特許異議申立
2021-700210
防眩フィルム
- 審判番号
- 2021-700210
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-533966
- 登録番号
- 6745411
- 請求日
- 2021年02月26日
- 審決日
- 2024年02月16日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ダイセル
- 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 【異議申立人】前田 しのぶ
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6745411号発明「防眩フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6745411号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6745411号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。
特許第6745411号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6745411号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019-533966)は、2018年(平成30年)6月25日(先の出願に基づく優先権主張 2017年(平成29年)8月4日)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月5日にその特許権の設定の登録がされ、令和2年8月26日に特許掲載公報が発行された。本件特許について、その発行の日から6月以内である令和3年2月26日に、特許異議申立人 前田 しのぶ(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和3年 6月10日付け:取消理由通知書
令和3年 8月11日付け:訂正請求書
令和3年 8月11日付け:意見書(特許権者)
令和3年10月 5日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年 1月12日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和4年 3月22日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の
請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和4年 3月22日付け:意見書(特許権者)
令和4年 5月18日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年 9月 6日付け:審尋
令和4年10月 7日付け:回答書(特許権者)
令和5年 9月 4日付け:上申書(特許異議申立人)
なお、令和3年8月11日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6745411号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が40%以下となる範囲の値であり、かつ光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層」と記載されているのを、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が20%以下となる範囲の値であり、かつマトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層」に訂正する。また、特許請求の範囲の請求項1に記載の「防眩フィルム。」を、「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」に訂正する。
請求項1の記載を引用して記載される請求項3及び請求項4についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の「前記防眩層は、マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み、」との記載を削除する。
請求項3の記載を引用して記載される請求項4についても同様に訂正する。
(4)訂正請求について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「防眩層」について、[A]「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が40%以下となる範囲の値であ」るものから、「20%以下となる範囲の値であ」るものに限定するとともに、[B]「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含」むものに限定し、[C]「前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」ものに限定する訂正である。
そうすると、当該訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
請求項3及び請求項4についてみても同じである。
イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無
本件特許明細書の【0029】には、「防眩層3は、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度(60度グロス)が20%以下となる範囲の値に設定されている。」と記載されている。
また、【0059】には、「防眩層3は、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子(フィラー)を含んでいてもよい。」、【0061】には、「微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。」、【0081】には、「防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層に形成できる。」、【0083】には、「防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。」、【0085】には、「微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。」と記載されている。さらに、【0179】には、「例えば、第1実施形態または第3実施形態の防眩層3のマトリックス樹脂中に、第2実施形態の微粒子を分散させてもよい。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項3及び請求項4についてみても、同じである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無
上記アのとおりであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、訂正事項1による訂正によって、請求項3の「前記防眩層は、マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み」との記載が、訂正後の請求項1の記載と重複することとなったため、請求項3の重複する記載を削除して、請求項3の記載を整理するための訂正である。
そうすると、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
請求項4についてみても、同じである。
イ 新たな技術的事項の導入、拡張ないし変更の有無
上記アのとおりであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項4についてみても、同じである。
4 まとめ
本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6745411号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1、請求項3及び請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明3」及び「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、請求項3及び請求項4に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、
画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値であり、
60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が20%以下となる範囲の値であり、かつ
マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備え、
前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」
「【請求項3】
前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が0以上0.07以下の範囲の値である請求項1に記載の防眩フィルム。」
「【請求項4】
前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.03以上0.20以下の範囲の値である請求項3に記載の防眩フィルム。」
第4 取消しの理由の概要
本件特許の請求項1~請求項4に係る特許に対して、特許異議申立人が主張する申立ての理由、当合議体が令和3年6月10日付け、及び、令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由の要旨は、次のとおりである。
●理由1(新規性)
本件特許の請求項1及び3に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
●理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
●理由3(実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
●理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
●理由5(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(引用例一覧)
引用例1:特開2012-133066号公報(甲第1号証)
引用例2:特開2016-50950号公報(甲第2号証)
引用例3:特開2015-196347号公報(甲第3号証)
引用例4:特開2014-85371号公報(甲第4号証)
引用例5:特開2006-113561号公報(甲第5号証)
引用例6:「JIS ディスプレイのぎらつき度合の求め方 JIS
C1006:2019」、一般財団法人 日本規格協会、
令和元年12月20日(甲第6号証)
第5 当合議体の判断
1 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、以下の記載事項がある(合議体注:下線は合議体が付与したものであり、判断等に活用した箇所を示す。)。
(1)技術分野
「【0001】
本発明は、ディスプレイ表面への外光の映り込みを防止する防眩フィルムに関する。」
(2)発明が解決しようとする課題
「【0005】
防眩フィルムをディスプレイの表面に装着すると、ディスプレイへの外光の映り込みが防止される反面、防眩フィルムを介したディスプレイの表示性能が低下する場合がある。
【0006】
特に、高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩フィルムの表面の凹凸により屈折したり、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。
【0007】
ギラツキを抑制する方法としては、例えば、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすることが考えられるが、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすると防眩性が低下するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。」
(3)課題を解決するための手段
「【0009】
本発明のある形態に係る防眩フィルムは、ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、前記ディスプレイの前記表面に装着した状態における前記ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値であり、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が40%以下となる範囲の値であり、かつ光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備える。
【0010】
ここで、ギラツキ値とは、ディスプレイのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる値である。具体的には、ギラツキ値は、ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定される値であり、ディスプレイ上の輝点のばらつきの程度を示す。
【0011】
また、透過鮮明度は防眩性の良否に関わる値であり、透過鮮明度が小さくなればなるほど防眩性が高くなるという関係がある。
【0012】
これらギラツキ値、鏡面光沢度、および透過像鮮明度は、例えば相分離法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整することで実現できる。また、例えば、微粒子分散法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することで実現できる。また、マトリックス樹脂と微粒子との屈折率差を所定の範囲にするためには、両者に用いる材料として、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりする。さらには、マトリックス樹脂の重量G1と、複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1の値を調整する。
【0013】
上記構成によると、防眩層は、ギラツキ値が10以下となる範囲の値となるため、ギラツキを定量的な評価に基づき効果的に抑制したものとなるように設定することができる。
【0014】
また、防眩層は、透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値となるように設定されている。このため、防眩層は、防眩性の良否に関わる別の指標となるヘイズ値の大きさに関わらず高い防眩性を得ることができる。
【0015】
さらにまた、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が40%以下となる範囲の値に設定されるため外光の映り込みを抑制することができる。」
(4)発明の効果
「【0022】
本発明は以上に説明したように構成され、防眩フィルムは、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有することができるという効果を奏する。」
(5)発明を実施するための形態
「【0024】
本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る防眩フィルム1の構成を示す断面図である。防眩フィルム1は、表示装置16(図3参照)のディスプレイ16aの表面に装着される。防眩フィルム1は、基材フィルム2、防眩層3、および粘着層4を備える。」
合議体注:図1は次のものである。
[図:0001410170000001.jpg]
「【0027】
防眩層3は、ギラツキ値が10以下となる範囲の値となるように設定されている。なお、ギラツキ値は、防眩フィルム1がディスプレイ16aの表面に装着された状態にあるときの、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定される。このギラツキ値は、後述するギラツキ検査機10を用いて求めることができる。
【0028】
また防眩層3は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が40%以下となる範囲の値となるように設定されている。透過像鮮明度は、防眩層3を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度であり、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した値である。
【0029】
また、防眩層3は、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度(60度グロス)が20%以下となる範囲の値に設定されている。鏡面光沢度は、一般的につやと呼ばれ、物体表面の鏡面反射光の度合を表す値であり、JIS K7136に準拠して測定した値である。なお、防眩層3のヘイズ値の取りえる値の範囲については特に限定がない。
【0030】
このように本実施の形態に係る防眩フィルム1は、客観的なギラツキの定量評価となるギラツキ値を用いて、該ギラツキ値が10以下の範囲の値となるように設計できる。このため、例えば、主観的な評価によるギラツキ度合を示す値に基づき設計した場合と比較して、安定してギラツキが所望の範囲となるように抑制することができる。
【0031】
また、透過鮮明度を40%以下の範囲の値に抑えることができる。このため、防眩層3は、防眩性の良否に関わる別の指標となるヘイズ値の大きさに関わらず、高い防眩性を得ることができる。
【0032】
また、防眩層3は、60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度(60度グロス)が40%以下の範囲の値に設定されるため、ディスプレイ16aの表面への光の映り込みを抑制することができる。
・・・略・・・
【0034】
以下、基材フィルム2および防眩層3の具体例について説明する。なお、相分離法により形成された防眩層3を第1実施形態に係る防眩層3とし、微粒子分散法により形成された防眩層3を第2実施形態に係る防眩層3とし、転写成形法により形成された防眩層3を第3実施形態に係る防眩層3としてそれぞれ説明する。
【0035】
[基材フィルム]
基材フィルム2の材質としては、例えば、ガラス、セラミックス、および樹脂が例示できる。・・・略・・・」
(6)第1実施形態
「【0038】
(第1実施形態)
[第1実施形態に係る防眩層の構造]
第1実施形態に係る防眩層3は、複数の樹脂成分の相分離構造を有する。第1実施形態に係る防眩層3は、一例として、複数の樹脂成分の相分離構造により、複数の長細状(紐状又は線状)凸部が表面に形成された構造を有する。長細状凸部は分岐しており、密な状態で共連続相構造を形成している。
【0039】
第1実施形態に係る防眩層3は、複数の長細状凸部、および隣接する長細状凸部間に位置する凹部により防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度とのバランスに優れたものとなっている。第1実施形態に係る防眩層3の表面は、長細状凸部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。
【0040】
第1実施形態に係る防眩層3にこのような構造が形成されることで、この防眩層3にレンズ状(海島状)の凸部が形成されることを防止することができる。よって、第1実施形態に係る防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりすることを防止し、ディスプレイ16aのギラツキを抑制することができる。これにより、高精細画素を有するディスプレイ16aに防眩フィルム1を装着しても、防眩性を確保しながらギラツキを高度に抑制でき、文字ボケ等も抑制できる。
・・・略・・・
【0042】
[第1実施形態に係る防眩層の材質]
第1実施形態に係る防眩層3が含む複数の樹脂成分は、相分離可能なものであればよい。長細状凸部が形成され且つ高い耐擦傷性を有する防眩層3を得る観点から、防眩層3が含む複数の樹脂成分は、ポリマーおよび硬化性樹脂を含むことが好ましい。
・・・略・・・
【0050】
ここで、第1実施形態に係る防眩層3の相分離構造は、この防眩層3の製造時に、複数の樹脂成分に含まれていた硬化性樹脂の前駆体が活性エネルギー線(紫外線、電子線等)または熱等により硬化することで固定される。また、このような硬化性樹脂により、第1実施形態に係る防眩層3に耐擦傷性および耐久性が付与される。
・・・略・・・
【0057】
第1実施形態に係る防眩層3の製造工程では、この防眩層3の原料となる溶液に含まれるポリマーと硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分を、加工温度付近で互いに相分離させる組み合わせとして使用する。
・・・略・・・
【0059】
また、防眩層3は、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子(フィラー)を含んでいてもよい。微粒子は、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれでも良く、複数の微粒子は、複数種類の微粒子を含んでいてもよい。
・・・略・・・
【0061】
微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。この平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0062】
なお、ここで言う平均粒径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径である(以下に言及する平均粒径も同様とする)。微粒子は、中実でもよいし、中空でもよい。微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。
・・・略・・・
【0065】
第1実施形態に係る防眩層3には、光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機または無機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、および消泡剤等が含まれていてもよい。
【0066】
第1実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法は、一例として、第1実施形態に係る防眩層3の原料となる溶液(以下、単に溶液とも称する。)を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(第1実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布し、溶液中の溶媒を蒸発させると共に、液相からのスピノーダル分解により相分離構造を形成する形成工程と、形成工程後に硬化性樹脂前駆体を硬化する硬化工程とを有する。
【0067】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、第1実施形態に係る防眩層3を構成するための樹脂組成物と、を含む溶液を調製造する。溶媒は、前述した防眩層3に含まれるポリマーおよび硬化性樹脂前駆体の種類ならびに溶解性に応じて選択できる。溶媒は、少なくとも固形分(複数種類のポリマーおよび硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、ならびにその他添加剤)を均一に溶解できるものであればよい。
・・・略・・・
【0069】
樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂、光硬化性化合物、光重合開始剤、および熱可塑性樹脂と光硬化性化合物とを含む組成物が望ましい。または樹脂組成物としては、互いに非相溶な複数種類のポリマー、光硬化性化合物、および光重合開始剤を含む組成物が望ましい。
【0070】
混合液中の溶質(ポリマーおよび硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、ならびにその他添加剤)の濃度は、複数の樹脂成分の相分離が生じる範囲、および流延性またはコーティング性等を損なわない範囲において調整できる。
【0071】
[形成工程]
形成工程では、調製工程で調製した溶液を、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延または塗布する。
・・・略・・・
【0072】
支持体の表面に流延または塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。この蒸発過程における溶液の濃縮に伴って、複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離を生じさせ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成する。長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件および処方を設定することにより作製できる。
【0073】
溶媒の蒸発は、第1実施形態に係る防眩層3の表面に長細状凸部を形成し易い点から、加熱乾燥により行うのが好ましい。乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短過ぎたりすると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。
【0074】
一方、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎたりすると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、その構造は維持される。そのため、防眩層3のギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値が、上記した条件を満たすような範囲の値となるように設定するために、相分離材料の組合せを調整することに加えて、乾燥温度および乾燥時間を調整し長細状凸部の高さ等を調整することによって実現できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を作製できる。
【0075】
複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離の進行に伴って、共連続相構造が形成されて粗大化すると、連続相が非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状等の独立相の海島構造)が形成される。ここで、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成することができる。溶媒除去後、表面に微細な凹凸を有する層が形成される。
【0076】
[硬化工程]
硬化工程では、溶液に含まれていた硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、形成工程で形成された相分離構造を固定化し、第1実施形態に係る防眩層3を形成する。硬化性樹脂前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱若しくは活性エネルギー線の照射、またはこれらの方法の組み合わせにより行うことができる。照射する活性エネルギー線は、光硬化成分等の種類に応じて選択する。
・・・略・・・
【0079】
以上の各工程を経ることにより、第1実施形態に係る防眩フィルム1が製造される。
・・・略・・・
【0080】
ここで、ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。」
(7)第2実施形態
「【0081】
第1実施形態において前述したスピノーダル分解によって、このような凹凸を防眩層に形成できるが、その他の方法によっても、このような凹凸を防眩層に形成できる。例えば第2実施形態のように、防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層に形成できる。そこで以下では、その他の実施形態の防眩層について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
・・・略・・・
【0083】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。複数の微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球形状や楕円体形状に形成されていてもよい。また微粒子は、中実に形成されているが、中空に形成されていてもよい。微粒子が中空に形成されている場合、微粒子の中空部には、空気またはその他の気体が充填されていてもよい。第2実施形態に係る防眩層3には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。
・・・略・・・
【0085】
微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。微粒子の平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の値であることがより好ましい。
【0086】
また、微粒子の粒径のバラツキは小さい方が望ましく、例えば、防眩層3に含まれる微粒子の粒径分布において、防眩層3に含まれる微粒子の50重量%以上の平均粒径が1.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。
【0087】
このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層3の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。
・・・略・・・
【0089】
マトリクス樹脂中に分散される微粒子は、無機系及び有機系のいずれのものでもよいが、良好な透明性を有するものが好ましい。
・・・略・・・
【0090】
マトリクス樹脂としては、活性エネルギー線により硬化する光硬化性樹脂、塗工時に添加した溶剤の乾燥により硬化する溶剤乾燥型樹脂、及び、熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを例示できる。
・・・略・・・
【0098】
第2実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法は、一例として、第2実施形態に係る防眩層3の原料となる溶液を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(第2実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布する塗布工程と、塗布した溶液中の樹脂を硬化する硬化工程とを有する。
【0099】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、第2実施形態に係る防眩層3を構成するための樹脂組成物および微粒子と、を含む溶液を調製する。
・・・略・・・
【0100】
[塗布・硬化工程]
塗布工程では、調製工程で調製した溶液を、第1実施形態と同様の方法により、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。
【0101】
マトリクス樹脂が光硬化性樹脂である場合、塗布工程後に、一例として紫外線または電子線による硬化工程を行う。
・・・略・・・
【0103】
溶液に含まれていたマトリクス樹脂が硬化することにより、マトリクス樹脂中の微粒子の位置が固定される。これにより、マトリクス樹脂中に複数の微粒子が分散され、表面に微粒子による凹凸が形成された構造の防眩層が形成される。
【0104】
第2実施形態に係る防眩フィルム1によれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」
(8)第3実施形態
「【0105】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る防眩フィルム1の防眩層3は、基材フィルム2側とは反対側の表面に凹凸形状が賦形された構造を有する。第3実施形態に係る防眩層3は、樹脂層で構成されている。この樹脂層は、一例として、第2実施形態に係る防眩層3に含まれるマトリクス樹脂と同様の材質で構成されている。
【0106】
第3実施形態に係る防眩フィルム1は、一例として、基材フィルム2上に硬化性樹脂からなるコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。図2は、第3実施形態に係る防眩フィルム1の製造方法を示す図である。図2の例では、硬化性樹脂として紫外線硬化樹脂を用いている。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001410170000002.jpg]
「【0107】
図2に示すように、この製造方法では、基材フィルム2が、図示しない巻出ロールから巻き出され、所定方向に搬送される。基材フィルム2の搬送方向下流端部は、一対のロール21,22のニップ点N1に挿通される。
【0108】
ロール22の周面には、ロール22に隣接して軸支されたロール23の周面から紫外線硬化樹脂前駆体が付着させられる。基材フィルム2がニップ点N1を通過する際、この紫外線硬化樹脂前駆体が、基材フィルム2の一方の面に塗布される。
【0109】
基材フィルム2に塗布された紫外線硬化樹脂前駆体の層(以下、コート層と称する。)は、ロール21,24のニップ点において、基材フィルム2と共に押圧される。ロール24は、周面に微細な凹凸が形成されたロール状金型(エンボスロール)であり、ロール21,24のニップ点N2を通過する際にコート層の表面に凹凸形状を転写する。
【0110】
ロール24により表面に凹凸形状が転写されたコート層は、ロール21,24の下方に設けられた紫外線ランプ26から照射される紫外線により硬化される。これにより、第3実施形態に係る防眩フィルム1の防眩層3が形成される。このようにして製造された第3実施形態に係る防眩フィルム1は、ロール24に隣接して軸支されたロール25によりロール24からリリースされ、所定方向へ搬送される。
【0111】
ここで、ロール24の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒子径を調整することで、防眩フィルム1のコート層に形成される凹凸形状を調整できる。
【0112】
第3実施形態に係る防眩フィルム1の基材フィルム2としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムが好適に用いることができる。
【0113】
このように、第3実施形態に係る防眩フィルム1の作製方法は、基材フィルム2に硬化性樹脂前駆体を塗布するステップ(a)と、ブラスト粒子を衝打させて表面に凹凸形状を有するロール状金型を作製するステップ(b)と、このロール状金型を用いて、基材フィルム2に塗布した硬化性樹脂前駆体の表面に凹凸形状を転写するステップ(c)と、凹凸形状を転写した硬化性樹脂前駆体を硬化させて、表面に凹凸形状を有する防眩層3を形成するステップ(d)とを有する。
【0114】
ステップ(b)において使用するブラスト粒子の平均粒径は、適宜、設定可能であるが、一例として、10μm以上50μm以下の範囲の値に設定できる。
・・・略・・・
【0115】
なお、第3実施形態において使用する金型は、ロール状金型以外でもよく、例えば、板状金型(エンボス板)でもよい。・・・略・・・」
(9)ギラツキ評価
【0119】
次に、上記した各実施形態に係る防眩フィルム1のギラツキを定量的に評価するための評価装置と評価方法について、図3を参照して説明する。
【0120】
(ギラツキ検査機)
図3は、本発明の実施の形態に係るギラツキ検査機10の概略構成の一例を示す図である。ギラツキ検査機10は、防眩フィルム1を装着した表示装置16のディスプレイ16aのギラツキの大きさを検査する機器である。ギラツキ検査機10は、筐体11、撮像装置12、保持部(調整部)13、撮像装置用架台14、表示装置用架台(調整部)15、および画像処理装置17を備える。」
合議体注:図3は次のものである。
[図:0001410170000003.jpg]
「【0121】
筐体11は、ギラツキ評価を行う検査空間として暗室を形成するためのものであり、中空の直方体形状をしている。筐体11内には、撮像装置12、保持部13、撮像装置用架台14、および表示装置用架台15と、ギラツキ評価の対象となる表示装置16とが収容される。なお、筐体11は、撮像装置12による撮像時において、外部から筐体11内への光の侵入が防止できる構成となっている。
【0122】
撮像装置12は、一例としてレンズ18と撮像素子とを有するエリアカメラであり、ディスプレイ16aに表示される画像を撮像する。撮像装置12は、レンズ18とディスプレイ16aとが対向するように保持部13に保持されている。撮像装置12は画像処理装置17に接続され、撮像装置12により撮像された画像データは、画像処理装置17に送信される。
【0123】
保持部13は、鉛直方向(図3における上下方向)に延伸した棒形状を有する部材であり、この保持部13の基端側は撮像装置用架台14により固定され、先端側には撮像装置12が保持されている。そして、撮像装置12は、保持部13によって鉛直方向に移動可能となっており、ディスプレイ16aとレンズ18との間の相対的な距離を変更させることができる。
【0124】
表示装置16は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aを撮像装置12と対向させた状態で、表示装置用架台15の上面に載置される。表示装置用架台15は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの面が撮像装置12と対向し、且つ水平面となるように表示装置16を支持すると共に、ディスプレイ16aとレンズ18との間の相対的な距離を変更させるように、表示装置16を鉛直方向に移動させることができる。
【0125】
ギラツキ検査機10では、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整することによって、撮像装置12の撮像素子により撮像されるディスプレイ16aに表示された画像のサイズが調整される。換言すると、撮像装置12の撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズが調整される。
【0126】
画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データのデータ処理を行う。具体的に画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データから、ディスプレイ16aに表示された画像の輝度の標準偏差の値を求める。
【0127】
本実施の形態に係る画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データが入力される入力部と、入力された画像データを画像処理する画像処理部と、画像処理部によって処理された結果を不図示の表示器または印字装置等に出力する出力部等とを備える。
【0128】
なお、撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズの調整方法としては、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対距離を変更させる方法の他、撮像装置12が備えるレンズ18がズームレンズである場合には、撮像装置12の焦点距離を変える方法でもよい。
【0129】
(ギラツキ評価方法)
次に、ギラツキ検査機10を用いたギラツキ評価方法について説明する。このギラツキ評価方法では、評価の便宜上、表面に防眩フィルム1を装着した状態におけるディスプレイ16aを予め一色(一例として緑色)に均一発光させて表示させる。
【0130】
まず、撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像される防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの画素のサイズが所定値となるように調整する(調整ステップ)。
【0131】
調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。
【0132】
なお、撮像装置12と表示装置16との間の相対的な距離は、実際の表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aとの間の相対的な距離)を考慮して設定されることが望ましい。
【0133】
調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する(設定ステップ)。設定ステップにおいて、測定エリアは、例えばディスプレイ16aのサイズ等に応じて適切に設定することができる。
【0134】
調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する(撮像ステップ)。このとき一例として、8ビット階調表示でかつ平均輝度が170階調のグレースケール画像の画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間またはディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整する。撮像ステップにおいて撮像された画像データは、画像処理装置17へと入力される。
【0135】
撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データから、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める(演算ステップ)。この演算ステップでは、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差を求めることで数値化できる。ここで、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキ度合は、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝度のばらつきが大きいほど大きくなる。これに基づいて、輝度分布の標準偏差の値が小さいほど、ギラツキは小さいと定量的、かつ客観的に評価することができる。また調整ステップにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝線がギラツキの評価に影響を与えない程度に調整されているので、輝線による輝度ムラを抑え、正確なギラツキの評価を行うことができる。
【0136】
以上の各ステップを経ることにより、表面に防眩フィルム1を装着した状態におけるディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差を求め、その値の大小によりギラツキを評価できる。」
(9)実施例および比較例
「【0137】
(実施例および比較例)
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0138】
実施例1から5は、相分離法によって作製された、ギラツキ値が10以下、鏡面光沢度(60度グロス)が40%以下、かつ光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が40%以下となる条件を満たす防眩フィルム1の一例である。換言すると、実施例1から5は、相分離法により防眩フィルム1の表面に形成される凹凸形状によって上記した条件を満たすことができる防眩フィルム1の一例である。
【0139】
実施例6は微粒子分散法によって作製された、ギラツキ値が10以下、鏡面光沢度(60度グロス)が40%以下、かつ光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が40%以下となる条件を満たす防眩フィルム1の一例である。
【0140】
一方、比較例1から3は、微粒子分散法により作製された防眩フィルム1の一例であり、比較例4、5は、転写形成法により作製された防眩フィルム1の一例である。
【0141】
[原料]
実施例および比較例で用いる各原料には、次のものを用いた。なお、以下において記載する屈折率は、架橋により硬化するものについては架橋後(硬化後)の屈折率を示す。
重合性基を有するアクリル系重合体:ダイセル・オルネクス(株)製「サイクロマーP」(屈折率1.51)
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」(屈折率1.49)、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000
ナノシリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「UVHC7800G」(屈折率1.52)
シリコーンアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「EB1360」(屈折率1.52)
ウレタンアクリレート:新中村化学工業(株)製「UA-53H」(屈折率1.52)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」(屈折率1.52)
ペンタエリストールテトラアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」(屈折率1.52)
シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:アイカ工業(株)製「Z-757-4RL」(屈折率1.52)
重合性基を有するフッ素系化合物:信越化学工業(株)製フッ素系防汚添加剤「KY-1203」
アルキルフェノン系光重合開始剤(光重合開始剤A):BASF製「IRGACURE 184」
アルキルフェノン系光重合開始剤(光重合開始剤B):BASF製「IRGACURE 907」
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」
セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」
【0142】
[実施例1]
重合性基を有するアクリル系重合体50質量部、セルロースアセテートプロピオネート4質量部、ウレタンアクリレート76質量部、シリコーンアクリレート1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン176質量部と1-ブタノール28質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。
【0143】
この溶液を、ワイヤーバー(#18)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。そして、例えば、高圧水銀ランプ等の紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して、コート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例1の防眩フィルムを得た。
【0144】
[実施例2]
重合性基を有するアクリル系重合体50質量部、セルロースアセテートプロピオネート4質量部、ウレタンアクリレート76質量部、シリコーンアクリレート1質量部、重合性基を有するフッ素系化合物1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン176質量部と1-ブタノール28質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。
【0145】
この溶液、ワイヤーバー(#14)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成させた。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例2の防眩フィルムを得た。
【0146】
[実施例3]
重合性基を有するアクリル系重合体12.5質量部、セルロースアセテートプロピオネート4質量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物150質量部、シリコーンアクリレート1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン81質量部と1-ブタノール24質量部と1-メトキシ-2-プロパノール13質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。
【0147】
この溶液を、ワイヤーバー(#20)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例3の防眩フィルムを得た。
【0148】
[実施例4]
重合性基を有するアクリル系重合体15.0質量部、セルロースアセテートプロピオネート3質量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物150質量部、シリコーンアクリレート1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン101質量部と1-ブタノール24質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。
【0149】
この溶液を、ワイヤーバー(#20)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例4の防眩フィルムを得た。
【0150】
[実施例5]
重合性基を有するアクリル系重合体50質量部、セルロースアセテートプロピオネート2.5質量部、ウレタンアクリレート79.5質量部、シリコーンアクリレート1質量部、光重合開始剤A1質量部、および光重合開始剤B1質量部を、メチルエチルケトン106質量部と、1-ブタノール28質量部と、シクロヘキサノン70質量部とを混合させた溶媒に溶解し、溶液を調整した。
【0151】
この溶液を、ワイヤーバー(#12)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例4の防眩フィルムを得た。
【0152】
[実施例6]
シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物(屈折率1.52)50質量部と1-ブタノール50質量部とを混合した溶液を調整した。
【0153】
この溶液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例6の防眩フィルムを得た。なお、マトリクス樹脂(アクリル系紫外線硬化性化合物)の重量をG1とし、防眩層3に含まれる微粒子(シリカ)の重量をG2としたとき、両者の比G2/G1は0.14となった。
【0154】
[比較例1]
透明基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。
【0155】
透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;ダイセル・オルネクス社製,屈折率1.51)を用い、これに透光性粒子として、スチレン-アクリル共重合粒子(屈折率1.51、平均粒径9.0μm)、およびポリスチレン粒子(屈折率1.60、平均粒径3.5μm)を、透明樹脂100質量部に対して、それぞれ10.0質量部および16.5質量部含有させた。これに、トルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を、透明樹脂100質量部に対して、190質量部配合して、樹脂組成物を得た。
【0156】
この樹脂組成物を、透明基材に塗工し、1m/sの流速で85℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。なお、塗膜厚は5μmとした。その後、紫外線ランプにより紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200/cm2)透明樹脂を紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、比較例1の防眩フィルムを得た。
【0157】
[比較例2]
透明基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。
【0158】
透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;ダイセル・オルネクス社製)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;ダイセル・オルネクス社製)、およびポリメタクリル酸メチル(BR85;三菱レーヨン製)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51)、これに透光性粒子として、ポリスチレン粒子(屈折率1.60、平均粒径3.5μm)およびスチレン-アクリル共重合粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm)を、透明樹脂100質量部に対して、それぞれ18.5質量部および3.5質量部含有させた。これに、トルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を、透明樹脂100質量部に対して、190質量部配合して、樹脂組成物を得た。
【0159】
この樹脂組成物を、透明基材に塗工し、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。なお、塗膜厚は3.5μmとした。その後、紫外線ランプにより、紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm2)透明樹脂を紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、比較例2の防眩フィルムを得た。
【0160】
[比較例3]
透明基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。
【0161】
透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A;共栄社化学製,屈折率1.53)を用い、これに透光性粒子として、シリカ粒子(SS50F;東ソー・シリカ工業製,屈折率1.47、平均粒径1.1μm)およびポリスチレン粒子(屈折率1.59、平均粒径3.5μm)を、透明樹脂100質量部に対して、それぞれ26質量部および6.6質量部含有させた。これに、光重合開始剤A5.3質量部と、溶剤としてトルエン(沸点110℃)138質量部とを配合して、樹脂組成物を得た。
【0162】
この樹脂組成物を、透明基材に塗工し、0.2m/sの流速で90℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。なお、塗膜厚は5μmとした。その後、紫外線ランプにより紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm2)透明樹脂を紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、比較例3の防眩フィルムを得た。
【0163】
[比較例4および5]
比較例4および5の防眩フィルムは、基材フィルム上に、金型を用いて表面に凹凸が転写された紫外線硬化樹脂からなるコート層を形成して作製した。転写成形法による防眩フィルムの作製プロセスについては、上記にて既に説明したため詳細な説明は省略する。
【0164】
すなわち、比較例4および5の防眩フィルムの作製方法は、基材フィルムに紫外線硬化樹脂前駆体を塗布するステップ(a)と、ブラスト粒子を衝打させて表面に凹凸形状を有するロール状金型を作製するステップ(b)と、このロール状金型を用いて、基材フィルムに塗布した紫外線硬化樹脂前駆体の表面に凹凸形状を転写するステップ(c)と、凹凸形状を転写した紫外線硬化樹脂前駆体を、紫外線を照射して硬化させて、表面に凹凸形状を有するコート層を形成するステップ(d)とを有する。
【0165】
ここではステップ(b)において、ブラスト粒子径の値を10μm以上40μm以下の範囲で変化させたロール状金型を作製し、上記作製方法により、ヘイズ(Hz)値が異なる2種類のフィルム(比較例4および5)を作製した。
【0166】
なお、比較例4および5では、基材フィルムとして、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを好適に用いることができる。
【0167】
また、実施例1~6および比較例1~5の各防眩フィルムは、以下の項目を測定して評価した。
【0168】
[ヘイズおよび全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。ヘイズは、凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。
【0169】
[透過像鮮明度]
写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。
【0170】
[60度グロス]
グロスメーター((株)掘場製作所製、IG-320)を用いて、JlS K7105に準拠し、角度60°で測定した。
【0171】
[ディスプレイの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)]
表示装置16として、スマートフォン(三星電子(株)製「Galaxy S4」)を用い、そのディスプレイ16aの表面に、各サンプルの防眩フィルムを光学糊により貼り付けた。なお、このスマートフォンのディスプレイ16aの解像度は441ppiとなる。そして、コマツNTC(株)製のギラツキ検査機10を用い、各サンプルの防眩フィルムを介して、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)を測定した。この測定に際しては、8ビット階調表示でかつ平均輝度が170階調のグレースケール画像の画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間またはディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整した。
【0172】
ここで上記した項目に対する各測定結果を表1に示す。
【0173】
【表1】
[図:0001410170000004.jpg]
【0174】
表1に示すように、実施例1から5の原料および作製条件に基づく相分離法および実施例6の原料および作製条件に基づく微粒子分散法によって、上記した条件(ギラツキ値が10以下、鏡面光沢度が40%以下、透過像鮮明度が40%以下)を満たす防眩フィルムを得ることができた。
【0175】
すなわち、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを実施例1から5のように設定することで、上記条件を満たすような凹凸形状を防眩フィルム1の表面に形成することができることが分かった。
【0176】
また、微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差が0以上0.07以下の範囲の値とし、マトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.03以上0.20となるようにマトリクス樹脂中に分散させる微粒子を選択し実施例6に示す作製条件により作製することで、上記条件を満たす防眩フィルム1を形成することができることが分かった。つまり、実施例6の微粒子分散法では、防眩層3の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことで、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層3に形成できたものと考えられる。
【0177】
一方、比較例1から3の原料および作製条件に基づく微粒子分散法では、上記した条件を満たす防眩フィルムを作製することができなかった。すなわち、比較例1、2では、微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差が0.07より大きくなっている。比較例3では、マトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.03以上0.20以下の範囲外となっている。
【0178】
また、比較例4、5の原料および作製条件に基づく転写成形法では、例えば、実施例1から3の相分離法のように統計的に制御された凹凸形状を防眩フィルムに形成することができず、上記した条件を満たす防眩フィルムを作製することができなかった。
【0179】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成又は方法を変更、追加、又は削除できる。例えば、第1実施形態または第3実施形態の防眩層3のマトリックス樹脂中に、第2実施形態の微粒子を分散させてもよい。」
2 引用例1を主引用発明とする理由1及び理由2
(1)引用例1
ア 引用例1の記載事項
特許異議申立人が甲第1号証として引用し、令和3年6月10日付けで特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例1(特開2012-133066号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載事項がある。
(ア)特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、
前記防眩層の85°光沢度の値が、前記防眩層の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上であり、かつ、前記20°光沢度の値が、10以下であることを特徴とする防止フィルム。
・・・略・・・
【請求項5】
前記凹凸は、複数の球面状凸部、複数の球面状凹部、または複数の球面状凸部と球面状凹部の組み合わせが、ランダムに重ねられてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防眩フィルム。」
(イ)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルムに関する。本発明は、特に、ユーザが至近距離で見るディスプレイに使用される防眩フィルムに関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、FPDは、PC(Personal Computer)用モニタやテレビ等の様々な用途に用いられる。防眩フィルムは、FPDの用途に応じて最適化され得る。
【0008】
FPDがPC用モニタとして使用される場合、FPDは机上に載置され、その上方には室内照明器具が存在する。そして、PCの使用時には、ユーザが至近距離から画面を見るため、FPDの正面にはユーザの頭部が位置する。このような環境下では、防眩フィルムには、上方からの照明光による白茶けが発生せず、かつ、ユーザの顔が画面に映り込まないことが要求される。
・・・略・・・
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明による防眩フィルムは、凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、前記防眩層中に光の波長以上の大きさの粒子を含まず、表面の凹凸のみによって防眩性能を発揮する防眩フィルムであり、前記防眩層の85°光沢度の値が、前記防眩層の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上であり、かつ、前記20°光沢度の値が、10以下、好ましくは7.5以下であることを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明の防眩フィルムは、フィルム面に対して浅い角度で入射する光に対しては高い光沢度を有し、浅い角度で入射する光を正反射する一方で、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光に対しては低い光沢度を有し、垂直に近い角度で入射する光を拡散反射する。また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部に光拡散要素を含まないため、前記の機能が内部の拡散要素によって撹乱されることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防眩フィルムによれば、フィルム面に対して浅い角度で入射する光が拡散反射されずに正反射されるため、照明光の拡散反射により防眩フィルムが白茶けて見えることが防止される。加えて、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光が拡散反射されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。すなわち、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムが提供される。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
・・・略・・・
【0017】
図1に示すとおり、本実施形態の防眩フィルム100は、透明基材110と、透明基材110上に形成される防眩層120とから構成される。」
合議体注:図1は次のものである。
[図:0001410170000005.jpg]
「【0018】
透明基材110は、シート状の透明部材であり、TAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル、およびPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂から形成される。
【0019】
防眩層120は、例えば、紫外線硬化型樹脂から形成される。
・・・略・・・
【0020】
また、このような紫外線硬化型樹脂には、製造上の理由や、性能改善を目的として、単官能アクリレートモノマー、密着性向上材料、防汚剤、帯電防止剤、さらに、0.1μm未満の大きさの粒子等を混合して用いてもよい。
【0021】
防眩層120は、表面に凹凸を有し、防眩層120の凹凸は、複数の球面状凸部がランダムに重ねられて構成されている。または、防眩層120の凹凸は、球面状凹部がランダムに重ねられて構成されていてもよく、もしくは、複数の球面状凸部と複数の球面状凹部が組み合わされてランダムに重ねられて構成されていてもよい。複数の球面状凸部または球面状凹部は、種々のサイズを有する球の一部の形状をそれぞれ有する。
【0022】
ここで、防眩層120の凹凸の平均間隔Smは、10~20μmであることが好ましい。凹凸の平均間隔Smが10μm未満の場合、防眩フィルム100に映り込む像の鮮明度(解像性)が増加し、画像の視認性が低下してしまう。一方、平均間隔Smが20μmを超える場合、画素と凹凸とが干渉して画面のチラツキ(以下、Sparklingと称する)が強くなってしまう。また、防眩層120の凹凸の高さは、1~7μm、より好ましくは、2~5μmであることが好ましい。凹凸の高さがこれより小さいと、防眩フィルム100に映り込む像の鮮明度(解像性)が増加し、画像の視認性が低下してしまう。一方、凹凸の高さが、これより大きいと、凹凸の面の角度が大きくなり、白茶けてしまう。
【0023】
次に、本発明による防眩フィルムの製造方法、及び、その防眩フィルムを得るために使用される金型の製造方法について説明する。本発明では、凹凸を有する金属金型を得るために、鉄、アルミニウムなどの金属基材、もしくは、その金属基材の表面に銅メッキ、または、ニッケルメッキを施し、その金属基材、もしくは、メッキ表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その後、必要に応じて、耐久性等を向上させるため、その凹凸面にクロムメッキ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を形成して、金型とする。ここでいう鉄、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属は、それぞれの純金属に限定されるものではなく、その合金、例えば、鉄に対してステンレス等を含むものとする。
【0024】
このようにして製造された金型を用いて、その金型の形状を透明樹脂フィルムに転写することで、防眩フィルムが得られる。
・・・略・・・
【0028】
すなわち、本実施形態の防眩フィルム100は、フィルム面に対して浅い角度で入射する光に対する防眩層120の光沢度が、一般的な防眩フィルムの光沢度よりも大きい。具体的には、防眩層120の85°光沢度が、防眩層120の20°光沢度の値と60°光沢度の値とを結ぶ直線の延長線上に求められる85°光沢度の予測値に対して1.3倍以上の値を有する。また、防眩層120の20°光沢度が、10以下の値を有する。なお、光沢度は、フィルム面の法線を基準として規定され、85°光沢度は、フィルム面に対して浅い角度(5°)で入射する光に対する光沢度を示す。また、20°光沢度は、フィルム面に対して垂直に近い角度(70°)で入射する光に対する光沢度を示す。
・・・略・・・
【0032】
以上のとおり、本実施形態の防眩フィルム100によれば、フィルム面に対して浅い角度で入射する光は浅い角度のまま比較的弱い拡散で出射され、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光はそれよりも強く拡散される。このような構成によれば、防眩フィルム100がPC用モニタや業務用モニタに使用される場合、フィルム面に対して浅い角度で入射する照明光がユーザに向かうことが防止され、防眩フィルムが白茶けて見えることが防止される。加えて、フィルム面に対して垂直に近い角度で入射する光が拡散されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。
・・・略・・・
【0036】
一方、本実施形態の防眩フィルム100は、防眩層120の85°光沢度が高いため、上方から入射する照明光Lを正反射し、液晶ディスプレイの下方に向かわせることができる。したがって、上方からの照明光Lが、PCのユーザに知覚されることが防止され、防眩フィルム100が白茶けて見えることが防止される。また、液晶ディスプレイの前方から入射する光は防眩層120により拡散されるため、ユーザの顔が画面に映り込むことが防止される。
【0037】
以上のとおり、本実施形態によれば、ユーザが至近距離で見るディスプレイに最適な防眩フィルムが提供される。」
(ウ)実施例
「【0038】
以下、実施例を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、本実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
<防眩フィルムの製作>
球面状凹部がランダムに重ねられてなる表面を有する5種類のエンボスロールを製作し、TAC製の透明基材にアクリル系の紫外線硬化型樹脂を塗布した後、エンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して、実施例1~4および比較例2の防眩フィルムを製作した。
【0040】
(実施例1)
銅/ニッケルメッキを施した後にメッキ表面を研磨した鉄製ロールを用意し、平均粒径約63μmの球状粒子を用いて、乾式のブラスト加工によりロールの表面に凹凸を形成した。表面に凹凸が形成されたロールにクロムメッキを施してエンボスロールを製作した。このように製作されたエンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して、実施例1の防眩フィルムを製作した。
・・・略・・・
【0046】
<エンボスロールの表面粗さ測定>
触針式の表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製 サーフテスト SJ-301)を使用して、実施例1~4および比較例2の防眩フィルムの製作に使用されたエンボスロールならびに比較例1の防眩フィルムについて、表面の算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを測定した。算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzは、JIS B0601-1994に準拠して測定された。
【0047】
<防眩フィルムの表面形状測定>
レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-9500)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについて、表面の凹凸の平均間隔Smを測定した。凹凸の平均間隔Smは、JIS B0601-1994に準拠して測定された。
・・・略・・・
【0049】
図5(a)に示すとおり、実施例1の防眩フィルムは、球面状凸部がランダムに重ねられた構造を有している。また、図5(b)に示すとおり、実施例1の防眩フィルムは、滑らかな断面形状を有している。」
合議体注:図5(a)及び図5(b)は、次のものである。
[図:0001410170000006.jpg]
「【0052】
<防眩フィルムの光学特性評価>
実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムに対して、光沢度、ヘイズ、明室コントラスト、Sparkling、および像鮮明度を測定した。また、各防眩フィルムを目視により評価した。
【0053】
(光沢度)
光沢計(BYK Gardner社製 Micro TRI Gloss)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの光沢度を測定した。具体的には、裏面に黒インキを塗布した光学ガラス上にメチルフェニルシリコーンオイルを液貼りし、裏面反射を防止した状態で各防眩フィルムの20°光沢度、60°光沢度、および85°光沢度をそれぞれ測定した。また、スガ試験機株式会社製変角光沢計 UGV-5Dを用いて、45°光沢度および75°光沢度を測定した。なお、光沢計は、JIS Z8741に準拠している。
【0054】
(ヘイズ)
株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した。
【0055】
(明室コントラスト)
輝度計(株式会社トプコン製 BM-7FAST)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの輝度を測定し、明室コントラストを求めた。具体的には、まず、SAMSUNG社製の17インチ液晶ディスプレイ(SyncMaster 750B)上に、内側が白色の四角錐台型のフードを被せ、フード上部の開口部に対応するディスプレイの画面領域に防眩フィルムを取り付けた(図6参照)。そして、周辺領域を白表示に維持しつつ、防眩フィルムが取り付けられた画面領域を白/黒に切り替えときの輝度を測定した。防眩フィルムが取り付けられた画面領域の白/黒の輝度の比を明室コントラストと定義した。」
合議体注:図6は次のものである。
[図:0001410170000007.jpg]
「【0056】
なお、SAMSUNG社製の液晶ディスプレイの表面には比較例1と同様の防眩フィルムが取り付けられているため、輝度の測定時には、液晶パネルの裏表を逆に装着して平坦面を外側にして使用した。
【0057】
(Sparkling)
明室コントラストの測定に用いた測定装置からフードを取り外し、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムを取り付けた液晶ディスプレイを定速で移動させつつ輝度の変化を測定して、「Sparkling」の値を求めた。液晶ディスプレイの移動速度は、0.4mm/秒であり、移動量は20mmであった。輝度は0.1秒毎に測定し、(標準偏差/平均値)×100(%)を各防眩フィルムの「Sparkling」の値と定義した。
【0058】
(像鮮明度)
写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムの透過像鮮明度と、45°および60°の反射像鮮明度とを測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、および0.125mmで行ったが、0.125mmの像鮮明度の測定値が0.25mmの像鮮明度の測定値を上回っていたため、0.125mmは測定限界以下と判断し、0.125mmの測定値を除く4つの測定値を図10および図11に、また、その算術和を表1に、透過像鮮明度に対する反射像鮮明度の関係を図12に示した。
【0059】
(目視評価)
実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについて、「映り込み」、「白茶け」、および「Sparkling」を目視により評価した。
【0060】
実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについての評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
[図:0001410170000008.jpg]
【0062】
表1から、実施例1~4の防眩フィルムの明室コントラストは、比較例1の防眩フィルムの明室コントラストよりも良好であることが分かる。また、目視評価においても、実施例1~4の防眩フィルムの性能は問題のないレベルであった。
・・・略・・・
【0070】
図10および図11は、防眩フィルムの像鮮明度を示す図である。図10は、透過像鮮明度を示す図である。
・・・略・・・
【0071】
図10に示すとおり、比較例1の防眩フィルムの像鮮明度は、光学くしの幅が狭くなると急激に像鮮明度が低下するのに対して、実施例1~4の防眩フィルムでは、その低下が相対的になだらかである。」
合議体注:図10は次のとおりのものである。
[図:0001410170000009.jpg]
イ 引用発明1
(ア) 引用例1でいう「本発明」は、「防眩フィルム」(【0001】)であるところ、【0039】~【0040】には、引用例1でいう「本発明」の「実施例1」が記載されている。
また、【0060】に、「実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムについての評価結果を表1に示す」と記載されているところ、「表1」(【0061】)に記載された各「評価」項目の評価方法は、【0053】~【0059】に記載のとおりである。さらに、「図10」に、「写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1・・・の防眩フィルムの透過像鮮明度・・・を測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、および0.125mmで行ったが、0.125mmの像鮮明度の測定値が0.25mmの像鮮明度の測定値を上回っていたため、0.125mmは測定限界以下と判断し、0.125mmの測定値を除く4つの測定値を図10・・・に・・・示した」(【0058】)とされており、図10からは、実施例1の、光学くし0.5mmで行った像鮮明度の測定値が、約10であることが読み取れる。
(イ) 上記ア(ア)~(ウ)及び上記(ア)より、引用例1には、「実施例1」で製作された「防眩フィルム」の発明(以下「引用発明1」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。
「銅/ニッケルメッキを施した後にメッキ表面を研磨した鉄製ロールを用意し、平均粒径約63μmの球状粒子を用いて、乾式のブラスト加工によりロールの表面に、球面状凹部がランダムに重ねられてなる表面を有する凹凸を形成し、表面に凹凸が形成されたロールにクロムメッキを施してエンボスロールを製作し、エンボスロールの凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写して製作した、防眩フィルムであって、
以下の方法で評価した、60°光沢度が21.7、ヘイズが19.2、光学くしが0.5mmの像鮮明度が約10、Sparkling(目視)の評価が○である、防眩フィルム。
(光沢度)
光沢計(BYK Gardner社製 Micro TRI Gloss)を使用して、実施例1の防眩フィルムの光沢度を測定した。具体的には、裏面に黒インキを塗布した光学ガラス上にメチルフェニルシリコーンオイルを液貼りし、裏面反射を防止した状態で各防眩フィルムの60°光沢度を測定した。なお、光沢計は、JIS Z8741に準拠している。
(ヘイズ)
株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを使用して、実施例1の防眩フィルムのヘイズをISOモードにより測定した。
(Sparkling)
明室コントラストの測定に用いた測定装置からフードを取り外し、実施例1~4および比較例1,2の防眩フィルムを取り付けた液晶ディスプレイを定速で移動させつつ輝度の変化を測定して、「Sparkling」の値を求めた。液晶ディスプレイの移動速度は、0.4mm/秒であり、移動量は20mmであった。輝度は0.1秒毎に測定し、(標準偏差/平均値)×100(%)を各防眩フィルムの「Sparkling」の値と定義した。
(像鮮明度)
写像性測定機(スガ試験機株式会社製 ICM-1)を使用して、実施例1の防眩フィルムの透過像鮮明度を測定した。なお、写像性測定機(像鮮明度測定機)は、JIS K7374に準拠している。測定は、前記JIS規格に基づき、光学くしが0.5mmで行った。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)上記(1)イ(イ)の引用発明1の「防眩フィルム」の製作工程からみて、引用発明1の「防眩フィルム」は、「紫外線硬化型樹脂」に、エンボスロールの凹凸形状を転写して得られたものと理解できる。
(イ)引用発明1の「防眩フィルム」は、その機能からみて、本件特許発明1の「防眩フィルム」に相当する。
また、引用例1には、技術分野に関する記載として、「本発明は、特に、ユーザが至近距離で見るディスプレイに使用される防眩フィルムに関する。」(【0001】)との記載がある。防眩フィルムをディスプレイに使用するにあたり、ディスプレイの表面に装着することは明らかであるから、引用発明1の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「ディスプレイの表面に装着される」とする要件を満たしている。
(ウ)引用発明1の「60°光沢度」は、「JIS Z8741」に準拠した光沢計を使用して測定したものである。一方、本件特許明細書の【0029】には、「鏡面光沢度は、一般的につやと呼ばれ、物体表面の鏡面反射光の度合を表す値であり、JIS K7136に準拠して測定した値である。」と記載されている。
(エ)引用発明1の「像鮮明度」は、「JIS K7374」に基づき、「光学くしが0.5mm」で測定した値であって「約10」である。一方、本件特許明細書には、【0028】に、「防眩層3は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(像鮮明度)が40%以下となる範囲の値となるように設定されている。透過像鮮明度は、防眩層3を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度であり、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した値である。」と記載されている。
イ 一致点及び相違点
(ア)一致点
本件特許発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。
「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、
樹脂を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備える、防眩フィルム。」
(イ)相違点
本件特許発明1と引用発明1は、以下の点で相違又は一応相違する。
(相違点1-1-1)
本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるのかどうか一応わからない点。
(相違点1-1-2)
60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が、本件特許発明1では「JIS K7136」に準拠して測定した値であって「20%以下となる範囲の値」であるのに対し、引用発明1では「JIS Z8741」に準拠した光沢計を使用して測定したものであって「21.7」である点。
(相違点1-1-3)
防眩層が、本件特許発明1では、「マトリクス」樹脂と、「該マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子」を含み、「前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」のに対して、引用発明1では、紫外線硬化型樹脂中に微粒子を含んでいない点。
(相違点1-1-4)
透過像鮮明度が、本件特許発明1では、JIS K7105に準拠する測定方法により測定した値であって、「40%以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明1では、「JIS K7374」に基づき測定した値であって、「約10」である点
ウ 判断
事案に鑑みて、相違点1-1-3について検討する。
引用例1には、課題を解決するための手段として、「本発明による防眩フィルムは、凹凸を有する防眩層が透明基材上に形成されてなる防眩フィルムであって、前記防眩層中に光の波長以上の大きさの粒子を含まず、表面の凹凸のみによって防眩性能を発揮する防眩フィルム」(【0011】)であること、及び、「本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部に光拡散要素を含まないため、前記の機能が内部の拡散要素によって撹乱されることがない。」(【0012】)ことが記載されている。また、「このような紫外線硬化型樹脂には、製造上の理由や、性能改善を目的として、・・・さらに、0.1μm未満の大きさの粒子等を混合して用いてもよい。」(【0020】)との記載もある。
これらの記載に基づけば、引用発明1に、0.1μm未満の大きさの粒子を混合して用いることが示唆されているものの、0.1μm以上の大きさの粒子を混合して用いることについての動機付けがない。
したがって、引用発明1において「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子」を含ませて、本件特許発明1の相違点1-1-3に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。
(3)本件特許発明3及び本件特許発明4について
本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1-1-3において相違する。
したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。
3 引用例2を主引用例とする理由1(新規性)、理由2(進歩性)
(1)引用例2
ア 引用例2の記載事項
特許異議申立人が甲第2号証として引用し、令和3年6月10日付け、及び、令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例2(特開2016-50950号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、そこには、以下の記載事項がある。
(ア)特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材と、前記光透過性基材上に設けられ、かつ凹凸面を有する防眩層とを備える防眩フィルムの管理方法であって、
前記防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下であり、かつ
2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように前記防眩フィルムを管理する、防眩フィルムの管理方法。
・・・略・・・
【請求項3】
前記防眩フィルムが微粒子を含んでいる、請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法。
・・・略・・・
【請求項5】
請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法によって管理された前記防眩フィルムのロール体。」
(イ)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルムの管理方法およびロール体に関する。
【背景技術】
・・・略・・・
【0006】
防眩フィルムの品質管理においては、従来、ヘイズやグロスを測定することによって行われていたが、これらとギラツキとの相関性は悪いので、ヘイズやグロスでは、ギラツキが発生し難い防眩フィルムを把握することができない。また、防眩フィルムの製造時における管理としては、簡便な管理方法が求められている。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、簡便であり、かつギラツキが発生し難い防眩フィルムのみを供給できる、防眩フィルムの管理方法およびこのように管理された防眩フィルムのロール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様によれば、光透過性基材と、前記光透過性基材上に設けられ、かつ凹凸面を有する防眩層とを備える防眩フィルムの管理方法であって、前記防眩フィルムの全ヘイズ値が20%以上30%以下であり、かつ2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように前記防眩フィルムを管理する、防眩フィルムの管理方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、上記方法によって請求項1に記載の防眩フィルムの管理方法によって管理された前記防眩フィルムのロール体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の態様の防眩フィルムによれば、簡便な方法によってギラツキが発生し難い防眩フィルムのみを供給できる。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
・・・略・・・
【0014】
<<<防眩フィルムの管理方法>>>
本実施形態に係る防眩フィルムの管理方法は、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度が8%以上となるように防眩フィルムを管理する方法である。
【0015】
図2に示されるように、管理対象の防眩性フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11上に設けられ、かつ凹凸面12Aを有する防眩層12とを備えている。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001410170000010.jpg]
「【0016】
防眩フィルム10の表面10Aは、凹凸面12Aとなっている。本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩層12の凹凸面12Aが防眩フィルム10の表面10Aとなっている。「機能層」とは、防眩フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮するための層が挙げられる。機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。
【0017】
防眩フィルム10においては、全ヘイズ値が20%以上30%以下となっている。防眩フィルム10においては、全ヘイズに対する内部ヘイズ値の比(内部ヘイズ値/全ヘイズ値)が0以上0.1以下となっていることが好ましい。全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、防眩フィルム全体として測定したときの値である。例えば、本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩フィルム10の全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、光透過性基材11および防眩層12からなる防眩フィルム10を用いて測定された値である。また、例えば、防眩層上に低屈折率層等の機能層が設けられている場合には、防眩フィルムの全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、光透過性基材、防眩層、および機能層からなる防眩フィルムを用いて測定された値である。
【0018】
全ヘイズ値および内部ヘイズ値は、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全ヘイズ値を測定する。また、内部ヘイズ値は、以下のように求められる。防眩フィルムの防眩層の表面に、凹凸面を形成する樹脂と屈折率が等しいか、またはこの樹脂との屈折率差が0.02以下である樹脂をワイヤーバーで乾燥膜厚が8μm、すなわち完全に凹凸面の凹凸形状がなくなり、表面が平坦とできる膜厚となるように塗布し、70℃で1分間乾燥後、塗布した樹脂に100mJ/cm2の紫外線を照射して、樹脂を硬化させる。これによって、防眩フィルムの表面に存在する凹凸がつぶれ、平坦な表面となったフィルムが得られる。ただし、この凹凸形状を有する防眩層を形成する組成物中にレベリング剤等が入っていることで、上記防眩層の表面に塗布する樹脂がはじかれやすく濡れにくいような場合は、予め防眩層の表面をケン化処理(2mol/LのNaOH(又はKOH)溶液で55℃、3分浸した後、水洗し、キムワイプ(登録商標)等で水滴を完全に除去した後、50℃オーブンで1分乾燥)により、親水処理を施すとよい。そして、この状態で、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従ってヘイズ値を測定することで内部ヘイズ値を求める。この内部ヘイズは、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状を加味しないものである。
【0019】
防眩フィルムの全ヘイズ値の下限は22%以上であることが好ましく、上限は28%以下であることが好ましい。
【0020】
防眩フィルム10の表面ヘイズ値は22%以上28%以下が好ましい。表面ヘイズ値は、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状のみに起因するものであり、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、防眩フィルムにおける表面の凹凸形状のみに起因する表面ヘイズ値が求められる。
【0021】
「防眩フィルムの透過像鮮明度」とは、防眩フィルム全体として測定された透過像鮮明度を意味する。本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩フィルム10の透過像鮮明度は、光透過性基材11および防眩層12からなる防眩フィルム10を用いて測定された透過像鮮明度である。また、例えば、防眩層上に低屈折率層等の機能層が設けられている場合には、防眩フィルムの透過像鮮明度は、光透過性基材、防眩層、および機能層からなる防眩フィルムを用いて測定された透過像鮮明度である。
【0022】
上記透過像鮮明度は、JIS K7374の像鮮明度の透過法に準拠した透過像鮮明度測定装置によって測定することができる。このような測定装置としては、スガ試験機社製の写像性測定器ICM-1T等が挙げられる。
【0023】
透過像鮮明度測定装置100は、図3に示されるように、光源101、スリット102、レンズ103、レンズ104、光学くし105、および受光器106を備えるものである。透過鮮明度測定装置100は、光源101から発せられ、かつスリット102を通過した光をレンズ103により平行光とし、この平行光を防眩フィルム10の光透過性基材11側に照射させ、防眩フィルム10の防眩層12の凹凸面12Aから透過した光をレンズ104により集光させ、光学くし105を通過した光を受光器106で受光するものであり、この受光器106で受光された光の量に基づいて、下記式(1)により透過像鮮明度Cを算出する。
C(n)={(M-m)/(M+m)}×100(%) …(1)
式(1)中、C(n)は光学くしの幅n(mm)のときの透過像鮮明度(%)、Mは光学くしの幅n(mm)のときの最高光量であり、mは光学くしの幅n(mm)のときの最低光量である。本実施形態においては、2.0mm幅の光学くし105を用いて防眩フィルム10の透過像鮮明度を測定するので、上記式(1)のC(n)は、C(2.0)となる。」
合議体注:図3は次のものである。
[図:0001410170000011.jpg]
「【0024】
光学くし105は、光学くし105の長手方向に沿って移動可能であり、遮光部分および透過部分を有している。光学くし105の遮光部分および透過部分の幅の比は1:1となっている。ここで、JIS K7374においては、光学くしとして、幅が、0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの5種類の光学くしが定められているが、本実施形態で2.0mm幅の光学くしを用いることとしたのは、2.0mm幅以外の光学くしを用いた場合には、ギラツキが発生し易い防眩フィルムと、ギラツキが発生し難い防眩フィルムとの間に透過像鮮明度の差があまり表れないが、2.0mm幅の光学くしを用いた場合には、ギラツキが発生し易い防眩フィルムと、ギラツキが発生し難い防眩フィルムとの間に透過像鮮明度の差が明確に表れるからである。
【0025】
防眩フィルム10は、ギラツキをさらに抑制する観点から、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された透過像鮮明度が10%以上となるように管理されることが好ましい。2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルム10透過像鮮明度の上限は、充分な防眩性を得る観点から、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
・・・略・・・
【0032】
防眩フィルム10は、画像表示装置の表面に設けられるが、特に、90ppi以上110ppiの解像度を有する画像表示装置(例えば、モニター用液晶ディスプレイ)の表面に用いられることが好ましい。
【0033】
<光透過性基材>
光透過性基材11としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、セルロースアシレート基材、シクロオレフィンポリマー基材、ポリカーボネート基材、アクリレート系ポリマー基材、ポリエステル基材、またはガラス基材が挙げられる。
・・・略・・・
【0043】
<防眩層>
防眩層12は、防眩性を発揮する層である。防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、他の機能を発揮するものであってもよい。具体的には、防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮する層であってもよい。
・・・略・・・
【0045】
防眩層12の表面は、上記したように凹凸面12Aとなっている。「防眩層の表面」とは、防眩層における光透過性基材側の面(防眩層の裏面)とは反対側の面を意味するものとする。
【0046】
凹凸面12Aの形成方法としては、例えば、(A)硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて凹凸面を形成する方法、(B)金型を用いた転写方法によって凹凸面を形成する方法、(C)サンドブラストにより防眩層の表面を荒すことによって凹凸面を形成する方法、または(D)エンボスロールにより防眩層の表面に凹凸を付与することによって凹凸面を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、製造が容易であることから、上記(A)の方法が好ましい。
【0047】
上記(A)の方法においては、微粒子の種類や粒径および硬化性樹脂前駆体の種類を適宜選択し、塗膜形成条件を調整することにより、凹凸面を有する防眩層を形成することができる。
【0048】
防眩層12は、図2に示されるようにバインダ樹脂13および微粒子14を含んでおり、上記(A)の方法によって形成されている。
【0049】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂13は、硬化性樹脂前駆体の硬化物(重合物、架橋物)を含むものである。本明細書における「硬化性樹脂前駆体」とは、樹脂前駆体が光硬化性や熱硬化性を有し、光硬化または熱硬化によって樹脂となる樹脂前駆体を意味する。樹脂は、硬化性樹脂前駆体の硬化物の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。
・・・略・・・
【0050】
光硬化性樹脂前駆体としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。光硬化性樹脂前駆体としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0051】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000未満のものである。光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。
【0052】
2官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
【0053】
これらの中でも硬度が高い第1の機能層を得る観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。
・・・略・・・
【0060】
(微粒子)
微粒子14は、無機微粒子または有機微粒子のいずれであってもよいが、これらの中でも、例えば、シリカ(SiO2)微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化スズ微粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物微粒子が好ましい。無機酸化物微粒子は、防眩層中で凝集体を形成することが可能となり、この凝集体の凝集度合により凹凸面を形成することが可能となる。
・・・略・・・
【0065】
防眩層12に対する微粒子14の含有量は特に限定されないが、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。微粒子の含有量が5質量%以上となっているので、防眩性を確実に得ることができ、また微粒子の含有量が30質量%以下となっているので、凝集体が過度に生じることもなく、内部拡散および/または防眩層の表面に過剰な凹凸が生じることを抑制でき、これにより白濁感を抑制できる。微粒子の含有量の下限は10質量%以上であることがより好ましく、微粒子の含有量の上限は20質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
凝集体14として無機酸化物微粒子を用いる場合、無機酸化物微粒子の平均二次粒子径は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。0.5μm以上であれば、表面ヘイズが20%以上30%以下の防眩層を形成することができ、また5μm以下であれば、過度に大きな凹凸の形成を抑制でき、ギラツキの発生を抑制することができる。微粒子14の凝集体の平均二次粒子径は、下限が1μm以上であることが好ましく、上限が3μm以下であることが好ましい。無機酸化微粒子の平均二次粒子径は、コールターカウンター法による体積平均径として測定することができる。
【0067】
防眩層12は、例えば、以下の方法によって形成することができる。まず、光透過性基材11の表面に、以下の防眩層用組成物を塗布する。
・・・略・・・
【0068】
防眩層用組成物は、少なくとも、上記硬化性樹脂前駆体、上記微粒子を含むものである。その他、必要に応じて、防眩層用組成物に、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、防眩層用組成物には、防眩層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0069】
(溶剤)
溶剤は、上記防眩層用組成物を塗布しやすくするために粘度を調整する目的や、蒸発速度や微粒子に対する分散性を調整して、防眩層形成時における微粒子の凝集度合を調整して所定の凹凸面を形成させやすくする目的で使用されうる。
・・・略・・・
【0070】
(重合開始剤)
重合開始剤は、光照射により分解されて、ラジカルを発生して光重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。
【0071】
重合開始剤は、光照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば特に限定されない。
・・・略・・・
【0075】
(レベリング剤)
レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、防眩層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成する防眩層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
【0076】
ベナードセル構造は、防眩層の表面の凹凸が大きくなりすぎてしまうおそれがある。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのない防眩層が得られるだけでなく、防眩層の表面の凹凸形状の調整も容易となる。
【0077】
防眩層用組成物の調製方法としては、各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0078】
光透過性基材11の表面に、防眩層用組成物を塗布した後、塗膜状の防眩層用組成物を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送し、各種の公知の方法で防眩層用組成物を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで、溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、微粒子の分布状態を調整できる。
【0079】
特に、乾燥条件の選定によって微粒子の分布状態を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30~120℃、乾燥風速では0.2~50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整した乾燥処理を、1回又は複数回行うことで微粒子の分布状態を所望の状態に調整することができる。
【0080】
その後、塗膜状の防眩層用組成物に紫外線等の光を照射して、硬化性樹脂前駆体を重合(架橋)させることにより防眩層用組成物を硬化させて、防眩層12を形成するとともに、混在領域11Aを形成する。
・・・略・・・
【0082】
本実施形態によれば、防眩フィルム10が凹凸面12Aを有する防眩層12を備えているので、光透過性基材11と防眩層12との界面で反射する光と、防眩層12の凹凸面12Aで反射する光との干渉を抑制できる。これにより、干渉縞の発生を抑制できる。また、混在領域11Aを形成した場合には、光透過性基材11と防眩層12との界面での反射を抑制できるので、干渉縞の発生をより抑制できる。」
(ウ)実施例
「【0084】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0085】
<防眩層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、防眩層用組成物を得た。
(防眩層用組成物)
・不定形シリカ(ゲル法、平均二次粒径(体積平均)2.0μm):15~20質量部
・ペンタエリスリトリトールトリアクリレート:100質量部
(合議体注:上記「ペンタエリスリトリトールトリアクリレート」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」(【0053】等)の誤記である。)
・セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース):1質量部
・シリコーン系レベリング剤:0.2質量部
・トルエン(溶剤):200質量部
・メチルイソブチルケトン(溶剤):50質量部
上記不定形シリカは、表面が有機処理(疎水化処理)されたものであった。
【0086】
<防眩フィルムの作製>
光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム(富士フイルム社製、TD80UL)を準備し、トリアセチルセルロース樹脂フィルムの片面に、防眩層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、1~3μm厚み(硬化時)の防眩層を形成し、不定形シリカの質量部、乾燥条件、厚みを適宜調整して、サンプル1~10に係る防眩フィルムを作製した。
【0087】
<透過像鮮明度の測定>
サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、以下のようにして透過像鮮明度を測定した。まず、写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意した。そして、サンプル1~10に係る各防眩フィルムを、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JIS K7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して、透過像鮮明度を測定した。光学くしとしては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅のものを用いた。なお、表1においては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度を、それぞれ、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)とした。
【0088】
<全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ測定>
サンプル1~10の各防眩フィルムについて、以下のようにして、全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズを測定した。まず、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全体ヘイズ値を測定した。その後、上記実施形態で記載した方法に従ってヘイズ値を測定して内部ヘイズ値を求めた。そして、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、表面ヘイズ値を求めた。
【0089】
<グロス(60度鏡面光沢度)の測定>
サンプル1~10の各防眩フィルムについて、精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8741に従って防眩フィルムのグロス(60度鏡面光沢度)を測定した。
【0090】
<ギラツキ評価(1)>
サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、防眩フィルムの防眩層が形成されていない面にガラス板(厚み3mm)を透明粘着剤で貼りあわせた。さらに、このガラス板における防眩フィルムが貼合されていないガラス面と、200ppiのブラックマトリクス(ガラス厚み0.7mm)のマトリクスが形成されていないガラス面とを粘着剤で貼り合わせた。こうして得られた試料に対し、ブラックマトリクス側に白色面光源(HAKUBA製LIGHTBOX、平均輝度1000cd/m2)を設置することで、疑似的にギラツキ発生させた。これを防眩フィルム側からCCDカメラ(KP-M1、Cマウントアダプタ、接写リング;PK-11A ニコン、カメラレンズ;50mm,F1.4s NIKKOR)で撮影した。CCDカメラと防眩フィルムの距離は250mmとし、CCDカメラのフォーカスは防眩フィルムに合うように調節した。CCDカメラで撮影した画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理ソフト(ImagePro Plus ver.6.2;Media Cybernetics社製)で次のように解析を行った。まず、取り込んだ画像から200×160ピクセルの評価箇所を選び、該評価箇所において、16bitグレースケールに変換した。次に、フィルタコマンドの強調タブからローパスフィルタを選択し3×3、回数3、強さ10の条件でフィルタをかけた。これによりブラックマトリクスパターン由来の成分を除去した。次に、平坦化を選択し、背景:暗い、オブジェクト幅10の条件でシェーディング補正を行った。次に、コントラスト強調コマンドでコントラスト:96、ブライトネス:48としてコントラスト強調を行った。得られた画像を8ビットグレースケールに変換し、その中の150×110ピクセルについてピクセルごとの値のばらつきを標準偏差値として算出することにより、ギラツキを数値化した。この数値化したギラツキ値が小さいほど、ギラツキが少ないと言える。
【0091】
<ギラツキ評価(2)>
サンプル1~10の各防眩フィルムにおいて、以下のようにしてギラツキを評価した。21.5インチ、フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付した。その上にサンプル1~10の各防眩フィルムを置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し、下記の基準により評価した。
○:ギラツキが気にならなかった。
×:ギラツキが気になった。
【0092】
以下、結果を表1に示す。
【表1】
[図:0001410170000012.jpg]
【0093】
表1に示されるように、サンプル4~7においては、防眩フィルムのC(2.0)が8%未満であったため、ギラツキが発生していた。
【0094】
これに対し、サンプル1~3および8~10においては、防眩フィルムのC(2.0)が8%以上であったために、ギラツキが発生していなかった。
【0095】
一方、ヘイズやグロスはギラツキとは相関が無く、防眩フィルムのギラツキが発生しやすいか否かを管理することはできないことが理解できる。
【0096】
また、ギラツキ評価1の結果は、ギラツキ評価2の結果と対応しているので、ギラツキ評価1で用いた測定方法は信頼性があると判断される。」
イ 引用発明2
(ア) 引用例2には、引用例2でいう「本発明」の実施例として、【0085】に記載の「防眩層用組成物」を得て、【0086】の記載の「防眩フィルムの作製」工程により「作製した」「サンプル1」「に係る防眩フィルム」が記載されている。
また、「サンプル1」「に係る防眩フィルム」の評価「結果」が【0092】【表1】に記載されているところ、【表1】に記載の各「結果」は、【0086】~【0091】の定義によるものである。
(イ) 上記ア(ア)~(オ)及び上記(ア)より、引用例2には、「サンプル1」の「フィルム」の発明(以下「引用発明2」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。
「 下記に示す組成となるように各成分を配合して、防眩層用組成物を得て、
・不定形シリカ(ゲル法、平均二次粒径(体積平均)2.0μm):15~20質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:100質量部
・セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース):1質量部
・シリコーン系レベリング剤:0.2質量部
・トルエン(溶剤):200質量部
・メチルイソブチルケトン(溶剤):50質量部、
ここで、上記不定形シリカは、表面が有機処理(疎水化処理)されたものであり、
光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルムを準備し、トリアセチルセルロース樹脂フィルムの片面に、防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成し、
次いで、形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、1~3μm厚み(硬化時)の防眩層を形成し、
不定形シリカの質量部、乾燥条件、厚みを適宜調整して作製された、
サンプル1の防眩フィルムであって、
透過像鮮明度(%)は、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)は、それぞれ1.6、1.0、1.0、1.9、8.8、ヘイズ(%)は、全ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ、内部ヘイズ/全ヘイズは、それぞれ23.2、0.6、22.6、0.026、グロス(60度鏡面光沢度)(%)は33.1、ギラツキ評価(1)は38.0、ギラツキ評価(2)は○である、
サンプル1の防眩フィルム。
<透過像鮮明度の測定>
サンプル1の防眩フィルムにおいて、以下のようにして透過像鮮明度を測定した。まず、写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意した。そして、サンプル1の防眩フィルムを、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JISK7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して、透過像鮮明度を測定した。光学くしとしては、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅のものを用いた。なお、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された防眩フィルムの透過像鮮明度を、それぞれ、C(0.125)、C(0.25)、C(0.5)、C(1.0)、C(2.0)とした。
<全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ測定>
サンプル1の防眩フィルムについて、以下のようにして、全体ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズを測定した。まず、ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って防眩フィルムの全体ヘイズ値を測定した。その後、上記実施形態で記載した方法に従ってヘイズ値を測定して内部ヘイズ値を求めた。そして、全体ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、表面ヘイズ値を求めた。
<グロス(60度鏡面光沢度)の測定>
サンプル1の防眩フィルムについて、精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8741に従って防眩フィルムのグロス(60度鏡面光沢度)を測定した。
<ギラツキ評価(1)>
サンプル1の防眩フィルムにおいて、防眩フィルムの防眩層が形成されていない面にガラス板(厚み3mm)を透明粘着剤で貼りあわせた。さらに、このガラス板における防眩フィルムが貼合されていないガラス面と、200ppiのブラックマトリクス(ガラス厚み0.7mm)のマトリクスが形成されていないガラス面とを粘着剤で貼り合わせた。こうして得られた試料に対し、ブラックマトリクス側に白色面光源(HAKUBA製LIGHTBOX、平均輝度1000cd/m2)を設置することで、疑似的にギラツキ発生させた。これを防眩フィルム側からCCDカメラ(KP-M1、Cマウントアダプタ、接写リング;PK-11Aニコン、カメラレンズ;50mm,F1.4sNIKKOR)で撮影した。CCDカメラと防眩フィルムの距離は250mmとし、CCDカメラのフォーカスは防眩フィルムに合うように調節した。CCDカメラで撮影した画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理ソフト(ImagePro Plus ver.6.2;Media Cybernetics社製)で次のように解析を行った。まず、取り込んだ画像から200×160ピクセルの評価箇所を選び、該評価箇所において、16bitグレースケールに変換した。次に、フィルタコマンドの強調タブからローパスフィルタを選択し3×3、回数3、強さ10の条件でフィルタをかけた。これによりブラックマトリクスパターン由来の成分を除去した。次に、平坦化を選択し、背景:暗い、オブジェクト幅10の条件でシェーディング補正を行った。次に、コントラスト強調コマンドでコントラスト:96、ブライトネス:48としてコントラスト強調を行った。得られた画像を8ビットグレースケールに変換し、その中の150×110ピクセルについてピクセルごとの値のばらつきを標準偏差値として算出することにより、ギラツキを数値化した。この数値化したギラツキ値が小さいほど、ギラツキが少ないと言える。
<ギラツキ評価(2)>
サンプル1の防眩フィルムにおいて、以下のようにしてギラツキを評価した。21.5インチ、フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付した。その上にサンプル1の防眩フィルムを置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し、下記の基準により評価した。
○:ギラツキが気にならなかった。
×:ギラツキが気になった。」
(合議体注:「サンプル1」「に係る防眩フィルム」及び「サンプル1」「の防眩フィルム」との記載を、「サンプル1の防眩フィルム」に統一して記載している。「グロス」及び「グロス(60度鏡面光沢度)」との記載を、「グロス(60度鏡面光沢度)」に統一して記載している。「ギラツキ評価1」及び「ギラツキ評価(1)」、あるいは「ギラツキ評価2」及び「ギラツキ評価(2)」との記載を、それぞれ「ギラツキ評価(1)」、あるいは「ギラツキ評価(2)」に統一して記載している。)
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明2を対比すると、以下のとおりである。
(ア) 引用発明2の「防眩層用組成物」及び引用発明2の「作製」工程からみて、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」は、「光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム」「の片面に」、「防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成し」、「形成した塗膜に対して、0.2~1m/sの範囲の流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ」、「紫外線を」「照射して塗膜を硬化させることにより」、「防眩層を形成し」たものであると理解できる。
また、引用発明2の「防眩層用組成物」は、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の「不定形シリカ」を「15~20質量部」、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を「100質量部」、「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」を「1質量部」、「シリコーン系レベリング剤」を「0.2質量部」、「トルエン(溶剤)」を「200質量部」、「メチルイソブチルケトン(溶剤)」を「50質量部」を、「不定形シリカの質量部」を「調整して」「配合して」、「得」られたものであると理解できる。
また、引用発明2の「防眩フィルム」の「0.5mm幅」「の光学くしを用いて測定された」「透過像鮮明度(%)」は、それぞれ「1.0」であり、「グロス(60度鏡面光沢度)(%)は33.1」であり、「全ヘイズ」「23.2」「%」、「内部ヘイズ」「0.6」「%」、「表面ヘイズ」「22.6」「%」であり、「<ギラツキ評価(2)>」の評価は、「○:ギラツキが気にならなかった。」である。
(イ) 引用発明2の「光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム」は、「光透過性」のものである。そうすると、上記(ア)で述べた引用発明2の「防眩フィルム」としての各光学特性は、主に、引用発明2の「防眩層」(及びその表面凹凸)によるものと理解できる。
してみると、引用発明2の「防眩層」は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。
(ウ) 引用発明2における「透過像鮮明度(%)」は、「写像性測定器(型番:ICM-1T、スガ試験機社製)を用意し」、引用発明2「を、トリアセチルセルロース樹脂フィルム側が写像性測定器の光源側となるように設置して、JISK7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して」「光学くしを用いて測定された」ものである。
また、本件特許明細書の【0169】([透過像鮮明度])によれば、本件特許発明1における「40%以下となる範囲の値」とされる「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」は、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T) を用いて、JIS K7105に準拠し」、「防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した」ものである。
ここで、「JIS K7374:2007(プラスチック-像鮮明度の求め方)」は、「JIS 7105:1981(プラスチックの工学的特性試験方法)」から像鮮明度に関する測定方法だけを分離・独立して新規に制定した規格であるから、像鮮明度の求め方は同様である。
また、「JIS K7374」では、「試験片に筋目(方向性をもつ凹凸)がある場合には、この筋目に対する直角方向と平行方向の像鮮明度は異なるので、両方を測定する」とされるところ、上記の引用発明2の「透過像鮮明度(%)」の測定においては、筋目(方向性をもつ凹凸)に対してどのような方向で像鮮明度を測定するのか定義されていないから、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」に「筋目」はないと理解できる。そうすると、引用発明2の製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行となるように設置して測定される「透過像鮮明度(%)」は、「1.0」と同じか同等な値を示すと理解できる。あるいは、引用発明2の製造方法からみて、「透過像鮮明度(%)」が、引用発明2の製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向と関係に基づく大きな異方性を示すとも考えにくい。
以上勘案すると、引用発明2の「C(0.5)」「1.0」「%」である「防眩層」は、本件特許発明1の「防眩層」の、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された」との要件を具備する。
(エ) 上記(ア)より、引用発明2の「防眩層」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」と、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の凝集した「不定形シリカ」を含むものである。そして、「平均二次粒径(体積平均)2.0μm」の凝集した「不定形シリカ」は、その製造工程、及び、【0046】の「凹凸面12Aの形成方法としては、例えば、(A)硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて凹凸面を形成する方法、・・・等が挙げられる。これらの中でも、製造が容易であることから、上記(A)の方法が好ましい。」との記載からみて、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」中に分散されており、硬化後バインダ樹脂となる硬化性樹脂前駆体および微粒子を含む防眩層用組成物を用いて「防眩層」の表面の凹凸の分布構造を形成していると理解できる。
引用発明2の「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース)」は、本件特許発明1の「マトリクス樹脂」に相当する。また、引用発明2の凝集した「不定形シリカ」は、本件特許発明1の「微粒子」に相当する。
そして、引用発明2の「不定形シリカ」の上記粒径からみて、引用発明2の凝集した「不定形シリカ」は、本件特許発明1の「微粒子」の、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値」との要件を満たす。また、引用発明2の「防眩層」は、本件特許発明1の「前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」との要件を満たす。
そうすると、上記(イ)より、引用発明2の「防眩層」は、本件特許発明1の「防眩層」の、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み」、「前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」との要件を具備する。
(オ) 引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」は、「精密光沢計(GM-26PRO、村上色彩技術研究所製)を用いて、JISZ8741に従って」「測定した」ものである。
また、本件特許明細書の【0170】([60度グロス])によれば、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」は、「グロスメーター((株)堀場製作所製、IG-320)を用いて、JIS K7105に準拠し、角度60°で測定した」ものである。
ここで、特開2003-207945号公報の【0076】、特開2007-206482号公報の【0229】、特開2010-128429号公報の【0095】、特開2016-107497号公報の【0065】等に例示されているように、鏡面光沢度(グロス)は、JIS Z8741(鏡面光沢度測定方法)とJIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定することが通常である。そうすると、上記の引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」の測定及び本件特許発明1の「60度グロス」の測定は、JIS Z8741とJIS K7105に準拠していると理解できる。
してみると、引用発明2の「グロス(60度鏡面光沢度)」は、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」に対応するものと理解できる。
(カ) 防眩フィルムは、ディスプレイの最表面に装着されて使用されることは、技術常識である。引用発明2も、実際に「フルHDの液晶ディスプレイモニタを用意し、最表面の偏光フィルムを剥離し、防眩層が積層されていない偏光フィルムを透明粘着フィルムにより貼付し」、「その上に」引用発明2「を置いて、30cm程度の距離からギラツキが気になるか否かを判定し」て「ギラツキ評価(2)」を行っている。
そうすると、上記(ア)~(オ)より、引用発明2の「サンプル1の防眩フィルム」は、本件特許発明1の、「ディスプレイの表面に装着される」とされる、「防眩フィルム」に相当する。また、引用発明2の「防眩フィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層」を備え、「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」点で共通する。
イ 一致点及び相違点
(ア) 一致点
本件特許発明1と引用発明2は、次の構成で一致する。
「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、
マトリクス樹脂と、該マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値に設定された防眩層を備え、
前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。」
(イ) 相違点
本件特許発明1と引用発明2は、以下の点で相違、又は一応相違する。
(相違点2-1-1)
「防眩層」の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」が、本件特許発明1は、「20%以下となる範囲の値であ」るのに対して、引用発明2は、「33.1」「%」である点。
(相違点2-1-2)
「防眩層」が、本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値であ」るのに対して、引用発明2は、そのようなものであるかどうか不明な点。
ウ 判断
事案に鑑みて、相違点2-1-1について検討する。
引用例2でいう「本発明」が解決しようとする課題は、「防眩フィルムの品質管理においては、従来、ヘイズやグロスを測定することによって行われていたが、これらとギラツキとの相関性は悪いので、ヘイズやグロスでは、ギラツキが発生し難い防眩フィルムを把握することができない」(【0006】)ところ、「簡便であり、かつギラツキが発生し難い防眩フィルムのみを供給できる、防眩フィルムの管理方法およびこのように管理された防眩フィルムのロール体を提供する」(【0008】)ことである。また、「一方、ヘイズやグロスはギラツキとは相関が無く、防眩フィルムのギラツキが発生しやすいか否かを管理することはできない」(【0095】)と記載されている。
これらの記載に基づけば、引用発明2は、ギラツキが発生し難い防眩フィルムを提供するにあたり、相関がないとされた「グロス」、つまり「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」の値を変更しようとする動機付けが存在するとはいえない。
したがって、当業者であっても、引用発明2に基づいて、本件特許発明1の相違点2-1-1に係る構成とすることが、容易になし得たということができない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、当業者であっても、引用例2に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件特許発明3及び本件特許発明4について
本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明2とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点2-1-1において相違する。
したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。
4 引用例4を主引用例とする理由2(進歩性)
(1)引用例4
ア 引用例4の記載事項
特許異議申立人が甲第4号証として引用し、令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例4(特開2014-85371号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載事項がある。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
複数の樹脂成分の相分離に伴って形成された長細状凸部を表面に有する防眩層を含む防眩フィルムであって、前記長細状凸部が、分岐構造を有し、かつ合計長さが100μm以上であるとともに、前記防眩層の表面に前記長細状凸部が1mm2当たり1以上存在する防眩フィルム。
・・・略・・・
【請求項4】
0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度70~100%、ヘイズ10~40%、全光線透過率70~100%を有する請求項1~3のいずれかに記載の防眩フィルム。
・・・略・・・
【請求項7】
200ppiの解像度を有する表示装置に配設したとき、防眩層が表示面から0.05mm以上離れてもギラツキを抑制できる請求項1~6のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項8】
表示装置が有機ELパネルである請求項7記載の防眩フィルム。」
(イ)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示装置の表示面でのギラツキや外部光源の映りこみを防止するのに適した防眩フィルム及びその製造方法に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、ヘイズと鮮明性とのバランスに優れ、高精細表示装置(例えば、200ppi以上の解像度を有する液晶表示装置や、有機EL表示装置など)に配設しても、防眩性を向上でき、ギラツキを高度に抑制でき、かつ文字ボケも抑制できる防眩フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、有機ELパネルなどの高精細表示装置の表示面に対して離れて配設しても、防眩性と耐ギラツキ性とを両立でき、耐擦傷性も向上できる防眩フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、まず、非相溶な樹脂成分のスピノーダル分解を利用した従来の防眩フィルムが高精細表示装置において、防眩性と耐ギラツキ性とを両立できないメカニズムについて検討した。従来の相分離による凹凸構造は、図1に示すように、主として液滴状の構造が比較的周期的に配列された構造であった。相分離はコート液に均一に溶解されたことによって熱力学的に安定な状態にある樹脂の混合物が、溶剤の蒸発に伴って熱力学的に不安定な状態となり、スピノーダル分解を引き起こすことによって生じる現象である。系全体が同時に熱力学的に不安定な状態となり、塗膜面内で均質な相分離が進行するため、比較的周期的で且つ均一なサイズの表面凹凸形状が形成されるのが特徴である。しかし、200ppi以上の解像度に対応する画素サイズに対してギラツキを抑制できる程度に表面凹凸形状のサイズを小さくすると、防眩性が低下し、外光が表示面に映りこんで画質が損なわれてしまう。一方、防眩性を向上させるために凸形状の傾斜角を大きくすると、ヘイズが上昇し、文字ボケが発生する。
【0015】
一般的に、ギラツキは、凹凸構造のサイズがオーダー的に画素サイズに近い場合にレンズ効果によって発生すると考えられている。推測であるが、凹凸形状が画素を跨いで存在する場合、各画素の透過光が凹凸形状によって異なる方向に屈折され、本来、RGBの混色として評価者の眼に届くべき色や明るさが、凹凸構造のピッチや傾斜に応じてランダムに変動して感じられる現象をギラツキとして認知しているものと考えられる。凹凸構造が画素より充分に小さい場合画素を跨ぐ凹凸は存在するものの、割合が少なく且つ屈折も小さいため、ギラツキは感じにくい。一方、凹凸構造が画素より充分に大きい場合は、凹凸形状の傾斜が大きいと、透過光が大きく屈折してレンズ効果を生じるが、傾斜が小さくなるほど透過光の屈折も少なくギラツキは感じにくくなる。極端なケースを考えると判りやすいが、傾斜角が限りなくゼロに近づけば、それはほぼ平面となってギラツキが解消されることが予測できる。
【0016】
そこで、本発明者らは、従来の防眩フィルムでは、液滴相構造を有するため、ギラツキが発生し易いことを突き止め、共連続相構造(共連続構造又は共連続状相分離構造)に着目した。すなわち、共連続相構造を含む相分離構造において、画素サイズによって調整は必要であるが、共連続相構造を形成する凸部の幅を画素より充分小さい幅に調整することによって、幅方向はギラツキを生じる因子から免かれることとなる。一方、凸部の長さ(持続長)方向においては、傾斜は端部以外には原理的に存在しないため、やはりギラツキは生じにくい。特に、共連続相構造に限られず、液滴相構造でも、島状ドメインの長さが大きい場合は端部の占める割合が小さくなるため、なおさらギラツキは生じにくくなる。また、幅方向のサイズは小さいものの、共連続相構造や長さの大きい島状ドメイン部は膜面方向に大きく広がっているため、防眩性を確保しやすい。さらに、共連続相構造は、傾斜部が本質的に少ない構造であるため、光を散乱させる因子が少なく、幅方向と同程度のサイズを有する液滴状の表面凹凸構造に比べると、ヘイズが低いために文字ボケを起こしにくい。
【0017】
本発明者らは、このような知見に基づいて、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、防眩層の表面に、複数の樹脂成分の相分離に伴って、分岐構造を有し、かつ合計長さが100μm以上の長細状凸部を密に形成することにより、ヘイズと鮮明性とのバランスに優れ、高精細表示装置(例えば、200ppi以上の解像度を有する液晶表示装置や、有機EL表示装置など)に配設しても、防眩性を向上でき、ギラツキを高度に抑制でき、かつ文字ボケも抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明の防眩フィルムは、複数の樹脂成分の相分離に伴って形成された長細状凸部を表面に有する防眩層を含む防眩フィルムであって、前記長細状凸部が、分岐構造を有し、かつ合計長さが100μm以上であるとともに、前記防眩層の表面に前記長細状凸部が1mm2当たり1以上存在する。前記長細状凸部は、共連続相構造を形成し、共連続相構造の網目の平均径が1~70μmであってもよい。前記防眩層の表面において、分岐構造を有する長細状凸部と他の凸部との長さ比が、前者/後者=100/0~50/50程度であってもよい。本発明の防眩フィルムは、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度70~100%、ヘイズ10~40%、全光線透過率70~100%を有していてもよい。前記複数の樹脂成分は、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂・・・略・・・から選択された複数のポリマーと、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、及び少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体から選択された少なくとも一つの硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ前記ポリマーのうち少なくとも2つの成分が、液相からのスピノーダル分解により相分離しているとともに、前記硬化性樹脂前駆体が硬化していてもよい。前記硬化性樹脂前駆体は、JIS Z8803で準拠した粘度(25℃)が3000mPa・s以下である硬化性樹脂前駆体を含んでいてもよい。本発明の防眩フィルムは、200ppiの解像度を有する表示装置に配設したとき、防眩層が表示面から0.05mm以上離れてもギラツキを抑制できる防眩フィルムであってもよい。前記表示装置は有機ELパネルであってもよい。
・・・略・・・
【0019】
本発明には、複数の樹脂成分を含む溶液を塗布し、溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により相分離構造を形成する乾燥工程を含む前記防眩フィルムの製造方法も含まれる。前記乾燥工程において、80℃を超える温度で加熱してもよい。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0021】
本発明では、防眩層の表面に、複数の樹脂成分の相分離に伴って、分岐構造を有し、かつ合計長さが100μm以上の長細状凸部が密に形成されているため、ヘイズと鮮明性とのバランスに優れ、高精細表示装置(例えば、200ppi以上の解像度を有する液晶表示装置や、有機EL表示装置など)に配設しても、防眩性を向上でき、ギラツキを高度に抑制でき、かつ文字ボケも抑制できる。さらに、有機ELパネルなどの高精細表示装置の表示面に対して離れて配設しても、防眩性と耐ギラツキ性とを両立でき、耐擦傷性も向上できる。そのため、有機ELパネルなどの高精細表示装置の保護フィルムとして利用しても、前記特性を両立できる。」
(ウ)発明を実施するための形態
「【0023】
[防眩層]
本発明の防眩フィルムは防眩層を含み、この防眩層は、複数の樹脂成分の相分離に伴って形成された長細状(又は長尺状)凸部を表面に有しており、長細状凸部で形成された表面凹凸構造により防眩性を発現できる。特に、本発明では、この長細状凸部が、分岐構造を有し、かつ100μm以上の合計長さを有するとともに、防眩層の表面で密な状態で共連続相構造を形成しているため、ヘイズと鮮明性とのバランスに優れ、高精細表示装置に配設しても、防眩性を損なうことなく、ギラツキを高度に抑制でき、かつ文字ボケも抑制できる。
【0024】
(長細状凸部)
長細状凸部は、後述する方法で複数の樹脂成分の相分離に伴って形成され、防眩層の表面において、長細状(紐状又は線状)凸部が略網目状に形成されている。そのため、防眩層の表面は、二次元ネットワーク的に網目状構造(あたかも、マスクメロンの皮の網目状模様)、すなわち、不規則な複数のループ状(例えば、連続したループ状、又は一部が欠落したループ状)を形成しているように観察できる。
・・・略・・・
【0029】
長細状凸部で形成された共連続相構造は、通常、同程度の径を有する網目が不規則な形状で配列している。共連続相構造の各網目の平均径(共連続相構造の各網目が楕円形状や長方形状などの異方形状の場合、長径と短径との平均値)は、例えば、1~70μm(例えば、1~40μm)、好ましくは2~50μm(例えば、3~30μm)、さらに好ましくは5~20μm(特に10~20μm)程度であってもよい。網目の径が大きすぎると、ギラツキや文字ボケが発生し易く、小さすぎると、防眩性が低下し易い。
【0030】
各長細状凸部の形状(防眩層表面の二次元形状)は、通常、部分的又は全体的に曲線部を有する紐状であり、長細状凸部の平均幅は0.1~30μmであり、表示装置の画素に応じて、前記範囲から選択して、ギラツキを抑制可能な小さな幅に調整すればよく、例えば、0.1~20μm、好ましくは0.1~15μm、さらに好ましくは0.1~10μm(特に0.1~5μm)程度である。幅が大きすぎると、ギラツキや文字ボケが発生し易く、小さすぎると、防眩性が低下する。
・・・略・・・
【0031】
長細状凸部の平均高さは、例えば、0.05~10μm、好ましくは0.07~5μm、さらに好ましくは0.09~3μm(特に0.1~2μm)程度である。長細状凸部の傾斜角は、例えば、10°以下であり、好ましくは0.5~5°、さらに好ましくは1~3°程度である。凸部の高さが高く、傾斜が大きくなると、ギラツキや文字ボケが発生し易い。
【0032】
防眩層の表面における全凸部の面積割合は、全表面に対して、例えば、10~100%、好ましくは30~100%、さらに好ましくは50~100%(特に70~100%)程度である。長細状凸部間の面積が小さすぎると、防眩性が低下し易く、大きすぎると、ギラツキや文字ボケが発生し易い。
・・・略・・・
【0034】
(樹脂成分)
防眩層は相分離可能な複数の樹脂成分を含んでおり、この防眩層の相分離構造は、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成されている。樹脂成分としては、相分離可能な樹脂成分を含んでいればよいが、前述の長細状凸部を形成でき、かつ耐擦傷性も向上できる点から、ポリマー成分及び硬化性樹脂前駆体を含むのが好ましい。
【0035】
(ポリマー成分)
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。
・・・略・・・
【0061】
(硬化性樹脂前駆体)
硬化性樹脂前駆体としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。
・・・略・・・
【0066】
硬化性樹脂前駆体の粘度(JIS Z8803で準拠した25℃の粘度)は100~10000mPa・s(特に500~8000mPa・s)程度の範囲から選択できる。特に、硬化性樹脂前駆体は、前記長細状凸部を形成し易い点から、少なくとも3000mPa・s以下の粘度を有する低粘硬化性樹脂前駆体を含むのが好ましい。低粘硬化性樹脂前駆体の粘度(JIS Z8803で準拠した25℃の粘度)は、例えば、100~3000mPa・s、好ましくは300~2800mPa・s、さらに好ましくは500~2500mPa・s(特に1000~2300mPa・s)程度である。低粘硬化性樹脂前駆体の粘度が高すぎると、前記長細状凸部を形成するのが困難となる。低粘度硬化性樹脂前駆体を含むことにより前記長細状凸部が生成し易いメカニズムは、明らかではないが、低粘度硬化性樹脂前駆体が乾燥工程における塗布液の溶融流動性、特に、相分離する前記熱可塑性樹脂の自由度を向上させることにより、スピノーダル分解を促進し、液滴相構造から共連続相構造にまで進行するためであると推定できる。
【0067】
低粘硬化性樹脂前駆体の割合は、樹脂成分全体に対して、1~50重量%程度の範囲から選択でき、例えば、3~40重量%、好ましくは5~35重量%、さらに好ましくは10~30重量%(特に15~25重量%)程度である。低粘硬化性樹脂前駆体の割合が多すぎると、スピノーダル分解の相分離に伴う初期凹凸形成が抑制され、溶融によって凸部が繋がる機会が減少するため、長細状凸部の形成が困難となり、少なすぎると、塗布液の溶融流動性が低下することにより、長細状凸部の形成が困難となる。
・・・略・・・
【0075】
さらに、通常、ポリマーと、樹脂前駆体の硬化により生成した硬化又は架橋樹脂とは互いに屈折率が異なる。また、複数のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂)の屈折率も互いに異なる。ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂)との屈折率の差は、例えば、0.001~0.2、好ましくは0.05~0.15程度であってもよい。
・・・略・・・
【0077】
[防眩フィルム]
本発明の防眩フィルムは、少なくとも防眩層で構成されており、防眩層の厚みは、例えば、防眩層単独で形成されていてもよいが、通常、さらに透明フィルムを含み、この透明フィルムの一方の面に防眩層が形成されていてもよい。
【0078】
防眩層には、防眩層の光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機又は無機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
【0079】
防眩層の厚みは、例えば、0.3~20μm程度、好ましくは1~15μm(例えば、1~10μm)程度であってもよく、通常、2~10μm(特に3~7μm)程度である。なお、防眩層単独で防眩フィルムを構成する場合、防眩層の厚みは、例えば、1~100μm、好ましくは3~50μm程度の範囲から選択してもよい。
・・・略・・・
【0095】
(防眩フィルムの特性)
本発明の防眩フィルムは、防眩層の表面に相分離構造に対応した微細な凹凸構造が大量に形成されている。そのため、表面反射による外景の映り込みを抑制でき、防眩性を高めることができる。また、防眩性の評価は、目視による蛍光灯の映りこみによる評価、及びJlS K7105に従ってグロスメーターを用いて評価できる。本発明の防眩フィルム(防眩層)は、60°グロスが30以上であってもよく、例えば、30~80、好ましくは40~70、さらに好ましくは50~60(特に52~55)程度であってもよい。グロスが小さすぎると、ギラツキや文字ボケが発生し易い。
【0096】
さらに、ギラツキ及び文字ボケの評価は、解像度200ppi程度の高精細液晶表示装置を用いて評価でき、より簡単には300ppi程度の高精細スマートフォンを用いて目視にて評価できる。本発明の防眩フィルムは、200ppiの解像度を有する表示装置に配設したとき、防眩層が表示面から0.05mm以上(特に0.1~0.4mm程度)離れてもギラツキを抑制できる。
【0097】
さらに、本発明の防眩フィルムにおいて、防眩性の確保と、ギラツキの低減及び文字ボケ回避という特性を最適なレベルで実現する光学特性としては、透過像鮮明度、ヘイズ及び全光線透過率が特定の範囲に調整されているのが好ましい。
【0098】
防眩フィルムの透過像鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、70~100%程度の範囲から選択できるが、好ましくは75~100%(例えば、75~95%)、さらに好ましくは80~100%(特に80~90%)程度である。透過像鮮明度が小さすぎると、透過光のボケが多くなり、高精細表示装置に用いると、画素の輪郭がボケるため、文字ボケが発生し易い。
【0099】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0100】
C(%)=[(M-m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、防眩フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0101】
前記透過像鮮明度測定の測定装置としては、スガ試験機(株)製写像性測定器ICM-1DPが使用できる。光学櫛としては、0.125~2mm幅の光学櫛を用いることができる。
【0102】
本発明の防眩フィルムのヘイズは、例えば、10~40%、好ましくは12~35%、さらに好ましくは15~30%(特に20~30%)程度である。ヘイズを高すぎると、ギラツキ及び文字ボケが発生し易く、ヘイズが小さすぎると、防眩性が低下する。
【0103】
本発明の防眩性フィルムの全光線透過率は、例えば、70~100%、好ましくは80~100%、さらに好ましくは85~100%(例えば、85~95%)、特に90~100%(例えば、90~99%)程度である。
・・・略・・・
【0106】
(防眩フィルムの製造方法)
本発明の防眩フィルムは、複数の樹脂成分を含む溶液を支持体(特に透明フィルム)の上に塗布し、溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により相分離構造を形成する乾燥工程を含む製造方法により得られる。硬化性樹脂前駆体を含む場合は、本発明の防眩フィルムは、さらに前記硬化性樹脂前駆体を硬化する硬化工程を経て得られる。
【0107】
詳しくは、乾燥工程では、複数の樹脂成分(特にポリマー及び硬化性樹脂前駆体)と溶媒とで構成された樹脂組成物(特に均一溶液などの液状組成物又は混合液)を用い、この樹脂組成物の液相(又は均一溶液やその塗布層)から、溶媒を乾燥などにより蒸発又は除去する過程で、濃度の濃縮に伴って、スピノーダル分解による相分離が生じ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成できる。共連続相構造は、溶媒が蒸発したあとの樹脂組成物の溶融流動性が高くなるような乾燥条件や処方を設定することにより、作製することができる。
【0108】
より具体的には、前記湿式スピノーダル分解は、通常、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液又は樹脂組成物(均一溶液)を支持体にコーティングし、塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。前記支持体として剥離性支持体を用いる場合には、防眩層を支持体から剥離することにより防眩層単独で構成された防眩フィルムを得ることができ、支持体として非剥離性支持体(好ましくは透明支持体)を用いることにより、支持体と防眩層とで構成された積層構造の防眩フィルムを得ることができる。さらに、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂の一部に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を作製できる。凹凸構造が共連続構造となる理由は、推測ではあるが、溶媒が蒸発した後も樹脂成分の流動性が失われることがなく、熱によって凹凸構造が溶融してそれらが繋がるためと考えられる。
【0109】
本発明では、スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行して粗大化すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(前記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。本発明では、防眩層の相分離構造は、乾燥の初期過程においては海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により溶媒乾燥後には防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。さらに乾燥過程において、溶媒乾燥後であっても樹脂組成物が流動性を確保できる程度に乾燥の温度が高く、且つまたは樹脂成分として低粘度成分を含有させることにより、表面の微細な凹凸が溶融して繋がり、元々共連続であった構造であってもさらに連続性を増した凹凸構造へと変異させることができる。
【0110】
湿式スピノーダル分解において、溶媒は、前記ポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。
・・・略・・・
【0111】
前記樹脂組成物(混合液)としては、好ましい態様として、前記熱可塑性樹脂と、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、前記熱可塑性樹脂及び光硬化性化合物を可溶な溶媒とを含む組成物が使用でき、他の好ましい態様として、前記互いに非相溶な複数のポリマーと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、溶媒とを含む組成物が使用できる。
・・・略・・・
【0114】
前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒の蒸発は、防眩層の表面に長細状凸部を形成し易い点から、加熱して乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、例えば、30~200℃、(例えば、40~150℃)程度の範囲から選択できるが、共連続相構造を形成し易い点から、80℃を超える温度、例えば、82~120℃、好ましくは85~110℃、さらに好ましくは88~105℃(特に90~100℃)程度の温度で乾燥させることにより行うことができる。乾燥時間は、例えば、1~60分、好ましくは1.2~50分、さらに好ましくは1.5~30分(特に1.8~10分)程度である。乾燥温度や時間が小さすぎると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となる。一方、乾燥温度や時間が大きすぎると、一旦形成された長細状凸部がさらなる流動によって高さを低下させるが、構造は維持される。そのため、高さを変えて防眩性や滑り性を調整する手段として乾燥温度及び乾燥時間を利用できる。
【0115】
本発明では、このような比較的高い温度で適度な時間乾燥することにより、樹脂成分を溶融流動させるための充分な熱量を付与できる。そのため、溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、前記長細状凸部及び共連続相構造を容易に形成でき、かつ相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。
【0116】
硬化工程では、スピノーダル分解により形成された相分離構造は、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できる。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射など、あるいはこれらの方法の組み合わせにより行うことができる。加熱温度は、前記相分離構造を有する限り、適当な範囲、例えば、50~150℃程度から選択でき、前記相分離工程と同様の温度範囲から選択してもよい。
・・・略・・・
【0120】
[表示装置]
本発明の防眩フィルムは、ハードコート性を有し、防眩性が高い。また、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での光散乱強度を向上できる。さらに、透過像の鮮明性に優れており、表示面での文字ボケが少ない。そのため、本発明の防眩フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、有機EL表示(OLED)装置、プラズマディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に使用できる。特に、本発明の防眩フィルムは、200ppi以上(特に300ppi以上)の高精細表示装置においてもギラツキや文字ボケによって画質を損なうことがない部材として用いることが可能である。そのため、本発明の防眩フィルムは、これらの表示装置のうち、高精細表示装置として利用されることの多い装置、例えば、液晶表示装置(タッチパネル付き表示装置でもある液晶表示装置を含む)、有機EL表示装置(タッチパネル付き表示装置でもある有機EL装置を含む)に対して好ましく利用できる。
・・・略・・・
【0123】
本発明の防眩フィルムは、有機EL表示装置に特に効果的である。
・・・略・・・
【0125】
本発明の防眩フィルムが有機ELに有用な理由としては、有機ELは画素の発光強度が高い上に、画素自体が発光し、液晶のようなカラーフィルターを通過することがないため、光に指向性がなく、ギラツキ易いためであると推定できる。そのため、従来の防眩フィルムでは、ギラツキを抑制すると、防眩性が低下する。
・・・略・・・
【0127】
さらに、本発明の防眩フィルムは、防眩層が表示面から離れていても、ギラツキを抑制できるため、表示装置の傷つきを防止するためのアフターマーケット向け保護又はプロテクトフィルム(特に有機EL表示装置の保護フィルム)としても好ましく利用できる。特に、本発明の防眩フィルムは、防眩層が表示面から間隔をおいて配設されていてもギラツキを抑制できるため、表示面からの距離(表示面と防眩層との距離)が0.05mm以上(特に0.1~0.4程度)離れて使用される保護フィルムに特に有用である。」
(エ)実施例
「【0128】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた防眩フィルムを以下の項目で評価した。
【0129】
[長細状凸部のサイズ及び面積]
反射型レーザー顕微鏡写真に基づいて、1mm2当たりの長細状凸部の存在の有無を観察するとともに、共連相構造の網目の平均径について、任意の10箇所の平均値を求めた。さらに、1mm2の領域において、分岐構造を有する長細状凸部と他の凸部との長さ比を測定した。
【0130】
凸部の面積は、非接触表面・層断面形状計測システム[(株)菱化システム製「VertScan」]を用いて測定した。このシステムでは、表面形状を光干渉を用いて三次元的に計測でき、画像処理的に凸部の面積を求めることができる。
【0131】
[粘度]
B型粘度計(東京計器株製「BL型」)を用いて、JIS Z8803で準拠し、25℃の粘度を測定した。
【0132】
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【0133】
[透過像(写像)鮮明度]
光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。
【0134】
[60°グロス]
JIS K7105に準拠して、グロスメーター(堀場製作所(株)製「IG-320」)を用いて評価した。
【0135】
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準拠し、荷重750gで鉛筆硬度を測定した。
【0136】
[防眩性]
防眩性の判定は、ルーバーの無いむきだしの蛍光灯を防眩フィルムに写し、その正反射光の眩しさを目視にて以下の基準に従って評価した。
【0137】
◎:眩しさを感じない
○:眩しさを僅かに感じる
×:眩しさが感じられる。
【0138】
[ギラツキ]
表示面におけるギラツキの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。
【0139】
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
×:ギラツキが感じられる。
【0140】
[文字ボケ]
表示面における文字ボケの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。
【0141】
◎:文字ボケが感じられない
○:文字ボケが僅かに感じられる
×:文字ボケが感じられる。
【0142】
実施例1
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;(株)ダイセル製「サイクロマーP(ACA)320M」、固形分49.6重量%]5.65重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%,プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン社製「CAP-482-20」)1.2重量部、多官能アクリル系UV硬化性化合物(ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」、粘度5250mPa・s)4重量部、アクリル系UV硬化性化合物(ダイセル・サイテック(株)製「PETIA」、粘度1100mPa・s)2.77重量部、光開始剤(BASF社製「イルガキュア907」)0.53重量部をメチルエチルケトン(MEK)25重量部と1-ブタノール12.15重量部の混合溶剤に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#24を用いて厚み100μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「A4300」)上に流延した後、95℃のオーブン内で2分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約10秒間照射し、UV硬化処理した。
【0143】
反射型レーザー顕微鏡により観察したところ、コート層の表面には、図2に示すように、表面全体が共連続状相分離構造を形成していた。すなわち、1mm2当たり1つの連続する網目状の長細状凸部が形成されており、全凸部のうち、分岐構造を有する長細状凸部の割合は略100%であった。この表面構造において、共連続相構造における網目の平均径は約5μmであり、全表面の過半の領域(95%以上)で凸部が形成されていた。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001410170000013.jpg]
「【0144】
また、高精細有機ELスマートフォン上に得られたシートを貼り付けたところ、表示のギラツキは感じられなかった。また、室内の蛍光灯の映りこみがなく、防眩性にも優れており、文字ボケも感じられなかった。
・・・略・・・
【0153】
実施例及び比較例で得られた防眩フィルムの評価結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
[図:0001410170000014.jpg]
【0155】
表1の結果から明らかなように、実施例の防眩フィルムは、防眩性に優れ、ギラツキ及び文字ボケも抑制できるのに対して、比較例の防眩フィルムは、ギラツキ又は文字ボケが発生した。」
(オ)産業上の利用可能性
「【0156】
本発明の防眩フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、陰極管表示装置、有機又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に利用される防眩フィルムとして利用できる。
・・・略・・・
【0158】
特に、防眩層が硬化性樹脂前駆体を含むフィルムは、耐擦傷性にも優れる上に、極めて精細度の高い表示装置(例えば300ppi以上)において、表示面との間隔が離れていても、前記光学特性を保持できるため、液晶表示装置や有機EL表示装置のアフターマーケット向け保護フィルム(プロテクトフィルム)として特に有用である。」
イ 引用発明4
(ア) 引用例4でいう「本発明」は、「各種表示装置の表示面でのギラツキや外部光源の映りこみを防止するのに適した防眩フィルム」(【0001】)であるところ、【0142】~【0144】には、引用例4でいう「本発明」の「実施例1」が記載されている。
また、【0153】に、「実施例及び比較例で得られた防眩フィルムの評価結果を表1に示す」とされているところ、「表1」(【0154】)に記載された各「評価」項目の定義(【0128】)は、【0129】~【0141】に記載のとおりである。
(イ) 上記ア(ア)~(エ)及び上記(ア)より、引用例4には、「実施例1」「で得られた」「防眩フィルム」の発明(以下「引用発明4」という。)として、以下の発明が記載されているものと認められる。
「 側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物、固形分49.6重量%]5.65重量部、セルロースアセテートプロピオネート1.2重量部、多官能アクリル系UV硬化性化合物(粘度5250mPa・s)4重量部、アクリル系UV硬化性化合物(粘度1100mPa・s)2.77重量部、光開始剤0.53重量部をメチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.15重量部の混合溶剤に溶解し、
この溶液を、ワイヤーバー#24を用いて厚み100μmのPETフィルム上に流延した後、95℃のオーブン内で2分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させ、コート層に、紫外線を約10秒間照射し、UV硬化処理して得られた、防眩フィルムであって、
反射型レーザー顕微鏡により観察したところ、コート層の表面は、表面全体が共連続状相分離構造を形成し、すなわち、1mm2当たり1つの連続する網目状の長細状凸部が形成されており、全凸部のうち、分岐構造を有する長細状凸部の割合は略100%であり、
この表面構造において、共連続相構造における網目の平均径は約5μmであり、全表面の過半の領域(95%以上)で凸部が形成され、
全光線透過率(%)は91%、ヘイズ(%)は18%、透過像鮮明度(%)は75%であり、60°グロスは51%、鉛筆硬度は2H、防眩性は◎、ギラツキは○、文字ボケは◎であり、
上記の長細状凸部のサイズ及び面積、粘度、全光線透過率、ヘイズ、透過像鮮明度、60°グロス、鉛筆硬度、防眩性、ギラツキ、文字ボケの評価は以下によるものである、防眩フィルム
[長細状凸部のサイズ及び面積]
反射型レーザー顕微鏡写真に基づいて、1mm2当たりの長細状凸部の存在の有無を観察するとともに、共連相構造の網目の平均径について、任意の10箇所の平均値を求めた。さらに、1mm2の領域において、分岐構造を有する長細状凸部と他の凸部との長さ比を測定した。
凸部の面積は、非接触表面・層断面形状計測システム[(株)菱化システム製「VertScan」]を用いて測定した。このシステムでは、表面形状を光干渉を用いて三次元的に計測でき、画像処理的に凸部の面積を求めることができる。
[粘度]
B型粘度計(東京計器株製「BL型」)を用いて、JIS Z8803で準拠し、25℃の粘度を測定した。
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
[透過像(写像)鮮明度]
光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。
[60°グロス]
JIS K7105に準拠して、グロスメーター(堀場製作所(株)製「IG-320」)を用いて評価した。
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準拠し、荷重750gで鉛筆硬度を測定した。
[防眩性]
防眩性の判定は、ルーバーの無いむきだしの蛍光灯を防眩フィルムに写し、その正反射光の眩しさを目視にて以下の基準に従って評価した。
◎:眩しさを感じない
○:眩しさを僅かに感じる
×:眩しさが感じられる。
[ギラツキ]
表示面におけるギラツキの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
×:ギラツキが感じられる。
[文字ボケ]
表示面における文字ボケの判定は、315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に、得られた防眩フィルムを配設し、目視にて以下の基準に従って評価した。
◎:文字ボケが感じられない
○:文字ボケが僅かに感じられる
×:文字ボケが感じられる。」
(2)引用例7の記載事項
令和4年1月12日付けで特許権者に通知した取消しの理由で引用した引用例7(特開2006-106290号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載事項がある。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、各種ディスプレイ(液晶ディスプレイなど)に用いられる防眩性フィルムに関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0010】
従って、本発明の目的は、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できる防眩性フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、防眩性を有するとともに、白っぽさや白浮き(白滲み)が低減されたコントラストの高い画像を表示できる防眩層及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、大型ディスプレイであっても、黒表示の映像における白浮きを抑制でき、黒色が引き締まったコントラスト感の強い画像を表示できる防眩層及びその製造方法を提供することにある。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させてシートを製造する方法において、適当な条件で液相相分離させ、その後前記前駆体を硬化させると、特定の透過散乱強度を示す防眩層が形成できること、この防眩層(防眩性ハードコート層)と低屈折率の樹脂層(低屈折率層)とを積層すると、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できることを見出し、本発明を完成した。」
エ 防眩フィルム及び光学部材
「【0088】
[防眩性フィルム及び光学部材]
前記低反射防眩層は、防眩性が高いだけでなく光散乱性も高い。特に、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での散乱強度を大きくできる。さらに、透過像の鮮明性も高い。また、低屈折率層の表面では、外光反射を効率よく防止できる。そのため、本発明の防眩性フィルムは、光学部材等の用途に適しており、前記支持体を、種々の光学部材を形成するための透明ポリマーフィルムで構成することもできる。透明ポリマーフィルムと組み合わせて得られた防眩性フィルムは、そのまま光学部材として用いてもよく、光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせて光学部材を形成してもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、前記位相差板の少なくとも一方の面に防眩性フィルムを積層してもよく、導光板の出射面に防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。
・・・略・・・
【0090】
本発明の防眩性フィルムにおいて、防眩層の表面には、前記相分離構造に対応した微細な凹凸構造が大量に形成されている。そのため、表面反射による外景の映り込みを抑制しつつ、ギラツキも抑制でき、防眩性を高めることができる。さらにこのような防眩層の上に低屈折率層をオーバーコートするので、微細な凹凸(例えば、高低差が約1μm以下の凹凸)を覆い、その結果、表面の低屈折率化による反射率低下と相まって表示の白浮きを低減することが出来る。なお、表示の白浮きは、例えば、透明の粘着剤を介して防眩性フィルムを黒色板に貼り合わせ、目視にて評価できる。
【0091】
本発明の防眩性フィルムは、所望の視認特性を達成するため(特に、画像のシャープ性を向上させるため)、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I0)が、0.00001~0.001%の範囲に調整されている。前記光散乱強度比I30/I0は、好ましくは0.00003~0.0009%、さらに好ましくは0.00005~0.0008%(特に0.00007~0.0005%)程度である。
・・・略・・・
【0094】
画像のシャープ性には、ヘイズ値の調整も重要である。ヘイズのうち、フィルムの内部におけるヘイズ(フィルムの内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は、例えば、1%以下(0~1%)、好ましくは0~0.8%(例えば、0.01~0.8%)、さらに好ましくは0~0.5%(例えば、0.1~0.5%)程度である。内部へイズは画像のシャープ性を損なう(画像がボケる)ため、高すぎると好ましくない。内部ヘイズを制御する方法としては、粒径が0.5~2μm程度の粒子を分散させてもよいが、フィルム表面に凹凸形状を形成することにより、内部ヘイズを調整する方法が好ましい。」
(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明4を対比すると、以下のとおりである。
(ア) 上記(1)イ(イ)の引用発明4の「防眩フィルム」の形成工程からみて、引用発明4の「防眩フィルム」は、「側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」(「固形分49.6重量%」)「5.65重量部」、「セルロースアセテートプロピオネート」「1.2重量部」、「多官能アクリル系UV硬化性化合物」「4重量部」、「アクリル系UV硬化性化合物」「2.77重量部」及び「光開始剤0.53重量部」「をメチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.15重量部の混合溶剤に溶解し」、「厚み100μmのPETフィルム上に流延した後」、「溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させ」、「紫外線を」「照射し、UV硬化処理して得られた」ものであると理解できる。
(イ) 上記(ア)から、引用発明4の「厚み100μmのPETフィルム上」に「形成」された「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層は、「光開始剤」を含む、「側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」、「セルロースアセテートプロピオネート」、「多官能アクリル系UV硬化性化合物」及び「アクリル系UV硬化性化合物」の「硬化」物からなると理解できる。
ここで、引用発明4の「厚み100μmのPETフィルム」は、ヘイズが実質0%の透明なフィルムであることは、技術常識から明らかである。そうすると、引用発明4の「防眩フィルム」が示す、「ヘイズ」、「透過像鮮明度」、「60°グロス」、「防眩性」、「ギラツキ」、「文字ボケ」などの各光学特性は、「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層により主に生じていると理解できる。
(ウ) 上記(イ)より、引用発明3の、「硬化」物層に含まれる「側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」及び「セルロースアセテートプロピオネート」は、本件特許発明1の「マトリクス樹脂」に相当する。
また、上記(イ)より、引用発明3の「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層は、本件特許発明1の「防眩層」に相当する。そして、引用発明3の「厚さ約7μmのコート層」の「硬化」物層と、本件特許発明1の「防眩層」は、「マトリクス樹脂」「を含」む点において共通する。
(エ) 上記(1)イ(イ)及び上記(イ)より、引用発明4の「防眩フィルム」の「硬化」物層の「透過像鮮明度(%)は75%であ」る。また、引用発明4の「透過像鮮明度(%)」は、「光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した」ものである。
また、本件特許明細書の【0169】によれば、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」は、「写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した」ものであり、「光学櫛幅」「0.5mmとした」ものである。
そうすると、引用発明4の「透過像鮮明度」は、本件特許発明1の「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」に対応する。
(オ) 上記(1)イ(イ)及び上記(イ)より、引用発明4の「硬化」物層の「60°グロスは51%」である。また、引用発明4の「60°グロス」は、「JIS K7105に準拠して、グロスメーター(堀場製作所(株)製「IG-320」)を用いて評価した」ものである。
また、本件特許明細書の【0170】によれば、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」は、「グロスメーター((株)堀場製作所製、IG-320)を用いて、JIS K7105に準拠し、角度60°で測定した」ものである。
そうすると、引用発明4の「60°グロス」は、本件特許発明1の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」に対応する。
(カ) 防眩フィルムは、ディスプレイの最表面に装着されて使用されることは、技術常識である。引用発明4においても、実際に「315ppiの解像度の有機ELディスプレイを有するスマートフォン(サムソン電子(株)製「ギャラクシーNEXUS」)上に」、引用発明4「を配設し」、「表示面におけるギラツキの判定」を行っている。
そうすると、引用発明4の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の、「ディスプレイ表面に装着される」とされる、「防眩フィルム」に相当する。また、上記(イ)より、引用発明4の「防眩フィルム」と、本件特許発明1の「防眩フィルム」は、「防眩層を備え」る点で共通する。
イ 一致点及び相違点
(ア) 一致点
本件特許発明1と引用発明4は、次の構成で一致する。
「 ディスプレイの表面に装着される防眩フィルムであって、
マトリクス樹脂を含む防眩層を備える、防眩フィルム。」
(イ) 相違点
本件特許発明1と引用発明4は、以下の点で相違する。
(相違点4-1-1)
「防眩層」の「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度」及び「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度」が、本件特許発明1は、「20%以下となる範囲の値」及び「40%以下となる範囲の値」であるのに対して、引用発明4は、それぞれ「51%」及び「75%」である点。
(相違点4-1-2)
「防眩層」が、本件特許発明1は、「マトリクス樹脂中に分散された平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み」、「前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている」ものであるのに対して、引用発明4は、そのようなものではない点。
(相違点4-1-3)
本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値であ」るのに対して、引用発明4はそのようなものであるかどうか一応分からない点。
ウ 判断
事案に鑑みて、相違点4-1-2について検討する。
引用例4の【0078】には、「防眩層には、防眩層の光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機又は無機粒子、・・・略・・・などが含まれていてもよい。」との記載がある。
してみると、引用発明4において、「硬化」物層(「防眩層」)を、複数の有機粒子又は無機粒子を含ませた構成とすることは、引用例4が示唆する範囲のことである。ただし、含ませることのできる有機粒子又は無機粒子は、粒径の範囲が特定されたものではなく、「防眩層の光学特性を損なわない範囲」に限られる。
一方、引用例7の記載事項エには、「内部ヘイズを制御する方法としては、粒径が0.5~2μm程度の粒子を分散させてもよい」(【0094】)ことが記載されている。この記載に基づけば、防眩層に粒径が0.5μm~2μmの粒子を含ませると、防眩層の内部ヘイズに影響を与えることになるといえる。また、2μmよりも大きな粒径の粒子を含ませた場合、防眩層の表面形状に影響を与え、長細状凸部の形状を変化させてしまい、防眩層の光学特性を損なうことは明らかである。
そうすると、引用発明4において、「平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値」の微粒子を含ませて、本件特許発明1の相違点4-1-2に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たということができない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。
(4)本件特許発明3及び本件特許発明4について
本件特許発明3又は本件特許発明4と、引用発明4とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点4-1-2において相違する。
したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明できたものとはいえない。
5 理由3(実施可能要件)
(1)本件特許発明
本件特許発明1、本件特許発明3、及び、本件特許発明4は、上記3に記載のとおりのものであり、いずれも、「ギラツキ値」、「鏡面光沢度」、及び、「透過像鮮明度」が特定の範囲の値に設定されていることを必須の要件としている。
また、本件特許の明細書には、上記1に示す記載があり、上記1(6)に記載された、相分離法により形成された防眩層を有する第1実施形態、上記1(7)に記載された、微粒子分散法により形成された防眩層を有する第2実施形態、上記1(8)に記載された、転写成形法により形成された防眩層を有する第3実施形態の、3つの実施形態が記載されていることが理解できる。
そして、【0059】、【0179】(あるいは、【0065】)の記載によれば、第2実施形態と同様、第1及び第3実施形態は、いずれも、防眩層が、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含んでいてもよいものと理解できる。
そうすると、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、第1~第3の実施形態のいずれかにおいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度の記載があれば、実施可能要件を満たしているといえる。
(2)発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段
本件特許に係る発明が解決しようとする課題について、本件特許の明細書の上記記載事項(2)には、「高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩フィルムの表面の凹凸により屈折したり、防眩フィルムの表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。」(【0006】)、「ギラツキを抑制する方法としては、例えば、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすることが考えられるが、防眩フィルムの表面の凹凸を小さくすると防眩性が低下するおそれがある。」(【0007】)、「本発明は、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。」(【0008】)と記載されている。
これらの記載から、防眩フィルムをディスプレイ等の表面に装着すると発生する「ギラツキ」が、防眩層の表面の凹凸による屈折やレンズ効果により発生することが知られており、本件特許に係る発明が、防眩フィルムにおいて、ディスプレイのギラツキの抑制と共に良好な防眩性を達成することを課題としていると理解できる。
また、課題を解決するための手段について、本件特許の明細書の上記記載事項(3)には、「これらギラツキ値、鏡面光沢度、および透過像鮮明度は、例えば相分離法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、組み合わせる相分離材料の種類、または乾燥プロセスにおける組成物の加熱温度、組成物に対して吹き付ける乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整することで実現できる。また、例えば、微粒子分散法により防眩層を形成する場合、その製造工程において、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することで実現できる。また、マトリックス樹脂と微粒子との屈折率差を所定の範囲にするためには、両者に用いる材料として、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりする。」(【0012】)と記載されている。これらの記載に基づけば、「ギラツキ値」、「鏡面光沢度」、及び、「透過像鮮明度」を特定の範囲の値に設定する手段として、相分離法により防眩層を形成する場合は、相分離材料の種類、乾燥プロセスにおける熱温度、乾燥空気の風量、もしくは線速度などを調整すること、微粒子分散法により防眩層を形成する場合は、所定の屈折率差となるような材料を選択したり、微粒子の形状、個数、マトリックス樹脂中に含まれる微粒子の密度などを調整したりすることにより、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差が所定範囲となるように調整することが挙げられている。
(3)第1実施形態について
本件特許の明細書には、第1実施形態として、「防眩層3は、複数の長細状凸部、および隣接する長細状凸部間に位置する凹部により防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度とのバランスに優れたものとなっている。」(【0039】)、「第1実施形態に係る防眩層3にこのような構造が形成されることで、この防眩層3にレンズ状(海島状)の凸部が形成されることを防止することができる。よって、第1実施形態に係る防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりすることを防止し、ディスプレイ16aのギラツキを抑制することができる。」(【0040】)と記載されている。また、「長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件および処方を設定することにより作製できる。」(【0072】)、「乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短過ぎたりすると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。」(【0073】)、「乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎたりすると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、その構造は維持される。そのため、防眩層3のギラツキ値、鏡面光沢度、透過像鮮明度、およびヘイズ値が、上記した条件を満たすような範囲の値となるように設定するために、相分離材料の組合せを調整することに加えて、乾燥温度および乾燥時間を調整し長細状凸部の高さ等を調整することによって実現できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を作製できる。」(【0074】)、「相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成することができる。」(【0075】)、「ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。」(【0080】)と記載されている。
これらの記載に基づけば、【0012】に記載された、相分離法により防眩層を形成する場合について、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件や処方を設定すること、つまり、乾燥温度、乾燥時間、溶媒の蒸発温度、樹脂成分の粘性、相分離の程度を調整することにより設定することができることが示唆されており、微粒子を添加することで微粒子を含む防眩層を形成することもできることが理解できる。
また、本件特許の明細書には、第1実施形態として、「微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。」(【0061】)、「微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。」(【0062】)との記載がある。
これらの記載に基づけば、乾燥温度、乾燥時間、溶媒の蒸発温度、樹脂の粘性、相分離の程度が調整されるように、溶液中の樹脂組成物の組み合わせや重量比、或いは、調整工程、形成工程、及び硬化工程の施工条件を変化させて防眩層を形成し、形成される共連続相構造のサイズや密度等を最適化することにより、ギラツキ値と共に、鏡面光沢度、及び、透過像鮮明度が所望の範囲内の値となるように調整することを、当業者は過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。
(4)第2実施形態について
本件特許の明細書には、第2実施形態について、「第2実施形態に係る防眩フィルム1によれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」(【0104】)と記載されている。防眩層の表面の凸部を形成する微粒子の屈折率を調整することにより、屈折や、レンズ効果が生じることを抑制し、防眩性を有しつつ、ディスレイのギラツキが発生するのを低下させるものと理解できる。
また、本件特許の明細書には、「防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層に形成できる。」(【0081】)、「第2実施形態に係る防眩層3は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。複数の微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球形状や楕円体形状に形成されていてもよい。」、「第2実施形態に係る防眩層3には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。」(【0083】)、「このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層3の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。」(【0087】)と記載されている。
これらの記載に基づけば、【0012】に記載された、マトリックス樹脂の屈折率とマトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子の屈折率との差を所定範囲となるように調整して、微粒子分散法により防眩層を形成することについて、微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことや、微粒子の形状を変更すること、凝集状態を調整することにより、鏡面光沢度、透過像鮮明度、及び、ヘイズ値が所望の範囲内の値となるように調整することを、当業者は過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。
したがって、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4について、発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていたといえる。
特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「当業者は、本件明細書の実施例6の防眩フィルムを再現することが困難である。なぜなら、本件明細書の実施例6は、微粒子の凝集及び配列に影響を与える乾燥条件の記載が不足しているためである。・・・オーブンの種類及び設定等により、熱の対流の仕方が異なったり、塗膜にあたる熱風の風速が異なったりするため、80℃のオーブンで1分放置した後の微粒子の凝集及び配列の程度は千差万別であるといえる。したがって、本件明細書の記載を元に、当業者が実施例6の光学特性を満たす防眩フィルムを再現することは、極めて困難といえる。」(第3~4頁)と主張している。
しかし、仮に、オーブンの特性の違いによって、同一温度及び同一時間で乾燥を行った場合に、実施例6と同じ光学特性を有する防眩フィルムが再現できないとしても、オーブンの特性に応じて乾燥条件を変更することや、明細書の記載に基づいて、微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うこと等により、光学特性を調整することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できたといえる。
そして、本件特許発明1は、「ギラツキ値が10以下となる範囲の値」、「鏡面光沢度が20%以下となる範囲の値」、「透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値」であって、分散した前記複数の微粒子の凝集により、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されていれば、その要件を満たすものである。仮に、実施例6と同じ光学特性を満たす防眩フィルムを再現できないとしても、本件特許発明1の要件を満たす防眩フィルムを得ることが困難であるということはできない。
(5)第3実施形態について
本件特許の明細書には、第3実施形態について、「第3実施形態に係る防眩フィルム1は、一例として、基材フィルム2上に硬化性樹脂からなるコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。」(【0106】)、「ロール24の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒子径を調整することで、防眩フィルム1のコート層に形成される凹凸形状を調整できる。」(【0111】)と記載されている。また、ディスプレイのギラツキを抑制し易くすると共に防眩性を得易くすることができる凹凸形状として、第1実施形態の共連続相構造も挙げられている。
これらの記載に基づけば、防眩層の表面の凹凸形状による屈折やレンズ効果の発生が減少するように、その凹凸形状を調整することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できたものといえる。
(6)まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていたといえる。
6 理由4(サポート要件)
(1)発明が解決しようとする課題
本件特許の【0008】の記載に基づけば、本件特許に係る発明が解決しよとする課題は、「本発明は、ディスプレイのギラツキを適切に抑制させると共に良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供すること」にあるといえる。
(2)本件特許発明1、3、4
本件特許発明1、3、4は、以下の構成要件を備えている。
「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値」、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が20%以下となる範囲の値」、及び、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値」
(3)課題を解決できると認識できるか
本件特許の明細書には、上記1(3)に、「透過鮮明度は防眩性の良否に関わる値であり、透過鮮明度が小さくなればなるほど防眩性が高くなるという関係がある。」(【0011】)、「防眩層は、透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値となるように設定されている。このため、防眩層は、防眩性の良否に関わる別の指標となるヘイズ値の大きさに関わらず高い防眩性を得ることができる。」(【0014】)、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が40%以下となる範囲の値に設定されるため外光の映り込みを抑制することができる。」(【0015】)と記載されている。
これらの記載に基づけば、「60度鏡面光沢で測定された鏡面光沢度が20%以下となる範囲の値」、及び、「光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が40%以下となる範囲の値」に設定することで、良好な防眩性を有する防眩フィルムを提供することができると理解する。
そして、上記5において検討したとおり、これらのパラメータを調整する手法も、本件特許の明細書に開示されている。
そうすると、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるということができる。
特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「鏡面光沢度、像鮮明度、輝度分布の標準偏差の値により、防眩フィルムとしての物の構造、構成が示されているとはいえない。」(第6頁)と主張している。
しかし、上記のとおり、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、その構成要件から、発明が解決しようとする課題を解決できるものである。ギラツキを抑制できる防眩層として、防眩層の表面の凹凸を縮小すること等、様々な形状、構成の防眩層が考えられていたところ、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は、客観的な指標によって区別される防眩層を具備することによって課題を解決するものであり、課題解決に特定の物の構造、構成を要するものとは理解できない。
したがって、防眩フィルムとしての物の構造、構成が示されていないとしても、サポート要件を満たさないとはいえない。
7 理由5(明確性要件)
(1)ギラツキ値
本件特許発明1は、「画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差の値に基づき規定されるギラツキ値が10以下となる範囲の値」であることを発明特定事項としている。本件特許発明3、4についても同様である。
(2)ギラツキ評価
本件特許の明細書には、ギラツキ値を求める「ギラツキ評価方法」として、上記1(8)に、「撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像される防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの画素のサイズが所定値となるように調整する(調整ステップ)。」(【0130】)、「調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。」(【0131】)、「撮像装置12と表示装置16との間の相対的な距離は、実際の表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aとの間の相対的な距離)を考慮して設定されることが望ましい。」(【0132】)、「調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する(設定ステップ)。」(【0133】)、「調整ステップを行った後、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する(撮像ステップ)。」(【0134】)、「撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データから、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める(演算ステップ)。この演算ステップでは、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差を求めることで数値化できる。」(【0135】)と記載されている。
ここで、上記評価方法において、撮像装置12により撮像される「輝度のばらつき」及び輝度のばらつきから求められる「標準偏差」は、技術常識から、「撮像装置12」と「ディスプレイ16a」との距離(撮像距離)や「撮像装置12」のレンズのFナンバー等の撮像条件に依存する。
(3)Fナンバー
本件特許発明における撮像は、撮像された画像データを用いて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの測定エリアの画像における輝度のばらつきを求める演算ステップを行うためのものである(【0135】)から、当業者は、なるべく被写体のコントラストを忠実に再現できる条件で撮影するものと解される。そうすると、当業者は、コントラストのピークがあるFナンバーに絞りを設定することになる。
特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「乙4号証の参考図1には、F8を超えるFナンバーの分布図が、F8の分布図と略同一の形状となることが示されていない。このため、乙4号証により、Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差値が一定となる、ということはできない。」、「甲第6号証の解説図6の測定装置Bでは、Fナンバーの値を大きくしてもぎらつきコントラストが収束していない。よって、Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差値が一定となる、ということはできない。」(第7頁)と主張している。
しかし、当業者は、上記のとおり、コントラストのピークがあるFナンバーに絞りを設定すると理解される。Fナンバーが大きくなると輝度分布の標準偏差が一定とならないとしても、Fナンバーを特定する上で必要な作業は、Fナンバーを変えながら数回の撮影を行ってコントラストの変化を確認し、最もコントラストが高くなるFナンバーを求めることだけであり、そのことに特段の困難性があるとは認められないから、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。
(4)撮影距離
本件特許の明細書には、「調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12と、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aとの間の相対的な距離を調整し、撮像装置12によって撮像された画像データにおいて、防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aに表示された画像の画素の輝線がない、或いは、輝線があったとしてもギラツキの評価に影響を与えない程度に調整する。」(【0131】)と記載されている。当該記載に基づけば、当業者は、輝度の分布を把握するのに十分な解像度が得られる程度に撮影距離を短くすることを前提としつつ、ギラツキの評価に影響を与えるほど輝線が映り込まない程度の距離を保持すべきと理解する。
特許異議申立人は、令和4年5月18日付けの意見書において、「特許権者の主張は、どのような技術常識に基づくのかが不明であり、主張の根拠が不足しているため、妥当ではない。」(第6頁)、「相対距離の影響が低減することに関して、特許権者は何ら根拠を示していない。」(第7頁)と主張している。
しかし、上記のとおり、明細書の記載に基づけば、当業者は、輝度の分布を把握するのに十分な解像度が得られる程度に撮影距離を短くすることを前提としつつ、ギラツキの評価に影響を与えるほど輝線が映り込まない程度の距離を保持すべきと理解する。そうすると、明細書の記載に従った方法により調整すれば、被写体毎に自ずと撮影距離は定まるのであり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、撮像装置12により撮像される「輝度分布」及び輝度分布から求められる「標準偏差」は、「撮像装置12」と「ディスプレイ16a」との距離(撮像距離)や、「撮像装置12」のレンズのFナンバー等の撮像条件に依存するとしても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできないから、本件特許発明1、本件特許発明3及び本件特許発明4は明確である。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立人が主張する申立ての理由、当合議体が令和3年6月10日付け、及び、令和4年1月12日付けで、特許権者に通知した取消しの理由によっては、請求項1、3及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700210