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特許異議申立

2021-700209

防眩フィルム

審判番号
2021-700209
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-533964
登録番号
6745410
請求日
2021年02月26日
審決日
2024年05月20日
公報発行日
2024年08月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ダイセル
  • 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
  • 【異議申立人】前田 しのぶ
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 宮澤 浩
  • 審判官 関根 洋之
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第181条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6745410号発明「防眩フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6745410号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6745410号の請求項1、4、5に係る特許を維持する。 特許第6745410号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第6745410号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019-533964号)は、2018年(平成30年)6月25日(先の出願に基づく優先権主張 2017年(平成29年)8月4日)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月5日にその特許権の設定の登録がされ、令和2年8月26日に特許掲載公報が発行された。本件特許について、その特許掲載公報発行の日から6月以内である令和3年2月26日に、特許異議申立人 前田 しのぶ(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和3年 6月10日付け:取消理由通知書 令和3年 8月16日付け:訂正請求書 令和3年 8月16日付け:意見書(特許権者) 令和3年10月22日付け:意見書(特許異議申立人) 令和4年 1月12日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和4年 3月22日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の 請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和4年 3月22日付け:意見書(特許権者) 令和4年 5月18日付け:意見書(特許異議申立人) 令和4年 9月 6日付け:特許異議の決定(以下「一次決定」とい う。) 令和4年10月14日 :一次決定に対する訴えの提起 (令和4年(行ケ)第10109号) 令和5年11月30日 :判決言渡(その後、確定したこの判決を、 以下「確定判決」という。) 令和6年 1月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和6年 3月27日付け:意見書(特許権者) なお、令和3年8月16日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 一次決定の結論は、本件訂正請求の訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認め、請求項1、4、5に係る特許を取り消し、請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する、というものである。 また、一次決定に対する確定判決の主文は、「1 特許庁が異議2021-700209号事件について令和4年9月6日にした決定(一次決定)のうち、特許第6745410号の請求項1、4、5に係る特許を取り消すとした部分を取り消す。2 訴訟費用は被告の負担とする。」というものである。 請求項〔1-5〕に係る特許は、一群の請求項である。したがって、特許法第181条第2項の規定により、当該一群の請求項のうち、確定判決によって取り消されていない請求項2及び3に係る部分についての一次決定を取り消し、審理を行うこととする。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第6745410号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値である防眩層」と記載されているのを、「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値であり、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む防眩層」に訂正するとともに、特許請求の範囲の請求項1に「防眩層を備え、」と記載されているのを、「防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」に訂正する。 請求項1の記載を引用して記載される請求項4~5についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正請求について 訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。 3 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「防眩層」について、[A]「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む」ものに限定するとともに、「防眩フィルム」について、[B]「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」るものに限定する訂正である。 そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 イ 本件特許明細書の【0080】には、「第2実施形態に係る防眩フィルムの防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。」と記載され、【0082】には、「微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。」と記載されている。また、本件特許明細書の【0079】には、「第2実施形態のように、防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する」、【0084】には、「このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。」と記載されている。 そうすると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 ウ 請求項4~5についてみても、同じである。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正である。 そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 イ 上記アのとおりであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について ア 訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の請求項3を削除する訂正である。 そうすると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 イ 上記アのとおりであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第6745410号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1、4~5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明4」及び「本件特許発明5」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4~5に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値であり、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され、 画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値であり、且つ、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である、 防眩フィルム。」 「【請求項4】 前記防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された前記複数の微粒子を含み、 前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が、0以上0.07以下の範囲の値である、請求項1に記載の防眩フィルム。」 「【請求項5】 前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値である、請求項4に記載の防眩フィルム。」 第4 取消しの理由等の概要 本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、[A]特許異議申立人の申立理由、当合議体が、[B]令和3年6月10日付け、及び、[C]令和4年1月12日付けで特許権者に通知した取消しの理由、[D]一次決定の理由の要旨、当合議体が、[E]令和6年1月30日付けで特許権者に通知した取消しの理由、及び、引用文献は、次のとおりである。 (引用文献) 引用例1:特開2014-6448号公報 (甲第1号証) 引用例2:特開2009-48092号公報 (甲第2号証) 引用例3:国際公開第2016/103685号(甲第3号証) 引用例4:特開2015-196347号公報 (甲第4号証) 引用例5:特開2014-85371号公報 (甲第5号証) 引用例6:特開2006-113561号公報 (甲第6号証) 引用例7:「JIS ディスプレイのぎらつき度合の求め方 JIS C 1006:2019」、一般財団法人 日本規格協会、 令和元年12月20日(甲第7号証) 引用例8:特開2009-244465号公報 引用例9:特開2006-106290号公報 引用例10:特開2014-92657号公報 ●理由1(新規性[B]、[C]、[E]) 本件特許の請求項1に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。 なお、上記引用例1を主引用例とする理由([B])、上記引用例2を主引用例とする理由([B])、上記引用例3を主引用例とする理由([B]、[E])、及び、引用例8を主引用例とする理由([C])が通知されている。 ●理由2(進歩性[A]~[C]、[E]) 本件特許の請求項1~請求項5に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。 なお、上記引用例1を主引用例とする理由([A]、[B])、上記引用例2を主引用例とする理由([A]、[B])、上記引用例3を主引用例とする理由([A]、[B]、[E])、上記引用例5を主引用例とする理由([C])、上記引用例8を主引用例とする理由([C])が、申立て、又は、通知されている。 ●理由3(実施可能要件[A]~[D]) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~5に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●理由4(サポート要件[A]~[D]) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●理由5(明確性要件[A]~[D]) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、明確であるということができず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、本件特許の出願時における当業者の技術常識を裏付ける文献として、引用例7を用いている。 第5 当合議体の判断 1 記載要件(理由3、理由4、理由5)について (1)本件特許明細書の記載 本件特許の明細書には、以下の記載事項がある。なお、合議体が判断等に用いた箇所に下線を付した。 ア 技術分野 「【0001】 本発明は、ディスプレイの表面への外光の映り込みを防止する防眩フィルムに関する。」 イ 発明が解決しようとする課題 「【0005】 防眩フィルムをディスプレイの表面に装着すると、ディスプレイの表面への外光の映り込みが防止される反面、ディスプレイからの光が防眩フィルムによる影響を受け、防眩フィルムを介したディスプレイの表示性能が低下する場合がある。このため、防眩フィルムの透過像鮮明度の設計自由度が高いことが望ましい。 【0006】 また、高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩層の表面の凹凸により屈折したり、防眩層の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ディスプレイのギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。 【0007】 ディスプレイのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。また、ディスプレイのギラツキは定量的に評価しにくい面があり、ディスプレイのギラツキを効果的に抑制できる防眩フィルムを客観的指標に従って開発することが困難な場合がある。 【0008】 そこで本発明は、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して設計することにより、良好な防眩性を有しながらディスプレイのギラツキを抑制できると共に、高い透過像鮮明度の設計自由度を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。」 ウ 課題を解決するための手段 「【0009】 上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値である防眩層を備え、ディスプレイの表面に装着した状態における前記ディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値であり、且つ、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である。 【0010】 ここで、ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値は、ディスプレイ上の輝点のばらつきの程度を示し、ディスプレイのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる。このため上記構成では、当該標準偏差を0以上6以下の範囲の値に設定して防眩層を構成することで、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して防眩フィルムを設計できる。従って、例えばギラツキを試験者が目視で主観的に評価した場合等に比べて、ディスプレイのギラツキを効果的に抑制できる防眩フィルムを安定して得ることができる。 【0011】 また、前記標準偏差を所定値に設定すると共に、防眩層のヘイズ値を50%以上99%以下の範囲の値に設定することにより、ディスプレイのギラツキを抑制しながら、良好な防眩性を得ることができる。また、防眩フィルムの光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度を0%以上60%以下の範囲の値に設定することで、防眩フィルムの透過像鮮明度の設計自由度を広く確保できる。 ・・・略・・・ 【0014】 前記防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み、前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が、0以上0.07以下の範囲の値されていてもよい。 【0015】 これにより、上記防眩層をマトリクス樹脂と複数の微粒子とを用いて構成でき、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を有する防眩フィルムを製造し易くすることができる。 【0016】 前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値であってもよい。これにより、これにより、マトリクス樹脂に複数の微粒子が分散された構造の防眩層を有する上記防眩フィルムを良好に製造できる。」 エ 発明の効果 「【0017】 本発明によれば、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して設計することにより、良好な防眩性を有しながらディスプレイのギラツキを抑制できると共に、高い透過像鮮明度の設計自由度を有する防眩フィルムを提供できる。」 オ 第1実施形態 「【0020】 (第1実施形態) 図1は、第1実施形態に係る防眩フィルム1の構成を示す断面図である。防眩フィルム1は、表示装置16(図3参照)のディスプレイ16aの表面に装着される。防眩フィルム1は、基材フィルム2、防眩層3、及び粘着層4を備える。」 合議体注:図1は次のものである。 [図:0001413274000001.jpg] 「【0022】 防眩層3は、基材フィルム2の少なくとも一方の面に形成されている。防眩層3は、防眩フィルム1に防眩性を付与し、外光を散乱反射させてディスプレイ16aの表面への外光の映り込みを防止する。防眩層3は、ディスプレイ16aの表面を保護するハードコート(HC)層としても機能する。防眩層3は、一例として、相分離可能な複数の樹脂成分を含む。 【0023】 防眩フィルム1は、ディスプレイ16aの表面に装着した状態におけるディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値に設定され、且つ、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値に設定されている。防眩層3は、ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値に設定されている。 【0024】 本実施形態で示すヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法により測定した値である。 ・・・略・・・ 【0035】 [防眩層の構造] 第1実施形態の防眩層3は、複数の樹脂成分の相分離構造を有する。防眩層3は、一例として、複数の樹脂成分の相分離構造により、複数の長細状(紐状又は線状)凸部が表面に形成されている。長細状凸部は分岐しており、密な状態で共連続相構造を形成している。 【0036】 防眩層3は、複数の長細状凸部と、隣接する長細状凸部間に位置する凹部とにより防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度(写像性)とのバランスに優れたものとなっている。防眩層3の表面は、長細状凸部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。 【0037】 防眩層3の表面は、上記した構造が形成されることで、レンズ状(海島状)の凸部が形成されるのが防止されている。よって、防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりするのが防止され、ディスプレイ16aのギラツキが抑制される。これにより、高精細画素を有するディスプレイ16aに防眩フィルム1を装着しても、防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを高度に抑制でき、文字・画像のボケや色調の変化も抑制できる。 【0038】 なお複数の長細状凸部は、互いに独立していてもよいし、繋がっていてもよい。防眩層3の相分離構造は、後述するように、防眩層3の原料となる溶液を用いて、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成される。防眩層3の詳細については、例えば、特願2012-231496の記載を参照できる。 【0039】 [防眩層の材質] 防眩層3が含む複数の樹脂成分は、相分離可能なものであればよいが、長細状凸部が形成され且つ高い耐擦傷性を有する防眩層3を得る観点から、ポリマー及び硬化性樹脂を含むことが好ましい。 ・・・略・・・ 【0056】 防眩層3は、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子(フィラー)を含んでいてもよい。微粒子は、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれでも良く、複数の微粒子は、複数種類の微粒子を含んでいてもよい。 【0057】 有機系微粒子としては、架橋アクリル粒子や架橋スチレン粒子を例示できる。また無機系微粒子としては、シリカ粒子及びアルミナ粒子を例示できる。また、防眩層3中に含まれる微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差は、一例として、0以上0.20以下の範囲の値に設定できる。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが一層望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0058】 微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。この平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0059】 なお、ここで言う平均粒径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径である(以下に言及する平均粒径も同様とする。)。微粒子は、中実でもよいし、中空でもよい。微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。 ・・・略・・・ 【0062】 防眩層3には、光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機又は無機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤等が含まれていてもよい。 【0063】 第1実施形態における防眩フィルム1の製造方法は、一例として、防眩層3の原料となる溶液(以下、単に溶液とも称する。)を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(本実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布し、溶液中の溶媒を蒸発させると共に、液相からのスピノーダル分解により相分離構造を形成する形成工程と、形成工程後に硬化性樹脂前駆体を硬化する硬化工程とを有する。 【0064】 [調製工程] 調製工程では、溶媒と、防眩層3を構成するための樹脂組成物と、所定の微粒子を含む溶液を調製する。溶媒は、前述した防眩層3に含まれるポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択できる。溶媒は、少なくとも固形分(複数種類のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できるものであればよい。 ・・・略・・・ 【0068】 ここで、防眩層3のヘイズ値、防眩フィルム1の透過像鮮明度、及び、表面に防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差の値(ギラツキ値)は、溶液中の樹脂組成物の組み合わせや重量比、或いは、調製工程、形成工程、及び硬化工程の施工条件等によって変化しうる。従って、各条件を変化させて防眩層を形成し、得られた防眩層の物性を予め測定・把握しておくことで、目的の物性を有する防眩フィルムを得ることができる。 【0069】 [形成工程] 形成工程では、調製工程で調製した溶液を、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。 ・・・略・・・ 【0070】 支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。この蒸発過程における溶液の濃縮に伴って、複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離を生じさせ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成する。 ・・・略・・・ 【0074】 [硬化工程] 硬化工程では、溶液中の硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、形成工程で形成された相分離構造を固定化し、防眩層3を形成する。 ・・・略・・・ 【0077】 以上の各工程を経ることにより、第1実施形態の防眩フィルム1が製造される。 ・・・略・・・ 【0078】 ここで、ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。 【0079】 第1実施形態において前述したスピノーダル分解によって、このような凹凸を防眩層に形成できるが、その他の方法によっても、このような凹凸を防眩層に形成できる。例えば第2実施形態のように、防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層に形成できる。そこで以下では、その他の実施形態の防眩層について、第1実施形態との差異を中心に説明する。」 カ 第2実施形態 「【0080】 (第2実施形態) 第2実施形態に係る防眩フィルムの防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球状や楕円体状に形成されていてもよい。また微粒子は、中実に形成されているが、中空に形成されていてもよい。微粒子が中空に形成されている場合、微粒子の中空部には、空気或いはその他の気体が充填されていてもよい。防眩層には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。 【0081】 マトリクス樹脂と、微粒子との屈折率差は、0以上0.20以下の範囲の値に設定されている。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが更に望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0082】 微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。微粒子の平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲の値であることがより好ましい。 【0083】 また、微粒子の粒径のバラツキは小さい方が望ましく、例えば、防眩層に含まれる微粒子の粒径分布において、防眩層に含まれる微粒子の50重量%以上の平均粒径が1.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。 【0084】 このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。 【0085】 防眩層におけるマトリクス樹脂の重量と複数の微粒子の総重量との比は、適宜設定することが可能である。本実施形態では、防眩層のマトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1は、0.07以上0.20以下の範囲の値に設定されている。比G2/G1は、0.10以上0.20以下の範囲の値であることが望ましく、0.12以上0.20以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0086】 マトリクス樹脂中に分散される微粒子は、無機系及び有機系のいずれのものでもよいが、良好な透明性を有するものが好ましい。 ・・・略・・・ 【0095】 第2実施形態における防眩フィルムの製造方法は、一例として、防眩層3の原料となる溶液を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(本実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布する塗布工程と、塗布した溶液中の樹脂を硬化する硬化工程とを有する。 【0096】 [調製工程] 調製工程では、溶媒と、防眩層を構成するための樹脂組成物と、微粒子とを含む溶液を調製する。溶媒としては、アルコール類(イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)の少なくともいずれかを例示できる。溶液には、更に公知のレベリング剤を添加してもよい。例えば、フッ素系やシリコーン系のレベリング剤を用いることにより、防眩層に良好な耐擦傷性を付与できる。 【0097】 [塗布・硬化工程] 塗布工程では、調製工程で調製した溶液を、第1実施形態と同様の方法により、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。 ・・・略・・・ 【0100】 溶液に含まれていたマトリクス樹脂が硬化することにより、マトリクス樹脂中の微粒子の位置が固定される。これにより、マトリクス樹脂中に複数の微粒子が分散され、表面に微粒子による凹凸が形成された構造の防眩層が形成される。 【0101】 第2実施形態の防眩フィルムによれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できると共に、防眩フィルムの着色を防止できる。 【0102】 また、防眩層の比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値に設定されているので、マトリクス樹脂に複数の微粒子が分散された構造の防眩層を有する防眩フィルムを良好に製造できる。」 キ 第3実施形態 「【0103】 (第3実施形態) 第3実施形態に係る防眩フィルムの防眩層33は、基材フィルム側とは反対側の表面に凹凸形状が賦形された構造を有する。防眩層33は、樹脂層で構成されている。この樹脂層は、一例として、第2実施形態のマトリクス樹脂と同様の材質により構成されている。 【0104】 具体的に、第3実施形態に係る防眩フィルムは、基材フィルム上に硬化性樹脂を含むコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。」 ク ギラツキ検査機・ギラツキ評価方法 「【0118】 (ギラツキ検査機) 図3は、ギラツキ検査機10の概略図である。ギラツキ検査機10は、表面に防眩フィルム等のフィルムを装着した表示装置16におけるディスプレイ16aのギラツキを評価する装置であって、筐体11、撮像装置12、保持部13、撮像装置用架台14、表示装置用架台15、及び画像処理装置17を備える。市販されているギラツキ検査機10としては、コマツNTC(株)製「フィルムギラツキ検査機」が挙げられる。」 合議体注:図3は次のものである。便宜上、図3の向きを90度回転した。 [図:0001413274000002.jpg] 「【0123】 ギラツキ検査機10では、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対距離を調整することによって、撮像装置12の撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズが調整される。 【0124】 画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データのデータ処理を行う。具体的に画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データから、ディスプレイ16aの輝度の標準偏差を求める。 ・・・略・・・ 【0127】 (ギラツキ評価方法) 次に、ギラツキ検査機10を用いたディスプレイ16aのギラツキ評価方法について説明する。このギラツキ評価方法では、評価の便宜上、表面にフィルムを装着したディスプレイ16aを予め一色(一例として緑色)に均一発光させて表示させる。 【0128】 次に、撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像されるフィルムを装着したディスプレイ16aの画素サイズを調整する調節ステップを行う。調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12が撮像する画像において、画素による輝線がない、或いは、画素による輝線があってもディスプレイ16aのギラツキの評価に影響を与えない程度に、撮像装置12と、フィルムを装着したディスプレイ16aとの間の相対距離を調整する。 【0129】 なお、撮像装置12と表示装置16との間の相対距離は、表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aの表面との間の相対距離)を考慮して設定されることが望ましい。 【0130】 調整ステップを行った後、フィルムを装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する設定ステップを行う。設定ステップでは、測定エリアは、例えばディスプレイ16aのサイズ等に応じて適切に設定する。 【0131】 調整ステップを行った後、フィルムを装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する撮像ステップを行う。このとき一例として、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間又はディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整する。撮像ステップで撮像された画像データは、画像処理装置17へと入力される。 【0132】 撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データを用いて、フィルムを装着したディスプレイ16aの測定エリアにおける輝度のばらつきを求める演算ステップを行う。この演算ステップにおいて、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差として数値化される。 【0133】 ここで、フィルムを装着したディスプレイ16aのギラツキは、フィルムを装着したディスプレイ16aの輝度のばらつきが大きいほど大きくなる。これにより、輝度分布の標準偏差の値が小さいほど、ディスプレイ16aのギラツキは小さいと定量的に評価できる。また調整ステップにおいて、フィルムを装着したディスプレイ16aの輝線がディスプレイ16aのギラツキの評価に影響を与えない程度に調整されているので、輝線による輝度ムラを抑え、ディスプレイ16aの正確なギラツキの評価を行うことができる。 【0134】 以上の各ステップを経ることにより、表面にフィルムを装着したディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差を求め、その値によりディスプレイ16aのギラツキを評価できる。」 ケ 実施例及び比較例 「【0135】 (実施例及び比較例) 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 【0136】 実施例1~4は、相分離構造を基本構造とし、且つ所定成分を含む防眩層3を形成するものである。実施例5は、ビーズ(シリカ微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。 ・・・略・・・ 【0138】 [原料] 実施例及び比較例で用いる各原料には、次のものを用いた。 重合性基を有するアクリル系重合体A:ダイセル・オルネクス(株)製「サイクロマーP」、屈折率1.51 セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000、屈折率1.49 シリコーンアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「EB1360」、屈折率1.52 ウレタンアクリレート:新中村化学工業(株)製「UA-53H」 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」、屈折率1.52 ペンタエリスリトールテトラアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」、屈折率1.52 ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物A:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合同会社)製「UVHC-7800」 シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:アイカ工業(株)製「Z-753-11R」、屈折率1.52 アクリル系ハードコート配合物A:日本化工塗料(株)製「FA-3155クリア」、アクリル微粒子(屈折率1.50)とマトリクス樹脂(屈折率1.46)を含有する アクリル系ハードコート配合物B:日本化工塗料(株)製「FA-3155M」、屈折率1.46 重合性基を有するフッ素系化合物A:信越化学工業(株)製「KY-1203」 重合性基を有するフッ素系化合物B:(株)ネオス製「フタージェント602A」 ジルコニア微粒子(屈折率約20分散液:東洋インキ(株)製「リオデュラスTYZ」 光開始剤A:BASFジャパン(株)製「イルガキュア184」 光開始剤B:BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」 ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」 セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」 ・・・略・・・ 【0152】 [実施例5] アクリル系ハードコート配合物A25質量部とシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物25質量部と1-ブタノール50質量部とを混合した溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例5の防眩フィルムを得た。 ・・・略・・・ 【0178】 次に、実施例1~5及び比較例1~11の各防眩フィルムについて、以下の項目を測定して評価した。ヘイズ及び全光線透過率、透過像鮮明度、60度グロスの測定に際しては、粘着層は省略した。 【0179】 [ヘイズ及び全光線透過率] ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。ヘイズは、防眩層の凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。 【0180】 [透過像鮮明度] 写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。 【0181】 [60度グロス] グロスメーター((株)掘場製作所製、IG-320)を用いて、JlS K7105に準拠し、角度60°で測定した。 【0182】 [ディスプレイの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)] 表示装置16としてスマートフォン(三星電子(株)製「Galaxy S4」)を用い、そのディスプレイ16aの表面に、各サンプルの防眩フィルムを粘着層(光学糊)により貼り付けた。コマツNTC(株)製フィルムギラツキ検査機10を用い、各サンプルの防眩フィルムを介して、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差(ギラツキσ:ギラツキ値)を測定した。この測定に際しては、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間又はディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整した。 各測定結果を表1及び2に示す。 【0183】 【表1】 [図:0001413274000003.jpg] ・・・略・・・ 【0185】 表1に示されるように、実施例1~5の防眩フィルム1は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が3%以上40%以下の範囲の値に設定され、防眩層3のヘイズ値が55.5%以上93.0%以下の範囲に設定されている。また、実施例1~5の防眩フィルムは、ディスプレイ16aのギラツキ値(ギラツキσ)が4.2以上6.0以下の範囲の値に抑制されている。すなわち実施例1~5の防眩フィルム1では、ディスプレイのギラツキ値を抑制しながら良好な防眩性が得られることが分かった。 【0186】 この理由として、実施例1~4の防眩層3では、アクリル共重合体Aとセルロースアセテートプロピオネート間で相分離が生じると共に、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aや、ウレタンアクリレートにより、相分離構造が強調され、防眩層3の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成できたことが考えられる。 【0187】 すなわち、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aや、ウレタンアクリレートは、アクリル共重合体Aに対する親和性が高く、セルロースアセテートプロピオネートに対して斥力相互作用を生じたことにより、実施例1~4の防眩層3の相分離構造が強調されたものと考えられる。 【0188】 また、実施例5の防眩層3では、シリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物中のシリカ粒子に対して親和性の低い溶媒であるブタノールを多量に加えることで、シリカ粒子の凝集が激しく生じ、防眩層3の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成できたことが考えられる。すなわち、シリカ粒子がブタノールに対して斥力相互作用を生じたことにより、親和性の高い溶媒では起こりえない程度にまで、防眩層3の表面に形成される凹凸構造が強調されたものと考えられる。更に実施例5の防眩層3では、アクリル系紫外線硬化樹脂とアクリル系ハードコート配合物Aとを共存させたことにより、光学性能を表1に示す範囲に調節することができた。」 (2)理由5(明確性要件) ア 一次決定について 一次決定は、本件特許発明1の「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差」の値について、その測定方法ないし測定条件のうち、特に撮像装置と防眩フィルムを装着したディスプレイとの距離(以下、単に「撮影距離」という。)及び撮像装置のレンズのFナンバー(以下、単に「Fナンバー」という。)という測定条件につき具体的にどの値を設定するのかが、本件特許明細書等の記載及び本件特許出願時における技術常識を参酌しても、一義的に定まるとはいえないから、本件標準偏差を含む本件パラメータの値も一義的に定まることはない。そして、一義的に定まらない以上、ある具体的な防眩フィルムが、本件特許発明の技術的範囲に入るか否かを当業者が理解することができないのであるから、本件特許発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である旨判断した。 イ 確定判決の判示事項 確定判決は、以下の理由により、明確性要件について、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4及び5の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできず、特許を受けようとする発明は明確であると判示した。 本件特許発明における撮影は、撮像された画像データから、ディスプレイの輝度の標準偏差を求め、コントラストを測定することが目的であるから(本件明細書の【0124】)、当業者は、なるべく被写体のコントラストを忠実に再現できる条件で撮影するものと解される。当業者は、コントラストのピークがあるFナンバーに絞りを設定することになり、そのようなFナンバーを特定する上で必要な作業は、Fナンバーを変えながら数回の撮影を行ってコントラストの変化を確認し、最もコントラストが高くなるFナンバーを求めることだけであり、そのことに特段の困難性があるとは認められない。 本件明細書の【0128】の記載から、輝度の分布を把握するのに十分な解像度が得られる程度に撮影距離を短くすることを前提としつつ、ギラツキの評価に影響を与えるほど輝線が映り込まない程度の距離を保持すべきことを当業者は理解できると解される。そのように調整された距離は、輝線が見える距離の範囲と輝線が見えない相対距離の範囲との境界付近に設定されることとなるから、それほど大きくない一定の範囲に定まるといえる。被写体の大きさに個別性があるとしても、コマツ検査機を使用の上、本件明細書の【0128】に従った方法により調整すれば、被写体毎に自ずと撮影距離は定まるのであり、第三者に不利益を与えるほどに不明確であるとはいえない。 ウ 当審の判断 行政事件訴訟法33条1項の規定により、前記確定判決は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたって、当審を拘束する。 したがって、当審は、本件特許の請求項1、4、5に係る発明は、明確であると判断する。 (3)理由3(実施可能要件) ア 一次決定について 一次決定は、たとえ技術常識を参酌したとしても、第2実施形態の一般記載並びに実施例5の記載及び比較例1、4~9の記載に基づいては、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の複数の微粒子を含み、分散した複数の微粒子の凝集により、防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成された防眩層を備えるという条件を満たし、かつ、実施例5の上記の特定の3条件以外の値の本件3条件の数値範囲をくまなく満たす、種々の防眩フィルムを、どのように製造すればよいのかを当業者が理解することは困難である、本件標準偏差条件から検討しても、防眩層の凹凸構造及び内部構造をどのようなものとすれば、ヘイズ値が50~99%、0.5mm透過像鮮明度が0~60%及びギラツキ値を0以上6以下とすることができるのか当業者は理解することが困難である、と判断した。 また、第1~第3の各実施形態に対応する「防眩層」の構造は、その製造方法からみて、明らかに表面の凹凸形状及び内部構造を異にするものであり、第3実施形態に係る防眩層を有する発明については、本件特許発明等では当該実施形態に対応する実施例は何ら開示されていないし、その他の実施形態に対応する実施例1~5の防眩層の表面の凹凸形状及び内部構造を仮に詳細に分析することができたとしても、当該凹凸形状を正確に金型に転写するためにどのようにしてブラスト粒子を衝打させる方法を実施すればよいのかを実施例の開示なくして当業者が理解することは困難であるから、本件特許発明が、第2実施形態に対応する構造に限定されていないとした場合においても、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるということはできないと判断した。 イ 確定判決の判示事項 確定審決は、以下の理由により、本件明細書には、当業者がその記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明に係る物を製造し、使用することができる程度の記載があるものと認められ、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであると認められると判示した。 本件明細書で第1実施形態を説明する【0056】、【0058】及び【0059】の記載を参酌すれば、第1実施形態には、スピノーダル分解による凝集と微粒子の凝集の両方により表面に凹凸の分布構造が形成されている防眩層を備える防眩フィルムが含まれているといえる。本件特許発明においては、スピノーダル分解による凝集と微粒子の凝集の両方により表面に凹凸の分布構造が形成されている防眩層は排除されていない。 当業者は、第1実施形態に係る【0186】及び【0187】の記載に加え、【0068】及び【0079】の記載を併せ考えれば、第2実施形態に関して、実施例として記載された防眩フィルムをはじめとする様々な特性の防眩フィルムを得られることを理解する。微粒子の凝縮によって形成される凹凸構造の形状は、スピノーダル分解の凝集が進行したことによる上記液滴相構造の形状と同様のものであると解されるから、第1実施形態の凹凸構造を参考にできる。そして、本件明細書には、本件特許発明に係る特性を導く上で主要な構造となる凹凸の急峻性を生み出す原理とその具体的方法、原材料から製造の工程に係る記載があるから、当業者は、微粒子の凝集を用いてより急峻な凹凸を形成する場合には、微粒子の重量部を大きくし、さらに必要に応じてブタノールの重量部を大きくし、斥力を大きくするなどして、通常の試行錯誤の範囲内で、その実施品を作ることができる。 また、本件明細書の【0005】の記載からは、外光の映り込みの防止とディスプレイの表示性能の維持の間に厳格なトレードオフの関係があるとまで認めることはできないから、本件特許発明の第1実施形態に係る実施例1~4、比較例2~3、10及び11、第2実施形態に係る実施例5、比較例1、4~9における防眩フィルムのヘイズ値及び透過像鮮明度の数値からは、ヘイズ値が同程度であっても透過像鮮明度が異なる防眩フィルムや、透過像鮮明度が同程度であってもヘイズ値が異なる防眩フィルムが製造できることが示されている。本件高ヘイズ・高鮮明度領域の製造方法が具体的に記載されていなければ、本件特許発明が実施可能要件を欠くなどということはできない。 ウ 当審の判断 行政事件訴訟法33条1項の規定により、前記確定判決は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたって、当審を拘束する。 したがって、当審は、本件明細書の記載について、本件特許の請求項1、4、5に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものと判断する。 (4)理由4(サポート要件) ア 一次決定について 一次決定は、課題を解決するための手段に関連する記載、第2実施形態の一般記載(実施例に直接関連する記載以外の記載)、実施例5の記載及び比較例1、4~9の記載及び本件出願時の技術常識に基づいては、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の複数の微粒子を含み、分散した複数の微粒子の凝集により、防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成された防眩層を備え、実施例5以外の「ヘイズ条件」、「標準偏差条件」及び「透過像鮮明度条件」を満たす、第2実施形態による防眩フィルムをどのように製造することができるのかを当業者が理解することは困難であるから、出願時の技術常識に照らしても、請求項1、4、5に係る発明の範囲(「ヘイズ条件」、「標準偏差条件」及び「透過像鮮明度条件」に係る数値範囲の全ての範囲)まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと判断した。 イ 確定判決の判示事項 確定判決は、以下の理由により、サポート要件について、当業者は、本件明細書の記載及び技術常識に基づき、特許請求の範囲に記載された範囲において、本件特許発明の課題を解決できると認識できると判示した。 本件特許発明は、良好な防眩性を有しながらディスプレイのギラツキを抑制できると共に、高い透過像鮮明度の設計自由度を有する防眩フィルムを提供することを目的とする。 ヘイズ値が50%以上あれば良好な防眩性は確保でき(【0011】)、ヘイズ値と透過像鮮明度との間には一定の相関関係があるから、適宜ヘイズ値を変動させることにより、透過像鮮明度も調整することができる。ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させるには、防眩層の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に、凹凸の数を増やせばよい(【0078】)。そして、上記のような防眩フィルムについて、本件明細書には、凹凸の急峻性を生み出す原理とその具体的方法、原材料から製造の工程、実施例等が記載されているから、当業者は、その記載及び技術常識に基づき、特許請求の範囲に記載された範囲において、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。 ウ 当審の判断 行政事件訴訟法33条1項の規定により、前記確定判決は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたって、当審を拘束する。 したがって、当審は、本件特許の請求項1、4、5に係る発明は、サポート要件を満たすと判断する。 2 新規性(理由1)及び進歩性(理由2)について (1)引用例5を主引用例とする進歩性 ア 引用例5に記載された発明 特許異議申立人が甲第5号証として引用し、令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例5(特開2014-85371号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、実施例1(【0001】、【0128】~【0144】、【0153】、【0154】)で得られた防眩フィルムの発明として、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。 「 側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物、固形分49.6重量%]5.65重量部、セルロースアセテートプロピオネート1.2重量部、多官能アクリル系UV硬化性化合物(粘度5250mPa・s)4重量部、アクリル系UV硬化性化合物(粘度1100mPa・s)2.77重量部、光開始剤0.53重量部をメチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.15重量部の混合溶剤に溶解し、 この溶液を、ワイヤーバー#24を用いて厚み100μmのPETフィルム上に流延した後、95℃のオーブン内で2分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させ、コート層に、紫外線を約10秒間照射し、UV硬化処理して得られた、防眩フィルムであって、 反射型レーザー顕微鏡により観察したところ、コート層の表面は、表面全体が共連続状相分離構造を形成し、すなわち、1mm2当たり1つの連続する網目状の長細状凸部が形成されており、全凸部のうち、分岐構造を有する長細状凸部の割合は略100%であり、 この表面構造において、共連続相構造における網目の平均径は約5μmであり、全表面の過半の領域(95%以上)で凸部が形成され、 全光線透過率(%)は91%、ヘイズ(%)は18%、透過像鮮明度(%)は75%であり、60°グロスは51%、鉛筆硬度は2H、防眩性は◎、ギラツキは○、文字ボケは◎であり、 上記の長細状凸部のサイズ及び面積、粘度、全光線透過率、ヘイズ、透過像鮮明度、60°グロス、鉛筆硬度、防眩性、ギラツキ、文字ボケの評価は以下によるものである、防眩フィルム。 [長細状凸部のサイズ及び面積] 反射型レーザー顕微鏡写真に基づいて、1mm2当たりの長細状凸部の存在の有無を観察するとともに、共連相構造の網目の平均径について、任意の10箇所の平均値を求めた。さらに、1mm2の領域において、分岐構造を有する長細状凸部と他の凸部との長さ比を測定した。 凸部の面積は、非接触表面・層断面形状計測システム[(株)菱化システム製「VertScan」]を用いて測定した。このシステムでは、表面形状を光干渉を用いて三次元的に計測でき、画像処理的に凸部の面積を求めることができる。 [粘度] B型粘度計(東京計器株製「BL型」)を用いて、JIS Z8803で準拠し、25℃の粘度を測定した。 [ヘイズ及び全光線透過率] ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。 [透過像(写像)鮮明度] 光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。 [60°グロス] JIS K7105に準拠して、グロスメーター(堀場製作所(株)製「IG-320」)を用いて評価した。 [鉛筆硬度] JIS K5400に準拠し、荷重750gで鉛筆硬度を測定した。 [防眩性] 防眩性の判定は、ルーバーの無いむきだしの蛍光灯を防眩フィルムに写し、その正反射光の眩しさを目視にて以下の基準に従って評価した。 ◎:眩しさを感じない ○:眩しさを僅かに感じる ×:眩しさが感じられる。 [ギラツキ] 表示面におけるギラツキの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。 ◎:ギラツキが感じられない ○:ギラツキが僅かに感じられる ×:ギラツキが感じられる。 [文字ボケ] 表示面における文字ボケの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。 ◎:文字ボケが感じられない ○:文字ボケが僅かに感じられる ×:文字ボケが感じられる。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明5とを対比する。 a 引用発明5の「防眩フィルム」の形成工程からみて、引用発明5の「防眩フィルム」は、「側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」(「固形分49.6重量%」)「5.65重量部」、「セルロースアセテートプロピオネート」「1.2重量部」、「多官能アクリル系UV硬化性化合物」(「DPHA」)「4重量部」、「アクリル系UV硬化性化合物」(「PETIA」)「2.77重量部」、「光開始剤0.53重量部」「をメチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.15重量部の混合溶剤に溶解し」、「厚み100μmのPETフィルム上に流延した後」、「溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させ」、「紫外線を」「照射し、UV硬化処理して得られた」ものであると理解できる。 b 上記aから、引用発明5の「厚み100μmのPETフィルム上」に「形成」された「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層は、「光開始剤」を含む、「側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」、「セルロースアセテートプロピオネート」、「多官能アクリル系UV硬化性化合物」(「DPHA」)及び「アクリル系UV硬化性化合物」(「PETIA」)の「硬化」物からなると理解できる。 ここで、引用発明5の「厚み100μmのPETフィルム」は、ヘイズが実質0%の透明なフィルムであることは、技術常識から明らかである。そうすると、引用発明5の「防眩フィルム」が示す、「ヘイズ」、「透過像鮮明度」、「60°グロス」、「防眩性」、「ギラツキ」、「文字ボケ」などの各光学特性は、「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層により主に生じていると理解できる。 そうすると、引用発明5の「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。 c 引用発明5の「防眩フィルム」の「透過像鮮明度(%)は75%であ」る。また、引用発明5の「透過像鮮明度(%)」は、「光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した」ものである。 また、本件特許明細書の【0180】によれば、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」は、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定し」、「光学櫛幅」「0.5mmとした」ものである。 そうすると、引用発明5の「透過像鮮明度(%)」は、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」に対応する。 d 引用発明5の「防眩フィルム」の「硬化」物層の「ヘイズ(%)は18%」である。また、引用発明5の「ヘイズ(%)」は、「ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した」ものである。 また、本件特許明細書の【0179】によれば、本件特許発明1の「ヘイズ値」は、「ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて」、「防眩層の凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置し」、「JIS K7136に準拠して測定した」ものである。 ここで、引用発明5の「ヘイズ(%)」の測定が、「表面全体が共連続状相分離構造を形成し、すなわち、1mm2当たり1つの連続する網目状の長細状凸部が形成されて」いる「コート層の表面」(「厚み100μmのPETフィルム」とは反対側の防眩層表面)を「ヘイズメーター」の受光器側に向けて行われることは技術常識から明らかである。してみると、引用発明5の「ヘイズ(%)」は、本件特許発明1の「ヘイズ値」に対応する。 e 上記a~dより、引用発明5の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。また、上記bより、引用発明5の「防眩フィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「防眩層を備え」との要件を具備する。 f 以上より、本件特許発明1と引用発明5は、 「 防眩層を備える、 防眩フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点5-1-1) 本件特許発明1は、「防眩層」の「ヘイズ値」が「50%以上99%以下の範囲の値」であり、「防眩フィルム」の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」が「0%以上60%以下の範囲の値」であるのに対して、引用発明5は、「硬化」物層の「ヘイズ(%)」は「18%」であり、「防眩フィルム」の「透過像鮮明度(%)」は「75%」である点 (相違点5-1-2) 「防眩層」が、本件特許発明1は、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含」むものであり、「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」るのに対して、引用発明5は、そのようなものではない点。 (相違点5-1-3) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」であるのに対して、引用発明5はそのようなものであるかどうか一応分からない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点5-1-2について検討する。 引用例5の【0078】には、「防眩層には、防眩層の光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機又は無機粒子、・・・略・・・などが含まれていてもよい。」との記載がある。 してみると、引用発明5において、「硬化」物層(「防眩層」)を、複数の有機粒子又は無機粒子を含ませた構成とすることは、引用例5が示唆する範囲のことである。ただし、含ませることのできる有機粒子又は無機粒子は、粒径の範囲が特定されたものではなく、「防眩層の光学特性を損なわない範囲」に限られる。 一方、引用例9には、「内部ヘイズを制御する方法としては、粒径が0.5~2μm程度の粒子を分散させてもよい」(【0094】)ことが記載されている。この記載に基づけば、防眩層に粒径が0.5μm~2μmの粒子を含ませると、防眩層の内部ヘイズに影響を与えることになるといえる。また、2μmよりも大きな粒径の粒子を含ませた場合、防眩層の表面形状に影響を与え、長細状凸部の形状を変化させてしまい、防眩層の光学特性を損なうことは明らかである。 そうすると、引用発明5において、「平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下の範囲の値」の微粒子を含ませて、本件特許発明1の相違点5-1-2に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件特許発明4及び本件特許発明5について 本件特許発明4又は本件特許発明5と、引用発明5とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点5-1-2において相違する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (2)引用例8を主引用例とする新規性及び進歩性 ア 引用例8に記載された発明 令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例8(特開2009-244465号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、実施例2(【0084】、【0094】~【0098】、【0105】、【0122】及び【0123】)の「防眩性ハードコートフィルム」の発明として、次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されているものと認められる。 「 透明プラスチックフィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を準備し、 防眩性ハードコート層形成材料として、GRANDIC PC-1070(大日本インキ化学工業(株)製 ハードコート樹脂、固形分:65重量%、屈折率:1.53)の樹脂固形分100重量部あたり、レベリング剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「GRANDIC PC-4100」、固形分10重量%)の固形分が0.5重量部、IRGACURE 184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光重合開始剤)を0.5重量部、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としてアクリル樹脂微粒子(積水化成品工業(株)製、MBX-8SSTN、サイズ:8μm、屈折率:1.49)30重量部、主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としてシリコーン微粒子(東芝シリコーン(株)製、「トスパール145」、サイズ:4.5μm、屈折率:1.43)5重量部を加えたものを、酢酸エチルにより、固形分濃度が50重量%となるように希釈し、超音波洗浄器を用いて5分間攪拌をおこなったものを準備し、 前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩性ハードコート層形成材料を、バーコーターを用いて塗布して塗膜を形成し、この際、防眩性ハードコート層の厚みが25μmとなるように、前記塗膜の厚みを調整し、 ついで、100℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させ、その後、 紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み25μmの防眩性ハードコート層を形成して、得られた防眩性ハードコートフィルムであって、 下記の定義による、ヘイズ値(%)が80%、防眩性がAA、鮮明性がB、精細度(ギラツキ)が、106ppiでA、144ppiでA、212ppiでAであり、 下記の定義による平均黒輝度(cd)が0.19cdのインプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶パネルに装着される、 防眩性および画像の鮮明性に優れ、かつギラツキも効果的に防止されている防眩性ハードコートフィルム。 (ヘイズ値) へイズの測定方法は、JIS K7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。 (防眩性) (1)防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に三菱レイヨン製黒色アクリル板(2.0mmt)を粘着剤にて貼り合わせ裏面の反射をなくす。 (2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて上記で作製したフィルムサンプルの防眩性を目視にて確認した。 判定基準 AA:像の写り込みがほとんどない。 A :像の写り込みはあるが、視認性への影響は小さい。 B :像の写り込みはあるが、実用上問題はない。 C :像の写り込みがある。 (鮮明性) (1)ノート型PC(ソニー社製、商品名VAIO VGN-SZ71B/B(13.3inch、WXGA、1280×800))のパネル表面に、凹凸のない平滑な表面を有する偏光板を実装した。防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層が形成されていない面に粘着剤を積層し、前記偏光板の表面に貼付し、実装した。 (2)前記ノート型PCに一般的な画像を写しだして、暗所にて画像の鮮明性を目視にて確認した。判断基準は以下のとおりである。 A :画像がぼやけるが視認性への影響は小さい(画像が鮮明である)。 B :ぼやけはあるが、実用上問題なし(実用上、鮮明性に問題がない)。 C :ぼやけて著しく視認性が低下する(不鮮明で、実用上問題がある)。 (精細度(ギラツキ)) (1)透明フィルム基材の防眩性ハードコート層が形成されていない面に185μmの偏光板を貼り合せたものをガラス基板に接着する。 (2)ライトテーブル上に固定されたマスクパターン上に作製したフィルムサンプルのギラツキ度合いを目視にて評価した。マスクパターンは精細度が106ppi、144ppi、212ppiのものを準備し、順次判定した。下記判定基準でAになったマスクパターンの精細度を記録した。 判定基準 A :ギラツキがほとんどない。 B :ギラツキはあるが、実用上問題はない。 C :ギラツキがある。 (平均黒輝度の測定) ELDIM社製、製品名「EZContrast160D」を用いて、極角60°における黒輝度を、方位角0~360°において1°刻みで測定し、その平均値を算出して平均黒輝度を求めた。」 (当合議体注:【0123】【表2】の「精細度(ギラツキ)」及び【0096】の「ギラツキ(精細度)」)との記載を、「精細度(ギラツキ)」に統一して記載した。) イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明8とを対比する。 a 引用発明8の形成工程からみて、引用発明8の「防眩性ハードコートフィルム」は、「トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)」である「透明プラスチックフィルム基材の片面に」、「防眩性ハードコート層形成材料を」「塗布して塗膜を形成し」、「乾燥させ」、「紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して」「形成」された「防眩性ハードコート層」を備えるものである。 また、引用発明8の形成工程からみて、引用発明8の「厚み25μmの防眩性ハードコート層」は、「GRANDIC PC-1070」の「樹脂固形分100重量部」あたり、「レベリング剤」の「固形分」「0.5重量部」、「IRGACURE 184」「0.5重量部」、「主に表面凹凸を形成する第1の微粒子として」の「アクリル樹脂微粒子」(MBX-8SSTN、サイズ:8μm、屈折率:1.49)「30重量部」、「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子として」の「シリコーン微粒子」(トスパール145、サイズ:4.5μm、屈折率:1.43)「5重量部」を含むものである。 ここで、引用発明8の「防眩性ハードコート層」は、その文言が意味するとおり、「防眩性」の「層」である。また、引用発明8は、「防眩性を目視にて確認した」際、「防眩性がAA」で「像の写り込みがほとんどない」ものであるところ、引用発明8の「トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)」である「透明プラスチックフィルム基材」は、「防眩性ハードコート層」を「形成」するための「透明」な「基材」である。そうすると、引用発明の「透明プラスチックフィルム基材」自体は、防眩性を有する層ではない。 してみると、引用発明8の「防眩性ハードコート層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。 さらに、引用発明8の「防眩性ハードコートフィルム」は、その文言が意味するとおり、「防眩性」の「フィルム」である。 そうすると、引用発明8の「防眩性ハードコートフィルム」は、本件特許発明1の、「防眩層を備え」とされる、「防眩フィルム」に相当する。 b 引用発明8は、「JIS K7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーターHR300(村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した」「ヘイズ値(%)が80%」「である」。 本件特許発明1の「ヘイズ値」は、本件特許明細書の【0179】によれば、「ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて」、「防眩層の凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置し」、「JIS K7136に準拠して測定した」ものである。 ここで、引用発明8においては、「ヘイズ値(%)」の測定を、「防眩性ハードコート層」の「透明プラスチックフィルム基材」側とは反対側の「第1の微粒子」(「アクリル樹脂微粒子」)により「表面凹凸」が形成される表面を、「ヘイズメーターHR300」の受光器側となるように配置して行っていることは、技術常識から明らかなことである。 してみると、引用発明8の「ヘイズ値(%)」は、本件特許発明1の「ヘイズ値」に対応する。 c 上記aで述べたとおり、引用発明8の「透明プラスチックフィルム基材」は、「防眩性ハードコート層」を「形成」するための「透明」な「基材」である。そうすると、引用発明8の「透明プラスチックフィルム基材」のヘイズは、実質的に0%といえる(当合議体注:「前記第1の微粒子、前記第2の微粒子ともに添加しなかったこと以外は実施例1と同様にし」た比較例1(【0106】)の「ヘイズ値(%)」が0%(【0122】【表1】)であることからも理解できる。)。 してみると、上記bより、引用発明8は、ヘイズ値(%)が「80%」である「防眩性ハードコート層」を備えるということができる。 d 上記aの引用発明8の「防眩性ハードコート層」が含む「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子として」の「シリコーン微粒子」である「トスパール145」は、「サイズ:4.5μm」であるところ、当該「サイズ」は、「平均粒径」を意味すると当業者は理解する(例えば、特開2009-20502号公報の【0079】の「シリコーン粒子(GE東芝シリコーン(株)製トスパール(登録商標)、トスパール145、屈折率1.42、平均粒径4.5μm、変動係数CV12%)」との記載を参照。)。 上記「トスパール145」の平均粒径からみて、引用発明8の「トスパール145」は、本件特許発明1の、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲に設定された複数の」とされる、「微粒子」に相当する。 また、引用発明8の形成工程からみて、「防眩性ハードコート層」には、「アクリル樹脂微粒子」及び「シリコーン微粒子」が分散しており、主に「アクリル樹脂微粒子」により表面凹凸を形成しているといえる。 e 上記a~dより、引用発明8は、本件特許発明1の「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値であり、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む防眩層を備え」との要件を具備する。 f 以上より、本件特許発明1と引用発明8は、 「 ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値であり、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む防眩層を備える、 防眩フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点8-1-1) 本件特許発明1は、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である」のに対して、引用発明8は、そのようなものであるかどうか一応分からない点。 (相違点8-1-2) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値であ」るのに対して、引用発明8は、そのようなものであるかどうか一応分からない点。 (相違点8-1-3) 本件特許発明1の防眩層には、「前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」るのに対して、引用発明8には、「主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としてアクリル樹脂微粒子」と、「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としてシリコーン微粒子」が分散しているものの凝集しておらず、主に「アクリル樹脂微粒子」により表面凹凸を形成している点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点8-1-3について検討する。 引用文献8の背景技術についての、「パネルの高精細化、高視野角化が要求されるなか、高ヘイズなアンチグレアフィルムを使用したパネルが必要となってきている・・・。しかし、高ヘイズのフィルムは光の拡散性が高く、液晶パネルに実装すると、斜めに抜けるはずの光を正面方向に拡散してしまうなどしてしまうため、正面の黒輝度が高くなってしまい、正面コントラスト比の低下を引き起こすことがあった。」(【0002】)との記載、発明が解決しようとする課題についての、「本発明は、正面コントラスト比を大幅に低下させることなく、斜めコントラスト比を改善して、視野角を拡大することができ、また、ギラツキ現象を低減させ、高精細のパネルにも対応することができる防眩性ハードコートフィルム、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置の提供を目的とする。」(【0004】)との記載、発明を実施するための最良の形態についての、「前記微粒子としては、少なくとも1種類以上を含むが、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子と主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子とを含むことが好ましい。前記第1の微粒子と前記第2の微粒子とを組み合わせることにより、防眩性ハードコートフィルムのヘイズ値を60%以上とするための、前記主に表面凹凸を形成する微粒子の添加量を減らすことができる。」(【0034】)との記載に基づけば、主に表面凹凸を形成する第1の微粒子と主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子とを含むことの技術的意義は、内部ヘイズにより防眩性ハードコートフィルムのヘイズ値を高いものとしつつ、主に表面凹凸を形成する微粒子の添加量を減らして光の拡散性を制御することにあるといえる。このような技術的意義に基づいて、「主に表面凹凸を形成する第1の微粒子としてアクリル樹脂微粒子」及び「主に内部ヘイズを調整する第2の微粒子としてシリコーン微粒子」を併用する引用発明8において、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子の凝集により、防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されるように変更することは、上記技術的意義を阻害することになる。そうすると、仮に、複数の微粒子の凝集により、防眩層の表面に凹凸の分布構造を形成することが周知技術であったとしても、そのような構成を採用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「引用例8には、複数の粒子を凝集した構成を排除するようなことは全く記載されていない。」(第2頁)、「【0053】の記載からは、引用発明8の第2の粒子であるシリコーン微粒子も表面凹凸の形成に寄与しているといえる。」(第3頁)、「防眩層の粒子を凝集させることは、引用例3の[0022]、[0031]に記載されているように周知の事項であるから、相違点1に係る構成は、引用発明8から当業者が適宜なし得ることである。」(第3頁)と主張している。 しかし、引用例8に、複数の粒子を凝集した構成を排除する記載がないとしても、上記のとおり、引用発明8において、複数の粒子を凝集した構成を採用する動機付けがない。 ウ 本件特許発明4及び本件特許発明5について 本件特許発明4又は本件特許発明5と、引用発明8とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点8-1-3において相違する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (3)引用例1を主引用例とする新規性及び進歩性 ア 引用例1に記載された発明 特許異議申立人が甲第1号証として引用し、令和3年6月10日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例1(特開2014-6448号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、引用例1でいう「本発明」の実施例である、実施例7(【0115】、【0116】、【0121】~【0126】、【0130】、【0131】、【0138】~【0141】、【0143】、【0146】)の「光学フィルム」の発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「 透明フィルムとして、トリアセチルセルロールフィルム(厚み80μm)を用い、このフィルムの上に、以下の方法で調整されたハードコート層塗工液SNC-7をバーコーター#18を用いて塗工した後、50℃で1分間乾燥させ、塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層を形成して得られた、防眩フィルムとして有用である光学フィルムであって、ハードコート層の厚みは約7μmであり、各種特性を以下の方法で測定した結果が、ヘイズ値が70.42%、0.5mm幅の光学櫛における透過鮮明度が4.1%であり、映り込みが◎、ギラツキが◎である、光学フィルム。 [塗工液の調製] (ハードコート層塗工液:SNC-7) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(屈折率1.51)70重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(屈折率1.51)30重量部及びセルロースプロピオネートアセテート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000)1.0重量部、さらにシリコーンアクリレート0.02重量部、ATO粒子[日揮触媒化成(株)製「ELCOM SH-1212ATV」、粒径8nm、20重量%のアルコール(エタノール/イソプロパノール=80/20(重量比)の混合溶媒)分散液]を2.5重量部を添加し、2-ブタノン290重量部、1-メトキシ-2-プロパノール185重量部および1-ブタノール25重量部の混合液に溶解した。この溶液に、光重合開始剤A(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア184」)2重量部及び光重合開始剤B(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア907」)1重量部を加えて溶解した。さらに、この溶液に、セルロースナノファイバー((株)ダイセル製、平均繊維径約200nm、平均繊維長さ約5μm、2重量%のイソプロパノール分散液)を100重量部加え、30分間超音波をかけて分散を行い、ハードコート層塗工液:SNC-7を調製した。 [ヘイズ及び全光線透過率(TPP)] ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。 [透過像(写像)鮮明度] 光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。 [映り込みの評価] 表示面における映り込みの判定は、得られた光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、蛍光灯の光を映り込ませ、目視にて以下の基準で評価した。 ◎:蛍光灯の存在が確認できない ○:蛍光灯の存在がわずかに確認できる ×:蛍光灯の存在がはっきりと確認できる。 [ギラツキの評価] 表示面におけるギラツキの判定は、6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)上に、得られた光学フィルムを配設し、白表示として目視にて以下の基準で評価した。なお、用いたLCDディスプレイの表層側偏光板は、クリアタイプの偏光板であった。 ◎:ギラツキが感じられない ○:ギラツキが僅かに感じられる ×:ギラツキが感じられる。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の形成工程からみて、引用発明1の「光学フィルム」は、「トリアセチルセルースフィルム(厚み80μm)」の上に、「ハードコート層塗工液SNC-7」を「塗工」した後、「乾燥」させ、「紫外線硬化処理」を行って形成した、厚みが約7μmの「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」を備えるものである。 ここで、引用発明1は、「映り込みが◎」(蛍光灯の存在が確認できない)という、映り込みがないものであり、引用例1における【0003】の「防眩処理は、表面に微細な凹凸構造を形成することにより、表面反射光を散乱し、映り込み像をぼかす効果を発現させる処理」であるとの記載からみて、引用発明1の「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」により防眩性を発現していると理解できる。 そうすると、引用発明1の「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。また、引用発明1の「光学フィルム」は、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。 b 上記aから、引用発明1の「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」は、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」「ペンタエリスリトールトリアクリレート」、「セルロースプロピオネートアセテート」及び「シリコーンアクリレート」からなる「光硬化性樹脂」(【0026】)を「硬化性樹脂前駆体」として含み、光重合開始剤A「イルガキュア184」と光重合開始剤B「イルガキュア907」と、粒径8nmの「ATO粒子」と、平均繊維長さ約5μmの「セルロースナノファイバー」を分散させた「ハードコート層塗工液」を、紫外線硬化処理して得られた層である。 また、引用例1の【0061】における「溶剤のへの溶解性が高く、塗工液の調製がし易い上に、少量の添加によって塗工液の粘度調節が容易にできるとともに、塗工液でのセルロースナノファイバーの凝集を抑制し、保存安定性を高めるため、・・・セルロースアセテートプロピオネート・・・などのセルロースC2-4アシレート(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3-4アシレート)が好ましい。」との記載からみて、引用発明1の「セルロースナノファイバー」は凝集が抑制されていると理解できる。 そうすると、引用発明1の「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」には、粒径8nmの「ATO粒子」及び平均繊維長さ約5μmの「セルロースナノファイバー」が分散しており、分散した「セルロースナノファイバー」により、「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」の表面に凹凸の分布が形成されているといえる。 したがって、本件特許発明1と引用発明1とは、「複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子が分散しており、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」ている点で共通する。 c 引用発明1の「ヘイズ値」は、「JIS K7136に準拠して測定した」ものである。また、本件特許明細書の【0024】には、「本実施形態で示すヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法により測定した値である。」と記載されている。そうすると、引用発明1における「ヘイズ値」は、本件特許発明1における「ヘイズ値」に相当する。 引用発明1は、上記ヘイズ値が「70.42%」である。そうすると、引用発明1は、本件特許発明1の「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値」であるとする要件を満たしている。 d 引用発明1の「透過鮮明度」は、「JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した」ものである。また、本件特許明細書の【0180】には、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。」と記載されている。そうすると、引用発明1における「透過鮮明度」は、本件特許発明1における「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」に相当する。 引用発明1は、「透過鮮明度が4.1%」である。そうすると、引用発明1は、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値」であるとする要件を満たしている。 e 以上より、本件特許発明と引用発明1は、 「 ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値であり、複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子が分散しており、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され、 光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である、 防眩フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-1-1) 防眩層が、本件特許発明1では、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された」複数の微粒子を含むのに対し、引用発明1では、「粒径8nm」の「ATO粒子」及び「平均繊維径約200nm、平均繊維長さ約5μm」の「セルロースナノファイバー」を含む点。 (相違点1-1-2) 本件特許発明1は、複数の微粒子の「凝集」が分散しており、防眩層の表面の凹凸の分布構造が、分散した複数の微粒子の「凝集」により形成されるのに対し、引用発明1は、「ATO粒子」が凝集しておらず、「ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層」の凹凸の分布構造が、「ATO粒子」の凝集により形成されるものではない点。 (相違点1-1-3) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」であるのに対して、引用発明1はそのようなものであるかどうか不明である点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点1-1-1について検討する。 上記相違点1-1-1は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、引用発明1と同一であるとはいえない。 そして、引用例1の【0046】には「ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の平均繊維径は、ナノメータサイズであれば特に限定されないが、例えば、10~500nmであり、好ましくは30~400nm、さらに好ましくは50~300nm(特に100~250nm)程度である。平均繊維径が小さすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。平均繊維径が大きすぎると、微細な凹凸構造を形成するのが困難となる。本発明では、粒径の大きな粒子を用いることなく、ナノメータサイズのファイバーを用いて特定の条件で製造することにより、微細な凹凸構造を形成できる。」と記載されている。また、粒径4.6μmの透光性第一微粒子、及び、透光性第二微粒子を含むハードコート層を有する比較例1~3の光学フィルムが、実施例の光学フィルムよりも、光学特性が劣ることが開示されている。 これらの記載に基づけば、引用発明1は、微粒子ではなく、ナノファイバーによって微細な凹凸構造を形成するものであって、微粒子によって生じる光学特性の劣化を防止しようとするものと理解できる。そうすると、引用発明1のハードコート層に、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された」複数の微粒子を含むように構成する動機付けがあるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件特許発明4及び本件特許発明5について 本件特許発明4又は本件特許発明5と、引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点1-1-1において相違する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (4)引用例2を主引用例とする新規性及び進歩性 ア 引用例2に記載された発明 特許異議申立人が甲第2号証として引用し、令和3年6月10日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例2(特開2009-48092号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、実施例(【0048】~【0059】)で得られた「光学積層体」の発明として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「 樹脂層用塗料として、以下の塗料成分からなる混合物をサンドミルにて1時間分散することによって得られた塗料を、膜厚80μm、全光線透過率92%からなる透光性基体のTACの片面上に、ダイヘッドコーティング方式にて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射(照射距離10cm、照射時間30秒)を行い、塗工膜を硬化させて得た光学積層体であって、 以下の評価方法による評価結果が、膜厚13.0μm、全ヘイズ値55.0、内部ヘイズ値52.8、全光線透過率91.8、画像鮮明度56.8、視野角特性○、防眩性○、ギラツキ○、コントラスト○である、光学積層体。 (塗料成分) 多官能アクリレート(A-TMM-3L) 58.5重量部 多官能ウレタン系アクリレート(UA-306H)25.0重量部 架橋ポリスチレン:粒径8μm(SBX-8) 6.0重量部 架橋PMMA:粒径8μm(MBX-8) 6.0重量部 光重合開始剤(イルガキュア 184) 4.0重量部 レベリング剤(BYK-323) 0.5重量部 溶剤(MEK) 90.0重量部 溶剤(シクロヘキサン) 10.0重量部 ヘイズ値は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。 内部ヘイズを測定する際に使用した粘着剤付透明性シートは、以下の通りである。 透明性シート:成分 ポリエチレンテレフタラート(PET) 厚さ 38μm 粘着材層 :成分 アクリル系粘着剤 厚さ 10μm 粘着剤付透明性シートのヘイズ 3.42 全光線透過率は、JIS K7105に従い、上記ヘイズメーターを用いて測定した。 透過像鮮明度は、JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM-1DP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定した。 防眩性は、透過画像鮮明度の値が0~30のとき◎、31~70のとき○、71~100のとき×とした。 視野角特性は、暗室下で液晶パネルにピンク画像を表示し、仰角を45°に固定したときの、視野角0°、15°、30°、45°、60°における色度u’とv’の値を色彩輝度計にて測定した。更に、ISO-CD9241 303の6.4.2節の色の均一性の項目に基づき、Δ(u’v’)<0.02のとき色が均一であるとし、そのときの最大視野角を算出した。そして、最大視野角の絶対値が40°以上のとき○、40°未満のとき×とした。 ギラツキは、各実施例および各比較例の光学積層体の樹脂層形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して解像度が50ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC-32GD4、シャープ社製)と、解像度が100ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LL-T1620-B、シャープ社製)と、解像度が120ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC-37GX1W、シャープ社製)と、解像度が140ppiの液晶ディスプレイ(商品名:VGN-TX72B、ソニー社製)と、解像度が150ppiの液晶ディスプレイ(商品名:nw8240-PM780、日本ヒューレットパッカード社製)と、解像度が200ppiの液晶ディスプレイ(商品名:PC-CV50FW、シャープ社製)の画面表面にそれぞれ貼り合わせ、暗室にて液晶ディスプレイを緑表示とした後、各液晶TVの法線方向から解像度200ppiのCCDカメラ(CV-200C、キーエンス社製)にて撮影した画像において、輝度バラツキが確認されない時の解像度を測定した。解像度の値が、0~50ppiのとき×、51~140ppiのとき○、141~200ppiのとき◎とした。 コントラストは、実施例及び比較例の光学積層体形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC-37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、液晶ディスプレイ画面の正面上方60°の方向から蛍光灯(商品名:HH4125GL、ナショナル社製)にて液晶ディスプレイ表面の照度が200ルクスとなるようにした後、液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM-5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m2)と白表示時の輝度(cd/m2)を以下の式にて算出した時の値が、600~800のとき×、801~1000のとき○、1001~1200のとき◎とした。 コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明2とを対比する。 a 引用発明2の「光学積層体」の形成工程からみて、引用発明2の「光学積層体」は、「透光性基体のTAC」の片面上に、「多官能アクリレート(A-TMM-3L)」、「多官能ウレタン系アクリレート(UA-306H)」、粒径8μmの「架橋ポリスチレン」(SBX-8)、粒径8μmの「架橋PMMA」(MBX-8)、「光重合開始剤」(イルガキュア 184)、「レベリング剤」(BYK-323)」を硬化して得られた「樹脂層」を有すると理解できる。 b 上記aから、引用発明2の「透光性基体のTAC」の片面上に形成された「樹脂層」には、粒径8μmの「架橋ポリスチレン」(SBX-8)及び粒径8μmの「架橋PMMA」(MBX-8)が分散していると理解できる。 そして、引用例2の【0029】における「放射線硬化型樹脂層に含まれる透光性樹脂微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機透光性樹脂微粒子を使用することができる。・・・透光性樹脂微粒子の平均粒径は、0.3~10μmの範囲のものが好ましく、1~8μmがより好ましい。粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また10μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。」との記載に基づけば、粒径8μmの「架橋ポリスチレン」(SBX-8)及び粒径8μmの「架橋PMMA」(MBX-8)により、「樹脂層」の表面に凹凸の分布構造が形成され、この凹凸の分布構造により防眩性を発揮しているといえる。 したがって、引用発明2の「樹脂層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当し、引用発明2の「光学積層体」は、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。また、本件特許発明1と引用発明2とは、「複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子が分散しており、分散した前記複数の微粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」ている点で共通する。 c 引用発明2の「全ヘイズ値」は、「JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した」ものである。一方、本件特許明細書の【0024】には、「本実施形態で示すヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法により測定した値である。」と記載されている。 d 引用発明2の「透過像鮮明度」は、「JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM-1DP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定した」ものである。また、本件特許明細書の【0180】には、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。」と記載されている。そうすると、引用発明2における「透過鮮明度」は、本件特許発明1における「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」に相当する。 引用発明2は、「画像鮮明度56.8」である。そうすると、引用発明2は、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値」であるとする要件を満たしている。 e 以上より、本件特許発明1と引用発明2は、 「 複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子が分散しており、分散した前記複数の微粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され、 光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である、 防眩フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点2-1-1) 本件特許発明1は、「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値」であるのに対し、引用発明2は、JIS K7105に従い、上記ヘイズメーターを用いて測定した全ヘイズ値が55.0であるものの、本件特許発明1の「ヘイズ値」と引用発明2の「全ヘイズ値」とが同じ値であるかが明らかでない点。 (相違点2-1-2) 本件特許発明1は、防眩層に含まれる微粒子が「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値」に設定されており、防眩層に微粒子の「凝集」が分散しており、分散した複数の微粒子の「凝集」により、防眩層の表面に凹凸の分布が形成されるのに対し、引用発明2は、「架橋ポリスチレン」(SBX-8)及び「架橋PMMA」(MBX-8)の粒径が8μmであり、「凝集」していない点。 (相違点2-1-3) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」であるのに対し、引用発明2は、そのようなものであるのかどうか一応分からない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点2-1-2について検討する。 引用例2の【0014】の記載によると、引用発明2は、「光学積層体の表面に微細構造を構築しつつ、内部ヘイズ値と全ヘイズ値を変動させると、これまでトレードオフの関係になると考えられていた防眩機能、高コントラスト、ギラツキ防止、色再現性の機能のいずれもが最適化される範囲が存在することを見出し、本発明を完成させたものである。」とされている。そして、引用例2の【0029】には、「放射線硬化型樹脂層に含まれる透光性樹脂微粒子としては、・・・有機透光性樹脂微粒子を使用することができる。・・・透光性樹脂微粒子の平均粒径は、0.3~10μmの範囲のものが好ましく、1~8μmがより好ましい。粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また10μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。また、上記樹脂中に含まれる透光性樹脂微粒子の割合は特に限定されないが、樹脂組成物100重量部に対し、1~20重量部とするのが防眩機能、ギラツキ等の特性を満足する上で好ましく、樹脂層表面の微細な凹凸形状とヘイズ値をコントロールし易い。」と記載されている。 これらの記載に基づけば、引用発明2における「架橋ポリスチレン」及び「架橋PMMA」の粒径は、内部ヘイズ値と全ヘイズ値と共に樹脂層の表面凹凸の程度をコントロールするために、「0.3~10μm」の範囲に設定されたものである。引用発明2の「架橋ポリスチレン」又は「架橋PMMA」を凝集させた場合、樹脂層の表面凹凸の程度に影響を与えることは明らかであり、ヘイズ値とともに樹脂層表面の微細な凹凸形状をコントロールすることが困難となる。 そうすると、引用発明2において、「架橋ポリスチレン」又は「架橋PMMA」を凝集させたものとする動機付けがあるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 ウ 本件特許発明4及び本件特許発明5について 本件特許発明4又は本件特許発明5と、引用発明2とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点2-1-2において相違する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (5)引用例3を主引用例とする新規性及び進歩性 ア 引用例3に記載された発明 特許異議申立人が甲第3号証として引用し、令和3年6月10日付け、及び、令和6年1月30日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例3(国際公開第2016/103685号)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、実施例8([0052]~[0055]、[0057],[0058]、[0065]~[0068])の「光学積層体」の発明として、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「 透光性基体として、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用し、透光性基体上に、樹脂粒子及び2種類の無機微粒子を、以下に記載の添加量で添加した光学機能層形成用塗工液を塗布し、乾燥(溶媒を揮発)させた後、塗膜を重合により硬化させることによって、光学機能層を形成して作製した、光学積層体であって、 以下のとおりの測定方法で測定した、透過像鮮明度が15%、全ヘイズ値が55.5%であり、耐ギラツキ性が○、防眩性が○である、光学積層体。 [光学機能層形成用塗工液] ・基材樹脂:UV/EB硬化性樹脂 ライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学株式会社製)、屈折率1.52 ・樹脂フィラー:架橋スチレン単分散粒子 SX350H(綜研化学株式会社製) 平均粒径3.5μm、屈折率1.595、添加量14.5% ・コロイダルシリカ:オルガノシリカゾル MEK-ST(日産化学工業株式会社製)1.2% ・合成スメクタイト:ルーセンタイト SAN(コープケミカル株式会社製)、添加量2.0% ・フッ素系レベリング剤:メガファック F-471(DIC株式会社製) 0.1% ・溶剤:トルエン [透過像鮮明度] 透過像鮮明度は、JIS K7105に従い、写像性測定器(ICM-1T、スガ試験器株式会社製)を用いて、光学くし幅0.5mmで測定した。 [ヘイズ値] ヘイズ値は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。ここで、光学積層フィルムのヘイズ値を全ヘイズとした。また、光学積層フィルムの微細凹凸形状が設けられた表面に粘着剤付き透明性シートを貼り合わせて測定したヘイズ値から、粘着剤付き透明性シートのヘイズ値を引いた値を、内部ヘイズとした。尚、粘着材付き透明性シートとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)に、アクリル系粘着材(厚さ10μm)を塗布したものを用いた。 (耐ギラツキ性の評価方法と評価基準) 耐ギラツキ性は、各実施例及び各比較例の光学積層体を透明な粘着層を介して液晶モニター(iPad3(第3世代) アップルインコーポレイテッド製、264ppi)の画面表面に貼り合わせた後、液晶モニターを緑色表示状態にし、暗室下で画面表面の中心から垂直に50cm離れた場所より液晶モニターを見た場合のギラツキの有無を任意の100人の目視判定により評価した。評価結果は、ギラツキを感じなかった人が70人以上の場合を「○」、30人以上70人未満の場合を「△」、30人未満の場合を「×」とした。 (防眩性の評価方法と評価基準) 防眩性は各実施例及び各比較例の光学積層体を透明な粘着層を介して黒色アクリル板(スミペックス960 住友化学株式会社製)に貼り合せた後、黒アクリル板の中心から垂直に50cm離れた場所より照度250lxの条件下で見た場合の自分の像(顔)の黒アクリル板への写り込みの有無を任意の100人の目視判定により評価した。評価結果は、写り込みを感じなかった人が70人以上の場合を「○」、30人以上70人未満の場合を「△」、30人未満の場合を「×」とした。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明3とを対比する。 a 引用発明3の「光学積層体」の作製工程からみて、引用発明3の「光学積層体」は、「透光性基体」上に、基材樹脂として「UV/EB硬化性樹脂 ライトアクリレートPE-3A」(ペンタエリスリトールトリアクリレート)」、樹脂フィラーとして「架橋スチレン単分散粒子 SX350H」(平均粒径3.5μm)、第1の無機微粒子(コロイダルシリカ)として、「オルガノシリカゾル MEK-ST」、第2の無機微粒子(合成スメクタイト)として「ルーセンタイト SAN」、フッ素系レベリング剤として「メガファック F-471」を含む「光学機能層形成用塗工液」を「塗布」し、「乾燥」させた後、「硬化」させることによって形成された「光学機能層」を有するものと理解できる。 b 引用発明3の「光学積層体」は、「防眩性が○」(写り込みを感じなかった人が70人以上)である。 ここで、引用発明3の「透光性基体」としての「厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム」は、ヘイズが実質0%の透明な基体であることは、技術常識から明らかである。そうすると、引用発明3の「光学積層体」が示す「全ヘイズ値」、「耐ギラツキ性」、「防眩性」は、「光学機能層」により主に生じていると理解できる。 そうすると、引用発明3の「光学機能層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。また、引用発明3の「光学積層体」は、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。 c 上記aから、引用発明3の「透光性基体」上に形成された「光学機能層」には、平均粒径3.5μmの「架橋スチレン単分散粒子」と第1の無機微粒子(コロイダルシリカ)、第2の無機微粒子(合成スメクタイト)が分散していると理解できる。そして、引用例3の[0022]における「光学機能層に添加する樹脂粒子(有機フィラー)は、基材樹脂中で凝集して、光学機能層の表面に微細な凹凸構造を形成する。」との記載に基づけば、引用発明3は、平均粒径3.5μmの「架橋スチレン単分散粒子」が、基材樹脂中で凝集して、光学機能層の表面に微細な凹凸構造を形成していると理解できる。 そうすると、引用発明3の平均粒径3.5μmの「架橋スチレン単分散粒子」は、本件特許発明1の「複数の微粒子」に相当し、防眩層が「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む」とする要件、「前記複数の微粒子の凝集が分散しており」、「分散した複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され」るとする要件を満たしている。 d 引用発明3の「ヘイズ値」は、「JIS K7105に従い、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した」ものである。一方、本件特許明細書の【0024】には、「本実施形態で示すヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法により測定した値である。」と記載されている。 e 引用発明3の「透過像鮮明度」は、「JIS K7105に従い、写像性測定器(ICM-1T、スガ試験器株式会社製)を用いて、光学くし幅0.5mmで測定した」ものである。また、本件特許明細書の【0180】には、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。」と記載されている。そうすると、引用発明3における「透過像鮮明度」は、本件特許発明1における「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」に相当する。 引用発明3は、「透過像鮮明度が15%」である。そうすると、引用発明3は、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値」であるとする要件を満たしている。 f 以上より、本件特許発明1と引用発明3とは、 「 平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定された複数の微粒子を含む防眩層を備え、前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成され、 光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である、 防眩フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点3-1-1) 本件特許発明1は、「ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値」であるのに対し、引用発明3は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した全ヘイズ値が55.5%であるものの、本件特許発明1の「ヘイズ値」と引用発明3の「全ヘイズ値」とが同じ値であるかが明らかでない点。 (相違点3-1-2) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」であるのに対し、引用発明3は、そのようなものであるのかどうかが分からない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点3-1-2について検討する。 引用発明3は、「耐ギラツキ性が○」(264ppiの画面表面に貼り合わせた後、暗室下で画面表面の中心から垂直に50cm離れた場所より液晶モニターを見た場合のギラツキの有無を任意の100人の目視判定により評価した結果、ギラツキを感じなかった人が70人以上)というものであるが、「近年の液晶パネルの高精細化により、既存の防眩性フィルムで防眩性とコントラストとを従来通りに維持した場合、ギラツキが発生してしまう。」(引用文献3の段落[0008])ことから、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着」した場合において、同程度の耐ギラツキ性を奏するとまではいえない。そうすると、引用発明3が、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」とする要件を満たすとまではいえない。 次に、引用発明3が上記要件を満たすものとすることが当業者が容易になし得たことといえるかについて検討する。 まず、動機付けについて検討すると、引用例3の段落[0009]に基づけば、引用発明3は、「画像表示パネル、特に、200ppi以上の高精細な画像表示パネルに適用した場合に、防眩性及びコントラストを維持しつつ、ギラツキを抑制できる光学積層体・・・を提供することを目的とする」([0009])ものであるといえる。そして、引用例3の段落[0008]には、さらに、「近年の液晶パネルの高精細化により、既存の防眩性フィルムで防眩性とコントラストとを従来通りに維持した場合、ギラツキが発生してしまう。その一方で、耐ギラツキ性を向上させるためには、防眩性やコントラストを犠牲にする必要がある。」と記載されており、背景技術として、「従来、粒子(フィラー)の形状、粒径、屈折率、塗料物性(粘度)、塗工プロセスなどの調整により、表面の凹凸構造(外部散乱)と内部散乱との最適化を図り、防眩性、耐ギラツキ性、高コントラストの改善が図られてきた。」([0003])、「防眩性は、粒径の大きいフィラーの使用、フィラー添加量の増量、フィラーの凝集を強めることにより高くなる。この場合、凹凸数が増え、また、凹凸サイズが大きくなることで防眩性は高まるが、レンズ効果の増加により耐ギラツキ性が悪化する。」([0004])と記載されている。これらの記載から、同じ防眩性フィルムであっても、より高精細化した画像表示パネルに適用した場合には、ギラツキが発生することが、従来より認識されていたことが理解できる。また、従来より、粒子(フィラー)の形状、粒径等を調整することにより防眩性、耐ギラツキ性等の改善が図られていたところ、粒径の大きいフィラーを使用したり、フィラー添加量を増量したり、フィラーの凝集を強めると、凹凸数が増え、また、凹凸サイズが大きくなることで防眩性は高まるものの、レンズ効果の増加により耐ギラツキ性が悪化していたことを前提とした上で、引用発明3は、防眩性及びコントラストを維持しつつ、ギラツキを抑制することを課題としていると理解できる。 次に、引用例3において開示された、ギラツキを抑制するための手段について検討すると、引用例3には、発明を実施するための形態として、「樹脂粒子の平均粒径は、0.3~10.0μmであることが好ましく、1.0~7.0μmであることがより好ましい。樹脂粒子の平均粒径が0.3μm未満の場合、防眩性が低下する。樹脂粒子の平均粒径が10.0μmを超えると、光学機能層表面の凹凸高さの面積比を制御できず、耐ギラツキ性が悪化する。」([0025])、「第1の無機微粒子を添加することにより、樹脂粒子の過剰な凝集が抑制され、光学機能層の表面に形成される凹凸構造を均一化、すなわち、局所的に凹凸が大きくなることを抑制できる。第1の無機微粒子の添加により、防眩性及び高コントラストを維持したまま、耐ギラツキ性を向上できる。」([0027])、「第1の無機微粒子の添加量は、光学機能層形成用樹脂組成物の全重量に対して0.05~10%であることが好ましく、0.1~5.0%であることがより好ましい。第1の無機微粒子の添加量がこの範囲を外れると、光学機能層表面の凹凸高さの面積比を制御できず、耐ギラツキ性が悪化する。」([0028])、「第2の無機微粒子として、例えば、合成スメクタイト(層状有機粘土鉱物)を使用できる。・・・増粘剤としての合成スメクタイトの添加は、樹脂粒子及び第1の無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸構造形成に寄与する。」([0030])、「第1の無機微粒子と第2の無機微粒子とを併用した場合、光学機能層中で第1の無機微粒子と第2の無機微粒子が凝集体を形成する。この凝集体が樹脂粒子の凝集を抑制し、光学機能層表面の凹凸形状の凹凸高さが平準化されることで、光学機能層表面での光の散乱が均一化され、耐ギラツキ性を向上できる。」([0031])との記載がある。なお、「凹凸高さとは、測定面の全ての凹凸高さの平均レベル(高さ0)を基準とした、測定面に対して直交する方向の凹部及び凸部のレベル差をいう。また、凹凸高さの面積比率とは、測定面積に対して、所定の凹凸高さ以上の領域が占める比率をいう。」([0088])との記載から、光学機能層表面の凹凸高さの面積比を制御するとは、所定の凹凸高さ以上の領域が占める比率を制御することであると理解できる。これらの記載に基づけば、引用発明3は、従来より行われていた粒子(フィラー)の形状、粒径等の調整に加えて、第1の無機微粒子と第2の無機微粒子を併用することにより、第1の無機微粒子の添加により樹脂粒子の過剰な凝集の抑制と光学機能層の表面に形成される凹凸構造を均一化すると共に、第2の無機微粒子の添加により樹脂粒子及び第1の無機微粒子の沈降を抑制し、高精細な画像表示パネルに対応させて光学機能層表面の「凹凸高さの面積比」を制御することにより凹凸高さを「平準化」することで、防眩性及びコントラストを維持しつつ、耐ギラツキ性の向上を図るものと理解できる。なお、下図に示すように、樹脂粒子の沈降が抑制されると、凹凸形状は急峻となる。 [図:0001413274000004.jpg] 引用例3に示された課題を解決するための手段に従えば、凹凸数や凹凸サイズを大きく変更しないことで、防眩性を維持するとともにレンズ効果の増加による耐ギラツキ性の悪化を回避し、さらに、第1の無機微粒子及び第2の無機微粒子の添加により、高精細な画像表示パネルに対応させて、樹脂粒子の沈降を抑制しつつ、凹凸高さを平準化することにより、200ppi以上の高精細な画像表示装置の防眩性フィルムとして用いた場合でも、耐ギラツキ性において優れた性能を発揮できるものと理解できる。 しかし、引用例3の段落[0089]には、「また、実施例2と比較例6とを比べると、凹凸高さが0.4μm以上である領域の面積比率において特に差が認められた。すなわち、実施例2では、凹凸高さが0.4μm以上である領域の面積比率が3.5%以下となるように光学機能層表面の凹凸形状を形成したことによって、耐ギラツキ性が向上していると考えられる。逆に、比較例6では、凹凸高さが0.4μm以上である領域の面積比率が3.5%を超え、図4に示したような、凹凸高さが相対的に大きい部分が多く形成されるために、一般的な表面粗さの測定値が実施例2とさほど変わらないにもかかわらず、耐ギラツキ性が悪化していると考えられる。」と記載されている。なお、引用発明3(実施例8)において用いられている「樹脂フィラー」と上記実施例2において用いられている「樹脂フィラー」の平均粒径は、いずれも「3.5μm」である。当該記載に基づけば、引用例3には、樹脂粒子の沈降を抑制して凹凸形状を急峻とすることが示唆されているものの、その凹凸高さは、平均値が0.4μmを超えることを想定していないといえる。一方、本件特許の段落【0136】、【0152】、【0188】の記載によれば、ビーズ(シリカ微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである実施例5について、「シリカ粒子の凝集が激しく生じ、防眩層3の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成できた」と記載されている。そうすると、本件特許発明1における「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」との要件は、引用例3が示唆する範囲を超えた構造によって得られるものといえる。 したがって、引用例3に示された課題解決手段に従ったとしても、当業者が「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値」との要件を満たすものとすることが容易になし得たとはいえない。 特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「引用例2及び3を主引例とする理由2の取消理由は、一旦は解消したものの、訂正発明1では、ヘイズ値を『650%以上99%以下』に戻されているため、訂正発明1、4は、引用例2及び3を主引例とする理由2の取消理由により取り消されるべきものと思料する(引用例3には、[0022]、[0031]に凝集に関する記載があることを付言する。」(第3頁第21行~第4頁第1行)と主張している。 引用例3の段落[0022]には、「光学機能層に添加する樹脂粒子(有機フィラー)は、基材樹脂中で凝集して、光学機能層の表面に微細な凹凸構造を形成する。」と記載されており、段落[0031]には、「また、第1の無機微粒子と第2の無機微粒子とを併用した場合、光学機能層中で第1の無機微粒子と第2の無機微粒子が凝集体を形成する。この凝集体が樹脂粒子の凝集を抑制し、光学機能層表面の凹凸形状の凹凸高さが平準化されることで、光学機能層表面での光の散乱が均一化され、耐ギラツキ性を向上できる。」と記載されている。これらの記載を参照すれば、引用発明3の「樹脂フィラー」が凝集して光学機能層の表面に微細な凹凸構造を形成するとしても、その凝集の程度は、光学機能層表面の凹凸形状の凹凸高さが平準化されるように抑制される。そして、その抑制の程度は、既に検討したとおり、その凹凸高さが0.4μmを超えないようにするものであり、本件特許の実施例5のように、凝集が激しく生じて、防眩層の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成するものとまではいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ 本件特許発明4及び本件特許発明5について 本件特許発明4又は本件特許発明5と、引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点3-1-2において相違する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許発明1、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2、3に係る特許異議の申立ては、本件訂正請求によって、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700209

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