特許異議申立
2023-701166
艶持続型化粧料組成物
- 審判番号
- 2023-701166
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-523949
- 登録番号
- 7266933
- 請求日
- 2023年11月01日
- 審決日
- 2024年06月25日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 木村 敏康
- 審判官 松元 麻紀子
- 分類
- P1652.113-YAA(A61K) / P1652.121-YAA(A61K) / P1652.161-YAA(A61K) / P1652.536-YAA(A61K) / P1652.537-YAA(A61K) / P1652.851-YAA(A61K) / P1652.857-YAA(A61K) / P1652.854-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7266933号発明「艶持続型化粧料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7266933号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付されて訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第7266933号の請求項2及び3に係る特許を維持する。
特許第7266933号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7266933号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年10月22日の出願であって、令和5年4月21日に特許権の設定登録がされ、同年5月1日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~3に係る発明の特許に対し、令和5年11月1日に金澤毅(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和6年 1月19日付け 取消理由通知
同年 4月23日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 5月10日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 6月 5日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和6年4月23日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の「請求の趣旨」は「特許第7266933号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~3からなるものであると認める(なお、実質的な訂正箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「高屈折オイル、高屈折ポリオール、及び油相ポリマーを含み、
前記高屈折オイルは、屈折率(RI)が1.44以上であり、
前記高屈折ポリオールは、屈折率(RI)が1.39以上であり、
前記高屈折オイルは、組成物の総重量に対して2~15重量%の量であり、
前記高屈折ポリオールは、組成物の総重量に対して10~20重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、組成物の総重量に対して3~15重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂、アクリレート系ポリマーまたはこれらの混合物であり、
前記シリコーン樹脂は、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びジメチコン/シルセスキオキサンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記アクリレート系ポリマーは、アクリレート/ステアリルアクリレート/ジメチコンメタクリレートコポリマー、アクリレートコポリマー、アクリレート/メタクリレートコポリマー、アクリレート/アクリルアミドコポリマー、アクリレート/ジメチコンコポリマー、アクリレート/ジメチコンメタクリレートコポリマー、アクリレート/エチルヘキシルアクリレートコポリマー、アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマー、アクリレート/VPコポリマー、及びVP/ヘキサデセンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記高屈折ポリオールを内相に含む、油中水型化粧料組成物。」
を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の
「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリエチルヘキサノイン、ヘキサ脂肪酸(C5-9)ジペンタエリスリチルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル及びトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の油中水型化粧料組成物。」
との記載を、
「高屈折オイル、高屈折ポリオール、及び油相ポリマーを含み、
前記高屈折オイルは、屈折率(RI)が1.44以上であり、
前記高屈折ポリオールは、屈折率(RI)が1.39以上であり、
前記高屈折オイルは、組成物の総重量に対して5~15重量%の量であり、
前記高屈折ポリオールは、組成物の総重量に対して10~20重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、組成物の総重量に対して3~15重量%の量であり、
前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、
前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、
前記シリコーン樹脂は、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びジメチコン/シルセスキオキサンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記高屈折ポリオールを内相に含む、油中水型化粧料組成物。」
との記載に改める。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の
「前記高屈折ポリオールは、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール及びペンチレングリコールからなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の油中水型化粧料組成物。」
との記載を、
「高屈折オイル、高屈折ポリオール、及び油相ポリマーを含み、
前記高屈折オイルは、屈折率(RI)が1.44以上であり、
前記高屈折ポリオールは、屈折率(RI)が1.39以上であり、
前記高屈折オイルは、組成物の総重量に対して5~15重量%の量であり、
前記高屈折ポリオールは、組成物の総重量に対して10~20重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、組成物の総重量に対して3~15重量%の量であり、
前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、
前記高屈折ポリオールは、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール及びペンチレングリコールからなる群より選択されたいずれか一つ以上を含み、
前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、
前記シリコーン樹脂は、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びジメチコン/シルセスキオキサンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記高屈折ポリオールを内相に含む、油中水型化粧料組成物。」
との記載に改める。
2.本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、細分すると次の訂正事項2a~2dの4つの訂正事項からなるものと認められる。
訂正事項2aは、訂正前の請求項1を引用する請求項2を、独立形式に記載を改めて、訂正後の請求項2とするものである。
訂正事項2bは、本件特許の願書に添付した明細書の段落0010の「高屈折オイルは、組成物の総重量対比1~12重量%、…より好ましくは5~8重量%で配合されてもよい。」との記載にある下限値の記載を根拠に、訂正前の請求項1の「2~15重量%」という数値範囲を、訂正後の請求項2の「5~15重量%」という数値範囲に限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項2cは、本件特許の願書に添付した明細書の段落0009の「前記高屈折オイルは、好ましくはシリコーンオイル、例えばフェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せを含むことができ」との記載を根拠に、訂正前の請求項2の「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリエチルヘキサノイン、ヘキサ脂肪酸(C5-9)ジペンタエリスリチルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル及びトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む」との記載部分を、訂正後の請求項2の「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり」との記載に改めるものであって、
訂正前の「高屈折オイル」の選択肢から「トリエチルヘキサノイン」等の選択肢を削除するとともに、
訂正前の「含む」を、訂正後の「であり」に改めることにより、選択肢に含まれない他の高屈折オイルが含まれる場合を排除して、
特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項2dは、訂正前の請求項1の「前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂、アクリレート系ポリマーまたはこれらの混合物であり、」との記載部分を、訂正後の請求項2の「前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、」との記載に改めることにより、油相ポリマーの選択肢から「アクリル系ポリマー」を削除して限定するとともに、
訂正前の請求項1の「前記アクリレート系ポリマーは、アクリレート/ステアリルアクリレート/ジメチコンメタクリレートコポリマー、アクリレートコポリマー、アクリレート/メタクリレートコポリマー、アクリレート/アクリルアミドコポリマー、アクリレート/ジメチコンコポリマー、アクリレート/ジメチコンメタクリレートコポリマー、アクリレート/エチルヘキシルアクリレートコポリマー、アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマー、アクリレート/VPコポリマー、及びVP/ヘキサデセンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、」との記載部分を削除して、当該「アクリル系ポリマー」の選択肢に関連した記載を削除して、
特許請求の範囲を減縮するものである。
してみると、訂正事項2a~2dからなる訂正事項2は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項2は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を、独立形式での記載に改めて、訂正後の請求項3とするとともに、
訂正前の請求項1の「2~15重量%」との記載部分を、訂正後の請求項2の「5~15重量%」との記載に改めて、高屈折オイルの配合量の数値範囲を限定し、
訂正前の請求項2の「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、…からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む」との記載にある技術的な事項を、訂正後の請求項3に「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり」との記載に改めた上で、追加の発明特定事項として導入して限定し、
訂正前の請求項1の「前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂、アクリレート系ポリマーまたはこれらの混合物であり、」との記載部分を、訂正後の請求項3の「前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、」との記載に改め、訂正前の請求項1の「前記アクリレート系ポリマーは、…からなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、」との記載部分を削除することにより、油相ポリマーの選択肢から「アクリル系ポリマー」を削除して減縮するものである。
してみると、訂正事項3は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項3は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~3について、その請求項2~3は直接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であるところ、本件訂正においては、訂正後の請求項2及び3について、これらの請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められている。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、なおかつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項2及び3について、別の訂正単位とする求めがなされている。
したがって、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
4.令和6年6月5日付け意見書(申立人)の主張について
(1)高屈折オイルの配合量について
申立人は、令和6年6月5日付け意見書の3.1(1)及び3.2(1)において、高屈折オイルがフェニルトリメチコンの場合は、特許明細書の段落0027の実施例には2~8重量%の量が記載されているが、特許明細書中には5~15重量%の量が記載されていないから、訂正事項2及び3の訂正は新規事項の追加に該当すると主張する。
しかしながら、訂正前の請求項1の「2~15重量%」の数値範囲には、訂正後の「5~15重量%」という数値範囲の全てが包含されており、当該数値範囲の下限を減縮にすることにより新たな効果が得られる等の主張がされているものでもない。
してみると、上記2.(2)及び(3)に示したように、訂正事項2及び3による訂正は、新規事項の追加に該当するとはいえず、上記申立人の主張は採用できない。
(2)高屈折オイルの組合せについて
申立人は、上記意見書の3.1(2)及び(3)並びに3.2(2)において、訂正前の「いずれか一つ以上を含む」を、訂正後の「組合せであり」に改める訂正は、目的要件に違反するものであり、例えば、リンゴ酸ジイソステアリルを加えることで、高屈折オイルが15重量%を超える場合も特許発明の範囲に含まれるから、実質上特許請求の範囲を拡張するものであると主張する。
しかしながら、上記2.(2)に示したように、訂正前の「含む」を、訂正後の「であり」に改める訂正は、選択肢に含まれない他の高屈折オイルが含まれる場合を排除して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正後の請求項2及び3の「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、」との特定は、訂正前の「含み」と異なり、高屈折オイルとして「リンゴ酸ジイソステアリル」等の他の高屈折オイルが含まれる場合を排除して限定するものであるから、高屈折オイルが15重量%を超える場合は想定され得ず、実質上特許請求の範囲を拡張するものではない。
してみると、訂正事項2による訂正は、目的要件に違反するものではなく、訂正事項2及び3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものではないので、上記申立人の主張は採用できない。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本1発明」~「本3発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
高屈折オイル、高屈折ポリオール、及び油相ポリマーを含み、
前記高屈折オイルは、屈折率(RI)が1.44以上であり、
前記高屈折ポリオールは、屈折率(RI)が1.39以上であり、
前記高屈折オイルは、組成物の総重量に対して5~15重量%の量であり、
前記高屈折ポリオールは、組成物の総重量に対して10~20重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、組成物の総重量に対して3~15重量%の量であり、
前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、
前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、
前記シリコーン樹脂は、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びジメチコン/シルセスキオキサンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記高屈折ポリオールを内相に含む、油中水型化粧料組成物。」との記載に改める。
【請求項3】
高屈折オイル、高屈折ポリオール、及び油相ポリマーを含み、
前記高屈折オイルは、屈折率(RI)が1.44以上であり、
前記高屈折ポリオールは、屈折率(RI)が1.39以上であり、
前記高屈折オイルは、組成物の総重量に対して5~15重量%の量であり、
前記高屈折ポリオールは、組成物の総重量に対して10~20重量%の量であり、
前記油相ポリマーは、組成物の総重量に対して3~15重量%の量であり、
前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、
前記高屈折ポリオールは、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール及びペンチレングリコールからなる群より選択されたいずれか一つ以上を含み、
前記油相ポリマーは、シリコーン樹脂であり、
前記シリコーン樹脂は、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びジメチコン/シルセスキオキサンコポリマーからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記高屈折ポリオールを内相に含む、油中水型化粧料組成物。」
第4 取消理由通知の概要
令和6年1月19日付けの取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~4からなるものである。
〔取消理由1〕(新規性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項1~3に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
引用例1:特開2016-124806号公報(申立人が提出した甲第1号証に対応する。)
〔取消理由2〕(進歩性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~3に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
引用例1:特開2016-124806号公報(上記甲第1号証に対応する。)
引用例2:特開2009-173653号公報(当審合議体が職権で引用した。)
引用例3:特開2012-224560号公報(当審合議体が職権で引用した。)
〔取消理由3〕(拡大先願)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の第一優先日(2018年11月1日)及び第二優先日(2019年6月25日)より前の2017年4月28日に特願2017-89352号として出願された特許出願(以下「先願X」という。)であって、本件特許の第一優先日後の2018年11月29日に特開2018-188370号公報(申立人が提出した甲第2号証に対応する。)として出願公開された先願Xの願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下「先願Xの当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項1~3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
〔取消理由4〕(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1.取消理由通知で示した取消理由について
(1)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 引用例1を主引用例とした場合の検討
(ア)引1発明
引用例1の段落0028の「比較例5」等の記載からみて、引用例1には、
『(9)メトキシケイヒ酸オクチル6質量%、(10)フェニルトリメチコン1質量%、(11)トリメチルシロキシケイ酸(純分30質量%)10質量%、(12)ポリプロピルシルセスキオキサン(純分52%)4質量%、(17)ジプロピレングリコール7.5質量%、(18)グリセリン2.5質量%を含む、化粧膜の光輝性が◎、化粧もちが△の評価の油中水型乳化化粧料。』
についての発明(以下「引1発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)本2発明についての対比・判断
本2発明と引1発明とを対比すると、
(α)高屈折オイルが、本2発明は「フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せ」であって、その量が「組成物の総重量に対して5~15重量%」であるのに対して、引1発明は「メトキシケイヒ酸オクチル6質量%」と「フェニルトリメチコン1質量%」の組合せである点
において少なくとも相違する。
先ず、取消理由1(新規性)について検討するに、上記(α)の相違点は、高屈折オイルの具体的な成分及びその量に関するものであり、実質的な相違点であるから、本2発明は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。
次に、取消理由2(進歩性)について検討するに、引用例1において「比較例5」として記載されている引1発明を基礎として、上記(α)の相違点に係る構成の設計変更を行うことにについて、動機付けがあるとはいえない(なお、引用例1の段落0028に記載された実施例1~5のものは、本2発明の「高屈折ポリオール」に相当する「ジプロピレングリコール」と「グリセリン」の量が、本2発明の「10~20重量%」の範囲外の「6質量%」であって、更なる相違点を有するものである。)
また、引用例1の段落0015には「本発明で用いられる(C)25℃で液状又はペースト状である非揮発性油剤は、常温で非揮発性であれば特に限定されるものではなく、…フェニルトリメチコン、…などのシリコーン油、…などの炭化水素油、…などのエステル油、…などの植物油、…などの界面活性剤、などが挙げられる。」との記載があるが、本2発明の「フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せ」という特定の種類の高屈折オイルにすることについては、引用例1~3に示唆を含めて記載がなく、本件特許の優先日当時の技術常識を考慮しても、上記(α)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、取消理由2(進歩性)について、本2発明は、引用例1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができないとはいえない。
(ウ)本3発明についての対比・判断
本3発明と引1発明とを対比すると、上記(α)と同様の相違点において少なくとも相違する。
してみると、上記(イ)に示した理由と同様の理由により、本3発明は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、また、同様の理由により、本3発明は、引用例1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本3発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、特許法第29条第2項により特許を受けることができないともいえない。
イ 引用例2を主引用例とした場合の検討
(ア)引2発明
引用例2の段落0056の「実施例6」等の記載からみて、引用例2には、
『(7)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル10質量%、(12)(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー0.3質量%、(18)1,3-ブチレングリコール10質量%を含むW/O型製剤。』
についての発明(以下「引2発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)本2発明についての対比・判断
本2発明と引2発明とを対比すると、
(β)高屈折オイルが、本2発明は「フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せ」であって、その量が「組成物の総重量に対して5~15重量%」であるのに対して、引2発明は「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル10質量%」の組合せである点、及び
(γ)油相ポリマーが、本2発明は「シリコーン」樹脂であって、その量が「組成物の総重量に対して3~15重量%」であるのに対して、引2発明は「(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー0.3質量%」である点
の少なくとも2つの点において相違する。
そして、上記(β)の相違点について検討するに、本2発明の「フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せ」という特定の種類の高屈折オイルにすることについては、引用例1~3に示唆を含めて記載がなく、本件特許の優先日当時の技術常識を考慮しても、上記(β)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(γ)の相違点について検討するまでもなく、本2発明は、引用例1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項により特許を受けることができないとはいえない。
(ウ)本3発明についての対比・判断
本3発明と引2発明とを対比すると、上記(β)と同様の相違点において少なくとも相違する。
してみると、上記(イ)に示した理由と同様の理由により、本3発明は、引用例1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項により特許を受けることができないとはいえない。
(2)取消理由3(拡大先願)について
ア 先X発明
先願Xの当初明細書等の段落0049の「実施例6」等の記載からみて、先願Xの当初明細書等には、
『ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を2.0質量%、ポリエーテル変性シリコーンを0.5質量%、イソヘキサデカンを2質量%、シクロメチコンを10質量%、フェニル変性シリコーンを1質量%、トリメチルシロキシケイ酸を6質量%、ジプロピレングリコールを5質量%、グリセリンを5質量%の量で含む油中水型乳化固形化粧料。』
についての発明(以下「先X発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本2発明についての対比・判断
本2発明と先X発明とを対比すると、
(δ)高屈折オイルが、本2発明は「フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せ」であって、その量が「組成物の総重量に対して5~15重量%」であるのに対して、先X発明は「ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を2.0質量%」と「ポリエーテル変性シリコーンを0.5質量%」と「イソヘキサデカンを2質量%」と「シクロメチコンを10質量」と「フェニル変性シリコーンを1質量%」の組合せである点
において少なくとも相違する。
上記(δ)の相違点は、高屈折オイルの具体的な成分及びその量に関するものであり、実質的な相違点であるから、本2発明は、先願Xの当初明細書等に記載された発明であるとはいえず、特許法29条の2の規定に違反するとはいえない。
ウ 本3発明についての対比・判断
本3発明と先X発明とを対比すると、上記(δ)と同様の相違点において少なくとも相違する。
してみると、上記イに示した理由と同様の理由により、本3発明は、先願Xの当初明細書等に記載された発明であるとはいえず、特許法29条の2の規定に違反するとはいえない。
(3)取消理由4(サポート要件)について
取消理由4の具体的な内容は『本件特許の請求項1及び2に記載された「高屈折オイル」の広範な範囲について、実施例3~5の具体例にある「フェニルトリメチコン(1.46)」と「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(1.50)」の2種類の高屈折オイル以外のものにまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できるとはいえない。』というものである。
そして、訂正後の請求項2及び3の記載は「前記高屈折オイルは、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはこれらの組合せであり、」と特定されている。
したがって、本2発明及び本3発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲ものであることは明らかなので、本件特許の請求項2及び3の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(新規性及び進歩性)について
申立人が主張する申立理由1は、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第1号第3号の規定により、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができず、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、特許を取り消すべきであるというものである(申立書第8頁)。
そして、甲第1号証の段落0028の表2の比較例5には、高屈折オイルである、フェニルトリメチコン(1質量%)及びメトキシケイヒ酸オクチル(6質量%)を含み。また、高屈折ポリオールである、ジプロピレングリコール(7.5質量%)及びグリセリン(2.5質量%)を含み、更に油相ポリマーである、トリメチルシロキシケイ酸/シクロペンタシロキサン混合物(10質量%;純分30質量%)を含む油中水型乳化化粧料の発明が記載されている、と主張する(申立書第1~2頁)。
しかしながら、上記甲第1号証は、上記第4の〔取消理由1〕及び〔取消理由2〕で引用した引用例1に対応するところ、申立理由1は、取消理由1及び2において採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
(2)申立理由2(拡大先願)について
特許異議申立人が主張する申立理由2(拡大先願)は、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲第2号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができず、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、特許を取り消すべきであるというものである(申立書第8頁)。
そして、甲第2号証の段落0049の表1の実施例2には、高屈折オイルである、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(2質量%)を含み、また、高屈折ポリオールである、ジプロピレングリコール(5質量%)及びグリセリン(5質量%)を含み、更に油相ポリマーである、トリメチルシロキシケイ酸(10質量%)を含む油中水型乳化化粧料の発明が記載されている、と主張する(申立書第2頁)。
しかしながら、上記甲第2号証は、上記第4の〔取消理由3〕で引用した先願Xの当初明細書等に対応し、本件訂正前の請求項1に係る発明は削除され、本件訂正前の請求項2に係る発明に対して申立人は申立理由2の主張及び立証をしていないところ、本件訂正後の本3発明は、本件訂正前の請求項2に記載された「高屈折オイル」に関する発明特定事項を更に限定して、本件訂正後の本3発明の発明特定事項として盛り込んでいるものであるから、申立人の申立理由2の主張及び立証によっては、訂正後の本3発明について、理由があるものとすることはできない。
なお、取消理由3においては、本件訂正前の請求項1~3に係る発明が、甲第2号証の当初明細書等に実施例6(先X発明)として記載されていると指摘したが、上記1(2)ウに示したように、訂正後の本2発明及び本3発明は、甲第2号証の当初明細書等に記載されているとはいえない。
したがって、申立人が主張する申立理由2(拡大先願)には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の本2発明及び本3発明に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本2発明及び本3発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項1は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701166