特許異議申立
2021-700373
樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法、及び樹脂ビーズを用いた製品
- 審判番号
- 2021-700373
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-036983
- 登録番号
- 6779400
- 請求日
- 2021年04月23日
- 審決日
- 2022年09月12日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日精化工業株式会社
- 【権利者代理人】近藤 利英子
- 【権利者代理人】菅野 重慶
- 【権利者代理人】竹山 圭太
- 【権利者代理人】岡田 薫
- 【異議申立人】根本 未果
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 馬場 亮人
- 審判官 岡崎 美穂
- 分類
- P1652.161-YAA(A61K) / P1652.537-YAA(A61K) / P1652.121-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6779400号発明「樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法、及び樹脂ビーズを用いた製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6779400号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8、18〕、〔9~17〕について訂正することを認める。
特許第6779400号の請求項1、4~8、18に係る特許を維持する。
特許第6779400号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6779400号の請求項1~18に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年3月4日に出願され、同年10月15日にその特許権の設定登録がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行されたものである。その後、本件特許について、令和3年4月23日に、特許異議申立人 根本 未果(以下「申立人」という。)により、請求項1~8、18に係る特許について特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は以下のとおりである。
令和3年 8月16日付け:取消理由通知
同年10月18日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月26日 :意見書の提出(申立人)
令和4年 3月25日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 5月27日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
なお、令和4年6月13日付けで申立人に訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、申立人から指定した期間内に意見書の提出はなかった。
また、令和4年5月27日の訂正請求により、先の令和3年10月18日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年5月27日提出の訂正請求書により特許権者が請求している訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1~12のとおりであり、下線部は訂正箇所を示す。また、本件訂正は、訂正前の請求項1を直接的又間接的に引用する訂正前の請求項2~18を含む一群の請求項1~18についてされたものであり、さらに、訂正が認められた場合には、訂正後の請求項9~17については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められているものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり」と記載されているのを、「前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートであり」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び18も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「アセチル基の含有率が」と記載されているのを、「前記セルロース誘導体のアセチル基の含有率が」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び18も同様に訂正する)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「プロピオニル基の含有率が」と記載されているのを、「前記セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び18も同様に訂正する)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズ」と記載されているのを、「プロピオニル基の含有率が、10質量%以上であり、中実度が、70~99体積%である樹脂ビーズ」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び18も同様に訂正する)。
(5) 訂正事項5
訂正事項1に伴い、特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(6) 訂正事項6
訂正事項4に伴い、特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(7) 訂正事項7
訂正事項5及び訂正事項6に伴い、特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」に訂正する。
(8) 訂正事項8
訂正事項5及び訂正事項6に伴い、特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1又は4に記載の」に訂正する。
(9) 訂正事項9
訂正事項5及び訂正事項6に伴い、特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1及び4~6のいずれか一項」に訂正する。
(10) 訂正事項10
訂正事項5及び訂正事項6に伴い、特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1及び4~7のいずれか一項」に訂正する。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法であって」と記載されているのを、他の請求項を引用しない形式として、訂正前の請求項1の記載を書き下して記載し、「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり、体積平均粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、80~100%であり、アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズの製造方法であって」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~17も同様に訂正する)。
(12) 訂正事項12
訂正事項5及び訂正事項6に伴い、特許請求の範囲の請求項18に「請求項1~8のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1及び4~8のいずれか一項」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1のセルロース誘導体の種類を訂正前の請求項2に基づいてセルロースアセテートプロピオネートに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1において限定したセルロースアセテートプロピオネートは、訂正前の請求項1にも、訂正前の請求項2にも記載されていたものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、それぞれ、「アセチル基の含有率」、「プロピオニル基の含有率」を、「セルロース誘導体のアセチル基の含有率」、「セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率」として、各基の含有率の基準がセルロース誘導体であることを明らかにしたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、「アセチル基含有率が所定の範囲内のセルロース誘導体」及び「プロピオニル基含有率が所定の範囲内のセルロース誘導体」が、それぞれ願書に添付した明細書の段落【0025】、【0028】に記載されているから、訂正事項2、3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項2、3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項4について
訂正事項4は、樹脂ビーズについて、「中実度が、70~99体積%であ」るとの事項を訂正前の請求項1に付加してさらに限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は、訂正前の請求項3の「中実度が、70~100体積%である」との記載及び明細書の段落【0029】の「樹脂ビーズの中実度は、・・・80~99体積%であることが特に好ましい・・・」との記載があるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、訂正事項1又は4に伴い、請求項2、3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5、6は、請求項の削除に係るものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5) 訂正事項7~10、12について
訂正事項7~10、12は、訂正前の請求項4、5、7、8、18において、訂正前の請求項2、3を引用していたところ、訂正事項5、6の訂正前の請求項2、3の削除に伴って、引用する請求項からこれらを除外したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7~10、12は、引用する請求項を一部削除しただけであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6) 訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項9において、樹脂ビーズの製造方法に関し、該樹脂ビーズについて訂正前の請求項1~8のいずれか一項を引用していたところ、他の請求項の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1の記載のみを書き下して記載して、独立形式の請求項とするために訂正したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、訂正前の請求項1~8を引用する形式から、実質、請求項1のみを引用する形式として書き下して記載しているから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、訂正事項11は、引用していた訂正前の請求項1の記載内容を書き下して記載したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7) 独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~8、18に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~8、18については、特許法第第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
また、請求項9に係る訂正については、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするだけでなく、訂正前の請求項1のみを引用する態様に限定し、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあるから、訂正後の請求項9及びそれを引用する請求項10~17に係る特許について、独立特許要件について検討する。
訂正前の請求項9に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、訂正後の請求項9が、訂正前の請求項1のみを引用する態様に限定して独立請求項としたことにより、新たな拒絶理由が生じるものではなく、また、異議申立書とともに提出された証拠をみても、訂正後の請求項9に係る製造方法について記載ないし示唆はないから、請求項9に係る発明については、特許を取り消すべき理由を発見しない。請求項9を直接又は間接的に引用する請求項10~17に係る発明についても同様である。
よって、訂正事項9は、特許法第第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5~7項の規定に適合する。
また、訂正が認められた場合に、請求項9~17については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがされているので、これを認める。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8、18〕、〔9~17〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~18に係る発明(以下、請求項の番号順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は本件訂正による訂正箇所を示す。
「【請求項1】
セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートであり、
体積平均粒子径が、50μm以下であり、
真球度が、0.7~1.0であり、
表面平滑度が、80~100%であり、
前記セルロース誘導体のアセチル基の含有率が、15質量%以下であり、
前記セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が、10質量%以上であり、
中実度が、70~99体積%である樹脂ビーズ。
【請求項2】
(削 除)
【請求項3】
(削 除)
【請求項4】
前記樹脂ビーズが、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有する請求項1に記載の樹脂ビーズ。
【請求項5】
前記樹脂ビーズが、顔料と、界面活性剤及び分散剤及び高分子分散剤の少なくともいずれかと、を含有する請求項1又は4に記載の樹脂ビーズ。
【請求項6】
前記顔料が、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理顔料である請求項4又は5に記載の樹脂ビーズ。
【請求項7】
前記樹脂ビーズが、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかを含有する請求項1及び4~6のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項8】
前記樹脂ビーズが、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、及びアミノ酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理ビーズである請求項1及び4~7のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項9】
セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり、体積平均粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、80~100%であり、アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズの製造方法であって、
前記セルロース誘導体及び前記セルロース誘導体を溶解する、25℃における水100gに対する溶解度が0.1~50.0gである有機溶剤を含有する油相と、分散安定化剤を含有する水相と、を混合して、前記セルロース誘導体及び前記有機溶剤を含有する油滴を含む懸濁液を調製する工程と、
前記懸濁液に水を添加して前記油滴を収縮させる工程と、
を有する樹脂ビーズの製造方法。
【請求項10】
前記懸濁液に30分以上かけて前記水を添加する請求項9に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項11】
前記懸濁液に添加する前記水の液量が、前記懸濁液の液量に対して、質量基準で0.5倍以上である請求項9又は10に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項12】
前記水相が、第2の有機溶剤をさらに含有する請求項9~11のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項13】
前記水相の液量が、前記油相の液量に対して、質量基準で3.0倍以下である請求項9~12のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項14】
前記有機溶剤が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール類、グリコール類、エーテル系溶剤、ハロゲン化アルキル、及びニトロ化アルキルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項9~13のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項15】
前記有機溶剤の液量が、前記セルロース誘導体の量に対して、質量基準で2.0倍以上である請求項9~14のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項16】
前記分散安定化剤が、水溶性高分子である請求項9~15のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項17】
前記水相中の前記分散安定化剤の含有量が、30質量%以下である請求項9~16のいずれか一項に記載の樹脂ビーズの製造方法。
【請求項18】
樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品であって、
前記樹脂ビーズが、請求項1及び4~8のいずれか一項に記載の樹脂ビーズである製品。」
第4 当審において通知した令和4年3月25日付けの取消理由(決定の予告)の概要
「1.(拡大先願) 本件特許の請求項1、18に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」
「 <引用文献等一覧>
1.特願2019-54171号(特開2020-152851号)(甲第1号証)
2.特開2018-127579号公報
3.固体比重測定方法 JIS Z 8807-1976、日本規格協会編「JISハンドブック 31 化学分析 1997」、1997年4月20日発行、751~755頁(令和3年11月26日提出の申立人の意見書とともに提出された参考資料1)
4.Technical Data Sheet「EastmanTM Cellulose Acetate Propionate CAP-482-0.5」、EASTMAN 社、
Eastman社のホームページの<https://www.eastman.com/Pages/ProductHome.aspx?product=71001221>におけるTechnical Data Sheetのリンクから得られたPDFファイルの印刷物
(PDFファイル:<https://productcatalog.eastman.com/tds/ProdDatasheet.aspx?product=71001221&pn=Cellulose+Acetate+Propionate+-+CAP-482-0.5#_ga=2.4514805.798103894.1646870633-214583039.1646870633>)、(印刷日:2021年11月18日)(令和3年11月26日提出の申立人の意見書とともに提出された参考資料2)」
第5 当審において通知した令和3年8月16日付け取消理由の概要
「1.(拡大先願) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3.(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」
「2 理由1(拡大先願)について
・請求項 1~3、18
・引用文献等 1」
「3 理由2(明確性)について
・請求項 1~8、18」
「4 理由3(サポート要件)について
・請求項 1、3~8、18」
「 <引用文献等一覧>
1.特願2019-54171号(特開2020-152851号)(甲第1号証)
2.特開2018-127579号公報」
第6 取消理由についての当審の判断
当審は、令和4年3月25日付けの取消理由(決定の予告)及び令和3年8月16日付けの取消理由は、いずれも理由がないと判断する。
以下、詳述する。
1 令和4年3月25日付けの取消理由(決定の予告)について
(1) 先願1の明細書等に記載された事項
引用文献等1(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「先願1の明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア1 「【請求項1】
炭素数が2以上のアルコキシ基、又は炭素数が3以上のアシル基を有するセルロース誘導体粒子であって、
前記セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が70%以上100%以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、
前記セルロース誘導体の総置換度が0.7以上3以下である、セルロース誘導体粒子。
【請求項2】
前記セルロース誘導体の総置換度が2.0以上2.6未満である、請求項1に記載のセルロース誘導体粒子。
【請求項3】
前記アシル基の炭素数が3以上18以下である、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体粒子。
【請求項5】
真比重が1.04以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のセルロース誘導体粒子を含有する、化粧品組成物。」(特許請求の範囲 請求項1~3、5、8)
イ1 「【0001】
本発明は、セルロース誘導体粒子、化粧品組成物及びセルロース誘導体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用途に応じた様々な高分子の微粒子が提案されてきた。例えば、化粧品に含有される微粒子としてもその目的は様々である。化粧品に微粒子を含有する目的は、化粧品ののびを向上する、触感に変化を与える、シワぼかし効果を付与する、またファンデーションなどの滑り性を向上すること等である。
【0003】
特に真球度が高い微粒子は、触感に優れ、また、その物性や形状によって光散乱(ソフトフォーカス)効果が得られる。そして、このような微粒子をファンデーションなどに用いた場合には、肌の凹凸を埋めて滑らかにし、光を様々な方向に散乱させることでしわなどを目立ちにくくする(ソフトフォーカス)効果が期待できる。
【0004】
このような化粧品の目的及び効果のため、化粧品に配合する微粒子は、粒度分布が狭く、真球度が高い微粒子であることが必要とされ、このような微粒子として、ナイロン12などのポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレン(PE)等の合成ポリマーからなる微粒子が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの合成ポリマーの内、PP及びPE等からなる微粒子は、比重が1以下と軽く、粒子径もあまりに小さすぎることから、水に浮きやすく、排水処理施設では除去できない場合があり、そのまま川やさらに川を通して海に流れ込むことがある。このため海洋等がこれらの合成ポリマーからなる微粒子で汚染されるという問題がある。さらに、合成ポリマーの中でもPSからなる微粒子は、主な可塑剤としてジオクチルフタレートのようなフタル酸エステル系可塑剤を含有している。フタル酸エステル系可塑剤には環境ホルモンの疑いがあるものもあり、海洋に流出するのは好ましくない。
【0006】
さらに、これらの合成ポリマーからなる微粒子は、環境中の微量の化学汚染物質を吸着する性質があるため、その化学汚染物質を吸着した微粒子をプランクトンや魚が飲み込むことで、人体へも悪影響を及ぼす可能性が生じる等、様々な影響を与えることが懸念されている。
【0007】
このような懸念から、多様な用途に用いられている合成ポリマーの微粒子を、他の粒子に代替しようとする試みがなされている。
【0008】
セルロース又はセルロース誘導体は、食料や飼料と競合しない、木材や綿花等の天然素材から得ることができる点で優れる。このため、合成ポリマーの微粒子を、天然ポリマーであるセルロース又は半合成ポリマーであるセルロース誘導体の微粒子に代替することができれば有益である。しかしながら、合成ポリマーの微粒子の製造方法を適用できるポリマーは限定され、セルロース又はセルロース誘導体の微粒子の製造に適用することは困難である。
【0009】
特許文献1には、多糖合成から多糖エステル生成物を形成する工程であって、前記多糖エステル生成物が多糖エステル及び溶媒を含む工程;前記多糖エステル生成物を希釈して、それによって多糖エステルドープをもたらす工程;及び前記多糖エステルドープから複数の多糖エステルミクロスフェアを形成する工程;を含む方法が記載され、多糖エステルミクロスフェアを含むことができる物品として化粧品組成物が挙げられている。
【0010】
特許文献2には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した体積平均粒径D50が、72μm以上100μm以下であり、重合度が131以上350以下であり、置換度が2.1以上2.6以下である、セルロースアシレートについて記載され、また、その製造方法について、硫酸の存在下でセルロースをアシル化するアシル化工程と、極性溶媒中、酢酸の存在下で前記アシル化したセルロースを脱アシル化する脱アシル化工程と、を有するセルロースアシレートの製造方法であることが好ましいと記載されている。
【0011】
特許文献3には、熱可塑性樹脂などの樹脂成分(A)と、水溶性助剤成分(B)とを混練して分散体を調製し、この分散体から助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体(例えば、多孔体、球状粒子)を製造すること、また、樹脂成分(A)として、セルロースアセテート等のセルロース誘導体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2016-500129号公報
【特許文献2】特許6187653号公報
【特許文献3】特開2004-051942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の多糖エステルミクロスフェアは、粒子径が大きく、粒径分布もブロードな多孔質の粒子であり、化粧品等に配合する合成ポリマーの微粒子の代替としては十分ではない。また、特許文献2に記載される製造方法により得られるセルロースアシレートも不定形で多孔質の粒子である。さらに、特許文献3に記載される製造方法により得られる粒子状の成形体も、真球度が低く、略球状という程度の粒子である。そのため、従来の微粒子は、触感に劣る。
【0014】
本発明は、セルロース誘導体の半合成ポリマーを含有し、触感に優れた微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一は、炭素数が2以上のアルコキシ基、又は炭素数が3以上のアシル基を有するセルロース誘導体粒子であって、前記セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が70%以上100%以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、前記セルロース誘導体の総置換度が0.7以上3以下である、セルロース誘導体粒子に関する。」
ウ1 「【0035】
また、セルロース誘導体粒子は、炭素数が3以上のアシル基及び炭素数が2のアシル基(アセチル基)の両方を有してよい。
【0036】
炭素数が3以上のアシル基としては、例えば、プロピオニル基、ブチリル基、ぺンタノィル(バレリル)基、へキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル(ミリストイル)基、ペンタデカノイル基、へキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、及びオクタデカノイル(ステアロイル)基等が挙げられる。
【0037】
本開示のセルロース誘導体粒子の平均粒子径は、80nm以上100μm以下であるところ、その平均粒子径は、100nm以上であってよく、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、4μm以上であってよい。また、80μm以下であってよく、40μm以下であってよく、20μm以下であってよく、14μm以下であってよい。平均粒子径が大きすぎると、その触感に劣る他、光散乱(ソフトフォーカス)効果が低減する。また、平均粒子径が小さすぎると、製造が困難となる。なお、触感としては、セルロース誘導体粒子に直接触れる場合の他、例えば、化粧品組成物に配合した場合の肌触りや触感が挙げられる。
【0038】
平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。具体的には、以下のとおりである。まず、100ppm濃度のセルロース誘導体粒子を、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とすることにより、試料を調製する。その後、レーザー回折法(株式会社堀場製作所「レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960」、超音波処理15分、屈折率(1.500、媒体(水;1.333))により、体積頻度粒度分布を測定することにより平均粒子径を測定することができる。なお、ここでいう平均粒子径とは、この粒度分布における散乱強度の積算50%に対応する粒子径の値のことをいう。」
エ1 「【0047】
セルロース誘導体の総置換度は、以下の方法により測定できる。まず、セルロース誘導体の総置換度とは、セルロース誘導体のグルコース環の2,3,6位の各置換度の和であり、セルロース誘導体のグルコース環の2,3,6位の各置換度は、手塚(Tezuka, Carbonydr. Res. 273, 83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、セルロース誘導体の遊離水酸基をピリジン中でカルボン酸無水物によりアシル化する。ここで使用するカルボン酸無水物の種類は分析目的に応じて選択すべきであり、例えば、セルロースアセテートプロピオネートのプロピオニル置換度を分析する場合は無水酢酸が良く、アセチル置換度を分析する場合は無水プロピオン酸がよい。アシル化反応の溶媒及び酸無水物は分析対象のセルロース誘導体に応じて適宜選択すればよい。
【0048】
アシル化して得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C-NMRスペクトルを測定する。置換基がアセチル基、プロピオニル基、またはブチリル基である場合を例に挙げれば、アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で、ブチリル基の炭素シグナルは、171ppmから173ppmの領域に同様に高磁場側から2位、3位、6位の順序で現れる。他の例を挙げれば、プロピオニル基を有するセルロース誘導体か、または、プロピオニル基を有しないセルロース誘導体を分析目的で無水プロピオン酸で処理し、プロピオニル置換度を分析する場合は、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。
【0049】
手塚の方法やそれに準じる方法で無水カルボン酸で処理したセルロース誘導体の総置換度は3.0なので、セルロース誘導体がもともと有するアシル基のカルボニル炭素シグナルと、無水カルボン酸処理で導入したアシル基のカルボニルシグナルの面積の総和を3.0と規格化し、それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比(各シグナルの面積比)を求めれば、元のセルロース誘導体におけるグルコース環の2,3,6位の各アシル置換度を求めることができる。なお、言うまでもなく、この方法で分析できるアシル基を含む置換基は、分析目的の処理に用いる無水カルボン酸に対応しない置換基のみである。」
オ1 「【0058】
本開示のセルロース誘導体粒子は、後述の製造方法により製造することができる。
【0059】
本開示のセルロース誘導体粒子は、触感に優れることから、例えば、化粧品組成物に好適に用いることができる。また、高い真球度を有することから、化粧品組成物に配合すれば、肌の凹凸を埋めて滑らかにし、光を様々な方向に散乱させることでしわなどを目立ちにくくする(ソフトフォーカス)効果が得られる。
【0060】
化粧品組成物としては、リキッドファンデーション及びパウダーファンデーション等のファンデーション;コンシーラー;日焼け止め;化粧下地;口紅及び口紅用下地;ボディパウダー、固形白粉、及びフェイスパウダー等のおしろい:固形粉末アイシャドー;皺隠しクリーム;並びにスキンケアローション等の主に化粧を目的とした皮膚及び毛外用剤が含まれ、その剤型は限定されない。剤型としては、水溶液、乳液、懸濁液等の液剤;ゲル及びクリーム等の半固形剤;粉末、顆粒及び固形等の固形剤のいずれあってもよい。また、クリームや乳液等のエマルション剤型;口紅等のオイルゲル剤型;ファンデーション等のパウダー剤型;及びヘアスタイリング剤等のエアゾール剤型等であってもよい。
【0061】
本開示のセルロース誘導体粒子を含有する化粧品組成物、特に、リキッドファンデーションは、肌への伸び、シミやソバカスのカバー力、及び滑り性にも優れる。」
カ1 「【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0089】
(実施例A-1)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製:CAP-482-0.5)100重量部と可塑剤としてトリアセチン10重量部とを液添装置付き二軸押出機(株式会社池貝製PCM30、シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、溶融混練し、押し出してペレット化し、混練物とした。
【0090】
得られた混錬物のペレット30重量部と、水溶性高分子としてポリビニルアルコール(日本合成化学製:融点190℃、けん化度99.1%)70重量部とを乾燥状態でブレンドした後、二軸押出機(株式会社池貝製PCM30、シリンダー温度220℃、ダイス温度220℃)に供給し、押出して分散体を形成した。
【0091】
得られた分散体が5重量%(分散体の重量/(分散体の重量+純水の重量)×100)以下となるよう純水(溶媒)と合せ、スリーワンモータ(新東科学社製BL-3000)を用いて、温度80℃、回転数100rpmで3時間攪拌した。攪拌後の溶液をろ紙(ADVANTEC製No.5A)でろ別し、ろ物を取り出した。取り出したろ物を再び純水を用いて分散体が5重量%以下となるよう調製し、さらに温度80℃、回転数100rpmで3時間攪拌、ろ別し、ろ物を取り出す作業を3回以上繰り返し、セルロース誘導体粒子(セルロースアセテートプロピオネート粒子)を得た。得られたセルロース誘導体粒子の置換度は1H-NMRを測定することにより、総置換度は2.58(アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.40)であることを確認した。
【0092】
得られたセルロース誘導体粒子の平均粒子径、粒子径変動係数、真球度、表面平滑度、嵩比重、可塑剤含有量、真比重、及び触感をそれぞれ測定及び評価した。結果は表1に示す。尚、各物性の測定及び評価は下記の方法で行った。
【0093】
<平均粒子径及び粒子径変動係数>
平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定した。まず、純水を用いサンプルを100ppm程度の濃度に調整し、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とした。その後、レーザー回折法(株式会社堀場製作所「レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960」超音波処理15分、屈折率(1.500、媒体(水;1.333))により、体積頻度粒度分布を求め、平均粒子径を測定した。ここでいう平均粒子径(nm及びμm等)は、体積頻度粒度分布における散乱強度の積算50%に対応する粒子径の値とした。また、粒子径変動係数(%)は、粒子径の標準偏差/平均粒子径×100によって算出した。
【0094】
<真球度>
走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した粒子の画像を用いて、ランダムに選択した30個の粒子の長径と短径を測定し、各粒子の短径/長径比を求め、その短径/長径比の平均値を真球度とした。
【0095】
<表面平滑度>
粒子の2500~5000倍の走査型電子顕微鏡写真を撮り(セルロース誘導体粒子の顕微鏡写真の一例は、図1参照)、画像処理装置Winroof(三谷商事社製)を用いて、画像を二値化した(図1の顕微鏡写真を二値化した画像は図2参照)。粒子1個の中心及び/又は中心付近を含む、粒子よりも小さい任意の領域(例えば、図2を参照すれば、n1及びn2で示す領域)であってよい。また、その領域の大きさは、粒子径が15μmのとき5μm四方であってよい。当該領域における凹凸の凹に当たる部分(陰の部分)の面積率を算出し、以下の式によりその粒子1個の表面平滑度(%)を算出した。粒子1個の表面平滑度(%)=(1-凹の面積率)×100凹の面積率=前記任意の領域における凹部の面積/前記任意の領域表面平滑度(%)はランダムに選択した10個の粒子サンプル、つまりn1~10まで表面平滑度の平均値とした。この数値が高いほど表面平滑度は高くなる。
・・・
【0098】
<真比重>
JIS Z 8807-1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体:水)により測定した。
【0099】
<触感>
粒子の触感について、20人のパネルテストにより官能評価を行なった。粒子に触れさせ、なめらかさ及びしっとり感の両方を総合的に、5点満点として、以下の基準により評価した。20人の平均点を算出した。
良い:5、やや良い:4、普通:3、やや悪い:2、悪い:1
【0100】
(実施例A-2)
可塑剤を添加せず、得られた混錬物のペレットを20重量部、ポリビニルアルコールを80重量部に変更した以外は、実施例A-1と同様にして、セルロース誘導体粒子(セルロースアセテートプロピオネート粒子)を得た。得られたセルロース誘導体粒子の置換度は1H-NMRを測定することにより、総置換度は2.58(アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.40)であることを確認した。
【0101】
(実施例A-3)
セルロースアセテートプロピオネートをセルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル製:CAB-171-15)に変更した以外は、実施例A-2と同様にして、セルロース誘導体粒子(セルロースアセテートブチレート粒子)を得た。得られたセルロース誘導体粒子の置換度は1H-NMRを測定することにより、総置換度は3.11(アセチル置換度2.04、ブチリル置換度0.71)であることを確認した。
【0102】
(実施例A-4)
セルロースアセテートプロピオネートを下記合成方法で得られたセルロースステアレート(C18)に変更した以外は、実施例A-2と同様にして、セルロースステアレート粒子を得た。
・・・
【0116】
【表1】
[図:0001391987000001.jpg]
【0117】
表1に示すとおり、実施例のセルロース誘導体粒子は、いずれも半合成ポリマーであり、優れた触感を有する。
【0118】
(実施例B-1)
リキッドファンデーションの調製 表2に示す各成分を混合後、良く攪拌し、容器に充填してリキッドファンデーションを調製した。得られたリキッドファンデーションの各物性を下記の方法で評価した。結果は表3に示す。
【表2】
[図:0001391987000002.jpg]
【0119】
<肌への伸び>
触感測定装置(静動摩擦測定機 TL201Ts)を用い、リキッドファンデーション0.2gの1回走行時の伸びの長さを測定した。
【0120】
<カバー力>
リキッドファンデーションを少量皮膚に塗布し、指で20回塗り広げることでシミ、ソバカスの隠れる度合いを下記の基準で目視で評価した。
◎・・・十分カバーされている
〇・・・カバーされている
△・・・カバーされているが不十分
×・・・カバー力が無い
【0121】
<均一性>
リキッドファンデーションを少量皮膚に塗布し、指で20回塗り広げることで均一性を下記の基準で目視で評価した。
◎・・・一様に塗り広げられている
〇・・・均一性がある
△・・・ややまだらの部分がある
×・・・まだらになっている
【0122】
<滑り性>
リキッドファンデーションを少量皮膚に塗布し、指で20回塗り広げることで滑り性(クリーミーさ)を下記の基準で評価した。
◎・・・良く滑り、クリーミーさが十分ある
〇・・・良く滑り、クリーミーさがある
△・・・滑りが悪い
×・・・滑らない
【0123】
(実施例B-2~7)
表2における実施例A-1で得られたセルロース誘導体粒子を、それぞれ実施例A-2~7で得られたセルロース誘導体粒子に変更した以外は、実施例B-1と同様にして、リキッドファンデーションを調製した。得られたリキッドファンデーションの各物性を上記の方法で評価した。結果は表3に示す。
【0124】
(比較例B-1~4)
表2における実施例A-1で得られたセルロース誘導体粒子を、それぞれ比較例A-1~4の粒子に変更した以外は、実施例B-1と同様にして、リキッドファンデーションを調製した。得られたリキッドファンデーションの各物性を上記の方法で評価した。結果は表3に示す。
【0125】
【表3】
[図:0001391987000003.jpg]
【0126】
表3に示すように、実施例B-1~8のセルロース誘導体粒子を含有する化粧品組成物は、いずれも肌への伸び、シミやソバカスのカバー力、及び滑り性に優れる。」
キ1 「【0052】
本開示のセルロース誘導体粒子は、真比重が1を超えることが好ましく、1.04以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましく、1.2以上が最も好ましい。セルロース誘導体微粒子の真球度を70%以上とする観点からは、1.35以下であってよい。真比重は、JIS Z 8807-1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体:水)により測定することができる。
【0053】
真比重は、4℃の水の密度:0.999973g/cm-3とを基準とした比重である。」
(2) 先願1の明細書等に記載された発明
先願1の明細書等には、摘記事項ア1~キ1、特に、摘記事項ア1の請求項1~3、5、摘記事項カ1からみて、以下の発明が記載されていると認められる。
「炭素数が3のアシル基を有するセルロースアセテートプロピオネートのセルロース誘導体粒子であって、
前記セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が70%以上100%以下、表面平滑度が80%以上100%以下、真比重が1.04以上であり、
前記セルロース誘導体の総置換度が0.7以上3以下である、セルロース誘導体粒子。」(以下、「先願発明1-3」という。)
「先願発明1-3のセルロース誘導体粒子を含有する、化粧料組成物。」(以下、「先願発明1-4」という。)
(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と先願発明1-3を対比する。
先願発明1-3の「炭素数が3以上のアシル基を有するセルロースアセテートプロピオネートのセルロース誘導体」は、本件発明1の「セルロースアセテートプロピオネートであ」る「セルロース誘導体」に相当する。
先願発明1-3の「セルロース誘導体粒子」は、本件発明1の「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズ」に相当する。
先願発明1-3の「セルロース誘導体粒子」の形状について、「平均粒子径が80nm以上100μm以下」は、当該平均粒子径についての摘記事項ウ1の段落【0038】の記載から、体積平均粒子径を意味すると理解されるから、本件発明1の樹脂ビーズの「体積平均粒子径が、50μm以下」に相当する。
また、先願発明1-3の「セルロース誘導体粒子」の形状の「真球度が70%以上100%以下」、「表面平滑度が80%以上100%以下」は、本件発明1の樹脂ビーズの形状の「真球度が、0.7~1.0」、「表面平滑度が、80~100%」に相当する。
そうすると、本件発明1と先願発明1-3は、
「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートであり、
体積平均粒子径が、50μm以下であり、
真球度が、0.7~1.0であり、
表面平滑度が、80~100%である、樹脂ビーズ。」
の発明である点で一致し、以下の相違点1で一応相違し、相違点2で相違している。
<一応の相違点1>
本件発明1では、「セルロース誘導体のアセチル基の含有率が、15質量%以下であり、セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が、10質量%以上であり」と特定されるのに対し、先願発明1-3では、このような特定がない点。
<相違点2>
本件発明1は、樹脂ビーズについて、中実度が70~99体積%と特定するのに対し、先願発明1-3では、真比重についての特定があるものの、中実度に関する特定がない点。
イ 判断
(ア) 一応の相違点1について
上記一応の相違点1について検討する。
先願1の明細書等において、セルロースアセテートプロピオネートとして、実施例で具体的に用いられた「セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製:CAP-482-0.5)」は、総置換度は2.58(アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.40)と記載されているものであるところ(摘記事項カ1の段落【0116】表1)、これは本件発明1の実施例でセルロースアセテートプロピオネートとして用いられている製品でもあり、アセチル基の含有率1.5%、プロピオニル基の含有率45%のものであるから(本件明細書の段落【0084】の表1)、本件発明1のアセチル基の含有率及びプロピオニル基の含有率の範囲に含まれるものである。
なお、「セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製:CAP-482-0.5)」のアセチル基、プロピオニル基の含有率については、引用文献2の段落【0090】、【0095】及び【0096】の【表1】に以下の記載があるとおり、本件特許出願時に既に周知な事項である。
「【0090】
<セルロースアセテートプロピオネートの準備>(セルロースアセテートプロピオネート(CAP1~CAP3)の準備)
下記市販のセルロースアセテートプロピオネート3種を準備した。 CAP-482-0.5を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP1)、CAP504-0.2を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP2)、CAP482-20を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP3)として準備した(いずれも、イーストマンケミカル社製)。」
「【0095】
<重量平均分子量、アセチル基、プロピオニル基の含有量の測定>
セルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量の測定、及びセルロースアセテートプロピオネートに対するアセチル基、プロピオニル基の含有量の測定は、既述の方法にしたがって測定した。 セルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量(Mw)、及びセルロースアセテートプロピオネートに対するアセチル基とプロピオニル基との含有量を測定した結果を表1にまとめる。また、セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)、及びセルロースアセテートに対するアセチル基の含有量を測定した結果を表1にまとめる。
【0096】
【表1】
[図:0001391987000004.jpg]
」
そうすると、上記一応の相違点1は、実質的な相違点ではなく、本件発明1と先願発明1-3は、この点で相違しない。
(イ) 相違点2について
先願発明1-3のセルロース誘導体粒子は、表面平滑度80~100%、真比重1.04以上であり、特に、摘記事項カ1の実施例A-2によれば、表面平滑度100%であり、また、真比重1.23である。
そして、先願明細書の図1、2からみても、セルロース誘導体粒子は、表面が平滑な、つまり、細孔のない粒子であることが理解できる。
また、真比重の測定法について、先願明細書1の摘記事項カ1の段落【0098】、摘記事項キ1の段落【0052】には、「JIS Z 8807-1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体:水)により測定」と記載されており、この測定方法については、引用文献3に記載されている。
ここで、先願発明1-3の粒子について、表面が平滑な粒子であるから、上記真比重の測定の際に粒子表面の細孔を考慮する必要はないと解される。また、上記真比重の測定方法によれば、仮に、先願発明1-3の粒子の内部に空隙があったとしても、粒子表面が平滑であり、粒子の内部空隙が粒子の表面や外部と連通しているものではないから、内部空隙も加味した先願発明1-3の粒子の真比重が測定されているものと認められる。
さらに、先願明細書1に記載の実施例A-2の粒子では真比重が1.23であり、引用情報4によれば、セルロースアセテートプロピオネートの樹脂自体の比重が1.23であって、両者の数値が変わらないことを鑑みれば、先願発明1-3の粒子は、粒子表面は平滑で表面上に細孔がないだけではなく、粒子内部についても内部空隙がほぼない、中実度100%のものと認められる。
一方、本件発明の樹脂ビーズの中実度の範囲は70~99%であり、中実度100%のものは範囲外であるから、相違点2は両発明における実質的な相違点であって、両発明は同一ではない。
(ウ) 小括
よって、本件発明1は、先願発明1-3と同一ではない。
(4) 本件発明18について
本件発明18は、樹脂ビーズについて、本件発明1及び4~8を引用した、「樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品」に関する発明である。
一方、先願発明1-4は、「先願発明1-3のセルロース誘導体粒子を含有する、化粧料組成物」に関する発明である。
本件発明18が、樹脂ビーズについて、本件発明1を引用した場合について検討するに、本件発明1の樹脂ビーズと先願発明1-3のセルロース誘導体との関係については、上記(3)に記載したとおりであり、両発明は同一ではない。
そうすると、本件発明1を引用した本件発明18において、化粧料である製品と、先願発明1-4の化粧料組成物とは、同一ではない。
(5) まとめ
以上のとおり、本件発明1、18は、先願1の明細書等に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2に規定により特許を受けることができないものではないから、請求項1、18に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。
2 令和3年8月16日付け取消理由について
(1) 理由1(拡大先願)について
訂正前の請求項1~3、18に係る発明の特許について,理由が通知されていたところ、訂正後の本件発明1、18については、上記1で検討したとおりであり、また、訂正前の請求項2、3に係る発明は削除されているから、この取消理由については、その理由がない。
(2) 理由2(明確性)について
ア セルロース誘導体の種類について
(ア) 具体的な理由
・請求項 1、3~8、18
訂正前の請求項1に係る発明は、
「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種であり」と樹脂ビーズを構成する主成分であるセルロース誘導体の種類についての特定があるところ、樹脂ビーズについて、
「アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である樹脂ビーズ」
との特定がされ、樹脂ビーズの特定であるアセチル基、プロピオニル基の含有率からみれば、少なくとも、プロピオニル基を含むセルロース誘導体である必要があるところ、セルロースアセテート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースはこの基を含有していないから、これらのセルロース誘導体のみを選択した場合には、樹脂ビーズにおけるプロピオニル基の特定と矛盾が生じ、訂正前の請求項1に係る発明は明確ではなく、また、これを引用する訂正前の請求項3~8、18に係る発明についても同様であった。
(イ) 判断
しかしながら、本件訂正後の本件発明1では、セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートに限定されたので、上記矛盾はなくなり、当該理由は解消した。
イ アセチル基含有率、プロピオニル含有率について
(ア) 具体的な理由
・請求項1~8、18
「請求項1において、「アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である」と特定があるが、これが何を基準とした含有量であるのかは記載されていない。
本件明細書には、段落【0081】に「特表2006-523752号公報の記載内容(主として、段落[0135]~「0145]の記載内容)に準じて、樹脂ビーズのアセチル基の含有率及びプロピオニル基の含有率を測定及び算出した。」との記載があるが、具体的に特表2006-523752号公報の記載に準じてどのように測定して得られ、何を基準にした含有量なのか十分な説明がされていない。
よって、訂正前の請求項1における「アセチル基の含有率が、15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が、10質量%以上である」との特定は、明確ではない
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項2~8、18にかかる発明についても同様である。」
(イ) 判断
本件訂正により、請求項1において、アセチル基、プロピオニル基については、「前記セルロース誘導体のアセチル基の含有率が、15質量%以下であり、前記セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が、10質量%以上である」と特定されて、これらの基の含有率はセルロース誘導体を基準としたものとされたので、記載としては明確なものとなった。
また、この点について、上記令和4年3月25日付け取消理由(決定の予告)において、特許権者に再度説明を依頼した審尋に対し、令和4年5月27日提出の意見書の「(5)審尋について」において、本件発明1の実施例に相当する実施例1~3の樹脂ビーズの場合と、顔料などの他の成分が含まれる樹脂ビーズの場合について、アセチル基、プロピオニル基の測定方法の説明がされたので、上記判断したとおり、請求項1の記載は明確であり、当該理由は解消した。
(3) 理由3(サポート要件)について
ア 具体的な理由
「本件発明1において、セルロース誘導体が、「セルロースアセテートプロピオネート」を含まない、「セルロースアセテート、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース」のみからなる群のいずれか1つから選択される場合には、サポート要件を満たさない。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3~8、18についても同様である。
さらに、本件発明1、3~8、18において、アセチル基及びプロピオニル基について、セルロース誘導体の有する基であることの特定がないが、セルロース誘導体以外の他の樹脂がこれらの基を有する場合に、セルロース誘導体と同様の効果を奏するとはいえないし、発明の詳細な説明に何ら記載がないから、これらの基がセルロース誘導体の有する基でない場合についてもサポート要件を満たさない。」
イ 判断
上記理由は、訂正前の請求項1及びそれを引用する請求項に係る発明に対する理由であったが、訂正により、セルロース誘導体が「セルロースアセテートプロピオネート」に限定され、また、アセチル基及びプロピオニル基についても、セルロース誘導体の有する基であることが特定されたので、当該理由は解消した。
(4) まとめ
以上のとおり、令和3年8月16日付け取消理由で通知した理由について、本件発明1、4~8、18についてはその理由がなく、また、請求項2、3に係る発明については削除されて対象が存在しないものとなったため理由がないから、当該取消理由により、これらの発明に係る特許が取り消されものではない。
第7 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
1 異議申立理由
(1) 理由1(拡大先願):本件特許の下記の請求項1~8、18に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 理由2(進歩性):本件特許の下記の請求項1~8、18に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 理由3(明確性):本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 理由4(サポート要件):本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 証拠方法
甲第1号証:特願2019-54171号(特開2020-152851号)
甲第2号証:国際公開第2019/156116号
甲第3号証:特開昭55-28763号公報
甲第4号証:特開2006-328245号公報
甲第5号証:特開2000-309503号公報
甲第6号証:特許第4076955号公報
甲第7号証:特許第2931810号公報
以下、甲第1号証等は、「甲1」等として略記する。
2 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由
上記1の異議申立理由のうち、取消理由で採用しなかったのは、請求項4~8に係る発明に対する理由1(拡大先願)に係る申立理由と、理由2(進歩性)に係る申立理由であり、理由2については、具体的には、甲2を主引例とする進歩性に係る申立理由、甲4を主引例とする進歩性に係る申立理由である。
本件訂正により、請求項2、3に係る発明は削除されているから、上記進歩性の理由について、本件発明1、4~8、18に対して検討する。
(1) 本件発明4~8に対する拡大先願の申立理由について
申立人は、異議申立書において、取消理由を通知した本件発明1、18に加えて,本件発明4~8に対しても甲1に基づく拡大先願の理由を主張していた。
ここで、本件発明4~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、これをさらに限定したものであるところ、上記第6の1で検討したとおり、本件発明1が甲1に記載された発明と同一ではないから、本件発明1をさらに限定した本件発明4~8に対しても、同様に判断される。
(2) 甲2を主引用例とする進歩性の申立理由について
ア 甲2に記載された事項
(ア2) 「〔請求項1〕セルロースアセテート粒子であって、
前記セルロースアセテート粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が0.7以上1.0以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、
前記セルロースアセテートのアセチル総置換度が0.7以上2.9以下である、セルロースアセテート粒子。」(請求の範囲)
(イ2) 「[0001] 本発明は、セルロースアセテート粒子、化粧品組成物及びセルロースアセテート粒子の製造方法に関する。」
(ウ2) 「[0050] 本開示のセルロースアセテート粒子は、生分解性及び触感に優れることから、例えば、化粧品組成物に好適に用いることができる。また、高い真球度を有することから、化粧品組成物に配合すれば、肌の凹凸を埋めて滑らかにし、光を様々な方向に散乱させることでしわなどを目立ちにくくする(ソフトフォーカス)効果が得られる」
イ 甲2に記載された発明
摘記事項(ア2)~(ウ2)に記載、特の(ア2)の記載からみて、甲2には、以下の発明が記載されている。
「セルロースアセテート粒子であって、
前記セルロースアセテート粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が0.7以上1.0以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、
前記セルロースアセテートのアセチル総置換度が0.7以上2.9以下である、セルロースアセテート粒子。」
(以下「甲2発明」という。)
ウ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「セルロースアセテート粒子」は、本件発明1と「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズ」との限りにおいて一致する。
甲2発明の粒子の特性である「真球度が0.7以上1.0以下、表面平滑度が80%以上100%以下」は、本件発明1の樹脂ビーズの特性である「真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、80~100%であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、
真球度が、0.7~1.0であり、
表面平滑度が、80~100%である樹脂ビーズ。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点a>
セルロース誘導体について、本件発明1は、「セルロースアセテートプロピオネートであり、
前記セルロース誘導体のアセチル基の含有率が、15質量%以下であり、
前記セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が、10質量%以上」
であるのに対して、甲2発明は、「セルロースアセテート」であって、樹脂が異なる点。
<相違点b>
樹脂ビーズの形状について、本件発明1は、「体積平均粒子径が、50μm以下であり、中実度が、70~99体積%である」のに対し、甲2発明は、「平均粒子径が80nm以上100μm以下」と特定され、異なる点。
(イ) 判断
a 相違点について
相違点aについて検討する。
甲2には、「セルロースアセテート粒子」に関する発明であって、他のセルロース誘導体やセルロースアセテートプロピオネートに関する記載はない。
また、セルロースアセテートプロピオネートについて、甲4に、保湿性に優れた有機固体粒子を構成する樹脂の一例として、セルロース誘導体が挙げられ(甲4請求項5)、当該セルロース誘導体として、「セルロースアセテート」と「セルロースアセテートプロピオネート」が一例としてあげられているもの、甲2には、セルロースアセテートプロピオネートなどの他のセルロース誘導体について何ら記載がないから、甲4に記載された事項があったとしても、甲2発明の「セルロースアセテート」を、本件発明1の特定の性質を有する「セルロースアセテートプロピオネート」に代える動機付けがない。他の甲3,5~7にも、本件発明1の特定のセルロースアセテートプロピオネートに関する記載はなく、甲2発明のセルロースアセテート粒子を「セルロースアセテートプロピオネート」の粒子へ変更する動機付けとなる記載もない。
そうすると、相違点aの本件発明1の構成とすることは、甲2発明及び甲3~7に記載された事項から当業者が容易に想到し得た事項ではない。
よって、相違点bについて判断するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲3~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
b 申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、甲2には、甲2発明が記載されており、甲2発明及び甲3~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができた旨の主張をしている。
確かに、甲2に甲2発明は記載されているものの、上記aで判断したとおりであって、申立人の進歩性に関する主張は採用できない。
(ウ) 小括
よって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
エ 本件発明4~8、18について
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明4~8、18についても、本件発明1と同様であり、甲2発明及び甲3~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
(3) 甲4を主引例とする進歩性の申立理由について
ア 甲4に記載された事項
(ア4) 「【請求項1】
溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の水溶性助剤成分(B)が残存している有機固体粒子。
【請求項2】
全体に対して、15000~50000ppmの水溶性助剤成分(B)が残存している請求項1記載の有機固体粒子。
・・・
【請求項5】
有機固体成分(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。」(請求項1、2、5)
(イ4) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、優れた保湿性を有する有機固体粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、高い安全性で保湿性が付与された有機固体粒子およびその製造方法を提供することにある。」
(ウ4) 「【0021】
有機固体成分(A)としては、高分子化合物(樹脂)を用いる場合が多い。前記樹脂には、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、・・・などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマーなど]、および熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニスなども含む)など)などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。有機固体成分(A)としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)が使用される。以下、代表的な熱可塑性樹脂を例示する。」
(エ4) 「【0034】
(12)セルロース誘導体
セルロース誘導体としては、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのアシルセルロース;セルロースの無機酸エステルなど)、セルロースエーテル類(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのアルキルセルロース;ベンジルセルロースなどのアラルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;シアノエチルセルロースなど)、セルロースカーバメート類(セルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。」
(オ4) 「【0107】
このようにして得られた有機固体粒子の形状は、粒子状であれば特に限定されず、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などであってもよい。前記製造方法によると、球状、特に真球状の粒子が簡便に製造できる。なお、球状とは、真球に限られず、例えば、短径に対する長径の割合が長径/短径=1.5/1~1/1程度である形状を包含し、好ましくは1.3/1~1/1、さらに好ましくは1.1/1~1/1程度である。
【0108】
有機固体粒子の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて0.05μm~1mm程度の範囲から選択でき、0.1~800μm、好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.2~50μm、特に1~40μm程度であってもよい。また、有機固体成分(A)や水溶性助剤(B)の種類を適宜選択することにより、有機固体粒子の平均粒子径を、例えば、0.05~100μm、好ましくは0.05~10μm、さらに好ましくは0.05~5μm、特に0.1~3μm程度にまで小さくすることもできる。
【0109】
また、本発明の有機固体粒子は、粒子径の分布範囲が狭い。粒子径の変動係数([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)は、例えば、60以下(例えば、5~60程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10~50程度)である。」
(カ4) 「【0117】
本発明の有機固体粒子は、水溶性助剤成分を所定の濃度で含んでいるため、吸湿性や保湿性が高く、また、長期間に亘り保湿性を保持できる。そのため、親水性や保湿性などが要求される分野、例えば、ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドーなどの化粧品用粒子(特に樹脂粒子)などとして有効に利用できる。さらに、本発明の有機固体粒子は、親水性溶媒に対する親和性が高い。そのため、例えば、再分散性エマルジョンなどとして利用できる他、顔料、染料などの着色剤などを含有する粒子は、湿式インク用着色粒子、水性分散媒を用いた化粧品用着色粒子、水性塗料などとして利用できる。」
(キ4) 「【0120】
(粒子の平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察し、全体形状の写真を得た。得られた写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、数平均粒子径を得た。」
イ 甲4に記載された発明
摘記事項(ア4)~(キ4)の記載、特に(ア4)の請求項1、5の記載からみて、甲4には、以下の発明が記載されている。
「溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の水溶性助剤成分(B)が残存している有機固体粒子であって、
有機固体成分(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている有機固体粒子。」(以下「甲4発明」という。)
ウ 本件発明1について
(ア) 対比
甲4発明の「有機固体粒子」は、「ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている」から、本件発明1の「樹脂ビーズ」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明は、「樹脂ビーズ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点c>
樹脂ビーズを構成する樹脂について、本件発明1は、「セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートプロピオネートであり、」「前記セルロース誘導体のアセチル基の含有率が、15質量%以下であり、前記セルロース誘導体のプロピオニル基の含有率が、10質量%以上であ」るのに対し、甲4発明はこのような特定がない点。
<相違点d>
樹脂ビーズの形状について、本件発明1は、「体積平均粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、80~100%であり、」「中実度が、70~99体積%である」のに対し、甲4発明ではこのような特定がない点。
(イ) 判断
a 相違点について
甲4には、有機固有粒子を構成する樹脂として、セルロース誘導体が挙げられ(摘記事項(ア4))、当該セルロース誘導体として、「セルロースアセテートプロピオネート」が挙げられているところ、本件発明1の特定の条件を満たすセルロースアセテートプロピオネートについては記載がない。
また、他の甲号証をみても、甲4発明の有機固体粒子に用いる樹脂として、本件発明1の特定の条件を満たすセルロースアセテートプロピオネートについて記載はなく、これを採用する動機付けが記載されているわけでもない。
そうすると、相違点cの本件発明1の構成とすることは、甲4発明及び甲2、3、5~7に記載された事項から当業者が容易に想到し得た事項ではない。
よって、相違点dについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲2、3、5~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
b 申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、甲4の請求項1、2、5、段落【0034】、【0095】、【0107】~【0109】、【0120】の記載から、甲4には、
「セルロースアセテートプロピオネートと、水溶性助剤成分(B)を10000ppm(重量基準:10重量%)以下含む有機固体粒子であって、
数平均粒子径がさらに好ましくは0.2~50μm以下、真球形状又は長径/短径がさらに好ましくは1.1/~1/1の球状である有機固体粒子。」
が記載されていると主張している。
しかしながら、甲4の指摘された記載について、請求項1に、有機固体成分(A)とオリゴ糖を含む水溶性助剤成分(B)とで構成された有機固体成分を粒子状にした分散体から、(B)成分が溶出して得られた有機固体粒子が記載され、請求項5には、有機固体成分として多くの樹脂とともにセルロース誘導体が記載され、段落【0034】には、セルロース誘導体として、多くのセルロース樹脂とともにセルロースアセテートプロピオネートが列挙されているものの、セルロースアセテートプロピオネートを用いた有機固体粒子の実施例もないから、セルロースアセテートプロピオネートは、あくまでも樹脂として例示されたセルロース誘導体の一例として記載されているにすぎない。また、甲4の段落【0107】~【0109】、【0120】には有機固体粒子の粒子径の範囲が記載されているものの、これらの記載の一部分と「セルロースアセテートプロピオネート」を組み合わせた有機固体粒子の発明、すなわち申立人の主張する発明は、甲4には記載されているとは認めることはできない。
よって、申立人の主張する発明に基づいた進歩性に係る主張は採用できない。
(ウ) 小括
よって、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲2、3、5~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
エ 本件発明4~8、18について
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明4~8、18についても、本件発明1と同様であり、甲4発明及び甲2、3、5~7に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。
(4) まとめ
以上のとおり、本件発明1、4~8、18は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、4~8、18に係る特許は、令和3年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由通知及び令和4年3月25日付け取消理由通知(決定の予告)において記載した取消理由並びにこれらの取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、4~8、18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、特許異議の申立ての対象であった請求項2、3は、本件訂正により削除されたので、請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する
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2021-700373