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特許異議申立

2021-700175

防眩フィルム

審判番号
2021-700175
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-533967
登録番号
6743305
請求日
2021年02月18日
審決日
2024年02月16日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ダイセル
  • 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
  • 【異議申立人】前田 しのぶ
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 宮澤 浩
  • 審判官 関根 洋之
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6743305号発明「防眩フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6743305号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6743305号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。 特許第6743305号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6743305号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019-533967号)は、2018年(平成30年)6月25日(先の出願に基づく優先権主張 2017年(平成29年)8月4日)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月31日にその特許権の設定の登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許について、その発行の日から6月以内である令和3年2月18日に、特許異議申立人前田しのぶ(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和3年 4月30日付け:取消理由通知書 令和3年 6月30日付け:訂正請求書 令和3年 6月30日付け:意見書(特許権者) 令和3年 8月24日付け:意見書(特許異議申立人) 令和3年12月 6日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和4年 2月10日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の 請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和4年 2月10日付け:意見書(特許権者) 令和4年 4月 5日付け:意見書(特許異議申立人) 令和4年 9月 6日付け:審尋 令和4年10月 7日付け:回答書(特許権者) 令和5年 9月 4日付け:上申書(特許異議申立人) なお、令和3年6月30日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第6743305号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ヘイズ値が50%以下となる範囲の値に設定された防眩層」と記載されているのを、「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定された防眩層」に訂正する。また、特許請求の範囲の請求項1に記載の「防眩フィルム。」を、「防眩層には、前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」に訂正する。 請求項1の記載を引用して記載される請求項3及び請求項4についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3の「前記防眩層は、マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み、」との記載を削除する。 請求項3の記載を引用して記載される請求項4についても同様に訂正する。 (4)訂正請求について 訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。 3 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「防眩層」について、[A]「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含」むものに限定するとともに、[B]「ヘイズ値が50%以下となる範囲の値に設定された」ものから、「31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定された」ものに限定し、[C]「防眩層には、前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」ものに限定する補正である。 そうすると、当該訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 請求項3及び請求項4についてみても同じである。 イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3には、「前記防眩層は、マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み」と記載され、本件特許の願書に添付した明細書の【0084】には、「第2実施形態に係る防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。」と記載されている。また、【0062】には、「微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。」、【0063】には、「ここで言う平均粒径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径である(以下に言及する平均粒径も同様とする。)。」と記載され、【0086】には、「微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。」と記載されている。さらに、【0169】の【表1】には、実施例2の「ヘイズ(%)」が「31.4」であることが記載されている。また、【0082】には、「防眩層3の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層3の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できる。」と記載され、【0084】には、「防眩層3には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。」と記載され、【0172】には、「微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できたものと考えられる。」と記載されている。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 請求項3及び請求項4についてみても、同じである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正である。 そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無 上記アのとおりであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3による訂正は、訂正事項1による訂正によって、請求項3の「前記防眩層は、マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み」との記載が、訂正後の請求項1の記載と重複することとなったため、請求項3の重複する記載を削除して、請求項3の記載を整理するための訂正である。 そうすると、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。 請求項4についてみても、同じである。 イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無 上記アのとおりであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項4についてみても、同じである。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第6743305号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1、請求項3及び請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明3」及び「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、請求項3及び請求項4に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、 画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値であり、 60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値であり、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値であり、かつ マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備え、 前記防眩層には、前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」 「【請求項3】 前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が0以上0.07以下の範囲の値である請求項1に記載の防眩フィルム。」 「【請求項4】 前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.02以上0.15以下の範囲の値である請求項3に記載の防眩フィルム。」 第4 取消しの理由の概要 本件特許の請求項1~請求項4に係る特許に対して、特許異議申立人が主張する申立ての理由、当合議体が令和3年4月30日付け、及び、令和3年12月6日付けで、特許権者に通知した取消しの理由の要旨は、次のとおりである。 ●理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び3に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。 ●理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。 ●理由3(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●理由4(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●理由5(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (引用例一覧) 引用例1:特開2012-133066号公報(甲第1号証) 引用例2:特開2016-50950号公報(甲第2号証) 引用例3:特開2015-196347号公報(甲第3号証) 引用例4:特開2014-85371号公報(甲第4号証) 引用例5:特開2006-113561号公報(甲第5号証) 引用例6:「JIS ディスプレイのぎらつき度合の求め方 JIS C1006:2019」、一般財団法人日本規格協会、 令和元年12月20日(甲第6号証) 引用例7:特開2015-132744号公報 第5 当合議体の判断 1 本件特許明細書の記載 本件特許明細書には、以下の記載事項がある(合議体注:下線は合議体が付与したものであり、判断等に活用した箇所を示す。)。 (1)技術分野 「【0001】 本発明は、ディスプレイ表面への外光の映り込みを防止する防眩フィルムに関する。」 (2)発明が解決しようとする課題 「【0005】 防眩フィルムをディスプレイの表面に装着すると、ディスプレイへの外光の映り込みが防止される反面、防眩フィルムを介したディスプレイの表示性能が低下する場合がある。 【0006】 特に、高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩フィルムの表面の凹凸により屈折したり、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。 【0007】 ギラツキを抑制する方法としては、例えば、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすることが考えられるが、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすると防眩性が低下するおそれがある。 【0008】 そこで本発明は、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。」 (3)課題を解決するための手段 「【0009】 本発明のある形態に係る防眩フィルムは、ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、前記ディスプレイの前記表面に装着した状態における前記ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値であり、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値であり、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値であり、かつヘイズ値が50%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備える。 【0010】 ここで、ギラツキ値とは、ディスプレイのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる値である。具体的には、ギラツキ値は、ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定される値であり、ディスプレイ上の輝点のばらつきの程度を示す。 【0011】 また、ヘイズ値および透過鮮明度は防眩性の良否に関わる値であり、ヘイズ値が大きくなればなるほど防眩性が高くなり、一方、透過鮮明度が小さくなればなるほど防眩性が高くなるという関係がある。ただし、ヘイズ値が大きくなりすぎると、光源からの光が広角へ散乱し、文字ボケが生じるという問題が起こる。 【0012】 これらギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値は、例えば、相分離法により防眩層を形成する場合、その製造工程おいて、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整することで実現できる。また、例えば、微粒子分散法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することで実現できる。また、マトリックス樹脂と微粒子との屈折率差を所定の範囲にするためには、両者に用いる材料として、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりする。さらには、マトリックス樹脂の重量G1と、複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1の値を調整する。 【0013】 上記構成によると、防眩層は、ギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値となるため、ギラツキを定量的な評価に基づき効果的に抑制したものとなるように設定することができる。 【0014】 また、防眩層は、ヘイズ値を50%以下となる範囲の値となるようにしつつ、透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値となるように設定されている。このため、文字ボケの発生を抑制しつつ、高い防眩性を得ることができる。 【0015】 さらにまた、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下といった低い値になるように設定されているため、外光の映り込みを抑制することができる。 【0016】 よって、本発明のある形態に係る防眩フィルムは、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有することができるという効果を奏する。」 (4)発明の効果 「【0022】 本発明は以上に説明したように構成され、防眩フィルムは、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有することができるという効果を奏する。」 (5)発明を実施するための形態 「【0024】 本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム1の構成を示す断面図である。」 合議体注:図1は次のものである。 [図:0001410169000001.jpg] 「【0026】 防眩層3は、基材フィルム2の少なくとも一方の面に形成されている。防眩層3は、防眩フィルム1に防眩性を付与し、外光を散乱反射させてディスプレイ16aへの外光の映り込みを防止する。防眩層3は、基材フィルム2の表面を覆うハードコート(HC)層としても機能する。防眩層3は、一例として、相分離可能な複数の樹脂成分を含む。 【0027】 防眩層3は、ギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値となるように設定されている。なお、ギラツキ値は、防眩フィルム1がディスプレイ16aの表面に装着された状態にあるときの、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定される。このギラツキ値は、後述するギラツキ検査機10を用いて求めることができる。 【0028】 また防眩層3は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が60%以下となる範囲の値となるように設定されている。透過像鮮明度は、防眩層3を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度であり、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した値である。 【0029】 また防眩層3は、ヘイズ値が50%以下の範囲の値となるように設定されている。本実施の形態のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定した値を示す。 【0030】 また、防眩層3は、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度(60度グロス)が30%以下となる範囲の値に設定されている。鏡面光沢度は、一般的につやと呼ばれ、物体表面の鏡面反射光の度合を表す値であり、JIS K7136に準拠して測定した値である。 【0031】 このように本実施の形態に係る防眩フィルム1は、客観的なギラツキの定量評価となるギラツキ値を用いて、該ギラツキ値が6以上10以下の範囲の値となるように設計できる。このため、例えば、主観的な評価によるギラツキ度合を示す値に基づき設計した場合と比較して、安定してギラツキが所望の範囲となるように抑制することができる。 【0032】 また、ヘイズ値を50%以下の範囲の値に抑えつつ、透過鮮明度を60%以下の範囲の値に抑えることができる。このため、文字ボケを抑制しつつ高い防眩性を得ることができる。 【0033】 また、防眩層3は、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度(60度グロス)が30%以下といった低い値となるように設定されているため、ディスプレイ16aの表面への外光の映り込みを抑制することができる。 ・・・略・・・ 【0035】 以下、基材フィルム2および防眩層3の具体例について説明する。なお、相分離法により形成された防眩層3を第1実施形態に係る防眩層3とし、微粒子分散法により形成された防眩層3を第2実施形態に係る防眩層3とし、転写成形法により形成された防眩層3を第3実施形態に係る防眩層3としてそれぞれ説明する。 【0036】 [基材フィルム] 基材フィルム2の材質としては、例えば、ガラス、セラミックス、および樹脂を挙げることができる。」 (6)第1実施形態 「【0039】 (第1実施形態) [第1実施形態に係る防眩層の構造] 第1実施形態に係る防眩層3は、複数の樹脂成分の相分離構造を有する。第1実施形態に係る防眩層3は、一例として、複数の樹脂成分の相分離構造により、複数の長細状(紐状又は線状)凸部が表面に形成された構造を有する。長細状凸部は分岐しており、密な状態で共連続相構造を形成している。 【0040】 第1実施形態に係る防眩層3は、複数の長細状凸部、および隣接する長細状凸部間に位置する凹部により防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度とのバランスに優れたものとなっている。第1実施形態に係る防眩層3の表面は、長細状凸部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。 【0041】 第1実施形態に係る防眩層3にこのような構造が形成されることで、この防眩層3にレンズ状(海島状)の凸部が形成されることを防止することができる。よって、第1実施形態に係る防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりすることを防止し、ディスプレイ16aのギラツキを抑制することができる。これにより、高精細画素を有するディスプレイ16aに防眩フィルム1を装着しても、防眩性を確保しながらギラツキを高度に抑制でき、文字ボケ等も抑制できる。 【0042】 なお、複数の長細状凸部は、独立していてもよいし、繋がっていてもよい。第1実施形態に係る防眩層3の相分離構造は、後述するように、この防眩層3の原料となる溶液を用いて、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成される。 ・・・略・・・ 【0058】 第1実施形態に係る防眩層3の製造工程では、この防眩層3の原料となる溶液に含まれるポリマーと硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分を、加工温度付近で互いに相分離させる組み合わせとして使用する。 ・・・略・・・ 【0060】 また、防眩層3は、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子(フィラー)を含んでいてもよい。微粒子は、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれでも良く、複数の微粒子は、複数種類の微粒子を含んでいてもよい。 【0061】 有機系微粒子としては、架橋アクリル粒子や架橋スチレン粒子を例示できる。また無機系微粒子としては、シリカ粒子、及びアルミナ粒子を例示できる。また、防眩層3中に含まれる微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差は、一例として、0以上0.2以下の範囲の値に設定できる。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが一層望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0062】 微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。この平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0063】 なお、ここで言う平均粒径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径である(以下に言及する平均粒径も同様とする。)。微粒子は、中実でもよいし、中空でもよい。微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。 ・・・略・・・ 【0066】 第1実施形態に係る防眩層3には、光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機または無機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、および消泡剤等が含まれていてもよい。 【0067】 第1実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法は、一例として、第1実施形態に係る防眩層3の原料となる溶液(以下、単に溶液とも称する。)を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(第1実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布し、溶液中の溶媒を蒸発させると共に、液相からのスピノーダル分解により相分離構造を形成する形成工程と、形成工程後に硬化性樹脂前駆体を硬化する硬化工程とを有する。 【0068】 [調製工程] 調製工程では、溶媒と、第1実施形態に係る防眩層3を構成するための樹脂組成物と、を含む溶液を調製する。溶媒は、前述した防眩層3に含まれるポリマーおよび硬化性樹脂前駆体の種類ならびに溶解性に応じて選択できる。溶媒は、少なくとも固形分(複数種類のポリマーおよび硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、ならびにその他添加剤)を均一に溶解できるものであればよい。 ・・・略・・・ 【0070】 樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂、光硬化性化合物、光重合開始剤、および熱可塑性樹脂と光硬化性化合物とを含む組成物が望ましい。または樹脂組成物としては、互いに非相溶な複数種類のポリマー、光硬化性化合物、および光重合開始剤を含む組成物が望ましい。 【0071】 混合液中の溶質(ポリマーおよび硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、ならびにその他添加剤)の濃度は、複数の樹脂成分の相分離が生じる範囲、および流延性またはコーティング性等を損なわない範囲において調整できる。 【0072】 [形成工程] 形成工程では、調製工程で調製した溶液を、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延または塗布する。 ・・・略・・・ 【0073】 支持体の表面に流延または塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。この蒸発過程における溶液の濃縮に伴って、複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離を生じさせ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成する。長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件および処方を設定することにより作製できる。 【0074】 溶媒の蒸発は、第1実施形態に係る防眩層3の表面に長細状凸部を形成し易い点から、加熱乾燥により行うのが好ましい。乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短過ぎたりすると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。 【0075】 一方、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎたりすると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、その構造は維持される。そのため、防眩層3のギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値が上記した条件を満たすような範囲の値となるように設定するために、相分離材料の組合せを調整することに加えて、乾燥温度および乾燥時間を調整し長細状凸部の高さ等を調整することによって実現できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を作製できる。 【0076】 複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離の進行に伴って、共連続相構造が形成されて粗大化すると、連続相が非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状等の独立相の海島構造)が形成される。ここで、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成することができる。溶媒除去後、表面に微細な凹凸を有する層が形成される。 【0077】 [硬化工程] 硬化工程では、溶液に含まれていた硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、形成工程で形成された相分離構造を固定化し、第1実施形態に係る防眩層3を形成する。硬化性樹脂前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱若しくは活性エネルギー線の照射、またはこれらの方法の組み合わせにより行うことができる。照射する活性エネルギー線は、光硬化成分等の種類に応じて選択する。 ・・・略・・・ 【0080】 以上の各工程を経ることにより、第1実施形態に係る防眩フィルム1が製造される。 ・・・略・・・ 【0081】 ここで、ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層3の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルム1の防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層3の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層3の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。」 (7)第2実施形態 「【0082】 第1実施形態において前述したスピノーダル分解によって、このような凹凸を防眩層3に形成できるが、その他の方法によっても、このような凹凸を防眩層3に形成できる。例えば第2実施形態のように、防眩層3の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層3の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できる。そこで以下では、その他の実施形態の防眩層3について、第1実施形態との差異を中心に説明する。 ・・・略・・・ 【0084】 (第2実施形態) 第2実施形態に係る防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。複数の微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球形状や楕円体形状に形成されていてもよい。また微粒子は、中実に形成されているが、中空に形成されていてもよい。微粒子が中空に形成されている場合、微粒子の中空部には、空気またはその他の気体が充填されていてもよい。第2実施形態に係る防眩層3には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。 【0085】 マトリクス樹脂と、微粒子との屈折率差は、0以上0.2以下の範囲の値に設定されている。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが更に望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。 【0086】 微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。微粒子の平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の値であることがより好ましい。 【0087】 また、微粒子の粒径のバラツキは小さい方が望ましく、例えば、防眩層3に含まれる微粒子の粒径分布において、防眩層3に含まれる微粒子の50重量%以上の平均粒径が1.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。 【0088】 このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層3の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。 【0089】 また、防眩層3におけるマトリクス樹脂の重量と複数の微粒子の総重量との比は、適宜設定可能である。第2実施形態では、防眩層3のマトリクス樹脂の重量G1と、防眩層3に含まれる複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1は、0.02以上0.15以下の範囲の値に設定されている。 ・・・略・・・ 【0099】 第2実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法は、一例として、第2実施形態に係る防眩層3の原料となる溶液を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(第2実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布する塗布工程と、塗布した溶液中の樹脂を硬化する硬化工程とを有する。 【0100】 [調製工程] 調製工程では、溶媒と、第2実施形態に係る防眩層3を構成するための樹脂組成物および微粒子と、を含む溶液を調製する。 ・・・略・・・ 【0101】 [塗布・硬化工程] 塗布工程では、調製工程で調製した溶液を、第1実施形態と同様の方法により、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。 【0102】 マトリクス樹脂が光硬化性樹脂である場合、塗布工程後に、一例として紫外線または電子線による硬化工程を行う。 ・・・略・・・ 【0104】 溶液に含まれていたマトリクス樹脂が硬化することにより、マトリクス樹脂中の微粒子の位置が固定される。これにより、マトリクス樹脂中に複数の微粒子が分散され、表面に微粒子による凹凸が形成された構造の防眩層が形成される。 【0105】 第2実施形態に係る防眩フィルム1によれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」 (8)第3実施形態 「【0106】 (第3実施形態) 第3実施形態に係る防眩フィルム1の防眩層3は、基材フィルム2側とは反対側の表面に凹凸形状が賦形された構造を有する。第3実施形態に係る防眩層3は、樹脂層で構成されている。この樹脂層は、一例として、第2実施形態に係る防眩層3に含まれるマトリクス樹脂と同様の材質で構成されている。 【0107】 第3実施形態に係る防眩フィルム1は、一例として、基材フィルム2上に硬化性樹脂からなるコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。図2は、第3実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法を示す図である。図2の例では、硬化性樹脂として紫外線硬化樹脂を用いている。 【0108】 図2に示すように、この製造方法では、基材フィルム2が、図示しない巻出ロールから巻き出され、所定方向に搬送される。基材フィルム2の搬送方向下流端部は、一対のロール21,22のニップ点N1に挿通される。」 合議体注:図2は次のものである。 [図:0001410169000002.jpg] 「【0109】 ロール22の周面には、ロール22に隣接して軸支されたロール23の周面から紫外線硬化樹脂前駆体が付着させられる。基材フィルム2がニップ点N1を通過する際、この紫外線硬化樹脂前駆体が、基材フィルム2の一方の面に塗布される。 【0110】 基材フィルム2に塗布された紫外線硬化樹脂前駆体の層(以下、コート層と称する。)は、ロール21,24のニップ点において、基材フィルム2と共に押圧される。ロール24は、周面に微細な凹凸が形成されたロール状金型(エンボスロール)であり、ロール21,24のニップ点N2を通過する際にコート層の表面に凹凸形状を転写する。 【0111】 ロール24により表面に凹凸形状が転写されたコート層は、ロール21,24の下方に設けられた紫外線ランプ26から照射される紫外線により硬化される。これにより、第3実施形態に係る防眩フィルム1の防眩層3が形成される。このようにして製造された第3実施形態に係る防眩フィルム1は、ロール24に隣接して軸支されたロール25によりロール24からリリースされ、所定方向へ搬送される。 【0112】 ここで、ロール24の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒径を調整することで、防眩フィルム1のコート層に形成される凹凸形状を調整できる。 ・・・略・・・ 【0116】 なお、第3実施形態において使用する金型は、ロール状金型以外でもよく、例えば、板状金型(エンボス板)でもよい。」 (9)ギラツキ評価 「【0120】 次に、上記した各実施形態に係る防眩フィルム1のギラツキを定量的に評価するための評価装置と評価方法について、図3を参照して説明する。 【0121】 (ギラツキ検査機) 図3は、本発明の実施の形態に係るギラツキ検査機10の概略構成の一例を示す図である。ギラツキ検査機10は、防眩フィルム1を装着した表示装置16のディスプレイ16aのギラツキの大きさを検査する機器である。ギラツキ検査機10は、筐体11、撮像装置12、保持部(調整部)13、撮像装置用架台14、表示装置用架台(調整部)15、および画像処理装置17を備える。」 合議体注:図3は次のものである。 [図:0001410169000003.jpg] 「【0122】 筐体11は、ギラツキ評価を行う検査空間として暗室を形成するためのものであり、中空の直方体形状をしている。筐体11内には、撮像装置12、保持部13、撮像装置用架台14、および表示装置用架台15と、ギラツキ評価の対象となる表示装置16とが収容される。なお、筐体11は、撮像装置12による撮像時において、外部から筐体11内への光の侵入が防止できる構成となっている。 【0123】 撮像装置12は、一例としてレンズ18と撮像素子とを有するエリアカメラであり、ディスプレイ16aに表示される画像を撮像する。撮像装置12は、レンズ18とディスプレイ16aとが対向するように保持部13に保持されている。撮像装置12は画像処理装置17に接続され、撮像装置12により撮像された画像データは、画像処理装置17に送信される。 【0124】 保持部13は、鉛直方向(図3における上下方向)に延伸した棒形状を有する部材であり、この保持部13の基端側は撮像装置用架台14により固定され、先端側には撮像装置12が保持されている。そして、撮像装置12は、保持部13によって鉛直方向に移動可能となっており、ディスプレイ16aとレンズ18との間の相対的な距離を変更させることができる。 【0125】 表示装置16は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aを撮像装置12と対向させた状態で、表示装置用架台15の上面に載置される。表示装置用架台15は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの面が撮像装置12と対向し、且つ水平面となるように表示装置16を支持すると共に、ディスプレイ16aとレンズ18との間の相対的な距離を変更させるように、表示装置16を鉛直方向に移動させることができる。 【0126】 ギラツキ検査機10では、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整することによって、撮像装置12の撮像素子により撮像されるディスプレイ16aに表示された画像のサイズが調整される。換言すると、撮像装置12の撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズが調整される。 【0127】 画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データのデータ処理を行う。具体的に画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データから、ディスプレイ16aに表示された画像の輝度の標準偏差の値を求める。 【0128】 本実施の形態に係る画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データが入力される入力部と、入力された画像データを画像処理する画像処理部と、画像処理部によって処理された結果を不図示の表示器または印字装置等に出力する出力部等とを備える。 【0129】 なお、撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズの調整方法としては、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対距離を変更させる方法の他、撮像装置12が備えるレンズ18がズームレンズである場合には、撮像装置12の焦点距離を変える方法でもよい。 【0130】 (ギラツキ評価方法) 次に、ギラツキ検査機10を用いたギラツキ評価方法について説明する。このギラツキ評価方法では、評価の便宜上、表面に防眩フィルム1を装着した状態におけるディスプレイ16aを予め一色(一例として緑色)に均一発光させて表示させる。 【0131】 まず、撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像される防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの画素のサイズが所定値となるように調整する(調整ステップ)。 【0132】 調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。 【0133】 なお、撮像装置12と表示装置16との間の相対的な距離は、実際の表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aとの間の相対的な距離)を考慮して設定されることが望ましい。 【0134】 調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する(設定ステップ)。設定ステップにおいて、測定エリアは、例えばディスプレイ16aのサイズ等に応じて適切に設定することができる。 【0135】 調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する(撮像ステップ)。このとき一例として、8ビット階調表示でかつ平均輝度が170階調のグレースケール画像の画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間またはディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整する。撮像ステップにおいて撮像された画像データは、画像処理装置17へと入力される。 【0136】 撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データから、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める(演算ステップ)。この演算ステップでは、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差を求めることで数値化できる。ここで、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキ度合は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝度のばらつきが大きいほど大きくなる。これに基づいて、輝度分布の標準偏差の値が小さいほど、ギラツキは小さいと定量的、かつ客観的に評価することができる。また調整ステップにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝線がギラツキの評価に影響を与えない程度に調整されているので、輝線による輝度ムラを抑え、正確なギラツキの評価を行うことができる。 【0137】 以上の各ステップを経ることにより、表面に防眩フィルム1を装着した状態におけるディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差を求め、その値の大小によりギラツキを評価できる。」 (10)実施例及び比較例 「【0138】 (実施例および比較例) 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 【0139】 実施例1から3は、相分離法によって作製された、ギラツキ値が6以上10以下、鏡面光沢度(60度グロス)が30%以下、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が60%以下、かつヘイズ値が50%以下となる条件を満たす防眩フィルム1の一例である。換言すると、実施例1から3は、相分離法により防眩フィルム1の表面に形成される凹凸形状によって上記した条件を満たすことができる防眩フィルム1の一例である。 【0140】 実施例4は、微粒子分散法によって作製されたギラツキ値が6以上10以下、鏡面光沢度(60度グロス)が30%以下、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が60%以下、かつヘイズ値が50%以下となる条件を満たす防眩フィルム1の一例である。換言すると、実施例4は、防眩フィルム1における防眩層3のマトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子との屈折率差が0.07以下となるように調整することによって上記した条件を満たすことができる防眩フィルム1の一例である。 【0141】 一方、比較例1から3は、微粒子分散法により作製された防眩フィルム1の一例であり、比較例4、5は、転写形成法により作製された防眩フィルム1の一例である。 【0142】 [原料] 実施例および比較例で用いる各原料には、次のものを用いた。なお、以下において記載する屈折率は、架橋により硬化するものについては架橋後(硬化後)の屈折率を示す。 重合性基を有するアクリル系重合体:ダイセル・オルネクス(株)製「サイクロマーP」(屈折率1.51) セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」(屈折率1.49)、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000 ナノシリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「UVHC7800G」(屈折率1.52)シリコーンアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「EB1360」(屈折率1.52) ウレタンアクリレート:新中村化学工業(株)製「UA-53H」(屈折率1.52) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」(屈折率1.52) ペンタエリストールテトラアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」(屈折率1.52) シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:アイカ工業(株)製「Z-757-4RL」(屈折率1.52) 重合性基を有するフッ素系化合物:信越化学工業(株)製フッ素系防汚添加剤「KY-1203」 アルキルフェノン系光重合開始剤(光重合開始剤A):BASF製「IRGACURE 184」 アルキルフェノン系光重合開始剤(光重合開始剤B):BASF製「IRGACURE 907」 ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」 セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」 【0143】 [実施例1] 重合性基を有するアクリル系重合体50質量部、セルロースアセテートプロピオネート4質量部、ウレタンアクリレート76質量部、シリコーンアクリレート1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン176質量部と1-ブタノール28質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。 【0144】 この溶液を、ワイヤーバー(#18)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。そして、例えば、高圧水銀ランプ等の紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して、コート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例1の防眩フィルムを得た。 【0145】 [実施例2] 重合性基を有するアクリル系重合体50質量部、セルロースアセテートプロピオネート4質量部、ウレタンアクリレート76質量部、シリコーンアクリレート1質量部、重合性基を有するフッ素系化合物1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン176質量部と1-ブタノール28質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。 【0146】 この溶液、ワイヤーバー(#14)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成させた。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例2の防眩フィルムを得た。 【0147】 [実施例3] 重合性基を有するアクリル系重合体17.5質量部、セルロースアセテートプロピオネート3.0質量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物149.7質量部、シリコーンアクリレート0.2質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン129質量部と1-ブタノール24質量部と1-メトキシ-2-プロパノール13質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。 【0148】 この溶液を、ワイヤーバー(#12)を用いて、TACフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約4μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例3の防眩フィルムを得た。 【0149】 [実施例4] シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物(屈折率1.52)50質量部と1-ブタノール50質量部とを混合した溶液を調整した。 【0150】 この溶液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例4の防眩フィルムを得た。なお、マトリクス樹脂(アクリル系紫外線硬化性化合物)の重量をG1とし、防眩層3に含まれる微粒子(シリカ)の重量をG2としたとき、両者の比G2/G1は0.14となった。 ・・・略・・・ 【0163】 なお、基材フィルムは、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを好適に用いることができる。また、実施例1~4および比較例1~5の各防眩フィルムは、以下の項目を測定して評価した。 【0164】 [ヘイズおよび全光線透過率] ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。ヘイズは、凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。 【0165】 [透過像鮮明度] 写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。 【0166】 [60度グロス] グロスメーター((株)掘場製作所製、IG-320)を用いて、JlS K7105に準拠し、角度60°で測定した。 【0167】 [ディスプレイの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)] 表示装置16としてスマートフォン(三星電子(株)製「Galaxy S4」)を用い、そのディスプレイ16aの表面に、各サンプルの防眩フィルムを光学糊により貼り付けた。なお、このスマートフォンのディスプレイ16aの解像度は441ppiとなる。そして、コマツNTC(株)製のギラツキ検査機10を用い、各サンプルの防眩フィルムを介して、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)を測定した。この測定に際しては、8ビット階調表示でかつ平均輝度が170階調のグレースケール画像の画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間またはディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整した。 【0168】 ここで上記した項目に対する各測定結果を表1に示す。 【0169】 【表1】 [図:0001410169000004.jpg] 【0170】 表1に示すように、実施例1から3の原料および作製条件に基づく相分離法および実施例4の原料および作製条件に基づく微粒子分散法によって、上記した条件(ギラツキ値が6以上10以下、鏡面光沢度が30%以下、透過像鮮明度が60%以下、かつヘイズ値が50%以下)を満たす防眩フィルムを得ることができた。 【0171】 すなわち、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを実施例1から3のように設定することで、上記条件を満たすような凹凸形状を防眩フィルム1の表面に形成することができることが分かった。 【0172】 また、微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差が0以上0.07以下の範囲の値とし、マトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.02以上0.15となるようにマトリクス樹脂中に分散させる微粒子を選択し実施例4に示す作製条件により作製することで、上記条件を満たす防眩フィルム1を形成することができることが分かった。つまり、実施例4の微粒子分散法では、防眩層3の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことで、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できたものと考えられる。 【0173】 一方、比較例1から3の原料および作製条件に基づく微粒子分散法では、上記した条件を満たす防眩フィルムを作製することができなかった。すなわち、比較例1、2では、微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差が0.07より大きくなっている。比較例3では、マトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.02以上0.15以下の範囲外となっている。 【0174】 また、比較例4、5の原料および作製条件に基づく転写成形法では、例えば、実施例1から3の相分離法のように統計的に制御された凹凸形状を防眩フィルムに形成することができず、上記した条件を満たす防眩フィルムを作製することができなかった。 【0175】 本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成又は方法を変更、追加、又は削除できる。例えば、第1実施形態または第3実施形態の防眩層3のマトリックス樹脂中に、第2実施形態の微粒子を分散させてもよい。」 2 引用例1を主引用発明とする理由1及び理由2 (1)引用例1 ア 引用例1の記載事項 特許異議申立人が甲第1号証として引用し、令和3年4月30日付けで特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例1(特開2012-133066号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載事項がある。 (ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、 前記防眩層の85°光沢度の値が、前記防眩層の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上であり、かつ、前記20°光沢度の値が、10以下であることを特徴とする防止フィルム。 ・・・略・・・ 【請求項5】 前記凹凸は、複数の球面状凸部、複数の球面状凹部、または複数の球面状凸部と球面状凹部の組み合わせが、ランダムに重ねられてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防眩フィルム。」 (イ)発明の詳細な説明 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防眩フィルムに関する。本発明は、特に、ユーザが至近距離で見るディスプレイに使用される防眩フィルムに関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、FPDは、PC(Personal Computer)用モニタやテレビ等の様々な用途に用いられる。防眩フィルムは、FPDの用途に応じて最適化され得る。 【0008】 FPDがPC用モニタとして使用される場合、FPDは机上に載置され、その上方には室内照明器具が存在する。そして、PCの使用時には、ユーザが至近距離から画面を見るため、FPDの正面にはユーザの頭部が位置する。このような環境下では、防眩フィルムには、上方からの照明光による白茶けが発生せず、かつ、ユーザの顔が画面に映り込まないことが要求される。 ・・・略・・・ 【0010】 本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記目的を達成するための本発明による防眩フィルムは、凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、前記防眩層中に光の波長以上の大きさの粒子を含まず、表面の凹凸のみによって防眩性能を発揮する防眩フィルムであり、前記防眩層の85°光沢度の値が、前記防眩層の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上であり、かつ、前記20°光沢度の値が、10以下、好ましくは7.5以下であることを特徴とする。 【0012】 このように構成された本発明の防眩フィルムは、フィルム面に対して浅い角度で入射する光に対しては高い光沢度を有し、浅い角度で入射する光を正反射する一方で、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光に対しては低い光沢度を有し、垂直に近い角度で入射する光を拡散反射する。また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部に光拡散要素を含まないため、前記の機能が内部の拡散要素によって撹乱されることがない。 【発明の効果】 【0013】 本発明の防眩フィルムによれば、フィルム面に対して浅い角度で入射する光が拡散反射されずに正反射されるため、照明光の拡散反射により防眩フィルムが白茶けて見えることが防止される。加えて、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光が拡散反射されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。すなわち、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムが提供される。 ・・・略・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・略・・・ 【0017】 図1に示すとおり、本実施形態の防眩フィルム100は、透明基材110と、透明基材110上に形成される防眩層120とから構成される。」 合議体注:図1は次のものである。 [図:0001410169000005.jpg] 「【0018】 透明基材110は、シート状の透明部材であり、TAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル、およびPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂から形成される。 【0019】 防眩層120は、例えば、紫外線硬化型樹脂から形成される。 ・・・略・・・ 【0020】 また、このような紫外線硬化型樹脂には、製造上の理由や、性能改善を目的として、単官能アクリレートモノマー、密着性向上材料、防汚剤、帯電防止剤、さらに、0.1μm未満の大きさの粒子等を混合して用いてもよい。 【0021】 防眩層120は、表面に凹凸を有し、防眩層120の凹凸は、複数の球面状凸部がランダムに重ねられて構成されている。または、防眩層120の凹凸は、球面状凹部がランダムに重ねられて構成されていてもよく、もしくは、複数の球面状凸部と複数の球面状凹部が組み合わされてランダムに重ねられて構成されていてもよい。複数の球面状凸部または球面状凹部は、種々のサイズを有する球の一部の形状をそれぞれ有する。 ・・・略・・・ 【0023】 次に、本発明による防眩フィルムの製造方法、及び、その防眩フィルムを得るために使用される金型の製造方法について説明する。本発明では、凹凸を有する金属金型を得るために、鉄、アルミニウムなどの金属基材、もしくは、その金属基材の表面に銅メッキ、または、ニッケルメッキを施し、その金属基材、もしくは、メッキ表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その後、必要に応じて、耐久性等を向上させるため、その凹凸面にクロムメッキ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を形成して、金型とする。ここでいう鉄、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属は、それぞれの純金属に限定されるものではなく、その合金、例えば、鉄に対してステンレス等を含むものとする。 【0024】 このようにして製造された金型を用いて、その金型の形状を透明樹脂フィルムに転写することで、防眩フィルムが得られる。 ・・・略・・・ 【0028】 すなわち、本実施形態の防眩フィルム100は、フィルム面に対して浅い角度で入射する光に対する防眩層120の光沢度が、一般的な防眩フィルムの光沢度よりも大きい。具体的には、防眩層120の85°光沢度が、防眩層120の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上の値を有する。また、防眩層120の20°光沢度が、10以下の値を有する。なお、光沢度は、フィルム面の法線を基準として規定され、85°光沢度は、フィルム面に対して浅い角度(5°)で入射する光に対する光沢度を示す。また、20°光沢度は、フィルム面に対して垂直に近い角度(70°)で入射する光に対する光沢度を示す。 ・・・略・・・ 【0032】 以上のとおり、本実施形態の防眩フィルム100によれば、フィルム面に対して浅い角度で入射する光は浅い角度のまま比較的弱い拡散で出射され、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光はそれよりも強く拡散される。このような構成によれば、防眩フィルム100がPC用モニタや業務用モニタに使用される場合、フィルム面に対して浅い角度で入射する照明光がユーザに向かうことが防止され、防眩フィルムが白茶けて見えることが防止される。加えて、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光が拡散されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。 ・・・略・・・ 【0036】 一方、本実施形態の防眩フィルム100は、防眩層120の85°光沢度が高いため、上方から入射する照明光Lを正反射し、液晶ディスプレイの下方に向かわせることができる。したがって、上方からの照明光Lが、PCのユーザに知覚されることが防止され、防眩フィルム100が白茶けて見えることが防止される。また、液晶ディスプレイの前方から入射する光は防眩層120により拡散されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。 【0037】 以上のとおり、本実施形態によれば、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムが提供される。」 (ウ)実施例 「【0038】 以下、実施例を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、本実施例によって何ら限定されるものではない。 【0039】 <防眩フィルムの製作> 球面状凹部がランダムに重ねられてなる表面を有する5種類のエンボスロールを製作し、TAC製の透明基材にアクリル系の紫外線硬化型樹脂を塗布した後、エンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して、実施例1~4および比較例2の防眩フィルムを製作した。 【0040】 (実施例1) 銅/ニッケルメッキを施した後にメッキ表面を研磨した鉄製ロールを用意し、平均粒径約63μmの球状粒子を用いて、乾式のブラスト加工によりロールの表面に凹凸を形成した。表面に凹凸が形成されたロールにクロムメッキを施してエンボスロールを製作した。このように製作されたエンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して、実施例1の防眩フィルムを製作した。 ・・・略・・・ 【0046】 <エンボスロールの表面粗さ測定> 触針式の表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製 サーフテスト SJ-301)を使用して、実施例1~4および比較例2の防眩フィルムの製作に使用されたエンボスロールならびに比較例1の防眩フィルムについて、表面の算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを測定した。算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzは、JIS B0601-1994に準拠して測定された。 【0047】 <防眩フィルムの表面形状測定> レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-9500)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについて、表面の凹凸の平均間隔Smを測定した。凹凸の平均間隔Smは、JIS B0601-1994に準拠して測定された。 ・・・略・・・ 【0049】 図5(a)に示すとおり、実施例1の防眩フィルムは、球面状凸部がランダムに重ねられた構造を有している。また、図5(b)に示すとおり、実施例1の防眩フィルムは、滑らかな断面形状を有している。」 合議体注:図5(a)及び図5(b)は、次のものである。 [図:0001410169000006.jpg] 「【0052】 <防眩フィルムの光学特性評価> 実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムに対して、光沢度、ヘイズ、明室コントラスト、Sparkling、および像鮮明度を測定した。また、各防眩フィルムを目視により評価した。 【0053】 (光沢度) 光沢計(BYK Gardner社製 Micro TRI Gloss)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの光沢度を測定した。具体的には、裏面に黒インキを塗布した光学ガラス上にメチルフェニルシリコーンオイルを液貼りし、裏面反射を防止した状態で各防眩フィルムの20°光沢度、60°光沢度、および85°光沢度をそれぞれ測定した。また、スガ試験機株式会社製変角光沢計 UGV-5Dを用いて、45°光沢度および75°光沢度を測定した。なお、光沢計は、JIS Z8741に準拠している。 【0054】 (ヘイズ) 株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した。 【0055】 (明室コントラスト) 輝度計(株式会社トプコン製 BM-7FAST)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの輝度を測定し、明室コントラストを求めた。具体的には、まず、SAMSUNG社製の17インチ液晶ディスプレイ(SyncMaster 750B)上に、内側が白色の四角錐台型のフードを被せ、フード上部の開口部に対応するディスプレイの画面領域に防眩フィルムを取り付けた(図6参照)。そして、周辺領域を白表示に維持しつつ、防眩フィルムが取り付けられた画面領域を白/黒に切り替えときの輝度を測定した。防眩フィルムが取り付けられた画面領域の白/黒の輝度の比を明室コントラストと定義した。」 合議体注:図6は次のものである。 [図:0001410169000007.jpg] 「【0056】 なお、SAMSUNG社製の液晶ディスプレイの表面には比較例1と同様の防眩フィルムが取り付けられているため、輝度の測定時には、液晶パネルの裏表を逆に装着して平坦面を外側にして使用した。 【0057】 (Sparkling) 明室コントラストの測定に用いた測定装置からフードを取り外し、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムを取り付けた液晶ディスプレイを定速で移動させつつ輝度の変化を測定して、「Sparkling」の値を求めた。液晶ディスプレイの移動速度は、0.4mm/秒であり、移動量は20mmであった。輝度は0.1秒毎に測定し、(標準偏差/平均値)×100(%)を各防眩フィルムの「Sparkling」の値と定義した。 【0058】 (像鮮明度) 写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの透過像鮮明度と、45°および60°の反射像鮮明度とを測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、および0.125mmで行ったが、0.125mmの像鮮明度の測定値が0.25mmの像鮮明度の測定値を上回っていたため、0.125mmは測定限界以下と判断し、0.125mmの測定値を除く4つの測定値を図10および図11に、また、その算術和を表1に、透過像鮮明度に対する反射像鮮明度の関係を図12に示した。 【0059】 (目視評価) 実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについて、「映り込み」、「白茶け」、および「Sparkling」を目視により評価した。 【0060】 実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについての評価結果を表1に示す。 【0061】 【表1】 [図:0001410169000008.jpg] 【0062】 表1から、実施例1~4の防眩フィルムの明室コントラストは、比較例1の防眩フィルムの明室コントラストよりも良好であることが分かる。また、目視評価においても、実施例1~4の防眩フィルムの性能は問題のないレベルであった。 ・・・略・・・ 【0070】 図10および図11は、防眩フィルムの像鮮明度を示す図である。図10は、透過像鮮明度を示す図である。 ・・・略・・・ 【0071】 図10に示すとおり、比較例1の防眩フィルムの像鮮明度は、光学くしの幅が狭くなると急激に像鮮明度が低下するのに対して、実施例1~4の防眩フィルムでは、その低下が相対的になだらかである。」 合議体注:図10は次のとおりのものである。 [図:0001410169000009.jpg] イ 引用発明1 (ア) 引用例1でいう「本発明」は、「防眩フィルム」(【0001】)であるところ、【0039】~【0040】には、引用例1でいう「本発明」の「実施例1」が記載されている。 また、【0060】に、「実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについての評価結果を表1に示す」と記載されているところ、「表1」(【0061】)に記載された各「評価」項目の評価方法は、【0053】~【0059】に記載のとおりである。さらに、「図10」に、「写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1・・・の防眩フィルムの透過像鮮明度・・・を測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、および0.125mmで行ったが、0.125mmの像鮮明度の測定値が0.25mmの像鮮明度の測定値を上回っていたため、0.125mmは測定限界以下と判断し、0.125mmの測定値を除く4つの測定値を図10・・・に・・・示した」(【0058】)とされており、図10からは、実施例1の、光学くし0.5mmで行った像鮮明度の測定値が、約10であることが読み取れる。 (イ) 上記ア(ア)~(ウ)及び上記(ア)より、引用例1には、「実施例1」で製作された「防眩フィルム」の発明(以下「引用発明1」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。 「銅/ニッケルメッキを施した後にメッキ表面を研磨した鉄製ロールを用意し、平均粒径約63μmの球状粒子を用いて、乾式のブラスト加工によりロールの表面に、球面状凹部がランダムに重ねられてなる表面を有する凹凸を形成し、表面に凹凸が形成されたロールにクロムメッキを施してエンボスロールを製作し、エンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して製作した、防眩フィルムであって、 以下の方法で評価した、60°光沢度が21.7、ヘイズが19.2、光学くしが0.5mmの像鮮明度が約10、Sparkling(目視)の評価が○である、防眩フィルム。 (光沢度) 光沢計(BYK Gardner社製 Micro TRI Gloss)を使用して、実施例1の防眩フィルムの光沢度を測定した。具体的には、裏面に黒インキを塗布した光学ガラス上にメチルフェニルシリコーンオイルを液貼りし、裏面反射を防止した状態で各防眩フィルムの60°光沢度を測定した。なお、光沢計は、JIS Z8741に準拠している。 (ヘイズ) 株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した。 (Sparkling) 明室コントラストの測定に用いた測定装置からフードを取り外し、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムを取り付けた液晶ディスプレイを定速で移動させつつ輝度の変化を測定して、「Sparkling」の値を求めた。液晶ディスプレイの移動速度は、0.4mm/秒であり、移動量は20mmであった。輝度は0.1秒毎に測定し、(標準偏差/平均値)×100(%)を各防眩フィルムの「Sparkling」の値と定義した。 (像鮮明度) 写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1の防眩フィルムの透過像鮮明度を測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが0.5mmで行った。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。 (ア)上記(1)イ(イ)の引用発明1の「防眩フィルム」の製作工程からみて、引用発明1の「防眩フィルム」は、「紫外線硬化型樹脂」に、エンボスロールの凹凸形状を転写して得られたものと理解できる。 (イ)引用発明1の「防眩フィルム」は、その機能からみて、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。 また、引用例1には、技術分野に関する記載として、「本発明は、特に、ユーザが至近距離で見るディスプレイに使用される防眩フィルムに関する。」(【0001】)との記載がある。防眩フィルムをディスプレイに使用するにあたり、ディスプレイの表面に装着することは明らかであるから、引用発明1の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「ディスプレイの表面に装着される」とする要件を満たしている。 (ウ)引用発明1の「60°光沢度」は、「JIS Z8741」に準拠した光沢計を使用して測定したものである。一方、本件特許明細書の【0029】には、「鏡面光沢度は、一般的につやと呼ばれ、物体表面の鏡面反射光の度合を表す値であり、JIS K7136に準拠して測定した値である。」と記載されている。 (エ)引用発明1の「像鮮明度」は、「JIS K7374」に基づき、「光学くしが0.5mm」で測定した値であって「約10」である。一方、本件特許明細書には、【0028】に、「防眩層3は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が40%以下となる範囲の値となるように設定されている。透過像鮮明度は、防眩層3を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度であり、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した値である。」と記載されている。 (オ)引用発明1は、「株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した」「ヘイズが19.2」である。一方、本件特許明細書の【0029】には、「本実施の形態のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定した値を示す。」と記載されている。 イ 一致点及び相違点 (ア)一致点 本件特許発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。 「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、 樹脂を含む防眩層を備える、防眩フィルム。」 (イ)相違点 本件特許発明1と引用発明1は、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-1-1) 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるのかどうか一応わからない点。 (相違点1-1-2) 60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が、本件特許発明1では「JIS K7136」に準拠して測定した値であって「30%以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1では「光沢計(BYK Gardner社製 Micro TRI Gloss)」を使用し、「JIS Z8741に準拠して」測定したものであって「21.7」である点。 (相違点1-1-3) 透過像鮮明度が、本件特許発明1では、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1は、「JIS K7374」に基づき測定した値であって、「0.5mmの像鮮明度が約10」である点。 (相違点1-1-4) 防眩層が、本件特許発明1では、「マトリクス」樹脂と、「該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子」を含み、「前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」のに対して、引用発明1では、紫外線硬化型樹脂中に微粒子を含んでいない点。 (相違点1-1-5) ヘイズ値が、本件特許発明1では、JIS K7136に準拠して測定した「31.4%以上50%以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1では、「株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した」「ヘイズが19.2」である点。 ウ 判断 事案に鑑みて、相違点1-1-4について検討する。 引用例1には、課題を解決するための手段として、「本発明による防眩フィルムは、凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、前記防眩層中に光の波長以上の大きさの粒子を含まず、表面の凹凸のみによって防眩性能を発揮する防眩フィルム」(【0011】)であること、及び、「本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部に光拡散要素を含まないため、前記の機能が内部の拡散要素によって撹乱されることがない。」(【0012】)ことが記載されている。また、「このような紫外線硬化型樹脂には、製造上の理由や、性能改善を目的として、・・・さらに、0.1μm未満の大きさの粒子等を混合して用いてもよい。」(【0020】)との記載もある。 これらの記載に基づけば、引用発明1に、0.1μm未満の大きさの粒子を混合して用いることが示唆されているものの、0.1μm以上の大きさの粒子を混合して用いることについての動機付けがない。 特許異議申立人は、令和3年8月24日付けの意見書において、「内部の拡散要素は、防眩層中に含まれる樹脂と粒子との間に屈折率差がない場合には生じない。このため、防眩層中に含まれる樹脂と粒子との間に屈折率差がない構成においては、上述した引用発明1の課題が阻害されることはない。」(第2頁)と主張している。 しかし、引用例1には、特許異議申立人が主張するような特定の屈折率を有する粒子についても、防眩層中に0.1μm以上の大きさの粒子を含めることについての示唆はない。また、特許異議申立人が主張するような特定の屈折率を有する粒子を含有させる動機付けがあったとする根拠も見いだせない。したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。 以上より、引用発明1において「コールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子」を含ませて、本件特許発明1の相違点1-1-4に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (3)本件特許発明3及び本件特許発明4について 本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1-1-4において相違する。 したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 3 引用例2を主引用例とする理由2 (1)引用例2 ア 引用例2の記載事項 特許異議申立人が甲第2号証として引用し、令和3年4月30日付け、及び、令和3年12月6日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例2(特開2016-50950号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、そこには、以下の記載事項がある。 (ア)特許請求の範囲 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光透過性基材と、前記光透過性基材上に設けられ、かつ凹凸面を有する防眩層とを備える防眩フィルムの管理方法であって、 前記防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下であり、かつ 2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように前記防眩フィルムを管理する、防眩フィルムの管理方法。 ・・・略・・・ 【請求項3】 前記防眩フィルムが微粒子を含んでいる、請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法。 ・・・略・・・ 【請求項5】 請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法によって管理された前記防眩フィルムのロール体。」 (イ)発明の詳細な説明 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防眩フィルムの管理方法およびロール体に関する。 【背景技術】 ・・・略・・・ 【0006】 防眩フィルムの品質管理においては、従来、ヘイズやグロスを測定することによって行われていたが、これらとギラツキとの相関性は悪いので、ヘイズやグロスでは、ギラツキが発生し難い防眩フィルムを把握することができない。また、防眩フィルムの製造時における管理としては、簡便な管理方法が求められている。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、簡便であり、かつギラツキが発生し難い防眩フィルムのみを供給できる、防眩フィルムの管理方法およびこのように管理された防眩フィルムのロール体を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明の一の態様によれば、光透過性基材と、前記光透過性基材上に設けられ、かつ凹凸面を有する防眩層とを備える防眩フィルムの管理方法であって、前記防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下であり、かつ2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように前記防眩フィルムを管理する、防眩フィルムの管理方法が提供される。 【0010】 本発明の他の態様によれば、上記方法によって請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法によって管理された前記防眩フィルムのロール体が提供される。 【発明の効果】 【0011】 本発明の一の態様の防眩フィルムによれば、簡便な方法によってギラツキが発生し難い防眩フィルムのみを供給できる。 ・・・略・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・略・・・ 【0014】 <<<防眩フィルムの管理方法>>> 本実施形態に係る防眩フィルムの管理方法は、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように防眩フィルムを管理する方法である。 【0015】 図2に示されるように、管理対象の防眩性フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11上に設けられ、かつ凹凸面12Aを有する防眩層12とを備えている。」 合議体注:図2は次のものである。 [図:0001410169000010.jpg] 「【0016】 防眩フィルム10の表面10Aは、凹凸面12Aとなっている。本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩層12の凹凸面12Aが防眩フィルム10の表面10Aとなっている。「機能層」とは、防眩フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮するための層が挙げられる。機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。 【0017】 防眩フィルム10においては、全ヘイズ値が20%以上30%以下となっている。防眩フィルム10においては、全ヘイズに対する内部ヘイズ値の比(内部ヘイズ値/全ヘイズ値)が0以上0.1以下となっていることが好ましい。全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、防眩フィルム全体として測定したときの値である。例えば、本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩フィルム10の全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、光透過性基材11および防眩層12からなる防眩フィルム10を用いて測定された値である。また、例えば、防眩層上に低屈折率層等の機能層が設けられている場合には、防眩フィルムの全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、光透過性基材、防眩層、および機能層からなる防眩フィルムを用いて測定された値である。 【0018】 全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全ヘイズ値を測定する。また、内部ヘイズ値は、以下のように求められる。防眩フィルムの防眩層の表面に、凹凸面を形成する樹脂と屈折率が等しいか、またはこの樹脂との屈折率差が0.02以下である樹脂をワイヤーバーで乾燥膜厚が8μm、すなわち完全に凹凸面の凹凸形状がなくなり、表面が平坦とできる膜厚となるように塗布し、70℃で1分間乾燥後、塗布した樹脂に100mJ/cm2の紫外線を照射して、樹脂を硬化させる。これによって、防眩フィルムの表面に存在する凹凸がつぶれ、平坦な表面となったフィルムが得られる。ただし、この凹凸形状を有する防眩層を形成する組成物中にレベリング剤等が入っていることで、上記防眩層の表面に塗布する樹脂がはじかれやすく濡れにくいような場合は、予め防眩層の表面をケン化処理(2mol/LのNaOH(又はKOH)溶液で55℃、3分浸した後、水洗し、キムワイプ(登録商標)等で水滴を完全に除去した後、50℃オーブンで1分乾燥)により、親水処理を施すとよい。そして、この状態で、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従ってヘイズ値を測定することで内部ヘイズ値を求める。この内部ヘイズは、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状を加味しないものである。 【0019】 防眩フィルムの全ヘイズ値の下限は22%以上であることが好ましく、上限は28%以下であることが好ましい。 【0020】 防眩フィルム10の表面ヘイズ値は22%以上28%以下が好ましい。表面ヘイズ値は、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状のみに起因するものであり、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状のみに起因する表面ヘイズ値が求められる。 【0021】 「防眩フィルムの透過像鮮明度」とは、防眩フィルム全体として測定された透過像鮮明度を意味する。本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩フィルム10の透過像鮮明度は、光透過性基材11および防眩層12からなる防眩フィルム10を用いて測定された透過像鮮明度である。また、例えば、防眩層上に低屈折率層等の機能層が設けられている場合には、防眩フィルムの透過像鮮明度は、光透過性基材、防眩層、および機能層からなる防眩フィルムを用いて測定された透過像鮮明度である。 【0022】 上記透過像鮮明度は、JIS K7374の像鮮明度の透過法に準拠した透過像鮮明度測定装置によって測定することができる。このような測定装置としては、スガ試験機社製の写像性測定器ICM-1T等が挙げられる。 【0023】 透過像鮮明度測定装置100は、図3に示されるように、光源101、スリット102、レンズ103、レンズ104、光学くし105、および受光器106を備えるものである。透過鮮明度測定装置100は、光源101から発せられ、かつスリット102を通過した光をレンズ103により平行光とし、この平行光を防眩フィルム10の光透過性基材11側に照射させ、防眩フィルム10の防眩層12の凹凸面12Aから透過した光をレンズ104により集光させ、光学くし105を通過した光を受光器106で受光するものであり、この受光器106で受光された光の量に基づいて、下記式(1)により透過像鮮明度Cを算出する。 C(n)={(M-m)/(M+m)}×100(%) …(1) 式(1)中、C(n)は光学くしの幅n(mm)のときの透過像鮮明度(%)、Mは光学くしの幅n(mm)のときの最高光量であり、mは光学くしの幅n(mm)のときの最低光量である。本実施形態においては、2.0mm幅の光学くし105を用いて防眩フィルム10の透過像鮮明度を測定するので、上記式(1)のC(n)は、C(2.0)となる。」 合議体注:図3は次のものである。 [図:0001410169000011.jpg] 「【0024】 光学くし105は、光学くし105の長手方向に沿って移動可能であり、遮光部分および透過部分を有している。光学くし105の遮光部分および透過部分の幅の比は1:1となっている。ここで、JIS K7374においては、光学くしとして、幅が、0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの5種類の光学くしが定められているが、本実施形態で2.0mm幅の光学くしを用いることとしたのは、2.0mm幅以外の光学くしを用いた場合には、ギラツキが発生し易い防眩フィルムと、ギラツキが発生し難い防眩フィルムとの間に透過像鮮明度の差があまり表れないが、2.0mm幅の光学くしを用いた場合には、ギラツキが発生し易い防眩フィルムと、ギラツキが発生し難い防眩フィルムとの間に透過像鮮明度の差が明確に表れるからである。 【0025】 防眩フィルム10は、ギラツキをさらに抑制する観点から、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された透過像鮮明度が10%以上となるように管理されることが好ましい。2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルム10透過像鮮明度の上限は、充分な防眩性を得る観点から、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。 ・・・略・・・ 【0032】 防眩フィルム10は、画像表示装置の表面に設けられるが、特に、90ppi以上110ppiの解像度を有する画像表示装置(例えば、モニター用液晶ディスプレイ)の表面に用いられることが好ましい。 【0033】 <光透過性基材> 光透過性基材11としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、セルロースアシレート基材、シクロオレフィンポリマー基材、ポリカーボネート基材、アクリレート系ポリマー基材、ポリエステル基材、またはガラス基材が挙げられる。 ・・・略・・・ 【0043】 <防眩層> 防眩層12は、防眩性を発揮する層である。防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、他の機能を発揮するものであってもよい。具体的には、防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮する層であってもよい。 ・・・略・・・ 【0045】 防眩層12の表面は、上記したように凹凸面12Aとなっている。「防眩層の表面」とは、防眩層における光透過性基材側の面(防眩層の裏面)とは反対側の面を意味するものとする。 【0046】 凹凸面12Aの形成方法としては、例えば、(A)硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて凹凸面を形成する方法、(B)金型を用いた転写方法によって凹凸面を形成する方法、(C)サンドブラストにより防眩層の表面を荒すことによって凹凸面を形成する方法、または(D)エンボスロールにより防眩層の表面に凹凸を付与することによって凹凸面を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、製造が容易であることから、上記(A)の方法が好ましい。 【0047】 上記(A)の方法においては、微粒子の種類や粒径および硬化性樹脂前駆体の種類を適宜選択し、塗膜形成条件を調整することにより、凹凸面を有する防眩層を形成することができる。 【0048】 防眩層12は、図2に示されるようにバインダ樹脂13および微粒子14を含んでおり、上記(A)の方法によって形成されている。 【0049】 (バインダ樹脂) バインダ樹脂13は、硬化性樹脂前駆体の硬化物(重合物、架橋物)を含むものである。本明細書における「硬化性樹脂前駆体」とは、樹脂前駆体が光硬化性や熱硬化性を有し、光硬化または熱硬化によって樹脂となる樹脂前駆体を意味する。樹脂は、硬化性樹脂前駆体の硬化物の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。 ・・・略・・・ 【0050】 光硬化性樹脂前駆体としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。光硬化性樹脂前駆体としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。 【0051】 (光重合性モノマー) 光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000未満のものである。光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。 【0052】 2官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。 【0053】 これらの中でも硬度が高い第1の機能層を得る観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。 ・・・略・・・ 【0060】 (微粒子) 微粒子14は、無機微粒子または有機微粒子のいずれであってもよいが、これらの中でも、例えば、シリカ(SiO2)微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化スズ微粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物微粒子が好ましい。無機酸化物微粒子は、防眩層中で凝集体を形成することが可能となり、この凝集体の凝集度合により凹凸面を形成することが可能となる。 ・・・略・・・ 【0065】 防眩層12に対する微粒子14の含有量は特に限定されないが、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。微粒子の含有量が5質量%以上となっているので、防眩性を確実に得ることができ、また微粒子の含有量が30質量%以下となっているので、凝集体が過度に生じることもなく、内部拡散および/または防眩層の表面に過剰な凹凸が生じることを抑制でき、これにより白濁感を抑制できる。微粒子の含有量の下限は10質量%以上であることがより好ましく、微粒子の含有量の上限は20質量%以下であることがより好ましい。 【0066】 凝集体14として無機酸化物微粒子を用いる場合、無機酸化物微粒子の平均二次粒子径は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。0.5μm以上であれば、表面ヘイズが20%以上30%以下の防眩層を形成することができ、また5μm以下であれば、過度に大きな凹凸の形成を抑制でき、ギラツキの発生を抑制することができる。微粒子14の凝集体の平均二次粒子径は、下限が1μm以上であることが好ましく、上限が3μm以下であることが好ましい。無機酸化微粒子の平均二次粒子径は、コールターカウンター法による体積平均径として測定することができる。 【0067】 防眩層12は、例えば、以下の方法によって形成することができる。まず、光透過性基材11の表面に、以下の防眩層用組成物を塗布する。 ・・・略・・・ 【0068】 防眩層用組成物は、少なくとも、上記硬化性樹脂前駆体、上記微粒子を含むものである。その他、必要に応じて、防眩層用組成物に、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、防眩層用組成物には、防眩層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。 【0069】 (溶剤) 溶剤は、上記防眩層用組成物を塗布しやすくするために粘度を調整する目的や、蒸発速度や微粒子に対する分散性を調整して、防眩層形成時における微粒子の凝集度合を調整して所定の凹凸面を形成させやすくする目的で使用されうる。 ・・・略・・・ 【0070】 (重合開始剤) 重合開始剤は、光照射により分解されて、ラジカルを発生して光重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。 【0071】 重合開始剤は、光照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば特に限定されない。 ・・・略・・・ 【0075】 (レベリング剤) レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、防眩層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成する防眩層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。 【0076】 ベナードセル構造は、防眩層の表面の凹凸が大きくなりすぎてしまうおそれがある。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのない防眩層が得られるだけでなく、防眩層の表面の凹凸形状の調整も容易となる。 【0077】 防眩層用組成物の調製方法としては、各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。 【0078】 光透過性基材11の表面に、防眩層用組成物を塗布した後、塗膜状の防眩層用組成物を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送し、各種の公知の方法で防眩層用組成物を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで、溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、微粒子の分布状態を調整できる。 【0079】 特に、乾燥条件の選定によって微粒子の分布状態を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30~120℃、乾燥風速では0.2~50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整した乾燥処理を、1回又は複数回行うことで微粒子の分布状態を所望の状態に調整することができる。 【0080】 その後、塗膜状の防眩層用組成物に紫外線等の光を照射して、硬化性樹脂前駆体を重合(架橋)させることにより防眩層用組成物を硬化させて、防眩層12を形成するとともに、混在領域11Aを形成する。 ・・・略・・・ 【0082】 本実施形態によれば、防眩フィルム10が凹凸面12Aを有する防眩層12を備えているので、光透過性基材11と防眩層12との界面で反射する光と、防眩層12の凹凸面12Aで反射する光との干渉を抑制できる。これにより、干渉縞の発生を抑制できる。また、混在領域11Aを形成した場合には、光透過性基材11と防眩層12との界面での反射を抑制できるので、干渉縞の発生をより抑制できる。」 (ウ)実施例 「【0084】 本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。 【0085】 <防眩層用組成物の調製> まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、防眩層用組成物を得た。 (防眩層用組成物) ・不定形シリカ(ゲル法、平均二次粒径(体積平均)2.0μm):15~20質量部 ・ペンタエリスリトリトールトリアクリレート:100質量部 (合議体注:上記「ペンタエリスリトリトールトリアクリレート」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」(【0053】等)の誤記である。) ・セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース):1質量部 ・シリコーン系レベリング剤:0.2質量部 ・トルエン(溶剤):200質量部 ・メチルイソブチルケトン(溶剤):50質量部 上記不定形シリカは、表面が有機処理(疎水化処理)されたものであった。 【0086】 <防眩フィルムの作製> 光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム(富士フイルム社製、TD80UL)を準備し、トリアセチルセルロース樹脂フィルムの片面に、防眩層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、1~3μm厚み(硬化時)の防眩層を形成し、不定形シリカの質量部、乾燥条件、厚みを適宜調整して、サンプル1~10に係る防眩フィルムを作製した。 【0087】 <透過像鮮明度の測定> サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、以下のようにして透過像鮮明度を測定した。まず、写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意した。そして、サンプル1~10に係る各防眩フィルムを、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JIS K7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して、透過像鮮明度を測定した。光学くしとしては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅のものを用いた。なお、表1においては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度を、それぞれ、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)とした。 【0088】 <全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ測定> サンプル1~10の各防眩フィルムについて、以下のようにして、全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズを測定した。まず、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全体ヘイズ値を測定した。その後、上記実施形態で記載した方法に従ってヘイズ値を測定して内部ヘイズ値を求めた。そして、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、表面ヘイズ値を求めた。 【0089】 <グロス(60度鏡面光沢度)の測定> サンプル1~10の各防眩フィルムについて、精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8741に従って防眩フィルムのグロス(60度鏡面光沢度)を測定した。 【0090】 <ギラツキ評価(1)> サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、防眩フィルムの防眩層が形成されていない面にガラス板(厚み3mm)を透明粘着剤で貼りあわせた。さらに、このガラス板における防眩フィルムが貼合されていないガラス面と、200ppiのブラックマトリクス(ガラス厚み0.7mm)のマトリクスが形成されていないガラス面とを粘着剤で貼り合わせた。こうして得られた試料に対し、ブラックマトリクス側に白色面光源(HAKUBA製LIGHTBOX、平均輝度1000cd/m2)を設置することで、疑似的にギラツキ発生させた。これを防眩フィルム側からCCDカメラ(KP-M1、Cマウントアダプタ、接写リング;PK-11A ニコン、カメラレンズ;50mm,F1.4s NIKKOR)で撮影した。CCDカメラと防眩フィルムの距離は250mmとし、CCDカメラのフォーカスは防眩フィルムに合うように調節した。CCDカメラで撮影した画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理ソフト(ImagePro Plus ver.6.2;Media Cybernetics社製)で次のように解析を行った。まず、取り込んだ画像から200×160ピクセルの評価箇所を選び、該評価箇所において、16bitグレースケールに変換した。次に、フィルタコマンドの強調タブからローパスフィルタを選択し3×3、回数3、強さ10の条件でフィルタをかけた。これによりブラックマトリクスパターン由来の成分を除去した。次に、平坦化を選択し、背景:暗い、オブジェクト幅10の条件でシェーディング補正を行った。次に、コントラスト強調コマンドでコントラスト:96、ブライトネス:48としてコントラスト強調を行った。得られた画像を8ビットグレースケールに変換し、その中の150×110ピクセルについてピクセルごとの値のばらつきを標準偏差値として算出することにより、ギラツキを数値化した。この数値化したギラツキ値が小さいほど、ギラツキが少ないと言える。 【0091】 <ギラツキ評価(2)> サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、以下のようにしてギラツキを評価した。21.5インチ、フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付した。その上にサンプル1~10の各防眩フィルムを置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し、下記の基準により評価した。 ○:ギラツキが気にならなかった。 ×:ギラツキが気になった。 【0092】 以下、結果を表1に示す。 【表1】 [図:0001410169000012.jpg] 【0093】 表1に示されるように、サンプル4~7においては、防眩フィルムのC(2.0)が8%未満であったため、ギラツキが発生していた。 【0094】 これに対し、サンプル1~3および8~10においては、防眩フィルムのC(2.0)が8%以上であったために、ギラツキが発生していなかった。 【0095】 一方、ヘイズやグロスはギラツキとは相関が無く、防眩フィルムのギラツキが発生しやすいか否かを管理することはできないことが理解できる。 【0096】 また、ギラツキ評価1の結果は、ギラツキ評価2の結果と対応しているので、ギラツキ評価1で用いた測定方法は信頼性があると判断される。」 イ 引用発明2 (ア) 引用例2には、引用例2でいう「本発明」の実施例として、【0085】に記載の「防眩層用組成物」を得て、【0086】の記載の「防眩フィルムの作製」工程により「作製した」「サンプル8」「に係る防眩フィルム」が記載されている。 また、「サンプル8」「に係る防眩フィルム」の評価「結果」が【0092】【表1】に記載されているところ、【表1】に記載の各「結果」は、【0086】~【0091】の定義によるものである。 (イ) 上記ア(ア)~(オ)及び上記(ア)より、引用例2には、「サンプル8」の「フィルム」の発明(以下「引用発明2」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。 「 下記に示す組成となるように各成分を配合して、防眩層用組成物を得て、 ・不定形シリカ(ゲル法、平均二次粒径(体積平均)2.0μm):15~20質量部 ・ペンタエリスリトールトリアクリレート:100質量部 ・セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース):1質量部 ・シリコーン系レベリング剤:0.2質量部 ・トルエン(溶剤):200質量部 ・メチルイソブチルケトン(溶剤):50質量部、 ここで、上記不定形シリカは、表面が有機処理(疎水化処理)されたものであり、 光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルムを準備し、トリアセチルセルロース樹脂フィルムの片面に、防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成し、 次いで、形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、1~3μm厚み(硬化時)の防眩層を形成し、 不定形シリカの質量部、乾燥条件、厚みを適宜調整して作製された、 サンプル8の防眩フィルムであって、 透過像鮮明度(%)は、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)は、それぞれ2.0、1.9、2.0、2.0、11.1、ヘイズ(%)は、全ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ、内部ヘイズ/全ヘイズは、それぞれ24.5、0.7、23.8、0.029、グロス(60度鏡面光沢度)(%)は29.3、ギラツキ評価(1)は26.8、ギラツキ評価(2)は○である、 サンプル8の防眩フィルム。 <透過像鮮明度の測定> サンプル1の防眩フィルムにおいて、以下のようにして透過像鮮明度を測定した。まず、写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意した。そして、サンプル1の防眩フィルムを、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JISK7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して、透過像鮮明度を測定した。光学くしとしては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅のものを用いた。なお、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度を、それぞれ、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)とした。 <全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ測定> サンプル1の防眩フィルムについて、以下のようにして、全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズを測定した。まず、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全体ヘイズ値を測定した。その後、上記実施形態で記載した方法に従ってヘイズ値を測定して内部ヘイズ値を求めた。そして、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、表面ヘイズ値を求めた。 <グロス(60度鏡面光沢度)の測定> サンプル1の防眩フィルムについて、精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8741に従って防眩フィルムのグロス(60度鏡面光沢度)を測定した。 <ギラツキ評価(1)> サンプル1の防眩フィルムにおいて、防眩フィルムの防眩層が形成されていない面にガラス板(厚み3mm)を透明粘着剤で貼りあわせた。さらに、このガラス板における防眩フィルムが貼合されていないガラス面と、200ppiのブラックマトリクス(ガラス厚み0.7mm)のマトリクスが形成されていないガラス面とを粘着剤で貼り合わせた。こうして得られた試料に対し、ブラックマトリクス側に白色面光源(HAKUBA製LIGHTBOX、平均輝度1000cd/m2)を設置することで、疑似的にギラツキ発生させた。これを防眩フィルム側からCCDカメラ(KP-M1、Cマウントアダプタ、接写リング;PK-11Aニコン、カメラレンズ;50mm,F1.4sNIKKOR)で撮影した。CCDカメラと防眩フィルムの距離は250mmとし、CCDカメラのフォーカスは防眩フィルムに合うように調節した。CCDカメラで撮影した画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理ソフト(ImagePro Plus ver.6.2;Media Cybernetics社製)で次のように解析を行った。まず、取り込んだ画像から200×160ピクセルの評価箇所を選び、該評価箇所において、16bitグレースケールに変換した。次に、フィルタコマンドの強調タブからローパスフィルタを選択し3×3、回数3、強さ10の条件でフィルタをかけた。これによりブラックマトリクスパターン由来の成分を除去した。次に、平坦化を選択し、背景:暗い、オブジェクト幅10の条件でシェーディング補正を行った。次に、コントラスト強調コマンドでコントラスト:96、ブライトネス:48としてコントラスト強調を行った。得られた画像を8ビットグレースケールに変換し、その中の150×110ピクセルについてピクセルごとの値のばらつきを標準偏差値として算出することにより、ギラツキを数値化した。この数値化したギラツキ値が小さいほど、ギラツキが少ないと言える。 <ギラツキ評価(2)> サンプル1の防眩フィルムにおいて、以下のようにしてギラツキを評価した。21.5インチ、フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付した。その上にサンプル1の防眩フィルムを置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し、下記の基準により評価した。 ○:ギラツキが気にならなかった。 ×:ギラツキが気になった。」 (合議体注:「サンプル1」「に係る防眩フィルム」及び「サンプル1」「の防眩フィルム」との記載を、「サンプル1の防眩フィルム」に統一して記載している。「グロス」及び「グロス(60度鏡面光沢度)」との記載を、「グロス(60度鏡面光沢度)」に統一して記載している。「ギラツキ評価1」及び「ギラツキ評価(1)」、あるいは「ギラツキ評価2」及び「ギラツキ評価(2)」との記載を、それぞれ「ギラツキ評価(1)」、あるいは「ギラツキ評価(2)」に統一して記載している。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明2を対比すると、以下のとおりである。 (ア) 引用発明2の「防眩層用組成物」及び引用発明2の「作製」工程からみて、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」は、「光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム」「の片面に」、「防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成し」、「形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ」、「紫外線を」「照射して塗膜を硬化させることにより」、「防眩層を形成し」たものであると理解できる。 また、引用発明2の「防眩層用組成物」は、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の「不定形シリカ」を「15~20質量部」、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を「100質量部」、「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」を「1質量部」、「シリコーン系レベリング剤」を「0.2質量部」、「トルエン(溶剤)」を「200質量部」、「メチルイソブチルケトン(溶剤)」を「50質量部」を、「不定形シリカの質量部」を「調整して」「配合して」、「得」られたものであると理解できる。 また、引用発明2の「防眩フィルム」の「0.5mm幅」「の光学くしを用いて測定された」「透過像鮮明度(%)」は、それぞれ「1.0」であり、「グロス(60度鏡面光沢度)(%)は33.1」であり、「全ヘイズ」「23.2」「%」、「内部ヘイズ」「0.6」「%」、「表面ヘイズ」「22.6」「%」であり、「<ギラツキ評価(2)>」の評価は、「○:ギラツキが気にならなかった。」である。 (イ) 引用発明2の「光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム」は、「光透過性」のものである。そうすると、上記(ア)で述べた引用発明2の「防眩フィルム」としての各光学特性は、主に、引用発明2の「防眩層」(及びその表面凹凸)によるものと理解できる。 してみると、引用発明2の「防眩層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。 (ウ) 引用発明2における「透過像鮮明度(%)」は、「写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意し」、引用発明2「を、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JISK7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して」「光学くしを用いて測定された」ものである。 また、本件特許明細書の【0165】([透過像鮮明度])によれば、本件特許発明1における「60%以下となる範囲の値」とされる「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」は、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し」、「防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した」ものである。 ここで、「JIS K7374:2007(プラスチック-像鮮明度の求め方)」は、「JIS 7105:1981(プラスチックの工学的特性試験方法)」から像鮮明度に関する測定方法だけを分離・独立して新規に制定した規格であるから、像鮮明度の求め方は同様である。 また、「JIS K7374」では、「試験片に筋目(方向性をもつ凹凸)がある場合には、この筋目に対する直角方向と平行方向の像鮮明度は異なるので、両方を測定する」とされるところ、上記の引用発明2の「透過像鮮明度(%)」の測定においては、筋目(方向性をもつ凹凸)に対してどのような方向で像鮮明度を測定するのか定義されていないから、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」に「筋目」はないと理解できる。そうすると、引用発明2の製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行となるように設置して測定される「透過像鮮明度(%)」は、「1.0」と同じか同等な値を示すと理解できる。あるいは、引用発明2の製造方法からみて、「透過像鮮明度(%)」が、引用発明2の製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向と関係に基づく大きな異方性を示すとも考えにくい。 以上勘案すると、引用発明2の「C(0.5)」「1.0」「%」である「防眩層」は、本件特許発明1の「防眩層」の、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値」であるとの要件を具備する。 (エ) 上記(ア)より、引用発明2の「防眩層」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」と、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の凝集した「不定形シリカ」を含むものである。また、引用例2の「無機酸化微粒子の平均二次粒子径は、コールターカウンター法による体積平均径として測定することができる。」(【0066】)との記載からみて、当該平均二次粒子径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径であると理解できる。そして、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の凝集した「不定形シリカ」は、その製造工程、及び、【0046】の「凹凸面12Aの形成方法としては、例えば、(A)硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて凹凸面を形成する方法、・・・等が挙げられる。これらの中でも、製造が容易であることから、上記(A)の方法が好ましい。」との記載からみて、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」中に分散されており、硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて「防眩層」の表面の凹凸の分布構造を形成していると理解できる。 そうすると、引用発明2の「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」は、本件特許発明1の「マトリクス樹脂」に相当する。また、引用発明2の凝集した「不定形シリカ」は、本件特許発明1の「微粒子」に相当する。 そして、引用発明2の「不定形シリカ」の上記粒径からみて、引用発明2の凝集した「不定形シリカ」は、本件特許発明1の「微粒子」の、「コールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値」との要件を満たす。また、引用発明2の「防眩層」は、本件特許発明1の「前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」との要件を満たす。 (オ) 引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」は、「精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JISZ8741に従って」「測定した」ものであり、「29.3」%である。 また、本件特許明細書の【0166】([60度グロス])によれば、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」は、「グロスメーター((株)掘場製作所製、IG-320)を用いて、JlS K7105に準拠し、角度60°で測定した」ものである。 ここで、特開2003-207945号公報の【0076】、特開2007-206482号公報の【0229】、特開2010-128429号公報の【0095】、特開2016-107497号公報の【0065】等に例示されているように、鏡面光沢度(グロス)は、JIS Z8741(鏡面光沢度測定方法)とJIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定することが通常である。そうすると、上記の引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」の測定及び本件特許発明1の「60度グロス」の測定は、JIS Z8741とJIS K7105に準拠していると理解できる。 してみると、引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」は、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」に対応するものと理解できる。したがって、引用発明2は、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値」とする要件を満たしている。 (カ) 防眩フィルムは、ディスプレイの最表面に装着されて使用されることは、技術常識である。引用発明2も、実際に「フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付し」、「その上に」引用発明2「を置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し」て「ギラツキ評価(2)」を行っている。 そうすると、上記(ア)~(オ)より、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」は、本件特許発明1の、「ディスプレイの表面に装着される」とされる、「防眩フィルム」に相当する。また、引用発明2の「防眩フィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子」を含む「防眩層」を備え、「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」点で共通する。 イ 一致点及び相違点 (ア) 一致点 本件特許発明1と引用発明2は、次の構成で一致する。 「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、 60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値であり、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値であり、かつ マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含む防眩層を備え、 前記防眩層には、前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」 (イ) 相違点 本件特許発明1と引用発明2は、以下の点で相違、又は一応相違する。 (相違点2-1-1) 「防眩層」が、本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明2は、そのようなものであるかどうか不明な点。 (相違点2-1-2) ヘイズ値が、本件特許発明では「31.4%以上50%以下となる範囲の値」に設定されているのに対して、引用発明2では、「24.5」%である点。 ウ 判断 事案に鑑みて、相違点2-1-2について検討する。 引用例2の【0009】には、引用例2における課題を解決するための手段として、「防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下」となるように防眩フィルムを管理することが記載されており、請求項1に係る発明にも、「前記防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下」とすることを必須の要件としている。 そうすると、当業者であったとしても、引用発明2の全ヘイズ値を、課題を解決するための手段とされた「防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下」とする要件を満たさないものに変更しようとする動機付けがあるとはいえない。そうすると、引用発明2において、全ヘイズ値を、「31.4%以上50%以下となる範囲の値」に設定し、本件特許発明1の相違点2-1-2に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (3)本件特許発明3及び本件特許発明4について 本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明2とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点2-1-2において相違する。 したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 4 引用例7を主引用例とする理由2 (1)引用例7 ア 引用例7の記載事項 令和3年12月6日付けで特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例7(特開2015-132744号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載したものであるところ、そこには、以下の記載事項がある。 (ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 基材フィルムの少なくとも一方の面にアンチグレア層を有するアンチグレアフィルムであって、 前記アンチグレア層は、電離放射線硬化型樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、球状微粒子、光重合開始剤を含む塗料の硬化物で形成されてなり、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍であることを特徴としたアンチグレアフィルム。」 (イ)発明の詳細な説明 「【技術分野】 【0001】 本発明は、アンチグレアフィルムに関し、特にCRTやフラットパネルディスプレイ等のディスプレイ画面上に用いられるアンチグレアフィルムに関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 そこで本発明は、アンチグレア性に優れ、かつ高精細化されたディスプレイに使用した際にも、ギラツキが発生しにくいアンチグレアフィルムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明のアンチグレアフィルムは、透明支持体の一方の面に、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍であるように、電離放射線硬化型樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、球状微粒子、光重合開始剤を含む塗料の硬化物で形成されたアンチグレア層を有するものである。 【0009】 特に熱可塑性樹脂を添加することによって、球状微粒子の分散性が向上し、また球状微粒子の表面が樹脂成分で覆われたような形状になる。このため、塗膜表面が緩やかな凹凸を有し、ディスプレイのギラツキを低減する。このため球状微粒子の平均粒子径は0.5μm~10μmが好ましい。なお、本発明でいう平均粒子径は、コールターカウンター法によって測定した値である。 【0010】 また膜厚が薄すぎると球状微粒子の表面が覆われず、膜厚が厚すぎると粒子が完全に埋まってしまい防眩性が得られない。このため、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍であることが好ましい。なお、本発明でいう球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚は、乾燥後の塗膜中で、球状微粒子がない部分の厚みのことである。 【発明の効果】 【0011】 本発明のアンチグレアフィルムを用いれば、映り込み防止性に優れ、かつ高精細化されたディスプレイに用いた場合ににも、画面のギラつきを目立たなくすることができ、ディスプレイの視認性を低下させない画面保護フィルムまたはタッチパネルとすることができる。 【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明のアンチグレアフィルムは、透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、球状微粒子、光重合開始剤を含む塗料の硬化物から形成されてなるアンチグレア層を有するものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。 【0013】 透明支持体としては、ガラス板やプラスチックフィルム等の透明性の高いものを用いることができる。 ・・・略・・・ 【0015】 次に、アンチグレア層を構成する電離放射線硬化型樹脂組成物としては、紫外線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーを用いることができ、この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。 【0016】 このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。 【0017】 また表面に光重合性官能基を導入されたシリカ粒子を含む、ハイブリッド型光重合性プレポリマーは、球状微粒子の沈降を防ぎ、硬度も向上できるため特に最適である。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させアンチグレア膜の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。 ・・・略・・・ 【0022】 また、本発明においては、アンチグレア層を構成するバインダー成分として電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることにより、繰り返しタッチ(押圧)等を行ってもアンチグレア層の表面に傷をつきにくくすることができる。これにより、タッチパネルに用いた際に、傷がつくことによるヘーズの上昇を抑制し、ディスプレイの表示画像の解像力の低下を防止するとができる。 ・・・略・・・ 【0024】 本発明におけるアンチグレア層を構成するもう一つのバインダー成分として熱可塑性樹脂組成物を用いることが挙げられる。熱可塑性樹脂を添加することによって、球状微粒子の分散性が向上し、また球状微粒子の表面が樹脂成分で覆われたような形状になる。このため、塗膜表面が緩やかな凹凸を有し、ディスプレイのギラツキを低減する。 【0025】 このような熱可塑性樹脂組成物としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが使用できる。熱可塑性樹脂と電離放射線硬化型樹脂の重量比率は、熱可塑性樹脂が少なすぎるとギラツキ防止効果が少なく、多すぎると塗膜硬度が低下するため、熱可塑性樹脂:電離放射線硬化型樹脂=1:20~1:1が好ましく、1:10~6:10が特に好ましい。なお、本願においては、熱可塑性樹脂は、高分子量の樹脂だけではなく、一般的に低分子量の分散剤と称されるものであってもよい。 【0026】 ギラツキを抑え防眩性を高めるアンチグレア層には、なだらかな表面凹凸を形成するために球状微粒子を添加する。この球状微粒子はシリカ等の無機微粒子や、アクリル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子等の有機微粒子が使用できる。塗膜形成時に微粒子が沈降しないためには比重がバインダー溶液と近い有機脂微粒子が好ましい。微粒子は、1種または2種以上を混合して用いることができるが、ギラツキ防止の観点からは、単一粒子径の単分散可能な微粒子が好ましい。粒子径の変動係数としては、変動係数が25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下であるものが好適に用いられる。 【0027】 また、アンチグレア層の厚みは、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が、球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍、より好ましくは1.5倍以下となるように設計され、具体的には、アンチグレア層の厚みは、0.25μm~20μmが一般的である。 【0028】 また、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が、球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍となるようにするためには、球状微粒子の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、上限としては、10μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。また、ギラツキ防止の観点からは、粒子径として、10μmより大きい粒子を含まないことが好ましい。 ・・・略・・・ 【0032】 以上のようなアンチグレアフィルムは、例えば上述した熱可塑性樹脂組成物と球状微粒子、必要に応じ有機溶剤、分散剤等を混合、分散した後に、電離放射線硬化型樹脂組成物、光重合開始剤、必要に応じレベリング剤等を加えて調整し、アンチグレア層塗布液を作製する。次に、当該アンチグレア層塗布液を従来公知のコーティング方法、例えば、バーコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷などによって、上述した基材フィルムの少なくとも一方の面に塗布した後、必要に応じて乾燥させ、電離放射線の照射によって硬化させることによりアンチグレア層を形成して得ることができる。 ・・・略・・・ 【0034】 以上、本発明のアンチグレアフィルムによれば、ハードコート性と、防眩性及び透明性を有しかつ高精細なディスプレイ上で使用した場合でもギラツキを抑え優れた視認性を得ることができる。」 (ウ)実施例 「【0035】 以下、実験例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実験例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。 【0036】 [実験例1] 基材フィルムとして厚み125μmのポリエステルフィルムの一方の面に、下記処方のアンチグレア層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射(照射量400mJ/cm2)して厚み2.5μmのアンチグレア層を形成し、実験例1のアンチグレアフィルムを作製した。塗膜の厚みは、電子顕微鏡を用いて測定した値である。 【0037】 なお、アンチグレア層用塗布液は、下記処方の分散液とバインダー成分液をそれぞれ調製した後、混合することにより調製した。 【0038】 <実施例1の分散液の処方> ・シリコーン樹脂球状微粒子 0.50部 (トスパール130、平均粒子径3.0μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク社) ・熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂 1.00部 (エスレックBLS[固形分100%]:積水化学工業社) ・酢酸ブチル 10.00部 分散はビーズミルにて15分行った。 【0039】 <実験例1のバインダー成分液の処方> ・電離放射線硬化型樹脂組成物 6.30部 (紫光7600BA[固形分80%]:日本合成化学社) ・酢酸ブチル 9.70部 ・光重合開始剤 0.15部 (イルガキュア184、BASFジャパン社) ・レベリング剤 0.03部 (M-アディティブ、東レ・ダウコーニング社) 【0040】 <実験例1のアンチグレア層用塗布液の処方> ・実験例1の分散液 11.50部 ・実験例1のバインダー成分液 16.18部 ・・・略・・・ 【0047】 [実験例7] 実験例1の分散液処方で、熱可塑性樹脂を4.50部に変更した以外は、実験例1と同様にして、実験例7のアンチグレアフィルムを作製した。 ・・・略・・・ 【0055】 次いで、これらの試料について、防眩性、透明性、ハードコート性、ギラツキについて評価した。評価結果を表1に示す。 【0056】 (1)Haze ヘーズメーター NDH2000(日本電色工業社)を用いて、入射光がアンチグレア層を有する面となるようにセットし、ヘーズ「%」(JIS-K7136:2000)を測定した。 (合議体注:【0056】には、「Haze」を、「入射光がアンチグレア層を有する面となるようにセットし」「測定した」と記載されている。しかしながら、「アンチグレアフィルム」は、「アンチグレア層」側を最表面としてディスプレイ上に装着され、「アンチグレア層」を有さない面に入射し、「アンチグレア層」から出射する(画像)光が観察されるものである。このような「防眩層」を備えた「防眩フィルム」においては、ヘーズを、入射光が「防眩フィルム」の「防眩層」を有さない面に入射するようにセットし、「防眩層」から出射する拡散光に基づき測定することが常識である。してみると、「入射光がアンチグレア層を有する面となるようにセットし」との記載は、「入射光がアンチグレア層を有さない面となるようにセットし」の誤記であることは、技術的に明らかである。) 【0057】 (2)Gloss 入出角度60°における光沢度「%」(JIS-Z8741:1997)を測定した。 【0058】 (3)防眩性 画像を表示させた液晶画面上にアンチグレア層が表になるようにアンチグレアフィルムを乗せ、外部光の映り込みによって表示画像が見難くなるかどうかについて目視評価した。評価は、映り込みが抑制され画像が見やすかったものを「◎」、わずかに映り込みがあったが、画像が見えにくくなかったものを「○」、映り込みが抑制されず画像が見にくかったものを「×」とした。 【0059】 (4)鉛筆硬度 JIS-K5400:1990に準拠した方法で、アンチグレア層表面の鉛筆引っかき値を測定した。 【0060】 (5)ギラツキ 高精細ディスプレイのタブレット型PC(iPad:アップル社)の全画面を緑色表示にし、その上に実験例1~12のアンチグレアフィルムを載せて、ギラツキを目視判定した。ギラツキが無いものを「◎」、ギラツキがほとんど見られないものを「○」、ギラツキが見られるものを「×」とした。 【0061】 (6)透明性 高精細ディスプレイのタブレット型PC(iPad:アップル社)の表示部分にサンプルを載せ、画像が白ボケするかを目視判定した。評価は視認性良好であったものを「◎」、わずかに白ぼけるものを「○」、白ボケするものを「×」とした。 【0062】 【表1】 [図:0001410169000013.jpg] 【0063】 本発明の実験例1~10のアンチグレアフィルムは、アンチグレア層が、電離放射線硬化型樹脂組成物、熱可塑性樹脂、球形微粒子から形成されてなり、熱可塑性樹脂は電離放射線硬化型樹脂組成物に対して1/10~1/1であり、球状粒子は電離放射線硬化型樹脂組成物に対して1/10~1/2であったため透明性、防眩性を確保しつつ、ギラツキを抑制することができた。」 イ 引用発明7 (ア) 引用例7でいう「本発明」は、「特にCRTやフラットパネルディスプレイ等のディスプレイ画面上に用いられるアンチグレアフィルムに関する」(【0001】)ものであるところ、引用例7でいう「本発明」の実施例として、引用例7の【0036】~【0040】には、「本発明」の「実験例1」が記載されている。また、引用例7の【0047】には、「実験例1の分散液処方で、熱可塑性樹脂を4.50部に変更した以外は、実験例1と同様にして」「アンチグレアフィルムを作製した」「実験例7」が記載されている。 そして、「実験例7」は、「実験例1の分散液処方で、熱可塑性樹脂を4.50部に変更した以外は、実験例1と同様にして、実験例7のアンチグレアフィルムを作製した」(【0047】)ものであるから、「実験例7」では、【0038】の「分散液の処方」における「熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂」は「4.50部」となり、【0040】の「アンチグレア層用塗布液の処方」における「実験例7の分散液」は「15.00」部となると理解できる。 (イ) 引用例7の【0062】【表1】には、「実験例7」「の試料について、防眩性、透明性、ハードコート性、ギラツキについて評価した」「評価結果」が示されている(【0055】)ところ、【表1】に示された各「評価結果」は、【0056】~【0061】に記載の各定義によるものである。 (ウ) 上記ア(ア)、(イ)と上記(ア)、(イ)より、引用例7には、「特にCRTやフラットパネルディスプレイ等のディスプレイ画面上に用いられる」「アンチグレアフィルム」の実施例である「実験例7のアンチグレアフィルム」の発明(以下「引用発明7」という。)として、以下の発明が記載されていると認められる。 「 基材フィルムとして厚み125μmのポリエステルフィルムの一方の面に、下記処方のアンチグレア層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み2.5μmのアンチグレア層を形成して作製された、アンチグレアフィルムであって、 アンチグレア層用塗布液は、下記処方の分散液とバインダー成分液をそれぞれ調製した後、混合することにより調製したものであり、 <分散液の処方> ・シリコーン樹脂球状微粒子 0.50部 (トスパール130、平均粒子径3.0μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク社) ・熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂 4.50部 (エスレックBLS[固形分100%]:積水化学工業社) ・酢酸ブチル 10.00部 分散はビーズミルにて15分行った。 <バインダー成分液の処方> ・電離放射線硬化型樹脂組成物 6.30部 (紫光7600BA[固形分80%]:日本合成化学社) ・酢酸ブチル 9.70部 ・光重合開始剤 0.15部 (イルガキュア184、BASFジャパン社) ・レベリング剤 0.03部 (M-アディティブ、東レ・ダウコーニング社) <アンチグレア層用塗布液の処方> ・分散液 15.00部 ・バインダー成分液 16.18部、 ヘーズ(%)は44.78%、Gloss(60)は29.04%、防眩性は◎、鉛筆硬度はF、ギラツキは〇、透明性〇であり、ヘーズ(%)、Gloss(60)、防眩性、鉛筆硬度、ギラツキ及び透明性は以下の定義による、特にCRTやフラットパネルディスプレイ等のディスプレイ画面上に用いられる、アンチグレアフィルム。 (1)ヘーズ(%) ヘーズメーター NDH2000(日本電色工業社)を用いて、入射光がアンチグレア層を有さない面となるようにセットし、ヘーズ「%」(JIS-K7136:2000)を測定した。 (2)Gloss(60) 入出角度60°における光沢度「%」(JIS-Z8741:1997)を測定した。 (3)防眩性 画像を表示させた液晶画面上にアンチグレア層が表になるようにアンチグレアフィルムを乗せ、外部光の映り込みによって表示画像が見難くなるかどうかについて目視評価した。評価は、映り込みが抑制され画像が見やすかったものを「◎」、わずかに映り込みがあったが、画像が見えにくくなかったものを「○」、映り込みが抑制されず画像が見にくかったものを「×」とした。 (4)鉛筆硬度 JIS-K5400:1990に準拠した方法で、アンチグレア層表面の鉛筆引っかき値を測定した。 (5)ギラツキ 高精細ディスプレイのタブレット型PC(iPad:アップル社)の全画面を緑色表示にし、その上にアンチグレアフィルムを載せて、ギラツキを目視判定した。ギラツキが無いものを「◎」、ギラツキがほとんど見られないものを「○」、ギラツキが見られるものを「×」とした。 (6)透明性 高精細ディスプレイのタブレット型PC(iPad:アップル社)の表示部分にサンプルを載せ、画像が白ボケするかを目視判定した。評価は視認性良好であったものを「◎」、わずかに白ぼけるものを「○」、白ボケするものを「×」とした。」 (合議体注:評価項目の名称を「ヘーズ(%)」、「Gloss(60)」に統一して記載している。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明7を対比すると、以下のとおりである。 (ア) 上記(1)イ(ウ)の引用発明7の「基材フィルム」としての「厚み125μmのポリエステルフィルム」の「一方の面」に「作製」された「厚み2.5μm」の「アンチグレア層」は、「平均粒径3.0μm」の「シリコーン樹脂球状微粒子」「0.50部」、「熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂」「4.50部」、「電離放射線硬化型樹脂組成物」「6.30部」、「光重合開始剤」「0.15部」、「レベリング剤」「0.03部」、「酢酸ブチル」19.70「部」(「10.00」「部」+「9.70」「部」)を含む「アンチグレア層用塗布液」を「乾燥」、硬化させたものである。 (イ) 上記(ア)より、引用発明7の「アンチグレア層」は、「光重合開始剤」及び「レベリング剤」を含み、「熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂」と「電離放射線硬化型樹脂組成物」の硬化物とからなる樹脂と、当該樹脂中に分散された複数の「平均粒径3.0μm」の「シリコーン樹脂球状微粒子」とを含むと理解できる。なお、引用例7の【0009】における「本発明でいう平均粒子径は、コールターカウンター法によって測定した値である。」との記載に基づけば、引用発明7の「平均粒径」は、「コールターカウンター法における50%体積平均粒径」を意味するものと理解できる。 (ウ) 引用発明7の「アンチグレアフィルム」の「ヘーズ(%)は44.78%、Gloss(60)は29.04%、防眩性は◎、鉛筆硬度はF、ギラツキは〇、透明性〇であ」る。 ここで、「基材フィルム」としての「厚み125μmのポリエステルフィルム」は、ヘイズが実質0%の透明なフィルムであることは、技術常識から明らかである。 そうすると、引用発明7の上記の「ヘーズ(%)」、「Gloss(60)」、「防眩性」等の各光学特性は、「厚み2.5μm」の「アンチグレア層」により主に生じると理解できる。 (エ) 上記(イ)より、引用発明7の、「光重合開始剤」及び「レベリング剤」を含み、「熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂」と「電離放射線硬化型樹脂組成物」の硬化物とからなる樹脂、及び、「平均粒径3.0μm」の「シリコーン樹脂球状微粒子」は、本件特許発明1の「マトリクス樹脂」、及び、「コールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値」とされる「微粒子」に相当する。 また、上記(ウ)より、引用発明7の「厚み2.5μm」の「アンチグレア層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。 さらに、引用発明7の「アンチグレア層」と、本件特許発明1の「防眩層」は、「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の複数の微粒子を含」む点において共通する。 (オ) 引用発明7の「ヘーズ(%)は44.78%」である。また、引用発明7の「ヘーズ(%)」は、「ヘーズメーター NDH2000(日本電色工業社)を用いて、入射光がアンチグレア層を有さない面となるようにセットし、ヘーズ「%」(JIS-K7136:2000)を測定し」たものである。 本件特許明細書の【0164】の[ヘイズおよび全光線透過率]の定義によれば、本件特許発明1の「ヘイズ値」は、「ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて、JIS K7136に準拠し」、「凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した」ものである。 そうすると、引用発明7の「ヘーズ(%)」は、本件特許発明1の「ヘイズ値」に対応するものである。 してみると、上記(エ)より、引用発明7の「アンチグレア層」と、本件特許発明1の「防眩層」は、「ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定され」ている点において共通する。 (カ) 引用発明7の「Gloss(60)は29.04%」である。また、引用発明の「Gloss(60)」は、「入出角度60°における光沢度「%」(JIS-Z8741:1997)を測定した」ものである。 本件特許明細書の【0166】の[60度グロス]の定義によれば、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」は、「グロスメーター((株)堀場製作所、IG-320)を用いて、JIS K7105に準拠し、角度60°で測定したものである」。 ここで、特開2003-207945号公報の【0076】、特開2007-206482号公報の【0229】、特開2010-128429号公報の【0095】、特開2016-107497号公報の【0065】等に例示されているように、鏡面光沢度(グロス)は、JIS Z8741(鏡面光沢度測定方法)とJIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定することが通常である。そうすると、上記の引用発明7の「Gloss(60)」の測定及び本件特許発明1の「60度グロス」の測定は、JIS Z8741とJIS K7105に準拠していると理解できる。 そうすると、引用発明7の「Gloss(60)」は、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」に対応するものである。 してみると、上記(エ)より、引用発明7の「アンチグレア層」と、本件特許発明1の「防眩層」は、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値であ」る点において共通する。 (キ) 上記(ア)~(カ)より、引用発明7の「アンチグレアフィルム」は、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。 また、引用発明7の「アンチグレアフィルム」は、「ディスプレイ画面上に用いられる」ものである。そうすると、引用発明7の「アンチグレアフィルム」は、「ディスプレイ」の表面に装着されるものということができる。 してみると、引用発明7の「アンチグレアフィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであ」る点において共通する。 さらに、上記(エ)~(カ)より、引用発明7の「アンチグレアフィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値」であり、かつ「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定された防眩層」を備えるとの点で共通する。 イ 一致点及び相違点 (ア) 一致点 本件特許発明1と引用発明7は、次の構成で一致する。 「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、 60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値であり、かつ マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散されたコールターカウンター法における50%体積平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備える、防眩フィルム。」 (イ) 相違点 本件特許発明1と引用発明7は、以下の点で相違、又は一応相違する。 (相違点7-1-1) 「防眩層」が、本件特許発明1は、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値であ」るのに対して、引用発明7は、そのようなものであるかどうか不明な点。 (相違点7-1-2) 「防眩層」が、本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170諧調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値であ」るのに対して、引用発明7は、そのようなものであるかどうか不明な点。 (相違点7-1-3) 「防眩層」が、本件特許発明1では、「前記複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散しており、前記二次粒子により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」のに対して、引用発明7は、そのようなものであるかどうか不明な点。 ウ 判断 事案に鑑みて、相違点7-1-3について検討する。 引用例7の請求項1に係る発明は、「前記アンチグレア層は、電離放射線硬化型樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、球状微粒子、光重合開始剤を含む塗料の硬化物で形成されてなり、球状微粒子を除いた乾燥塗膜厚が球状微粒子の平均粒子径の1/2~2倍である」ことを要件としている。また、引用例7の【0009】は「特に熱可塑性樹脂を添加することによって、球状微粒子の分散性が向上し、また球状微粒子の表面が樹脂成分で覆われたような形状になる。このため、塗膜表面が緩やかな凹凸を有し、ディスプレイのギラツキを低減する。」と記載され、【0026】には「ギラツキを抑え防眩性を高めるアンチグレア層には、なだらかな表面凹凸を形成するために球状微粒子を添加する。・・・微粒子は、1種または2種以上を混合して用いることができるが、ギラツキ防止の観点からは、単一粒子径の単分散可能な微粒子が好ましい。」と記載されている。これらの記載に基づけば、引用例7に記載された発明は、アンチグレア層の膜厚に対して特定の大きさの平均粒子径を有する球状微粒子に熱可塑性樹脂を添加することにより、球状微粒子を単分散可能とし、塗膜表面の凹凸を緩やかとすることによってディスプレイのギラツキを低減しようとする発明であると理解できる。 そうすると、引用発明7において、複数の二次粒子を形成させ、アンチグレア層の表面の凹凸を二次粒子により形成されるものとする動機付けがあるとはいえない。 特許異議申立人は、令和4年4月5日付けの意見書において、「引用例7の段落【0026】の記載は、アンチグレア層を形成するための塗布液に含まれる球状粒子として、粒子サイズが揃った単分散粒子を用いることが好ましいことを意味するのであって、アンチグレア層内における球状粒子の状態を意味していない。」(第2頁)、「段落【0009】の『熱可塑性樹脂を添加することによって、球状微粒子の分散性が向上』とは、熱可塑性樹脂を添加することによって、球状微粒子が塗膜に沈降しにくくなり、アンチグレア層の厚み方向で球状微粒子が偏在することなく均一に存在しやすくなる、と解釈するのが妥当である。」、「引用例7において、アンチグレア層内で球状微粒子が凝集して形成された二次粒子を分散させる動機がない、とはいえない。」(第4頁)と主張している。 しかし、引用例7の【0026】の「単一粒子径の単分散可能な微粒子」との記載が、仮に特許異議申立人が主張するような「塗布液」中での分散を意味するとしても、そのような塗布液を用いて形成されるアンチグレア層は、当然「単一粒子径」の微粒子が「単分散」されたものとなる。また、【0009】の記載が特許異議申立人の主張するように解釈できたとしても、引用例7には、これらの微粒子を凝集させ、二次粒子とすることについて、何ら示唆がないことに変わりは無い。そして、仮に微粒子を凝集させ、二次粒子とした場合には、乾燥塗膜厚と球状微粒子の平均粒子径との関係を満たさないものとなる。そうすると、特許異議申立人の解釈は成り立ち得ないものであり、採用することができない。 以上より、引用発明7において、シリコーン樹脂球状微粒子が凝集して二次粒子を形成するようにし、本件特許発明1の相違点7-1-3に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 (3)本件特許発明3及び本件特許発明4について 本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明7とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点7-1-3において相違する。 したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。 5 理由3(実施可能要件) (1)本件特許発明 本件特許発明1、本件特許発明3、及び、本件特許発明4は、上記第3に記載のとおりのものであり、いずれも、「ギラツキ値」、「鏡面光沢度」、「透過像鮮明度」、及び、「ヘイズ値」が特定の範囲の値に設定されていることを必須の要件としている。 また、本件特許の明細書には、上記1に示す記載があり、上記1(6)に記載された、複数の長細状凸部、および隣接する長細状凸部間に位置する凹部により防眩性を発現する第1実施形態、上記第1(7)に記載された、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む第2実施形態、上記第1(8)に記載された、基材フィルム側とは反対側の表面に凹凸形状が賦形された構造を有する第3実施形態の、3つの実施形態が記載されていることが理解できる。 そして、【0060】、【0175】(あるいは、【0066】)の記載によれば、第2実施形態と同様、第1及び第3実施形態は、いずれも、防眩層が、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含んでいてもよいものと理解できる。 そうすると、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、第1~第3の実施形態のいずれかにおいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度の記載があれば、実施可能要件を満たしているといえる。 (2)発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段 本件特許に係る発明が解決しようとする課題について、本件特許の明細書の上記記載事項(2)には、「高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩フィルムの表面の凹凸により屈折したり、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。」(【0006】)、「ギラツキを抑制する方法としては、例えば、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすることが考えられるが、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすると防眩性が低下するおそれがある。」(【0007】)、「本発明は、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。」(【0008】)と記載されている。 これらの記載から、防眩フィルムをディスプレイ等の表面に装着すると発生する「ギラツキ」が、防眩層の表面の凹凸による屈折やレンズ効果により発生することが知られており、本件特許に係る発明が、防眩フィルムにおいて、ディスプレイのギラツキの抑制と共に良好な防眩性を達成することを課題としていると理解できる。 また、課題を解決するための手段について、本件特許の明細書の上記記載事項(3)には、「これらギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値は、例えば、相分離法により防眩層を形成する場合、その製造工程おいて、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整することで実現できる。また、例えば、微粒子分散法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することで実現できる。また、マトリックス樹脂と微粒子との屈折率差を所定の範囲にするためには、両者に用いる材料として、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりする。」(【0012】)と記載されている。 当該記載に基づけば、「ギラツキ値」、「鏡面光沢度」、「透過像鮮明度」、及び、「ヘイズ値」を特定の範囲の値に設定する手法として、相分離法により防眩層を形成する場合は、相分離材料の種類、乾燥プロセスにおける熱温度、乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整すること、微粒子分散法により防眩層を形成する場合は、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりすることにより、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することが挙げられている。 (3)第1実施形態について 本件特許の明細書には、第1実施形態として、「防眩層3は、複数の長細状凸部、および隣接する長細状凸部間に位置する凹部により防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度とのバランスに優れたものとなっている。」(【0040】)、「第1実施形態に係る防眩層3にこのような構造が形成されることで、この防眩層3にレンズ状(海島状)の凸部が形成されることを防止することができる。よって、第1実施形態に係る防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりすることを防止し、ディスプレイ16aのギラツキを抑制することができる。」(【0041】)と記載されている。また、「長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件および処方を設定することにより作製できる。」(【0073】)、「乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短過ぎたりすると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。」(【0074】)、「乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎたりすると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、その構造は維持される。そのため、防眩層3のギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値が上記した条件を満たすような範囲の値となるように設定するために、相分離材料の組合せを調整することに加えて、乾燥温度および乾燥時間を調整し長細状凸部の高さ等を調整することによって実現できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を作製できる。」(【0075】)、「相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成することができる。」(【0076】)、「ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層3の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルム1の防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層3の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層3の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。」(【0081】)と記載されている。 これらの記載に基づけば、【0012】に記載された、相分離法により防眩層を形成する場合について、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件や処方を設定すること、つまり、乾燥温度、乾燥時間、溶媒の蒸発温度、樹脂成分の粘性、相分離の程度を調整することにより設定することができることが示唆されており、微粒子を添加することで微粒子を含む防眩層を形成することもできることが理解できる。 また、本件特許の明細書には、第1実施形態として、「微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。」(【0062】)、「微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。」(【0063】)との記載がある。 これらの記載に基づけば、乾燥温度、乾燥時間、溶媒の蒸発温度、樹脂の粘性、相分離の程度が調整されるように、溶液中の樹脂組成物の組み合わせや重量比、或いは、調整工程、形成工程、及び硬化工程の施工条件を変化させて防眩層を形成し、形成される共連続相構造のサイズや密度等を最適化することにより、ギラツキ値と共に、鏡面光沢度、透過像鮮明度、及び、ヘイズ値が所望の範囲内の値となるように調整することを、当業者は過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。 (4)第2実施形態について 本件特許の明細書には、第2実施形態について、「第2実施形態に係る防眩フィルム1によれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」(【0105】)と記載されている。防眩層の表面の凸部を形成する微粒子の屈折率を調整することにより、屈折や、レンズ効果が生じることを抑制し、防眩性を有しつつ、ディスレイのギラツキが発生するのを低下させるものと理解できる。 また、本件特許の明細書には、「防眩層3の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層3の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できる。」(【0082】)、「第2実施形態に係る防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。複数の微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球形状や楕円体形状に形成されていてもよい。」、「第2実施形態に係る防眩層3には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。」(【0084】)、「このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層3の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」(【0088】)、と記載されている。 これらの記載に基づけば、【0012】に記載された、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差を所定範囲となるように調整して、微粒子分散法により防眩層を形成することについて、微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことや、微粒子の形状を変更すること、凝集状態を調整することにより、鏡面光沢度、透過像鮮明度、及び、ヘイズ値が所望の範囲内の値となるように調整することを、当業者は過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。 したがって、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4について、発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていたといえる。 特許異議申立人は、令和4年4月5日付けの意見書において、「当業者は、本件明細書の実施例4の防眩フィルムを再現することが困難である。なぜなら、本件明細書の実施例4は、微粒子の凝集及び配列に影響を与える乾燥条件の記載が不足しているためである。・・・オーブンの種類及び設定等により、熱の対流の仕方が異なったり、塗膜にあたる熱風の風速が異なったりするため、80℃のオーブンで1分放置した後の微粒子の凝集及び配列の程度は千差万別であるといえる。したがって、本件明細書の記載を元に、当業者が実施例4の光学特性を満たす防眩フィルムを再現することは、極めて困難といえる。」(第5頁)と主張している。 しかし、仮に、オーブンの特性の違いによって、同一温度及び同一時間で乾燥を行った場合に、実施例4と同じ光学特性を有する防眩フィルムが再現できないとしても、本件明細書の【0075】~【0076】の記載に基づき、オーブンの特性に応じて乾燥条件を変更することや、明細書の記載に基づいて、微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うこと等により、実施例4と同等の光学特性を有するように調整することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できたといえる。 そして、本件特許発明1は、「ギラツキ値が6以上10以下」、「鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値」、「透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値」、「ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値」であって、二次粒子により、防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されていれば、その要件を満たすものである。仮に、オーブンの特性の違いによって、同一温度及び同一時間で乾燥を行った場合に、実施例4と同じ光学特性を満たす防眩フィルムを再現できないとしても、本件特許発明1の要件を満たす防眩フィルムを得ることが困難であるということはできない。 (5)第3実施形態について 本件特許の明細書には、第3実施形態について、「第3実施形態に係る防眩フィルム1は、一例として、基材フィルム2上に硬化性樹脂からなるコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。」(【0107】)、「ロール24の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒径を調整することで、防眩フィルム1のコート層に形成される凹凸形状を調整できる。」(【0112】)と記載されている。また、ディスプレイのギラツキを抑制し易くすると共に防眩性を得易くすることができる凹凸形状として、第1実施形態の共連続相構造も挙げられている。 これらの記載に基づけば、防眩層の表面の凹凸形状による屈折やレンズ効果の発生が減少するように、その凹凸形状を調整することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。 (6)まとめ 以上のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていたといえる。 6 理由4(サポート要件) (1)発明が解決しようとする課題 本件特許の【0008】の記載に基づけば、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は、「ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供すること」にあるといえる。 (2)本件特許発明1、3、4 本件特許発明1、3、4は、以下の構成要件を含んでいる。 「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値」、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値」、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値」、かつ、「ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値」 (3)課題を解決できると認識できるか 本件特許の明細書には、上記1(3)に、「ヘイズ値および透過鮮明度は防眩性の良否に関わる値であり、ヘイズ値が大きくなればなるほど防眩性が高くなり、一方、透過鮮明度が小さくなればなるほど防眩性が高くなるという関係がある。」(【0011】)、「防眩層は、ヘイズ値を50%以下となる範囲の値となるようにしつつ、透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値となるように設定されている。このため、文字ボケの発生を抑制しつつ、高い防眩性を得ることができる。」(【0014】)、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下といった低い値になるように設定されているため、外光の映り込みを抑制することができる。」(【0015】)と記載されている。 これらの記載に基づけば、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が30%以下となる範囲の値」、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が60%以下となる範囲の値」、かつ、「ヘイズ値が31.4%以上50%以下となる範囲の値」に設定することで、良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することができると理解する。 一方、ギラツキについて、上記1(2)に「防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩フィルムの表面の凹凸により屈折したり、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。」(【0006】)と記載されており、上記1(3)には、「ギラツキ値とは、ディスプレイのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる値である。」(【0010】)、「防眩層は、ギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値となるため、ギラツキを定量的な評価に基づき効果的に抑制したものとなるように設定することができる。」(【0013】)と記載されている。 これらの記載から、ギラツキ値が、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで発生するギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる値であって、「ギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値」に設定することで、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させる防眩フィルムを提供することができると理解する。 そして、上記5において検討したとおり、これらのパラメータを調整する手法も、本件特許の明細書に開示されている。 そうすると、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるということができる。 特許異議申立人は、令和4年4月5日付けの意見書において、「ヘイズ、鏡面光沢度、透過像鮮明度、及び、ギラツキ(輝度分布の標準偏差)の値により、防眩フィルムとしての物の構造、構成が示されているとはいえず、特許権者の主張は妥当ではない。」(第8頁)と主張している。 しかし、上記のとおり、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、その構成要件から、発明が解決しようとする課題を解決できるものである。ギラツキを抑制できる防眩層として、防眩層の表面の凹凸を縮小すること等、様々な形状、構成の防眩層が考えられていたところ、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、客観的な指標によって区別される防眩層を具備することによって課題を解決するものであり、課題解決に特定の物の構造、構成を要するものとは理解できない。 したがって、防眩フィルムとしての物の構造、構成が示されていないとしても、サポート要件を満たさないとはいえない。 (4)まとめ 以上より、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。したがって、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、サポート要件を満たしている。 7 理由5(明確性要件) (1)ギラツキ値 本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が6以上10以下となる範囲の値」であることを発明特定事項としている。本件特許発明3、4についても同様である。 (2)ギラツキ評価 本件特許の明細書には、ギラツキ値を求める「ギラツキ評価方法」として、上記1(8)に、「撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像される防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの画素のサイズが所定値となるように調整する(調整ステップ)。」(【0131】)、「調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。」(【0132】)、「撮像装置12と表示装置16との間の相対的な距離は、実際の表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aとの間の相対的な距離)を考慮して設定されることが望ましい。」(【0133】)、「調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する(設定ステップ)。」(【0134】)、「調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する(撮像ステップ)。」(【0135】)、「撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データから、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める(演算ステップ)。この演算ステップでは、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差を求めることで数値化できる。」(【0136】)と記載されている。 ここで、上記評価方法において、撮像装置12により撮像される「輝度のばらつき」及び輝度のばらつきから求められる「標準偏差」は、技術常識から、「撮像装置12」と「ディスプレイ16a」との距離(撮像距離)や「撮像装置12」のレンズのFナンバー等の撮像条件に依存する。 (3)Fナンバー 本件特許発明における撮影は、撮像された画像データを用いて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める演算ステップを行うためのものである(【0136】)から、当業者は、なるべく被写体のコントラストを忠実に再現できる条件で撮影するものと解される。そうすると、当業者は、コントラストのピークがあるFナンバーに絞りを設定することになる。 特許異議申立人は、令和4年4月5日付けの意見書において、「乙5号証の参考図1には、F8を超えるFナンバーの分布図が、F8の分布図と略同一の形状になることが示されていない。このため、乙5号証により、Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差値が一定となる、ということができない。」、「引用例6の解説図6の測定装置Bでは、Fナンバーの値を大きくしてもぎらつきコントラストが収束していない。よって、Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差値が一定となる、ということはできない。」(第9頁)と主張している。 しかし、当業者は、上記のとおり、コントラストのピークがあるFナンバーに絞りを設定すると理解される。そして、そのようなFナンバーを特定する上で必要な作業は、Fナンバーを変えながら数回の撮影を行ってコントラストの変化を確認し、最もコントラストが高くなるFナンバーを求めることだけであり、そのことに特段の困難性があるとは認められないから、Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差が一定とならないとしても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 (4)撮影距離 本件特許の明細書には、「調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。」(【0132】)と記載されている。当該記載に基づけば、当業者は、輝度の分布を把握するのに十分な解像度が得られる程度に撮影距離を短くすることを前提としつつ、ギラツキの評価に影響を与えるほど輝線が映り込まない程度の距離を保持すべきと理解する。 特許異議申立人は、令和4年4月5日付けの意見書において、「特許権者の主張は、どのような技術常識に基づくのかが不明であり、主張の根拠が不足しているため、妥当ではない。」、「相対距離の影響が低減することに関して、特許権者は何ら根拠を示していない。」(第9頁)と主張している。 しかし、上記のとおり、明細書の記載に基づけば、当業者は、輝度の分布を把握するのに十分な解像度が得られる程度に撮影距離を短くすることを前提としつつ、ギラツキの評価に影響を与えるほど輝線が映り込まない程度の距離を保持すべきと理解し、被写体毎に自ずと撮影距離は定まる。そうすると、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 (5)まとめ 以上のとおり、撮像装置12により撮像される「輝度分布」及び輝度分布から求められる「標準偏差」は、「撮像装置12」と「ディスプレイ16a」との距離(撮像距離)や、「撮像装置12」のレンズのFナンバー等の撮像条件に依存するとしても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできないから、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は明確である。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議申立人が主張する申立ての理由、当合議体が令和3年4月30日付け、及び、令和3年12月6日付けで、特許権者に通知した取消しの理由によっては、請求項1、3及び4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700175

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