸収してしまうという問題があった。・・・略・・・しかしながら、前記問題を解消し得る円偏光板及び偏光膜は、これまで何ら実現されていなかった。 ・・・略・・・ 【発明の効果】 【0006】 本偏光膜によれば、有機EL画像表示装置に用いたとき、有機EL発光素子からの光の吸収、特に波長450nm付近の光の吸収を低減した円偏光板(本円偏光板)を提供することができる。 ・・・略・・・ 【発明を実施するための形態】 【0008】 本偏光膜は上述のとおり、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を2種以上含有する組成物から形成されたものであり、 一方向の配向方向を有し、 下記の式(I)~(V) 0.3≦A450/A550<0.8 (I) 0.3≦A450/A650<1.0 (II) 0.5≦A450≦2 (III) 1≦A550≦3 (IV) 1≦A650≦3 (V) (式中、 A450は、波長450nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A550は、波長550nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A650は、波長650nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度をそれぞれ表す。) の関係をすべて満たす吸収スペクトルを有することを特徴とするものである。 本偏光膜は、後述する本偏光膜を含む本円偏光板とすることにより、高寿命の本有機EL表示装置を実現できる。 ・・・略・・・ 【0011】 本発明者らは、従来から広く用いられる前記ヨウ素-PVA偏光板は、およそ波長470nmと波長600nmに極大吸収を有する2つのヨウ素錯体が生じるため、かかるヨウ素錯体により可視光全域の吸収が生じることから、波長470nmの光の吸収を選択的に低減させることは困難であると考え、偏光膜に含まれる色素について検討した結果、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種含有する組成物(以下、場合により「偏光膜形成用組成物」という。)から形成される偏光膜が、波長470nmの光の吸収を選択的に低減させることを見出し、本発明に至った。 以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好ましい形態である、二色性色素材料と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する組成物(以下、場合により「偏光膜形成用組成物」という)から形成される偏光膜及びその製造方法、並びに、本円偏光板及びその製造方法を説明する。 ・・・略・・・ 【0012】 <二色性色素> 前記偏光膜形成用組成物は、上述のとおり、2種以上の二色性色素を含有する。ここでいう二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。このような性質を有するものであれば、二色性色素は特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。この染料は複数種用いてもよく、顔料も複数種用いてもよく、染料と顔料とを組み合わせてもよい。 ・・・略・・・ 【0029】 以上、前記偏光膜形成用組成物が含有する二色性色素について、その好ましい例を説明したが、中でも、該偏光膜形成用組成物が含有する二色性色素はアゾ色素(1)であると好ましく、互いに異なる極大吸収波長を有するアゾ色素(1)を少なくとも2 種含有するとさらに好ましい。 ・・・略・・・ 【0034】 <重合性液晶化合物> 前記偏光膜形成用組成物は、実用的な強度の偏光膜が得られる点で、重合性液晶化合物を含有すると好ましい。該重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶状態を示す化合物である。重合性基とは、該重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。偏光性能から重合性液晶化合物の中では、・・・略・・・重合性スメクチック液晶化合物がより好ましい。 ・・・略・・・ 【0053】 <溶剤> 偏光膜形成用組成物は、溶剤を含んでいてもよい。 ・・・略・・・ 【0073】 <本偏光膜の形成方法> 次に、前記偏光膜形成用組成物から本偏光膜を形成させる方法について説明する。かかる方法では、該偏光膜形成用組成物を基材上に、好ましくは透明基材上に塗布することにより本偏光膜を形成することが好ましい。 【0074】 <透明基材> 前記透明基材とは光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する基材である。・・・略・・・具体的に、かかる透明基材を例示すると、ガラス基材や、プラスチック製の透光性シート及び透光性フィルムを挙げることができる。なお、この透光性シートや透光性フィルムを構成するプラスチックとしては、例えば、・・・略・・・ポリエチレンテレフタレート・・・略・・・などのプラスチックが挙げられる。・・・略・・・かかる透明基材を用いて、本偏光膜を製造するに当たり、該透明基材を運搬したり、保管したりする際に破れなどの破損を起こすことなく容易に取り扱える点で、該透明基材に支持基材などを貼り付けておいてもよい。また、後述するが、本偏光膜から円偏光板を製造する際に、該透明基材に位相差性を付与することがある。この場合には、透明基材として高分子フィルムを準備し、該高分子フィルムを延伸処理などにより、当該高分子フィルムに位相差性を付与して、位相差性フィルムとした後、この位相差性フィルムを透明基材として用いればよい。なお、透明基材(高分子フィルム)に位相差性を付与する方法は追って説明する。 ・・・略・・・ 【0081】 透明基材として用いるうえで、高分子フィルムの厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、及び、十分な透明性が確保できる点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。・・・略・・・。本偏光膜を、後述する円偏光板として使用する場合は、当該円偏光板を用いる表示装置がモバイル用途であることが想定されるため、フィルムの厚みは20~100μm程度が特に好ましい。なお、延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前のフィルムの厚みや延伸倍率によって決定される。 【0082】 <配向膜> 本偏光膜の製造に用いる基材には、配向膜が形成されていることが好ましい。その場合、偏光膜形成用組成物は配向膜上に塗布することとなる。・・・略・・・かかる配向膜としては、配向性ポリマーを用いることができる。 ・・・略・・・ 【0087】 上記配向膜に対して配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行うこと(ラビング法)が好ましい。 ・・・略・・・ 【0089】 また、いわゆる光配向膜も利用することができる。 ・・・略・・・ 【0094】 <本偏光膜の製造方法> 前記(透明)基材上に形成された配向膜上に、前記偏光膜形成用組成物を塗布して塗布膜を得る。該配向膜上に偏光膜形成用組成物を塗布する方法(塗布方法)としては例えば、配向性ポリマーあるいは光反応性基を有するポリマー(モノマー)を透明基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。なお、かかる方法において、該偏光膜形成用組成物としては、重合性液晶化合物として重合性スメクチック液晶化合物を含有する場合を中心に説明する。 ・・・略・・・ 【0099】 以上のような光重合を行うことにより、前記重合性スメクチック液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは、すでに例示したような高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、本偏光膜が形成される。重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる本偏光膜は、前記アゾ系色素(1)の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光膜、すなわち、ネマチック相の液晶状態を保持したままで重合性液晶化合物などを重合させて得られる偏光膜と比較してはるかに偏光性能が高いという利点がある。 【0100】 本偏光膜の厚みは、0.5μm以上10μm以下の範囲が好ましく、1μ m以上5μm以下がさらに好ましい。 ・・・略・・・ 【0101】 かくして形成された本偏光膜は、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種、好ましくは、アゾ色素(1)を少なくとも2 種、特に好ましくは前記表1 に示すアゾ色素(1)の組み合わせを含有する偏光膜形成用組成物を用いたことにより、前記の式(I)~式(V)の関係を満たす吸収スペクトルを有するものとなる。特に、該偏光膜形成用組成物として、前記表1 に示すアゾ色素(1)の組み合わせを含有するものを用いれば、一層容易に前記の式(I)~式(V)の関係を満たす吸収スペクトルを有する本偏光膜を得ることができる。 ・・・略・・・ 【0104】 <本偏光膜(本円偏光板)の連続的製造方法> 以上、本偏光膜の製造方法の概要を説明したが、商業的に本偏光膜を製造する際には、連続的に本偏光膜を製造できる方法が求められる。このような連続的製造方法はRoll to Roll形式によるものであり、場合により、「本製造方法」という。なお、本製造方法では基材として、位相差性を付与された透明基材を用いる場合を中心に説明する。 【0105】 本製造方法は例えば、 透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、 該第1ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程と、 前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、 該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去して、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、 該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、 該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と 該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、 該第2乾燥被膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、偏光膜を連続的に得る工程と、 連続的に得られた偏光膜を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と を有する。ここで図1を参照して、本製造方法の要部を説明する。 ・・・略・・・ 【0112】 前記乾燥炉212Bを経たフィルムは、偏光層形成用組成物に含まれていた溶剤が十分除去され、第2乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま、光照射装置213Bへと搬送される。該光照射装置213Bによる光照射により、該重合性スメクチック液晶化合物は前記液晶状態を保持したまま、光重合して、本偏光膜が配向膜上に連続的に形成される。 ・・・略・・・ 【0116】 以上、透明基材/光配向層/本偏光膜の積層体の形態である場合を中心に、本偏光膜の構成及び製造方法を説明してきたが、上述のとおり、本偏光膜は、かかる積層体から光配向層や透明基材を剥離してもよいし、該積層体に、透明基材/ 光配向層/ 本偏光膜本以外の層又は膜を積層した形態にしてもよい。これらの層及び膜としては、すでに述べたように、本偏光膜は位相差フィルムをさらに備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムをさらに備えていてもよい。 【0117】 また、透明基材自体を位相差フィルムとすることで、位相差フィルム/光配向層/本偏光膜の形態の円偏光板あるいは楕円偏光板とすることもできる。例えば、位相差フィルムとして1軸延伸した1/4波長板を用いた場合、偏光UVの照射方向を透明基材の搬送方向に対して略45°となるように設定することで、Roll-to-Rollで円偏光板を作製することが可能である。このように円偏光板を製造する際に用いられる1/4波長板は、可視光に対する面内位相差値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有するものが好ましい。 【0118】 また、位相差フィルムとして1/2波長板を用いて、その遅相軸と偏光膜の吸収軸の角度をずらして設定したような直線偏光板ロールを作製し、該偏光膜を形成した面と反対側に1/4波長板をさらに形成することで広帯域の円偏光板とすることも可能である。 【0119】 以上、説明した本製造方法において、透明基材を、位相差性を有しない基材に置き換えてもよい。この場合、本円偏光板を製造するには、まず、本製造方法実施後に得られた、基材(位相差性を有しない)/光配向層/本偏光膜の積層体から、本偏光膜を剥離して巻き取り体225にする。一方、位相差フィルムが巻き取られている巻き取り体230を準備する。そして、巻き取り体225から本偏光膜を、巻き取り体230から位相差フィルムを連続的に巻き出して、これらを適当な方法で貼合すれば、本円偏光板を製造することができる。この方法の要部を図3に示す。この場合も、位相差フィルムと本偏光膜の配向方向に対して、略45°となるように貼合すればよい。なお、本偏光膜と、位相差フィルムとを貼合する際には、適当な粘着剤を用い、該粘着剤から形成される粘着層を介して、本偏光膜と、位相差フィルムとを貼合してもよい。 ・・・略・・・ 【0121】 <本偏光膜の用途> 本偏光膜は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に極めて有用な本円偏光板の製造を可能とする。 ・・・略・・・ 【0124】 図5の(A)は本円偏光板110の第1実施形態を模式的に表す断面図である。この第1実施形態は、本偏光膜3上にさらに位相差層(位相差フィルム)4を設けた本円偏光板110である。図6の(B)は本円偏光板110の第2実施形態を模式的に表す断面図である。この第2実施形態は、偏光子を製造する際に用いた透明基材1として、予め位相差性が付与されている透明基材(位相差フィルム)を用いることで、透明基材1自体が位相差層4としての機能を兼ね備えたものとした本円偏光板110である。 ・・・略・・・ 【実施例】 【0144】 ・・・略・・・ 【0145】 本実施例においては、下記の重合性液晶化合物を用いた。 化合物(2-6)(下記式(2-6)で表される化合物) ・・・略・・・ [図:0001434144000005.jpg] ・・・略・・・ 【0149】 実施例1 〔偏光層形成用組成物の調製〕 ・・・略・・・ 【0151】 〔本偏光膜の製造及び評価〕 1.配向層の形成 透明基材としてガラス基板を用いた。 該ガラス基板上に、ポリビニルアルコール・・・略・・・・の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向層を形成した。・・・略・・・かかるラビング処理により、ガラス基板上に配向層が形成された積層体1を得た。 【0152】 2.偏光膜の形成 積層体1の配向層上に、前記偏光層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、前記配向層上に乾燥被膜を形成した。かかる乾燥被膜において、含まれる重合性液晶組成物(重合性液晶化合物)の液晶状態は、スメクチックB相であった。次いで、・・・略・・・紫外線を・・・略・・・照射することにより・・・略・・・重合性液晶化合物を、前記重合性液晶組成物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。 ・・・略・・・ 【0159】 実施例9 〔位相差フィルム上への光配向層の作製〕 透明基材として位相差フィルム(一軸延伸フィルムWRF-S(変性ポリカーボネート系樹脂)、位相差値137.5nm、厚み50μm、帝人化成(株)製)を用い、下記式(3)の光配向ポリマーをキシレンに5%溶解させた液をバーコート法により塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に該位相差フィルムの遅相軸に対して45°の方向に偏光UVを照射して光配向膜を得た。 ・・・略・・・ 【0160】 〔円偏光板の作製〕 該光配向膜上に、実施例1で調製した偏光層形成用組成物を、バーコート法により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却した。かかる乾燥被膜において、含まれる重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。次いで、・・・略・・・の紫外線を、偏光層形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。」 (ウ) 「【図4】 [図:0001434144000006.jpg] 【図5】 [図:0001434144000007.jpg] 」 イ 甲2に記載された発明 (ア) 甲2の請求項1、2、【0001】、【0004】、【0008】、【0011】~【0012】、【0034】、【0074】、【0082】、【0094】、【0099】、【0104】、【0116】及び【0119】等の記載からみて、甲2には、「透明基材/光配向層/本偏光膜」からなる「積層体」の発明として、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲2発明」という。)。 「 透明基材/光配向層/本偏光膜からなる積層体であって、(【0116】) 本偏光膜は、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する偏光膜形成用組成物を、透明基材上に形成された配向膜上に塗布して塗布膜を得て、重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られたものであり、(【0008】、【0011】【0012】、【0034】、【0094】、【0099】) 本偏光膜は、一方向の配向方向を有し、 下記の式(I)~(V) 0.3≦A450/A550<0.8 (I) 0.3≦A450/A650<1.0 (II) 0.5≦A450≦2 (III) 1≦A550≦3 (IV) 1≦A650≦3 (V) (式中、 A450は、波長450nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A550は、波長550nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A650は、波長650nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度をそれぞれ表す。) の関係をすべて満たす吸収スペクトルを有する(【0008】)、 透明基材/光配向層/本偏光膜からなる積層体。」 (イ) 甲2の上記の各記載からみて、「透明基材/光配向層/本偏光膜からなる積層体」を製造する方法の発明として、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲2製造方法発明」という。)。 「互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する偏光膜形成用組成物を、透明基材上に形成された配向膜上に塗布して塗布膜を得て、重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して、本偏光膜を得る、 透明基材/光配向層/本偏光膜からなる積層体の製造方法であって、 本偏光膜は、一方向の配向方向を有し、 下記の式(I)~(V) 0.3≦A450/A550<0.8 (I) 0.3≦A450/A650<1.0 (II) 0.5≦A450≦2 (III) 1≦A550≦3 (IV) 1≦A650≦3 (V) (式中、 A450は、波長450nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A550は、波長550nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、 A650は、波長650nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度をそれぞれ表す。) の関係をすべて満たす吸収スペクトルを有する(【0008】)、 透明基材/光配向層/本偏光膜からなる積層体の製造方法。」 (ウ) 甲2の上記の各記載からみて、甲2には、「本円偏光板」「の連続的製造方法」の発明として、「透明基材(位相差性を有しない)/光配向層/本偏光膜からなる積層体」(「甲2発明」)「から、本偏光膜を剥離して巻き取り体225にし、 位相差フィルムが巻き取られている巻き取り体230を準備し、巻き取り体225から本偏光膜を、巻き取り体230から位相差フィルムを連続的に巻き出して、これら貼合して、本円偏光板を製造する、 本円偏光板の連続的製造方法。」の発明が記載されているものと認められる(以下「甲2円偏光板製造方法発明」という。)。 ウ 本件特許発明1について (ア) 対比 a 重合性液晶化合物、液晶化合物配向層 (a) 甲2発明の「積層体」は、「透明基材/光配向層/本偏光膜からなる」。 (b) 甲2発明の「本偏光膜」は、「互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する偏光膜形成用組成物を」、「配向膜上に塗布して塗布膜を得て、重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られたものであ」る。 そうすると、甲2発明の「本偏光層」は、「重合性スメクチック液晶化合物」「を含有する」「偏光膜形成用組成物」が、「スメクチック相の液晶状態」に配向した状態で「重合し」固定されているといえる。 (c) 甲2発明の「二色性色素材料」、「重合性スメクチック液晶化合物」及び「本偏光層」は、それぞれ本件特許発明1の「二色性色素」、「重合性液晶化合物」及び「液晶化合物配向層」に相当する。 また、上記(b)より、甲2発明は、本件特許発明1の「液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり」との構成を具備する。 また、本件特許発明1と、甲2発明は、「前記液晶化合物配向層は」、「重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜」「を含む」との構成を具備する点で共通する。 b 転写用フィルム 本件特許発明1の「転写用フィルムとして延伸配向フィルム」と、甲2発明の「透明基材」は、(積層体の)基材である点で共通する。 c 上記aとbより、本件特許発明1の「液晶化合物配向層転写用積層体」と、甲2発明の「積層体」は、「液晶化合物配向層と」基材「とが積層された」「積層体」である点で共通する。 d 上記a~cより、本件特許発明1と、甲2発明は、 「 液晶化合物配向層と基材とが積層された積層体であって、 前記液晶化合物配向層は、重合性液晶化合物を含む組成物が配向した状態で固定されたものであり、 前記液晶化合物配向層は少なくとも、 重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜; 棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層; ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層 のいずれかを含む、 積層体。」の構成で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2-1) 基材が、本件特許発明1においては、「転写用フィルムとして延伸配向フィルム」であって、「離型面の三時元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり」、「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり」、「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり」、「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり」、「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ」「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nmである」のに対して、甲2発明においては、そのように特定されていない点。 (イ) 判断 相違点2-1について検討する。 a 甲2には、「本偏光膜は、かかる積層体から光配向層や透明基材を剥離してもよいし、該積層体に、透明基材/ 光配向層/本偏光膜本以外の層又は膜を積層した形態にしてもよい。これらの層及び膜としては、すでに述べたように、本偏光膜は位相差フィルムをさらに備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムをさらに備えていてもよい。」(【0116】)ことが記載されているものの、透明基材を転写用部材として、本偏光膜(及び光配向膜)を転写することは記載も示唆もされていない。 また、甲2には、実施例9として、透明基材として位相差フィルム(一軸延伸フィルムWRF-S(変性ポリカーボネート系樹脂)、位相差値137.5nm、厚み50μm、帝人化成(株)製)を用い、光配向ポリマーを塗布して光配向膜を得て、該光配向膜上に、偏光膜を形成して、円偏光板を形成することが記載されている(【0159】~【0160】)ものの、一軸延伸フィルム(透明基材)を1/4波長板として、1/4波長板上に光配向膜及び本偏光膜を形成して円偏光板と形成するものであるから、当該透明基材は転写用フィルムとはなり得ない。 そうすると、甲2には、引用発明の透明基材を、転写用フィルムとしての延伸配向フィルムとする動機付けはない。 b 仮に甲1の記載を参考にできたとしても、透明基材の離型面について、離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)に加えて、離型面の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目すること、離型面の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」を「5nm以上、120nm以下」、離型面「最大高さ(SRy)」を「15nm以上250nm以下」であるものとすること、 「ブロッキング防止処理面」である裏面について、裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)に加えて、裏面の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」及び「最大高さ(SRy)」にも着目すること、裏面の「三次元十点平均表面粗さ(SRz)」を「10nm以上、327nm以下」、裏面の「最大高さ(SRy)」を「20nm以上1200nm以下」との構成に至らないことは、既に述べたとおりである。 c 申立人が提出した甲3~甲9及び参考資料1~参考資料4の記載事項に基づいて検討しても判断は変わらない。 d してみると、上記bとcより、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これにさらに限定を付加したものである。 そうすると、上記ウ(イ)で述べたとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、同様な理由により、本件特許発明4は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 オ 本件特許発明10について (ア) 対比 本件特許発明10と、甲2円偏光板製造方法発明を対比すると、両発明は、上記ウ(ア)で抽出した相違点2-1と同じ点で少なくとも相違する。 (イ) 判断 上記ウ(イ)で相違点2-1について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明10は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 カ 本件特許発明12~15について 本件特許発明12~15は、いずれも「請求項1または4に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法」であるところ、上記ウ~エで述べたとおり、本件特許発明1及び本件特許発明4は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、同様な理由により、本件特許発明12~本件特許発明15は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 キ 本件特許発明5について (ア) 対比 本件特許発明15と、甲2製造方法発明を対比すると、両発明は、少なくとも上記ウ(ア)で抽出した相違点2-1と同様な点で相違する。 (イ) 判断 上記ウ(イ)で相違点2-1について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明5は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 ク 本件特許発明6及び本件特許発明9について 本件特許発明6及び本件特許発明9は、本件特許発明5の構成を全て具備し、これにさらに限定を付加したものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、本件特許発明5は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということができない以上、本件特許発明6及び本件特許発明9は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ケ 本件特許発明11について (ア) 対比 本件特許発明11と、甲2円偏光板製造方法発明を対比すると、両発明は、少なくとも上記ウ(ア)で抽出した相違点2-1と同様な点で少なくとも相違する。 (イ) 判断 上記ウ(イ)で相違点2-1について述べた理由と同様な理由により、本件特許発明11は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲9、参考資料1~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。 3 サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)について (1) 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書15~18頁及び65~67頁において、サポート要件違反について、以下のとおり主張する。 ア 本件発明の課題は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムであって、ピンホールなどの欠点の発生が減少された位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる転写用フィルムを提供することである(本件特許明細書の段落9)。 イ 本件第1発明は、延伸配向フィルムの材料を特定していない、同様に、本件第4、9発明は、「ポリエステル」としか特定していないが、発明の詳細な説明には「PET」しか記載されておらず、また、全ての実施例が「PET」を用いており、「PET」以外のすべての材料で発明の課題を達成するとは考えられない、 本件第2、3、5~8、10~15発明についても同様である。 ウ 本件第1発明は、「前記液品化合物配向層は少なくとも、重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜;棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層;ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層」と特定しているが、発明の詳細な説明には、棒状液晶化合物液晶化合物を用いたAプレートの位相差層の実施例しか記載されておらず、「重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜」、「ディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層」、「ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層」によって発明の課題を達成するとは考えられない、 本件第2~15発明についても同様である。 エ 本件第1発明は、「前記延伸配向フィルムは離型面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下」と特定しているが、発明の詳細な説明における実施例1A、3A、4A、7Aが当該表面粗さ(SRa)の範囲に該当しておらず、本件第1発明と発明の詳細な説明とが矛盾している、 なお、表1の説明では、実験例1A~18Aのいずれが本件発明の実施例に該当するのか不明確である、 本件第1発明は、「裏面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、45nm以下である」と特定しているが、発明の詳細な説明における実施例4A、17Aは当該表面粗さ(SRa)の範囲に該当しておらず、本件第1発明と発明の詳細な説明とが矛盾している、 本件第2~15発明についても同様である。 オ 本件第2発明は、「前記延伸配向フィルムの離型面の10点表面粗さ(SRz)が5nm以上、200nm以下」と特定しているが、10点表面粗さ(SRz)が200nmの場合に、被転写層のピンホール、傷等の欠陥が防止できるとは考えられない、 本件発明の詳細な説明の表1によれば、離型面SRzが196nm、105nm(それぞれ実施例4A、17A)では重ね合わせ後の欠点1、2の評価が「×」となっており、発明の課題を達成していない。なお、表1の説明では、実験例1A~18Aのいずれが本件発明の実施例に該当するのか不明確である、 よって、本件第2発明は、発明の課題を達成しない多くの態様を包含しており、サポート要件に違反している、 本件第3、4、7~15発明についても同様である。 カ 本件第3発明は、「前記延伸配向フィルムの裏面の10点表面粗さ(SRz)が10nm以上、1500nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶化合物配向層転写用積層体。」と特定しているが、10点表面粗さ(SRz)が1500nmの場合に、液晶化合物配向層のピンホール等の欠陥が防止できるとは考えられない。 また、令和7年10月3日提出の意見書において、サポート要件について、申立人は、以下のとおり主張する。 キ 訂正発明1は、離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyの数値範囲を特定しているが、実験例1A~18Aのうち、当該数値範囲を満たすものは、実験例9A、14A、15A及び18Aの4例しかなく、しかも、境界値から(上限又は下限)から大きく離れており、当業数値範囲の全てにおいて発明の課題を解決し得るとは考えられない。 [図:0001434144000008.jpg] ク 各数値範囲の全ての組合せの全てで(例えば、6つの粗さが各数値範囲の最高値のケース)、表1記載の欠点評価が得られることを当業者が実施できる程度に記載されているといえない。 (2) サポート要件違反についての判断 ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるべきである。 これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。 イ 判断 (ア) 本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の【0009】の記載によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムであって、ピンホールなどの欠点の発生が減少された位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる転写用フィルムを提供することであると認められる。 (イ) 本件特許発明について 本件特許発明は、「第3 本件特許発明」で述べたとおりものである。 (ウ) 当該発明の課題を解決できると認識できる範囲できる範囲 a 本件訂正請求による訂正により、請求項2、3、7、8が削除され、本件特許発明1及び本件特許発明4は、延伸配向フィルムについて、 「離型面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下であり」、「離型面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が5nm以上、120nm以下であり」、「離型面の最大高さ(SRy)が15nm以上250nm以下であり」、 「裏面の三次元算術平均表面粗さ(SRa)が5nm以上、40nm以下であり」、「裏面の三次元十点平均表面粗さ(SRz)が10nm以上、327nm以下であり、かつ」「裏面の最大高さ(SRy)が20nm以上1200nm以下である」との発明特定事項を具備することとなった。 b ここで、発明の詳細な説明に以下の記載がある。 (a) 「フィルム基材の表面の微小構造が、これらのフィルム基材の上に形成される液晶化合物からなる位相差層中の液晶化合物の配向状態や位相差に大きな影響を与え、設計通りの配向状態や位相差が得られない場合があり、そのためピンホールなどの欠点が発生することを見出した。」、「これらの微小構造の中でも、特定のパラメータで表わされるフィルム基材の表面粗さに着目し、この表面粗さが特定の範囲内に制御されたフィルム基材を使用することによって、上記の従来の問題が生じずに、ピンホールなどの欠点の発生が減少された位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができることを見出し、第1発明の完成に至った。」(【0010】) (b) 「フィルム基材は通常、製造後にロール状に巻き取られた状態で保存されて供給されるため、その間にフィルム基材の離型面・・・略・・・とその反対側の面(裏面)が加圧状態で接触しており、裏面の微小構造が離型面に転写することがあること、従って、裏面の微小構造の影響も大きいことを見出した。」、「裏面の微小構造の中でも、特定のパラメータで表わされるフィルム基材の表面粗さに着目し、この表面粗さが特定の範囲内に制御されたフィルム基材を使用することによって、上記の従来の問題が生じずに、ピンホールなどの欠点の発生が減少された位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができることを見出し、第二発明の完成に至った。」(【0011】) (c) 「配向フィルムに用いられるフィルム基材を構成する樹脂としては、配向フィルムの基材としての強度を保てるものであれば特に制限されないが、中でもポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロースが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロースが特に好ましい。」(【0016】) (d) 「本発明の転写用配向フィルムの離型面の三次元算術平均粗さ(SRa)の下限は好ましくは1nmであり・・・略・・・。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRaの上限は好ましくは30nmであり、より好ましくは25nmであり、さらに好ましくは20nmであり、特に好ましくは15nmであり、最も好ましくは10nmである。」(【0022】) (e) 「本発明の転写用配向フィルムの離型面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は好ましくは5nmであり・・・略・・・。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRzの上限は好ましくは200nmであり、より好ましくは150nmであり、さらに好ましくは120nmであり、特に好ましくは100nmであり、最も好ましくは80nmである。」(【0023】) (f) 「本発明の転写用配向フィルムの離型面の最大高さ(SRy・・・略・・・)の下限は好ましくは10nmであり、より好ましくは15nmであり・・・略・・・。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRyの上限は好ましくは300nmであり、より好ましくは250nmであり・・・略・・・。」(【0024】) (g) 「転写用配向フィルムと液晶化合物配向層の間には、ラビング処理配向制御層や光配向制御層などの配向制御層を設けることができるが、この配向制御層がラビング処理配向制御層であれば、ラビング時に凸部分の配向制御層が剥がれることや、凸部分の麓部や凹部分のラビングが不十分となることが欠点発生の原因と考えられる。また、離型面層に粒子を含む場合、ラビング時に粒子が脱落し、表面を傷つけることも欠点発生の原因と考えられる。また、ラビング処理配向制御層であっても光配向制御層であっても、配向制御層を設けた状態でフィルムを巻き取った場合、裏面層と擦れることにより、凸部分の配向制御層に穴が空いたり、圧力により配向が乱れたりすることも欠点発生の原因と考えられる。これらの配向制御層の欠陥により、配向制御層上に液晶化合物配向層を設ける時にその微小部分で液晶化合物の配向が適切に起こらず、設計通りの配向状態や位相差が得られず、その結果としてピンホール状やキズ状の欠点が生じると考えられる。」(【0026】) (h) 「配向制御層を設けず、転写用配向フィルムの上に液晶化合物配向層を直接形成させる場合でも、液晶化合物の塗工時に、配向フィルムの離型面の凸部分で液晶化合物配向層の厚みが薄くなったり、逆に配向フィルムの離型面の凹部分では液晶化合物配向層の厚みが厚くなるなどの理由で、設計通りの位相差が得られないことも欠点発生の原因と考えられる。」(【0027】) (i) 「本発明の転写用配向フィルムの離型面を平滑にしても液晶化合物配向層に欠点が生じる場合がある。これは、転写用配向フィルムはロール状に巻き取られた状態で供給されており、離型面と裏面が接して、裏面の粗さが離型面に転写する(離型層に裏面の凸部が転写して凹部が形成される)ためであることがわかった。・・・略・・・液晶化合物配向層を設けた状態で巻き取った場合は、液晶化合物配向層が裏面の凸部により、凹んだり、穴が空いたり、配向が乱れるといった現象が起こっていると考えられる。また、液晶化合物配向層を設けた状態で巻き取るのではなく、液晶化合物配向層を後で設ける場合でも、裏面の凸部により、液晶化合物配向層に穴が空く、配向が乱れるといった現象が起こっていると考えられる。特に巻芯部では圧力が高くこれらの現象が起こりやすい。以上の知見から、上記の欠点は離型面とは反対側の面(裏面)の粗さを特定の範囲内にすることにより、効果的に防止することができることがわかった。」(【0039】) (j) 「本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元算術平均粗さ(SRa)の下限は好ましくは1nmであり、より好ましくは2nmであり、さらに好ましくは3nm、特に好ましくは4nmであり、最も好ましくは5nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面のSRaの上限は好ましくは50nmであり、より好ましくは45nmであり、さらに好ましくは40nmである。上記を越えると欠点が多くなることがある。」(【0040】) (k) 「本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は、好ましくは10nmであり・・・略・・・。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面のSRzの上限は好ましくは1500nmであり、より好ましくは1200nmであり、さらに好ましくは1000nmであり、特に好ましくは700nmであり、最も好ましくは500nmである。上記を越えると欠点が多くなることがある。」(【0041】) (l) 「本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さ(SRy・・・略・・・)の下限は好ましくは15nmであり、より好ましくは20nmであり・・・略・・・。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さSRyの上限は好ましくは2000nmであり、より好ましくは1500nmであり、さらに好ましくは1200nmであり・・・略・・・。上記を越えると欠点が多くなることがある。」(【0042】) (m) 「(液晶化合物配向層) 液晶化合物配向層は、液晶化合物が配向されたものであれば特に制限はない。具体的な例としては、液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜( 偏光子)、棒状やディスコティック液晶化合物を含む位相差層が挙げられる。」(【0132】) (n) 「(位相差層) 位相差層は液晶表示装置の偏光子と液晶セルの間に光学補償のために設けられるものや、円偏光板のλ/4層、λ/2層等が代表的なものとして挙げられる。液晶化合物としては、生や負のAプレート、正や負のCプレート、Oプレートなど、目的に合わせて棒状液晶化合物やディスコティック液晶化合物などを使用することができる。」(【0159】)、「例えば、TN方式の場合はディスコティック液晶を用いたOプレートが好ましく用いられる。VA方式やIPS方式の場合、棒状液晶化合物やディスコティック液晶化合物を用いたCプレートやAプレートが好ましく用いられる。また、円偏光板のλ/4位相差層、λ/2 位相差層の場合は、棒状化合物を用いて、Aプレートとすることが好ましく用いられる。」(【0160】) (o) 「(3)位相差層の欠点の検査 転写用配向フィルムと液晶化合物配向層の間に配向制御層としてラビング処理配向制御層又は光配向制御層を配置したものを検査用サンプルとして作成した。」(【0206】)、「これらの検査用サンプルを使用して、以下の手順で位相差層の欠点を検査した。 黄色蛍光体を用いた白色LEDを光源とする面発光光源の上に下側偏光板を置き、その上に、上述のようにして作成した検査用サンプルを、偏光板の消光軸方向(吸収軸方向)が検査用サンプルの長辺方向と平行になるように置いた。さらにその上に、環状ポリオレフィンの延伸フィルムからなるλ/4フィルムを、配向主軸が下側偏光板の消光軸と45度の方向になるように置き、その上に上側偏光板を、上側偏光板の消光軸が下側偏光板の消光軸と平行になるように置いた。この状態で、消光状態を肉眼(中央部15cm×20cm)および20倍のルーペ(5cm×5cm)で観察し、以下の基準で評価した。 ◎:肉眼で輝点は認められず、ルーペ観察でも輝点はほとんど認められなかった(5cm×5cmで2個以下)。 ○:肉眼で輝点は認められず、ルーペ観察で少数の輝点が認められた(5cm×5cmで3個以上20個以下)。 △:肉眼で輝点は認められなかったが、ルーペ観察で輝点が認められた(5cm×5cmで20個を超える)。 ×:肉眼で輝点が認められたか、または、輝点が認められなかったがルーペ観察で観察された多くの輝点の存在に起因するとみられる全体的な光の漏れがあった。」【0213】 (p) 「(4)重ね合わせ後の欠点の検査1 上記のラビング処理配向制御層を用いた検査用サンプルを2枚用意し、それぞれの位相差層設置面と反対面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けた。このサンプルの位相差層の欠点を、(3)位相差層欠点の検査と同様にして検査した。」(【0214】) (q) 「(5)重ね合わせ後の欠点の検査2 重ね合わせ後の欠点の検査1では、離型面の粗さが大きい場合に裏面の粗さの影響がわかりにくいため、離型面の粗さが小さい実験例2Aの光配向制御層を用いた検査用サンプルを用いて、他の実験例の光配向制御層を用いた検査用サンプルの裏面の粗さの影響を調べた。 具体的には、実験例2Aの光配向制御層に1/4波長層を設けた検査用サンプルの位相差層設置面と各実験例の光配向制御層を用いた検査用サンプルの反対面を重ね合わせ、10 分間、1kg/cm2の加重を掛けた。このサンプル(実験例2Aの検査用サンプル)の位相差層の欠点を、(3)位相差層欠点の検査と同様にして検査した。」(【0215】) (r) 実験例1A~実験例18A及び実験例1B~実験例3Bの転写用配向フィルムの製造条件、層特性、位相差層の欠点(【0213】)及び重ね合わせ後の欠点(【0214】~【0215】)の評価結果をまとめた表1(【0252】) 【表1】 [図:0001434144000009.jpg] (s) 「表1から明らかなように、離型面の表面粗さが第一発明の要件を満たす実験例1A~18Aはいずれも、欠点評価のうち、ラビング処理配向制御層を有する場合の欠点及び光配向制御層を有する場合の欠点が著しく少なく、ピンホール状やキズ状の光漏れの発生が十分に抑制されていた。これに対して、裏面層の粒子含有量が多すぎて、離型面の表面粗さが大きすぎる実験例1Bは、欠点評価のうち、特にラビング処理配向制御層を有する場合の欠点及び光配向制御層を有する場合の欠点が著しく多く、ピンホール状やキズ状の光漏れの発生を抑制することができなかった。同様に、実験例15A,16Aと比べて裏面に易滑化コート層を有さず、離型面の表面粗さが大きすぎる実験例2Bは、欠点評価のうち、特にラビング処理配向制御層を有する場合の欠点及び光配向制御層を有する場合の欠点が著しく多く、ピンホール状やキズ状の光漏れの発生を抑制することができなかった。」(【0253】) (t) 「表1から明らかなように、離型面とは反対側の面( 裏面)の表面粗さが第二発明の要件を満たす実験例1A~3A,5A~16A,18Aはいずれも、欠点評価において欠点が著しく少なく、ピンホール状やキズ状の光漏れの発生が十分に抑制されていた。これに対して、粒子を含有せず、裏面に易滑コート層も付与されていないため、裏面の表面粗さが小さすぎる実験例3Bは、巻き取り安定性に劣り、安定した巻き取りができないという問題があった。また、裏面層の粒子の粒子含有量が多すぎて、裏面の表面粗さが大きすぎる実験例4A,1Bは、特に重ね合わせ後の欠点1,2が著しく多く、ピンホール状やキズ状の光漏れの発生を抑制することができなかった。」(【0254】) c 上記bの本件特許明細書の発明の詳細の説明のピンホール、欠点などの発生原因についての記載、延伸配向フィルムの離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyに着目し、これを所定範囲とすることの作用、効果についての記載、延伸配向フィルムの樹脂材料についての記載、位相差層を正や負のAプレート、正や負のCプレート、Oプレートなどとするとの記載や、(本件特許発明の延伸配向フィルムの離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyの数値範囲を満たし、)延伸配向フィルムをPETとし、位相差層を1/4波長とする、実験例9A、実験例14A、実験例15A及び実験例A18の延伸配向フィルムの離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyの各数値、及び、実験例9A、実験例14A、実験例15A及び実験例A18の欠点評価(ラビング処理配向制御層を有する場合の欠点、光配向制御層を有する場合の欠点(【0206】、【0213】)、重ね合わせ後の欠点1(【0214】)、重ね合わせ後の欠点2(【0215】))と、実施例1B~実験例3Bの同数値及び欠点評価、あるいは、実験例1~実験例8A、実験例12A、実験例13A、実験例17A等の同数値及び欠点評価の対比結果(【0252】【表1】)に基づけば、 延伸配向フィルムがPETと特定されていなくとも、また、液晶化合物配向層が、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層ではなく、重合性液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜、ディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層であったとしても、延伸配向フィルムが、離型面のSRaが1nm以上、11nm以下、離型面のSRzが5nm以上、120nm以下、離型面のSRyが15nm以上250nm以下、裏面のSRaが5nm以上、40nm以下、裏面のSRzが10nm以上、327nm以下、裏面のSRyが20nm以上1200nm以下の範囲のものであれば、ピンホールなどの欠点の発生が減少された液晶化合物層(位相差層、偏光層)を形成することができると、当業者は認識できる。 してみると、本件特許発明1は、当業者が上記aで述べた発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると理解できる。 本件特許発明4~6、9~15についても同様である。 なお、実験例1A~18Aのいずれが本件特許発明の実施例に該当するのかは簡単に理解できることである。また、実験例1A、3A、4A、7A等の表面粗さの数値範囲と、本件特許発明の数値範囲に該当しないことは、サポート要件を満たしていないことの根拠とならない。 d 以上のとおり、本件特許発明1、4~6、9~15は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の請求項1、4~6、9~15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 4 明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号) (1) 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書18頁及び67~68頁において、明確性要件について、以下のとおり主張する。 ア 本件第1発明は、「Oプレート」、「Aプレート」と特定しているが、どのような構成を意味しているのか、不明瞭である、「Cプレート」についても定義がなされておらず、何を意味するのか不明確である、本件第2~15発明についても同様である。 イ 本件第10発明は、「請求項1~4のいずれかに記載の液晶化合物配向層が棒状液晶化合物もしくはディスコティック液晶化合物を用いたAプレートの位相差層、またはディスコティック液晶化合物を用いたOプレートの位相差層である液晶化合物配向層転写用積層体の液晶化合物配向層面と偏光板とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から延伸配向フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。」と特定しているが、「請求項1~4のいずれかに記載の」が、「液晶化合物配向層」、「Aプレートの位相差層、または・・・Oプレートの位相差層」、「液晶化合物配向層転写用積層体」のいずれに掛かるのか不明瞭である。 (2) 申立人の上記主張に対する判断 ア 主張(1)アについて Oプレート、Aプレート及びCプレートは、その定義がなくとも、 Oプレートは、単軸や双軸の複屈折物質からなり、且つその主軸とフィルム平面との間に傾斜角を有する位相差フィルムを意味し、 Aプレートは、単軸の複屈折物質からなり、かつその異方軸(光軸)がフィルム平面と平行になった位相差フィルムを意味し、 Cプレートは、Aプレートと同じように単軸の複屈折物質からなっているが、その異方軸(光軸)がフィルム平面と垂直になった位相差フィルムを意味することは、当業者の技術常識(例えば、特開2010-9063号公報の【0005】~【0007】等参照。)である。 してみると、本件特許発明1、4~6、9~15は明確である。 イ 主張(1)イについて 請求項1または(請求項1の記載を引用する)請求項4の「液晶化合物配向層転写用積層体」の記載と請求項10の「液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法」の記載を併せ読めば、本件訂正後の請求項10の「請求項1または4のいずれかに記載の」との記載は、「液晶化合物配向層転写用積層体」に掛かることは、当業者にとって明らかである。 してみると、本件特許発明10は明確である。 5 実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)について (1) 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書18~19頁及び68頁において、実施可能要件違反について、以下のとおり主張する。 ア 本件第1発明は、「Oプレート」と特定しているが、本件発明の詳細な説明には、「Oプレート」がどのような構成を備えるものなのか説明されておらず、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。 本件第1発明は、「Aプレート」及び「Cプレート」と特定しているが、当該「Aプレート」及び「Cプレート」が何を意味するのか、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載されているといえない。本件第2~15発明についても同様である。 イ 本件発明の詳細な説明は「実験例」という表現を用いているが、いずれの実験例が本件発明の実施例に該当するのか不明確である。 ウ 本件第1発明は、「前記延伸配向フィルムは離型面の表面粗さ(SRa)が1nm以上、11nm以下」と特定しているが、発明の詳細な説明における実施例1A、3A、4A、7Aは当該表面粗さ(SRa)の範囲に該当しておらず、本件第1発明と矛盾している。本件第2~15発明についても同様である。 また、令和7年10月3日提出の意見書において、実施可能要件について、申立人は、以下のとおり主張する。 エ 訂正発明1は、離型面及び裏面のそれぞれSRa、SRz、SRyの数値範囲を特定しているが、実験例1A~18Aのうち、当該数値範囲を満たすものは実験例9A、14A、15A及び18Aの4例しかなく、しかも境界値(上限又は下限)から大きく離れており、当該離れた数値において、表1記載の点評価が得られることを当業者が実施できる程度に記載されているといえない。 オ 各数値範囲の全ての組合せの全てで(例えば、6つの粗さが各数値範囲の最高値のケース)、表1記載の欠点評価が得られることを当業者が実施できる程度に記載されているといえない。 (2) 実施可能要件についての判断 ア 上記4(2)アで述べたとおり、本件特許発明1における「Oプレート」、「Aプレート」及び「Cプレート」の意味、構成は、当業者にとって技術常識である。 イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0028】~【0037】、【0045】~【0056】に、延伸配向フィルムの離型面及び裏面の三次元表面粗さの一般的な調整方法が記載され、また、本件特許発明1の延伸配向フィルムの離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyの数値範囲を満たす実験例9A、実験例14A、実験例15A及び実験例A18の延伸配向フィルムに加えて、本件特許発明1の延伸配向フィルムの離型面及び裏面のSRa、SRz、SRyの数値範囲内外の様々な値を持つ他の実験例の延伸配向フィルムの製造条件、製造方法が、【0252】【表1】の層構成とともに、【0220】~【0247】に具体的に詳細に開示されている。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の上記の記載を参考にすれば、本件特許発明1の離型面及び裏面のそれぞれのSRa、SRz、SRyの数値範囲を満たす延伸配向フィルムを、当業者であれば過度の試行錯誤をすることなく製造できると認められる。 本件特許発明4~6、9~15についても同様である。 なお、本件発明の詳細な説明において「実験例」という表現を用いられていることや、実験例1A、3A、4A、7Aが、本件特許発明1のSRa、SRz、SRyの範囲に該当していないことは、実施可能要件を満たしていないことの根拠とならない。 ウ そうすると、本件特許発明1、4~6、9~15について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件特許の請求項1、4~6、9~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 第7 むすび 本件特許の請求項1、4~6、9~15に係る特許は、いずれも取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、4~6、9~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項2、3、7、8に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、本件特許の請求項2、3、7、8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700200

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