特許異議申立
2023-700955
液状口唇化粧料
- 審判番号
- 2023-700955
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-066427
- 登録番号
- 7239374
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2024年05月14日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
- 【異議申立人】竹内 みどり
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 松元 麻紀子
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.161-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7239374号発明「液状口唇化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7239374号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7239374号の請求項1~2及び4~9に係る特許を維持する。
特許第7239374号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7239374号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願(特願2019-66427号)は、平成31年3月29日に出願され、令和5年3月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、同年9月13日に特許異議申立人 竹内 みどり (以下「申立人」という。)により、本件特許の全請求項に係る特許に対し、特許異議の申立てがされ、同年12月22日付けで当審合議体は特許権者に対して取消理由を通知し、その指定期間内である令和6年2月22日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出され、同年3月1日付けで当審合議体は申立人に対して期間を指定して特許法第120条の5第5項の規定に基づく訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からは何らの応答もなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨
令和6年2月22日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7239374号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」
というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、次の訂正事項1~9のとおりである。下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。
なお、訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、いずれも請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~9にそれぞれ対応する訂正後の請求項1~9に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(D)有機球状粉体」と記載されているのを、「(D)球状セルロース粉体」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「(D)の有機球状粉体」と記載されているのを、「(D)の球状セルロース粉体」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3~9も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「請求項1又は2記載の」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「1、2又は4記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「請求項1、2、4又は5記載の」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5又は6記載の」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5、6又は7記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項記載の」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5、6、7又は8記載の」に訂正する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての判断
(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2による訂正は、それぞれ訂正前の請求項1及び2に記載の液状口唇化粧料に含まれる成分(D)の「有機球状粉体」を、球状粉体を構成する物質について「有機」物に包含される「セルロース」に特定して、「球状セルロース粉体」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による訂正は、訂正前の請求項3において「成分(D)が、球状セルロース粉体である請求項1又は2記載の液状口唇化粧料」と記載されており、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
請求項1又は2の記載を引用する請求項3~9についても同様である。
(2)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものあり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項4~9について
訂正事項4~9による訂正は、いずれも記載を引用する請求項から、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものあり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~9に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~9による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正後の請求項1~9に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~9の記載は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下のとおりのものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。
本件訂正により請求項3が削除されたところ、本件訂正請求項1~2及び4~9に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~2及び4~9に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」などといい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。)。
「【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油 5~50質量%、
(B)25℃で液状の油成分、
(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体、
(D)球状セルロース粉体、
(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上
を含有し、成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%含有し、成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%である液状口唇化粧料。
【請求項2】
成分(D)の球状セルロース粉体が、平均粒径5~150μmである請求項1記載の液状口唇化粧料。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)が、0.02~250である請求項1又は2記載の液状口唇化粧料。
【請求項5】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~3である請求項1、2又は4記載の液状口唇化粧料。
【請求項6】
さらに、(F)ワックス又はゲル化剤を含有する請求項1、2、4又は5記載の液状口唇化粧料。
【請求項7】
成分(E)の含有量が、0.001~30質量%である請求項1、2、4、5又は6記載の液状口唇化粧料。
【請求項8】
成分(A)、(C)及び(D)の合計含有量が、17~80質量%である請求項1、2、4、5、6又は7記載の液状口唇化粧料。
【請求項9】
成分(E)が、無機顔料、合成有機顔料、有機色素及びそのレーキ顔料、天然有機色素から選ばれる着色顔料、並びに、板状粉体の表面を着色剤で被覆したパール顔料から選ばれる1種又は2種以上である請求項1、2、4、5、6、7又は8記載の液状口唇化粧料。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(5)に示す甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」~「甲8」ともいう。)を提出し、申立書の全体の記載からみて、本件訂正前の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(4)に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張しているものと認められる。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~2及び4~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~2及び4~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(及び甲2~甲3に記載された事項)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲4に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~2及び4~9に係る発明は、本件特許の出願の日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲4に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が甲4に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が甲4に係る出願の出願人と同一でもないから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲1:特開2017-190333号公報
甲2:「東レナイロン微粒子」、東レ株式会社ウェブサイト、製品情報、
令和5年8月9日(出力日)
甲3:「KSP-100」、信越化学工業株式会社ウェブサイト、化粧品
用シリコーンセレクションガイド、令和5年8月9日(出力日)
甲4:特開2019-65010号公報(平成31年4月25日公開、
特願2018-186637号、平成30年10月3日出願)
甲5:「Personal Care Catalog 化粧品用スペシ
ャリティ シリコーン製品カタログ」、モメンティブ・パフォーマ
ンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、2015年6月改訂
甲6:特開2013-227282号公報
甲7:「花王の香粧品・医薬品原料」、花王株式会社、2012年5月、 27~28頁
甲8:意見書、本件特許に係る出願の審査段階において特許権者が提出、
令和4年12月9日受付
2 当審合議体が通知した取消理由
本件訂正前の請求項1~2及び4~9に係る特許について、当審合議体が令和5年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由1(拡大先願)は、上記1(3)の申立理由3(甲4に基づく拡大先願)と同旨である。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件特許の請求項1~2及び4~9に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の証拠の記載事項の摘記において、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。また、証拠の記載事項の摘記は、すべて全角で表記する。本決定全体についても同様である。
1 取消理由1(甲4に基づく拡大先願)について
(1)甲4の当初明細書等に記載された事項
甲4に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「甲4の当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)
「【請求項1】
次の成分(a)~(d);
(a)揮発性油
(b)半固形油
(c)トリメチルシロキシケイ酸
(d)平均粒子径が1~50μmであり、異なる平均粒子径の球状粉体2種類以上
を含有する油性口唇化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)が揮発性炭化水素油である請求項1に記載の油性口唇化粧料。
【請求項3】
前記成分(d)が少なくとも(d1)平均粒子径が1μm以上25μm未満の球状粉体、(d2)平均粒子径が25μm以上50μm以下の球状粉体を含む請求項1または2に記載の油性口唇化粧料。
【請求項4】
前記成分(b)がワセリンである請求項1~3のいずれか1項に記載の油性口唇化粧料。」
(甲4b)
「【0011】
本発明に使用される成分(a)の揮発性油は、1気圧での沸点が270℃以下のものであり、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。・・・本発明において、塗布直後と仕上がりにおけるマット感のギャップの観点から、揮発性炭化水素油が好ましい。さらに、揮発性炭化水素油の中でも、イソドデカンを用いることで、本発明における効果により優れるため好ましい。
・・・
【0013】
本発明に使用される成分(b)の半固形油は、1気圧で35~65℃の融点を有する油剤であり、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限はなく、これらを1種又は2種以上用いることができる。前記融点範囲であれば、特に制限されず、35~65℃が好ましく、50~60℃がより好ましい。具体的には、ワセリン(融点38~60℃)、・・・ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル(融点40℃))、・・・等が挙げられる。本発明では塗布直後と仕上がりにおけるマット感のギャップを小さくする観点から、炭化水素の半固形油が好ましく、その中でもワセリンがより好ましい。尚、本発明に用いる成分(b)半固形油の融点は、日本薬局方収載の融点測定法第2法または第3法で測定することができる。」
(甲4c)
「【0018】
本発明における成分(d)は、平均粒子径が1~50μmであり、異なる平均粒子径を有する球状粉体を2種類以上含有するものである。本発明において、球状とは真球状だけでなく、略球状、楕円球状、偽球状などを包含し、長径/短径の比が好ましくは1.5/1~1/1、より好ましくは、1.2/1~1/1の範囲のものである。・・・
【0019】
本発明における成分(d1)は、平均粒子径が1~25μm未満であり・・・。・・・本発明における成分(d1)は、前記平均粒子径を有している球状粉体であれば特に限定されず、・・・。市販品としては・・・TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。・・・
・・・
【0021】
本発明における成分(d2)は、平均粒子径が25~50μmであり・・・。・・・本発明における成分(d2)は、前記平均粒子径を有している球状粉体であれば、特に限定されず、・・・。市販品として、ガンツパール GM-2800(アイカ工業社製)、MX-3000C(綜研化学工業社製)・・・等が挙げられる。」
(甲4d)
「【0031】
実施例1~10及び比較例1~4 口紅(液状)
表1に示す組成の口紅を下記方法により調整し、「つっぱり感のなさ」「仕上がりのマットさ」、「塗布直後と仕上がりにおけるマット感のギャップのなさ」「化粧持ち」の各項目について以下に示す評価方法及び判断基準により評価を行なった。その結果を表1に併記した。
【0032】
【表1】
[図:0001413331000001.jpg]
※1:SnowwhiteSpecial(融点53℃)(Sonneborn社製)
※2:PLANDOOL-S (融点40℃)(日本精化社製)
※3:BELSIL TMS 803(旭化成ワッカー社製)
※4:TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
※5:ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製)
※6:MX-3000C(綜研化学社製)
※7:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)」
(甲4e)
「【0037】
実施例11:口紅(液状)
成分 (%)
(1)イソドデカン 40
(2)ワセリン(融点57℃)※8 5
(3)イソノナン酸イソトリデシル 3
(4)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 3
(5)エチルヘキサン酸セチル 残量
(6)トリメチルシロキシケイ酸 ※9 15
(7)煙霧状シリル化シリカ ※10 5
(8)ポリメチルシルセスキオキサン ※4 6
(9)メタクリル酸メチルクロスポリマー ※6 4
(10)合成金雲母 7
(11)赤色104号 1
(12)赤色202号 4
(13)黄色4号 0.5
(14)酸化チタン 1
(15)ベンガラ 0.1
(16)黒色酸化鉄 0.1
(17)1,3-ブチレングリコール 0.5
(18)香料 0.1
(19)アンズ核油 0.03
(20)ハイビスカスエキス 0.02
(21)パルミチン酸アスコルビル 0.005
(22)ダマスクバラ抽出液 0.03
(23)酢酸トコフェロール 0.005
(24)アスタキサンチン液 0.002
(25)オレイン酸エチル 0.01
(26)オリーブ油 0.03
(27)ホホバ油 0.02
(28)ゴールデンシルク抽出液 0.05
(29)エイジツエキス 0.02
※8:ノムコートW(日清オイリオ社製)
※9:SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
※10:AEROSIL R976S(日本アエロジル社製)」
(2)甲4の当初明細書等に記載された発明
ア 甲4発明1及び甲4発明2
甲4の当初明細書等に記載された、請求項1~4の油性口唇化粧料(甲4a)の具体例である、実施例4(甲4d)及び実施例11(甲4e)からみて、甲4の当初明細書等には、次の「甲4発明1」(実施例4)及び「甲4発明2」(実施例11)が記載されていると認める。
甲4発明1:
「次の組成からなる、口紅(液状)。
(質量%)
イソドデカン 40
ワセリン(SnowwhiteSpecial(融点53℃)
(Sonneborn社製)) 4
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/
セチル/ステアリル/ベヘニル)(PLANDOOL-S
(融点40℃)(日本精化社製)) 4
トリメチルシロキシケイ酸
(BELSIL TMS 803(旭化成ワッカー社製)) 15
ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)) 5
ポリメタクリル酸メチル
(ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製)) 5
エチルヘキサン酸セチル 残量
煙霧状シリカ
(AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)) 2
マイカ 7
赤色202号 5
黄色4号 0.5
酸化チタン 3
黒色酸化鉄 0.1
ジプロピレングリコール 0.3」
甲4発明2:
「次の組成からなる、口紅(液状)。
(質量%)
イソドデカン 40
ワセリン(融点57℃)
(ノムコートW(日清オイリオ社製)) 5
イソノナン酸イソトリデシル 3
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 3
エチルヘキサン酸セチル 残量
トリメチルシロキシケイ酸(SR1000
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)) 15
煙霧状シリル化シリカ
(AEROSIL R976S(日本アエロジル社製)) 5
ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)) 6
メタクリル酸メチルクロスポリマー
(MX-3000C(綜研化学社製)) 4
合成金雲母 7
赤色104号 1
赤色202号 4
黄色4号 0.5
酸化チタン 1
ベンガラ 0.1
黒色酸化鉄 0.1
1,3-ブチレングリコール 0.5
香料 0.1
アンズ核油 0.03
ハイビスカスエキス 0.02
パルミチン酸アスコルビル 0.005
ダマスクバラ抽出液 0.03
酢酸トコフェロール 0.005
アスタキサンチン液 0.002
オレイン酸エチル 0.01
オリーブ油 0.03
ホホバ油 0.02
ゴールデンシルク抽出液 0.05
エイジツエキス 0.02」
イ 申立人の主張する甲4に記載された発明について
申立人は、申立書8頁3~13行において、甲4の実施例1~2、4、6、8~10及び実施例11((甲4d)及び(甲4e))から、甲4には、以下の<申立人甲4発明>が記載されていると主張している。
<申立人甲4発明>
「ワセリン(SnowwhiteSpecia1(融点53℃))、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)合計5~10質量%;イソドデカン、エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸エチル、イソノナン酸イソトリデシル、オリーブ油、ホホバ油合計約41~47.5質量%;マイカ又は合成金雲母7質量%;ポリメチルシルセスキオキサン、ポリメタクリル酸メチル合計10質量%、赤色202号、黄色4号、黒酸化鉄、赤色104号、ベンガラ合計5.6~5.7質量%を含有する口紅(液状)。」
上記<申立人甲4発明>は、組成が異なる複数の実施例から、本件訂正前の請求項1~2及び4~9に係る発明との対比に必要な成分のみを摘出し、各成分の含有量についても、異なる実施例における最小量と最大量から範囲を定めたものであって、甲4にそのとおりに記載されているものではなく、甲4に記載された油性口唇化粧料における必須の成分をまとめたものでもないから、<申立人甲4発明>を甲4に記載された発明として認定することはできない。
なお、甲4の実施例1~2、4、6、8~10(甲4d)のうち、「ワセリン(SnowwhiteSpecial(融点53℃)(Sonneborn社製))」及び「ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(PLANDOOL-S(融点40℃)(日本精化社製))」の両成分を含有するのは、実施例4のみである。
(3)甲4発明1について
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲4発明1とを対比する。
a 甲4発明1における「ワセリン(SnowwhiteSpecial(融点53℃)(Sonneborn社製))」及び「ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(PLANDOOL-S(融点40℃)(日本精化社製))」は、甲4の当初明細書等に記載された成分(b)の「半固形油」(甲4a)の具体例であり、その融点は、日本薬局方収載の融点測定法第2法又は第3法で測定することができるとされている(甲4b【0013】)。
そして、甲4の出願日(平成30年10月3日)より前である平成28年3月7日厚生労働省告示第64号「第十七改正日本薬局方」の23、37、75~77頁には、「一般試験法」の「2.物理的試験法」の「2.60 融点測定法」の「第3法」として、次のように記載されている。
「3.第3法
ワセリン類に適用する。
3.1.装置
第1法の装置に替えて,水を入れたビーカーを浴液及び加熱容器として用いる.温度計は,浸線付温度計又は全没式温度計を用いる.
3.2.操作法
試料をよくかき混ぜながら徐々に90~92℃まで加熱して融解した後,加熱をやめ,試料の融点より8~10℃高い温度となるまで徐冷する.温度計を5℃付近に冷却し,ぬぐって乾燥し,直ちに水銀球の半分を試料中に差し込み,直ちに抜き取り,垂直に保ち,放冷し,付着した試料が混濁してきたとき,16℃以下の水中に5分間浸す.次に試験管に温度計を挿入し,温度計の下端と試験管の底との間が15mmになるようにコルク栓を用いて温度計を固定する.この試験管を約16℃の水を入れたビーカー中に吊るし,浴液の温度が30℃になるまでは1分間に2℃上昇するように,その後は1分間に1℃上昇するように加熱を続ける.温度計から,融解した試料の最初の1滴が離れたときの温度を測定する.この操作を3回行い,測定値の差が1℃未満のときはその平均値をとり,1℃以上のときは更にこの操作を2回繰り返し,合わせて5回の繰り返し試験の平均値をとり,融点とする.」
この測定法は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0008】において、「本発明において、融点は、化粧品原料基準記載一般試験法の第3法により、測定されるものである。」との記載に続いて説明されている融点の測定法と同じ方法である。
したがって、甲4発明1における「ワセリン(SnowwhiteSpecial(融点53℃)(Sonneborn社製)) 4(質量%)」は、本件訂正発明1における「成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%含有」することに該当する。
また、甲4発明1における「ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(PLANDOOL-S(融点40℃)(日本精化社製))」は、本件訂正発明1における「(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油」に該当し、その含有量が4質量%であることは、上記ワセリンの含有量との合計含有量は8(=4+4)質量%であるから、本件訂正発明1において成分(A)を「5~50質量%」含有することに該当する。
b 甲4発明1における「イソドデカン」及び「エチルヘキサン酸セチル」は、液状の油であることが技術常識であり(必要ならば、蔵多淑子ほか4名編、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社ほか2社、平成8年11月1日、p.1~24及び48~75を参照)、本件明細書の【0014】に成分(B)の例として挙げられる「炭化水素油」及び「2-エチルヘキサン酸セチル」にも該当するから、本件訂正発明1における「(B)25℃で液状の油成分」に該当する。
c 甲4発明1における「マイカ」は、本件訂正発明1における「(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体」に該当する。
d 甲4発明1における「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製))」及び「ポリメタクリル酸メチル(ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製))」は、甲4の当初明細書等において、成分(d)球状粉体の市販品として挙げられているものであり(甲4c)、いずれも有機球状粉体であるから、本件訂正発明1における「(D)球状セルロース粉体」と、「(D)有機球状粉体」である点で共通する。
e 甲4発明1における「マイカ 7(質量%)」と、「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)) 5(質量%)」及び「ポリメタクリル酸メチル(ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製)) 5(質量%)」の含有量の合計は、17(=7+5+5)質量%であるから、本件訂正発明1とは、「成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%」である限りにおいて一致する。
f 甲4発明1における「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」及び「黒酸化鉄」は、着色顔料であることが技術常識であり(必要ならば、甲6【0026】を参照)、本件明細書の【0029】において成分(E)の例として挙げられている「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」及び「黒酸化鉄」にも該当するから、本件訂正発明1における「(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上」に該当する。
g 甲4発明1の「口紅(液状)」は、本件訂正発明1の「液状口唇化粧料」に該当する。
h 甲4発明1は、さらに「トリメチルシロキシケイ酸(BELSIL TMS 803(旭化成ワッカー社製))」、「煙霧状シリカ(AEROSIL 380S(日本アエロジル社製))」及び「ジプロピレングリコール」を含むが、本件訂正発明1は、成分(A)~(E)を「含有」するとされ、ほかの成分を含んでよいものであり、本件明細書の【0040】には、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができると記載されているから、この点は、本件訂正発明1との対比において、相違点とはならない。
i したがって、本件訂正発明1と甲4発明1との間には、次の一致点及び相違点4-1があるものと認められる。
一致点:
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油 5~50質量%、
(B)25℃で液状の油成分、
(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体、
(D)有機球状粉体、
(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上
を含有し、成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%含有し、成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%である液状口唇化粧料。」
相違点4-1:
本件訂正発明1は、「(D)有機球状粉体」が「球状セルロース粉体」であるのに対し、
甲4発明1は、「(D)有機球状粉体」が「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製))」及び「ポリメタクリル酸メチル(ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製))」である点。
(イ)判断
上記(ア)iのとおり、本件訂正発明1と甲4発明1とは、相違点4-1で相違しており、相違点4-1は、成分(D)の球状粉体を構成する具体的な物質に係る事項であるから、実質的な相違点である。
なお、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社のシリコーン製品カタログである甲5には、Tospearl 150KAの粒子径が5μmであることが示されており(4頁)、甲6には、アイカ工業社製のガンツパールGM-2800の平均粒子径が30μmであることが示されているが(【0042】「注16」)、上記判断に影響するものではない。
したがって、本件訂正発明1は、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
イ 本件訂正発明2、4~5及び7~9について
本件訂正発明2、4~5及び7~9は、いずれも本件訂正発明1の液状口唇化粧料の特定事項を全て備え、さらに限定したものである。
すなわち、本件訂正発明2は、本件訂正発明1の「(D)球状セルロース粉体」について「平均粒径5~150μmである」と特定したものであり、本件訂正発明4は、本件訂正発明1又は2について「成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)が、0.02~250である」と特定したものであり、本件訂正発明5は、本件訂正発明1、2又は4について「成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~3である」と特定したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明1、2、4、5又は6について「成分(E)の含有量が、0.001~30質量%である」と特定したものであり、本件訂正発明8は、本件訂正発明1、2、4、5、6又は7について「成分(A)、(C)及び(D)の合計含有量が、17~80質量%である」と特定したものであり、本件訂正発明9は、本件訂正発明1、2、4、5、6、7又は8について「成分(E)が、無機顔料、合成有機顔料、有機色素及びそのレーキ顔料、天然有機色素から選ばれる着色顔料、並びに、板状粉体の表面を着色剤で被覆したパール顔料から選ばれる1種又は2種以上である」と特定したものである。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定した本件訂正発明2、4~5及び7~9についても、上記アで検討したのと同様の理由により、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
ウ 甲4発明1についてのまとめ
よって、本件訂正発明1~2、4~5及び7~9は、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
(4)甲4発明2について
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲4発明2とを対比する。
a 甲4発明2における「ワセリン(融点57℃)(ノムコートW(日清オイリオ社製)) 5(質量%)」は、上記(3)ア(ア)aで検討したのと同様の理由により、本件訂正発明1における「成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%含有」することに該当し、本件訂正発明1における「(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油 5~50質量%」にも該当する。
b 甲4発明2における「イソドデカン」、「イソノナン酸イソトリデシル」、「エチルヘキサン酸セチル」、「アンズ核油」、「オレイン酸エチル」、「オリーブ油」及び「ホホバ油」は、液状の油であることが技術常識であり(必要ならば、蔵多淑子ほか4名編、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社ほか2社、平成8年11月1日、p.1~24及び48~75を参照)、本件明細書の【0014】に成分(B)の例として挙げられる「炭化水素油」、「イソノナン酸イソトリデシル」、「ホホバ油」及び「2-エチルヘキサン酸セチル」などの「エステル油」にも該当するから、本件訂正発明1の「(B)25℃で液状の油成分」に該当する。
c 甲4発明2における「合成金雲母」は、「合成フルオロフロゴパイト」と同義であることが技術常識であるから(必要ならば、化粧品成分オンライン<https://cosmetic-ingredients.org/bulking-agents/6800/>を参照)、本件訂正発明1における「(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体」に該当する。
d 甲4発明2における「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製))」及び「メタクリル酸メチルクロスポリマー(MX-3000C(綜研化学社製))」は、甲4の当初明細書等において、成分(d)球状粉体の市販品として挙げられているものであり(甲4c)、いずれも有機球状粉体であるといえるから、本件訂正発明1における「(D)球状セルロース粉体」とは、「(D)有機球状粉体」である点で共通する。
e 甲4発明2における「合成金雲母 7(質量%)」と、「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)) 6(質量%)」及び「メタクリル酸メチルクロスポリマー(MX-3000C(綜研化学社製)) 4(質量%)」の含有量の合計は、17(=7+6+4)質量%であるから、本件訂正発明1とは、「成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%」である限りにおいて一致する。
f 甲4発明2における「赤色104号」、「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」、「ベンガラ」及び「黒色酸化鉄」は、着色顔料であることが技術常識であり(必要ならば、甲6【0026】を参照)、本件明細書の【0029】において成分(E)の例として挙げられている「赤色104号」、「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」、「黒酸化鉄」及び「ベンガラ」にも該当するから、本件訂正発明1における「(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上」に該当する。
g 甲4発明2の「口紅(液状)」は、本件訂正発明1の「液状口唇化粧料」に該当する。
h 甲4発明2は、さらに「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」、「トリメチルシロキシケイ酸(SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製))」、「煙霧状シリル化シリカ(AEROSIL R976S(日本アエロジル社製))」、「1,3-ブチレングリコール」、「香料」、「ハイビスカスエキス」、「パルミチン酸アスコルビル」、「ダマスクバラ抽出液」、「酢酸トコフェロール」、「アスタキサンチン液」、「ゴールデンシルク抽出液」及び「エイジツエキス」を含むが、上記(3)ア(ア)hで検討したのと同様の理由により、本件訂正発明1との対比において、相違点とはならない。
i したがって、本件訂正発明1と甲4発明2との間には、次の一致点及び相違点4-2があるものと認められる。
一致点:
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油 5~50質量%、
(B)25℃で液状の油成分、
(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体、
(D)有機球状粉体、
(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上
を含有し、成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%含有し、成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%である液状口唇化粧料。」
相違点4-2:
本件訂正発明1は、「(D)有機球状粉体」が「球状セルロース粉体」であるのに対し、
甲4発明2は、「(D)有機球状粉体」が「ポリメチルシルセスキオキサン(TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製))」及び「メタクリル酸メチルクロスポリマー(MX-3000C(綜研化学社製))」である点。
(イ)判断
上記(ア)iのとおり、本件訂正発明1と甲4発明2とは、相違点4-2で相違しており、相違点4-2は、成分(D)の球状粉体を構成する具体的な物質に係る事項であるから、実質的な相違点である。
なお、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社のシリコーン製品カタログである甲5には、Tospearl 150KAの粒子径が5μmであることが示されており(4頁)、特開2017-178834号公報には、綜研化学社製のMX-3000Cの平均粒子径が28.8~32.8μmであることが示されているが(【0054】【表1】「*2」)、上記判断に影響するものではない。
したがって、本件訂正発明1は、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
イ 本件訂正発明2及び4~9について
本件訂正発明2及び4~9は、いずれも本件訂正発明1の液状口唇化粧料の特定事項を全て備え、さらに限定したものである。
すなわち、本件訂正発明2、4~5及び7~9と本件訂正発明1との関係は、上記(3)イで説示したとおりであり、本件訂正発明6は、本件訂正発明1、2、4又は5について「さらに、(F)ワックス又はゲル化剤を含有する」と特定したものである。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定した本件訂正発明2及び4~9についても、上記アで検討したのと同様の理由により、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
ウ 甲4発明2についてのまとめ
よって、本件訂正発明1~2及び4~9は、甲4の当初明細書等に記載された発明と同一ではない。
(5)取消理由1(甲4に基づく拡大先願)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~2及び4~9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではなく、取消理由1(甲4に基づく拡大先願)には、理由がない。
2 取消理由で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について
ア 甲1に記載された事項
(甲1a)
「【請求項1】
20℃で液状である、皮膚及び/又は唇をメイクアップ及び/又はケアするための無水化粧料組成物であって、生理的に許容される媒体中に、
- シリコーン樹脂で被覆された少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末、
- 第1の油中で運搬される少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、
- 少なくとも1種のワックス、
- 少なくとも1種の第2の油、
を含む少なくとも1種の脂肪相を含み、
前記オルガノポリシロキサンエラストマー及びシリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、2超、好ましくは2.5超の、油中で運搬されるオルガノポリシロキサンエラストマー/シリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末の乾燥ベース質量比で存在する、無水化粧料組成物。」
(甲1b)
「【0032】
シリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末
本発明による組成物は、シリコーン樹脂、特にシルセスキオキサン樹脂で被覆された少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含み、これは例えば米国特許第5538793号に記載され、その内容のすべてが参照により組み込まれる。
【0033】
かかるエラストマー粉末は、信越化学工業株式会社により、KSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-103、KSP-104及びKSP-105の名称で販売されており、INCI名ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーを有する。
・・・
【0036】
油中で運搬されるオルガノポリシロキサンエラストマー
本発明による組成物は、シリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末に加えて、特にオルガノポリシロキサンエラストマーゲルの形態の、第1の油中で運搬される少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマーとも呼ばれる)を含む。
・・・
【0066】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、油中で運搬されるオルガノポリシロキサンエラストマーとして、好ましくは球状、好ましくはDow Corning社によりDC 9040、DC 9041、DC 9509、DC 9505の名称で販売されている化合物から選択される、非乳化性エラストマーを含む。」
(甲1c)
「【0109】
ワックス
上述のとおり、本発明による組成物は、少なくとも1種のワックスを含む。
・・・
【0119】
無極性ワックス
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種の無極性ワックスを含む。
・・・
【0124】
本発明のために好適な無極性ワックスの例示として、とりわけ、炭化水素ワックス、例えば微結晶ワックス、パラフィンワックス、オゾケライト及びポリエチレンワックスが挙げられる。
・・・
【0126】
オゾケライトとして、Ozokerite Wax Pastilles SP 1021 Pの名称で販売されているものが特に挙げられる。
・・・
【0128】
挙げられるポリエチレンワックスには、Honeywell社により販売されているAsensa(登録商標)SC 211、New Phase Technologies社により販売されているPerformalene 500-L Polyethylene及びPerformalene 400 Polyethyleneが含まれる。
・・・
【0134】
極性ワックス
一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の極性ワックスを含んでいてもよい。
・・・
【0143】
第1の好ましい実施形態によれば、極性ワックスは炭化水素ワックスである。
【0144】
炭化水素極性ワックスとして、エステルワックス及びアルコールワックスから選択されるワックスが特に好ましい。
・・・
【0147】
とりわけエステルワックスとして使用できるのは、
- 以下のもの等のエステルワックスである。すなわち、
・・・
【0152】
v)蜜蝋、合成蜜蝋、ポリグリセロール化蜜蝋、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オキシプロピレン化ラノリンワックス、米糠蝋、オーリクリーワックス、アフリカハネガヤワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、日本蝋、ウルシ蝋、モンタンワックス、オレンジワックス、ベーベリワックス(laurel wax)及び水添ホホバワックスも挙げられる。
・・・
【0154】
別の一実施形態によれば、極性ワックスはアルコールワックスであってもよい。
【0155】
挙げられるアルコールワックスには、例えば、New Phase Technologies社製ワックスPerformacol 550-L Alcohol、ステアリルアルコール及びセチルアルコールが含まれる。」
(甲1d)
「【0161】
液状脂肪相
本発明による組成物は、少なくとも1種の脂肪相、特にオルガノポリシロキサンエラストマーを運搬する少なくとも1種の第1の油、及び少なくとも1種の第2の油を含む。
【0162】
油は、揮発性油及び/又は不揮発性油、又はそれらの混合物から選択してもよい。
・・・
【0186】
不揮発性油
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種の不揮発性油を含む。特に、好ましくは、前記第2の油は不揮発性である。
・・・
【0189】
無極性油
第1の実施形態によれば、前記不揮発性油は、無極性油、好ましくは無極性炭化水素油であってもよい。
・・・
【0193】
好ましくは、不揮発性無極性炭化水素油は、無機物又は合成由来の直鎖状又は分枝鎖状炭化水素、例えば、
・・・
- 水添ポリイソブチレン、例えば日油株式会社により販売されているParleam(登録商標)、・・・
・・・
から選択してもよい。
・・・
【0194】
極性油
特定の一実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種の不揮発性極性油を含む。前記油は、炭化水素油、シリコーン油又はフルオロ油であってもよい。
・・・
【0200】
特に、不揮発性極性炭化水素油は、下の油のリスト及びこれらの混合物から選択してもよい。すなわち、
・・・
- 合成エステル、例えば、・・・、イソステアリン酸イソステアリル、・・・
・・・
- 4個から22個の原子を含む、芳香族酸とアルコールとのエステル、例えばトリメリット酸トリデシル(MW=757g/mol)、
・・・
【0214】
別の一実施形態によれば、不揮発性極性油はシリコーン油であってもよい。
・・・
【0216】
特に、不揮発性シリコーン油は、以下から選択してもよい。すなわち、
・・・
- フェニルトリメチコン、とりわけ例えばフェニルトリメチルシロキシトリシロキサン、とりわけDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluidの参照名で販売されているもの、」
(甲1e)
「【0222】
ペースト状脂肪物質
本発明による組成物は、好ましくは、ワックスに加えて、ペースト状脂肪物質から選択される少なくとも1種の固形脂肪物質を含む。
【0223】
本発明の意味するところでは、「ペースト状脂肪物質」という用語は、可逆的な固形/液状の状態変化をし、固形状態で異方性の結晶組織を示し、23℃の温度で液状画分及び固形画分を含む、親油性脂肪化合物を意味することを意図している。
・・・
【0236】
ペースト状脂肪物質は、以下から選択してもよい。すなわち、
・・・
- エステル、
・・・
【0238】
エステルの中で、以下のものがとりわけ検討される。すなわち、
- グリセロールオリゴマーのエステル、とりわけジグリセロールエステル、特にアジピン酸とグリセロールとの縮合物であって、グリセロールのヒドロキシル基の一部が、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、カプリン酸、イソステアリン酸及び12-ヒドロキシステアリン酸の混合物と反応しているもの、例えば、Sasol社によりSoftisan(登録商標)649の参照名で販売されているビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、」
(甲1f)
「【0243】
着色料
好ましくは、本発明による組成物は、特に、水溶性又は脂溶性着色料、顔料、有機レーキ、真珠光沢剤、光学効果を有する物質、及びそれらの混合物から選択できる、少なくとも1種の着色料(「着色剤」としても知られている)を含む。
・・・
【0248】
本発明において使用できる無機顔料として、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、並びに酸化亜鉛、酸化鉄又は酸化クロム、フェリックブルー、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー及びクロム水和物が挙げられる。
・・・
【0274】
充填剤
好ましくは、本発明による組成物はまた、少なくとも1種又は複数種の充填剤を含有する。
・・・
【0278】
挙げられるのは、タルク、雲母、シリカ、カオリン、ベントン、任意選択で親水性又は疎水性処理されたヒュームドシリカ粒子、ポリアミド[Nylon(登録商標)]粉末[Atochem社製Orgasol(登録商標)、東レ株式会社(Dow Corning社)製SP-500]、・・・」
(甲1g)
「【実施例】
【0300】
(実施例1及び2:液状リップスティック)
以下の液状リップスティック(グロス)組成物1及び2を調製した。
【0301】
【表2】
[図:0001413331000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された、請求項1の無水化粧料組成物(甲1a)の具体例である、実施例2の液状リップスティック(グロス)組成物2(甲1g)からみて、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認める。
甲1発明:
「次の組成からなる、液状リップスティック(グロス)。
(質量%)
BHT 0.03
カオリン 5
シリル化シリカジメチル〔Evonik Degussa社製
Aerosil(登録商標)R972〕 2
Red7レーキ 3.83
Red28レーキ 1.17
酸化鉄 1
ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2〔Sasol社製
Softisan(登録商標)649〕 100まで適量
イソステアリン酸イソステアリル 3.9
トリメリット酸トリデシル 7.3
オゾケライト〔Strahl&Pitsch社製
Ozokerite Wax Pastilles
SP 1021 P〕 1.3
水添ポリイソブテン
〔日油株式会社製Parleam(登録商標)〕 8.6
ポリエチレン〔Honeywell社製
Asensa(登録商標)SC 211〕 1.2
Nylon-12〔東レ株式会社
(Dow Coming社)製SP-500〕 1.5
フェニルトリメチコン〔Dow Corning社製
Dow Corning 556
Cosmetic Grade Fluid〕 7.8
ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン
クロスポリマー〔信越化学工業株式会社製KSP100〕 2
ジメチコン中に15.5%のエラストマーを含む
ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー
〔Dow Corning社製
Dow Corning 9041
Silicone Elastomer Blend〕 33
総量 100 」
ウ 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2〔Sasol社製Softisan(登録商標)649〕」は、ペースト状脂肪物質であり(甲1e)、本件明細書の【0009】に成分(A)の例として挙げられている「ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2(39℃)」にも該当するから、本件訂正発明1の「(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油」に該当する。
そして、甲1発明における当該成分の含有量は総量の100質量%となるまでの量であるから、20.37質量%と算出され、本件訂正発明1において成分(A)を「5~50質量%」含有することに該当する。
b 甲1発明における「イソステアリン酸イソステアリル」、「トリメリット酸トリデシル」、「水添ポリイソブテン〔日油株式会社製Parleam(登録商標)〕」及び「フェニルトリメチコン〔Dow Corning社製Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid〕」は、いずれも液状の油であり(甲1d)、本件明細書の【0014】に成分(B)の例として挙げられている「水添ポリイソブテン」、「イソステアリン酸イソブチル、・・・、トリメリト酸トリデシル、・・・等のエステル油」及び「メチルフェニルポリシロキサン、・・・等のシリコーン油」にも該当するから、本件訂正発明1における「(B)25℃で液状の油成分」に該当する。
c 甲1発明における「カオリン」は、層状粉体であることが技術常識であり(必要ならば、特開2013-216602号公報の【0016】を参照。)、本件明細書の【0018】に「成分(C)は、成分(E)を除く板状粉体である。ここで、板状とは、形状が狭義の板状の他、薄片状等の形状の粉体も含まれる。」と記載され、成分(C)の例として挙げられている「板状カオリン」にも該当するから、本件訂正発明1における「(C)マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体」と、「(C)板状粉体」である点で共通する。
d 甲1発明における「Nylon-12〔東レ株式会社(Dow Coming社)製SP-500〕」はポリアミド粉末であり(甲1f)、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー〔信越化学工業株式会社製KSP100〕」は、シリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末であり、「ジメチコン中に15.5%のエラストマーを含むジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー〔Dow Corning社製Dow Corning 9041 Silicone Elastomer Blend〕」は、油中で搬送される球状のオルガノシロキサンエラストマーである(甲1b)。
なお、東レ株式会社の製品情報である甲2には、ナイロン12が真球状で平均粒径が5μmであることが示されており、信越化学工業株式会社の化粧品用シリコーンセレクションガイドである甲3には、KSP-100が白色球状粉末で平均粒径が5μmであることが示されているが、ウェブサイトの情報である甲2及び甲3は、いずれも公開日も最終更新日も不明である上、甲1発明における「Nylon-12〔東レ株式会社(Dow Coming社)製SP-500〕」及び「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー〔信越化学工業株式会社製KSP100〕」の物性を示しているとも理解できない。
したがって、これらはいずれも有機粉体であるといえるところ、本件明細書の【0023】に成分(D)の例として挙げられている「ポリアミド樹脂」及び「シリコーン樹脂」にも該当するといえるから、本件訂正発明1における「(D)球状セルース粉体」とは、「(D)有機粉体」である点で共通する。
e 甲1発明における「カオリン 5質量%」、「Nylon-12〔東レ株式会社(Dow Coming社)製SP-500〕 1.5質量%」、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー〔信越化学工業株式会社製KSP100〕 2質量%」及び「ジメチコン中に15.5%のエラストマーを含むジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー〔Dow Corning社製Dow Corning 9041 Silicone Elastomer Blend〕 33質量%」の合計の含有量のうち、溶媒(ジメチコン)の量を除いた量は、約13.6(=5+1.5+2+約5.1(=33×0.155)質量%であるから、本件訂正発明1と、「成分(C)及び(D)の合計含有量が、10~60質量%」である限りにおいて一致する。
f 甲1発明における「Red7レーキ」、「Red28レーキ」及び「酸化鉄」は、着色料であり(甲1f)、本件明細書の【0029】に成分(E)の例として挙げられている「赤色202号」、「赤色104号」、「黄酸化鉄、黒酸化鉄」にも該当するから、本件訂正発明1における「(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上」に該当する。
g 甲1発明の「液状リップスティック(グロス)」は、本件訂正発明1の「液状口唇化粧料」に該当する。
h 甲1発明は、さらに「BHT」、「シリル化シリカジメチル〔Evonik Degussa社製Aerosil(登録商標)R972〕」、「オゾケライト〔Strahl&Pitsch社製Ozokerite Wax Pastilles SP 1021 P〕」、「ポリエチレン〔Honeywell社製Asensa(登録商標)SC 211〕」を含むが、本件訂正発明1は、成分(A)~(E)を「含有」するとされ、ほかの成分を含んでよいものであり、本件明細書の【0040】には、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができると記載されているから、この点は、本件訂正発明1との対比において、相違点とはならない。
i したがって、本件訂正発明1と甲1発明との間には、次の一致点及び相違点1-1~1-3があるものと認められる。
一致点:
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
(A)融点が30℃以上61℃未満のペースト油 5~50質量%、
(B)25℃で液状の油成分、
(C)板状粉体、
(D)有機粉体、
(E)着色顔料及びパール顔料から選ばれる1種又は2種以上
を含有する液状口唇化粧料。」
相違点1-1:
本件訂正発明1は、「(C)板状粉体」が「マイカ、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウムから選ばれる板状粉体」であるのに対し、
甲1発明は、「(C)板状粉体」が「カオリン」である点。
相違点1-2:
本件訂正発明1は、「(D)有機粉体」が「球状セルロース粉体」であるのに対し、
甲1発明は、「(D)有機粉体」が、「Nylon-12〔東レ株式会社(Dow Coming社)製SP-500〕」、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー〔信越化学工業株式会社製KSP100〕」及び「ジメチコン中に15.5%のエラストマーを含むジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー〔Dow Corning社製Dow Corning 9041 Silicone Elastomer Blend〕」である点。
相違点1-3:
本件訂正発明1は、「成分(A)として、(A1)融点53℃以上61℃未満のペースト油を、組成物中に1~45質量%」含有するのに対し、
甲1発明は、そのような成分を含有するものでない点。
(イ)判断
a 申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)について
上記(ア)iのとおり、本件訂正発明1と甲1発明とは、相違点1-1~1-3で相違しているところ、相違点1-1及び1-2は、成分(C)及び(D)を構成する具体的な物質に係る事項であり、相違点1-3は、液状口唇化粧料の必須成分の有無に係る事項であるから、いずれの相違点も実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
b 申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1には、有機粉体に該当する成分として、「シリコーン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末」及び「油中で運搬されるオルガノポリシロキサンエラストマー」が記載され、そのほかに着色料や充填剤の例として挙げられる成分に、甲1発明の「ポリアミド「Nylon-12〔東レ株式会社(Dow Coming社)製SP-500〕」などの有機粉体に該当する成分が例示されている(甲1f)。
しかしながら、甲1には、「球状セルロース粉末」といえる成分の記載はない。
そして、甲1発明において、ほかの成分と代えて、あるいは追加して、「球状セルロース粉末」を含有させることを動機付ける根拠も見いだせない。
よって、相違点1-1及び1-3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、申立人は、(D)有機球状粉体が、球状セルロース粉体であることを特定する訂正前の請求項3に係る発明の特許については、申立理由1及び2の対象としていない。
また、甲1には、充填剤として、カオリンとともに雲母(マイカ)が記載されており(甲1f)、ワックスとして、オゾケライト及びポリエチレンワックスとともに、ウルシ蝋(本件明細書の【0010】に記載されている「モクロウ(60℃)」と同じものである。)やステアリルアルコール(甲7に融点が55~60であることが示されている。)が記載されているが(甲1c)、上記a及びbの判断に影響するものではない。
エ 本件訂正発明2及び4~9について
本件訂正発明2及び4~9は、いずれも本件訂正発明1の液状口唇化粧料の特定事項を全て備え、さらに限定したものである。
すなわち、上記1(3)イ及び(4)イで説示したとおりである。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定した本件訂正発明2及び4~9についても、上記ウ(イ)a及びbで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~2及び4~9に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)には、理由がない。
(2)申立理由4(サポート要件違反)について
ア 本件訂正発明の解決しようとする課題
本件明細書の記載、特に【0005】の記載からみて、本件訂正発明の解決しようとする課題は、「密着感がありながら、塗布時に軽さがあり、やわらかなタッチで唇の輪郭が描きやすい、液状口唇化粧料」を提供することにあると認める。
イ 判断
本件明細書の【0002】~【0007】には、従来、着色料を含有しない唇用下地料として、シリコーンエラストマーと常温で液体の油性成分から得られるペースト状物、板状粉体及び油性成分を含有し、小じわ隠蔽効果などを有するものが知られていたが、密着感はあるものの、べたつくなど、使用感において課題があったところ、ペースト油と板状粉体で密着感を得るとともに、さらに、球状粉体を組み合わせて用いることにより、密着感がありながら、塗布時に軽さがあり、やわらかなタッチで唇の輪郭が描きやすく、潤い感が高く、唇の縦皺を目立たなくさせることができ、それらが長時間持続する、液状口唇化粧料を提供できることが記載されている。
そして、本件明細書の【0008】~【0042】において、成分(A)及び(A1)のペースト油、成分(B)の油成分、成分(C)の板状粉体、成分(D)の有機球状粉体、成分(E)の着色顔料及びパール顔料及び成分(F)のワックス又はゲル化剤それぞれについて、具体例が記載され、これら各成分のほか、成分(A)に対する成分(A1)の質量割合、成分(B)に対する成分(A)の質量割合、成分(C)及び(D)の合計含有量などについて、塗布時の密着感、軽さ、唇の輪郭の描きやすさ、タッチのやわらかさ、塗布直後及び経時の唇の縦皺の目立たなさ、潤い感などの観点と関連した、配合量の好ましい範囲が記載され、ほかに配合できる成分や、収納容器などが記載されており、成分(D)としては、球状セルロース粉体が好ましいことも記載されている。
さらに、本件明細書の【0043】~【0052】においては、実施例として液状口紅の組成及び製造方法が具体的に記載されており、得られた液状口紅の塗布時のタッチのやわらかさ、塗布時の密着感、塗布時の唇の輪郭の描きやすさ、塗布直後及び塗布4時間後の縦皺の目立たなさ、塗布4時間後の潤い感の評価の結果が記載されているところ、成分(A1)、成分(C)又は成分(D)を含まない比較例1~3の液状口紅に比べて、本件訂正発明1~2及び4~9の発明特定事項を全て備えた実施例1~3、5及び6の液状口紅が、優れた効果を奏することが具体的に示されている。
これらの実施例を含めた本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件訂正発明の液状口唇化粧料とすることによって、上記アの本件訂正発明の課題を解決できることを当業者は理解できるといえる。
したがって、本件訂正発明1~2及び4~9は、本件明細書の発明の詳細な説明において、その課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから、本件訂正発明1~2及び4~9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立書の9~12頁の記載からみて、申立人は申立理由4(サポート要件違反)について、概略、次の主張をしているものと認められる。
a 本件発明の課題について
本件発明の課題は、「縦皺が目立たないなど色がよれずに均一な仕上がりが得られるとともにその効果が持続し、塗布時の軽さ、タッチのやわらかさ、唇の輪郭の描きやすさなどの使用感及び密着感に優れる液状口唇化粧料を提供すること」にある(本件明細書の【0004】及び【0007】)。
この課題を本件発明が解決できることについて、本件明細書の発明の詳細な説明において裏付けるのは、具体的に上記課題に関連した項目を評価のうえ課題が解決されていることを確認した実施例1~6である。
b 成分(A)及び成分(A1)の含有量について
本件発明1では、成分(A)の含有量が5~50質量%であり、成分(A1)の含有量が1~45質量%であることを規定するが、成分(A)全体に対する成分(A1)の割合等について何ら規定されていないため、本件発明1には、成分(A)ないし成分(A1)を様々な量で含む広範な組成が包含される。
これに対し、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の課題を解決した具体例として、成分(A1)を20質量%と、成分(A1)以外の成分(A)を合計11質量%とを含有し、成分(A)を合計31質量%で含有する組成が開示されているのみであり(実施例1~6)、このような1点のみの具体例をもって、本件発明1に包含されるすべての成分(A1)及び成分(A)の含有量において、上記本件発明の課題を解決できると当業者が認識できないことは明らかである。
この点は、本件特許権者が本件特許に係る出願の審査経過において提出した意見書(甲8)において、成分(A1)が液状口唇化粧料の使用感や密着感等に大きな影響を及ぼす重要な成分であると主張していることからも明らかである。
c 成分(A1)の融点及び種類について
本件発明1では、成分(A1)に融点53℃以上61℃未満の範囲にあるあらゆる種類のペースト油が含まれるのに対し、実施例1~6で用いられているのは融点57℃のワセリンのみである。
融点57℃のワセリンの実施例のみをもって、融点53℃以上61℃未満の範囲にあるあらゆるペースト油において、本件発明の課題を解決できると認識できるものではない。
d 成分(C)及び(D)の合計含有量について
本件発明1では、成分(C)及び成分(D)の合計含有量が10~60質量%であると規定されているが、本件明細書で具体的に開示されているのは成分(C)及び成分(D)の合計量が20質量%の組成のみである(実施例1~6)。
成分(C)の板状粉体及び成分(D)の有機球状粉体の含有量が、液状口唇化粧料としての使用感や密着感に影響を及ぼすことは技術常識であるところ、その含有量を実施例の3倍である60質量%にまで増加させても、実施例1~6と同等の使用感、密着感等が得られ、本件発明の課題を解決できるとは到底認識することはできない。
e 成分(F)について
本件発明1では、成分(F)ワックス又はゲル化剤は必須成分とされていないが、本件明細書には、成分(F)は塗布時のタッチのやわらかさや密着感を高める効果を有するとされ、本件発明の課題を解決できることの具体的な裏付けとなる実施例1~6では、いずれも成分(F)に相当するオゾケライトが6質量%配合されており、成分(F)を含まない実施例は存在しないから、実施例1~6の組成から成分(F)すべてを除去しても、その効果を維持し、なお本件発明の課題を解決できるとは認識することができない。
f 本件発明2~9について
上記b~eの点については、本件発明1を引用する本件発明2~9も同様である。
(イ)申立人の主張の検討
上記(ア)の申立人の主張は、要するに、本件訂正発明では、成分(A)全体に対する成分(A1)の含有割合の特定がなく、成分(A1)の種類の特定がなく、成分(C)及び(D)の合計含有量は広い範囲を規定するのに対し、発明の詳細な説明では、これらについて、1点のみの具体例(実施例1~6)が開示されているに留まる上、実施例1~6の液状口紅には、成分(F)が含まれているから、当業者が実施例1~6から本件訂正発明の課題を解決できると認識できないというものである。
しかしながら、上記イで述べたとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例の記載に加えて、本件訂正発明の課題と関連した説明が記載されており、それらの記載全体を考慮すれば、本件訂正発明の液状口唇化粧料とすることによって、本件訂正発明の課題を解決できると当業者は認識できるといえる。
また、本件明細書においては、成分(F)は、口唇化粧料に適度な硬さを付与し、油の染み出し抑制、潤いを付与することができることが説明されていることから、成分(F)を含有しないことによって、本件訂正発明の課題が解決できないものとはいえず、申立人も、具体的な理由は示していない。
よって、申立人の上記(ア)の主張は、いずれも採用できない。
エ 申立理由4(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~2及び4~9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものではなく、申立理由4(サポート要件違反)には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~2及び4~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~2及び4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により、請求項3は削除されたため、申立人の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったので、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700955